印刷物
【課題】フォトリソ法では、現像処理時に除去される銀ペーストの量が非常に多いし、その回収・再利用工程にコストがかかり、経済性に難点があり、この銀ペーストの利用率の低さが製造コストを上昇させる原因にもなっている。
【解決手段】本発明の印刷物は、複数の印刷パターン線を有する印刷物であって、前記複数の印刷パターン線の各々の線幅が5μm〜60μmであり、前記複数の印刷パターン線の各々の線高/前記複数の印刷パターン線の各々の線幅が0.5〜2.0である。
【解決手段】本発明の印刷物は、複数の印刷パターン線を有する印刷物であって、前記複数の印刷パターン線の各々の線幅が5μm〜60μmであり、前記複数の印刷パターン線の各々の線高/前記複数の印刷パターン線の各々の線幅が0.5〜2.0である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被印刷物に、従来よりも極めて微小線幅であってアスペクト比の大きな線を有する印刷パターン線を高速・大量印刷して、安価に捜供することが可能な装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、ディスプレイパネル用基板、またはソーラーパネル用基板は、大型化や薄型化が進んでおり、微小線幅であってアスペクト比の大きな線を有する印刷パターンを高速・大量印刷して、安価に捜供する技術がクローズアップされてきている。
【0003】
微小線幅であってアスペクト比の大きな線を有する印刷パターンを印刷方法として、従来はフォトリソグラフィー法(以下、フォトリソ法とも略す。)、スクリーン印刷法や凹版オフセット印刷法等が行われている。
【0004】
上記フォトリソ法は、基板の背面全体に印刷インクとしての感光性銀ペーストを所定の厚みにコーティングして、乾燥・露光・現像にて所定のパターンを形成したり、感光性銀テープを基板の全面に貼付して、露光・現像l±よって所定のパターンを形成したりする方法である(例えば特開2002−245931号公報における従来の技術の項参照)。
【0005】
またスクリーン印刷法は、周辺を版枠に固定されかつ転写すべき所定のパターンに対応したメッシュ状の開口部を有するスクリーンマスクにペースト状の印刷インクを供給し、それをゴム製のスキージ等で掻いて開口部から下方へ押し出し、基板表面に所定のパターンを転写・印刷するものである(例えば特開2000−26034号公報参照)。
【0006】
さらに凹版オフセット印刷法は、ペースト状の導電性インキを平板状凹版の凹部に充填した後、凹部内の印刷インクを印刷用ブランケット表面へ転移させ、次いで該ブランケット表面のインクパターンを、ガラス製または合成樹脂フイルム製の被印刷物の表面に転移させて印刷パターンを形成し、その後に該パターンを乾燥させて基板上に導電牲バターンを形成し、被印刷物とするものである(例えば上記特開2002−245931号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−245931号公報
【特許文献2】特開2000−26034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、まず上記フォトリソ法では、現像処理時に除去される銀ペーストの量が非常に多いし、その回収・再利用工程にコストがかかり、経済性に難点があり、この銀ペーストの利用率の低さが製造コストを上昇させる原因にもなっている。また露光・現像エッチング装置の大型化もコスト面で不利であるし、それに加えて現像処理による有害廃液が多量に生じて環境悪化の問題点もあり、その対策費の負担も経済性に悪影響を及ぼしている。
【0009】
近時の主流であるスクリーン印刷法では、スキージでスクリーン上からインクを押し出すため、スクリーンを構成する縦横糸の太さに限界があり、パターン形状の忠実な再現が困難であるし、スクリーンやスキージの磨耗で印刷精度が低下したり、ゴム製のスキージを頻繁に交換する必要があった。また、スキージのゴム硬度が70〜80度で、被印刷物が薄くて堅い脆弱である場合は、スキージの押圧力で、該被印刷物が割れるという欠点があった。
【0010】
さらにスクリーンは、周縁部だけで保持されているため、スクリーン自体の重みで垂れ下がったり、スキージにより加わる力が中央部と周辺部分に差があって、メッシュの糸が伸びたり歪みが生じたりして、同一被印刷物上で印刷精度が異なることがあり、中央部近傍のみを良品とするため、サイズの大きい被印刷物の製造は難しかった。
【0011】
さらにメッシュの目詰り防止のため、インクの乾燥速度を早くできないし、スクリーンやスキージが上下・左右の往復直線移動をしているので、どうしても生産速度が遅くなり、これがプラズマテレビその他のプラズマディスプレイをもつ機器の価格を高留まりさせる一因となっている。
【0012】
上記従来の凹版オフセット印刷法では、スクリーン印刷法に対して微細パターンを比較的安価に製造可能としているが、装置の動作に問題点が残っている。即ち、ペースト状の印刷インクを平板状凹版から印刷用ブランケットへ転移させて、該ブランケットから被印刷物上へ転写させる工程で、ブランケットを横移動させ、下降させ、該被印刷物表面に圧接させて横移動させ、その後に上昇させ元の位置まで横移動させる、という直線往復動作を繰り返し行っている(例えば上記特開2002−245931号公報の図2参照)。
【0013】
この直線往復運動のために、印刷インクが凹版から上記基板表面へ転写されるまでの間、およびその後の工程で無用な時間がかかることになり,連続高速生産を行う上での障害となっている。また該直線往復動作は間欠移動の繰り返しであるから、各位置決め精度も問題となる等の問題点がある。また、従来の凹版オフセット印刷法において使用される転写用ブランケットは、その硬度も40〜80度と高く、被印刷物に接触し、印圧がかかるときその圧力により、前印刷の印刷皮膜を破壊し、既定のパターン、線幅を押し広げてしまい同一パターンを高く積み重ねることはできなかった。
【0014】
本発明は、上記従来のスクリーン印刷法や凹版オフセット印刷装置、印刷方法及び印刷物がもつ問題点の解消を課題として鋭意研究してきたものである。即ち、本発明の第1の目的は、印刷用の極めて微細で線の厚いパターンを、高速かつ連続に印刷可能として、被印刷物を大量かつ安価に提供可能とする装置、印刷方法及び印刷物を提供することにあり、第2の目的は、異なる材質のインク又はペーストを組み合わせることにより、一つの印刷構造に異なる性質を付加することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
[発明1]印刷パターン5に対応した凹条4をもつ印刷用凹版1と、上記凹条4内に充填された印刷インクを、インクパターンとして転移される印刷用ブランケツト2を備え、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて、所定の印刷パターン5を形成する印刷ユニットAを備えたオフセット印刷装置であり、上記印刷ユニットAの数を、多層印刷の印刷回数nと同数とし、n台の印刷ユニットA−1,A−2,…,A−nを連続状に配置し、該各印刷ユニットA−1,A−2,…の各印刷用凹版1−1,1−2,…,1−nおよび各印刷用ブランケット2−1,2−2.…,2−nを回転式とし、かつ該各印刷ユニットA−l,A−2,…,A−nの各印刷用凹版1−1,1−2,…,1−nに、印刷パターン5に対応した、それぞれが同一の凹条4−1,4−2,…,4−nを形成してあることを特徴とするオフセット印刷装置。ここに、nは、2以上の自然数を表す。
【0016】
[発明2]印刷パターン5に対応した凹条4をもつ印刷用凹版1と、上記凹条4内に充填された印刷インクを、インクパターンとして転移される印刷用ブランケット2を備え、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて、所定の印刷パターン5を形成する凹版オフセット式印刷ユニットAを備えた凹版印装置であり、多層印刷の印刷回数nと同数の4台の印刷ユニットA−1,A−2,…を連続状に配置し、該各印刷ユニットA−1,A−2,…の各印刷用凹版1−1,1−2,…および各印刷用ブランケット2−1,2−2,…を回転式とし、かつ、かつ該各印刷ユニットA−1,A−2,…の各印刷用凹版1−1,1−2,…に、印刷パターン5に対応した、それぞれが同一の凹条4−1,4−2,…を形成してあることを特徴とする[発明1]に記載のオフセット印装置。ここに、nは、自然数であって4である。
【0017】
[発明3]凹版印装置によって、被印刷物3に印刷された印刷パターン5の線の線幅Bが5μm〜60μmであり、かつアスペクト比ARが0.5〜2.0であることを特徴とする[発明1]または[発明2]に記載のオフセット印刷装置。
【0018】
アスペクト比AR=H/B(H)……(1)
ここに、B: 線高(μm)
[発明4]印刷用ブランケットのゴム硬度が、2度から10度であることを特徴とする[発明1]〜[発明3]のうちの一つに記載のオフセット印刷装置。
【0019】
[発明5]被印刷物が ディスプレイパネル用基板又はソーラーパネル用基板であることを特徴とする[発明1]〜[発明4]のうちの一つに記載のオフセット印刷装置。
【0020】
[発明6]印刷パターン5に対応した凹条4をもつ印刷用凹版1と、上記凹条4内に充填された印刷インクを、インクパターンとして転移される印刷用ブランケツト2を備え、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて、所定の印刷パターン5を形成する印刷ユニットAを備えたオフセット印刷装置があり、当該印刷ユニットAの数を、多層印刷の印刷回数nと同数とし、n台の印刷ユニットA−1,A−2,…,A−nを連続状に配置し、該各印刷ユニットA−1,A−2,…の各印刷用凹版1−1,1−2,…,1−nおよび各印刷用ブランケット2−1,2−2.…,2−nを回転式とし、かつ該各印刷ユニットA−l,A−2,…,A−nの各印刷用凹版1−1,1−2,…,1−nに、印刷パターン5に対応した、それぞれが同一の凹条4−1,4−2,…,4−nを形成してあり、
印刷ユニットA−1において、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて第1層を形成し、
印刷ユニットA−2において、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて第2層を形成し、以下、順次繰り返し、
印刷ユニットA−nにおいて、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて第n層を形成して、
被印刷物3に印刷された印刷パターン5の線の線幅Bが5μm〜60μmであり、第1層、第2層、…第n層のn層構造であることを特徴とするオフセット印刷方法。ここに、nは、2以上の自然数を表す。
【0021】
アスペクト比AR=H/B(H)……(1)
ここに、B:線高(μm)
