反応種供給装置および表面等処理装置
【目的】放電電極部を処理ガスから保護し、酸化を防止して、寿命を長くする。
【解決手段】電極22〜25を電極カバー22P〜25Pで覆い、放電開口22HL,HR〜25HL,HR(22HL、25HRは閉塞されている)を設ける。また、放電開口22HL,HR〜25HL,HRの上流側で、90°位相がずれた位置に保護ガス流入口22Q〜25Qを設ける。保護ガス流入口22Q〜25Qから流入させられた保護ガスは、放電電極部22S〜25Sの周辺を流れて放電空間に流出させられる。放電電極部22S〜25Sに保護ガスが供給されるため、放電電極部22S〜25Sが処理ガスに接触し難くすることができる。そのため、放電電極部22S〜25Sの酸化を抑制し、寿命を長くすることができる。
【解決手段】電極22〜25を電極カバー22P〜25Pで覆い、放電開口22HL,HR〜25HL,HR(22HL、25HRは閉塞されている)を設ける。また、放電開口22HL,HR〜25HL,HRの上流側で、90°位相がずれた位置に保護ガス流入口22Q〜25Qを設ける。保護ガス流入口22Q〜25Qから流入させられた保護ガスは、放電電極部22S〜25Sの周辺を流れて放電空間に流出させられる。放電電極部22S〜25Sに保護ガスが供給されるため、放電電極部22S〜25Sが処理ガスに接触し難くすることができる。そのため、放電電極部22S〜25Sの酸化を抑制し、寿命を長くすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物に、少なくともラジカル等の反応種を供給する反応種供給装置、反応種供給装置を備え、被処理物の表面等に処理を行う表面等処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、放電空間に処理ガスを供給して、プラズマ内に生成された反応種等を被処理物に供給する反応種供給装置、および、その反応種供給装置を備えた表面等処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−302653
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
反応種供給装置においては、少なくとも一対の電極間の放電により放電空間にプラズマが発生させられ、その放電空間に処理ガスが供給されることにより、そのプラズマ内に生成されたラジカル等の反応種等が被処理物に供給される。そして、その放電空間に供給される処理ガスが酸素を含む場合において、電極が処理ガスに接触する状態で放電が行われると、電極が酸化し、磨耗等して寿命が短くなる等の問題がある。電極に高い電圧が印加されるため、電極が高温になり、酸化するのである。
本発明の課題は、反応種供給装置、その反応種供給装置を備えた表面等処理装置の改良であり、具体的には、上述の問題を解決することである。
【課題を解決するための手段および効果】
【0005】
本発明に係る反応種供給装置は、電極を処理ガスから保護する電極保護装置を含むものとされる。反応種供給装置に電極保護装置を設ければ、電極が処理ガスから保護されるため、放電が行われる場合に、電極の酸化を抑制し、電極の寿命を長くすることができる。
【特許請求可能な発明】
【0006】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組を、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0007】
(1)放電空間に処理ガスを供給して、少なくとも、プラズマ内に生成された反応種を被処理物に供給する反応種供給装置。
反応種供給装置は、被処理物に、少なくとも反応種を供給する装置である。
反応種とは、プラズマ内で生成された物体をいい、例えば、プラズマ内で励起された励起原子、分子等の高いエネルギを有する物体が該当する。また、反応種とは、電気的に中性の物体をいうと考えることができる。
反応種は、被処理物自体、あるいは、被処理物の表面に付着した物体(例えば、有機物)と反応等して、被処理物の表面等を改質したり、付着した物体を除去したり(洗浄したり)する等の機能を有するもの等をいう。
反応種供給装置において、(a)反応種と、(b)高いエネルギを有しないものとが被処理物に供給されるようにすることができる。高いエネルギを有しないものとは、被処理物の表面に当たっても反応を起こさない物体であり、反応種でない物体(例えば、励起されていない物体、活性化されていない物体等)が該当し、例えば、キャリアガス等が該当する。
また、反応種供給装置において、(a)電気的に中性である反応種(中性粒子)と、(b)正イオン、負イオン等の荷電粒子を含み、全体として電気的に中性な集合物とを含むものが被処理物に供給されるようにすることもできる。電気的に中性な集合物を被処理物に照射しても、被処理物は帯電しないため、被処理物への影響は小さい。
なお、金属材料、セラミックス材料、有機材料等、被処理物の材質は問わない。
(2)当該反応種供給装置は、放電空間を形成する少なくとも一対の電極を含むものである。
反応種供給装置は、電極対を1つ備えたものであっても、2つ以上備えたものであってもよい。すなわち、放電空間を1つ有するものであっても、2つ以上有するものであってもよい。
放電空間は、一対の電極の間に設けられた空間であり、一対の電極間の放電のために設けられた空間である。電極が複数対設けられる場合には、放電空間も複数設けられるが、複数の放電空間の各々は、互いに独立のものであっても、互いに連通したもの(互いに共通の空間を有するもの)であってもよい。また、電極が3つ並んで配設された場合には、電極対は2つあると考えることができ、2つの放電空間が形成されると考えることができる。中間に位置する電極は、2つの電極対を構成する共通の電極であると考えられる。
(3)当該反応種供給装置において、前記複数の電極が、前記処理ガスの前記放電空間への供給方向と交差する方向に、間隔を隔てて、並べて配設された。
電極とは、電圧が印加された場合に、放電を起こす可能性があるものをいう場合と、実際に放電を起こすものをいう場合とがある。
放電を起こす可能性があるもの、放電を起こすものは、それぞれ、電極全体である場合と、一部である場合とがある。
例えば、電極全体の形状、電極を覆うカバーの形状、電極が保持された反応種供給装置本体の構造等の1つ以上に起因して、電極全体のうち、放電が起きる可能性がある部分、あるいは、放電が実際に起きる部分が決まる場合があり、その場合における、放電が起きる部分が放電電極部である。また、電極全体が、放電が起きる部分である場合には、その電極が放電電極である。
一方、放電は、原則として、一対の電極の間で起き、一対の電極のうちの一方が放電電極であり、他方が対向電極である。放電電極、対向電極が、電圧を印加する電源装置、電圧調節装置の制御態様等によって予め決まる場合があるが、例えば、交流電圧が印加される場合等、1つの電極が、放電電極となったり、対向電極となったりする。また、本発明の説明において、放電電極と、対向電極とを区別する必要性は低い。そのため、本明細書においては、これらを区別することなく、放電電極、あるいは、放電電極部と称する場合がある。
また、電極全体は、概して棒状を成したものであっても、平板状を成したものであってもよい。
さらに、複数の電極の各々は、一直線上に位置する状態で設けても、複数の直線上に位置する状態で設けてもよい。
なお、放電とは、一対の電極間で起きる放電をいう。
(4)当該反応種供給装置において、前記電極の各々が、非平等電界を起こす形状を成したものである。
例えば、電極全体が、(a)概して円筒状を成した本体と、(b)その本体の一部に設けられ、半径方向に突出した突部とを含む場合には、その突部において非平等電界が生じ易くなり、放電が生じやすくなる。この場合には、突部が放電電極部に対応する。
また、電極全体が、(c)概して平板状を成した本体と、(d)その本体に形成された爪部とを含む場合には、爪部が放電電極部に対応する。
(5)当該反応種供給装置において、前記電極の各々の幅方向の長さが、隣接する電極間の距離より小さくされた。
例えば、複数の電極が間隔を隔てて一方向に配設された場合において、放電電極部の、その方向の長さD(幅)が、間隔Lに対して小さくされる(D<L)。放電電極部の幅Dは、間隔Lの1/2以下、1/3以下、1/4以下、1/5以下とすることができる。
(6)当該反応種供給装置は、前記電極を3つ以上含む。
4つの電極を含むものであっても、5つ以上の電極を含むものであってもよい。
また、3つ以上の電極は、1列に並んで配設されても、複数列に並んで配設されてもよい。複数列に並んで配設された場合には、複数列のうちの少なくとも一列において、並んで配設される電極は2つであっても、3つ以上であってもよい。
【0008】
(7)当該反応種供給装置に、前記電極を前記処理ガスから保護する電極保護装置を設けることができる。
(8)当該反応種供給装置に、前記電極を酸素から保護する電極保護装置を設けることができる。
(9)前記電極保護装置は、前記電極の各々を覆う電極カバーを含むものとすることができる。
電極カバーは、複数の電極の各々を、別個独立に覆うものとすることが望ましい。それに対して、複数の電極を覆う電極カバーには、互いに連結する連結部分を設けることも可能である。
電極カバーは、電極の各々について、その電極の少なくとも一部を覆う状態で設けられる。電極全体を覆うものであっても、電極全体のうちの一部を覆うものであってもよい。
電極カバーは、電極との間に隙間を有しない状態で設けても、隙間を有する状態で設けてもよい。
(10)前記電極カバーのうちの互いに隣接するものの、互いに対向する部分に、それぞれ、放電開口を設けることができる。
電極が、放電が起きる可能性を有するものである場合において、電極カバーが、電極全体を覆うものであり、かつ、電極カバーが、電極との間に隙間を有する状態で設けられた場合には、その電極カバーに放電開口を設けることが望ましい。その場合には、電極のうち、電極カバーの放電開口に対応する部分が放電電極部となる。
(11)前記電極カバーは、前記電極の少なくとも一部との間に隙間を有する状態で設けることができる。
電極カバーと電極の少なくとも一部との間に形成された隙間は、保護ガスが供給される空間となる。この空間の容積が小さい場合には、供給される保護ガスの量が少なくなり、隙間の容積が大きい場合には、供給される保護ガスの量が多くなる。
(12)前記電極保護装置は、前記電極の少なくとも一部に保護ガスを供給する保護ガス供給部を含むものとすることができる。
保護ガス供給部は、少なくとも、電極の、処理ガスから保護すべき保護対象部分(表面)に保護ガスを供給するものとすることが望ましい。
電極が放電が起きる可能性を有するものである場合において、保護ガス供給部は、電極全体に保護ガスを供給するものであっても、一部に供給するものであってもよい。一部に供給する場合には、放電電極部を含む部分に供給することが望ましい。
また、電極が放電電極である場合には、電極全体に供給することが望ましい。
なお、保護ガスを供給する場合に、電極カバーを設けることは不可欠ではない。電極カバーがなくても保護ガスを電極の表面に供給することができ、電極の周辺の雰囲気を処理ガスから分離することができる。
また、保護ガス供給部は、保護ガスを、複数の電極カバーの内側に共通に供給する共通供給部を含むものであっても、複数の電極カバーの各々に個別に供給する電極カバー別供給部(電極別供給部)を含むものであってもよい。
なお、保護ガス供給部は、後述するように、処理ガス供給部とは別個のものである。
(13)前記保護ガス供給部は、少なくとも放電中に、前記保護ガスを供給する放電中供給部を含むものとすることができる。
保護ガス供給部は、放電の準備が開始された場合に保護ガスの供給を開始するものとすることができ、具体的に、電極への電圧の印加が開始された場合に供給を開始するものとすることができる。
(14)前記電極保護装置は、(i)前記電極の各々を覆う電極カバーと、(ii)それら電極カバーの内側に、それぞれ、保護ガスを供給する保護ガス供給部とを含むものとすることができる。
(15)前記保護ガス供給部が、複数の電極カバーの内側に、それぞれ、個別に保護ガスを供給する個別供給部を含み、その個別供給部が、(i)当該反応種供給装置本体に設けられた保護ガス供給口に接続された主通路と、(ii)前記電極カバーの各々に設けられた保護ガス流入口と、(iii)前記主通路と前記保護ガス流入口の各々とを、それぞれ、個別に接続する個別通路とを含むものとすることができる。
主通路と個別通路とで、保護ガス供給通路が構成されると考えることができる。また、個別供給部は、電極別供給部と称し、個別通路は、電極別通路、電極カバー別通路と称することができる。
(16)前記保護ガス供給部が、前記複数の電極カバーの内側に保護ガスを共通に供給する共通供給部を含み、その共通供給部が、(i)前記複数の電極カバーと前記電極との間の隙間を、互いに連通させる連通部と、(ii)前記複数の電極カバーのうちのいずれか1つに設けられた保護ガス流入口とを含むものとすることができる。
連通部は、電極カバーの一部によって構成されたものとすることができる。
(17)前記保護ガス供給部が、前記電極カバーの各々に設けられた保護ガス流入口を含み、前記電極カバーのうちの互いに隣接するものの、互いに対向する部分であって、かつ、前記保護ガス供給口より下流側の部分に放電開口が設けられる。
電極カバーにおいて、保護ガス流入口と放電開口とは、軸方向と、周方向との少なくとも一方に隔たって設けることができる。
電極カバーの連通部の接続部を、保護ガス流入口とすることができる。
(18)前記保護ガス供給部は、前記電極カバーの各々に設けられた保護ガス流入口と、その保護ガス流入口より下流側に設けられた保護ガス流出口とを含むものとすることができる。
保護ガス流出口は、放電空間に対向する開口を有するものであっても、そうでなくてもよい。すなわち、電極カバーの内側に供給された保護ガスは、放電空間に流出させられるようにしても、反応種供給装置の外部に排気させられるようにしても、回収されるようにしてもよい。例えば、反応種供給装置の外部に連通させられる保護ガス排気通路や保護ガス回収装置に連通させられる保護ガス回収通路に接続されるようにすることができる。放電空間に対向する開口を有するものである場合には、その開口を保護ガス流出口とすることができる。
(19)当該反応種供給装置に、前記処理ガスの前記電極への接触を防止する処理ガス接触防止装置を設けることができる。
(20)当該反応種供給装置に、前記電極を前記処理ガスから遮断する処理ガス遮断装置を設けることができる。
(21)当該反応種供給装置に、前記電極を囲む空間のガスと前記処理ガスとを分離する電極周辺ガス・処理ガス分離装置を設けることができる。
処理ガス接触防止装置、処理ガス遮断装置、電極周辺ガス・処理ガス分離装置には、それぞれ、(7)項ないし(18)項に記載の技術的特徴を採用することができる。
(22)当該反応種供給装置に、酸素ガスの前記電極への接触を防止する酸素ガス接触防止装置を設けることができる。
(23)当該反応種供給装置に、前記電極を酸素ガスから遮断する処理ガス遮断装置を設けることができる。
(24)当該反応種供給装置に、前記電極を囲む空間のガスと酸素ガスとを分離する電極周辺ガス・酸素ガス分離装置を設けることができる。
酸素ガス接触防止装置、酸素ガス遮断装置、電極周辺ガス・酸素ガス分離装置には、それぞれ、(7)項ないし(18)項に記載の技術的特徴を採用することができる。
(25)前記反応種供給装置に、前記電極の酸化を抑制する酸化抑制装置を設けることができる。
酸化抑制装置には、(7)項ないし(18)項に記載の技術的特徴を採用することができる。
【0009】
(26)当該反応種供給装置に、前記電極に供給された保護ガスを処理する保護ガス処理部を設けることができる。
保護ガスは、電極カバーの内側に供給される場合と、電極カバーが設けられることなく、電極に直接供給される場合とがある。いずれにしても、電極に供給された保護ガスは電極の表面を流れ、その後、当該反応種供給装置の外部に排気させられたり、回収されたり、処理ガスに合流させられたりする等処理される。
(27)前記保護ガス処理部が、前記電極に供給された保護ガスが前記放電空間に放出され、放出された保護ガスが、少なくとも前記反応種を出力する反応種出力口から排気され難くする反応種分離型保護ガス処理部を含むものとすることができる。
(28)前記保護ガス処理部が、前記保護ガスを当該反応種供給装置の外部に排気する保護ガス排気部を含むものとすることができる。
(29)前記保護ガス処理部が、前記放電空間の下流側に設けられ、前記放電空間に対向する開口を有する保護ガス流出通路を含むものとすることができる。
保護ガス流出通路は、保護ガス排気通路とすることもできる。
保護ガスが電極カバーの内側に供給され、放電開口から放電空間に放出される場合には、保護ガス流出通路の開口が放電開口の近傍に位置する状態で設けることができる。
(30)前記保護ガス処理部が、前記電極に供給されて、流出させられたガスから、ダストを分離するダスト分離部を設けることができる。
保護ガスとともに、ダスト等も流出させられるため、ダストがダスト分離部によって保護ガスから分離させられる。ダスト分離部は、ダスト回収部と称することもでき、ポケットを含むものとしたり、フィルタを含むものとしたりすることができる。
なお、ダストは、固体の状態にある場合と気体の状態にある場合とがある。
(31)前記ダスト分離部が、前記保護ガス流出通路に設けられた1つ以上のポケット部を含むものとすることができる。
ポケット部は、保護ガス流出通路の下部に接続して設けることが望ましい。
(32)前記保護ガス処理部は、前記保護ガスを回収して、再利用するリサイクル部を含むものとすることができる。
(33)前記保護ガス処理部は、前記電極カバーの内側に供給された保護ガスを、前記電極カバーの外側に流出させる保護ガス流出部を含むものとすることができる。
保護ガス流出部は、保護ガス流出口、放電開口を含むものとすることができる。
(34)当該反応種供給装置が、前記反応種を出力する反応種出力口を含み、前記保護ガス供給部が、一端が、前記電極カバーの前記放電開口が形成された部分に隣接して設けられた入口とされ、他端が、前記反応種出力口から離間した位置に設けられた排気口とされた保護ガス排気通路を含むものとすることができる。
排気口は、反応種出力口から離れた位置に設けられる。また、排気口は、排気口から排気される保護ガスの排気方向と、反応種出力口から出力される反応種を含むガスの照射方向とが異なる状態で設けることが望ましい。
(35)当該反応種供給装置が、前記放電空間の下流側に設けられ、前記電極のうち互いに隣接する電極の間に並んで設けられた複数の放電側開口を備えた複数の個別流出通路を含み、それら複数の個別流出通路のうちの、両端に位置する個別流出通路が、それぞれ、前記排気口に連通させられ、中間に位置する個別流出通路が、前記反応種出力口に連通させられる。
(36)当該反応種供給装置に、前記保護ガスと前記処理ガスとを合流させる合流装置を設けることができる。
(37)前記処理ガスが、複数種類のガスを含むものであり、前記保護ガスが、前記複数種類のガスのうちの少なくとも1種類のガスと同じものである。
(38)前記処理ガスが、キャリアガスと反応ガスとを含み、前記保護ガスが、キャリアガスとして作用するものである。
キャリアガスは、反応性が低いガス、活性化され難いガスであり、例えば、プラズマと反応し難いガス、放電により活性化され難いガスである。キャリアガスは、主として、反応種を運搬するために用いられる。
保護ガスは、キャリアガスとして作用するものであれば、処理ガスのキャリアガスと異なるものであっても、同じものであってもよい。
保護ガスは、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス等の不活性ガスとしたり、窒素ガス、フッ素ガス等としたり、これらの混合ガスとしたりすること等ができる。
また、処理ガスのキャリアガスとして、例えば、窒素ガス、フッ素ガスや、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス等の不活性ガス等が該当する。
反応ガスは、放電領域に供給されることにより反応種となる物体であり、例えば、プラズマ中の荷電粒子と衝突することにより励起させられ反応種となったり、放電により励起させられ反応種となったりする。反応ガスには、酸素ガス、水素ガス、フッ素ガス等が該当する。反応ガスの種類は、被処理物の材質、処理の目的等で決まる。
なお、キャリアガス、保護ガスの種類は、それぞれ、被処理物の材質、電極の材質、処理の目的、反応ガスの種類等により決めることができる。
(39)前記処理ガスが、反応ガスとキャリアガスとを含み、前記保護ガスが、前記処理ガスに含まれるキャリアガスと同じ種類のものである。
(40)前記保護ガスは、酸素ガスを実質上含まないものである。
酸素ガスの含有率が設定値以下のガス(例えば、0.01%以下のガス)とすることが望ましい。
【0010】
(41)当該反応種供給装置が、前記放電空間の下流側に設けられた反応種流出通路を含むことができる。
(42)前記反応種流出通路は、途中で湾曲した形状を成したものとすることができる。
反応種流出通路は、少なくとも1回湾曲した形状を成したものである。湾曲の回数は1回でも2回以上でもよい。また、湾曲の角度は90°であっても、90°より小さくても、90°より大きくしてもよい。
(43)前記反応種流出通路は、1つ以上の凹部を有するものとすることができる。
(44)前記反応種出力口が、スリット状とされた。
(45)前記反応種出力口が、前記電極が並ぶ方向に長いスリットとされた。
(46)前記反応種流出通路が、途中に拡散部を含むものとすることができる。
(47)前記反応種流出通路は、(a)放電空間に対して複数の開口を有する複数の個別通路と、(b)これら複数の個別通路に接続された拡散部と、(c)その拡散部に接続され、開口がスリットとされたスリット通路とを含むものとすることができる。
反応種出力口は、複数の開口から構成されるものとすることができ、その場合には、拡散部に、スリット通路の代わりに、複数の出口側個別通路が接続されることになる。
(48)前記個別通路の前記放電空間に対向する開口が、前記放電空間の幅方向の中央に位置し、かつ、前記開口の直径が前記放電空間の幅より小さい。
1つの放電空間において、その放電空間の下流側に設けられた反応種流出通路の個別通路の数が、その放電空間の上流側に設けられた処理ガス供給通路の数より多く、かつ、反応種出力通路の個別通路の開口の直径が、処理ガス供給通路の開口の直径より小さい。
(49)前記拡散部が、前記個別通路の接続部から前記スリット通路の接続部に向かって、反応種を拡散させる形状を成したものとすることができる。
(50)前記個別通路の前記拡散部に対する接続部の形状を、断面の大きさが漸増させられられる形状とすることができる。
例えば、個別通路の半径が漸増させられる形状とすることができる。
【0011】
(51)当該反応種供給装置の、前記放電空間の下流側にアース部材を設けることができる。
放電空間の下流側とは、反応種供給装置において放電空間が形成された部分と反応種を出力する反応種出力口との間の部分をいう。
(52)前記アース部材は、前記放電空間と少なくとも前記反応種を出力する反応種出力口との間に設けられた反応種流出通路に設けることができる。
