説明

半導体装置用フィルムの製造方法

【課題】 ダイボンドフィルムがダイシングフィルムの中心にある半導体装置用フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】 ダイシングフィルムとダイボンドフィルムと保護フィルムとがこの順で積層された半導体装置用フィルムの製造方法であって、波長400〜800nmの光線を照射し、得られる光線透過率に基づいてダイボンドフィルムの位置を検出する工程と、検出したダイボンドフィルムの位置に基づいて、ダイシングフィルムを打ち抜く工程とを具備し、ダイシングフィルムと保護フィルムとの積層部分の光線透過率をT1とし、ダイシングフィルムとダイボンドフィルムと保護フィルムとの積層部分の光線透過率をT2としたとき、T2/T1が0.04以上である半導体装置用フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置用フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハは、予め大面積で作られた後、チップ状にダイシング(切断分離)され、エキスパンド工程に移される。ダイシングフィルムは、このダイシングに際して、半導体ウェハを固定するために用いられる。
【0003】
ダイシングフィルムに固定された半導体ウェハは、チップ状にダイシングされ、各チップ同士を分離するためにエキスパンドリング上で面方向に一様にエキスパンドされた後、ピックアップされる。
【0004】
また、従来、ダイシング工程で半導体ウェハを接着保持するとともに、マウント工程に必要なチップ固着用のダイボンドフィルムをも付与するダイシングフィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上述したようなダイボンドフィルム付きのダイシングフィルムは、例えば、(1)ダイボンドフィルムを作製して、貼り付ける半導体ウェハの形状に合わせて打ち抜き、(2)ダイシングフィルムに所定の間隔をおいて打ち抜いたダイボンドフィルムを積層し、(3)さらに、ダイボンドフィルム側を貼り合わせ面として保護フィルムに貼り付け、(4)ダイボンドフィルムが中心となるように、ダイシングフィルムを打ち抜き、保護フィルムを剥離することにより得られる。また、例えば、(1)ダイボンドフィルムを作製して、貼りつける半導体ウェハの形状に合わせて打ち抜き、(2)ダイシングフィルムに所定の間隔をおいて打ち抜いたダイボンドフィルムを積層し、(3)ダイボンドフィルムが中心となるように、ダイシングフィルムを打ち抜きくことにより得られる。ダイボンドフィルムが中心となるように、ダイシングフィルムを打ち抜く理由としては、通常、ダイシングリングは、ダイシングフィルムの周縁部に貼り付けて使用されており、ダイボンドフィルムにダイシングリングが接触すると、ダイシングリングが汚染されることとなるからである。また、ダイボンドフィルムがダイシングリングフィルムの中心にない場合、ウェハマウント工程において、ウェハとダイボンドフィルムとが位置ずれした状態で貼り合わせられることになるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−57642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の製造方法では、ダイボンドフィルムが中心となるように、正確にダイボンドフィルムを打ち抜くことができない場合があり、ダイボンドフィルム付きのダイシングフィルムの製造の歩留りを低下させる原因となっているといった問題があった。
【0008】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、ダイボンドフィルムがダイシングフィルムの中心にある半導体装置用フィルムの製造方法、及び、当該半導体装置用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、半導体装置用フィルムの製造方法、及び、半導体装置用フィルムについて検討した。その結果、下記の構成を採用することにより、ダイボンドフィルムがダイシングフィルムの中心にある半導体装置用フィルムの製造方法、及び、当該半導体装置用フィルムを提供することが可能であることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る半導体装置用フィルム製造方法は、ダイシングフィルムとダイボンドフィルムと保護フィルムとがこの順で積層された半導体装置用フィルムの製造方法であって、ダイシングフィルムを作製する工程と、ダイボンドフィルムを作製する工程と、前記ダイボンドフィルムを、貼り付ける半導体ウェハの形状に合わせて打ち抜く工程と、前記ダイシングフィルムに複数の前記ダイボンドフィルムを所定の間隔をおいて貼り付け、さらに、ダイボンドフィルム側を貼り合わせ面として保護フィルムを貼り付ける工程と、波長400〜800nmの光線を照射し、得られる光線透過率に基づいてダイボンドフィルムの位置を検出する工程と、検出したダイボンドフィルムの位置に基づいて、前記ダイシングフィルムを打ち抜く工程とを具備し、前記ダイシングフィルムと前記保護フィルムとの積層部分の波長400〜800nmにおける光線透過率をT1とし、前記ダイシングフィルムと前記ダイボンドフィルムと前記保護フィルムとの積層部分の波長400〜800nmにおける光線透過率をT2としたとき、下記式(A)にて示されるTが4以上であることを特徴とする。
T=100−((T2/T1)×100)・・・・・・式(A)
【0011】
前記構成によれば、ダイシングフィルムを作製する工程と、ダイボンドフィルムを作製する工程と、前記ダイボンドフィルムを、貼り付ける半導体ウェハの形状に合わせて打ち抜く工程と、前記ダイシングフィルムに複数の前記ダイボンドフィルムを所定の間隔をおいて貼り付け、さらに、ダイボンドフィルム側を貼り合わせ面として保護フィルムを貼り付ける工程とにより、1つの連続したダイシングフィルムと1つの連続した保護フィルムとの間に、複数のダイボンドフィルムが所定の間隔をおいて貼り付けられた状態となる。
次に、波長400〜800nmの光線を照射し、得られる光線透過率に基づいてダイボンドフィルムの位置が検出される。具体的には、光線透過率が一定以上変化したとき、例えば、光線透過率が、光線透過率T1から光線透過率T2に変化して、前記式(A)にて示されるTが4以上となったとき、その箇所がダイボンドフィルムの一端であると検出される。そして、検出したダイボンドフィルムの位置に基づいて、ダイシングフィルムが打ち抜かれる。このダイシングフィルムの打ち抜き工程は、ダイボンドフィルムの位置に基づいて行われるため、ダイボンドフィルムを、打ち抜かれる各ダイシングフィルムの中心に位置させることができる。
このように、前記構成によれば、ダイボンドフィルムがダイシングフィルムの中心にある半導体装置用フィルムを製造することができる。
【0012】
前記構成において、前記光線透過率T1は、2〜80%であることが好ましい。
【0013】
前記構成において、前記光線透過率T2は、0.1〜70%であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る半導体装置用フィルムを示す断面模式図であり、(b)は、その平面図である。
【図2】図1(a)及び図1(b)に示した半導体装置用フィルムの一部を示す断面模式図である。
【図3】(a)、(b)は、図1に示した半導体装置用フィルムの製造方法を説明するための断面模式図である。
【図4】図1に示した半導体装置用フィルムを用いて製造された半導体装置の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(半導体装置用フィルム)
