説明

取付構造

【課題】高温環境下での使用であってもシール性の低下を抑制することができ、安定したシール性を長期に亘って確保し得る等速自在継手用ブーツの取付構造、高温環境下での使用であっても安定して共振振動を防止することが可能なダイナミックダンパの取付構造を提供する。
【解決手段】等速自在継手から延びるシャフトSに外嵌部が外嵌された状態でバンドの締め付けにより装着体MをシャフトSに取り付ける取付構造である。バンド72と装着体Mの外嵌部Gとの間に、装着体Mよりも圧縮永久歪が小さいシール部材81を介在させ、かつこのシール部材81は使用される通常雰囲気の高温環境下において弾性復元力を有する。装着体Mは、等速自在継手用樹脂ブーツ70であったり、ダイナミックダンパ100であったりする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車や各種産業機械の動力伝達機構に組み込まれる等速自在継手のシール性を確保する等速自在継手用ブーツ等を固定するための取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は摺動式等速自在継手であるトリポード型等速自在継手を示し、この等速自在継手は、内周に軸線方向に延びる三本のトラック溝1を設けると共に各トラック溝1の内側壁に互いに対向するローラ案内面1aを設けた外側継手部材2と、三本の脚軸3を有するトリポード部材4と、前記脚軸3に回転自在に支持されると共に前記外側継手部材2のトラック溝1に転動自在に挿入されたローラ5とを備える。
【0003】
外側継手部材2は一体に形成されたマウス部2aとステム軸2bとからなる。マウス部2aは一端にて開口したカップ状で、その内周面に、軸方向に延びる3本の前記トラック溝1が形成される。トリポード部材4はボス6と前記脚軸3とを備える。脚軸3はボス6の円周方向三等分位置から半径方向に突出している。
【0004】
ローラ5は、内側ローラ5aと外側ローラ5bとを備え、脚軸3に内側ローラ5aが外嵌され、この内側ローラ5aにころ(針状ころ)8を介して外側ローラ5bが外嵌されている。この場合、隣接するころ8が互いに接触する総ころ形式で配設されている。
【0005】
ボス6の内径面には雌スプライン9が形成され、シャフト10がこのボス6に挿入されて、シャフト10に設けられた雄スプライン11がボス6の雌スプライン9に嵌合し、これによって、シャフト10とトリポード部材4とがトルク伝達可能に結合する。この際、シャフト10の先端部に周方向凹溝12が設けられ、この周方向凹溝12にサークリップ13が嵌合している。これによって、シャフト10のボス6からの軸方向の抜けが規制されている。
【0006】
このような等速自在継手では、継手内部への塵埃などの異物侵入防止や継手内部に封入されたグリースの漏れ防止を目的として、等速自在継手用ブーツ20が装着されている。等速自在継手用ブーツ20は、大径部20aと、小径部20bと、大径部20aと小径部20bとを連結する蛇腹部20cとを備える。この種のブーツには、樹脂製ブーツ(熱可塑性エラストマー製ブーツ)やゴム製ブーツ(CRブーツ)等がある。熱可塑性エラストマー製ブーツは、CRブーツに比べて、成形性、耐疲労性、耐摩耗性、高速回転性(回転時振れ廻り性)等に優れた特性があり、近年多用されている。
【0007】
大径部20aが外側継手部材2のマウス部2aの外径面開口部側に設けられるブーツ装着部21に外嵌されて、ブーツバンド22が締め付けられることによって、この大径部20aがブーツ装着部21に固定される。また、小径部20bがシャフト10のブーツ装着部23に外嵌されて、ブーツバンド24が締め付けられることによって、この小径部20bがブーツ装着部23に固定される。
【0008】
この場合、特許文献1等に記載されているように、大径部20aおよび小径部20bの外径面には、周方向凹溝25、26が形成され、各周方向凹溝25、26にブーツバンド22、24が嵌合される。また、シャフト10のブーツ装着部23には、凹周溝28が設けられるとともに、この凹周溝28の開口端部に周方向凸条29,30が設けられている。このため、小径部20b側において、ブーツバンド24を締め付けることによって、このシャフト10の周方向凸条29、30が小径部20bの内径面に食い込むことになる。これによって、シール性を確保するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平4−128536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
熱可塑性エラストマー製ブーツは、ゴム製ブーツに比べ圧縮永久歪みが大きく、反発力が低下し易いため、経時変化によりシール性が低下し易い。特に、ディファレンシャルギア側(インボード側)での高温環境下(高温雰囲気下)でこの傾向が著しく、ブーツのシール性低下が加速される。
【0011】
