説明

半導体製造方法及び半導体製造装置

【課題】 半導体基板に形成された溝内部の良好なメッキ埋め込み性を得ることが可能な半導体製造方法及び半導体製造装置を提供する。
【解決手段】 溝パターンと、少なくとも前記溝パターン内部に第1の電極となる電極層が形成された絶縁膜を備えた半導体基板を、第2の電極が設置されるメッキ液中に導入する工程と、前記第1、第2の電極間に、直流電界に周波数100Hz以上の交流電界を重畳して印加し、前記金属層上に金属膜を形成する工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体装置におけるCu配線形成工程に用いられるメッキ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置において用いられるCu配線の形成技術として、電解メッキプロセスが用いられている(例えば特許文献1参照)。図11に示すように、配線の形成される溝と電極となるCu層が形成された被処理半導体基板103を、メッキ液が供給されたメッキ槽101中に導入し、アノード(Cu材102)−カソード(被処理半導体基板103中のCu層)間に電源104により直流電界を印加することにより、半導体基板表面及び溝内部にCuメッキ膜を形成することができる。
【0003】
このとき、メッキ液にアクセルルータやサプレッサ、レベラーなどの添加剤を含有させることで、溝内部に選択的にメッキ膜を埋め込む(Gap fill)手法が用いられる。
【0004】
しかしながら、半導体素子の微細化に伴い、埋め込み性の確保が困難となる、という問題があった。
【0005】
このようなプロセス管理のためのモニタリング手段として、メッキ中の電流−電圧の測定が行われている。しかしながら、半導体基板の大口径化による被処理面積の増大に伴い、メッキ液界面抵抗が低下し、これに対する接触抵抗やメッキ液フィルターの電気抵抗等、メッキ膜形成に寄与しない抵抗成分が大きくなるため、良好なモニタ感度を得ることが困難である、という問題があった。
【特許文献1】特開2000−173949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、半導体基板に形成された溝内部の良好なメッキ埋め込み性を得ることが可能な半導体製造方法及び半導体製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、溝パターンと、少なくとも前記溝パターン内部に金属層が形成された絶縁膜を備えた第1の電極となる半導体基板を、第2の電極が設置されたメッキ液中に導入する工程と、前記第1、第2の電極間に、直流電界に周波数100Hz以上の交流電界を重畳して印加し、前記金属層上に金属膜を形成する工程を備えることを特徴とする半導体製造方法が提供される。
【0008】
また、本発明の一態様によれば、メッキ液及び添加剤が供給されるメッキ槽と、溝パターンと、少なくとも前記溝パターン内部に金属層が形成された絶縁膜を備えた第1の電極となる半導体基板を、前記メッキ槽内に導入する手段と、メッキ槽内に設置される第2の電極と、前記第1、第2の電極間に、直流電界に周波数100Hz以上の交流電界を重畳して印加する手段を備えることを特徴とする半導体製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施態様によれば、半導体基板に形成された溝内部の良好なメッキ埋め込み性を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明の実施形態について、図を参照して説明する。
【0011】
(実施形態1)
図1に本実施形態の半導体製造装置の概念図を示す。図に示すように、メッキ液及び添加剤が供給されるメッキ槽1、その底部にアノード電極(Cu材)2、アノード電極と対向してカソード電極が形成される被処理半導体基板3、アノード−カソード間に直流電界を重畳した交流電界、或いは交流電界を重畳した直流電界を印加する電源4が設置される構造となっている。さらに、メッキ槽上方より被処理半導体基板を導入する基板導入手段5が設置されている。
【0012】
このような半導体製造装置を用いて、被処理半導体基板3をCuメッキ処理する。被処理半導体基板3には、予め、図2に示すように、図示しない基板上に絶縁膜3aが形成されており、絶縁膜3aには、RIE(Reactive Ion Etching)により溝パターン3bが形成され、溝内部を含む表面に、夫々スパッタ法によりTa膜3cが10nm、カソード電極となるCu層3dが60nm順次形成されている。
【0013】
先ず、アノード−カソード間に、電源4により3Aの直流電流を重畳した0.3Aの交流電流を印加する。そして、電流の印加された状態で、基板導入手段5を用いて、被処理半導体基板3を、メッキ液が供給されたメッキ槽1中にメッキ液面に対して例えば45°の角度で導入した後、メッキ液中で水平として、Cuメッキ処理を行う。尚、アクセルルータ、サプレッサ、レベラー等の添加剤は適宜添加される。このとき、表1に示すように、周波数を変えてCuメッキ膜を形成する。尚、比較例として、従来と同様に、3Aの直流電流のみによりCuメッキ膜を形成する。
【表1】

