説明

反応処理装置

【課題】反応容器プレートを用いて自動的にかつ正確に反応処理を行なうことができる反応処理装置を提供する。
【解決手段】上部ユニットが本体ユニット100上で水平方向にスライド可能に保持されて開閉可能となっている。上部ユニットが完全に閉じられる際は、上部ユニットが回転方向に円弧を描くように下降し、プレート上面ブロック120は反応容器プレート1上で上部ユニットの下降に伴なって垂直下降する。プレート上面ブロック120は温度調節部4bを下方で保持しており、プレート上面ブロック120の下降により温度調節部4bは反応容器プレート1の反応容器配置領域に接触する。温度調節部4bの下面には位置決めピン121aが設けられ、それに対応する反応容器保持部130の上面に穴121bが設けられている。温度調節部4bの下降時に位置決めピン121aと穴121bが嵌合し、それによって温度調節部4bは反応容器プレート1の反応容器配置領域上に位置決めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物学的分析、生化学的分析、又は化学分析一般の分野において、医療や化学の現場において各種の解析や分析を行なうのに適する反応容器プレートを用いて反応処理を行なう反応処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生化学的分析や通常の化学分析に使用する小型の反応装置としては、マイクロマルチチャンバ装置が使用されている。そのような装置としては、例えば平板状の基板表面に複数のウエルを形成したマイクロタイタープレートなどのマイクロウエル反応容器プレートが用いられている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
また、微量の液体を定量的に扱うことができる微量液体秤取構造として、第1流路及び第2流路と、上記第1流路の流路壁に開口する第3流路と、第2流路の流路壁に開口して第3流路の一端と第2流路を連結し第3流路よりも相対的に毛管引力が働きにくい性質の第4流路とを有する構造を備えたものがある(例えば特許文献2,3参照。)。その微量液体秤取構造によれば、第1流路に導入された液体が第3流路内に引き込まれた後、第1流路に残存する上記液体を取り除き、第3流路の容積に応じた体積の液体を第2流路に秤取することができる。
【0004】
従来のマイクロウエル反応容器プレートは、使用時には反応容器プレートの上面は大気に開放された状態となる。そのため、サンプルに外部から異物が進入する恐れがあるし、逆に反応生成物が外部の環境を汚染することもありうる。
また、特許文献2,3に開示された微量液体秤取構造では、第1流路の両端及び第2流路の両端に液体導入用のポートが形成されているが、それらのポートは大気に開放されており、それらのポートを介して反応生成物が外部の環境を汚染することもありうる。
【0005】
そこで、本発明者らは、サンプルに反応を起こさせるための反応容器、その反応容器に接続されてサンプルや反応試薬などを流通させるための反応容器流路、試料や試薬などを封入するための封止容器、その封止容器に接続されうる封止容器流路のほか、液体を送液するためのシリンジやシリンジに反応容器流路又は封止容器流路を切り替えて接続するための切替えバルブなどを1枚のプレートに集積し、反応容器、反応容器流路、封止容器、封止容器流路を密閉系とした反応容器プレートを提案している(特許文献4参照)。提案の反応容器プレートによれば、反応容器プレートの外部からの異物の進入や、外部への環境汚染を防ぐことができる。
【特許文献1】特開2005−177749号公報
【特許文献2】特開2004−163104号公報
【特許文献3】特開2005−114430号公報
【特許文献4】WO2008/96492号公報
【特許文献5】特開2000−50867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような反応容器プレートを用いて自動的にかつ正確に反応処理を行なうことができる反応処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、反応容器が配置されている反応容器配置領域及び反応容器に接続された反応容器流路を1枚のプレート内に備えた反応容器プレートを処理するための反応処理装置であって、反応容器プレートを保持するためのプレート保持部と、プレート保持部を最上部に備えた本体ユニットと、反応処理時にプレート保持部に保持された反応容器プレート上の所定位置に配置される上部ユニットと、上部ユニットを支持しながら本体ユニットとは相対的に水平方向にのみ移動する水平移動部と、本体ユニットに固定されたカム、水平移動部に取り付けられ水平移動部が移動することによってカムに追従して動作するカムフォロア、及び一端がカムフォロアに接続され、他端で上部ユニットを保持し、カムフォロアがカムに追従して動作することに伴なって上部ユニットを上下方向に移動させて最も低い高さの反応処理位置まで下降させるアーム機構を備えた上部ユニット駆動機構と、上部ユニットに設けられ、反応処理時に反応容器配置領域上に配置されて反応容器の温度を調節する温度調節部と、本体ユニット上面と温度調節部下面に設けられ、上部ユニットが反応処理位置にきたときに温度調節部を反応容器配置領域上に位置決めする位置決め機構と、を備えたものである。
【0008】
反応容器プレートを用いて反応処理を行なう際、反応容器プレートの周囲には光学的測定部など様々な機構が配置される。しかし、それらの機構が反応容器プレートを反応処理装置に設置する際に反応容器プレートを保持するプレート保持部の周囲にあると設置の邪魔である。そこで、本体ユニットの上面にプレート保持部が配置され、上部ユニットが本体ユニットの上部で水平方向にスライドして開閉することができる構造とする。上部ユニットを開くことによってプレート保持部が露出するため、反応容器プレートの設置が容易である。
【0009】
上部ユニットがスライドする構造であるため、上部ユニットを完全に閉じた状態でも上部ユニットが本体ユニット上の本来の停止位置から数μm〜数百μmずれることがある。上部ユニットの位置ずれは上部ユニットに設けられた温度調節部などの機構の位置ずれとなり、反応測定に影響を与えかねない。そのため本発明では、上部ユニットが反応処理を行なう所定位置まできたときに温度調節部を反応容器プレートの反応容器配置領域上で位置決めする位置決め機構が設けられている。
【0010】
位置決め機構の一例は、本体ユニットの上面と温度調節部の下面に設けられ、上部ユニットが反応処理を行なう所定位置まできたときに嵌合する穴とピンからなるものである。その場合、本体ユニット、温度調節部のどちらに穴又はピンが設けられていてもよい。なお、ここでの「ピンと穴」とは、突起状のピンと穴に限定されるものではなく、凹凸の噛み合わせを利用したものも含む。
【0011】
