説明

半導体製造装置及び弁装置並びに半導体製造装置を用いたCVD処理方法及び半導体の製造方法

【課題】流路壁面に固形膜が形成されるのを防止して清掃についての負担を大幅に軽減し、稼働率を向上させた半導体製造装置を提供する。
【解決手段】弁箱2等の固定部と弁体9等の可動部とを有する弁装置を反応室と排気ポンプとの間に設けた半導体製造装置であって、前記弁装置の前記固定部に固定部用ヒータを設けた半導体製造装置とする。これにより、流路壁面に固形膜が形成されるのを防止し、半導体製造装置の稼働率を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体製造装置の圧力調整弁、例えば半導体製造装置の反応室内の反応ガスを所要の圧力に維持する為に用いられる圧力調整弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置の1つであるCVD装置は圧力調整弁を具備しており、該圧力調整弁は、反応室と排気ポンプとの間に設けられ、ガス圧力検知装置からの信号を基に弁の開度を調整し、前記反応室のガス圧力を所要の値に調整する。
【0003】
前記CVD装置に於ける反応ガスは、チャンバを出た後、冷却表面上に凝固する排気ガス分により、流路壁面に固形膜を生成する性質がある。この為、狭小な間隙に生成した固形膜により弁体等の可動部と弁箱等の固定部が一体化し、圧力調整弁の作動抵抗が著しく増大し、アクチュエータであるモータが過負荷となって焼損することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、斯かる圧力調整弁は前記焼損を防止する為、定期的な分解清掃をする必要がある。ところが従来の圧力調整弁は前記弁体と該弁体の弁軸とが一体構成であり、或は弁体に弁軸を貫通させた構造であり、定期的な清掃を行うには軸受を外し、弁体を収納する弁箱を完全に分解するか、或は弁軸を引抜くかする等、清掃しにくい構造となっており、この為清掃には熟練者を要し且長時間を要する等、半導体製造装置の稼働率を低減させる原因となっていた。
【0005】
本発明は斯かる実情を鑑み、流路壁面に固形膜が形成されるのを防止して清掃についての負担を大幅に軽減し、半導体製造装置の稼働率を向上させようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、弁箱等の固定部と弁体等の可動部とを有する弁装置を反応室と排気ポンプとの間に設けた半導体製造装置であって、前記弁装置の前記固定部に固定部用ヒータを設けた半導体製造装置に係るものである。又、本発明は、半導体製造装置に於ける反応室と排気ポンプとの間に用いられ、弁箱等の固定部と弁体等の可動部とを有する弁装置であって、前記固定部に固定部用ヒータを設けた弁装置に係るものである。又、本発明は、反応室と排気ポンプとの間に用いられ、弁箱等の固定部と弁体等の可動部とを有し、前記固定部に固定部用ヒータを設けた弁装置を用いて処理するCVD処理方法であって、前記反応室でのCVD処理と共に排気される排気ガスが前記弁装置を流通する際に、前記固定部用ヒータを加熱維持するCVD処理方法に係るものである。又、本発明は、反応室と排気ポンプとの間に用いられ、弁箱等の固定部と弁体等の可動部とを有し、前記固定部に固定部用ヒータを設けた弁装置を用いて処理する半導体の製造方法であって、前記反応室での処理と共に排気される排気ガスが前記弁装置を流通する際に、前記排気ガスにより前記固定部と前記可動部との接触部分に固形膜が生成されない様前記固定部用ヒータを加熱維持する半導体の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0007】
流路に隣接する部分をヒータによって排気ガス分中の凝固温度以上に加熱維持する。従って流通する反応ガス中に含まれる凝固分が弁体、弁箱に触れても凝固することがなく、反応ガスによる固形膜を生成することがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態を示す一部破断斜視図である。
【図2】同前実施の形態の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0010】
本実施の形態では、弁箱、弁座等の圧力調整弁の構成部品、特にガス流路に臨接する部品を加熱し、ガスの露点以上に保持し、流路壁面に固形膜が形成されるのを防止する。
【0011】
以下、図1、図2に於いて具体的に説明する。
【0012】
円筒中空部1を穿設した弁箱2に、前記円筒中空部1の軸心と直交する軸心を有するベアリングハウジング3,3を嵌着し、両ベアリングハウジング3,3にベアリング4,4を介して弁軸5,6を回転自在に挿通する。
【0013】
該弁軸5,6と前記弁箱2との間にはOリング7,7を挾設して、前記弁軸5,6と弁箱2との間を気密にシールする。該両弁軸5,6は同一軸心上にあって、両弁軸5,6の内側端部には弁体9を固着する。該弁軸5,6の内一方の弁軸5に断熱カラー10を介しウォームホイール11を嵌着し、他方の弁軸6と弁体9との間にはOリング12を設ける。
【0014】
前記弁箱2に断熱板13を介してモータ支持金具14を設け、該モータ支持金具14に減速器15を介して弁開閉モータ16を取付け、該弁開閉モータ16の出力軸17にはウォーム18を嵌着し、該ウォーム18には前記ウォームホイール11を噛合させる。
【0015】
前記弁体9の形状は周面を曲面仕上した円盤状であり、該弁体9の2平面にはそれぞれ大径凹部19と該大径凹部19の中心部に更に形成した小径凹部20が形成され、該小径凹部20にはドーナッツ状に形成した弁体ヒータ21を収納させる。
【0016】
