説明

半透過型液晶表示装置及びその製造方法

【課題】位相差層を内蔵した半透過型液晶表示装置を構成する液晶表示パネルにおける該位相差層の形成プロセスを簡略化する。
【解決手段】加熱によって重合開始種を発生する熱重合開始剤を含む位相差材料を用いることで、加熱することで液晶分子の配向性を消失させながら、熱エネルギーで重合を開始し、位相差機能を持たない透明層を形成する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に係り、特に、位相差層を内蔵する半透過型液晶表示装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、IPS(In Plane Switching)方式やVA(Vertical Alignment)方式等の広視野角の透過型液晶表示装置が各種機器のモニターとして普及しており、応答特性を向上してテレビとしても使われている。その一方で、携帯電話やデジタルカメラを始めとする携帯型の情報機器にも液晶表示装置が普及している。携帯型情報機器は、最近では表示部を角度可変にしたものが増加しており、斜め方向から観察する場合が多いため広視野角が望まれている。
【0003】
携帯型情報機器用の表示装置は、晴天時の屋外から暗い室内までを含む多様な環境下で用いられるため、半透過型であることが要求される。半透過型の液晶表示装置は、1画素内に反射表示部と透過表示部を有する。反射表示部は、反射板を用いて周囲から入射する光を反射して表示を行い、周囲の明るさによらずコントラスト比が一定であるため、晴天時の屋外から室内までの比較的明るい環境下で良好な表示が得られる。一方、透過表示部は、バックライトを用いて表示するもので、環境によらず輝度が一定であるため、屋内から暗室までの比較的暗い環境下で高コントラスト比の表示が得られる。この両者を兼ね備えた半透過型液晶表示装置は、晴天時の屋外から暗い室内までを含む広範な環境下で高コントラスト比の表示が得られる。
【0004】
従来から、広視野角の透過表示で知られるIPS方式の液晶表示装置を半透過型にすれば、反射表示と広視野角の透過表示が同時に得られるのではないかと期待されてきた。例えば、特許文献1には半透過型IPS方式の液晶表示装置が記載されている。この半透過型IPS方式の液晶表示装置では、二枚の透明基板の間に液晶層を封止してなる液晶パネルの上側と下側の外面の全面に位相差板を配置する。この位相差板には視角依存性がある。そのため、液晶層の法線方向において液晶層と複数の位相差板の位相差を最適化しても、法線方向から離れるにつれて暗表示のための最適条件から急速に外れる。
【0005】
また、非特許文献1は、外部設置の位相差板に替えて、液晶パネル内部に位相差板(位相差層)を内蔵させた場合の設置構造と表示特性を開示する。なお、内蔵の位相差層を有する半透過型IPS方式を全透過型IPS方式と同等の広視野角とするための考察を開示したものとしては、特許文献2がある。
【0006】
内蔵位相差層は液晶高分子からなるため、有機高分子フイルムを延伸して作製した従来の外付けの位相差板と比較して分子の配向性が高く、位相差層の△nは外付けの位相差板よりもはるかに大きい。そのため、層厚が数十μmもある外付けの位相差板の対し、液晶高分子を用いて内蔵位相差層とすれば層厚を数μmと大幅に減少させることが可能となる。
【特許文献1】特開平11−242226号公報
【特許文献2】特開2005−338256号公報
【非特許文献1】c.Doornkamp et al.,Philips Research,“Next generation mobile LCDs with in−cell retarders."International Display Workshops2003,p685(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半透過型液晶表示装置を構成する液晶パネルの位相差層の形成方法として、主に特許文献2と非特許文献1に開示されている方法がある。図8は、特許文献2に開示されている液晶表示装置の第1基板(カラーフィルター基板)の概略断面図である。また、図9は、図8に示した第1基板の製造プロセスを説明する流れ図である。特許文献2に開示された第1基板は、ガラスを好適とする透明な基板31の主面にブラックマトリクス35で区画されたカラーフィルター45と平坦化層36と位相差層用配向膜37と位相差層38からなる。位相差層形成工程は図9のプロセス4(以下、P−4のように表記)からP−8のステップからなる。
【0008】
まず、位相差層用配向膜37上に液晶モノマーと光重合開始剤を有機溶剤に溶かしたものを塗布し(P−4)、プリベークして溶剤蒸発後(P−5)、マスク露光して、必要な部分のみ硬化させ、液晶分子が配向膜により配向した透明膜(位相差層)を形成する(P−6)。さらに、未硬化の部分を溶かすために有機現像し(P−7)、残留溶剤を蒸発させるためにベークを行う(P−8)。
【0009】
図10は、非特許文献1に開示されている液晶表示装置の第1基板(カラーフィルター基板)の概略断面図である。また、図11は、図10に示した第1基板の製造プロセスを説明する流れ図である。非特許文献1の構造は、基板31の主面にはブラックマトリクス35で区画されたカラーフィルター45と平坦化層36と位相差層用配向膜37と位相差層38もしくは位相差機能を消失させた透明層100からなる。位相差層形成工程は図11のP−4からP−6およびP−20のステップからなる。
【0010】
まず、液晶モノマーと光重合開始剤を有機溶剤に溶かしたものを塗布し(P−4)、プリベークして溶剤蒸発後(P−5)、マスク露光して、必要な部分のみ硬化させ、液晶分子が配向膜により配向した透明膜(位相差層)を形成する(P−6)。さらに、液晶分子の液晶相−等方相転移温度以上に加熱し、未硬化部分の液晶モノマーが等方相となった状態で全面露光し、未硬化部分を硬化させ、位相差機能が消失した透明層を形成する(P−20)。
【0011】
開示されている製造方法では、それぞれ上記したようなステップが位相差層形成に必要である。本発明の目的は、位相差材料を改良することで、位相差層形成工程を簡略化した半透過型液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明の手段を典型例で説明すると、以下のとおりである。本発明は、ここで記述される手段に限定されないことはいうまでもない。
【0013】
本発明の半透過型液晶表示装置は、遮光パターンと、前記遮光パターン上に形成された位相差用配向膜と、前記位相差用配向膜上に形成された透明有機膜と、前記透明有機膜上に形成された絶縁膜を主面上に形成された第1の基板と、薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタで駆動される画素電極を主面上に形成した第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に液晶配向膜を介して挟持される液晶層を備える。
【0014】
本発明では、上記の透明有機膜が液晶分子であり、かつ該液晶分子が前記位相差用配向膜により配向された第一領域と、前記位相差用配向膜により配向されない第二領域とに分かれている。この透明有機膜には、ヨードニウム塩とスルホニウム塩とパーオキサイド系の少なくとも一つの化合物もしくは分解物を含ませ、その濃度は透明有機膜に対して、硬化性を確保するために0.05重量%を下限とし、透明有機膜の表面状態や透明性など膜質を維持するために15重量%を上限とするのが望ましい。
【0015】
また、上記透明有機膜が、ヨードニウム塩もしくはスルホニウム塩の化合物もしくは分解物を含む場合、透明有機膜中にヨウ素とフッ素、又は硫黄とフッ素の元素が含まれることになる。この化合物の分子量を考慮すると、前記の濃度定義により、透明有機膜は、上記フッ素を250ppm以上且つ16000ppm以下の濃度で含むことが望ましい。また、透明有機膜は、上記ヨウ素を250ppm以上且つ30000ppm以下の濃度で含むことが望ましい。そして、透明有機膜は、上記硫黄元素を150ppm以上且つ20000ppm以下の濃度で含むことが望ましい。
