半導体装置検査方法および半導体装置検査プログラム
【課題】半導体装置の検査する際の各種データを一時的に保存しておくためのデバイスを用いることなく、半導体装置の検査を行うことのできる半導体装置検査方法を提供する。
【解決手段】測定部12は、異なる設定条件によって、互いの測定結果データを用いることなく独立した第1の測定結果データ(例えば、第1の設定条件での検査における比較電圧VREFの測定値VR1と、温度特性を持つ出力電圧VPTATの測定値VP1等。)と、第2の測定結果データ(例えば、第2の設定条件での検査における比較電圧VREFの測定値VR2と、出力電圧VPTATの測定値VP2等。)とを得る。その後で、制御部13は、第1の測定結果データと第2の測定結果データとを用いて、予め定められた計算式によって得られた計算結果(TSD機能動作温度TP3)を、その上限値TP3H(℃)および下限値TP3L(℃)と比較することによって、デバイスの良否判定を行う。
【解決手段】測定部12は、異なる設定条件によって、互いの測定結果データを用いることなく独立した第1の測定結果データ(例えば、第1の設定条件での検査における比較電圧VREFの測定値VR1と、温度特性を持つ出力電圧VPTATの測定値VP1等。)と、第2の測定結果データ(例えば、第2の設定条件での検査における比較電圧VREFの測定値VR2と、出力電圧VPTATの測定値VP2等。)とを得る。その後で、制御部13は、第1の測定結果データと第2の測定結果データとを用いて、予め定められた計算式によって得られた計算結果(TSD機能動作温度TP3)を、その上限値TP3H(℃)および下限値TP3L(℃)と比較することによって、デバイスの良否判定を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置検査方法および半導体装置検査プログラムに関し、特にウェハーソートで半導体集積回路の良否を検査する半導体装置検査方法および半導体装置検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な電子機器に搭載される半導体集積回路であるが、その製造過程のウェハーソートといわれる工程で、ウェハー上のチップが良品であるか、不良品であるかを検査する必要が有る。このような検査工程における半導体装置検査方法として、例えば下記の特許文献1のような各種テストの測定結果データを一時的に保存しておくことのできる不揮発性メモリー(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory;EEPROM)などのデバイスを使用する方法が有る。
【0003】
図7Aおよび図7Bは、従来技術における半導体装置の検査処理の流れ説明するフローチャートである。
従来技術では、まず、図7Aに示すように、第1の設定条件によりウェハーソートを実施する。第1の設定条件による各種テストにて、ウェハーの特性データを測定結果データとして得る(ステップS1001)。ここで得られた測定結果データを、第1の測定結果データとして、デバイス上のEEPROMに保存しておく(ステップS1002)。この段階で、測定結果データと予め定めておいた上限値および下限値と比較して、それぞれのウェハーが良品(PASS)であるか、または不良品(FAIL)であるかを判定する処理として第1のPASS/FAIL判定処理を行う(ステップS1003)。その測定値データおよびPASS/FAIL判定処理の判定結果データが書き込まれた結果ファイルAを生成する(ステップS1004)。
【0004】
続いて、第2の設定条件でウェハーソートを実施する。第1の設定条件によるウェハーソートと同様に、第2の設定条件による各種テストにて、ウェハーの特性データを測定結果データとして得る(ステップS1005)。ここで得られた測定結果データを、第2の測定結果データとする。
ここで、デバイス上のEEPROMに保存されている第1の測定結果データを読み出し(ステップS1006)、第1の測定結果データと第2の測定結果データとを用いて、それぞれのウェハーが良品であるか、または不良品であるかを判定する処理として第2のPASS/FAIL判定処理を行うための判定計算を行う(ステップS1007)。そして、その計算値を予め定めてあった範囲のリミット値(上限値および下限値)と比較して、それぞれのチップが良品であるか、または不良品であるかを判定する処理として第2のPASS/FAIL判定処理を行う(ステップS1008)。その測定値データおよびPASS/FAIL判定処理の判定結果データを格納した結果ファイルBを生成する(ステップS1009)。
【0005】
最後に、図7Bに示すように、インクドマップを作成する。まず、結果ファイルBから第2のPASS/FAIL判定処理の判定結果データを読み出す(ステップS1010)。そして、第2のPASS/FAIL判定処理の判定結果データからインクドマップを作成し(ステップS1011)、作成されたインクドマップIを保存したり、出力したりする(ステップS1012)。
【0006】
従来技術における半導体装置の検査処理においては、最初の第1の設定条件でウェハーソートを実施した時に、半導体装置の内部のEEPROMに必要なデータに保存しておく。そして、第1の設定条件でウェハーソートに続いて、第2の設定条件でウェハーソートを実施する時に、そのEEPROMデータから第1の測定結果データを読み出して、その第1の測定結果データを各種テストの測定に使用していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献1】特開平7−147303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記で説明したようなEEPROMなどのデバイスを使用して半導体装置を検査する方法は、図8に示すように、第1,2の設定条件でウェハーソートを独立して実施するものではなく、第2の設定条件でウェハーソートを実施する際に、第1の設定条件でウェハーソートを実施した時の第1の測定結果データを参酌するものであった。つまり、この半導体装置検査方法は、第1,2の設定条件で独立してウェハーソートを実施したことで得られた結果ファイルAの第1の測定結果データと、結果ファイルBの第2の測定結果データとを活用して、半導体装置の検査を行うものではなかった。このため、第1の測定結果データを一時的に存しておくために、半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどのデバイスを使用する必要が有る。従って、EEPROMなどのデバイスを使用して半導体装置を検査する方法は、当然EEPROMなどを搭載することができないプロセスの場合には用いることができなかった。
【0009】
また、EEPROMなどのデバイスを搭載することができるプロセスの場合であっても、EEPROMを搭載することでマスク枚数が増加する。このため、半導体装置を検査するためだけに、EEPROMを搭載することは非効率であるとともに、コスト的にも問題が有った。
このため、EEPROMなどのデータを保存することのできるデバイスを用いて検査を行うとする場合には、検査以外の目的で予めEEPROMが搭載されている場合に、それを転用するような形でしか検査を実施することができなかった。但し、このようにEEPROMを使用することができた場合であっても、EEPROMをテストするためのリテンションベークなどの処理で書き込んだデータを保持するのが難しい場合が有った。
【0010】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑み、半導体装置の検査する際の各種データを一時的に保存しておくためのデバイスを用いることなく、半導体装置の検査を行うことのできる半導体装置検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による半導体装置検査方法は、上記の目的を達成するために、次のように構成される。
本発明のある態様による第1の半導体装置検査方法は、測定部が、半導体ウェハーに形成された半導体装置の複数のチップの特性データを、n(nは、2以上の整数とする。)個の設定条件のうちの第m(mは、1〜nの整数とする。)の設定条件に基づいて測定することによって、第mの測定値を得る測定ステップ、制御部が、前記測定ステップによって得られた前記第mの測定値に基づいて良否を判定し、その判定結果および前記第mの測定値が書き込まれた第mの結果ファイルを前記半導体装置の外部に設けられた記憶部に保存する判定ステップ、前記測定ステップと前記判定ステップとを、n個の全ての設定条件が終了するまで繰り返す再測定判定ステップと、前記制御部が、前記記憶部に保存されている前記第1〜第nの結果ファイルから前記第1〜第nの測定値をそれぞれ読み出し、当該第1〜第nの測定値に基づいて良否を判定するための判定計算を行う判定計算ステップ、前記制御部が、前記判定計算ステップによって計算された計算結果に基づいて良否を判定し、その判定結果が書き込まれた最終結果ファイルを生成し、当該最終結果ファイルを前記記憶部に保存する最終判定ステップを有することを特徴とする。
【0012】
上記の第1の半導体装置検査方法によれば、測定ステップおよび再測定判定ステップによって、例えば、低温検査と高温検査とで異なる条件を設定して、互いの検査結果を用いることなく半導体装置の複数のチップについて、複数の独立した検査情報を得る。そして、それらの検査情報を、半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどに保存しておくのではなく、半導体装置の外部に設けられた記憶部に保存しておく。その後、判定計算ステップにおいて、異なる条件を設定して実施した複数の独立した検査情報から特定の検査値を抽出し、予め定めておいた判定計算式で計算した値とその値を良否判定するために定められた上限値または下限値と比較する。最後に、最終判定ステップにより、チップの良否判定を行う。
【0013】
これにより、低温検査時の設定温度とそのテストで得られた値と、高温検査時の設定温度とそのテストで得られた値を関連付けて計算して、それをテスト選別の新たなパラメータとして使用することができる。このため、各種テストの測定結果データを一時的に保存しておくための半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどのデバイスを用いることなく、半導体装置の検査を行うことが可能となる。
【0014】
本発明のある態様による第2の半導体装置検査方法は、前記最終判定ステップが行われる時に、前記制御部が、前記判定計算を行うための判定計算式と、前記判定計算式の計算結果に基づいて良否を判定する際の計算結果の上限値および下限値とが複数組書き込まれているレシピファイルから、任意の判定計算式と当該計算結果の上限値および下限値を少なくとも1組読み出すレシピファイル読出ステップを有することを特徴とする。
【0015】
上記の第2の半導体装置検査方法によれば、レシピファイル読出ステップによって、判定計算を行うための判定計算式と、判定計算式の計算結果に基づいて良否を判定する際の計算結果の上限値および下限値とをレシピファイルから読み出す。なお、レシピファイルには、判定計算式と計算結果の上限値および下限値とが複数組書き込まれている。このため、レシピファイル読出ステップによって任意の判定計算式と計算結果の上限値および下限値を、少なくとも1組読み出す。
【0016】
例えば、特性値が温度に対してリニアに変化する(特性値が温度に対して一定の特性で変化する)点に着目すれば、2点の測定値を基にして所望の値を求めることができる。これを応用して、判定計算式によりサーマルシャットダウン(Thermal Shutdown Protection;TSD)機能の機能動作温度を求めることができる。
また、その機能動作温度に対する上限値と下限値とを予め決めておけば、上記の判定計算式により得られた機能動作温度として要求される仕様上の温度を中心温度して、その中心温度の範囲を考慮することが可能となる。
【0017】
本発明のある態様による第3の半導体装置検査方法は、前記再測定判定ステップによって前記第nの測定値が前記第nの結果ファイルに書き込む処理が完了した時に、前記制御部が、ウェハーソートに対する処理内容が書き込まれたトリガーファイルを生成するトリガーファイル生成ステップ、前記判定計算ステップを行う前に、前記制御部が、前記トリガーファイルから前記ウェハーソートに対する処理内容を読み込むトリガーファイル読込ステップを有することを特徴とする。
