説明

原子力発電プラントの蒸気発生器検査装置、蒸気発生器検査方法及びプログラム

【課題】カメラで撮像された目視点検映像からBEC穴の隙間の閉塞率の検査を自動で行うことができる原子力発電プラントの蒸気発生器検査装置、蒸気発生器検査方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】蒸気発生器内の管支持板のBEC穴の閉塞状況を検査する原子力発電プラントの蒸気発生器検査装置であって、管支持板のBEC穴の開口形状を撮像する撮像手段と、撮像したBEC穴の画像を記録し、画像から開口形状を示す目視点検画像を抽出して記憶する記憶部と、目視点検画像に対し、3次元形状モデルのデータから生成した基準画像、又は予め記憶部に記憶している基準画像の初期BEC穴の開口形状を重ね合わせる処理をした後、重ね合わせた初期BEC穴の開口形状と目視点検画像の開口形状とからBEC穴の閉塞率を算出する画像処理部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電プラントに適用される蒸気発生器の伝熱管支持板管穴を検査するための蒸気発生器検査装置、蒸気発生器検査方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントである原子力発電設備では、発電機に接続されたタービンを駆動させる蒸気を得るための蒸気発生器(熱交換器)が採用されている。蒸気発生器は、一般的に、胴部と、胴部の横断方向に胴部内に水平に配置された複数の管支持板と、胴部内にチューブレーンを画成するように各管支持板を貫いて列状に延びる複数の伝熱管と、管支持板のうちの通常最下方にある管支持板の直上に直径方向に対峙して胴部に形成されたハンドホールと称する1対の検査穴とを有し、各管支持板の、チューブレーンに対応する部分には、フロースロットが形成されている。この蒸気発生器において、伝熱管の内部を流れる高温高圧の冷却材により伝熱管の周りの給水が加熱されることにより、蒸気が発生される。
【0003】
このような蒸気発生器においては、使用に伴って内部の伝熱管や管支持板にスケールと呼ばれる汚れが生じるので、蒸気発生器の性能を維持するため、このスケールを取り除く必要がある。管支持板には、伝熱管を通すための通常BEC穴(BEC=Broached Egg Crate)と称される異形の穴が形成されており、BEC穴を画成する管支持板壁面と伝熱管の外周面との間には隙間が存在するので、隙間近傍の伝熱管の外周面、管支持板の上下面、BEC穴の内縁などにスケールが付着しやすい。スケールが付着すると熱交換効率が低下すると共に、伝熱管とBEC穴との隙間が閉塞され、二次冷却水の流動性が低下する。このことから定期点検時にはBEC穴の閉塞状況を確認するための目視点検が実施されている。
【0004】
特許文献1には、原子力プラントの蒸気発生器内にハンドホールから挿入可能で、蒸気発生器内の所定位置で最上段の管支持板から最下段の管支持板まで昇降可能で、内部の目視点検や管支持板のスケール除去を確実、かつ、迅速に行える昇降装置が記載されている。この昇降装置は、テレスコシリンダの先端に管群内観察用のカメラ等を取付けて観察用装置としたときは的確な管群内観察を行なえるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−90084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている装置は、管群内観察用カメラと蒸気発生器の外部に設置された遠隔操作装置がケーブルで接続され、カメラで撮像された映像を遠隔操作装置のモニタに映し出して確認・記録するものである。蒸気発生器内の伝熱管は3000本以上、伝熱管支持板は7〜10枚程度、さらに伝熱管支持板には1本の伝熱管の周囲にBEC穴が4カ所あるため定期点検時に全てのBEC穴の閉塞状況を確認するための目視点検は非常に時間がかかるという問題があった。
【0007】
また従来は、BEC穴の隙間の閉塞率の検査は、記録された映像をモニタ画面上で手動にて画像処理を行い、BEC穴の隙間の閉塞率を算出していたため、BEC穴の隙間の閉塞率の検査には、手間と時間がかかるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、撮像カメラで撮像された目視点検画像からBEC穴の隙間の閉塞率の検査を自動で行うことができる原子力発電プラントの蒸気発生器検査装置、蒸気発生器検査方法及びプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の原子力発電プラントの蒸気発生器検査装置は、蒸気発生器内の管支持板のBEC穴の閉塞状況を検査する原子力発電プラントの蒸気発生器検査装置であって、管支持板のBEC穴の開口形状を撮像する撮像手段と、撮像したBEC穴の画像を記録し、画像から開口形状を示す目視点検画像を抽出して記憶する記憶部と、目視点検画像に対し、3次元形状モデルのデータから生成した基準画像、又は予め記憶部に記憶している基準画像の初期BEC穴の開口形状を重ね合わせる処理をした後、重ね合わせた初期BEC穴の開口形状と目視点検画像の開口形状とからBEC穴の閉塞率を算出する画像処理部と、を有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、撮像手段が撮像した蒸気発生器内のBEC穴の目視点検画像からBEC穴の閉塞率を自動で算出して、BEC穴の閉塞率を検査することが可能となる。これにより、BEC穴の閉塞率の検査を容易にし、かつ検査時間を短縮することができる。
【0011】
本発明の原子力発電プラントの蒸気発生器検査装置の初期BEC穴の開口形状を重ね合わせる処理は、撮像手段が目視点検画像を撮像した角度と撮像手段から管支持板までの距離とから、目視点検画像の中心と基準画像の中心とを一致させ、かつ角度と距離とを一致させるように処理することが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、撮像手段が蒸気発生器内のBEC穴の目視点検画像を撮像した角度と撮像手段から管支持板までの距離が、基準画像を撮像した角度や距離と違っていた場合でも基準画像との3次元方向の位置ずれを画像処理により補正することが可能となる。これにより、スケールが付着する前の初期BEC穴開口形状を目視点検画像に重ね合わせることができる。
【0013】