【0016】
本発明の半透過型液晶表示装置の製造方法の典型例は以下のとおりである。すなわち、第1の基板に遮光パターンを形成し、この遮光パターン上に位相差用配向膜を形成する。この位相差用配向膜の上に紫外光照射によって重合開始種を発生する光重合開始剤と加熱によって重合開始種を発生する熱重合開始剤と反応性部位を持つ液晶分子を含む液膜、もしくは紫外光照射と加熱のどちらでも重合開始種を発生する熱重合開始剤と反応性部位を持つ液晶分子を含む液膜を形成する。
【0017】
上記液膜に選択的に紫外光を照射し、液晶分子が位相差膜用配向膜により配向した透明膜(位相差層)を形成する。その後、液晶性モノマーの液晶相−等方相転移温度よりも高く、かつ重合開始剤が熱によって重合が開始する濃度の重合開始種を発生する温度に基板を加熱して未効果部分の液膜を硬化させ、液晶分子が配向膜により配向していない透明膜を形成する。この透明膜上に絶縁膜を形成する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、IPS方式やVA方式など液晶駆動方式に係らず、位相差層を内蔵した半透過型液晶表示装置における位相差層の特性が向上し、その形成プロセスが簡略化され、製造コストや製造に伴う環境負荷が低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の最良の実施形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明による液晶表示装置の構成する液晶パネルの1画素の概略構成例を説明する平面図である。また、図2は、図1に示した液晶パネルの1画素の概略構成例を説明する図1のA−A’線に沿った断面図である。本実施例の液晶パネルは、第1の基板31と液晶層10と第2の基板32から構成され、第1の基板31と第2の基板32の各主面の対向間隙に液晶層10が扶持される。
【0021】
第1の基板31の主面(内面)にはブラックマトリクス35で区画されたカラーフィルター45と平坦化層(第1の保護膜)36と位相差層用配向膜37と位相差層38もしくは位相差機能を消失させた透明層100と位相差層の保護層(第2の保護膜)40、第1の液晶配向膜33を順に積層して有する。
【0022】
位相差層用配向膜37は液晶層組成物からなる位相差層38の形成材料の配向を制御する配向制御能が付与されている。また、第1の液晶配向膜33は表示光制御用の液晶層10の初期配向を制御する配向制御能が付与されている。
【0023】
第2の基板32の主面には、画素を駆動する薄膜トランジスタTFTを有する。薄膜トランジスタTFTは走査配線21と信号配線22および画素電極28に接続されている。この他に共通配線23と共通電極29を有する。ここでは、薄膜トランジスタTFTは逆スタガ型構造であり、そのチャネル部はアモルファスシリコン(a−Si)層25で形成されている。走査配線21と信号配線22は行方向と列方向に交差して二次元のマトリクスを形成しており、薄膜トランジスタTFTは概略その交差部付近に位置している。走査配線23の一部分は、アモルファスシリコン層25の下部に延在し、第1の絶縁層51でアモルファスシリコン層25と隔てられる。この走査配線23の一部分はゲート電極とも呼ばれ、これから第1の絶縁層(ゲート絶縁膜)51を通してアモルファスシリコン層25に電界を印加して、当該アモルファスシリコン層25を流れる電流を制御する。第1の絶縁層は、チャネルを成す半導体材料(本実施例ではシリコン)の酸化膜や窒化膜として形成される。
【0024】
共通配線23は走査配線21と平行に配置されており、第2のスルーホール27を通じて共通電極23に接続されている。画素電極28と薄膜トランジスタTFTのソース・ドレイン電極24とは、薄膜トランジスタTFTを覆う第2の絶縁層52を貫いて形成された第1のスルーホール26で結合されている。第2の絶縁層52は、上述した半導体材料の酸化物や窒化物のような無機の絶縁材料、又は樹脂等の有機の絶縁材料で形成される。画素電極28の上には第2の液晶配向膜34があり、液晶層10の初期配向を制御する配向制御能が付与されている。
【0025】
本実施例における第1の基板31は、好適には、イオン性不純物の少ない硼珪酸系ガラスで構成され、厚さは例えば0.5mmである。ブラックマトリクス35で区画されるカラーフィルター45は、赤色、緑色、青色を呈する各部分(カラーサブピクセル)がストライプ状に繰り返して配列されており、各ストライプは信号電極22に平行である。ブラックマトリクス35とカラーフィルター45の形成面の凹凸は樹脂性の平坦化層(第1の保護膜、オーバーコート膜)36で平坦化される。第1の液晶配向膜33は、ポリイミド系ポリマー膜であり、ラビング法で配向処理されている。
【0026】
第2の基板32は、第1の基板31と同様の硼珪酸系ガラスが適しており、厚さは例えば0.5mmである。第2の液晶配向膜34は、第1の液晶配向膜33と同様に、水平配向性のポリイミド系ポリマー膜である。信号配線22と走査配線21と共通配線23は、アルミニウム(Al)やその合金(アルミニウムとネオジムの合金:Al−Nd)、もしくはクロム(Cr)などで形成されており、画素電極28は、インジウムスズ酸化物(インジウム・ティン・オキサイド:ITO)等の透明導電膜が望ましく、共通電極29もITO等の透明導電膜で形成するのが望ましい。
【0027】
画素電極28は走査配線21に対して平行なスリット30を有し、スリット30のピッチは、約4μmである。画素電極28と共通電極29は、層厚が0.5μmの第3の絶縁層53で隔てられており、電圧印加時には画素電極28と共通電極29の間に電界が形成されるが、第3の絶縁層53の影響により電界はアーチ状に歪められて液晶層10中を通過する。このことにより、電圧印加時に液晶層10に配向変化が生じる。上記の数値は本明細書および図面での他の数値も含めてあくまで一例であり、本発明はこの数値に限定されるものではない。第3の絶縁層53も、第2の絶縁層52と同様に、無機又は有機の絶縁材料で形成される。第1乃至第3の絶縁層51〜53は、層間絶縁膜とも呼ばれる。
【0028】
共通配線23は画素電極28と交差する部分で画素電極28内に張り出した構造を有する。図1において、共通配線23が画素電極28と重畳する部分が反射表示部であり、これ以外の画素電極28と共通電極29の重畳部では、バックライトの光を通過して透過表示部となる。図2には、第2の基板32の外側主面(第2の偏光板42が配置される)から液晶パネルに入射し、液晶層10を透過し、且つ第1の基板31の外側主面(第1の偏光板41が配置される)から液晶パネルの外側に出射される「透過光61」の光路と、第1の基板31の外側主面から液晶パネルに入射し、液晶層10を透過して共通配線23の画素電極28の下部に延在した一部分(所謂反射層)で反射されて再び液晶層10を透過し、且つ第1の基板31の外側主面から液晶パネルの外側に出射される「反射光62」の光路が、矢印により夫々例示される。透過表示部と反射表示部では最適な液晶層の層厚が異なるため、境界には段差が生じる。透過表示部と反射表示部の境界を短くするため、境界が画素の短辺に平行になるように透過表示部と反射表示部を配置した。
【0029】
このように、共通配線23等の配線を反射板で兼用すれば製造過程を低減する効果が得られる。共通配線23を高反射率のアルミニウム等で形成すれば、より明るい反射表示が得られる。共通配線23をクロムとし、アルミニウムや銀合金の反射板を別途形成しても同様の効果が得られる。
【0030】
液晶層10は、配向方向の誘電率がその法線方向よりも大きい正の誘電率異方性を示す液晶層組成物である。ここでは、その複屈折は25℃において0.067であり、室温域を含む広い温度範囲においてネマチック相を示す。また、薄膜トランジスタを用いて周波数60Hzで駆動した時の保持期間中において、反射率と透過率を充分に保持してフリッカを生じない高抵抗値を示す。
【0031】
図3は、本発明の実施例1の液晶表示装置を構成する液晶パネルの製造プロセスの説明図である。図3の製造プロセスを図2に示した液晶パネルの構造を参照して説明する。
【0032】