【0018】
上記の第3の半導体装置検査方法によれば、トリガーファイル生成ステップによってトリガーファイルTを生成しておけば、最終PASS/FAIL判定処理を行う際に、各ウェハーソートに対して、具体的にどのように処理を行えば良いかを指定しておくことが可能となる。
本発明のある態様による第4の半導体装置検査方法は、前記再測定判定ステップによって前記半導体装置の複数のチップの前記特性データが、第mの設定条件に基づいて測定される時に、前記測定部が、前記測定ステップまたは前記再測定判定ステップによって前記特性データが、第(m−1)の設定条件に基づいて測定された半導体装置のチップのうち、前記判定ステップまたは前記再測定判定ステップによって良品と判定された半導体装置のチップの前記特性データを測定することを特徴とする。
【0019】
上記の第4の半導体装置検査方法によれば、例えば、第2の設定条件にてウェハーのウェハーソートを実施する際に、その直前の第1の設定条件にてウェハーソートを実施した全てのウェハー(チップ)を検査対象としない。具体的に、第1の設定条件にてウェハーソートを実施したウェハーのうち、良品と判定されたウェハーのみを検査対象とする。
これにより、第1の設定条件にてウェハーソートを実施した全てのウェハー(チップ)を検査対象とする場合よりも、第1の設定条件にてウェハーソートを実施したウェハーのうち、不良品と判定されたウェハーについては検査対象としない方が、検査自体の効率を高めることが可能となる。
【0020】
本発明のある態様による第5の半導体装置検査方法は、前記再測定判定ステップまでの各ステップが終了した後、前記制御部が、前記最終結果ファイルから判定結果を読み出し、前記半導体ウェハーに対するインクドマップを作成するインクドマップ作成ステップを有することを特徴とする。
上記の第5の半導体装置検査方法によれば、インクドマップ作成ステップによって、インクドマップを作成する際にも、例えば、低温検査時の設定温度とそのテストで得られた値に、高温検査時の設定温度とそのテストで得られた値とを関連付けて計算された、チップの良否を選別する際の新たなパラメータとして使用して作成することが可能となる。
【0021】
本発明のある態様による半導体装置検査プログラムは、コンピュータを、半導体ウェハーに形成された半導体装置の複数のチップの特性データを、n(nは、2以上の整数とする。)個の設定条件のうちの第m(mは、1〜nの整数とする。)の設定条件に基づいて測定することによって、第mの測定値を得る測定手段、前記測定手段によって得られた前記第mの測定値に基づいて良否を判定し、その判定結果および前記第mの測定値が書き込まれた第mの結果ファイルを前記半導体装置の外部に設けられた記憶部に保存する判定手段、前記測定手段によって前記第mの測定値を得る処理と、前記判定手段によって前記第mの測定値に基づいて良否を判定し、前記第mの結果ファイルを前記記憶部に保存する処理とを、n個の全ての設定条件が終了するまで繰り返す再測定判定手段と、前記記憶部に保存されている前記第1〜第nの結果ファイルから前記第1〜第nの測定値をそれぞれ読み出し、当該第1〜第nの測定値に基づいて良否を判定するための判定計算を行う判定計算手段、前記判定計算手段によって計算された計算結果に基づいて良否を判定し、その判定結果が書き込まれた最終結果ファイルを生成し、当該最終結果ファイルを前記記憶部に保存する最終判定手段として機能させるためのプログラムである。
【0022】
上記の半導体装置検査プログラムによれば、当該プログラムをコンピュータで実行することにより、上記の第1の半導体装置検査方法と同じような作用が得ることができる。これにより、各種テストの測定結果データを一時的に保存しておくためのEEPROMなどのデバイスを用いることなく、半導体装置の検査を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の半導体装置検査方法および半導体装置検査プログラムによれば、各種テストの測定結果データを保存するために、半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどのデバイスを用いることなく、半導体装置の検査を行うことができる。各種テストの測定結果データは、半導体装置の外部に設けられた記憶部に保存しておけば、半導体装置の良否を判定するとき等、測定結果データを必要なときに読み出すことができる。
また、半導体装置の内部に設けられたEEPROM等のデバイスを用いることがないため、製造時の効率を高めるとともに、コストを抑えることができる。同時に、EEPROMをテストするためのリテンションベークなどの処理を行う必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態に係る半導体装置検査システム10の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る半導体装置検査プログラム20を用いた検査処理の流れを示す模式図である。
【図3】レシピファイルRに書き込まれている複数の判定計算式や、その計算結果に対する上限値および下限値等を説明するための図である。
【図4】出力電圧VTPAT(V)および比較電圧VREF(V)の各温度特性と、高温検査時温度TP1、低温検査時温度TP2およびTSD機能動作温度TP3とを示すグラフである。
【図5A】半導体装置検査システム10による検査処理の流れを示すフローチャートである。
【図5B】半導体装置検査システム10による検査処理の流れを示すフローチャートである。
【図5C】半導体装置検査システム10による検査処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】出力電圧VTPAT(V)および比較電圧VREF(V)の各温度特性と、高温検査時温度TP1、低温検査時温度TP2、常温検査時温度TP2´およびTSD機能動作温度TP3とを示すグラフである。
【図7A】従来技術における半導体装置の検査処理の流れ説明するフローチャートである。
【図7B】従来技術における半導体装置の検査処理の流れ説明するフローチャートである。
【図8】従来技術における従来技術における半導体装置の検査処理の概念を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、添付した図面を参照しながら、本発明の半導体装置検査方法および半導体装置検査プログラムの好適な実施の形態を詳細に説明にする。
(本実施形態に係る半導体装置検査システム10の構成)
まず、図1を参照して、本実施形態に係る半導体装置検査システム10の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体装置検査システム10の構成を示すブロック図である。図1に示す半導体装置検査システム10は、入力部11と、測定部12と、記憶部13と、制御部14と、出力部15とを備えて構成される。
入力部11は、半導体装置検査システム10を操作するエンジニアからの測定の指示を制御部14に与える。また、制御部14は、その指示に従って、測定部12に測定の命令を与える。
【0026】
測定部12は、半導体装置(集積回路)が形成されたウェハーWに対してウェハーソートを実施し、各種テストの測定結果を得る。
記憶部13は、半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどではなく、半導体装置の外部に設けられている。この記憶部13には、後述する測定値データ等を書き込むための結果ファイルA〜Cを記憶される。つまり、測定値データ等は、半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどに保存されるのではなく、半導体装置の外部に設けられた記憶部13に保存される。また、記憶部13には、これに加えて、トリガーファイルTやレシピファイルR、インクドファイルIが記憶される。なお、これらのファイル内に書き込まれるデータ等については、この後の説明する処理の流れの中で説明する。
【0027】
制御部14は、半導体装置検査プログラム20がインストールされている。この半導体装置検査プログラム20は、半導体装置検査システム10の各部を統括して制御する。そして、半導体装置検査プログラム20は、測定部12からの測定値を取り込み、それぞれのチップが良品であるか、または不良品であるかを判定する処理としてPASS/FAIL判定処理を行うとともに、その測定値データやPASS/FAIL判定処理の判定結果データを結果ファイルA〜Cに格納する。
【0028】
また、制御部14は、記憶部13から結果ファイルA,Bから測定値データを読み出し、後述する半導体装置検査プログラム20によって、その測定値データを用いて所定の判定計算を行い、最終PASS/FAIL判定処理を行う。そして、制御部14は、測定値データやPASS/FAIL判定処理の判定結果データを、結果ファイル(最終結果ファイル)Cに格納する。
出力部15は、測定値データやPASS/FAIL判定処理の判定結果データを出力し、例えば次の工程へ出力したり、表示画面を用いて表示したりする。
【0029】
(半導体装置検査プログラム20を用いた検査処理の流れ)
続いて、図2および図3は、本実施形態に係る半導体装置検査プログラム20を用いた検査処理の流れを説明する。
図2は、本実施形態に係る半導体装置検査プログラム20を用いた検査処理の流れを示す模式図である。図2に示すように、半導体装置検査プログラム20は、第2の設定条件によるウェハーソートが終了すると、トリガーファイルTに書き込まれている各ウェハーソートに対する処理内容を読み込む。その後、半導体装置検査プログラム20は、レシピファイルRから、この後具体的に説明する判定計算式(チップが良品か、不良品かを判定するためのPASS/FAIL判定処理で用いる計算式)や、その計算結果に対する上限値および下限値(チップが良品である判定することのできる範囲のリミット値)などを読み込み、結果ファイルA,Bからそれぞれの結果の値を読み込み、後述するようなPASS/FAIL判定処理を行うために必要な判定計算を行う。
【0030】
また、図3は、レシピファイルRに書き込まれている複数の判定計算式や、その計算結果に対する上限値および下限値等を説明するための図である。図3に示すように、レシピファイルRには、複数の判定計算式や、その計算結果に対する複数の上限値および下限値などを書き込んでおくことができる。
そして、半導体装置検査プログラム20は、図3に示したように、レシピファイルRに書き込まれている複数組の判定計算式や、その計算結果に対する上限値および下限値等から、検査内容に合わせて、任意の計算式や上限値および下限値を読み出すことができる。また、レシピファイルRから一度に読み出すことのできる計算式や上限値および下限値は1組に限らず、必要に応じて複数組の計算式や上限値および下限値を読み出すこともできる。
【0031】
そして、半導体装置検査プログラム20は、その計算結果と上限値および下限値を比較することによって、PASS/FAIL判定を行い、その測定値データとPASS/FAIL判定処理の判定結果データを書き込んだ結果ファイルCを生成する。
この半導体装置検査プログラム20は、常に常駐しているプログラムであり、第2の設定条件によるウェハーソートが終了した時にトリガーファイルTが生成されたことを確認すると、第1および第2の測定結果データを読み込むとともに、判定計算式や上限値および下限値とする値を指示したレシピファイルRを読み込む。そして、半導体装置検査プログラム20は、PASS/FAIL判定処理を行うために必要な判定計算を行って、測定結果を生成する。
【0032】
(半導体装置検査プログラム20によるPASS/FAIL判定処理)
続いて、図4は、本実施形態に係る半導体装置検査プログラム20によるPASS/FAIL判定処理の一判定例を説明する。
図4は、出力電圧VTPAT(V)および比較電圧VREF(V)の各温度特性と、高温検査時温度TP1、低温検査時温度TP2およびTSD機能動作温度TP3とを示すグラフである。