さらに、上部ユニットが反応処理時に温度調節部の上方から反応容器内の反応を光学的に測定する光学的測定部を備えている場合には、温度調節部は反応容器上の位置に光学的測定部による光学的な測定を可能にする窓部を備えている。この場合、温度調節部が本来配置されるべき位置からずれていると、反応容器上に配置されるべき窓部の位置もずれてしまい、光学的測定部の測定を妨げてしまうこともあり得るが、本発明では、温度調節部がピンと穴からなる位置決め機構によって反応容器配置領域上の位置に正確に位置決めされるため、そのような位置ずれが発生せず、光学的測定部の測定を正確に行なうことができる。
【0012】
通常、反応容器プレートには、試薬や希釈液等を封入しておくための封止容器が設けられている。そして、反応処理時にシリンジをその封止容器へ接続してサンプルと試薬を混合したり、混合したサンプル液を反応容器へ注入したりすることが行なわれる。本発明者らは、予め封止容器に収容された液体や粉末が反応容器プレートの使用前に封止容器流路に入り込まないように、封止容器の底面に押圧により貫通可能な貫通部を設け、封止容器流路の一端を封止容器の下方から上向きに突起した突起流路として、封止容器を下降させて突起流路で貫通部を貫通してはじめて封止容器流路が封止容器に接続される構造も提案している。
【0013】
しかし、そのような構造の反応容器プレートを使用するには、反応処理を行なう前に突起流路が封止容器の底面を貫通するように封止容器を下降させる必要がある。そのような動作を反応容器プレートをプレート保持部に設置する前に又は設置した後で分析者が手作業で行わなければならないとすると、分析者がその作業をし忘れたときに封止容器に封止容器流路が接続されていない状態で反応処理動作が開始されてしまい、反応容器にサンプル液や反応試薬が搬送されず、反応容器で反応処理が行なわれないなどの不具合が生じることもありうる。
【0014】
そこで、上部ユニットに、上部ユニットの上下動に追従して動作し、下降動作時に封止容器を下方へ押し込んで封止容器流路を封止容器に接続する封止容器押込み部を設けてもよい。そうすれば、上部ユニットを所定位置にスライドさせるだけで、自動的に封止容器が下方へ押し込まれて封止容器流路が接続されるため、分析者が封止容器を下降させる必要がなくなる。
【0015】
上記の反応処理装置に関連する装置として、反応容器において核酸の増幅を行なうための熱サイクル試験機がある(特許文献5参照。)。この熱サイクル試験機(以下、関連装置と呼ぶ。)は、蓋キャリアを水平方向に移動させることによって、その内側に取り付けられた加熱手段を有する可動蓋も水平方向へ移動するが、可動蓋は反応容器上ではストッパとガイドによって蓋キャリアの水平方向への移動にともなって垂直な方向にのみ移動するように構成されている。そして、蓋キャリアが所定の位置にまで移動されたときに可動蓋が反応容器を覆う位置まで下降し、加熱手段が反応容器内に配置される。可動蓋はバネによって斜め上方向に常時引張されており、蓋キャリアを所定の位置から移動させることにより、可動蓋がバネの弾性力によってガイドに沿って上昇し、加熱手段が反応容器内から自動的に取り出される。すなわち、この関連装置は、分析者が反応容器をチャンバに設置してから蓋キャリアを所定の位置まで水平に移動させるだけで自動的に加熱手段が反応容器内に配置され、逆に所定の位置から水平に移動させると加熱手段を反応容器内から取り出すことができる。
【0016】
関連装置の可動蓋の動作と本発明の上部ユニットの動作は類似する。しかし、関連装置の特徴は、ストッパやガイドを利用して、蓋キャリアを所定の位置まで水平に移動させるだけで自動的に可動蓋で反応容器を密閉系にするとともに加熱手段を反応容器内に配置することである。本発明の反応処理装置がカム機構からなる上部ユニット駆動機構を備えているのは、水平移動部を水平移動させるだけで自動的に上部ユニットが所定の位置に配置されるようにするためである。また、関連装置では可動蓋を垂直な方向へ移動させるためにガイドを用いているが、本発明はカム機構を用いている。これらのことから、本発明は関連装置とは対象とする反応容器プレートの構造が異なっているだけではなく、その目的や機構も異なっている。
【0017】
さらに、本発明の反応処理装置は、液体及び気体の吸入と吐出を行なうシリンジ、及び反応容器流路又は封止容器流路をシリンジに切り替えて接続する切替えバルブをさらに備えた反応容器プレートも処理の対象とすることができる。その場合には、反応容器プレートのシリンジを駆動するためのシリンジ駆動部と、切替えバルブを駆動するためのバルブ駆動部とが上部ユニット又は本体ユニットに設けられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の反応処理装置は、水平移動部によって上部ユニットを水平方向へ移動させ得るようにし、カム機構により水平移動部の水平移動に伴なって上部ユニットを上下方向へ移動させて最も低い高さの反応処理位置まで下降させるようにしたので、分析者は水平移動部を水平移動させるだけで上部ユニットが自動的に反応処理位置に配置される。そして、本体ユニットの上面と温度調節部の下面に設けられ、上部ユニットが反応処理位置にきたときに温度調節部を反応容器配置領域上に位置決めする位置決め機構が設けられているので、上部ユニットの位置ずれの影響を受けることなく温度調節部を反応容器配置領域上に正確に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は本発明の反応処理装置が対象とする反応容器プレートの一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のA−A位置での断面に計量流路15、注入流路17、反応容器エアー抜き流路19,21、液体ドレイン空間29、エアードレイン空間31及びベローズ53の断面を加えた図である。なお、本発明の反応処理装置に用いられる反応容器プレートの構造は以下に説明する構造のものに限定されない。
【0020】
複数の反応容器10が上面を封止された状態で配列された領域が設けられている。同じ領域には、主流路13、計量流路15、注入流路17、反応容器エアー抜き流路19,21、ドレイン空間エアー抜き流路23,25も設けられている。主流路13、計量流路15及び注入流路17は反応容器流路を構成する。なお、図1(A)では、実際には上からは見えていない各流路を、便宜上、図示している。
【0021】
主流路13の一端13aは後述の切替えバルブ63のシリンジ接続流路63aへの接続ポートに接続されている。主流路13の他端は液体ドレイン空間29に接続されている。液体ドレイン空間29にはドレイン空間エアー抜き流路23の一端が接続されている。ドレイン空間エアー抜き流路23の他端23aは切替えバルブ63のシリンジ接続流路63aへの接続ポートに接続されている。
【0022】
