説明

半導体装置

【課題】本発明は、両面に対する異なる性質の要求に対応できる接着部材、これを使用した半導体装置及びその製造方法、回路基板並びに電子機器を提供することにある。
【解決手段】半導体装置(1)は、半導体チップ(10)と、配線パターン(22)が形成された基板(20)と、半導体チップ(10)と配線パターン(22)とを電気的に接続する接着部材(30)と、を含み、接着部材(30)は、第1の樹脂を基材として半導体チップ(10)側に配置される第1の層(32)と、第2の樹脂を基材として基板(20)側に配置される第2の層(34)と、の2層構造をなし、第1の樹脂と第2の樹脂とが、熱膨張係数などで異なる物性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着部材、半導体装置及びその製造方法、回路基板並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップと基板とは、熱膨張係数において大きく異なることが多く、特に加熱後に冷却されたときに、熱膨張係数の差によって生じる応力が接着部材に加えられる。そして、接着部材の剥離が生じる可能性があった。
【0003】
さらに、例えば接着部材として異方性導電接着部材を用いた場合には、半導体チップ及び基板によって異方性導電膜を加圧したときに、半導体チップのバンプと、基板に形成された配線パターンと、の間に導電粒子を残して絶縁樹脂を流出させることが難しい場合があった。
【0004】
これらの問題は、接着部材の両面に対して異なる性質が要求されることに起因するが、従来の接着部材はこれに対応できていなかった。
【特許文献1】特開2000−286298号公報
【特許文献2】特開平10−84014号公報
【特許文献3】特開平10−13002号公報
【特許文献4】特開平5−13119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述したような課題を解決するものであり、その目的は、両面に対する異なる性質の要求に対応できる接着部材、これを使用した半導体装置及びその製造方法、回路基板並びに電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る接着部材は、電子部品を接着するために使用され、厚さ方向において物性が異なる。
【0007】
これによれば、接着部材の両面において物性が異なるので、それぞれの面に接着される材料に適するように構成することができる。
【0008】
(2)この接着部材は、異方性導電膜であってもよい。
【0009】
異方性導電膜でも、それぞれの面に接着される材料に適するように構成することができる。
【0010】
(3)この接着部材は、第1の樹脂を基材とする第1の層と、第2の樹脂を基材とする第2の層と、の2層構造をなし、前記第1の樹脂と前記第2の樹脂とが異なる物性を有してもよい。
【0011】
これによれば、第1の層を構成する第1の樹脂と、第2の層を構成する第2の樹脂と、が異なる物性を有する。したがって、第1の層に密着する部材と、第2の層に密着する部材とのそれぞれに適した物性を有するように、第1の樹脂と第2の樹脂を選択することができる。
【0012】
(4)この接着部材において、
前記第1の樹脂の熱膨張係数は、前記第2の樹脂の熱膨張係数よりも小さくてもよい。
【0013】
これによれば、熱膨張係数の小さい部材に第1の層が密着し、熱膨張係数の大きい部材に第2の層が密着したときに、第1及び第2の樹脂がそれぞれに対応した熱膨張係数を有するので、剥離が生じにくくなっている。
【0014】
(5)この接着部材において、
前記第1の樹脂のみにシリカ系フィラーが混入されてもよい。
【0015】
こうすることで、第1の樹脂の熱膨張係数を小さく、詳しくはシリコンの熱膨張係数に近づけることができる。
【0016】
(6)この接着部材において、
前記第1の樹脂及び前記第2の樹脂には、シリカ系フィラーが混入され、前記第1の樹脂への前記シリカ系フィラーの混入率が、第2の樹脂への前記シリカ系フィラーの混入率よりも大きくてもよい。
【0017】
こうすることで、第2の樹脂の熱膨張係数よりも、第1の樹脂の熱膨張係数を小さく、詳しくはシリコンの熱膨張係数に近づけることができる。
【0018】
(7)この接着部材において、
前記第1の樹脂よりも、前記第2の樹脂は、低弾性化されていてもよい。