デバイスの保護機能として、デバイスの温度が予め決められた温度になったら、制御部から各部に命令を出力して、システムをシャットダウンするTSD機能がある。一般的に、このTSD機能を有するデバイスをテストする場合には、通常のウェハーソートでは、温度は一定のまま実施されるため、ウェハーソート中に温度を変更することが難しい。そのため、温度を変えつつデータを測定して、サーマルシャットダウンが起こる温度を測定するということができない。
【0033】
また、実際にサーマルシャットダウンが起こる温度は、ウェハーソートで実現することができる温度よりも高い場合も有る。従って、図4に示すように、例えば、特性値が温度に対してリニアに変化する(特性値が温度に対して一定の特性で変化する)点に着目すれば、2点の測定値を基にして所望の値を求めることができる。
ここでいうTSD機能とは、具体的に言うと、検査時、温度特性を持つ出力電圧VTPAT(V)が、基準となる電圧である比較電圧VREF(V)を超えた時に、過熱保護を行うものである。
【0034】
図4に示すように、任意の温度である高温検査時温度TP1(例えば、105℃とする。)での検査における比較電圧VREF(V)の測定値をVR1とし、温度特性を持つ出力電圧VPTAT(V)の測定値をVP1とする。また、高温検査時温度TP1よりも低温である低温検査時温度TP2(例えば、−40℃とする。)での検査における比較電圧VREF(V)の測定値をVR2とし、出力電圧VPTAT(V)の測定値をVP2とする。なお、図4に示すように、比較電圧VREF(V)は一定である。このため、比較電圧VREF(V)の測定値VR1と比較電圧VREF(V)の測定値VR2との関係は、VR1=VR2である。
【0035】
出力電圧VTPAT(V)の温度特性と比較電圧VREF(V)の温度特性とがいずれも直線である場合には、それら2つの直線の交点Xで表されるTSD機能動作温度TP3が、TSD機能の命令を出力する温度である。上述したように、VR1=VR2であるため、このTSD機能動作温度TP3の値を、
TP3=((TP1−TP2)×VR1−TP2×VP1−TP1×VP2)/(VP1−VP2) ……式(1)
のように表すことができる。
【0036】
本実施形態の説明においては、図4のグラフからわかるように、上記の式(1)で表されたTSD機能動作温度TP3は、130℃である。但し、TSD機能動作温度TP3は、TSD機能動作温度として要求される仕様上の130℃を中心温度して、その中心温度の±20℃の範囲に入れば良い。つまり、TSD機能動作温度TP3の下限値TP3L(℃)は110℃になり、TSD機能動作温度TP3の上限値TP3H(℃)は150℃になる。従って、チップが良品であると判定するためのTSD機能動作温度TP3の範囲を、
110≦TP3≦150 ……式(2)
のように表すことができる。
【0037】
TSD機能動作温度TP3が、上記の式(2)で表された範囲内に有る場合には、チップが良品であると判定とすることができる。一方で、TSD機能動作温度TP3が、その範囲内に無い場合には、チップが不良品であると判定とすることができる。
なお、図3に示したように、制御部14の半導体装置検査プログラム20は、レシピファイルRに書き込まれている複数の判定計算式や、その計算結果に対する上限値および下限値等の中から、検査内容に合わせて、任意の計算式や上限値および下限値を読み出すことができる。このため、上記の式(1)で表すことのできる計算式や、式(2)で表すことのできる計算結果に対する上限値および下限値等については、これらに限定されない。
【0038】
また、必要に応じて複数組の計算式や上限値および下限値を読み出すこともできる。これにより、複数の計算式や、その計算結果に対する上限値および下限値を用いて、チップが良品であるか、不良品であるかを判定することもできる。
また、上記の式(1)で示した判定計算式については、図4を参照してわかるように、出力電圧VTPAT(V)の温度特性と比較電圧VREF(V)の温度特性に勾配を有している。しかしながら、判定計算式は、温度特性に勾配を有しているものに限定されない。判定計算式は、各設定条件における各測定値を基にして所望の値を求めることで、PASS/FAIL判定処理を行えるものであれば良い。
【0039】
(半導体装置検査システム10による検査処理の流れ)
続いて、図5A〜図5Cを参照して、半導体装置検査システム10による検査処理の流れを説明する。
図5A〜図5Cは、半導体装置検査システム10による検査処理の流れを示すフローチャートである。
まず、図5Aに示すように、はじめに、入力部11から制御部14に対して、検査を開始するための指示が与えられる。
すると、測定部12が、第1の設定条件(高温検査時温度TP1=105℃)にてウェハーソートを実施して、半導体装置の複数のチップの特性データを測定する。これにより、測定部12は、各種テストの測定結果を得る。なお、特性データを測定するチップについては、全部のチップであっても良いし、予め事前に決めておいた検査が不要なチップを除いた検査が必要なチップだけであっても良い。
【0040】
具体的に、測定部12は、この第1の設定条件での検査における比較電圧VREFの測定値VR1と、温度特性を持つ出力電圧VPTATの測定値VP1を得る(ステップS101)。なお、ここで得られた測定結果データを、第1の測定結果データとする。この第1の測定結果データとは、あるウェハー上のチップに対するテスト実施結果の測定データではなく、複数のウェハー上のチップに対する複数個のテスト実施結果の測定値データ郡である。なお、ここでは、比較電圧VREFの測定値VR1と、温度特性を持つ出力電圧VPTATの測定値VP1とを第1の測定結果データのパラメータとしているが、これらのパラメータは第1の測定結果データのパラメータの一例である。このため、パラメータは、測定値VR1,VP1に限らず、この他のパラメータであっても良い。
【0041】
背景技術で説明した従来の半導体装置検査方法においては、この段階で、第1の測定データをEEPROM等のデバイスに保存していたが、本実施形態における半導体装置検査方法においては、測定データをEEPROM等のデバイスに保存しない。
制御部14は、この各測定値VR1,VP1を、予め定めてあった上限値および下限値と比較して、それぞれのチップの第1のPASS/FAIL判定処理を行う(ステップS102)。各測定値VR1,VP1が、上限値および下限値の範囲内に有る場合には、第1のPASS/FAIL判定処理の上ではチップを良品として判定とすることができる。一方で、各測定値VR1,VP1が、その範囲内に無い場合には、第1のPASS/FAIL判定処理の上ではチップを不良品として判定とすることができる。
【0042】
制御部14は、その測定値データと第1のPASS/FAIL判定処理の判定結果データを格納した結果ファイルAを生成し、その結果ファイルAを記憶部13に保存する(ステップS103)。上述したように、記憶部13は、半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどではなく、半導体装置の外部に設けられている。従って、結果ファイルAは、半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどに保存されることがない。
【0043】
続いて、測定部12が、第2の設定条件(低温検査時温度TP2=−40℃)にてウェハーソートを実施して、半導体装置の複数のチップの特性データを測定する。これにより、測定部12は、各種テストの測定結果データを得る。具体的に、測定部12は、この第2の設定条件での検査における比較電圧VREFの測定値VR2と、温度特性を持つ出力電圧VPTATの測定値VP2を得る(ステップS104)。なお、ここで得られた測定結果データを、第2の測定結果データとする。この第2の測定結果データについても、第1の測定結果データと同様に、複数のウェハー上のチップに対する複数個のテスト実施結果の測定値データ郡である。なお、ここでは、比較電圧VREFの測定値VR2と、温度特性を持つ出力電圧VPTATの測定値VP2とを第2の測定結果データのパラメータとしているが、これらのパラメータは第2の測定結果データのパラメータの一例である。このため、パラメータは、測定値VR2,VP2に限らず、この他のパラメータであっても良い。
【0044】
また、第2の設定条件にてウェハー(チップ)W2のウェハーソートを実施する際に、第1の設定条件にてウェハーソートを実施した全てのウェハー(チップ)W1を検査対象とするケースも有るが、通常では検査自体の効率を高めるため、第1の設定条件にてウェハーソートを実施したウェハーW1のうち、不良品と判定されたウェハーについては検査対象としない。つまり、ウェハーW2は、第1の設定条件にてウェハーソートを実施して、良品と判定されたものである。
【0045】
制御部14は、この各測定値VR2,VP2を、予め定めておいたその上限値および下限値と比較して、それぞれのチップの第2のPASS/FAIL判定処理を行う(ステップS105)。各測定値VR2,VP2が、上限値および下限値の範囲内に有る場合には、第2のPASS/FAIL判定処理の上ではチップを良品として判定とすることができる。一方で、各測定値VR2,VP2が、その範囲内に無い場合には、第2のPASS/FAIL判定処理の上ではチップを不良品として判定とすることができる。
【0046】
制御部14は、その測定値データとPASS/FAIL判定処理の判定結果データを格納した結果ファイルBを生成して、その結果ファイルBを記憶部13に保存する(ステップS106)。結果ファイルBについても、結果ファイルAと同様に、半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどに保存されることがない。
そして、第1の設定条件によるウェハーソートの検査と、第2の設定条件によるウェハーソートの検査との両方の検査が終了すると、制御部14は、データがそれぞれ格納された旨を知らせるトリガーファイルTを生成される(ステップS107)。例えば、結果ファイルBに第2の測定結果データ等を書き込む処理が完了した時に、トリガーファイルTを生成すれば良い。
【0047】
続いて、結果ファイルA,Bに書き込まれている測定結果データを用いた計算による最終PASS/FAIL判定処理を開始する。
背景技術で説明した従来の半導体装置検査方法においては、第2のPASS/FAIL判定処理の段階で、EEPROM等のデバイスに保存しておいて第1の測定データと第2の測定データとからチップの第2のPASS/FAIL判定処理が終了し、全ての処理が終了していた。しかしながら、本実施形態における半導体装置検査方法においては、第1の測定データをEEPROM等のデバイスに保存しておかず、第2の設定条件にてウェハーソートを実施する時に、第1の測定データを用いてチップの第2のPASS/FAIL判定処理を行わない。その代わりに、この最終PASS/FAIL判定処理において、第1の測定データと第2の測定データとからチップの第2のPASS/FAIL判定処理を行う。この処理が、制御部14にて動作する半導体装置検査プログラム20の主要な機能である。
【0048】
図5Bに示すように、まず、半導体装置検査プログラム20が、トリガーファイルTの存在を確認して、トリガーファイルTに書き込まれている各ウェハーソートに対する処理内容を読み込む(ステップS108)。第2のPASS/FAIL判定処理が終わった段階でトリガーファイルTを生成しておけば、最終PASS/FAIL判定処理を行う際に、各ウェハーソートに対して、具体的にどのように処理を行えば良いかを指定しておくことができる。
【0049】
また、記憶部13には、予めレシピファイルRを保存しておく。このレシピファイルRには、上記の式(1)で示されたこのTSD機能動作温度TP3の値は、第1の測定結果データおよび第2の測定結果データを用いてTSD機能動作温度TP3を得るための上記の式(1)の判定計算式を書き込んでおく必要が有る。さらに、レシピファイルRには、その計算結果、つまりTSD機能動作温度TP3の上限値TP3H(℃)として150℃と、TSD機能動作温度TP3の下限値TP3L(℃)として110℃とを予め書き込んでおく。
【0050】
制御部14は、記憶部13に保存されているレシピファイルRから、上記の式(1)の判定計算式と、その計算結果に対する上限値TP3H(℃)および下限値TP3L(℃)などを読み出す(ステップS109)。