計量流路15は主流路13から反応容器10ごとに枝分かれした流路であり、注入流路17を介して各反応容器10に接続されている。計量流路15の主流路13からの分岐部分の流路幅はそのすぐ下流の主流路13の流路幅よりも広く流路抵抗が小さくなっており、主流路13を流れる液体が計量流路15に優先的に流れ込み、計量流路15を充填した後で主流路13の下流側へ流れる構造である。
【0023】
注入流路17は、反応容器10内と注入流路17内で圧力差がない状態で反応容器10内の液密を保つ寸法で形成されている。注入流路17は複数の溝からなる。
【0024】
反応容器エアー抜き流路21は各反応容器10に反応容器エアー抜き流路19を介して接続されているとともに一端がエアードレイン空間31に接続されている。反応容器エアー抜き流路19は反応容器10内と反応容器エアー抜き流路19内で圧力差がない状態で反応容器10内の液密を保つ寸法及び構造であり、例えば複数の微細流路からなるものである。エアードレイン空間31にはドレイン空間エアー抜き流路25の一端が接続されている。ドレイン空間エアー抜き流路25の他端25aは切替えバルブ63の円弧状流路63bへの接続ポートに接続されている。
【0025】
反応容器10が配列されている領域とは異なる領域に封止容器としてサンプル容器35、試薬容器37及びエアー吸引用容器39が設けられている。図1(B)では図示されていない(サンプル容器35のみが図示されている。)が、これらの容器35,37及び39の上面は封止されており、特にサンプル容器35の上面は弾性部材からなるセプタムを含む密閉部材で密閉されている。以下に、図2を参照しながらこれらの容器35,37及び39について説明する。
【0026】
サンプル容器35はサンプル容器収容部36内に収容されている。サンプル収容部35の下方にサンプル流路35aとサンプル容器エアー抜き流路35bが設けられている。サンプル流路35aの一端はサンプル容器収容部36の底部から上向きに突起した第1突起流路35dであり、サンプル容器エアー抜き流路35bの一端は上向きに突起した第2突起流路35eである。図1(A)に示されているように、サンプル容器流路35aの他端は切替えバルブ63のシリンジ接続流路63aへの接続ポートとなっており、サンプル容器エアー抜き流路35bの他端は切替えバルブ63の円弧状流路63bへの接続ポートとなっている。第1突起部35dの基端部の外周側面及び第2突起部35eの基端部の外周側面に、例えばOリングなど環状のパッキン35fが設けられている。
【0027】
サンプル容器35は、サンプル液や試薬を貯留するための液体収容部35gと、液体収容部35gの上部側面に突起部分として設けられたエアー抜き部35iを備えている。サンプル収容部35gとサンプル容器エアー抜き部35iは液体収容部35gに貯留される液体の液面よりも上方にくるように設けられた流路35hによって連通している。
【0028】
サンプル容器35の上面は、例えばアルミニウムからなるフィルム35kと弾性部材からなるセプタム41によって封止されており、注射器などの分注器具を突き刺してサンプルなどの液体を注入できるようになっている。セプタム41は分注器具の引抜き後の穴を弾性で閉じることができるものである。流路35hは液体収容部35g内とサンプル容器エアー抜き部35i内で圧力差がない状態で液体収容部35gの液密を保つように形成されている。この例では、液体収容部35g内に試薬45が予め収容されている。
【0029】
サンプル容器35のサンプル収容部35g底面は突起流路35aによって貫通可能な第1貫通部35jとなっており、サンプル容器エアー抜き部35iの底面は突起流路35eによって貫通可能な第2貫通部35lとなっている。貫通部35j,35lは例えばアルミニウムからなるフィルムにより構成されていてもよいし、サンプル容器35とともに一体成型により形成されていてもよい。
【0030】
サンプル容器収容部36の近傍にサンプル容器35を保持するための係止ツメ35cが設けられており、サンプル容器35の外周面に係止ツメ35cと係合する係止用溝35m,35nが設けられている。未使用時のサンプル容器35は、サンプル容器35の底面がサンプル容器収容部36の底から少し浮いた状態で保持され、サンプル容器35の底面がサンプル容器収容部36の底に達するまでサンプル容器35を下方に押し込むことによって使用可能となる。サンプル容器35の底面がサンプル容器収容部36の底から少し浮いた状態では、第1貫通部35jと第1突起部35d、第2貫通部35lと第2突起部35eが対向している(図2(E)参照。)。この状態からサンプル容器35を下方に押し込むことによって、第1突起部35dが第1貫通部35jを、第2突起部35eが貫通部35lをそれぞれ貫通し、サンプル収容部35gとサンプル容器流路35a、サンプル容器エアー抜き部35iとサンプル容器エアー抜き流路35bがそれぞれ接続される(図2(F)参照。)。サンプル容器35のサンプル容器本体の下面はパッキン35fに押し付けられることにより、液漏れ及びエアー漏れが防止される。
【0031】
試薬容器37、エアー吸引用容器39もサンプル容器35と同様の構造をもち、それぞれ液体収容部(エアー吸引用容器39は液体を収容しない。)とエアー抜き部とを備えている。そして、それぞれに一端が接続される試薬容器流路37a、試薬容器エアー抜き流路37b、エアー吸引用容器流路39a、エアー吸引用容器エアー抜き流路39bがサンプル容器流路35a、サンプル容器エアー抜き流路35bと同様に設けられている。
【0032】
図1に戻って反応容器プレートの説明を続ける。
シリンジ51は上面が開口したシリンダ51a、シリンダ51a内に上下方向に摺動可能に配置されたプランジャ51b及びカバー体51dからなる。シリンダ51aの底部にシリンジ流路51cの一端が連通している。シリンジ流路51cの他端は切替えバルブ63の回転中心に設けられたポートに接続されている。
【0033】
カバー体51dはプランジャ51bの摺動方向に可撓性をもち、一端がシリンダ51aに接続され、他端がプランジャ51bに接続されている。シリンダ51aとプランジャ51bとカバー体51dで囲まれた空間はシリンジエアー抜き流路53bを介してベローズ53に接続されている。ベローズ53は伸縮することにより密閉された内部容量が受動的に変化するものである。これにより、プランジャ51bの摺動が円滑になされる。ベローズ53にはベローズ流路53aの一端が接続されており、ベローズ流路53aの他端は切替えバルブ63内の円弧状流路63bに接続するためのポートとなっている。
【0034】
切替えバルブ63は該反応容器プレートの下面側のシリンジ51の下方の位置に設けられている。切替えバルブ63は中央から半径方向に伸びたシリンジ接続流路63aを備えたローターを回転させることによってシリンジ接続流路63aの接続先を切り替えるロータリー方式の切替えバルブである。シリンジ接続流路63aの一端はバルブ中央のポートに直接的に接続されており、その中央のポートにシリンジ流路51cが接続されている。シリンジ接続流路63aの他端はシリンジ流路51cへの接続ポートであり、ローターを回転させることによりシリンジ流路51cを流路13,35a,37a,39aのいずれかに切り替えて接続することができる。また、切替えバルブ63のローターは円弧状流路63bも備えており、ベローズ流路53aを流路23a,25a,35b,37b,39bのいずれかに切り替えて接続することができる。なお、図1(A)はシリンジ流路51c及びベローズ流路53aをいずれの流路にも接続していない初期の状態を示している。