本発明の一実施形態に係る半導体装置用フィルムについて、以下に説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態に係る半導体装置用フィルムを示す断面模式図であり、図1(b)は、その平面図である。図2は、図1(a)及び図1(b)に示した半導体装置用フィルムの一部を示す断面模式図である。
【0016】
図1(a)、図1(b)に示すように、半導体装置用フィルム10は、長尺の保護フィルム14上に平面視円形状のダイシングフィルム11が積層された構成を有する。ダイシングフィルム11は基材1上に粘着剤層2を積層して構成されており、粘着剤層2にはダイシングフィルム11よりも径の小さいダイボンドフィルム3が積層されている。ダイシングフィルム11は、粘着剤層2及びダイボンドフィルム3と対向させるように保護フィルム14に積層されている。
【0017】
ダイシングフィルム11と保護フィルム14との積層部分の波長400〜800nmにおける光線透過率をT1とし、ダイシングフィルム11とダイボンドフィルム3と保護フィルム14との積層部分の波長400〜800nmにおける光線透過率をT2としたとき、下記式(A)にて示されるTは、4以上である。前記Tは、10以上がより好ましい。また、前記Tは、大きいほど好ましいが、例えば、50以下、30以下とすることができる。
T=100−((T2/T1)×100)・・・・・・式(A)
【0018】
半導体装置用フィルム10の製造は、後に詳述するが、まず、貼り付ける半導体ウェハの形状に合わせて打ち抜かれた複数のダイボンドフィルム3がダイシングフィルム11に所定の間隔をおいて貼り付けられ、さらに、ダイボンドフィルム3側を貼り合わせ面として保護フィルム14に貼り付けられる。これにより、1つの連続したダイシングフィルム11と1つの連続した保護フィルム14との間に、複数のダイボンドフィルム3が所定の間隔をおいて貼り付けられた状態となる。次に、波長400〜800nmの光線を照射し、得られる光線透過率に基づいてダイボンドフィルム3の位置が検出される。具体的には、光線透過率が一定以上変化したとき、例えば、光線透過率が、光線透過率T1から光線透過率T2に変化して、式(A)にて示されるTが4以上となったとき、その箇所がダイボンドフィルム3の一端であると検出される。そして、検出したダイボンドフィルム3の位置に基づいて、ダイシングフィルム11が打ち抜かれる。このダイシングフィルム11の打ち抜き工程は、ダイボンドフィルム3の位置に基づいて行われるため、ダイボンドフィルム3を、打ち抜かれる各ダイシングフィルム11の中心に位置させることができる。半導体装置用フィルム10は、上記製造方法により製造されるものであり、前記Tが4以上であるため、ダイボンドフィルム3がダイシングフィルム11の中心に位置している。
【0019】
光線透過率T1は、2〜80%であることが好ましく、2〜50%であることがより好ましく、2〜20%であることがさらに好ましく、特に2〜10%であることが好ましい。光線透過率T1が2〜80%であると前記Tを4以上とし易くなる。
【0020】
光線透過率T2は、0.1〜70%であることが好ましく、0.1〜40%であることがより好ましく、0.1〜10%であることがさらに好ましい。光線透過率T2が0.1〜70%であると前記Tを4以上とし易くなる。
【0021】
前記基材1は紫外線透過性を有するものが好ましく、ダイシングフィルム11の強度母体となるものである。例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、金属(箔)、紙等が挙げられる。
【0022】
また基材1の材料としては、前記樹脂の架橋体等のポリマーが挙げられる。前記プラスチックフィルムは、無延伸で用いてもよく、必要に応じて一軸又は二軸の延伸処理を施したものを用いてもよい。延伸処理等により熱収縮性を付与した樹脂シートによれば、ダイシング後にその基材1を熱収縮させることにより粘着剤層2とダイボンドフィルム3との接着面積を低下させて、半導体チップ(半導体素子)の回収の容易化を図ることができる。
また、基材1の表面は、隣接する層との密着性、保持性等を高める為、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、下塗剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理を施すことができる。前記基材1は、同種又は異種のものを適宜に選択して使用することができ、必要に応じて数種をブレンドしたものを用いることができる。
【0023】
基材1の厚さは、20μm以上200μm以下が好ましく、40μm以上180μm以下がより好ましく、60μm以上170μm以下がさらに好ましい。基材1の厚さを20μm以上200μm以下とすることにより、ダイシングフィルムの光線透過率をコントロールすることができる。
【0024】
粘着剤層2の形成に用いる粘着剤としては特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性粘着剤を用いることができる。前記感圧性粘着剤としては、半導体ウェハやガラス等の汚染をきらう電子部品の超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性等の点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0025】
前記アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステル等のアルキル基の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステル等)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル等)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー等が挙げられる。尚、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0026】
前記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性等の改質を目的として、必要に応じ、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。この様なモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の40重量%以下が好ましい。
【0027】
更に、前記アクリル系ポリマーは、架橋させる為、多官能性モノマー等も、必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。この様な多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、全モノマー成分の30重量%以下が好ましい。
【0028】
前記アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。清浄な被着体への汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さいのが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは30万以上、更に好ましくは40万〜300万程度である。
【0029】
また、前記粘着剤には、ベースポリマーであるアクリル系ポリマー等の数平均分子量を高める為、外部架橋剤を適宜に採用することもできる。外部架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤等のいわゆる架橋剤を添加し反応させる方法が挙げられる。外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、更には、粘着剤としての使用用途によって適宜決定される。一般的には、前記ベースポリマー100重量部に対して、5重量部程度以下、更には0.1〜5重量部配合するのが好ましい。更に、粘着剤には、必要により、前記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤等の添加剤を用いてもよい。
