説明

印刷版製造用感光性組成物、並びに、これを用いた感光性印刷原版積層体および印刷版

【課題】各種印刷液に対する耐性を持ち、優れた印刷適性を有する印刷版製造用感光性組成物、並びに、これを用いた感光性印刷原版積層体および印刷版を提供する。
【解決手段】少なくとも、バインダー樹脂、光重合性モノマー、および、光重合開始剤を含有する印刷版製造用感光性組成物において、バインダー樹脂として、エラストマー樹脂とテルペン樹脂とを併用することによって、各種印刷液、特に、UV硬化性インキ、油性インキ等のインキ成分や、配向膜液等の印刷液に対して、優れた耐性を有する感光性組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷版製造用感光性組成物、並びに、これを用いた感光性印刷原版積層体および印刷版に関し、詳しくは、UV硬化性インキ、油性インキ等の各種印刷液に対する耐性を持ち、優れた印刷適性を有する印刷版製造用感光性組成物、並びに、これを用いた感光性印刷原版積層体および印刷版に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、フレキソ印刷とは、柔軟性のある凸版印刷であるが、そのフレキソ印刷は、経済性、汎用性、環境非汚染性などに優れていることから、再評価されるとともに、その印刷精度の向上と相俟って、最近、注目を集めている。
【0003】
日本では、印刷方式は、オフセット印刷、グラビア印刷が比較的多数を占め、少量ながらシルクスクリーン印刷などがあり、フレキソ印刷を代表とする凸版印刷の利用は比較的少ない。しかしながら、フレキソ印刷には、他の印刷方法に比べて、下記のような利点がある。
【0004】
(1) 版が凸形状でかつ柔軟であるので、段ボールのような平坦、平滑でない印刷対象物にも印刷可能であり、しかも比較的高速かつ安価に印刷することができる。
(2) ラベルなどの小面積への印刷も、鮮明かつ安価に行うことができる。
(3) オフセット印刷に比べると、高いインキ濃度で印刷できるので、より鮮明な印刷が可能になる。
(4) グラビア印刷に比べると、文字やイメージのプロフィールがシャープになる。
(5) 水性インキの使用が可能であり、UV硬化性インキを始めとした完全脱溶剤型のインキが使えるために、環境汚染性が大変低い。
(6) 刷り始めから色の安定までに要する時間が短いため、紙などの印刷媒体の無駄を削減することができ、経済的である。
(7) 版の一部に変更、修正を加えたい場合でも、版全体を作り直すことなく、その一部のみの差し替えが可能であり、保守、改変に要するコストを低く抑えることができる。
(8) 小ロット多品種印刷が可能である。
【0005】
このように、凸版印刷は、古くからある印刷技術であり、その内のフレキソ印刷も従来から慣用の印刷技術であり、上述のような多様な利点を持っていることは、周知であったが、印刷物全体に対する使用比率は、高くはなかった。
【0006】
しかし、近年における印刷用インキや印刷原版用材料などの使用材料の品質向上と、環境問題への関心の高まりから、フレキソ印刷を始めとする凸版印刷の再評価が行われ、積極使用に向けての研究、開発が活発化し始めているのが、現状である。
【0007】
ここで、印刷原版自体における開発状況を見てみると、以下のようである。
フレキソ印刷版は、長い間、ゴムを構成材とし、このゴム層に彫刻を施して印刷しようとする文字や絵柄のネガ像を形成することにより製造されていたが、近年になって、感光性樹脂が用いられるようになった。この感光性樹脂は、一般にエラストマー性のバインダーと、少なくとも一つの光重合性モノマーおよび光開始剤とから構成されていた。この感光性樹脂を用いた印刷原版積層体は、支持体の上に少なくとも前記感光性樹脂層が設けられた板状部材である。
【0008】
この印刷原版積層体を用いたフレキソ印刷版の製造では、まず、この印刷原版積層体の感光性樹脂層の上に、印刷しようとする文字や画像などのイメージのネガパターンを有するフィルム(マスク)を置き、このマスクを介して、化学線を前記感光性樹脂層に照射する。化学線の照射を受けた部分は、光重合反応が生じて硬化する。その後、未硬化部分を現像液にて洗い流すと、前記イメージに対応した凸状パターンが残留する。その結果、フレキソ印刷版が出来上がる。フレキソ印刷では、前記凸状パターンの先端部分にインキを付着させて、紙などの印刷媒体に押しつけ、印刷媒体上にインキを所定のパターンに塗布することで、印刷物を得る。
【0009】
このような凸版印刷技術を作るために用いる感光性組成物は、バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、および付加的助剤、例えば可塑剤、充填剤、安定剤などを含む。バインダー樹脂としては、例えば、特許文献1が挙げられる。また付加的助剤としてテルペン樹脂が様々なタイプの材料の可塑剤や粘着付与剤として用いられている。例えば、特許文献2、特許文献3が挙げられる。
【0010】
特許文献2においてテルペン樹脂は、印刷原版の未露光部分の現像性を容易にするため、また硬化部分の物性を改良するために可塑剤として用いられている。
【0011】
特許文献3においてテルペン樹脂は、感光性組成物の粘着性を付与するために用いられている。
【0012】
【特許文献1】特開平10−104833号公報
