説明

半導体装置製造用耐熱性粘着テープ及びそのテープを用いた半導体チップの製造方法

【課題】樹脂封止・樹脂硬化後の、半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2をチップから剥離する工程では、軽剥離であることが必要とされるため、高温下で高い粘着性をもった一般の感圧型の粘着剤では、剥離時に軽剥離にはならずに剥離が困難となったり、図2に示すような糊残りを生じたり、あるいは剥離帯電を起こす。
【解決手段】半導体チップを樹脂封止する際に、貼着して使用されるチップ仮固定用粘着テープであって、ウレタンポリマー成分とビニル系ポリマーとを含有した樹脂層の一方の面に、熱膨張性微小球を含有する熱膨張性粘着層を有することを特徴とする半導体装置製造用基板レス耐熱性粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製のリードフレームを用いない基板レス半導体パッケージの製造方法に使用されるチップ仮固定用半導体装置製造用耐熱性粘着テープ及びそれを用いた半導体装置製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの実装技術において、CSP(Chip Size / Scale Package)技術が注目されている。この技術のうち、WLP(Wafer Level Package)に代表される基板を用いないチップのみの形態のパッケージについては、小型化と高集積の面で特に注目されるパッケージ形態のひとつである。WLPの製造方法では、基板を用いずに整然と配列した複数の半導体Siウェハーチップを封止樹脂にて一括封止したのち、切断によって個別の構造物に切り分けることにより、基板を用いる従来のものよりも小型のパッケージを効率的に生産することが出来る。
【0003】
このようなWLPの製造方法においては、従来基板上に固定するチップを、別の支持体上に固定することが必要となる。更に樹脂封止を経て個別のパッケージに成型された後には固定を解除する必要がある為、その支持体は永久接着ではなく再剥離可能であることが必要となる。そこで、このようなチップの仮固定用支持体として粘着テープを用いる手法が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、基板上に、処理前は粘着力を持つが処理後は粘着力が低下するアクリル樹脂系の粘着手段を貼り付ける工程と、この粘着手段の上に複数個又は複数種の半導体チップをその電極面を下にして固定する工程と、保護物質を前記複数個又は複数種の半導体チップ間を含む全面に被着する工程と、前記粘着手段に所定の処理を施して前記粘着手段の粘着力を低下させ、前記半導体チップを固定した疑似ウエーハを剥離する工程と、前記複数個又は複数種の半導体チップ間において前記保護物質を切断して各半導体チップ又はチップ状電子部品を分離する工程を有する、チップ状電子部品の製造方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、基板上に、処理前は粘着力を持つが処理後は粘着力が低下するアクリル樹脂系の粘着手段を貼り付ける工程と、この粘着手段の上に複数個又は複数種の半導体チップをその電極面を下にして固定する工程と、保護物質を前記複数個又は複数種の半導体チップ間を含む全面に被着する工程と、前記電極面とは反対側から前記保護物質を半導体チップの前記反対側の面まで除去する工程と、前記粘着手段に所定の処理を施して前記粘着手段の粘着力を低下させ、前記半導体チップを固定した疑似ウエーハを剥離する工程と、前記複数個又は複数種の半導体チップ間において前記保護物質を切断して各半導体チップ又はチップ状電子部品を分離する工程を有する、チップ状電子部品の製造方法が記載されている。
これらの方法によれば、チップが保護されるので、個片後の実装ハンドリングにおいてもチップが保護されるし、実装密度を向上させることができる等の効果を得ることが可能である。
特許文献3にはダイシング・ダイボンディングテープではあるものの、粘着剤層にはエポキシ樹脂とアクリルゴムを含有すること、ダイシングにより得られた半導体素子を支持部材に接着する方法が記載され、この方法は明らかに基板レス半導体装置の方法ではなく、基板への接着性等も考慮して粘着剤層が選択されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−308116号公報
【特許文献2】特開2001−313350号公報
【特許文献3】特開2008−101183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1に基板レス半導体パッケージの製造方法を示しつつ、以下に課題を述べる。
複数のチップ1を両面に粘着剤層を有する半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2に貼り付け、さらに半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2を基板3に固定させて(a)で示される構造とする。あるいは、基板3上に半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2を貼り付け、さらにチップ1を固定して、(a)で示される構造とする。
【0008】
次いで、該(a)で示される構造のチップ1の上から、封止樹脂4により複数のチップが一体となるように封止して(b)で示されるものとする。
そして(c)に示されるように、さらに半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2と基板3を一体とし、封止樹脂4により封止された複数のチップ1を分離する方法、あるいは、封止樹脂4により封止された複数のチップ1と半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2からなるものを基板3から剥離し、さらに半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2のみを剥離する方法により、封止樹脂4により封止された複数のチップ1を得る。
【0009】
その封止樹脂4により封止された複数のチップ1の、半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2が設けられていた側であり、チップ1の表面が露出している側において、チップ1表面の必要とされる箇所に電極5を形成して(d)で示される構造とする。