【0030】
粘着剤層2は放射線硬化型粘着剤により形成することができる。放射線硬化型粘着剤は、紫外線等の放射線の照射により架橋度を増大させてその粘着力を容易に低下させることができ、図2に示す粘着剤層2のワーク貼り付け部分に対応する部分2aのみを放射線照射することにより他の部分2bとの粘着力の差を設けることができる。
【0031】
また、図2に示すダイボンドフィルム3に合わせて放射線硬化型の粘着剤層2を硬化させることにより、粘着力が著しく低下した前記部分2aを容易に形成できる。硬化し、粘着力の低下した前記部分2aにダイボンドフィルム3が貼付けられる為、粘着剤層2の前記部分2aとダイボンドフィルム3との界面は、ピックアップ時に容易に剥がれる性質を有する。一方、放射線を照射していない部分は十分な粘着力を有しており、前記部分2bを形成する。前記部分2bには、ウェハリングを固定することができる。
【0032】
放射線硬化型粘着剤は、炭素−炭素二重結合等の放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用することができる。放射線硬化型粘着剤としては、例えば、前記アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性粘着剤に、放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の放射線硬化型粘着剤を例示できる。
【0033】
配合する放射線硬化性のモノマー成分としては、例えば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また放射線硬化性のオリゴマー成分はウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等種々のオリゴマーがあげられ、その分子量が100〜30000程度の範囲のものが適当である。放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、前記粘着剤層の種類に応じて、粘着剤層の粘着力を低下できる量を、適宜に決定することができる。一般的には、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば5〜500重量部、好ましくは40〜150重量部程度である。
【0034】
また、放射線硬化型粘着剤としては、前記説明した添加型の放射線硬化型粘着剤のほかに、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型の放射線硬化型粘着剤が挙げられる。内在型の放射線硬化型粘着剤は、低分子成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、又は多くは含まない為、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤在中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができる為好ましい。
【0035】
前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーは、炭素−炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。この様なベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。アクリル系ポリマーの基本骨格としては、前記例示したアクリル系ポリマーが挙げられる。
【0036】
前記アクリル系ポリマーへの炭素−炭素二重結合の導入法は特に制限されず、様々な方法を採用できるが、炭素−炭素二重結合はポリマー側鎖に導入するのが分子設計が容易である。例えば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を、炭素−炭素二重結合の放射線硬化性を維持したまま縮合又は付加反応させる方法が挙げられる。
【0037】
これら官能基の組合せの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基等が挙げられる。これら官能基の組合せのなかでも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好適である。また、これら官能基の組み合わせにより、前記炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組合せであれば、官能基はアクリル系ポリマーと前記化合物のいずれの側にあってもよいが、前記の好ましい組み合わせでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、前記化合物がイソシアネート基を有する場合が好適である。この場合、炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、アクリル系ポリマーとしては、前記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物等を共重合したものが用いられる。
【0038】
前記内在型の放射線硬化型粘着剤は、前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)を単独で使用することができるが、特性を悪化させない程度に前記放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合することもできる。放射線硬化性のオリゴマー成分等は、通常ベースポリマー100重量部に対して30重量部の範囲内であり、好ましくは0〜10重量部の範囲である。
【0039】
前記放射線硬化型粘着剤には、紫外線等により硬化させる場合には光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が挙げられる。光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば0.05〜20重量部程度である。
【0040】
また放射線硬化型粘着剤としては、例えば、特開昭60−196956号公報に開示されている、不飽和結合を2個以上有する付加重合性化合物、エポキシ基を有するアルコキシシラン等の光重合性化合物と、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過酸化物、アミン、オニウム塩系化合物等の光重合開始剤とを含有するゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤等が挙げられる。
【0041】
前記放射線硬化型の粘着剤層2中には、必要に応じて、放射線照射により着色する化合物を含有させることもできる。放射線照射により、着色する化合物を粘着剤層2に含ませることによって、放射線照射された部分のみを着色することができる。即ち、図2に示すワーク貼り付け部分に対応する部分2aを着色することができる。従って、粘着剤層2に放射線が照射されたか否かが目視により直ちに判明することができ、ワーク貼り付け部分を認識し易く、ワークの貼り合せが容易である。また光センサー等によって半導体素子を検出する際に、その検出精度が高まり、半導体素子のピックアップ時に誤動作が生ずることがない。
【0042】
