説明

収納部構造

【課題】収納部構造において、車体への保持構造の取り付けが容易で、且つその保持構造が収納部内への収納体の出し入れ作業性に支障が生じないようにすることにある。
【解決手段】スリット孔(22)に挿着される挿着部(28)は、固定部(29)を中心にバンド(17)から離反する方向に変形可能であってスリット孔(22)からの抜けを防止するように一つの端部(28B)がスリット孔(22)近傍に当接して設けられ、挿着部(28)がスリット孔(22)に挿着されて開放部(16)の一部を覆って収納部(11)内に収納体(10)を保持するようにバンド(17)を配設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、収納部構造に係り、特に水平方向に沿って内部へ収納体の出し入れを行わせるとともに内部に収納した収納体の飛び出しを防止する保持構造を備えた収納部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において、物を収納する場合、一般に、車両の走行等で収納部から物が飛び出さないように収納部の開放部を覆う部材、例えば、蓋等を設けている。但し、収納する物がバッグのような比較的大きいものである場合には、開放部の全面を覆う必要がないので、例えば、開放部の一部を覆うようにバンド等の保持構造を設けることで、開放部からの収納体の飛び出しを防止している。
そして、車両に保持構造を構成するバンドを取り付ける場合には、例えば、図11で示すように、バンド101及び車体パネル102に取付孔103を設け、この取付孔103に締結部材としてのボルト104を挿入して車体パネル102にバンド101を取り付ける方法が一般的である。但し、この場合、ボルト104を車体パネル102に固定するために、車体パネル102には別途にナットを取り付ける必要があることや、ボルト104の締め付けのための工具が入るスペースが確保されていることが必要である。
また、ボルトを用いてバンドを車体パネルに固定する場合には、ボルトの一部(例えば、ボルトの頭部)が、収納部内若しくはその収納部近傍に突出して配置される。特に、開放部が上下方向に沿って設けられる場合に、バンドは、開放部の上下方向に沿って設けられることが多いものである。このため、収納体を収納部より出し入れする際に、ボルトの頭部が引っ掛かり、収納体の出し入れに支障があった。
そのための対策として、例えば、ボルトの頭部が車体パネルから突出しなくなるように、ボルトの頭部の突出長さに合わせて車体パネルの形状を変更し、ボルトの頭部と車体パネルとの高さを略同一にする方法があるが、車体パネルの形状が複雑になる上、未だボルトと収納体とが引っ掛かるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−28279号公報
【0004】
特許文献1に係るバンドクランプは、クリップ及び鋸歯上のロック部を有するクリップバンドを、車体パネルの取付穴に挿入して取り付ける(挿着する)とともに締付部材の一端部の貫通孔に通し、この貫通孔の周縁をロック部に噛み合させて所定位置で固定し、これにより、ボルト等の締結部材を用いることなく、様々な板厚の車体パネルに取り付けることを可能とするものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の特許文献1では、クリップバンドの取付相手である締結部材が車体パネルから突出しており、車体パネルが平滑面でないので、この車体パネル上に配置した収納体を車体パネル上でスライドさせて出し入れする場合に、収納体が締結部材に引っ掛かり、収納体の出し入れに支障が生じ、改善されていなかった。
また、上記の特許文献1では、クリップバンドは、形状の安定しないバッグのような収納体を車両に固定するのに不向きであった。また、クリップバンドは、その固定対象の物の周囲に巻き付けて車両パネルに固定するものであって、その固定対象の物が比較的定型であることが必要であった。このため、固定対象の物が形状の安定しないバッグで、且つバッグ内にケーブルのような長さのあるものを収納している場合には、ケーブルを使用する都度にバッグの形状が変化するので、効率良く車両にバッグを固定することができないという不都合があった。
【0006】
また、従来、図12に示すように、ボルトを取り付ける車体パネル201の上面にトレイ202を配置する方法もある。この方法では、車体パネル201から突出するボルトの一部や車体パネル201の凹凸をトレイで202覆うので、収納体がボルトに引っ掛かるおそれはなくなり、収納部への物の出し入れが容易であった。
