説明

反射防止基材のための汚れ防止コーティング

本発明は反射防止基材のための汚れ防止組成物に関する。より詳しくは、本発明は反射防止基材上に汚れ防止組成物を付着させる方法に関する。特に、本発明は反射防止基材上に汚れ防止組成物を付着させる方法であって、前記汚れ防止組成物を気化させる工程と、前記反射防止基材上に前記汚れ防止組成物を付着させる工程とを含む方法に関する。別の態様において、本発明は反射防止フィルムスタックを調製する方法であって、透明基材の表面上に反射防止層を付着させる工程と、前記反射防止層の表面上に汚れ防止層を気化させる工程とを含む方法に関する。更に別の態様において、本発明は反射防止被覆眼科用レンズ上に汚れ防止組成物を付着させる方法であって、前記汚れ防止組成物を気化させる工程と、前記反射防止被覆眼科用レンズ上に前記汚れ防止組成物を付着させる工程とを含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反射防止基材のための汚れ防止コーティングに関する。より詳しくは、本発明は反射防止基材上に汚れ防止コーティングを付着させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドア、窓、レンズ、フィルターおよび電子装置の表示装置(例えば表示パネル)などの形態を取ったガラスまたはプラスチックの透明性は光のグレアまたは反射によって損なわれうる。例えば、プラスチックまたはガラス上のグレアの量を減らすために、表面は金属酸化物(二酸化ケイ素など)、金属フッ化物、金属窒化物または金属硫化物などの単一層を典型的に含む。こうしたコーティングは反射防止コーティングとして機能する。
【0003】
反射防止被覆を有するレンズは眼科用レンズ市場の比較的小さいが、急速に成長しているセグメントである。これらの反射防止被覆を有するレンズは、向上した美容的側面および高い透過率のゆえに消費者の間で支持を得つつある。高い透過率は夜のドライブなどの用途のために特に重要である。典型的には、反射防止眼科用レンズはハードコートを有するポリカーボネート系レンズまたは他のプラスチック系レンズからなり、反射防止特性は真空蒸着金属酸化物の多層スタックによって与えられる。殆どの反射防止スタック(antireflective stack)の最外層は二酸化ケイ素である。
【0004】
処理されていないままならば、反射防止スタックの高い表面エネルギーおよび多孔質構造は反射防止スタックを容易に汚染させ、きれいにするのを難しくさせる。更に、反射防止特性は皮膚の油などの微量レベルの有機汚染に極端に影響されやすく、こうした微量レベルの有機汚染によって容易に損なわれる。従って、眼科用レンズ産業では、最終処理工程において反射防止レンズに適用される疎水性コーティングの類が開発されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気相から付着されたオクチルエチルシランまたはパーフルオロオクチルエチルシランなどの低分子量のクロロ官能性アルキルシランまたはアルコキシ官能性アルキルシランは商用疎水性コーティング中で一般に用いられている。単一層厚さ範囲のこうしたフィルムは表面を効果的に密封することが可能であり、反射防止スタックの光学特性を妨げずに多少の汚れ防止特性を提供することが可能である。しかし、から研ぎ研磨に対するこれらのフィルムの耐久性は比較的劣り、眼科用レンズ産業は、より良好な初期撥油性および耐染み性を有する処理剤を求めて探索し続けている。この問題はパーフルオロポリエーテルシランを含む多くの新規汚れ防止コーティングによって主として対処されてきた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は汚れ防止組成物で反射防止基材を被覆する方法を提供する。一実施形態において、本発明は、汚れ防止組成物を気化させる工程と、反射防止基材上に前記汚れ防止組成物を付着させる工程とを含む反射防止基材上に汚れ防止組成物を付着させる方法であって、前記汚れ防止組成物が、
n2n+1O(CF(CF3)CF2O)zCF(CF3)C(O)NHCx2xSi(L)3(式中、nは1〜4であり、zは3〜約15であり、xは1〜約10であり、Lは−ORおよび−NR’2からなる群から選択され、ここで、Rは炭素原子数1〜約10のアルキル基であり、R’はHおよび炭素原子数1〜約10のアルキル基からなる群から選択される)、
X−CF(CF3)(OCF2CF(CF3))mO(Cn2n)O(CF(CF3)CF2O)qCF(CF3)−X(式中、mは0〜約40の整数であり、nは2〜4の整数であり、qは0〜約40の整数であり、mとqの両方が0に等しくはなく、Xは−C(O)NH(CH2qSi(L)3であり、ここで、qは1〜約10であり、Lは−ORおよび−NR’2からなる群から選択され、ここで、Rは炭素原子数1〜約10のアルキル基であり、R’はHおよび炭素原子数1〜約10のアルキル基からなる群から選択される)、および
XCF2O(CF2O)m(C24O)pCF2X(式中、mは1〜約20であり、pは1〜約20であり、Xは−C(O)NH(CH2qSi(L)3であり、ここで、qは1〜約10であり、Lは−ORおよび−NR’2からなる群から選択され、ここで、Rは炭素原子数1〜約10のアルキル基であり、R’はHおよび炭素原子数1〜約10のアルキル基からなる群から選択される)、
ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記汚れ防止組成物の平均分子量が約800〜約6000である、方法を提供する。
【0007】
好ましい実施形態において、透明基材は眼科用レンズを含んでもよい。更に、反射防止層が金属酸化物、金属フッ化物、金属窒化物または金属硫化物からなる群から選択されることが好ましい。二酸化ケイ素の反射防止層は最も好ましい。更なる態様において、本発明は、汚れ防止層を気化させる前に透明基材の表面上に反射防止多層を付着させる方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