(53)前記反応種流出通路が、前記放電空間と前記反応種を出力する反応種出力口とを連通させる主通路と、その主通路に接続された分岐通路とを備え、前記アース部材が、前記分岐通路を閉塞する状態で設けられた。
(54)前記主通路が、(a)第1の方向に延びた第1通路と、(b)その第1通路に接続され、前記第1の方向に対して傾斜した第2の方向に延びた第2通路とを含み、前記分岐通路が、前記第1通路と前記第2通路との接続部に接続され、前記第1通路と同一直線状に延びた直線通路とされた。
分岐通路は、第1通路の延長通路であると考えることができる。
第1通路と第2通路とは、互いに直交していても、そうでなくてもよい。
第1の方向と第2の方向とは直交していても、そうでなくてもよい。
(55)前記アース部材は、前記反応種流出通路内を流れる反応種を含むガスに接触可能な状態で設けることができる。
(56)前記アース部材は、前記反応種流出通路の途中に設けることができる。
(57)前記アース部材は、反応種が出力される反応種出力口から設定距離離間した位置に設けることができる。
例えば、設定距離は、仮に、反応種出力口と被処理物の被処理面とが当接した状態において、アース部材と被処理面との間で放電が起きないと考えられる距離としたり、反応種出力口と被処理面との間の距離が、処理を行う場合の距離である場合に、アース部材と被処理面との間で放電が起きないと考えられる距離としたりすること等ができる。
設定距離は、予め実験、シミュレーション等により求められる。設定距離は、主として、被処理物の材料に起因して決まる。
アース部材と被処理物との間の放電の起き易さは、被処理物の被処理面とアース部材との最短距離が問題となる。反応種出力口とアース部材との間の距離(最短距離)が、被処理面とアース部材との間の最短距離より大きい(ほぼ同じである)姿勢で使用される場合には、反応種出力口とアース部材との間の距離が設定距離以上となる部分にアース部材を取り付ければ、アース部材とワークWとの間に放電が起き難くすることができる。
(58)前記反応種流出通路が、前記放電空間に対向する複数の開口を含み、前記複数の開口の各々の直径が3mm以下である。
2.5mm以下、2mm以下、1.5mm以下、1mm以下とすることができる。
【0012】
(59)当該反応種供給装置の、前記放電空間の下流側で、前記反応種出力口より上流側に、前記反応種出力口から供給される少なくとも前記反応種を含むガスを電気的に中性なガスとする電気的中和機構を設けることができる。
被処理物が基板等の電子部品である場合において、被処理物に、全体として正あるいは負に帯電したガスが供給されると、被処理物が帯電させられ、望ましくない。
そのため、被処理物には、全体として電気的に中性でないガスが供給されないようにすることが望ましいのであり、反応種流出通路内を、帯電しているガスが流れている場合には、そのガスを電気的に中和してから被処理物に供給されるようにすることが望ましい。
電気的中和機構として、例えば、アース板を含む機構が該当する。帯電しているガスとアース板とが接触することにより、アース板との間で電子の授受が行われ、アース板と同じ電位となる。その結果、帯電した状態にあるガスが被処理物に供給され難く、あるいは、供給されないようにすることができる。
【0013】
(60)当該反応種供給装置に、前記処理ガスを前記放電空間に供給する処理ガス供給部を設けることができる。
(61)前記処理ガス供給部は、前記放電空間の各々に対応して設けられ、前記放電空間毎に前記処理ガスを供給する放電空間毎処理ガス供給部を含む。
(62)前記処理ガス供給部は、(a)当該反応種供給装置に設けられた処理ガス供給口に接続された主通路と、(b)その主通路に接続され、前記放電空間に対応して設けられた個別通路とを含む。
放電空間が複数設けられた場合には、個別通路も複数設けられる。個別通路は、放電空間別通路と称することができる。
(63)前記個別通路が、(a)前記主通路との接続部を有する上流側通路と、(b)拡散部と、(c)前記放電空間の幅方向に隔てて設けられた複数の下流側通路とを含む。
放電空間の幅方向は、電極の離間方向である。
(64)前記下流側通路の放電空間に対向する開口の直径が、前記放電空間の幅方向とほほ同じである。
(65)前記複数の下流側通路の放電空間に対向する開口の面積の総和が、前記反応種流出通路に含まれる複数の個別通路の放電空間に対向する開口の面積の総和より大きい。
(66)当該反応種供給装置に、前記処理ガスを前記放電空間に供給する処理ガス供給部と、前記保護ガスを前記電極に供給する保護ガス供給部との両方を設けることができる。
【0014】
(67)当該反応種供給装置において、前記複数の電極が、当該反応種供給装置本体の同じ面から、それの一部が突出する状態で保持されるようにすることができる。
例えば、反応種供給装置の本体が、概して、直方体を成している場合には、側面、あるいは、上面等の同じ面から、複数の電極の一部が突出する状態となる。
(68)当該反応種供給装置が、前記複数の電極カバーが、当該反応種供給装置の本体の同じ面から、各々の一部が突出する状態で保持されるようにすることができる。
電極カバーは、セラミックス等の絶縁体として機能する材料で製造されたものとすることができる。
【0015】
(69)放電空間に処理ガスを供給して、少なくとも、プラズマ内に生成された反応種を反応種出力口から被処理物に供給する反応種供給装置であって、
前記放電空間を形成する少なくとも一対の電極と、
それら電極の各々に保護ガスを供給する保護ガス供給部と、
前記放電空間の下流側に設けられ、一端が、前記電極の近傍に位置する開口とされ、他端が、前記反応種出力口から離間した位置に設けられた排気口とされた保護ガス排気通路と
を含む反応種供給装置。
本項に記載の反応種供給装置には、(1)項ないし(68)項のいずれか1つに記載の技術的特徴を採用することができる。
【0016】
(70)放電空間に処理ガスを供給して、少なくとも、プラズマ内に生成された活性種を被処理物に供給する反応種供給装置。
活性種とは、放電等により、高エネルギを有する状態に遷移させられた分子、原子、イオン等をいい。化学反応や、結晶格子の変化を起こし易い状態にされたものをいう。被処理物の被処理面に、正イオンや負イオンを照射することによって、所望の処理が行われることもある。
本項に記載の反応種供給装置には、(1)項ないし(69)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
【0017】
(71)前記反応種供給装置を保持する反応種供給装置保持部と、前記被処理物を保持する被処理物保持部と、これら反応種供給装置保持部と前記被処理物保持部とを相対移動させる相対移動装置とを含み、前記被処理物の表面等の処理を行う表面等処理装置。
表面等処理装置において、被処理物と反応種供給装置との相対移動によって、被処理物の表面等に処理が行われる。表面等処理装置においては、少なくとも反応種が被処理物の表面に供給されることにより、表面の処理が行われるが、被処理物の表面のみならず、内部にも処理が及ぶ(化学反応が及ぶ)場合もある。
表面等処理装置において、被処理物と反応種供給装置とは、連続的に、すなわち、反応種を照射しつつ、相対移動させることも可能である。
反応種供給装置保持部を移動不能とし、被処理物保持部を移動可能としても、反応種供給装置保持部を移動可能とし、被処理物保持部を移動不能としても、これら反応種供給装置保持部と被処理物保持部との両方を移動可能としてもよい。
なお、表面等処理装置において、反応種が、被処理面に対して交差する方向から照射されるようにすることができる。
(72)前記相対移動装置が、前記反応種供給装置保持部と前記被処理物保持部とを、前記被処理物の処理対象面に対して平行な方向に相対移動させる平行移動部を含む。
(73)前記相対移動装置が、前記反応種供給装置保持部と前記被処理物保持部とを、前記被処理物の処理対象面と垂直な方向に相対移動させる垂直移動部を含む。
(74)前記表面等処理装置において、被処理物に、大気中で、前記反応種が供給される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例である表面等処理装置の全体の概念図である。表面等処理装置は、本発明の一実施例である反応種供給装置としてのラジカル供給装置を備えたものである(実施例1)。
【図2】上記ラジカル供給装置の全体斜視図である。
【図3】図6のAA断面図である。
【図4】図6のBB断面図である。
【図5】上記ラジカル供給装置の放電空間の周辺を概念的に示す図である。
【図6】図3のCC断面図である。
【図7】上記ラジカル供給装置の放電電極の周辺を概念的に示す図である。
【図8】上記ラジカル供給装置のラジカル流出通路の周辺を概念的に示す斜視図である。ラジカル流出通路は、本体に形成されたものであり、実際には見えないものであるが、図8においては、通路を実線で、本体を二点鎖線で示した。
【図9】(a)図4の一部を示す図である。(b)図6のDD断面図である。
【図10】上記ラジカル供給装置のラジカル流出通路を概念的に示す図である。
【図11】上記ラジカル供給装置に利用できる別の態様の電極を示す図である(実施例2)。
【図12】上記ラジカル供給装置に適用可能な、別のラジカル流出通路周辺を概念的に示す図である(実施例3)。
【図13】上記ラジカル供給装置に適用可能な、さらに別のラジカル流出通路周辺を概念的に示す図である(実施例4)。
【図14】上記ラジカル供給装置に適用可能な、別のラジカル流出通路周辺を概念的に示す図である(実施例5)。
【図15】上記ラジカル供給装置に適用可能な、保護ガス回収通路周辺を概念的に示す図である(実施例6)。図15の(b)は、図15(a)のEE断面図である。
【図16】上記ラジカル供給装置に適用可能な、別の電極の周辺を概念的に示す図である(実施例7)。
【図17】図16のFF断面図(一部)である。
【発明の実施形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態である表面等処理装置について図面に基づいて詳細に説明する。表面等処理装置は、本発明の一実施形態である反応種供給装置としてのラジカル供給装置を含む。
表面等処理装置は、被処理物(以下、ワークと称する)の被処理面(処理対象面と称することもできる)に反応種等を照射して改質、洗浄等の処理(プラズマ処理、表面等処理と称することができる)を行うものである。反応種が、ワーク自体と反応したり、ワークの表面に付着した物体と反応したりすることにより、ワークの表面を改質したり、洗浄(ワークの表面の有機物を分解除去)したりする。反応種とワークとの反応は、ワークの表面のみならず内部に及ぶ場合もある。
表面等処理装置においては、例えば、ワークの被処理面の接合強度を向上させたり、親水性、撥水性を向上させたり、滅菌、殺菌をしたり、有機物等を除去したりすること等ができる。
また、ワークは、金属製のものであっても、樹脂製のものであっても、セラミック製のものであってもよく、例えば、プリント基板、液晶基板、電子部品等とすることができる。
【0020】
反応種とは、本実施例においては、励起原子、分子等の電気的に中性な中性粒子をいい、例えば、ラジカル等の反応性の高い励起種等をいう。
励起とは、エネルギの低い基底状態からエネルギの高い状態に遷移させることをいい、例えば、放電によって原子や分子が励起させられたり、原子や分子とプラズマ中の荷電粒子とが衝突することによって励起させられたりする。以下、本明細書において、これらを合わせて、放電に起因して励起させられると称することがある。また、放電に起因して励起させられることによって得られた反応種は、プラズマ内で生成された反応種である。
ラジカルとは、不対電子を有する化学種をいい、遊離基ともいう。
プラズマとは、放電、すなわち、絶縁破壊により発生させられるものであり、正イオンおよび負イオン等の荷電粒子、ラジカル等の中性粒子、電子等を含み、全体として、電気的に中性のものをいう。
本発明の一実施形態である表面等処理装置においては、プラズマを発生させて、プラズマ中の反応種としてのラジカル等をワークの表面に供給して、処理を行うものである。表面等処理装置は、また、ワークとラジカル供給装置との相対移動により、ワークの被処理面にプラズマ処理を施すのに適している。表面等処理装置は、プラズマ処理装置と称することもできる。
【実施例1】
【0021】
[表面等処理装置]
図1に示すように、表面等処理装置は、(1)反応種供給装置としてのラジカル供給装置2と、(2)ラジカル供給装置2を保持するラジカル供給装置保持部4と、(3)ワークWを保持するワーク保持部6と、(4)ラジカル供給装置保持部4とワーク保持部6とを相対移動させる相対移動装置7とを含む。
本実施例においては、ラジカル供給装置2が図示する姿勢で使用されるのであり、X方向が上下方向(鉛直方向)であり、Y方向が幅方向である。また、Z方向は、X方向およびY方向に直交する方向である。
ラジカル供給装置保持部4が、図示しない表面等処理装置本体に、X方向に移動可能に取り付けられ、ワーク保持部6が、相対移動装置7によって、Y,Z方向に移動可能に取り付けられる。相対移動装置7は、Y方向駆動装置(モータ),運動変換機構、ガイド部材等を有するY方向移動装置8と、Z方向駆動装置(モータ),運動変換機構、ガイド部材等を有するZ方向移動装置10とを含む。
【0022】
本実施例においては、ワークWが、ワーク保持部6に、被処理面WFがYZ面(X軸と直交する面)と平行となる姿勢で保持される。
また、ラジカル供給装置保持部4のX方向の移動により、ラジカル供給装置2の下面14(図3参照)に形成された反応種出力口としてのラジカル出力口16とワークWの被処理面WFとの間のX方向の距離が目標値(例えば、非常に小さい値)とされる。
この状態で、少なくともラジカルが、ラジカル出力口16から出力され、ワーク保持部6がZ,Y方向の少なくとも一方向に移動させられることにより、ワークWの被処理面WFの全体に供給される。
本実施例においては、少なくともラジカルが被処理面WFにほぼ直交する方向から照射されるのであり、ワークWの表面等処理が、大気圧で(大気中で)行われる。
【0023】
なお、表面等処理装置において、ラジカル供給装置保持部4がY、Z方向に移動可能に取り付けられても、ラジカル供給装置保持部4,ワーク保持部6の両方がY,Z方向に移動可能に取り付けられてもよい。
また、ワーク保持部6と、ラジカル供給装置保持部4との少なくとも一方は、表面等処理装置の本体にX方向に延びる軸線回りに相対回転可能に取り付けられるようにすることもできる。
さらに、ラジカル供給装置2,ワークWの被処理面WFは、X,Y,Z軸に対して傾斜した姿勢で保持されるようにすることもできる。
【0024】
[ラジカル供給装置]
ラジカル供給装置2は、図2に示すように、概して直方体を成した本体18,本体18に設けられた処理ガス供給口20,本体18に保持された電極22,23,24,25等を含む。ラジカル供給装置2は、処理ガス供給口20から供給された処理ガスを、電極22〜25によって形成される放電空間に供給して、少なくとも、プラズマ内に生成されたラジカルを、ラジカル出力口16から出力するものである。
本実施例において、処理ガスは、酸素とアルゴンとを含むものである。反応ガスとしての酸素ガスが放電に起因して励起させられて酸素ラジカル(以下、単にラジカルと称する)が生成され、主としてキャリアガスとしてのアルゴンによってラジカル出力口16まで運搬される。
このように、ラジカル出力口16からは、ラジカル(プラズマ内で生成される中性粒子)およびキャリアガスが出力されるが、プラズマ(正イオンおよび負イオン等の荷電粒子、ラジカル、電子等の集合体であるが、全体として電気的に中性である)およびキャリアガスが出力されることもある。
以下、本明細書において、ラジカル供給装置2のラジカル出力口16から、ラジカル等が出力されると称したり、ラジカル等を含むガスが出力されると称したりする。
なお、例えば、ワークが、基板等の電子部品である場合において、電子部品に、正、あるいは、負に帯電させられた物体が供給されると、電子物品が帯電させられ、望ましくない。それに対して、荷電粒子を含む物体が供給されても、全体として帯電していなければ、電子部品の帯電を抑制、あるいは、防止することができる。そのため、プラズマがワークに供給されても、ワークへの影響は小さい。
【0025】
<電極、電極カバー>
電極22,23,24,25は、図2〜5に示すように、それぞれ、長手形状を成した、換言すれば、棒状を成したものであり、長手方向がX方向となる姿勢で、互いに平行に、Y方向に等間隔で配設される。
電極22〜25は、それぞれ、電極カバー22P〜25Pによって覆われている。電極22〜25はステンレスで製造されたものであり、電極カバー22P〜25Pはセラミックス等の固体誘電体で製造されたものである。
【0026】
電極22〜25および電極カバー22P〜25Pは、ラジカル供給装置2の本体18に、それら各々の一端部が上面29(図2参照)から突出し、電極22〜25の他端部が、本体18に設けられた凹部に嵌合された状態で、保持される。
また、上面29において、電極22〜25の各々の電極カバー22P〜25Pからの突出部には、それぞれ、電圧調整装置30が接続される。電圧調整装置30は、電源装置、変圧器等を含み、目標実効電圧等に調整された交流電圧を、電極22〜25の各々に印加する。本実施例においては、(i)電極22,24に正の電圧が印加され、電極23,25に負の電圧が印加される状態と、(ii)電極22,24に負の電圧が印加され、電極23,25に負の電圧が印加される状態とが交互に現れるように、制御される。
なお、(a)電極22,24を接地して、電極23,25に電圧を印加したり、(b)電極23,25を接地して、電極22,24に電圧を印加したりしてもよい。
【0027】
また、図2に示すように、ラジカル供給装置2の上面29から電極カバー22P〜25Pも突出させられる。
仮に、電極カバー22P〜25Pが、上面29から突出していない場合には、突出した隣接する電極22〜25の間で放電が起き易くなる。それを回避するためには、例えば、電極22〜25をZ方向に延びた姿勢とし、電極22,24が正面から突出し、電極23,25が背面から突出した状態で配設されるようにすることが考えられる。しかし、電極22,24と電極23,25とを異なる面から突出する状態で設けると、ラジカル供給装置2が大形化する等の問題が生じる。
それに対して、電極カバー22P〜25Pも突出させられるようにすれば、隣接する電極22〜25の突出部の基部の間に電極カバー22P〜25Pが位置することになるため、隣接する電極の突出部の間で、放電が起き難くなる。その結果、電極22〜25を同じ面から突出させることが可能となり、ラジカル供給装置2の小形化を図ることができ、電極の交換等のメンテナンスを容易にできる。
【0028】
図3に示すように、電極カバー22P〜25P、電極22〜25は、それぞれ、大径部と小径部とを備えた段付き形状を成しており、電極22〜25の大径部が電極カバー22P〜25Pの大径部に嵌合される。また、その状態で、図3,5に示すように、電極カバー22P〜25Pの小径部の一部の内周側と電極22〜25の小径部の一部の外周側との間に、それぞれ、隙間22in〜25inが形成される。
電極カバー22P〜25Pの各々の、隙間22in〜25inに対応する部分には、直径方向に隔たって(中心角180度隔たって)2つずつの放電開口22HL,HR〜25HL、HRが、それぞれ、形成される。また、放電開口22HL,HR〜25HL,HRは、それぞれ、X方向の同じ位置に設けられる。そのため、放電開口22HL,HR〜25HL,HRの互いに対応する点(例えば中心点)が、同一直線上(Y方向に延びた直線LY上)に位置することになる。
【0029】
電極22〜25は、電圧が印加された場合に、それの全体において、放電を起こし得るものであるが、外周部が電極カバー22P〜25Pによって覆われている部分においては、覆われていない部分(放電開口に対応する部分)に比較して、放電が起き難い。そのため、電極22〜25に電圧が印加された場合には、電極22〜25の放電開口22HL,HR〜25HL,HRに対応する部分において放電が起きる。その意味において、電極22〜25の各々の放電開口22HL,HR〜25HL,HRに対応する部分が放電電極部22S〜25Sである。本実施例においては、放電電極部22S〜25Sの互いに対応する点(例えば、放電開口の中心に対応する点)が、Y方向に延びる同一直線上に位置することになる。
【0030】
仮に、電極カバー22P〜25Pと電極22〜25との間に隙間22in〜25inが存在する状態において、放電開口が設けられない場合には、隣接する電極間において、電極カバー22P〜25Pを通過して放電が起きるが、その場合には、電極カバー22P〜25Pが劣化し、寿命が短くなる。それに対して、放電開口22HL,HR〜25HL,HRを設ければ、隣接する放電電極部22S〜25Sの間で放電が起きるため、電極カバーの劣化を抑制し、寿命を長くすることが可能となる。
また、電極カバー22P〜25Pを通過して放電が行われる場合には、放電が開始されるのに高い電圧が必要となる。それに対して、放電開口22HL,HR〜25HL,HRを設ければ、放電が生じるのに必要な電圧が低くなるという利点もある。
【0031】
さらに、本実施例においては、放電電極部22S〜25Sの直径D(Y方向の幅)が、互いに隣接する電極間の距離L(Y方向の距離)より小さい(D<L)。そのため、ラジカル供給装置全体の小形化を図りつつ放電空間のY方向の寸法を大きくすることができる。
直径Dの距離Lに対する比率D/Lは0.7以下、0.5以下、0.3以下、0.1以下、0.05以下とすることもできる。
【0032】
<保護ガスの供給>
放電電極部22S〜25Sの表面に、保護ガスが供給される。本実施例においては、保護ガスとしてアルゴンガスが用いられるが、保護ガスは、その他、ヘリウム,ネオン等の不活性ガス、窒素ガス、フッ素ガス、酸素の含有率が非常に低いガス(含有率が設定値以下のガス)、あるいは、これらの混合ガスを用いることができる。
図3に示すように、電極カバー22Pの、放電開口22HL、HRとX方向に隔たった位置(放電開口22HL,HRの上方)に、1つの保護ガス流入口22Qが形成され、保護ガス通路34に接続される。詳細には、直径方向に貫通して開口が形成されるが、一方の開口は本体18によって閉塞され、他方の開口が保護ガス流入口22Qとされる。また、保護ガス流入口22Qは、放電開口22HL,HRの各々と中心角が90°ずれた(位相がずれた)位置に設けられる。
図6,7に示すように、電極カバー23P〜25Pの各々についても同様に、それぞれ、保護ガス流入口23Q〜25Qが形成される。
【0033】
保護ガス通路34は、図3,6,7に示すように、Y方向に延びた主通路34Aと、主通路34Aから分岐させられた4つの個別通路(電極別通路、電極カバー別通路と称することができる)34B,C,D,Eとを含む。個別通路34B,C,D,Eは、X方向に延びた部分とZ方向に延びた部分とを有し、それぞれ、電極カバー22P〜25Pの保護ガス流入口22Q〜25Qに接続される。