本発明の原子力発電プラントの蒸気発生器検査装置の初期BEC穴の開口形状を重ね合わせる処理は、目視点検画像に写っている伝熱管の幅及び輪郭と、BEC穴の上面である管支持板の端面の輪郭と、BEC穴に隣接するBEC穴との配置間隔と、の少なくとも1つ以上を特徴点として重ね合わせる処理をすることが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、撮像手段が蒸気発生器内のBEC穴の目視点検画像を撮像した角度と撮像手段から管支持板までの距離が、基準画像を撮像した角度や距離と違っていた場合でも複数の特徴点を認識することで基準画像との3次元方向の位置ずれを画像処理により補正することが可能となる。これにより、スケールが付着する前の初期BEC穴開口形状を容易に目視点検画像に重ね合わせることができる。
【0015】
本発明の原子力発電プラントの蒸気発生器検査装置の画像処理部は、目視点検画像に対し、初期BEC穴の開口形状を重ね合わせる処理をした後、初期BEC穴の開口形状を作画することが、好ましい。
【0016】
この構成によれば、初期BEC穴の開口形状の輪郭を目視点検画像に作画することでBEC穴の初期開口面積を自動で算出することが可能となる。これにより、初期BEC穴の外縁形状(輪郭)に囲まれた内側の画像のピクセル数をカウントしてBEC穴の初期開口面積を算出することができる。
【0017】
本発明の原子力発電プラントの蒸気発生器検査装置の基準画像は、実物大モックアップを用いて蒸気発生器内の伝熱管とスケールが付着していない初期のBEC穴の開口形状とを、撮像手段と管支持板とが所定の距離で、BEC穴の中心が画像の中心と重なるように真上から垂直に撮像手段で撮像し、かつ撮像手段の視野角αの中に伝熱管の一部分とBEC穴の全体とが収まるように撮像手段で撮像して記憶部に記憶することが、好ましい。
【0018】
この構成によれば、予め実物大モックアップを用いて蒸気発生器内の伝熱管とスケールが付着していない初期のBEC穴の開口形状を撮像して基準画像とすることが可能となる。これにより、撮像して取得した基準画像を基に管支持板のBEC穴部分の3次元モデルを算出することができ、画像処理情報データとして参照することができる。
【0019】
本発明の原子力発電プラントの蒸気発生器検査方法は、蒸気発生器内の管支持板のBEC穴の閉塞状況を検査する原子力発電プラントの蒸気発生器検査方法であって、管支持板のBEC穴の開口形状を撮像する撮像工程と、撮像したBEC穴の画像を記録し、画像から開口形状を示す目視点検画像を抽出して記憶する記憶工程と、目視点検画像に対し、3次元形状モデルのデータから生成した基準画像、又は予め記憶部に記憶している基準画像の初期BEC穴の開口形状を重ね合わせる処理工程と、重ね合わせた初期BEC穴の開口形状と目視点検画像の開口形状とからBEC穴の閉塞率を算出する画像処理工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、撮像手段が撮像した蒸気発生器内のBEC穴の目視点検画像からBEC穴の閉塞率を自動で算出して、BEC穴の閉塞率を検査することが可能となる。これにより、BEC穴の閉塞率の検査を容易にし、かつ検査時間を短縮することができる。
【0021】
本発明の原子力発電プラントの蒸気発生器検査方法の初期BEC穴の開口形状を重ね合わせる処理工程は、撮像手段が目視点検画像を撮像した角度と撮像手段から管支持板までの距離とから、目視点検画像の中心と基準画像の中心とを一致させ、かつ角度と距離とを一致させるように処理することが、好ましい。
【0022】
この構成によれば、撮像手段が蒸気発生器内のBEC穴の目視点検画像を撮像した角度と撮像手段から管支持板までの距離が、基準画像を撮像した角度や距離と違っていた場合でも基準画像との3次元方向の位置ずれを画像処理により補正することが可能となる。これにより、スケールが付着する前の初期BEC穴開口形状を目視点検画像に重ね合わせることができる。
【0023】
本発明の原子力発電プラントの蒸気発生器検査方法の初期BEC穴の開口形状を重ね合わせる処理工程は、目視点検画像に写っている伝熱管の幅及び輪郭と、BEC穴の上面である管支持板の端面の輪郭と、BEC穴に隣接するBEC穴との配置間隔と、の少なくとも1つ以上を特徴点として重ね合わせる処理をすることが、好ましい。
【0024】
この構成によれば、撮像手段が蒸気発生器内のBEC穴の目視点検画像を撮像した角度と撮像手段から管支持板までの距離が、基準画像を撮像した角度や距離と違っていた場合でも複数の特徴点を認識することで基準画像との3次元方向の位置ずれを画像処理により補正することが可能となる。これにより、スケールが付着する前の初期BEC穴開口形状を容易に目視点検画像に重ね合わせることができる。
【0025】
本発明の原子力発電プラントの蒸気発生器検査方法の画像処理工程は、目視点検画像に対し、初期BEC穴の開口形状を重ね合わせる処理をした後、初期BEC穴の開口形状を作画することが、好ましい。
【0026】
この構成によれば、初期BEC穴の開口形状の輪郭を目視点検画像に作画することでBEC穴の初期開口面積を自動で算出することが可能となる。これにより、初期BEC穴の外縁形状(輪郭)に囲まれた内側の画像のピクセル数をカウントしてBEC穴の初期開口面積を算出することができる。
【0027】
本発明の原子力発電プラントの蒸気発生器検査方法の基準画像は、実物大モックアップを用いて蒸気発生器内の伝熱管とスケールが付着していない初期のBEC穴の開口形状とを、撮像手段と管支持板とが所定の距離で、BEC穴の中心が画像の中心と重なるように真上から垂直に撮像手段で撮像し、かつ撮像手段の視野角αの中に伝熱管の一部分とBEC穴の全体とが収まるように撮像手段で撮像して記憶部に記憶することが、好ましい。
【0028】
この構成によれば、予め実物大モックアップを用いて蒸気発生器内の伝熱管とスケールが付着していない初期のBEC穴の開口形状を撮像して基準画像とすることが可能となる。これにより、撮像して取得した基準画像を基に管支持板のBEC穴部分の3次元モデルを算出することができ、画像処理情報データとして参照することができる。
【0029】
本発明のプログラムは、上記に記載の原子力発電プラントの蒸気発生器検査方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、撮像手段が撮像した蒸気発生器内のBE穴の目視点検画像からBEC穴の閉塞率を自動で算出して、BEC穴の閉塞率を検査することが可能となる。これにより、BEC穴の閉塞率の検査を容易にし、かつ検査時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の原子力発電プラントの蒸気発生器検査装置、蒸気発生器検査方法及びプログラムによれば、撮像カメラで撮像された目視点検映像からBEC穴の隙間の閉塞率の検査を自動で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本実施例に係る蒸気発生器検査装置が適用される原子力発電プラントを模式的に表した概略構成図である。