高い分子量のゆえに、パーフルオロポリエーテルシランは、グラビアコータによるなどの連続ロール塗布または浸漬塗布などの既知技術によって典型的に適用される。これらの塗布技術は、製造規模自動化精密装置が現場ごとに非常に高価である可能性があり、追加のフロアスペースを必要とするとともに運転するために追加の労働力を必要としうるという問題を含む多くの欠点を有する。こうした伝統的な塗布技術は余分な取り扱いおよび環境への暴露を通してレンズ表面の汚染も引き起こす場合もあり、対応して、より低い収量損失につながる。従って、パーフルオロポリエーテルシランの付着の代替方法が当業界で必要とされている。
【0009】
本発明は汚れ防止組成物で反射防止基材を被覆する方法を提供する。一実施形態において、本発明は、汚れ防止組成物を気化させる工程と、反射防止基材上に前記汚れ防止組成物を付着させる工程とを含む反射防止基材上に汚れ防止組成物を付着させる方法であって、前記汚れ防止組成物が、
n2n+1O(CF(CF3)CF2O)zCF(CF3)C(O)NHCx2xSi(L)3(式中、nは1〜4であり、zは3〜約15であり、xは1〜約10であり、Lは−ORおよび−NR’2からなる群から選択され、ここで、Rは炭素原子数1〜約10のアルキル基であり、R’はHおよび炭素原子数1〜約10のアルキル基からなる群から選択される)、
X−CF(CF3)(OCF2CF(CF3))mO(Cn2n)O(CF(CF3)CF2O)qCF(CF3)−X(式中、mは0〜約40の整数であり、nは2〜4の整数であり、qは0〜約40の整数であり、mとqの両方が0に等しくはなく、Xは−C(O)NH(CH2qSi(L)3であり、ここで、qは1〜約10であり、Lは−ORおよび−NR’2からなる群から選択され、ここで、Rは炭素原子数1〜約10のアルキル基であり、R’はHおよび炭素原子数1〜約10のアルキル基からなる群から選択される)、および
XCF2O(CF2O)m(C24O)pCF2X(式中、mは1〜約20であり、pは1〜約20であり、Xは−C(O)NH(CH2qSi(L)3であり、ここで、qは1〜約10であり、Lは−ORおよび−NR’2からなる群から選択され、ここで、Rは炭素原子数1〜約10のアルキル基であり、R’はHおよび炭素原子数1〜約10のアルキル基からなる群から選択される)、
ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記汚れ防止組成物の平均分子量が約800〜約6000である、方法を提供する。
【0010】
好ましい実施形態において、汚れ防止組成物は約900〜4000の平均分子量を有する。汚れ防止組成物は、好ましくは、C37O(CF(CF3)CF2O)zCF(CF3)C(O)NHC36Si(OCH33、XCF2O(CF2O)m(C24O)pCF2X(ここで、Xは−C(O)NH(CH23Si(OCH33である)およびそれらの組み合わせから選択される。最も好ましくは、汚れ防止組成物はC37O(CF(CF3)CF2O)zCF(CF3)C(O)NHC36Si(OCH33である。汚れ防止組成物がC37O(CF(CF3)CF2O)zCF(CF3)C(O)NHC36Si(OCH33である時、平均分子量は好ましくは1000〜3000の間である。
【0011】
汚れ防止組成物は、好ましくは約20〜500オングストローム、より好ましくは40〜100オングストロームの厚さで付着させる。別の態様において、汚れ防止組成物は好ましくは単一層として付着させる。
【0012】
汚れ防止組成物を気化させる条件は汚れ防止組成物の構造および分子量により異なってもよい。本発明の1つの態様において、蒸発を約0.01mmHg未満の圧力で行うことができることが好ましい。本発明の別の態様において、気化は少なくとも約80℃の温度で行ってもよい。
【0013】
本発明の更に別の態様において、気化は汚れ防止組成物および反射防止基材をチャンバに入れ、(汚れ防止組成物を含む)チャンバを加熱し、チャンバ内の圧力を下げることを含む。本発明は、汚れ防止組成物および反射防止基材をチャンバに入れる前にチャンバを加熱する方法も提供する。好ましい実施形態において、反射防止基材は反射防止眼科用レンズを含む。更に、反射防止眼科用レンズは、ポリカーボネート樹脂およびポリカーボネート樹脂の表面上の反射防止コーティングを含んでもよい。
【0014】
本発明は、汚れ防止組成物を気化させる工程と、反射防止被覆眼科用レンズ上に前記汚れ防止組成物を付着させる工程とを含む反射防止被覆眼科用レンズ上に汚れ防止組成物を付着させる方法であって、前記汚れ防止組成物が、
n2n+1O(CF(CF3)CF2O)zCF(CF3)C(O)NHCx2xSi(L)3(式中、nは1〜4であり、zは3〜約15であり、xは1〜約10であり、Lは−ORおよび−NR’2からなる群から選択され、ここで、Rは炭素原子数1〜約10のアルキル基であり、R’はHおよび炭素原子数1〜約10のアルキル基からなる群から選択される)、
X−CF(CF3)(OCF2CF(CF3))mO(Cn2n)O(CF(CF3)CF2O)qCF(CF3)−X(式中、mは0〜約40の整数であり、nは2〜4の整数であり、qは0〜約40の整数であり、mとqの両方が0に等しくはなく、Xは−C(O)NH(CH2qSi(L)3であり、ここで、qは1〜約10であり、Lは−ORおよび−NR’2からなる群から選択され、ここで、Rは炭素原子数1〜約10のアルキル基であり、R’はHおよび炭素原子数1〜約10のアルキル基からなる群から選択される)、および
XCF2O(CF2O)m(C24O)pCF2X(式中、mは1〜約20であり、pは1〜約20であり、Xは−C(O)NH(CH2qSi(L)3であり、ここで、qは1〜約10であり、Lは−ORおよび−NR’2からなる群から選択され、ここで、Rは炭素原子数1〜約10のアルキル基であり、R’はHおよび炭素原子数1〜約10のアルキル基からなる群から選択される)、
ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記汚れ防止組成物を第1のチャンバに入れ、前記反射防止被覆眼科用レンズを前記第1のチャンバに接続された第2のチャンバに入れて、前記第1のチャンバから気化した汚れ防止組成物を第2のチャンバ内で前記反射防止被覆眼科用レンズ上に付着させることができるようにする、方法も提供する。本発明の別の態様において、第1のチャンバが加熱されつつ第2のチャンバは周囲温度のままであってもよい。
【0015】
本発明は、反射防止基材上に汚れ防止組成物を付着させる方法であって、汚れ防止組成物および反射防止基材を同じチャンバに入れ、(汚れ防止組成物を含む)チャンバを加熱し、チャンバ内の圧力を下げることを含んでもよい方法も提供する。こうした条件下で、反射防止基材および汚れ防止組成物は同じ温度に加熱してもよい。
【0016】
更なる態様において、本発明は、透明基材の表面上に反射防止層を付着させる工程と、前記反射防止層の表面上に汚れ防止層を気化させる工程とを含む反射防止物品を製造する方法であって、前記汚れ防止層が、
n2n+1O(CF(CF3)CF2O)zCF(CF3)C(O)NHCx2xSi(L)3(式中、nは1〜4であり、zは3〜約15であり、xは1〜約10であり、Lは−ORおよび−NR’2からなる群から選択され、ここで、Rは炭素原子数1〜約10のアルキル基であり、R’はHおよび炭素原子数1〜約10のアルキル基からなる群から選択される)、
X−CF(CF3)(OCF2CF(CF3))mO(Cn2n)O(CF(CF3)CF2O)qCF(CF3)−X(式中、mは0〜約40の整数であり、nは2〜4の整数であり、qは0〜約40の整数であり、mとqの両方が0に等しくはなく、Xは−C(O)NH(CH2qSi(L)3であり、ここで、qは1〜約10であり、Lは−ORおよび−NR’2からなる群から選択され、ここで、Rは炭素原子数1〜約10のアルキル基であり、R’はHおよび炭素原子数1〜約10のアルキル基からなる群から選択される)、および
XCF2O(CF2O)m(C24O)pCF2X(式中、mは1〜約20であり、pは1〜約20であり、Xは−C(O)NH(CH2qSi(L)3であり、ここで、qは1〜約10であり、Lは−ORおよび−NR’2からなる群から選択され、ここで、Rは炭素原子数1〜約10のアルキル基であり、R’はHおよび炭素原子数1〜約10のアルキル基からなる群から選択される)、
ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され、
汚れ防止組成物の平均分子量が約800〜約6000である、方法を提供する。
【0017】
反射防止コーティング
反射防止コーティングは、ガラス、石英、またはポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリチオウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリイミドおよびポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートを含む有機高分子基材などの透明基材(すなわち光透過性)上に付着させた材料の1層以上の層を含んでもよい。最も単純な反射防止コーティングは、反射防止コーティングを上に付着させる基材の屈折率より低い屈折率を有する透明材料の単一層である。多層反射防止コーティングは基材上の誘電材料の2層以上の層を含み、ここで、少なくとも1層は基材の屈折率より高い屈折率を有する。それらは、しばしば反射防止フィルムスタックと呼ばれる。
【0018】
反射防止コーティングは多様な材料によって提供してもよい。反射防止コーティングは、好ましくは金属酸化物薄膜によって、より好ましくはスパッター被覆金属酸化物薄膜によって提供される。本明細書における「金属酸化物」は単一金属(メタロイドを含む)の酸化物および金属合金の酸化物を含む。好ましい金属酸化物には、酸素が不足していてもよい(すなわち、酸化物中の酸素の量が化学量論量より少ない)酸化ケイ素が挙げられる。好ましくは、最外面上の金属酸化物フィルムは酸化ケイ素(SiOx、ここで、xは2以下である)を含む。但し、適する他の材料としては、錫、チタン、ニオブ、亜鉛、ジルコニウム、タンタル、イットリウム、アルミニウム、セリウム、タングステン、ビスマス、インジウムおよびそれらの混合物の酸化物が挙げられる。具体例としては、SnO2、TiO2、Nb25、ZnO、ZrO2、Ta25、Y23、Al23、CeO2、WO3、Bi2O、In23およびITO(インジウム錫酸化物)が挙げられる。スパッター被覆金属酸化物フィルムが熱蒸発フィルムより高い密度を有し、硬く、平滑であり、安定であるので、スパッター被覆金属酸化物フィルムは熱蒸発フィルムより好ましい。こうしたスパッター被覆金属酸化物フィルムは比較的多孔質であり、原子力顕微鏡によって測定して、ほぼ約5ナノメートル〜約30ナノメートルの直径を有する粒子のクラスタからなるけれども、こうしたスパッター被覆金属酸化物フィルムは、それらの機械的特性、電気特性および光学特性を変えうる水および気体に対して十分に不透過性である。
【0019】
透明基材