第1の基板31の主面にブラックマトリクス35とカラーフィルター45を形成し、その表面を第1の保護膜36で覆って平坦化する(P−1)。
【0033】
次に、位相差層用配向膜37を塗布する(P−2)。
【0034】
次に、位相差層用配向膜37をベーク後、ラビングして配向制御能を付与する(P−3)。ここでは、配向制御能を持たせるためにラビングを用いたが、ラビングではなくとも、光配向膜やイオンビーム配向膜、延伸膜など、次に塗布する液晶モノマーが配向すればよい。
【0035】
位相差層用配向膜37は水平配向性であり、位相差層38の遅相軸方向を定める機能を有する。位相差層用配向膜37の上に、反応性の官能基を分子末端に有するネマチック液晶モノマーと光重合開始剤および熱重合開始剤を有機溶媒に溶かしたものに重合度を制御する重合禁止剤と塗布性を向上させるレベリング剤を添加した位相差材料を塗布する(P−4)。
【0036】
反応性の官能基としてアクリル基(アクリレート)を分子末端に有するネマチック液晶モノマーの例を「化1」「化2」に示す。なお、反応性の官能基はアクリル基でなくとも、重合反応が起こればよいので、エポキシ基などでもよい。
【化1】

【化2】

【0037】
また、光重合開始剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製IRGACURE 651、IRGACURE 184、DAROCUR 1173、IRGACURE 500、IRGACURE 2959、IRGACURE 127、IRGACURE 907、IRGACURE 1300、IRGACURE 369、IRGACURE 379、IRGACURE 1800、IRGACURE 1870、IRGACURE 4265、DAROCUR TPO、IRGACURE 819、IRGACURE 819DW、IRGACURE 784、IRGACURE OXE 01、IRGACURE OXE 02、IRGACURE 754などを挙げることができる。
【0038】
また、この位相差材料の有機溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、酢酸メトキシブチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルなどを挙げることができる。
【0039】
また、熱重合開始剤の種類として、主に、加熱によってラジカルを発生するものと、加熱によってカチオンを発生するものがある。加熱によってラジカルを発生する熱重合開始剤として、パーオキサイド系の化合物が挙げられる。その例を「化3」に示す。(R1〜R4は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などから選ばれる置換基を表し、nは1〜10の整数を表す。)
【化3】

【0040】
また、加熱によってカチオンを発生する熱重合開始剤として、スルホニウム塩やヨードニウム塩の化合物がある。その例をそれぞれ「化4」「化5」に示す。R1〜R3は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などから選ばれる置換基を表す。
【化4】

【化5】

【0041】
位相差材料を塗布した後、これを70℃のホットプレートにより3分プリベークして溶剤を除去することで透明な液膜が形成する(P−5)。この液膜は、未硬化の状態でも位相差層用配向膜37の配向処理方向を向いて配向している。
【0042】
この液膜に対し開口部を有する露光マスクを用いて反射表示部に対応する部分に選択的に紫外光を照射し、前記配向膜により液晶分子が配向した透明膜(位相差層)38を形成する(P−6)。このとき、光重合開始剤に紫外光が照射されることで、重合開始種が発生し、ネマチック液晶モノマーが配向を保持したまま重合して、硬化し、液晶分子が前記配向膜により配向された透明膜となる。一方、露光されていない部分は、配向膜の配向制御能によって配向を保ち、未硬化の液膜状態である。また、塗布時の溶液濃度および塗布条件を適宜調整して膜厚を調整し、位相差層38のリタデーションが波長550nmにおいて2分の1波長となるようにする。
【0043】
その後、140℃以上に加熱し、未露光であった液膜を硬化させ、液晶分子が配向していない透明膜を形成する(P−0)。このときの加熱温度はネマチック液晶モノマーの液晶相‐等方相転移温度より高いため、液晶モノマーは配向せずにランダムな向きで存在する。また、このとき加熱温度は、位相差材料に添加している熱重合開始剤の重合開始温度以上なため、液晶モノマーの重合反応が起こる。その結果、液晶モノマーの向きがランダムな状態で硬化するため、位相差を持たない透明膜が形成される。なお、ラジカルを発生する重合開始剤を用いる時は、窒素雰囲気下などで加熱を行うなど、酸素阻害を受け難い条件下で行うことで、反応性が上がる。
【0044】
熱重合開始剤に求められる条件としては、液晶モノマーの液晶相−等方相転移温度以下では重合反応が開始されず、液晶相−等方相転移温度以上の温度で、重合反応に必要な濃度の重合開始種を発生することが必要になる。また、温度が高すぎると液晶モノマーが分解してしまうので、液晶モノマーの分解温度より低い温度で硬化が始まらなければならない。
【0045】
ここで、図4を用いて熱重合開始剤の半減期について説明する。図4は、重合開始剤の半減期について説明する概略図である。熱重合開始剤は熱エネルギーによって重合開始種を発生する反応を起こす。熱重合開始剤の活性化エネルギーが高いものでも、常温で少しずつ反応する。そのため、重合開始剤の反応性は半減期で表記される。半減期とは初期の分子数に対して、半分の分子が反応するまでの時間のことを示す。たとえば、図4のAの線で示される分子の半減期は10分であり、Bの線で示される分子の半減期は60分である。加熱によって重合開始種が発生する数は、重合開始剤の温度と半減期と濃度などで決まる。
【0046】
本実施例では、70℃のホットプレートで加熱する工程(P−5)で重合反応が開始することを避けるために、熱重合開始剤の70℃での半減期が10分以上であることが望ましい。また、高温にしすぎると液晶分子が分解してしまうので、熱重合開始剤の230℃での半減期が1時間以内であることが望ましい。
【0047】
上記の条件を満たす熱重合開始剤であれば、「化3」「化4」「化5」で示す以外のものでも使用できる。
【0048】
このように、加熱するだけで、未硬化部分を反応させ、位相差機能を持たない透明膜にすることが可能であるので、公知例のように有機現像を行ったり、全面露光をしたりする必要が無く、簡便な装置構成で、簡便なプロセスで行うことができる。
【0049】
再び、図2及び図3を参照して、液晶パネルの製造プロセスを説明する。位相差層38の上に透明な有機層を塗布して第2の保護層40とする(P−9)。この保護層40は位相差層の重合反応時の分解物などを遮断するバリア層の役割も果たしている。
【0050】
位相差層38に△nが液晶層の2倍よりも大きいものを用いると、位相差層38のリタデーションを2分の1波長としたときに厚さが不十分になり、位相差層38だけでは反射表示部と透過表示部との間のリタデーションの差は4分の1波長よりも小さくなる。そこで、反射表示部と透過表示部に4分の1波長のリタデーション差を確保するために、次に位相差層38上に膜厚調整層39を形成する。第2の保護層40に感光性透明レジストを塗布し、露光マスクを用いて選択的に紫外光を照射する。ここでは反射表示部と同様の分布になるような露光マスクを用いてパターンニングする。その後、アルカリ現像により、位相差層38の上層のみに膜厚調整層39を形成する(P−10)。さらにその上に、液晶層のギャップを保つための柱状スペーサを形成する(P−11)。
【0051】
第1の基板31の主面最上層に第1の液晶配向膜33を、第2の基板32の主面最上層に第2の液晶配向膜34を塗布し、所定の角度でラビング処理(P−12)した後に、第1の基板31と第2の基板32の表示領域に柱状スペーサを介在し、外周縁の内側にシール材を塗布して両基板を貼り合わせて組立て、内側に液晶層10を封入する(P−13)。
【0052】