【図2】図2は、本実施例に係る蒸気発生器の構成図である。
【図3】図3は、図2のa−a部の斜視断面図である。
【図4】図4は、図3の伝熱管周囲の拡大図である。
【図5】図5は、図2のb−b断面図である。
【図6】図6は、本実施例に係る蒸気発生器検査装置の内部構成図である。
【図7】図7は、本実施例に係る蒸気発生器検査装置の撮像手段の概略構成図である。
【図8】図8は、蒸気発生器内で撮像手段の昇降装置を立て起こして起立させた状態を示す図である。
【図9】図9は、本実施例に係る撮像手段のランス送り装置の概略構成図である。
【図10】図10は、本実施例に係る蒸気発生器の伝熱管とBEC穴の隙間とを模式的に表した図である。
【図11】図11は、図10のX−X断面図である。
【図12】図12は、実物大モックアップの伝熱管とBEC穴の隙間を撮像した基準画像である。
【図13】図13は、本実施例に係る蒸気発生器検査装置で伝熱管とBEC穴の隙間を撮像する状態を説明する図である。
【図14】図14は、本実施例に係る蒸気発生器検査装置で伝熱管とBEC穴の隙間を撮像する状態を説明する図である。
【図15】図15は、目視点検画像と基準画像とのパターンマッチングについて説明する図である。
【図16】図16は、目視点検画像と基準画像とのパターンマッチングについて説明する図である。
【図17】図17は、目視点検画像と基準画像とのパターンマッチングについて説明する図である。
【図18】図18は、撮像手段により撮像した画像から抽出した目視点検画像である。
【図19】図19は、パターンマッチングさせた初期BEC穴の縁形状を目視点検画像に作画した図である。
【図20】図20は、本実施例に係るBEC穴閉塞率の検査方法の流れを説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明に係る蒸気発生器検査装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0034】
図1は、本発明の実施例に係る蒸気発生器検査装置が適用される原子力発電プラントを模式的に表した概略構成図である。
【0035】
本実施例が適用される原子力発電プラントの原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、一次系全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って二次冷却材と熱交換させることにより蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。なお、本実施例は、このPWRに限らず、これを改良した改良型加圧水型原子炉(APWR:Advanced Pressurized Water Reactor)に適用することができる。また、蒸気発生器を備えている他の発電プラントにも適用可能である。
【0036】
原子炉2を用いた原子力発電プラントは、原子炉2を含む原子炉冷却系3と、原子炉冷却系3と熱交換するタービン系4とで構成されており、原子炉冷却系3には、原子炉冷却材(一次冷却水)が流通し、タービン系4には、二次冷却材(二次冷却水)が流通している。
【0037】
原子炉冷却系3は、原子炉2と、コールドレグ5a及びホットレグ5bを介して原子炉2に接続された蒸気発生器6とを有している。また、ホットレグ5bには、加圧器7が介設され、コールドレグ5aには、原子炉冷却材ポンプ8が介設されている。そして、原子炉2、コールドレグ5a、ホットレグ5b、蒸気発生器6、加圧器7及び原子炉冷却材ポンプ8は、原子炉格納容器1に収容されている。
【0038】
原子炉2は、上記したように加圧水型原子炉であり、その内部は原子炉冷却材(一次冷却水)で満たされている。そして、原子炉2内は、多数の燃料集合体15を収容すると共に、燃料集合体15の燃料棒内の核燃料の核分裂を制御する多数の制御棒16が、各燃料集合体15に対し挿入可能に設けられている。
【0039】
制御棒16により核分裂反応を制御しながら燃料集合体15の燃料棒内の核燃料を核分裂させると、この核分裂により熱エネルギーが発生する。発生した熱エネルギーは原子炉冷却材を加熱し、加熱された原子炉冷却材は、ホットレグ5bを介して蒸気発生器6へ送られる。一方、コールドレグ5aを介して各蒸気発生器6から送られてきた原子炉冷却材は、原子炉2内に流入して、原子炉2内を冷却する。
【0040】
ホットレグ5bに介設された加圧器7は、高温となった原子炉冷却材を加圧することにより、原子炉冷却材の沸騰を抑制している。また、蒸気発生器6は、高温高圧となった原子炉冷却材(一次冷却水)を二次冷却材(二次冷却水)と熱交換させることにより、二次冷却材を蒸発させて蒸気を発生させ、かつ、高温高圧となった原子炉冷却材を冷却している。原子炉冷却材ポンプ8は、原子炉冷却系3において原子炉冷却材を循環させており、原子炉冷却材を蒸気発生器6からコールドレグ5aを介して原子炉2へ送り込むと共に、原子炉冷却材を原子炉2からホットレグ5bを介して蒸気発生器6へ送り込んでいる。
【0041】
原子炉冷却材は、原子炉2と蒸気発生器6との間を循環している。なお、原子炉冷却材は、冷却材及び中性子減速材として用いられる軽水である。
【0042】
タービン系4は、蒸気管21を介して各蒸気発生器6に接続されたタービン22と、タービン22に接続された復水器23と、復水器23と各蒸気発生器6とを接続する給水管26に介設された給水ポンプ24と、を有している。そして、上記のタービン22には、発電機25が接続されている。
【0043】
ここで、原子力発電プラントのタービン系4における一連の動作について説明する。蒸気管21を介して蒸気発生器6から蒸気がタービン22に流入すると、タービン22は回転する。タービン22が回転すると、タービン22に接続された発電機25は、発電を行う。この後、タービン22から排出した蒸気は復水器23に流入する。復水器23は、その内部に冷却管27が配設されており、冷却管27の一方には冷却水(例えば、海水)を供給するための取水管28が接続され、冷却管27の他方には冷却水を排水するための排水管29が接続されている。そして、復水器23は、タービン22から流入した蒸気を冷却管27により冷却することで、蒸気を液体に戻している。液体となった二次冷却材は、給水ポンプ24により給水管26を介して蒸気発生器6に送られる。蒸気発生器6に送られた二次冷却材は、蒸気発生器6において原子炉冷却材と熱交換を行うことにより再び蒸気となる。
【0044】
<蒸気発生器>
次に、図2〜図5を参照しながら、本実施例に係る蒸気発生器について説明する。
【0045】