前記小径凹部20と同心にOリング8を埋設し、前記大径凹部19に蓋板22を嵌着し、前記小径凹部20を気密に閉塞する。又、前記弁体9には両小径凹部20,20を連通させる案内孔24と該案内孔24にT字状に連通する横孔25を穿設する。該横孔25は、前記他方の弁軸6と同一軸心上に設けられている。
【0017】
該他方の弁軸6は中空となっており、該弁軸6を軸心に沿って貫通する通孔26は前記横孔25と連通する。
【0018】
前記通孔26には絶縁被覆付のリード線27を挿通し、該リード線27の一端を前記弁体ヒータ21に接続し、該リード線27の他端は図示しない温度制御装置に接続する。
【0019】
前記一方の弁軸5には閉止穴28を穿設し、該閉止穴28に温度センサ29を挿入し、該温度センサ29のリード線30は前記図示しない温度制御装置に接続する。
【0020】
前記弁箱2の前記弁軸5,6が貫通していない2平面に平板状の弁箱ヒータ31を固着し、又前記弁箱2の温度を検出する温度センサ32を金具33により該弁箱2に密着させて取付ける。前記平板状の弁箱ヒータ31及び温度センサ32はそれぞれ図示しない前記温度制御装置に接続する。
【0021】
尚、本弁装置の関連機器への取付けは、断熱部材を介して行い、本弁装置からの熱の漏洩を防止する。
【0022】
以下、作用について説明する。
【0023】
弁の開度の調整は、前記弁開閉モータ16を駆動し、前記ウォーム18、ウォームホイール11、弁軸5を介して前記弁体9を回転させる。該弁体9の回転角度は、前記弁開閉モータ16の回転数の検出、前記弁軸5の回転角度の検出により検知され、弁装置の開度が決定される。
【0024】
前記弁体ヒータ21、弁箱ヒータ31に通電し、弁体9、弁箱2を加熱保温する。この加熱保温温度は、35℃〜150℃位の範囲から選択され、目標設定温度とされる。
【0025】
前記温度センサ29,32からの温度検知信号は、図示しない温度制御装置に入力され、該検知温度を基に前記弁体ヒータ21、弁箱ヒータ31の通電が制御される。而して前記弁箱2、弁体9等反応ガスが接する部分を80℃〜100℃の温度に維持制御する。又、斯かる制御が可能である様、前記弁体ヒータ21、弁箱ヒータ31の電気容量を決定し、且温度制御装置に支障を生じ、制御不能となった場合にもOリング等を焼損しない様印加電圧の最大値を選択する。
【0026】
CVD処理と共に反応ガスが弁装置を流通するが、前記した様に弁体9、弁箱2はそれぞれ弁体ヒータ21、弁箱ヒータ31によって加熱保温されている。従って、反応ガス中に存在する凝固分は、円筒中空部1の壁面、弁体9の表面に接しても凝固することがない。而して、反応ガスを流通しても前記円筒中空部1の壁面、弁体9の表面に固形膜を生成することがない。
【0027】
尚、弁体ヒータ21、弁箱ヒータ31については種々考えられるが、弁体ヒータ21としては雲母の薄いドーナッツ状のベース34に所要の発熱体であるリボン線36を所要巻きし、雲母の円板35で挾持したものが挙げられ、又弁箱ヒータ31としては雲母の矩形薄板37に発熱体38を巻付け、雲母の薄板39で挟み、更に金属製のカバー40で覆い前記弁箱2の側面に固着したものが挙げられる。
【0028】
又弁箱ヒータは弁箱の内部に埋没する様にしてもよい。
【0029】
以上述べた如く本発明によれば、流通するガスに晒れる部分を加熱し、流通するガス中に含まれる凝固分の凝固温度以上に維持するので、排気ガスによる固形膜が生成することがなく、従って固形膜除去の為の分解掃除が不要となる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
而して、保弁作業の軽減を図り得ると共に分解掃除による装置の停止がなくなることで半導体製造装置の稼働率が向上する等、種々の優れた効果を発揮する。
【符号の説明】
【0031】
1 円筒中空部
2 弁箱
9 弁体
21 弁体ヒータ
31 弁箱ヒータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱等の固定部と弁体等の可動部とを有する弁装置を反応室と排気ポンプとの間に設けた半導体製造装置であって、前記弁装置の前記固定部に固定部用ヒータを設けた半導体製造装置。
【請求項2】
半導体製造装置に於ける反応室と排気ポンプとの間に用いられ、弁箱等の固定部と弁体等の可動部とを有する弁装置であって、前記固定部に固定部用ヒータを設けた弁装置。
【請求項3】
反応室と排気ポンプとの間に用いられ、弁箱等の固定部と弁体等の可動部とを有し、前記固定部に固定部用ヒータを設けた弁装置を用いて処理するCVD処理方法であって、前記反応室でのCVD処理と共に排気される排気ガスが前記弁装置を流通する際に、前記固定部用ヒータを加熱維持するCVD処理方法。
【請求項4】
反応室と排気ポンプとの間に用いられ、弁箱等の固定部と弁体等の可動部とを有し、前記固定部に固定部用ヒータを設けた弁装置を用いて処理する半導体の製造方法であって、前記反応室での処理と共に排気される排気ガスが前記弁装置を流通する際に、前記排気ガスにより前記固定部と前記可動部との接触部分に固形膜が生成されない様前記固定部用ヒータを加熱維持する半導体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−116627(P2010−116627A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295109(P2009−295109)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【分割の表示】特願2009−146860(P2009−146860)の分割
【原出願日】平成3年8月27日(1991.8.27)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】