説明

半導体装置

【課題】バイポーラトランジスタの形成領域において半導体層の下部に絶縁層を有する基板が用いられた半導体装置において、バイポーラトランジスタの電流増幅率を向上させる。
【解決手段】バイポーラトランジスタは、半導体層1cに形成されたコレクタ5、ベース7、エミッタ9、ベース用高濃度オーミック拡散層11及びコレクタ用高濃度オーミック拡散層13、並びに半導体層1c上に形成されたゲート絶縁膜15及びゲート電極17を備えている。ベース7は、絶縁層1bに達する深さで形成され、上方から見てゲート電極17と一部重複して形成され、ゲート電極17下でコレクタ5に隣接して形成されている。ベース7は、ベース7側のゲート電極17の端部からコレクタ5側に向かってP型不純物濃度が低くなる濃度傾斜をもっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、バイポーラトランジスタを備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置が形成される基板としてSOI(Silicon on Insulator)基板が知られている。SOI基板は半導体層の下層に絶縁層を有する基板である。その絶縁層はシリコン酸化膜で形成されていることが一般的である。その絶縁膜はサファイア基板で形成されることもある。
【0003】
SOI基板を用いた半導体装置において、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)ではドレイン拡散が下層の絶縁層(BOX酸化膜と呼ばれる。)に到達する深さで形成される。また、バイポーラトランジスタではベース拡散やコレクタ拡散がBOX酸化膜に到達する深さで形成される(例えば特許文献1〜5を参照。)。これにより、トランジスタにおいてPN接合の面積が少なくなり、寄生容量が小さくなる。寄生容量の低減効果により、回路動作時に低消費電流で高速動作が可能になる。また、高温動作時の接合リークも低減される。このようなことからSOI基板は注目されている。
【0004】
ところで、バルク基板に形成される縦型バイポーラトランジスタ構造はバルク基板の表面側から順にエミッタ拡散、ベース拡散、コレクタ拡散をもつ。ここで、ベース拡散を構成する不純物拡散層はバルク基板の表面側からの不純物イオンの注入及び熱拡散によって形成される。したがって、ベース拡散は表面側(エミッタ側)から裏面側(コレクタ側)に向かって不純物濃度が低くなる濃度傾斜をもっている。ベース拡散が不純物濃度の濃度傾斜をもっていることにより、ベース拡散内に電界が形成され、ベース拡散内で電子の移動が加速される。これによって、エミッタ拡散からの電子の注入効率が上昇し、電流増幅率hFE(β)が増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、SOI基板に形成された従来の横型バイポーラトランジスタにおいて、特許文献1〜5に開示されているように、ベースは、半導体層そのものや不純物拡散層の濃度が水平方向で均一な部分で形成されており、水平方向で不純物の濃度傾斜をもっていない。
【0006】
本発明は、バイポーラトランジスタの形成領域において半導体層の下部に絶縁層を有する基板が用いられた半導体装置において、バイポーラトランジスタの電流増幅率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる半導体装置は、バイポーラトランジスタの形成領域において半導体層の下部に絶縁層を有する基板が用いられる。上記バイポーラトランジスタは、上記半導体層に形成されたコレクタ、ベース、エミッタ、ベース用高濃度オーミック拡散層及びコレクタ用高濃度オーミック拡散層、並びに上記半導体層上に形成されたゲート絶縁膜及びゲート電極を備えている。上記コレクタは、第1導電型不純物拡散層からなり、かつ上記絶縁層に達する深さで形成されており、上記ゲート電極は上記コレクタ上に上記ゲート絶縁膜を介して配置されている。上記ベースは、第2導電型不純物拡散層からなり、上記絶縁層に達する深さで形成され、上方から見て上記ゲート電極と一部重複して形成され、上記ゲート電極下で上記コレクタに隣接し、かつ、上記ベース側の上記ゲート電極の端部から上記コレクタ側に向かって第2導電型不純物濃度が低くなる濃度傾斜をもっている。上記エミッタは、第1導電型不純物拡散層からなり、上記ゲート電極に対して上記コレクタとは反対側の領域に形成され、上記ベースに隣接し、かつ上方から見て上記ベース側の上記ゲート電極の端部に隣接して形成されている。上記ベース用高濃度オーミック拡散層は、上記ベースよりも第2導電型不純物濃度が高い第2導電型不純物拡散層からなり、上記ベースに隣接し、かつ上記エミッタとは間隔をもって形成されている。上記コレクタ用高濃度オーミック拡散層は、上記コレクタよりも第1導電型不純物濃度が高い第1導電型不純物拡散層からなり、かつ上記コレクタに隣接して形成されている。上記ゲート電極と上記ベースが同電位になるように配線が形成されている。