[発明7]印刷パターン5に対応した凹条4をもつ印刷用凹版1と、上記凹条4内に充填された印刷インクを、インクパターンとして転移される印刷用ブランケット2を備え、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて、所定の印刷パターン5を形成する印刷ユニットAを備えたオフセット印刷装置であり、多層印刷の印刷回数nと同数の4台の印刷ユニットA−1,A−2,…を連続状に配置し、該各印刷ユニットA−1,A−2,…の各印刷用凹版1−1,1−2,…および各印刷用ブランケット2−1,2−2,…を回転式とし、かつ、かつ該各印刷ユニットA−1,A−2,…の各印刷用凹版1−1,1−2,…に、印刷パターン5に対応した、それぞれが同一の凹条4−1,4−2,…を形成して、
印刷ユニットA−1において、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて第1層を形成し、
印刷ユニットA−2において、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて第2層を形成し、
印刷ユニットA−3において、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて第3層を形成し、
印刷ユニットA−4において、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて第4層を形成して、
被印刷物3に印刷された印刷パターン5の線の線幅Bが5μm〜60μmであり、第1層、第2層、第3層、第4層、…第n層のn層構造であることを特徴とするオフセット印刷方法。ここに、nは、自然数であって4である。
【0022】
[発明8]オフセット印刷装置によって、被印刷物3に印刷された印刷パターン5の線の線幅Bが5μm〜60μmであり、かつアスペクト比ARが0.5〜2.0であることを特徴とする[発明6]又は[発明7]に記載のオフセット印刷方法。
【0023】
アスペクト比AR=H/B(H)……(1)
ここに、B:線高(μm)
[発明9]印刷用ブランケットのゴム硬度が、2度から10度であることを特徴とする[発明6]〜[発明8]のうちの一つに記載のオフセット印刷方法。
【0024】
[発明10]被印刷物が ディスプレイパネル用基板又はソーラーパネル用基板であることを特徴とする[発明6]〜[発明9]のうちの一つに記載のオフセット印刷方法。
【0025】
[発明11]上記インクパターンを被印刷物3に転写し、60℃〜70℃の温風を当てて乾燥させること特徴とする[発明6]〜[発明10]のうちの一つに記載のオフセット印刷方法。
【0026】
[発明12]被印刷物3の表面に、オフセット印刷法により重ね印刷されて、印刷パターン5の線の線が、第1層,第2層,…第n層からなり、線幅Bが5μm〜60μmであり、かつアスペクト比ARが0.5〜2.0であることを特徴とする印刷物。ここに、nは、2以上の自然数を表す。
【0027】
アスペクト比AR=H/B(H)……(1)
ここに、B:線高(μm)
<用語の定義又は説明>
以下、本願特許請求の範囲、本願明細書において用いる用語の解釈上の疑義を解消するべく、以下用語の定義又は説明をすることとする。
○オフセット印刷法(凹版オフセット印刷法と)は、ペースト状の印刷インキを印刷用凹版1の凹部に充填した後、凹部内の印刷インクを印刷用ブランケット表面へ転移させ、次いで該ブランケット表面のインクパターンを、被印刷物の表面に転移させて印刷パターンを形成し、その後に該パターンを乾燥させる印刷方法である。
○印刷ユニットとは、印刷パターン5に対応した凹条4をもつ印刷用凹版1と、上記凹条4内に充填された印刷インクを、インクパターンとして転移される印刷用ブランケット2を備え、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて、所定の印刷パターン5を形成する凹版オフセット式印刷ユニットAを備えた凹版オフセット印刷装置である。
○印刷用凹版とは、印刷パターンに対応する部分が版材面より窪んでいる印刷版をいう。
○凹条とは、また該印刷用凹版1の各凹条4の形成は、例えばフォトリソグラフ法、エッチング法、高鋳法またはショットブラスト法等によるものとし、その深さや幅は目的とする印刷パターン5に応じて適宜設定すればよい。
○印刷用ブランケットとは、印刷用凹版1の凹条内に充填された印刷インクをインクパターン(図示略)として受け取り、次の被印刷物3上に転写するための転写ローラであり、円柱状または円筒状で回転式のものである。該ブランケット2は一般にゴム製でインク離型性に優れたものとし、表面層は例えばシリコンゴム、フッ素ゴムまたはフツソ樹脂の単独のもの、または混合物を用いるのがよい。
○印刷用ブランケットのゴム硬度について
印刷用ブランケットのゴム硬度は、線幅が小さくて、アスペクト比が大きな線を有する印刷パターンを印刷すべく種々試行錯誤したことによって、印刷用ブランケットのゴム硬度は2度から10度程度が望ましいことが確認された。
これにより、一回あたりの印刷で、印刷用ブランケットの硬度を上記範囲とすることによって、下記のような当業者が予期できない顕著な効果を発揮することができる。
本願発明の凹版オフセット重ね印刷方法において、一回の印刷において、線幅Bが10μm〜20μmであり、かつアスペクト比ARが0.3〜0.5である線からなる印刷パターンを印刷することが可能となる。
これにより、重ね印刷のための印刷ユニットを減らすことができ、印刷コスト、印刷時間短縮の効果が奏される。
○被印刷物とは、合成樹脂フイルム製のものもあるが、ガラス製のものなら、例えばソーダライムガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス、低アルカリガラスまたは低膨張ガラス等が望ましいが、乾燥時の変形が少ないことが必要で、低アルカリガラスは歪み点が高くて最適である。
○印刷パターンとは、被印刷物に印刷する線画部分をいう。印刷パターン5は線から線Lから構成される。
○印刷物とは、印刷パターンが印刷された被印刷物をいう。
○インク供給槽とは、回転する印刷用凹版1の周面に供給する印刷インクを貯蔵するタンクをいう。
○ブレードとは、インク供給槽6からの印刷インクが回転する印刷用凹版1に供給されて、その周面に形成された凹条4内へ充填されると共に、回転により、印刷用凹版1周面の余分なインクを掻き落とすための手段をいう。
○加圧用ローラとは、該印刷用ブランケット2−2周面のインクパターンは、被印刷物3が該印刷用ブランケット2−2と加圧用ローラ9−2間を通過する際に、該被印刷物3に圧力をかける手段である。
○乾燥装置とは、該印刷用ブランケット2−2周面のインクパターンは、被印刷物3が該印刷用ブランケット2−2と加圧用ローラ9−2間を通過する際に、該被印刷物3の表面にそっくりそのままで転写された印刷パターンを乾燥させるための手段である。
○乾燥とは、上記乾燥装置のブロアーから吹き付けられる60℃〜70℃の温風によって、印刷パターンを構成する線の第1層、第2層、…第n層の表面の被覆膜を形成することをいう。この被覆膜によって、被印刷物に印刷パターンが印刷された直後は、インクの粘度は3万センチポアズであるが、各層の表面が被覆膜を形成するのでアスペクト比が大きな線の重ね印刷が容易にできることとなった。
【0028】
すなわち、被覆膜によって、被覆された各層のインクが流出するのを防止すると共に、多層印刷する際に被覆膜にインクが付着力により付着することによって、アスペクト比が大きな線の重ね印刷が容易にできることとなった。
○移行手段とは、被印刷物3を、順次に本発明の凹版印装置へ送り込み、該被印刷物3を、移行手段のベルト13またはローラにて、同期的に回転する印刷用ブランケット2と加圧ローラ10間を通過させるための手段をいう。
【0029】
<符号の説明>
以下、本願特許請求の範囲、本願明細書において用いる用語の理解容易を図るべく、以下用符号の説明をすることとする。
○本発明で用いる構成要件(物)に関する符号は以下の通りとする。
A 印刷ユニット
1 印刷用凹版
4 凹条
2 印刷用ブランケット
3 被印刷物
5 印刷パターン
6 インク供給槽
7 インク供給ローラ
8 ブレード
9 加圧用ローラ
10 クリーニングローラー
12 乾燥装置
13 移行手段
○符号のサフィクスについて、 印刷ユニットAをn台並べる。上流から順にA−1,A−2,…A−nとする。サフィクス「−i」は、上流からi番目の印刷ユニットを表す。本発明で用いる物に関する符号をXとすれば、X−iは、i番目の印刷ユニットA−iを構成する構成要件(物)を表す。例えば、2−4は、4番目の印刷ユニットA−4を構成する印刷用ブランケットを表す。
【発明の効果】
【0030】
以上から明らかな如く、本発明に係る凹版オフセット印刷装置、印刷方法及び印刷物によれば、印刷用の極めて微細線幅であってアスペクト比の大きな線を有する印刷パターンを、高速かつ連続的に印刷可能として、被印刷物を大量かつ安価に提供可能とする装置、印刷方法及び印刷物を提供することができ、本発明の目的を達成できた。
【0031】
本発明においては、各印刷ユニットの各印刷用凹版や印刷用ブランケット等が回転式であるから、それらの回転に伴って印刷インクが順次に転移されていくと共に、被印刷物にもそのまま転写・印刷されていく。そのため、スクリーン印刷法や従来の凹版オフセット印刷法で直線往復勤を繰り返し印刷を行うものと異なり、本発明は、長期的に連続して高速生産することができ、生産性・経済性に優れるという顕著な効果を奏する。
【0032】
同じく、本発明においては、各印刷ユニットの印刷用凹版や印刷用ブランケット等が回転式であることで、印刷インクが印刷用凹版から印刷用ブランケットを経て被印刷物に印刷される間に、必要なら容易に予備乾燥を加えることができるし、印刷ユニットを通過中や後でも乾燥工程を容易に加えることができる。これにより、本発明は、乾燥時間が全体的に短縮化でき、この面でもやはり高速生産することができるという顕著な効果を奏する。
【0033】
さらに、本発明においては、上記の如く各印刷ユニットの各印刷用凹版や印刷用プチツケット等が回転式であることで、各印刷用凹版に供給された印刷インクが印刷物に印刷されるまでの間に、外気に触れる時間が大幅に短縮されるから、この面からも、本発明は、より高精度な印刷をすることがきるという顕著な効果を奏する。
【0034】
印刷用の極めて微細線幅であってアスペクト比の大きな線を有する印刷パターンを印刷できる技術を、ソーラーパネル用基板に応用することにより、ソーラーパネル用の極細電極線(従来はスクリーン印刷法によって印刷されていた。)を、本発明のオフセット印刷用の極めて微細線幅であってアスペクト比の大きな線を有する印刷パターンをソーラーパネル用基板に印刷する可能となったことにより、ソーラーパネル用基板の全体に占める電極線面積が少なくなり、それに比例して太陽光が照射される範囲が拡大することによって、ソーラーパネル用基板のソーラー発電効率が大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る凹版オフセット印刷装置の実施例を示す縦断正面図である。
【図2】本発明に係る凹版オフセット印刷装置の1つの印刷ユニットの実施例を示す縦断正面図である。