続いて、図5Cに示すように、制御部14は、半導体装置の外部に設けられている記憶部13に保存されている結果ファイルAから、第1の測定結果データを読み出す(ステップS110)。制御部14は、第1の測定結果データのパラメータの一つとして、例えば、第1の設定条件での検査における比較電圧VREFの測定値VR1と、温度特性を持つ出力電圧VPTATの測定値VP1とを読み出す。上述した通り、第1の測定結果データのパラメータは、測定値VR1,VP1に限らず、この他のパラメータであっても良い。
【0051】
さらに、制御部14は、記憶部13に保存されている結果ファイルBから、第2の測定結果データを読み出す(ステップS111)。制御部14は、第2の測定結果データのパラメータの一つとして、例えば、第2の設定条件での検査における比較電圧VREFの測定値VR2と、温度特性を持つ出力電圧VPTATの測定値VP2とを読み出す。上述した通り、第1の測定結果データのパラメータについても、測定値VR2,VP2に限らず、この他のパラメータであっても良い。
【0052】
そして、制御部14は、ステップS110,S111で読み出した各測定値を用いて、レシピファイルRに書き込まれている判定計算式による判定計算を行う(ステップS112)。ここでは、具体的な判定計算式として、上記(1)の判定計算式を用いて判定計算を行うものとして説明する。勿論、判定計算式は、上述した式(1)に限定されるものではなく、上記で説明したように、レシピファイルRに書き込まれている複数の判定計算式の中の任意の判定計算式を用いることができる。
【0053】
そして、制御部14は、判定計算を行った後、その計算結果(TSD機能動作温度TP3=130℃)とTSD機能動作温度TP3の下限値TP3L(110℃)とを比較するとともに、計算結果(TSD機能動作温度TP3)とTSD機能動作温度TP3の上限値TP3H(150℃)とを比較することによって、PASS/FAIL判定処理を行う(ステップS113)。
【0054】
TSD機能動作温度TP3が、上記の式(2)で表された範囲内に有る場合には、チップを良品として判定とすることができる。一方で、TSD機能動作温度TP3が、その範囲内に無い場合には、チップを不良品として判定とすることができる。その測定値データと最終PASS/FAIL判定処理の判定結果データを格納した結果ファイルCを生成し、その結果ファイルCを記憶部13に保存する(ステップS114)。この結果ファイルCについても、結果ファイルA,Bと同様に、半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどに保存されることがない。
【0055】
最後に、図5Cに示すように、インクドマップIを作成する。
まず、半導体装置検査プログラム20は、記憶部13に保存されている結果ファイルCからデータを読み出す(ステップS115)。そして、半導体装置検査プログラム20は、最終PASS/FAIL判定処理の判定結果データからインクドマップIを作成し(ステップS116)、その作成したインクドマップIを記憶部13に保存する(ステップS117)。
【0056】
上記で説明したように、本実施形態に係る半導体装置検査方法においては、上記の各設定条件によるウェハーソート、判定計算による判定、およびインクドマップの作成を、一連の検査処理の流れの中で実現できるようになっている。このため、本実施形態に係る半導体装置検査方法においては、ウェハーを管理・製造するエンジニアが検査を開始する初期段階で一度設定を行っておけば良い。そして、半導体装置検査方法に用いる半導体装置検査プログラムが、通常のテスタのみによるウェハーソートと実質同じ要領で、ウェハーソートの一連の検査処理の全ての自動的に行うようになっている。
【0057】
(変形例)
なお、本実施形態では、例えば、第1の設定条件として高温検査時温度TP1を105℃とし、第2の設定条件として低温検査時温度TP2を−40℃として説明したが、説明中の各設定や測定値については、説明上の一例に過ぎない。これらの各値は、例えばウェハーの検査内容等に応じて異なるものである。
また、本実施形態において、温度の設定条件は、高温検査時温度TP1と低温検査時温度TP2との2つであったが、これに限定されない。その一例として、温度の設定条件に常温(室温)検査時温度を追加して、温度の設定条件を3つにしても良い。
【0058】
図6は、出力電圧VTPAT(V)および比較電圧VREF(V)の各温度特性と、高温検査時温度TP1、低温検査時温度TP2、常温検査時温度TP2´およびTSD機能動作温度TP3とを示すグラフである。
図6に示すように、常温検査時温度TP2´(例えば、検査室の室温の25℃とする。)での検査における比較電圧VREF(V)の測定値をVR2´とし、温度特性を持つ出力電圧VPTAT(V)の測定値をVP2´とする。このとき、半導体装置検査プログラム20の変形例に係る半導体装置検査プログラムによるPASS/FAIL判定処理の流れは、温度の設定条件が2つであった場合と変わらない。但し、温度の設定条件に常温検査時温度TP2´が追加されている。このため、上記の式(1)で示した判定計算式とは別の判定計算式や上下限値等を用いて、同様に半導体装置検査プログラム20によるPASS/FAIL判定処理を行う。
【0059】
また、上記で説明した判定計算式についても一例である。上記で既に説明したが、上記の式(1)で示した判定計算式については、図4や図6を参照してわかるように、出力電圧VTPAT(V)の温度特性に勾配を有する場合の判定式であった。しかしながら、判定計算式は、温度特性に勾配を有しているものに限定されず、各設定条件における各測定値を基にして所望の値を求めることで、PASS/FAIL判定処理を行えるものであれば良い。また、上述した通り、レシピファイルRに書き込まむことのできる判定計算式や、その計算結果に対する上限値および下限値等の数、検査内容に合わせて読み出される任意の計算式や上限値および下限値の数にあっても1組に限定されず、複数組でも良い。
さらには、本実施形態の説明では、異なる測定条件が異なる設定温度であったが、温度以外のものを測定条件としたり、温度以外のものが測定条件に含まれていたりしても良い。
【0060】
(実施形態に係る検査システム10のまとめ)
本実施形態に係る半導体装置検査方法においては、ウェハーソートの検査工程において、異なる条件を設定して、互いの検査結果を用いることなく複数の独立した検査情報を得る。そして、それらの検査情報を、半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどに保存しておくのではなく、半導体装置の外部に設けられた記憶部に保存しておく。その後で、ウェハーソートの検査工程において、異なる条件を設定して実施した複数の独立した検査情報から特定の検査値を抽出し、予め定めておいた判定計算式で計算した値とその値を良否判定するために定められた上限値または下限値と比較することにより良否判定を行う。
【0061】
これにより、例えば従来では難しかった温度係数を持つパラメータを評価対象にしたい場合に、低温検査時の設定温度とそのテストで得られた値に、高温検査時の設定温度とそのテストで得られた値とを関連付けて計算して、それを良品と不良品とを選別する際の新たなパラメータとして使用することができる。このため、本実施形態に係る半導体装置検査方法においては、各種テストの測定結果データを一時的に保存しておくために、半導体装置の外部に設けられたEEPROMなどのデバイスを用いずに、半導体装置の検査を行うことができる。
また、インクドマップIを作成する際にも、低温検査時の設定温度とそのテストで得られた値に、高温検査時の設定温度とそのテストで得られた値とを関連付けて計算して、それを良品と不良品とを選別する際の新たなパラメータとして使用して作成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の半導体装置検査方法は、半導体装置検査システム等にインストールされた半導体装置検査プログラムを実行することによって、半導体装置の検査する際の各種データを保存するためのデバイスを用いずに半導体装置の検査を行うことのできる半導体装置検査方法として、各種の半導体装置の検査を行う際に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
10……半導体装置検査システム
11……入力部
12……測定部
13……記憶部
14……制御部
15……出力部
20……半導体装置検査プログラム
A〜C……結果ファイル
T……トリガーファイル
R……レシピファイル
I……インクドマップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置検査方法および半導体装置検査プログラムに関し、特にウェハーソートで半導体集積回路の良否を検査する半導体装置検査方法および半導体装置検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な電子機器に搭載される半導体集積回路であるが、その製造過程のウェハーソートといわれる工程で、ウェハー上のチップが良品であるか、不良品であるかを検査する必要が有る。このような検査工程における半導体装置検査方法として、例えば下記の特許文献1のような各種テストの測定結果データを一時的に保存しておくことのできる不揮発性メモリー(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory;EEPROM)などのデバイスを使用する方法が有る。
【0003】
図7Aおよび図7Bは、従来技術における半導体装置の検査処理の流れ説明するフローチャートである。
従来技術では、まず、図7Aに示すように、第1の設定条件によりウェハーソートを実施する。第1の設定条件による各種テストにて、ウェハーの特性データを測定結果データとして得る(ステップS1001)。ここで得られた測定結果データを、第1の測定結果データとして、デバイス上のEEPROMに保存しておく(ステップS1002)。この段階で、測定結果データと予め定めておいた上限値および下限値と比較して、それぞれのウェハーが良品(PASS)であるか、または不良品(FAIL)であるかを判定する処理として第1のPASS/FAIL判定処理を行う(ステップS1003)。その測定値データおよびPASS/FAIL判定処理の判定結果データが書き込まれた結果ファイルAを生成する(ステップS1004)。
【0004】
続いて、第2の設定条件でウェハーソートを実施する。第1の設定条件によるウェハーソートと同様に、第2の設定条件による各種テストにて、ウェハーの特性データを測定結果データとして得る(ステップS1005)。ここで得られた測定結果データを、第2の測定結果データとする。
ここで、デバイス上のEEPROMに保存されている第1の測定結果データを読み出し(ステップS1006)、第1の測定結果データと第2の測定結果データとを用いて、それぞれのウェハーが良品であるか、または不良品であるかを判定する処理として第2のPASS/FAIL判定処理を行うための判定計算を行う(ステップS1007)。そして、その計算値を予め定めてあった範囲のリミット値(上限値および下限値)と比較して、それぞれのチップが良品であるか、または不良品であるかを判定する処理として第2のPASS/FAIL判定処理を行う(ステップS1008)。その測定値データおよびPASS/FAIL判定処理の判定結果データを格納した結果ファイルBを生成する(ステップS1009)。
【0005】
最後に、図7Bに示すように、インクドマップを作成する。まず、結果ファイルBから第2のPASS/FAIL判定処理の判定結果データを読み出す(ステップS1010)。そして、第2のPASS/FAIL判定処理の判定結果データからインクドマップを作成し(ステップS1011)、作成されたインクドマップIを保存したり、出力したりする(ステップS1012)。
【0006】