【特許文献2】特開平5−134410号公報
【特許文献3】特開2001−281848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の印刷版では、使用するインキの種類によっては十分な耐性を持たず、印刷を続けるうち、印刷版のパターン化硬化樹脂層が印刷液に含まれる成分を吸収して膨潤するという問題が指摘されている。インキについては、従来の印刷版は、UV硬化性インキ中に含まれるモノマー成分や油性インキの溶剤成分に対する耐性が不十分であり、連続して印刷するうちに、印刷版がインキに含まれる成分を除々に吸収して、印刷版の面硬度を低下させ、また印刷版の厚みを増加させる。この現象によって、印刷されたデザインの線およびドットの太りや、マージナルゾーン等が発生し、高品質な印刷物が得られないといった問題があった。
【0014】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、各種印刷液、特に、UV硬化性インキ、油性インキ中に含まれるイソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸プロピル、1−プロパノール、1−(1−メチルエトキシ)2プロパノール、セカンダリーブチルイソプロピル等の有機溶剤成分に対して、優れた耐性を有する感光性組成物、並びに、これを用いた感光性印刷原版積層体および印刷版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究の結果、エラストマー樹脂、光重合性モノマーおよび光重合開始剤を含有する従来の印刷版製造用感光性組成物に、テルペン樹脂を添加することによって、優れたインキ耐性を有する印刷版を得ることができることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0016】
すなわち、本発明の印刷版製造用感光性組成物は、エラストマー樹脂と、テルペン樹脂と、光重合性モノマーと、光重合開始剤とを含有することを特徴とする。
【0017】
本発明の印刷版製造用感光性組成物の好ましい実施態様によれば、テルペン樹脂として、水素化テルペン樹脂を用いることが好ましい。また、エラストマー樹脂として、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーを用いることが好ましい。さらに、エラストマー樹脂と前記テルペン樹脂との総和100重量部に対し、前記エラストマー樹脂を30〜90重量部、前記テルペン樹脂を70〜10重量部の比率で含有せしめることが好ましい。
【0018】
また、本発明に係る感光性印刷原版積層体は、支持体上に、少なくともエラストマー樹脂と、テルペン樹脂と、光重合性モノマーと、光重合開始剤とから形成された感光性樹脂層を有することを特徴とする。本発明の感光性印刷原版積層体の好ましい実施態様によれば、支持体と反対側の面を被覆する保護層を形成することが好ましい。
【0019】
また、本発明に係る印刷版は、支持体上に、印刷用の凸状パターンを有する硬化樹脂層を形成してなる印刷版であり、パターン化硬化樹脂層が、構成成分として少なくともエラストマー樹脂と、テルペン樹脂とを同時に含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の印刷版製造用感光性組成物を用いて形成した感光性樹脂層は、露光、現像処理することにより印刷用の凸状パターンを有する硬化樹脂層となるが、このパターン化硬化樹脂層は、各種インキ、特に、UV硬化性インキ、油性インキのイソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸プロピル、1−プロパノール、1−(1−メチルエトキシ)2プロパノール、セカンダリーブチルイソプロピル等のインキ成分に対して、優れた耐性を有する。このため、長時間印刷を継続しても、パターン化硬化樹脂層が印刷液によって膨潤することなく、高品質な印刷物を得ることができる。このようなUV硬化性インキとしては例えば(クボイインキ製、UVエースFX パントンクールグレー)、(東洋インキ製、FDカルトン ACE墨口)、((株) T&K TOKA製 UV161)、((株) T&K TOKA製 VECTA フレキソ)、((株) T&K TOKA製 UV グロス OPニス)などが挙げられ、油性インキとしては(大日本インキ製、flexomax blue)などが挙げられる。
【0021】
従来、印刷液に対する耐性を付与するために印刷版製造用感光性組成物にテルペン樹脂を用いたとの報告はなく、本発明は、テルペン樹脂を添加することにより耐印刷液性を改善するという新規の発見に基づくものである。
【0022】
また、本発明の印刷版製造用感光性組成物において、テルペン樹脂として、水素化テルペン樹脂を用いることにより、耐印刷液性を向上させることができる。また、エラストマー樹脂として、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーを用いることにより、露光パターンを形成するために必要とされる透明性を確保できるとともに、さらに優れた耐印刷液性を付与することができる。また、エラストマー樹脂と前記テルペン樹脂との総和100重量部に対し、前記エラストマー樹脂を30〜90重量部、前記テルペン樹脂を70〜10重量部の比率で含有せしめることにより、印刷液に対する十分な耐性を付与できるとともに、印刷版として必要とされる十分なフレキシビリティーを確保できる。