【図3】図1における印刷ユニットAl〜Anの印刷用凹版での凹条を示す展開図である。
【図4】印刷ユニットAで印刷パターンを印刷した印刷物 の平面図である。
【図5】印刷ユニットAで印刷パターンを印刷した印刷物の部分拡大図である。
【図6】凹条4の断面図である。
【図7】本発明による、第1実験データの極細線印刷パターンの一部を示す三次元表示図である。
【図8】図7に示す上記三次元表示図の高度差計測グラフである。
【図9】本発明による、第2実験データの極細線印刷パターンの一部を示す三次元表示図である。
【図10】図9に示す上記三次元表示図の高度差計測グラフである。
【図11】従来技術であるスクリーン印刷法による、ソーラーパネルSPの平面図である。
【図12】本発明のオフセット印刷装置、印刷方法による、ソーラーパネルGPの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[発明の実施の形態]
上記構成において、被印刷物3は、例えばガラス基板が多いが、合成樹脂フイルム製のものもある。印刷パターン5とは、微細な線を有するメッシュ状の印刷パターン自体の他に、パネルの四辺の縁枠のパターンも含む。
【0037】
また、本願発明においては、該印刷パターン5に対応する凹条4の形状については、凹条4−1、凹条4−2、…、凹条4−nのパターンは全て同じである。(例えば図3ないし図6参照)。
【0038】
凹条4−1、凹条4−2、凹条4−3、及び凹条4−4のパターンを全て同じすることによって、被印刷物3に線Lの第1層5L1、第2層5L2、…、第n層が転写・印刷される。すなわち、被印刷物3が順次印刷ユニットA−1,A−2,…、A−nを順次移行していくと共に、被印刷物3に線Lの第1層5L1、第2層5L2、第3層5L3、及び第4層5L4が順次n層重ねで印刷される。(図3ないし図6参照)。
【0039】
印刷インクは、被印刷物の印刷用ペーストとして用いられているものであり、金属粉末とバインダ樹脂とを溶剤中に分散または溶解させて印刷用ペースト状としたものである。上記金属粉未としては、例えば銀、銅、金、ニッケル、アルミニウム等の単体または複合したもの、またバインダ樹脂としては、例えばポリエステルーメラミン樹脂のような熱硬化性樹脂、アクリル樹脂のような紫外線硬化性樹脂、ポリエステル樹脂のような熱可塑性の樹脂等を用いればよい。
【0040】
回転式の印刷用凹版1は、印刷パターン5を凹条4として周面に形成した原版であり、表面が平滑で円柱状または円筒状としたものである。ここで印刷パターン5とは、上記の如く微細な条によるメッシュ状のものの他に、四辺の縁枠用のものを含む(上記図3ないし図6参照)。
【0041】
上記印刷用凹版1の素材は、例えばガラス製や金属製のもの等がある。ガラス製のものとしては、例えばソーダライムガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラスまたは低膨張ガラス等で、樹脂製のものとしては、例えばフッ素樹脂、ポリカーボネートまたはポリエステル樹脂等、金属製のものとしでは、例えばステンレス、銅、ニッケルまたは低膨張合金アンバー等とすればよい。
【0042】
また該印刷用凹版1の各凹条4の形成は、例えばフォトリソグラフ法、エッチング法、高鋳法またはショットブラスト法等によるものとし、その深さや幅は目的とする印刷パターン5に応じて適宜設定すればよい。
【0043】
印刷用ブランケット2は、上記印刷用凹版1の凹条4内に充填された印刷インクをインクパターン(図示略)として受け取り、次の被印刷物3上に転写するための転写ローラであり、円柱状または円筒状で回転式のものである。該ブランケット2は、一般にゴム製でインク離型性に優れたものとし、表面層は、例えばシリコンゴム、フッ素ゴムまたはフツソ樹脂の単独のもの、または混合物を用いるのがよい。
【0044】
被印刷物3は、合成樹脂フイルム製のものもあるが、ガラス製のものなら例えば例えばソーダライムガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス、低アルカリガラスまたは低膨張ガラス等が望ましいが、乾燥時の変形が少ないことが必要で、低アルカリガラスは歪み点が高くて最適である。
【0045】
各凹版オフセット印刷ユニットAには、印刷用凹版1や印刷用ブランケット2の他に、一般のオフセット凹版オフセット印刷装置と同様に、インク供給槽6、ブレード(スクレーパー,スキージー)8、インク回収トレイ(図示略)、加圧用ローラ9、各ローラの回転駆動装置(図示略)、クリーニングローラ10、乾燥装置12を有している。
【0046】
なお、被印刷物3の移行手段13は、ガラス製基板の場合は、ベルトを水平状に連続的に配置すればよく(例えば図1、図2参照)、また湾曲して連続移行可能な合成樹脂フイルム製の場合は、図示は省略するが、上下位置にも配置したローラ間を移行させるようにすればよい。
【0047】
本発明の上記凹版オフセット印刷装置の作動状態は、次のようになる。
【0048】
被印刷物3を、順次に本発明の凹版オフセット印刷装置A−1〜 A−nへ送り込む。該被印刷物3は移行手段13のベルトまたはローラにて、各凹版オフセット印刷ユニットA−1, A−2,…と順次に移行して、同期的に回転する印刷用ブランケット2と加圧ローラ10間を通過する(上記図1,図2参照)。
【0049】
各印刷ユニットAにおいては、インク供給槽6から印刷インクが回転する印刷用凹版1の周面に供給され、該周面に形成された凹条4内に、即ち印刷パターン5(例えば上記図5参照)に対応する形状の凹条4内に、上記印刷インクが充填される。該印刷用凹版1周面には、回転する印刷用ブランケット2の周面が当接しているので、上記凹条4内の印刷インクは印刷用ブランケット2周面に、そっくりそのままインクパターンとして転移される。
【0050】
そして該印刷用ブランケット2は回転しているので、加圧用ローラ9との間を通過してくる上記基板3に周面が当接することにより、上記部分的なインクパターンがそっくりそのままで基板3表面に転写される。後は乾燥装置で乾燥されながら次の工程へ移行していく。複数の各印刷ユニットA−1, A−2,…を通過する毎に上記の作動が行われるので、上記基板3表面には、印刷パターン5を順次に第1層5L1,第2層5L1,…の凹版印刷が行われて、線Lの線幅Bが5μm〜60μmであり、かつアスペクト比ARが0.5〜2.0である線を有する印刷パターン5が形成されることになる。
【0051】
上記の作動は、以下に示す発明2の印刷装置の説明によって、一層明確になる。
【0052】
まず、1番目のオフセット印刷ユニットA−lでは、インク供給槽6−1からの印刷インクが回転する印刷用凹版1−1に供給されて、その周面に形成された微細な凹条4−1(例えば図3参照)内へ充填される。回転により、印刷用凹版1−1周面の余分なインクはブレード8−1で掻き落とされ、上記微細な凹条4−1内の印刷インクは、該印刷用凹版1−2と当接しながら同期的に回転する印刷用ブランケット2−1の周面に、インクパターンとして転移される。
【0053】
回転する該印刷用ブランケット2−1の周面に一旦転移したインクパターンは、上記基板3が該印刷用ブランケット2−1と加圧用ローラ9−1間を通過する際に、該被印刷物3の表面にそっくりそのまま転写される。これで、該被印刷物3上に印刷パターン5の微細な線の第1層5L1が形成され(例えば図5参照)、その後該被印刷物3が次の印刷ユニットA2へ向かう途中で、乾燥装置12−1で乾燥されて、線Lの第1層5L1の表面に被覆膜SMが形成される。
【0054】
2番目の凹版オフセット印刷ユニットA2でも、インク供給槽6−2からの印刷インクが回転する印刷用凹版1−2に供給されて、その周面に形成された上記一方向へ平行な多数本の微細な凹条4−1と直交状の他方へ平行な多教本の微細な凹条4−2(例えば図6参照)内へ充填される。続く回転により、周面の余分なインクは掻き落とされ上記微細な凹条4−2内の印刷インクは、該印刷用凹版1−2と当接しながら同期的に回転する印刷用ブランケット2−2の周面に、インクパターンとして転移される。
【0055】
該印刷用ブランケット2−2周面のインクパターンは、被印刷物3が該印刷用ブランケット2−2と加圧用ローラ9−2間を通過する際に、該被印刷物3の裏面にそっくりそのままで転写される。これで該被印刷物3表面に、凹条4−2も形成されて(例えば図6参照)、その後に該被印刷物3が次の印刷ユニットA−3へ向かう途中で、乾燥装置12−2で乾燥されて、印刷パターンの第2層5L2が形成される。
【0056】
3番目の凹版オフセット印刷ユニットA−3でも、インク供給槽6−3からの印刷インクが、回転する印刷用凹版1−3に供給されて、凹条4−3(例えば図6参照)内へ充填される。続く回転で周面の余分なインクは掻き落とされ、上記縁枠用の凹条4−3内の印刷インクは、該印刷用凹版1−3と当接しながら同期的に回転する印刷用ブランケット2−3周面に、インクパターンとして転写される。
【0057】
該印刷用ブランケット2−3周面のインクパターンは、被印刷物3が該印刷用ブランケット2−3と加圧用ローラ9−3間を通過する際に、基板3の表面にそっくりそのまま転写される。これで該被印刷物3表面に、印刷パターン5の第3層5L3が形成され(例えば図5参照)、その後に該被印刷物3が次の印刷ユニットA4へ向かう途中で、乾燥装置12−3で乾燥されて、印刷パターンの第三層が形成される。
【0058】
そして、4番目の凹版オフセット印刷ユニットA4でも、インク供給槽6−4からの印刷インクが、回転する印刷用凹版1−4に供給されて、その周面に形成された凹条4−4(例えば図6参照)内へ充填される。続く回転で周面の余分なインクは掻き落とされ、上記線枠用の凹条4−4内の印刷インクは、該印刷用凹版1−4と当接しながら同期的に回転する印刷用ブランケット2−4周面に、インクパターンとして転写される。
【0059】
該印刷用ブランケット2−4周面のインクパターンは、上記印刷物3が該印刷用ブランケット2−4と加圧用ローラ4−4間を通過する際に、該被印刷物3の表面にそっくりそのまま転写される。これで該被印刷物3表面に、印刷パターン5の線Lの第4層5L4が形成され(例え図10事照)、その後に乾燥装置12−3で乾燥されて線Lの第4層5L4の被覆膜が形成され、被印刷物の印刷パターン5がほぼ完成することになる(例えば上記図4参照)。次いで、後処理工程へ移行していく。
【0060】
なお、nが4より大きい場合は、さらに同じ工程を繰り返して、第n層の線を被印刷物に形成させるまで続ける。
【0061】
上記本発明に係る凹版オフセット印刷装置は、凹版のオフセット印刷によるものであるから、印刷インクは極めて微細な線で印刷パターン5が形成されると共に、同じ箇所を繰り返し重ね印刷をして、必要な厚みをもつ印刷パターン5が印刷されることになる。
【0062】
また各印刷ユニットAでは、各印刷用凹版1や印刷用ブランケット2等が回転式であるから、いずれの工程でも印刷インクはその回転に伴って順次に転移・転写されていくと共に、回転する各印刷用ブランケット2周面が上記印刷物3に当接する際に、印刷パターン5が分割された部分毎に順次に印刷されていく。そのため、スクリーン印刷法や従来の凹版オフセット印刷法で直線往復動を繰り返し印刷を行うものと異なり、長期的に連続して高速生産されることなる。