放射線照射により着色する化合物は、放射線照射前には無色又は淡色であるが、放射線照射により有色となる化合物である。かかる化合物の好ましい具体例としてはロイコ染料が挙げられる。ロイコ染料としては、慣用のトリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系のものが好ましく用いられる。具体的には3−[N−(p−トリルアミノ)]−7−アニリノフルオラン、3−[N−(p−トリル)−N−メチルアミノ]−7−アニリノフルオラン、3−[N−(p−トリル)−N−エチルアミノ]−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、クリスタルバイオレットラクトン、4,4’,4”−トリスジメチルアミノトリフエニルメタノール、4,4’,4”−トリスジメチルアミノトリフェニルメタン等が挙げられる。
【0043】
これらロイコ染料とともに好ましく用いられる顕色剤としては、従来から用いられているフェノールホルマリン樹脂の初期重合体、芳香族カルボン酸誘導体、活性白土等の電子受容体があげられ、更に、色調を変化させる場合は種々公知の発色剤を組合せて用いることもできる。
【0044】
この様な放射線照射によって着色する化合物は、一旦有機溶媒等に溶解された後に放射線硬化型接着剤中に含ませてもよく、また微粉末状にして当該粘着剤中に含ませてもよい。この化合物の使用割合は、粘着剤層2中に10重量%以下、好ましくは0.01〜10重量%、更に好ましくは0.5〜5重量%であるのが望ましい。該化合物の割合が10重量%を超えると、粘着剤層2に照射される放射線がこの化合物に吸収されすぎてしまう為、粘着剤層2の前記部分2aの硬化が不十分となり、十分に粘着力が低下しないことがある。一方、充分に着色させるには、該化合物の割合を0.01重量%以上とするのが好ましい。
【0045】
粘着剤層2を放射線硬化型粘着剤により形成する場合には、粘着剤層2に於ける前記部分2aの粘着力<その他の部分2bの粘着力、となるように粘着剤層2の一部を放射線照射してもよい。
【0046】
前記粘着剤層2に前記部分2aを形成する方法としては、支持基材1に放射線硬化型の粘着剤層2を形成した後、前記部分2aに部分的に放射線を照射し硬化させる方法が挙げられる。部分的な放射線照射は、前記部分2a以外に対応するパターンを形成したフォトマスクを介して行うことができる。また、スポット的に紫外線を照射し硬化させる方法等が挙げられる。放射線硬化型の粘着剤層2の形成は、セパレータ上に設けたものを支持基材1上に転写することにより行うことができる。部分的な放射線硬化はセパレータ上に設けた放射線硬化型の粘着剤層2に行うこともできる。
【0047】
また、粘着剤層2を放射線硬化型粘着剤により形成する場合には、支持基材1の少なくとも片面の、前記部分2aに対応する部分以外の部分の全部又は一部が遮光されたものを用い、これに放射線硬化型の粘着剤層2を形成した後に放射線照射して、前記部分2aを硬化させ、粘着力を低下させた前記部分2aを形成することができる。遮光材料としては、支持フィルム上でフォトマスクになりえるものを印刷や蒸着等で作成することができる。かかる製造方法によれば、効率よく半導体装置用フィルム10を製造可能である。
【0048】
尚、放射線照射の際に、酸素による硬化阻害が起こる場合は、放射線硬化型の粘着剤層2の表面よりなんらかの方法で酸素(空気)を遮断するのが望ましい。例えば、前記粘着剤層2の表面をセパレータで被覆する方法や、窒素ガス雰囲気中で紫外線等の放射線の照射を行う方法等が挙げられる。
【0049】
粘着剤層2の厚さは、特に限定されないが、チップ切断面の欠け防止や接着層の固定保持の両立性等の点よりは、1〜50μm程度であるのが好ましい。好ましくは2〜30μm、更には5〜25μmが好ましい。
【0050】
ダイボンドフィルム3の積層構造は、本実施形態のように、接着剤層の単層のみからなるものや、コア材料の片面又は両面に接着剤層を形成した多層構造のもの等が挙げられる。前記コア材料としては、フィルム(例えばポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等)、ガラス繊維やプラスチック製不織繊維で強化された樹脂基板、シリコン基板又はガラス基板等が挙げられる。
【0051】
ダイボンドフィルム3を構成する接着剤組成物としては、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を併用したものが挙げられる。
【0052】
前記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又は熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。特に、半導体素子を腐食させるイオン性不純物等の含有が少ないエポキシ樹脂が好ましい。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂が好ましい。
【0053】
前記エポキシ樹脂は、接着剤組成物として一般に用いられるものであれば特に限定は無く、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型等のエポキシ樹脂が用いられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのエポキシ樹脂のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型樹脂又はテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性等に優れるからである。
【0054】
前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、フェノールビフェニル樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0055】
前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂との配合割合は、例えば、前記エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8〜1.2当量である。即ち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、エポキシ樹脂硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0056】
前記熱可塑性樹脂としては、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はフッ素樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂のうち、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体素子の信頼性を確保できるアクリル樹脂が特に好ましい。
【0057】
前記アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体(アクリル共重合体)等が挙げられる。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、へプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はドデシル基等が挙げられる。
【0058】
また、前記重合体を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等の様なグリシジル基含有モノマー、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸若しくはクロトン酸等の様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸等の様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等の様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等の様なスルホン酸基含有モノマー、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の様な燐酸基含有モノマー、スチレンモノマー、又は、アクリロニトリルが挙げられる。