【0023】
また、本発明の感光性印刷原版積層体は、支持体上に、本発明の感光性組成物からなる感光性樹脂層を形成された構成からなるが、かかる構成をとることにより、予め製造しておき、使用期限はあるものの所定期間を貯蔵しておくことが可能となる。したがって、印刷版を製造する場合に、即座に使用することができ、印刷版の製造の効率化を高めることができる。また、本発明の感光性印刷原版積層体において、支持体と反対側の面を被覆する保護層を形成することにより、貯蔵、搬送、および取り扱いを容易とすることができる。
【0024】
また、本発明の印刷版は、支持体上に、印刷用の凸状パターンを有する硬化樹脂層を形成してなる印刷版であり、前記パターン化樹脂層にエラストマー樹脂とテルペン樹脂を同時に含有するため、各種印刷液に対して優れた耐性を有する。このため、長時間印刷を継続しても、パターン化硬化樹脂層がインキ成分によって膨潤することなく、高品質な印刷物を得ることができる。本発明の印刷版は、印刷版として、特に、UV硬化インキ用フレキソ印刷版、油性インキ用フレキソ印刷版として好適に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に係る印刷版製造用感光性組成物は、少なくとも、バインダー樹脂、光重合性モノマー、および、光重合開始剤を含有する印刷版製造用感光性組成物であって、バインダー樹脂として、エラストマー樹脂と、テルペン樹脂とを同時に含有することを特徴とする。
【0026】
バインダー樹脂として、エラストマー樹脂とテルペン樹脂とを組み合せて用いることにより、得られる印刷版の印刷液に対する耐性を著しく向上させ、優れた印刷適性を付与することができる。
【0027】
以下、本発明の印刷版製造用感光性組成物、並びに、これを用いた感光性印刷原版積層体および印刷版について、下記の順に詳細に説明する。
【0028】
〔A〕印刷版製造用感光性組成物
(a)テルペン樹脂
(b)エラストマー樹脂
(c)光重合性モノマー
(d)光重合開始剤
〔B〕感光性印刷原版積層体
〔C〕印刷版
【0029】
〔A〕印刷版製造用感光性組成物
(a)テルペン樹脂
本発明において、「テルペン樹脂」とは、テルペン類を単独重合、または、テルペン類と共重合可能なモノマーとを共重合して得られるポリマーである。
【0030】
テルペン樹脂の原料となるテルペン類としては、C1016の分子式を持つ炭化水素、および、これから導かれる含酸素化合物(アルコール、アルデヒド、ケトン等)を挙げることができる。
【0031】
このようなテルペン類の具体例を挙げると、α−ピネン、β−ピネン、ミルセン、オシメン、リモネン、テルピノレン、テルピネン、フェランドレン、シルベストレン、サビネン、カレン、カンフェン、トリシクレン、フェンチェン等の炭化水素類、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、メントール、テルピネオール、カルペオール、ツイルアルコール、ピノカンフェオール、フェナンチルアルコール、ボルネオール等のアルコール類、シトネラール、シトラール、シクロシトラール、サフラナール、フェランドラール、ペリルアルデヒド等のアルデヒド類、ダケトン、ヨノン、メントン、カルボメントン、カルボタナセトン、ピペリテノン、ツヨン、カロン、ショウノウ等のケトン類、シネオール、ピノール、アスカリトール等のオキシド類、シトロネル酸等の酸類を例示することができる。このうち、α−ピネン、β−ピネン、リモネンが特に好ましく用いられる。これらのテルペン類は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
また、テルペン類と共重合可能なモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、α−エチルスチレン、メチル−α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、tert−ブトキシスチレン、ビニルトルエンなどを例示することができる。
【0033】
テルペン類と、テルペン類と共重合可能なモノマーとの重合比は、モノマー比においてテルペン類1〜10に対してテルペン類と共重合可能なモノマー0〜5の範囲であり、好ましくは、テルペン類1〜7、テルペン類と共重合可能なモノマー0〜4、より好ましくは、テルペン類2〜5、テルペン類と共重合可能なモノマー0〜3である。
【0034】
テルペン類を単独重合、または、テルペン類と共重合可能なモノマーとを共重合して得られるテルペン樹脂は、その分子構造内に炭素−炭素間の不飽和結合、または、酸素−炭素間の不飽和結合を有することがある。本発明においては、これらの不飽和結合を部分的あるいは完全に水素化した水素化テルペン樹脂を用いることが好ましく、特に完全水素化テルペン樹脂を用いることが好ましい。水素化テルペン樹脂を用いることにより、さらに耐印刷液性を向上させることができる。
【0035】
このような水素化テルペン樹脂の市販品としては、クリアクロンPシリーズ、クリアクロンMシリーズ、クリアクロンKシリーズ(いずれもヤスハラケミカル社製)を例示できる。
【0036】
