説明

原料の気化供給装置

【課題】混合ガス内の原料濃度を正確に調整し、プロセスチャンバへ安定して供給し、原料の残量管理を容易にする原料の気化供給装置を提供する。
【解決手段】原料4を貯留したソースタンク5と、キャリアガス供給源1からのキャリアガスGをソースタンク5の内部上方空間5aへ供給する流路Lと、コントロール弁CVの開度調整により内部上方空間5aの圧力を制御する自動圧力調整装置15と、原料4より生成した原料蒸気と前記キャリアガスとの混合体である混合ガスGをプロセスチャンバ11へ供給する流路Lと、コントロール弁CVの開度調整によりプロセスチャンバ11へ供給する混合ガスGの流量を自動調整する流量制御装置19と、流路L及び流路Lを設定温度に加熱する恒温加熱部とから成り、内部上方空間5aを所望の圧力に制御しつつプロセスチャンバ11へ混合ガスGを供給する構成としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂有機金属化学気相成長法(以下、MOCVD法と呼ぶ)を用いた半導体製造装置の原料気化供給装置の改良に関するものであり、液体のみならず固体の原料であっても、或いは蒸気圧の低い原料であっても全ての原料の原料蒸気を供給することができると共に、ソースタンク内の内圧を調整することにより原料蒸気とキャリアガスの混合比の制御を可能とし、高精度で設定流量に流量制御された混合ガスをプロセスチャンバへ供給することにより、高品質な半導体を能率よく製造できるようにした原料の気化供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願発明者等は、先にMOCVD法による半導体製造装置用の原料の気化供給装置として、図6に示す如き原料気化供給装置を開発し、これを公開している(特許第4605790号)。
【0003】
即ち、図6において、1はキャリアガス供給源、2は減圧装置、3は熱式質量流量制御装置(マスフローコントローラ)、4は原料(Al(CH等の液状原料やPb(dpm)等の担持昇華型の固体原料)、5はソースタンク、6は恒温加熱部、7、9、10はバルブ、8は導入管、11はプロセスチャンバ、14は真空ポンプ、15はソースタンク内の自動圧力調整装置、16は演算制御部、17は設定圧力信号の入力端子、18は検出出力信号の出力端子、GはAr等のキャリアガス、Gは原料の飽和蒸気、GoはキャリアガスGと原料蒸気Gとの混合ガス、Poは混合ガスGoの圧力検出器、Toは混合ガスGoの温度検出器、CVはピエゾ素子駆動型のコントロールバルブ、Gは他の原料、例えば、Al(CH等と結合して基板13上に結晶薄膜を形成するための他の原料ガス(PH等)である。
【0004】
また、当該原料の気化供給装置では、先ずソースタンク5内へ供給するキャリアガスGの圧力PGが減圧装置2により所定圧力値に設定されると共に、その供給流量が熱式質量流量制御装置(マスフローコントローラ)3により所定値に設定される。
また、恒温加熱部6の作動により、ソースタンク用の自動圧力調整装置15の演算制御部16を除いた部分が約150℃の高温度に加熱保持される。
【0005】
上記図6の原料の気化供給装置では、キャリアガスGの供給量が熱式質量流量制御装置3により設定値に、また、ソースタンク5の温度が設定値に、更にソースタンク5の内部圧力(混合ガスGoの圧力)が自動圧力調整装置15より設定値に夫々保持されることにより、コントロール弁CVを通して定混合比で定流量の混合ガスGoが、前記熱式質量流量制御装置3により設定した流量に比例した所定の流量値に高精度で制御されつつ、プロセスチャンバ11へ供給される。
【0006】
また、ソースタンク5や自動圧力調整装置15のコントロール弁CV等が150℃の高温度に加熱保持されているため、ソースタンク5内の原料4の飽和蒸気Gの圧力Poが高められ、プロセスチャンバ11側への蒸気Gの供給量の増加や混合ガスGoの高温化の要請に十分に対応することができ、混合ガスGoの供給ライン中における蒸気Gの凝縮もより完全に防止される。
【0007】