【0035】
図3は以上において説明した反応容器プレートを処理する反応処理装置の構成を概略的に示した断面図である。
2はシリンジ51のプランジャ51bを駆動するためのシリンジ駆動部であり、反応容器プレートの上方に配置されている。シリンジ駆動部2はシリンジ51によって液体の送液を行なう際にシリンジ51上に配置され、例えばステッピングモータ等によってプランジャ51bを上下方向に駆動する。
【0036】
3は切替えバルブ63を回転させるバルブ駆動部であり、反応容器プレートの下方に配置されている。バルブ駆動部3は切替えバルブ63のローターを平面内方向に回転駆動することにより切替えバルブ63を切り替える。
4a,4bはともに反応容器10の温度を所定温度に調節するための温度調節部である。この実施例の反応処理装置は、反応容器プレートの下面側と上面側に温度調節部4a、4bが配置されている。下面側の温度調節部4aは反応容器プレートを保持するプレート保持部(図示は省略)に組み込まれており、ヒーターやペルチェ素子により反応容器10の温度を下方から調節するものである。上面側の温度調節部4bは反応容器10上に配置された温調蓋の温度を例えばヒーターやペルチェ素子を利用して調節することにより、反応容器10の温度を制御するものである。温度調節部4bの反応容器10に対応する位置には窓部が設けられており、後述する光学的測定部5での光学的測定を可能にしている。
【0037】
光学的測定部5は反応容器10内の反応を光学的に測定するものであり、反応容器プレート1上を水平方向に移動しながら各反応容器10内の反応を順に測定することができる。
シリンジ駆動部2、バルブ駆動部3、温度調節部4a,4b及び光学的測定部5の動作は制御部6によって制御される。
【0038】
上記の構成を備えた反応処理装置では、反応処理時に反応容器プレート1の上方に配置されるシリンジ駆動部2や光学的測定部5が反応容器プレート1を設置する際にもその位置にあると邪魔になる。シリンジ駆動部2や光学的測定部5を搭載した上部ユニットを本体ユニット上でスライド可能にした反応処理装置の例を説明する。図12〜図15は反応処理装置の上部ユニットをスライド可能にした構造及び動作を説明するための図であり、いずれも(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は外側フレーム及び内側フレームよりも内側の様子を示す正面図である。図13〜図15は図12の状態から反応処理を行なうための状態へ移行する際の動作状態を順に示したものである。図18はプレート上面ブロックの構造及び動作を説明するための断面図であり、(A)は上部ユニット下降前、(B)は上部ユニット下降後の状態を示している。なお、図12〜図15では、上部ユニットの内部の動作を見やすくするために、上部ユニットに搭載されているシリンジ駆動部2及び光学的測定部5の図示は省略している。
【0039】
図12に示されているように、本体ユニット100の最上部に反応容器プレートを設置するためのプレート保持部130が設けられている。図18に示されているように、プレート保持部130には反応容器プレート1の下面側から反応容器10の温度を調節する温度調節部4aが組み込まれている。温度調節部4aの上面には反応容器10を収容するための凹部が設けられており、各凹部に対応する反応容器10が収容されることにより、反応容器プレート1の設置と位置決めがなされる。プレート保持部130の周囲に、後述する温度調節部4bの位置決めピン121aを挿入するための穴121bが設けられている。
【0040】
図12に戻って、プレート保持部130を挟んでプレート保持部130の側方にガイドレール106が互いに平行に配置されている。本体ユニット100のガイドレール106よりもさらに外側に1つずつ計2つのカム108が設けられている。
【0041】
本体ユニット100上に上部ユニットが配置されている。なお、ここでは上部ユニット全体の図示は省略し、上部ユニットの一部である内側フレーム104やプレート上面ブロック120のみを図示している。上部ユニットを支持している外側フレーム102(水平移動部)はガイドレール106に沿って水平方向にのみ移動することができる。これにより、反応容器プレートの着脱を行なう際に上部ユニットを反応容器プレートの着脱の邪魔にならない位置まで移動させることができる。
【0042】
ここで、上部ユニットを反応容器プレートの着脱の邪魔にならない位置へ移動させること、すなわち図において右方向へ移動させることを上部ユニットを「開く」と定義する。逆に、上部ユニットを反応容器プレート上の位置へ移動させること、すなわち図において左方向へ移動させることを上部ユニットを「閉じる」と定義する。
【0043】
外側フレーム102の内側にジョイント114、シャフト118を介して内側フレーム104が取り付けられている。後述するが、上部ユニットに搭載されているシリンジ駆動部2や光学的測定部5は内側フレーム104に取り付けられており、反応処理が開始された場合を除いて内側フレーム104と同じ挙動をする。外側フレーム102のガイドレール106に平行な2つの外側側面にジョイント114と回転軸を共有するアーム110がそれぞれ取り付けられており、各アーム110の先端にカムフォロア112が取り付けられている。これら2つのカムフォロア112は外側フレーム102が所定の位置にきたときに同時にカム108に接触し、カム108に追従するようになっている。
【0044】
アーム110とジョイント114は回転軸111を共有し、互いが一定角度をなした状態で固定されている。ジョイント114はアーム110が回転すると一定角度を維持するように同じ方向に回転する。シャフト118はジョイント114の回転軸111とは異なる位置に取り付けられており、ジョイント114の回転によって円弧を描くように移動する。シャフト118は内側フレーム104内側を通って反対側側面を貫通し、その端部にジョイント114と同様のジョイント116が取り付けられている。ジョイント116はジョイント114と同様に回転中心が外側フレーム102に固定されている。内側フレーム104は前後2本のシャフト118によって支持されており、水平状態を維持した状態でジョイント114,116の動作に応じて水平方向又は回転方向に移動する。
【0045】
また、外側フレーム102と内側フレーム104の間には垂直な方向に弾性力を発生させるように圧縮バネ128が挿入されている。
【0046】