【0014】
これら試料1〜3の断面をSEM(Scanning Electron Microscope)観察し、試料1の結果を図3に、試料2の結果を図4に、試料3の結果を図5に夫々示す。図5に示す直流電界のみの試料3においては、絶縁膜3aの溝内部に形成されたCuメッキ膜3e中にボイド6が形成されているのに対し、図3、4に示す交流電界を重畳した試料1、2においては、埋め込み性良く、良好なCuメッキ膜3eが形成されていることがわかる。これはメッキ膜形成メカニズムの周波数依存性に起因すると考えられる。すなわち、従来のような直流電界だけでなく、メッキ膜形成が界面律速となる100Hz以上の交流電界を重畳して印加することにより、良好なCuメッキ膜を形成することが可能となる。
【0015】
(実施形態2)
本実施形態においては、実施形態1と同様に、図1に示す半導体製造装置を用いて、実施形態1と同様に、RIEにより溝パターンが形成され、溝内部を含む表面に、スパッタ法によりTa膜が10nm、Cu膜が60nm形成された被処理半導体基板に、Cuメッキ処理を行う。このとき、表2に示すように、アノード電極に対しカソード電極を、45°とし、電解条件を変えて、Cuメッキ膜を形成する。
【表2】

【0016】
これら試料4〜6の断面をSEM観察し、試料4の結果を図5に、試料5の結果を図6に、試料6の結果を図7に夫々示す。図6、7に示すように、低周波(125Hz)の交流電界を重畳した試料5、直流電界のみの試料6においては、絶縁膜3aの溝内部に形成されたCuメッキ膜3e中にボイド6が形成されているのに対し、図5に示す高周波(10kHz)の交流電界を重畳した試料4においては、アノード−カソード角が45°と、基板に対する電場の垂直成分が小さくなったにもかかわらず、埋め込み性良く、良好なCuメッキ膜3eが形成されていることがわかる。
【0017】
メッキ膜形成における電場の方向性の支配は、高周波側で抑制される傾向となり、10kHz程度以上の高周波の交流電界を直流電界に重畳することにより、アノード−カソード角が変動しても、良好なCuメッキ膜を形成することが可能となる。従って、被処理半導体基板をメッキ液中に導入する際などに、アノード−カソード角が変動していても、高周波の交流電界を直流電界に重畳することにより、良好なCuメッキ膜を形成することが可能となる。
【0018】
これら実施形態において、3Aの直流電流を重畳した0.3Aの交流電流を印加しているが、電流(電圧)は被処理半導体基板の面積などにより適宜設定することができる。また、より良好な埋め込み制御性を得るためには、交流電流(電圧)は、重畳される直流電流(電圧)の2〜20%程度とすることが好ましい。また、周波数は必ずしも固定されている必要はなく、変動させても良い。
【0019】
(実施形態3)
図9に本実施形態の半導体製造装置の概念図を示す。図1に示す半導体製造装置とほぼ同様の構成であるが、電流−電圧の位相差を測定する位相差測定手段17を備えている点で異なっている。すなわち、メッキ液及び添加剤が供給されるメッキ槽11、その底部にアノード電極(Cu材)12、アノード電極12と対向してカソード電極となる被処理半導体基板13、アノード−カソード間に直流電界を重畳した交流電界、或いは交流電界を重畳した直流電界を印加する電源14、メッキ槽上方より被処理半導体基板を導入する基板導入手段15、電流−電圧の位相差を測定する位相差測定手段17が設置される構造となっている。
【0020】
このような半導体製造装置を用いて、実施形態1と同様に、被処理半導体基板をCuメッキ処理する。被処理半導体基板13には、実施形態1と同様に、予め、半導体基板上に形成された絶縁膜に、RIEにより溝パターンが形成され、溝内部を含む表面に、スパッタ法によりTa膜が10nm、Cu膜が60nm形成されている。
【0021】
先ず、アノード−カソード間に、電源14により3Aの直流電流を重畳した0.3Aの交流電流を印加するとともに、位相差測定手段17により電流−電圧の位相差を測定する。そして、実施形態1と同様に、電流の印加された状態で、基板導入手段15を用いて、被処理半導体基板13を、メッキ液が供給されたメッキ槽11中にメッキ液面に対して例えば45°の角度で導入した後、メッキ液中で水平として、Cuメッキ処理を行う。このとき、電解条件(メッキ液、周波数)を変えて、電流−電圧の位相差を測定した結果を表3及び図10に示す。
【表3】