従来技術における半導体装置の検査処理においては、最初の第1の設定条件でウェハーソートを実施した時に、半導体装置の内部のEEPROMに必要なデータに保存しておく。そして、第1の設定条件でウェハーソートに続いて、第2の設定条件でウェハーソートを実施する時に、そのEEPROMデータから第1の測定結果データを読み出して、その第1の測定結果データを各種テストの測定に使用していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献1】特開平7−147303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記で説明したようなEEPROMなどのデバイスを使用して半導体装置を検査する方法は、図8に示すように、第1,2の設定条件でウェハーソートを独立して実施するものではなく、第2の設定条件でウェハーソートを実施する際に、第1の設定条件でウェハーソートを実施した時の第1の測定結果データを参酌するものであった。つまり、この半導体装置検査方法は、第1,2の設定条件で独立してウェハーソートを実施したことで得られた結果ファイルAの第1の測定結果データと、結果ファイルBの第2の測定結果データとを活用して、半導体装置の検査を行うものではなかった。このため、第1の測定結果データを一時的に存しておくために、半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどのデバイスを使用する必要が有る。従って、EEPROMなどのデバイスを使用して半導体装置を検査する方法は、当然EEPROMなどを搭載することができないプロセスの場合には用いることができなかった。
【0009】
また、EEPROMなどのデバイスを搭載することができるプロセスの場合であっても、EEPROMを搭載することでマスク枚数が増加する。このため、半導体装置を検査するためだけに、EEPROMを搭載することは非効率であるとともに、コスト的にも問題が有った。
このため、EEPROMなどのデータを保存することのできるデバイスを用いて検査を行うとする場合には、検査以外の目的で予めEEPROMが搭載されている場合に、それを転用するような形でしか検査を実施することができなかった。但し、このようにEEPROMを使用することができた場合であっても、EEPROMをテストするためのリテンションベークなどの処理で書き込んだデータを保持するのが難しい場合が有った。
【0010】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑み、半導体装置の検査する際の各種データを一時的に保存しておくためのデバイスを用いることなく、半導体装置の検査を行うことのできる半導体装置検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による半導体装置検査方法は、上記の目的を達成するために、次のように構成される。
本発明のある態様による第1の半導体装置検査方法は、測定部が、半導体ウェハーに形成された半導体装置の複数のチップの特性データを、n(nは、2以上の整数とする。)個の設定条件のうちの第m(mは、1〜nの整数とする。)の設定条件に基づいて測定することによって、第mの測定値を得る測定ステップ、制御部が、前記測定ステップによって得られた前記第mの測定値に基づいて良否を判定し、その判定結果および前記第mの測定値が書き込まれた第mの結果ファイルを前記半導体装置の外部に設けられた記憶部に保存する判定ステップ、前記測定ステップと前記判定ステップとを、n個の全ての設定条件が終了するまで繰り返す再測定判定ステップと、前記制御部が、前記記憶部に保存されている前記第1〜第nの結果ファイルから前記第1〜第nの測定値をそれぞれ読み出し、当該第1〜第nの測定値に基づいて良否を判定するための判定計算を行う判定計算ステップ、前記制御部が、前記判定計算ステップによって計算された計算結果に基づいて良否を判定し、その判定結果が書き込まれた最終結果ファイルを生成し、当該最終結果ファイルを前記記憶部に保存する最終判定ステップを有することを特徴とする。
【0012】
上記の第1の半導体装置検査方法によれば、測定ステップおよび再測定判定ステップによって、例えば、低温検査と高温検査とで異なる条件を設定して、互いの検査結果を用いることなく半導体装置の複数のチップについて、複数の独立した検査情報を得る。そして、それらの検査情報を、半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどに保存しておくのではなく、半導体装置の外部に設けられた記憶部に保存しておく。その後、判定計算ステップにおいて、異なる条件を設定して実施した複数の独立した検査情報から特定の検査値を抽出し、予め定めておいた判定計算式で計算した値とその値を良否判定するために定められた上限値または下限値と比較する。最後に、最終判定ステップにより、チップの良否判定を行う。
【0013】
これにより、低温検査時の設定温度とそのテストで得られた値と、高温検査時の設定温度とそのテストで得られた値を関連付けて計算して、それをテスト選別の新たなパラメータとして使用することができる。このため、各種テストの測定結果データを一時的に保存しておくための半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどのデバイスを用いることなく、半導体装置の検査を行うことが可能となる。
【0014】
本発明のある態様による第2の半導体装置検査方法は、前記最終判定ステップが行われる時に、前記制御部が、前記判定計算を行うための判定計算式と、前記判定計算式の計算結果に基づいて良否を判定する際の計算結果の上限値および下限値とが複数組書き込まれているレシピファイルから、任意の判定計算式と当該計算結果の上限値および下限値を少なくとも1組読み出すレシピファイル読出ステップを有することを特徴とする。
【0015】
上記の第2の半導体装置検査方法によれば、レシピファイル読出ステップによって、判定計算を行うための判定計算式と、判定計算式の計算結果に基づいて良否を判定する際の計算結果の上限値および下限値とをレシピファイルから読み出す。なお、レシピファイルには、判定計算式と計算結果の上限値および下限値とが複数組書き込まれている。このため、レシピファイル読出ステップによって任意の判定計算式と計算結果の上限値および下限値を、少なくとも1組読み出す。
【0016】
例えば、特性値が温度に対してリニアに変化する(特性値が温度に対して一定の特性で変化する)点に着目すれば、2点の測定値を基にして所望の値を求めることができる。これを応用して、判定計算式によりサーマルシャットダウン(Thermal Shutdown Protection;TSD)機能の機能動作温度を求めることができる。
また、その機能動作温度に対する上限値と下限値とを予め決めておけば、上記の判定計算式により得られた機能動作温度として要求される仕様上の温度を中心温度して、その中心温度の範囲を考慮することが可能となる。
【0017】
本発明のある態様による第3の半導体装置検査方法は、前記再測定判定ステップによって前記第nの測定値が前記第nの結果ファイルに書き込む処理が完了した時に、前記制御部が、ウェハーソートに対する処理内容が書き込まれたトリガーファイルを生成するトリガーファイル生成ステップ、前記判定計算ステップを行う前に、前記制御部が、前記トリガーファイルから前記ウェハーソートに対する処理内容を読み込むトリガーファイル読込ステップを有することを特徴とする。
【0018】
上記の第3の半導体装置検査方法によれば、トリガーファイル生成ステップによってトリガーファイルTを生成しておけば、最終PASS/FAIL判定処理を行う際に、各ウェハーソートに対して、具体的にどのように処理を行えば良いかを指定しておくことが可能となる。
本発明のある態様による第4の半導体装置検査方法は、前記再測定判定ステップによって前記半導体装置の複数のチップの前記特性データが、第mの設定条件に基づいて測定される時に、前記測定部が、前記測定ステップまたは前記再測定判定ステップによって前記特性データが、第(m−1)の設定条件に基づいて測定された半導体装置のチップのうち、前記判定ステップまたは前記再測定判定ステップによって良品と判定された半導体装置のチップの前記特性データを測定することを特徴とする。
【0019】
上記の第4の半導体装置検査方法によれば、例えば、第2の設定条件にてウェハーのウェハーソートを実施する際に、その直前の第1の設定条件にてウェハーソートを実施した全てのウェハー(チップ)を検査対象としない。具体的に、第1の設定条件にてウェハーソートを実施したウェハーのうち、良品と判定されたウェハーのみを検査対象とする。
これにより、第1の設定条件にてウェハーソートを実施した全てのウェハー(チップ)を検査対象とする場合よりも、第1の設定条件にてウェハーソートを実施したウェハーのうち、不良品と判定されたウェハーについては検査対象としない方が、検査自体の効率を高めることが可能となる。
【0020】
本発明のある態様による第5の半導体装置検査方法は、前記再測定判定ステップまでの各ステップが終了した後、前記制御部が、前記最終結果ファイルから判定結果を読み出し、前記半導体ウェハーに対するインクドマップを作成するインクドマップ作成ステップを有することを特徴とする。
上記の第5の半導体装置検査方法によれば、インクドマップ作成ステップによって、インクドマップを作成する際にも、例えば、低温検査時の設定温度とそのテストで得られた値に、高温検査時の設定温度とそのテストで得られた値とを関連付けて計算された、チップの良否を選別する際の新たなパラメータとして使用して作成することが可能となる。
【0021】
本発明のある態様による半導体装置検査プログラムは、コンピュータを、半導体ウェハーに形成された半導体装置の複数のチップの特性データを、n(nは、2以上の整数とする。)個の設定条件のうちの第m(mは、1〜nの整数とする。)の設定条件に基づいて測定することによって、第mの測定値を得る測定手段、前記測定手段によって得られた前記第mの測定値に基づいて良否を判定し、その判定結果および前記第mの測定値が書き込まれた第mの結果ファイルを前記半導体装置の外部に設けられた記憶部に保存する判定手段、前記測定手段によって前記第mの測定値を得る処理と、前記判定手段によって前記第mの測定値に基づいて良否を判定し、前記第mの結果ファイルを前記記憶部に保存する処理とを、n個の全ての設定条件が終了するまで繰り返す再測定判定手段と、前記記憶部に保存されている前記第1〜第nの結果ファイルから前記第1〜第nの測定値をそれぞれ読み出し、当該第1〜第nの測定値に基づいて良否を判定するための判定計算を行う判定計算手段、前記判定計算手段によって計算された計算結果に基づいて良否を判定し、その判定結果が書き込まれた最終結果ファイルを生成し、当該最終結果ファイルを前記記憶部に保存する最終判定手段として機能させるためのプログラムである。
【0022】
上記の半導体装置検査プログラムによれば、当該プログラムをコンピュータで実行することにより、上記の第1の半導体装置検査方法と同じような作用が得ることができる。これにより、各種テストの測定結果データを一時的に保存しておくためのEEPROMなどのデバイスを用いることなく、半導体装置の検査を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の半導体装置検査方法および半導体装置検査プログラムによれば、各種テストの測定結果データを保存するために、半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどのデバイスを用いることなく、半導体装置の検査を行うことができる。各種テストの測定結果データは、半導体装置の外部に設けられた記憶部に保存しておけば、半導体装置の良否を判定するとき等、測定結果データを必要なときに読み出すことができる。
また、半導体装置の内部に設けられたEEPROM等のデバイスを用いることがないため、製造時の効率を高めるとともに、コストを抑えることができる。同時に、EEPROMをテストするためのリテンションベークなどの処理を行う必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態に係る半導体装置検査システム10の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る半導体装置検査プログラム20を用いた検査処理の流れを示す模式図である。
【図3】レシピファイルRに書き込まれている複数の判定計算式や、その計算結果に対する上限値および下限値等を説明するための図である。
【図4】出力電圧VTPAT(V)および比較電圧VREF(V)の各温度特性と、高温検査時温度TP1、低温検査時温度TP2およびTSD機能動作温度TP3とを示すグラフである。
【図5A】半導体装置検査システム10による検査処理の流れを示すフローチャートである。