図2は、本実施例に係る蒸気発生器6の構成図である。図3は、図2のa−a部の斜視断面図である。図4は、図3の伝熱管周囲の拡大図である。図5は、図2のb−b断面図である。
【0046】
蒸気発生器6は、上下方向に延在され、かつ密閉された中空円筒形状を成し、上半部に対して下半部が若干小径とされた胴部32を有している。胴部32の下半部内には、胴部32の内壁面と所定間隔をもって配置された円筒形状を成す管群外筒33が設けられている。この管群外筒33は、その下端部が、胴部32の下半部内の下方に配置された管板34まで延設されている。管群外筒33内には、逆U字形状をなす複数の伝熱管35からなる伝熱管群51が設けられている。各伝熱管35は、U字形状の円弧部を上方に向けて配置され、下方に向く端部が管板34に支持されると共に、中間部が複数の管支持板36により支持されている。つまり伝熱管35は各層の管支持板36を挿通して、上方に逆U字状に湾曲して配設されている。また、管支持板36には伝熱管35を挿通する四つ葉形状をなすBEC(=Broached Egg Crater)穴45という異形の穴が穿設され、BEC穴45と管支持板36に挿通される伝熱管35の外周面には隙間45eが形成されていて(図5参照)、管支持部での二次冷却水の対流を図っている。また、管支持板36の中央部には各層の管支持板36の上下方向の同位置に、胴部32の直径方向に長円形の1連のフロースロット46(図3参照)が穿設されている。また、胴部32には下層の管支持板36の直上に直径方向に対峙して1対のハンドホール52(図2参照)が設けられている。スケール除去装置や目視点検用カメラはこのハンドホール52から搬入される。
【0047】
胴部32の下端部には、水室37が設けられている。水室37は、内部が隔壁38により入室61と出室62とに区画されている。入室61には、各伝熱管35の一端部が連通され、出室62には、各伝熱管35の他端部が連通されている。また、入室61には、胴部32の外部に通じる入口ノズル71が形成され、出室62には、胴部32の外部に通じる出口ノズル72が形成されている。そして、入口ノズル71には、加圧水型原子炉から一次冷却水が送られる冷却水配管5bが連結される一方、出口ノズル72には、熱交換された後の一次冷却水を加圧水型原子炉に送る冷却水配管5aが連結される。
【0048】
胴部32の上半部には、給水を蒸気と熱水とに分離する気水分離器39、および分離された蒸気の湿分を除去して乾き蒸気に近い状態とする湿分分離器40が設けられている。気水分離器39と伝熱管群51との間には、外部から胴部32内に二次冷却水の給水を行う給水管41が挿入されている。さらに、胴部32の上端部には、蒸気排出口42が形成されている。また、胴部32の下半部内には、給水管41からこの胴部32内に給水された二次冷却水を、胴部32と管群外筒33との間を流下させて管板34にて折り返させ、伝熱管群51に沿って上昇させる給水路43が設けられている。なお、蒸気排出口42には、タービン22に蒸気を送る冷却水配管21が連結され、給水管41には、タービン22で使用された蒸気が復水器23で冷却された二次冷却水を供給するための冷却水配管26が連結される。
【0049】
このような蒸気発生器6では、加圧水型原子炉で加熱された一次冷却水は、入室71に送られ、多数の伝熱管35内を通って循環して出室72に至る。一方、復水器23で冷却された二次冷却水は、給水管41に送られ、胴部32内の給水路43を通って伝熱管群51に沿って上昇する。このとき、胴部32内で、高圧高温の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換が行われる。そして、冷やされた一次冷却水は出室72から加圧水型原子炉に戻される。一方、高圧高温の一次冷却水と熱交換を行った二次冷却水は、胴部32内を上昇し、気水分離器39で蒸気と熱水とに分離される。そして、分離された蒸気は、湿分分離器40で湿分を除去されてからタービン22に送られる。蒸気発生器6は以上のような構成である。
【0050】
次に、図6〜図17を参照しながら、本実施例に係る蒸気発生器検査装置について説明する。
【0051】
<蒸気発生器検査装置の構成>
図6は、本実施例に係る蒸気発生器検査装置の内部構成図である。
【0052】
蒸気発生器検査装置100は、制御部101と撮像手段102と記憶部103と画像処理部104と表示部105と入出力部106とを備える。
【0053】
制御部101は、蒸気発生器検査装置100全体を制御する。例えば、後述する撮像手段102を蒸気発生器6の外部から遠隔操作して、伝熱管35とBEC穴45の隙間45eを目視点検用カメラ68に撮像させる。以下、目視点検用カメラ68を撮像カメラ68と記述することがある。そして撮像した目視点検画像を記録部103に記録させる。または撮像した目視点検画像を画像処理部104で画像処理をさせた後、記録部103に記録させる。以下、撮像手段102により撮像した画像を目視点検画像と記述することがある。
【0054】
撮像手段102は、ハンドホール52から蒸気発生器6内に搬入した後に起立させて、ランス送り装置63先端の撮像カメラ68で伝熱管35とBEC穴45の隙間45eの閉塞状態を撮像する。この時、定期検査にかかる期間を短縮するために撮像する画像は静止画でなく動画として撮像するようになっている。なお、定期検査の点検箇所が少ない場合には静止画で撮像してもよい。撮像手段102の詳細な説明については後述する。
【0055】
記録部103は、撮像手段102で撮像した画像を記録すると共に、画像処理部104で画像処理した後の画像を記憶する。また画像処理のデータとなる基準画像を予め記憶している。以下、基準画像をマスタ画像と記述することがある。
【0056】
画像処理部104は、撮像手段102で撮像した画像を画像処理する。そして画像処理した画像と予め記憶部103に記憶してある基準画像とに基づいてBEC穴45の閉塞率を算出する。なお画像処理の詳細な説明については後述する。
【0057】
表示部105は、撮像手段102で撮像している画像をリアルタイムに表示する。また画像処理部104で画像処理した後の画像や各種の情報データなどを表示する。
【0058】
入出力部106は、撮像手段102で取得した画像データや画像処理部104で画像処理した後の画像データなどを外部の装置とやり取りする入出力部である。また上記の各種画像データを外部の装置と送受信するためのインターフェイス機能を有している。さらに蒸気発生器検査装置100を制御するための各種情報データの入力部でもある。
【0059】
<撮像手段>
次に、図7〜図9を参照しながら、本実施例に係る蒸気発生器検査装置の撮像手段について説明する。
【0060】