図7は、図6のバルブリング方式を用いた原料気化供給装置に於けるキャリアガスGの流量A(sccm)、ソースタンク5の内圧力Ptank(Torr)、原料の蒸気圧Po(Torr)、原料の流量X(sccm)の関係を示したものであり、チャンバへの混合ガスGoの供給流量Q=は、Q=A+X(sccm)となる。
【0008】
即ち、原料の流量Xはソースタンク内の原料蒸気圧PMoに、また、混合ガスの供給流量Q=A+Xはソースタンク内の内圧Ptankに比例するため、下記の関係が成立する。
原料の流量X:混合ガス供給流量A+X=ソースタンク内原料蒸気圧Po:ソースタンク内内圧Ptank、即ち、
X×Ptank=(A+X)×Po・・・・(1)
(1)式より、原料の流量Xは、X=A×Po/(Ptank−Po)・・・(2)
となる。
【0009】
上記(2)式からも明らかなように、原料の流量Xはキャリアガス流量A、ソースタンクの圧力Ptank、原料の蒸気圧(分圧)Poにより決まり、またソースタンクの内圧Ptankはソースタンク内の温度により、更に、気泡による原料の搬出量はタンク内の原料の液面高さにより夫々変化する。
【0010】
従って、混合ガスGo内の原料の濃度は、キャリアガス流量A、ソースタンクの内圧Ptank、ソースタンク内の温度t及びソースタンク内の原料の液面高さ(気泡内の原料濃度)をパラメータとして決定されることになる。
【0011】
図8は、図6の原料の気化供給装置において、原料をTEOS(テトラエトキシシラン)に、キャリアガス(Ar)の流量A=10(sccm)、ソースタンクの内圧Ptank=1000(Torr)(即ち、自動圧力調整装置15の制御圧)、TEOSの蒸気圧470Torr(150℃に於いて)、TEOSの流量X(sccm)とした場合に於ける、TEOS流量Xとキャリアガス流量Aとチャンバへの混合ガス供給流量(全流量Q=A+X)との相互関係を示すものである。
【0012】
前記(2)式より、TEOSの流量X=A×PTEOS/(Ptank−PTEOS)=10×470(1000−470)=8.8(sccm)となる。
即ち、TEOSの流量8.8(sccm)、キャリアガス(Arガス)流量X=10(sccm)、全流量(A+X)=18.8(sccm)となり、チャンバ11へ供給される混合ガス流量Q(全流量A+X)とキャリアガス流量Aとは異なった値となり、熱式質量流量制御装置3でもって原料ガスGoの流量を直接制御することができない。
【0013】
上記図6に示した原料の気化供給装置は、ソースタンク5へのキャリアガスGの流入流量を質量流量制御装置3によって所定の流量に高精度で制御すると共に、ソースタンク等を最高250℃の温度で恒温加熱することによりソースタンク内の原料の蒸発を促進させ、更には自動圧力調整装置によってソースタンク5内のキャリアガスGと原料の蒸気Gとの混合気体の圧力を所定値に高精度で制御する構成としているため、プロセスチャンバ11内へ流入する混合ガスGoの流量及び混合ガスGo内のキャリアガスGと蒸気Gとの混合比が常に一定に保持されることになり、プロセスチャンバへ常に安定して所望量の原料4が供給されることになる。その結果、製造された半導体製品の品質の大幅な向上と不良品の削減が可能となるという優れた効用を奏するものである。
【0014】
しかし、上記バブリング方式の原料の気化供給装置にあっても、未解決の問題が未だ多く残されている。
先ず、第1の問題は、高価な熱式質量流量制御装置3を使用しているため、原料の気化供給装置の製造コストの引下げを計り難いだけでなく、キャリアガス源1から熱式質量流量制御装置3へ供給するキャリアガスの供給圧を高精度で制御する必要があり、減圧装置2の設備費が増加するという点である。
また、熱式質量流量制御装置3でもって混合ガスGoの流量を直接的に制御できないという問題がある。
【0015】
第2の問題は、バブリング方式であるため、固体原料の場合には安定して原料蒸気を供給することが相対的に困難となり、更に、低蒸気圧の原料の場合には安定した原料蒸気の供給が難しくなり、プロセスチャンバへの混合ガス供給が不安定になり易いという問題がある。即ち、気化供給できる原料が限定されることになり、全ての原料の気化供給が出来ないという問題がある。
【0016】