適する透明基材としては、ガラス、ならびにポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリチオウレタン、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマーおよびアクリロニトリルスチレンコポリマーなどのスチレンコポリマー、セルロースエステル、特にセルロースアセテートおよびセルロースアセテートブチレートコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリイミド、ポリフェニレンオキシド、およびポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートなどの透明熱可塑性材料が挙げられる。「ポリ(メタ)アクリレート」(または「アクリル」)という用語は、キャストアクリルシート、延伸アクリル、ポリ(メチルメタクリレート)「PMMA」、ポリ(メタクリレート)、ポリ(アクリレート)およびポリ(メチルメタクリレート−co−エチルアクリレート)などと一般に呼ばれる材料を含む。基材の厚さは可撓性有機フィルムに関して異なることが可能であるが、典型的には約0.1mm〜約1mmの範囲である。更に、有機高分子基材は様々な異なる方法によって製造することが可能である。例えば、熱可塑性材料は押し出すことが可能であり、その後、所望の寸法に切断することが可能である。熱可塑性材料は成形して所望の形状および寸法を形成することが可能である。熱可塑性樹脂はセルキャスティングする(cell cast)ことも可能であり、後で加熱し、延伸して、有機高分子基材を形成することが可能である。
【0020】
反射防止コーティングを上に付着させる基材は下塗り表面を含んでもよい。下塗り表面は、アクリル層などの化学プライマ層の塗布から、あるいは化学エッチング、電子ビーム照射、コロナ処理、プラズマエッチングまたは接着促進層の共押出から生じることが可能である。こうした下塗り基材は市販されている。例えば、水性アクリレートラテックスで下塗りされたポリエチレンテレフタレートは、ノースカロライナ州ホープウェルのインペリアル・ケミカル・インダストリーズ・フィルムズ(Imperial Chemical Industries Films(Hopewell,NC))から入手できる。
【0021】
基材は反射防止コーティングと基材との間の接着力を改善するために接着力強化コーティングを含んでもよい。こうしたコーティングは市販されている。接着力強化コーティングは可撓性有機高分子基材上で用いるために特に望ましい。下塗りまたは非下塗りの有機高分子基材への反射防止コーティングの接着力の強化に加えて、接着力強化コーティングは、反射防止被膜の耐引掻き性を改善することにより可撓性有機高分子基材上の反射防止コーティングに高い耐久性を提供することも可能である。
【0022】
汚れ防止組成物/汚れ防止層
本発明は反射防止基材上に汚れ防止組成物を付着させる方法であって、汚れ防止組成物を気化させる工程と、反射防止基材上に前記汚れ防止組成物を付着させる工程とを含む方法を提供する。反射防止基材は、反射防止フィルムスタックの一部である透明なあらゆる基材であるか、または反射防止組成物で全部または一部が覆われている表面を有する透明なあらゆる基材である。反射防止組成物は、好ましくは、反射防止性の金属酸化物、金属フッ化物、金属窒化物または金属硫化物などである。より好ましくは、反射防止組成物は反射防止性の金属酸化物であり、最も好ましくは、反射防止組成物はスパッタ被覆反射防止性金属酸化物フィルム(好ましくは酸化ケイ素を含む)である。本発明の汚れ防止組成物は、例えば、指紋からの皮膚の油によるような汚染に表面をより抵抗性にさせる。汚れ防止組成物は、好ましくは乾拭きによりまたは水および洗剤により表面を清浄化するのもより容易にさせる。更に、汚れ防止組成物は、汚れ防止組成物が適用される表面、特にフィルムスタックの反射防止表面の光学特性の乱れを殆どまたは全く引き起こさない。すなわち、本発明の汚れ防止コーティングはフィルムスタックの反射率を大幅には増やさない。
【0023】
本発明の方法によって製造された物品は、任意の接着力強化コーティング、反射防止組成物、好ましくは多層フィルムスタックおよび汚れ防止組成物が上にコーティングされた下塗り表面を任意に有するガラスまたは有機高分子基材などの基材を含む。好ましくは、基材は可撓性であり、物品全体はロールの形で貯蔵することが可能である。
【0024】
本発明の汚れ防止組成物は、Cn2n+1O(CF(CF3)CF2O)zCF(CF3)C(O)NHCx2xSi(L)3(式中、nは1〜4であり、zは3〜約15であり、xは1〜約10であり、Lは−ORおよび−NR’2からなる群から選択され、ここで、Rは炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R’はHおよび炭素原子数1〜10のアルキル基からなる群から選択される)、X−CF(CF3)(OCF2CF(CF3))mO(Cn2n)O(CF(CF3)CF2O)qCF(CF3)−X(式中、mは0〜約40の整数であり、nは2〜4の整数であり、qは0〜約40の整数であり、mとqの両方が0に等しくない)、XCF2O(CF2O)m(C24O)pCF2X(式中、mは1〜約20であり、pは1〜約20であり、Xは−C(O)NH(CH2qSi(L)3であり、ここで、qは1〜約10であり、Lは−ORおよび−NR’2からなる群から選択され、ここで、Rは炭素原子数1〜約10のアルキル基であり、R’はHおよび炭素原子数1〜約10のアルキル基からなる群から選択される)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される汚れ防止組成物を含み、汚れ防止組成物の平均分子量は約800〜約6000である。汚れ防止とは、反射防止基材の表面に適用した時、組成物が反射防止基材の疎水性と親水性の両方を高めることを意味する。疎水性および親水性は、クルス・ドロップ・シェイプ・アナリシス(Kruss Drop Shape Analysis)計器(ドイツ国のクルス(Kruss GmbH)から入手できる)を用いて、それぞれヘキサデカンおよび水を用いて静的接触角を決定することにより測定してもよい。
【0025】
汚れ防止組成物の全体的な厚さは、汚れ防止および耐久性の特性を強化する厚いコーティングに関する希望と反射防止基材の反射防止特性を維持する薄いコーティングに関する希望の釣り合いから生じる。本発明の汚れ防止組成物の全体的なコーティング厚さは、典型的には約20〜500オングストローム、より好ましくは約40〜100オングストロームである。
【0026】