【図5B】半導体装置検査システム10による検査処理の流れを示すフローチャートである。
【図5C】半導体装置検査システム10による検査処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】出力電圧VTPAT(V)および比較電圧VREF(V)の各温度特性と、高温検査時温度TP1、低温検査時温度TP2、常温検査時温度TP2´およびTSD機能動作温度TP3とを示すグラフである。
【図7A】従来技術における半導体装置の検査処理の流れ説明するフローチャートである。
【図7B】従来技術における半導体装置の検査処理の流れ説明するフローチャートである。
【図8】従来技術における従来技術における半導体装置の検査処理の概念を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、添付した図面を参照しながら、本発明の半導体装置検査方法および半導体装置検査プログラムの好適な実施の形態を詳細に説明にする。
(本実施形態に係る半導体装置検査システム10の構成)
まず、図1を参照して、本実施形態に係る半導体装置検査システム10の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体装置検査システム10の構成を示すブロック図である。図1に示す半導体装置検査システム10は、入力部11と、測定部12と、記憶部13と、制御部14と、出力部15とを備えて構成される。
入力部11は、半導体装置検査システム10を操作するエンジニアからの測定の指示を制御部14に与える。また、制御部14は、その指示に従って、測定部12に測定の命令を与える。
【0026】
測定部12は、半導体装置(集積回路)が形成されたウェハーWに対してウェハーソートを実施し、各種テストの測定結果を得る。
記憶部13は、半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどではなく、半導体装置の外部に設けられている。この記憶部13には、後述する測定値データ等を書き込むための結果ファイルA〜Cを記憶される。つまり、測定値データ等は、半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどに保存されるのではなく、半導体装置の外部に設けられた記憶部13に保存される。また、記憶部13には、これに加えて、トリガーファイルTやレシピファイルR、インクドファイルIが記憶される。なお、これらのファイル内に書き込まれるデータ等については、この後の説明する処理の流れの中で説明する。
【0027】
制御部14は、半導体装置検査プログラム20がインストールされている。この半導体装置検査プログラム20は、半導体装置検査システム10の各部を統括して制御する。そして、半導体装置検査プログラム20は、測定部12からの測定値を取り込み、それぞれのチップが良品であるか、または不良品であるかを判定する処理としてPASS/FAIL判定処理を行うとともに、その測定値データやPASS/FAIL判定処理の判定結果データを結果ファイルA〜Cに格納する。
【0028】
また、制御部14は、記憶部13から結果ファイルA,Bから測定値データを読み出し、後述する半導体装置検査プログラム20によって、その測定値データを用いて所定の判定計算を行い、最終PASS/FAIL判定処理を行う。そして、制御部14は、測定値データやPASS/FAIL判定処理の判定結果データを、結果ファイル(最終結果ファイル)Cに格納する。
出力部15は、測定値データやPASS/FAIL判定処理の判定結果データを出力し、例えば次の工程へ出力したり、表示画面を用いて表示したりする。
【0029】
(半導体装置検査プログラム20を用いた検査処理の流れ)
続いて、図2および図3は、本実施形態に係る半導体装置検査プログラム20を用いた検査処理の流れを説明する。
図2は、本実施形態に係る半導体装置検査プログラム20を用いた検査処理の流れを示す模式図である。図2に示すように、半導体装置検査プログラム20は、第2の設定条件によるウェハーソートが終了すると、トリガーファイルTに書き込まれている各ウェハーソートに対する処理内容を読み込む。その後、半導体装置検査プログラム20は、レシピファイルRから、この後具体的に説明する判定計算式(チップが良品か、不良品かを判定するためのPASS/FAIL判定処理で用いる計算式)や、その計算結果に対する上限値および下限値(チップが良品である判定することのできる範囲のリミット値)などを読み込み、結果ファイルA,Bからそれぞれの結果の値を読み込み、後述するようなPASS/FAIL判定処理を行うために必要な判定計算を行う。
【0030】
また、図3は、レシピファイルRに書き込まれている複数の判定計算式や、その計算結果に対する上限値および下限値等を説明するための図である。図3に示すように、レシピファイルRには、複数の判定計算式や、その計算結果に対する複数の上限値および下限値などを書き込んでおくことができる。
そして、半導体装置検査プログラム20は、図3に示したように、レシピファイルRに書き込まれている複数組の判定計算式や、その計算結果に対する上限値および下限値等から、検査内容に合わせて、任意の計算式や上限値および下限値を読み出すことができる。また、レシピファイルRから一度に読み出すことのできる計算式や上限値および下限値は1組に限らず、必要に応じて複数組の計算式や上限値および下限値を読み出すこともできる。
【0031】
そして、半導体装置検査プログラム20は、その計算結果と上限値および下限値を比較することによって、PASS/FAIL判定を行い、その測定値データとPASS/FAIL判定処理の判定結果データを書き込んだ結果ファイルCを生成する。
この半導体装置検査プログラム20は、常に常駐しているプログラムであり、第2の設定条件によるウェハーソートが終了した時にトリガーファイルTが生成されたことを確認すると、第1および第2の測定結果データを読み込むとともに、判定計算式や上限値および下限値とする値を指示したレシピファイルRを読み込む。そして、半導体装置検査プログラム20は、PASS/FAIL判定処理を行うために必要な判定計算を行って、測定結果を生成する。
【0032】
(半導体装置検査プログラム20によるPASS/FAIL判定処理)
続いて、図4は、本実施形態に係る半導体装置検査プログラム20によるPASS/FAIL判定処理の一判定例を説明する。
図4は、出力電圧VTPAT(V)および比較電圧VREF(V)の各温度特性と、高温検査時温度TP1、低温検査時温度TP2およびTSD機能動作温度TP3とを示すグラフである。
デバイスの保護機能として、デバイスの温度が予め決められた温度になったら、制御部から各部に命令を出力して、システムをシャットダウンするTSD機能がある。一般的に、このTSD機能を有するデバイスをテストする場合には、通常のウェハーソートでは、温度は一定のまま実施されるため、ウェハーソート中に温度を変更することが難しい。そのため、温度を変えつつデータを測定して、サーマルシャットダウンが起こる温度を測定するということができない。
【0033】
また、実際にサーマルシャットダウンが起こる温度は、ウェハーソートで実現することができる温度よりも高い場合も有る。従って、図4に示すように、例えば、特性値が温度に対してリニアに変化する(特性値が温度に対して一定の特性で変化する)点に着目すれば、2点の測定値を基にして所望の値を求めることができる。
ここでいうTSD機能とは、具体的に言うと、検査時、温度特性を持つ出力電圧VTPAT(V)が、基準となる電圧である比較電圧VREF(V)を超えた時に、過熱保護を行うものである。
【0034】
図4に示すように、任意の温度である高温検査時温度TP1(例えば、105℃とする。)での検査における比較電圧VREF(V)の測定値をVR1とし、温度特性を持つ出力電圧VPTAT(V)の測定値をVP1とする。また、高温検査時温度TP1よりも低温である低温検査時温度TP2(例えば、−40℃とする。)での検査における比較電圧VREF(V)の測定値をVR2とし、出力電圧VPTAT(V)の測定値をVP2とする。なお、図4に示すように、比較電圧VREF(V)は一定である。このため、比較電圧VREF(V)の測定値VR1と比較電圧VREF(V)の測定値VR2との関係は、VR1=VR2である。
【0035】
出力電圧VTPAT(V)の温度特性と比較電圧VREF(V)の温度特性とがいずれも直線である場合には、それら2つの直線の交点Xで表されるTSD機能動作温度TP3が、TSD機能の命令を出力する温度である。上述したように、VR1=VR2であるため、このTSD機能動作温度TP3の値を、
TP3=((TP1−TP2)×VR1−TP2×VP1−TP1×VP2)/(VP1−VP2) ……式(1)
のように表すことができる。
【0036】
本実施形態の説明においては、図4のグラフからわかるように、上記の式(1)で表されたTSD機能動作温度TP3は、130℃である。但し、TSD機能動作温度TP3は、TSD機能動作温度として要求される仕様上の130℃を中心温度して、その中心温度の±20℃の範囲に入れば良い。つまり、TSD機能動作温度TP3の下限値TP3L(℃)は110℃になり、TSD機能動作温度TP3の上限値TP3H(℃)は150℃になる。従って、チップが良品であると判定するためのTSD機能動作温度TP3の範囲を、
110≦TP3≦150 ……式(2)
のように表すことができる。
【0037】
TSD機能動作温度TP3が、上記の式(2)で表された範囲内に有る場合には、チップが良品であると判定とすることができる。一方で、TSD機能動作温度TP3が、その範囲内に無い場合には、チップが不良品であると判定とすることができる。
なお、図3に示したように、制御部14の半導体装置検査プログラム20は、レシピファイルRに書き込まれている複数の判定計算式や、その計算結果に対する上限値および下限値等の中から、検査内容に合わせて、任意の計算式や上限値および下限値を読み出すことができる。このため、上記の式(1)で表すことのできる計算式や、式(2)で表すことのできる計算結果に対する上限値および下限値等については、これらに限定されない。
【0038】
また、必要に応じて複数組の計算式や上限値および下限値を読み出すこともできる。これにより、複数の計算式や、その計算結果に対する上限値および下限値を用いて、チップが良品であるか、不良品であるかを判定することもできる。
また、上記の式(1)で示した判定計算式については、図4を参照してわかるように、出力電圧VTPAT(V)の温度特性と比較電圧VREF(V)の温度特性に勾配を有している。しかしながら、判定計算式は、温度特性に勾配を有しているものに限定されない。判定計算式は、各設定条件における各測定値を基にして所望の値を求めることで、PASS/FAIL判定処理を行えるものであれば良い。
【0039】
(半導体装置検査システム10による検査処理の流れ)
続いて、図5A〜図5Cを参照して、半導体装置検査システム10による検査処理の流れを説明する。
図5A〜図5Cは、半導体装置検査システム10による検査処理の流れを示すフローチャートである。
まず、図5Aに示すように、はじめに、入力部11から制御部14に対して、検査を開始するための指示が与えられる。
すると、測定部12が、第1の設定条件(高温検査時温度TP1=105℃)にてウェハーソートを実施して、半導体装置の複数のチップの特性データを測定する。これにより、測定部12は、各種テストの測定結果を得る。なお、特性データを測定するチップについては、全部のチップであっても良いし、予め事前に決めておいた検査が不要なチップを除いた検査が必要なチップだけであっても良い。
【0040】
具体的に、測定部12は、この第1の設定条件での検査における比較電圧VREFの測定値VR1と、温度特性を持つ出力電圧VPTATの測定値VP1を得る(ステップS101)。なお、ここで得られた測定結果データを、第1の測定結果データとする。この第1の測定結果データとは、あるウェハー上のチップに対するテスト実施結果の測定データではなく、複数のウェハー上のチップに対する複数個のテスト実施結果の測定値データ郡である。なお、ここでは、比較電圧VREFの測定値VR1と、温度特性を持つ出力電圧VPTATの測定値VP1とを第1の測定結果データのパラメータとしているが、これらのパラメータは第1の測定結果データのパラメータの一例である。このため、パラメータは、測定値VR1,VP1に限らず、この他のパラメータであっても良い。