図7は、本実施例に係る蒸気発生器検査装置の撮像手段の概略構成図である。図8は、蒸気発生器内で撮像手段の昇降装置を立て起こして起立させた状態を示す図である。図9は、本実施例に係る撮像手段のランス送り装置の概略構成図である。
【0061】
本実施例に係る撮像手段102は、テレスコシリンダ式昇降装置60とチューブガイド機構61と伸縮アーム62(旋回機構62a、伸縮機構62b)とランス送り装置63とレール64とを備えて構成されている。
【0062】
図7および図8に示すように、撮像手段102でBEC穴45を撮像する時には、最下部の管支持板36の上方に設けられた胴部32のハンドホール52から、レール64を敷設する。ハンドホール52から、ランス送り装置63、伸縮アーム62(旋回機構62a、伸縮機構62b)、チューブガイド機構61、テレスコシリンダ式昇降装置60の各部位を挿入して立ち上げる。次にテレスコシリンダ式昇降装置60を駆動してチューブガイド機構61により伝熱管35を挟持しながら、各層管支持板36のフロースロット46内を所要の高さまで押し上げる。伸縮機構62bと最上部のランス送り装置63を旋回・再上昇させ、図9に示すランス送り装置63先端の撮像カメラ68でBEC穴45を撮像する。撮像カメラ68は、ランス送り装置63先端から前方に延伸できる延伸機構およびチルト機構を有したCCDカメラである。ランス送り装置63は、伸縮アーム62と共にチューブガイド機構61の頂部に係止され、BEC穴45を撮像する時は90°旋回し、撮像カメラ68を所要の位置に誘導する。ランス送り装置63の曲部内側に設けられたクランプ機構66は、その係合部を伝熱管35に当接して撮像カメラ68の正確な位置決めができるようになっている。図8に示すように、テレスコシリンダ式昇降装置60は、蒸気発生器6のハンドホール52から挿入されて最下部の管支持板36aの上面に敷設されるレール64上の所要の位置に配設され、安定して前後に正確な位置決め移動ができると共に最上部のランス送り装置63を所要の高さまで押し上げ可能に形成された入れ子式シリンダの昇降装置である。
【0063】
また、ランス送り装置63先端を洗浄ノズルで構成した場合は、洗浄ノズルから伝熱管35の外周面、管支持板36の上下面、BEC穴45の内縁などに高圧水を噴射してスケールを除去するスケール除去装置とすることができる。従って、テレスコシリンダの先端に伸縮腕やノズル装置を装着してスケール除去装置に適用したときは、蒸気発生器6内における各段の管支持板36に堆積したスケールを完全に除去することができる。またテレスコシリンダの先端に管群内観察用のカメラ等を取付けて観察用装置としたときは的確な管群内観察を行うことができる。
【0064】
なお上述した撮像手段102は、これに限ることはなく管支持板36上の伝熱管35の周囲を撮像することができる公知の蒸気発生器6内の目視検査装置や蒸気発生器6内のスケール除去装置などを適用することができる。例えば、本出願人が先に出願した特開平9−26107、特開平9−79505、特開平9−90084、特開2000−46492、特開2000−130703、特開2007−127351に記載された装置を適用することが可能である。
【0065】
次に、後述する図10〜図17を参照しながら、本実施例に係る蒸気発生器検査装置について詳細に説明する。
【0066】
本実施例の蒸気発生器検査装置100は、実物大モックアップでスケール付着前の初期BEC穴の形状を撮像した、または3次元形状モデルから生成した、目視点検画像91とパターンマッチングさせるための基準画像(マスタ画像)90を予め記憶部103に記憶している。また蒸気発生器検査装置100は、撮像した基準画像データまたは3次元形状モデルから生成した基準画像データを基に初期BEC穴の3次元形状データを予め記憶部103に記憶している。蒸気発生器検査装置100は、撮像手段102が撮像した蒸気発生器6内のBEC穴45の閉塞状態の画像からパターンマッチングに最適な画像を抽出し目視点検画像91とする。画像処理部104は、目視点検画像91から画面中心と管支持板36との角度、および目視点検画像91から撮像カメラ68と管支持板36までの距離(焦点距離)を算出し、算出した角度と距離(焦点距離)とから、3次元的に目視点検画像91と基準画像90とを重ね合わせ、3次元データを2値化してスケール付着前の初期BEC穴の縁形状(輪郭)、および現状のBEC穴45の開口形状からBEC穴45の閉塞率を自動で算出することに特徴がある。これにより、BEC穴45の閉塞率の検査を容易にし、かつ検査時間を短縮することが可能となった。
【0067】
<基準画像>
図10〜図12は、BEC穴閉塞率を算出するための基準画像(マスタ画像)について説明する図である。図10は、図5に示した伝熱管とBEC穴の隙間とを模式的に表した図である。図11は、図10のX−X断面図である。図12は、実物大モックアップの伝熱管とBEC穴の隙間を撮像した基準画像である。
【0068】
BEC穴45の閉塞率を算出するために予め図12に示すBEC穴45の基準画像(マスタ画像)90を取得する必要がある。そこで蒸気発生器6の伝熱管35とBEC穴45の隙間45eの実物大モックアップで、スケールが全く付着していない初期のBEC穴45の形状を基準画像90として取得する。基準画像90を撮像する時には、図11に示すように、撮像カメラ68の視野角αの中に伝熱管35の一部分とBEC穴45の全体とが収まるように撮像する。この時、撮像カメラ68は、図12に示すように、BEC穴45の中心と撮像画像の中心gとが重なるようにBEC穴45を真上から垂直に撮像する。撮像カメラ68のレンズと管支持板36との距離Z1は所定の距離(基準距離)となるように撮像すると共に、基準距離より上下した位置(基準距離よりも長い位置と短い位置)で何種類かの画像を撮像して3次元モデルの画像データとする。なお所定の距離(基準距離)とは撮像カメラ68の焦点距離と同じ意味である。また撮像カメラ68の視野の重心Gが撮像した画像の中心gと重なる位置(図12参照)で撮像する。上述したように撮像して取得した基準画像90が図12に示す画像である。このように撮像して取得した基準画像を基に管支持板36のBEC穴45部分の3次元モデルを算出しておき、画像処理情報データとして記憶部103に格納しておく。
【0069】
