反射防止フィルム欠陥検査装置
【課題】反射防止フィルムの低コントラストの欠陥でも欠陥抽出を容易にする反射防止フィルム欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】透明なフィルム状の基材に反射防止材料をコーティングして製造される反射防止フィルムの欠陥検査装置であって、少なくとも、前記反射防止フィルムを搬送する搬送手段と、搬送される反射防止フィルムを裏面から押し当て、円周表面に黒色部材を備えた検査ローラと、前記黒色部材に付着した異物を洗浄するローラと、前記検査ローラに押し当てられた反射防止フィルムの表面を照明する手段と、照明された前記反射防止フィルムを撮像して撮像画像を得る撮像手段と、撮像画像を処理して欠陥を抽出する画像処理手段と、欠陥を抽出した場合に製造工程に欠陥検出信号を出力する手段と、を備えたことを特徴とする反射防止フィルム欠陥検査装置。
【解決手段】透明なフィルム状の基材に反射防止材料をコーティングして製造される反射防止フィルムの欠陥検査装置であって、少なくとも、前記反射防止フィルムを搬送する搬送手段と、搬送される反射防止フィルムを裏面から押し当て、円周表面に黒色部材を備えた検査ローラと、前記黒色部材に付着した異物を洗浄するローラと、前記検査ローラに押し当てられた反射防止フィルムの表面を照明する手段と、照明された前記反射防止フィルムを撮像して撮像画像を得る撮像手段と、撮像画像を処理して欠陥を抽出する画像処理手段と、欠陥を抽出した場合に製造工程に欠陥検出信号を出力する手段と、を備えたことを特徴とする反射防止フィルム欠陥検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルムの欠陥を検査する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の表示デバイスの表示画面の最表面には、表示画面をキズから保護したり、防汚、帯電防止、映り込み防止のために、透明フィルムに反射防止材料をコーティングして製造される反射防止フィルムが貼られている。
【0003】
反射防止フィルムの製造工程では、ローラ状の長尺帯状の透光性のフィルムに対し、塗工、乾燥が単数または複数回行われ、光学膜が形成される。図1は反射防止フィルムの一例を断面で示す図である。図1に示される反射防止フィルムはフィルム基材1、ハードコート層2、反射防止層3の各層で構成されている。
【0004】
反射防止フィルムの欠陥は、塗工された塗膜の膜厚の変動によるムラや色相の変化などによる光学欠陥や異物やキズやコスレなどの欠陥が存在する。また、フィルム自体のキズ、ヘコミ、等の欠陥もある。
【0005】
反射防止フィルムの製造工程内には欠陥の検査を行うために欠陥検査機が設置されている。図2は一般的に用いられている反射防止フィルム(以下、フィルム)の欠陥検査装置の一例を示す概略構成図であって、複数のローラ11〜ローラ14からなる搬送ユニット(ローラの回転による搬送)によりフィルム15を搬送し、LED、蛍光灯、ハロゲンランプ、キセノンランプ、UVランプ等を用いた照明光源16及び17によってフィルムの全幅を照明し、フィルム15を矢印18で示す方向に搬送しながらフィルムの幅方向を全走査できるよう複数のラインCCDカメラ19(または2次元カメラ)によってフィルムを撮像する。照明光源16及び17は、その両方またはいずれか一方が適宜採用される。
【0006】
一方、フィルム15の搬送距離に応じた信号をロータリーエンコーダ21より取得し、前記信号を撮像タイミング信号として、一定の搬送距離毎に前記ラインCCDカメラ19によってフィルム表面を撮像し、撮像した画像を画像処理装置20で画像処理し、欠陥部分の抽出を行い、抽出した欠陥について、記憶機構を含む制御装置22に欠陥データ(欠陥の位置を示す座標、ラインCCDカメラの画素数、濃度値)をファイル及びデータベース(以下、DB)にデータとして保存する機構を有する欠陥検査装置である。この場合、ロータリーエンコーダ21の代わりに一定の搬送距離毎に撮像タイミング信号を発生するタイマーを用いることもある。
【0007】
一般に、欠陥の抽出処理は撮像された画像に対し、予め設定した閾値で二値化処理を行い、欠陥の抽出を行う。図3は欠陥の抽出処理を説明するための図で、図3(a−1)は欠陥部31が含まれる撮像画像30を示し、図3(a−2)は撮像画像30の線分32の画像信号33を示す。破線37で囲まれた信号31−1は欠陥部31の信号を示す。図3(a−1)に示す撮像画像30を予め設定した閾値34で二値化処理し、図3(b−1)に示す二値化画像35を得る。図3(b−2)は、図3(a−2)の画像信号33を予め設定した閾値34で二値化処理した信号36を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−145493号公報
【特許文献2】特開2006−225451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記反射防止フィルムの反射防止層3では、図4に示すように、入射光のうちハードコート層2と反射防止層3の界面で反射した界面反射光4を、反射防止層3の表面で反射した表面反射光5と同振幅、逆位相の光に反射防止層3によって変え、表面反射光と干渉することで反射防止を実現している。この反射防止層3に膜厚の部分的なむら不良が発生した場合には、干渉による反射光の低減に差異が生じ、光学欠陥として検査される。
【0010】
一方、フィルム裏面側ではフィルムと屈折率の異なる物質と隣接しており、下記の(1)式より反射率が高くなり、フィルム裏面と屈折率の異なる物質の境界面での反射光の強度が高くなる。ここでAはフィルムの屈折率、Bはフィルムの裏面側に接する物質は屈折率である。
反射率=(屈折率A―屈折率B)/(屈折率A+屈折率B)・・・・(1)
【0011】
即ち、フィルム裏面からの反射光に比べ反射防止層からの反射光の強度は弱いために、不良による反射光の変化そのものは、フィルム裏面からの反射光に埋もれてしまうほど小さい。膜厚変動が原因となって起こる上記反射光の変化を熟練者によって目視確認して検査することは容易ではなく、従って自動検査することが望まれているが、膜厚変動による欠陥は一般的にコントラストが低く、該欠陥を欠陥検査機で抽出しようとした場合に、ノイズ成分に埋もれてしまい、一般的に欠陥を抽出するために閾値を設定すると、欠陥ではない箇所を擬似欠陥として抽出してしまい、一般的に用いられている画像処理によって欠陥を検査することは難しい。