第3の問題は、ソースタンク内の原料液面の変動によって混合ガスGo内の原料蒸気の濃度が大きく変動し、原料蒸気の濃度の制御が難しいと云う点である。即ち、バブリング方式にあっては、気泡流が原料液内を上昇する間に原料蒸気が気泡に付着したり、或いは含有され、ソースタンクの内部上方空間部へ持ち出されるため、気泡と原料液との接触移動距離、即ち、原料の液面高さによってソースタンクの上方内部空間内へ持ち出される原料蒸気の量が大幅に変動することになり、原料液面の高さの変動によって混合ガスGo内の原料の濃度が変化すると云う点である。
【0017】
第4の問題は入口側のキャリアガスの流量と出口側の混合ガス流量(全流量)が異なるため、混合ガス流量の高精度な流量制御が困難なこと、及びソースタンクの内圧の高精度な制御が容易でなく、結果として、タンク内の混合ガス内の原料蒸気の分圧に直接関連する原料濃度の調整が容易でないという点である。即ち、原料濃度を一定に保持しつつ混合ガスを安定して供給することが困難なために、高価な原料濃度のモニター装置を必要としたり、ソースタンク内からの原料持ち出し量の算定が容易でないためにソースタンク内の原料の残量管理に手数がかかることになるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特許4605790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、特許第4605790号の原料の気化供給装置に於ける上述の如き問題、即ち熱式質量流量制御装置を用いるために製造コストの引下げ等が困難なこと、気化供給可能な原料が限定されること、チャンバへ供給する混合ガスの高精度な流量制御や混合ガス内の原料濃度の調整が困難なこと、等の問題を解決することを発明の主目的とするものであり、構造が簡単で製造コストの引下げが図れると共に全ての原料を安定して気化供給することができ、しかもチャンバへ供給する混合ガス流量や混合ガス内の原料濃度を容易に且つ高精度で制御できるようにした原料の気化供給を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1の発明は、キャリアガス供給源と、原料を貯留したソースタンクと、キャリアガス供給源からのキャリアガスGを前記ソースタンクの内部上方空間部へ供給する流路Lと、当該流路Lに介設され、前記ソースタンクの内部上方空間部の圧力を設定圧力に制御する自動圧力調整装置と、前記ソースタンクの内部上方空間部から、原料より生成した原料蒸気とキャリアガスとの混合体である混合ガスGをプロセスチャンバへ供給する流路Lと、当該流路Lに介設され、プロセスチャンバへ供給する混合ガスGの流量を設定流量に自動調整する流量制御装置と、前記ソースタンクと流路L及び流路Lとを設定温度に加熱する恒温加熱部とから成り、ソースタンクの内部上方空間部の内圧を所望の圧力に制御しつつプロセスチャンバへ混合ガスGを供給する構成としたことを発明の基本構成とするものである。
【0021】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、流路L及び流路Lは、流体が流れる配管路と、自動圧力調整装置及び流量制御装置の内部の流通路で構成したものである。
【0022】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、ソースタンクの内部上方空間部の圧力を制御する自動圧力調整装置を、コントロール弁CVと、その下流側に設けた温度検出器T及び圧力検出器Pと、前記圧力検出器Pの検出値を温度検出器Tの検出値に基づいて温度補正を行い、キャリアガスGの圧力を演算すると共に、予め設定した圧力と前記演算圧力とを対比して両者の差が少なくなる方向にコントロール弁CVを開閉制御する制御信号Pdを出力する演算制御部と、キャリアガスが流れる流通路を所定温度に加熱するヒータとから構成したものである。
