説明

印刷用インキ及び該インキを用いた塗膜の製造方法

【課題】オフセット印刷による連続印刷において印刷パターンの形状変動を低減し得る。
【解決手段】インキを凹状パターンを有する印刷版に充填し、このインキを表面にシリコーンゴムシートを有する印刷用ブランケットへ転写した後、ブランケットから被転写体へインキを転写するオフセット印刷法に使用する印刷用インキが粉末成分、樹脂成分及び溶剤成分を少なくとも含有するとき、樹脂成分がアクリル−スチレン系、アクリル−ウレタン系、アクリル−エポキシ系共重合体、ウレタンアクリレート又はエポキシアクリレートを含み、溶剤成分がジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等を1種又は2類以上含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスに微細でかつ高精度の電極パターンを形成するオフセット印刷での使用に好適な印刷用インキ及び該インキを用いた塗膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路基板や表示デバイス等の半導体デバイスにおける電極等の形成には従来よりフォトリソグラフィー法が用いられてきたが、このフォトリソグラフィー法は製造工程が複雑であり、また材料ロスが多く、パターン形成に必要な露光装置等の製造設備に莫大な費用がかかるため、製造コストが極めて高くなるという問題があった。更に、パターン形成時の現像処理等にて生じる廃液を処理するコストも高く、しかもこの廃液については環境保護の観点からも問題があった。
【0003】
そこで、低コストでかつ有害な廃液等を生じることのないパターン形成方法に関する研究が種々なされている。なかでも、凹版オフセット印刷法は、微細パターンを高い精度で形成することが可能であることから、フォトリソグラフィー法の代替法として注目されている。凹版オフセット印刷法では、印刷用ブランケットからガラス基板などの被転写体に印刷用インキを100%転写させるため、印刷用ブランケット表面にはシリコーンゴムシートを用い、印刷用インキにはブランケット表面のシリコーンゴムに溶解し易い、例えば溶剤を加え、この溶剤をシリコーンゴムに溶解させ、印刷用インキとシリコーンゴム界面の界面張力を低下させることでシリコーンゴムから印刷用インキを剥離し易くして印刷用インキをブランケットから被転写体上に転写させている。シリコーンゴムに溶解し易い溶剤としては、α−テルピネオールのようなアルコール類やブチルカルビトールアセテートのようなアルキルエーテル類が使用されていた。しかし、長時間連続印刷を行うと、ブランケット表面のシリコーンゴムシートに印刷用インキに含まれる溶剤が徐々に浸透し、シリコーンゴムシートが膨潤してしまうため、印刷パターンの形状が変動して、印刷の再現性が低下する問題点があった。
【0004】
上記問題を解決する方策として、導電性インキ組成物を印刷用ブランケット表面からガラス基板の表面に転移させた後にブランケットの表面を加熱し、次いで、ブランケットの表面を冷却する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、印刷用ブランケット表面にシリコン系エラストマーを用いたものを使用し、印刷用インキとして、インキ中に低分子量ポリシロキサンを含有させたものを使用し、かつ印刷インキを印刷用ブランケットから被転写体へ転写した後、ブランケットの表面を加熱してブランケットに吸収された印刷インキの溶剤を蒸散させ、次いで、ブランケットの表面を冷却する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献1及び2に示される方法により、インキの溶剤によってブランケットが膨潤する問題を解消することができる。
【特許文献1】特開2002−245931号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2004−66804号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び2に示される方法では、通常のオフセット印刷に加熱及び冷却の工程が付加されているため工程が煩雑であり、また印刷によりブランケット表面のシリコーンゴムシートにインキ中の溶剤が浸透するのを防止することはできておらず、根本的な問題解消とはなっていない。
【0006】