内側フレーム104の内側にガイドレール106と平行に配置された2本のスライドレール122が設けられている。スライドレール122上に、反応処理時に反応容器プレート上に配置されるプレート上面ブロック120がスライド可能に配置されている。プレート上面ブロック120は、サンプル容器35、試薬容器37、エアー吸引用容器39を下方に押し込んで、それぞれに対応する流路35a,37a,39bを接続する封止容器押込み部となるとともに、図18に示すように、バネなどの弾性部材が組み込まれて軸方向に弾性変形する弾性固定部材120aによって温度調節部4bを保持している。
【0047】
プレート上面ブロック120の反応容器プレート1の反応容器配列領域に対応する位置に窓部120bが設けられており、温度調節部4bの各反応容器10上の位置に窓部123が設けられている。これは、プレート上面ブロック120の上方から反応容器10内の反応の光学的な測定を可能にするためである。しかし、温度調節部4bが反応容器プレート1に対して位置ずれし、窓部123の位置が反応容器10の位置からずれていると、光学的測定の精度が悪くなる。そのため、温度調節部4bの周縁部に、プレート保持部130側の穴121bに挿入されることによって反応容器プレート1に対して温度調節部4bを位置決めする位置決めピン121aが設けられている。
【0048】
位置決めピン121aと穴121bは温度調節部4bを反応容器配列領域上に位置決めするための位置決め機構を構成するが、このような位置決め機構としては、図18に示されているような突起状のピン121aと穴121bに限定されるものではなく、凹凸形状の噛み合わせを利用したものであってもよい。
【0049】
なお、温度調節部4bと封止容器押込み部をそれぞれ単体で設けることもできる。
また、位置決めピン121a及び穴121bの位置は温度調節部4b及びプレート保持部130の周縁部以外の位置に設けられていてもよい。
また、温度調節部4b側に穴121bが設けられ、プレート保持部130側に位置決めピン121aが設けられていてもよい。
【0050】
再び図12に戻って、プレート上面ブロック120はバネ124によってスライドレール122上でのスライドが弾性的に固定されている。本体ユニット100にはプレート上面ブロック120をプレート保持部130上の位置で停止させるためのストッパ126が設けられている。
【0051】
また、本体ユニット100の上面の複数箇所、例えば4箇所に位置決めピン107aが設けられ、内側フレーム104下面の位置決めピン107aに対応する位置に位置決めピン107aを挿入するための穴107bが設けられている。穴107bは上部ユニットのスライド方向へ延びた長穴形状である。位置決めピン107aと長穴107bは、上部ユニットのスライド方向と垂直な方向への本体ユニット100と上部ユニットとの位置決めを行なうための位置決め機構を構成している。なお、この実施例では内側フレーム104下面に穴107bが設けられているが、上部ユニットが反応処理時の位置に移動したときに位置決めピン107aが挿入され得る場所であれば、上部ユニット下面のどこに設けられていてもよい。穴107bが長穴形状であるのは、上部ユニットを閉じていったときに内側フレーム104が垂直ではなく、円弧を描くように斜めに下降するからである。上部ユニットの挙動を以下に説明する。
【0052】
図12は上部ユニットを少し開いた状態を示している。この状態ではカムフォロア112がカム108に接触しておらず、圧縮バネ128の弾性力によってプレート上面ブロック120が反応容器プレートに接触しない高さで保持されている。
【0053】
図12の状態から上部ユニットを少し閉じるように外側フレーム102を移動させると、カムフォロア112がカム108に接触し(図13参照)、さらに上部ユニットを閉じるように外側フレーム102を移動させることによって、アーム110及びジョイント114が回転軸111を中心に反時計方向に回転する(図14参照)。ジョイント114の回転により、シャフト118を介してジョイント114に固定されている内側フレーム104も水平姿勢を保ちながら反時計方向に円弧を描くように斜めに下降する。
【0054】
プレート上面ブロック120はバネ124の弾性力によって内側フレーム104とともに水平方向や回転方向への移動を行なうものの、上部ユニットを閉じている途中でプレート保持部130上の位置に到達するとストッパ126に接触して水平方向への移動を停止する。プレート上面ブロック120がストッパ126に接触している状態で内側フレーム104がさらに反時計回りに回転移動すると、プレート上面ブロック120はスライドレール122上をスライドすることによって水平面内方向への移動は停止したまま、内側フレーム104の垂直な方向への移動には従動する。すなわち、プレート上面ブロック120はプレート保持部130上の位置に到達してからは垂直下降する。
【0055】
さらに上部ユニットを閉じるように外側フレーム102を移動させると、カムフォロア112がカム108に乗り上げることによりアーム110及びジョイント114が反時計回りにさらに回転する(図15参照)。これにより、内側フレーム104は円弧を描くようにさらに斜めに下降する。これに対して、プレート上面ブロック120は垂直に下降してプレート保持部130に設置された反応容器プレートのサンプル容器35、試薬容器37、エアー吸引用容器39を下方に押し込み、これらの容器35,37,39に対応する流路35a,37a,39bを接続する。プレート上面ブロック120の下降により、温度調節部4bも下降して反応容器プレート1の反応容器10の配列領域の上面に接触する。このとき、温度調節部4bの位置決めピン121aがプレート保持部130側の穴121bに挿入され、反応容器プレート1に対する位置決めがなされる。この状態でさらにプレート上面ブロック120が下降しても、弾性固定部材120aが弾性変形するために反応容器プレート1を破損することはない。
【0056】
アーム110とジョイント114のなす角度はカムフォロア112がカム108に完全に乗り上げたときにプレート上面ブロック120の高さがその軌道において最も低くなるように設定されており、そのときのプレート上面ブロック120の高さが反応容器プレートのサンプル容器35、試薬容器37、エアー吸引用容器39に流路35a,37a,39bを接続しうる高さとなるようにプレート上面ブロック120の高さが設定されている。
【0057】
逆に図15の状態から上部ユニットを開く方向に外側フレーム102を移動させる際は、圧縮バネ128の弾性力が内側フレーム104を持ち上げる方向に作用しているため、カムフォロア112がカム108に追従することによってアーム110及びジョイント114が時計回りに回転し、それに伴なって内側フレーム104が水平姿勢を維持しながら時計回りに回転移動する。カムフォロア112がカム108から離れた後は、内側フレーム104は外側フレーム102とともに水平移動する。プレート上面ブロック120は図15の状態から外側フレーム102をある程度移動させるまでは垂直上昇し、所定の高さまで上昇した後は内側フレーム104に従動する。