最後に、第1の基板31と第2の基板32の外側に第1の偏光板41と第2の偏光板42をそれぞれ配置する。第1の偏光板41と第2の偏光板42の透過軸は液晶層配向方向に対してそれぞれ直交、平行になるように配置する(P−14)。
【0053】
本実施例では、第1の偏光板41の粘着層43には、その内部に屈折率が粘着材とは異なる透明な微小球を多数混入した光拡散性の粘着層43を用いた。この様な構成としたことで、粘着材と微小球の界面において両者の屈折率が異なることによって生じる屈折の効果を利用して、入射光の光路を拡大する作用を有する。これにより、画素電極28と共通電極29における反射光の干渉で生じる虹色の着色を低減できる。しかし、粘着層43の構成はこのようなものに限らず、微小球なしの粘着材を用いてもよいことは言うまでもない。
【0054】
以上のようにして作製した本実施例の半透過型液晶パネルの透過表示部は、第1の偏光板41の透過軸と第2の偏光板42の透過軸は直交し、かつ後者は液晶配向方向に平行である。これは透過型IPS方式と同様の構成であるので、透過表示については透過型IPS方式と同様にモニター用途にも耐える広視野角が得られる。
【0055】
本実施例では、IPS方式の位相差内蔵型半透過型液晶パネルについてのパネル構造や製造プロセスについて述べたが、VA方式やその他の液晶駆動方式の位相差内蔵型半透過型液晶パネルにおいても本発明を用いることができる。その場合、液晶駆動方式によってTFT構造、カラーフィルターの画素構造、位相差層のリタデーション値やその他のパネル構成などが異なることが考えられるが、位相差材料に適切な熱重合開始剤を入れることで、本発明のプロセスが実施でき、効果が発揮される。
【実施例2】
【0056】
本発明の実施例2の半透過型液晶表示装置の構成は前記した実施例1を説明する図1、図2と同様である。実施例2の製造プロセスの流れを図3を参照して説明する。
【0057】
第1の基板31の主面にブラックマトリクス35とカラーフィルター45を形成し、その表面を第1の保護膜36で覆って平坦化する(P−1)。
【0058】
次に、位相差層用配向膜37を塗布する(P−2)。
【0059】
次に、位相差層用配向膜37をベーク後、ラビングして配向制御能を付与する(P−3)。ここでは、配向制御能を持たせるためにラビングを用いたが、ラビングではなくとも、光配向膜やイオンビーム配向膜、延伸膜など、次に塗布する液晶モノマーが配向すればよい。
【0060】
位相差層用配向膜37は水平配向性であり、位相差層38の遅相軸方向を定める機能を有する。位相差層用配向膜37の上に、紫外光照射と加熱のどちらでも重合開始種を発生する重合開始剤及び反応性の官能基を分子末端に有するネマチック液晶モノマーを有機溶媒に溶かしたものに重合度を制御する重合禁止剤と塗布性を向上させるレベリング剤を添加した位相差材料を塗布する(P−4)。
【0061】
反応性の官能基にアクリル基を分子末端に有するネマチック液晶モノマーの例は実施例1で「化1」「化2」として示したものと同じである。
【0062】
また、この位相差材料の有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、酢酸メトキシブチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルなどを挙げることができる。
【0063】
また、紫外光照射と加熱のどちらでも重合開始種を発生する重合開始剤の種類として、スルホニウム塩の化合物がある。その例は「化5」に示したものと同様である。R1〜R3は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などから選ばれる置換基を表す。
【0064】
位相差材料を塗布した後、これを70℃のホットプレートにより3分プリベークして溶剤を除去することで透明な液膜が形成する(P−5)。この液膜は、未硬化の状態でも位相差層用配向膜37の配向処理方向を向いて配向している。
【0065】
この液膜に対し開口部を有する露光マスクを用いて反射表示部に対応する部分に選択的に紫外光を照射し、液晶分子が前記配向膜により配向された透明膜(位相差層)38を形成する(P−6)。重合開始剤に紫外光が照射されることで、重合開始種が発生し、ネマチック液晶モノマーが配向を保持したまま重合して、硬化し、液晶分子が前記配向膜により配向された透明膜となる。露光されていない部分は、配向膜の配向制御能によって配向を保ち、未硬化の液膜状態である。
【0066】
図5は、重合開始剤の吸収波長について説明する図である。液晶モノマーの吸収スペクトルを図5のaで示したものとしたとき、重合開始剤の吸収スペクトルがbであったとすると、液晶モノマーの吸収波長のほうが長いため、紫外光を照射しても、紫外光が液晶モノマーに吸収されて、重合開始剤は紫外光をほとんど吸収できず、重合開始種が発生しにくい。
【0067】
一方、液晶モノマーの吸収スペクトルをaで示したものとしたとき、重合開始剤の吸収スペクトルがcであったとすると、液晶モノマーより重合開始剤の吸収波長のほうが長いため、紫外光を吸収し、重合開始種を効率的に発生することができる。
【0068】
そのため、前期の「化5」に示したスルホニウム塩のR1〜R3の部分に芳香族性の置換基や共役系を伸ばした置換基を導入したものなど、使用する液晶モノマーの吸収波長より長波長まで伸びたものを選んだ。さらに、この後の工程(P−30)において、熱エネルギーで重合開始種を発生する必要があるので、後述するような温度範囲で重合反応が起こるような重合開始剤を選んだ。
【0069】
一方で、重合開始剤の吸収波長が可視域まで伸びていると、位相差相が着色してしまうため、カラーフィルターとしての色性能が落ちてしまうので望ましくない。ただし、熱退色(ブリーチング)機能を持つ重合開始剤ならば、可視領域に吸収が加熱することで消えるため、問題なく使用できる。
【0070】
また、スルホニウム塩の化合物以外にも、パーオキサイド系やヨードニウム塩などのその他の化合物においても吸収波長を最適化することで、本発明に用いることができる。
【0071】
次に、140℃以上に加熱し、未露光であった液膜を硬化させ、液晶分子が配向していない透明膜を形成する(P−20)。このときの加熱温度は液晶モノマーの液晶相−等方相転移温度より高いため、液晶モノマーは配向せずにランダムな向きで存在する。また、このとき加熱温度は、熱重合開始剤の重合開始温度以上なため、液晶モノマーの重合反応が起こる。その結果、液晶モノマーの向きがランダムな状態で硬化するため、位相差を持たない透明膜が形成される。
【0072】
重合開始剤に求められる熱反応性の条件としては、液晶モノマーの液晶相−等方相転移温度以下では、重合反応が開始されず、液晶相−等方相転移温度以上の温度で、重合反応に必要な重合開始種を発生することが必要になる。また、あまり高い温度だと、液晶モノマーが分解してしまうので、液晶モノマーの分解温度より低い温度で硬化が始まらなければならない。そのため、本実施例においても、実施例1と同様、重合開始剤の半減期は70℃で10分以上であり、230℃で1時間以内であることが望ましい。
【0073】
このように、本実施例では、一種類の重合開始剤を液晶モノマーに添加するだけで、光照射と加熱のどちらでも重合開始種を発生するので、実施例1のように複数の重合開始剤を混ぜる必要が無いため、液晶モノマーに対する重合開始剤の濃度を低く抑えることができる。
【0074】
次に位相差層38の上に透明な有機層を塗布して第2の保護層40とする(P−9)。この保護層40は位相差層の重合反応時の分解物などを遮断するバリア層の役割も果たしている。
【0075】
位相差層38に△nが液晶層の2倍よりも大きいものを用いると、位相差層38のリタデーションを2分の1波長としたときに厚さが不十分になり、位相差層38だけでは、反射表示部と透過表示部との間のリタデーションの差は4分の1波長よりも小さくなる。そこで、反射表示部と透過表示部に4分の1波長のリタデーション差を確保するために、次に位相差層38上に膜厚調整層39を形成する。第2の保護層40に感光性透明レジストを塗布し、露光マスクを用いて選択的に紫外光を照射する。ここでは反射表示部と同様の分布になるような露光マスクを用いてパターンニングする。その後、アルカリ現像により、位相差層38の上層のみに膜厚調整層39を形成する(P−10)。さらにその上に、液晶層のギャップを保つための柱状スペーサを形成する(P−11)。
