説明

双腕ロボット及びそのハンドリング方法

【課題】双腕ロボット及びそのハンドリング方法において、パレタイズ時にワークを歪むことなく保持する。
【解決手段】双腕ロボットは、左右一対で構成されたワークを保持する第1ハンド部2a及び第2ハンド部2bと、制御部とを備える。両ハンド部2a、2bは、それぞれ長爪21と可動する短爪22とを有する。ワークWがストッパ91によって位置決めされているとき、制御部は、両ハンド部2a、2bを移動させて両爪21、22の間にワークWを位置させる。そして、両ハンド部2a、2bを距離m1だけ移動させることにより、ワークWを押し動かしてワークWとストッパ91との間にクリアランスCを生じさせる。これにより、その後、両ハンド部2a、2bの短爪22を可動させても、ワークWがストッパ91に押し付けられて歪むことがなくなり、ワークWを長爪21に押し付けて保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークをパレット上に積載する双腕ロボット及びそのハンドリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークの両端を保持するためのハンド部を備え、ワークの搬送やハンドリングのためにパレット上にワークを積載するための双腕ロボットが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。このような双腕ロボットは、コンベアによって供給されたワークを保持して搬送し、パレット上に整列積載することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2549139号(特開平1−222879号公報)
【特許文献2】特開平8−85627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図8(a)〜(c)は、従来の双腕ロボットによるワークの保持動作の一例を示す。双腕ロボット100は、第1ハンド部120a及び第2ハンド部120bから構成されるハンド部を備える。両ハンド部120a、120bは、それぞれ固定爪121と可動爪122とを有する。双腕ロボット100は、コンベア9によって供給され、コンベア9上のストッパ91によって位置決めされているワークWの長手方向の両端を、両ハンド部120a、120bにより挟むことにより保持して搬送するものである。
【0005】
図8(a)に示すように、ワークWを保持するとき、双腕ロボット100は、まず、第1ハンド部120aを図中の白矢印方向に移動させると共に、第2ハンド部120bを図中の黒矢印方向に移動させて両爪121、122の間にワークWを位置させる。そして、図8(b)の示すように、両ハンド部120a、120bの可動爪122を図中の白矢印方向に可動させることにより、ワークWを固定爪121に押し付けて保持しようとする。しかしながら、例えば、ワークWの幅Dwよりも、固定爪121と可動爪122との間の距離Dbの方が長いときがある。その場合、図8(c)に示すように、ワークWは、可動爪122の可動によりストッパ91に押し付けられるため、両端が歪むことがある。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、パレタイズ時にワークが歪むことなく保持することができる双腕ロボット及びそのハンドリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、長尺のワークを保持するハンド部と、前記ハンド部の動作を制御する制御部とを備え、コンベアに設けられたストッパによって停止されているワークを前記ハンド部によって保持して搬送する双腕ロボットであって、前記ハンド部は、ワークを保持する少なくとも一方が他方に対して可動な一対の爪を有し、前記制御部は、前記ストッパによって停止されているワークを保持する際に、ワークと前記ストッパとの間に隙間が生じるように前記ハンド部又は一方の可動な爪を移動させることによりワークを移動させ、その後に、他方の爪を可動させて一対の爪間にワークを保持するものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の双腕ロボットにおいて、前記ハンド部は、ワークの長さ方向の一端を保持する第1ハンド部と、ワークの長さ方向の他端を保持する第2ハンド部とを有し、前記制御部は、ワークを保持する際に、ワークの長さ方向の中間位置と前記第1ハンド部及び第2ハンド部の中間位置とが一致するように、前記第1ハンド部又は第2ハンド部のいずれかを移動させることによりワークを位置決めし、その後に、ワークを保持するものである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の双腕ロボットにおいて、前記ハンド部からワークまでの距離を検出する距離センサをさらに備え、前記ハンド部は、ワークの長さ方向の一端を保持する第1ハンド部と、ワークの他端を保持する第2ハンド部とを有し、前記制御部は、ワークを保持する際に、前記距離センサにより測定した前記ハンド部からワークまでの距離の測定結果に基いて、ワークの長さ方向の中間位置と前記第1ハンド部及び第2ハンド部の中間位置とが一致するように、前記ハンド部を移動させて該ハンド部を位置決めし、その後に、ワークを保持するものである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、長尺のワークを保持するハンド部と、前記ハンド部の動作を制御する制御部とを用いて、コンベアに設けられたストッパによって停止されているワークを前記ハンド部によって保持して搬送する双腕ロボットのハンドリング方法であって、前記ハンド部は、ワークを保持する少なくとも一方が他方に対して可動な一対の爪を有し、前記制御部の制御により、前記ストッパによって停止されているワークと前記ストッパとの間に隙間が生じるように、前記ハンド部又は一方の可動な爪を移動させることによりワークを移動させる第1のステップと、その後に、他方の爪を可動させて一対の爪間にワークを保持する第2のステップとを有するものである。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の双腕ロボットのハンドリング方法において、前記ハンド部は、ワークの長さ方向の一端を保持する第1ハンド部と、ワークの長さ方向の他端を保持する第2ハンド部とを有し、前記第1のステップの動作時に、ワークの長さ方向の中間位置と前記第1ハンド部及び第2ハンド部の中間位置とが一致するように、前記第1ハンド部又は第2ハンド部のいずれかを移動させることによりワークを位置決めするものである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の双腕ロボットのハンドリング方法において、前記ハンド部からワークまでの距離を検出する距離センサをさらに備え、前記ハンド部は、ワークの長さ方向の一端を保持する第1ハンド部と、ワークの他端を保持する第2ハンド部とを有し、前記第1のステップの動作時に、前記距離センサにより測定した前記ハンド部からワークまでの距離の測定結果に基いて、ワークの長さ方向の中間位置と前記第1ハンド部及び第2ハンド部の中間位置とが一致するように、前記ハンド部を移動させて該ハンド部を位置決めするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、ワークを保持する際に、ワークとストッパとの間に予め隙間が生じるようにしておくので、ワークをストッパに押し付けることがなくなり、ワークを歪ませることなしに保持することができる。
【0014】
請求項2及び3の発明によれば、ワークの長さ方向の中間位置と、両ハンド部の中間位置とを一致させるので、ハンド部がワークをバランスよく保持することができる。従って、ワークを適切な位置に整列積載することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得ることができる。
【0016】
請求項5及び6の発明によれば、請求項2の発明と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る双腕ロボットの斜視図。
【図2】上記ロボットのブロック構成図。
【図3】(a)は、上記ロボットのハンド部の斜視図、(b)は(a)のAA線断面図。
【図4】(a)〜(e)は、それぞれ上記ロボットによるワークの保持動作の一例を示す上面図。