従って、図6に示すような従来のようなシール構造では、長期に渡って安定したシール機能を発揮するのが困難で、シール性の低下によりブーツ20とシャフト10との間からグリース漏れが発生することがある。継手作動時における高温環境下(例えば、130℃雰囲気)で、ブーツ20の圧縮永久歪による弾性復元力(反発力)の低下に起因して、ブーツ20とシャフト10との間におけるシール性が低下する。つまり、バンド24の締め付けによって、ブーツ20のブーツバンド対応部位がいわゆるへたりを生じることになって、ブーツ20のブーツバンド対応部位をシャフト10に密着させることができない。ブーツ20と外側継手部材2との関係においても同様である。
【0012】
ところで、自動車等のドライブシャフト等の回転体には共振振動による振動増幅現象がある。自動車に要求される乗り心地、静粛性等を確保するためには、この共振振動を防止する必要がある。そこで、このようなドライブシャフトにダイナミックダンパと称するものが装着される。
【0013】
このダイナミックダンパは、シャフトに取り付けられる短筒状の固定部(取付部)と、この固定部の外周側に設けられる短筒状のおもり部(ウエイト部)と、おもり部を固定部に保持するための保持部とを備える。また、固定部はゴム等の可撓性製樹脂から構成される。
【0014】
そして、ダイナミックダンパは、短筒状の固定部が前記ブーツバンドのようなバンドを介して締め付けられることによってシャフトに固定される。したがって、高温環境下(高温雰囲気下)のダイナミックダンパが晒されれば、バンドの締め付け力が変化しない場合であっても、固定部の密着性が低下する場合がある。このように密着性が低下すれば、共振振動を防止する効果が低下することになる。
【0015】
そこで、本発明は斯かる実情に鑑み、高温環境下での使用であってもシール性の低下を抑制することができ、安定したシール性を長期に亘って確保し得る等速自在継手用ブーツの取付構造、高温環境下での使用であっても安定して共振振動を防止することが可能なダイナミックダンパの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の取付構造は、等速自在継手から延びるシャフトに外嵌部が外嵌された状態でバンドの締め付けにより装着体をシャフトに取り付ける取付構造であって、バンドと装着体の外嵌部との間に、前記装着体よりも圧縮永久歪が小さいシール部材を介在させ、かつこのシール部材は使用される通常雰囲気の高温環境下において弾性復元力を有するものである。ここで、圧縮永久歪とは、長時間にわたり圧縮荷重を受けたゴムの永久変形した率のことである。
【0017】
本発明の第2の取付構造は、等速自在継手の外側継手部材に外嵌部が外嵌された状態でバンドの締め付けにより装着体を外側継手部材に取り付ける取付構造であって、バンドと装着体の外嵌部との間に、前記装着体よりも圧縮永久歪が小さいシール部材を介在させ、かつこのシール部材は使用される通常雰囲気の高温環境下において弾性復元力を有するものである。
【0018】
本発明の第1および第2の取付構造によれば、継手作動時における高温環境下で、装着体の圧縮永久歪みによる弾性復元力(反発力)の低下に起因して、装着体とシャフト(又は外側継手部材の外径面)との間に所定のシール性(密着性)が得られなくなった状態、つまり、装着体がバンドによる締め付けでいわゆる「へたり」が生じる状態となっても、シール部材の圧縮永久歪量が小さいので、バンドによる締め付けによってシール部材に「へたり」が生ぜず、装着体をシャフト(又は外側継手部材の外径面)に密着させることができる。すなわち、シール部材が装着体に代わってシール性(密着性)を確保する。
【0019】
前記装着体は、等速自在継手用樹脂ブーツであっても、ダイナミックダンパであってもよい。シール部材が、バンドに加硫一体化されているものであっても、シール部材が、接着剤を介してバンドに接着されているものであってもよい。また、シール部材の肉厚を5mm以下とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の取付構造では、高温環境下でも、シール部材が装着体に代わってシール性(密着性)を確保することができ、安定したシール性能(密着性能)を発揮することができる。特に、シール部材が高温環境下でも弾性復元力を有するので、熱影響によるシール部材の劣化が安定して防止され、シール性能(密着性能)の低下は抑制される。
【0021】
装着体が等速自在継手用樹脂ブーツであれば、安定したシール性能が発揮され、継手内部への塵埃等の異物侵入防止や継手内部に封入されたグリースの漏れ防止の信頼性の向上を図ることができる。
【0022】
装着体がダイナミックダンパであれば、安定した密着性能が発揮され、高温環境下での使用であっても安定して共振振動を防止することが可能となる。
【0023】