【0059】
また、ダイボンドフィルム3には、その用途に応じてフィラーを適宜配合することができる。フィラーの配合は、導電性の付与や熱伝導性の向上、弾性率の調節等を可能とする。前記フィラーとしては、無機フィラー、及び、有機フィラーが挙げられるが、取り扱い性の向上、熱電導性の向上、溶融粘度の調整、チキソトロピック性付与等の特性の観点から、無機フィラーが好ましい。前記無機フィラーとしては、特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウィスカ、窒化ほう素、結晶質シリカ、非晶質シリカ等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。熱電導性の向上の観点からは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ほう素、結晶質シリカ、非晶質シリカが好ましい。また、上記各特性のバランスがよいという観点からは、結晶質シリカ、又は、非晶質シリカが好ましい。また、導電性の付与、熱電導性の向上等の目的で、無機フィラーとして、導電性物質(導電フィラー)を用いることとしてもよい。導電フィラーとしては、銀、アルミニウム、金、胴、ニッケル、導電性合金等を球状、針状、フレーク状とした金属粉、アルミナ等の金属酸化物、アモルファスカーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。前記フィラーの平均粒径は、0.1〜80μmとすることができる。なお、フィラーの平均粒径は、例えば、光度式の粒度分布計(HORIBA製、装置名;LA−910)により求めた値である。
【0060】
前記フィラー配合量は、熱可塑性成分の重量をXとし、熱硬化性成分の重量をYとし、フィラーの重量をZとしたとき、Z/(X+Y+Z)が0.05以上0.7以下であることが好ましく、0.05以上0.5以下であることがより好ましく、0.05以上0.3以下であることがさらに好ましい。前記Z/(X+Y+Z)を0.05以上0.7以下とすることにより、ダイボンドフィルムの光線透過率をコントロールすることができる。
【0061】
尚、ダイボンドフィルム3には、前記フィラー以外に、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤としては、例えば難燃剤、シランカップリング剤又はイオントラップ剤等が挙げられる。前記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。前記シランカップリング剤としては、例えば、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。前記イオントラップ剤としては、例えばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0062】
ダイボンドフィルム3の厚さ(積層体の場合は、総厚)は特に限定されないが、例えば、1〜200μmの範囲から選択することができ、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜80μmである。
【0063】
上述したように、ダイシングフィルム11と保護フィルム14との積層部分の波長400〜800nmにおける光線透過率をT1とし、ダイシングフィルム11とダイボンドフィルム3と保護フィルム14との積層部分の波長400〜800nmにおける光線透過率をT2としたとき、上記式(A)にて示されるTは、4以上である。
前記Tを4以上とするためには、ダイボンドフィルム3の光線透過率が0.1〜95%であることが好ましく、0.1〜70%であることがより好ましく、0.1〜50%であることがさらに好ましい。ダイボンドフィルム3の光線透過率は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フィラーの含有量によりコントロールすることができる。
【0064】
保護フィルム14は、実用に供するまでダイボンドフィルム3を保護する保護材としての機能等を有している。また、保護フィルム14は、更に、粘着剤層2にダイボンドフィルム3を転写する際の支持基材として用いることができる。保護フィルム14はダイボンドフィルム3上にワークを貼着する際に剥がされる。保護フィルム14の材質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙等を挙げることができる。
【0065】
次に、本実施の形態に係る半導体装置用フィルム10の製造方法について説明する。図3(a)及び図3(b)は、半導体装置用フィルム10の製造方法を説明するための断面模式図である。先ず、基材1は、従来公知の製膜方法により製膜することができる。当該製膜方法としては、例えばカレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法等が例示できる。
【0066】
次に、基材1上に粘着剤組成物溶液を塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させ(必要に応じて加熱架橋させて)、粘着剤層2を形成する。塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては、例えば乾燥温度80〜150℃、乾燥時間0.5〜5分間の範囲内で行われる。また、セパレータ上に粘着剤組成物を塗布して塗布膜を形成した後、前記乾燥条件で塗布膜を乾燥させて粘着剤層2を形成してもよい。その後、基材1上に粘着剤層2をセパレータと共に貼り合わせる。これにより、ダイシングフィルム11が作製される。
【0067】
ダイボンドフィルム3の作製工程は次の通りにして行われる。即ち、ダイボンドフィルム3を形成するための接着剤組成物溶液を基材セパレータ上に所定厚みとなる様に塗布して塗布膜を形成する。当該接着剤組成物溶液には、前述の通り、前記接着剤組成物やフィラー、その他各種の添加剤等が配合されている。その後、塗布膜を所定条件下で乾燥させ、ダイボンドフィルム3を形成する。塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては塗布膜の厚さや材料等に応じて適宜設定され得る。具体的には、例えば乾燥温度70〜160℃、乾燥時間1〜5分間の範囲内で行われる。
【0068】
次に、ダイボンドフィルム3を、貼り付ける半導体ウェハの形状に合わせて打ち抜き、ダイシングフィルム11に所定の間隔をおいて貼り付け、さらに、ダイボンドフィルム3を貼り合わせ面として保護フィルム14を貼り付ける。これにより、1つの連続したダイシングフィルム11と1つの連続した保護フィルム14との間に、複数のダイボンドフィルム3が所定の間隔をおいて貼り付けられた状態となる。なお、図3(a)では、その一部分を拡大して示している。
【0069】
ダイシングフィルム11とダイボンドフィルム3の貼り合わせは、例えば圧着により行うことができる。このとき、ラミネート温度は特に限定されないが、通常は30〜80℃が好ましく、30〜60℃がより好ましく、30〜50℃が特に好ましい。また、線圧は特に限定されないが、通常は0.1〜20kgf/cmが好ましく、1〜10kgf/cmがより好ましい。
【0070】
また、カバーフィルム14の上記貼り合わせは、圧着により行うことが好ましい。このとき、ラミネート温度は特に限定されないが、通常は20〜80℃が好ましく、20〜60℃がより好ましく、20〜50℃が特に好ましい。また、線圧は特に限定されないが、通常は0.1〜20kgf/cmが好ましく、0.2〜10kgf/cmがより好ましい。
【0071】