【図5】(a)〜(d)は、それぞれ上記ロボットによるワークの位置決め動作の一例を示す正面図。
【図6】(a)〜(c)は、それぞれ上記ロボットによるワークの位置決め動作の別の一例を示す正面図。
【図7】(a)〜(c)は、それぞれ上記ロボットによるワークの位置決め動作の別の一例を示す正面図。
【図8】(a)〜(c)は、それぞれ従来の双腕ロボットによるワークの保持動作の一例を示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る双腕ロボット及びそのハンドリング方法について、図面を参照して説明する。図1は双腕ロボット1の外観を示し、図2は同ロボット1のブロック構成を示し、図3(a)(b)は同ロボット1のハンド部2の構造を示す。
【0019】
これらの図に示されるように、双腕ロボット1は、ワークを保持する左右一対のハンド部2を備え、ワークWを供給場所から順次搬送して、予め所定位置に設置された可搬式のパレット7上に隙間なく整列させて積載するロボットである。ワークWは、長尺の箱、例えばダンボール箱であり、コンベア9によって供給され、そのストッパ91によって位置決めされて静止している。双腕ロボット1は、コンベア9上に位置決めされているワークWの長手方向の両端をハンド部2によって保持して搬送する。そのため、双腕ロボット1はコンベア9に向かって左右に一対の構成とされている。パレット7は、左右一対で構成された双腕ロボット1の中央線上の床面に配置されている。
【0020】
双腕ロボット1は、上記ハンド部2と、回転部23を介してハンド部2を保持すると共に移動させるアーム部3と、アーム部3を走行移動させる搬送部4と、パレット7におけるワークWの積載位置の情報を取得するための計測部5と、前記積載位置の情報やワークの寸法情報を記憶するための記憶部6と、各部の動作を制御する制御部10と、を備えている。これらは、記憶部6と制御部10とを除いて、各部がそれぞれ左右2対構成とされている。なお、記憶部6は、制御部10に内蔵した記憶装置を用いるようにしてもよい。
【0021】
ここで、説明の便のために、地上に固定されたxyz直交座標系を設定する。x方向はハンド部2から見てコンベア9に向かう水平方向、y方向はハンド部2から見てパレット7に向かう水平方向、z方向は垂直上方とする。すると、左側のハンド部2については、左手系のxyz座標系となり、右側のハンド部2については、右手系のxyz座標系となる。ハンド部2についても、同様に、左右のXYZ座標系が設定される。また、左右一対のハンド部2は、互いに左右勝手違い関係になっている。
【0022】
ハンド部2は、人の手のひらに相当する平板状のハンドベース部20と、ハンドベース部20から立設されたワークWを保持するための2組の板状の長爪21と短爪22とを備えている。各組の長爪21と短爪22とは、それぞれ互いに直交して、直方形の対向する辺部をそれぞれ挟む態様で隣り合う位置に配置されている。
【0023】
上記2つの長爪21は共にハンドベース部20に固定された固定爪であり、長爪21にワークWを載せることにより、ワークWを保持可能である。2つの短爪22は共に可動爪であり、例えばエアシリンダや油圧シリンダから成る開閉駆動部25によってハンドベース部20に平行に移動することができる。短爪22を、開閉駆動部25によって、図3(a)中の矢印X1,Z1で示すように移動することにより、長爪21と短爪22間の距離を変えてハンド部2を開閉でき、ワークWの隅部を長爪21と短爪22で挟むことによりワークWを保持したり、解放したりできる。短爪22の移動距離、すなわちストロークは、保持するワーク寸法の最小から最大までをカバーできるストロークであり、品種により寸法が異なるワークWに対応できるようになっている。
【0024】
また、ハンド部2は、上述の短爪22の移動位置を検出するための距離センサ26を備えている。短爪22の肉厚a、及び距離センサ26と長爪21との距離bを既知とし、距離センサ26と短爪22の距離dを測定値として、長爪21と短爪22との間の距離Lが、L=b−a−dと求められる。
【0025】
また、上述の長爪21の少なくとも一方には、長爪21に作用する外力を測定するための応力センサ24が設けられている。応力センサ24は、歪ゲージなどを用いて構成することができる。また、応力センサ24として、市販されている6軸力センサやロードセルを使用することができる。