しかしながら、バンド203は、トレイ202の下方を通して収納部204の開放部205側に出し且つトレイ202の端部202Eの近くを迂回して上方に出すように配置される必要がある。この状態で、バンド203が引っ張られると(図12の矢印Pで示す)、バンド203がトレイ202の端部202Eに接するとともに、破損しやすいトレイ202の端部202Eに過大な荷重がかかり、トレイ202の破損を招くおそれがあり、改善が望まれていた。
【0007】
そこで、この発明の目的は、車体への保持構造の取り付けが容易で、且つその保持構造が収納部内への収納体の出し入れ作業性に支障をきたすことがない収納部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、車両側面側のみに開放して水平方向に沿って収納体の出し入れを行わせるとともに前記収納体を内部に収納するための開放部が備えられた収納部を設けた収納部構造において、前記開放部には該開放部の一部を覆うようにバンドを取り付けるための取付構造を備え、前記バンドには該バンドの長手方向の一端側から他端側に折り返して挿着部を形成し、この挿着部は前記バンドの長手方向での中央において前記バンドの長手方向の一端側を折り返した状態を維持するための固定部を備え、前記取付構造は前記バンドと前記バンドの前記挿着部を挿着するためのスリット孔とを備え、このスリット孔の最小隙間を前記挿着部の厚みと同等に設定し、前記スリット孔に挿着される前記挿着部は、前記固定部を中心に前記バンドから離反する方向に変形可能であって前記スリット孔からの抜けを防止するように一つの端部が前記スリット孔近傍に当接して設けられ、前記挿着部が前記スリット孔に挿着されて前記開放部の一部を覆って前記収納部内に前記収納体を保持するように前記バンドを配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明の収納部構造は、車体への保持構造の取り付けが容易で、且つその保持構造が収納部内への収納体の出し入れ作業性に支障をきたすことがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は車両の側部のドア開口側から視た斜視図である。(実施例)
【図2】図2は収納部周辺の各パネル及び各縦壁の繋がり状態を示す斜視図である。(実施例)
【図3】図3はトレイの上方から視た斜視図である。(実施例)
【図4】図4はトレイの下方から視た斜視図である。(実施例)
【図5】図5はバンドの斜視図である。(実施例)
【図6】図6は図5のバンドの挿着部の斜視図である。(実施例)
【図7】図7は蛇腹状に折り曲げて形成した挿着部の斜視図である。(実施例)
【図8】図8はバンドの取付状態を示す斜視図である。(実施例)
【図9】図9は図8の矢印IVによるバンドの取付状態の正面図である。(実施例)
【図10】図10は取っ手内に挿入したバンドの取付状態を示す斜視図である。(実施例)
【図11】図11は従来においてバンドの取付状態を車両前方から視た斜視図である。(従来例)
【図12】図12は従来においてトレイに取り付けられるバンドの取付状態を車両前方から視た斜視図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明は、車体への保持構造の取り付けが容易で、且つその保持構造が収納部内への収納体の出し入れ作業性に支障をきたすことをなくする目的を、スリット孔に挿着されるバンドの挿着部が固定部を中心にバンドから離反する方向に変形可能であって、スリット孔からの抜けを防止するように挿着部の一つの端部をスリット孔近傍に当接して設け、挿着部がスリット孔に挿着されて開放部の一部を覆って収納部内に収納体を保持するようにバンドを配設して実現するものである。
【実施例】
【0012】
図1〜図10は、この発明の実施例を示すものである。
図1において、1は車両、2は車体、3ドア開口、4はステップ、5は車室、6はフロアパネルである。
車両1は、バッテリの電力を動力源として走行する車両であり、車体2の側面部に設けたドア開口3の下方にステップ4とフロアパネル6とを備える。フロアパネル6は、図2に示すように、車両前後方向Xに配置された第一パネル7と第三パネル15とを備え、車室5内のフロア面9を構成する。
車両1には、数メートルの長さを持つケーブルを収納するバック等からなる収納体10を収納する収納部11が備えられた収納部構造12を設ける。
