説明

半導体装置

【課題】 半導体装置の耐圧性を向上させることを目的とする。
【解決手段】 半導体基板10と、半導体基板10上に形成されたゲート絶縁膜11と
、を備え、半導体基板10が、ゲート絶縁膜直下領域13に対して、ゲート絶縁膜直下領
域13のドレイン領域側側部領域14が掘り込まれた構造を有する。さらに、半導体基板
10が、ゲート絶縁膜直下領域13に対して、ゲート絶縁膜直下領域13のソース領域側
側部領域15が掘り込まれた構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MOS型トランジスタは、ドレイン領域端部に、不純物濃度の低いLDD(Lightly Doped Dra
in)領域を備え、LDD領域を備えることでドレイン領域端部での電界を緩和している。これ
により、ドレイン領域端部で発生したホットキャリアがゲート絶縁膜に注入されることを
低減し、ゲート絶縁膜のイオン劣化を抑制している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、近年、デバイスの微細化が進むにつれ、ドレイン領域端部での電界が強
くなり、ホットキャリアによるゲート絶縁膜のイオン劣化が大きな問題となっている。こ
のため、高耐圧MOSFETを実現することが困難になってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-214964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、半導体装置の耐圧性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成されたゲー
ト絶縁膜と、を備え、前記半導体基板が、ゲート絶縁膜直下領域に対して、前記ゲート絶
縁膜直下領域のドレイン領域側側部領域が掘り込まれた構造を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、半導体装置の耐圧性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1に係る半導体装置の断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る半導体装置の電界分布と、従来の半導体装置の電界分布とを比較する図である。
【図3】本発明の実施例1に係る半導体装置の製造工程を示す装置断面図である。
【図4】本発明の実施例2に係る半導体装置の断面図である。
【図5】本発明の実施例2に係る半導体装置の製造工程を示す装置断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1を参照して本発明の実施例1に係る半導体装置について説明する。図1は、本発明
の実施例1に係る半導体装置の断面図である。
【0011】
図1に示すように、半導体装置1は、半導体基板10と、半導体基板10上に形成され
たゲート絶縁膜11と、ゲート絶縁膜11上に形成されたゲート電極12とを備える。
【0012】
ゲート電極12の側方の半導体基板10内にはドレイン領域20が形成されている。ゲ
ート電極12を挟んで、前記ドレイン領域20と対向する側の半導体基板10内にはソー
ス領域30が形成されている。
【0013】
半導体基板10は、ゲート絶縁膜11の直下に位置する領域(ゲート絶縁膜直下領域)
13と、ゲート絶縁膜直下領域13のドレイン領域側の側部に位置する領域(ドレイン領
域側側部領域)14と、ゲート絶縁膜直下領域13のソース領域側の側部に位置する領域
(ソース領域側側部領域)15とを含む。半導体基板10は、ゲート絶縁膜直下領域14
に対して、ドレイン領域側側部領域14とソース領域側側部領域15が略垂直に掘り込ま
れた構造を有する。ドレイン領域側側部領域14は、ゲート絶縁膜直下領域13に対して
5nm以上、掘り込まれた構造であることが好ましい。このように掘り込まれた構造を有す
ることによる効果については、後述する。
【0014】
半導体基板1は、半導体基板10に形成された素子分離領域40と、ゲート電極12側
部に形成されたサイドウォール41及びオフセットスペーサ43と、ゲート電極12上部
、ドレイン領域20上部、ソース領域30上部に形成されたシリサイド層42を備える。
【0015】
さらに、半導体基板10のドレイン領域側及びソース領域側には、LDD領域21、31
が形成されている。LDD領域21、31は、半導体基板10の掘り込まれた構造の側壁1
6部分に回り込むように形成されている。
【0016】
次に、図2を参照して、半導体装置1が前述の半導体基板10の掘り込まれた構造を有
する効果について説明する。図2は、本発明の実施例1に係る半導体装置の電界分布と、
従来の半導体装置の電界分布とを比較する図である。
【0017】
図2(a)に、従来の半導体装置のゲート絶縁膜及びドレイン領域における電界分布を
示す。従来の半導体装置では、ゲート絶縁膜11c下の半導体基板10cにおける電界分
布の電界強度のピークの位置は、ゲート絶縁膜11c下部から10nm程度の深さにあった