【0076】
第1の基板31の主面最上層に第1の液晶配向膜33を、第2の基板32の主面最上層に第2の液晶配向膜34を塗布し、所定の角度でラビング処理(P−12)した後に、第1の基板31と第2の基板32の表示領域に柱状スペーサを介在し、外周縁の内側にシール材を塗布して両基板を貼り合わせて組立て、内側に液晶層10を封入する(P−13)。
【0077】
最後に、第1の基板31と第2の基板32の外側に第1の偏光板41と第2の偏光板42をそれぞれ配置する。第1の偏光板41と第2の偏光板42の透過軸は液晶層配向方向に対してそれぞれ直交、平行になるように配置する(P−14)。
【0078】
本実施例では、第1の偏光板41の粘着層43には、その内部に屈折率が粘着材とは異なる透明な微小球を多数混入した光拡散性の粘着層43を用いた。この様な構成としたことで、粘着材と微小球の界面において両者の屈折率が異なることによって生じる屈折の効果を利用して、入射光の光路を拡大する作用を有する。これにより、画素電極28と共通電極29における反射光の干渉で生じる虹色の着色を低減できる。しかし、粘着層43の構成はこのようなものに限らず、微小球なしの粘着材を用いてもよいことは言うまでもない。
【0079】
以上のようにして作製した本実施例の半透過型液晶パネルの透過表示部は、第1の偏光板41の透過軸と第2の偏光板42の透過軸は直交し、かつ後者は液晶配向方向に平行である。これは透過型IPS方式と同様の構成であるので、透過表示については透過型IPS方式と同様にモニター用途にも耐える広視野角が得られる。
【0080】
本実施例では、IPS方式の位相差内蔵の半透過型液晶表示装置についての液晶表示パネル構造や製造プロセスについて説明したが、VA方式やその他の液晶駆動方式の位相差内蔵の半透過型液晶パネルにおいても本発明を用いることができる。その場合、液晶駆動方式によってTFT構造、カラーフィルターの画素構造、位相差層のリタデーション値やその他のパネル構成などが異なることが考えられるが、位相差材料に紫外光照射と加熱のどちらでも重合開始種を発生する適切な重合開始剤を入れることで、本発明のプロセスが実施でき、効果が発揮される。
【実施例3】
【0081】
本発明の実施例3の半透過型液晶表示装置の平面構成は前記した実施例1、2を説明する図1と同様である。図6は、実施例3の断面構造を説明する図1のA−A’線に沿った断面図である。図7は、実施例3の製造プロセスを説明する流れ図である。
【0082】
第1の基板31の主面(内面)にはブラックマトリクス35で区画されたカラーフィルター45と位相差層用配向膜37と位相差層38もしくは位相差機能を消失させた透明層100と位相差層の保護層(第2の保護膜)40、第1の液晶配向膜33を順に積層して有する。
【0083】
位相差層用配向膜37は液晶層組成物からなる位相差層38の形成材料の配向を制御する配向制御能が付与されている。また、第1の液晶配向膜33は表示光制御用の液晶層10の初期配向を制御する配向制御能が付与されている。
【0084】
第2の基板32の主面には、画素を駆動する薄膜トランジスタTFTを有する。薄膜トランジスタTFTは走査配線21と信号配線22および画素電極28に接続されている。この他に共通配線23と共通電極29を有する。ここでは、薄膜トランジスタTFTは逆スタガ型構造であり、そのチャネル部はアモルファスシリコン(a−Si)層25で形成されている。走査配線21と信号配線22は行方向と列方向に交差して二次元のマトリクスを形成しており、薄膜トランジスタTFTは概略その交差部付近に位置している。
【0085】
共通配線23は走査配線21と平行に配置されており、第2のスルーホール27を通じて共通電極23に接続されている。画素電極28と薄膜トランジスタTFTのソース・ドレイン電極24は、第1のスルーホール26で結合されている。画素電極28の上には第2の液晶配向膜34があり、液晶層10の初期配向を制御する配向制御能が付与されている。
【0086】
本実施例における第1の基板31は、好適には、イオン性不純物の少ない硼珪酸系ガラスで構成され、厚さは例えば0.5mmである。ブラックマトリクス35で区画されるカラーフィルター45は、赤色、緑色、青色を呈する各部分(カラーサブピクセル)がストライプ状に繰り返して配列されており、各ストライプは信号電極22に平行である。第1の液晶配向膜33は、ポリイミド系ポリマー膜であり、ラビング法で配向処理されている。
【0087】
第2の基板32は、第1の基板31と同様の硼珪酸系ガラスが適しており、厚さは例えば0.5mmである。第2の液晶配向膜34は、第1の液晶配向膜33と同様に、水平配向性のポリイミド系ポリマー膜である。信号配線22と走査配線21と共通配線23は、アルミニウム(Al)やその合金(アルミニウムとネオジムの合金:Al−Nd)、もしくはクロム(Cr)などで形成されており、画素電極28は、インジウムスズ酸化物(インジウム・ティン・オキサイド:ITO)等の透明導電膜が望ましく、共通電極29もITO等の透明導電膜で形成するのが望ましい。
【0088】
画素電極28は走査配線21に対して平行なスリット30を有し、スリット30のピッチは、約4μmである。画素電極28と共通電極29は、層厚が0.5μmの第3の絶縁層53で隔てられており、電圧印加時には画素電極28と共通電極29の間に電界が形成されるが、第3の絶縁層53の影響により電界はアーチ状に歪められて液晶層10中を通過する。このことにより、電圧印加時に液晶層10に配向変化が生じる。上記の数値は本明細書および図面での他の数値も含めてあくまで一例であり、本発明はこの数値に限定されるものではない。
【0089】
共通配線23は画素電極28と交差する部分で画素電極28内に張り出した構造を有する。図1において、共通配線23が画素電極28と重畳する部分が反射表示部であり、これ以外の画素電極28と共通電極29の重畳部では、バックライトの光を通過して透過表示部となる。透過表示部と反射表示部では最適な液晶層の層厚が異なるため、境界には段差が生じる。透過表示部と反射表示部の境界を短くするため、境界が画素の短辺に平行になるように透過表示部と反射表示部を配置した。
【0090】
このように、共通配線23等の配線を反射板で兼用すれば製造過程を低減する効果が得られる。共通配線23を高反射率のアルミニウム等で形成すれば、より明るい反射表示が得られる。共通配線23をクロムとし、アルミニウムや銀合金の反射板を別途形成しても同様の効果が得られる。
【0091】
液晶層10は、配向方向の誘電率がその法線方向よりも大きい正の誘電率異方性を示す液晶層組成物である。ここでは、その複屈折は25℃において0.067であり、室温域を含む広い温度範囲においてネマチック相を示す。また、薄膜トランジスタを用いて周波数60Hzで駆動した時の保持期間中において、反射率と透過率を充分に保持してフリッカを生じない高抵抗値を示す。
【0092】
図7は、本発明の液晶表示装置の実施例3の構成する液晶パネルの製造プロセスを説明する流れ図である。図7の製造プロセスを図6の液晶パネルの構造を参照して説明する。
【0093】
第1の基板31の主面にブラックマトリクス35とカラーフィルター45を形成する(P−1)。
【0094】
次に、位相差層用配向膜37を塗布する(P−2)。
【0095】
次に、位相差層用配向膜37をベーク後、ラビングして配向制御能を付与する(P−3)。ここでは、配向制御能を持たせるためにラビングを用いたが、ラビングではなくとも、光配向膜やイオンビーム配向膜、延伸膜など、次に塗布する液晶モノマーが配向すればよい。
【0096】
位相差層用配向膜37は水平配向性であり、位相差層38の遅相軸方向を定める機能を有する。位相差層用配向膜37の上に、反応性の官能基を分子末端に有するネマチック液晶モノマーと光重合開始剤および熱重合開始剤を有機溶媒に溶かしたものに重合度を制御する重合禁止剤と塗布性を向上させるレベリング剤を添加した位相差材料を塗布する(P−4)。
【0097】