【0019】
こうすることで、第2の層が熱膨張係数の大きい部材に密着したときに、第2の樹脂が伸びやすくて追従性が高いので、剥離が生じにくくなる。
【0020】
(8)この接着部材において、
前記第2の樹脂は、変成されたエポキシ樹脂であってもよい。
【0021】
これにより、第2の樹脂を低弾性化することができる。
【0022】
(9)この接着部材において、
前記第1の樹脂は、エポキシ樹脂であり、
前記第2の樹脂は、ビフェニル樹脂であってもよい。
【0023】
これにより、第2の樹脂が第1の樹脂よりも低弾性化する。
【0024】
(10)この接着部材において、
前記第2の樹脂のみに、導電粒子が分散されていてもよい。
【0025】
こうすることで、第1の層に密着する部材の表面には、導電粒子が接触しないので電気的な短絡が生じない。
【0026】
(11)この接着部材において、
導電粒子が前記第2の樹脂のみに分散され、
前記第2の層は、前記第1の層よりも厚みが薄く、前記第2の樹脂は、溶融したときの粘度が前記第1の樹脂よりも高くてもよい。
【0027】
これによれば、第2の樹脂のみに導電粒子が分散されているので、第1の層に密着する部材の表面には、導電粒子が接触しないため電気的な短絡が生じない。また、第2の層が第1の層よりも薄いので、導電粒子の数を減らして電気的な短絡を防止することができる。さらに、導電粒子の数が少ないにもかかわらず、第2の樹脂の溶融粘度が高いことで、導電粒子を確実に残存させることができる。その一方で、第2の樹脂よりも溶融粘度の低い第1の樹脂は、流出させやすくなっている。
【0028】
(12)この接着部材において、
前記第2の樹脂のみにシリカ系フィラーが混入されてもよい。
【0029】
こうすることで、第2の樹脂の溶融粘度を上げることができる。
【0030】
(13)この接着部材において、
前記第1の樹脂及び前記第2の樹脂には、シリカ系フィラーが混入され、前記第2の樹脂への前記シリカ系フィラーの混入率が、第1の樹脂への前記シリカ系フィラーの混入率よりも大きくてもよい。
【0031】
こうすることで、第2の樹脂の溶融粘度を上げることができる。
【0032】
(14)この接着部材において、
前記第2の樹脂は、前記第1の樹脂よりも分子量が大きくてもよい。
【0033】
こうすることで、第2の樹脂の溶融粘度を上げることができる。
【0034】
(15)本発明に係る半導体装置は、半導体チップと、配線パターンが形成された基板と、前記半導体チップと前記配線パターンとを電気的に接続する接着部材と、を含み、
前記接着部材は、厚さ方向において物性が異なる。
【0035】
これによれば、接着部材の両面において物性が異なるので、それぞれの面に接着される材料に適するように構成することができる。
【0036】
(16)この半導体装置において、
前記接着部材は、異方性導電膜であってよい。
【0037】
異方性導電膜でも、それぞれの面に接着される材料に適するように構成することができる。
【0038】
(17)この半導体装置において、
前記接着部材は、第1の樹脂を基材として前記半導体チップ側に配置される第1の層と、第2の樹脂を基材として前記基板側に配置される第2の層と、の2層構造をなし、前記第1の樹脂と前記第2の樹脂とが異なる物性を有してもよい。
【0039】
これによれば、接着部材の第1の層を構成する第1の樹脂と、第2の層を構成する第2の樹脂と、が異なる物性を有する。したがって、第1の層に密着する半導体チップと、第2の層に密着する基板とのそれぞれに適した物性を有するように、第1の樹脂と第2の樹脂を選択することができる。
【0040】
(18)この半導体装置において、
前記接着部材は、上述した接着部材であってもよい。
【0041】
(19)本発明に係る回路基板には、上記半導体装置が搭載されている。
【0042】
(20)本発明に係る電子機器は、上記半導体装置を備える。
【0043】
(21)本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体チップと、配線パターンが形成された基板の前記配線パターンと、の間に接着部材を設けて、前記半導体チップと前記基板とを加圧して、前記半導体チップと配線パターンとを電気的に接続する工程を含み、
前記接着部材は、厚さ方向において物性が異なる。
【0044】
これによれば、接着部材の両面において物性が異なるので、それぞれの面に接着される材料に適するように構成することができる。
