説明

印刷機またはコーティング機

【課題】 洗浄液が揮発することによって発生するガスの乾燥装置の発熱による発火を規制する。
【解決手段】 各印刷ユニット3Aないし3Dの圧胴9の近傍にUVランプを備えた乾燥装置30が設けられ、ゴム胴8と圧胴9には洗浄装置18が備えられている。各乾燥装置30の近傍には、洗浄装置18から供給された洗浄液の溶剤が揮発することにより発生するガスの濃度を検出するガス濃度検知センサ35が設けられている。各ガス濃度検知センサ35からの出力値と、予め設定された設定値とを比較して設定値よりも高いとき、乾燥装置30のUVランプ31の点灯を停止させる制御装置36が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷面または印刷面に塗布されるインキ、あるいはコーティング面またはコーティング面に塗布されるニスを乾燥する乾燥装置を備えた印刷機またはコーティング機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の印刷機またはコーティング機においては、印刷面または印刷面に塗布されるインキ、あるいはコーティング面またはコーティング面に塗布されるニスが乾燥する以前に排紙装置において積載されると、紙の裏面にインキやニスが転写される、いわゆる裏刷りが発生するため、インキやニスを乾燥するための乾燥装置が備えられている。この乾燥装置としては、印刷胴(圧胴、ゴム胴)やコーティング胴(コーター胴)に近接してUVランプが設けられ、印刷胴やコーティング胴のくわえ爪にくわえられて搬送する紙の印刷面に塗布されたインキやニスをUVランプの発熱によって硬化させて乾燥させるものがある(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。なお、本出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に密接に関連する先行技術文献を出願時までに見付け出すことはできなかった。
【特許文献1】特開2002−316402号公報(段落「0022」〜「0025」、図3)
【特許文献2】特公平2−28469号公報(公報の2頁右欄16〜33行、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の印刷機またはコーティング機においては、印刷胴の周面に付着したインキやニスを洗浄するための洗浄装置が付設されている。この洗浄装置から供給される洗浄液の溶剤は揮発性を有する成分を含んでおり、洗浄される印刷胴の周囲またはコーティング胴の周囲には溶剤の揮発によってガスが発生する。上述したようにUVランプが印刷胴またはコーティング胴に近接して設けられているため、溶剤の揮発によって発生するガスが、UVランプの発熱によって現実的ではないが発火のおそれがある。
【0004】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、洗浄液が揮発することによって発生するガスの乾燥装置の発熱による発火を阻止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、印刷ユニットまたはコーティングユニットによって印刷またはコーティングされたシート状物を搬送する搬送手段と、この搬送手段によって搬送される前記シート状物の印刷面またはコーティング面を乾燥させる乾燥装置と、この乾燥装置の近傍に設けられ洗浄液が揮発して発生するガスを検出するガス検出手段と、このガス検出手段からの出力と、設定された設定値とを比較し、比較の結果によって前記乾燥装置を停止させる制御装置とを備えたものである。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記洗浄液は、前記印刷ユニットまたはコーティングユニットに回転自在に支持された回転体を洗浄する洗浄装置の溶剤である。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記回転体の前記洗浄装置よりも回転方向下流側に、前記回転体の周面に付着する前記洗浄液を除去するエア吸引装置を備えたものである。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記搬送手段は、前記印刷ユニットまたは前記コーティングユニットに回転自在に支持された回転体に設けられ、前記乾燥装置は、前記回転体と対向する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗浄液の揮発によって発生するガスの濃度が一定以上になると乾燥装置が停止するから、乾燥装置の発熱によるガスの発火を防止することができる。
【0010】
請求項3に係る発明によれば、早期にガスを除去することができるため、次の印刷までにかかる時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明に係る枚葉輪転印刷機の概略構成を示す側面図、図2は同じく主要部の構成を示す側面図、図3は同じく要部を拡大して示す側面図である。図1に全体を符号1で示す枚葉輪転印刷機は、積載されたシート状物としての紙を1枚ずつ給紙する給紙装置2と、4組の印刷ユニット3Aないし3Dと、これら印刷ユニット3Aないし3Dによって印刷された紙を排紙し紙積台4aに積載する排紙装置4とによって概ね構成されている。各印刷ユニット3Aないし3Dには、周面に版が装着された版胴7と、版の表面にインキを供給する回転体としてのインキローラ群からなるインキ装置5と、版の表面に湿し水を供給する給水装置6と、版胴7に対接する回転体としてのゴム胴8と、このゴム胴8に対接する回転体としての圧胴9とが備えられている。