保護ガス通路34の主通路34Aは、図2に示す保護ガス供給口36に接続される。また、保護ガス供給口36は、図1に示すように、流量等調整部38を介して保護ガス源(例えば、ガスボンベであり、本実施例においては、アルゴンガスボンベ)40に接続される。アルゴンガスボンベ40から流量等調整部38、保護ガス供給口36を経てラジカル供給装置2の本体18の内部に供給された保護ガスは、主通路34A,個別通路34B,C,D、Eを経て、電極カバー22P〜25Pの内側の隙間22in〜25inに、それぞれ供給される。
【0034】
前述のように、処理ガスは酸素を含むため、電極が処理ガスに接触した状態(酸素に接触した状態)で、高電圧が印加されると、電極が酸化し、磨耗する等の問題がある。それに対して、放電電極部22S〜25Sの回りに保護ガスが供給されれば、放電電極部22S〜25Sに処理ガスが接触し難くすることができ、放電電極部22S〜25Sの回りのガスを処理ガスから分離することができるのであり、放電電極部22Sの酸化を良好に抑制することができる。それにより、放電電極部22S〜25Sの磨耗を抑制し、寿命を長くすることができる。
すなわち、保護ガスが、電極カバー22P〜25Pの各々において、保護ガス流入口22Q〜25Qから流入させられ、放電開口22HR、23HL,HR,24HL,HR,25HLから放出されるのに対して、処理ガスは、後述するように、放電空間をX方向に流れる(図2の上方から下方に向かって流れる)。そのため、図7に示すように、処理ガスが、放電開口22HR、23HL,HR,24HL,HR,25HLから電極カバー22P〜25Pの内側に入り難くなる。その結果、放電電極部22S〜25Sの周辺のガスを処理ガスから良好に分離することが可能となる。このように、放電開口は、保護ガス流出口でもある。
なお、4つの電極カバー22P〜25Pのうちの両端に位置する電極カバー22P、25Pに、それぞれ、設けられた放電開口22HL,HR、25HL,HRのうち、電極に隣接しない側の放電開口22HL,25HRは本体18によって塞がれている。そのため、電極カバー22Pにおいて、保護ガス流入口22Qから供給された保護ガスは、放電開口22HRから流出し、電極カバー25Pにおいて、保護ガス流入口25Qから供給された保護ガスは、放電開口25HLから流出する。
【0035】
また、電極カバー22P〜25Pは、電極22〜25に対応して、それぞれ、別個独立に設けられ、保護ガスが、電極カバー22P〜25Pの各々に、それぞれ、個別に供給される。その結果、複数の電極カバーを連結して、共通に保護ガスが供給される場合に比較して、放電電極22S〜25Sの各々に、良好に保護ガスを供給することができる。
さらに、電極カバー22P〜25Pの各々において、保護ガス流入口22Q〜25Qと放電開口22HL,HR〜25HL,HRとの位相が90°ずれている。そのため、保護ガス流入口22Q〜25Qから流入させられた保護ガスを放電電極部22S〜25Sの外周に沿って、良好に流すことができる。すなわち、放電電極部22S〜25Sの表面全体に保護ガスを供給することが可能となり、より一層、処理ガスが接触しないようにすることが可能となる。
また、電極カバー22P〜25Pの各々において、隙間22in〜25inが長手方向の全体に設けられているのではなく、放電開口付近の限られた部分に設けられる。そのため、保護ガスを、局部的に(必要な部分に)、すなわち、放電電極部22S〜25Sの周辺に効果的に供給することができる。さらに、供給される保護ガスの量を少なくすることができ、放電電極部22S〜25Sの酸化を良好に抑制することができる。
【0036】
本実施例においては、保護ガス流入口22Q〜25Q、保護ガス供給通路34、保護ガス供給口36等により保護ガス供給部が構成される。保護ガス供給部はカバー内保護ガス供給部、電極毎保護ガス供給部でもある。
また、保護ガス供給部、電極カバー22P〜25P等により電極保護装置が構成される。電極保護装置は、処理ガス遮断装置、処理ガス接触防止装置、電極周辺ガス・処理ガス分離装置、電極酸化抑制装置等と称することもできる。
なお、流量調整部38,アルゴンガスボンベ40も保護ガス供給部、すなわち、ラジカル供給装置2の構成要素であると考えることもできる。
【0037】
<処理ガスの供給>
処理ガスが、放電空間毎に供給される。
放電空間は、図4,6に示すように、互いに隣接する放電電極部の間に設けられる空間であり、放電(気体の絶縁破壊)を生じさせるための空間である。本実施例においては、本体18と電極カバー22P〜25Pとによって囲まれた空間であり、互いに独立した3つの空間42B〜Dが設けられる。なお、放電空間42B〜Dには、それぞれ、電極カバー22P〜25Pに形成された放電開口が対向することになる。
詳細には、放電空間42Bは、放電電極部22S,23Sの間に位置し、電極カバー22P,23Pおよび本体18によって囲まれて形成される。放電空間42Bには、放電開口22HRと、放電開口23HLが対向する。放電空間42Cは、電極23,24の間に位置し、電極カバー23P、24Pおよび本体18によって形成され、放電空間42Dは、電極24,25の間に位置し、電極カバー24P、25Pおよび本体18によって囲まれて形成される。
【0038】
処理ガス供給口20には、流量等調整部44を介して、保護ガス源(アルゴンガスボンベ)40,酸素ガス源(酸素ガスボンベ)46が接続され、処理ガス供給口20に接続された処理ガス通路48は、Y方向に延びる主通路48A、主通路48Aから分岐させられた3つの放電空間別通路(個別通路)48B,C,D等を含む。
放電空間別通路48Bは、図4に示すように、X方向に延びた上流側通路49B、拡散部50B、中流通路52B、空間54B、下流側通路56Bを含み、下流側通路56Bが放電空間42Bに対向する開口56Kを有する。放電空間別通路48C,Dについても同様であるため、説明を省略する。
上流側通路49Bは、X方向に延びたものであり、YZ方向に広がる拡散部50Bに接続される。拡散部50Bにおいて、上流側通路48Bが、Y方向のほぼ中央に接続され、その上流側通路48とZ方向に隔たった位置に、X方向に延びる中流通路52Bが接続される。中流通路52Bの開口52Kは、上流通路48Bの開口より開口面積が大きなものであり、Y方向に長い長穴形状とされている。開口52Kは、Y方向に延びた空間54Bに対向する。空間54Bの下流側には、X方向に延びた下流側通路56Bが、複数個(本実施例においては5個)形成される。下流側通路56Bは、放電空間42BのY方向において等間隔で設けられる。
【0039】
上流側通路49BからX方向に供給された処理ガスが、拡散部50BによってYZ方向に拡散され、Y方向に延びた開口52Kから空間54Bに供給される。そのため、空間54Bの全体に処理ガスを供給することができる。また、空間54Bと放電空間42BとのY方向の寸法はほぼ同じとされ、下流側通路56Bは、空間54のY方向において、全体に、均等に配設される。そのため、X方向に、放電空間42B全体に均等に、処理ガスを供給することができる。
また、図4に示すように、放電空間42BのZ方向の寸法dZが、放電開口22HL,HRの直径Dh(図7参照)とほぼ同じであり(dZ=Dh)、下流側通路56Bの開口56Kの直径Diが、放電空間42BのZ方向の長さdZとほぼ同じである(dZ=Di)。そのため、処理ガスを効果的に放電空間42Bの全体に供給することができ、プラズマを効果的に発生させることができ、ラジカルを効果的に生成することができる。
なお、本実施例において、放電空間42Bは、概して、直方体状の空間であるが、Y方向の寸法dY(図5参照)がZ方向の寸法dZに対して大きく(dZ<dY)されている。このように、放電空間42BのY方向の寸法が大きくされるのであり、ラジカル供給装置2の小形化を図りつつ、Y方向の広い領域で表面等処理を行うことが可能となる。また、dY/dZの値は、1.5以上、2.0以上、2.5以上、3.0以上とすることができる。
【0040】
電極22〜25に電圧が印加されると、電極22,23の間(放電開口22HR,23HLを経て)、電極23,24の間(放電開口23HR,24HLを経て)、電極24,25の間(放電開口24HR,25HLを経て)で放電(プラズマ放電と称することもある)が起きるのであり、放電空間42B,C,Dにおいて絶縁破壊が起き、プラズマが生成される(図のR23,R34,R45は、絶縁破壊が起きた領域を概念的に示すものであり、以下、放電領域と略称する)。
また、処理ガスが、放電空間42B,C,DにX方向に供給される。
すなわち、処理ガスは、放電領域R23,R34,R45を通過するように供給されるのであり、放電領域R23,R34,R45において処理ガス中の酸素ガスが励起させられ、ラジカルが生成される。
【0041】
本実施例において、処理ガス供給通路48,処理ガス供給口20等により処理ガス供給部が構成される。処理ガス供給部は放電空間毎供給部でもある。また、流量調整部44,アルゴンガスボンベ40,酸素ガスボンベ44等も処理ガス供給部、すなわち、ラジカル供給装置2の構成要素であると考えることもできる。さらに、本実施例においては、処理ガス供給部と保護ガス供給部との両方がそれぞれ設けられることになる。
【0042】
<ラジカルの出力>
放電空間42B,C,Dとラジカル出力口16との間に、反応種流出通路としてのラジカル流出通路78が設けられる。
ラジカル流出通路78は、図4〜6,8〜10に示すように、放電空間42B,C,Dに対応してそれぞれ設けられた3つの個別通路群80B、C、Dと、個別通路群80B,C,Dにそれぞれ対応して設けられた拡散部82B,C,Dと、拡散部82B,C,Dに共通に設けられたスリット通路86等を含み、スリット通路86の大気への開口がラジカル出力口16とされる。
個別通路群80B(ここでは、代表して、個別通路群80Bについて説明する。個別通路群80C、Dについても同様であるため、説明を省略する)は、放電空間42Bに対向する開口81Kを有する複数個(本実施例においては8個)の個別通路81Bを含む。
個別通路81Bは、それぞれ、折れ曲がった形状(湾曲形状)を成したものであり、(a)放電空間42Bの下方においてX方向に延びたX部分81BXと、(b)そのX部分81BXに接続され、Z方向に延びたZ部分81BZと、(c)そのZ部分81BZの途中に接続されたX方向に延びたX部分81BXXとを含み、X部分81BXXが拡散部82Bに接続される。
【0043】
{拡散部について}
拡散部82Bは、図8に示すように、YZ方向に広がった形状を成したものであり、図9等に示すように、拡散部82Bにおいて、スリット通路86と複数のX部分81BXXとがZ方向に離間して接続される。
また、拡散部82Bは、内部空間の形状が平面視において台形状となっており、スリット通路86が接続された側が長辺とされ、複数の個別通路81Bが接続された側が短辺とされている。短辺側には、全体に渡って、複数の個別通路81Bが、Y方向に間隔を隔てて接続されている。拡散部82Bの台形の斜辺を構成する内壁が、個別通路群80Bからスリット通路86に向かってY方向に広がる方向に傾斜している。
電極22〜25が配設された部分には個別通路81B〜Dが設けられていない。一方、スリット通路86は、Y方向に連続して延びたものであり、スリット状の開口16を有する。そのため、スリット通路86の全体から、ラジカル等を含むガスを均等に出力させるためには、拡散部82B〜DのY方向の個別通路81B〜Dが接続されていない部分にもラジカル等を含むガスを供給する必要がある。そこで、拡散部82B〜Dを、スリット通路側において、電極22〜25に対応する部分まで伸びた形状とすれば、Y方向の個別通路81B〜Dが設けられていない部分においてもラジカル等を含むガスを供給することができる。
また、拡散部82B,C,Dが、各々のスリット通路側において、Y方向に互いに連結されている(Y方に互いに連通する連通部を有する)。そのことによっても、スリット通路86から、Y方向の全体において、ラジカル等を含むガスを均等に出力することが可能となる。
【0044】
なお、拡散部82B、C、Dの平面視における形状(内壁によって形成される空間の形状)を台形状とすることは不可欠ではなく、概して、長方形状とすることもできる。拡散部の空間の形状を長方形状を成したものとしても、同様の効果を奏することができる。
【0045】
拡散部82Bの内部空間のX方向の長さ(厚み)は、個別通路81Bの内径より小さい。また、図9に示すように、X部分81BXXの拡散部82Bに対する接続部82BZXにおいては、内径が漸増させられている。
仮に、接続部においてX部分81BXXの内径が一定である場合には、X部分81BXXから拡散部82Bにラジカル等を含むガスが供給される際に、流速が変化し、乱流が生じる等の問題がある。
それに対して、接続部82BZXの形状が、内径が漸増させられる形状とされている場合には、拡散部82Bにおいて、X部分81BXXから供給されたラジカル等を含むガスの流速の変化を抑制することができ、乱流を生じ難くすることができ、ラジカル等を含むガスを拡散部82Bの内部において良好に拡散させることができる。
【0046】
{スリットについて}
ラジカル流出通路78のラジカル出力口16がスリット状とされる。すなわち、拡散部82Bにスリット通路86が接続される。そのため、ワークWの被処理面WFのY方向の連続した領域において、均一に表面等処理を行うことができる。
【0047】
{ポケットについて}
個別通路81BのX方向に延びた部分に、さらに、下方に延びた(X方向に延びた)凹部(以下、ポケットと称する)88Bが設けられる。本実施例においては、拡散部82Bの底部のX部分81BXXの接続部に対応する位置に、それぞれ、ポケット88Bが合計8個設けられるのである。
ポケット88Bは、後述するように、ラジカル流出通路78を流れるダストを収容するものである。ダストを含むガスは、ラジカル等を含むガスより比重が大きいため、下方へ移動し易い。そのため、ダスト収容部としてのポケットを、下方に突出する形状とすることは有効である。
なお、ダストは、高温の状態では気体の状態にあるが、その後、温度が低下すると、固体の状態に戻ると考えられる。いずれにしても、ダストを含むガス、あるいは、ダストは、比重が大きいため、ラジカル流出通路78において下方へ移動させられることになる。
また、ポケット88Bは、下方に延びる通路(本実施例においては、X部分81BXX)に接続された状態で、さらに、下方に延びて設けられる。そのため、ラジカル等を含むガスが下方に向かって流れる勢いで、ダストをポケット88Bに確実に収容することができる。
ポケット88Bを設けることにより、スリット通路86のラジカル出力口16からダストが出力され難くすることができ、ダストがワークWに供給され難くすることができる。
【0048】
なお、ポケットは、X方向に延びた部分に限らず、Z方向に延びた部分に設けることもできる等個別通路のいずれの部分に設けてもよい。また、2つ以上設けることもできる。
【0049】
{アース板について}
ラジカル流出通路78にはアース板90が設けられる。本実施例においては、アース板90が、図8に示すように、すべての個別通路81B〜DのZ部分81BZ〜81DZの先端を閉塞する状態で設けられる。アース板90は、避雷針としての機能を果たすものであり、ワークWとの間に放電が生じ難くする機能を有する。また、ワークWに帯電した物体(ガス)が供給され難く、あるいは、供給されないようにする機能も有する。
本実施例において、図4,9(a)に示すように、個別通路81Bに関して、X部分81BX、Z部分81BZのX部分81BXXの接続部Mより放電空間側の部分81BZO、X部分81BXX、拡散部82B、スリット通路86等により主通路が構成され、Z方向部分81BZの接続部Mより放電空間とは反対側の部分81BZPにより分岐通路が構成される。分岐通路81BZPと主通路の部分81BZOとは同一直線上に位置するため、アース板90は、主通路の一部81BZOと同一直線状に延びた分岐通路81BZPを閉塞する状態で設けられることになる。
なお、主通路、分岐通路は、個別通路81B〜Dの個々に関して、規定されるものと考えたり、すべての個別通路81B〜Dの上述に対応する部分を含むものと考えたりすることできる。
【0050】
放電は、互いに隣接する一対の電極(例えば、電極22,23の間)の間で起き、放電によりプラズマが発生させられる。一方、この放電が生じた状態においては、電子が移動し易いため、プラズマはガス状態になっていると考えられる。そして、このガス状になっているプラズマ(以下、プラズマを含むガスと称する。プラズマを含むガスには、ラジカル、正イオン、負イオン、電子等が含まれる)が個別通路81Bに入ると、ワークWとの間で放電が起きるおそれがある。
また、電子は、直線的に進み易い特性を有している。
さらに、X部分81BXXは、Z部分81BZに対して折れ曲がっており、かつ、Z部分81BZの先端はアース板90によって閉塞されている。したがって、プラズマ中の電子はアース板90に向かって進み、アース板90との間で放電が生じるのであり、ワークWとの間で放電が起き難くすることができる。
一方、X部分81BXXは開放されている(閉塞されていない)ため、ガスはX部分81BXXに向かって流れ易い。その結果、放電をアース板90との間で生じさせ、ワークWとの間で生じ難くすることができ、かつ、ラジカル等を含むガスをワークWに供給することができる。
【0051】
また、プラズマを含むガスが正、あるいは負に帯電している場合には、アース板90と接触することにより、これらの間で電子のやりとりが行われ、荷電粒子とアース板90とが同じ電位、すなわち、電気的に中性となる。
その結果、ワークWに帯電したガスが供給され難くすることができ、ワークWが帯電させられ難くすることができる。
【0052】
仮に、アース板90が、主通路の途中に、主通路を流れるプラズマを含むガスに接触可能な状態で設けられた場合には、アース板90が、プラズマ中の荷電粒子と接触し、アース板90との間で反応が起き、アース板90の寿命が短くなる等の問題がある。
それに対して、本実施例においては、アース板90が主通路に接続された分岐通路に、その分岐通路を閉塞する状態で設けられ(分岐通路にラジカルが流れ難くされ)るため、電子の進行方向と、ラジカル等を含むガスの流れ方向とを分けることができ、これらを分離することができるのであり、アース板90の寿命が短くなることを回避し、表面等処理を効率よく行うことが可能となる。換言すれば、アース板90の損傷を小さくし、表面等処理を効果的に行うことができる。
【0053】
仮に、アース板90をワークWに近い位置に配設すると、アース板90からワークWに向かって放電され易くなる。一方、アース板90とワークWとの間の放電を防止するためには、アース板90とラジカル出力口16,すなわち、アース板90の下面14からの距離(最短距離)LAを十分に大きくすればよいが、距離LAを大きくして、ラジカル流出通路78の経路を長くすると、ラジカルを効果的にワークWの被処理面WFに供給することが困難となる。
そこで、本実施例においては、アース板90とワークWとの間で放電が生じない距離LAが、予め、実験、シミュレーション等によって取得され、その距離LAで決まる位置にアース板90が設けられる。実験、シミュレーションは、ラジカル出力口16とワークWとの間の距離を非常に小さくした状態で行われる。また、アース板90とワークWとの間の放電の起き易さは、主としてワークWの材質(導電性)等で決まる。
【0054】
{個別通路の放電空間に対向する開口について}
放電空間42Bに対向する個別通路81Bの各々の開口81Kの面積Soは、処理ガス供給通路48の下流側通路56Bの開口56Kの面積Siより小さくされており(So<Si)、開口81Kが、放電空間42BのZ方向の中間部に位置して設けられる。その結果、放電空間42Bにおいて生成されたラジカル等を良好に集めることができる。
また、個別通路81Bの開口81Kの面積Soが放電空間42Bに対して小さくされている。換言すれば、開口81Kの直径が小さくされているのであり、本実施例においては、2mm以下とされている。
仮に、開口81KをY方向に長いものとすると、ワークWとの間で放電が生じ易くなる。
それに対して、開口81Kの直径を2mm以下とすれば、たとえ、異常放電が生じても、ワークWとの間の放電が起き難くすることができる。直径は、1.8mm以下、2.5mm以下、3.0mm以下、3.5mm以下とすることもできる。
【0055】
さらに、8個の個別通路81Bの開口81Kの面積の総和ΣSoは、5個の下流側通路56Bの開口56Kの面積Siの総和ΣSiより小さくされている(ΣSi>ΣSo)。一方、3つの放電空間42B,C,Dに供給される処理ガスの流量Qinと、4つの電極カバー22P〜25Pに供給される保護ガスの流量Qhinとの和(Qin+Qhin)と、ラジカル流出通路78,後述する保護ガス排気通路から流出させられるラジカル等を含むガス、保護ガス等の流量の和Qoutとは、原則として、等しい{(Qin+Qhin)=Qout}。その結果、放電空間に供給される処理ガスの流速vinより、ラジカル流出通路78のラジカル出力口16から流出させられるラジカル等を含むガスの流速Voutの方が大きくなるのであり(Vin<Vout)、ラジカル等を含むガスをワークWに早い流速で照射することが可能となる。
【0056】
ラジカル出力口16は、スリット状を成したものとすることが望ましい。
仮に、放電空間42Bの下流側のラジカル流出通路78の全体を、幅方向に長い断面を有する通路とすることが考えられる。
しかし、その場合には、上述のように、ワークWとの間で放電が起き易くなる。
それに対して、放電空間42Bに対向する開口81Kを小径の開口とし、ワークWの被処理面WFに対向する開口16をスリット状とすれば、これらを両方の目的を果たすことができる。
一方、複数の個別通路81Bを、直接、スリット通路に接続しても、スリット状の開口から均等にラジカルを出力させることは困難である。
それに対して、複数の個別通路81Bとスリット通路86との間に拡散部82Bを設ければ、ラジカル流出通路78に放電が入り難くしつつ、スリット状のラジカル出力口16からラジカルを均等にワークWに供給することが可能となる。
なお、開口81Kの直径を小さくすることで、個別通路81Bにダストが入り難くできるという効果もある。
【0057】
{ラジカル流出通路の湾曲について}
本実施例においては、ラジカル流出通路78が、途中で湾曲している。
仮に、ラジカル流出通路78が一直線状に延びたもの、すなわち、放電空間42Bに対向する開口81Kからラジカル出力口16まで真っ直ぐに延びたものである場合には、ラジカル流出通路78にプラズマを含むガスが流入させられると、ワークWとの間で放電が起き易くなり、望ましくない。また、放電に起因して発生させられた紫外線(エネルギを受けて励起した原子が、基底状態に戻す際に発光すると推測される)がワークWの被処理面WFに照射されることがあり、ワークWに損傷を与える可能性がある。
それに対して、ラジカル流出通路78を湾曲させれば、ワークWとの間での放電が起き難くなり、紫外線が照射され難くなるという効果が得られる。
【0058】
<保護ガス排出通路>
放電空間42B,C,Dの下流側には、それぞれ、保護ガス排気通路92B,C,Dが、2個ずつ設けられる。
図9(b)に示すように、保護ガス排気通路92B(保護ガス排気通路92C,Dについても同様であるため、説明を省略する)は、放電空間42Bに対向する開口93Kを有し、X方向に延びるX部分92BXとZ方向に延びるZ部分92BZとを含む。これらX部分92BX、Z部分92BZは、それぞれ、個別通路81BのX部分81BX、Z部分81BZと、隣接して、かつ、平行な姿勢で設けられる。