【0058】
上記の構造により、分析者は上部ユニットを完全に開いた状態で反応容器プレートをプレート保持部130に設置した後、上部ユニットを閉じるように外側フレーム102をスライドさせるだけで、サンプル容器35、試薬容器37、エアー吸引用容器39が下方に押し込まれてそれらの容器35,37,39に対応する流路35a,37a,39bが自動的に接続される。したがって、装置に設置する前又は設置した後で分析者が自ら反応容器プレートの各容器35,37,39を手で押し込んで流路35a,37a,39bを接続する必要がない。
【0059】
図15の状態が上部ユニットを完全に閉じた状態であり、この状態が反応容器プレート1を用いた反応処理を行なうための状態である。この状態では、本体ユニット100側の位置決めピン107aと上部ユニット側の穴107bとが嵌合することにより、上部ユニットと本体ユニット100とが上部ユニットのスライド方向と垂直な方向(図では紙面に対して垂直な方向)に対して位置決めされている。図16(A)〜(C)において順に示すように、位置決めピン107aは上部ユニットの閉じる方向へのスライドに伴なって円弧を描くように斜めに下降するため、穴107bは長穴形状となっている。
【0060】
位置決めピン107aと穴107bの寸法及び形状については、上部ユニットが完全に閉じられたときに位置決めピン107aと穴107bとが完全に嵌合すればよい。すなわち、上部ユニットが完全に閉じられたときに位置決めピン107aがくる穴107b内の位置のスライド方向と垂直な方向の内径と位置決めピン107aの外径とが一致していればよい。しかし、図17(A)に示されるように、位置決めピン107aの先端部が初めに挿入される穴107bの位置の内径が位置決めピン107aの先端部の外径と同じであると、上部ユニットと本体ユニット100の位置が少しでもずれていると位置決めピン107aの先端部が穴107bにうまく挿入されない。そのため、同図(B)に示されているように、位置決めピン107aの先端部をテーパ形状にしてもよい。また、(C)に示されているように、位置決めピン107aの先端部が初めに挿入される穴107bの位置の内径を位置決めピン107aの外径よりも大きくし、位置決めピン107aの移動方向へ徐々に内径が小さくなるようにして、最終的に内径が位置決めピン107aの外径と一致させるようにしてもよい。これらの方法により、上部ユニットと本体ユニット100の位置が多少ずれていても位置決めピン107aの先端部がスムーズに穴107bに挿入される。
【0061】
既述のように、上部ユニットには光学的測定部5が設けられている。図19は光学的測定部5を説明するための上部ユニット105の内部の概略図であり、(A)は光学的測定部5の動作時、(B)は光学的測定部5の原点位置検出時をそれぞれ示している。
光学的測定部5は、内側フレーム104に設けられたリニアガイド132に取り付けられている。リニアガイド132は上部ユニットのスライド方向と平行に配置されている。測定時は、光学的測定部5が内側フレーム104から独立して上部ユニット105のスライド方向と同じ方向へ移動しながら、各反応容器10の反応を順次、光学的に測定する。
【0062】
本体ユニット100の所定の位置にフォトセンサ136aが取り付けられており、光学的測定部5にはそのフォトセンサ136aのセンサ光を遮るセクタ136bが取り付けられている。フォトセンサ136aとセクタ136bは光学的測定部5の原点位置を検出するための原点位置センサを構成する。光学的測定部5は、図19(B)に示されているように、光学的測定開始前にフォトセンサ136がセクタ136bを検出する位置まで移動し、フォトセンサ136aがセクタ136bを検出した位置を原点として認識し、その位置を基準にして光学的測定のスキャンを開始するように構成されている。
【0063】
上部ユニット105は本体ユニット100とは相対的にスライド可能であるため、上部ユニット105を完全に閉じた状態において上部ユニット105と本体ユニット100との間でスライド方向への位置ずれが発生することがある。光学的測定部5は上部ユニットと同じ方向へ独立してスライド可能であるため、その位置ずれを補正することは可能であるが、その補正を行なうためには補正を行なうための原点位置を検出する必要がある。しかし、原点位置として検出すべき基準の位置が上部ユニットに設けられていると、上部ユニットの位置ずれによって基準位置も位置ずれしているため、光学的測定部5が位置補正を行なうことができない。この実施例では、基準位置としてのフォトセンサ136aが本体ユニット100側に設けられており、本体ユニット100の一定の位置を基準に光学的測定部5がスキャン動作を行なうため、各反応容器10上の正確な位置で正確な測定を行なうことができる。なお、ここでは原点位置センサとしてフォトセンサ136aとセクタ136bを用いているが、その他同様の光学的センサや磁気センサを用いることも可能である。
【0064】
なお、図示されていないが、シリンジ駆動部2が光学的測定部5と一体になっていてもよい。そうすれば、上記の原点位置センサを用いてシリンジ駆動部2の正確な原点位置の検出も可能となり、上部ユニットの位置ずれに影響されることなく、シリンジ駆動部2をシリンジ51上の位置に正確に移動させることができる。
【0065】
図4は同実施例の反応処理装置の反応処理動作の一例を示すフローチャートである。以下にこのフローチャートとともに図5〜図11を参照しながら反応処理時の動作について説明する。
【0066】
反応処理装置が分析動作を開始する前に、分析者による前処理として、注射器などの分注器具を用いてセプタム41越しに例えば5μLのサンプル液をサンプル容器35内に注入する。反応容器プレートを反応処理装置のプレート保持部130(例えば、図12参照)に設置して上部ユニットを閉じると、反応処理装置に設けられた封止容器押込み部によってサンプル容器35、試薬容器37及びエアー吸引用容器39が下方へ自動的に押し込まれ、各容器35,37,39の液体収容部とエアー抜き部の底部を突起流路が貫通してそれぞれに対応する流路が接続される。同時に、温度調節部4bが反応容器プレート1の反応容器10の配列領域の上面に接触する。
【0067】
上記の分析者による前処理後、反応処理装置による処理動作を開始する。バルブ駆動部3によって切替えバルブ63を切り替えて、シリンジ流路51cをサンプル流路35aに接続し、ベローズ流路53aをサンプル容器エアー抜き流路35bに接続する(ステップS1)(図5参照)。このとき、エアー抜き流路37b,39bもベローズ流路53aに接続される。
【0068】