【0022】
表3及び図10より、試料8、9のように添加剤を含有するメッキ液を用いたときは、溝内部に優先的にCuメッキ膜が形成されるため、被処理表面積が急峻に変化する。従って、メッキ液との界面の電気二重層の容量が大きく変化し、メッキ初期の位相差の急峻な変化として検出される。一方、試料7のように添加剤を含有しない場合は、表面積変化が小さいため、位相差は徐々に増大し、メッキ初期の急峻な変化は認められない。
【0023】
従って、メッキ初期の位相差を測定することにより、メッキ膜の形成状況(溝の埋め込み状況)をモニタすることが可能であるとともに、これを支配する添加剤の含有状態(含有の有無)についての知見を得ることができる。また、これらの知見に基づいて、添加剤、電界条件などのメッキ条件を制御することにより、より良好なCuメッキ膜の形成が可能となる。
【0024】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。その他要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一態様における半導体製造装置の概念図。
【図2】本発明の一態様における半導体基板の断面を示す図。
【図3】本発明の一態様において形成された試料の断面を示す図。
【図4】本発明の一態様において形成された試料の断面を示す図。
【図5】本発明の一態様において形成された試料の断面を示す図。
【図6】本発明の一態様において形成された試料の断面を示す図。
【図7】本発明の一態様において形成された試料の断面を示す図。
【図8】本発明の一態様において形成された試料の断面を示す図。
【図9】本発明の一態様における半導体製造装置の概念図。
【図10】本発明の一態様における電圧−電流位相差を示す図。
【図11】従来の半導体製造装置の概念図。
【符号の説明】
【0026】
1、11,101 メッキ槽
2、12、102 Cu材
3、13、103 被処理半導体基板
4、14、104 電源
5、15 基板導入手段
6 ボイド
17 位相差測定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝パターンと、少なくとも前記溝パターン内部に金属層が形成された絶縁膜を備えた第1の電極となる半導体基板を、第2の電極が設置されたメッキ液中に導入する工程と、
前記第1、第2の電極間に、直流電界に周波数100Hz以上の交流電界を重畳して印加し、前記金属層上に金属膜を形成する工程を備えることを特徴とする半導体製造方法。
【請求項2】
前記第1、第2の電極間の、電圧−電流位相差をモニタする工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造方法。
【請求項3】
前記メッキ液中に添加剤が供給されることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体製造方法。
【請求項4】
メッキ液及び添加剤が供給されるメッキ槽と、
溝パターンと、少なくとも前記溝パターン内部に金属層が形成された絶縁膜を備えた第1の電極となる半導体基板を、前記メッキ槽内に導入する手段と、
メッキ槽内に設置される第2の電極と、
前記第1、第2の電極間に、直流電界に周波数100Hz以上の交流電界を重畳して印加する手段を備えることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項5】
前記第1、第2の電極間の、電圧−電流位相差をモニタする手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−283151(P2006−283151A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106266(P2005−106266)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】