本発明の目的は、オフセット印刷による連続印刷において印刷パターンの形状変動を低減し得る印刷用インキ及び該インキを用いた塗膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、インキを凹状のパターンを有する印刷版に充填し、充填したインキを表面にシリコーンゴムシートを有する印刷用ブランケットへ転写した後、印刷用ブランケットから被転写体へインキを転写するオフセット印刷法に使用する印刷用インキの改良である。その特徴ある構成は、インキが無機粉末又は有機粉末から構成される粉末成分、樹脂成分及び溶剤成分を少なくとも含有し、樹脂成分がアクリル−スチレン系共重合体、アクリル−ウレタン系共重合体、アクリル−エポキシ系共重合体、ウレタンアクリレート又はエポキシアクリレートを含み、かつ溶剤成分がジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ポリエステルポリオール[炭素数が2〜12の脂肪族多塩基酸・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコール]、ポリエステルポリオール[炭素数が8〜15の芳香族多塩基酸・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコール]及び水酸基含有液状アクリル樹脂からなる群より選ばれた1種又は2類以上を含むところにある。
請求項1に係る発明では、上記列挙した樹脂成分は高い凝集力を有し、被転写体への転写時におけるインキ内部での凝集破壊を抑制することができ、上記列挙した溶剤成分は印刷用インキ中の樹脂成分を溶解することが可能であり、印刷用ブランケットへ転写した際に溶剤成分の一部が印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシート中に吸収され、インキとブランケットの間に溶剤に富んだ境界層(インキとブランケットとの接着力を弱める境界層:Weak Boundary Layer;以下WBLという。)を形成するため、インキをブランケット上に残すことなく転写することができ、かつブランケットを加熱することなくブランケット表面から吸収された溶剤が揮発するため、オフセット印刷による連続印刷において印刷パターンの形状変動を低減することができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、無機粉末が金属粉末、金属酸化物、金属窒化物又はこれらを混合した混合粉末である印刷用インキである。
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明であって、印刷版がライン幅W:10〜1000μm、深さD:5〜50μm、ピッチP:10〜1000μmの複数の凹状パターンを有する平面凹版又は円筒凹版からなり、印刷用ブランケットが表面に厚さ0.1〜3mmのシリコーンゴムシートが取り付けられたブランケットロールからなり、被転写体がガラス基板からなり、印刷用インキを平面凹版又は円筒凹版に充填し、充填したインキをブランケットロールへ転写した後、ブランケットロールからガラス基板へインキを転写することにより、ガラス基板表面に所定のパターンを有する塗膜を印刷する凹版オフセット印刷をガラス基板2〜1000枚について連続印刷したとき、得られた各1〜1000枚の印刷されたガラス基板について、各ガラス基板の所定位置における3〜12箇所のライン幅Wをそれぞれ測定したときの測定値の平均値が0.9W〜1.1Wの範囲内であり、かつ測定値の標準偏差値が1〜5の範囲内である印刷用インキである。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3いずれか1項に記載の印刷用インキを凹状のパターンを有する印刷版に充填し、充填したインキを表面にシリコーンゴムシートを有する印刷用ブランケットへ転写した後、印刷用ブランケットから被転写体へインキを転写することを特徴とする塗膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の印刷用インキは、無機粉末又は有機粉末から構成される粉末成分、樹脂成分及び溶剤成分を少なくとも含有するとき、樹脂成分がアクリル−スチレン系共重合体、アクリル−ウレタン系共重合体、アクリル−エポキシ系共重合体、ウレタンアクリレート又はエポキシアクリレートを含み、かつ溶剤成分がジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ポリエステルポリオール[炭素数が2〜12の脂肪族多塩基酸・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコール]、ポリエステルポリオール[炭素数が8〜15の芳香族多塩基酸・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコール]及び水酸基含有液状アクリル樹脂からなる群より選ばれた1種又は2類以上を含むことを特徴とする。上記列挙した樹脂成分は高い凝集力を有し、被転写体への転写時におけるインキ内部での凝集破壊を抑制することができ、上記列挙した溶剤成分は印刷用インキ中の樹脂成分を溶解することが可能であり、印刷用ブランケットへ転写した際に溶剤成分の一部が印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシート中に吸収され、インキとブランケットの間にWBLを形成するため、インキをブランケット上に残すことなく転写することができ、かつブランケットを加熱することなくブランケット表面から吸収された溶剤が揮発するため、オフセット印刷による連続印刷において印刷パターンの形状変動を低減することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