【0045】
(22)この半導体装置の製造方法において、
前記接着部材は、異方性導電膜であってもよい。
【0046】
異方性導電膜でも、それぞれの面に接着される材料に適するように構成することができる。
【0047】
(23)この半導体装置の製造方法において、
前記接着部材を、第1の樹脂を基材とする第1の層と、前記第1の樹脂とは異なる物性を有する第2の樹脂を基材とする第2の層と、の2層構造で設けてもよい。
【0048】
これによれば、接着部材の第1の層を構成する第1の樹脂と、第2の層を構成する第2の樹脂と、が異なる物性を有する。したがって、半導体チップ及び基板に密着するのに適した物性を有するように、第1の樹脂と第2の樹脂を選択することができる。
【0049】
(24)この半導体装置の製造方法において、
前記第1及び第2の層を順に設けてもよい。
【0050】
(25)この半導体装置の製造方法において、
前記第1の層を前記半導体チップ側に配置し、前記第2の層を前記基板側に配置してもよい。
【0051】
これによれば、第1の層に密着する半導体チップと、第2の層に密着する基板とのそれぞれに適した物性を有するように、第1の樹脂と第2の樹脂を選択することができる。
【0052】
(26)この半導体装置の製造方法において、
前記接着部材は、上述した接着部材であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
【0054】
図1A〜図1Cは、本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す図である。図1Cには、その製造方法によって完成した半導体装置1が示されている。
【0055】
半導体装置1は、半導体チップ10と、基板20と、を含む。半導体チップ10の平面形状が矩形(正方形又は長方形)である場合には、少なくとも一辺(対向する二辺又は全ての辺を含む)に沿って、半導体チップ10の一方の面(能動面)に複数の電極12が形成されている。あるいは、半導体チップ10の一方の面の中央に複数の電極12を形成してもよい。電極12には、ハンダボール、金ワイヤーボール、金メッキなどによってバンプ14が設けられることが多いが、これは必須ではない。電極12自体がバンプの形状をなしていてもよい。電極12とバンプ14との間にバンプ金属の拡散防止層として、ニッケル、クロム、チタン等を付加してもよい。
【0056】
基板20の全体形状は特に限定されず、矩形、多角形、あるいは複数の矩形を組み合わせた形状のいずれであってもよいが、半導体チップ10の平面形状の相似形とすることができる。基板20の厚みは、その材質により決まることが多いが、これも限定されない。基板20は、有機系又は無機系のいずれの材料から形成されたものであってもよく、これらの複合構造からなるものであってもよいが、打ち抜けることが好ましい。有機系の材料から形成されたテープ状のフレキシブル基板を打ち抜いて基板20を形成することができる。
【0057】
基板20として、多層基板やビルドアップ型基板を用いても良い。ビルドアップ型基板や多層基板を利用した場合、平面的に拡がるベタグランド層上に配線パターンを形成すれば、余分な配線パターンのないマイクロストリップ構造となるので、信号の伝送物性を向上させることができる。
【0058】
基板20の一方の面には、複数の配線(リード)が形成されて、配線パターン22を構成している。複数の配線のうちの少なくとも一つ又は全部は、他の配線と電気的に導通しておらず、電気的に独立している。あるいは、複数の配線のうち、半導体チップ10の電源やグランドなど共通の場所に接続されるものは、相互に接続されていてもよい。それぞれの配線の両端には、ランド部が形成されている。ランド部は、その間を接続する部分よりも大きい幅を有するように形成されていることが多い。一方のランド部を基板20の、最終的な製品としての半導体装置の端部に近い位置に形成し、他方のランド部を基板20の中央に近い位置に形成してもよい。配線パターン22における半導体チップ10の電極12と接合される部分(例えばランド部)に、バンプが形成されていてもよい。その場合に、半導体チップ10のバンプ14を省略することもできる。
【0059】