テルペン樹脂の平均分子量は、300〜1500、好ましくは400〜1000、より好ましくは500〜800である。テルペン樹脂の平均分子量が300未満の場合、樹脂の合成が困難であり、また1500より大きい場合、フレキシビリティーが不十分となり、印刷原版積層体を破損することがあるので好ましくない。
【0037】
テルペン樹脂の配合量は、後述のエラストマー樹脂とテルペン樹脂との総和100重量部に対し、テルペン樹脂を1〜90重量部とすることが好ましい。テルペン樹脂が1重量部未満では、印刷液に対する耐性が十分でなく、また、テルペン樹脂が90重量部以上だとフレキシビリティーが不十分となり、印刷原版積層体を破損することがあるので好ましくない。印刷液に対する十分な耐性を付与するとともに、印刷版として必要とされる十分なフレキシビリティーを確保するためには、エラストマー樹脂とテルペン樹脂との総和100重量部に対し、テルペン樹脂が10〜70重量部であることが好ましい。
【0038】
(b)エラストマー樹脂
本発明においてエラストマー樹脂は、テルペン樹脂以外の樹脂であり、単一の重合体、共重合体またはそれらの混合物であって、エラストマー性を有し、かつ水性または有機溶剤の現像液に可溶、膨潤または分散し、洗浄除去可能な重合体が挙げられる。これらのバインダーとしては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリジオレフィン、ビニル芳香族化合物/ジオレフィンの共重合体およびブロック共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、ジオレフィン/アクリロニトリル共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/プロピレン/ジオレフィン共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、ジオレフィン/アクリル酸共重合体、ジオレフィン/アクリレート/アクリル酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリレート共重合体、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコールのグラフト共重合体、両性インターポリマー、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース類、エチレン/ビニルアセテート共重合体、セルロースアセテートブチレート、ポリブチラール、環状ゴム、スチレン/アクリル酸共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンとビニルアセテートとの共重合体、クロロプレン重合体、スチレン−クロロプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−クロロプレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル−イソプレン共重合体、メタクリル酸メチル−クロロプレン共重合体、アクリル酸メチル−ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル−イソプレン共重合体、アクリル酸メチル−クロロプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−イソプレン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−クロロプレン−スチレン共重合体、エピクロルヒドリン重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキシド共重合体、エピクロルヒドリンゴム、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン共重合体、塩素化ポリプロピレン、塩素化エチレン−プロピレンゴム、アクリル酸エチル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸ブチル−アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸ブチル−スチレン−アクリロニトリル共重合体が挙げられる。前記重合体は単独でもまた組み合せて用いてもよい。その他、水性現像液に可溶または分散可能なバインダーである、米国特許第3,458,311号、同第4,442,302号、同第4,361,640号、同第3,794,494号、同第4,177,074号、同第4,431,723号、同第4,517,279号等の明細書に開示されている樹脂や、有機溶剤現像液に可溶、膨潤または分散可能である米国特許第4,323,636号、同第4,430,417号、同第4,045,231号等の明細書に開示されている樹脂も挙げることができる。
【0039】
本発明においては、スチレン/イソプレン共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体を用いることが好ましく、特に、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーを用いることが好ましい。スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーを用いることで、露光パターンを形成するために必要とされる透明性を確保できるとともに、印刷液に対する耐性を一層向上させることができる。