【0012】
言い換えれば、上記の図3に示すように、高コントラストの欠陥31場合には2値化処理によって欠陥を抽出することが出来るが、図5に示されるような低コントラストの場合には欠陥は明暗の差が低く、ノイズ成分に埋もれてしまい低コントラストの欠陥だけをある閾値によって2値化を行っても抽出することが出来ない。
【0013】
即ち図5(a)に示す低コントラストな欠陥40を含む撮像画像41の場合、例えば線分42の画像信号43を閾値レベル44で2値化処理を行う(図5(b))と、ノイズ部分46及び47を図5(c)に示すように欠陥信号53及び54として抽出してしまう。52は欠陥部45で得られた欠陥信号である。撮像画像41の全領域のおいては、図5(d)に示すようにノイズ部分を擬似欠陥48〜51として抽出してしまう。図5(c)の52は図5(d)の欠陥40に対応する信号で、同様に53はノイズ部分46を2値化処理した擬似欠陥50に対応する信号、54はノイズ部分47を2値化処理した擬似欠陥51に対応する信号である。
【0014】
このように、自動欠陥検査において低コントラストの欠陥を検査する場合に、フィルム裏面からの反射光の影響が大きく、またノイズ成分の影響もあり、照度調整や閾値の設定を行っても、欠陥の検査が困難である。
【0015】
照度調整や閾値の設定を行った結果、一時的に正常な欠陥検査が出来たとしても、外的な光の影響や照明光の経時変化によって、低コントラストの欠陥を安定して検査することは難しい。
【0016】
そこで、裏面からの反射光の影響を少なくするために、照明用光源にUVランプを使用することがある。これは反射防止フィルムの基材に用いられているTAC(トリアセチルセルロース(Triacetylcellulose)フィルムがUVランプ(紫外光)の波長を吸収するという性質を利用したもので、フィルム裏面での反射光を減少させ低コ
ントラストの欠陥検査を行う方法が採用されている。
【0017】
以上のように、自動検査装置で反射防止フィルムの欠陥を検査する場合、コントラストの低い欠陥については検査が困難であること、また、検査を容易にするためにUVランプを使用した場合には、UVランプを使用することによる設備費用や維持費が増大する問題がある。
【0018】
そこで本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、反射防止フィルムの低コントラストの欠陥でも欠陥抽出を容易にする反射防止フィルム欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の請求項1に係る発明は、透明なフィルム状の基材に反射防止材料をコーティングして製造される反射防止フィルムの欠陥検査装置であって、少なくとも、
前記反射防止フィルムを搬送する搬送手段と、
搬送される反射防止フィルムを裏面から押し当て、円周表面に黒色部材を備えた検査ローラと、
前記黒色部材に付着した異物を洗浄するローラと、
前記検査ローラに押し当てられた反射防止フィルムの表面を照明する手段と、
照明された前記反射防止フィルムを撮像して撮像画像を得る撮像手段と、
撮像画像を処理して欠陥を抽出する画像処理手段と、
欠陥を抽出した場合に欠陥検出信号を出力する手段と、を備えたことを特徴とする反射防止フィルム欠陥検査装置である。
【0020】
本発明の請求項2に係る発明は、前記黒色部材は屈折率が1.49から1.53で、かつ、粘着性を有する部材であることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルム欠陥検査装置である。
【0021】
本発明の請求項3に係る発明は、前記黒色部材は軟質のウレタンゲルであることを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止フィルム欠陥検査装置である。
【0022】
本発明の請求項4に係る発明は、前記異物を洗浄するローラは前記黒色部材よりも大きい粘着力を有する粘着部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム欠陥検査装置である。
【0023】
本発明の請求項5に係る発明は、反射防止フィルム製造工程に設けられたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の反射防止フィルム欠陥検査装置である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の反射防止フィルム欠陥検査装置によれば、反射防止フィルム製造工程で発生するコントラストの低い欠陥を容易に検査することが可能となり、また従来用いられていたUVランプを使用する必要がないため、設備費用や維持費の増大を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】反射防止フィルムの一例を断面で示す図。
【図2】一般的に用いられている反射防止フィルムの欠陥検査装置の一例を示す概略構成図。
【図3】欠陥の抽出処理を説明するための図。(a−1)は欠陥部が含まれる撮像画像を示す図。(a−2)は撮像画像内に示される線分の画像信号を示す図。(b−1)は(a−1)に示される撮像画像を予め設定した閾値で二値化処理した図。(b−2)は(a−2)に示される画像信号を二値化処理した図。
【図4】反射防止フィルムの反射防止層による反射防止を実現する働きを説明する図。
【図5】低コントラストな欠陥を含む撮像画像を2値化処理する場合を説明する図。(a)は低コントラストな欠陥を含む撮像画像を示す図。(b)は(a)図の線分42の画像信号を閾値レベルで2値化処理を行う場合を示す図。(c)はノイズ部分を欠陥信号として抽出してしまうことを示す図。(d)は撮像画像の全領域のおいて抽出したノイズ部分の擬似欠陥を示す図。
【図6】本発明に係る反射防止フィルム欠陥検査装置の一例を示す概略構成図。
【図7】本発明に係る反射防止フィルム欠陥検査装置に備えられた検査ローラを示す図。(a)は検査ローラの断面を示す図。(b)は検査ローラの正面から見た図。
【図8】撮像カメラによって撮像された画像の輝度分布波形グラフを示す図。(a)は検査ローラを用いない場合の輝度分布波形グラフを示す図。(b)はフィルム裏面より黒色部材を押し当てた場合の輝度分布波形グラフを示す図。(c)はフィルム裏面より黒色部材を押し当てた場合は、低コントラストの欠陥であっても欠陥の抽出が容易になる輝度分布波形グラフを示す図。