【0026】
アーム部3は、床面近くから垂直に設けられた支柱部材31と、支柱部材31から片持ち梁のように張り出した水平部材32と、水平部材32から垂下保持されている垂直部材33と、ワークWまでの距離を測定するワーク距離センサ34とを備えている。水平部材32は、上下駆動部35によって、支柱部材31に沿って上下動される。垂直部材33は、接離駆動部36によって、水平部材32に沿って水平動される。ワーク距離センサ34は、レーザセンサや赤外線センサなどの光学センサである。ワーク距離センサ34は、放射されるレーザや赤外線などの光がワークWの側面に反射し、その反射光を計測することにより、ワーク距離センサ34からワークWまでの距離を計測する。
【0027】
回転部23は、垂直部材33に対してハンド部2のハンドベース部20を、矢印R,R1で示すように、y軸(Y軸)回りに回転自在に保持している。また、回転部23は、不図示の回転駆動部によって、ハンド部2を所定の回転角度に保持することができる。
【0028】
搬送部4は、床面に配設された2本のレールr上を搬送駆動部41によって移動する搬送ベース部40を備えている。搬送ベース部40は、上述の支柱部材31、従って、アーム部3、回転部23、ハンド部2の全体をその上部に保持している。従って、搬送部4がレールrに沿って移動することにより、ハンド部2がレールrに沿って移動する。
【0029】
上記の構成を有することにより、ハンド部2は、4軸について移動、又は回転することができる。これらの軸は、回転部23によるワークWを回転させるためにハンド部2を回転させる軸、アーム部3によるワークWを上下に移動させる軸、及びワークWの長さ寸法に対応できるように左右のハンド部2の間隔を変える軸、及び搬送部4によるワークWをコンベア9とパレット7との間で移動する軸の合計4軸で構成されている。
【0030】
計測部5は、ハンド部2の長爪21の位置を、xyz座標系による3次元空間における座標値として把握できるように構成されている。座標値の取得は、各駆動部、つまり、上下駆動部35、接離駆動部36、搬送駆動部41、および回転部23の回転駆動部による各部の平行移動量や回転移動量を計測し、積算することによって行われる。例えば、各駆動部がモータ駆動の場合、モータの回転数をロータリエンコーダで取得したり、パルスモータの制御パルスを計数したりして、対応する移動量を算出することができる。記憶部6には、ワークWの長手方向の寸法や、ワーク距離センサ34から適切な位置に位置決めされたワークWまでの距離や、ワーク距離センサ34から双腕ロボット1の中央位置までの距離等の情報が記憶されている。
【0031】
パレット7は、長尺のワークWを多段積みできるように、パレット本体70に、ワーク転倒防止部材71を備えて構成されている。パレット本体70の長さは、ワークWの長さに合わせてあり、パレット本体70の幅は、複数個のワークWを効率的に整列可能な寸法に合わせてある。また、ワーク転倒防止部材71は、パレット本体70には積載されたワークWの転倒を防止するものであり、折り畳み式のポールなどで構成される。このワーク転倒防止部材71は、必要に応じて設けることができる。
【0032】
制御部10は、CPUやメモリや外部記憶装置や表示装置や入力装置等の一般的な構成を備えた電子計算機や、組込用の制御コンピュータや、シーケンサ等を用いて構成することができる。制御部10は、各部のセンサや計測部5からの信号や情報を受け取り、各駆動部を制御することにより、自律的にパレタイズ動作を行う。制御部10は、自律的なパレタイズ動作のために、計測部5、応力センサ24、距離センサ26からの出力情報をリアルタイムで取得する。
【0033】
次に、双腕ロボット1によるワークWのパレタイズ時における保持動作について、図4を参照して説明する。前出の図1〜図3も適宜参照する。図4においては、説明の便宜上、左側のハンド部2を第1ハンド部2aと示し、右側のハンド部2を第2ハンド部2bと示す。また、長爪21と短爪22のうち、水平上下方向の長爪21と短爪22とを示し、垂直方向の長爪21と短爪22とは図示を省略する。図4中の両ハンド部2a、2bは、図1に示したハンド部2が回転部23により180度回転された状態にある。