この構造に対して、封止樹脂側に必要に応じてダイシングリング7を設けたダイシングテープ8を接着して、ダイシング工程のために封止樹脂4により封止された複数のチップ1を固定する。これを(e)に示すように、ダイシングブレード6によりダイシングを行い、最後に(f)のように複数のチップが樹脂により封止されてなる複数の基板レスパッケージを得る。
【0010】
この樹脂による封止の工程では、半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2は、テープ上のチップ1の位置が樹脂封止の圧力によって移動しないように、樹脂封止時の温度下でも高い粘着性を有していなければならない。
【0011】
これに対して樹脂封止・樹脂硬化後の、半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2をチップから剥離する工程では、軽剥離であることが必要とされるため、高温下で高い粘着性をもった一般の感圧型の粘着剤では、剥離時に軽剥離にはならずに剥離が困難となったり、図2に示すような糊残りを生じたり、あるいは剥離帯電を起こすといった課題があった。
また、剥離が困難になるとその分時間を要するので生産性が低下し、糊残り9を生じるとその後の電極形成等の工程を実施できなくなり、また剥離帯電を生じると塵などの付着によるその後の工程での不都合を生じることがある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、基板レス半導体チップを樹脂封止する際に、貼着して使用されるチップ仮固定用粘着テープが、ウレタンポリマー成分とビニル系ポリマーとを含有した樹脂層の一方の面に、熱膨張性微小球を含有する熱膨張性粘着層を有することを特徴とする半導体装置製造用耐熱性粘着テープを用いて、金属製のリードフレームを用いない基板レス半導体チップを製造する方法を採用した。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、金属製のリードフレームを用いない基板レス半導体パッケージの製造方法(例えばWLPの製造方法等)に使用されるチップ仮固定用粘着テープに関し、樹脂封止の際の圧力によりチップが指定の位置からずれることなく、封止後には特定温度以下の温度下で、封止樹脂に対する糊残りを発生することなく軽剥離可能な半導体装置製造用耐熱性粘着テープを提供することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】基材レスパッケージ製造方法の模式図。
【図2】半導体装置製造用耐熱性粘着テープを剥離する際に帯電及び糊残りを生じる図。
【図3】本発明の半導体装置製造用耐熱性粘着テープの断面図。
【図4】剪断接着力試験機による試験の図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、半導体装置製造用耐熱性粘着テープの材料、構成等について鋭意研究した。その結果、ウレタンポリマー成分とビニル系ポリマーとを含有した樹脂層の一方の面に、熱膨張性微小球を含有する熱膨張性粘着層を有することを特徴とする半導体装置製造用耐熱性粘着テープを使用することで、前記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
以下に本発明の半導体装置製造用耐熱性粘着テープを説明する。
図3に本発明に用いる半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2を例示した。10は平滑な剥離シート、11は樹脂層、12がゴム状有機弾性層、13が熱膨張性粘着剤層である。
ここで、該樹脂層及び該ゴム状有機弾性層はそれぞれ、複数の層から構成されていても良い。
【0017】
(樹脂層)
樹脂層11はウレタンポリマー成分とビニル系ポリマーとを含有した樹脂からなる層である。
(ウレタンポリマー)
樹脂層に用いられるウレタンポリマーは、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られる。ポリオールの水酸基とイソシアネートとの反応には、例えば、ジブチル錫ジラウレート、オクトエ酸錫、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン等の、ウレタン反応において一般的に使用される触媒を用いてもよい。
【0018】
ポリオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を付加重合して得られるポリエーテルポリオール、あるいは上述の2価のアルコールとアジピン酸、アゼライン酸、セパチン酸等の2価の塩基酸との重縮合物からなるポリエステルポリオールや、アクリルポリオール、カーボネートポリオール、エポキシポリオール、カプロラクトンポリオール等が挙げられる。これらの中では、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)等のポリエーテルポリオール、非結晶性のポリエステルポリオール、非結晶性のポリカーボネートポリオール等が好ましく使用される。これらのポリオール類は単独あるいは併用して使用することができる。
【0019】
ジイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートなどが挙げられる。芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。これらのジイソシアネートは単独あるいは併用で使用することができる。ウレタン反応性、アクリルとの相溶性などの観点から、ポリイソシアネートの種類、組合せ等を適宜選択することができる。
【0020】
ウレタンポリマーを形成するための上記ポリオール成分と上記ジイソシアネート成分の使用量は特に限定されるものではないが、例えば、ポリオール成分の使用量は、ジイソシアネート成分に対し、NCO/OH(当量比)が1.0以上であることが好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。NCO/OHが1.0以上では、ウレタン分子鎖の末端官能基が水酸基となり、仮固定層の強度低下を防止できる。また、NCO/OHが2.0以下であれば、適度な伸びと強度を確保することができる。
また、ウレタンポリマーの少なくとも一部がアクリロイル基末端ウレタンポリマーであることが望ましく、このようなアクリロイル基を有することにより、ビニル系ポリマーと架橋して凝集力を調整することが可能となる。
【0021】
本発明におけるウレタンポリマー成分の分子量は用いるポリオールやジイソシアネートの種類、NCO/OH比によって適宜決定することができる。その分子量は特に限定されないが、好ましくは数平均分子量(Mw)が5000以上、さらに好ましくは10000以上である。