【0041】
背景技術で説明した従来の半導体装置検査方法においては、この段階で、第1の測定データをEEPROM等のデバイスに保存していたが、本実施形態における半導体装置検査方法においては、測定データをEEPROM等のデバイスに保存しない。
制御部14は、この各測定値VR1,VP1を、予め定めてあった上限値および下限値と比較して、それぞれのチップの第1のPASS/FAIL判定処理を行う(ステップS102)。各測定値VR1,VP1が、上限値および下限値の範囲内に有る場合には、第1のPASS/FAIL判定処理の上ではチップを良品として判定とすることができる。一方で、各測定値VR1,VP1が、その範囲内に無い場合には、第1のPASS/FAIL判定処理の上ではチップを不良品として判定とすることができる。
【0042】
制御部14は、その測定値データと第1のPASS/FAIL判定処理の判定結果データを格納した結果ファイルAを生成し、その結果ファイルAを記憶部13に保存する(ステップS103)。上述したように、記憶部13は、半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどではなく、半導体装置の外部に設けられている。従って、結果ファイルAは、半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどに保存されることがない。
【0043】
続いて、測定部12が、第2の設定条件(低温検査時温度TP2=−40℃)にてウェハーソートを実施して、半導体装置の複数のチップの特性データを測定する。これにより、測定部12は、各種テストの測定結果データを得る。具体的に、測定部12は、この第2の設定条件での検査における比較電圧VREFの測定値VR2と、温度特性を持つ出力電圧VPTATの測定値VP2を得る(ステップS104)。なお、ここで得られた測定結果データを、第2の測定結果データとする。この第2の測定結果データについても、第1の測定結果データと同様に、複数のウェハー上のチップに対する複数個のテスト実施結果の測定値データ郡である。なお、ここでは、比較電圧VREFの測定値VR2と、温度特性を持つ出力電圧VPTATの測定値VP2とを第2の測定結果データのパラメータとしているが、これらのパラメータは第2の測定結果データのパラメータの一例である。このため、パラメータは、測定値VR2,VP2に限らず、この他のパラメータであっても良い。
【0044】
また、第2の設定条件にてウェハー(チップ)W2のウェハーソートを実施する際に、第1の設定条件にてウェハーソートを実施した全てのウェハー(チップ)W1を検査対象とするケースも有るが、通常では検査自体の効率を高めるため、第1の設定条件にてウェハーソートを実施したウェハーW1のうち、不良品と判定されたウェハーについては検査対象としない。つまり、ウェハーW2は、第1の設定条件にてウェハーソートを実施して、良品と判定されたものである。
【0045】
制御部14は、この各測定値VR2,VP2を、予め定めておいたその上限値および下限値と比較して、それぞれのチップの第2のPASS/FAIL判定処理を行う(ステップS105)。各測定値VR2,VP2が、上限値および下限値の範囲内に有る場合には、第2のPASS/FAIL判定処理の上ではチップを良品として判定とすることができる。一方で、各測定値VR2,VP2が、その範囲内に無い場合には、第2のPASS/FAIL判定処理の上ではチップを不良品として判定とすることができる。
【0046】
制御部14は、その測定値データとPASS/FAIL判定処理の判定結果データを格納した結果ファイルBを生成して、その結果ファイルBを記憶部13に保存する(ステップS106)。結果ファイルBについても、結果ファイルAと同様に、半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどに保存されることがない。
そして、第1の設定条件によるウェハーソートの検査と、第2の設定条件によるウェハーソートの検査との両方の検査が終了すると、制御部14は、データがそれぞれ格納された旨を知らせるトリガーファイルTを生成される(ステップS107)。例えば、結果ファイルBに第2の測定結果データ等を書き込む処理が完了した時に、トリガーファイルTを生成すれば良い。
【0047】
続いて、結果ファイルA,Bに書き込まれている測定結果データを用いた計算による最終PASS/FAIL判定処理を開始する。
背景技術で説明した従来の半導体装置検査方法においては、第2のPASS/FAIL判定処理の段階で、EEPROM等のデバイスに保存しておいて第1の測定データと第2の測定データとからチップの第2のPASS/FAIL判定処理が終了し、全ての処理が終了していた。しかしながら、本実施形態における半導体装置検査方法においては、第1の測定データをEEPROM等のデバイスに保存しておかず、第2の設定条件にてウェハーソートを実施する時に、第1の測定データを用いてチップの第2のPASS/FAIL判定処理を行わない。その代わりに、この最終PASS/FAIL判定処理において、第1の測定データと第2の測定データとからチップの第2のPASS/FAIL判定処理を行う。この処理が、制御部14にて動作する半導体装置検査プログラム20の主要な機能である。
【0048】
図5Bに示すように、まず、半導体装置検査プログラム20が、トリガーファイルTの存在を確認して、トリガーファイルTに書き込まれている各ウェハーソートに対する処理内容を読み込む(ステップS108)。第2のPASS/FAIL判定処理が終わった段階でトリガーファイルTを生成しておけば、最終PASS/FAIL判定処理を行う際に、各ウェハーソートに対して、具体的にどのように処理を行えば良いかを指定しておくことができる。
【0049】
また、記憶部13には、予めレシピファイルRを保存しておく。このレシピファイルRには、上記の式(1)で示されたこのTSD機能動作温度TP3の値は、第1の測定結果データおよび第2の測定結果データを用いてTSD機能動作温度TP3を得るための上記の式(1)の判定計算式を書き込んでおく必要が有る。さらに、レシピファイルRには、その計算結果、つまりTSD機能動作温度TP3の上限値TP3H(℃)として150℃と、TSD機能動作温度TP3の下限値TP3L(℃)として110℃とを予め書き込んでおく。
【0050】
制御部14は、記憶部13に保存されているレシピファイルRから、上記の式(1)の判定計算式と、その計算結果に対する上限値TP3H(℃)および下限値TP3L(℃)などを読み出す(ステップS109)。
続いて、図5Cに示すように、制御部14は、半導体装置の外部に設けられている記憶部13に保存されている結果ファイルAから、第1の測定結果データを読み出す(ステップS110)。制御部14は、第1の測定結果データのパラメータの一つとして、例えば、第1の設定条件での検査における比較電圧VREFの測定値VR1と、温度特性を持つ出力電圧VPTATの測定値VP1とを読み出す。上述した通り、第1の測定結果データのパラメータは、測定値VR1,VP1に限らず、この他のパラメータであっても良い。
【0051】
さらに、制御部14は、記憶部13に保存されている結果ファイルBから、第2の測定結果データを読み出す(ステップS111)。制御部14は、第2の測定結果データのパラメータの一つとして、例えば、第2の設定条件での検査における比較電圧VREFの測定値VR2と、温度特性を持つ出力電圧VPTATの測定値VP2とを読み出す。上述した通り、第1の測定結果データのパラメータについても、測定値VR2,VP2に限らず、この他のパラメータであっても良い。
【0052】
そして、制御部14は、ステップS110,S111で読み出した各測定値を用いて、レシピファイルRに書き込まれている判定計算式による判定計算を行う(ステップS112)。ここでは、具体的な判定計算式として、上記(1)の判定計算式を用いて判定計算を行うものとして説明する。勿論、判定計算式は、上述した式(1)に限定されるものではなく、上記で説明したように、レシピファイルRに書き込まれている複数の判定計算式の中の任意の判定計算式を用いることができる。
【0053】
そして、制御部14は、判定計算を行った後、その計算結果(TSD機能動作温度TP3=130℃)とTSD機能動作温度TP3の下限値TP3L(110℃)とを比較するとともに、計算結果(TSD機能動作温度TP3)とTSD機能動作温度TP3の上限値TP3H(150℃)とを比較することによって、PASS/FAIL判定処理を行う(ステップS113)。
【0054】
TSD機能動作温度TP3が、上記の式(2)で表された範囲内に有る場合には、チップを良品として判定とすることができる。一方で、TSD機能動作温度TP3が、その範囲内に無い場合には、チップを不良品として判定とすることができる。その測定値データと最終PASS/FAIL判定処理の判定結果データを格納した結果ファイルCを生成し、その結果ファイルCを記憶部13に保存する(ステップS114)。この結果ファイルCについても、結果ファイルA,Bと同様に、半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどに保存されることがない。
【0055】
最後に、図5Cに示すように、インクドマップIを作成する。
まず、半導体装置検査プログラム20は、記憶部13に保存されている結果ファイルCからデータを読み出す(ステップS115)。そして、半導体装置検査プログラム20は、最終PASS/FAIL判定処理の判定結果データからインクドマップIを作成し(ステップS116)、その作成したインクドマップIを記憶部13に保存する(ステップS117)。
【0056】
上記で説明したように、本実施形態に係る半導体装置検査方法においては、上記の各設定条件によるウェハーソート、判定計算による判定、およびインクドマップの作成を、一連の検査処理の流れの中で実現できるようになっている。このため、本実施形態に係る半導体装置検査方法においては、ウェハーを管理・製造するエンジニアが検査を開始する初期段階で一度設定を行っておけば良い。そして、半導体装置検査方法に用いる半導体装置検査プログラムが、通常のテスタのみによるウェハーソートと実質同じ要領で、ウェハーソートの一連の検査処理の全ての自動的に行うようになっている。
【0057】
(変形例)
なお、本実施形態では、例えば、第1の設定条件として高温検査時温度TP1を105℃とし、第2の設定条件として低温検査時温度TP2を−40℃として説明したが、説明中の各設定や測定値については、説明上の一例に過ぎない。これらの各値は、例えばウェハーの検査内容等に応じて異なるものである。
また、本実施形態において、温度の設定条件は、高温検査時温度TP1と低温検査時温度TP2との2つであったが、これに限定されない。その一例として、温度の設定条件に常温(室温)検査時温度を追加して、温度の設定条件を3つにしても良い。
【0058】
図6は、出力電圧VTPAT(V)および比較電圧VREF(V)の各温度特性と、高温検査時温度TP1、低温検査時温度TP2、常温検査時温度TP2´およびTSD機能動作温度TP3とを示すグラフである。
図6に示すように、常温検査時温度TP2´(例えば、検査室の室温の25℃とする。)での検査における比較電圧VREF(V)の測定値をVR2´とし、温度特性を持つ出力電圧VPTAT(V)の測定値をVP2´とする。このとき、半導体装置検査プログラム20の変形例に係る半導体装置検査プログラムによるPASS/FAIL判定処理の流れは、温度の設定条件が2つであった場合と変わらない。但し、温度の設定条件に常温検査時温度TP2´が追加されている。このため、上記の式(1)で示した判定計算式とは別の判定計算式や上下限値等を用いて、同様に半導体装置検査プログラム20によるPASS/FAIL判定処理を行う。
【0059】
また、上記で説明した判定計算式についても一例である。上記で既に説明したが、上記の式(1)で示した判定計算式については、図4や図6を参照してわかるように、出力電圧VTPAT(V)の温度特性に勾配を有する場合の判定式であった。しかしながら、判定計算式は、温度特性に勾配を有しているものに限定されず、各設定条件における各測定値を基にして所望の値を求めることで、PASS/FAIL判定処理を行えるものであれば良い。また、上述した通り、レシピファイルRに書き込まむことのできる判定計算式や、その計算結果に対する上限値および下限値等の数、検査内容に合わせて読み出される任意の計算式や上限値および下限値の数にあっても1組に限定されず、複数組でも良い。