【0034】
図4(a)に示すように、ワークWがコンベア9のストッパ91によって位置決めされているとき、制御部10は、第1ハンド部2aを図中の白矢印方向に移動させると共に、第2ハンド部2bを図中の黒矢印方向に移動させて両爪21、22の間にワークWを位置させる(図4(b)参照)。そして、制御部10は、図4(c)に示すように、両ハンド部2a、2bを図中の白矢印方向に移動させることにより、ワークWを同じく図中の白矢印方向に押し動かす(請求項でいう第1のステップ)。具体的には、両ハンド部2a、2bを図中の白矢印方向に、同図中の点線で示す移動前の長爪21´の位置から距離m1だけ移動させる。これにより、長爪21がワークWを同じく図中の白矢印方向に押し動かし、ワークWとストッパ91との間にクリアランス(隙間)Cを生じさせる。なお、距離m1は、予め記憶部6に記憶されている。
【0035】
そして、図4(d)に示すように、制御部10は、両ハンド部2a、2bの短爪22を図中の白矢印方向に可動させることにより、図4(e)に示すように、ワークWを長爪21に押し付けてワークWの隅部を挟むことにより維持固定して保持する(請求項でいう第2のステップ)。
【0036】
このように、制御部10は、両ハンド部2a、2bの爪21、22の間にワークWが位置する状態から、両ハンド部2a、2bを移動させてワークWとストッパ91との間にクリアランスCが生じるようにワークWを押し動かす。そして、短爪22を可動させてワークWを長爪21に押し付けて保持する。そのため、ワークWとストッパ91との間のクリアランスCによりワークWがストッパ91に押し付けられることがなくなるので、ワークWを歪ませることなく保持することができる。
【0037】
次に、双腕ロボット1によるワークWのパレタイズ時におけるワークの位置決め動作ついて図5乃至図7を参照して説明する。前出の図1〜図3も適宜参照する。図5乃至図7においては、説明の便宜上、左側のハンド部2を第1ハンド部2aと示し、右側のハンド部2を第2ハンド部2bと示す。また、図5乃至図7においては、長爪21と短爪22のうち、垂直上下方向の長爪21と短爪22とを示し、水平方向の長爪21と短爪22とは図示を省略する。Z1は双腕ロボット1の中央線上の位置、すなわち両ハンド部2a、2bの中間位置を示し、ZwはワークWの長手方向の中央位置を示す。LwはワークWの長手方向の幅を示す。Lwの値は記憶部6に予め記憶されている。
【0038】
図5は、パレタイズ時におけるワークの位置決め動作の一例である。ストッパ91により位置決めされているワークWの中央位置Zwは、双腕ロボット1の中央位置Z1とずれている場合がある。具体的には例えば、図5(a)に示すように、ワークWの中央位置Zwが第2ハンド部2b側にずれているとき、制御部10は、第2ハンド部2bを図5(b)中の白矢印方向に移動させる。
【0039】
そして、図5(c)に示すように、制御部10は、ワークWの中央位置Wzと、双腕ロボット1の中央位置Z1とが一致するように、第2ハンド部2bを移動させることによりワークWを押し動かして位置決めする。すなわち、制御部10は、双腕ロボット1の中央位置Z1から第2ハンド部2bまでの距離がLw/2となるまで第2ハンド部2bを図中の白矢印方向に移動させてワークWを位置決めする。
【0040】
そして、図5(d)に示すように、ワークWを位置決めした後、制御部10は、第2ハンド部2bを図中の白矢印方向、つまり上記図5(c)の白矢印方向とは逆方向に移動させて所定の位置に戻した後、両ハンド部2a、2bの長爪21及び短爪22によってワークWを挟むことにより保持させる(請求項でいう第1のステップ)。なお、ワークWの中央位置Zwが第1ハンド部2a側にずれている場合においては、制御部10は、第1ハンド部2aを移動させてワークWを押し動かすことにより位置決めすることができる。
【0041】
次に、パレタイズ時におけるワークの位置決め動作の別の一例について図6を参照して説明する。ここでは、Sは、第2ハンド部2b側のワーク距離センサ34から双腕ロボット1の中央位置Z1までの距離を示し、Swはワーク距離センサ34から、ワークWまでの距離を示す。また、説明の便宜上、図6(a)にはストッパ91によって位置決めされたワークWと、ワーク距離センサ34のみを示す。なお、距離Sは予め記憶部6に記憶されている。