【0022】
上記ウレタンポリマーに対し、本発明中のビニル系ポリマーとは別に水酸基含有アクリルモノマーを添加することが望ましい。水酸基含有アクリルモノマーを添加することにより、ウレタンポリマーの分子内にアクリロイル基を導入することができ、アクリルモノマーとの共重合性を付与することができる。水酸基含有アクリルモノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等が用いられる。水酸基含有アクリルモノマーの使用量は、ウレタンポリマー100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが望ましく、さらに望ましくは0.1〜5重量部である。
【0023】
(ビニル系ポリマー)
本発明における樹脂層にて使用するビニル系ポリマーは、ビニルモノマーを構成するビニル化合物のみを重合することによって得てもよく、その際には、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。粘着剤層は半導体ウエハ等の汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さいのが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは30万以上、さらに好ましくは40万〜300万程度である
樹脂層は上記ウレタンポリマーと下記のビニル系ポリマーとのブレンドによって得ても良く、また、ウレタンポリマーとビニル系モノマーの混合物を調整し、次いでビニル系ポリマーを重合することにより得ても良い。
なかでも、使用できるモノマーの種類やシート化の加工性等の点から、ビニル系モノマー単独あるいは2種以上の混合物中で、ポリオールとイソシアネートとを反応させてウレタンポリマーを形成し、得られたウレタンポリマーとビニル系モノマーとを含む混合物を、基材上に塗布し、放射線を照射して硬化させて、形成させることが好ましい。またビニル系モノマーとしては(メタ)アクリル系モノマーが好ましい。
【0024】
さらに上記のように、水酸基含有アクリルモノマーを使用することによりウレタンポリマーにアクリロイル基を導入した後にビニル系モノマーを重合することにより、該アクリロイル基がビニル基と重合してなり、該ウレタンポリマーと該ビニル系ポリマーが結合してなる樹脂とすることも可能である。
【0025】
本発明におけるビニル系ポリマーはビニル系モノマーを重合してなるポリマーであり、そのビニル系モノマーとしては上記の通り(メタ)アクリル系モノマーが好ましく用いられ、その(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;シクロへキシル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート等の脂環式構造を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピルアクリレート等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の燐酸含有モノマーなどがあげられる。また、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミド等のアミド系モノマー、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルボン酸アミド類、N−ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、2−メトキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル系モノマー;メチル(メタ)アクリレートやオクタデシル(メタ)アクリレート等のモノマーを1種または2種以上を用いることができる。これらの(メタ)アクリル系モノマーは、ウレタンとの相溶性、放射線等の光硬化時の重合性や、得られる高分子量体の特性を考慮して、種類、組合せ、使用量等が適宜決定される。
特に、加温時と剥離時の粘着力を考慮して、ビニル系ポリマーがカルボキシル基を含有することができるように、カルボキシル基を有するモノマーを使用することが望ましく、さらに、(メタ)アクリル酸などの極性基を持つモノマーを使用すると加温時と冷却剥離時の粘着力のバランスが良い。
【0026】
(メタ)アクリル酸の添加量としては好ましくはウレタンポリマーとビニル系ポリマーの全量を100重量部としたときに、5重量部以上80重量部未満であることが好ましく、さらに好ましくは10重量部以上70重量部未満である。5重量部以上とすることで加温時と冷却剥離時の粘着力のバランスが得られ易く、また80重量部未満にすると柔軟性を備えて加温時の粘着力が向上する。
【0027】
本発明においては、特性を損なわない範囲内で他の多官能モノマーを添加することもできる。多官能モノマーとしては、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。
【0028】
(ウレタンポリマーとビニル系ポリマーの含有比率)
本発明における樹脂層はウレタンポリマーとビニル系ポリマーを有効成分として含有する。ウレタンポリマーとビニル系ポリマーの比率は特に限定されないが、ウレタンポリマーとビニル系ポリマーの合計量に対し、ウレタンポリマーの占める重量は10%以上90%以下が好ましく、さらに好ましくは20%以上80%未満である。ウレタンポリマーの割合が10%以上であると高温時の弾性率が低くならず十分な加工精度を得ることができる。また90%以下ではシート作製時のハンドリング性及び生産性が良好である。
【0029】
(樹脂層形成方法)
本発明の樹脂層は、重合によりビニル系ポリマーを構成するビニル系モノマー単独あるいは2種以上の混合物中で、ポリオールとイソシアネートとを反応させてウレタンポリマーを形成し、ウレタンポリマーと該ビニル系モノマーとを含む混合物を、支持基材上に塗布し、光重合開始剤の種類等に応じてα線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線や紫外線等の放射線、可視光等を照射することにより、硬化させて得ることができる。
また、ウレタンポリマーとビニル系ポリマーとをブレンドし、これを支持基材上に塗布・乾燥させることによって形成することも可能である。
【0030】