【0063】
さらに、上記の如く各印刷ユニットAで各印刷用凹版1や印刷用ブランケット2等が回転式であるため、印刷インク6は印刷用凹版1から印刷用ブランケット2を経て上記印刷物3に印刷される間で、必要なら容易に予備乾燥を加えられるし、かつどの印刷ユニットAを通過後でも乾燥工程を加えることが容易となっている。これにより、乾燥時間が全体的に短縮化されるから、この面でもやはり高速生産することが可能となっている。
【0064】
しかも、上記の如く印刷パターン5を複数に分割した場合の数に対応した印刷ユニットAを連続的に配置してあり、上記印刷物3が各印刷ユニットを順次に通過する際に、分割した数の各部分毎にそれに対応した印刷用凹版と印刷用ブランケット2を介して順次に印刷していくものである。そのため、これにより形成される印刷パターン5は、分割した場合の各部分毎に言わば流れ作業的に順次に印刷されており、この面でも被印刷物の連続した高速生産を行える。
【0065】
なお、上記の如く各凹版オフセット印刷ユニットAの各印刷用凹版1や印刷用ブラツケット2等が回転式であることは、各印刷用凹版1に供結された印刷インクが上記印刷基板3に印刷されるまでの間に、外気に触れる時間が大幅に短締されるから、より高精度な印刷がされることになる。
【0066】
[実施例]
図1ないし図6は、本発明に係る凹版オフセット印刷装置の内、上記の実施例を示すものであり、被印刷物3としてガラス基板を用いた場合である。その内の図1は全体の概略を示し、図2は印刷ユニットAを示し、ここでは図3ないし図6で明らかなように、印刷パターン5を4分割して印刷する場合であって、また図1で示す如く、凹版オフセット式の印刷ユニットAも4機を連続状に並べて設けてある。
【0067】
まず1番目の印刷ユニットAlにおいては、ここでは印刷パターン5の内、一方向へ平行な多数本の微細な条を形成するものである。インク供給槽6−1には、2番目以下のものも同様であるが、印刷インク内にインク供給ローラ7−1が浸漬しており、該ローラ7−1が回転する印刷用凹版1−1の周面に当接して、印刷インクを供給するようにしてある。ここでの印刷インクは、2番目以下のものも同様であるが、バインダとしてのアクリル樹脂中に銀の微粉末を分散させて、印刷用ペースト状にしたものを用いている。
【0068】
ここでの印刷用凹版1−1は、銅製の円柱状のものとしてあり、その周面には図3で示すように、被印刷物の印刷パターン5に対応する微細凹条4−1を形成してある。ここでは、エッチング法により線幅が約17μmに形成してあり、該凹条4−1内に上記インク供給ローラ6−1から印刷インクが供給・充填されるようにしてある。
【0069】
該印刷用凹版1−1の回転方向位置には、その周面を掻くようにここではセラミックコートしたステンレス製ブレード8−1を、ブレードホルダーにて設けてあって、印刷インクを凹条4−1内へ充分に充填すると共に、余分に付着した印刷インクを掻き取り、元のインク供給槽へ戻すようにしてある。
【0070】
印刷用ブランケット2−1は、円柱状で回転する転写ローラで、ここでは表面層をシリコンゴム製のものを用いており、上記印刷用凹版1−1の周面に当接しながら共に回転することで、印刷用凹版1−1の凹条4−1内に充填された印刷インクを、そっくりそのままインクパターンとして転移されるようにしてある。
【0071】
被印刷物3は、ここではガラス基板であって低アルカリガラスを用いており、移行手段としてのここでは各ベルト13−1,13−2,13−3,13−4にて各印刷ユニットA−1,A−2,A−3,A−4ヘ順次に移行されるが、上記印刷用ブランケット2−1と下部の加圧ローラ9−1との間を通過する際に、表面に上記印刷用ブランケット2−1が回転しながら当接して、周面のインクパターンをそっくりそのまま転写するようにしてある。
【0072】
乾燥装置12−1は、ここでは紫外線照射装置を用いており、上記被印刷物3が次の印刷ユニットA−2へ向かう途中に設けてあり、該被印刷物3に転写されたパターンから溶剤を揮発させ乾燥・硬化させることで、印刷パターンの第1層5L1を形成するようにしてある。
【0073】
次に2番目の印刷ユニットA−2は、上記第1番目の印刷ユニットA−lに連続状に設置して、上記印刷物3が続いて移行されるようにしてある。ここでの回転式の印刷用凹版1−2周面には、図4で示すように、印刷パターン5が設けられており、印刷ユニットA−lにおいて、第1番目で形成された第1層5L1の上に第2層5L2が形成される。
【0074】
インク供給槽6−2,ブレード8−2,回転式の印刷用ブランケット2−2,加圧用ローラ9−2,乾燥装置12−2,移行手段としてのベルト13−2、クリーニングローラー10−2等は、上記第1番目の印刷ユニットA−lと同じものを下流に設けてある。これにより、上記第1番目の印刷ユニットA−lで印刷パターンの第1層5L1が形成された上記印刷物3(図5参照)に、第2層5L2が重ね印刷されて、乾燥・硬化される(上記図5参照)。
【0075】
次に3番目の印刷ユニットA3には、上記第2番目の印刷ユニットA2を通過後の上記印刷物8が続いて移行されるように連続状に設置してある。ここでの回転式の印刷用凹版1−3周面には、印刷パターンに対応する凹条4−3が形成してある。
【0076】
ここでも、インク供給槽6−3,ブレード8−3,回転式の印刷用ブランケット2−3,加圧用ローラ9−3,乾燥装置12−3,移行手段としてのベルト13−3、クリーニングローラー10−3等は上記第1番目の印刷ユニットA−lと同じものを下流に設けである。これにより、上記第1番目と2番目の工程で形成された第1層5L1と第2層5L2の上に、第3層5L3が重ね印刷されて、乾燥・硬化される(上記図5参照)。
【0077】
次に4番目の印刷ユニットA−4は、上記3番目の印刷ユニットA3を通過後の上記印刷物3が続いて移行されるように連続状に設置してある。ここでの回転式の印刷用凹版1−4周面には、図5で示すように、上記3番目の印刷ユニットA−3で形成された第1層5L1、第2層5L2、第3層5L3の上に、第4層5L4を形成するために、凹条4−4が形成されている。
【0078】
ここでも、インク供給槽6−4,ブレード8−4,回転式の印刷用ブランケット2−4,加圧用ローラ9−4,乾燥装置12−4,移行手段としてのベルト13−4,クリーニングローラー10−4等は上記第1番目の印刷ユニットA−lと同じものを、同じように設けてある。これにより、上記第3番目の工程で形成された一つの対向する縁枠4−3とは別に、印刷パターンの第4層5L4が印刷・乾燥・硬化される。その後は必要な後工程へ移行されて、線の線幅Bが5μm〜60μmであり、かつアスペクト比ARが0.5〜2.0である線を有する印刷物が完成することになる。
【0079】
この実施例の装置により、被印刷物にプラズマディスプレイ用パターンを形成する印刷試験を、毎分6メートルの移行速度で行ったところ、線幅が17μm、アスペクト比が1.0の4層の線からなるパターンを連続3000枚まで印刷しても、その最大誤差は僅か3μmに収まっており、本発明の装置によりプラズマディスプレイ用の微細なパターン等を連続して高速印刷が可能なことが検証された。
【0080】
なお上記実施例は、被印刷物3がガラス基板の場合であるが、合成樹脂フイルム製の場合は、図示は省略するが装置の設置面積を小さくするために,一般的な連続状のフイルムテープに加工処理するのと同様に、ローラにより上下方向へも移行させながら処理するようにしておく。
【0081】
図7は、本発明による、第1実験データの極細線印刷パターンの一部を示す三次元表示図である。
【0082】
図8は、図7に示す上記三次元表示図の高度差計測グラフである。図8(a)、図8(b)は、本発明の実施例のデータの1例をそれぞれ表す。図8(a)は、図7に示す上記三次元表示図の高度差計測グラフのデータ例であり、そのアスペクト比は、50.7/56.2=0.90である。また、図8(b)は、図7に示す上記三次元表示図の高度差計測グラフの他のテータ例であり、そのアスペクト比は、50.7/78.1=0.65である。
【0083】
図9は、本発明による、第2実験データの極細線印刷パターンの一部を示す三次元表示図である。
【0084】
図10は、図9に示す上記三次元表示図の高度差計測グラフである。図10(a)、図10(b)は、本発明の実施例のデータの1例をそれぞれ表す。図10(a)は、図9に示す上記三次元表示図の高度差計測グラフのデータ例であり、そのアスペクト比は、53.4/48.0=1.11である。また、図10(b)は、図9に示す上記三次元表示図の高度差計測グラフの他のデータ例であり、そのアスペクト比は、53.4/75.2=0.71である。
【0085】
図11は、従来技術であるスクリーン印刷法による、ソーラーパネルSPの平面図である。図11(a)は、従来技術であるスクリーン印刷法による、ソーラーパネルSPの極細電極線の平面図で、BBは、バズバー(集積線)である。図11(b)は、図11(a)の、SP1の部分拡大平面図である。図11(b)に示すように、印刷された極細電極線SPAの両側部SPAa、SPAbは、スクリーン印刷法の欠点である、ギザギザ状を形成し、明らかに印刷精度が劣化している。
【0086】
図12は、本発明のオフセット印刷装置、印刷方法による、ソーラーパネルGPの平面図である。図12(a)は、本発明のオフセット印刷装置、印刷方法による、ソーラーパネルGPの極細電極線の平面図で、BBは、バズバー(集積線)である。図12(b)は、図12(a)の、GP1の部分拡大平面図で、同図に示すように、印刷された極細電極線GPAの両側部GPAa、GPAbは、極めて精度よく直線状に印刷され、その最大誤差は3μmである。
【符号の説明】
【0087】
A、A−1,A−2,A−3,A−4 印刷ユニット
1、1−1,1−2,1−3,1−4 印刷用凹版
4,4−1,4−2,4−3,4−4 凹条
2,2−1,2−2,2−3,2−4 印刷用ブランケット
3 被印刷物
5 印刷パターン
L 線
5L1 第1層(線の第1層)
5L2 第2層(線の第2層)
5L3 第3層(線の第3層)
5L4 第4層(線の第4層)
6,6−1,6−2,6−3,6−4 インク供給槽
7,7−1,7−2,7−3,7−4 インク供給ローラ
8,8−1,8−2,8−3,8−4 ブレード
9,9−1,9−2,9 −3,9−4 加圧用ローラ
10,10−1,10−2,10−3,10−4 クリーニングローラー
12,12−1,12−2,12−3,12−4 乾燥装置
13,13−1,13−2,13−3,13−4 移行手段
L 線
【技術分野】
【0001】
本発明は、被印刷物に、従来よりも極めて微小線幅であってアスペクト比の大きな線を有する印刷パターン線を高速・大量印刷して、安価に捜供することが可能な装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、ディスプレイパネル用基板、またはソーラーパネル用基板は、大型化や薄型化が進んでおり、微小線幅であってアスペクト比の大きな線を有する印刷パターンを高速・大量印刷して、安価に捜供する技術がクローズアップされてきている。