この収納部構造12においては、図2に示すように、収納部11がステップ4よりも上方に配置され、また、ステップ4の上面から車両前後方向Xに沿って車両上方に延びる第一縦壁13が配置されている。この第一縦壁13の上端には、車両幅方向Yに沿って延びる第一パネル7が接続している。この第一パネル7は、収納部11を設ける空間を形成する下方のパネルであり、フロア面9の一部を構成する。
また、図2に示すように、第一パネル7に接続して、第一パネル7から車両幅方向Yに沿って上方に延びる第二縦壁14が設けられている。この第二縦壁14の上端から車両後方に延びては、第三パネル15が設けられる。従って、フロア面9は、第一パネル7と第二縦壁14と第三パネル15とから構成され、車両1の前側が一段下方に位置する形状に形成されている。
この実施例では、第二パネル8は、第一パネル7の上方で車両幅方向Yに沿って配置され、また、第三パネル15と同一高さになるよう水平方向に配置され且つこの第三パネル15に接続している。
これにより、第二パネル8と第三パネル15との上面は、平滑となるように形成される。そして、第二パネル8によって車室5内のフロア面9の形状が平坦になることで、第二パネル8及び第三パネル15の上面に置いた収納体10の移動を容易にさせることができる。
【0013】
収納部11は、水平方向に延びる第一パネル7とこの第一パネル7の上方に配置されて水平方向に配置される第二パネル8とで挟まれる空間に設けられる。
この収納部11は、車両側面側に開放する開放部16を備え、この開放部16から収納部11への収納体10の出し入れを可能にしている。また、収納部11は、ステップ4とフロアパネル6との間に設けられ、さらに、車両1の側部のドア開口3に配置され、収納体10を内部に開放部16により収納させる。この開放部16は、車両側面側のみに開放して水平方向に沿って収納体の出し入れを行わせる。
また、開放部16には、該開放部16の一部を覆うようにバンド17を取り付けるための取付構造18を備える。バンド17は、図8に示すように、開放部16の一部を覆って車両上下方向に沿って取り付けられる。
収納部11には、第一パネル7の上面で、収納部11を積載可能な搭載面19を備えるトレイ20が設けられる。このトレイ20は、図3に示すように、搭載面19への収納体10の出し入れを行う搭載部21を備えている。この搭載部21は、車両前後方向Xに沿って配設されている。
また、取付構造18は、前記バンド17と、後述するバンド17の挿着部28を挿着するためのスリット孔22とを備える。このスリット孔22は、バンド17の挿着部28を挿着するために、搭載部21近傍の搭載面19に設けられる。
このスリット孔22の形状は、図6に示すように、長方形であって、長辺Mがトレイ20の幅方向(車両前後方向X)に設けられる。また、スリット孔22の長辺Mは、バンド17の短手方向Wの長さNと同等である。そして、スリット孔22の最小隙間(短辺)Sは、バンド17の挿着部28の厚みTと同等に設定されている。これにより、スリット孔22にバンド17の挿着部28を挿着すると、バンド17の短手方向Wがトレイ20の幅方向に沿うよう取り付けられる。なお、スリット孔22の長辺Mを、バンド17の短手方向Wの長さよりも大きく設定しても良い。また、スリット孔22は、必ずしも、長方形である必要はなく、少なくともスリット孔22の最小隙間Sがバンド17の挿着部28の厚みTと同等の大きさを備え、バンド17の挿着部28がトレイ20の搭載面19の裏面に引っ掛かかる形状であれば良い(図9参照)。また、スリット孔22は、トレイ20の搭載面19に設けることとしたが、収納部11を形成する第一パネル7に設ける構造としても良い。
【0014】
図5に示すように、バンド17は、ポリエステル等の一般的な化学合成繊維の材質で薄い板状に形成され、開放部16の一部を覆うために開放部16周辺に取り付けるための構造として、一端側バンド部23と他端側バンド部24とを長手方向Lの両端に備えるとともに、一端側バンド部23と他端側バンド部24とを分離可能な嵌合構造25を長手方向Lの中央に備える。この嵌合構造25は、一端側バンド部23に備えられた一端側嵌合部26と、他端側バンド部24に備えられた他端側嵌合部27とからなる。一端側バンド部23と他端側バンド部24とは、嵌合構造25を嵌合状態とするか又はこの嵌合状態を解除することで、接続又は分離される。
バンド17の長手方向Lの両端部は、ホツレ等の不具合が発生しないように、熱を加えて溶融させた処理(端末処理)が加えられている。