また、上記水酸基含有アクリルモノマーを使用する場合には、重合によりビニル系ポリマーを構成するビニル系モノマー単独あるいは2種以上の混合物中で、ポリオールとイソシアネートとを反応させてウレタンポリマーを形成した後に、水酸基含有アクリルモノマーを添加してウレタンポリマーと反応させ、得られた混合物を、支持基材上に塗布し、光重合開始剤の種類等に応じてα線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線や紫外線等の放射線、可視光等を照射することにより、硬化させて得ることができる。
【0031】
具体的には、ポリオールをビニル系モノマーに溶解させた後、ジイソシアネート等を添加してポリオールと反応させて粘度調整を行い、これを支持基材等に塗工した後、低圧水銀ランプ等を用いて硬化させることにより、仮固定シートを得ることもできる。この方法では、ビニル系モノマーをウレタン合成中に一度に添加してもよいし、何回かに分割して添加してもよい。また、ジイソシアネートをビニル系モノマーに溶解させた後、ポリオールを反応させてもよい。この方法によれば、分子量が限定されるということはなく、高分子量のポリウレタンを生成することもできるので、最終的に得られるウレタンの分子量を任意の大きさに設計することができる。
【0032】
この際、酸素による重合阻害を避けるために、支持基材上に塗布したウレタンポリマーとビニル系モノマーとの混合物の上に、さらに剥離処理された基材をのせて、酸素を遮断してもよいし、不活性ガスを充填した容器内に剥離ライナーを入れて、酸素濃度を下げてもよい。
【0033】
また、塗工の粘度調整のため、少量の溶剤を加えてもよい。溶剤としては、通常使用される溶剤の中から適宜選択することができるが、例えば、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0034】
本発明において、放射線等の種類や照射に使用されるランプの種類等は適宜選択することができ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、殺菌ランプ等の低圧ランプや、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等の高圧ランプなどを用いることができる。
紫外線などの照射量は、要求される仮固定層の特性に応じて、任意に設定することができる。一般的には、紫外線の照射量は、50−5000 mJ/cm2、好ましくは100−4000 mJ/cm2、更に好ましくは100−3000 mJ/cm2である。紫外線の照射量が50〜5000 mJ/cm2の範囲であれば劣化せずに十分な重合率が得られる。
【0035】
ウレタンポリマーとビニル系モノマーとを主成分とする混合物には、光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどのベンゾインエーテル;アニソールメチルエーテルなどの置換ベンゾインエーテル;2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトンなどの置換アセトフェノン;2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換アルファーケトール;2−ナフタレンスルフォニルクロライドなどの芳香族スルフォニルクロライド;1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどの光活性オキシム;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイドなどがあげられる。
【0036】
本発明における樹脂層の厚みは、目的等に応じて適宜選択することができるが、一般的には5〜500μm、好ましくは10〜100μm程度である。
本発明の樹脂層は、175℃におけるシリコンチップに対するせん断接着力が100g/10mm2以上であり、好ましくは150g/10mm2以上、更に好ましくは200g/10mm2以上、更には300g/10mm2以上であり、かつ、175℃加熱後の封止樹脂に対する90°引き剥がし粘着力が0.50N/20mm以下、好ましくは0.40N/20mm以下、更に好ましくは0.30N/20mm以下 更には0.20N/20mm以下である。
通常、樹脂の封止・硬化工程は約175℃付近の温度下で行われることが多く、このような剪断接着力が100g/10mm2以上で、かつ引き剥がし粘着力が0.50N/20mm以下である場合には、半導体チップを担持して樹脂による封止・硬化時に確実に該半導体チップはずれることなく固定することができる。
さらにその後、特定温度まで冷却し、個化したパッケージから樹脂層を剥がす際には、封止樹脂に対する90°フィルム引き剥がし粘着力が小さい程、剥離に要する力がより小さくて済むことにより、該パッケージを破損等することがない。
【0037】
本発明において、半導体装置製造用接着シートの樹脂層は、40℃以上の特定の温度において、粘着力を発現し、その特定の温度以下では粘着力を消失する性質を有することが好ましい。さらに好ましくは70℃以上の特定の温度において粘着力を有し、特に好ましくは100℃以上の特定の温度において粘着力を有することが好ましい。
40℃以上の特定の温度において粘着力を発現するとは、40℃以上のある温度において初めて粘着力を発現し、そのある温度未満では粘着力を発現しないことを意味し、結局少なくとも40℃未満の温度においては粘着力を示さないことを意味する。このような温度により粘着力が変化する特性によって、熱膨張性微小球を含有する熱膨張性粘着層の発泡時には確実に半導体チップを半導体装置製造用基板レス耐熱性粘着テープに確実に固定させることが可能となると共に、製品を加熱時以外においては樹脂層から取り出しやすくなる。
本発明における樹脂層の175℃での貯蔵弾性率G’は1.0×10Pa以上であり、好ましくは2.0×10Pa以上、さらに好ましくは3.0×10Pa以上、更には、好ましくは4.0×10Pa以上である。
貯蔵弾性率G’が1.0×10Pa以上であれば、チップが樹脂層に埋まり込むスタンドオフが小さく、その後の工程での歩留まりが低下することはない。
【0038】
(ゴム状有機弾性層)
ゴム状有機弾性層12は、半導体装置製造用耐熱性粘着テープを被着体に接着する際にその表面が被着体の表面形状に良好に追従して大きい接着面積を提供する働きと、半導体装置製造用耐熱性粘着テープより被着体を剥離するために熱膨張性粘着剤層13を加熱して発泡および/または膨張させる際に半導体装置製造用耐熱性粘着テープの面方向における発泡及び/または膨張の拘束を少なくして熱膨張性粘着剤層13が三次元的構造変化することによるウネリ構造形成を助長する働きをするものも含まれる。
【0039】
ゴム状有機弾性層12は必要に応じて設けることができるが、設ける場合には、その特性を十分に発揮させるために、その厚さを5〜50μmとすることが好ましい。