さらに本実施例においては、上述した実物大モックアップから予め基準画像90を撮像して基準画像データを取得しなくても画像処理情報データを取得することができる。本実施例の蒸気発生器検査装置100は、蒸気発生器6内の形状や部材の配置関係、BEC穴45の形状や配置関係、伝熱管35及び管支持板36の形状や配置関係などの3次元形状モデルのデータを、例えば記憶部103に有しているものである。よって、3次元形状モデルのデータから、例えば、カラーグラフィック(CG)立体画像のような3次元モデルを生成することが可能となっている。基準画像データを生成させる方法としては、例えば、3次元形状データは蒸気発生器6の伝熱管35とBEC穴45の形状及び位置関係のデータから構成されるものとする。これらの3次元形状データを使用して、目視点検画像91を撮像した撮像カメラ68の位置及び角度などを指定することで、3次元形状モデルを2次元の画像に変換、描画させて生成させた画像データに基づいて基準画像90を生成することができる。3次元形状モデルを2次元の画像に変換、描画させるのは一般的な画像処理ツールなどを使用することで可能である。従って、本実施例によれば、予め基準画像データを取得しなくても基準画像90を生成する画像処理情報データを取得することができる。これらを画像処理情報データとして記憶部103に格納しておき、パターンマッチング(自動位置合わせ)に使用する。
【0070】
<目視点検画像>
図13および図14は、本実施例に係る蒸気発生器検査装置で伝熱管とBEC穴との隙間を撮像する状態を説明する図である。
【0071】
上述した撮像手段102で実際に蒸気発生器6内の伝熱管35とBEC穴45との隙間45eを撮像する場合は、図11に示したように、実物大モックアップの伝熱管35とBEC穴45の隙間45eを撮像した撮像カメラ68位置で撮像できるとは限らない。例えば、図13に示すように、撮像カメラ68のレンズと管支持板36との距離は、所定の距離(基準距離)Z1で撮像することができないおそれがある。図13は、点線で示した撮像カメラ68a位置が基準画像90を取得した位置(撮像カメラ68aのレンズと管支持板36との距離がZ1)を示す。しかし実際には実線で示した撮像カメラ68位置(撮像カメラ68のレンズと管支持板36との距離がZ2)で画像を取得することになるおそれがある。また例えば、図14に示すように、撮像カメラ68のレンズと管支持板36との距離Z1は基準画像90を取得した位置(基準距離)であるが、撮像カメラ68の視野の重心Gが撮像した画像の中心gと重なる位置ではなく、撮像カメラ68の視野の重心Gが基準画像90の中心に対してβだけ傾いた(チルトした)位置で画像を取得することになるおそれがある。上述したように、撮像手段102が基準画像90を撮像した位置とは異なる位置で目視点検画像91を取得した場合、BEC穴45の閉塞率を算出するためには、撮像手段102で撮像した画像に対して、上述した記憶部103に格納してある3次元モデルの画像情報データを用いて画像処理を行い、基準画像90に対する3次元方向(xyz軸方向)の位置ずれを補正しなければならない。または撮像手段102で撮像した画像に対して、基準画像90を画像処理して3次元方向(xyz軸方向)の位置ずれを補正することになる。
【0072】
<パターンマッチング>
図15〜図17は、撮像手段により撮像した画像と基準画像とのパターンマッチングについて説明する図である。
【0073】
図15の点線で示した画像が基準画像90であり、実線で示した画像が目視点検画像91である。図15では基準画像90および目視点検画像91の撮像カメラ68と管支持板36との距離Z1は同じであるとする。図15では基準画像90の重心(画像の中心)gと目視点検画像91の重心(画像の中心)g1とは、x方向ずれ量とy方向ずれ量が存在する。画像処理部104は、上記のx方向ずれ量とy方向ずれ量とを解析し、基準画像90のBEC穴45の縁形状(輪郭)を目視点検画像91のBEC穴45の縁形状(輪郭)に合わせるように画像処理してパターンマッチングさせる。パターンマッチングは、目視点検画像91の中で、特徴点となる部位、例えば、伝熱管35の幅及び輪郭、BEC穴45の上面(管支持板の端面)の輪郭、画像に隣のBEC穴が写っていた場合は隣のBEC穴との配置間隔、などのうちから少なくとも1つを特徴点として認識して画像処理情報データとして用いて解析する。これにより3次元モデルを用いた3次元方向(xyz軸方向)の位置ずれ補正が容易となる。
【0074】
また図16の点線で示した画像が基準画像90であり、実線で示した画像が目視点検画像91である。図16では基準画像90重心(画像の中心)gと目視点検画像91の重心(画像の中心)g1とは同じ位置であるとする。図16では基準画像90および目視点検画像91の撮像カメラ68と管支持板36との距離方向に距離z方向ずれ量が存在する。画像処理部104は、上記の距離z方向ずれ量を解析し、基準画像90のBEC穴45の縁形状(輪郭)を目視点検画像91のBEC穴45の縁(輪郭)形状に合わせるように画像処理してパターンマッチングさせる。パターンマッチングは、目視点検画像91の中で、特徴点となる部位、例えば、伝熱管35の幅及び輪郭、BEC穴45の上面(管支持板の端面)の輪郭、画像に隣のBEC穴が写っていた場合は、隣のBEC穴との配置間隔、など少なくとも1つを特徴点として認識して画像処理情報データとして用いて解析する。これにより3次元モデルを用いた3次元方向(xyz軸方向)の位置ずれ補正が容易となる。
【0075】
図17の点線で示した画像が基準画像90であり、実線で示した画像が目視点検画像91である。図17では基準画像90および目視点検画像91の撮像カメラ68と管支持板36との距離Z1は同じであるとする。ただし図17では、基準画像90重心(画像の中心)gと目視点検画像91の重心(画像の中心)g1とは、図14に示したように撮像カメラ68の視野の重心Gが基準画像90の中心に対してβだけ傾いた(チルトした)位置で画像を取得したとする。図17では基準画像90の重心(画像の中心)gと目視点検画像91の重心(画像の中心)g1とは、撮像カメラ68の視野の重心Gが基準画像90の中心に対してβだけ傾いた重心G方向ずれ量が存在する。画像処理部104は、上記の重心G方向ずれ量を解析し、基準画像90のBEC穴45の縁(輪郭)形状を目視点検画像91のBEC穴45の縁形状(輪郭)に合わせるように画像処理してパターンマッチングさせる。パターンマッチングは、目視点検画像91の中で、特徴点となる部位、例えば、伝熱管35の幅及び輪郭、BEC穴45の上面(管支持板の端面)の輪郭、画像に隣のBEC穴が写っていた場合は、隣のBEC穴との配置間隔、など少なくとも1つを特徴点として認識して画像処理情報データとして用いて解析する。これにより3次元モデルを用いた3次元方向(xyz軸方向)の位置ずれ補正が容易となる。
【0076】