【0008】
本願特許請求の範囲及び発明の詳細な説明において、第1導電型とはP型又はN型を意味する。また、第2導電型とは第1導電型とは反対導電型のN型又はP型を意味する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の半導体装置において、半導体層に形成されたバイポーラトランジスタのベースは、ベース側のゲート電極の端部からコレクタ側に向かって第2導電型不純物濃度が低くなる濃度傾斜をもっている。これにより、ベース内に電界が形成され、ベース内で電子の移動が加速されるので、ベースの第2導電型不純物濃度が均一な場合に比べて電流増幅率hFE(β)が増加する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例を説明するための概略的な断面図である。
【図2】同実施例を説明するための概略的な平面図である。
【図3】図1及び図2に示されたバイポーラトランジスタを形成するための、製造方法の一例を説明するための断面図である。
【図4】本発明の他の実施例を説明するための概略的な断面図である。
【図5】本発明のさらに他の実施例を説明するための概略的な断面図である。
【図6】本発明のさらに他の実施例を説明するための概略的な断面図である。
【図7】同実施例を説明するための概略的な平面図である。
【図8】本発明のさらに他の実施例を説明するための概略的な断面図である。
【図9】同実施例を説明するための概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び図2は本発明の一実施例を説明するための概略的な構成図である。図1は断面図である。図2は平面図である。図1は図2のA−A’位置での断面である。この実施例は本発明の半導体装置を構成するバイポーラトランジスタをNPNバイポーラトランジスタに適用したものである。
【0012】
支持基板1a、BOX酸化膜(絶縁層)1b、半導体層1cからなるSOI基板が用いられている。支持基板1aは例えばシリコン基板である。BOX酸化膜1bの膜厚は例えば3μm(マイクロメートル)である。半導体層1cは例えばN型不純物濃度が1×1015cm-3のN型シリコン層である。半導体層1cの膜厚は例えば500nm(ナノメートル)である。
【0013】
半導体層1cに素子分離絶縁膜3が形成されている。素子分離絶縁膜3はバイポーラトランジスタ形成領域を決定している。素子分離絶縁膜3は例えばLOCOS(LOCal Oxidation of Silicon)法やSTI(Shallow Trench Isolation)によって形成される。
【0014】
バイポーラトランジスタは、半導体層1cに形成されたコレクタ5、ベース7、エミッタ9、ベース用高濃度オーミック拡散層11及びコレクタ用高濃度オーミック拡散層13を備えている。さらに、バイポーラトランジスタは、半導体層1c上に形成されたゲート絶縁膜15及びゲート電極17を備えている。
【0015】
コレクタ5は、N型低濃度コレクタ領域5a(N−−)とN型中濃度コレクタ領域5b(N−)を備えている。低濃度コレクタ領域5aは半導体層1cそのもので形成されている。中濃度コレクタ領域5bは、低濃度コレクタ領域5aよりも高いN型不純物濃度をもつ。
【0016】
ゲート電極17は低濃度コレクタ5a上にゲート絶縁膜15を介して配置されている。ゲート絶縁膜15は例えば膜厚が25nmのシリコン酸化膜で形成されている。ゲート電極17は低抵抗化されたN型ポリシリコン又はP型ポリシリコンで形成されている。ゲート電極17の幅(ベース長方向の寸法)は1.5μmである。ゲート電極17の厚みは350nmである。
【0017】
ベース7(P)はP型不純物拡散層からなる。ベース7はBOX酸化膜1bに達する深さで形成されている。上方から見て、ベース7はゲート電極17と一部重複して形成されている。ベース7はゲート電極17下で低濃度コレクタ領域5aに隣接している。ベース7はベース7側のゲート電極17の端部をイオン注入マスクの一部分にしたイオン注入及び熱拡散によって形成されたものである。すなわち、ベース7はベース7側のゲート電極17の端部に対して自己整合的に形成されたものである。ベース7はベース7側のゲート電極17の端部からコレクタ5側に向かってP型不純物濃度が低くなる濃度傾斜をもっている。
【0018】
ゲート電極17で覆われていない位置でのベース7において、表面側のP型不純物濃度は1×1018cm-3程度である。BOX酸化膜1bと接する位置のベース7のP型不純物濃度は1×1016cm-3程度である。ゲート電極17下で低濃度コレクタ領域5aと接する位置のベース7のP型不純物濃度は1×1015cm-3程度である。