【0023】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、ソースタンクの内部上方空間より混合ガスGをプロセスチャンバへ供給する流量制御装置を、コントロール弁CVと、その下流側に設けた温度検出器T及び圧力検出器Pと、圧力検出器Pの下流側に設けたオリフィスと、前記圧力検出器Pの検出値を用いて演算した混合ガスGの流量を温度検出器Tの検出値に基づいて温度補正を行い、混合ガスGの流量を演算すると共に、予め設定した混合ガス流量と前記演算した混合ガス流量とを対比して両者の差が少なくする方向にコントロール弁CVを開閉制御する制御信号Pdを出力する演算制御部と、混合ガスが流れる流通路を所定温度に加熱するヒータとから構成したものである。
【0024】
請求項5の発明は、請求項1の発明において、原料を液体又は多孔性担持体に担持させた固体原料とするようにしたものである。
【発明の効果】
【0025】
本願発明に於いては、ソースタンク内の温度を設定値に保持すると共に、ソースタンクの内部上方空間部の圧力を自動圧力調整装置によって制御し、且つソースタンクの内部上方空間部から混合ガスを圧力式流量制御装置によって流量制御しつつチャンバへ供給する構成としている。
即ち、バブリング方式とは異なってソースタンク内の原料の加熱によって、ソースタンク内の原料蒸気の蒸気圧PMoを設定温度下に於ける飽和蒸気に保持すると共に、ソースタンクの内部上方空間部の全圧力Ptankを自動圧力調整装置によって設定値に制御するようにしているため、混合ガスGo内の原料流量Xが原料蒸気圧Poとタンク内部の圧力Ptankとの比に正比例することともあいまって、原料流量Xを容易に、高精度で且つ安定して制御することができる。
【0026】
また、流量制御装置で制御する流量と混合ガス流量Q=Aが同じ値となるため、混合ガスGoの流量制御が高精度で行えることになり、そのうえ原料流量Xが容易に算出できるため、ソースタンク内の原料の残存量を簡単に知ることができ、原料の管理が簡単化される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る原料の気化供給装置の構成を示す系統図である。
【図2】自動圧力調整装置の構成説明図である。
【図3】圧力式流量制御装置の構成説明図である。
【図4】本発明に於けるキャリアガスGの供給流量とチャンバへの混合ガスGoの供給流量の関係を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施例に係るキャリアガスGの供給流量とチャンバへの混合ガスGoの供給流量の関係を示す説明図である。
【図6】従前の原料の気化供給装置の構成を示す系統図である。
【図7】従前の原料の気化供給装置に於けるキャリアガスGの供給流量とチャンバへの混合ガスGoの供給流量の関係を示す説明図である。
【図8】従前の一実施例に係るキャリアガスGの供給流量とチャンバへの混合ガスGoの供給流量の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る原料の気化供給装置の構成系統図であり、当該原料の気化供給装置は、キャリアガス供給源1、原料4を収容するソースタンク5、ソースタンク5の内部圧力を制御する自動圧力調整装置15、プロセスチャンバ11へ供給する混合ガスGoの供給流量を調整する流量制御装置19、自動圧力調整装置15及び流量制御装置19の流通路やソースタンク5等を加温する恒温加熱部6等から構成されている。
【0029】
尚、図1に於いては、前記図6に示した原料の気化供給装置と同一の構成部材には同じ図番号が使用されており、従前の原料の気化供給装置に於けるソースタンク5へ供給するキャリアガスGの供給流量を制御する熱式質量制御装置3に替えて、ソースタンク5の内部上方空間部5aの圧力を調整する自動圧力調整装置15を使用することにより、ソースタンク5の内部圧力を制御するようにした点、及びバブリングを行わずにソースタンク5の内部上方空間部5aへキャリアガスGを直接に供給するようにした点、並びにソースタンク5からの混合ガスGoを流量制御装置19によって流量制御をしつつチャンバ11へ所定流量の混合ガスGoを供給するようにした点の3点を除いて、その他の構成及び部材は従前の図6の原料気化供給装置の場合と同じである。
【0030】
