説明

印刷装置

【課題】自装置にセットされた記録媒体上のファイルの部数印刷を、部数印刷すべきファイルがどのようなサイズのものであっても行える印刷装置を、提供する。
【解決手段】印刷装置を、記録媒体(USBメモリ等)上の部数印刷すべきファイル内の全情報をRAM上に読み出さない形でファイルの部数印刷を行う機能(ステップS102)を有する装置として構成しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、USBメモリ,メモリカード等に記憶されているファイルを読み出して印刷する機能を有する印刷装置に、関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、近年、市販されている印刷装置(プリンタ,複合機)の中には、記録媒体(メモリカード,USBメモリ等)上に記憶されている画像ファイル等を読み出して印刷する機能を有する印刷装置が、存在している。また、そのような機能(以下、ダイレクト印刷機能と表記する)を有する印刷装置は、通常、記録媒体上のファイルの部数印刷(部単位印刷)を行える装置(例えば、非特許文献1参照)となっている。
【0003】
ただし、部数印刷が可能なダイレクト印刷機能を有する既存の印刷装置は、いずれも、部数印刷時に、部数印刷すべきファイル内の情報をメモリ上に読み出し、メモリ上の情報に基づく印刷を,指定されている回数,繰り返すように構成された装置であるため、部数印刷すべきファイルがメモリ上に読み出せないサイズのものであった場合,部数印刷を行えない装置となっている。
【0004】
【非特許文献1】“PM−D800 操作ガイド”,セイコーエプソン株式会社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の課題は、自装置にセットされた記録媒体上のファイルの部数印刷を、部数印刷すべきファイルがどのようなサイズのものであっても行える印刷装置を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の印刷装置は、可搬型の記録媒体を挿入可能な挿入口と、操作パネルと、用紙上へ印刷を行うための印刷実行部と、操作パネルに対して、挿入口に挿入された記録媒体上の或るファイルを,N部,部数印刷すべきことを指示する操作がなされた際に、そのファイル内の情報を,記録媒体から,N回,読み出す情報読出処理を開始すると共に、情報読出処理により読み出された情報が示している内容の印刷を,不要となった情報を破棄しつつ,印刷実行部に行わせる印刷制御処理を開始する制御部とを、備える。
【0007】
すなわち、本発明の印刷装置は、部数印刷すべきファイル中の全情報を装置内に読み出さない形で記録媒体上のファイルの部数印刷を行う構成を有している。従って、この印刷装置は、自装置にセットされた記録媒体上のファイルの部数印刷を、部数印刷すべきファイルがどのようなサイズのものであっても行える装置として機能することになる。
【0008】
本発明の印刷装置を実現するに際しては、制御部として、情報を記憶可能な第1記憶手段(例えば、ハードディスク装置)を備え、情報を記憶可能な第2記憶手段を装着可能なユニットであると共に、操作パネルに対して、挿入口に挿入された記録媒体上の或るファイルを,N部,部数印刷すべきことを指示する操作がなされた際に、第2記憶手段が装着されていなかった場合には、そのファイル内の情報を,記録媒体から,N回,読み出す情報読出処理を開始すると共に、情報読出処理により読み出された情報が示している内容の印刷を,不要となった情報を破棄しつつ,印刷実行部に行わせる印刷制御処理を開始し、第2記憶手段が装着されていた場合には、そのファイル内の情報を,第1記憶手段或いは第2記憶手段上に読み出す第2情報読出処理を開始すると共に、情報読出処理によって第1記憶手段或いは第2記憶手段上に読み出された情報が示している内容の印刷を,N回,印刷実行部に行わせる第2印刷制御処理を開始するユニットを、採用しておくことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1に示してあるように、本発明の一実施形態に係る印刷装置10は、LCD,複数のLED,複数の押しボタンスイッチ等からなる操作パネル11と、USBホスト回路,パネルインタフェース回路,CPU,ROM,RAM,パラレルインタフェース回路,ネットワークインタフェース回路,画像処理回路,エンジンインタフェース回路等からなるコントローラ12と、用紙上に印刷を行うための印刷エンジン13とを備えた装置である。また、印刷装置10は、HDD(ハードディスクドライブ)21がオプションとして用意されている装置(コントローラ12にHDD21を装着可能な装置)となっている。
【0011】
この印刷装置10が備えるコントローラ12は、パラレルケーブル或いはLANケーブルにて接続されているPC(パーソナルコンピュータ)から送信されてきた印刷ジョブデータで指定されている内容の印刷を印刷エンジン13に行わせる処理、操作パネル11を通じて、ユーザから、実行すべきダイレクト印刷の内容(印刷対象ファイル名,印刷条件等)に関する指示を取得する指示取得処理、指示取得処理により取得された指示に応じた内容の処理〔挿入口15に挿入されているUSBメモリ40(USBホスト回路と接続されているUSBメモリ40)上のファイルに基づく印刷を印刷エンジン13に行わせる処理〕等を行うユニットである。
【0012】
そして、このコントローラ12は、指示取得処理により取得された指示が、USBメモリ40上の或るファイルを,N(≧2)部,部数印刷(部単位印刷)することを命ずるものであった場合(要するに、ユーザが、USBメモリ40上の或るファイルの,N部の部数印刷を指示した場合)、図2に示した手順の処理を行うユニットとなっている。
【0013】
すなわち、この場合、コントローラ12は、まず、HDD21が装着されているか否かを判断する(ステップS101)。そして、コントローラ12は、HDD21が装着されていない場合(ステップS101;NO)には、USBメモリ40上の印刷対象ファイル(ユーザが指定したファイル)内の情報を,N回,RAM上に読み出す情報読出処理と、情報読出処理により読み出されたRAM上の情報が示している内容の印刷を,不要となった情報をRAM上から消去しつつ,印刷エンジン13に行わせるための印刷制御処理とを並列的(並行的)に実行する処理(ステップS102)を、行う。