【図9】本発明に係るフィルムの搬送手段を説明するための図で、反射防止フィルム欠陥検査装置が製造ラインに設けられた場合を示す図。
【図10】本発明に係るフィルムの図9とは別の搬送手段を説明するための図で検査専用ラインに設けられた場合を示す図。
【図11】本発明に係る撮像カメラで撮像するフィルム面を平面とすることを説明する図(a)は撮像カメラで撮像するフィルム面が曲面である場合。(b)は撮像カメラで撮像するフィルム面を平面とした本発明の実施例の場合。
【図12】本発明に係る検査ローラの表面に付着した異物を除去する手段を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明に係る反射防止フィルム欠陥検査装置を実施するための形態を説明する。
【0027】
図6は本発明に係る反射防止フィルム欠陥検査装置の一例を示す概略構成図である。反射防止フィルム欠陥検査装置は、反射防止フィルム(以下、フィルム)61を矢印62で示す搬送方向に搬送する搬送手段であるローラ63及びローラ64と、搬送されるフィルム61を裏面から押し当て、円周表面に黒色部材を備えた検査ローラ65と、黒色部材に付着した異物を洗浄するローラ66とフィルム61を照明する手段である照明光源67と、照明されたフィルムを撮像する手段である撮像装置68と、撮像画像を処理して欠陥を抽出する画像処理手段である画像処理部69と、欠陥を抽出した場合に欠陥検出信号を出力する手段である欠陥信号出力部70を有している。欠陥信号出力部70は、反射防止フィルム製造工程に欠陥信号をフィードバックしたり、ブザーや表示ランプを作動させオペレータに欠陥の発生を知らせる。
【0028】
図7(a)に本発明に係る反射防止フィルム欠陥検査装置に備えられた検査ローラ65の断面を示す。検査ローラ65は剛性を有する芯材65−1の表面に黒色部材65−2を備えたものである。図7(b)に示すように黒色部材65−2は検査ローラの芯材65−1の全幅の円周上に巻かれている。尚65−3、65−4は検査ローラ65のシャフトである。
【0029】
ここで、黒色部材を用いることによって、フィルムと黒色部材との界面における入射光が透過吸収されることによって反射光の強度が弱められる。更にフィルムの屈折率が約1
.51であるのに対して前記黒色部材の屈折率が1.49〜1.53の部材を用いることによって上記(1)式に示した理由からフィルムの裏面と黒色部材の境界面での反射光強度を弱めることが出来る。
【0030】
図8は撮像カメラによって撮像された画像の輝度分布波形のグラフであって、横軸はフィルムの幅方向の位置、縦軸は撮像された画像(アナログ)の輝度を256段階にデジタル化した値を示す。図8(a)のグラフ71は検査ローラ65を用いない場合の輝度分布波形のグラフを示す。この場合には、反射防止層の光と裏面反射からの光を受けているので、全体的に輝度が高い状態である。また、低コントラストの欠陥が存在する破線72で示される欠陥部分は、ノイズ部分と輝度差がほとんどなくノイズ成分に埋もれている。そこで欠陥部分を検査しやすくするために、矢印81で示すように照度を上げて輝度を全体に高くしてコントラスト比を大きくする手段があるが、この場合には、全体的に輝度が高く、欠陥部分が顕著に現れるまで照度を上げると、欠陥の一部が輝度限界を超えてしまい(グラフ73)、欠陥部分は破線72−1で示すように飽和し、正確な輝度分布を得ることができなくなってしまう。
【0031】
一方、図8(b)は、フィルム裏面より黒色部材を押し当てた場合の輝度分布波形のグラフを示すもので、検査ローラ65を用いない場合の輝度分布波形のグラフ71(図8(a)に示すグラフ71と同じ)をフィルム裏面より黒色部材を押し当てることで、フィルム裏面からの反射を抑えることができ、矢印82に示すように全体の輝度レベルを低下させることができる(グラフ74)。この状態において、図8(c)に示すように低コントラストの欠陥であっても、更に照度を更に上げることことによって、輝度分布波形のグラフ74は矢印83に示すように、グラフ75で示す輝度分布波形のグラフとなる。その結果、輝度限界内で、飽和することなく欠陥とノイズ成分の輝度差を大きくすることが出来、破線72−2で示される欠陥の抽出が容易になる。
【0032】
上記黒色部材は上記のようにフィルムと同等の屈折率1.49〜1.53を有する黒色の部材である。更に黒色部材は粘着性を有し、その粘着性は連続使用しても粘着力が変わらない部材であることが望ましい。粘着力を有する部材とすることによって、フィルムに付着した異物を粘着して、黒色部材側に転移させることが出来る。
【0033】
検査ローラとフィルムとの間で摩擦が起こらないように、検査ローラの円周速度はフィルムの送り速度と同じ速度となるように検査ローラの回転速度が制御される。
【0034】
図9はフィルムの搬送手段を説明するための図である。フィルム61は反射防止フィルム製造ラインの最後尾から搬送手段であるローラ63及びローラ64によって矢印62で示される搬送方向に搬送される。この場合のローラ63及びローラ64はフィルム61の搬送速度と同じ円周速度で制御された回転速度で回転させるか、もしくはフリーローラと呼ばれるローラでフィルム61との接触摩擦によって回転させても良い。フィルム61はローラ64の先方に備えられた巻取りローラ76で巻き取られる。巻き取りローラ76には図示しない回転モータが備えられており、フィルム61はテンションがかけられる。
【0035】
更に検査ローラ65をフィルム裏面より押し当てることによって、フィルム61を検査ローラ65と密着させ、ばたつきを抑えながら搬送することが出来るため、撮像ムラのない画像を得ることが出来る。
【0036】
本発明の反射防止フィルム欠陥検査装置を上記では、反射防止フィルム製造工程内にインラインで設けた場合を例示したが、図10に示すように検査専用ラインで使用しても良い。即ち、フィルム61は巻き出しローラ77から巻き出され、ローラ63、ローラ64、ローラ64を介した後に巻き取りローラ76に巻き取られる。巻き出しローラ77に備
えられた図示しないブレーキ機構と巻き取りローラ76に備えられた図示しない回転モータよって、フィルム61はテンションがかけられ、更に検査ローラ65をフィルム裏面より押し当てることによって、フィルム61を検査ローラ65と密着させ、ばたつきを抑えらながら搬送することが出来る。