【0003】
微小線幅であってアスペクト比の大きな線を有する印刷パターンを印刷方法として、従来はフォトリソグラフィー法(以下、フォトリソ法とも略す。)、スクリーン印刷法や凹版オフセット印刷法等が行われている。
【0004】
上記フォトリソ法は、基板の背面全体に印刷インクとしての感光性銀ペーストを所定の厚みにコーティングして、乾燥・露光・現像にて所定のパターンを形成したり、感光性銀テープを基板の全面に貼付して、露光・現像l±よって所定のパターンを形成したりする方法である(例えば特開2002−245931号公報における従来の技術の項参照)。
【0005】
またスクリーン印刷法は、周辺を版枠に固定されかつ転写すべき所定のパターンに対応したメッシュ状の開口部を有するスクリーンマスクにペースト状の印刷インクを供給し、それをゴム製のスキージ等で掻いて開口部から下方へ押し出し、基板表面に所定のパターンを転写・印刷するものである(例えば特開2000−26034号公報参照)。
【0006】
さらに凹版オフセット印刷法は、ペースト状の導電性インキを平板状凹版の凹部に充填した後、凹部内の印刷インクを印刷用ブランケット表面へ転移させ、次いで該ブランケット表面のインクパターンを、ガラス製または合成樹脂フイルム製の被印刷物の表面に転移させて印刷パターンを形成し、その後に該パターンを乾燥させて基板上に導電牲バターンを形成し、被印刷物とするものである(例えば上記特開2002−245931号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−245931号公報
【特許文献2】特開2000−26034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、まず上記フォトリソ法では、現像処理時に除去される銀ペーストの量が非常に多いし、その回収・再利用工程にコストがかかり、経済性に難点があり、この銀ペーストの利用率の低さが製造コストを上昇させる原因にもなっている。また露光・現像エッチング装置の大型化もコスト面で不利であるし、それに加えて現像処理による有害廃液が多量に生じて環境悪化の問題点もあり、その対策費の負担も経済性に悪影響を及ぼしている。
【0009】
近時の主流であるスクリーン印刷法では、スキージでスクリーン上からインクを押し出すため、スクリーンを構成する縦横糸の太さに限界があり、パターン形状の忠実な再現が困難であるし、スクリーンやスキージの磨耗で印刷精度が低下したり、ゴム製のスキージを頻繁に交換する必要があった。また、スキージのゴム硬度が70〜80度で、被印刷物が薄くて堅い脆弱である場合は、スキージの押圧力で、該被印刷物が割れるという欠点があった。
【0010】
さらにスクリーンは、周縁部だけで保持されているため、スクリーン自体の重みで垂れ下がったり、スキージにより加わる力が中央部と周辺部分に差があって、メッシュの糸が伸びたり歪みが生じたりして、同一被印刷物上で印刷精度が異なることがあり、中央部近傍のみを良品とするため、サイズの大きい被印刷物の製造は難しかった。
【0011】
さらにメッシュの目詰り防止のため、インクの乾燥速度を早くできないし、スクリーンやスキージが上下・左右の往復直線移動をしているので、どうしても生産速度が遅くなり、これがプラズマテレビその他のプラズマディスプレイをもつ機器の価格を高留まりさせる一因となっている。
【0012】
上記従来の凹版オフセット印刷法では、スクリーン印刷法に対して微細パターンを比較的安価に製造可能としているが、装置の動作に問題点が残っている。即ち、ペースト状の印刷インクを平板状凹版から印刷用ブランケットへ転移させて、該ブランケットから被印刷物上へ転写させる工程で、ブランケットを横移動させ、下降させ、該被印刷物表面に圧接させて横移動させ、その後に上昇させ元の位置まで横移動させる、という直線往復動作を繰り返し行っている(例えば上記特開2002−245931号公報の図2参照)。
【0013】
この直線往復運動のために、印刷インクが凹版から上記基板表面へ転写されるまでの間、およびその後の工程で無用な時間がかかることになり,連続高速生産を行う上での障害となっている。また該直線往復動作は間欠移動の繰り返しであるから、各位置決め精度も問題となる等の問題点がある。また、従来の凹版オフセット印刷法において使用される転写用ブランケットは、その硬度も40〜80度と高く、被印刷物に接触し、印圧がかかるときその圧力により、前印刷の印刷皮膜を破壊し、既定のパターン、線幅を押し広げてしまい同一パターンを高く積み重ねることはできなかった。
【0014】
本発明は、上記従来のスクリーン印刷法や凹版オフセット印刷装置、印刷方法及び印刷物がもつ問題点の解消を課題として鋭意研究してきたものである。即ち、本発明の第1の目的は、印刷用の極めて微細で線の厚いパターンを、高速かつ連続に印刷可能として、被印刷物を大量かつ安価に提供可能とする装置、印刷方法及び印刷物を提供することにあり、第2の目的は、異なる材質のインク又はペーストを組み合わせることにより、一つの印刷構造に異なる性質を付加することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
[発明1]印刷パターン5に対応した凹条4をもつ印刷用凹版1と、上記凹条4内に充填された印刷インクを、インクパターンとして転移される印刷用ブランケツト2を備え、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて、所定の印刷パターン5を形成する印刷ユニットAを備えたオフセット印刷装置であり、上記印刷ユニットAの数を、多層印刷の印刷回数nと同数とし、n台の印刷ユニットA−1,A−2,…,A−nを連続状に配置し、該各印刷ユニットA−1,A−2,…の各印刷用凹版1−1,1−2,…,1−nおよび各印刷用ブランケット2−1,2−2.…,2−nを回転式とし、かつ該各印刷ユニットA−l,A−2,…,A−nの各印刷用凹版1−1,1−2,…,1−nに、印刷パターン5に対応した、それぞれが同一の凹条4−1,4−2,…,4−nを形成してあることを特徴とするオフセット印刷装置。ここに、nは、2以上の自然数を表す。
【0016】
[発明2]印刷パターン5に対応した凹条4をもつ印刷用凹版1と、上記凹条4内に充填された印刷インクを、インクパターンとして転移される印刷用ブランケット2を備え、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて、所定の印刷パターン5を形成する凹版オフセット式印刷ユニットAを備えた凹版印装置であり、多層印刷の印刷回数nと同数の4台の印刷ユニットA−1,A−2,…を連続状に配置し、該各印刷ユニットA−1,A−2,…の各印刷用凹版1−1,1−2,…および各印刷用ブランケット2−1,2−2,…を回転式とし、かつ、かつ該各印刷ユニットA−1,A−2,…の各印刷用凹版1−1,1−2,…に、印刷パターン5に対応した、それぞれが同一の凹条4−1,4−2,…を形成してあることを特徴とする[発明1]に記載のオフセット印装置。ここに、nは、自然数であって4である。
【0017】
[発明3]凹版印装置によって、被印刷物3に印刷された印刷パターン5の線の線幅Bが5μm〜60μmであり、かつアスペクト比ARが0.5〜2.0であることを特徴とする[発明1]または[発明2]に記載のオフセット印刷装置。
【0018】
アスペクト比AR=H/B(H)……(1)
ここに、B: 線高(μm)
[発明4]印刷用ブランケットのゴム硬度が、2度から10度であることを特徴とする[発明1]〜[発明3]のうちの一つに記載のオフセット印刷装置。
【0019】
[発明5]被印刷物が ディスプレイパネル用基板又はソーラーパネル用基板であることを特徴とする[発明1]〜[発明4]のうちの一つに記載のオフセット印刷装置。
【0020】
[発明6]印刷パターン5に対応した凹条4をもつ印刷用凹版1と、上記凹条4内に充填された印刷インクを、インクパターンとして転移される印刷用ブランケツト2を備え、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて、所定の印刷パターン5を形成する印刷ユニットAを備えたオフセット印刷装置があり、当該印刷ユニットAの数を、多層印刷の印刷回数nと同数とし、n台の印刷ユニットA−1,A−2,…,A−nを連続状に配置し、該各印刷ユニットA−1,A−2,…の各印刷用凹版1−1,1−2,…,1−nおよび各印刷用ブランケット2−1,2−2.…,2−nを回転式とし、かつ該各印刷ユニットA−l,A−2,…,A−nの各印刷用凹版1−1,1−2,…,1−nに、印刷パターン5に対応した、それぞれが同一の凹条4−1,4−2,…,4−nを形成してあり、
印刷ユニットA−1において、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて第1層を形成し、
印刷ユニットA−2において、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて第2層を形成し、以下、順次繰り返し、
印刷ユニットA−nにおいて、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて第n層を形成して、
被印刷物3に印刷された印刷パターン5の線の線幅Bが5μm〜60μmであり、第1層、第2層、…第n層のn層構造であることを特徴とするオフセット印刷方法。ここに、nは、2以上の自然数を表す。
【0021】
アスペクト比AR=H/B(H)……(1)
ここに、B:線高(μm)
[発明7]印刷パターン5に対応した凹条4をもつ印刷用凹版1と、上記凹条4内に充填された印刷インクを、インクパターンとして転移される印刷用ブランケット2を備え、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて、所定の印刷パターン5を形成する印刷ユニットAを備えたオフセット印刷装置であり、多層印刷の印刷回数nと同数の4台の印刷ユニットA−1,A−2,…を連続状に配置し、該各印刷ユニットA−1,A−2,…の各印刷用凹版1−1,1−2,…および各印刷用ブランケット2−1,2−2,…を回転式とし、かつ、かつ該各印刷ユニットA−1,A−2,…の各印刷用凹版1−1,1−2,…に、印刷パターン5に対応した、それぞれが同一の凹条4−1,4−2,…を形成して、
印刷ユニットA−1において、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて第1層を形成し、
印刷ユニットA−2において、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて第2層を形成し、
印刷ユニットA−3において、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて第3層を形成し、
印刷ユニットA−4において、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて第4層を形成して、