基板20には、複数のスルーホール24が形成されている。それぞれのスルーホール24上を、いずれかの配線が通るように、配線パターン22は形成されている。配線の端部がスルーホール24上に位置してもよい。配線の端部にランド部が形成されている場合には、ランド部がスルーホール24上に位置する。
【0060】
図1Cに示すように、基板20には外部端子40が設けられている。ハンダボールを外部端子40としてもよい。外部端子40は配線パターン22に電気的に接続されている。例えば、スルーホール24内にメッキなどで導電部材を設けたり、スルーホール内にハンダを設けたりして、外部端子40を配線パターン22に電気的に接続することができる。
【0061】
配線パターン22には、メッキが施されている。配線パターン22を銅で形成し、ニッケル、金、ハンダ又はスズでメッキを施すことができる。メッキを施すことで、導電性が確保される。具体的には、外部端子40との良好なハンダ付けが可能になり、配線の表面の酸化が防止され、バンプとの電気的な接続抵抗が低下する。
【0062】
半導体チップ10は、基板20に対してフェースダウン実装される。半導体チップ10のバンプ14と、基板20に形成された配線パターン22と、が電気的に接続される。本発明では、上述した外部端子40は、必ずしも必要ではない。最低限、半導体チップ10と、相対する配線パターン22が形成された基板20と、があって、その間に接着部材30が存在する構成であればよい。接着部材30も最低限、絶縁性を有している樹脂(アンダーフィル樹脂)であれば良く、異方性導電性を有する樹脂でもよい。半導体チップ10のバンプ14と、基板20の配線パターン22とのフェースダウン接合は、ハンダなどロウ材などによる金属間接合による方法、樹脂の収縮を利用して機械的な接合強度を保つ方法、金バンプ付きの半導体チップを加熱・加圧する方法(必要に応じて超音波接合する)、異方性導電膜を用いる方法などが知られており、どの方法を適用してもよい。
【0063】
接着部材30は、第1の層32及び第2の層34の2層構造をなす。第1の層32は第1の樹脂から構成され、第2の層34は第2の樹脂から構成される。本実施の形態では、第1の樹脂と第2の樹脂とが異なる物性を有する。図1Aには、接着部材30として、異方性導電膜を使用した例が示されている。接着部材30は、バインダに導電粒子36が分散されてなる。
【0064】
(熱膨張係数が異なる場合)
第1の樹脂の熱膨張係数(例えば20〜40(10−6/℃))が、第2の樹脂の熱膨張係数(例えば40〜200(10−6/℃))よりも小さくてもよい。第1の樹脂で構成される第1の層32は、半導体チップ10に密着し、第2の樹脂で構成される第2の層34は、基板20に密着する。ここで、半導体チップ10は、熱膨張係数の小さい材料(例えばシリコン等)から構成されることが多く、基板20は、熱膨張係数の多い材料(例えばポリイミド樹脂等)から構成されることが多い。
【0065】
熱膨張係数の小さい第1の樹脂から構成される第1の層32と、熱膨張係数の小さい半導体チップ10との間には、熱膨張係数の差が小さいので、接着部材30の剥離が生じにくい。第1の樹脂の熱膨張係数をシリコンの熱膨張係数に近づけるには、第1の樹脂にシリカ系フィラーを例えば30〜60%の混入率で混入させてもよい。その場合には、第2の樹脂にはシリカ系フィラーを混入させないことが好ましい。あるいは、第1の樹脂及び第2の樹脂にシリカ系フィラーを混入しても、第1の樹脂へのシリカ系フィラーの混入率が、第2の樹脂へのシリカ系フィラーの混入率よりも大きければよい。その場合、シリカ系フィラーの混入率の差が30〜60%程度であることが好ましい。
【0066】
熱膨張係数の大きい第2の樹脂から構成される第2の層34と、熱膨張係数の大きい基板20との間には、熱膨張係数の差が小さいので、接着部材30の剥離が生じにくい。
【0067】
接着部材30として異方性導電膜を用いる場合で、第1及び第2の樹脂の熱膨張係数が異なる場合に、その一方にのみ導電粒子36を分散させてもよい。具体的には、半導体チップ10のバンプ14よりも電気的接続面積の大きい配線パターン22に密着する第2の層34のみに、導電粒子36を分散させることが好ましい。こうすることで、接着部材30(異方性導電膜)にバンプ14が沈み込んだときに、バンプ14の下に導電粒子36が残存する確率が高くなり、電気的接続の信頼性が高まる。また、半導体チップ10に密着する第1の層32に導電粒子36が分散していないので、半導体チップ10の電極12間の短絡が防止される。