本発明の方法において用いられる汚れ防止組成物は、好ましくは800〜約6000、より好ましくは900〜4000の平均分子量を有する。汚れ防止組成物の好ましい実施形態は、C37O(CF(CF3)CF2O)zCF(CF3)C(O)NHC36Si(OCH33、XCF2O(CF2O)m(C24O)pCF2XおよびX−CF(CF3)(OCF2CF(CF3))mO(Cn2n)O(CF(CF3)CF2O)qCF(CF3)−X(式中、mは0〜約40の整数であり、nは2〜4の整数であり、qは0〜約40の整数であり、mとqの両方が0に等しくはなく、Xは−C(O)NH(CH23Si(OCH33である)およびそれらの組み合わせを含む。より好ましくは、汚れ防止組成物はC37O(CF(CF3)CF2O)zCF(CF3)C(O)NHC36Si(OCH33である。汚れ防止組成物がC37O(CF(CF3)CF2O)zCF(CF3)C(O)NHC36Si(OCH33である時、平均分子量が約900〜4000、最も好ましくは約1200であることが好ましい。汚れ防止組成物がXCF2O(CF2O)m(C24O)pCF2X(式中、Xは−C(O)NH(CH23Si(OCH33である)である時、最も好ましい平均分子量は約2200である。
【0027】
本組成物は、当業界で知られているように取り扱いの容易さのために不活性支持体上に被覆されているか、または吸着されていてもよい。米国特許出願公開第2003/0003227号明細書を参照してもよい。
【0028】
気化
本発明の方法は反射防止基材上に汚れ防止組成物を付着させる工程を含み、ここで、この方法は汚れ防止組成物を気化させる工程と、反射防止基材上に汚れ防止組成物を付着させる工程とを含む。汚れ防止組成物を適用するために、噴霧塗布、ナイフ塗布、浸漬塗布、メニスカス塗布、流れ塗布およびロール塗布などの様々な塗布方法が用いられてきた。これらの技術は、汚れ防止組成物および製造規模のレベルで法外に高価であることが分かりうる装置と合わせて溶媒の使用を必要とすることが多い。更に、これらの技術は余分の製造フロアスペースを必要とし、運転するために追加の労働力を必要とする。
【0029】
本発明の付着方法は余分な取り扱いおよび環境への暴露を通したレンズ表面の汚染の可能性を減らすことが可能であり、対応して、より低い収量損失につながる。従って、本発明の方法は、溶媒の使用の必要性をなくして少ない設備投資コストで他の用途のために産業において用いられる処理条件に似た処理条件下で反射防止レンズに汚れ防止組成物を適用することを可能にする。
【0030】
特許請求の範囲の方法は汚れ防止組成物を気化させる工程を含む。気化とは、汚れ防止組成物に気相中で蒸気を形成させるのに十分なエネルギーを汚れ防止組成物に付与することを意味する。気化は、気相に達する時に汚れ防止組成物の化学構造が変化しないことを必要とする。1つの態様において、汚れ防止組成物を気化させるのは、例えば、加熱およびマイクロ波照射などによってエネルギーを付与することを含んでもよい。温度は好ましくは少なくとも80℃である。より好ましくは、温度は汚れ防止組成物の分解温度を超えない。別の態様において、組成物を気化させるのは周囲圧力より低い圧力で行ってもよい。より好ましくは、気化は約1mmHgより低い圧力で、最も好ましくは約0.01mmHgより低い圧力で行われる。
【0031】
汚れ防止組成物を気化させるのは、好ましくは周囲温度より上に、より好ましくは約80℃より上に汚れ防止組成物を加熱することと周囲圧力より下に、より好ましくは約0.01mmHgより下に汚れ防止組成物周囲の圧力を下げることとの両方を同時に含んでもよい。
【0032】
有用な真空チャンバおよび装置は当業界で知られている。市販されている1つの装置は、オハイオ州グローブポートのサティス・バキュアム・オブ・アメリカ(Satis Vacuum of America(Grove Port,OH))から入手できる900DLSである。
【0033】
付着
本発明の方法は反射防止基材上に汚れ防止組成物を付着させることも含む。反射防止基材上に付着させる時、本方法の汚れ防止組成物は汚れ防止特性を付与する。本発明の汚れ防止組成物に関するから研ぎ研磨に対する得られた基材の耐久性は他の汚れ防止組成物に比べて遙かに優れている。
【0034】
反射防止基材上に汚れ防止組成物を付着させるのは、同じチャンバに汚れ防止組成物および反射防止基材を入れ、(汚れ防止組成物を含む)チャンバを加熱し、チャンバ内の圧力を下げることを含む。こうした条件下で、反射防止基材および汚れ防止組成物を同じ温度に加熱してもよい。
【0035】
本発明の別の態様において、汚れ防止組成物を第1のチャンバに入れてもよく、反射防止基材を第2のチャンバに入れてもよい。ここで、チャンバは例えばガラス管によって接続されている。この態様において、汚れ防止組成物を収容する第1のチャンバは周囲温度より上、より好ましくは80℃より上に加熱してもよい。第2のチャンバも周囲温度より上に加熱してもよいか、またはより好ましくは周囲温度のままであってもよい。あるいは、第2のチャンバは周囲温度より下に冷却することが可能である。
【0036】
汚れ防止組成物を第1のチャンバに入れる時、反射防止基材を第2のチャンバに入れてもよく、ここで、チャンバは例えばガラス管によって接続されており、両方のチャンバ内の圧力は同じであってもよい。両方のチャンバ内の圧力は好ましくは大気圧より低く、より好ましくは0.01mmHgより低い。更に、本発明は第1のチャンバおよび第2のチャンバのサイズおよび形状を変更して、第2のチャンバ内で反射防止基材上に付着させる汚れ防止組成物の量を最大にしてもよい。更に、第1のチャンバおよび第2のチャンバを接続する手段ならびに2つのチャンバの相対的空間配置(ならびにチャンバの垂直整列または水平整列)を変更して、第2のチャンバ内で反射防止基材上に付着させる汚れ防止組成物の量を最大にしてもよい。
【実施例】
【0037】