本発明者は、印刷用インキに使用される樹脂成分と溶剤成分について、樹脂成分の溶剤成分への溶解、並びに溶剤が印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシートに及ぼす影響に関して鋭意検討した結果、樹脂成分としてアクリル−スチレン系共重合体、アクリル−ウレタン系共重合体、アクリル−エポキシ系共重合体、ウレタンアクリレート又はエポキシアクリレートが高い凝集力を有し、被転写体への転写時におけるインキ内部での凝集破壊を抑制することができ、溶剤成分として一般的に使用されているアルコール類やアルキルエーテル類に代わり、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ポリエステルポリオール[炭素数が2〜12の脂肪族多塩基酸・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコール]、ポリエステルポリオール[炭素数が8〜15の芳香族多塩基酸・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコール]及び水酸基含有液状アクリル樹脂からなる群より選ばれた1種又は2類以上を使用することによって、印刷用インキ中の上記列挙した樹脂成分を溶解することが可能であり、印刷用ブランケットへ転写した際に溶剤成分の一部が印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシート中に吸収され、インキとブランケットの間にWBLを形成するため、インキをブランケット上に残すことなく転写することができ、かつブランケットを加熱することなくブランケット表面から吸収された溶剤が揮発することを確認し、本発明に至った。
【0011】
本発明の印刷用インキは、インキを凹状のパターンを有する印刷版に充填し、充填したインキを表面にシリコーンゴムシートを有する印刷用ブランケットへ転写した後、印刷用ブランケットから被転写体へインキを転写するオフセット印刷法に使用する印刷用インキの改良である。その特徴ある構成は、インキが無機粉末又は有機粉末から構成される粉末成分、樹脂成分及び溶剤成分を少なくとも含有し、樹脂成分がアクリル−スチレン系共重合体、アクリル−ウレタン系共重合体、アクリル−エポキシ系共重合体、ウレタンアクリレート又はエポキシアクリレートを含み、かつ溶剤成分がジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ポリエステルポリオール[炭素数が2〜12の脂肪族多塩基酸・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコール]、ポリエステルポリオール[炭素数が8〜15の芳香族多塩基酸・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコール]及び水酸基含有液状アクリル樹脂からなる群より選ばれた1種又は2類以上を含むところにある。インキ100重量%とするとき、樹脂成分5〜20重量%、溶剤成分7.5〜30重量%の割合で配合することが好ましい。上記列挙した溶剤成分は印刷用インキ中の樹脂成分を溶解することが可能であり、印刷用ブランケットへ転写した際に溶剤成分の一部が印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシート中に吸収され、インキとブランケットの間にWBLを形成するため、インキをブランケット上に残すことなく転写することができ、かつブランケットを加熱することなくブランケット表面から吸収された溶剤が揮発するため、本発明の印刷用インキを使用することで、オフセット印刷による連続印刷において印刷パターンの形状変動を低減することができるという利点がある。
【0012】
本発明の印刷用インキに含有する粉末成分は、無機粉末又は有機粉末である。具体的には有機顔料、無機顔料、光輝性顔料、有機染料が挙げられる。また金属粉末、金属酸化物、金属窒化物又はそれらの混合粉末は導電性パターンの印刷に使用できるため特に好適である。有機顔料としては、アゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、キナクリドン系、イソインドリン系、イソインドリノン系、フタロシアニン系、ペリレン系、DPP系、蛍光顔料等が挙げられる。無機顔料としては、アセチルカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラファイトのような炭素粉末、合成シリカ、酸化クロム、酸化鉄、酸化チタン、チタンブラック、焼成顔料、硫化亜鉛、酸化ルテニウム、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化銅等が挙げられる。光輝性顔料としては、パール顔料、フレーク顔料、アルミニウム顔料、ブロンズ顔料等が挙げられる。有機染料としては、アルコール可溶性染料、油溶性染料、蛍光染料、集光性染料等が挙げられる。