被印刷物3に印刷された印刷パターン5の線の線幅Bが5μm〜60μmであり、第1層、第2層、第3層、第4層、…第n層のn層構造であることを特徴とするオフセット印刷方法。ここに、nは、自然数であって4である。
【0022】
[発明8]オフセット印刷装置によって、被印刷物3に印刷された印刷パターン5の線の線幅Bが5μm〜60μmであり、かつアスペクト比ARが0.5〜2.0であることを特徴とする[発明6]又は[発明7]に記載のオフセット印刷方法。
【0023】
アスペクト比AR=H/B(H)……(1)
ここに、B:線高(μm)
[発明9]印刷用ブランケットのゴム硬度が、2度から10度であることを特徴とする[発明6]〜[発明8]のうちの一つに記載のオフセット印刷方法。
【0024】
[発明10]被印刷物が ディスプレイパネル用基板又はソーラーパネル用基板であることを特徴とする[発明6]〜[発明9]のうちの一つに記載のオフセット印刷方法。
【0025】
[発明11]上記インクパターンを被印刷物3に転写し、60℃〜70℃の温風を当てて乾燥させること特徴とする[発明6]〜[発明10]のうちの一つに記載のオフセット印刷方法。
【0026】
[発明12]被印刷物3の表面に、オフセット印刷法により重ね印刷されて、印刷パターン5の線の線が、第1層,第2層,…第n層からなり、線幅Bが5μm〜60μmであり、かつアスペクト比ARが0.5〜2.0であることを特徴とする印刷物。ここに、nは、2以上の自然数を表す。
【0027】
アスペクト比AR=H/B(H)……(1)
ここに、B:線高(μm)
<用語の定義又は説明>
以下、本願特許請求の範囲、本願明細書において用いる用語の解釈上の疑義を解消するべく、以下用語の定義又は説明をすることとする。
○オフセット印刷法(凹版オフセット印刷法と)は、ペースト状の印刷インキを印刷用凹版1の凹部に充填した後、凹部内の印刷インクを印刷用ブランケット表面へ転移させ、次いで該ブランケット表面のインクパターンを、被印刷物の表面に転移させて印刷パターンを形成し、その後に該パターンを乾燥させる印刷方法である。
○印刷ユニットとは、印刷パターン5に対応した凹条4をもつ印刷用凹版1と、上記凹条4内に充填された印刷インクを、インクパターンとして転移される印刷用ブランケット2を備え、上記インクパターンを被印刷物3に転写し乾燥させて、所定の印刷パターン5を形成する凹版オフセット式印刷ユニットAを備えた凹版オフセット印刷装置である。
○印刷用凹版とは、印刷パターンに対応する部分が版材面より窪んでいる印刷版をいう。
○凹条とは、また該印刷用凹版1の各凹条4の形成は、例えばフォトリソグラフ法、エッチング法、高鋳法またはショットブラスト法等によるものとし、その深さや幅は目的とする印刷パターン5に応じて適宜設定すればよい。
○印刷用ブランケットとは、印刷用凹版1の凹条内に充填された印刷インクをインクパターン(図示略)として受け取り、次の被印刷物3上に転写するための転写ローラであり、円柱状または円筒状で回転式のものである。該ブランケット2は一般にゴム製でインク離型性に優れたものとし、表面層は例えばシリコンゴム、フッ素ゴムまたはフツソ樹脂の単独のもの、または混合物を用いるのがよい。
○印刷用ブランケットのゴム硬度について
印刷用ブランケットのゴム硬度は、線幅が小さくて、アスペクト比が大きな線を有する印刷パターンを印刷すべく種々試行錯誤したことによって、印刷用ブランケットのゴム硬度は2度から10度程度が望ましいことが確認された。
これにより、一回あたりの印刷で、印刷用ブランケットの硬度を上記範囲とすることによって、下記のような当業者が予期できない顕著な効果を発揮することができる。
本願発明の凹版オフセット重ね印刷方法において、一回の印刷において、線幅Bが10μm〜20μmであり、かつアスペクト比ARが0.3〜0.5である線からなる印刷パターンを印刷することが可能となる。
これにより、重ね印刷のための印刷ユニットを減らすことができ、印刷コスト、印刷時間短縮の効果が奏される。
○被印刷物とは、合成樹脂フイルム製のものもあるが、ガラス製のものなら、例えばソーダライムガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス、低アルカリガラスまたは低膨張ガラス等が望ましいが、乾燥時の変形が少ないことが必要で、低アルカリガラスは歪み点が高くて最適である。
○印刷パターンとは、被印刷物に印刷する線画部分をいう。印刷パターン5は線から線Lから構成される。
○印刷物とは、印刷パターンが印刷された被印刷物をいう。
○インク供給槽とは、回転する印刷用凹版1の周面に供給する印刷インクを貯蔵するタンクをいう。
○ブレードとは、インク供給槽6からの印刷インクが回転する印刷用凹版1に供給されて、その周面に形成された凹条4内へ充填されると共に、回転により、印刷用凹版1周面の余分なインクを掻き落とすための手段をいう。
○加圧用ローラとは、該印刷用ブランケット2−2周面のインクパターンは、被印刷物3が該印刷用ブランケット2−2と加圧用ローラ9−2間を通過する際に、該被印刷物3に圧力をかける手段である。
○乾燥装置とは、該印刷用ブランケット2−2周面のインクパターンは、被印刷物3が該印刷用ブランケット2−2と加圧用ローラ9−2間を通過する際に、該被印刷物3の表面にそっくりそのままで転写された印刷パターンを乾燥させるための手段である。
○乾燥とは、上記乾燥装置のブロアーから吹き付けられる60℃〜70℃の温風によって、印刷パターンを構成する線の第1層、第2層、…第n層の表面の被覆膜を形成することをいう。この被覆膜によって、被印刷物に印刷パターンが印刷された直後は、インクの粘度は3万センチポアズであるが、各層の表面が被覆膜を形成するのでアスペクト比が大きな線の重ね印刷が容易にできることとなった。
【0028】
すなわち、被覆膜によって、被覆された各層のインクが流出するのを防止すると共に、多層印刷する際に被覆膜にインクが付着力により付着することによって、アスペクト比が大きな線の重ね印刷が容易にできることとなった。
○移行手段とは、被印刷物3を、順次に本発明の凹版印装置へ送り込み、該被印刷物3を、移行手段のベルト13またはローラにて、同期的に回転する印刷用ブランケット2と加圧ローラ10間を通過させるための手段をいう。
【0029】
<符号の説明>
以下、本願特許請求の範囲、本願明細書において用いる用語の理解容易を図るべく、以下用符号の説明をすることとする。
○本発明で用いる構成要件(物)に関する符号は以下の通りとする。
A 印刷ユニット
1 印刷用凹版
4 凹条
2 印刷用ブランケット
3 被印刷物
5 印刷パターン
6 インク供給槽
7 インク供給ローラ
8 ブレード
9 加圧用ローラ
10 クリーニングローラー
12 乾燥装置
13 移行手段
○符号のサフィクスについて、 印刷ユニットAをn台並べる。上流から順にA−1,A−2,…A−nとする。サフィクス「−i」は、上流からi番目の印刷ユニットを表す。本発明で用いる物に関する符号をXとすれば、X−iは、i番目の印刷ユニットA−iを構成する構成要件(物)を表す。例えば、2−4は、4番目の印刷ユニットA−4を構成する印刷用ブランケットを表す。
【発明の効果】
【0030】
以上から明らかな如く、本発明に係る凹版オフセット印刷装置、印刷方法及び印刷物によれば、印刷用の極めて微細線幅であってアスペクト比の大きな線を有する印刷パターンを、高速かつ連続的に印刷可能として、被印刷物を大量かつ安価に提供可能とする装置、印刷方法及び印刷物を提供することができ、本発明の目的を達成できた。
【0031】
本発明においては、各印刷ユニットの各印刷用凹版や印刷用ブランケット等が回転式であるから、それらの回転に伴って印刷インクが順次に転移されていくと共に、被印刷物にもそのまま転写・印刷されていく。そのため、スクリーン印刷法や従来の凹版オフセット印刷法で直線往復勤を繰り返し印刷を行うものと異なり、本発明は、長期的に連続して高速生産することができ、生産性・経済性に優れるという顕著な効果を奏する。
【0032】
同じく、本発明においては、各印刷ユニットの印刷用凹版や印刷用ブランケット等が回転式であることで、印刷インクが印刷用凹版から印刷用ブランケットを経て被印刷物に印刷される間に、必要なら容易に予備乾燥を加えることができるし、印刷ユニットを通過中や後でも乾燥工程を容易に加えることができる。これにより、本発明は、乾燥時間が全体的に短縮化でき、この面でもやはり高速生産することができるという顕著な効果を奏する。
【0033】
さらに、本発明においては、上記の如く各印刷ユニットの各印刷用凹版や印刷用プチツケット等が回転式であることで、各印刷用凹版に供給された印刷インクが印刷物に印刷されるまでの間に、外気に触れる時間が大幅に短縮されるから、この面からも、本発明は、より高精度な印刷をすることがきるという顕著な効果を奏する。
【0034】
印刷用の極めて微細線幅であってアスペクト比の大きな線を有する印刷パターンを印刷できる技術を、ソーラーパネル用基板に応用することにより、ソーラーパネル用の極細電極線(従来はスクリーン印刷法によって印刷されていた。)を、本発明のオフセット印刷用の極めて微細線幅であってアスペクト比の大きな線を有する印刷パターンをソーラーパネル用基板に印刷する可能となったことにより、ソーラーパネル用基板の全体に占める電極線面積が少なくなり、それに比例して太陽光が照射される範囲が拡大することによって、ソーラーパネル用基板のソーラー発電効率が大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る凹版オフセット印刷装置の実施例を示す縦断正面図である。
【図2】本発明に係る凹版オフセット印刷装置の1つの印刷ユニットの実施例を示す縦断正面図である。
【図3】図1における印刷ユニットAl〜Anの印刷用凹版での凹条を示す展開図である。
【図4】印刷ユニットAで印刷パターンを印刷した印刷物 の平面図である。
【図5】印刷ユニットAで印刷パターンを印刷した印刷物の部分拡大図である。
【図6】凹条4の断面図である。
【図7】本発明による、第1実験データの極細線印刷パターンの一部を示す三次元表示図である。
【図8】図7に示す上記三次元表示図の高度差計測グラフである。
【図9】本発明による、第2実験データの極細線印刷パターンの一部を示す三次元表示図である。
【図10】図9に示す上記三次元表示図の高度差計測グラフである。
【図11】従来技術であるスクリーン印刷法による、ソーラーパネルSPの平面図である。
【図12】本発明のオフセット印刷装置、印刷方法による、ソーラーパネルGPの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[発明の実施の形態]
上記構成において、被印刷物3は、例えばガラス基板が多いが、合成樹脂フイルム製のものもある。印刷パターン5とは、微細な線を有するメッシュ状の印刷パターン自体の他に、パネルの四辺の縁枠のパターンも含む。
【0037】
また、本願発明においては、該印刷パターン5に対応する凹条4の形状については、凹条4−1、凹条4−2、…、凹条4−nのパターンは全て同じである。(例えば図3ないし図6参照)。