バンド17の一端側バンド部23には、その末端を包むように、バンド17の長手方向Lの一端側から他端側に二度折り返して挿着部28が形成され、さらに、バンド17の長手方向Lの一端側を折り返した状態を維持するために、バンド17の長手方向Lでの中央において、バンド17の短手方向Wに沿って縫合する固定部29が設けられる。挿着部28には、バンド17の長手方向Lにおいて、末端で一端側端部の第一折り返し部28Aと、一端側嵌合部26側で他端側端部の第二折り返し部28Bとを備える。
挿着部28は、図6に示すように、一端側バンド部23の末端を他端側に折り曲げて所定の厚みTを持つ構造とできれば良く、例えば、蛇腹状に折り曲げて形成しても良い(図7参照)。但し、挿着部28は、一端側を包み込むように形成することが、その性能上最も優れる。詳細に説明すると、前述したように、バンド17の長手方向Lの両端が熱を加えて溶融させた処理が施されており、この一端の処理はバンド17毎にバラツキが生じる。そこで、このように一端側を包み込むことで、スリット孔22への不要な引っ掛かりが発生することを防止でき、この一端の処理のバラツキを考慮することなく、均一な挿着作業性を可能とする。
【0015】
また、バンド17において、一端側バンド部23の挿着部28の一つの端部である他端側端部の第二折り返し部28Bは、図9に示すように、固定部29を回転中心としてバンド17より離反する方向に変形することが可能である。
詳しくは、スリット孔22に装着した挿着部28がスリット孔22から抜ける方向に引っ張られると(図9の矢印Pで示す)、第二折り返し部28Bが、搭載面19の裏面のスリット孔22近傍に当接して固定部29を中心にバンド17から離れる方向に変形する。これにより、固定部29から第二折り返し部28Bまでの離間部位の少なくとも一部が搭載面19の裏面に接触し(図9の引っ掛かり部分Rで示す)、これにより、ボルト等の締結部材を用いることなく、スリット孔22に挿着部28を挿着するだけで、バンド17を取り付けでき、また、挿着部28のスリット孔22からの抜けを防止できる。
バンド17は、短手方向Wが車両前後方向Xに沿うようにスリット孔22に挿着部28を装着して搭載面19に取り付けられ、長手方向Lの中央の嵌合構造25により、収納部11への収納体10の出し入れを可能にするとともに収納部11への収納体10の保持を可能にするように嵌合及び解除される。これにより、収納体10を取り出しやすいようにトレイ20の搭載面19を設定でき、収納体10の取り出しによる車両1の傷つき発生も防止できる。また、嵌合構造25の嵌合を解除若しくは嵌合を維持することで、収納部11への収納体10の出し入れ若しくは保持が可能である。
また、搭載面19からは板厚の薄いバンド17のみが存在しているだけであり、搭載面19上をスライドさせて収納体10を取り出す場合にも支障がない。
【0016】
バンド17の他端側バンド部24には、図5に示すように、その末端近傍に取付孔30が形成される。
バンド17は、一端側の挿着部28をトレイ20のスリット孔22に挿着して取り付け、他端側を取付孔30に挿通するボルト等の締結部材31(図10参照)を用いて第二パネル8に取り付ける。これにより、バンド17は、開放部26の一部(車両前後方向Xの中央)を覆って収納部11内に収納体10を保持するように、上下方向に取り付けられる。
そして、嵌合構造25が嵌合状態にあるバンド17によって開放部26の一部が覆われることで、収納部11内に配置したトレイ20から収納した収納体10を、収納部11に保持できる。一方、嵌合構造25の嵌合を解除することで、収納部11への収納体10の出し入れを行うことができる。
【0017】
トレイ20は、図3に示すように、前述の如く、ポリプロピレン等の汎用樹脂の材質から形成され、収納体10を載せる搭載面19を備えるとともに、車両前後方向に沿って配置されて前記搭載面19への前記収納体の出し入れを行わせる搭載部21を備えている。この搭載部21よりトレイ20の搭載面19上を沿わせて、収納体11を搭載面19に載せることができる。また、この搭載部21を収納部11の開放部16に一致させるように、収納部11には、トレイ20が取り付けられる。
また、トレイ20において、搭載部21を除く搭載面19の周囲には、搭載面19より上方に延びる縦壁32が設けられている。
搭載面19の大きさは、搭載面19に載せる収納体11の大きさに合わせて設定され、さらに、縦壁32を備えることで、収納体10がその搭載面19上を不用意に移動しない構造となっている。