【0040】
エラストマー樹脂の配合量は、エラストマー樹脂と前記テルペン樹脂との総和100重量部に対し、エラストマー樹脂が10〜99重量部、好ましくは30〜90重量部である。
【0041】
(c)光重合性モノマー
本発明に用いる感光性樹脂層に含まれる1種類以上のモノマーとしては、透明なくもりのない感光性樹脂層が形成できるよう、上記バインダーと相溶性を有するモノマーを用いる必要がある。前記モノマーとしては、上記バインダーを構成するモノマーの他、例えば、ポリブタジエンジアクリレート、ポリブタジエンジメタクリレート、ポリイソプレンジアクリレート、ポリイソプレンジメタクリレートやα−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどの芳香族ビニル単量体;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのα,β−エチレン性不飽和ニトリル化合物;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレートなどの炭素数1〜23のアルキルアルコールのアクリレート類および対応するメタクリレート類;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアルコールのアクリレート類および対応するメタクリレート類;メトキシエチレングリコール、メトキシプロピレングリコールなどのアルコキシアルキレングリコールのアクリレート類およびメタクリレート類;マレイン酸モノエチル、フマル酸モノメチル、イタコン酸モノエチルなどの不飽和多価カルボン酸のモノエステル類;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸ジオクチルなどのジエステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N′−メチレンビスアクリルアミド、N,N′−ヘキサメチレンビスアクリルアミドなどのアクリルアミド類および対応するメタクリルアミド類;エチレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコール(アルキレングリコール単位2〜23個)のグリコールのジアクリレート類および対応するメタクリレート類;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールアルカン、テトラメチロールアルカン(アルカンとしてはメタン、エタン、プロパン)などの三価以上の多価アルコール類のジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート、オリゴアクリレート類および対応するメタクリレート類;2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどの酸性官能基をもつアクリレート類および対応するメタクリレート類;等が挙げられる。これらの光重合性エチレン性不飽和単量体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、米国特許第4,323,636号、同第4,753,865号、同第4,726,877号、同第4,894,315号の各明細書中に記載のモノマーを挙げることができる。光重合性モノマーは単独でもまた組合せて使用してもよい。特に好ましいのは、ポリブタジエンジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートである。
【0042】
上記モノマーは、エラストマー樹脂とテルペン樹脂との総和を100重量部とすると、5〜30重量部、好ましくは10〜20重量部の範囲がよい。モノマーの含有量が前記範囲未満では露光硬化後の被膜の耐摩耗性や耐薬品性が低下し、前記範囲を超えると、感光性樹脂層のエラストマー性が低下し、フレキソ印刷版として好ましくない。
【0043】
(d)光重合開始剤
光重合開始剤としては、一般に知られているものを用いることができる。このような開始剤の一例として、ベンゾフェノンのような芳香族ケトン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチロールベンゾインメチルエーテル、α−メトキシベンゾインメチルエーテル、2,2−ジエトキシフェニルアセトフェノン等のベンゾインエーテル類;置換および非置換の多核キノン類;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−ベンゾイル−4’−メチルジメチルスルフィド、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、4−ジメチルアミノ安息香酸−2−イソアミル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、α, α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス−(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス−(9−アクリジニル)ペンタン、1,3−ビス−(9−アクリジニル)プロパンなどが挙げられる。その他米国特許第4,460,675号および同第4,894,315号の明細書に開示されている開始剤などが挙げられる。前記開始剤は単独でもまた組合せて使用してもよい。