【0013】
本発明の印刷用インキに含有する樹脂成分は、ポリメチルアクリレート等のポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレート等のポリメタクリル酸エステルと、ポリスチレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂とを共重合させたアクリル−スチレン系共重合体、アクリル−ウレタン系共重合体、アクリル−エポキシ系共重合体、ポリアクリル酸エステルやポリメタクリル酸エステルの一部をウレタン、エポキシで置換したウレタンアクリレート、エポキシアクリレートが含まれる。また、これらの樹脂成分の分子量は、数百〜数百万のオリゴマーからポリマーの範囲で好適に用いられる。低分子量の樹脂成分はインキの乾燥抑制に有効であり、高分子量の樹脂成分はインキ内部での凝集破壊を抑制することができる。即ち転写性の向上に有効である。従って、インキ中に低分子量から高分子量と幅広い分子量の樹脂を含有させることにより、インキの乾燥抑制と転写性向上を同時に満たすことができる。アクリル−スチレン系共重合体、アクリル−ウレタン系共重合体、アクリル−エポキシ系共重合体、ウレタンアクリレート又はエポキシアクリレートは、高い凝集力を有し、被転写体への転写時におけるインキ内部での凝集破壊を抑制することができる。上記アクリル−スチレン系共重合体等を単独又は2種以上使用してもよい。
【0014】
本発明の印刷用インキに含有する溶剤成分のうち、ポリエステルポリオール[炭素数が2〜12の脂肪族多塩基酸・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコール]としては、ポリ[(1,9−ノナンジオール)−alt−(アジピン酸)]、ポリ[(3−メチル−1,5−ペンタンジオール;トリメチロールプロパン)−alt−(アジピン酸)]、ポリ[(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)−alt−(セバシン酸)]が挙げられる。またポリエステルポリオール[炭素数が8〜15の芳香族多塩基酸・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコール]としては、ポリ[(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)−alt−(テレフタル酸)]、ポリ[(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)−alt−(イソフタル酸)]が挙げられる。更に水酸基含有液状アクリル樹脂としては、ポリ2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリ2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ポリ2−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリ2−ヒドロキシメタクリレートが挙げられる。
【0015】
また、本発明の印刷用インキは分散剤を更に含んでもよい。分散剤を更に含むことで塗工した層表面が平滑になる効果が得られる。インキ100重量%とするとき分散剤を3〜10重量%の割合で配合することが好ましい。また、形成するラインのエッジ部におけるシャープネスさが高くなる。分散剤としては、カルボン酸系やポリカルボン酸型高分子アニオン、アリルエーテルコポリマー、ポリアミン−脂肪酸縮合物、高分子界面活性剤、高分子脂肪酸、リン酸エステル系、脂肪酸エステル縮合体などを使用することが好適である。
【0016】
本発明の印刷用インキを用いたオフセット印刷法を説明する。
先ず、図1(a)に示すように、所望の凹状パターン10aを有する平面凹版10を印刷版として用意し、この平面凹版10表面に本発明の印刷用インキ11を所定量供給する。供給した印刷用インキ11は、スキージ12を平面凹版10表面にあててスライドさせることにより、凹状パターン10aに埋め込む。次に、図1(b)に示すように、表面にシリコーンゴムシート13aが取り付けられたブランケットロール13を印刷用ブランケットとして用意し、このブランケットロール13をインキ11が凹状パターン10aに埋め込まれた平面凹版10上に圧接し、この状態でブランケットロール13を回転させ、平面凹版10上でスライドさせることにより、平面凹版10の凹状パターン10aに埋め込まれたインキ11の一部をブランケットロール13のシリコーンゴムシート13a表面に転写する。このときの転写率は平面凹版の凹状パターンやインキに含まれる成分やその比率、ブランケットの圧接の強弱によっても異なるが、ほぼ20〜60%程度の割合である。