【0014】
なお、詳細説明は省略するが、このステップS102にて実行される情報読出処理は、USBメモリ40上の印刷対象ファイル内の情報を,N回,読み出すことにより、図3に示したような構成の印刷ジョブデータ(図3の印刷ジョブデータは、N=2の場合のもの)を時系列的に出力する処理となっている。そして、ステップS102にて実行される印刷制御処理は、情報読出処理が時系列的に出力する印刷ジョブデータを、順次(1ページ分ずつ)、解釈することにより印刷エンジン13に供給するためのデータを生成して印刷エンジン13に供給する処理となっている。
【0015】
また、コントローラ12は、HDD21が装着されていた場合(図2:ステップS101;YES)には、USBメモリ40上の印刷対象ファイル内の情報を,1回,RAM上,或いは、RAM上及びHDD21上に読み出す第2情報読出処理(必要である場合には、HDD21を使用する処理)と、第2情報読出処理により読み出された情報が示している内容の印刷を,N回、印刷エンジン13に行わせるための第2印刷制御処理とを並列的に実行する処理(ステップS103)を、行う。なお、このステップS102にて実行される第2印刷制御処理は、上記した印刷制御処理と同様に、第2情報読出処理の完了を待つことなく、印刷エンジン13の制御を開始する処理である。また、第2印刷制御処理は、N回目の印刷時に、不要となった情報を消去するものとなっている。
【0016】
ステップS102或いはS103の処理を終えたコントローラ12は、図2の処理を終了する。そして、コントローラ12は、通常の状態(印刷データが送信されてくることや、操作パネル11が操作されることを監視する状態)での動作を開始する。
【0017】
以上、説明したように、本実施形態に係る印刷装置10は、部数印刷すべきファイル内全情報が,RAM上に読み出さない形でUSBメモリ40上のファイルの部数印刷を行う構成を有している。従って、この印刷装置10を用いれば、USBメモリ40上の各ファイルの部数印刷を、そのファイルがどのようなサイズのものであっても行えることになる。
【0018】
《変形形態》
上記した印刷装置10は、各種の変形を行うことが出来る。例えば、印刷装置10を、HDD21がオプションとして用意されていない装置に変形することが出来る。また、印刷装置10を、USBメモリ40上のファイルの部数印刷時には、常に、ステップS102の処理が行われる装置に変形することも出来る。ただし、ステップS102の処理よりも、ステップS103の処理の方が短時間で完了するため(USBメモリ40に対するアクセスよりも、HDD21に対するアクセスの方が高速に行えるため)、上記した構成を採用しておくことが望ましい。
【0019】
また、印刷装置10を、メモリカード上のファイルの印刷を行う装置に変形しても良いことや、RAMの増設が可能な装置(RAMが増設されている場合、ステップS103のような処理が行われる装置)に変形しても良いことなどは、当然のことである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る印刷装置の構成図。
【図2】実施形態に係る印刷装置の,部数印刷時の動作を説明するための流れ図。
【図3】実施形態に係る印刷装置の,部数印刷時の動作を説明するための図。
【符号の説明】
【0021】
10 印刷装置、 11 操作パネル、 12 コントローラ
13 印刷エンジン、 15 挿入口、 21 HDD、 40 USBメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬型の記録媒体を挿入可能な挿入口と、
操作パネルと、
用紙上へ印刷を行うための印刷実行部と、
前記操作パネルに対して、前記挿入口に挿入された記録媒体上の或るファイルを,N部,部数印刷すべきことを指示する操作がなされた際に、そのファイル内の情報を,前記記録媒体から,N回,読み出す情報読出処理を開始すると共に、前記情報読出処理により読み出された情報が示している内容の印刷を,不要となった情報を破棄しつつ,前記印刷実行部に行わせる印刷制御処理を開始する制御部と
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御部が、
情報を記憶可能な第1記憶手段を備え、情報を記憶可能な第2記憶手段を装着可能なユニットであると共に、
前記操作パネルに対して、前記挿入口に挿入された記録媒体上の或るファイルを,N部,部数印刷すべきことを指示する操作がなされた際に、前記第2記憶手段が装着されていなかった場合には、そのファイル内の情報を,前記記録媒体から,N回,読み出す情報読出処理を開始すると共に、前記情報読出処理により読み出された情報が示している内容の印刷を,不要となった情報を破棄しつつ,前記印刷実行部に行わせる印刷制御処理を開始し、前記第2記憶手段が装着されていた場合には、そのファイル内の情報を,前記第1記憶手段或いは前記第2記憶手段上に読み出す第2情報読出処理を開始すると共に、前記情報読出処理によって前記第1記憶手段或いは前記第2記憶手段上に読み出された情報が示している内容の印刷を,N回,前記印刷実行部に行わせる第2印刷制御処理を開始するユニットである
ことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部の前記第2記憶手段が、ハードディスク装置である
ことを特徴とする請求項2記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−125755(P2007−125755A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319249(P2005−319249)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】