【0019】
エミッタ9(N+)は、N型不純物濃度が1×1020cm-3程度のN型不純物拡散層からなる。エミッタ9はゲート電極17に対してコレクタ5とは反対側の領域に形成されている。エミッタ9はベース7に隣接して形成されている。エミッタ9は上方から見てベース7側のゲート電極17の端部に隣接して形成されている。エミッタ9はベース7側のゲート電極17の端部をイオン注入マスクの一部分にしたイオン注入及び熱拡散によって形成されたものである。すなわち、エミッタ9はベース7側のゲート電極17の端部に対して自己整合的に形成されたものである。
【0020】
ベース用高濃度オーミック拡散層11(P+)は、ベース7よりもP型不純物濃度が高いP型不純物拡散層からなる。ベース用高濃度オーミック拡散層11はベース7に隣接し、かつエミッタ9とは間隔をもって形成されている。その間隔は例えば1μm以上である。これにより、ベース用高濃度オーミック拡散層11とエミッタ9との間の接合リークが防止される。
【0021】
この実施例では、ベース用高濃度オーミック拡散層11は上方から見てベース7側のゲート電極17の端部に隣接して形成されている。ただし、ベース用高濃度オーミック拡散層11は上方から見てゲート電極17とは間隔をもって配置されていてもよい。
【0022】
コレクタ用高濃度オーミック拡散層13(N+)は、コレクタ領域5a,5bよりもN型不純物濃度が高いN型不純物拡散層からなる。コレクタ用高濃度オーミック拡散層13は中濃度コレクタ領域5bに隣接して形成されている。コレクタ用高濃度オーミック拡散層13は上方から見てゲート電極17と間隔をもって配置されている。その間隔は例えば1μm以上である。これにより、高耐圧化が実現されている。
【0023】
中濃度コレクタ領域5bはコレクタ用高濃度オーミック拡散層13とゲート電極17との間に、配置されている。これにより、コレクタ抵抗が低減され、動作耐圧が向上されている。
【0024】
エミッタ9はエミッタ配線19を介して接地電位21に電気的に接続されている。コレクタ用高濃度オーミック拡散層13はコレクタ配線23を介して電源電位25に電気的に接続されている。ベース用高濃度オーミック拡散層11にはベース配線27が電気的に接続されている。図1では、便宜上、ベース配線27はコレクタ7に接続されている。ゲート電極17にはゲート電極配線29が電気的に接続されている。ベース配線27とゲート電極配線29は電気的に接続されている。ベース配線27及びゲート電極配線29は、入力電圧が印加される入力端子31に電気的に接続されている。
【0025】
図3は、図1及び図2に示されたバイポーラトランジスタを形成するための、製造方法の一例を説明するための断面図である。図1、図2及び図3を参照してこの製造方法の例を説明する。
【0026】
(1)支持基板1a、BOX酸化膜1b、半導体層1cからなるSOI基板の半導体層1cに素子分離絶縁膜3が形成される。半導体層1cは低濃度コレクタ領域5a(N−−)を構成する。半導体層1cの表面にシリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜15が形成される。例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、ゲート絶縁膜15上にポリシリコン膜が350nmの膜厚で形成される。そのポリシリコン膜に例えば気相拡散法により過飽和のリンが導入される。写真製版により、ポリシリコン膜がパターニングされてゲート電極17が形成される(図3(a)を参照。)。
【0027】
(2)ゲート電極17の一端部に隣接するベース形成領域及びゲート電極17上に開口をもつレジストパターンが形成される。そのレジストパターン及びゲート電極17をマスクにして、30KeVの加速エネルギー、2.5×1013cm-2程度のドーズ量の条件で半導体層1cにボロンイオンが注入される。レジストパターンが除去される。処理温度が1100℃、処理時間が3時間程度の条件で熱拡散処理が行なわれる。ゲート電極17に対して自己整合的にベース7(P)が形成される(図3(b)を参照。)。
【0028】
(3)ベース7とは反対側のゲート電極17の端部に隣接する中濃度コレクタ形成領域及びゲート電極17上に開口をもつレジストパターンが形成される。そのレジストパターン及びゲート電極17をマスクにして、50KeVの加速エネルギー、3.0×1013 cm-2程度のドーズ量の条件で半導体層1cにリンイオンが注入される。レジストパターンが除去される。処理温度が920℃、処理時間が1時間程度の条件で熱拡散処理が行なわれる。ゲート電極17に対して自己整合的に中濃度コレクタ領域5b(N−)が形成される(図3(c)を参照。)。