尚、前記セパレータとしては特に限定されず、従来公知の離型処理されたフィルムを用いることができる。離型処理されたフィルムを構成する材料としては特に限定されず、従来公知のものを採用することができる。具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。
【0072】
次に、プリカット前の半導体装置用フィルム15は、一定方向(図3(a)では、左方向)に繰り出され、プリカット前の半導体装置用フィルム15にフィルム検出用の光Lが照射される。図3(a)では、光Lは、ダイシングフィルム11と保護フィルム14との積層部分を透過しており、透過した光Lは、図示しないセンサーにより検出され、光線透過率が算出される。このときの光線透過率は光線透過率T1となる。
【0073】
その後、プリカット前の半導体装置用フィルム15はがさらに繰り出されると、図3(b)に示すように、光Lは、ダイシングフィルム11とダイボンドフィルム3と保護フィルム14との積層部分を透過することとなる。透過した光Lは、図示しないセンサーにより検出され、光線透過率が算出される。このときの光線透過率は光線透過率T2となる。
【0074】
フィルム検出用の光は、波長400〜800nmが好ましく、波長450〜750nmであることがより好ましく、波長500〜700nmであることがさらに好ましい。
【0075】
センサーは、光線透過率が一定以上変化したとき、すなわち、光線透過率が光線透過率T1から光線透過率T2へと変化して、前記式(A)にて示されるTが4以上となったとき、その箇所がダイボンドフィルム3の一端であると検出する。これにより、ダイシングフィルム3の位置が検出される。そして、検出したダイシングフィルム3の位置を基に、ダイボンドフィルム3がダイシングフィルム11の中心に位置するように打ち抜かれる。なお、打ち抜かれるダイシングフィルム11の径は、ダイボンドフィルム3の径よりも大きいものとなる。これにより、半導体装置用フィルム10が製造される。
【0076】
(半導体装置の製造方法)
以下では、半導体装置用フィルム10を用いた場合を例にして半導体装置の製造方法について説明する。図4は、図1に示した半導体装置用フィルムに於ける接着剤層を介して半導体チップを実装した例を示す断面模式図である。
【0077】
まず、ダイボンドフィルム3付きのダイシングフィルム11を保護フィルム14から剥離して半導体ウェハ4を圧着する(貼り付け工程)。本工程は、圧着ロール等の押圧手段により押圧しながら行う。マウントの際の貼り付け温度は特に限定されず、例えば20〜80℃の範囲内であることが好ましい。
【0078】
次に、半導体ウェハ4のダイシングを行う。これにより、半導体ウェハ4を所定のサイズに切断して個片化し、半導体チップ5を製造する。ダイシングは、例えば半導体ウェハ4の回路面側から常法に従い行われる。また、本工程では、例えばダイボンドフィルム3まで切込みを行なうフルカットと呼ばれる切断方式等を採用できる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、半導体ウェハ4は、ダイボンドフィルム3付きのダイシングフィルム11により接着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウェハ4の破損も抑制できる。
【0079】
ダイボンドフィルム3付きのダイシングフィルム11に接着固定された半導体チップ5を剥離する為に、半導体チップ5のピックアップを行う。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の半導体チップ5をダイシングフィルム11側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップ5をピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。
【0080】
ここでピックアップは、粘着剤層2が紫外線硬化型である場合、該粘着剤層2に紫外線を照射した後に行う。これにより、粘着剤層2のダイボンドフィルム3に対する粘着力が低下し、半導体チップ5の剥離が容易になる。その結果、半導体チップ5を損傷させることなくピックアップが可能となる。紫外線照射の際の照射強度、照射時間等の条件は特に限定されず、適宜必要に応じて設定すればよい。また、紫外線照射に使用する光源としては、前述のものを使用することができる。
【0081】
ピックアップした半導体チップ5は、ダイボンドフィルム3を介して被着体6に接着固定する(ダイボンド)。被着体6としては、リードフレーム、TABフィルム、基板又は別途作製した半導体チップ等が挙げられる。被着体6は、例えば、容易に変形されるような変形型被着体であってもよく、変形することが困難である非変形型被着体(半導体ウェハ等)であってもよい。
【0082】
前記基板としては、従来公知のものを使用することができる。また、前記リードフレームとしては、Cuリードフレーム、42Alloyリードフレーム等の金属リードフレームやガラスエポキシ、BT(ビスマレイミド−トリアジン)、ポリイミド等からなる有機基板を使用することができる。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、半導体素子をマウントし、半導体素子と電気的に接続して使用可能な回路基板も含まれる。
【0083】
ダイボンドフィルム3が熱硬化型である場合、加熱硬化により、半導体チップ5を被着体6に接着固定し、耐熱強度を向上させる。加熱温度は、80〜200℃、好ましくは100〜175℃、より好ましくは100〜140℃で行うことができる。また、加熱時間は、0.1〜24時間、好ましくは0.1〜3時間、より好ましくは0.2〜1時間で行うことができる。尚、ダイボンドフィルム3を介して半導体チップ5が基板等に接着固定されたものは、リフロー工程に供することができる。
【0084】
熱硬化後のダイボンドフィルム3の剪断接着力は、被着体6に対して0.2MPa以上であることが好ましく、より好ましくは0.2〜10MPaである。ダイボンドフィルム3の剪断接着力が少なくとも0.2MPa以上であると、ワイヤーボンディング工程の際に、当該工程に於ける超音波振動や加熱により、ダイボンドフィルム3と半導体チップ5又は被着体6との接着面でずり変形を生じることが少ない。即ち、ワイヤーボンディングの際の超音波振動により半導体素子が動くことが少なく、これによりワイヤーボンディングの成功率が低下するのを防止する。
【0085】
尚、本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、ダイボンドフィルム3の加熱処理による熱硬化工程を経ることなくワイヤーボンディングを行い、更に半導体チップ5を封止樹脂で封止して、当該封止樹脂をアフターキュアしてもよい。この場合、ダイボンドフィルム3の仮固着時の剪断接着力は、被着体6に対して0.2MPa以上であることが好ましく、より好ましくは0.2〜10MPaである。ダイボンドフィルム3の仮固着時に於ける剪断接着力が少なくとも0.2MPa以上であると、加熱工程を経ることなくワイヤーボンディング工程を行っても、当該工程に於ける超音波振動や加熱により、ダイボンドフィルム3と半導体チップ5又は被着体6との接着面でずり変形を生じることが少ない。即ち、ワイヤーボンディングの際の超音波振動により半導体素子が動くことが少なく、これによりワイヤーボンディングの成功率が低下するのを防止する。
【0086】
前記のワイヤーボンディングは、被着体6の端子部(インナーリード)の先端と半導体チップ5上の電極パッド(図示しない)とをボンディングワイヤー7で電気的に接続する工程である。前記ボンディングワイヤー7としては、例えば金線、アルミニウム線又は銅線等が用いられる。ワイヤーボンディングを行う際の温度は、80〜250℃、好ましくは80〜220℃の範囲内で行われる。また、その加熱時間は数秒〜数分間行われる。結線は、前記温度範囲内となる様に加熱された状態で、超音波による振動エネルギーと印加加圧による圧着工ネルギーの併用により行われる。本工程は、ダイボンドフィルム3の熱硬化を行うことなく実行してもよい。