反応性の官能基としてアクリル基(アクリレート)を分子末端に有するネマチック液晶モノマーの例は前記した「化1」「化2」と同じである。なお、反応性の官能基はアクリル基でなくとも、重合反応が起こればよいので、エポキシ基などでもよい。
【0098】
また、光重合開始剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製IRGACURE 651、IRGACURE 184、DAROCUR 1173、IRGACURE 500、IRGACURE 2959、IRGACURE 127、IRGACURE 907、IRGACURE 1300、IRGACURE 369、IRGACURE 379、IRGACURE 1800、IRGACURE 1870、IRGACURE 4265、DAROCUR TPO、IRGACURE 819、IRGACURE 819DW、IRGACURE 784、IRGACURE OXE 01、IRGACURE OXE 02、IRGACURE 754などを挙げることができる。
【0099】
また、この位相差材料の有機溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、酢酸メトキシブチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルなどを挙げることができる。
【0100】
また、熱重合開始剤の種類として、主に、加熱によってラジカルを発生するものと、加熱によってカチオンを発生するものがある。加熱によってラジカルを発生する熱重合開始剤として、パーオキサイド系の化合物が挙げられる。その例を前記「化3」に示す。R1〜R4は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などから選ばれる置換基を表し、nは1〜10の整数を表す。
【0101】
また、加熱によってカチオンを発生する熱重合開始剤として、スルホニウム塩やヨードニウム塩の化合物がある。その例をそれぞれ前記「化4」「化5」に示す。R1〜R3は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などから選ばれる置換基を表す。
【0102】
位相差材料を塗布した後、これを70℃のホットプレートにより3分プリベークして溶剤を除去することで透明な液膜が形成する(P−5)。この液膜は、未硬化の状態でも位相差層用配向膜37の配向処理方向を向いて配向している。
【0103】
この液膜に対し開口部を有する露光マスクを用いて反射表示部に対応する部分に選択的に紫外光を照射し、前記配向膜により液晶分子が配向した透明膜(位相差層)38を形成する(P−6)。このとき、光重合開始剤に紫外光が照射されることで、重合開始種が発生し、ネマチック液晶モノマーが配向を保持したまま重合して、硬化し、液晶分子が前記配向膜により配向された透明膜となる。一方、露光されていない部分は、配向膜の配向制御能によって配向を保ち、未硬化の液膜状態である。また、塗布時の溶液濃度および塗布条件を適宜調整して膜厚を調整し、位相差層38のリタデーションが波長550nmにおいて2分の1波長となるようにする。
【0104】
その後、140℃以上に加熱し、未露光であった液膜を硬化させ、液晶分子が配向していない透明膜を形成する(P−30)。このときの加熱温度はネマチック液晶モノマーの液晶相−等方相転移温度より高いため、液晶モノマーは配向せずにランダムな向きで存在する。また、このとき加熱温度は、位相差材料に添加している熱重合開始剤の重合開始温度以上なため、液晶モノマーの重合反応が起こる。その結果、液晶モノマーの向きがランダムな状態で硬化するため、位相差を持たない透明膜が形成される。なお、ラジカルを発生する重合開始剤を用いる時は、窒素雰囲気下などで加熱を行うなど、酸素阻害を受け難い条件下で行うことで、反応性が上がる。
【0105】
熱重合開始剤に求められる条件としては、液晶モノマーの液晶相−等方相転移温度以下では重合反応が開始されず、液晶相−等方相転移温度以上の温度で、重合反応に必要な濃度の重合開始種を発生することが必要になる。また、温度が高すぎると液晶モノマーが分解してしまうので、液晶モノマーの分解温度より低い温度で硬化が始まらなければならない。
【0106】
ここで、実施例1と同様であるが、図4を用いて熱重合開始剤の半減期について説明する。熱重合開始剤は熱エネルギーによって重合開始種を発生する反応を起こす。熱重合開始剤の活性化エネルギーが高いものでも、常温で少しずつ反応する。そのため、重合開始剤の反応性は半減期で表記される。半減期とは初期の分子数に対して、半分の分子が反応するまでの時間のことを示す。たとえば、図4のAの線で示される分子の半減期は10分であり、Bの線で示される分子の半減期は60分である。加熱によって重合開始種が発生する数は、重合開始剤の温度と半減期と濃度などで決まる。
【0107】
本実施例では、70℃のホットプレートで加熱する工程(P−5)で重合反応が開始しないように、熱重合開始剤の70℃での半減期が10分以上であることが望ましい。また、高温にしすぎると液晶分子が分解してしまうので、熱重合開始剤の230℃での半減期が1時間以内であることが望ましい。上記の条件を満たす熱重合開始剤であれば、「化3」「化4」「化5」で示す以外のものでも使用できる。
【0108】
このように、加熱するだけで、未硬化部分を反応させ、位相差機能を持たない透明膜にすることが可能であるので、公知例のように有機現像を行ったり、全面露光をしたりする必要が無く、簡便な装置構成で、簡便なプロセスで行うことができる。
次に位相差層38の上に透明な有機層を塗布して第2の保護層40とする(P−9)。この保護層40は位相差層の重合反応時の分解物などを遮断するバリア層の役割も果たしている。
【0109】
位相差層38に△nが液晶層の2倍よりも大きいものを用いると、位相差層38のリタデーションを2分の1波長としたときに厚さが不十分になり、位相差層38だけでは、反射表示部と透過表示部との間のリタデーションの差は4分の1波長よりも小さくなる。そこで、反射表示部と透過表示部に4分の1波長のリタデーション差を確保するために、次に、位相差層38上に膜厚調整層39を形成する。第2の保護層40に感光性透明レジストを塗布し、露光マスクを用いて選択的に紫外光を照射する。ここでは反射表示部と同様の分布になるような露光マスクを用いてパターンニングする。その後、アルカリ現像により、位相差層38の上層のみに膜厚調整層39を形成する(P−10)。さらにその上に、液晶層のギャップを保つための柱状スペーサを形成する(P−11)。
【0110】
第1の基板31の主面最上層に第1の液晶配向膜33を、第2の基板32の主面最上層に第2の液晶配向膜34を塗布し、所定の角度でラビング処理(P−12)した後に、第1の基板31と第2の基板32の表示領域に柱状スペーサを介在し、外周縁の内側にシール材を塗布して両基板を貼り合わせて組立て、内側に液晶層10を封入する(P−13)。
【0111】
最後に、第1の基板31と第2の基板32の外側に第1の偏光板41と第2の偏光板42をそれぞれ配置する。第1の偏光板41と第2の偏光板42の透過軸は液晶層配向方向に対してそれぞれ直交、平行になるように配置する(P−14)。
【0112】
本実施例では、第1の偏光板41の粘着層43には、その内部に屈折率が粘着材とは異なる透明な微小球を多数混入した光拡散性の粘着層43を用いた。この様な構成としたことで、粘着材と微小球の界面において両者の屈折率が異なることによって生じる屈折の効果を利用して、入射光の光路を拡大する作用を有する。これにより、画素電極28と共通電極29における反射光の干渉で生じる虹色の着色を低減できる。しかし、粘着層43の構成はこのようなものに限らず、微小球なしの粘着材を用いてもよいことは言うまでもない。
【0113】
以上のようにして作製した本実施例の半透過型液晶パネルの透過表示部は、第1の偏光板41の透過軸と第2の偏光板42の透過軸は直交し、かつ後者は液晶配向方向に平行である。これは透過型IPS方式と同様の構成であるので、透過表示については透過型IPS方式と同様にモニター用途にも耐える広視野角が得られる。