【0037】
図11は撮像カメラで撮像するフィルム面を平面とすることを説明する図である。図11(a)はフィルム61と検査ローラ65が球面状態で接触した場合を示す図で、この場合は球面に照明された照明光78−1は、球面によって反射し拡散した反射光79−1となり、光量ムラのある撮像画像となってしまう。特に、撮像カメラ19が2次元カメラであった場合にはこの影響は顕著なものとなってしまう。
【0038】
図11(b)は上記問題を解決するための検査ローラ65を説明するための図で、検査ローラ65の表面に巻かれる黒色部材65−2として軟質のウレタンゲルを用いる。軟質の部材を使用することでフィルムと黒色ウレタンゲルとの接触面積が大きくなり、撮像カメラで撮像するフィルム面を平面にすることが出来るため、照明光78−1が平面で反射した反射光は拡散のない反射光79−2となり、安定した画像を得ることが出来る。
【0039】
図12は検査ローラ65の表面に付着した異物を除去する手段を説明するための図である。検査ローラ65の表面に付着した異物は、フィルム61に付着していた異物が検査ローラ65に転写されたり、空気中に浮遊していた異物が検査ローラ65に付着することによって発生するが、検査ローラ65の表面に異物が付着した場合は、フィルムの屈折率と異物周辺との空気の屈折率との差によって、フィルム裏面と空気との境界面で反射率が上がり、その結果、フィルム61と検査ローラ65の界面での反射光強度が強くなり、欠陥部分とノイズ部分との輝度差が小さくなり、欠陥部分の検査が出来ないという問題が発生する。
【0040】
図12に示される上記検査ローラの表面に付着した異物を除去する手段は、検査ローラ65と接するように設けられた粘着性を有する洗浄ローラ66であって、洗浄ローラ66をローラ65の下方向より押し当て、検査ローラ65の回転方向85と同じ方向86に回転させる。このとき、検査ローラ65と洗浄ローラ66の円周速度は同速度に制御するか、もしくは洗浄ローラ66をフリーにして検査ローラ65と接触したまま回転させても良い。
【0041】
洗浄ローラ66は例えば剛性を有する芯材66−1に粘着力を有する部材66−2を巻きつけたものである。粘着力を有する部材66−2の粘着力は黒色部材65−2よりも大きいものを用いることで、黒色部材65−2に付着した異物を洗浄ローラ66の粘着力を有する部材66−2に転写することができ、一度洗浄ローラ66の粘着力を有する部材66−2に転写した異物は、黒色部材65−2に再転写しない。
【0042】
以上のように、本発明による反射防止フィルム欠陥検査装置によれば、反射防止フィルム製造工程で発生するコントラストの低い欠陥を容易に検査することが可能となり、従来用いられていたUVランプを使用する必要がなく、その結果設備費用や維持費の増大を抑制することが出来る。
【符号の説明】
【0043】
1・・・フィルム基材
2・・・ハードコート層
3・・・反射防止層
4・・・界面反射光
5・・・表面反射光
11〜14・・・ローラ
15・・・フィルム
16、17・・・照明光源
18・・・フィルムを搬送する方向を示す矢印
19・・・ラインCCDカメラ
21・・・ロータリーエンコーダ
20・・・画像処理装置
30・・・欠陥部31を含む撮像画像
31・・・欠陥部
31−1・・・欠陥部31の信号
32・・・撮像画像30の線分
33・・・撮像画像30の線分の画像信号
34・・・閾値
35・・・撮像画像30の二値化画像
36・・・画像信号33二値化処理した信号
37・・・欠陥部31を示す破線
40・・・低コントラストな欠陥
41・・・低コントラストな欠陥40を含む撮像画像
42・・・撮像画像41内の線分
43・・・撮像画像41内の線分42の画像信号
44・・・閾値レベル
45・・・欠陥部
46、47・・・ノイズ部分
48〜51・・・擬似欠陥
52・・・欠陥部45の欠陥信号
53、54・・・欠陥信号
61・・・反射防止フィルム
62・・・反射防止フィルムの搬送方向を示す矢印
63、64・・・ローラ
65・・・検査ローラ
65−1・・・検査ローラの芯材
65−2・・・黒色部材
65−3、65−4・・・検査ローラのシャフト
66・・・洗浄ローラ
66−1・・・洗浄ローラの芯材
66−2・・・洗浄ローラの粘着力を有する部材
67・・・照明光源
68・・・撮像装置
69・・・画像処理部
70・・・欠陥信号出力部
71・・・検査ローラを用いない場合の輝度分布波形グラフ
72・・・低コントラストの欠陥部を示す破線
72−1・・・低コントラストの飽和した輝度波形を示す信号を示す破線
72−2・・・低コントラストの欠陥の抽出が容易になる欠陥部
73・・・検査ローラを用いない場合の輝度分布波形グラフ71を更に照度を上げた場合の輝度分布波形グラフ
74・・・検査ローラを用いた場合の輝度分布波形グラフ
76・・・巻取りローラ
77・・・巻き出しローラ
78−1、78−2・・・照明光
79−1・・・拡散した反射光
79−2・・・拡散のない反射光
81・・・コントラスト比を上げる方向を示す矢印
82・・・検査ローラを用いた場合に全体の輝度レベルを低下させる方向を示す矢印
83・・・検査ローラを用いた場合の更に照度を上げて輝度分布波形を持ち上げる方向を示す矢印
85・・・検査ローラの回転方向を示す矢印
86・・・洗浄ローラの回転方向を示す矢印
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルムの欠陥を検査する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の表示デバイスの表示画面の最表面には、表示画面をキズから保護したり、防汚、帯電防止、映り込み防止のために、透明フィルムに反射防止材料をコーティングして製造される反射防止フィルムが貼られている。
【0003】
反射防止フィルムの製造工程では、ローラ状の長尺帯状の透光性のフィルムに対し、塗工、乾燥が単数または複数回行われ、光学膜が形成される。図1は反射防止フィルムの一例を断面で示す図である。図1に示される反射防止フィルムはフィルム基材1、ハードコート層2、反射防止層3の各層で構成されている。
【0004】
反射防止フィルムの欠陥は、塗工された塗膜の膜厚の変動によるムラや色相の変化などによる光学欠陥や異物やキズやコスレなどの欠陥が存在する。また、フィルム自体のキズ、ヘコミ、等の欠陥もある。
【0005】