保護ガス排気通路92Bの開口93Kは、電極カバー22P、23Pの放電開口22HR、23HLに隣接して位置する。また、保護ガス排気通路92BのZ部分92BZの先端は、アース板90を貫通して排気口94Kとされている。排気口94Kは、ラジカル出力口16とは離れた位置に設けられる。本実施例においては、ラジカル供給装置本体18の異なる面、すなわち、ラジカル出力口16が下面14に設けられるのに対して、排気口94Kは正面95に設けられる。その結果、排気口94Kから排気される保護ガスがラジカル出力口16から出力されるラジカルと混ざり難くすることができる。
なお、本実施例においては、ラジカル供給装置2の本体18の外側に図示しない本体カバーが取り付けられるため、排気口94Kから排気された保護ガス(ダストを含む)がワークWの被処理面WFに供給されることが防止される。
【0059】
放電空間42Bの下流側には、個別通路群80Bに属する8個の個別通路81Bと、2個の保護ガス排気通路92Bとの合計10個の個別流出側通路が、Y方向に一列に並んで形成される。これら10個の通路のうち、両端に位置する通路、すなわち、放電開口22HR、23HLに最も近くに位置する開口93Kを有する通路が保護ガス排気通路92Bであり、放電空間42BのY方向の中間部分に位置する開口81Kを有する8個の通路がラジカル流出通路78を構成する個別通路81Bである。
前述のように、電極カバー22P〜25Pの内側に流入させられた保護ガスは、放電開口22HR,23HL,HR,24HL,HR,25HLから流出させられるが、保護ガスとともに、ダストも流出させられる。
しかし、ダストが、ラジカルとともに、ワークWの被処理面WFに供給されることは望ましくない。
一方、ダスト、あるいは、ダストを含むガスの比重は、ラジカル等を含むガスより大きいため、遠くには飛散し難いと考えられる。
そこで、放電開口22HR,23HL,HR,24HL,HR,25HLに最も近い部分に位置する開口を有する通路を、保護ガス排気通路92B〜Dとし、保護ガス排気通路92B〜Dを流れるガス(ダストを含む)が、ラジカル出力口16から出力されないようにされている。この意味において、保護ガス排気通路92B〜Dをダミー通路と称することができる。
なお、放電空間42B,C,Dは、前述のように、隣接する電極22〜25の間に設けられる。そのため、電極22の電極23とは反対側、電極25の電極24とは反対側に、放電空間が形成されることはない。本実施例においては、放電開口22HL,25HRは本体18によって塞がれている。そのため、放電開口22HL,25HRに隣接する位置には保護ガス排出通路が設けられていないのである。
また、個別流出通路81B、92Bの各々の開口81K,93Kを放電空間側開口と称することができる。
【0060】
仮に、保護ガスとラジカル等を含むガスとが合流すると、ワークWに供給されるラジカルの濃度(ラジカル出力口16から出力されるガスのうちのラジカルの濃度)が薄くなり、効率よく表面等処理を行うことができないという問題がある。
それに対して、保護ガスが排気され、ラジカル流出通路78を流れるラジカル等を含むガスと合流され難くすれば、ラジカルの濃度の低下を抑制し、表面等処理の効率を向上させることができる。
なお、本実施例において、保護ガスすべてが排気されるとは限らないが、少なくとも一部は排気されるため、排気されない場合に比較して、ラジカルの濃度の低下を抑制することができる。
ただし、保護ガスは、処理ガスのキャリアガスとして作用するものであるため、ラジカル等を含むガスと保護ガスとが合流しても差し支えない。
【0061】
また、排気口94Kがアース板90に設けられるため、保護ガス排気通路92B〜Dの内部を進行する放電が、アース板90との間で起き、ワークWとの間で起き難くすることができる。
【0062】
<制御装置>
本表面等処理装置には、コンピュータを主体とする制御装置100が設けられる。制御装置100には、流量調整部38,44、電圧調整装置30が接続され、記憶されたプログラムに従って、電極22〜25に印加される電圧が目標電圧に制御され、保護ガス、処理ガスの流量が、それぞれ、目標値に制御される。
保護ガス、処理ガスは、少なくとも放電中に供給されるのであり、例えば、電圧の印加に伴って供給が開始されるようにすることができる。
【0063】
本実施例の表面等処理装置においては、電極間の距離が20mmとされている。そして、実効電圧12KVの交流電圧が印加される。互いに隣接する電極22〜25の間には、放電(プラズマ放電と称することもできる)が起き、放電領域R23,R34,R45が形成される。
処理ガスは毎分1.8リットルで供給され、保護ガスは毎分0.6リットルで供給される。処理ガスは、酸素ガスとアルゴンガスとを含むものであるが、酸素ガスの濃度は、約1%である。
処理ガスが放電空間42B〜Dに供給され、プラズマ内に生成されたラジカル等がラジカル流出通路78を経てスリット状のラジカル出力口16から、ワークWの被処理面WFに供給される。それによって、ワークWの被処理面WFに処理が施される。
また、放電電極部22S〜25Sの周りに保護ガスが供給されるため、放電電極部22S〜25Sの周辺の雰囲気を処理ガスから分離することができる。その結果、放電電極部22S〜25Sの酸化を抑制し、寿命を長くすることができる。なお、処理ガスの流量が保護ガスの流量より大きくされているため、より一層、放電電極部22S〜25Sに処理ガスが接触し難くすることが可能となる。
さらに、アース板90がラジカル流出通路78に設けられるため、ワークWとの間で放電が起き難くすることができる。また、ワークWに帯電したガスが供給され難くすることができる。
特に、ワークWが電子部品(基板)である場合には、帯電したガスが供給されることによってワークWが帯電させられることは望ましくない。それに対して、本表面等処理装置においては、帯電したガスが供給されないようにされるため、ワークWが電子部品であっても、ワークWの帯電を防止することができる。
【0064】
なお、処理ガス、保護ガスの種類は、上記実施例における場合のガスに限定されない。ワークWの材質、処理目的等によって適宜選択することができる。反応ガスとして水素ガスを使用することができる。また、保護ガスとしては、窒素ガス、フッ素ガス等を使用することもでき、処理ガスのキャリアガスであるアルゴンとすることは不可欠ではない。保護ガスは、処理ガスに含まれない種類のガスであってもよいのである。
また、保護ガス排気通路92B〜Dの開口93Kの面積Saを、ラジカル流出通路78の個別通路81B〜Dの開口81Kの面積Soより大きくすることができる(Sa>So)。それにより、保護ガス排気通路92B〜Dにより、保護ガスおよびダストをラジカル供給装置2の外部に排出することが可能となる。
【実施例2】
【0065】
上記実施例において、電極22〜25の放電電極部22S〜25Sは、軸方向(X方向)において直径が一定の筒状を成したものであったが、図11に示すように、半径方向に突出した突部を有する形状を成したものとすることができる。筒状とする場合より、非平等電界を起こし易くすることができ、放電が起き易くすることができる。また、表面等処理装置の他の部分については上記実施例における場合と同様であるため、説明を省略する。
例えば、図11(a)に示すように、放電電極部22SA(電極23SA,24SA,25SAの形状も同じ)は、X方向に半径が漸増した後漸減する形状、すなわち、中間部において半径が最も大きくなる円盤形状を成したものとすることができる。
また、図11(b)に示すように、放電電極部22SB(電極23SB,24SB,25SBの形状も同じ。)は、半径が漸増して、最大値において一定にされ、その後、漸減する形状、すなわち、半径が最も大きい部分が軸方向に延びた円盤状を成したものとすることができる。
さらに、図11(c)に示すように、放電電極部22SC(23SC、24SC、25SCについても同じ)は、半径方向に突出した棒状の突部を含む形状を成したものとすることができる。
【0066】
また、図11(d)に示すように、電極22*〜25*を、概して平板状を成したものとして、放電電極部22SD、23SD、24SD、25SDを、それぞれ、平板の端部、一部を切り欠いて、折り曲げた形状を成したものとすることができる。
放電電極部22SD〜25SDは、それぞれ、折り曲げの向きが互いに逆である一対の爪部22SD1,22SD2〜25SD1,25SD2を含む。そして、図11(d)に示すように、放電電極部22SDの一方の爪部22SD1と放電電極部23SDの一方の爪部23SD1とが対向して設けられ、放電電極部23SDの他方の爪部23SD2と放電電極部24SDの他方の爪部24SD2とが対向して設けられ、放電電極部24SDの一方の爪部24SD1と放電電極部25SDの一方の爪部25SD1とが対向して設けられる。
また、電極22*〜25*の各々において、一対の爪部22SD1,22SD2〜25SD1,25SD2は、互いにX方向に隔たった位置に形成される。したがって、図11(d)に示すように、放電電極部が2列に並んで設けられるのであり、爪部22SD1,23SD1,24SD1,25SD1が直線LY1上に並んで位置し、爪部23SD2,24SD2が直線LY2上に並んで位置する状態で、配設される。本実施例においては、直線LY1上において、爪部22SD1,23SD1の間、爪部24SD1,25SD1の間で、放電が起き、直線LY2上において、爪部23SD2,24SD2の間で放電が起きる。
【実施例3】
【0067】
なお、ラジカル流出通路の形状、アース板の取り付け位置等は、上記実施例におけるそれに限らない。
その場合の一例を図12に示す。なお、表面等処理装置の他の部分については上記実施例における場合と同じであるため、説明を省略する。
個別通路120Bは(個別通路120C,Dについても同様であるため、図示および説明を省略する)は、(a)放電空間42Bに対向する開口122Kを有し、X方向に延びたX部分120BXと、(b)X部分120BXの途中に接続され、Z方向に延びたZ部分120BZと、(c)Z部分120BZに接続され、X方向に延びたX部分120BXXとを含み、X部分120BXXが拡散部82Bに接続される。
また、X部分120BXの先端に、個別通路120Bを閉塞するアース板124が設けられる。電子は、直線的に進行し易いため、アース板124を直線的に延びるX部分120BXに設ければ、アース板124との間で放電を生じさせることが可能となる。さらに、個別通路120Bを流れるガスが帯電している場合には、アース板124との間で電子の授受が行われ、アース板124と同じ電位となる。その結果、ワークWに帯電したガスが供給され難くすることができる。
なお、X部分120BXのZ部分120BZとの接続部Nより放電空間側の部分120BXOが主通路の構成要素であり、X部分120BXの接続部Nより放電空間42Bとは反対側の部分120BXPが分岐通路に対応し、分岐通路120BXPを閉塞する状態でアース板124が取り付けられる。
【実施例4】
【0068】
本実施例においては、図13(a)に示すように、ラジカル流出通路が個別通路群130B〜Dから構成され、拡散部を含まない。また、ラジカル出力口は、スリット状とされていない。
個別通路群130Bに属する個別通路131B(個別通路群130C、Dを構成する個別通路131C,Dについても同様であるため、図示および説明を省略する)は、X方向に直線状に延びたものであり、一端が放電空間42Bに対向する開口132Kとされ、他端が本体12から外部に対向して設けられた開口134Kとされ、複数の開口134Kにより、ラジカル出力口が構成される。
また、個別通路131Bの途中には、アース板136が設けられる。アース板136は、個別通路131Bの内部を通るプラズマを含むガスに接触可能な状態で設けられる。その結果、放電をアース板136との間で生じさせることが可能となり、ワークWとの間で起き難くすることができる。また、ワークWに帯電したガスが供給され難くすることができる。
なお、実施例4においては、個別通路130BがX方向に直線的に延びたものであったが、アース板136の取り付け位置より下流側の部分において個別通路131Bを湾曲させたり、拡散部を設けたりすることも可能である。
【0069】
その場合の一例を図13(b)に示す。本実施例においては、ラジカル流出通路が、個別通路群140B〜Dと、拡散部82B,スリット通路86とを含むが、個別通路群140Bに属する個別通路141BXがX方向に延びたものである(個別通路群140C,Dに属する個別通路141CX,141DXについても同様であるが、図示および説明を省略する)。個別通路141BXの途中にZ方向に延びた分岐通路141BZが接続され、分岐通路141BZを塞ぐ状態でアース板142が設けられる。
【実施例5】
【0070】
本実施例においては、ラジカル流出通路において、ポケットの位置が上記実施例における場合と異なる。その場合の一例を図14に示す。その他の部分については上記実施例における場合と同様であるため、説明を省略する。
図14(a)に示すように、ラジカル流出通路の個別通路群の構成要素である個別通路150Bは、(i)放電空間42Bに対向する開口151Kを有するX部分150BX、(ii)Z方向に延びるZ部分150BZ、(iii)Z部分150BZの途中に接続されたX部分150BXX等を含む。そして、X部分150BXのZ部分150BZの接続部Hに、下方に延びるポケット154Bが、X部分150BXに対応して、それぞれ、設けられる。ポケット154Bは、X部分150BXの延長部分であると考えることもできる。
このように、ポケット154Bは、個別通路の途中であれば、どこに設けても良い。また、個別通路に限らず、ラジカル流出通路の途中に設けることもできる。さらに、ラジカル流出通路の途中に2つ以上設けることもできる。
なお、個別通路150C,Dについては、個別通路150Bと同様であるため、図示および説明を省略する。
【0071】
また、本実施例においては、保護ガス排気通路の途中にもポケットが設けられる。
図14(b)に示すように、放電空間42Bに対向する開口160Kを有する保護ガス排気通路160B(他の保護ガス排気通路についても同様であるため、説明を省略する)は、X方向に延びるX部分160BXとZ方向に延びるZ部分160BZとを含むが、これらの接続部Jに、下方に延びたポケット164Bが設けられる。
このように、保護ガス排気通路160Bの途中にポケット164Bを設ければ、保護ガスとともに排出されるダストの量を減らすことが可能となる。
【実施例6】
【0072】
本実施例においては、保護ガス排気通路の代わりに保護ガス回収通路が設けられる。回収された保護ガスを含むガスからダストが除去されて保護ガスがリサイクルされる。また、ダストは回収され、外部に放出されないようにされる。
その場合の一例を図15(a)、(b)に示す。なお、表面等処理装置の他の部分については、上記実施例における場合と同じであるため、説明を省略する。
放電空間42B,C,Dに対応して、それぞれ、2個ずつの保護ガス回収通路170B,C,Dが設けられる。
保護ガス回収通路170B,C,D(保護ガス回収通路170Bについて説明し、保護ガス回収通路170C,Dについての説明を省略する)において、一端が、放電空間42Bに対向する開口とされ、他端が、共通回収通路172に接続される。共通回収通路172には、2個ずつの保護ガス回収通路170B,C,D(通路170Cの一方、2つの通路170Dの図示は省略する)が接続されることになる。
共通回収通路172には、吸引・回収装置174が接続される。吸引・回収装置174は、吸引ポンプ、ダスト除去・回収機構(例えば、フィルタ、磁石、遠心分離器等を含むものとすることができる)等を含み、保護ガスを含むガスを回収し、ダストを除去し、回収するものであり、ダストが除去された保護ガスは、保護ガス供給通路に戻される。
また、図15(a)に示すように、保護ガス回収通路170Bは、(i)X方向に延びるX部分170BXと、(ii)Z方向に延びるZ部分170BZとを含むが、ラジカル流出通路78の個別通路81Bと比較すると、X部分170BXが個別通路81BのX部分81BXより長く、Z部分170BZと、個別通路81BのZ部分81BZとが、X方向において隔たった位置に形成される。そのため、共通回収通路172を、ラジカル流出通路78と干渉することなく、形成することができる。
このように、保護ガスをリサイクルすれば、アルゴンガスの消費量を減らすことができ、表面等処理コストを低減させることができる。
【0073】
なお、共通回収通路172は、ラジカル供給装置2の本体18の外側に取り付けることもできる。
また、ラジカル供給装置2の外側には、本体カバーが取り付けられ、大部分が本体カバーで覆われて使用されることが多い。その場合には、本体カバーの内側(下部)に溜まったダストを回収して、ワークWに供給されないようにしたり、保護ガスを吸引して(上方から)リサイクルしたりすることでき、そのような装置をラジカル供給装置2の本体18の外側で、図示しない本体カバーの内側に設けることができる。
【実施例7】
【0074】
上記実施例においては、電極22〜25がX方向に延びた姿勢で設けられたが、本実施例においては、電極棒が、Z方向に延びた姿勢で設けられる。表面等処理装置の他の部分については、上記実施例における場合と同様であるため、説明を省略する。
図16,17において、Z方向に延びた4個の電極棒180、181,182,183が、Y方向に等間隔で、交互に配設される。電極棒180,182が正面184から突出し、電極棒181,183が背面186から突出する状態で、Y方向に並んで、互いに平行な姿勢で保持される。
また、電極棒180〜183の各々の外周側には、電極カバー180P〜183Pが設けられる。電極カバー180P〜183Pの各々には、それぞれ、放電開口180HL、HR〜183HL,HRが設けられ、隣接する放電電極部180S〜183Sの間で、放電が起き、放電領域R*01,R*12,R*23が形成される。
また、電極カバー180P〜183Pと電極180〜183との間の隙間(放電電極部周辺)180in〜183inには、保護ガス流入口180Q〜183Qから保護ガスが供給され、放電開口180HR、181HL、HR、182HL、HR、183HLから流出させられる。放電電極部180S〜183Sの表面の雰囲気が処理ガスから分離される。
処理ガスは、上記実施例における場合と同様に、それぞれ、放電空間190B〜D毎に、供給されるのであり、生成されたラジカル等は、上記実施例における場合と同様にラジカル流出通路78を経てワークWに供給される。
【0075】
以上、複数の実施例について説明したが、これら複数の実施例は、互いに組み合わせて適用することができる。
また、電極カバー22P〜25Pを設けることは不可欠ではなく、電極22〜25に直接、保護ガスを供給することもできる。
さらに、電極の個数は4つに限らない。例えば、2つあるいは3つであっても、5つ以上であってもよい。電極の個数を増やせば、ラジカル出力口16のY方向の長さを長くすることができる。その結果、被処理面WFが同じ場合に、処理に要する時間を短くすることができる。
また、上記実施例においては、電極カバー毎(放電電極部毎)に保護ガスが供給されるようにされていたが、複数の電極カバーに共通に保護ガスが供給されるようにすることもできる。例えば、1つの電極カバーに供給された保護ガスが、他の電極カバー内を循環して流出させられるようにすることができる。
さらに、電極カバーには、放電開口とは別に保護ガス流出口を設けることもできる。その場合には、放電空間以外の部分に、保護ガスを流出させることも可能である。
また、アース板は、上記実施例における位置に限らず、いずれに設けてもよい。
さらに、ラジカル流出通路78は、湾曲部を1つ有するものとしたり、2つ以上有するものとしたりすることができる。
また、本発明は、プラズマ内で生成される正イオンや負イオンをワークに照射して表面等の処理を行う表面等処理装置に適用することもできる。
さらに、本発明は、上記複数の実施例に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施すことができる。
【符号の説明】
【0076】
2:ラジカル供給装置 4:ラジカル供給装置保持部 6:ワーク保持部 7:相対移動装置 16:ラジカル出力口 18:本体 22〜25:電極 22P〜25P:電極カバー 22HL,HR〜25HL、HR:放電開口 22in〜25in:隙間 22S〜25S:放電電極部 22Q〜25Q:保護ガス流入口 34:保護ガス供給通路 42:放電空間 48:処理ガス供給通路 78:ラジカル出力通路 80:個別通路 82:拡散部 86:スリット通路 88:ポケット 90:アース板 92:保護ガス排気通路 94:排気口 124:アース板 120:個別通路 130:個別通路 136:アース板 150:個別通路 160:保護ガス排気通路 154,164:ポケット 180〜184:電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物に、少なくともラジカル等の反応種を供給する反応種供給装置、反応種供給装置を備え、被処理物の表面等に処理を行う表面等処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、放電空間に処理ガスを供給して、プラズマ内に生成された反応種等を被処理物に供給する反応種供給装置、および、その反応種供給装置を備えた表面等処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−302653
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
反応種供給装置においては、少なくとも一対の電極間の放電により放電空間にプラズマが発生させられ、その放電空間に処理ガスが供給されることにより、そのプラズマ内に生成されたラジカル等の反応種等が被処理物に供給される。そして、その放電空間に供給される処理ガスが酸素を含む場合において、電極が処理ガスに接触する状態で放電が行われると、電極が酸化し、磨耗等して寿命が短くなる等の問題がある。電極に高い電圧が印加されるため、電極が高温になり、酸化するのである。
本発明の課題は、反応種供給装置、その反応種供給装置を備えた表面等処理装置の改良であり、具体的には、上述の問題を解決することである。
【課題を解決するための手段および効果】
【0005】
本発明に係る反応種供給装置は、電極を処理ガスから保護する電極保護装置を含むものとされる。反応種供給装置に電極保護装置を設ければ、電極が処理ガスから保護されるため、放電が行われる場合に、電極の酸化を抑制し、電極の寿命を長くすることができる。
【特許請求可能な発明】
【0006】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組を、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0007】
(1)放電空間に処理ガスを供給して、少なくとも、プラズマ内に生成された反応種を被処理物に供給する反応種供給装置。
反応種供給装置は、被処理物に、少なくとも反応種を供給する装置である。