次に、取得した目視点検画像91の重心g1位置、角度の算出について説明する。例えば、BEC穴の開口部に着目して、開口部を2値化画像処理した画像においてラベリングして開口部を抽出する。この時、面積の一番大きいラベルを開口部と想定しラベル特徴として重心g1位置を抽出する。次に、ラベルの慣性主軸(撮像カメラ68の視野の重心G)を求めることで傾きを抽出する。このような手順により目視点検画像91の重心g1位置と傾き角度を算出する。基準画像90に対しても同じ手順によりで基準画像90の重心g位置と傾きを求めて、取得した目視点検画像91の重心g1位置、傾き角度にマッチングするような(差が小さくなるような)、カメラ位置および傾き角度を求める。
【0077】
また特徴点を抽出する場合は、例えば、BEC穴45の開口部のエッジ(縁形状)を抽出して2値化する。そして2値化したデータから開口部の領域を選定する。次にエッジ部分のパターンマッチング処理により基準画像90と最も一致する撮像カメラ68位置と撮像カメラ68の視野の重心Gの角度(傾き角度)とを求めて、撮像カメラ68位置及び傾き角度とすることができる。
【0078】
<BEC穴閉塞率>
図18および図19は、BEC穴閉塞率の算出方法を説明する図である。
【0079】
図18は、撮像手段102により撮像した画像から抽出した目視点検画像91である。目視点検画像91は、図11に示したように、画面内に管支持板35の一部分が写り、かつBEC穴45を真上から撮像した画面を抽出したものである。予め記憶してある基準画像90に上述した画像処理をして、目視点検画像91に対して初期BEC穴の縁形状(点線で示した図)をパターンマッチングさせる。図19は、パターンマッチングさせた初期BEC穴の縁形状を目視点検画像91に作画したものである。図19の斜線で塗り潰した部分の外縁形状(実線で示した形状)が、スケール付着前の初期BEC穴の開口部分である。そこで初期BEC穴の縁形状に囲まれた内側の画像のピクセル数をカウントしてBEC穴の初期開口面積S1を算出する。次に図18に示した目視点検画像91から目視点検時のBEC穴の開口(中央の実線で囲まれた図形)部分の画像のピクセル数をカウントしてBEC穴の開口面積S2を算出する。上記で取得した初期開口面積S1と開口面積S2とに基づいて式(1)によりBEC穴閉塞率を算出する。
【0080】
BEC穴閉塞率(%)=((S1−S2)/S1)×100 ・・・(1)
【0081】
上記で得られたBEC穴閉塞率は、1つの伝熱管35に対して1つのBEC穴45の閉塞率である。1つの伝熱管35にはBEC穴45が4つ備わっているので、それぞれのBEC穴45の閉塞率を求め、その平均値を1つの伝熱管35のBEC穴閉塞率とする。
【0082】
<BEC穴閉塞率検査方法>
図20は、BEC穴閉塞率の検査方法の流れを説明するフローチャート図である。
【0083】
撮像手段102は、実物大モックアップでスケール付着前の初期BEC穴の形状を撮像する。制御部101は、撮像した画像をパターンマッチングのために、基準画像(マスタ画像)90データとして記憶部103に記憶させる(ステップS11)。次に制御部101は、撮像手段102に蒸気発生器6内のBEC穴45の閉塞状態を撮像させ、撮像した目視点検画像(動画)を表示部105に表示させると共に、撮像した目視点検画像(動画)を記憶部103に記録させる(ステップS12)。目視点検画像を記憶部103に記録させる時は、映像(動画)に記録された画像をアドレス毎にデジタル化して記録させるようにする。
【0084】
画像処理部104は、記憶部103に記録した目視点検画像(動画)から、BEC穴45を真上から撮像した画像を抽出し、目視点検画像(静止画)91として記憶部103に記憶させる(ステップS13)。画像処理部104は、目視点検画像91から画面中心と管支持板36との角度を撮像カメラ視野角を参照しながら算出する(ステップS14)。画像処理部104は、目視点検画像91から撮像カメラ68と管支持板36までの距離(焦点距離)を算出する(ステップS15)。画像処理部104は、取得した上記の角度と距離(焦点距離)とに基づき、目視点検画像91と基準画像90とを重ね合わせ、目視点検画像91にスケール付着前の初期BEC穴の縁形状(輪郭)をパターンマッチングさせる(ステップS16)。この時の画像処理(パターンマッチング処理)は、管支持板36距離z軸方向および管支持板36面内xy軸方向の三軸方向(3次元方向)の位置ずれ量をマッチングさせるように処理する。この画像処理には、上述した記憶部103に格納してある管支持板36のBEC穴45部の3次元モデルを画像処理情報データとして参照する。
【0085】
次に画像処理部104は、マッチングさせた目視点検画像91に初期BEC穴の縁形状(輪郭)を作画して、その画像を記憶部103に記憶させる(ステップS17)。この時、制御部101は、初期BEC穴の縁形状(輪郭)を作画した画像を表示部105に表示させる。画像処理部104は、初期BEC穴の縁形状(輪郭)を作画した目視点検画像91から、BEC穴の初期開口面積S1を算出して記憶部103に記憶させる(ステップS18)。画像処理部104は、目視点検画像91から現状のBEC穴45の開口形状(輪郭)を認識して、開口面積S2を算出して記憶部103に記憶させる(ステップS19)。この時、制御部101は、現状のBEC穴45の開口形状(輪郭)を目視点検画像91に作画した画像を表示部105に表示させる。制御部101は、取得したBEC穴45の初期開口面積S1と現状の開口面積S2とに基づいてBEC穴45の閉塞率を算出して記憶部103に記憶させる(ステップS20)。
【0086】
本実施例の蒸気発生器検査装置は、上述した流れによって、撮像手段が撮像した蒸気発生器内のBEC穴の目視点検画像からBEC穴閉塞率を自動で算出して、BEC穴の閉塞率を検査することができる。これにより、BEC穴の閉塞率の検査を容易にし、かつ検査時間を短縮することができる。
【0087】
また本実施例によれば、撮像手段が蒸気発生器内のBEC穴の目視点検画像を撮像した角度と撮像手段から管支持板までの距離が、基準画像を撮像した角度や距離と違っていた場合でも基準画像との3次元方向の位置ずれを画像処理により補正することが可能となる。これにより、スケールが付着する前の初期BEC穴開口形状を目視点検画像に重ね合わせることができる。
【0088】
また本実施例によれば、撮像手段が蒸気発生器内のBEC穴の目視点検画像を撮像した角度と撮像手段から管支持板までの距離が、基準画像を撮像した角度や距離と違っていた場合でも複数の特徴点を認識することで基準画像との3次元方向の位置ずれを画像処理により補正することが可能となる。これにより、スケールが付着する前の初期BEC穴開口形状を容易に目視点検画像に重ね合わせることができる。
【0089】
また本実施例によれば、初期BEC穴の開口形状の輪郭を目視点検画像に作画することでBEC穴の初期開口面積を自動で算出することが可能となる。これにより、初期BEC穴の外縁形状(輪郭)に囲まれた内側の画像のピクセル数をカウントしてBEC穴の初期開口面積を算出することができる。