図1を参照して、キャリアガス供給源1から供給されたAr等のキャリアガスG1は、自動圧力調整装置15のコントロール弁CVを通してソースタンク5の内部上方空間部8へ供給されており、後述するように自動圧力調整装置15によってソースタンク5の内部圧力は所定圧力値に制御されている。
【0031】
一方、ソースタンク5の内部には、液体の原料(例えば、TEOS等の有機金属化合物等)や固体の原料(例えば、多孔性の担持体に有機金属化合物を担持させた固体原料)が適宜量充填されており、恒温加熱部6内のヒータ(図示省略)により150℃〜250℃に加熱されることにより、その加熱温度における原料4の飽和蒸気Gが生成され、ソースタンク5の内部上方空間5a内に充満することになる。
【0032】
生成された原料4の飽和蒸気GとキャリアガスGとは、ソースタンク5の内部上方空間部5a内で混合され、この混合ガスGoがバルブ9を通して流量制御装置19のコントロール弁CVへ流入し、後述するように、流量制御装置19により所定流量に制御された混合ガスGoが、プロセスチャンバ11へ供給されて行く。
【0033】
前記自動圧力調整装置15は、キャリアガス供給源1の下流側に設けられており、ソースタンク5の内部上方空間部5aの圧力を設定値に自動調整するためのものである。即ち、流入側の流路Lにおいて、キャリアガスGの圧力Po及び温度Toを検出すると共に、当該検出圧力Po及び温度Toを用いて演算制御部16において圧力の温度補正を行い、更に、当該補正した圧力値と、設定入力端子17からの設定圧力値とを対比して、両者の偏差が零となる方向にコントロール弁CVの開閉を制御する。
【0034】
図2は、前記自動圧力調整装置15のブロック構成を示すものであり、その演算制御部16は、温度補正回路16a、比較回路16b、入出力回路16c及び出力回路16d等から構成されている。
前記圧力検出器Po及び温度検出器Toからの検出値はディジタル信号に変換されて温度補正回路16aへ入力され、ここで検出圧力Poが検出圧力Ptに補正されたあと、比較回路16bへ入力される。また、設定圧力の入力信号Psが端子17から入力され、入出力回路16cでディジタル値に変換されたあと比較回路16bへ入力され、ここで前記温度補正回路16aからの温度補正をした検出圧力Ptと比較される。そして、設定圧力入力信号Psが温度補正をした検出圧力Ptより大きい場合には、コントロール弁CVの駆動部へ制御信号Pdが出力される。これにより、コントロール弁CVが閉鎖方向へ駆動され、設定圧力入力信号Psと温度補正した検出圧力Ptとの差(Ps−Pt)が零となるまで閉弁方向へ駆動される。
【0035】
また、逆に、前記設定圧力入力信号Psが温度補正をした検出圧力Ptよりも小さい場合には、コントロール弁CVの駆動部へ制御信号Pdが出力され、コントロールCVが開弁方向へ駆動される。これにより両者の差Ps−Ptが零となるまで開弁方向への駆動が継続される。
【0036】
前記流量制御装置19は、ソースタンク5の下流側の混合ガスGoの導出流路Lに設けられており、図3の構成図に示す如く、コントロール弁CVを通して流入した混合ガスGoをオリフィス21を通して流出させるようにした点を除いて、その他の構成は前記自動圧力調整装置19の場合と同じである。従って、ここではその詳細な説明は省略する。
【0037】
尚、流量制御装置19の演算制御部20に於いては、圧力検出値Pを用いて流量QがQ=KP(Kは、オリフィスによって決まる定数)として演算され、この演算された流量に温度検出器Tの検出値によって所謂温度補正を施して、温度補正をした流量演算値と設定流量値とを比較回路20bで比較して、両者の差信号をコントロール弁CVの駆動回路へ出力する構成となっている。
【0038】
当該流量制御装置19そのものは上述の通り公知であるが、オリフィス21の下流側圧力P(即ち、プロセスチャンバ側の圧力P)とオリフィス21の上流側圧力P(即ち、コントロール弁CV2の出口側の圧力P)との間に、P/P約2以上の関係(所謂臨界条件)が保持されている場合には、オリフィス21を流通する混合ガスGoの流量QがQ=KPとなり、圧力Pを制御することにより流量Qを高精度で制御できると共に、コントロールバルブCV2の上流側の混合ガスGoの圧力が大きく変化しても、流量制御特性が殆ど変化しないと云う、優れた特徴を有するものである。