【0068】
(弾性率が異なる場合)
第1の樹脂よりも、第2の樹脂が低弾性化されていてもよい。例えば、第1の樹脂の弾性率が約3〜10(GPa)であり、第2の樹脂の弾性率が約1〜3GPaであってもよい。こうすることで、第2の樹脂からなる第2の層34が、熱膨張係数の大きい基板20に密着したときに、第2の樹脂が伸びやすくて追従性が高いので剥離が生じにくくなる。
【0069】
第2の樹脂を低弾性化するには、エポキシ樹脂を変成させて第2の樹脂としてもよい。あるいは、第1の樹脂はエポキシ樹脂であり、第2の樹脂はビフェニル樹脂であってもよい。
【0070】
接着部材30として異方性導電膜を用いる場合で、第1及び第2の樹脂の弾性率が異なる場合にも、その一方にのみ導電粒子36を分散させてもよい。具体的には、半導体チップ10のバンプ14よりも、電気的接続面積の大きい配線パターン22に密着する第2の層34を構成する第2の樹脂のみに、導電粒子36を分散させることが好ましい。こうすることで、接着部材30にバンプ14が沈み込んだときに、バンプ14の下に導電粒子36が残存する確率が高くなり、電気的接続の信頼性が高まる。また、半導体チップ10に密着する第1の層32を構成する第1の樹脂に導電粒子36が分散していないので、半導体チップ10の電極12間の短絡が防止される。
【0071】
(溶融粘度が異なる場合)
接着部材30として異方性導電膜を用いる場合で、第2の樹脂は、溶融したときの粘度が第1の樹脂よりも高くてもよい。これによれば、接着部材30にバンプ14が沈み込んだときに、溶融粘度の低い第1の樹脂は流出しやすく、溶融粘度の高い第2の樹脂は流出しにくい。第2の樹脂の溶融粘度が高いので、配線パターン22上に導電粒子36が残存しやすい。この場合、配線パターン22に密着する第2の層34を構成する第2の樹脂のみに導電粒子36を分散させてもよい。半導体チップ10に密着する第1の層32を構成する第1の樹脂に導電粒子36が分散していないので、半導体チップ10の電極12間の短絡が防止される。
【0072】
さらに、第2の層32は第1の層34よりも厚みが薄くてもよい。これにより、導電粒子36の数を減らして電気的な短絡を防止することができ、導電粒子36の数が少ないにもかかわらず、第2の樹脂の溶融粘度が高いことで、導電粒子36を確実に配線パターン22上残存させることができる。
【0073】
接着部材30として異方性導電膜を用いる場合で、第2の樹脂の溶融粘度を第1の樹脂よりも高くするには、第2の樹脂のみにシリカ系フィラーを混入してもよい。あるいは、第1の樹脂及び第2の樹脂にシリカ系フィラーを混入し、第2の樹脂へのシリカ系フィラーの混入率を、第1の樹脂へのシリカ系フィラーの混入率よりも大きくしてもよい。あるいは、第2の樹脂の分子量を、第1の樹脂の分子量よりも大きくしてもよい。
【0074】
以上、本実施の形態について、2層の物性が異なる樹脂について述べたが、さらに好ましくは、層間の物性差が段階的ではなく連続的に変化している方が、厚さ方向の物性差が存在しないため有益である。2層界面での物性差による剥離等が発生しにくいためである。そのため、具体的には、小さい差を以て物性の異なる多層からなる樹脂や、連続的に厚さ方向で物性が変化する樹脂を使用することができる。
【0075】
2層の異方性導電膜は、1層の異方性導電膜をシート状に作成した後、さらにその層の上に、別の物性を有する1層の異方性導電膜をシート状に作成することで得られる。その後の取り扱いは1層の異方性導電膜と同様である。多層の場合には、この作業を繰り返す。連続的に厚さ方向に物性の異なる異方性導電膜を形成するには、2層もしくは多層の異方性導電膜を作成するときに使用される溶剤によって、あるいは若干の加熱によって、層間の相互拡散を生じさせる。これによって連続層を得ることができる。
【0076】
本実施の形態に係る半導体装置は、上記のように構成されており、以下その製造方法を説明する。
【0077】
図1Aに示すように、半導体チップ10の電極12(又はバンプ14)が形成された面と、基板20の配線パターン22が形成された面と、を対向させて配置する。また、半導体チップ10と基板20との間に、接着部材30を配置する。詳しくは、第1の層32を半導体チップ10に向け、第2の層34を基板20に向けて接着部材30を設ける。なお、接着部材30は、半導体チップ10と基板20とのいずれか一方に貼り付けておくことが好ましい。