反応種とは、プラズマ内で生成された物体をいい、例えば、プラズマ内で励起された励起原子、分子等の高いエネルギを有する物体が該当する。また、反応種とは、電気的に中性の物体をいうと考えることができる。
反応種は、被処理物自体、あるいは、被処理物の表面に付着した物体(例えば、有機物)と反応等して、被処理物の表面等を改質したり、付着した物体を除去したり(洗浄したり)する等の機能を有するもの等をいう。
反応種供給装置において、(a)反応種と、(b)高いエネルギを有しないものとが被処理物に供給されるようにすることができる。高いエネルギを有しないものとは、被処理物の表面に当たっても反応を起こさない物体であり、反応種でない物体(例えば、励起されていない物体、活性化されていない物体等)が該当し、例えば、キャリアガス等が該当する。
また、反応種供給装置において、(a)電気的に中性である反応種(中性粒子)と、(b)正イオン、負イオン等の荷電粒子を含み、全体として電気的に中性な集合物とを含むものが被処理物に供給されるようにすることもできる。電気的に中性な集合物を被処理物に照射しても、被処理物は帯電しないため、被処理物への影響は小さい。
なお、金属材料、セラミックス材料、有機材料等、被処理物の材質は問わない。
(2)当該反応種供給装置は、放電空間を形成する少なくとも一対の電極を含むものである。
反応種供給装置は、電極対を1つ備えたものであっても、2つ以上備えたものであってもよい。すなわち、放電空間を1つ有するものであっても、2つ以上有するものであってもよい。
放電空間は、一対の電極の間に設けられた空間であり、一対の電極間の放電のために設けられた空間である。電極が複数対設けられる場合には、放電空間も複数設けられるが、複数の放電空間の各々は、互いに独立のものであっても、互いに連通したもの(互いに共通の空間を有するもの)であってもよい。また、電極が3つ並んで配設された場合には、電極対は2つあると考えることができ、2つの放電空間が形成されると考えることができる。中間に位置する電極は、2つの電極対を構成する共通の電極であると考えられる。
(3)当該反応種供給装置において、前記複数の電極が、前記処理ガスの前記放電空間への供給方向と交差する方向に、間隔を隔てて、並べて配設された。
電極とは、電圧が印加された場合に、放電を起こす可能性があるものをいう場合と、実際に放電を起こすものをいう場合とがある。
放電を起こす可能性があるもの、放電を起こすものは、それぞれ、電極全体である場合と、一部である場合とがある。
例えば、電極全体の形状、電極を覆うカバーの形状、電極が保持された反応種供給装置本体の構造等の1つ以上に起因して、電極全体のうち、放電が起きる可能性がある部分、あるいは、放電が実際に起きる部分が決まる場合があり、その場合における、放電が起きる部分が放電電極部である。また、電極全体が、放電が起きる部分である場合には、その電極が放電電極である。
一方、放電は、原則として、一対の電極の間で起き、一対の電極のうちの一方が放電電極であり、他方が対向電極である。放電電極、対向電極が、電圧を印加する電源装置、電圧調節装置の制御態様等によって予め決まる場合があるが、例えば、交流電圧が印加される場合等、1つの電極が、放電電極となったり、対向電極となったりする。また、本発明の説明において、放電電極と、対向電極とを区別する必要性は低い。そのため、本明細書においては、これらを区別することなく、放電電極、あるいは、放電電極部と称する場合がある。
また、電極全体は、概して棒状を成したものであっても、平板状を成したものであってもよい。
さらに、複数の電極の各々は、一直線上に位置する状態で設けても、複数の直線上に位置する状態で設けてもよい。
なお、放電とは、一対の電極間で起きる放電をいう。
(4)当該反応種供給装置において、前記電極の各々が、非平等電界を起こす形状を成したものである。
例えば、電極全体が、(a)概して円筒状を成した本体と、(b)その本体の一部に設けられ、半径方向に突出した突部とを含む場合には、その突部において非平等電界が生じ易くなり、放電が生じやすくなる。この場合には、突部が放電電極部に対応する。
また、電極全体が、(c)概して平板状を成した本体と、(d)その本体に形成された爪部とを含む場合には、爪部が放電電極部に対応する。
(5)当該反応種供給装置において、前記電極の各々の幅方向の長さが、隣接する電極間の距離より小さくされた。
例えば、複数の電極が間隔を隔てて一方向に配設された場合において、放電電極部の、その方向の長さD(幅)が、間隔Lに対して小さくされる(D<L)。放電電極部の幅Dは、間隔Lの1/2以下、1/3以下、1/4以下、1/5以下とすることができる。
(6)当該反応種供給装置は、前記電極を3つ以上含む。
4つの電極を含むものであっても、5つ以上の電極を含むものであってもよい。
また、3つ以上の電極は、1列に並んで配設されても、複数列に並んで配設されてもよい。複数列に並んで配設された場合には、複数列のうちの少なくとも一列において、並んで配設される電極は2つであっても、3つ以上であってもよい。
【0008】
(7)当該反応種供給装置に、前記電極を前記処理ガスから保護する電極保護装置を設けることができる。
(8)当該反応種供給装置に、前記電極を酸素から保護する電極保護装置を設けることができる。
(9)前記電極保護装置は、前記電極の各々を覆う電極カバーを含むものとすることができる。
電極カバーは、複数の電極の各々を、別個独立に覆うものとすることが望ましい。それに対して、複数の電極を覆う電極カバーには、互いに連結する連結部分を設けることも可能である。
電極カバーは、電極の各々について、その電極の少なくとも一部を覆う状態で設けられる。電極全体を覆うものであっても、電極全体のうちの一部を覆うものであってもよい。
電極カバーは、電極との間に隙間を有しない状態で設けても、隙間を有する状態で設けてもよい。
(10)前記電極カバーのうちの互いに隣接するものの、互いに対向する部分に、それぞれ、放電開口を設けることができる。
電極が、放電が起きる可能性を有するものである場合において、電極カバーが、電極全体を覆うものであり、かつ、電極カバーが、電極との間に隙間を有する状態で設けられた場合には、その電極カバーに放電開口を設けることが望ましい。その場合には、電極のうち、電極カバーの放電開口に対応する部分が放電電極部となる。
(11)前記電極カバーは、前記電極の少なくとも一部との間に隙間を有する状態で設けることができる。
電極カバーと電極の少なくとも一部との間に形成された隙間は、保護ガスが供給される空間となる。この空間の容積が小さい場合には、供給される保護ガスの量が少なくなり、隙間の容積が大きい場合には、供給される保護ガスの量が多くなる。
(12)前記電極保護装置は、前記電極の少なくとも一部に保護ガスを供給する保護ガス供給部を含むものとすることができる。
保護ガス供給部は、少なくとも、電極の、処理ガスから保護すべき保護対象部分(表面)に保護ガスを供給するものとすることが望ましい。
電極が放電が起きる可能性を有するものである場合において、保護ガス供給部は、電極全体に保護ガスを供給するものであっても、一部に供給するものであってもよい。一部に供給する場合には、放電電極部を含む部分に供給することが望ましい。
また、電極が放電電極である場合には、電極全体に供給することが望ましい。
なお、保護ガスを供給する場合に、電極カバーを設けることは不可欠ではない。電極カバーがなくても保護ガスを電極の表面に供給することができ、電極の周辺の雰囲気を処理ガスから分離することができる。
また、保護ガス供給部は、保護ガスを、複数の電極カバーの内側に共通に供給する共通供給部を含むものであっても、複数の電極カバーの各々に個別に供給する電極カバー別供給部(電極別供給部)を含むものであってもよい。
なお、保護ガス供給部は、後述するように、処理ガス供給部とは別個のものである。
(13)前記保護ガス供給部は、少なくとも放電中に、前記保護ガスを供給する放電中供給部を含むものとすることができる。
保護ガス供給部は、放電の準備が開始された場合に保護ガスの供給を開始するものとすることができ、具体的に、電極への電圧の印加が開始された場合に供給を開始するものとすることができる。
(14)前記電極保護装置は、(i)前記電極の各々を覆う電極カバーと、(ii)それら電極カバーの内側に、それぞれ、保護ガスを供給する保護ガス供給部とを含むものとすることができる。
(15)前記保護ガス供給部が、複数の電極カバーの内側に、それぞれ、個別に保護ガスを供給する個別供給部を含み、その個別供給部が、(i)当該反応種供給装置本体に設けられた保護ガス供給口に接続された主通路と、(ii)前記電極カバーの各々に設けられた保護ガス流入口と、(iii)前記主通路と前記保護ガス流入口の各々とを、それぞれ、個別に接続する個別通路とを含むものとすることができる。
主通路と個別通路とで、保護ガス供給通路が構成されると考えることができる。また、個別供給部は、電極別供給部と称し、個別通路は、電極別通路、電極カバー別通路と称することができる。
(16)前記保護ガス供給部が、前記複数の電極カバーの内側に保護ガスを共通に供給する共通供給部を含み、その共通供給部が、(i)前記複数の電極カバーと前記電極との間の隙間を、互いに連通させる連通部と、(ii)前記複数の電極カバーのうちのいずれか1つに設けられた保護ガス流入口とを含むものとすることができる。
連通部は、電極カバーの一部によって構成されたものとすることができる。
(17)前記保護ガス供給部が、前記電極カバーの各々に設けられた保護ガス流入口を含み、前記電極カバーのうちの互いに隣接するものの、互いに対向する部分であって、かつ、前記保護ガス供給口より下流側の部分に放電開口が設けられる。
電極カバーにおいて、保護ガス流入口と放電開口とは、軸方向と、周方向との少なくとも一方に隔たって設けることができる。
電極カバーの連通部の接続部を、保護ガス流入口とすることができる。
(18)前記保護ガス供給部は、前記電極カバーの各々に設けられた保護ガス流入口と、その保護ガス流入口より下流側に設けられた保護ガス流出口とを含むものとすることができる。
保護ガス流出口は、放電空間に対向する開口を有するものであっても、そうでなくてもよい。すなわち、電極カバーの内側に供給された保護ガスは、放電空間に流出させられるようにしても、反応種供給装置の外部に排気させられるようにしても、回収されるようにしてもよい。例えば、反応種供給装置の外部に連通させられる保護ガス排気通路や保護ガス回収装置に連通させられる保護ガス回収通路に接続されるようにすることができる。放電空間に対向する開口を有するものである場合には、その開口を保護ガス流出口とすることができる。
(19)当該反応種供給装置に、前記処理ガスの前記電極への接触を防止する処理ガス接触防止装置を設けることができる。
(20)当該反応種供給装置に、前記電極を前記処理ガスから遮断する処理ガス遮断装置を設けることができる。
(21)当該反応種供給装置に、前記電極を囲む空間のガスと前記処理ガスとを分離する電極周辺ガス・処理ガス分離装置を設けることができる。
処理ガス接触防止装置、処理ガス遮断装置、電極周辺ガス・処理ガス分離装置には、それぞれ、(7)項ないし(18)項に記載の技術的特徴を採用することができる。
(22)当該反応種供給装置に、酸素ガスの前記電極への接触を防止する酸素ガス接触防止装置を設けることができる。
(23)当該反応種供給装置に、前記電極を酸素ガスから遮断する処理ガス遮断装置を設けることができる。
(24)当該反応種供給装置に、前記電極を囲む空間のガスと酸素ガスとを分離する電極周辺ガス・酸素ガス分離装置を設けることができる。
酸素ガス接触防止装置、酸素ガス遮断装置、電極周辺ガス・酸素ガス分離装置には、それぞれ、(7)項ないし(18)項に記載の技術的特徴を採用することができる。
(25)前記反応種供給装置に、前記電極の酸化を抑制する酸化抑制装置を設けることができる。
酸化抑制装置には、(7)項ないし(18)項に記載の技術的特徴を採用することができる。
【0009】
(26)当該反応種供給装置に、前記電極に供給された保護ガスを処理する保護ガス処理部を設けることができる。
保護ガスは、電極カバーの内側に供給される場合と、電極カバーが設けられることなく、電極に直接供給される場合とがある。いずれにしても、電極に供給された保護ガスは電極の表面を流れ、その後、当該反応種供給装置の外部に排気させられたり、回収されたり、処理ガスに合流させられたりする等処理される。
(27)前記保護ガス処理部が、前記電極に供給された保護ガスが前記放電空間に放出され、放出された保護ガスが、少なくとも前記反応種を出力する反応種出力口から排気され難くする反応種分離型保護ガス処理部を含むものとすることができる。
(28)前記保護ガス処理部が、前記保護ガスを当該反応種供給装置の外部に排気する保護ガス排気部を含むものとすることができる。
(29)前記保護ガス処理部が、前記放電空間の下流側に設けられ、前記放電空間に対向する開口を有する保護ガス流出通路を含むものとすることができる。
保護ガス流出通路は、保護ガス排気通路とすることもできる。
保護ガスが電極カバーの内側に供給され、放電開口から放電空間に放出される場合には、保護ガス流出通路の開口が放電開口の近傍に位置する状態で設けることができる。
(30)前記保護ガス処理部が、前記電極に供給されて、流出させられたガスから、ダストを分離するダスト分離部を設けることができる。
保護ガスとともに、ダスト等も流出させられるため、ダストがダスト分離部によって保護ガスから分離させられる。ダスト分離部は、ダスト回収部と称することもでき、ポケットを含むものとしたり、フィルタを含むものとしたりすることができる。
なお、ダストは、固体の状態にある場合と気体の状態にある場合とがある。
(31)前記ダスト分離部が、前記保護ガス流出通路に設けられた1つ以上のポケット部を含むものとすることができる。
ポケット部は、保護ガス流出通路の下部に接続して設けることが望ましい。
(32)前記保護ガス処理部は、前記保護ガスを回収して、再利用するリサイクル部を含むものとすることができる。
(33)前記保護ガス処理部は、前記電極カバーの内側に供給された保護ガスを、前記電極カバーの外側に流出させる保護ガス流出部を含むものとすることができる。
保護ガス流出部は、保護ガス流出口、放電開口を含むものとすることができる。
(34)当該反応種供給装置が、前記反応種を出力する反応種出力口を含み、前記保護ガス供給部が、一端が、前記電極カバーの前記放電開口が形成された部分に隣接して設けられた入口とされ、他端が、前記反応種出力口から離間した位置に設けられた排気口とされた保護ガス排気通路を含むものとすることができる。
排気口は、反応種出力口から離れた位置に設けられる。また、排気口は、排気口から排気される保護ガスの排気方向と、反応種出力口から出力される反応種を含むガスの照射方向とが異なる状態で設けることが望ましい。
(35)当該反応種供給装置が、前記放電空間の下流側に設けられ、前記電極のうち互いに隣接する電極の間に並んで設けられた複数の放電側開口を備えた複数の個別流出通路を含み、それら複数の個別流出通路のうちの、両端に位置する個別流出通路が、それぞれ、前記排気口に連通させられ、中間に位置する個別流出通路が、前記反応種出力口に連通させられる。
(36)当該反応種供給装置に、前記保護ガスと前記処理ガスとを合流させる合流装置を設けることができる。
(37)前記処理ガスが、複数種類のガスを含むものであり、前記保護ガスが、前記複数種類のガスのうちの少なくとも1種類のガスと同じものである。
(38)前記処理ガスが、キャリアガスと反応ガスとを含み、前記保護ガスが、キャリアガスとして作用するものである。
キャリアガスは、反応性が低いガス、活性化され難いガスであり、例えば、プラズマと反応し難いガス、放電により活性化され難いガスである。キャリアガスは、主として、反応種を運搬するために用いられる。
保護ガスは、キャリアガスとして作用するものであれば、処理ガスのキャリアガスと異なるものであっても、同じものであってもよい。
保護ガスは、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス等の不活性ガスとしたり、窒素ガス、フッ素ガス等としたり、これらの混合ガスとしたりすること等ができる。
また、処理ガスのキャリアガスとして、例えば、窒素ガス、フッ素ガスや、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス等の不活性ガス等が該当する。
反応ガスは、放電領域に供給されることにより反応種となる物体であり、例えば、プラズマ中の荷電粒子と衝突することにより励起させられ反応種となったり、放電により励起させられ反応種となったりする。反応ガスには、酸素ガス、水素ガス、フッ素ガス等が該当する。反応ガスの種類は、被処理物の材質、処理の目的等で決まる。
なお、キャリアガス、保護ガスの種類は、それぞれ、被処理物の材質、電極の材質、処理の目的、反応ガスの種類等により決めることができる。
(39)前記処理ガスが、反応ガスとキャリアガスとを含み、前記保護ガスが、前記処理ガスに含まれるキャリアガスと同じ種類のものである。
(40)前記保護ガスは、酸素ガスを実質上含まないものである。
酸素ガスの含有率が設定値以下のガス(例えば、0.01%以下のガス)とすることが望ましい。
【0010】
(41)当該反応種供給装置が、前記放電空間の下流側に設けられた反応種流出通路を含むことができる。
(42)前記反応種流出通路は、途中で湾曲した形状を成したものとすることができる。
反応種流出通路は、少なくとも1回湾曲した形状を成したものである。湾曲の回数は1回でも2回以上でもよい。また、湾曲の角度は90°であっても、90°より小さくても、90°より大きくしてもよい。
(43)前記反応種流出通路は、1つ以上の凹部を有するものとすることができる。
(44)前記反応種出力口が、スリット状とされた。
(45)前記反応種出力口が、前記電極が並ぶ方向に長いスリットとされた。
(46)前記反応種流出通路が、途中に拡散部を含むものとすることができる。
(47)前記反応種流出通路は、(a)放電空間に対して複数の開口を有する複数の個別通路と、(b)これら複数の個別通路に接続された拡散部と、(c)その拡散部に接続され、開口がスリットとされたスリット通路とを含むものとすることができる。
反応種出力口は、複数の開口から構成されるものとすることができ、その場合には、拡散部に、スリット通路の代わりに、複数の出口側個別通路が接続されることになる。
(48)前記個別通路の前記放電空間に対向する開口が、前記放電空間の幅方向の中央に位置し、かつ、前記開口の直径が前記放電空間の幅より小さい。
1つの放電空間において、その放電空間の下流側に設けられた反応種流出通路の個別通路の数が、その放電空間の上流側に設けられた処理ガス供給通路の数より多く、かつ、反応種出力通路の個別通路の開口の直径が、処理ガス供給通路の開口の直径より小さい。
(49)前記拡散部が、前記個別通路の接続部から前記スリット通路の接続部に向かって、反応種を拡散させる形状を成したものとすることができる。
(50)前記個別通路の前記拡散部に対する接続部の形状を、断面の大きさが漸増させられられる形状とすることができる。
例えば、個別通路の半径が漸増させられる形状とすることができる。
【0011】
(51)当該反応種供給装置の、前記放電空間の下流側にアース部材を設けることができる。
放電空間の下流側とは、反応種供給装置において放電空間が形成された部分と反応種を出力する反応種出力口との間の部分をいう。
(52)前記アース部材は、前記放電空間と少なくとも前記反応種を出力する反応種出力口との間に設けられた反応種流出通路に設けることができる。
(53)前記反応種流出通路が、前記放電空間と前記反応種を出力する反応種出力口とを連通させる主通路と、その主通路に接続された分岐通路とを備え、前記アース部材が、前記分岐通路を閉塞する状態で設けられた。
(54)前記主通路が、(a)第1の方向に延びた第1通路と、(b)その第1通路に接続され、前記第1の方向に対して傾斜した第2の方向に延びた第2通路とを含み、前記分岐通路が、前記第1通路と前記第2通路との接続部に接続され、前記第1通路と同一直線状に延びた直線通路とされた。
分岐通路は、第1通路の延長通路であると考えることができる。
第1通路と第2通路とは、互いに直交していても、そうでなくてもよい。
第1の方向と第2の方向とは直交していても、そうでなくてもよい。
(55)前記アース部材は、前記反応種流出通路内を流れる反応種を含むガスに接触可能な状態で設けることができる。
(56)前記アース部材は、前記反応種流出通路の途中に設けることができる。
(57)前記アース部材は、反応種が出力される反応種出力口から設定距離離間した位置に設けることができる。
例えば、設定距離は、仮に、反応種出力口と被処理物の被処理面とが当接した状態において、アース部材と被処理面との間で放電が起きないと考えられる距離としたり、反応種出力口と被処理面との間の距離が、処理を行う場合の距離である場合に、アース部材と被処理面との間で放電が起きないと考えられる距離としたりすること等ができる。
設定距離は、予め実験、シミュレーション等により求められる。設定距離は、主として、被処理物の材料に起因して決まる。
アース部材と被処理物との間の放電の起き易さは、被処理物の被処理面とアース部材との最短距離が問題となる。反応種出力口とアース部材との間の距離(最短距離)が、被処理面とアース部材との間の最短距離より大きい(ほぼ同じである)姿勢で使用される場合には、反応種出力口とアース部材との間の距離が設定距離以上となる部分にアース部材を取り付ければ、アース部材とワークWとの間に放電が起き難くすることができる。
(58)前記反応種流出通路が、前記放電空間に対向する複数の開口を含み、前記複数の開口の各々の直径が3mm以下である。
2.5mm以下、2mm以下、1.5mm以下、1mm以下とすることができる。
【0012】
(59)当該反応種供給装置の、前記放電空間の下流側で、前記反応種出力口より上流側に、前記反応種出力口から供給される少なくとも前記反応種を含むガスを電気的に中性なガスとする電気的中和機構を設けることができる。
被処理物が基板等の電子部品である場合において、被処理物に、全体として正あるいは負に帯電したガスが供給されると、被処理物が帯電させられ、望ましくない。
そのため、被処理物には、全体として電気的に中性でないガスが供給されないようにすることが望ましいのであり、反応種流出通路内を、帯電しているガスが流れている場合には、そのガスを電気的に中和してから被処理物に供給されるようにすることが望ましい。
電気的中和機構として、例えば、アース板を含む機構が該当する。帯電しているガスとアース板とが接触することにより、アース板との間で電子の授受が行われ、アース板と同じ電位となる。その結果、帯電した状態にあるガスが被処理物に供給され難く、あるいは、供給されないようにすることができる。
【0013】
(60)当該反応種供給装置に、前記処理ガスを前記放電空間に供給する処理ガス供給部を設けることができる。
(61)前記処理ガス供給部は、前記放電空間の各々に対応して設けられ、前記放電空間毎に前記処理ガスを供給する放電空間毎処理ガス供給部を含む。
(62)前記処理ガス供給部は、(a)当該反応種供給装置に設けられた処理ガス供給口に接続された主通路と、(b)その主通路に接続され、前記放電空間に対応して設けられた個別通路とを含む。