このトレイ20において、搭載部21近傍の搭載面19を形成する一辺からは、車両側面外側且つ車両下側に湾曲して延びる湾曲部33が備えられている。つまり、この湾曲部33は、搭載部21近傍の搭載面19から車両側面外側且つ車両下側に湾曲して延びている。
そして、この湾曲部33は、車両前後方向Xの両端部が縦壁32に接続し、つまり、トレイ20の幅方向の端部が縦壁32に接続している。これにより、トレイ20の搭載部21近傍の剛性向上を図ることができる。また、この湾曲部33を設けることで、スリット孔22周辺の剛性を確保しつつ、スリット孔22を搭載面19の端部近くに配置できる。これにより、トレイ20も極力小型化できる。
【0018】
また、図10に示すように、収納体10には、取っ手34が設けられている。収納体10と取っ手34との間にバンド17を通して、収納部11内に収納体10を保持する。これにより、収納部11内を収納体10が動き回ることを規制しつつ、収納部11内に収納体10を保持できる。
【0019】
また、トレイ20において、図4に示すように、搭載面19には、その周囲端部に沿うように6つの凸部35を備える。これら凸部35の上下方向長さは、トレイ20を設置する第一パネル7の形状に合わせて設定されている。凸部35の先端面は、第一パネル7に当接する。各凸部35の先端面には、各挿入穴36が設けられ、ボルト等の締結部材によってトレイ20を第一パネル7に固定する。
また、凸部35は、第一パネル7の形状に合わせて上下方向長さを設定することで、トレイ20の搭載面19を自由に形成できる。
トレイ20を設置する第一パネル7の形状によらず、搭載面19を平滑に設定でき、トレイ20と第一パネル7との接点を凸部35の先端面のみとすることで、トレイ20と第一パネル7との不要な面当たりを避けることができ、トレイ20によるフロアパネル6の傷つき発生低減や、トレイ20が第一パネル7に接触することでの音の発生低減を図っている。
そして、搭載面19を第一パネル7より上方に位置させ、搭載面19と第一パネル7との間にスリット孔2に挿着したバンド17の挿着部28を収納できる。
【0020】
以上、この発明の実施例について説明してきたが、上述の実施例の構成を請求項毎に当てはめて説明する。
先ず、請求項1に記載の発明において、収納部11の開放部16には該開放部16の一部を覆うようにバンド17を取り付けるための取付構造18を備え、バンド17には該バンド17の長手方向Lの一端側から他端側に折り返して挿着部28を形成し、この挿着部28はバンド17の長手方向Lでの中央においてバンド17の長手方向Lの一端側を折り返した状態を維持するための固定部29を備え、取付構造18はバンド17とこのバンド17の挿着部28を挿着するためのスリット孔22とを備え、このスリット孔22の最小隙間Sを挿着部28の厚みTと同等に設定し、スリット孔22に挿着される挿着部28は、固定部29を中心にバンド17から離反する方向に変形可能であってスリット孔22からの抜けを防止するように一つの端部である第二折り返し部28Bがスリット孔22近傍に当接して設けられ、挿着部28がスリット孔22に挿着されて開放部16の一部を覆って収納部11内に収納体10を保持するようにバンド17を配設した。
このように、開放部16の一部をバンド17で覆うことで、収納部11内に収納体10を保持でき、また、挿着部28をスリット孔22に挿着するだけで、バンド17の車両1への取り付けができ、更に、バンド17の車両1への取り付けのために、ボルト等の締結部材を用いる必要がなくなり、収納部11内への締結部材の突出を防止でき、収納体10の出し入れに影響を及ぼすことがない。
請求項2に記載の発明において、収納部11は、水平方向に延びる第一パネル7とこの第一パネル7の上方に配置されて水平方向に延びる第二パネル8とで挟まれる空間に設けられ、収納体10を積載可能な搭載面19を備えるトレイ20を第一パネル7上に設け、このトレイ20の搭載面19にスリット孔22を設け、バンド17は、短手方向Wが車両前後方向Xに沿うようにスリット孔22に挿着部28を挿着して搭載面19に取り付けられ、長手方向中央では収納部11への収納体10の出し入れを可能にするとともに収納部11への収納体10の保持を可能にするように嵌合及びこの嵌合が解除される嵌合構造25を備える。
これにより、収納体10を取り出しやすいようにトレイ20の搭載面19を設定でき、収納体10の取り出しによる車両1の傷つき発生も防止でき、また、嵌合部11の嵌合を解除若しくは嵌合を維持することで、収納部11への収納体10の出し入れ若しくは保持が可能となる。