シリンジ駆動部2によってシリンジ51を吸引側へ駆動し、サンプル容器35の液体収容部35g側の内圧をエアー抜き部35i側よりも減圧する(ステップS2)。サンプル容器35の液体収容部35gには例えば45μLの試薬45が予め収容されているが、反応容器プレートが振動したり衝撃を受けたりすることによって試薬45がエアー抜き部35i側へ入り込んでしまっている場合があるので、液体収容部35g側を陰圧にすることによってエアー抜き部35≡側へ入り込んでいる試薬45を液体収容部35gへ戻す。さらにシリンジ51を吸引方向と吐出方向へ複数回往復駆動することによりサンプル容器35内を攪拌し、サンプル液と試薬45とを混合する(ステップS3)。その後、混合液をシリンジ51で例えば10μLだけ吸引する(ステップS4)。
【0069】
次に、バルブ駆動部3によって切替えバルブ63を切り替えて、シリンジ流路51cを試薬流路37aに接続し、ベローズ流路53aを試薬容器エアー抜き流路37bに接続する(ステップS5)(図6参照。)。試薬容器37には例えば190μLの希釈水49が予め収容されている。シリンジ駆動部2によってシリンジ51を吐出側へ駆動し、シリンジ51で吸引した混合液を試薬容器37内に注入する(ステップS6)。さらに、シリンジ51を吸引方向と吐出方向へ往復駆動して試薬容器37内を攪拌することにより、混合液と希釈水49とを混合する(ステップS7)。混合後、シリンジ51を吸引方向へ駆動することによりその希釈混合液を例えば200μL(全部)吸引する(ステップS8)。
なお、混合液を試薬容器37に注入する前(ステップS5とS6の間)にシリンジ51を吸引側へさらに駆動し、試薬容器37内の液体収容部側の内圧をエアー抜き部側よりも減圧する工程を追加して、エアー抜き流路側に入り込んでいる希釈水49を液体収容部へ戻すようにしてもよい。
【0070】
バルブ駆動部3によって切替えバルブ63を切り替えて、シリンジ流路51cを主流路13の一端13aに接続し、ベローズ流路53aをドレイン空間エアー抜き流路23,25の一端23a,25aに接続する(ステップS9)(図7参照。)。シリンジ駆動部3によってシリンジ51を吐出方向に駆動し、先の工程で吸引した希釈混合液を主流路13に注入する(ステップS10)。主流路13に注入された希釈混合液は、上流側から順に計量流路15を満たし、液体ドレイン空間29に到達する。
【0071】
バルブ駆動部3によって切替えバルブ63を切り替えて、シリンジ流路51cをエアー吸引用流路39aに接続し、ベローズ流路53aをエアー吸引用容器エアー抜き流路39bに接続する(ステップS11)(図8参照。)。シリンジ駆動部2によってシリンジ51を吸引側に駆動してエアー吸引用容器39内の気体を吸引する(ステップS12)。
【0072】
バルブ駆動部3によって切替えバルブ63を切り替えて、シリンジ流路51cを主流路13の一端13aに接続し、ベローズ流路53aをドレイン空間エアー抜き流路23,25の一端23a,25aに接続する(ステップS13)(図9参照。)。この状態は、図7の接続状態と同じである。シリンジ駆動部2によってシリンジ51を吐出方向に駆動し、前工程で吸引した気体を主流路13に送って主流路13内の希釈混合液をパージする(ステップS14)(図9の白抜き矢印参照)。このときのパージ圧力状態では希釈混合液が注入流路17を通過せず、計量流路15内に留まる(シボ参照。)。パージされた希釈混合液は液体ドレイン空間29内に収容される。
【0073】
バルブ駆動部3によって切替えバルブ63を切り替えて、シリンジ流路51cをエアー吸引用流路39aに接続し、ベローズ流路53aをエアー吸引用容器エアー抜き流路39bに接続する(ステップS15)(図10参照。)。この状態は、図8の接続状態と同じである。シリンジ駆動部2によってシリンジ51を吸引側に駆動し、エアー吸引用容器39内の気体を吸引する(ステップS16)。
【0074】
バルブ駆動部3によって切替えバルブ63を切り替えて、シリンジ流路51cを主流路13の一端13aに接続し、ベローズ流路53aをドレイン空間エアー抜き流路25の一端25aに接続する(ステップS17)(図11参照。)。この状態は、ドレイン空間エアー抜き流路23の一端23aがベローズ流路53aに接続されていない点で図7及び図9に示した接続状態とは異なる。ドレイン空間エアー抜き流路23の一端23aがベローズ流路53aに接続されていないため、主流路13の下流端は閉じられた状態となる。この状態で、シリンジ駆動部2によってシリンジ51を吐出方向に駆動する。主流路13内は液体導入圧力及びパージ導入圧力よりも大きく加圧され、計量流路15内の希釈混合液が注入流路17を通過して反応容器10内に注入される(ステップS18)。
【0075】
その後、バルブ駆動部3によって切替えバルブ63を切り替えて図1の接続状態にすることにより、反応容器プレート内部の容器、流路及びドレイン空間を密閉する(ステップS19)。その状態で温度調節部4によって反応容器10を所定温度に加熱し、ワックス12を融解させる(ステップS20)。反応容器10に注入された希釈混合液はワックス12の下に入り、希釈混合液と試薬11が混ざり反応する。各反応容器10の反応を、光学的測定部5を反応容器10の配列領域上で移動させながら順に光学的に測定する。なお、光学的測定部5の原点位置は、この測定工程までの間にフォトセンサ136aがセクタ136bを検出する位置まで光学的測定部を移動させることにより検出する。
【0076】
また、希釈混合液を反応容器10内に注入する前に、温度調節部4によって反応容器10を加熱してワックス12を融解させておいてもよい。その場合は、反応容器10に注入された希釈混合液が直ちにワックス12の下に入り、希釈混合液と試薬11が混ざり反応する。切替えバルブ63による流路接続状態が図11の状態であっても、ベローズ53により密閉系は確保されている。希釈混合液の注入後に切替えバルブ63を図1の接続状態にすれば、反応容器プレート内部の容器、流路及びドレイン空間を密閉することができる。ここで切替えバルブ63を図1の接続状態に切り替えるタイミングは、希釈混合液の注入直後から希釈混合液と試薬11の反応終了までのいずれのタイミングであってもよいし、希釈混合液と試薬11の反応終了後であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】反応容器プレートの一実施例を示す図であり(A)は概略的な平面図、(B)は(A)のA−A位置での断面にベローズ、ドレイン空間、計量流路、注入流路及びサンプル容器エアー抜き流路の断面を加えた概略的な断面図である。
【図2】同実施例のサンプル容器収容部とサンプル容器を拡大して示した図であり(A)はサンプル容器収容部の平面図、(B)は(A)のB−B位置での断面図、(C)はサンプル容器の平面図、(D)は(C)のC−C位置での断面図、(E)はサンプル容器をサンプル容器収容部に第1保持位置で配置した断面図、(F)はサンプル容器をサンプル容器収容部に第2保持位置で配置した断面図である。
【図3】反応処理装置を具体的に示した断面図である。
【図4】反応処理装置の反応処理時の動作の一例を概略的に示すフローチャートである。