【0087】
前記封止工程は、封止樹脂8により半導体チップ5を封止する工程である。本工程は、被着体6に搭載された半導体チップ5やボンディングワイヤー7を保護する為に行われる。本工程は、封止用の樹脂を金型で成型することにより行う。封止樹脂8としては、例えばエポキシ系の樹脂を使用する。樹脂封止の際の加熱温度は、通常175℃で60〜90秒間行われるが、本発明はこれに限定されず、例えば165〜185℃で、数分間キュアすることができる。これにより、封止樹脂を硬化させると共に、ダイボンドフィルム3を介して半導体チップ5と被着体6とを固着させる。即ち、本発明に於いては、後述する後硬化工程が行われない場合に於いても、本工程に於いてダイボンドフィルム3による固着が可能であり、製造工程数の減少及び半導体装置の製造期間の短縮に寄与することができる。
【0088】
前記後硬化工程に於いては、前記封止工程で硬化不足の封止樹脂8を完全に硬化させる。封止工程に於いてダイボンドフィルム3が完全に熱硬化していない場合でも、本工程に於いて封止樹脂8と共にダイボンドフィルム3の完全な熱硬化が可能となる。本工程に於ける加熱温度は、封止樹脂の種類により異なるが、例えば165〜185℃の範囲内であり、加熱時間は0.5〜8時間程度である。
【実施例】
【0089】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の要旨をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味する。
【0090】
<ダイボンドフィルムの作製>
(製造例1)
エポキシ樹脂(JER(株)製、エピコート1004)12部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、ミレックスXLC−4L)13部、アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテック社(株)製、SG−708−6)100部、フィラーとしての球状シリカ(アドマテックス(株)製、SO−25R)30部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%の接着剤組成物溶液を得た。
【0091】
この接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ20μmのダイボンドフィルムAを作製した。
【0092】
(製造例2)
エポキシ樹脂(JER(株)製、エピコート1004)48部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、ミレックスXLC−4L)51部、アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテック社(株)製、SG−708−6)100部、フィラーとしての球状シリカ(アドマテックス(株)製、SO−25R)74部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%の接着剤組成物溶液を得た。
【0093】
この接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ20μmのダイボンドフィルムBを作製した。
【0094】
(製造例3)
エポキシ樹脂(JER(株)製、エピコート1004)193部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、ミレックスXLC−4L)207部、アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテック社(株)製、SG−708−6)100部、フィラーとしての球状シリカ(アドマテックス(株)製、SO−25R)195部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%の接着剤組成物溶液を得た。
【0095】
この接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ20μmのダイボンドフィルムCを作製した。
【0096】
(製造例4)
エポキシ樹脂(JER(株)製、エピコート1004)2部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、ミレックスXLC−4L)2部、アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテック社(株)製、SG−708−6)100部、フィラーとしての球状シリカ(アドマテックス(株)製、SO−25R)10部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%の接着剤組成物溶液を得た。
【0097】
この接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ20μmのダイボンドフィルムDを作製した。
【0098】
(製造例5)
エポキシ樹脂(JER(株)製、エピコート1004)4部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、ミレックスXLC−4L)4部、アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテック社(株)製、SG−708−6)100部、フィラーとしての球状シリカ(アドマテックス(株)製、SO−25R)16部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%の接着剤組成物溶液を得た。
【0099】
この接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ20μmのダイボンドフィルムEを作製した。
【0100】
(製造例6)
エポキシ樹脂(JER(株)製、エピコート1004)7部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、ミレックスXLC−4L)7部、アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテック社(株)製、SG−708−6)100部、フィラーとしての球状シリカ(アドマテックス(株)製、SO−25R)23部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%の接着剤組成物溶液を得た。
【0101】
この接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ20μmのダイボンドフィルムFを作製した。
【0102】
(ダイボンドフィルムの光線透過率の測定)
製造例1〜6により作製したダイボンドフィルムA〜Fの光線透過率を測定した。測定方法は、下記の(光線透過率T1、及び、光線透過率T2の測定)と同様とした。結果を表1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
<ダイシングフィルムの作製>
(製造例7)
冷却管、窒素導入管、温度計、及び、撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸−2−エチルヘキシル(以下、「2EHA」ともいう。)86重量部、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル(以下、「HEA」ともいう。)14重量部、過酸化ベンゾイル0.2重量部、及び、トルエン65重量部を入れ、窒素気流中で61℃にて6時間重合処理をし、重量平均分子量35〜100万のアクリル系ポリマーを得た。このアクリル系ポリマーに2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、「MOI」ともいう。)15重量部を加え、空気気流中で50℃にて48時間、付加反応処理をし、アクリル系ポリマーXを得た。