【0012】
互いに隣接する印刷ユニット3Aないし3Dの圧胴9,9との間には、渡し胴10が対接するように設けられている。給紙装置2と1色目の印刷ユニット3Aの圧胴9との間には、フィーダボード11および差板12ならびにスイング装置13が設けられている。排紙装置4には、排紙胴(図示せず)と同軸上に軸着された左右一対のスプロケット14が備えられ、このスプロケット14と、排紙フレーム15の前端部に設けられた左右一対のスプロケット16との間には左右一対の排紙チェーン17が張架されている。
【0013】
各印刷ユニット3Aないし3Dのゴム胴8および圧胴9には、図2に示すように従来から広く知られている8個の洗浄装置18が備えられている。これら洗浄装置18は、図3に示すように、金属パッド21によってゴム胴8または圧胴9の周面に押し付けられる洗浄布22と、この洗浄布22が巻回された供給ロール23と、この供給ロール23から洗浄布22を引き出す巻取りロール24と、洗浄布22に洗浄液を吹き付けるノズル25とによって概略構成されている。
【0014】
これら洗浄装置18の各ノズル25には、図2に示すように洗浄液が貯留された洗浄タンク26から配管27を介して洗浄液が供給される。また、洗浄タンク26から配管を介してインキ用の洗浄装置(共に図示せず)に洗浄液が供給され、インキ用の洗浄装置によってインキ装置5を構成するインキローラ群が洗浄される。
【0015】
各印刷ユニット3Aないし3D間および4色目の印刷ユニット3Dと排紙フレーム15との間のステップ33には、4個の乾燥装置30が各圧胴9に近接して設けられている。この乾燥装置30は、図3に示すようにUVランプ31と、このUVランプ31から発生する熱を圧胴9の周面に反射させる反射板32とによって概ね構成されている。35は各乾燥装置30の近傍に設けられた4個のガス濃度検知センサであって、ブラケットを介してフレーム(いずれも図示せず)に取り付けられており、洗浄装置18から洗浄液が供給され、その洗浄液の溶剤が揮発することにより発生するガスに含まれる特有の成分の量を検出する。
【0016】
36は各ガス濃度検知センサ35からの出力値と、予め設定された設定値とを比較する制御装置であって、比較した結果、各ガス濃度検知センサ35のうちのいずれか一つからの出力値が設定値よりも高いとき、乾燥装置30のUVランプ31の点灯を停止させる。40は各印刷ユニット3Aないし3Dの圧胴9の周面に付着する洗浄液を除去するエア供給装置としての4個のエア吹きノズルであって、洗浄装置18よりも圧胴9の回転方向下流側に設けられている。41は洗浄装置18から供給された洗浄液の溶剤が揮発することにより発生するガスを吸引する4個の吸引装置としてのエアダクトであって、エア吹きノズル40よりも圧胴9の回転方向下流側に設けられている。
【0017】
このように構成されていることにより、給紙装置2から1枚ずつ給紙される紙は、フィーダボード11上に送り込まれ差板12上へ搬送され、スイング装置13から渡し胴45に供給される。渡し胴45に供給された紙は、互いの爪のくわえ替えによって、1色目の印刷ユニット3Aの圧胴9に供給される。このとき、インキ装置6から供給されたインキと給水装置7から給水された湿し水とで版面に形成された画像がゴム胴8のブランケット面に転写されているので、ゴム胴8と圧胴9との間を通過する紙には、ゴム胴8上の画像が転写されて印刷が施される。
【0018】
このようにして各印刷ユニット3Aないし3Dによって4色の印刷が施される紙は、各印刷ユニット3Aないし3Dの圧胴9によって搬送されるときに、乾燥装置30のUVランプ31から発生する熱によって印刷面が乾燥された後、排紙チェーン17で搬送され排紙装置4の紙積台4a上に落下して積載される。
【0019】
ここで、ゴム胴8および圧胴9等を洗浄する必要が生じた場合は、給紙装置2から印刷ユニット3Aないし3Dに給紙されている紙を排紙装置4に排紙した後、印刷機を停止させて洗浄装置18によって洗浄を行う。すなわち、洗浄タンク26から洗浄装置18の各ノズル25に供給された洗浄液は、供給ロール23から引き出された洗浄布22に吹き付けられ、この洗浄布22が金属パッド21によってゴム胴8または圧胴9の周面に押し付けられる。したがって、印刷時よりも遅い回転速度で回転するゴム胴8または圧胴9の周面に付着したインキが、洗浄液によって洗浄されるとともに洗浄布22によって拭き取られる。洗浄布22は巻取りロール24によって間欠的に巻き取られることにより、順次新しい洗浄布22がゴム胴8または圧胴9の周面に供給される。最後に、ノズル25からの洗浄液の吹き付けが停止され、乾いた洗浄布22によってゴム胴8または圧胴9の周面に付着した洗浄液が拭き取られる。また、ゴム胴8または圧胴9の周面に付着した洗浄液は、洗浄装置18よりも紙搬送方向下流側に設けられたエア吹き付けノズル40から吹き付けられるエアによって除去される。さらに、洗浄液の溶剤が揮発することにより発生するガスがエアダクト41によって吸引される。このようにエアダクト41によって早期にガスを除去することができるため、次の印刷までにかかる時間を短縮することができる。
【0020】