放電空間が複数設けられた場合には、個別通路も複数設けられる。個別通路は、放電空間別通路と称することができる。
(63)前記個別通路が、(a)前記主通路との接続部を有する上流側通路と、(b)拡散部と、(c)前記放電空間の幅方向に隔てて設けられた複数の下流側通路とを含む。
放電空間の幅方向は、電極の離間方向である。
(64)前記下流側通路の放電空間に対向する開口の直径が、前記放電空間の幅方向とほほ同じである。
(65)前記複数の下流側通路の放電空間に対向する開口の面積の総和が、前記反応種流出通路に含まれる複数の個別通路の放電空間に対向する開口の面積の総和より大きい。
(66)当該反応種供給装置に、前記処理ガスを前記放電空間に供給する処理ガス供給部と、前記保護ガスを前記電極に供給する保護ガス供給部との両方を設けることができる。
【0014】
(67)当該反応種供給装置において、前記複数の電極が、当該反応種供給装置本体の同じ面から、それの一部が突出する状態で保持されるようにすることができる。
例えば、反応種供給装置の本体が、概して、直方体を成している場合には、側面、あるいは、上面等の同じ面から、複数の電極の一部が突出する状態となる。
(68)当該反応種供給装置が、前記複数の電極カバーが、当該反応種供給装置の本体の同じ面から、各々の一部が突出する状態で保持されるようにすることができる。
電極カバーは、セラミックス等の絶縁体として機能する材料で製造されたものとすることができる。
【0015】
(69)放電空間に処理ガスを供給して、少なくとも、プラズマ内に生成された反応種を反応種出力口から被処理物に供給する反応種供給装置であって、
前記放電空間を形成する少なくとも一対の電極と、
それら電極の各々に保護ガスを供給する保護ガス供給部と、
前記放電空間の下流側に設けられ、一端が、前記電極の近傍に位置する開口とされ、他端が、前記反応種出力口から離間した位置に設けられた排気口とされた保護ガス排気通路と
を含む反応種供給装置。
本項に記載の反応種供給装置には、(1)項ないし(68)項のいずれか1つに記載の技術的特徴を採用することができる。
【0016】
(70)放電空間に処理ガスを供給して、少なくとも、プラズマ内に生成された活性種を被処理物に供給する反応種供給装置。
活性種とは、放電等により、高エネルギを有する状態に遷移させられた分子、原子、イオン等をいい。化学反応や、結晶格子の変化を起こし易い状態にされたものをいう。被処理物の被処理面に、正イオンや負イオンを照射することによって、所望の処理が行われることもある。
本項に記載の反応種供給装置には、(1)項ないし(69)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
【0017】
(71)前記反応種供給装置を保持する反応種供給装置保持部と、前記被処理物を保持する被処理物保持部と、これら反応種供給装置保持部と前記被処理物保持部とを相対移動させる相対移動装置とを含み、前記被処理物の表面等の処理を行う表面等処理装置。
表面等処理装置において、被処理物と反応種供給装置との相対移動によって、被処理物の表面等に処理が行われる。表面等処理装置においては、少なくとも反応種が被処理物の表面に供給されることにより、表面の処理が行われるが、被処理物の表面のみならず、内部にも処理が及ぶ(化学反応が及ぶ)場合もある。
表面等処理装置において、被処理物と反応種供給装置とは、連続的に、すなわち、反応種を照射しつつ、相対移動させることも可能である。
反応種供給装置保持部を移動不能とし、被処理物保持部を移動可能としても、反応種供給装置保持部を移動可能とし、被処理物保持部を移動不能としても、これら反応種供給装置保持部と被処理物保持部との両方を移動可能としてもよい。
なお、表面等処理装置において、反応種が、被処理面に対して交差する方向から照射されるようにすることができる。
(72)前記相対移動装置が、前記反応種供給装置保持部と前記被処理物保持部とを、前記被処理物の処理対象面に対して平行な方向に相対移動させる平行移動部を含む。
(73)前記相対移動装置が、前記反応種供給装置保持部と前記被処理物保持部とを、前記被処理物の処理対象面と垂直な方向に相対移動させる垂直移動部を含む。
(74)前記表面等処理装置において、被処理物に、大気中で、前記反応種が供給される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例である表面等処理装置の全体の概念図である。表面等処理装置は、本発明の一実施例である反応種供給装置としてのラジカル供給装置を備えたものである(実施例1)。
【図2】上記ラジカル供給装置の全体斜視図である。
【図3】図6のAA断面図である。
【図4】図6のBB断面図である。
【図5】上記ラジカル供給装置の放電空間の周辺を概念的に示す図である。
【図6】図3のCC断面図である。
【図7】上記ラジカル供給装置の放電電極の周辺を概念的に示す図である。
【図8】上記ラジカル供給装置のラジカル流出通路の周辺を概念的に示す斜視図である。ラジカル流出通路は、本体に形成されたものであり、実際には見えないものであるが、図8においては、通路を実線で、本体を二点鎖線で示した。
【図9】(a)図4の一部を示す図である。(b)図6のDD断面図である。
【図10】上記ラジカル供給装置のラジカル流出通路を概念的に示す図である。
【図11】上記ラジカル供給装置に利用できる別の態様の電極を示す図である(実施例2)。
【図12】上記ラジカル供給装置に適用可能な、別のラジカル流出通路周辺を概念的に示す図である(実施例3)。
【図13】上記ラジカル供給装置に適用可能な、さらに別のラジカル流出通路周辺を概念的に示す図である(実施例4)。
【図14】上記ラジカル供給装置に適用可能な、別のラジカル流出通路周辺を概念的に示す図である(実施例5)。
【図15】上記ラジカル供給装置に適用可能な、保護ガス回収通路周辺を概念的に示す図である(実施例6)。図15の(b)は、図15(a)のEE断面図である。
【図16】上記ラジカル供給装置に適用可能な、別の電極の周辺を概念的に示す図である(実施例7)。
【図17】図16のFF断面図(一部)である。
【発明の実施形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態である表面等処理装置について図面に基づいて詳細に説明する。表面等処理装置は、本発明の一実施形態である反応種供給装置としてのラジカル供給装置を含む。
表面等処理装置は、被処理物(以下、ワークと称する)の被処理面(処理対象面と称することもできる)に反応種等を照射して改質、洗浄等の処理(プラズマ処理、表面等処理と称することができる)を行うものである。反応種が、ワーク自体と反応したり、ワークの表面に付着した物体と反応したりすることにより、ワークの表面を改質したり、洗浄(ワークの表面の有機物を分解除去)したりする。反応種とワークとの反応は、ワークの表面のみならず内部に及ぶ場合もある。
表面等処理装置においては、例えば、ワークの被処理面の接合強度を向上させたり、親水性、撥水性を向上させたり、滅菌、殺菌をしたり、有機物等を除去したりすること等ができる。
また、ワークは、金属製のものであっても、樹脂製のものであっても、セラミック製のものであってもよく、例えば、プリント基板、液晶基板、電子部品等とすることができる。
【0020】
反応種とは、本実施例においては、励起原子、分子等の電気的に中性な中性粒子をいい、例えば、ラジカル等の反応性の高い励起種等をいう。
励起とは、エネルギの低い基底状態からエネルギの高い状態に遷移させることをいい、例えば、放電によって原子や分子が励起させられたり、原子や分子とプラズマ中の荷電粒子とが衝突することによって励起させられたりする。以下、本明細書において、これらを合わせて、放電に起因して励起させられると称することがある。また、放電に起因して励起させられることによって得られた反応種は、プラズマ内で生成された反応種である。
ラジカルとは、不対電子を有する化学種をいい、遊離基ともいう。
プラズマとは、放電、すなわち、絶縁破壊により発生させられるものであり、正イオンおよび負イオン等の荷電粒子、ラジカル等の中性粒子、電子等を含み、全体として、電気的に中性のものをいう。
本発明の一実施形態である表面等処理装置においては、プラズマを発生させて、プラズマ中の反応種としてのラジカル等をワークの表面に供給して、処理を行うものである。表面等処理装置は、また、ワークとラジカル供給装置との相対移動により、ワークの被処理面にプラズマ処理を施すのに適している。表面等処理装置は、プラズマ処理装置と称することもできる。
【実施例1】
【0021】
[表面等処理装置]
図1に示すように、表面等処理装置は、(1)反応種供給装置としてのラジカル供給装置2と、(2)ラジカル供給装置2を保持するラジカル供給装置保持部4と、(3)ワークWを保持するワーク保持部6と、(4)ラジカル供給装置保持部4とワーク保持部6とを相対移動させる相対移動装置7とを含む。
本実施例においては、ラジカル供給装置2が図示する姿勢で使用されるのであり、X方向が上下方向(鉛直方向)であり、Y方向が幅方向である。また、Z方向は、X方向およびY方向に直交する方向である。
ラジカル供給装置保持部4が、図示しない表面等処理装置本体に、X方向に移動可能に取り付けられ、ワーク保持部6が、相対移動装置7によって、Y,Z方向に移動可能に取り付けられる。相対移動装置7は、Y方向駆動装置(モータ),運動変換機構、ガイド部材等を有するY方向移動装置8と、Z方向駆動装置(モータ),運動変換機構、ガイド部材等を有するZ方向移動装置10とを含む。
【0022】
本実施例においては、ワークWが、ワーク保持部6に、被処理面WFがYZ面(X軸と直交する面)と平行となる姿勢で保持される。
また、ラジカル供給装置保持部4のX方向の移動により、ラジカル供給装置2の下面14(図3参照)に形成された反応種出力口としてのラジカル出力口16とワークWの被処理面WFとの間のX方向の距離が目標値(例えば、非常に小さい値)とされる。
この状態で、少なくともラジカルが、ラジカル出力口16から出力され、ワーク保持部6がZ,Y方向の少なくとも一方向に移動させられることにより、ワークWの被処理面WFの全体に供給される。
本実施例においては、少なくともラジカルが被処理面WFにほぼ直交する方向から照射されるのであり、ワークWの表面等処理が、大気圧で(大気中で)行われる。
【0023】
なお、表面等処理装置において、ラジカル供給装置保持部4がY、Z方向に移動可能に取り付けられても、ラジカル供給装置保持部4,ワーク保持部6の両方がY,Z方向に移動可能に取り付けられてもよい。
また、ワーク保持部6と、ラジカル供給装置保持部4との少なくとも一方は、表面等処理装置の本体にX方向に延びる軸線回りに相対回転可能に取り付けられるようにすることもできる。
さらに、ラジカル供給装置2,ワークWの被処理面WFは、X,Y,Z軸に対して傾斜した姿勢で保持されるようにすることもできる。
【0024】
[ラジカル供給装置]
ラジカル供給装置2は、図2に示すように、概して直方体を成した本体18,本体18に設けられた処理ガス供給口20,本体18に保持された電極22,23,24,25等を含む。ラジカル供給装置2は、処理ガス供給口20から供給された処理ガスを、電極22〜25によって形成される放電空間に供給して、少なくとも、プラズマ内に生成されたラジカルを、ラジカル出力口16から出力するものである。
本実施例において、処理ガスは、酸素とアルゴンとを含むものである。反応ガスとしての酸素ガスが放電に起因して励起させられて酸素ラジカル(以下、単にラジカルと称する)が生成され、主としてキャリアガスとしてのアルゴンによってラジカル出力口16まで運搬される。
このように、ラジカル出力口16からは、ラジカル(プラズマ内で生成される中性粒子)およびキャリアガスが出力されるが、プラズマ(正イオンおよび負イオン等の荷電粒子、ラジカル、電子等の集合体であるが、全体として電気的に中性である)およびキャリアガスが出力されることもある。
以下、本明細書において、ラジカル供給装置2のラジカル出力口16から、ラジカル等が出力されると称したり、ラジカル等を含むガスが出力されると称したりする。
なお、例えば、ワークが、基板等の電子部品である場合において、電子部品に、正、あるいは、負に帯電させられた物体が供給されると、電子物品が帯電させられ、望ましくない。それに対して、荷電粒子を含む物体が供給されても、全体として帯電していなければ、電子部品の帯電を抑制、あるいは、防止することができる。そのため、プラズマがワークに供給されても、ワークへの影響は小さい。
【0025】
<電極、電極カバー>
電極22,23,24,25は、図2〜5に示すように、それぞれ、長手形状を成した、換言すれば、棒状を成したものであり、長手方向がX方向となる姿勢で、互いに平行に、Y方向に等間隔で配設される。
電極22〜25は、それぞれ、電極カバー22P〜25Pによって覆われている。電極22〜25はステンレスで製造されたものであり、電極カバー22P〜25Pはセラミックス等の固体誘電体で製造されたものである。
【0026】
電極22〜25および電極カバー22P〜25Pは、ラジカル供給装置2の本体18に、それら各々の一端部が上面29(図2参照)から突出し、電極22〜25の他端部が、本体18に設けられた凹部に嵌合された状態で、保持される。
また、上面29において、電極22〜25の各々の電極カバー22P〜25Pからの突出部には、それぞれ、電圧調整装置30が接続される。電圧調整装置30は、電源装置、変圧器等を含み、目標実効電圧等に調整された交流電圧を、電極22〜25の各々に印加する。本実施例においては、(i)電極22,24に正の電圧が印加され、電極23,25に負の電圧が印加される状態と、(ii)電極22,24に負の電圧が印加され、電極23,25に負の電圧が印加される状態とが交互に現れるように、制御される。
なお、(a)電極22,24を接地して、電極23,25に電圧を印加したり、(b)電極23,25を接地して、電極22,24に電圧を印加したりしてもよい。
【0027】
また、図2に示すように、ラジカル供給装置2の上面29から電極カバー22P〜25Pも突出させられる。
仮に、電極カバー22P〜25Pが、上面29から突出していない場合には、突出した隣接する電極22〜25の間で放電が起き易くなる。それを回避するためには、例えば、電極22〜25をZ方向に延びた姿勢とし、電極22,24が正面から突出し、電極23,25が背面から突出した状態で配設されるようにすることが考えられる。しかし、電極22,24と電極23,25とを異なる面から突出する状態で設けると、ラジカル供給装置2が大形化する等の問題が生じる。
それに対して、電極カバー22P〜25Pも突出させられるようにすれば、隣接する電極22〜25の突出部の基部の間に電極カバー22P〜25Pが位置することになるため、隣接する電極の突出部の間で、放電が起き難くなる。その結果、電極22〜25を同じ面から突出させることが可能となり、ラジカル供給装置2の小形化を図ることができ、電極の交換等のメンテナンスを容易にできる。
【0028】
図3に示すように、電極カバー22P〜25P、電極22〜25は、それぞれ、大径部と小径部とを備えた段付き形状を成しており、電極22〜25の大径部が電極カバー22P〜25Pの大径部に嵌合される。また、その状態で、図3,5に示すように、電極カバー22P〜25Pの小径部の一部の内周側と電極22〜25の小径部の一部の外周側との間に、それぞれ、隙間22in〜25inが形成される。
電極カバー22P〜25Pの各々の、隙間22in〜25inに対応する部分には、直径方向に隔たって(中心角180度隔たって)2つずつの放電開口22HL,HR〜25HL、HRが、それぞれ、形成される。また、放電開口22HL,HR〜25HL,HRは、それぞれ、X方向の同じ位置に設けられる。そのため、放電開口22HL,HR〜25HL,HRの互いに対応する点(例えば中心点)が、同一直線上(Y方向に延びた直線LY上)に位置することになる。
【0029】
電極22〜25は、電圧が印加された場合に、それの全体において、放電を起こし得るものであるが、外周部が電極カバー22P〜25Pによって覆われている部分においては、覆われていない部分(放電開口に対応する部分)に比較して、放電が起き難い。そのため、電極22〜25に電圧が印加された場合には、電極22〜25の放電開口22HL,HR〜25HL,HRに対応する部分において放電が起きる。その意味において、電極22〜25の各々の放電開口22HL,HR〜25HL,HRに対応する部分が放電電極部22S〜25Sである。本実施例においては、放電電極部22S〜25Sの互いに対応する点(例えば、放電開口の中心に対応する点)が、Y方向に延びる同一直線上に位置することになる。
【0030】
仮に、電極カバー22P〜25Pと電極22〜25との間に隙間22in〜25inが存在する状態において、放電開口が設けられない場合には、隣接する電極間において、電極カバー22P〜25Pを通過して放電が起きるが、その場合には、電極カバー22P〜25Pが劣化し、寿命が短くなる。それに対して、放電開口22HL,HR〜25HL,HRを設ければ、隣接する放電電極部22S〜25Sの間で放電が起きるため、電極カバーの劣化を抑制し、寿命を長くすることが可能となる。
また、電極カバー22P〜25Pを通過して放電が行われる場合には、放電が開始されるのに高い電圧が必要となる。それに対して、放電開口22HL,HR〜25HL,HRを設ければ、放電が生じるのに必要な電圧が低くなるという利点もある。
【0031】
さらに、本実施例においては、放電電極部22S〜25Sの直径D(Y方向の幅)が、互いに隣接する電極間の距離L(Y方向の距離)より小さい(D<L)。そのため、ラジカル供給装置全体の小形化を図りつつ放電空間のY方向の寸法を大きくすることができる。
直径Dの距離Lに対する比率D/Lは0.7以下、0.5以下、0.3以下、0.1以下、0.05以下とすることもできる。
【0032】
<保護ガスの供給>
放電電極部22S〜25Sの表面に、保護ガスが供給される。本実施例においては、保護ガスとしてアルゴンガスが用いられるが、保護ガスは、その他、ヘリウム,ネオン等の不活性ガス、窒素ガス、フッ素ガス、酸素の含有率が非常に低いガス(含有率が設定値以下のガス)、あるいは、これらの混合ガスを用いることができる。
図3に示すように、電極カバー22Pの、放電開口22HL、HRとX方向に隔たった位置(放電開口22HL,HRの上方)に、1つの保護ガス流入口22Qが形成され、保護ガス通路34に接続される。詳細には、直径方向に貫通して開口が形成されるが、一方の開口は本体18によって閉塞され、他方の開口が保護ガス流入口22Qとされる。また、保護ガス流入口22Qは、放電開口22HL,HRの各々と中心角が90°ずれた(位相がずれた)位置に設けられる。
図6,7に示すように、電極カバー23P〜25Pの各々についても同様に、それぞれ、保護ガス流入口23Q〜25Qが形成される。
【0033】
保護ガス通路34は、図3,6,7に示すように、Y方向に延びた主通路34Aと、主通路34Aから分岐させられた4つの個別通路(電極別通路、電極カバー別通路と称することができる)34B,C,D,Eとを含む。個別通路34B,C,D,Eは、X方向に延びた部分とZ方向に延びた部分とを有し、それぞれ、電極カバー22P〜25Pの保護ガス流入口22Q〜25Qに接続される。
保護ガス通路34の主通路34Aは、図2に示す保護ガス供給口36に接続される。また、保護ガス供給口36は、図1に示すように、流量等調整部38を介して保護ガス源(例えば、ガスボンベであり、本実施例においては、アルゴンガスボンベ)40に接続される。アルゴンガスボンベ40から流量等調整部38、保護ガス供給口36を経てラジカル供給装置2の本体18の内部に供給された保護ガスは、主通路34A,個別通路34B,C,D、Eを経て、電極カバー22P〜25Pの内側の隙間22in〜25inに、それぞれ供給される。
【0034】
前述のように、処理ガスは酸素を含むため、電極が処理ガスに接触した状態(酸素に接触した状態)で、高電圧が印加されると、電極が酸化し、磨耗する等の問題がある。それに対して、放電電極部22S〜25Sの回りに保護ガスが供給されれば、放電電極部22S〜25Sに処理ガスが接触し難くすることができ、放電電極部22S〜25Sの回りのガスを処理ガスから分離することができるのであり、放電電極部22Sの酸化を良好に抑制することができる。それにより、放電電極部22S〜25Sの磨耗を抑制し、寿命を長くすることができる。
すなわち、保護ガスが、電極カバー22P〜25Pの各々において、保護ガス流入口22Q〜25Qから流入させられ、放電開口22HR、23HL,HR,24HL,HR,25HLから放出されるのに対して、処理ガスは、後述するように、放電空間をX方向に流れる(図2の上方から下方に向かって流れる)。そのため、図7に示すように、処理ガスが、放電開口22HR、23HL,HR,24HL,HR,25HLから電極カバー22P〜25Pの内側に入り難くなる。その結果、放電電極部22S〜25Sの周辺のガスを処理ガスから良好に分離することが可能となる。このように、放電開口は、保護ガス流出口でもある。
なお、4つの電極カバー22P〜25Pのうちの両端に位置する電極カバー22P、25Pに、それぞれ、設けられた放電開口22HL,HR、25HL,HRのうち、電極に隣接しない側の放電開口22HL,25HRは本体18によって塞がれている。そのため、電極カバー22Pにおいて、保護ガス流入口22Qから供給された保護ガスは、放電開口22HRから流出し、電極カバー25Pにおいて、保護ガス流入口25Qから供給された保護ガスは、放電開口25HLから流出する。
【0035】
また、電極カバー22P〜25Pは、電極22〜25に対応して、それぞれ、別個独立に設けられ、保護ガスが、電極カバー22P〜25Pの各々に、それぞれ、個別に供給される。その結果、複数の電極カバーを連結して、共通に保護ガスが供給される場合に比較して、放電電極22S〜25Sの各々に、良好に保護ガスを供給することができる。
さらに、電極カバー22P〜25Pの各々において、保護ガス流入口22Q〜25Qと放電開口22HL,HR〜25HL,HRとの位相が90°ずれている。そのため、保護ガス流入口22Q〜25Qから流入させられた保護ガスを放電電極部22S〜25Sの外周に沿って、良好に流すことができる。すなわち、放電電極部22S〜25Sの表面全体に保護ガスを供給することが可能となり、より一層、処理ガスが接触しないようにすることが可能となる。
また、電極カバー22P〜25Pの各々において、隙間22in〜25inが長手方向の全体に設けられているのではなく、放電開口付近の限られた部分に設けられる。そのため、保護ガスを、局部的に(必要な部分に)、すなわち、放電電極部22S〜25Sの周辺に効果的に供給することができる。さらに、供給される保護ガスの量を少なくすることができ、放電電極部22S〜25Sの酸化を良好に抑制することができる。
【0036】
本実施例においては、保護ガス流入口22Q〜25Q、保護ガス供給通路34、保護ガス供給口36等により保護ガス供給部が構成される。保護ガス供給部はカバー内保護ガス供給部、電極毎保護ガス供給部でもある。
また、保護ガス供給部、電極カバー22P〜25P等により電極保護装置が構成される。電極保護装置は、処理ガス遮断装置、処理ガス接触防止装置、電極周辺ガス・処理ガス分離装置、電極酸化抑制装置等と称することもできる。