【0039】
図4は、自動圧力調整方式を用いた本発明に係る原料の気化供給装置に於けるキャリアガスGの流量A(sccm)、ソースタンク5の全内圧Ptank(Torr)、原料4の蒸気圧(分圧)Po(Torr)及び原料4の流量X(sccm)の関係を示したものであり、チャンバ11への混合ガスGoの供給流量(sccm)のQは、Q=A+X(sccm)となり、流量制御装置19に於ける制御流量となる。
【0040】
即ち、原料の流量X:全流量Q=ソースタンク内の原料蒸気圧(分圧)Po:ソースタンク内全内圧Ptankの関係式が成立し、ここから原料の流量Xは、X=全流量Q×ソースタンク内の原料蒸気圧(分圧)Po/ソースタンク内全内圧Ptankとなり、原料流量X(即ち、ソースタンク5からの原料4の持ち出し量)が全流量Q、原料蒸気圧Po、タンク内全内圧Ptankから容易に計算できる。
【0041】
また、上記原料流量Xの関係式からも明らかなように原料の流量X(即ち、混合ガスGo内の原料濃度)は、ソースタンクの内圧力Ptankと、原料の飽和蒸気圧Poと、ソースタンク内温度をパラメータとして、決まることになる。
【0042】
図5は、本発明に係る原料の気化供給装置に於いて、原料をTEOSとし、且つキャリアガスGをアルゴン(Ar)、チャンバへの混合ガス流量Q=10(sccm)、ソースタンクの全内圧Ptank=1000(Torr)、(即ち、自動圧力調整装置15によるソースタンク内制御圧力)、TEOSの蒸気圧Po-=470(Torr)(温度150℃の場合)、キャリアガスArの供給量A(sccm)とした場合の混合ガスGo内のTEOS流量Xを示すものであり、TEOS流量X(sccm)=Q×PTEOS/Ptank=10×470/1000=4.7(sccm)となる。
その結果、混合ガスGoの全供給流量Q=A+X=10(sccm)、TEOS流量X=4.7(sccm)、キャリアガス(Ar)Gの流量A=5.3(sccm)となる。
【0043】
尚、以下は本実施例で用いるソースタンク内圧調整用の自動圧力調整装置15の主要な仕様を示すものであり、最高使用温度は150℃、流量500sccm(N)時の最大圧力(F.S.圧力)は133.3kPaabs、である。
【0044】
【表1】

【0045】
また、本実施例で用いる流量制御装置19の主要な仕様は、上記表1の名称の欄が流量制御装置に、圧力レンジ(F.S.圧力)の欄が流量レンジ(F.S)、500sccm(N)に、二次側圧力の欄が1次側圧力500kPa abs以下に変るだけであり、その他の仕様は全く同一である。
【0046】
更に、上記自動圧力調整装置15及び流量制御装置19で使用するコントロール弁CV、CVは、使用温度を150℃〜250℃にまで上昇させるため、ピエゾアクチエータや皿バネ等のバルブ構成部材を高温使用が可能な仕様のものにすると共に、ピエゾ素子やバルブの各構成部材の熱膨張を考慮して、ダイヤフラム押えにインバー材を使用することにより、ピエゾ素子駆動部の膨張による流路閉塞を防止できるようにしている。
また、ピエゾ素子駆動部の格納ケースを孔開きシャーシとし、ピエゾ素子駆動部等を空冷可能な構造とすることにより、ピエゾバルブの各構成パーツの熱膨張の低減を図ると共に、コントロールバルブVoのボディ部にカートリッジヒータ又はマントルヒータを取り付け、バルブ本体を所定温度(最高250℃)に加熱するようにしている。
尚、自動圧力調整装置15及び流量制御装置そのものは、特許第4605790号等により公知であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明はMOCVD法に用いる原料の気化供給装置としてだけでなく、半導体製造装置や化学品製造装置等において、加圧貯留源からプロセスチャンバへ気体を供給する構成の全ての気体供給装置に適用することができる。
同様に、本発明に係る自動圧力調整装置は、MOCVD法に用いる原料の気化供給装置用だけでなく、一次側の流体供給源の自動圧力調整装置として、半導体製造装置や化学品製造装置等の流体供給回路へ広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0048】