【0078】
接着部材30が複数層(例えば第1及び第2の層32、34の2層)からなる場合には、複数層(例えば第1の層32と第2の層34)の各層を順に設けてもよい。詳しくは、半導体チップ10又は基板20の一方に各層を順に設けてもよいし、半導体チップ10にいずれかの層(例えば第1の層32)を設けておき、基板20に他の層(例えば第2の層34)を設けてもよい。
【0079】
図1Bに示すように、半導体チップ10と基板20とを接着部材30を介して密着させる。詳しくは、半導体チップ10と基板20とを、両者の間隔が狭くなる方向に押圧する。これにより、半導体チップ10の電極12(又はバンプ14)と配線パターン22との間に導電粒子36が挟まれて介在し、両者間の電気的な接続が図られる。
【0080】
図1Cに示すように、外部端子40を基板20に設けることで、半導体装置1を得ることができる。図1Cには、外部端子40が半導体チップ10の搭載領域内にのみ設けられたFAN−IN型の半導体装置が示されているが、これに限定されるものではない。例えば、半導体チップ10の搭載領域外にのみ外部端子40が設けられたFAN−OUT型の半導体装置や、これにFAN−IN型を組み合わせたFAN−IN/OUT型の半導体装置にも本発明を適用することができる。なお、FAN−OUT型又はFAN−IN/OUT型の半導体装置では、異方性導電膜によって、半導体チップの外側にスティフナを貼り付けても良い。
【0081】
本実施の形態では、第1及び第2の層32、34からなる接着部材30を使用するので、上述した効果を達成することができる。
【0082】
本実施の形態は、半導体チップ10をBGA(Ball Grid Array)型の基板20にフェースダウン実装する例で説明したが、前述したように、基板20の形態体にかかわらず、単に半導体チップ10を基板20にフェースダウン実装した全ての実装形態に適用することができる。
【0083】
図2には、本実施の形態に係る半導体装置1を実装した回路基板50が示されている。回路基板50には例えばガラスエポキシ基板等の有機系基板を用いることが一般的である。回路基板50には例えば銅からなる配線パターン52が所望の回路となるように形成されていて、それらの配線パターンと半導体装置1の外部端子40とを機械的に接続することでそれらの電気的導通を図る。
【0084】
そして、本発明を適用した半導体装置1を有する電子機器60として、図3には、ノート型パーソナルコンピュータが示されている。
【0085】
なお、上記本発明の構成要件「半導体チップ」を「電子素子」に置き換えて、半導体チップと同様に電子素子(能動素子か受動素子かを問わない)を、基板に実装して電子部品を製造することもできる。このような電子素子を使用して製造される電子部品として、例えば、抵抗器、コンデンサ、コイル、発振器、フィルタ、温度センサ、サーミスタ、バリスタ、ボリューム又はヒューズなどがある。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1A〜図1Cは、本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る回路基板を示す図である。
【図3】図3は、本発明に係る方法を適用して製造された半導体装置を備える電子機器を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を接着するために使用され、厚さ方向において物性が異なる接着部材。
【請求項2】
異方性導電膜である請求項1記載の接着部材。
【請求項3】
請求項2記載の接着部材において、
第1の樹脂を基材とする第1の層と、第2の樹脂を基材とする第2の層と、の2層構造をなし、前記第1の樹脂と前記第2の樹脂とが異なる物性を有する接着部材。
【請求項4】
請求項3記載の接着部材において、
前記第1の樹脂の熱膨張係数は、前記第2の樹脂の熱膨張係数よりも小さい接着部材。
【請求項5】
請求項4記載の接着部材において、
前記第1の樹脂のみにシリカ系フィラーが混入される接着部材。
【請求項6】
請求項4記載の接着部材において、
前記第1の樹脂及び前記第2の樹脂には、シリカ系フィラーが混入され、前記第1の樹脂への前記シリカ系フィラーの混入率が、第2の樹脂への前記シリカ系フィラーの混入率よりも大きい接着部材。
【請求項7】
請求項3記載の接着部材において、