なお、流量調整部38,アルゴンガスボンベ40も保護ガス供給部、すなわち、ラジカル供給装置2の構成要素であると考えることもできる。
【0037】
<処理ガスの供給>
処理ガスが、放電空間毎に供給される。
放電空間は、図4,6に示すように、互いに隣接する放電電極部の間に設けられる空間であり、放電(気体の絶縁破壊)を生じさせるための空間である。本実施例においては、本体18と電極カバー22P〜25Pとによって囲まれた空間であり、互いに独立した3つの空間42B〜Dが設けられる。なお、放電空間42B〜Dには、それぞれ、電極カバー22P〜25Pに形成された放電開口が対向することになる。
詳細には、放電空間42Bは、放電電極部22S,23Sの間に位置し、電極カバー22P,23Pおよび本体18によって囲まれて形成される。放電空間42Bには、放電開口22HRと、放電開口23HLが対向する。放電空間42Cは、電極23,24の間に位置し、電極カバー23P、24Pおよび本体18によって形成され、放電空間42Dは、電極24,25の間に位置し、電極カバー24P、25Pおよび本体18によって囲まれて形成される。
【0038】
処理ガス供給口20には、流量等調整部44を介して、保護ガス源(アルゴンガスボンベ)40,酸素ガス源(酸素ガスボンベ)46が接続され、処理ガス供給口20に接続された処理ガス通路48は、Y方向に延びる主通路48A、主通路48Aから分岐させられた3つの放電空間別通路(個別通路)48B,C,D等を含む。
放電空間別通路48Bは、図4に示すように、X方向に延びた上流側通路49B、拡散部50B、中流通路52B、空間54B、下流側通路56Bを含み、下流側通路56Bが放電空間42Bに対向する開口56Kを有する。放電空間別通路48C,Dについても同様であるため、説明を省略する。
上流側通路49Bは、X方向に延びたものであり、YZ方向に広がる拡散部50Bに接続される。拡散部50Bにおいて、上流側通路48Bが、Y方向のほぼ中央に接続され、その上流側通路48とZ方向に隔たった位置に、X方向に延びる中流通路52Bが接続される。中流通路52Bの開口52Kは、上流通路48Bの開口より開口面積が大きなものであり、Y方向に長い長穴形状とされている。開口52Kは、Y方向に延びた空間54Bに対向する。空間54Bの下流側には、X方向に延びた下流側通路56Bが、複数個(本実施例においては5個)形成される。下流側通路56Bは、放電空間42BのY方向において等間隔で設けられる。
【0039】
上流側通路49BからX方向に供給された処理ガスが、拡散部50BによってYZ方向に拡散され、Y方向に延びた開口52Kから空間54Bに供給される。そのため、空間54Bの全体に処理ガスを供給することができる。また、空間54Bと放電空間42BとのY方向の寸法はほぼ同じとされ、下流側通路56Bは、空間54のY方向において、全体に、均等に配設される。そのため、X方向に、放電空間42B全体に均等に、処理ガスを供給することができる。
また、図4に示すように、放電空間42BのZ方向の寸法dZが、放電開口22HL,HRの直径Dh(図7参照)とほぼ同じであり(dZ=Dh)、下流側通路56Bの開口56Kの直径Diが、放電空間42BのZ方向の長さdZとほぼ同じである(dZ=Di)。そのため、処理ガスを効果的に放電空間42Bの全体に供給することができ、プラズマを効果的に発生させることができ、ラジカルを効果的に生成することができる。
なお、本実施例において、放電空間42Bは、概して、直方体状の空間であるが、Y方向の寸法dY(図5参照)がZ方向の寸法dZに対して大きく(dZ<dY)されている。このように、放電空間42BのY方向の寸法が大きくされるのであり、ラジカル供給装置2の小形化を図りつつ、Y方向の広い領域で表面等処理を行うことが可能となる。また、dY/dZの値は、1.5以上、2.0以上、2.5以上、3.0以上とすることができる。
【0040】
電極22〜25に電圧が印加されると、電極22,23の間(放電開口22HR,23HLを経て)、電極23,24の間(放電開口23HR,24HLを経て)、電極24,25の間(放電開口24HR,25HLを経て)で放電(プラズマ放電と称することもある)が起きるのであり、放電空間42B,C,Dにおいて絶縁破壊が起き、プラズマが生成される(図のR23,R34,R45は、絶縁破壊が起きた領域を概念的に示すものであり、以下、放電領域と略称する)。
また、処理ガスが、放電空間42B,C,DにX方向に供給される。
すなわち、処理ガスは、放電領域R23,R34,R45を通過するように供給されるのであり、放電領域R23,R34,R45において処理ガス中の酸素ガスが励起させられ、ラジカルが生成される。
【0041】
本実施例において、処理ガス供給通路48,処理ガス供給口20等により処理ガス供給部が構成される。処理ガス供給部は放電空間毎供給部でもある。また、流量調整部44,アルゴンガスボンベ40,酸素ガスボンベ44等も処理ガス供給部、すなわち、ラジカル供給装置2の構成要素であると考えることもできる。さらに、本実施例においては、処理ガス供給部と保護ガス供給部との両方がそれぞれ設けられることになる。
【0042】
<ラジカルの出力>
放電空間42B,C,Dとラジカル出力口16との間に、反応種流出通路としてのラジカル流出通路78が設けられる。
ラジカル流出通路78は、図4〜6,8〜10に示すように、放電空間42B,C,Dに対応してそれぞれ設けられた3つの個別通路群80B、C、Dと、個別通路群80B,C,Dにそれぞれ対応して設けられた拡散部82B,C,Dと、拡散部82B,C,Dに共通に設けられたスリット通路86等を含み、スリット通路86の大気への開口がラジカル出力口16とされる。
個別通路群80B(ここでは、代表して、個別通路群80Bについて説明する。個別通路群80C、Dについても同様であるため、説明を省略する)は、放電空間42Bに対向する開口81Kを有する複数個(本実施例においては8個)の個別通路81Bを含む。
個別通路81Bは、それぞれ、折れ曲がった形状(湾曲形状)を成したものであり、(a)放電空間42Bの下方においてX方向に延びたX部分81BXと、(b)そのX部分81BXに接続され、Z方向に延びたZ部分81BZと、(c)そのZ部分81BZの途中に接続されたX方向に延びたX部分81BXXとを含み、X部分81BXXが拡散部82Bに接続される。
【0043】
{拡散部について}
拡散部82Bは、図8に示すように、YZ方向に広がった形状を成したものであり、図9等に示すように、拡散部82Bにおいて、スリット通路86と複数のX部分81BXXとがZ方向に離間して接続される。
また、拡散部82Bは、内部空間の形状が平面視において台形状となっており、スリット通路86が接続された側が長辺とされ、複数の個別通路81Bが接続された側が短辺とされている。短辺側には、全体に渡って、複数の個別通路81Bが、Y方向に間隔を隔てて接続されている。拡散部82Bの台形の斜辺を構成する内壁が、個別通路群80Bからスリット通路86に向かってY方向に広がる方向に傾斜している。
電極22〜25が配設された部分には個別通路81B〜Dが設けられていない。一方、スリット通路86は、Y方向に連続して延びたものであり、スリット状の開口16を有する。そのため、スリット通路86の全体から、ラジカル等を含むガスを均等に出力させるためには、拡散部82B〜DのY方向の個別通路81B〜Dが接続されていない部分にもラジカル等を含むガスを供給する必要がある。そこで、拡散部82B〜Dを、スリット通路側において、電極22〜25に対応する部分まで伸びた形状とすれば、Y方向の個別通路81B〜Dが設けられていない部分においてもラジカル等を含むガスを供給することができる。
また、拡散部82B,C,Dが、各々のスリット通路側において、Y方向に互いに連結されている(Y方に互いに連通する連通部を有する)。そのことによっても、スリット通路86から、Y方向の全体において、ラジカル等を含むガスを均等に出力することが可能となる。
【0044】
なお、拡散部82B、C、Dの平面視における形状(内壁によって形成される空間の形状)を台形状とすることは不可欠ではなく、概して、長方形状とすることもできる。拡散部の空間の形状を長方形状を成したものとしても、同様の効果を奏することができる。
【0045】
拡散部82Bの内部空間のX方向の長さ(厚み)は、個別通路81Bの内径より小さい。また、図9に示すように、X部分81BXXの拡散部82Bに対する接続部82BZXにおいては、内径が漸増させられている。
仮に、接続部においてX部分81BXXの内径が一定である場合には、X部分81BXXから拡散部82Bにラジカル等を含むガスが供給される際に、流速が変化し、乱流が生じる等の問題がある。
それに対して、接続部82BZXの形状が、内径が漸増させられる形状とされている場合には、拡散部82Bにおいて、X部分81BXXから供給されたラジカル等を含むガスの流速の変化を抑制することができ、乱流を生じ難くすることができ、ラジカル等を含むガスを拡散部82Bの内部において良好に拡散させることができる。
【0046】
{スリットについて}
ラジカル流出通路78のラジカル出力口16がスリット状とされる。すなわち、拡散部82Bにスリット通路86が接続される。そのため、ワークWの被処理面WFのY方向の連続した領域において、均一に表面等処理を行うことができる。
【0047】
{ポケットについて}
個別通路81BのX方向に延びた部分に、さらに、下方に延びた(X方向に延びた)凹部(以下、ポケットと称する)88Bが設けられる。本実施例においては、拡散部82Bの底部のX部分81BXXの接続部に対応する位置に、それぞれ、ポケット88Bが合計8個設けられるのである。
ポケット88Bは、後述するように、ラジカル流出通路78を流れるダストを収容するものである。ダストを含むガスは、ラジカル等を含むガスより比重が大きいため、下方へ移動し易い。そのため、ダスト収容部としてのポケットを、下方に突出する形状とすることは有効である。
なお、ダストは、高温の状態では気体の状態にあるが、その後、温度が低下すると、固体の状態に戻ると考えられる。いずれにしても、ダストを含むガス、あるいは、ダストは、比重が大きいため、ラジカル流出通路78において下方へ移動させられることになる。
また、ポケット88Bは、下方に延びる通路(本実施例においては、X部分81BXX)に接続された状態で、さらに、下方に延びて設けられる。そのため、ラジカル等を含むガスが下方に向かって流れる勢いで、ダストをポケット88Bに確実に収容することができる。
ポケット88Bを設けることにより、スリット通路86のラジカル出力口16からダストが出力され難くすることができ、ダストがワークWに供給され難くすることができる。
【0048】
なお、ポケットは、X方向に延びた部分に限らず、Z方向に延びた部分に設けることもできる等個別通路のいずれの部分に設けてもよい。また、2つ以上設けることもできる。
【0049】
{アース板について}
ラジカル流出通路78にはアース板90が設けられる。本実施例においては、アース板90が、図8に示すように、すべての個別通路81B〜DのZ部分81BZ〜81DZの先端を閉塞する状態で設けられる。アース板90は、避雷針としての機能を果たすものであり、ワークWとの間に放電が生じ難くする機能を有する。また、ワークWに帯電した物体(ガス)が供給され難く、あるいは、供給されないようにする機能も有する。
本実施例において、図4,9(a)に示すように、個別通路81Bに関して、X部分81BX、Z部分81BZのX部分81BXXの接続部Mより放電空間側の部分81BZO、X部分81BXX、拡散部82B、スリット通路86等により主通路が構成され、Z方向部分81BZの接続部Mより放電空間とは反対側の部分81BZPにより分岐通路が構成される。分岐通路81BZPと主通路の部分81BZOとは同一直線上に位置するため、アース板90は、主通路の一部81BZOと同一直線状に延びた分岐通路81BZPを閉塞する状態で設けられることになる。
なお、主通路、分岐通路は、個別通路81B〜Dの個々に関して、規定されるものと考えたり、すべての個別通路81B〜Dの上述に対応する部分を含むものと考えたりすることできる。
【0050】
放電は、互いに隣接する一対の電極(例えば、電極22,23の間)の間で起き、放電によりプラズマが発生させられる。一方、この放電が生じた状態においては、電子が移動し易いため、プラズマはガス状態になっていると考えられる。そして、このガス状になっているプラズマ(以下、プラズマを含むガスと称する。プラズマを含むガスには、ラジカル、正イオン、負イオン、電子等が含まれる)が個別通路81Bに入ると、ワークWとの間で放電が起きるおそれがある。
また、電子は、直線的に進み易い特性を有している。
さらに、X部分81BXXは、Z部分81BZに対して折れ曲がっており、かつ、Z部分81BZの先端はアース板90によって閉塞されている。したがって、プラズマ中の電子はアース板90に向かって進み、アース板90との間で放電が生じるのであり、ワークWとの間で放電が起き難くすることができる。
一方、X部分81BXXは開放されている(閉塞されていない)ため、ガスはX部分81BXXに向かって流れ易い。その結果、放電をアース板90との間で生じさせ、ワークWとの間で生じ難くすることができ、かつ、ラジカル等を含むガスをワークWに供給することができる。
【0051】
また、プラズマを含むガスが正、あるいは負に帯電している場合には、アース板90と接触することにより、これらの間で電子のやりとりが行われ、荷電粒子とアース板90とが同じ電位、すなわち、電気的に中性となる。
その結果、ワークWに帯電したガスが供給され難くすることができ、ワークWが帯電させられ難くすることができる。
【0052】
仮に、アース板90が、主通路の途中に、主通路を流れるプラズマを含むガスに接触可能な状態で設けられた場合には、アース板90が、プラズマ中の荷電粒子と接触し、アース板90との間で反応が起き、アース板90の寿命が短くなる等の問題がある。
それに対して、本実施例においては、アース板90が主通路に接続された分岐通路に、その分岐通路を閉塞する状態で設けられ(分岐通路にラジカルが流れ難くされ)るため、電子の進行方向と、ラジカル等を含むガスの流れ方向とを分けることができ、これらを分離することができるのであり、アース板90の寿命が短くなることを回避し、表面等処理を効率よく行うことが可能となる。換言すれば、アース板90の損傷を小さくし、表面等処理を効果的に行うことができる。
【0053】
仮に、アース板90をワークWに近い位置に配設すると、アース板90からワークWに向かって放電され易くなる。一方、アース板90とワークWとの間の放電を防止するためには、アース板90とラジカル出力口16,すなわち、アース板90の下面14からの距離(最短距離)LAを十分に大きくすればよいが、距離LAを大きくして、ラジカル流出通路78の経路を長くすると、ラジカルを効果的にワークWの被処理面WFに供給することが困難となる。
そこで、本実施例においては、アース板90とワークWとの間で放電が生じない距離LAが、予め、実験、シミュレーション等によって取得され、その距離LAで決まる位置にアース板90が設けられる。実験、シミュレーションは、ラジカル出力口16とワークWとの間の距離を非常に小さくした状態で行われる。また、アース板90とワークWとの間の放電の起き易さは、主としてワークWの材質(導電性)等で決まる。
【0054】
{個別通路の放電空間に対向する開口について}
放電空間42Bに対向する個別通路81Bの各々の開口81Kの面積Soは、処理ガス供給通路48の下流側通路56Bの開口56Kの面積Siより小さくされており(So<Si)、開口81Kが、放電空間42BのZ方向の中間部に位置して設けられる。その結果、放電空間42Bにおいて生成されたラジカル等を良好に集めることができる。
また、個別通路81Bの開口81Kの面積Soが放電空間42Bに対して小さくされている。換言すれば、開口81Kの直径が小さくされているのであり、本実施例においては、2mm以下とされている。
仮に、開口81KをY方向に長いものとすると、ワークWとの間で放電が生じ易くなる。
それに対して、開口81Kの直径を2mm以下とすれば、たとえ、異常放電が生じても、ワークWとの間の放電が起き難くすることができる。直径は、1.8mm以下、2.5mm以下、3.0mm以下、3.5mm以下とすることもできる。
【0055】
さらに、8個の個別通路81Bの開口81Kの面積の総和ΣSoは、5個の下流側通路56Bの開口56Kの面積Siの総和ΣSiより小さくされている(ΣSi>ΣSo)。一方、3つの放電空間42B,C,Dに供給される処理ガスの流量Qinと、4つの電極カバー22P〜25Pに供給される保護ガスの流量Qhinとの和(Qin+Qhin)と、ラジカル流出通路78,後述する保護ガス排気通路から流出させられるラジカル等を含むガス、保護ガス等の流量の和Qoutとは、原則として、等しい{(Qin+Qhin)=Qout}。その結果、放電空間に供給される処理ガスの流速vinより、ラジカル流出通路78のラジカル出力口16から流出させられるラジカル等を含むガスの流速Voutの方が大きくなるのであり(Vin<Vout)、ラジカル等を含むガスをワークWに早い流速で照射することが可能となる。
【0056】
ラジカル出力口16は、スリット状を成したものとすることが望ましい。
仮に、放電空間42Bの下流側のラジカル流出通路78の全体を、幅方向に長い断面を有する通路とすることが考えられる。
しかし、その場合には、上述のように、ワークWとの間で放電が起き易くなる。
それに対して、放電空間42Bに対向する開口81Kを小径の開口とし、ワークWの被処理面WFに対向する開口16をスリット状とすれば、これらを両方の目的を果たすことができる。
一方、複数の個別通路81Bを、直接、スリット通路に接続しても、スリット状の開口から均等にラジカルを出力させることは困難である。
それに対して、複数の個別通路81Bとスリット通路86との間に拡散部82Bを設ければ、ラジカル流出通路78に放電が入り難くしつつ、スリット状のラジカル出力口16からラジカルを均等にワークWに供給することが可能となる。
なお、開口81Kの直径を小さくすることで、個別通路81Bにダストが入り難くできるという効果もある。
【0057】
{ラジカル流出通路の湾曲について}
本実施例においては、ラジカル流出通路78が、途中で湾曲している。
仮に、ラジカル流出通路78が一直線状に延びたもの、すなわち、放電空間42Bに対向する開口81Kからラジカル出力口16まで真っ直ぐに延びたものである場合には、ラジカル流出通路78にプラズマを含むガスが流入させられると、ワークWとの間で放電が起き易くなり、望ましくない。また、放電に起因して発生させられた紫外線(エネルギを受けて励起した原子が、基底状態に戻す際に発光すると推測される)がワークWの被処理面WFに照射されることがあり、ワークWに損傷を与える可能性がある。
それに対して、ラジカル流出通路78を湾曲させれば、ワークWとの間での放電が起き難くなり、紫外線が照射され難くなるという効果が得られる。
【0058】
<保護ガス排出通路>
放電空間42B,C,Dの下流側には、それぞれ、保護ガス排気通路92B,C,Dが、2個ずつ設けられる。
図9(b)に示すように、保護ガス排気通路92B(保護ガス排気通路92C,Dについても同様であるため、説明を省略する)は、放電空間42Bに対向する開口93Kを有し、X方向に延びるX部分92BXとZ方向に延びるZ部分92BZとを含む。これらX部分92BX、Z部分92BZは、それぞれ、個別通路81BのX部分81BX、Z部分81BZと、隣接して、かつ、平行な姿勢で設けられる。
保護ガス排気通路92Bの開口93Kは、電極カバー22P、23Pの放電開口22HR、23HLに隣接して位置する。また、保護ガス排気通路92BのZ部分92BZの先端は、アース板90を貫通して排気口94Kとされている。排気口94Kは、ラジカル出力口16とは離れた位置に設けられる。本実施例においては、ラジカル供給装置本体18の異なる面、すなわち、ラジカル出力口16が下面14に設けられるのに対して、排気口94Kは正面95に設けられる。その結果、排気口94Kから排気される保護ガスがラジカル出力口16から出力されるラジカルと混ざり難くすることができる。
なお、本実施例においては、ラジカル供給装置2の本体18の外側に図示しない本体カバーが取り付けられるため、排気口94Kから排気された保護ガス(ダストを含む)がワークWの被処理面WFに供給されることが防止される。
【0059】
放電空間42Bの下流側には、個別通路群80Bに属する8個の個別通路81Bと、2個の保護ガス排気通路92Bとの合計10個の個別流出側通路が、Y方向に一列に並んで形成される。これら10個の通路のうち、両端に位置する通路、すなわち、放電開口22HR、23HLに最も近くに位置する開口93Kを有する通路が保護ガス排気通路92Bであり、放電空間42BのY方向の中間部分に位置する開口81Kを有する8個の通路がラジカル流出通路78を構成する個別通路81Bである。
前述のように、電極カバー22P〜25Pの内側に流入させられた保護ガスは、放電開口22HR,23HL,HR,24HL,HR,25HLから流出させられるが、保護ガスとともに、ダストも流出させられる。
しかし、ダストが、ラジカルとともに、ワークWの被処理面WFに供給されることは望ましくない。
一方、ダスト、あるいは、ダストを含むガスの比重は、ラジカル等を含むガスより大きいため、遠くには飛散し難いと考えられる。
そこで、放電開口22HR,23HL,HR,24HL,HR,25HLに最も近い部分に位置する開口を有する通路を、保護ガス排気通路92B〜Dとし、保護ガス排気通路92B〜Dを流れるガス(ダストを含む)が、ラジカル出力口16から出力されないようにされている。この意味において、保護ガス排気通路92B〜Dをダミー通路と称することができる。
なお、放電空間42B,C,Dは、前述のように、隣接する電極22〜25の間に設けられる。そのため、電極22の電極23とは反対側、電極25の電極24とは反対側に、放電空間が形成されることはない。本実施例においては、放電開口22HL,25HRは本体18によって塞がれている。そのため、放電開口22HL,25HRに隣接する位置には保護ガス排出通路が設けられていないのである。
また、個別流出通路81B、92Bの各々の開口81K,93Kを放電空間側開口と称することができる。
【0060】
仮に、保護ガスとラジカル等を含むガスとが合流すると、ワークWに供給されるラジカルの濃度(ラジカル出力口16から出力されるガスのうちのラジカルの濃度)が薄くなり、効率よく表面等処理を行うことができないという問題がある。
それに対して、保護ガスが排気され、ラジカル流出通路78を流れるラジカル等を含むガスと合流され難くすれば、ラジカルの濃度の低下を抑制し、表面等処理の効率を向上させることができる。
なお、本実施例において、保護ガスすべてが排気されるとは限らないが、少なくとも一部は排気されるため、排気されない場合に比較して、ラジカルの濃度の低下を抑制することができる。
ただし、保護ガスは、処理ガスのキャリアガスとして作用するものであるため、ラジカル等を含むガスと保護ガスとが合流しても差し支えない。
【0061】