転写した本発明のインキ11に含まれる溶剤成分の一部がブランケットロール13表面のシリコーンゴムシート13a中に吸収され、インキとシリコーンゴムシート13aの間に溶剤に富んだ境界層(WBL)を形成するため、後に続く工程で、インキをブランケット上に残すことなく被転写体に転写することができる。最後に、図1(c)に示すように、インキ11を転写したブランケットロール13をガラス基板14のような被転写体に圧接し、この状態でブランケットロール13を回転させ、ガラス基板14上でスライドさせることにより、図1(d)に示すように、ガラス基板14表面に所望のパターンが転写される。なお、ブランケットロール表面にはシリコーンゴムシートの代わりにシリコーン樹脂シートを取り付けてもよい。本発明の印刷用インキ11は、樹脂成分が高い凝集力を有し、被転写体への転写時におけるインキ内部での凝集破壊を抑制することができ、溶剤成分は印刷用インキ中の樹脂成分を溶解することが可能であり、印刷用ブランケットへ転写した際に溶剤成分の一部が印刷用ブランケット表面のシリコーンゴムシート中に吸収され、インキとブランケットの間にWBLを形成するためインキをブランケット上に残すことなく転写することができ、かつブランケットを加熱することなくブランケット表面から吸収された溶剤が揮発するため、連続印刷において印刷パターンの形状変動を低減することができる。
【0017】
なお、溶剤成分であるジエチレングリコールモノブチルエーテル又はエチレングリコールモノブチルエーテルは、図1(b)に示すインキ11の一部をブランケットロール13のシリコーンゴムシート13a表面に転写してから、図1(c)に示すガラス基板14表面に所望のパターンを転写するまでの間隔によって、その配合割合を変化させることが好ましい。即ち、インキをロールに転写してから、被転写体へインキを転写する迄の時間が長いとき、例えば大型装置での使用には沸点が高いジエチレングリコールモノブチルエーテルを単独で、或いはジエチレングリコールモノブチルエーテルの割合を多く用い、インキをロールに転写してから、被転写体へインキを転写する迄の時間が短いとき、例えば、小型装置での使用には、沸点が低いエチレングリコールモノブチルエーテルを単独で、或いはエチレングリコールモノブチルエーテルの割合を多く用いる。
【0018】
本発明の印刷用インキは、印刷版がライン幅W:10〜1000μm、深さD:5〜50μm、ピッチP:10〜1000μmの複数の凹状パターンを有する平面凹版又は円筒凹版からなり、印刷用ブランケットが表面に厚さ0.1〜3mmのシリコーンゴムシートが取り付けられたブランケットロールからなり、被転写体がガラス基板からなるとき、印刷用インキを平面凹版又は円筒凹版に充填し、充填したインキをブランケットロールへ転写した後、ブランケットロールからガラス基板へインキを転写することにより、ガラス基板表面に所定のパターンを有する塗膜を印刷する凹版オフセット印刷をガラス基板2〜1000枚について連続印刷したとき、得られた各1〜1000枚の印刷されたガラス基板について、各ガラス基板の所定位置における3〜12箇所のライン幅Wをそれぞれ測定したときの測定値の平均値が0.9W〜1.1W、好ましくは0.95W〜1.05Wの範囲内であり、かつ測定値の標準偏差値が1〜5、好ましくは1〜3の範囲内となることが好適である。印刷パターンの形状変動が上記範囲内であれば、凹版オフセット印刷による長時間連続印刷での使用に適し、印刷の再現性に優れたインクを提供することができる。ここで連続印刷とは、0.5〜1枚/分の速度で印刷した場合を指す。
【実施例】
【0019】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1〜122、比較例1>
次の表1〜表24に示す粉末成分、樹脂成分、溶剤成分及び分散剤をミキサで混合し、更に三本ロールミルを用いて5〜10Pa・s程度混練することにより、印刷用インキを得た。
オフセット印刷に使用する印刷版としてライン幅100μm、深さ25μm、ピッチ360μmの複数の凹状パターンを有する42アロイ製平面凹版を、被転写体としてガラス基板をそれぞれ用意した。また、印刷用ブランケットとして表面に厚さ0.3mmのシリコーンゴムシートが取り付けられたブランケットロールを用いた。先ず、平面凹版表面に得られた印刷用インキを所定量供給し、SUS製ブレードを用いて平面凹版の凹状パターンにインキを埋め込んだ。次に、ブランケットロールを平面凹版上に圧接した状態で回転させ、平面凹版上でスライドさせることにより、平面凹版の凹状パターンに埋め込まれたインキの一部をブランケットロールのシリコーンゴムシート表面に転写した。最後に、ブランケットロールをガラス基板に圧接した状態で回転させ、ガラス基板上でスライドさせることにより、ガラス基板表面に所定のパターンを有する印刷基板を得た。上記オフセット印刷を基板500枚について連続印刷を行った。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
【表3】