【0114】
本実施例では、IPS方式の位相差内蔵の半透過型液晶表示装置についての液晶表示パネル構造や製造プロセスについて説明したが、VA方式やその他の液晶駆動方式の位相差内蔵の半透過型液晶表示装置に対しても本発明を用いることができる。その場合、液晶駆動方式によってTFT構造、カラーフィルターの画素構造、位相差層のリタデーション値やその他のパネル構成などが異なることが考えられるが、位相差材料に適切な熱重合開始剤を入れることで、本発明のプロセスが実施でき、効果が発揮される。
【実施例4】
【0115】
本発明の実施例4を図1の平面図と図6の断面図を用い、図7のプロセスの流れを参照して説明する。
【0116】
先ず、第1の基板31の主面にブラックマトリクス35とカラーフィルター45を形成する(P−1)。
【0117】
次に、位相差層用配向膜37を塗布する(P−2)。
【0118】
次に、位相差層用配向膜37をベーク後、ラビングして配向制御能を付与する(P−3)。ここでは、配向制御能を持たせるためにラビングを用いたが、ラビングではなくとも、光配向膜やイオンビーム配向膜、延伸膜など、次に塗布する液晶モノマーが配向すればよい。
【0119】
位相差層用配向膜37は水平配向性であり、位相差層38の遅相軸方向を定める機能を有する。位相差層用配向膜37の上に、紫外光照射と加熱のどちらでも重合開始種を発生する重合開始剤及び反応性の官能基を分子末端に有するネマチック液晶モノマーを有機溶媒に溶かしたものに重合度を制御する重合禁止剤と塗布性を向上させるレベリング剤を添加した位相差材料を塗布する(P−4)。
【0120】
反応性の官能基にアクリル基を分子末端に有するネマチック液晶モノマーの例を前記した「化1」「化2」に示す。
【0121】
また、この位相差材料の有機溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、酢酸メトキシブチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルなどを挙げることができる。
【0122】
また、紫外光照射と加熱のどちらでも重合開始種を発生する重合開始剤の種類として、スルホニウム塩の化合物がある。その例を「化5」に示す。R1〜R3は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などから選ばれる置換基を表す。
【0123】
位相差材料を塗布した後、これを70℃のホットプレートにより3分プリベークして溶剤を除去することで透明な液膜が形成する(P−5)。この液膜は、未硬化の状態でも位相差層用配向膜37の配向処理方向を向いて配向している。
【0124】
この液膜に対し開口部を有する露光マスクを用いて反射表示部に対応する部分に選択的に紫外光を照射し、液晶分子が前記配向膜により配向された透明膜(位相差層)38を形成する(P−6)。重合開始剤に紫外光が照射されることで、重合開始種が発生し、ネマチック液晶モノマーが配向を保持したまま重合して、硬化し、液晶分子が前記配向膜により配向された透明膜となる。露光されていない部分は、配向膜の配向制御能によって配向を保ち、未硬化の液膜状態である。
【0125】
重合開始剤の吸収波長についての概略を図5で説明する。液晶モノマーの吸収スペクトルを図9のaとしたとき、重合開始剤の吸収スペクトルがbであったとすると、液晶モノマーの吸収波長のほうが長いため、紫外光を照射しても、紫外光が液晶モノマーに吸収されて、重合開始剤は紫外光をほとんど吸収できず、重合開始種が発生しにくい。
【0126】
一方、液晶モノマーの吸収スペクトルをaとしたとき、重合開始剤の吸収スペクトルがcであったとすると、液晶モノマーより重合開始剤の吸収波長のほうが長いため、紫外光を吸収し、重合開始種を効率的に発生することができる。
【0127】
そのため、「化5」に示したスルホニウム塩のR1〜R3の部分に芳香族性の置換基や共役系を伸ばした置換基を導入したものなど、使用する液晶モノマーの吸収波長より長波長まで伸びたものを選んだ。さらに、この後の工程(P−30)において、熱エネルギーで重合開始種を発生する必要があるので、後述ような温度範囲で重合反応が起こるような重合開始剤を選んだ。
【0128】
一方で、重合開始剤の吸収波長が可視域まで伸びていると、位相差相が着色してしまうため、カラーフィルターとしての色性能が落ちてしまうので望ましくない。ただし、熱退色(ブリーチング)機能を持つ重合開始剤ならば、可視領域に吸収が加熱することで消えるため、問題なく使用できる。
【0129】
また、スルホニウム塩の化合物以外にも、パーオキサイド系やヨードニウム塩などのその他の化合物においても吸収波長を最適化することで、本発明に用いることができる。
【0130】
次に、140℃以上に加熱し、未露光であった液膜を硬化させ、液晶分子が配向していない透明膜を形成する(P−30)。このときの加熱温度は液晶モノマーの液晶相−等方相転移温度より高いため、液晶モノマーは配向せずにランダムな向きで存在する。また、このとき加熱温度は、熱重合開始剤の重合開始温度以上なため、液晶モノマーの重合反応が起こる。その結果、液晶モノマーの向きがランダムな状態で硬化するため、位相差を持たない透明膜が形成される。
【0131】
重合開始剤に求められる熱反応性の条件としては、液晶モノマーの液晶相−等方相転移温度以下では、重合反応が開始されず、液晶相−等方相転移温度以上の温度で、重合反応に必要な重合開始種を発生することが必要になる。また、あまり高い温度だと、液晶モノマーが分解してしまうので、液晶モノマーの分解温度より低い温度で硬化が始まらなければならない。そのため、本実施例においても、実施例1と同様、重合開始剤の半減期は70℃で10分以上であり、230℃で1時間以内であることが望ましい。
【0132】
このように、本実施例では、一種類の重合開始剤を液晶モノマーに添加するだけで、光照射と加熱のどちらでも重合開始種を発生するので、実施例1のように複数の重合開始剤を混ぜる必要が無いため、液晶モノマーに対する重合開始剤の濃度を低く抑えることができる。
【0133】
次に位相差層38の上に透明な有機層を塗布して第2の保護層40とする(P−9)。この保護層40は位相差層の重合反応時の分解物などを遮断するバリア層の役割も果たしている。
【0134】
位相差層38に△nが液晶層の2倍よりも大きいものを用いると、位相差層38のリタデーションを2分の1波長としたときに厚さが不十分になり、位相差層38だけでは、反射表示部と透過表示部との間のリタデーションの差は4分の1波長よりも小さくなる。そこで、反射表示部と透過表示部に4分の1波長のリタデーション差を確保するために、次に位相差層38上に膜厚調整層39を形成する。第2の保護層40に感光性透明レジストを塗布し、露光マスクを用いて選択的に紫外光を照射する。ここでは反射表示部と同様の分布になるような露光マスクを用いてパターンニングする。その後、アルカリ現像により、位相差層38の上層のみに膜厚調整層39を形成する(P−10)。さらにその上に、液晶層のギャップを保つための柱状スペーサを形成する(P−11)。
【0135】
第1の基板31の主面最上層に第1の液晶配向膜33を、第2の基板32の主面最上層に第2の液晶配向膜34を塗布し、所定の角度でラビング処理(P−12)した後に、第1の基板31と第2の基板32の表示領域に柱状スペーサを介在し、外周縁の内側にシール材を塗布して両基板を貼り合わせて組立て、内側に液晶層10を封入する(P−13)。
【0136】
最後に、第1の基板31と第2の基板32の外側に第1の偏光板41と第2の偏光板42をそれぞれ配置する。第1の偏光板41と第2の偏光板42の透過軸は液晶層配向方向に対してそれぞれ直交、平行になるように配置する(P−14)。
【0137】
本実施例では、第1の偏光板41の粘着層43には、その内部に屈折率が粘着材とは異なる透明な微小球を多数混入した光拡散性の粘着層43を用いた。この様な構成としたことで、粘着材と微小球の界面において両者の屈折率が異なることによって生じる屈折の効果を利用して、入射光の光路を拡大する作用を有する。これにより、画素電極28と共通電極29における反射光の干渉で生じる虹色の着色を低減できる。しかし、粘着層43の構成はこのようなものに限らず、微小球なしの粘着材を用いてもよいことは言うまでもない。