また、排気口94Kがアース板90に設けられるため、保護ガス排気通路92B〜Dの内部を進行する放電が、アース板90との間で起き、ワークWとの間で起き難くすることができる。
【0062】
<制御装置>
本表面等処理装置には、コンピュータを主体とする制御装置100が設けられる。制御装置100には、流量調整部38,44、電圧調整装置30が接続され、記憶されたプログラムに従って、電極22〜25に印加される電圧が目標電圧に制御され、保護ガス、処理ガスの流量が、それぞれ、目標値に制御される。
保護ガス、処理ガスは、少なくとも放電中に供給されるのであり、例えば、電圧の印加に伴って供給が開始されるようにすることができる。
【0063】
本実施例の表面等処理装置においては、電極間の距離が20mmとされている。そして、実効電圧12KVの交流電圧が印加される。互いに隣接する電極22〜25の間には、放電(プラズマ放電と称することもできる)が起き、放電領域R23,R34,R45が形成される。
処理ガスは毎分1.8リットルで供給され、保護ガスは毎分0.6リットルで供給される。処理ガスは、酸素ガスとアルゴンガスとを含むものであるが、酸素ガスの濃度は、約1%である。
処理ガスが放電空間42B〜Dに供給され、プラズマ内に生成されたラジカル等がラジカル流出通路78を経てスリット状のラジカル出力口16から、ワークWの被処理面WFに供給される。それによって、ワークWの被処理面WFに処理が施される。
また、放電電極部22S〜25Sの周りに保護ガスが供給されるため、放電電極部22S〜25Sの周辺の雰囲気を処理ガスから分離することができる。その結果、放電電極部22S〜25Sの酸化を抑制し、寿命を長くすることができる。なお、処理ガスの流量が保護ガスの流量より大きくされているため、より一層、放電電極部22S〜25Sに処理ガスが接触し難くすることが可能となる。
さらに、アース板90がラジカル流出通路78に設けられるため、ワークWとの間で放電が起き難くすることができる。また、ワークWに帯電したガスが供給され難くすることができる。
特に、ワークWが電子部品(基板)である場合には、帯電したガスが供給されることによってワークWが帯電させられることは望ましくない。それに対して、本表面等処理装置においては、帯電したガスが供給されないようにされるため、ワークWが電子部品であっても、ワークWの帯電を防止することができる。
【0064】
なお、処理ガス、保護ガスの種類は、上記実施例における場合のガスに限定されない。ワークWの材質、処理目的等によって適宜選択することができる。反応ガスとして水素ガスを使用することができる。また、保護ガスとしては、窒素ガス、フッ素ガス等を使用することもでき、処理ガスのキャリアガスであるアルゴンとすることは不可欠ではない。保護ガスは、処理ガスに含まれない種類のガスであってもよいのである。
また、保護ガス排気通路92B〜Dの開口93Kの面積Saを、ラジカル流出通路78の個別通路81B〜Dの開口81Kの面積Soより大きくすることができる(Sa>So)。それにより、保護ガス排気通路92B〜Dにより、保護ガスおよびダストをラジカル供給装置2の外部に排出することが可能となる。
【実施例2】
【0065】
上記実施例において、電極22〜25の放電電極部22S〜25Sは、軸方向(X方向)において直径が一定の筒状を成したものであったが、図11に示すように、半径方向に突出した突部を有する形状を成したものとすることができる。筒状とする場合より、非平等電界を起こし易くすることができ、放電が起き易くすることができる。また、表面等処理装置の他の部分については上記実施例における場合と同様であるため、説明を省略する。
例えば、図11(a)に示すように、放電電極部22SA(電極23SA,24SA,25SAの形状も同じ)は、X方向に半径が漸増した後漸減する形状、すなわち、中間部において半径が最も大きくなる円盤形状を成したものとすることができる。
また、図11(b)に示すように、放電電極部22SB(電極23SB,24SB,25SBの形状も同じ。)は、半径が漸増して、最大値において一定にされ、その後、漸減する形状、すなわち、半径が最も大きい部分が軸方向に延びた円盤状を成したものとすることができる。
さらに、図11(c)に示すように、放電電極部22SC(23SC、24SC、25SCについても同じ)は、半径方向に突出した棒状の突部を含む形状を成したものとすることができる。
【0066】
また、図11(d)に示すように、電極22*〜25*を、概して平板状を成したものとして、放電電極部22SD、23SD、24SD、25SDを、それぞれ、平板の端部、一部を切り欠いて、折り曲げた形状を成したものとすることができる。
放電電極部22SD〜25SDは、それぞれ、折り曲げの向きが互いに逆である一対の爪部22SD1,22SD2〜25SD1,25SD2を含む。そして、図11(d)に示すように、放電電極部22SDの一方の爪部22SD1と放電電極部23SDの一方の爪部23SD1とが対向して設けられ、放電電極部23SDの他方の爪部23SD2と放電電極部24SDの他方の爪部24SD2とが対向して設けられ、放電電極部24SDの一方の爪部24SD1と放電電極部25SDの一方の爪部25SD1とが対向して設けられる。
また、電極22*〜25*の各々において、一対の爪部22SD1,22SD2〜25SD1,25SD2は、互いにX方向に隔たった位置に形成される。したがって、図11(d)に示すように、放電電極部が2列に並んで設けられるのであり、爪部22SD1,23SD1,24SD1,25SD1が直線LY1上に並んで位置し、爪部23SD2,24SD2が直線LY2上に並んで位置する状態で、配設される。本実施例においては、直線LY1上において、爪部22SD1,23SD1の間、爪部24SD1,25SD1の間で、放電が起き、直線LY2上において、爪部23SD2,24SD2の間で放電が起きる。
【実施例3】
【0067】
なお、ラジカル流出通路の形状、アース板の取り付け位置等は、上記実施例におけるそれに限らない。
その場合の一例を図12に示す。なお、表面等処理装置の他の部分については上記実施例における場合と同じであるため、説明を省略する。
個別通路120Bは(個別通路120C,Dについても同様であるため、図示および説明を省略する)は、(a)放電空間42Bに対向する開口122Kを有し、X方向に延びたX部分120BXと、(b)X部分120BXの途中に接続され、Z方向に延びたZ部分120BZと、(c)Z部分120BZに接続され、X方向に延びたX部分120BXXとを含み、X部分120BXXが拡散部82Bに接続される。
また、X部分120BXの先端に、個別通路120Bを閉塞するアース板124が設けられる。電子は、直線的に進行し易いため、アース板124を直線的に延びるX部分120BXに設ければ、アース板124との間で放電を生じさせることが可能となる。さらに、個別通路120Bを流れるガスが帯電している場合には、アース板124との間で電子の授受が行われ、アース板124と同じ電位となる。その結果、ワークWに帯電したガスが供給され難くすることができる。
なお、X部分120BXのZ部分120BZとの接続部Nより放電空間側の部分120BXOが主通路の構成要素であり、X部分120BXの接続部Nより放電空間42Bとは反対側の部分120BXPが分岐通路に対応し、分岐通路120BXPを閉塞する状態でアース板124が取り付けられる。
【実施例4】
【0068】
本実施例においては、図13(a)に示すように、ラジカル流出通路が個別通路群130B〜Dから構成され、拡散部を含まない。また、ラジカル出力口は、スリット状とされていない。
個別通路群130Bに属する個別通路131B(個別通路群130C、Dを構成する個別通路131C,Dについても同様であるため、図示および説明を省略する)は、X方向に直線状に延びたものであり、一端が放電空間42Bに対向する開口132Kとされ、他端が本体12から外部に対向して設けられた開口134Kとされ、複数の開口134Kにより、ラジカル出力口が構成される。
また、個別通路131Bの途中には、アース板136が設けられる。アース板136は、個別通路131Bの内部を通るプラズマを含むガスに接触可能な状態で設けられる。その結果、放電をアース板136との間で生じさせることが可能となり、ワークWとの間で起き難くすることができる。また、ワークWに帯電したガスが供給され難くすることができる。
なお、実施例4においては、個別通路130BがX方向に直線的に延びたものであったが、アース板136の取り付け位置より下流側の部分において個別通路131Bを湾曲させたり、拡散部を設けたりすることも可能である。
【0069】
その場合の一例を図13(b)に示す。本実施例においては、ラジカル流出通路が、個別通路群140B〜Dと、拡散部82B,スリット通路86とを含むが、個別通路群140Bに属する個別通路141BXがX方向に延びたものである(個別通路群140C,Dに属する個別通路141CX,141DXについても同様であるが、図示および説明を省略する)。個別通路141BXの途中にZ方向に延びた分岐通路141BZが接続され、分岐通路141BZを塞ぐ状態でアース板142が設けられる。
【実施例5】
【0070】
本実施例においては、ラジカル流出通路において、ポケットの位置が上記実施例における場合と異なる。その場合の一例を図14に示す。その他の部分については上記実施例における場合と同様であるため、説明を省略する。
図14(a)に示すように、ラジカル流出通路の個別通路群の構成要素である個別通路150Bは、(i)放電空間42Bに対向する開口151Kを有するX部分150BX、(ii)Z方向に延びるZ部分150BZ、(iii)Z部分150BZの途中に接続されたX部分150BXX等を含む。そして、X部分150BXのZ部分150BZの接続部Hに、下方に延びるポケット154Bが、X部分150BXに対応して、それぞれ、設けられる。ポケット154Bは、X部分150BXの延長部分であると考えることもできる。
このように、ポケット154Bは、個別通路の途中であれば、どこに設けても良い。また、個別通路に限らず、ラジカル流出通路の途中に設けることもできる。さらに、ラジカル流出通路の途中に2つ以上設けることもできる。
なお、個別通路150C,Dについては、個別通路150Bと同様であるため、図示および説明を省略する。
【0071】
また、本実施例においては、保護ガス排気通路の途中にもポケットが設けられる。
図14(b)に示すように、放電空間42Bに対向する開口160Kを有する保護ガス排気通路160B(他の保護ガス排気通路についても同様であるため、説明を省略する)は、X方向に延びるX部分160BXとZ方向に延びるZ部分160BZとを含むが、これらの接続部Jに、下方に延びたポケット164Bが設けられる。
このように、保護ガス排気通路160Bの途中にポケット164Bを設ければ、保護ガスとともに排出されるダストの量を減らすことが可能となる。
【実施例6】
【0072】
本実施例においては、保護ガス排気通路の代わりに保護ガス回収通路が設けられる。回収された保護ガスを含むガスからダストが除去されて保護ガスがリサイクルされる。また、ダストは回収され、外部に放出されないようにされる。
その場合の一例を図15(a)、(b)に示す。なお、表面等処理装置の他の部分については、上記実施例における場合と同じであるため、説明を省略する。
放電空間42B,C,Dに対応して、それぞれ、2個ずつの保護ガス回収通路170B,C,Dが設けられる。
保護ガス回収通路170B,C,D(保護ガス回収通路170Bについて説明し、保護ガス回収通路170C,Dについての説明を省略する)において、一端が、放電空間42Bに対向する開口とされ、他端が、共通回収通路172に接続される。共通回収通路172には、2個ずつの保護ガス回収通路170B,C,D(通路170Cの一方、2つの通路170Dの図示は省略する)が接続されることになる。
共通回収通路172には、吸引・回収装置174が接続される。吸引・回収装置174は、吸引ポンプ、ダスト除去・回収機構(例えば、フィルタ、磁石、遠心分離器等を含むものとすることができる)等を含み、保護ガスを含むガスを回収し、ダストを除去し、回収するものであり、ダストが除去された保護ガスは、保護ガス供給通路に戻される。
また、図15(a)に示すように、保護ガス回収通路170Bは、(i)X方向に延びるX部分170BXと、(ii)Z方向に延びるZ部分170BZとを含むが、ラジカル流出通路78の個別通路81Bと比較すると、X部分170BXが個別通路81BのX部分81BXより長く、Z部分170BZと、個別通路81BのZ部分81BZとが、X方向において隔たった位置に形成される。そのため、共通回収通路172を、ラジカル流出通路78と干渉することなく、形成することができる。
このように、保護ガスをリサイクルすれば、アルゴンガスの消費量を減らすことができ、表面等処理コストを低減させることができる。
【0073】
なお、共通回収通路172は、ラジカル供給装置2の本体18の外側に取り付けることもできる。
また、ラジカル供給装置2の外側には、本体カバーが取り付けられ、大部分が本体カバーで覆われて使用されることが多い。その場合には、本体カバーの内側(下部)に溜まったダストを回収して、ワークWに供給されないようにしたり、保護ガスを吸引して(上方から)リサイクルしたりすることでき、そのような装置をラジカル供給装置2の本体18の外側で、図示しない本体カバーの内側に設けることができる。
【実施例7】
【0074】
上記実施例においては、電極22〜25がX方向に延びた姿勢で設けられたが、本実施例においては、電極棒が、Z方向に延びた姿勢で設けられる。表面等処理装置の他の部分については、上記実施例における場合と同様であるため、説明を省略する。
図16,17において、Z方向に延びた4個の電極棒180、181,182,183が、Y方向に等間隔で、交互に配設される。電極棒180,182が正面184から突出し、電極棒181,183が背面186から突出する状態で、Y方向に並んで、互いに平行な姿勢で保持される。
また、電極棒180〜183の各々の外周側には、電極カバー180P〜183Pが設けられる。電極カバー180P〜183Pの各々には、それぞれ、放電開口180HL、HR〜183HL,HRが設けられ、隣接する放電電極部180S〜183Sの間で、放電が起き、放電領域R*01,R*12,R*23が形成される。
また、電極カバー180P〜183Pと電極180〜183との間の隙間(放電電極部周辺)180in〜183inには、保護ガス流入口180Q〜183Qから保護ガスが供給され、放電開口180HR、181HL、HR、182HL、HR、183HLから流出させられる。放電電極部180S〜183Sの表面の雰囲気が処理ガスから分離される。
処理ガスは、上記実施例における場合と同様に、それぞれ、放電空間190B〜D毎に、供給されるのであり、生成されたラジカル等は、上記実施例における場合と同様にラジカル流出通路78を経てワークWに供給される。
【0075】
以上、複数の実施例について説明したが、これら複数の実施例は、互いに組み合わせて適用することができる。
また、電極カバー22P〜25Pを設けることは不可欠ではなく、電極22〜25に直接、保護ガスを供給することもできる。
さらに、電極の個数は4つに限らない。例えば、2つあるいは3つであっても、5つ以上であってもよい。電極の個数を増やせば、ラジカル出力口16のY方向の長さを長くすることができる。その結果、被処理面WFが同じ場合に、処理に要する時間を短くすることができる。
また、上記実施例においては、電極カバー毎(放電電極部毎)に保護ガスが供給されるようにされていたが、複数の電極カバーに共通に保護ガスが供給されるようにすることもできる。例えば、1つの電極カバーに供給された保護ガスが、他の電極カバー内を循環して流出させられるようにすることができる。
さらに、電極カバーには、放電開口とは別に保護ガス流出口を設けることもできる。その場合には、放電空間以外の部分に、保護ガスを流出させることも可能である。
また、アース板は、上記実施例における位置に限らず、いずれに設けてもよい。
さらに、ラジカル流出通路78は、湾曲部を1つ有するものとしたり、2つ以上有するものとしたりすることができる。
また、本発明は、プラズマ内で生成される正イオンや負イオンをワークに照射して表面等の処理を行う表面等処理装置に適用することもできる。
さらに、本発明は、上記複数の実施例に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施すことができる。
【符号の説明】
【0076】
2:ラジカル供給装置 4:ラジカル供給装置保持部 6:ワーク保持部 7:相対移動装置 16:ラジカル出力口 18:本体 22〜25:電極 22P〜25P:電極カバー 22HL,HR〜25HL、HR:放電開口 22in〜25in:隙間 22S〜25S:放電電極部 22Q〜25Q:保護ガス流入口 34:保護ガス供給通路 42:放電空間 48:処理ガス供給通路 78:ラジカル出力通路 80:個別通路 82:拡散部 86:スリット通路 88:ポケット 90:アース板 92:保護ガス排気通路 94:排気口 124:アース板 120:個別通路 130:個別通路 136:アース板 150:個別通路 160:保護ガス排気通路 154,164:ポケット 180〜184:電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間に処理ガスを供給し、少なくとも、プラズマ内で生成された反応種を被処理物に供給する反応種供給装置であって、
前記放電空間を形成する少なくとも一対の電極と、
それら電極の各々を前記処理ガスから保護する電極保護装置と
を含むことを特徴とする反応種供給装置。
【請求項2】
前記電極保護装置が、前記電極の各々を、それぞれ覆う電極カバーを含み、それら電極カバーのうちの互いに隣接するものの、互いに対向する部分に、それぞれ、放電開口を設けた請求項1に記載の反応種供給装置。
【請求項3】
前記電極保護装置が、前記電極の各々に、保護ガスを供給する保護ガス供給部を含む請求項1または2に記載の反応種供給装置。
【請求項4】
前記電極保護装置が、前記電極の各々を、それぞれ覆う電極カバーを含み、前記保護ガス供給部が、前記電極カバーの内側に、前記保護ガスを供給するカバー内保護ガス供給部を含む請求項3に記載の反応種供給装置。
【請求項5】
前記カバー内保護ガス供給部が、前記電極カバーの各々に設けられた保護ガス流入口を含み、前記電極カバーのうちの互いに隣接するものの、互いに対向する部分であって、かつ、前記保護ガス流入口より下流側の部分に放電開口を設けた請求項4に記載の反応種供給装置。
【請求項6】
当該反応種供給装置が、少なくとも前記反応種を出力する反応種出力口を含み、前記カバー内保護ガス供給部が、一端が、前記電極カバーの前記放電開口が形成された部分に隣接して設けられた開口とされ、他端が、前記反応種出力口から離間した位置に設けられた排気口とされた保護ガス排気通路を含む請求項5に記載の反応種供給装置。
【請求項7】
当該反応種供給装置が、前記放電空間の下流側に設けられ、前記一対の電極の間に並んで設けられた複数の放電側開口を備えた複数の個別流出通路を含み、それら複数の個別流出通路のうちの両端に位置する個別流出通路が、それぞれ、前記排気口に連通させられ、中間に位置する個別流出通路が、前記反応種出力口に連通させられた請求項6に記載の反応種供給装置。
【請求項8】
前記処理ガスが、キャリアガスと反応ガスとを含み、前記保護ガスを、前記処理ガスに含まれるキャリアガスと同じ種類のものとした請求項3ないし6のいずれか1つに記載の反応種供給装置。
【請求項9】
前記請求項1ないし8のいずれか1つに記載の反応種供給装置を保持する反応種供給装置保持部と、前記被処理物を保持する被処理物保持部と、これら反応種供給装置保持部と前記被処理物保持部とを相対移動させる相対移動装置とを含み、前記被処理物の表面等に処理を行う表面等処理装置。
【請求項1】
放電空間に処理ガスを供給し、少なくとも、プラズマ内で生成された反応種を被処理物に供給する反応種供給装置であって、
前記放電空間を形成する少なくとも一対の電極と、
それら電極の各々を前記処理ガスから保護する電極保護装置と
を含むことを特徴とする反応種供給装置。
【請求項2】
前記電極保護装置が、前記電極の各々を、それぞれ覆う電極カバーを含み、それら電極カバーのうちの互いに隣接するものの、互いに対向する部分に、それぞれ、放電開口を設けた請求項1に記載の反応種供給装置。
【請求項3】
前記電極保護装置が、前記電極の各々に、保護ガスを供給する保護ガス供給部を含む請求項1または2に記載の反応種供給装置。
【請求項4】
前記電極保護装置が、前記電極の各々を、それぞれ覆う電極カバーを含み、前記保護ガス供給部が、前記電極カバーの内側に、前記保護ガスを供給するカバー内保護ガス供給部を含む請求項3に記載の反応種供給装置。
【請求項5】
前記カバー内保護ガス供給部が、前記電極カバーの各々に設けられた保護ガス流入口を含み、前記電極カバーのうちの互いに隣接するものの、互いに対向する部分であって、かつ、前記保護ガス流入口より下流側の部分に放電開口を設けた請求項4に記載の反応種供給装置。
【請求項6】
当該反応種供給装置が、少なくとも前記反応種を出力する反応種出力口を含み、前記カバー内保護ガス供給部が、一端が、前記電極カバーの前記放電開口が形成された部分に隣接して設けられた開口とされ、他端が、前記反応種出力口から離間した位置に設けられた排気口とされた保護ガス排気通路を含む請求項5に記載の反応種供給装置。
【請求項7】
当該反応種供給装置が、前記放電空間の下流側に設けられ、前記一対の電極の間に並んで設けられた複数の放電側開口を備えた複数の個別流出通路を含み、それら複数の個別流出通路のうちの両端に位置する個別流出通路が、それぞれ、前記排気口に連通させられ、中間に位置する個別流出通路が、前記反応種出力口に連通させられた請求項6に記載の反応種供給装置。
【請求項8】
前記処理ガスが、キャリアガスと反応ガスとを含み、前記保護ガスを、前記処理ガスに含まれるキャリアガスと同じ種類のものとした請求項3ないし6のいずれか1つに記載の反応種供給装置。
【請求項9】
前記請求項1ないし8のいずれか1つに記載の反応種供給装置を保持する反応種供給装置保持部と、前記被処理物を保持する被処理物保持部と、これら反応種供給装置保持部と前記被処理物保持部とを相対移動させる相対移動装置とを含み、前記被処理物の表面等に処理を行う表面等処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−14926(P2012−14926A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149524(P2010−149524)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(304036008)NUエコ・エンジニアリング株式会社 (59)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(304036008)NUエコ・エンジニアリング株式会社 (59)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】
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