前記第1の樹脂よりも、前記第2の樹脂は、低弾性化されている接着部材。
【請求項8】
請求項7記載の接着部材において、
前記第2の樹脂は、変成されたエポキシ樹脂である接着部材。
【請求項9】
請求項7記載の接着部材において、
前記第1の樹脂は、エポキシ樹脂であり、
前記第2の樹脂は、ビフェニル樹脂である接着部材。
【請求項10】
請求項3記載の接着部材において、
前記第2の樹脂のみに、導電粒子が分散されている接着部材。
【請求項11】
請求項3記載の接着部材において、
導電粒子が前記第2の樹脂のみに分散され、
前記第2の層は、前記第1の層よりも厚みが薄く、前記第2の樹脂は、溶融したときの粘度が前記第1の樹脂よりも高い接着部材。
【請求項12】
請求項11記載の接着部材において、
前記第2の樹脂のみにシリカ系フィラーが混入される接着部材。
【請求項13】
請求項11記載の接着部材において、
前記第1の樹脂及び前記第2の樹脂には、シリカ系フィラーが混入され、前記第1の樹脂への前記シリカ系フィラーの混入率が、第2の樹脂への前記シリカ系フィラーの混入率よりも大きい接着部材。
【請求項14】
請求項11記載の接着部材において、
前記第2の樹脂は、前記第1の樹脂よりも分子量が大きい接着部材。
【請求項15】
半導体チップと、配線パターンが形成された基板と、前記半導体チップと前記配線パターンとを電気的に接続する接着部材と、を含み、
前記接着部材は、厚さ方向において物性が異なる半導体装置。
【請求項16】
請求項15記載の半導体装置において、
前記接着部材は、異方性導電膜である半導体装置。
【請求項17】
請求項16記載の半導体装置において、
前記接着部材は、第1の樹脂を基材として前記半導体チップ側に配置される第1の層と、第2の樹脂を基材として前記基板側に配置される第2の層と、の2層構造をなし、前記第1の樹脂と前記第2の樹脂とが異なる物性を有する半導体装置。
【請求項18】
請求項17記載の半導体装置において、
前記接着部材は、請求項4から請求項14のいずれかに記載した接着部材である半導体装置。
【請求項19】
請求項15から請求項17のいずれかに記載の半導体装置が搭載された回路基板。
【請求項20】
請求項15から請求項17のいずれかに記載の半導体装置を備える電子機器。
【請求項21】
半導体チップと、配線パターンが形成された基板の前記配線パターンと、の間に接着部材を設けて、前記半導体チップと前記基板とを加圧して、前記半導体チップと配線パターンとを電気的に接続する工程を含み、
前記接着部材は、厚さ方向において物性が異なる半導体装置の製造方法。
【請求項22】
請求項21記載の半導体装置の製造方法において、
前記接着部材は、異方性導電膜である半導体装置の製造方法。
【請求項23】
請求項22記載の半導体装置の製造方法において、
前記接着部材を、第1の樹脂を基材とする第1の層と、前記第1の樹脂とは異なる物性を有する第2の樹脂を基材とする第2の層と、の2層構造で設ける半導体装置の製造方法。
【請求項24】
請求項23記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1及び第2の層を順に設ける半導体装置の製造方法。
【請求項25】
請求項23記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の層を前記半導体チップ側に配置し、前記第2の層を前記基板側に配置する半導体装置の製造方法。
【請求項26】
請求項21から請求項25のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記接着部材は、請求項4から請求項14のいずれかに記載した接着部材である半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−24941(P2008−24941A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202834(P2007−202834)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【分割の表示】特願2000−600302(P2000−600302)の分割
【原出願日】平成12年2月9日(2000.2.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】