【0044】
上記開始剤は、本発明の印刷版製造用感光性組成物の全重量に対して0.001〜10重量%の範囲で含有するのがよい。
【0045】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、染料、顔料、重合禁止剤、酸化防止剤、光劣化防止剤などが添加され、その性能の改善を図ることもできる。
【0046】
〔B〕感光性印刷原版積層体
本発明の感光性印刷原版積層体は、支持体と、この支持体上に形成された本発明の印刷版製造用感光性組成物からなる感光性樹脂層とを有する積層体である。
【0047】
感光性樹脂層の形成方法については、特に制限はなく、感光性印刷原版積層体の製造に際し、支持体上に感光層を積層するのに慣用されている方法の中から任意に選ぶことができる。例えば、テルペン樹脂、エラストマー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤およびその他の成分を混合して調製した感光性樹脂組成物をホットメルトに成形し、これを所望の厚さとなるようにカレンダー掛けする、または押出機を利用して感光性樹脂組成物を溶融、混合、脱気および濾過した後、支持体と一時的なカバーシートとの間に押し出し、カレンダー掛けして所望の厚さとする、あるいは金型中に支持体とカバーシートを置き、両者の間に感光性樹脂組成物を射出する、等の方法で、支持体層の上に感光性樹脂組成物の塗膜を形成し、この塗膜を固化することにより感光性樹脂層を形成する。
【0048】
この感光性樹脂層の厚さは、通常0.1〜10.0mm、好ましくは0.5〜7.0mmの範囲である。
【0049】
本発明の感光性印刷原版積層体を構成する支持体層としては、用いる印刷条件に必要とされる機械的強度などの物理性能を満たすものであれば特に限定なく使用することができ、例えば、通常のフレキソ印刷版に用いられる公知の金属、プラスチックフィルム、紙およびこれらの複合化された形態のすべての支持体が使用できる。これらには付加重合ポリマーおよび線状縮合ポリマーにより形成されるようなポリマー性フィルム、透明なフォームおよび織物、不織布、例えばガラス繊維織物、およびスチール、アルミニウムなどの金属が含まれる。支持体はバック露光が容易なように露光光に対して透明であることが好ましい。より好適な支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリエステルフィルムが挙げられ、特にポリエチレンテレフタラートフィルムがよい。前記フィルムとしては、厚さ50〜400μmのフィルム、好ましくは厚さ75〜300μmのフィルムが用いられる。この支持体層は、また、必要に応じて、感光性樹脂層との間を薄い粘着層で被覆されていてもよい。この粘着層としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、エチルセルロースが挙げられ、ポリカーボネートと、フェノキシ樹脂と、多価イソシアネートの混合物からなるものが好適に使用できる。
【0050】
本発明においては、必要に応じて、支持体層と反対側の表面に保護層を設けることが好ましい。保護層としては、シリコーンをコーティングまたは焼き付けした厚さ15〜125μm程度のポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリプロピレンフイルム、ポリエチレンフィルムなどが好適である。この保護層は貯蔵、搬送、および取り扱いを容易にするため、一時的に貼着されるものであり、印刷版製造時には、この保護層を剥離して感光性樹脂層を表面に露出させ、パターン光が照射されることになる。この保護層は、また、必要に応じて、感光性樹脂層との間を薄い粘着防止層で被覆されていてもよい。この粘着防止層としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、セルロース誘導体、ポリアミド樹脂類が挙げられる。
【0051】
本発明においては、感光性樹脂層の上に、必要に応じてマスク材層を設けることが好ましい。感光性樹脂層の上に、露光光に対して不透明なマスク材層を形成し、このマスク材層の一部を露光光が透過するようパターン化してマスク画像層とし、このマスク画像層の上から露光光を照射することにより、感光性樹脂層に印刷用パターンを形成できるので、凸版印刷版の製造の効率化をさらに高めることができる。
【0052】
マスク材層の一部を露光光が透過するようパターン化してマスク画像層を形成する方法としては、マスク材層として赤外線感受性材料からなる赤外線アブレーション層を設け、この赤外線アブレーション層を赤外レーザーで選択的にアブレーションする(焼きとばす)ことによってネガパターンを形成する方法が主流である。赤外線アブレーション層については、例えば、特許第2916408号公報、特開2003−35954号公報、特開2003−35955号公報、特開平11−153865号公報、特開平9−166875号公報、特開2001−324815号公報、特許第2773981号公報の記載を参照することができる。