【0018】
図2(b)に、本実施例の半導装置のゲート絶縁膜及びドレイン領域における電界分布
を示す。本実施例の半導体装置では、ゲート絶縁膜11下の半導体基板10cにおける電
界分布の電界強度のピーク位置は、ゲート絶縁膜11c下部から 20nm程度の深さにあ
る。本実施例の半導体装置では、半導体基板が前述の掘り込まれた構造を有するため、掘
り込まれた構造の深さ分程度、電界強度のピーク位置がゲート絶縁膜下部から離れる。本
実施例のように、電界強度のピーク位置をゲート絶縁膜から離すことで、ホットエレクト
ロンの発生する電界強度の強い領域をゲート絶縁膜から離すことが可能となる。
【0019】
ゲート絶縁膜11、11cから距離d離れた半導体基板10、10c内の位置で電子が
発生した場合、この電子がゲート絶縁膜11、11cに注入される確率P(d)は、次式で
与えられる。
【0020】
P(d)=Aexp(-d/λ)
ここで、Aは定数、λは電子の平均自由行程である。上式に示すように、ゲート絶縁膜か
らの距離dが大きいほど、電子がゲート絶縁膜に注入される確率は低くなる。
【0021】
このように、本実施例では、ホットキャリアの発生する位置をゲート絶縁膜から離すこ
とで、ホットキャリアがゲート絶縁膜に注入される確率を低くすることを可能としている
。これにより、ゲート絶縁膜がイオン劣化を抑制することが可能となる。
【0022】
次に、図3を参照して、本実施例の半導体装置の製造方法について説明する。図3(a
)、図3(b)は、本発明の実施例1に係る半導体装置の製造工程を示す装置断面図であ
る。
【0023】
まず、図3(a)に示すように、従来の方法により、半導体基板10に素子分離領域4
0、絶縁膜50、ゲート電極12を形成する。
【0024】
次に、図3(b)に示すように、必要に応じてマスクを形成し、絶縁膜50と半導体基
板10とをRIE(Reactive Ion Etching)によりエッチングする。これにより、ゲート
絶縁膜11が形成され、さらに、半導体基板10に、前述の掘り込まれた構造が形成され
る。
【0025】
次に、半導体基板10にイオン注入を行うことにより、LDD領域21、31を形成する
。次いで、従来の方法により、ゲート電極12にオフセットスペーサ43、サイドウォー
ル41を形成した後、イオン注入によりソース領域20、ドレイン領域30を形成する。
次いで、ゲート電極12、ドレイン領域20、ソース領域30上部にシリサイド層42を
形成する。これにより、図1に示す、半導体装置が形成される。
【0026】
本実施例によれば、前述のように、半導体基板が、ゲート絶縁膜直下領域に対して、ド
レイン領域及びソース領域が掘り込まれた構造を有する。これにより、半導体基板のドレ
イン領域での電界のピーク位置をゲート絶縁膜から離すことができ、ゲート絶縁膜にホッ
トエレクトロンが注入されることを抑制可能となる。これにより、ゲート絶縁膜のイオン
劣化を抑制でき、半導体装置の高耐圧化を図ることができる。
【実施例2】
【0027】
次に、図4を参照して本発明の実施例2に係る半導体装置について説明する。図4は、
本発明の実施例2に係る半導体装置の断面図である。図1と同様の構成については、同一
の符号を付し、説明を省略する。
【0028】
図4に示すように、半導体装置2の半導体基板10は、ゲート絶縁膜直下領域13に対
して、ドレイン領域側側部領域14が略垂直に掘り込まれた構造を有する。ドレイン領域
側側部14は、ゲート絶縁膜直下領域13に対して5nm以上、掘り込まれた構造であるこ
とが好ましい。このように掘り込まれた構造を有することにより、実施例1と同様の効果
が得られる。
【0029】
次に、図5を参照して、本実施例の半導体装置の製造方法について説明する。図5(a
)、図5(b)は、本発明の実施例2に係る半導体装置の製造工程を示す装置断面図であ
る。
【0030】
まず、図5(a)に示すように、従来の方法により、半導体基板10に素子分離領域4
0、絶縁膜50、ゲート電極12を形成する。
【0031】
次に、図5(b)に示すように、ソース領域に開口部を有するマスクを形成し、絶縁膜
50と半導体基板10とをRIEによりエッチングする。これにより、ゲート絶縁膜11
が形成され、さらに、半導体基板10に、前述の掘り込まれた構造が形成される。
【0032】
次に、半導体基板10にイオン注入を行うことにより、LDD領域21、31を形成する
。次いで、従来の方法により、ゲート電極12にオフセットスペーサ43及びサイドウォ
ール41を形成した後、イオン注入によりソース領域20、ドレイン領域30を形成する
。次いで、ゲート電極12、ドレイン領域20、ソース領域30上部にシリサイド層42
を形成する。これにより、図4に示す、半導体装置が形成される。
【0033】
なお、前述した各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明
を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更
/改良されうると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1、2 半導体装置
10 半導体基板
11 ゲート絶縁膜
12 ゲート電極
13 ゲート電極直下領域
14 ドレイン領域側側部領域
15 ソース領域側側部領域
20 ドレイン領域
30 ソース領域
40 素子分離領域
41 サイドウォール
42 シリサイド層
43 オフセットスペーサ
50 絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、
を備え、
前記半導体基板が、ゲート絶縁膜直下領域に対して、前記ゲート絶縁膜直下領域のドレ
イン領域側側部領域が掘り込まれた構造を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板が、前記ゲート絶縁膜直下領域に対して、前記ゲート絶縁膜直下領域の
ソース領域側側部領域が掘り込まれた構造を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板が、前記ゲート絶縁膜直下領域に対して、前記ゲート絶縁膜直下領域の
ドレイン領域側側部領域が5nm以上掘り込まれた構造を有することを特徴とする請求項1
又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体基板のドレイン領域側にLDD領域を備え、
LDD領域は、前記掘り込まれている構造の側壁部分に回り込むように形成されているこ
とを特徴とする請求項1乃至3に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−211117(P2011−211117A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79835(P2010−79835)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】