請求項3に記載の発明において、トレイ20は、車両前後方向Xに沿って配置されて搭載面19への収納体10の出し入れを行わせる搭載部21を備えるとともに、この搭載部21を除く搭載面19の周囲では搭載面19より上方に延びる縦壁32を備え、さらに、搭載部21近傍の搭載面19からは車両側面外側且つ車両下側に湾曲して延びる湾曲部33を備え、この湾曲部33の車両前後方向Xの両端部を縦壁32に接続した。
このように、搭載部21に湾曲部33を設け且つ湾曲部33を縦壁32に接続させることで、トレイ20の搭載部21近傍の剛性の向上を図ることができ、また、スリット孔22周辺の剛性を確保しつつ、スリット孔22を搭載面19の端部近くに配置でき、更に、トレイ20を極力小型化できる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
この発明に係る収納部構造を、ハイブリッド車両や電気自動車等の各種電動車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 車両
2 車体
6 フロアパネル
7 第一パネル
8 第二パネル
9 フロア面
10 収納体
11 収納部
12 収納部構造
13 第一縦壁
14 第二縦壁
15 第三パネル
16 開放部
17 バンド
18 取付構造
19 搭載面
20 トレイ
21 搭載部
22 スリット孔
23 一端側バンド部
24 他端側バンド部
25 嵌合構造
26 一端側嵌合部
27 他端側嵌合部
28 バンドの挿着部
29 バンドの固定部
32 トレイの縦壁
33 トレイの湾曲部
34 収納体の取っ手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側面側のみに開放して水平方向に沿って収納体の出し入れを行わせるとともに前記収納体を内部に収納するための開放部が備えられた収納部を設けた収納部構造において、前記開放部には該開放部の一部を覆うようにバンドを取り付けるための取付構造を備え、前記バンドには該バンドの長手方向の一端側から他端側に折り返して挿着部を形成し、この挿着部は前記バンドの長手方向での中央において前記バンドの長手方向の一端側を折り返した状態を維持するための固定部を備え、前記取付構造は前記バンドと前記バンドの前記挿着部を挿着するためのスリット孔とを備え、このスリット孔の最小隙間を前記挿着部の厚みと同等に設定し、前記スリット孔に挿着される前記挿着部は、前記固定部を中心に前記バンドから離反する方向に変形可能であって前記スリット孔からの抜けを防止するように一つの端部が前記スリット孔近傍に当接して設けられ、前記挿着部が前記スリット孔に挿着されて前記開放部の一部を覆って前記収納部内に前記収納体を保持するように前記バンドを配設したことを特徴とする収納部構造。
【請求項2】
前記収納部は水平方向に延びる第一パネルとこの第一パネルの上方に配置されて水平方向に延びる第二パネルとで挟まれる空間に設けられ、前記収納体を積載可能な搭載面を備えるトレイを前記第一パネル上に設け、前記トレイの搭載面に前記スリット孔を設け、
前記バンドは、短手方向が車両前後方向に沿うように前記スリット孔に前記挿着部を挿着して前記搭載面に取り付けられ、長手方向中央では前記収納部への前記収納体の出し入れを可能にするとともに前記収納部への前記収納体の保持を可能にするように嵌合及びこの嵌合が解除される嵌合構造を備えることを特徴とする請求項1に記載の収納部構造。
【請求項3】
前記トレイは、車両前後方向に沿って配置されて前記搭載面への前記収納体の出し入れを行わせる搭載部を備えるとともに、前記搭載部を除く前記搭載面の周囲では前記搭載面より上方に延びる縦壁を備え、さらに、前記搭載部近傍の前記搭載面からは車両側面外側且つ車両下側に湾曲して延びる湾曲部を備え、この湾曲部の車両前後方向の両端部を前記縦壁に接続したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の収納部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−158257(P2012−158257A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19654(P2011−19654)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】