【0090】
また本実施例によれば、予め実物大モックアップを用いて蒸気発生器内の伝熱管とスケールが付着していない初期のBEC穴の開口形状を撮像して基準画像とすることが可能となる。これにより、撮像して取得した基準画像を基に管支持板のBEC穴部分の3次元モデルを算出することができ、画像処理情報データとして参照することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 原子炉格納容器
2 原子炉
6 蒸気発生器
34 管板
35 伝熱管
36 管支持板
45 BEC穴
45e BEC穴の隙間
46 フロースロット
52 ハンドホール
60 テレスコシリンダ式昇降装置
61 チューブガイド機構
62 伸縮アーム
63 ランス送り装置
64 レール
68 目視点検用カメラ(撮像カメラ)
90 基準画像
91 目視点検画像
100 蒸気発生器検査装置
101 制御部
102 撮像手段
103 記憶部
104 画像処理部
105 表示部
106 入出力部
G 撮像カメラの重心
g、g1 画像中心
α 視野角
β チルト角
Z1、Z2 距離(焦点距離)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生器内の管支持板のBEC穴の閉塞状況を検査する原子力発電プラントの蒸気発生器検査装置であって、
管支持板のBEC穴の開口形状を撮像する撮像手段と、
撮像した前記BEC穴の画像を記録し、前記画像から前記開口形状を示す目視点検画像を抽出して記憶する記憶部と、
前記目視点検画像に対し、3次元形状モデルのデータから生成した基準画像、又は予め前記記憶部に記憶している基準画像の初期BEC穴の開口形状を重ね合わせる処理をした後、重ね合わせた前記初期BEC穴の開口形状と前記目視点検画像の開口形状とから前記BEC穴の閉塞率を算出する画像処理部と、
を有することを特徴とする原子力発電プラントの蒸気発生器検査装置。
【請求項2】
前記初期BEC穴の開口形状を重ね合わせる処理は、前記撮像手段が前記目視点検画像を撮像した角度と前記撮像手段から前記管支持板までの距離とから、前記目視点検画像の中心と前記基準画像の中心とを一致させ、かつ前記角度と前記距離とを一致させるように処理することを特徴とする請求項1に記載の原子力発電プラントの蒸気発生器検査装置。
【請求項3】
前記初期BEC穴の開口形状を重ね合わせる処理は、前記目視点検画像に写っている伝熱管の幅及び輪郭と、前記BEC穴の上面である前記管支持板の端面の輪郭と、前記BEC穴に隣接するBEC穴との配置間隔と、の少なくとも1つ以上を特徴点として重ね合わせる処理をすることを特徴とする請求項1に記載の原子力発電プラントの蒸気発生器検査装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記目視点検画像に対し、前記初期BEC穴の開口形状を重ね合わせる処理をした後、前記初期BEC穴の開口形状を作画することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の原子力発電プラントの蒸気発生器検査装置。
【請求項5】
前記基準画像は、実物大モックアップを用いて蒸気発生器内の伝熱管とスケールが付着していない初期のBEC穴の開口形状とを、前記撮像手段と前記管支持板とが所定の距離で、前記BEC穴の中心が画像の中心と重なるように真上から垂直に前記撮像手段で撮像し、かつ前記撮像手段の視野角αの中に前記伝熱管の一部分と前記BEC穴の全体とが収まるように前記撮像手段で撮像して前記記憶部に記憶することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の原子力発電プラントの蒸気発生器検査装置。
【請求項6】
蒸気発生器内の管支持板のBEC穴の閉塞状況を検査する原子力発電プラントの蒸気発生器検査方法であって、
管支持板のBEC穴の開口形状を撮像する撮像工程と、
撮像した前記BEC穴の画像を記録し、前記画像から前記開口形状を示す目視点検画像を抽出して記憶する記憶工程と、
前記目視点検画像に対し、3次元形状モデルのデータから生成した基準画像、又は予め前記記憶部に記憶している基準画像の初期BEC穴の開口形状を重ね合わせる処理工程と、
重ね合わせた前記初期BEC穴の開口形状と前記目視点検画像の開口形状とから前記BEC穴の閉塞率を算出する画像処理工程と、
を有することを特徴とする原子力発電プラントの蒸気発生器検査方法。
【請求項7】
前記初期BEC穴の開口形状を重ね合わせる処理工程は、前記撮像手段が前記目視点検画像を撮像した角度と前記撮像手段から前記管支持板までの距離とから、前記目視点検画像の中心と前記基準画像の中心とを一致させ、かつ前記角度と前記距離とを一致させるように処理することを特徴とする請求項6に記載の原子力発電プラントの蒸気発生器検査方法。
【請求項8】
前記初期BEC穴の開口形状を重ね合わせる処理工程は、前記目視点検画像に写っている伝熱管の幅及び輪郭と、前記BEC穴の上面である前記管支持板の端面の輪郭と、前記BEC穴に隣接するBEC穴との配置間隔と、の少なくとも1つ以上を特徴点として重ね合わせる処理をすることを特徴とする請求項6に記載の原子力発電プラントの蒸気発生器検査方法。
【請求項9】
前記画像処理工程は、前記目視点検画像に対し、前記初期BEC穴の開口形状を重ね合わせる処理をした後、前記初期BEC穴の開口形状を作画することを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の原子力発電プラントの蒸気発生器検査方法。
【請求項10】
前記基準画像は、実物大モックアップを用いて蒸気発生器内の伝熱管とスケールが付着していない初期のBEC穴の開口形状とを、前記撮像手段と前記管支持板とが所定の距離で、前記BEC穴の中心が画像の中心と重なるように真上から垂直に前記撮像手段で撮像し、かつ前記撮像手段の視野角αの中に前記伝熱管の一部分と前記BEC穴の全体とが収まるように前記撮像手段で撮像して前記記憶部に記憶することを特徴とする請求項6から9のいずれか1項に記載の原子力発電プラントの蒸気発生器検査方法。
【請求項11】
請求項6から10のいずれか1項に記載の原子力発電プラントの蒸気発生器検査方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−220389(P2012−220389A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87907(P2011−87907)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】