本発明の利点を以下の実施例によって例示する。これらの実施例で挙げた特定の材料および材料の量ならびに他の条件および詳細は、当業界で広く適用するように解釈されるべきであり、本発明を不当に限定するように解釈されるべきではない。
【0038】
【表1】

【0039】
静的接触角の測定方法
静的接触角は、「クルス(KRUSS) G120/G140 MKI」角度計(ノースカロライナ州シャーロットのクルスUSA(Kruss USA(Charlotte,NC))から入手できる)を用いて水とヘキサデカンの両方について決定した。特に指示がない限り、接触角は研磨の前(初期)および研磨の直後(研磨)に測定した。値は4つの測定の平均値であり、度で報告している。接触角に関する測定可能な最小値は20であった。20未満の値は液体が表面上に広がることを意味する。
【0040】
動的接触角の測定方法
報告している場合、VCA−2500XEビデオ接触角アナライザ(マサチューセッツ州ビレリカのASTプロダクツ(AST Products(Billerica,MA)))を用いて前進接触角および後退接触角を測定した。両方の接触角測定方法に関して、より大きい接触角値は、より良好な撥水・撥油性を示している。
【0041】
浸漬塗布法1
自動化浸漬コータ(「ユニスライド(Unislide)」(登録商標)アセンブリ、ニューヨーク州ブルームフィールドのベルメックス(Velmex Inc.(Bloomfield,NY)))を3〜4mm/秒の後退速度での浸漬のために用いた。HFE−7100(セントポールのスリーエム・カンパニー(3M Company)から入手できる)中の0.1重量%FCの調製したばかりの溶液中で顕微鏡スライドを浸漬コーティングした。顕微鏡スライドを強制空気炉に60℃で1時間にわたり入れ、試験の前に冷却した。
【0042】
研磨/摩擦試験
フロリダ州ポンパノビーチのポールN.ガードナー(Paul N.Gardner Co.(Pompano Beach,FL))から入手できる「ポールガードナー(PAUL GARDNER)」モデル12VFIリニア摩擦試験機を用いてコーティングの耐久性を試験した。「ポールガードナー(PAUL GARDNER)」WA−2225研磨パッド(450.0g、寸法:10.5cm×5.1cm)を覆う「スリーエム・ハイパフォーマンス(3M HIGH PERFORMANCE)」ワイプ(ミネソタ州セントポールのスリーエム・カンパニー(3M Company(St.Paul,MN))から入手できる)を用いて、上に蒸着材料の層を有する各ガラススライドを適切な報告した研磨サイクル数にわたり摩擦した。
【0043】
蒸着チャンバ1
蒸着チャンバ1は、接地ガラスジョイントを各々が有する2つの区画からなる2リットルのガラス反応フラスコ(ニュージャージー州ヴィンランドのエース・ガラス(Ace Glass Co.(Vineland,NJ))から入手できる;2リットルの反応フラスコ、カタログNo.6511−56、フラスコヘッド、カタログNo.6512−20)であった。より高い真空を達成するために、シリコーングリースを接地ガラスジョイントに被着させた。チャンバを支持体に対して垂直位置でクランプ留めし、被覆すべきガラススライド(25×75mm;ペンシルバニア州ウェストチェスタのVWRサイエンティフィック(VWR Scientific(West Chester,PA))から入手できる)をチャンバの底区画に入れた。チャンバの上区画は熱電対(J型、コネチカット州スタンフォードのオメガ・エンジニアリング(Omega Engineering(Stamford,CT))から入手できる)、真空ゲージおよびシリコーンオイルポンプへの引取口に関するアクセスポイントを有していた。熱電対をガラスに接触させて置いた。
【0044】
蒸着チャンバ2
蒸着チャンバ2は、一端がOリングジョイントを経由してサンプルチューブに接続されている長さ22cm×直径11cmの円筒真空チャンバからなる特注の2リットルガラス容器であった。真空チャンバの他端は真空源に接続されていた。真空チャンバは、処理されるべき基材の取外しおよび挿入を可能にするためにOリングジョイントによって接合された2つの区画からなっていた。真空チャンバを水平位置でクランプ留めした。
【0045】
実施例1−HFPOシランの蒸着
HFPOシラン約3滴を含む5ドラムのバイアルおよび顕微鏡スライド(25×75mm;ペンシルバニア州ウェストチェスタのVWRサイエンティフィック(VWR Scientific(West Chester,PA))から入手できる)を蒸着チャンバ1に入れた。シリコーンオイル真空ポンプを用いて、0.002mmHg(0.27パスカル)の真空を達成し、その後、加熱マントルを用いてチャンバを90℃(外側ガラス温度)に加熱した。サンプルをこの熱および圧力に1時間にわたり供し、その後、チャンバを冷却し、真空を解消し、チャンバを開けた。上で記載された水「静的接触角測定」試験を用いて、得られた被覆サンプルを試験した。結果を表1に記載している。
【0046】
実施例2−PFPEジシランの蒸着
PFPEジシラン約3滴を含む5ドラムのバイアルおよび顕微鏡スライド(25×75mm)を蒸着チャンバ1に入れた。シリコーンオイル真空ポンプを用いて、0.003mmHg(0.4パスカル)の真空を達成し、その後、加熱マントルを用いてチャンバを150℃(外側ガラス温度)に加熱した。サンプルをこの熱および圧力に30分にわたり供し、その後、チャンバを冷却し、真空を解消し、チャンバを開けた。上で記載された水「静的接触角測定」試験を用いて、得られた被覆サンプルを試験した。結果を表1に記載している。
【0047】
比較例C−1
比較例C−1はきれいで未処理の顕微鏡スライドである。
【0048】
【表2】

【0049】
実施例3〜8