【0053】
〔C〕印刷版
本発明の印刷版は、支持体上に印刷用の凹凸パターンを有する硬化樹脂層を有してなる凸版印刷版であり、前記パターン化硬化樹脂層が、構成成分として少なくともエラストマー樹脂成分とテルペン樹脂成分とを同時に含有することを特徴とする。このパターン化硬化樹脂層は、本発明の印刷版製造用感光性組成物を光硬化反応させることによって形成することが好ましい。パターン化硬化樹脂層中におけるエラストマー樹脂成分およびテルペン樹脂成分の存在形態は、光硬化反応条件によって異なり、光硬化反応により光重合性モノマーによって架橋された状態や、架橋されずに未反応のまま存在する状態が考えられる。本発明においては、エラストマー樹脂成分およびテルペン樹脂成分は、いずれの状態でパターン化硬化樹脂層中に含有されていてもよい。
【0054】
前記感光性印刷原版積層体を用いた本発明の印刷版は、前記感光性樹脂層にマスクを介して露光することにより、パターン部分の感光性樹脂層を硬化させ、前記露光光が照射されずに未硬化状態にある前記感光性樹脂層の露光光非照射領域を現像液により除去することによって、前記感光性樹脂層をパターン化硬化樹脂層とすることで製造される。
【0055】
好ましい実施態様によれば、感光性印刷原版積層体に対して必要に応じて支持体層側からバック露光を行ったのち、感光性印刷原版積層体の保護層(スリップシート)を剥離して感光性樹脂層を表面に露出させる。次いで、マスクを介してメイン露光を行うことにより、パターン部分の感光性樹脂層を硬化させる。このメイン露光によって、感光性樹脂層にはマスクパターンに従ったパターン光が照射され、露光光が照射された領域は、架橋反応が生じて、硬化する。
【0056】
感光性樹脂層の上に、赤外線アブレーション層等のマスク材層を設けた場合は、赤外レーザー光を用いて赤外線アブレーション層を除去することによりマスク画像を形成し、このマスク画像層をマスクとしてメイン露光を行う。
【0057】
次いで、露光光が照射されなかった未硬化部分を現像液により除去することによって、印刷用パターンを顕在化させ、これを乾燥させる。乾燥後、必要に応じて後露光を行ってもよい。
【0058】
露光で使用される露光装置としては、フレキソ版の製造に一般的に使用されている化学線照射装置などが使用できる。放射線としては、150nm〜800nmの波長を有する紫外線および可視光線を用いることができるが、320nm〜450nmの波長を有する紫外線が好ましい。前記光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザー等が使用できる。
【0059】
また、現像処理で使用する現像液としては、感光性樹脂層を溶解する性質を持つものであれば、有機溶液、水、水性または半水性溶液のいずれであってもよく、現像液の選択は、除去されるべき樹脂の化学的性質に依存する。適当な有機溶媒現像液としては芳香族もしくは脂肪族炭化水素および脂肪族もしくは芳香族ハロ炭化水素溶媒またはそれらの溶媒と適当なアルコールとの混合物が挙げられる。また、半水性現像液としては、水または水に混和し得る有機溶媒およびアルカリ性材料を含有している。該水性現像液としては、水と、例えば、ヘプチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル類、石油留分、トルエン、デカリン等の炭化水素類、テトラクロルエチレンなどの塩素系溶剤、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等の水溶液が挙げられる。また、これらの溶剤にプロパノール、ブタノール、ペンタノール等のアルコール類を混合したものを用いることも可能であり、洗い出しは浸漬、ノズルからの噴射、ブラシによるブラッシング等任意の方法が採用できる。
【0060】
本発明の印刷版の製造に当たり、印刷原版積層体をドラムに円筒状に取り付け、露光、現像処理することで印刷用版材の生産性が一段と向上する。
【実施例】
【0061】
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0062】
<実施例1〜3、比較例1、2>
(フレキソ印刷版の作製)
熱可塑性エラストマーとしてスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(商品名 D−1107、KRATON社製)と、水素化テルペン樹脂(商品名 クリアロンp−125、ヤスハラケミカル社製)とを下記表1に記載の配合比で混合し、この混合物75重量%を、8.7重量%の1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、15重量%のポリブタジエン末端アクリレート(商品名 BAC−45、大阪有機化学社)、1.3重量%のベンジルジメチルケタール(商品名 Irgacure651、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を2軸混練機に添加し、Tダイシングを使用し2mm厚のシートを作成し、125μm厚のポリエステルシート(支持体層)にラミネートし、もう片面をポリアミド樹脂層からなる粘着防止層が設けてあるポリエステルシート(保護層)にラミネートし、支持体層−感光性樹脂層−粘着防止層−保護層の4層が順次積層一体化されたの印刷原版積層体を作製した。