洗浄が終了した後再び印刷を開始するとき、ガス濃度検知センサ35によって洗浄液の揮発によって乾燥装置30の周囲に発生しているガスの濃度が検知され、このガス濃度検知センサ35からの出力値が、制御装置36によって予め設定された設定値よりも高い場合は、制御装置36においては乾燥装置30のUVランプ31の点灯を停止させる。このため、洗浄液の揮発によって乾燥装置30の周囲に発生するガスの濃度が一定以上になると乾燥装置30のUVランプ31が消灯するから、乾燥装置30のUVランプ31から発生した熱によるガスの発火を規制することができる。このUVランプ31の消灯状態は、ガス濃度検知センサ35からの出力値が、制御装置36によって予め設定された設定値より低くなるまで保持され低くなった場合、制御装置36ではUVランプ31の消灯を解除し点灯させる。
【0021】
図4は本発明の第2の実施の形態を示す枚葉輪転印刷機の概略構成を示す側面図である。この第2の実施の形態においては、最終の印刷ユニット3Dと排紙装置4との間にコーティングユニット50を備え、このコーティングユニット50に、印刷面に塗布されたニスを乾燥する乾燥装置30とガス濃度検知センサ35とが設けられている。同図において、51はニス舟52に一部が浸漬したニス元ローラ、53は調量ローラ、54はコータ胴55にニスを供給するニス着ローラである。この第2の実施の形態においても、コーティングユニット50および各印刷ユニット3Aないし3Dの各ガス濃度検知センサ35によって洗浄液の揮発によって乾燥装置30の周囲に発生しているガスの濃度が検知される。そして、このガス濃度検知センサ35からの出力値が、制御装置36によって予め設定された設定値よりも高い場合は、制御装置36においては乾燥装置30のUVランプ31の点灯を停止させる。
【0022】
なお、本実施の形態においては、枚葉輪転印刷機1によって印刷された印刷面を乾燥装置30によって乾燥する例を説明したが、紙に塗布されたニスを乾燥装置30によって乾燥するコーティング機に適用してもよい。また、乾燥装置30を圧胴9の近傍に設けたが、ゴム胴8の近傍や排紙チェーン17の近傍やインキローラ群の近傍に設けてもよい。また、ゴム胴8や圧胴9等の洗浄を洗浄装置18によって行うようにしたものに適用した例を説明したが、洗浄装置を用いることなく人手によって行うようにしたものに適用してもよい。また、エアダクト41をエア吹きノズル40よりも圧胴9の回転方向下流側に設けたが、乾燥装置30の近傍に設けてもよく、また、エア吹きノズル40による洗浄液の乾燥が充分に行われるのであれば、エアダクト41を設けなくてもよい。また、本実施の形態においては、ガスの濃度が一定以上になったときに乾燥装置30が動作しないように制御したが、印刷機全体またはコーティング機全体が動作しないように制御してもよい。その場合、ガスの濃度が一定以上になっていることを報知する警報を発するようにしたり、ランプを点灯させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る枚葉輪転印刷機の概略構成を示す側面図である。
【図2】本発明に係る枚葉輪転印刷機の主要部の構成を示す側面図である。
【図3】本発明に係る枚葉輪転印刷機の要部を拡大して示す側面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る枚葉輪転印刷機の概略構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0024】
1…枚葉輪転印刷機、2…給紙装置、3Aないし3D…印刷ユニット、4…排紙装置、5…インキ装置、6…給水装置、7…版胴、8…ゴム胴、9…圧胴、18…洗浄装置、25…ノズル、26…洗浄タンク、30…乾燥装置、31…UVランプ、35…ガス濃度検知センサ(ガス検出手段)、36…制御装置、40…エア吹き付けノズル、41…エアダクト(エア吸引装置)、50…コーティングユニット。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ユニットまたはコーティングユニットによって印刷またはコーティングされたシート状物を搬送する搬送手段と、
この搬送手段によって搬送される前記シート状物の印刷面またはコーティング面を乾燥させる乾燥装置と、
この乾燥装置の近傍に設けられ洗浄液が揮発して発生するガスを検出するガス検出手段と、
このガス検出手段からの出力と、設定された設定値とを比較し、比較の結果によって前記乾燥装置を停止させる制御装置とを備えたことを特徴とする印刷機またはコーティング機。
【請求項2】
請求項1記載の印刷機またはコーティング機において、
前記洗浄液は、前記印刷ユニットまたはコーティングユニットに回転自在に支持された回転体を洗浄する洗浄装置の溶剤であることを特徴とする印刷機またはコーティング機。
【請求項3】
請求項2記載の印刷機またはコーティング機において、
前記回転体の前記洗浄装置よりも回転方向下流側に、前記回転体の周面に付着する前記洗浄液を除去するエア吸引装置を備えたことを特徴とする印刷機またはコーティング機。
【請求項4】
請求項1記載の印刷機またはコーティング機において、
前記搬送手段は、前記印刷ユニットまたは前記コーティングユニットに回転自在に支持された回転体に設けられ、
前記乾燥装置は、前記回転体と対向することを特徴とする印刷機またはコーティング機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−231593(P2006−231593A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−46709(P2005−46709)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000184735)株式会社小森コーポレーション (403)
【Fターム(参考)】