反射防止フィルムの製造工程内には欠陥の検査を行うために欠陥検査機が設置されている。図2は一般的に用いられている反射防止フィルム(以下、フィルム)の欠陥検査装置の一例を示す概略構成図であって、複数のローラ11〜ローラ14からなる搬送ユニット(ローラの回転による搬送)によりフィルム15を搬送し、LED、蛍光灯、ハロゲンランプ、キセノンランプ、UVランプ等を用いた照明光源16及び17によってフィルムの全幅を照明し、フィルム15を矢印18で示す方向に搬送しながらフィルムの幅方向を全走査できるよう複数のラインCCDカメラ19(または2次元カメラ)によってフィルムを撮像する。照明光源16及び17は、その両方またはいずれか一方が適宜採用される。
【0006】
一方、フィルム15の搬送距離に応じた信号をロータリーエンコーダ21より取得し、前記信号を撮像タイミング信号として、一定の搬送距離毎に前記ラインCCDカメラ19によってフィルム表面を撮像し、撮像した画像を画像処理装置20で画像処理し、欠陥部分の抽出を行い、抽出した欠陥について、記憶機構を含む制御装置22に欠陥データ(欠陥の位置を示す座標、ラインCCDカメラの画素数、濃度値)をファイル及びデータベース(以下、DB)にデータとして保存する機構を有する欠陥検査装置である。この場合、ロータリーエンコーダ21の代わりに一定の搬送距離毎に撮像タイミング信号を発生するタイマーを用いることもある。
【0007】
一般に、欠陥の抽出処理は撮像された画像に対し、予め設定した閾値で二値化処理を行い、欠陥の抽出を行う。図3は欠陥の抽出処理を説明するための図で、図3(a−1)は欠陥部31が含まれる撮像画像30を示し、図3(a−2)は撮像画像30の線分32の画像信号33を示す。破線37で囲まれた信号31−1は欠陥部31の信号を示す。図3(a−1)に示す撮像画像30を予め設定した閾値34で二値化処理し、図3(b−1)に示す二値化画像35を得る。図3(b−2)は、図3(a−2)の画像信号33を予め設定した閾値34で二値化処理した信号36を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−145493号公報
【特許文献2】特開2006−225451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記反射防止フィルムの反射防止層3では、図4に示すように、入射光のうちハードコート層2と反射防止層3の界面で反射した界面反射光4を、反射防止層3の表面で反射した表面反射光5と同振幅、逆位相の光に反射防止層3によって変え、表面反射光と干渉することで反射防止を実現している。この反射防止層3に膜厚の部分的なむら不良が発生した場合には、干渉による反射光の低減に差異が生じ、光学欠陥として検査される。
【0010】
一方、フィルム裏面側ではフィルムと屈折率の異なる物質と隣接しており、下記の(1)式より反射率が高くなり、フィルム裏面と屈折率の異なる物質の境界面での反射光の強度が高くなる。ここでAはフィルムの屈折率、Bはフィルムの裏面側に接する物質は屈折率である。
反射率=(屈折率A―屈折率B)/(屈折率A+屈折率B)・・・・(1)
【0011】
即ち、フィルム裏面からの反射光に比べ反射防止層からの反射光の強度は弱いために、不良による反射光の変化そのものは、フィルム裏面からの反射光に埋もれてしまうほど小さい。膜厚変動が原因となって起こる上記反射光の変化を熟練者によって目視確認して検査することは容易ではなく、従って自動検査することが望まれているが、膜厚変動による欠陥は一般的にコントラストが低く、該欠陥を欠陥検査機で抽出しようとした場合に、ノイズ成分に埋もれてしまい、一般的に欠陥を抽出するために閾値を設定すると、欠陥ではない箇所を擬似欠陥として抽出してしまい、一般的に用いられている画像処理によって欠陥を検査することは難しい。
【0012】
言い換えれば、上記の図3に示すように、高コントラストの欠陥31場合には2値化処理によって欠陥を抽出することが出来るが、図5に示されるような低コントラストの場合には欠陥は明暗の差が低く、ノイズ成分に埋もれてしまい低コントラストの欠陥だけをある閾値によって2値化を行っても抽出することが出来ない。
【0013】
即ち図5(a)に示す低コントラストな欠陥40を含む撮像画像41の場合、例えば線分42の画像信号43を閾値レベル44で2値化処理を行う(図5(b))と、ノイズ部分46及び47を図5(c)に示すように欠陥信号53及び54として抽出してしまう。52は欠陥部45で得られた欠陥信号である。撮像画像41の全領域のおいては、図5(d)に示すようにノイズ部分を擬似欠陥48〜51として抽出してしまう。図5(c)の52は図5(d)の欠陥40に対応する信号で、同様に53はノイズ部分46を2値化処理した擬似欠陥50に対応する信号、54はノイズ部分47を2値化処理した擬似欠陥51に対応する信号である。
【0014】
このように、自動欠陥検査において低コントラストの欠陥を検査する場合に、フィルム裏面からの反射光の影響が大きく、またノイズ成分の影響もあり、照度調整や閾値の設定を行っても、欠陥の検査が困難である。
【0015】
照度調整や閾値の設定を行った結果、一時的に正常な欠陥検査が出来たとしても、外的な光の影響や照明光の経時変化によって、低コントラストの欠陥を安定して検査することは難しい。
【0016】
そこで、裏面からの反射光の影響を少なくするために、照明用光源にUVランプを使用することがある。これは反射防止フィルムの基材に用いられているTAC(トリアセチルセルロース(Triacetylcellulose)フィルムがUVランプ(紫外光)の波長を吸収するという性質を利用したもので、フィルム裏面での反射光を減少させ低コ
ントラストの欠陥検査を行う方法が採用されている。
【0017】
以上のように、自動検査装置で反射防止フィルムの欠陥を検査する場合、コントラストの低い欠陥については検査が困難であること、また、検査を容易にするためにUVランプを使用した場合には、UVランプを使用することによる設備費用や維持費が増大する問題がある。
【0018】
そこで本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、反射防止フィルムの低コントラストの欠陥でも欠陥抽出を容易にする反射防止フィルム欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の請求項1に係る発明は、透明なフィルム状の基材に反射防止材料をコーティングして製造される反射防止フィルムの欠陥検査装置であって、少なくとも、