【0038】
凹条4−1、凹条4−2、凹条4−3、及び凹条4−4のパターンを全て同じすることによって、被印刷物3に線Lの第1層5L1、第2層5L2、…、第n層が転写・印刷される。すなわち、被印刷物3が順次印刷ユニットA−1,A−2,…、A−nを順次移行していくと共に、被印刷物3に線Lの第1層5L1、第2層5L2、第3層5L3、及び第4層5L4が順次n層重ねで印刷される。(図3ないし図6参照)。
【0039】
印刷インクは、被印刷物の印刷用ペーストとして用いられているものであり、金属粉末とバインダ樹脂とを溶剤中に分散または溶解させて印刷用ペースト状としたものである。上記金属粉未としては、例えば銀、銅、金、ニッケル、アルミニウム等の単体または複合したもの、またバインダ樹脂としては、例えばポリエステルーメラミン樹脂のような熱硬化性樹脂、アクリル樹脂のような紫外線硬化性樹脂、ポリエステル樹脂のような熱可塑性の樹脂等を用いればよい。
【0040】
回転式の印刷用凹版1は、印刷パターン5を凹条4として周面に形成した原版であり、表面が平滑で円柱状または円筒状としたものである。ここで印刷パターン5とは、上記の如く微細な条によるメッシュ状のものの他に、四辺の縁枠用のものを含む(上記図3ないし図6参照)。
【0041】
上記印刷用凹版1の素材は、例えばガラス製や金属製のもの等がある。ガラス製のものとしては、例えばソーダライムガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラスまたは低膨張ガラス等で、樹脂製のものとしては、例えばフッ素樹脂、ポリカーボネートまたはポリエステル樹脂等、金属製のものとしでは、例えばステンレス、銅、ニッケルまたは低膨張合金アンバー等とすればよい。
【0042】
また該印刷用凹版1の各凹条4の形成は、例えばフォトリソグラフ法、エッチング法、高鋳法またはショットブラスト法等によるものとし、その深さや幅は目的とする印刷パターン5に応じて適宜設定すればよい。
【0043】
印刷用ブランケット2は、上記印刷用凹版1の凹条4内に充填された印刷インクをインクパターン(図示略)として受け取り、次の被印刷物3上に転写するための転写ローラであり、円柱状または円筒状で回転式のものである。該ブランケット2は、一般にゴム製でインク離型性に優れたものとし、表面層は、例えばシリコンゴム、フッ素ゴムまたはフツソ樹脂の単独のもの、または混合物を用いるのがよい。
【0044】
被印刷物3は、合成樹脂フイルム製のものもあるが、ガラス製のものなら例えば例えばソーダライムガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス、低アルカリガラスまたは低膨張ガラス等が望ましいが、乾燥時の変形が少ないことが必要で、低アルカリガラスは歪み点が高くて最適である。
【0045】
各凹版オフセット印刷ユニットAには、印刷用凹版1や印刷用ブランケット2の他に、一般のオフセット凹版オフセット印刷装置と同様に、インク供給槽6、ブレード(スクレーパー,スキージー)8、インク回収トレイ(図示略)、加圧用ローラ9、各ローラの回転駆動装置(図示略)、クリーニングローラ10、乾燥装置12を有している。
【0046】
なお、被印刷物3の移行手段13は、ガラス製基板の場合は、ベルトを水平状に連続的に配置すればよく(例えば図1、図2参照)、また湾曲して連続移行可能な合成樹脂フイルム製の場合は、図示は省略するが、上下位置にも配置したローラ間を移行させるようにすればよい。
【0047】
本発明の上記凹版オフセット印刷装置の作動状態は、次のようになる。
【0048】
被印刷物3を、順次に本発明の凹版オフセット印刷装置A−1〜 A−nへ送り込む。該被印刷物3は移行手段13のベルトまたはローラにて、各凹版オフセット印刷ユニットA−1, A−2,…と順次に移行して、同期的に回転する印刷用ブランケット2と加圧ローラ10間を通過する(上記図1,図2参照)。
【0049】
各印刷ユニットAにおいては、インク供給槽6から印刷インクが回転する印刷用凹版1の周面に供給され、該周面に形成された凹条4内に、即ち印刷パターン5(例えば上記図5参照)に対応する形状の凹条4内に、上記印刷インクが充填される。該印刷用凹版1周面には、回転する印刷用ブランケット2の周面が当接しているので、上記凹条4内の印刷インクは印刷用ブランケット2周面に、そっくりそのままインクパターンとして転移される。
【0050】
そして該印刷用ブランケット2は回転しているので、加圧用ローラ9との間を通過してくる上記基板3に周面が当接することにより、上記部分的なインクパターンがそっくりそのままで基板3表面に転写される。後は乾燥装置で乾燥されながら次の工程へ移行していく。複数の各印刷ユニットA−1, A−2,…を通過する毎に上記の作動が行われるので、上記基板3表面には、印刷パターン5を順次に第1層5L1,第2層5L1,…の凹版印刷が行われて、線Lの線幅Bが5μm〜60μmであり、かつアスペクト比ARが0.5〜2.0である線を有する印刷パターン5が形成されることになる。
【0051】
上記の作動は、以下に示す発明2の印刷装置の説明によって、一層明確になる。
【0052】
まず、1番目のオフセット印刷ユニットA−lでは、インク供給槽6−1からの印刷インクが回転する印刷用凹版1−1に供給されて、その周面に形成された微細な凹条4−1(例えば図3参照)内へ充填される。回転により、印刷用凹版1−1周面の余分なインクはブレード8−1で掻き落とされ、上記微細な凹条4−1内の印刷インクは、該印刷用凹版1−2と当接しながら同期的に回転する印刷用ブランケット2−1の周面に、インクパターンとして転移される。
【0053】
回転する該印刷用ブランケット2−1の周面に一旦転移したインクパターンは、上記基板3が該印刷用ブランケット2−1と加圧用ローラ9−1間を通過する際に、該被印刷物3の表面にそっくりそのまま転写される。これで、該被印刷物3上に印刷パターン5の微細な線の第1層5L1が形成され(例えば図5参照)、その後該被印刷物3が次の印刷ユニットA2へ向かう途中で、乾燥装置12−1で乾燥されて、線Lの第1層5L1の表面に被覆膜SMが形成される。
【0054】
2番目の凹版オフセット印刷ユニットA2でも、インク供給槽6−2からの印刷インクが回転する印刷用凹版1−2に供給されて、その周面に形成された上記一方向へ平行な多数本の微細な凹条4−1と直交状の他方へ平行な多教本の微細な凹条4−2(例えば図6参照)内へ充填される。続く回転により、周面の余分なインクは掻き落とされ上記微細な凹条4−2内の印刷インクは、該印刷用凹版1−2と当接しながら同期的に回転する印刷用ブランケット2−2の周面に、インクパターンとして転移される。
【0055】
該印刷用ブランケット2−2周面のインクパターンは、被印刷物3が該印刷用ブランケット2−2と加圧用ローラ9−2間を通過する際に、該被印刷物3の裏面にそっくりそのままで転写される。これで該被印刷物3表面に、凹条4−2も形成されて(例えば図6参照)、その後に該被印刷物3が次の印刷ユニットA−3へ向かう途中で、乾燥装置12−2で乾燥されて、印刷パターンの第2層5L2が形成される。
【0056】
3番目の凹版オフセット印刷ユニットA−3でも、インク供給槽6−3からの印刷インクが、回転する印刷用凹版1−3に供給されて、凹条4−3(例えば図6参照)内へ充填される。続く回転で周面の余分なインクは掻き落とされ、上記縁枠用の凹条4−3内の印刷インクは、該印刷用凹版1−3と当接しながら同期的に回転する印刷用ブランケット2−3周面に、インクパターンとして転写される。
【0057】
該印刷用ブランケット2−3周面のインクパターンは、被印刷物3が該印刷用ブランケット2−3と加圧用ローラ9−3間を通過する際に、基板3の表面にそっくりそのまま転写される。これで該被印刷物3表面に、印刷パターン5の第3層5L3が形成され(例えば図5参照)、その後に該被印刷物3が次の印刷ユニットA4へ向かう途中で、乾燥装置12−3で乾燥されて、印刷パターンの第三層が形成される。
【0058】
そして、4番目の凹版オフセット印刷ユニットA4でも、インク供給槽6−4からの印刷インクが、回転する印刷用凹版1−4に供給されて、その周面に形成された凹条4−4(例えば図6参照)内へ充填される。続く回転で周面の余分なインクは掻き落とされ、上記線枠用の凹条4−4内の印刷インクは、該印刷用凹版1−4と当接しながら同期的に回転する印刷用ブランケット2−4周面に、インクパターンとして転写される。
【0059】
該印刷用ブランケット2−4周面のインクパターンは、上記印刷物3が該印刷用ブランケット2−4と加圧用ローラ4−4間を通過する際に、該被印刷物3の表面にそっくりそのまま転写される。これで該被印刷物3表面に、印刷パターン5の線Lの第4層5L4が形成され(例え図10事照)、その後に乾燥装置12−3で乾燥されて線Lの第4層5L4の被覆膜が形成され、被印刷物の印刷パターン5がほぼ完成することになる(例えば上記図4参照)。次いで、後処理工程へ移行していく。
【0060】
なお、nが4より大きい場合は、さらに同じ工程を繰り返して、第n層の線を被印刷物に形成させるまで続ける。
【0061】
上記本発明に係る凹版オフセット印刷装置は、凹版のオフセット印刷によるものであるから、印刷インクは極めて微細な線で印刷パターン5が形成されると共に、同じ箇所を繰り返し重ね印刷をして、必要な厚みをもつ印刷パターン5が印刷されることになる。
【0062】
また各印刷ユニットAでは、各印刷用凹版1や印刷用ブランケット2等が回転式であるから、いずれの工程でも印刷インクはその回転に伴って順次に転移・転写されていくと共に、回転する各印刷用ブランケット2周面が上記印刷物3に当接する際に、印刷パターン5が分割された部分毎に順次に印刷されていく。そのため、スクリーン印刷法や従来の凹版オフセット印刷法で直線往復動を繰り返し印刷を行うものと異なり、長期的に連続して高速生産されることなる。
【0063】
さらに、上記の如く各印刷ユニットAで各印刷用凹版1や印刷用ブランケット2等が回転式であるため、印刷インク6は印刷用凹版1から印刷用ブランケット2を経て上記印刷物3に印刷される間で、必要なら容易に予備乾燥を加えられるし、かつどの印刷ユニットAを通過後でも乾燥工程を加えることが容易となっている。これにより、乾燥時間が全体的に短縮化されるから、この面でもやはり高速生産することが可能となっている。
【0064】
しかも、上記の如く印刷パターン5を複数に分割した場合の数に対応した印刷ユニットAを連続的に配置してあり、上記印刷物3が各印刷ユニットを順次に通過する際に、分割した数の各部分毎にそれに対応した印刷用凹版と印刷用ブランケット2を介して順次に印刷していくものである。そのため、これにより形成される印刷パターン5は、分割した場合の各部分毎に言わば流れ作業的に順次に印刷されており、この面でも被印刷物の連続した高速生産を行える。
【0065】
なお、上記の如く各凹版オフセット印刷ユニットAの各印刷用凹版1や印刷用ブラツケット2等が回転式であることは、各印刷用凹版1に供結された印刷インクが上記印刷基板3に印刷されるまでの間に、外気に触れる時間が大幅に短締されるから、より高精度な印刷がされることになる。