【0029】
(4)エミッタ形成領域、ゲート電極17上、及びコレクタ用高濃度オーミック拡散層13形成領域に開口をもつレジストパターンが形成される。このとき、中濃度コレクタ領域5b上にはゲート電極17に隣接して幅寸法が例えば1μm以上のレジストパターンが存在するようにレジストパターンが形成される。そのレジストパターンをマスクにして、50KeVの加速エネルギー、6.0×1015cm-2程度のドーズ量の条件で、中濃度コレクタ領域5b及びベース7に、リンイオン又は砒素イオンの注入が行なわれる。
【0030】
レジストパターンが除去される。コレクタ用高濃度オーミック拡散層形成領域に開口をもつレジストパターンが形成される。そのレジストパターンをマスクにして、30KeVの加速エネルギー、2.0×1015cm-2程度のドーズ量の条件で、ベース7にベース用高濃度オーミック拡散層を形成するためのボロンイオン注入が行なわれる。
【0031】
レジストパターンが除去される。処理温度が920℃、処理時間が1時間程度の条件で熱拡散処理が施されて不純物が熱拡散される。これにより、エミッタ9(N+)、コレクタ用高濃度オーミック拡散層13(N+)及びベース用高濃度オーミック拡散層11(P+)が形成される(図2及び図3(d)を参照。)。
【0032】
図1及び図2を参照して続きの工程が説明される。層間絶縁膜(図示は省略)が形成される。エミッタ9上、ベース用高濃度オーミック拡散層11上及びコレクタ用高濃度オーミック拡散層13上の層間絶縁膜にコンタクトホール(図示は省略)がそれぞれ形成される。各コンタクトホールに導電材料が充填され、層間絶縁膜上に配線19,23,27,29が形成される。
【0033】
このように、ベース7はゲート電極17に対して自己整合的に形成される。ベース7は、ベース7側のゲート電極の端部からコレクタ5側に向かってP型不純物濃度が低くなる濃度傾斜をもっている。これにより、ベース7内に電界が形成され、ベース7内で電子の移動が加速されるので、ベースのP型不純物濃度が均一な場合に比べて電流増幅率hFE(β)が増加する。
【0034】
さらに、コレクタ5とベース7のPN接合面はゲート電極17下の低濃度コレクタ領域5a側面及びベース7側面の境界に形成されている。ベース7の下面はBOX酸化膜1bに接している。ベース7の下面にPN接合は形成されていない。したがって、バルクシリコン基板に形成されたバイポーラトランジスタに比べて、PN接合による寄生容量は大幅に減少されている。
【0035】
ゲート電極17がN型ポリシリコンで形成されている場合とP型ポリシリコンで形成されている場合とでその仕事関数差により電流増幅率に差異が生じる。
ゲート電極17がN型の場合、ゲート電極17下の領域でベース7は空乏化しやすくなる。これにより、ベース幅は比較的短くなり、電流増幅率が大きくなる。
他方、ゲート電極17がP型の場合、ゲート電極17下の領域でベース7は正孔を蓄積しやすくなる。これにより、ベース幅は比較的長くなり、電流増幅率が小さくなる。
【0036】
この実施例のバイポーラトランジスタがオフの状態では、ゲート電極17のゲート電圧、ベース7のベース電圧及びエミッタ9のエミッタ電圧が同じ電位(接地電位)になる。コレクタ5には、コレクタ配線23及びコレクタ用高濃度オーミック拡散層13を介して正のコレクタ電圧(電源電位)が印加される。コレクタ5とベース7の接合面に、コレクタ5側及びベース7側の両方に空乏化が生じ、高耐圧が維持される。
【0037】
この実施例のバイポーラトランジスタがオンされた状態では、ベース配線27及びベース用高濃度オーミック拡散層11を介してベース7に入力電圧としての電源電位が印加される。ゲート電極17にもゲート電極配線29を介して電源電位が印加される。ベース7に正のベース電圧が印加されるのでベース7、エミッタ9間は順方向電圧になる。これにより、ゲート電極17には高電圧が印加されない。そして、ゲート絶縁膜15の破壊が抑制され、バイポーラトランジスタの安定な動作が得られる。
【0038】
この実施例のバイポーラトランジスタでは、ゲート電極17が設けられている。ゲート電極17への正の電圧印加によりチャネルができやすい状態になる。さらに、エミッタ9とベース用高濃度オーミック拡散層11は間隔をもって配置されているので、エミッタ、ベース間の接合リークが低減されている。これらの作用により、従来のバイポーラトランジスタに比べて、低電流領域の電流増幅率が向上されるという効果もある。
【0039】
図4は本発明の他の実施例を説明するための概略的な断面図である。この実施例の平面図は図2と同じである。図1と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付され、その部分の詳細な説明は省略される。