前記反射防止フィルムを搬送する搬送手段と、
搬送される反射防止フィルムを裏面から押し当て、円周表面に黒色部材を備えた検査ローラと、
前記黒色部材に付着した異物を洗浄するローラと、
前記検査ローラに押し当てられた反射防止フィルムの表面を照明する手段と、
照明された前記反射防止フィルムを撮像して撮像画像を得る撮像手段と、
撮像画像を処理して欠陥を抽出する画像処理手段と、
欠陥を抽出した場合に欠陥検出信号を出力する手段と、を備えたことを特徴とする反射防止フィルム欠陥検査装置である。
【0020】
本発明の請求項2に係る発明は、前記黒色部材は屈折率が1.49から1.53で、かつ、粘着性を有する部材であることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルム欠陥検査装置である。
【0021】
本発明の請求項3に係る発明は、前記黒色部材は軟質のウレタンゲルであることを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止フィルム欠陥検査装置である。
【0022】
本発明の請求項4に係る発明は、前記異物を洗浄するローラは前記黒色部材よりも大きい粘着力を有する粘着部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム欠陥検査装置である。
【0023】
本発明の請求項5に係る発明は、反射防止フィルム製造工程に設けられたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の反射防止フィルム欠陥検査装置である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の反射防止フィルム欠陥検査装置によれば、反射防止フィルム製造工程で発生するコントラストの低い欠陥を容易に検査することが可能となり、また従来用いられていたUVランプを使用する必要がないため、設備費用や維持費の増大を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】反射防止フィルムの一例を断面で示す図。
【図2】一般的に用いられている反射防止フィルムの欠陥検査装置の一例を示す概略構成図。
【図3】欠陥の抽出処理を説明するための図。(a−1)は欠陥部が含まれる撮像画像を示す図。(a−2)は撮像画像内に示される線分の画像信号を示す図。(b−1)は(a−1)に示される撮像画像を予め設定した閾値で二値化処理した図。(b−2)は(a−2)に示される画像信号を二値化処理した図。
【図4】反射防止フィルムの反射防止層による反射防止を実現する働きを説明する図。
【図5】低コントラストな欠陥を含む撮像画像を2値化処理する場合を説明する図。(a)は低コントラストな欠陥を含む撮像画像を示す図。(b)は(a)図の線分42の画像信号を閾値レベルで2値化処理を行う場合を示す図。(c)はノイズ部分を欠陥信号として抽出してしまうことを示す図。(d)は撮像画像の全領域のおいて抽出したノイズ部分の擬似欠陥を示す図。
【図6】本発明に係る反射防止フィルム欠陥検査装置の一例を示す概略構成図。
【図7】本発明に係る反射防止フィルム欠陥検査装置に備えられた検査ローラを示す図。(a)は検査ローラの断面を示す図。(b)は検査ローラの正面から見た図。
【図8】撮像カメラによって撮像された画像の輝度分布波形グラフを示す図。(a)は検査ローラを用いない場合の輝度分布波形グラフを示す図。(b)はフィルム裏面より黒色部材を押し当てた場合の輝度分布波形グラフを示す図。(c)はフィルム裏面より黒色部材を押し当てた場合は、低コントラストの欠陥であっても欠陥の抽出が容易になる輝度分布波形グラフを示す図。
【図9】本発明に係るフィルムの搬送手段を説明するための図で、反射防止フィルム欠陥検査装置が製造ラインに設けられた場合を示す図。
【図10】本発明に係るフィルムの図9とは別の搬送手段を説明するための図で検査専用ラインに設けられた場合を示す図。
【図11】本発明に係る撮像カメラで撮像するフィルム面を平面とすることを説明する図(a)は撮像カメラで撮像するフィルム面が曲面である場合。(b)は撮像カメラで撮像するフィルム面を平面とした本発明の実施例の場合。
【図12】本発明に係る検査ローラの表面に付着した異物を除去する手段を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明に係る反射防止フィルム欠陥検査装置を実施するための形態を説明する。
【0027】
図6は本発明に係る反射防止フィルム欠陥検査装置の一例を示す概略構成図である。反射防止フィルム欠陥検査装置は、反射防止フィルム(以下、フィルム)61を矢印62で示す搬送方向に搬送する搬送手段であるローラ63及びローラ64と、搬送されるフィルム61を裏面から押し当て、円周表面に黒色部材を備えた検査ローラ65と、黒色部材に付着した異物を洗浄するローラ66とフィルム61を照明する手段である照明光源67と、照明されたフィルムを撮像する手段である撮像装置68と、撮像画像を処理して欠陥を抽出する画像処理手段である画像処理部69と、欠陥を抽出した場合に欠陥検出信号を出力する手段である欠陥信号出力部70を有している。欠陥信号出力部70は、反射防止フィルム製造工程に欠陥信号をフィードバックしたり、ブザーや表示ランプを作動させオペレータに欠陥の発生を知らせる。
【0028】
図7(a)に本発明に係る反射防止フィルム欠陥検査装置に備えられた検査ローラ65の断面を示す。検査ローラ65は剛性を有する芯材65−1の表面に黒色部材65−2を備えたものである。図7(b)に示すように黒色部材65−2は検査ローラの芯材65−1の全幅の円周上に巻かれている。尚65−3、65−4は検査ローラ65のシャフトである。
【0029】
ここで、黒色部材を用いることによって、フィルムと黒色部材との界面における入射光が透過吸収されることによって反射光の強度が弱められる。更にフィルムの屈折率が約1
.51であるのに対して前記黒色部材の屈折率が1.49〜1.53の部材を用いることによって上記(1)式に示した理由からフィルムの裏面と黒色部材の境界面での反射光強度を弱めることが出来る。
【0030】