ゴム状有機弾性層12は、ASTM D-2240のD型シュアーD型硬度にもとづいて50以下、好ましくは40以下の天然ゴムや合成ゴム、またはゴム弾性を有する合成樹脂により形成することができる。
【0040】
前記の合成ゴムまたは合成樹脂としては、例えばニトリル系、ジエン系、アクリル系などの合成ゴム、ポリオレフィン系やポリエステル系の如き熱可塑性エラストマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリブタジエン、軟質ポリ塩化ビニルなどのゴム弾性を有する合成樹脂があげられる。尚、ポリ塩化ビニルの如く本質的には硬質系のポリマーであっても可塑剤や柔軟剤等の配合剤との組み合わせでゴム弾性をもたせたものも本発明では用いうる。
また、ゴム系や樹脂等の一般的に知られる感圧接着剤により形成することもできる。
【0041】
感圧接着剤としては、ゴム系感圧接着剤、アクリル系感圧接着剤、スチレン・共役ジエンブロック共重合体系感圧接着剤などの適宜なものを用いることができる。また、融点が約200℃以下等の熱溶融性樹脂を含有してクリープ性を改善したものなども用いうる。 尚、感圧接着剤は、帯電防止剤、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤などの適宜な添加剤を配合したものであってもよい。
【0042】
より具体的には、例えば、天然ゴムや合成ゴムをベースポリマーとするゴム系感圧接着剤、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、ドデシル基、ラウリル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基のごとき通例、炭素数が20以下のアルキル基を有するアクリル酸ないしメタクリル酸等のアクリル酸系アルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、N−メチロールアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、酢酸ビニル、スチレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン、ビニルエーテルなどを主成分とするアクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系感圧接着剤などが挙げられる。
【0043】
(熱膨張性粘着剤層)
熱膨張性粘着剤層13を形成する感圧接着剤としては、加熱時に熱膨張性微小球の発泡及び/又は膨張を許容することが必要であり、上記のゴム状有機弾性層にて使用できるゴム系材料や(メタ)アクリル系樹脂等をベースとする公知の感圧接着剤、好ましくは熱膨張性微小球の発泡及び/又は膨張を可及的に拘束しない程度の弾性を有するものが用いられる。
熱発泡型粘着剤は、上記一般的な感圧性粘着剤に熱膨張性微粒子が配合されたものである。熱発泡型粘着剤は、熱による熱膨張性微粒子の発泡により、接着面積が減少して剥離が容易になるものであり、熱膨張性微粒子の平均粒子径は1μm〜25μm程度のものが好ましい。より好ましくは5μm〜15μmであり、特に10μm程度のものが好ましい。 また上記熱膨張性粘着剤層には、公知の樹脂等の粘着付与剤、可塑剤、顔料、充填剤、導電剤、帯電防止剤などが適宜配合され、他官能性エポキシ化合物、または、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、無水化合物、ポリアミン、カルボキシル基含有ポリマー等の架橋剤により架橋される。
【0044】
熱膨張性粘着剤層13は、粘着剤に熱膨張性微小球を配合することにより形成することができる。熱膨張性微小球としては、例えばイソブタン、プロパン、ペンタンの如く容易にガス化して熱膨張性を示す適宜な物質をコアセルベーション法や界面重合法等で殻形成物質内に内包させた熱膨張性微小球を用いることができる。用いる熱膨張性微小球は、熱膨張性微小球の体積膨張倍率が5倍以上、好ましくは10倍以上のものが望ましい。
尚、熱膨張性微小球を形成する殻形成物質としては、例えば塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンなどが一般的であるが、本発明においては熱溶融性物質や熱膨張で破壊する物質などからなっていればよい。
熱膨張性微小球は、上記粘着剤との分散混合性に優れているなどの利点も有する。熱膨張性微小球の市販品としては、たとえば、マイクロスフェアー(商品名:松本油脂社製)などがあげられる。
【0045】
熱膨張性微小球の配合量は、熱膨張性粘着剤層13を膨張(発泡)させる程度や接着力を低下させる程度に応じて適宜に決定してよい。一般には、ベースポリマー100重量部あたり1〜150重量部、好ましくは25〜100重量部配合される。熱膨張性粘着剤層の厚さは、5〜100μm、好ましくは15〜50μmを用いる。
本発明の半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2を被着体より容易に剥離できるようにするための加熱処理条件は、被着体の表面状態や熱膨張性微小球の種類等による接着面積の減少性、基材や被着体の耐熱性や加熱方法等の条件により決められるが、一般的な条件は100〜250℃、1〜90秒間(ホットプレートなど)または5〜15分間(熱風乾燥器など)であるが、本用途においては、樹脂封止温度が約175度程度であることから、200〜250℃、1〜90秒間(ホットプレートなど)または1〜15 分間(熱風乾燥器など)であることが望ましい。
【0046】
(平滑な剥離シート)
平滑な剥離シート10は、基材フィルムの片面に剥離剤層を形成してなるシートであり、本発明の半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2を使用する前に各面の粘着剤層を露出させるために剥離されるシートである。
剥離剤層は、接する粘着剤に応じて長鎖アルキル基系、フッ素樹脂系、シリコーン樹脂系等の公知の剥離剤層から適宜選択して得ることができる。
この剥離シートは、樹脂層や熱膨張性粘着剤層を形成させる際の土台として使用することもでき、また、形成された樹脂層や熱膨張性粘着剤層表面に積層させて使用しても良い。
【0047】
基材フィルムとしては公知のものを使用でき、例えばポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、及びポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム等から選択することが可能である。