【0042】
双腕ロボット1の中央位置Z1と、ワークWの中央位置Zwとが一致する場合、S−Sw=Lw/2となる。しかしながら、このようにならない場合、制御部10は、両ハンド部2a、2bを移動させることにより、双腕ロボット1の中央位置Z1を移動させてワークWの中央位置Zwと一致させる。
【0043】
具体的には、図6(a)に示すように、例えばワークWの中央位置Zwが第2ハンド部2b側にずれている場合、制御部10は、ワーク距離センサ34による測定結果がS−Sw=Lw/2とならないため、測定結果に基いて両ハンド部2a、2bを移動させる。すなわち、図6(b)に示すように、制御部10は、両ハンド部2a、2bを図中の白矢印方向に補正距離m2だけ移動させる。補正距離m2は、m2=S−Sw―Lw/2の計算式により求められる。そして、図6(c)に示すように、制御部10は、ワークWの中央位置Zwと、双腕ロボット1の中央位置Z1とを一致させた後、両ハンド部2a、2bの長爪21及び短爪22によってワークWを挟むことにより保持させる(請求項でいう第1のステップ)。
【0044】
次に、パレタイズ時におけるワークの位置決め動作の別の一例について図7を参照して説明する。ここでは、説明の便宜上、第1ハンド部2a側のワーク距離センサ34を第1ワーク距離センサ34aと示し、第2ハンド部2b側のワーク距離センサ34を第2ワーク距離センサ34bと示す。また、説明の便宜上、図7(a)にはストッパ91によって位置決めされたワークWと、両ワーク距離センサ34a、34bのみを示す。
【0045】
また、図7において、Saは、第1ワーク距離センサ34aからワークWまでの距離を示し、Sbは、第2ワーク距離センサ34bからワークWまでの距離を示す。双腕ロボット1の中央位置Z1と、ワークWの中央位置Zwとが一致する場合における各距離Sa、Sbの値はそれぞれ同じ値となる。そのため、各距離Sa、Sbが一致しない場合、制御部10は、両ハンド部2a、2bを移動させることにより、双腕ロボット1の中央位置Z1を移動させてワークWの中央位置Zwと一致させる。
【0046】
具体的には、図7(a)に示すように、例えばワークWの中央位置Zwが第2ハンド部2b側にずれている場合において、制御部10は、各ワーク距離センサ34a、34bにより距離Sa、Sbをそれぞれ測定する。そして、図7(b)に示すように、両ハンド部2a、2bを図中の白矢印方向に補正距離m3だけ移動させる。補正距離m3は、m3=(Sa−Sb)/2の計算式により算出することができる。
【0047】
そして、図7(c)に示すように、制御部10は、ワークWの中央位置Zwと、双腕ロボット1の中央位置Z1とを一致させた後、両ハンド部2a、2bの長爪21及び短爪22によってワークWを挟むことにより保持させる(請求項でいう第1のステップ)。
【0048】
上記図5乃至図7に示したように、本実施形態に係る双腕ロボット1においては、ワークWの中央位置Zwが、双腕ロボット1の中央位置Z1からずれている場合であっても、中央位置Zwと中央位置Z1とを一致させた後に、ハンド部2によってワークWを保持することができる。そのため、ハンド部2がワークWをバランスよく保持することができるので、ワークWを適切な位置に整列積載することができる。
【0049】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、ハンド部2を移動させてワークWを押し動かすものを示したが、これに限られず、長爪21が可動な構成とした場合には、この長爪21を可動させて、ワークWとストッパ91との間にクリアランスが生じるようにしてもよい。また、上記実施形態では、ハンド部2が4つの爪を有する例を示したが、これに限られず、互いに対向する1つの固定爪と1つの可動爪から成る一対の爪を有するものとしてもよい。また、対向する2つの爪は、少なくとも一方が他方に対して相対的に可動であればよく、双方が可動の場合をも含む。
【符号の説明】
【0050】
1 双腕ロボット
2 ハンド部(第1ハンド部、第2ハンド部)
2a 第1ハンド部
2b 第2ハンド部
7 パレット
9 コンベア
10 制御部