【0138】
以上のようにして作製した本実施例の半透過型液晶パネルの透過表示部は、第1の偏光板41の透過軸と第2の偏光板42の透過軸は直交し、かつ後者は液晶配向方向に平行である。これは透過型IPS方式と同様の構成であるので、透過表示については透過型IPS方式と同様にモニター用途にも耐える広視野角が得られる。
【0139】
本実施例では、IPS方式の位相差内蔵型半透過型液晶パネルについてのパネル構造や製造プロセスについて述べたが、VA方式やその他の液晶駆動方式の位相差内蔵型半透過型液晶表示装置の表示パネルにおいても本発明を用いることができる。その場合、液晶駆動方式によってTFT構造、カラーフィルターの画素構造、位相差層のリタデーション値やその他のパネル構成などが異なることが考えられるが、位相差材料に紫外光照射と加熱のどちらでも重合開始種を発生する適切な重合開始剤を入れることで、本発明のプロセスが実施でき、効果が発揮される。
【産業上の利用可能性】
【0140】
半透過型液晶パネルについて、内蔵位相差層の形成プロセスが簡略化されて製造コストが低減でき。また、その製造に伴う環境負荷が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明による液晶表示装置の構成する液晶パネルの1画素の概略構成例を説明する平面図である。
【図2】実施例1及び実施例2の位相差層を形成した液晶表示装置の1画素の概略構成例を説明する図1のA−A’線に沿った断面図である。
【図3】実施例1及び実施例2の液晶表示装置を構成する液晶パネルの製造プロセスの説明図である。
【図4】重合開始剤の半減期について説明する概略図である。
【図5】重合開始剤の吸収波長について説明する概略図である。
【図6】実施例3及び実施例4の位相差層を形成した液晶表示装置の1画素の概略構成例を説明する図1のA−A’線に沿った断面図である。
【図7】実施例3及び実施例4の液晶表示装置を構成する液晶パネルの製造プロセスの説明図である。
【図8】有機現像を用いて位相差層を形成した液晶表示装置の1画素の概略構成例を説明する断面図である。
【図9】有機現像を用いて位相差層を形成する工程を経た液晶パネルの製造プロセスの説明図である。
【図10】全面加熱露光を用いて位相差層を形成した液晶表示装置の1画素の概略構成例を説明する断面図である。
【図11】全面加熱露光を用いて位相差層を形成する工程を経た液晶パネルの製造プロセスの説明図である。
【符号の説明】
【0142】
10…液晶層、21…走査配線、22…信号配線、23…共通配線、25…アモルファスシリコン層、26…スルーホール、27…スルーホール、28…画素電極、29…共通電極、30…スリット、31…第1の基板、32…第2の基板、33…第1の液晶配向膜
34…第2の液晶配向膜、35…ブラックマトリックス、36…オーバーコート膜、37…位相差層用配向膜、38…位相差層、39…膜厚調整層、40…平坦化層、41…第1の偏光板、42…第2の偏光板、43…粘着層、45…カラーフィルター、51…第1の絶縁層、52…第2の絶縁層、53…第3の絶縁層、61…透過光、62…反射光、100…位相差機能を消失させた透明膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮光パターンと、前記遮光パターン上に形成された位相差用配向膜と、前記位相差用配向膜上に形成された透明有機膜と、前記透明有機膜上に形成された絶縁膜を主面上に形成された第1の基板と、
薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタで駆動される画素電極を主面上に形成した第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に液晶配向膜を介して挟持される液晶層を備えた半透過型液晶表示装置であって、
前記透明有機膜は液晶分子からなり、かつ該液晶分子が前記位相差用配向膜により配向された第一領域と、前記位相差用配向膜により配向されない第二領域とに分かれており、
前記透明有機膜には、ヨードニウム塩とスルホニウム塩とパーオキサイド系の少なくとも一つの化合物もしくは分解物を含むことを特徴とする半透過型液晶表示装置。
【請求項2】
遮光パターンと、前記遮光パターン上に形成された位相差用配向膜と、前記位相差用配向膜上に形成された透明有機膜と、前記透明有機膜上に形成された絶縁膜を主面上に形成された第1の基板と、
薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタで駆動される画素電極を主面上に形成した第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に液晶配向膜を介して挟持される液晶層を備えた半透過型液晶表示装置であって、
前記透明有機膜は液晶分子からなり、かつ該液晶分子が前記位相差用配向膜により配向された第一領域と、前記位相差用配向膜により配向されない第二領域とに分かれており、
前記透明有機膜には、ヨウ素とフッ素、または硫黄とフッ素の元素を含むことを特徴とする半透過型液晶表示装置。
【請求項3】
第1の基板と、第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に液晶配向膜を介して挟持させた液晶層を備えた半透過型液晶表示装置の製造方法であって、
前記第1の基板に遮光パターンを形成する第一ステップと、
前記遮光パターン上に位相差用配向膜を形成する第二ステップと、
前記位相差用配向膜上に、紫外光照射によって重合開始種を発生する光重合開始剤と加熱によって重合開始種を発生する熱重合開始剤と反応性部位を持つ液晶分子とを含む液膜、もしくは紫外光照射と加熱のどちらでも重合開始種を発生する熱重合開始剤と反応性部位を持つ液晶分子とを含む液膜を形成する第三ステップと、
前記前記液膜に選択的に紫外光照射し、前記液晶分子が前記位相差用配向膜により配向された透明有機膜を形成する第四ステップと、
前記液晶分子の液晶相‐等方相転移温度よりも高く、かつ熱重合開始剤が熱によって重合開始濃度の重合開始種を発生する温度に基板を加熱し、前記液晶分子が前記位相差用配向膜により配向されない透明有機膜を形成する第五ステップと、
前記透明有機膜上に絶縁膜を形成する第六ステップと、
を含むことを特徴とする半透過型液晶表示装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記熱重合開始剤は、加熱することで重合開始種であるラジカルを発生することを特徴とする半透過型液晶表示装置の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4において、
前記熱重合開始剤は、パーオキサイド系の化合物であることを特徴とする半透過型液晶表示装置の製造方法。
【請求項6】
請求項3において、
前記熱重合開始剤は、加熱することで重合開始種であるカチオンを発生することを特徴とする半透過型液晶表示装置の製造方法。
【請求項7】
請求項3又は6において、
前記熱重合開始剤は、スルホニウム塩、またはヨードニウム塩のいずれかの化合物であることを特徴とする半透過型液晶表示装置の製造方法。
【請求項8】
請求項3乃至7の何れかにおいて、
前記熱重合開始剤の半減期が、70℃で10分以上であり、かつ230℃で1時間以内であることを特徴とする半透過型液晶表示装置の製造方法。
【請求項9】
請求項3乃至8の何れかにおいて、
前記熱重合開始剤の濃度が、前記液晶性モノマーに対して0.05重量%以上15重量%以下であることを特徴とする半透過型液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−109689(P2009−109689A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281162(P2007−281162)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】