図8は撮像カメラによって撮像された画像の輝度分布波形のグラフであって、横軸はフィルムの幅方向の位置、縦軸は撮像された画像(アナログ)の輝度を256段階にデジタル化した値を示す。図8(a)のグラフ71は検査ローラ65を用いない場合の輝度分布波形のグラフを示す。この場合には、反射防止層の光と裏面反射からの光を受けているので、全体的に輝度が高い状態である。また、低コントラストの欠陥が存在する破線72で示される欠陥部分は、ノイズ部分と輝度差がほとんどなくノイズ成分に埋もれている。そこで欠陥部分を検査しやすくするために、矢印81で示すように照度を上げて輝度を全体に高くしてコントラスト比を大きくする手段があるが、この場合には、全体的に輝度が高く、欠陥部分が顕著に現れるまで照度を上げると、欠陥の一部が輝度限界を超えてしまい(グラフ73)、欠陥部分は破線72−1で示すように飽和し、正確な輝度分布を得ることができなくなってしまう。
【0031】
一方、図8(b)は、フィルム裏面より黒色部材を押し当てた場合の輝度分布波形のグラフを示すもので、検査ローラ65を用いない場合の輝度分布波形のグラフ71(図8(a)に示すグラフ71と同じ)をフィルム裏面より黒色部材を押し当てることで、フィルム裏面からの反射を抑えることができ、矢印82に示すように全体の輝度レベルを低下させることができる(グラフ74)。この状態において、図8(c)に示すように低コントラストの欠陥であっても、更に照度を更に上げることことによって、輝度分布波形のグラフ74は矢印83に示すように、グラフ75で示す輝度分布波形のグラフとなる。その結果、輝度限界内で、飽和することなく欠陥とノイズ成分の輝度差を大きくすることが出来、破線72−2で示される欠陥の抽出が容易になる。
【0032】
上記黒色部材は上記のようにフィルムと同等の屈折率1.49〜1.53を有する黒色の部材である。更に黒色部材は粘着性を有し、その粘着性は連続使用しても粘着力が変わらない部材であることが望ましい。粘着力を有する部材とすることによって、フィルムに付着した異物を粘着して、黒色部材側に転移させることが出来る。
【0033】
検査ローラとフィルムとの間で摩擦が起こらないように、検査ローラの円周速度はフィルムの送り速度と同じ速度となるように検査ローラの回転速度が制御される。
【0034】
図9はフィルムの搬送手段を説明するための図である。フィルム61は反射防止フィルム製造ラインの最後尾から搬送手段であるローラ63及びローラ64によって矢印62で示される搬送方向に搬送される。この場合のローラ63及びローラ64はフィルム61の搬送速度と同じ円周速度で制御された回転速度で回転させるか、もしくはフリーローラと呼ばれるローラでフィルム61との接触摩擦によって回転させても良い。フィルム61はローラ64の先方に備えられた巻取りローラ76で巻き取られる。巻き取りローラ76には図示しない回転モータが備えられており、フィルム61はテンションがかけられる。
【0035】
更に検査ローラ65をフィルム裏面より押し当てることによって、フィルム61を検査ローラ65と密着させ、ばたつきを抑えながら搬送することが出来るため、撮像ムラのない画像を得ることが出来る。
【0036】
本発明の反射防止フィルム欠陥検査装置を上記では、反射防止フィルム製造工程内にインラインで設けた場合を例示したが、図10に示すように検査専用ラインで使用しても良い。即ち、フィルム61は巻き出しローラ77から巻き出され、ローラ63、ローラ64、ローラ64を介した後に巻き取りローラ76に巻き取られる。巻き出しローラ77に備
えられた図示しないブレーキ機構と巻き取りローラ76に備えられた図示しない回転モータよって、フィルム61はテンションがかけられ、更に検査ローラ65をフィルム裏面より押し当てることによって、フィルム61を検査ローラ65と密着させ、ばたつきを抑えらながら搬送することが出来る。
【0037】
図11は撮像カメラで撮像するフィルム面を平面とすることを説明する図である。図11(a)はフィルム61と検査ローラ65が球面状態で接触した場合を示す図で、この場合は球面に照明された照明光78−1は、球面によって反射し拡散した反射光79−1となり、光量ムラのある撮像画像となってしまう。特に、撮像カメラ19が2次元カメラであった場合にはこの影響は顕著なものとなってしまう。
【0038】
図11(b)は上記問題を解決するための検査ローラ65を説明するための図で、検査ローラ65の表面に巻かれる黒色部材65−2として軟質のウレタンゲルを用いる。軟質の部材を使用することでフィルムと黒色ウレタンゲルとの接触面積が大きくなり、撮像カメラで撮像するフィルム面を平面にすることが出来るため、照明光78−1が平面で反射した反射光は拡散のない反射光79−2となり、安定した画像を得ることが出来る。
【0039】
図12は検査ローラ65の表面に付着した異物を除去する手段を説明するための図である。検査ローラ65の表面に付着した異物は、フィルム61に付着していた異物が検査ローラ65に転写されたり、空気中に浮遊していた異物が検査ローラ65に付着することによって発生するが、検査ローラ65の表面に異物が付着した場合は、フィルムの屈折率と異物周辺との空気の屈折率との差によって、フィルム裏面と空気との境界面で反射率が上がり、その結果、フィルム61と検査ローラ65の界面での反射光強度が強くなり、欠陥部分とノイズ部分との輝度差が小さくなり、欠陥部分の検査が出来ないという問題が発生する。
【0040】
図12に示される上記検査ローラの表面に付着した異物を除去する手段は、検査ローラ65と接するように設けられた粘着性を有する洗浄ローラ66であって、洗浄ローラ66をローラ65の下方向より押し当て、検査ローラ65の回転方向85と同じ方向86に回転させる。このとき、検査ローラ65と洗浄ローラ66の円周速度は同速度に制御するか、もしくは洗浄ローラ66をフリーにして検査ローラ65と接触したまま回転させても良い。
【0041】
洗浄ローラ66は例えば剛性を有する芯材66−1に粘着力を有する部材66−2を巻きつけたものである。粘着力を有する部材66−2の粘着力は黒色部材65−2よりも大きいものを用いることで、黒色部材65−2に付着した異物を洗浄ローラ66の粘着力を有する部材66−2に転写することができ、一度洗浄ローラ66の粘着力を有する部材66−2に転写した異物は、黒色部材65−2に再転写しない。
【0042】
以上のように、本発明による反射防止フィルム欠陥検査装置によれば、反射防止フィルム製造工程で発生するコントラストの低い欠陥を容易に検査することが可能となり、従来用いられていたUVランプを使用する必要がなく、その結果設備費用や維持費の増大を抑制することが出来る。