使用できる剥離剤層は、フッ素化されたシリコーン樹脂系剥離剤、フッ素樹脂系剥離剤、シリコーン樹脂系剥離剤、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、長鎖アルキル化合物等の公知の剥離剤を、粘着剤層の樹脂に応じて選択して含有させてなる層である。
【0048】
(半導体装置製造用耐熱性粘着テープの製造方法)
本発明の半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2は、一般的な製造方法により製造することができる。例えば、樹脂層、ゴム状有機弾性層12、熱膨張性粘着剤層13のそれぞれを構成する組成物を所定の溶剤に溶解させて塗布液を調製し、これらの塗布液を、剥離性を有するセパレータ等の樹脂層上に目的とする半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2の層構成となるように塗布した後、その塗布層を所定条件下で加熱・乾燥することを順に行う。
【0049】
また、樹脂層、ゴム状有機弾性層12、熱膨張性粘着剤層13を剥離性フィルム等に流延するなどにより単体のフィルムを作成し、これらを順に積層させても良い。ここで、溶剤としては特に限定されないが、構成材料の溶解性が良好な点を考慮すると、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤が好適に用いられる。
【0050】
(半導体装置製造用耐熱性粘着テープの使用方法)
半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2は上記において図1を基に説明した工程において使用する。
つまり、以下に示す半導体チップの接着工程、封止工程、剥離工程においてチップを固定する手段として使用するものである。
【0051】
(半導体チップの接着工程)
樹脂層と熱膨張性粘着剤層からなる半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2の、該熱膨張性粘着剤層の熱膨張性粘着層上の剥離シートを除去した熱膨張性粘着剤層13側を基板上に接着して、その反対の樹脂層面側が上面に露出するようにする。
その上に樹脂により封止しようとする所定の半導体チップ1を、目的とする配置となるように載置・接着して、半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2の樹脂層上に配列する。その際の半導体チップ1の構造、形状、大きさ等は特に限定されない。
【0052】
(封止工程)
本発明の半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2が使用される封止工程に用いられる樹脂は、用途によって任意に変更し得るが、エポキシ樹脂等の公知の封止樹脂でよい。粉末状の樹脂の溶融温度や硬化温度、液状の樹脂の硬化温度は、半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2の耐熱性を勘案して選ばれるが、本発明の半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2は通常の封止樹脂の溶融温度や硬化温度において耐熱性を有する。
封止工程はチップ保護のために上記の樹脂により金型内にて行われ、例えば170〜180℃において行われる。
その後、半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2を剥離した後に、ポストモールドキュアがなされる。
【0053】
(剥離工程)
基板上の半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2に固定されたチップが樹脂により封止された後、200〜250℃で、1〜90秒間(ホットプレートなど)または1〜15 分間(熱風乾燥器など)の条件下で加熱を行い、半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2の熱膨張性粘着剤層13を膨張させることにより、半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2の熱膨張性粘着剤層13と基板3との接着力を低下させて、半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2と基板3とを剥離する。
次いで、特定温度以下にまで冷却した後、チップを樹脂により封止してなる層から、半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2を剥離する。
また、半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2と基板3を分離せず一体とし、半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2の樹脂層から封止樹脂4により封止された複数のチップ1を分離する方法を採用しても良い。
【0054】
(電極形成工程)
次いで、チップ1を封止樹脂4により封止してなるチップ1の一面が表面に露出されている側、つまり半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2が積層されていた側において、スクリーン印刷等の方法により、各々のチップの所定の箇所に電極5を形成する。電極材料としては公知の材料を使用できる。
【0055】
(ダイシング工程)
チップ1を封止樹脂4により封止してなる層を好ましくはダイシングリング7を設けたダイシングテープ8に固定した後に、通常のダイシング工程において使用されるダイシングブレード6を用いて、各パッケージに個片化する。
このときに、各チップ1が所定の位置に存在していないと、電極の形成が不正確になることに加え、個々のパッケージのチップ1の位置が不正確であったり、ひどい場合にはダイシング時にダイシングブレード6がチップ1に接触する可能性がある。
【0056】
本発明の半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2を使用すると、封止樹脂4による封止工程においてチップ1の位置がずれることを防止できるので、このような支障がなく、円滑にダイシング工程を実施でき、結果的に封止樹脂内に正確にチップ1が位置するパッケージが得られる。
また、半導体装置製造用耐熱性粘着テープ2は封止樹脂により封止されたチップから軽剥離で引き剥がすことが可能であり、また糊残りが生じないため、高い歩留まりを維持しながら製造することが可能となる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0057】
