説明

半導体装置

【課題】接続端子が素地よりも高い電気抵抗率を有する被膜材で被膜されている場合であっても、接続端子と接地プローブとの導通性を確保するようにした半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置において、半導体素子と、素地よりも高い電気抵抗率を有する被膜材で被膜され、前記半導体素子に接続されると共に溶接によって外部部材と接続される接続端子26,28と、接続端子26,28が溶接される際に生じる溶接電流Iを接地側に流すための接地プローブと接続端子26,28の素地とが接触するように、接続端子26,28の接地プローブ46と接触させる部位に形成される、被膜材が部分的に除去された被膜材除去部38とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に記載されるように、半導体装置の接続端子(電力端子150)を外部部材(電力バスパー30)に対して溶接する際に生じる溶接電流を接地側(アースポイント333)に逃がすようにし、溶接電流が半導体装置の搭載部品側に流れることによる搭載部品の劣化を防ぐようにした技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−328593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、接続端子が素地よりも高い電気抵抗率を有する被膜材で被膜されている場合、接続端子と溶接機の接地プローブとの導通性を確実なものとするために、接地プローブで被膜層を突き破り、接地プローブを接続端子の素地に接触させるようにしている。この場合、接地プローブの先端形状を鋭くし、接地プローブの先端に被膜層を突き破るのに必要な圧力を加えている。このため、使用に伴って接地プローブの先端が摩耗することとなる。それ故、接地プローブの交換サイクルが短いことが問題となっている。
【0005】
そこで、本発明は、接続端子が素地よりも高い電気抵抗率を有する被膜材で被膜されている場合であっても、接続端子と接地プローブとの導通性を確保するようにした半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の半導体装置は、半導体素子と、素地よりも高い電気抵抗率を有する被膜材で被膜され、前記半導体素子に接続されると共に溶接によって外部部材と接続される接続端子と、前記接続端子が溶接される際に生じる溶接電流を接地側に流すための接地プローブと前記接地端子の素地とが接触するように、前記接続端子の前記接地プローブと接触させる部位に形成される、前記被膜材が部分的に除去された被膜材除去部と、を備えることを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の半導体装置では、接続端子は素地よりも高い電気抵抗率を有する被膜材で被膜されているが、接地プローブと接触させる部位は部分的に被膜材が除去されている。従って、接続端子が素地よりも高い電気抵抗率を有する被膜材で被膜されている場合であっても、接続端子と接地プローブとの導通性を確保することができる。
【0008】
請求項2に記載の半導体装置は、請求項1に記載の半導体装置において、前記被膜材除去部は、前記接続端子に非貫通孔または貫通孔を穿設することで形成されることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の半導体装置では、接続端子に非貫通孔または貫通孔を穿設することで接続端子の被膜材を部分的に除去している。従って、例えばマスキングによって被膜材除去部を形成する場合に比べて、容易に被膜材除去部を形成することができる。
【0010】
請求項3に記載の半導体装置は、請求項2に記載の半導体装置において、前記非貫通孔または貫通孔は、前記接地プローブの形状に対応した形状を有することを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の半導体装置では、非貫通孔または貫通孔は、接地プローブの形状に対応した形状を有している。従って、接地プローブと接触端子の素地との接触面積を増加させることができ、よって接続端子と接地プローブとの導通性を一層確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体装置の一例としての樹脂封止型半導体装置の平面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図1の樹脂封止型半導体装置をプレート状部材から切り出す前の状態を示す平面図である。
【図4】図1の樹脂封止型半導体装置の接続端子を溶接する際の状態を説明する説明図である。
【図5】図1の樹脂封止型半導体装置の接続端子の被覆材除去部を示す斜視図である。
【図6】図1の樹脂封止型半導体装置の接続端子の被覆材除去部の別形態を示す斜視図である。
【図7】図1の樹脂封止型半導体装置の接続端子の被覆材除去部の別形態を示す斜視図である。
【図8】図1の樹脂封止型半導体装置に対する比較例としての樹脂封止型半導体装置の接続端子を溶接する際の状態を説明する、図4と同様な説明図である。
【図9】図1の樹脂封止型半導体装置に対する比較例としての樹脂封止型半導体装置の接続端子を溶接する際に用いられる接地プローブの摩耗について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る半導体装置の実施形態の一例について、添付の図面に基づいて説明する。