【符号の説明】
【0043】
1・・・フィルム基材
2・・・ハードコート層
3・・・反射防止層
4・・・界面反射光
5・・・表面反射光
11〜14・・・ローラ
15・・・フィルム
16、17・・・照明光源
18・・・フィルムを搬送する方向を示す矢印
19・・・ラインCCDカメラ
21・・・ロータリーエンコーダ
20・・・画像処理装置
30・・・欠陥部31を含む撮像画像
31・・・欠陥部
31−1・・・欠陥部31の信号
32・・・撮像画像30の線分
33・・・撮像画像30の線分の画像信号
34・・・閾値
35・・・撮像画像30の二値化画像
36・・・画像信号33二値化処理した信号
37・・・欠陥部31を示す破線
40・・・低コントラストな欠陥
41・・・低コントラストな欠陥40を含む撮像画像
42・・・撮像画像41内の線分
43・・・撮像画像41内の線分42の画像信号
44・・・閾値レベル
45・・・欠陥部
46、47・・・ノイズ部分
48〜51・・・擬似欠陥
52・・・欠陥部45の欠陥信号
53、54・・・欠陥信号
61・・・反射防止フィルム
62・・・反射防止フィルムの搬送方向を示す矢印
63、64・・・ローラ
65・・・検査ローラ
65−1・・・検査ローラの芯材
65−2・・・黒色部材
65−3、65−4・・・検査ローラのシャフト
66・・・洗浄ローラ
66−1・・・洗浄ローラの芯材
66−2・・・洗浄ローラの粘着力を有する部材
67・・・照明光源
68・・・撮像装置
69・・・画像処理部
70・・・欠陥信号出力部
71・・・検査ローラを用いない場合の輝度分布波形グラフ
72・・・低コントラストの欠陥部を示す破線
72−1・・・低コントラストの飽和した輝度波形を示す信号を示す破線
72−2・・・低コントラストの欠陥の抽出が容易になる欠陥部
73・・・検査ローラを用いない場合の輝度分布波形グラフ71を更に照度を上げた場合の輝度分布波形グラフ
74・・・検査ローラを用いた場合の輝度分布波形グラフ
76・・・巻取りローラ
77・・・巻き出しローラ
78−1、78−2・・・照明光
79−1・・・拡散した反射光
79−2・・・拡散のない反射光
81・・・コントラスト比を上げる方向を示す矢印
82・・・検査ローラを用いた場合に全体の輝度レベルを低下させる方向を示す矢印
83・・・検査ローラを用いた場合の更に照度を上げて輝度分布波形を持ち上げる方向を示す矢印
85・・・検査ローラの回転方向を示す矢印
86・・・洗浄ローラの回転方向を示す矢印
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なフィルム状の基材に反射防止材料をコーティングして製造される反射防止フィルムの欠陥検査装置であって、少なくとも、
前記反射防止フィルムを搬送する搬送手段と、
搬送される反射防止フィルムを裏面から押し当て、円周表面に黒色部材を備えた検査ローラと、
前記黒色部材に付着した異物を洗浄するローラと、
前記検査ローラに押し当てられた反射防止フィルムの表面を照明する手段と、
照明された前記反射防止フィルムを撮像して撮像画像を得る撮像手段と、
撮像画像を処理して欠陥を抽出する画像処理手段と、
欠陥を抽出した場合に製造工程に欠陥検出信号を出力する手段と、を備えたことを特徴とする反射防止フィルム欠陥検査装置。
【請求項2】
前記黒色部材は屈折率が1.49から1.53で、かつ、粘着性を有する部材であることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルム欠陥検査装置。
【請求項3】
前記黒色部材は軟質のウレタンゲルであることを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止フィルム欠陥検査装置。
【請求項4】
前記異物を洗浄するローラは前記黒色部材よりも大きい粘着力を有する粘着部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム欠陥検査装置。
【請求項5】
反射防止フィルム製造工程に設けられたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の反射防止フィルム欠陥検査装置。
【請求項1】
透明なフィルム状の基材に反射防止材料をコーティングして製造される反射防止フィルムの欠陥検査装置であって、少なくとも、
前記反射防止フィルムを搬送する搬送手段と、
搬送される反射防止フィルムを裏面から押し当て、円周表面に黒色部材を備えた検査ローラと、
前記黒色部材に付着した異物を洗浄するローラと、
前記検査ローラに押し当てられた反射防止フィルムの表面を照明する手段と、
照明された前記反射防止フィルムを撮像して撮像画像を得る撮像手段と、
撮像画像を処理して欠陥を抽出する画像処理手段と、
欠陥を抽出した場合に製造工程に欠陥検出信号を出力する手段と、を備えたことを特徴とする反射防止フィルム欠陥検査装置。
【請求項2】
前記黒色部材は屈折率が1.49から1.53で、かつ、粘着性を有する部材であることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルム欠陥検査装置。
【請求項3】
前記黒色部材は軟質のウレタンゲルであることを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止フィルム欠陥検査装置。
【請求項4】
前記異物を洗浄するローラは前記黒色部材よりも大きい粘着力を有する粘着部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム欠陥検査装置。
【請求項5】
反射防止フィルム製造工程に設けられたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の反射防止フィルム欠陥検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−83189(P2012−83189A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229450(P2010−229450)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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