【0063】
【表1】

【0064】
次にこれらの印刷原版積層体を、ドラムに円筒状に取り付け、バック露光、主露光、現像、乾燥、後露光を順次行うことにより、フレキソ印刷版に加工した。なお、比較例2の印刷原版積層体についてはフレキシビリティーが不十分であり、ドラムに取り付ける際に印刷原版積層体が破損してしまったため、以下のフレキソ印刷版の性能評価については、実施例1〜3および比較例1についてのみ行った。
【0065】
(フレキソ印刷版の評価)
実施例1〜3および比較例1の印刷版からそれぞれ3cm×3cmサイズの版を切り取り、下記に示すUV硬化性インキまたは油性インキへ48時間浸漬した。版面硬度値の低下量(JIS K 6301A形規格に準拠した硬度測定機によってインキ浸漬前後の硬度の差)と、感光層厚値の増加量を、表2および3にそれぞれ示す。
【0066】
インキ1:UV硬化性インキ
(クボイインキ製、UVエースFX パントンクールグレー)
インキ2:UV硬化性インキ
(東洋インキ製、FDカルトン ACE墨口)
インキ3:UV硬化性インキ
((株)T&K TOKA製 UV161)
インキ4:UV硬化性インキ
((株)T&K TOKA製 VECTA フレキソ)
インキ5:UV硬化性インキ
((株)T&K TOKA製 UV グロス OPニス)
インキ6:油性インキ
(大日本インキ製、flexomax blue:イソプロピルアルコール・酢酸エチル・酢酸プロピル・1−プロパノール・1−(1−メチルエトキシ)2プロパノール・セカンダリーブチルイソプロピルを含有する〕〕
【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
以上の結果より、エラストマー樹脂とテルペン樹脂とを併用した実施例1〜3については、版面硬度値の低下量、および感光層膜厚の増加量が実質的に観察されないか、変化があっても非常に僅かであり、UV硬化性インキ、油性インキに対して、優れた耐性を持つことが分かる。
【0070】
一方、テルペン樹脂を用いていない比較例1については、UV硬化性インキ、油性インキに対する耐性が不十分であり、版面硬度値の低下、および感光層膜厚の増加が顕著であった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように、本発明にかかる印刷版製造用感光性組成物は、少なくとも、バインダー樹脂、光重合性モノマー、および、光重合開始剤を含有する印刷版製造用感光性組成物において、バインダー樹脂として、エラストマー樹脂と、テルペン樹脂とを併用することを特徴とする。エラストマー樹脂とテルペン樹脂とを併用することによって、得られる印刷版の印刷液に対する耐性を著しく向上させることができる。
【0072】
前記特徴を有する本発明の印刷版製造用感光性組成物を用いることによって、優れた印刷適性を有する感光性印刷原版積層体、印刷版を製造することができ、特にUV硬化性インキ、油性インキ用の凸版印刷版として、好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、バインダー樹脂、光重合性モノマー、および、光重合開始剤を含有する印刷版製造用感光性組成物であって、
前記バインダー樹脂として、エラストマー樹脂と、テルペン樹脂とを同時に含有することを特徴とする印刷版製造用感光性組成物。
【請求項2】
前記テルペン樹脂が、水素化テルペン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の印刷版製造用感光性組成物。
【請求項3】
前記エラストマー樹脂が、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷版製造用感光性組成物。
【請求項4】
前記エラストマー樹脂と前記テルペン樹脂との総和100重量部に対し、前記エラストマー樹脂が30〜90重量部、前記テルペン樹脂が70〜10重量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷版製造用感光性組成物。
【請求項5】
支持体上に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷版製造用感光性組成物からなる感光性樹脂層を有してなることを特徴とする感光性印刷原版積層体。
【請求項6】
前記支持体と反対側の面上に、保護層を有することを特徴とする請求項5に記載の感光性印刷原版積層体。
【請求項7】
支持体上に印刷用の凹凸状パターンを有する硬化樹脂層を有する印刷版であって、前記パターン化硬化樹脂層が、構成成分として少なくともエラストマー樹脂成分と、テルペン樹脂成分とを含有することを特徴とする印刷版。
【請求項8】
UV硬化性インキ用フレキソ印刷版であることを特徴とする請求項7に記載の印刷版。
【請求項9】
油性インキ用フレキソ印刷版であることを特徴とする請求項7に記載の印刷版。

【公開番号】特開2006−3570(P2006−3570A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178925(P2004−178925)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】