【0014】
(樹脂封止型半導体装置の構成)
図1および図2に示すように、本実施形態に係る半導体装置の一例としての樹脂封止型半導体装置10は、例えば、自動車に搭載されたモータを駆動するために該モータに一体的に取り付けられる制御回路用の装置である。この樹脂封止型半導体装置10は、回路基板12と、リードフレーム14と、モールド樹脂16とを備えている。
【0015】
回路基板12は、リードフレーム14の表面に配置されると共に、このリードフレーム14の表面に接着剤により固定されている。回路基板12の表面には、IC(Integrated Circuit)素子(半導体素子)18やその他の電子部品(半導体素子)20がハンダ付けにより実装されている。IC素子18は、例えば面実装タイプとされている。
【0016】
IC素子18及び電子部品20は、回路基板12の表面に形成された図示しない配線パターンに接続されている。この配線パターンは、回路基板12の表面に形成された導電部22に接続されている。この導電部22は、例えばアルミ製のボンディングワイヤ24によりリードフレーム14の接続端子26と電気的に接続されている。
【0017】
リードフレーム14は、例えば銅などの金属材から構成されており、外部部材(後述)と電気的に接続される接続端子26,28と、平面視長方形の本体部30とを有している。リードフレーム14の接続端子26,28と本体部30には、腐食防止のために被膜材(例えばニッケル)による被膜(メッキ)が施されている。被膜材は素地(例えば銅)よりも高い電気抵抗率を有している。
【0018】
尚、図3に示すように、リードフレーム14の接続端子26,28と本体部30は、1枚のプレート状のリードフレーム原材32から切り出されて形成されるものである。
【0019】
リードフレーム14の本体部30の表面には、例えばFETチップ等のパワー素子34がハンダ付けにより直接実装されており、パワー素子34は、例えばアルミ製のボンディングワイヤ36により接続端子28と電気的に接続されている。
【0020】
モールド樹脂16は、モールド成形されることにより形成され、回路基板12、IC素子18、電子部品20、本体部30および接続端子26,28の一部を一体に封止している。
【0021】
接続端子26,28のモールド樹脂16で封止されていない部分には、被膜材が部分的に除去された被膜材除去部38が形成されている。この被膜材除去部38は、接続端子26,28の表面に非貫通孔40を穿設することで形成されている。
【0022】
(樹脂封止型半導体装置の製造方法)
次に、樹脂封止型半導体装置10の製造方法について説明する。
【0023】
先ず、回路基板12の表面に上述のIC素子18やその他の電子部品20を所定の位置にハンダ付けにより実装する。この部品実装と並行して、図3に示すように銅板に対して抜き打ち加工を施し、接続端子26,28と本体部30とが分離しない状態のリードフレーム原材32を形成する。そして、このリードフレーム原材32を溶融メッキやあるいは電解メッキなどにより被膜材で被膜する。
【0024】
次いで、回路基板12をリードフレーム14の本体部30の表面に配置し、接着材により接着固定する。また、本体部30の表面にパワー素子34をハンダ付けにより実装する。そして、回路基板12の導電部22をボンディングワイヤ24により接続端子26と電気的に接続すると共に、パワー素子34をボンディングワイヤ36により接続端子28と電気的に接続する。
【0025】
次いで、回路基板12、本体部30および接続端子26,28の一部を金型(図示省略)にセットし、これらをモールド樹脂16で一体に封止するモールド成形を行う。
【0026】
次いで、タイバーカット機(図示省略)によって、リードフレーム14の接続端子26,28の端部側をカットし、樹脂封止型半導体装置10をリードフレーム原材32から切り出す(図1および図3参照)。このタイバーカット機による切り出しと同時に被膜材除去部38としての非貫通孔40を穿設する。以上により、樹脂封止型半導体装置10が製造される。
【0027】
(接続端子の溶接)
次に、接続端子26,28の溶接について説明する。
【0028】
図4に示すように、樹脂封止型半導体装置10の接続端子26,28は、外部部材(具体的には樹脂封止型半導体装置10の制御対象であるモータの電気接続部材)42に対して溶接機の一例としての電子ビーム溶接機44によって溶接され、電気的に接続される。
【0029】
接続端子26,28を溶接するに際し、電子ビーム溶接機44の印加サージによって溶接電流Iが生じる。この溶接電流Iが接地プローブ46を通じて接地(アース)側に流れず高電圧が発生するとIC素子18などの品質の劣化を招く可能性があるため、電子ビーム溶接機44の接地プローブ46を接続端子26,28に接触させる。尚、接地プローブ46は電子ビームの照射側から接続端子26,28に接触させられる。
【0030】
接続端子26,28の被膜層48は素地層50よりも電気抵抗率が高いため、接地プローブ46は被膜材除去部38としての非貫通孔40において露出する素地層50に接触させる。これにより、接地プローブ46と接続端子26,28との導通性が良好となり、溶接電流Iが接地(アース)側に流れ、樹脂封止型半導体装置10の内部側に流れることがない。
【0031】