21 長爪(爪)
22 短爪(爪)
34 ワーク距離センサ
34a 第1ワーク距離センサ(距離センサ)
34b 第2ワーク距離センサ(距離センサ)
91 ストッパ
C クリアランス(隙間)
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のワークを保持するハンド部と、前記ハンド部の動作を制御する制御部とを備え、コンベアに設けられたストッパによって停止されているワークを前記ハンド部によって保持して搬送する双腕ロボットであって、
前記ハンド部は、ワークを保持する少なくとも一方が他方に対して可動な一対の爪を有し、
前記制御部は、前記ストッパによって停止されているワークを保持する際に、ワークと前記ストッパとの間に隙間が生じるように前記ハンド部又は一方の可動な爪を移動させることによりワークを移動させ、その後に、他方の爪を可動させて一対の爪間にワークを保持することを特徴とする双腕ロボット。
【請求項2】
前記ハンド部は、ワークの長さ方向の一端を保持する第1ハンド部と、ワークの長さ方向の他端を保持する第2ハンド部とを有し、
前記制御部は、ワークを保持する際に、ワークの長さ方向の中間位置と前記第1ハンド部及び第2ハンド部の中間位置とが一致するように、前記第1ハンド部又は第2ハンド部のいずれかを移動させることによりワークを位置決めし、その後に、ワークを保持することを特徴とする請求項1に記載の双腕ロボット。
【請求項3】
前記ハンド部からワークまでの距離を検出する距離センサをさらに備え、
前記ハンド部は、ワークの長さ方向の一端を保持する第1ハンド部と、ワークの他端を保持する第2ハンド部とを有し、
前記制御部は、ワークを保持する際に、前記距離センサにより測定した前記ハンド部からワークまでの距離の測定結果に基いて、ワークの長さ方向の中間位置と前記第1ハンド部及び第2ハンド部の中間位置とが一致するように、前記ハンド部を移動させて該ハンド部を位置決めし、その後に、ワークを保持することを特徴とする請求項1に記載の双腕ロボット。
【請求項4】
長尺のワークを保持するハンド部と、前記ハンド部の動作を制御する制御部とを用いて、コンベアに設けられたストッパによって停止されているワークを前記ハンド部によって保持して搬送する双腕ロボットのハンドリング方法であって、
前記ハンド部は、ワークを保持する少なくとも一方が他方に対して可動な一対の爪を有し、
前記制御部の制御により、前記ストッパによって停止されているワークと前記ストッパとの間に隙間が生じるように、前記ハンド部又は一方の可動な爪を移動させることによりワークを移動させる第1のステップと、
その後に、他方の爪を可動させて一対の爪間にワークを保持する第2のステップとを有することを特徴とする双腕ロボットのハンドリング方法。
【請求項5】
前記ハンド部は、ワークの長さ方向の一端を保持する第1ハンド部と、ワークの長さ方向の他端を保持する第2ハンド部とを有し、
前記第1のステップの動作時に、ワークの長さ方向の中間位置と前記第1ハンド部及び第2ハンド部の中間位置とが一致するように、前記第1ハンド部又は第2ハンド部のいずれかを移動させることによりワークを位置決めすることを特徴とする請求項4に記載の双腕ロボットのハンドリング方法。
【請求項6】
前記ハンド部からワークまでの距離を検出する距離センサをさらに備え、
前記ハンド部は、ワークの長さ方向の一端を保持する第1ハンド部と、ワークの他端を保持する第2ハンド部とを有し、
前記第1のステップの動作時に、前記距離センサにより測定した前記ハンド部からワークまでの距離の測定結果に基いて、ワークの長さ方向の中間位置と前記第1ハンド部及び第2ハンド部の中間位置とが一致するように、前記ハンド部を移動させて該ハンド部を位置決めすることを特徴とする請求項4に記載の双腕ロボットのハンドリング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−228024(P2010−228024A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76202(P2009−76202)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】