【0023】
【表4】

【0024】
【表5】

【0025】
【表6】

【0026】
【表7】

【0027】
【表8】

【0028】
【表9】

【0029】
【表10】

【0030】
【表11】

【0031】
【表12】

【0032】
【表13】

【0033】
【表14】

【0034】
【表15】

【0035】
【表16】

【0036】
【表17】

【0037】
【表18】

【0038】
【表19】

【0039】
【表20】

【0040】
【表21】

【0041】
【表22】

【0042】
【表23】

【0043】
【表24】

【0044】
<比較試験1>
実施例1〜122及び比較例1で得られた各500枚の印刷基板のうち、1枚目、100枚目、200枚目、300枚目、400枚目及び500枚目の基板について、各基板の所定位置における9箇所の線幅をそれぞれ測定し、測定値の平均値と標準偏差値を算出した。その結果を表25〜表38に示す。
【0045】
【表25】

【0046】
【表26】

【0047】
【表27】

【0048】
【表28】

【0049】
【表29】

【0050】
【表30】

【0051】
【表31】

【0052】
【表32】

【0053】
【表33】

【0054】
【表34】

【0055】
【表35】

【0056】
【表36】

【0057】
【表37】

【0058】
【表38】

【0059】
表25〜表38より明らかなように、比較例1では連続印刷の枚数によって各基板の所定位置における9箇所の線幅の平均値が変動しており、印刷安定性に劣る結果となった。また連続印刷が500枚目には、印刷不良を生じていた。一方、本発明の印刷用インキを用いた実施例1〜122では、線幅の平均値が安定しており、連続印刷での使用に好ましいことが判った。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】オフセット印刷法の概略図。
【符号の説明】
【0061】
10 平面凹版
10a 凹状パターン
11 印刷用インキ
12 スキージ
13 ブランケットロール
13a シリコーンゴムシート
14 ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキを凹状のパターンを有する印刷版に充填し、前記充填したインキを表面にシリコーンゴムシートを有する印刷用ブランケットへ転写した後、前記印刷用ブランケットから被転写体へインキを転写するオフセット印刷法に使用する印刷用インキにおいて、
前記インキが無機粉末又は有機粉末から構成される粉末成分、樹脂成分及び溶剤成分を少なくとも含有し、
前記樹脂成分がアクリル−スチレン系共重合体、アクリル−ウレタン系共重合体、アクリル−エポキシ系共重合体、ウレタンアクリレート又はエポキシアクリレートを含み、かつ前記溶剤成分がジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ポリエステルポリオール[炭素数が2〜12の脂肪族多塩基酸・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコール]、ポリエステルポリオール[炭素数が8〜15の芳香族多塩基酸・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコール]及び水酸基含有液状アクリル樹脂からなる群より選ばれた1種又は2類以上を含むことを特徴とする印刷用インキ。
【請求項2】
無機粉末が金属粉末、金属酸化物、金属窒化物又はこれらを混合した混合粉末である請求項1記載の印刷用インキ。
【請求項3】
印刷版がライン幅W:10〜1000μm、深さD:5〜50μm、ピッチP:10〜1000μmの複数の凹状パターンを有する平面凹版又は円筒凹版からなり、印刷用ブランケットが表面に厚さ0.1〜3mmのシリコーンゴムシートが取り付けられたブランケットロールからなり、被転写体がガラス基板からなり、
印刷用インキを前記平面凹版又は円筒凹版に充填し、前記充填したインキを前記ブランケットロールへ転写した後、前記ブランケットロールから前記ガラス基板へインキを転写することにより、前記ガラス基板表面に所定のパターンを有する塗膜を印刷する凹版オフセット印刷をガラス基板2〜1000枚について連続印刷したとき、
得られた各1〜1000枚の印刷されたガラス基板について、各ガラス基板の所定位置における3〜12箇所のライン幅Wをそれぞれ測定したときの測定値の平均値が0.9W〜1.1Wの範囲内であり、かつ測定値の標準偏差値が1〜5の範囲内である請求項1記載の印刷用インキ。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の印刷用インキを凹状のパターンを有する印刷版に充填し、前記充填したインキを表面にシリコーンゴムシートを有する印刷用ブランケットへ転写した後、前記印刷用ブランケットから被転写体へインキを転写することを特徴とする塗膜の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−50378(P2008−50378A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212113(P2006−212113)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】