【0066】
[実施例]
図1ないし図6は、本発明に係る凹版オフセット印刷装置の内、上記の実施例を示すものであり、被印刷物3としてガラス基板を用いた場合である。その内の図1は全体の概略を示し、図2は印刷ユニットAを示し、ここでは図3ないし図6で明らかなように、印刷パターン5を4分割して印刷する場合であって、また図1で示す如く、凹版オフセット式の印刷ユニットAも4機を連続状に並べて設けてある。
【0067】
まず1番目の印刷ユニットAlにおいては、ここでは印刷パターン5の内、一方向へ平行な多数本の微細な条を形成するものである。インク供給槽6−1には、2番目以下のものも同様であるが、印刷インク内にインク供給ローラ7−1が浸漬しており、該ローラ7−1が回転する印刷用凹版1−1の周面に当接して、印刷インクを供給するようにしてある。ここでの印刷インクは、2番目以下のものも同様であるが、バインダとしてのアクリル樹脂中に銀の微粉末を分散させて、印刷用ペースト状にしたものを用いている。
【0068】
ここでの印刷用凹版1−1は、銅製の円柱状のものとしてあり、その周面には図3で示すように、被印刷物の印刷パターン5に対応する微細凹条4−1を形成してある。ここでは、エッチング法により線幅が約17μmに形成してあり、該凹条4−1内に上記インク供給ローラ6−1から印刷インクが供給・充填されるようにしてある。
【0069】
該印刷用凹版1−1の回転方向位置には、その周面を掻くようにここではセラミックコートしたステンレス製ブレード8−1を、ブレードホルダーにて設けてあって、印刷インクを凹条4−1内へ充分に充填すると共に、余分に付着した印刷インクを掻き取り、元のインク供給槽へ戻すようにしてある。
【0070】
印刷用ブランケット2−1は、円柱状で回転する転写ローラで、ここでは表面層をシリコンゴム製のものを用いており、上記印刷用凹版1−1の周面に当接しながら共に回転することで、印刷用凹版1−1の凹条4−1内に充填された印刷インクを、そっくりそのままインクパターンとして転移されるようにしてある。
【0071】
被印刷物3は、ここではガラス基板であって低アルカリガラスを用いており、移行手段としてのここでは各ベルト13−1,13−2,13−3,13−4にて各印刷ユニットA−1,A−2,A−3,A−4ヘ順次に移行されるが、上記印刷用ブランケット2−1と下部の加圧ローラ9−1との間を通過する際に、表面に上記印刷用ブランケット2−1が回転しながら当接して、周面のインクパターンをそっくりそのまま転写するようにしてある。
【0072】
乾燥装置12−1は、ここでは紫外線照射装置を用いており、上記被印刷物3が次の印刷ユニットA−2へ向かう途中に設けてあり、該被印刷物3に転写されたパターンから溶剤を揮発させ乾燥・硬化させることで、印刷パターンの第1層5L1を形成するようにしてある。
【0073】
次に2番目の印刷ユニットA−2は、上記第1番目の印刷ユニットA−lに連続状に設置して、上記印刷物3が続いて移行されるようにしてある。ここでの回転式の印刷用凹版1−2周面には、図4で示すように、印刷パターン5が設けられており、印刷ユニットA−lにおいて、第1番目で形成された第1層5L1の上に第2層5L2が形成される。
【0074】
インク供給槽6−2,ブレード8−2,回転式の印刷用ブランケット2−2,加圧用ローラ9−2,乾燥装置12−2,移行手段としてのベルト13−2、クリーニングローラー10−2等は、上記第1番目の印刷ユニットA−lと同じものを下流に設けてある。これにより、上記第1番目の印刷ユニットA−lで印刷パターンの第1層5L1が形成された上記印刷物3(図5参照)に、第2層5L2が重ね印刷されて、乾燥・硬化される(上記図5参照)。
【0075】
次に3番目の印刷ユニットA3には、上記第2番目の印刷ユニットA2を通過後の上記印刷物8が続いて移行されるように連続状に設置してある。ここでの回転式の印刷用凹版1−3周面には、印刷パターンに対応する凹条4−3が形成してある。
【0076】
ここでも、インク供給槽6−3,ブレード8−3,回転式の印刷用ブランケット2−3,加圧用ローラ9−3,乾燥装置12−3,移行手段としてのベルト13−3、クリーニングローラー10−3等は上記第1番目の印刷ユニットA−lと同じものを下流に設けである。これにより、上記第1番目と2番目の工程で形成された第1層5L1と第2層5L2の上に、第3層5L3が重ね印刷されて、乾燥・硬化される(上記図5参照)。
【0077】
次に4番目の印刷ユニットA−4は、上記3番目の印刷ユニットA3を通過後の上記印刷物3が続いて移行されるように連続状に設置してある。ここでの回転式の印刷用凹版1−4周面には、図5で示すように、上記3番目の印刷ユニットA−3で形成された第1層5L1、第2層5L2、第3層5L3の上に、第4層5L4を形成するために、凹条4−4が形成されている。
【0078】
ここでも、インク供給槽6−4,ブレード8−4,回転式の印刷用ブランケット2−4,加圧用ローラ9−4,乾燥装置12−4,移行手段としてのベルト13−4,クリーニングローラー10−4等は上記第1番目の印刷ユニットA−lと同じものを、同じように設けてある。これにより、上記第3番目の工程で形成された一つの対向する縁枠4−3とは別に、印刷パターンの第4層5L4が印刷・乾燥・硬化される。その後は必要な後工程へ移行されて、線の線幅Bが5μm〜60μmであり、かつアスペクト比ARが0.5〜2.0である線を有する印刷物が完成することになる。
【0079】
この実施例の装置により、被印刷物にプラズマディスプレイ用パターンを形成する印刷試験を、毎分6メートルの移行速度で行ったところ、線幅が17μm、アスペクト比が1.0の4層の線からなるパターンを連続3000枚まで印刷しても、その最大誤差は僅か3μmに収まっており、本発明の装置によりプラズマディスプレイ用の微細なパターン等を連続して高速印刷が可能なことが検証された。
【0080】
なお上記実施例は、被印刷物3がガラス基板の場合であるが、合成樹脂フイルム製の場合は、図示は省略するが装置の設置面積を小さくするために,一般的な連続状のフイルムテープに加工処理するのと同様に、ローラにより上下方向へも移行させながら処理するようにしておく。
【0081】
図7は、本発明による、第1実験データの極細線印刷パターンの一部を示す三次元表示図である。
【0082】
図8は、図7に示す上記三次元表示図の高度差計測グラフである。図8(a)、図8(b)は、本発明の実施例のデータの1例をそれぞれ表す。図8(a)は、図7に示す上記三次元表示図の高度差計測グラフのデータ例であり、そのアスペクト比は、50.7/56.2=0.90である。また、図8(b)は、図7に示す上記三次元表示図の高度差計測グラフの他のテータ例であり、そのアスペクト比は、50.7/78.1=0.65である。
【0083】
図9は、本発明による、第2実験データの極細線印刷パターンの一部を示す三次元表示図である。
【0084】
図10は、図9に示す上記三次元表示図の高度差計測グラフである。図10(a)、図10(b)は、本発明の実施例のデータの1例をそれぞれ表す。図10(a)は、図9に示す上記三次元表示図の高度差計測グラフのデータ例であり、そのアスペクト比は、53.4/48.0=1.11である。また、図10(b)は、図9に示す上記三次元表示図の高度差計測グラフの他のデータ例であり、そのアスペクト比は、53.4/75.2=0.71である。
【0085】
図11は、従来技術であるスクリーン印刷法による、ソーラーパネルSPの平面図である。図11(a)は、従来技術であるスクリーン印刷法による、ソーラーパネルSPの極細電極線の平面図で、BBは、バズバー(集積線)である。図11(b)は、図11(a)の、SP1の部分拡大平面図である。図11(b)に示すように、印刷された極細電極線SPAの両側部SPAa、SPAbは、スクリーン印刷法の欠点である、ギザギザ状を形成し、明らかに印刷精度が劣化している。
【0086】
図12は、本発明のオフセット印刷装置、印刷方法による、ソーラーパネルGPの平面図である。図12(a)は、本発明のオフセット印刷装置、印刷方法による、ソーラーパネルGPの極細電極線の平面図で、BBは、バズバー(集積線)である。図12(b)は、図12(a)の、GP1の部分拡大平面図で、同図に示すように、印刷された極細電極線GPAの両側部GPAa、GPAbは、極めて精度よく直線状に印刷され、その最大誤差は3μmである。
【符号の説明】
【0087】
A、A−1,A−2,A−3,A−4 印刷ユニット
1、1−1,1−2,1−3,1−4 印刷用凹版
4,4−1,4−2,4−3,4−4 凹条
2,2−1,2−2,2−3,2−4 印刷用ブランケット
3 被印刷物
5 印刷パターン
L 線
5L1 第1層(線の第1層)
5L2 第2層(線の第2層)
5L3 第3層(線の第3層)
5L4 第4層(線の第4層)
6,6−1,6−2,6−3,6−4 インク供給槽
7,7−1,7−2,7−3,7−4 インク供給ローラ
8,8−1,8−2,8−3,8−4 ブレード
9,9−1,9−2,9 −3,9−4 加圧用ローラ
10,10−1,10−2,10−3,10−4 クリーニングローラー
12,12−1,12−2,12−3,12−4 乾燥装置
13,13−1,13−2,13−3,13−4 移行手段
L 線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の印刷パターン線を有する印刷物であって、
前記複数の印刷パターン線の各々の線幅が5μm〜60μmであり、前記複数の印刷パターン線の各々の線高/前記複数の印刷パターン線の各々の線幅が0.5〜2.0である、印刷物。
【請求項1】
複数の印刷パターン線を有する印刷物であって、
前記複数の印刷パターン線の各々の線幅が5μm〜60μmであり、前記複数の印刷パターン線の各々の線高/前記複数の印刷パターン線の各々の線幅が0.5〜2.0である、印刷物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−38431(P2013−38431A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−195242(P2012−195242)
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【分割の表示】特願2011−38549(P2011−38549)の分割
【原出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(511039500)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【分割の表示】特願2011−38549(P2011−38549)の分割
【原出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(511039500)
【Fターム(参考)】
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