【0040】
この実施例では、図1及び図2を参照して説明された実施例と比較して、ベース7は、BOX酸化膜1bに達していない。ベース7と低濃度コレクタ領域5aの接合面に空乏層33が形成されている。ベース7の底部に形成された空乏層33はBOX酸化膜1bに接している。
この実施例の構造でも、図1及び図2を参照して説明された実施例と同じ効果が得られる。
【0041】
図5は本発明のさらに他の実施例を説明するための概略的な断面図である。この実施例の平面図は図2と同じである。図1と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付され、その部分の詳細な説明は省略される。
【0042】
この実施例では、図1及び図2を参照して説明された実施例と比較して、中濃度コレクタ領域5b、エミッタ9及びコレクタ用高濃度オーミック拡散層13はBOX酸化膜1bに到達する深さで形成されている。
この実施例は、図1及び図2を参照して説明された実施例と比較して、ベース7とエミッタ9の接合容量が小さい。これにより、ベース7への入力容量が小さくなるので、高速動作が可能となる。
【0043】
図6及び図7は本発明のさらに他の実施例を説明するための概略的な構成図である。図6は断面図である。図7は平面図である。図6は図7のB−B’位置での断面である。図1と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付され、その部分の詳細な説明は省略される。
【0044】
この実施例では、ゲート電極配線29は、ベース配線27とは電気的に接続されておらず、エミッタ配線19と電気的に接続されている。ゲート電極17はゲート電極配線29を介して接地電位21に電気的に接続されている。
【0045】
この実施例のバイポーラトランジスタがオフされた状態では、ゲート電極17のゲート電圧、ベース7のベース電圧及びエミッタ9のエミッタ電圧が同じ電位(接地電位)になる。コレクタ5には、コレクタ配線23及びコレクタ用高濃度オーミック拡散層13を介して正のコレクタ電圧(電源電位)が印加される。コレクタ5とベース7の接合面に、コレクタ5側及びベース7側の両方に空乏化が生じ、高耐圧が維持される。
【0046】
この実施例のバイポーラトランジスタがオンされた状態では、ベース配線27及びベース用高濃度オーミック拡散層11を介してベース7に入力電圧としての電源電位が印加される。ベース7に正のベース電圧が印加されることによってベース7、エミッタ9間が順方向電圧になる。これにより、ゲート電極17には高電圧が印加されない。そして、ゲート絶縁膜15の破壊が抑制され、バイポーラトランジスタの安定な動作が得られる。
【0047】
さらに、ゲート電圧はエミッタ電圧と同電位(接地電位)なので、ゲート電極17直下のバイポーラ動作が抑制される。これにより、動作電圧を高くすることができる。
【0048】
図8及び図9は本発明のさらに他の実施例を説明するための概略的な構成図である。図8は断面図である。図9は平面図である。図8は図9のC−C’位置での断面である。図1と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付され、その部分の詳細な説明は省略される。
【0049】
この実施例では、ゲート電極配線29は、エミッタ配線19、コレクタ配線23及びベース配線27のいずれにも電気的に接続されておらず、入力端子35と電気的に接続されている。これにより、ゲート電極17に任意の電位を与えることができるようになっている。
【0050】
この実施例において、バイポーラトランジスタがオンされた状態及びオフされた状態において、図1及び図2を参照して説明された実施例、並びに図6及び図7を参照して説明された実施例と同様の作用及び効果が得られる。
【0051】
さらに、ゲート電圧を任意電位としてバイポーラトランジスタを動作させることができる。これにより、バイポーラトランジスタの動作時において、ベース電極17直下のベース幅をゲート電圧に応じて変更することができ、電流増幅率を変更することが可能である。
【0052】
以上、本発明の実施例が説明されたが、上記実施例において寸法、配置、材料、数値等は一例であり、本発明は、実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0053】
上記実施例は中濃度コレクタ領域5bを備えている。ただし、本発明の半導体装置において。バイポーラトランジスタは中濃度コレクタ領域5bを備えていなくてもよい。
また、上記実施例において、コレクタ用高濃度オーミック拡散層13は上方から見てゲート電極17と間隔をもって配置されている。ただし、本発明の半導体装置において、コレクタ用高濃度オーミック拡散層は上方から見てゲート電極に隣接して形成されていてもよい。