【図5】反応処理装置の反応処理時の動作の一例を説明するための1つの工程を示す平面図である。
【図6】図5に続く動作を説明するための平面図である。
【図7】図6に続く動作を説明するための平面図である。
【図8】図7に続く動作を説明するための平面図である。
【図9】図8に続く動作を説明するための平面図である。
【図10】図9に続く動作を説明するための平面図である。
【図11】図10に続く動作を説明するための平面図である。
【図12】上部ユニットを本体ユニット上でスライドさせる構造及び動作を説明するための図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は水平移動部及び内側フレームよりも内側の様子を示す正面図である。
【図13】図12の状態から上部ユニットを閉じた状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は水平移動部及び内側フレームよりも内側の様子を示す正面図である。
【図14】図13の状態から上部ユニットをさらに閉じた状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は水平移動部及び内側フレームよりも内側の様子を示す正面図である。
【図15】上部ユニットを完全に閉じた状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は水平移動部及び内側フレームよりも内側の様子を示す正面図である。
【図16】本体ユニット側の位置決めピンが対応する上部ユニット側の穴へ挿入されていく様子を(A)から(C)の順に示す断面図である。
【図17】位置決め機構を説明するための図であり、(A)は本体ユニット側の位置決めピンとそれに対応する上部ユニット側の穴の関係を示す平面図、(B)は先端をテーパ状にした位置決めピンを示す図、(C)は位置決め機構の他の実施例を示す平面図である。
【図18】プレート上面ブロックの構造及び動作を説明するための断面図であり、(A)は上部ユニット下降前、(B)は上部ユニット下降後の状態を示している。
【図19】光学的測定部5を説明するための上部ユニット105の内部の概略図であり、(A)は光学的測定部5の動作時、(B)は光学的測定部5の原点位置検出時をそれぞれ示している。
【符号の説明】
【0078】
1 反応容器プレート
2 シリンジ駆動部
3 バルブ駆動部
4a,4b 温度調節部
5 光学的測定部
6 制御部
10 反応容器
13 主流路
15 計量流路
17 注入流路
19,21 反応容器エアー抜き流路
35 サンプル容器
35a サンプル容器流路
35b サンプル容器エアー抜き流路
35c 係止ツメ
35d,35e 突起部
35f パッキン
35j,35l 貫通部
35m,35n 係止用溝
37 試薬容器
37a 試薬容器流路
37b 試薬容器エアー抜き流路
39 エアー吸引用容器
39a エアー吸引用容器流路
39b エアー吸引用容器エアー抜き流路
41 セプタム
51 シリンジ
51a シリンダ
51b プランジャ
51d カバー体
53 ベローズ
53a ベローズ流路
53b シリンジエアー抜き流路
63 切替えバルブ
100 本体ユニット
102 水平移動部
104 内側フレーム
106 ガイドレール
107a 位置決めピン
107b 穴
108 カム
110 アーム
112 カムフォロア
114 ジョイント
120 プレート上面ブロック
122 スライドレール
124,128 バネ
126 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器が配置されている反応容器配置領域及び前記反応容器に接続された反応容器流路を1枚のプレート内に備えた反応容器プレートを処理するための反応処理装置であって、
前記反応容器プレートを保持するためのプレート保持部と、
前記プレート保持部を最上部に備えた本体ユニットと、
反応処理時に前記プレート保持部に保持された反応容器プレート上の所定位置に配置される上部ユニットと、
前記上部ユニットを支持しながら前記本体ユニットとは相対的に水平方向にのみ移動する水平移動部と、
本体ユニットに固定されたカム、前記水平移動部に取り付けられ前記水平移動部が移動することによって前記カムに追従して動作するカムフォロア、及び一端が前記カムフォロアに接続され、他端で前記上部ユニットを保持し、前記カムフォロアが前記カムに追従して動作することに伴なって前記上部ユニットを上下方向に移動させて最も低い高さの反応処理位置まで下降させるアーム機構を備えた上部ユニット駆動機構と、
前記上部ユニットに設けられ、反応処理時に前記反応容器配置領域上に配置されて前記反応容器の温度を調節する温度調節部と、
前記本体ユニット上面と温度調節部下面に設けられ、前記上部ユニットが反応処理位置にきたときに前記温度調節部を前記反応容器配置領域上に位置決めする位置決め機構と、を備えた反応処理装置。
【請求項2】
前記位置決め機構は、前記上部ユニットが反応処理位置にきたときに嵌合するピンと穴からなるものである請求項1に記載の反応処理装置。
【請求項3】
前記上部ユニットは反応処理時に前記温度調節部の上方から前記反応容器内の反応を光学的に測定する光学的測定部を備え、
前記温度調節部は前記反応容器上の位置に前記光学的測定部による光学的な測定を可能にする窓部を備えている請求項1又は2に記載の反応処理装置。
【請求項4】
前記反応容器プレートは、底面に押圧により貫通可能な貫通部が設けられている封止容器、及び一端が前記封止容器の下方から上向きに突起した突起流路となっており、前記封止容器が下降して前記突起流路が前記貫通部を貫通することにより封止容器に接続される封止容器流路をさらに備えたものであり、
前記上部ユニットは、前記上部ユニットの上下動に追従して動作し、下降動作時に前記封止容器を下方へ押し込んで前記封止容器流路を封止容器に接続する封止容器押込み部をさらに備えている請求項1から3のいずれか一項に記載の反応処理装置。
【請求項5】
前記反応容器プレートは、液体及び気体の吸入と吐出を行なうシリンジ、及び前記シリンジに前記反応容器流路又は封止容器流路を切り替えて接続する切替えバルブをさらに備えたものであり、
前記シリンジを駆動するためのシリンジ駆動部と、前記切替えバルブを駆動するためのバルブ駆動部とが前記上部ユニット又は本体ユニットに設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の反応処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−78493(P2010−78493A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248177(P2008−248177)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】