さらには、本実施形態の説明では、異なる測定条件が異なる設定温度であったが、温度以外のものを測定条件としたり、温度以外のものが測定条件に含まれていたりしても良い。
【0060】
(実施形態に係る検査システム10のまとめ)
本実施形態に係る半導体装置検査方法においては、ウェハーソートの検査工程において、異なる条件を設定して、互いの検査結果を用いることなく複数の独立した検査情報を得る。そして、それらの検査情報を、半導体装置の内部に設けられたEEPROMなどに保存しておくのではなく、半導体装置の外部に設けられた記憶部に保存しておく。その後で、ウェハーソートの検査工程において、異なる条件を設定して実施した複数の独立した検査情報から特定の検査値を抽出し、予め定めておいた判定計算式で計算した値とその値を良否判定するために定められた上限値または下限値と比較することにより良否判定を行う。
【0061】
これにより、例えば従来では難しかった温度係数を持つパラメータを評価対象にしたい場合に、低温検査時の設定温度とそのテストで得られた値に、高温検査時の設定温度とそのテストで得られた値とを関連付けて計算して、それを良品と不良品とを選別する際の新たなパラメータとして使用することができる。このため、本実施形態に係る半導体装置検査方法においては、各種テストの測定結果データを一時的に保存しておくために、半導体装置の外部に設けられたEEPROMなどのデバイスを用いずに、半導体装置の検査を行うことができる。
また、インクドマップIを作成する際にも、低温検査時の設定温度とそのテストで得られた値に、高温検査時の設定温度とそのテストで得られた値とを関連付けて計算して、それを良品と不良品とを選別する際の新たなパラメータとして使用して作成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の半導体装置検査方法は、半導体装置検査システム等にインストールされた半導体装置検査プログラムを実行することによって、半導体装置の検査する際の各種データを保存するためのデバイスを用いずに半導体装置の検査を行うことのできる半導体装置検査方法として、各種の半導体装置の検査を行う際に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
10……半導体装置検査システム
11……入力部
12……測定部
13……記憶部
14……制御部
15……出力部
20……半導体装置検査プログラム
A〜C……結果ファイル
T……トリガーファイル
R……レシピファイル
I……インクドマップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定部が、半導体ウェハーに形成された半導体装置の複数のチップの特性データを、n(nは、2以上の整数とする。)個の設定条件のうちの第m(mは、1〜nの整数とする。)の設定条件に基づいて測定することによって、第mの測定値を得る測定ステップ、
制御部が、前記測定ステップによって得られた前記第mの測定値に基づいて良否を判定し、その判定結果および前記第mの測定値が書き込まれた第mの結果ファイルを前記半導体装置の外部に設けられた記憶部に保存する判定ステップ、
前記測定ステップと前記判定ステップとを、n個の全ての設定条件が終了するまで繰り返す再測定判定ステップと、
前記制御部が、前記記憶部に保存されている前記第1〜第nの結果ファイルから前記第1〜第nの測定値をそれぞれ読み出し、当該第1〜第nの測定値に基づいて良否を判定するための判定計算を行う判定計算ステップ、
前記制御部が、前記判定計算ステップによって計算された計算結果に基づいて良否を判定し、その判定結果が書き込まれた最終結果ファイルを生成し、当該最終結果ファイルを前記記憶部に保存する最終判定ステップ
を有することを特徴とする半導体装置検査方法。
【請求項2】
前記最終判定ステップが行われる時に、
前記制御部が、前記判定計算を行うための判定計算式と、前記判定計算式の計算結果に基づいて良否を判定する際の計算結果の上限値および下限値とが複数組書き込まれているレシピファイルから、任意の判定計算式と当該計算結果の上限値および下限値を少なくとも1組読み出すレシピファイル読出ステップを有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置検査方法。
【請求項3】
前記再測定判定ステップによって前記第nの測定値が前記第nの結果ファイルに書き込む処理が完了した時に、
前記制御部が、ウェハーソートに対する処理内容が書き込まれたトリガーファイルを生成するトリガーファイル生成ステップ、
前記判定計算ステップを行う前に、
前記制御部が、前記トリガーファイルから前記ウェハーソートに対する処理内容を読み込むトリガーファイル読込ステップ
を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置検査方法。
【請求項4】
前記再測定判定ステップによって前記半導体装置の複数のチップの前記特性データが、第mの設定条件に基づいて測定される時に、
前記測定部が、前記測定ステップまたは前記再測定判定ステップによって前記特性データが、第(m−1)の設定条件に基づいて測定された半導体装置のチップのうち、前記判定ステップまたは前記再測定判定ステップによって良品と判定された半導体装置のチップの前記特性データを測定することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置検査方法。
【請求項5】
前記再測定判定ステップまでの各ステップが終了した後、
前記制御部が、前記最終結果ファイルから判定結果を読み出し、前記半導体ウェハーに対するインクドマップを作成するインクドマップ作成ステップを有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置検査方法。
【請求項6】
コンピュータを、
半導体ウェハーに形成された半導体装置の複数のチップの特性データを、n(nは、2以上の整数とする。)個の設定条件のうちの第m(mは、1〜nの整数とする。)の設定条件に基づいて測定することによって、第mの測定値を得る測定手段、
前記測定手段によって得られた前記第mの測定値に基づいて良否を判定し、その判定結果および前記第mの測定値が書き込まれた第mの結果ファイルを前記半導体装置の外部に設けられた記憶部に保存する判定手段、
前記測定手段によって前記第mの測定値を得る処理と、前記判定手段によって前記第mの測定値に基づいて良否を判定し、前記第mの結果ファイルを前記記憶部に保存する処理とを、n個の全ての設定条件が終了するまで繰り返す再測定判定手段と、
前記記憶部に保存されている前記第1〜第nの結果ファイルから前記第1〜第nの測定値をそれぞれ読み出し、当該第1〜第nの測定値に基づいて良否を判定するための判定計算を行う判定計算手段、
前記判定計算手段によって計算された計算結果に基づいて良否を判定し、その判定結果が書き込まれた最終結果ファイルを生成し、当該最終結果ファイルを前記記憶部に保存する最終判定手段
として機能させるための半導体装置検査プログラム。
【請求項1】
測定部が、半導体ウェハーに形成された半導体装置の複数のチップの特性データを、n(nは、2以上の整数とする。)個の設定条件のうちの第m(mは、1〜nの整数とする。)の設定条件に基づいて測定することによって、第mの測定値を得る測定ステップ、
制御部が、前記測定ステップによって得られた前記第mの測定値に基づいて良否を判定し、その判定結果および前記第mの測定値が書き込まれた第mの結果ファイルを前記半導体装置の外部に設けられた記憶部に保存する判定ステップ、
前記測定ステップと前記判定ステップとを、n個の全ての設定条件が終了するまで繰り返す再測定判定ステップと、
前記制御部が、前記記憶部に保存されている前記第1〜第nの結果ファイルから前記第1〜第nの測定値をそれぞれ読み出し、当該第1〜第nの測定値に基づいて良否を判定するための判定計算を行う判定計算ステップ、
前記制御部が、前記判定計算ステップによって計算された計算結果に基づいて良否を判定し、その判定結果が書き込まれた最終結果ファイルを生成し、当該最終結果ファイルを前記記憶部に保存する最終判定ステップ
を有することを特徴とする半導体装置検査方法。
【請求項2】
前記最終判定ステップが行われる時に、
前記制御部が、前記判定計算を行うための判定計算式と、前記判定計算式の計算結果に基づいて良否を判定する際の計算結果の上限値および下限値とが複数組書き込まれているレシピファイルから、任意の判定計算式と当該計算結果の上限値および下限値を少なくとも1組読み出すレシピファイル読出ステップを有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置検査方法。
【請求項3】
前記再測定判定ステップによって前記第nの測定値が前記第nの結果ファイルに書き込む処理が完了した時に、
前記制御部が、ウェハーソートに対する処理内容が書き込まれたトリガーファイルを生成するトリガーファイル生成ステップ、
前記判定計算ステップを行う前に、
前記制御部が、前記トリガーファイルから前記ウェハーソートに対する処理内容を読み込むトリガーファイル読込ステップ
を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置検査方法。
【請求項4】
前記再測定判定ステップによって前記半導体装置の複数のチップの前記特性データが、第mの設定条件に基づいて測定される時に、
前記測定部が、前記測定ステップまたは前記再測定判定ステップによって前記特性データが、第(m−1)の設定条件に基づいて測定された半導体装置のチップのうち、前記判定ステップまたは前記再測定判定ステップによって良品と判定された半導体装置のチップの前記特性データを測定することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置検査方法。
【請求項5】
前記再測定判定ステップまでの各ステップが終了した後、
前記制御部が、前記最終結果ファイルから判定結果を読み出し、前記半導体ウェハーに対するインクドマップを作成するインクドマップ作成ステップを有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置検査方法。
【請求項6】
コンピュータを、
半導体ウェハーに形成された半導体装置の複数のチップの特性データを、n(nは、2以上の整数とする。)個の設定条件のうちの第m(mは、1〜nの整数とする。)の設定条件に基づいて測定することによって、第mの測定値を得る測定手段、
前記測定手段によって得られた前記第mの測定値に基づいて良否を判定し、その判定結果および前記第mの測定値が書き込まれた第mの結果ファイルを前記半導体装置の外部に設けられた記憶部に保存する判定手段、
前記測定手段によって前記第mの測定値を得る処理と、前記判定手段によって前記第mの測定値に基づいて良否を判定し、前記第mの結果ファイルを前記記憶部に保存する処理とを、n個の全ての設定条件が終了するまで繰り返す再測定判定手段と、
前記記憶部に保存されている前記第1〜第nの結果ファイルから前記第1〜第nの測定値をそれぞれ読み出し、当該第1〜第nの測定値に基づいて良否を判定するための判定計算を行う判定計算手段、
前記判定計算手段によって計算された計算結果に基づいて良否を判定し、その判定結果が書き込まれた最終結果ファイルを生成し、当該最終結果ファイルを前記記憶部に保存する最終判定手段
として機能させるための半導体装置検査プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【公開番号】特開2013−89856(P2013−89856A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230749(P2011−230749)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】
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