1はキャリアガス供給源
2は減圧装置
3は質量流量制御装置
4は原料
5はソースタンク(容器)
5aはソースタンクの内部上方空間
6は高温加熱部
7は入口バルブ
9は出口バルブ
10はバルブ
11はプロセスチャンバ(結晶成長炉)
12はヒータ
13は基板
14は真空ポンプ
15はソースタンク用自動圧力調整装置
16・20は演算制御部
16a・20aは温度補正回路
16b・20bは比較回路
16c・20cは入出力回路
16d・20dは出力回路
17・21は入力信号端子(設定入力信号)
18・22は出力信号端子(圧力出力信号)
19圧力式流量制御装置
21オリフィス
はキャリアガス
は原料の飽和蒸気
Goは混合ガス
は薄膜形成用ガス
・Lは流路
P・Poは圧力検出器
T・Toは温度検出器
CV・CVはコントロール弁
〜Vはバルブ
Psは設定圧力の入力信号
Ptは温度補正後の検出圧力値
Pdはコントロール弁駆動信号
Potは制御圧力の出力信号(キャリアガスGの温度補正後の圧力検出信号)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアガス供給源と、原料を貯留したソースタンクと、キャリアガス供給源からのキリアガスGを前記ソースタンクの内部上方空間部へ供給する流路Lと、当該流路Lに介設され、前記ソースタンクの内部上方空間部の圧力を設定圧力に制御する自動圧力調整装置と、前記ソースタンクの内部上方空間部から、原料より生成した原料蒸気とキャリアガスとの混合体である混合ガスGをプロセスチャンバへ供給する流路Lと、当該流路Lに介設され、プロセスチャンバへ供給する混合ガスGの流量を設定流量に自動調整する流量制御装置と、前記ソースタンクと流路L及び流路Lとを設定温度に加熱する恒温加熱部とから成り、ソースタンクの内部上方空間部の内圧を所望の圧力に制御しつつプロセスチャンバへ混合ガスGを供給する構成としたことを特徴とする原料の気化供給装置。
【請求項2】
流路L及び流路Lは、流体が流れる配管路と、自動圧力調整装置及び流量制御装置の内部の流通路で構成した事を特徴とする請求項1に記載の原料の気化供給装置。
【請求項3】
ソースタンクの内部上方空間部の圧力を制御する自動圧力調整装置を、コントロール弁CVと、その下流側に設けた温度検出器T及び圧力検出器Pと、前記圧力検出器Pの検出値を温度検出器Tの検出値に基づいて温度補正を行い、キャリアガスGの圧力を演算すると共に、予め設定した圧力と前記演算圧力とを対比して両者の差が少なくなる方向にコントロール弁CVを開閉制御する制御信号Pdを出力する演算制御部と、キャリアガスが流れる流通路を所定温度に加熱するヒータとから構成した請求項1に記載の原料の気化供給装置。
【請求項4】
ソースタンクの内部上方空間より混合ガスGをプロセスチャンバへ供給する流量制御装置を、コントロール弁CVと、その下流側に設けた温度検出器T及び圧力検出器Pと、圧力検出器Pの下流側に設けたオリフィスと、前記圧力検出器Pの検出値を用いて演算した混合ガスGの流量を温度検出器Tの検出値に基づいて温度補正を行い、混合ガスGの流量を演算すると共に、予め設定した混合ガス流量と前記演算した混合ガス流量とを対比して両者の差が少なくする方向にコントロール弁CVを開閉制御する制御信号Pdを出力する演算制御部と、混合ガスが流れる流通路を所定温度に加熱するヒータとから構成するようにした請求項1に記載の原料の気化供給装置。
【請求項5】
原料を液体又は多孔性担持体に担持させた固体原料とするようにした請求項1に記載の原料の気化供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−234860(P2012−234860A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100446(P2011−100446)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(390033857)株式会社フジキン (148)
【Fターム(参考)】