次に、アクリル系ポリマーX100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤(コロネートL、日本ポリウレタン)8部、及び光重合開始剤(イルガキュア651、チバスペシャルティー・ケミカルズ社製)5部を、溶媒としてのトルエン10重量部に加えて、粘着剤溶液を作製した。前記で調整した粘着剤溶液を、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱架橋して、厚さ10μmの粘着剤層前躯体を形成した。次いで当該粘着剤全躯体表面に厚さ100μmのポリオレフィンフィルムを貼り合わせた。その後、50℃にて24時間保存をした。これにより、ダイシングフィルムAを作製した。
【0105】
<保護フィルムの準備>
保護フィルムとして、38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂(株)製 ダイアホイルMRA)を準備した(以下、保護フィルムAともいう)。
【0106】
<半導体装置用フィルムの作製>
(実施例1)
ダイシングフィルムAと、ダイボンドフィルムAと、保護フィルムAとを用い、半導体装置用フィルムを作製した。半導体装置用フィルムの作製は、プリカット装置(ソルテック工業(株)社製 SRDim-W500)を用いて、設定を10m/minとした。また、センサーには、KEYENCE(株)製のCZ-40をC+Iモード設定にて用いた。これを実施例1に係る半導体装置用フィルムとした。
【0107】
(実施例2)
ダイシングフィルムAと、ダイボンドフィルムBと、保護フィルムAとを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る半導体装置用フィルムを作製した。
【0108】
(実施例3)
ダイシングフィルムAと、ダイボンドフィルムCと、保護フィルムAとを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係る半導体装置用フィルムを作製した。
【0109】
(比較例1)
ダイシングフィルムAと、ダイボンドフィルムDと、保護フィルムAとを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る半導体装置用フィルムを作製した。
【0110】
(比較例2)
ダイシングフィルムAと、ダイボンドフィルムEと、保護フィルムAとを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係る半導体装置用フィルムを作製した。
【0111】
(比較例3)
ダイシングフィルムAと、ダイボンドフィルムFと、保護フィルムAとを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3に係る半導体装置用フィルムを作製した。
【0112】
(光線透過率T1、及び、光線透過率T2の測定)
ダイシングフィルムと保護フィルムとの積層部分の光線透過率T1、及び、ダイシングフィルムとダイボンドフィルムと保護フィルムとの積層部分の光線透過率T2の測定には、日本分光社製の分光光度計(製品名「V−670」)を用い、測定モードを%T(透過率測定)、測定波長領域を190〜800nmとして行った。その際の波長650nmでの透過率を測定値とした。結果を表2に示す。また、表2には、前記式(A)にて示されるTも合わせて示した。
【0113】
(歩留りの確認)
実施例、及び、比較例の半導体装置用フィルムを用いて、以下の歩留りの確認試験を行った。
まず、ダイボンドフィルム付きのダイシングフィルムを保護フィルムから剥離した。次に、ダイボンドフィルム付きのダイシングフィルムのダイボンドフィルム上に、半導体ウェハを圧着した。その後、ダイシングリングを貼り付けた。上記試験は、日東精機(株)製のMA-3000(III)を用いて行い、条件は10mm/sec、50℃とした。上記試験を100枚のダイボンドフィルム付きのダイシングフィルムについて行い、ダイシングリングにダイボンドフィルムが付着し、ダイシングリングが汚染された枚数をカウントした。結果を表2に示す。また、ダイシングリングがダイボンドフィルムにより汚染されなかった確率(歩留り(%))も合わせて表2に示した。また、ダイシングリングの汚染が確認されなかった場合を○、ダイシングリングの汚染が1枚でも確認された場合を×として評価した。評価結果も合わせて表2に示した。なお、ダイシングリングが汚染されていないことは、半導体ウェハとダイボンドフィルムとが位置ずれすることなく貼り合わせられていることを意味する。
【0114】
【表2】

【0115】
(結果)
光線透過率T1とT2との差が大きく、前記Tの値が4以上である実施例1〜3の半導体装置用フィルムを製造し、これらを用いれば、半導体ウェハをダイボンドフィルムに貼り付ける際に、ダイシングリングが汚染されることを抑制することができた。
【符号の説明】
【0116】
1 基材
2 粘着剤層
3 ダイボンドフィルム
4 半導体ウェハ
5 半導体チップ
6 被着体
7 ボンディングワイヤー
8 封止樹脂
10 半導体装置用フィルム
11 ダイシングフィルム
14 保護フィルム
15 プリカット前の半導体装置用フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングフィルムとダイボンドフィルムと保護フィルムとがこの順で積層された半導体装置用フィルムの製造方法であって、
前記ダイシングフィルムと前記保護フィルムとの積層部分の波長400〜800nmにおける光線透過率をT1とし、前記ダイシングフィルムと前記ダイボンドフィルムと前記保護フィルムとの積層部分の波長400〜800nmにおける光線透過率をT2としたとき、下記式(A)にて示されるTが4以上であり、
前記半導体装置用フィルムの製造方法は、
ダイシングフィルムを作製する工程と、
ダイボンドフィルムを作製する工程と、
前記ダイボンドフィルムを、貼り付ける半導体ウェハの形状に合わせて打ち抜く工程と、
前記ダイシングフィルムに複数の前記ダイボンドフィルムを所定の間隔をおいて貼り付け、さらに、ダイボンドフィルム側を貼り合わせ面として保護フィルムを貼り付ける工程と、
波長400〜800nmの光線を照射し、得られる光線透過率に基づいてダイボンドフィルムの位置を検出する工程と、
検出したダイボンドフィルムの位置に基づいて、前記ダイシングフィルムを打ち抜く工程と
を具備することを特徴とする半導体装置用フィルムの製造方法。
T=100−((T2/T1)×100)・・・・・・式(A)
【請求項2】
前記光線透過率T1は、2〜80%であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置用フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記光線透過率T2は、0.1〜70%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置用フィルムの製造方法。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−190992(P2012−190992A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52973(P2011−52973)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【特許番号】特許第5023225号(P5023225)
【特許公報発行日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】