実施例1
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル系モノマーとして、イソボルニルアクリレート(IBXA)を50重量部、ポリオールとして、数平均分子量650のポリ(テトラメチレン)グリコール(PTMG、三菱化学(株)製)を72.8重量部投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI、三井化学ポリウレタン(株)製)を27.2重量部滴下し、65 ℃で10時間反応させ、ウレタンポリマー-アクリル系モノマー混合物を得た。その後、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を6.5重量部滴下してさらに3時間反応させた後、アクリル酸(AA)を50重量部と光重合開始剤として0.3重量部の2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1オン(IRGACURE 651、チバ・ジャパン(株)製)を加えた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
ウレタンポリマーとアクリル系モノマー混合物を、厚さ38 μmの剥離処理したPET上に、硬化後の厚みが100 μmになるように塗布した。この上に、剥離処理したPETフィルムを重ねて被覆した後、この被覆したPETフィルム面にブラックライトを用いて紫外線(照度5 mW/cm2, 光量1000 mJ/cm2)を照射して硬化させて、PETフィルム上に樹脂層1(ウレタン-アクリル複合フィルム)を形成した。
また、熱膨張性粘着剤層として、アクリル酸エチル−アクリル酸ブチル−アクリル酸(20部-80部-10部)からなる共重合体ポリマー100部に、エポキシ系架橋剤を1.0部、ロジン系粘着付与剤5部、200℃発泡膨張タイプの熱膨張性微小球50部とトルエンを均一に混合、溶解した塗工液を作製し、樹脂層上に塗布して乾燥し、厚さ約40μmの粘着剤層を有する半導体装置製造用耐熱性粘着テープ1を得た。
【0058】
この半導体装置製造用耐熱性粘着テープの熱膨張粘着剤面を平滑な台に圧着固定後、反対面の樹脂層上に、5 mm ×5 mmサイズのSiウェハーチップを配置し、液状のエポキシ系封止樹脂を流し込み、175 ℃×2 minでモールドした。その後、150 ℃で60 minの加熱により樹脂の硬化を促進(ポストモールドキュア)させ、パッケージを作製した。
【0059】
実施例2
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル系モノマーとして、イソボルニルアクリレート(IBXA)を80重量部、ブチルアクリレート(BA)を20重量部、ポリオールとして、数平均分子量650のポリ(テトラメチレン)グリコール(PTMG、三菱化学(株)製)を72.8重量部投入し、攪拌しながら、HXDIを27.2重量部滴下し、65 ℃で10時間反応させ、ウレタンポリマー-アクリル系モノマー混合物を得た。その後、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を6.5重量部滴下してさらに3時間反応させた後、アクリル酸(AA)を30重量部と光重合開始剤として0.3重量部のIRGACURE 651を加えた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
ウレタンポリマーとアクリル系モノマー混合物を、厚さ38 μmの剥離処理したPET上に、硬化後の厚みが100 μmになるように塗布した。この上に、剥離処理したPETフィルムを重ねて被覆した後、この被覆したPETフィルム面にブラックライトを用いて紫外線(照度5 mW/cm2, 光量1000 mJ/cm2)を照射して硬化させて、PETフィルム上に樹脂層2(ウレタン-アクリル複合フィルム2)を形成して作製した以外は、実施例1と同様の方法でパッケージを作製した。
【0060】
実施例3
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル系モノマーとして、イソボルニルアクリレート(IBXA)を100重量部、ポリオールとして、数平均分子量650のポリ(テトラメチレン)グリコール(PTMG、三菱化学(株)製)を72.8重量部投入し、攪拌しながら、HXDIを27.2重量部滴下し、65 ℃で10時間反応させ、ウレタンポリマー-アクリル系モノマー混合物を得た。その後、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を6.5重量部滴下してさらに3時間反応させた後、光重合開始剤として0.3重量部のIRGACURE 651を加えた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
ウレタンポリマーとアクリル系モノマー混合物を、厚さ38 μmの剥離処理したPET上に、硬化後の厚みが100 μmになるように塗布した。この上に、剥離処理したPETフィルムを重ねて被覆した後、この被覆したPETフィルム面にブラックライトを用いて紫外線(照度5 mW/cm2, 光量1000 mJ/cm2)を照射して硬化させて、PETフィルム上に樹脂層3(ウレタン-アクリル複合フィルム3)を形成して作製した以外は、実施例1と同様の方法でパッケージを作製した。
【0061】
比較例1
アクリル系共重合体(アクリル酸2−エチルヘキシル:アクリル酸エチル:アクリル酸2−ヒドロキシエチル=70重量部:30重量部:5重量部)100重量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製:商品名『コローネートL』)3重量部をトルエンに溶解し、厚さ100μmのポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚さが10μmとなるように塗布して作成した以外は、実施例1と同様の方法でパッケージを作製した。
【0062】
比較例2