【0054】
また、上記実施例では、N型半導体層1cを備えたSOI基板が用いられている。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。P型半導体層をもつ基板が用いられ、上記実施例とは反対導電型でバイポーラトランジスタが形成されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1b 絶縁層
1c 半導体層
5 コレクタ
5a 低濃度コレクタ領域
5b 中濃度コレクタ領域
7 ベース
9 エミッタ
11 ベース用高濃度オーミック拡散層
13 コレクタ用高濃度オーミック拡散層
15 ゲート絶縁膜
17 ゲート電極
19,23,27,29 配線
【先行技術文献】
【特許文献】
【0056】
【特許文献1】特許4573849号公報
【特許文献2】特開2007−242722号公報
【特許文献3】特許4364411号公報
【特許文献4】特開2002−26029号公報
【特許文献5】特開平6−244365号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイポーラトランジスタの形成領域において半導体層の下部に絶縁層を有する基板が用いられ、
前記バイポーラトランジスタは、前記半導体層に形成されたコレクタ、ベース、エミッタ、ベース用高濃度オーミック拡散層及びコレクタ用高濃度オーミック拡散層、並びに前記半導体層上に形成されたゲート絶縁膜及びゲート電極を備え、
前記コレクタは、第1導電型不純物拡散層からなり、かつ前記絶縁層に達する深さで形成されており、
前記ゲート電極は前記コレクタ上に前記ゲート絶縁膜を介して配置されており、
前記ベースは、第2導電型不純物拡散層からなり、前記絶縁層に達する深さで形成され、上方から見て前記ゲート電極と一部重複して形成され、前記ゲート電極下で前記コレクタに隣接し、かつ、前記ベース側の前記ゲート電極の端部から前記コレクタ側に向かって第2導電型不純物濃度が低くなる濃度傾斜をもっており、
前記エミッタは、第1導電型不純物拡散層からなり、前記ゲート電極に対して前記コレクタとは反対側の領域に形成され、前記ベースに隣接し、かつ上方から見て前記ベース側の前記ゲート電極の端部に隣接して形成されており、
前記ベース用高濃度オーミック拡散層は、前記ベースよりも第2導電型不純物濃度が高い第2導電型不純物拡散層からなり、前記ベースに隣接し、かつ前記エミッタとは間隔をもって形成されており、
前記コレクタ用高濃度オーミック拡散層は、前記コレクタよりも第1導電型不純物濃度が高い第1導電型不純物拡散層からなり、かつ前記コレクタに隣接して形成されており、
前記ゲート電極と前記ベースが同電位になるように配線が形成されている半導体装置。
【請求項2】
前記エミッタは前記絶縁層に達する深さで形成されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ベースは、前記絶縁層に達しておらず、かつ前記ベースの底部に形成された空乏層が前記絶縁層に接している請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記配線は、前記ゲート電極を前記ベースではなく前記エミッタと同電位になるように形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記配線は、前記ゲート電極を前記ベース、前記エミッタ及び前記コレクタのいずれにも接続せずに、前記ゲート電極に任意の電位を与えることができるように形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記コレクタ用高濃度オーミック拡散層は、上方から見て前記ゲート電極と間隔をもって配置されている請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記コレクタは、低濃度コレクタ領域と中濃度コレクタ領域を備えており、
前記低濃度コレクタ領域は前記ゲート電極下に配置されており、
前記中濃度コレクタ領域は、前記低濃度コレクタ領域よりも高く、かつ前記コレクタ用高濃度オーミック拡散層よりも低い第1導電型不純物濃度をもち、前記ゲート電極と前記コレクタ用高濃度オーミック拡散層の間に配置されている請求項6に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−65626(P2013−65626A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202267(P2011−202267)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】