蒸着チャンバ1を表2に記載された温度に加熱するために最初に加熱マントルを用いることにより実施例3〜8を調製した。温度をチャンバの内部(サンプル位置から1cm)で測定した。その後、表2に記載したようなフルオロケミカル(FC)約3滴を含む5ドラムのバイアルおよび顕微鏡スライド(25×75mm)をチャンバに入れた。シリコーンオイル真空ポンプを用いて、加熱されたチャンバを0.002mmHg(0.27パスカル)の真空に供した。サンプルをこの熱および圧力に3分にわたり供し、その後、チャンバを冷却し、真空を解消し、チャンバを開けた。上で記載された「研磨/摩擦試験」と水およびヘキサデカン「静的接触角測定」試験を用いて、得られた被覆サンプルを試験した。結果を表2に記載している。
【0050】
比較例C−2
「浸漬塗布法1」に記載された標準浸漬塗布法を用いて比較例C−2を調製した。
【0051】
【表3】

【0052】
実施例9
顕微鏡スライドの代わりに眼鏡レンズ(耐引掻き性および反射防止被膜を有するポリカーボネート樹脂、ミネソタ州ミネアポリスのツイン・シティ・オプティカル(Twin City Optical(Minneapolis,MN))から入手できる)を用い、サンプルを150℃および0.002mmHg(0.27パスカル)真空で5分にわたり維持したことを除き、実施例6について記載された手順に従って実施例9を調製した。上で記載された「研磨/摩擦試験」と水「静的接触角測定」試験を用いて、得られた被覆サンプルを試験した。結果を表3に記載している。
【0053】
【表4】

【0054】
実施例10〜13
サンプルチューブ(14.0cm)を取り付けた蒸着チャンバ2に表4に記載されたフルオロケミカル(FC;0.4g)および次の通りUV/オゾン処理を用いて清浄化されていた顕微鏡ガラススライド(25×75mm)を投入した。紫外線ランプ(「UV GRID LAMP」という商品名でカリフォルニア州クレアモントのBHK(Claremont,CA))から得られる5インチ×5インチ平方(12.5cm×12.5cm)の紫外線ランプ、モデル88−9102−02)を小さいシートメタルボックス(幅13cm×深さ14cm×高さ15cm)に入れて、紫外線ランプをボックスの底より8cm上で吊り下げるようにした装置内で顕微鏡スライドを紫外線およびオゾンに5分にわたり供した。紫外線ランプに物理的に接触せずに紫外線ランプに可能な限り近く清浄化されるべきシリコンウェハ片を置くために小さい実験室ジャッキを用いた。ボックスの前面は上で丁番留めされたドアであり、それは、サンプルを挿入し、取り出すことを可能にした。約1〜5標準リットル/分の速度でボックスに流れ込む酸素源にボックスの片側の小さい穴を取り付けた。
【0055】
水銀拡散ポンプを用いて、1×10-4mbar未満の真空を達成した。その後、サンプルチューブを300〜310℃に30分にわたり加熱した。チャンバを冷却し、真空を解消し、チャンバを開けた。得られた被覆サンプルをチャンバから取り出し、80℃で1時間にわたり更に加熱し、室温に冷却し、その後、上で記載された水「静的および動的接触角測定方法」を用いて試験した。結果を表4に記載している。
【0056】
【表5】

【0057】
実施例13〜15
サンプルチューブ(9.0cm)を取り付けた蒸着チャンバ2にHFPOシラン(0.4g)およびUV/オゾン処理を用いて清浄化されていた3つの顕微鏡ガラススライド(XXから入手できる)を投入した。水銀拡散ポンプを用いて、1×10-4mbar未満の真空を達成した。その後、サンプルチューブを320℃に1時間にわたり加熱した。これらの条件下で、過剰の液体HFPOシランをガラススライド上で観察した。液体の最大の沈着はサンプルチューブに最も近いガラススライド上にあった(表5の「近い」指定)。チャンバを冷却し、真空を解消し、チャンバを開けた。得られた被覆サンプルをチャンバから取り出し、80℃で1時間にわたり更に加熱し、室温に冷却し、「キムワイプ(KIMWIPE)」(ジョージア州ロスウェルのキンバリークラーク(Kimberly Clark(Roswell,GA))から入手できる)で軽く磨き、その後、上で記載された水「静的接触角測定方法」を用いて試験した。結果を表5に記載している。
【0058】
【表6】

【0059】
実施例16〜18
真空を6×10-5mbarでかけ、サンプルチューブの長さが14.0cmであったことを除き、実施例13〜14について記載された手順に従って実施例16〜18を調製した。チャンバから取り出すと、過剰の液体をガラススライド上で観察しなかった。
【0060】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚れ防止組成物を気化させる工程と、反射防止基材上に前記汚れ防止組成物を付着させる工程とを含む反射防止基材上に汚れ防止組成物を付着させる方法であって、前記汚れ防止組成物が、
n2n+1O(CF(CF3)CF2O)zCF(CF3)C(O)NHCx2xSi(L)3(式中、nは1〜4であり、zは3〜15であり、xは1〜10であり、Lは−ORおよび−NR’2からなる群から選択され、ここで、Rは炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R’はHおよび炭素原子数1〜10のアルキル基からなる群から選択される)、
X−CF(CF3)(OCF2CF(CF3))mO(Cn2n)O(CF(CF3)CF2O)qCF(CF3)−X(式中、mは0〜40の整数であり、nは2〜4の整数であり、qは0〜40の整数であり、mとqの両方が0に等しくはなく、Xは−C(O)NH(CH2qSi(L)3であり、ここで、qは1〜10であり、Lは−ORおよび−NR’2からなる群から選択され、ここで、Rは炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R’はHおよび炭素原子数1〜10のアルキル基からなる群から選択される)、
XCF2O(CF2O)m(C24O)pCF2X(式中、mは1〜20であり、pは1〜20であり、Xは−C(O)NH(CH2qSi(L)3であり、ここで、qは1〜10であり、Lは−ORおよび−NR’2からなる群から選択され、ここで、Rは炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R’はHおよび炭素原子数1〜10のアルキル基からなる群から選択される)、
およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記汚れ防止組成物の平均分子量が800〜6000である、方法。
【請求項2】
前記汚れ防止組成物は、
37O(CF(CF3)CF2O)zCF(CF3)C(O)NHC36Si(OCH33(式中、zは3〜15である)、
X−CF(CF3)(OCF2CF(CF3))mO(Cn2n)O(CF(CF3)CF2O)qCF(CF3)−X(式中、mは0〜40の整数であり、nは2〜4の整数であり、qは0〜40の整数であり、mとqの両方が0に等しくはなく、Xは−C(O)NH(CH23Si(OCH33である)、
XCF2O(CF2O)m(C24O)pCF2X(式中、mは1〜20であり、pは1〜20であり、Xは−C(O)NH(CH23Si(OCH33である)、
およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記汚れ防止組成物はC37O(CF(CF3)CF2O)zCF(CF3)C(O)NHC36Si(OCH33(式中、zは3〜15である)である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記気化が0.01mmHg未満の圧力で行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記気化が少なくとも80℃の温度で行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記汚れ防止組成物は900〜4000の平均分子量を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記反射防止基材上に付着した前記汚れ防止組成物は20〜500オングストロームの厚さを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記反射防止基材上に付着した前記汚れ防止組成物は単一層を形成する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記反射防止基材は反射防止眼科用レンズを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記反射防止眼科用レンズはポリカーボネート樹脂および前記ポリカーボネート樹脂の表面上の反射防止被膜を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
汚れ防止組成物を気化させる工程と、反射防止被覆を有する眼科用レンズ上に前記汚れ防止組成物を付着させる工程とを含む、反射防止被覆を有する眼科用レンズ上に汚れ防止組成物を付着させる方法であって、前記汚れ防止組成物が、
n2n+1O(CF(CF3)CF2O)zCF(CF3)C(O)NHCx2xSi(L)3(式中、nは1〜4であり、zは3〜15であり、xは1〜10であり、Lは−ORおよび−NR’2からなる群から選択され、ここで、Rは炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R’はHおよび炭素原子数1〜10のアルキル基からなる群から選択される)、
X−CF(CF3)(OCF2CF(CF3))mO(Cn2n)O(CF(CF3)CF2O)qCF(CF3)−X(式中、mは0〜40の整数であり、nは2〜4の整数であり、qは0〜40の整数であり、mとqの両方とも0に等しくはなく、Xは−C(O)NH(CH2qSi(L)3であり、ここで、qは1〜10であり、Lは−ORおよび−NR’2からなる群から選択され、ここで、Rは炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R’はHおよび炭素原子数1〜10のアルキル基からなる群から選択される)、
XCF2O(CF2O)m(C24O)pCF2X(式中、mは1〜20であり、pは1〜20であり、Xは−C(O)NH(CH2qSi(L)3であり、ここで、qは1〜10であり、Lは−ORおよび−NR’2からなる群から選択され、ここで、Rは炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R’はHおよび炭素原子数1〜10のアルキル基からなる群から選択される)、
およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記汚れ防止組成物の平均分子量が800〜6000であり、前記汚れ防止組成物を第1のチャンバに入れ、前記反射防止被覆を有する眼科用レンズを前記第1のチャンバに接続された第2のチャンバに入れて、前記第1のチャンバから気化した汚れ防止組成物を第2のチャンバ内で前記反射防止被覆を有する眼科用レンズ上に付着させることができるようにする、方法。
【請求項12】
前記第1のチャンバは加熱され、前記第2のチャンバは周囲温度のままであり、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバの両方の中の圧力は大気圧より低い、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2007−533448(P2007−533448A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509473(P2007−509473)
【出願日】平成17年3月21日(2005.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/009431
【国際公開番号】WO2005/105326
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】