図5に示すように、被膜材除去部38としての非貫通孔40は、接地プローブ46の先端形状に対応した半球形状とされている。尚、図6に示すように、接地プローブ46の先端形状が断面十字状を呈する場合、非貫通孔40も接地プローブ46の形状に対応させて断面十字状とされる。また、図7に示すように、被膜材除去部38を接地プローブ46の形状に対応した貫通孔52によって形成してもよい。このように、被膜材除去部38としての非貫通孔40および貫通孔52の形状を接地プローブ46の形状に対応させることで、接地プローブ46と接続端子26,28の素地層50との接触面積が増加する。
【0032】
(作用および効果)
本発明に係る樹脂封止型半導体装置10の作用および効果を明確にするために比較例について説明すると、図8に示すように、比較例としての樹脂封止型半導体装置100の接続端子102は、素地よりも高い電気抵抗率を有する被膜材で被膜された被膜層104が形成されている。
【0033】
この接続端子102を外部部材42と溶接するに際しては、接地プローブ106で被膜層104を突き破り、接地プローブ106を接続端子102の素地層108に接触させることで、接続端子102と接地プローブ106との導通性を確保している。
【0034】
接地プローブ106で被膜層104を突き破る必要があるため、接地プローブ106の先端は鋭く尖った形状とされると共に、接地プローブ106の先端には被膜層104を突き破るのに必要な圧力が加えられている。このため、図9に示すように、使用に伴って接地プローブ106の先端は摩耗することとなる。接地プローブ106の先端が摩耗すると被膜層104を突き破れなくなるため、接地プローブ106の交換を頻繁に行う必要があった。
【0035】
これに対し、本発明に係る樹脂封止型半導体装置10にあっては、図4に示すように、接続端子26,28の接地プローブ46と接触させる部位には、被膜材を部分的に除去した被膜材除去部38を形成しているので、接続端子26,28が素地よりも高い電気抵抗率を有する被膜材で被膜されている場合であっても、接続端子26,28と接地プローブ46との導通性を確保することができる。
【0036】
従って、接地プローブ46の先端形状を鋭くしたり、接地プローブ46の先端に必要以上の圧力を加えたりする必要がないため、接地プローブ46の先端が摩耗するのを抑制でき、接地プローブ46の交換サイクルを長くすることができる。
【0037】
また、接続端子26,28の表面に非貫通孔40あるいは貫通孔52を穿設することで接続端子26,28の被膜層48を除去し、被膜材除去部38を形成している。従って、例えばマスキングによって被膜材除去部38を形成する場合に比べて、容易に被膜材除去部38を形成することができる。
【0038】
また、被膜材除去部38としての非貫通孔40あるいは貫通孔52は、接地プローブ46の形状に対応した形状とされている。従って、接地プローブ46と接続端子26,28の素地層50との接触面積を増加させることができ、よって接続端子26,28と接地プローブ46との導通性を一層確保することができる。
【0039】
さらに、被膜材除去部38としての非貫通孔40あるいは貫通孔52の穿設を、タイバーカット機による樹脂封止型半導体装置10のリードフレーム原材32からの切り出しと同時に行うことで、樹脂封止型半導体装置10の製造工数を増やすことなく、被膜材除去部38を形成することができる。
【0040】
尚、本発明に係る半導体装置として樹脂封止型半導体装置10を例に挙げて説明したが、樹脂封止型以外の半導体装置に対しても本発明を適用することができる。また、リードフレーム14の被膜層48および素地層50の材質をそれぞれニッケルおよび銅として説明したが、それに限定されるものではなく、電気抵抗率が素地層よりも被膜層の方が高い組み合わせであればよい。
【0041】
10・・・樹脂封止型半導体装置(半導体装置の一例)、12・・・回路基板、14・・・リードフレーム、16・・・モールド樹脂、18・・・IC素子(半導体素子)、20・・・電子部品(半導体素子)、22・・・導電部、24・・・ボンディングワイヤ、26,28・・・接続端子、30・・・本体部、32・・・リードフレーム原材、34・・・パワー素子、36・・・ボンディングワイヤ、38・・・被膜材除去部、40・・・非貫通孔、42・・・外部部材、44・・・電子ビーム溶接機、46・・・接地プローブ、48・・・被膜層、50・・・素地層、52・・・貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、
素地よりも高い電気抵抗率を有する被膜材で被膜され、前記半導体素子に接続されると共に溶接によって外部部材と接続される接続端子と、
前記接続端子が溶接される際に生じる溶接電流を接地側に流すための接地プローブと前記接地端子の素地とが接触するように、前記接続端子の前記接地プローブと接触させる部位に形成される、前記被膜材が部分的に除去された被膜材除去部と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記被膜材除去部は、前記接続端子に非貫通孔または貫通孔を穿設することで形成される請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記非貫通孔または貫通孔は、前記接地プローブの形状に対応した形状を有する請求項2に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−253053(P2012−253053A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122070(P2011−122070)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】