ステアリルアクリレート100重量部、2,2−ジメトキシー1,2−ジフェニルエタン−1−オン0.3重量部を4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合させることによって、部分重合物(モノマーシロップ)を得た。この部分重合物40重量部に、イソオクチルアクリレート54部、アクリル酸6重量部、架橋剤としてヘキサンジオールジアクリレートを0.1重量部添加した後、これらを均一に混合して光重合性組成物を調製した。厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、上記光重合性組成物を厚み100μmになるように塗布し、更にその上に厚さ38μmの片面を剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを被せ、塗布層を形成した。このシートにブラックライト(15W/cm)を用いて光照度5mW/cm2(ピーク感度最大波350nmのトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を1000mJ/cm2照射し、側鎖結晶化可能ポリマー含有仮固定シートを得た。この側鎖結晶化可能ポリマー含有仮固定シートの基材面に、実施例1と同様に熱膨張性粘着層を塗布するなど、実施例1と同様の方法でパッケージを作製した。
【0063】
<評価>
以上のようにして作製した耐熱性熱剥離型粘着シートおよびパッケージにおいて、175℃におけるシリコンチップに対するせん断接着力、パッケージから耐熱性熱剥離型粘着テープを実際に剥離する際の90°引き剥がし粘着力、貯蔵弾性率G’、チップの初期位置からのずれ距離の値、および耐熱性熱剥離型粘着シート剥離後の糊残りの、顕微鏡を用いた目視による有無、封止面からのどれぐらいチップが出ているか(スタンドオフ量)を評価した。結果を表1に示す。
【0064】
<175℃におけるシリコンチップに対するせん断接着>
実施例及び比較例で作成したシートを20mm角に切断し、樹脂層(熱膨張性粘着層の逆側)上に10mm角のシリコンチップを置いた後、175℃のプレート台付きせん断接着力試験機にセットし、3分間放置した後、図4に示すようにして、速度0.5mm/secでシリコンチップを水平方向に押し込んだ時の荷重を測定した。
【0065】
<175℃加熱後のパッケージからの90 °引き剥がし粘着力>
175℃×2分間の封止工程を経た後、常温まで冷却し、剥離速度300mm/min、引っ張り角度90°でテープを引き剥がした際の荷重を測定した。
【0066】
<貯蔵弾性率G’ の測定方法>
貯蔵弾性率(G’)は「ARES」(TAインスツルメンツ株式会社製)にて測定を行った。なお、測定は-60 ℃〜200 ℃の温度領域を、昇温速度5 ℃/min、周波数1 Hzの条件で行った。
【0067】
【表1】

【0068】
実施例1〜3においては、充分なモールド時の粘着力を有することによりチップずれを抑制し、且つ冷却後の封止樹脂への粘着力が小さいという特性から、パッケージの軽剥離且つ剥離後の糊残りも無い良好なパッケージを得ることができ、またスタンドオフも小さい値となった。
【0069】
これに対して、比較例1においては、樹脂層がウレタンポリマー成分を含有しないために、モールド時のチップズレを抑制することができず、また比較例2は、ビニル系ポリマーを含有しないために、175℃での弾性率が低く、そのためシリコンチップが樹脂層に埋まり込み、スタンドオフが大きな値となってしまった。
【0070】
以上の結果より、樹脂封止工程でチップを保持し、その後所定の温度に冷却することにより糊残りなくテープを剥離でき、また小さなスタンドオフを達成することができる基板レス半導体パッケージ製造時チップ仮固定用耐熱性熱剥離型粘着テープを提供することができた。
【符号の説明】
【0071】
1:チップ
2:半導体装置製造用耐熱性粘着テープ
3:基板
4:封止樹脂
5:電極
6:ダイシングブレード
7:ダイシングリング
8:ダイシングテープ
9:糊残り
10:平滑な剥離シート
11:樹脂層
12:ゴム状有機弾性層
13:熱膨張性粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップを樹脂封止する際に、貼着して使用されるチップ仮固定用粘着テープであって、ウレタンポリマー成分とビニル系ポリマーとを含有した樹脂層の一方の面に、熱膨張性微小球を含有する熱膨張性粘着層を有することを特徴とする半導体装置製造用基板レス耐熱性粘着テープ。
【請求項2】
前記半導体装置製造用耐熱性粘着テープにおいて、樹脂層のビニル系ポリマーがカルボキシル基を含有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置製造用耐熱性粘着テープ。
【請求項3】
前記半導体装置製造用耐熱性粘着テープにおいて、樹脂層のウレタンポリマーの少なくとも一部がアクリロイル基末端ウレタンポリマーであることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置製造用耐熱性粘着テープ。
【請求項4】
前記半導体装置製造用耐熱性粘着テープにおいて、樹脂層が40℃以上の特定の温度において粘着力を発現し、その特定の温度以下では粘着力が消失することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置製造用耐熱性粘着テープ。
【請求項5】
前記半導体装置用耐熱性粘着テープにおいて、樹脂層の175℃におけるシリコンチップに対するせん断接着力が100g/10mm2以上であり、かつ樹脂層の175℃加熱後の封止樹脂に対する90°引き剥がし粘着力が0.50N/20mm以下であることを特徴とする請求項1〜4記載の半導体装置製造用耐熱性粘着テープ。
【請求項6】
前記半導体装置用耐熱性粘着テープにおいて、樹脂層の175℃での貯蔵弾性率G’が1.0×10Pa以上であることを特徴とする請求項1〜5記載の半導体装置製造用耐熱性粘着テープ。
【請求項7】
請求項1〜6記載の半導体装置製造用熱剥離粘着テープを用いた、金属製のリードフレームを用いない基板レス半導体チップの製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置製造用熱剥離粘着テープを用いた金属製のリードフレームを用いない基板レス半導体チップの製造方法であって、(A)該粘着シートの熱膨張性粘着層表面に支持体を貼り合せ、樹脂層に被着体を貼り合せる工程、(B)被着体を加工する工程、(C)加熱処理により、支持体から該粘着シートを剥離する工程、及び(D)加工後の被着体から該粘着シートを剥離する工程を含む被着体加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−167177(P2012−167177A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28910(P2011−28910)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】