シール部材がバンドに加硫一体化されているものであれば、バンドとシール部材とが分離せず、取り扱い性に優れる。シール部材が接着剤を介してバンドに接着されているものであれば、シール部材とバンドと別個に製造することができ、生産性に優れる。また、シール部材の肉厚を5mm以下とすることによって、シール部材を介して装着体がいわゆる「へたり」を生じる状態となっても、シール部材を介して装着体をシャフト(又は外側継手部材)に安定して密着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態を示す取付構造を用いた等速自在継手の断面図である。
【図2】前記取付構造の要部拡大図である。
【図3】前記取付構造のバンドの側面図である。
【図4】本発明の実施形態を示す取付構造を用いたドライブシャフトの断面図である。
【図5】前記図4に示すドライブシャフトに装着されたダイナミックダンパの断面図である。
【図6】従来の取付構造を用いた等速自在継手の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下本発明の実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0026】
図1に本発明に係る取付構造を用いた等速自在継手の断面図を示している。この等速自在継手は、摺動式等速自在継手であるトリポード型等速自在継手を示し、内周に軸線方向に延びる三本のトラック溝51を設けると共に各トラック溝51の内側壁に互いに対向するローラ案内面51aを設けた外側継手部材52と、三本の脚軸53を有するトリポード部材54と、前記脚軸53に回転自在に支持されると共に前記外側継手部材52のトラック溝51に転動自在に挿入されたローラ55とを備える。
【0027】
外側継手部材52は一体に形成されたマウス部52aとステム軸52bとからなる。マウス部52aは一端にて開口したカップ状で、その内周面に、軸方向に延びる3本の前記トラック溝51が形成される。トリポード部材54はボス56と前記脚軸53とを備える。脚軸53はボス56の円周方向三等分位置から半径方向に突出している。
【0028】
ローラ55は内側ローラ57と外側ローラ58とを備え、脚軸53の外周面に内側ローラ57を外嵌してしる。そして、内側ローラ57と外側ローラ58とは複数の針状ころ59を介してユニット化され、相対回転可能なローラカセットCを構成している。すなわち、内側ローラ57の円筒形外周面を内側軌道面とし、外側ローラ58の円筒形内周面を外側軌道面として、これらの内外軌道面間に針状ころ59が転動自在に介在する。針状ころ57は、できるだけ多くのころを入れた、保持器のない、いわゆる総ころ状態で組み込まれる。
【0029】
ボス56の内径面には雌スプライン60が形成され、シャフトSがこのボス56に挿入されて、シャフトSに設けられた雄スプライン61がボス56の雌スプライン60に嵌合し、これによって、シャフトSとトリポード部材54とがトルク伝達可能に結合する。この際、シャフトSの先端部に周方向凹溝62が設けられ、この周方向凹溝62にサークリップ63が嵌合している。これによって、シャフトSのボス56からの軸方向の抜けが規制されている。なお、外側継手部材52のマウス部52aの開口側内径面には、トリポード部材54の抜けを防止する止め輪65が装着されている。
【0030】
このような等速自在継手では、継手内部への塵埃などの異物侵入防止や継手内部に封入されたグリースの漏れ防止を目的として、装着体Mとしての等速自在継手用ブーツ70が装着されている。等速自在継手用ブーツ70は、外嵌部G1としての大径部70aと、外嵌部G2としての小径部70bと、大径部70aと小径部70bとを連結する蛇腹部70cとを備える。ブーツ70は、樹脂製ブーツ(熱可塑性エラストマー製ブーツ)である。
【0031】
大径部70aが外側継手部材52のマウス部52aの外径面開口部側に設けられるブーツ装着部71に外嵌されて、ブーツバンド72が締め付けられることによって、この大径部70aがブーツ装着部71に固定される。また、小径部70bがシャフトSのブーツ装着部73に外嵌されて、ブーツバンド74が締め付けられることによって、この小径部70bがブーツ装着部73に固定される。なお、ブーツバンド72(74)は、図3に示すように、この実施形態では、オメガ(Ω)形状のクランプ部67を有するいわゆるオメガバンドである。このオメガバンドはこのクランプ部67を加締めることによって締付け力を得るものである。
【0032】
外側継手部材52のマウス部52aのブーツ装着部71には凹溝75が設けられ、ブーツバンド72にて締め付けられた状態で、大径部70aの内径面が嵌合する。また、シャフトSのブーツ装着部73には周方向溝76が設けられ、この周方向溝76の両開口端に周方向凸条77,78が設けられている。
【0033】
大径部70aの外径面及び小径部70bの外径面にはそれぞれ周方向凹溝79、80が設けられる。この凹溝79、80に嵌合するシール部材81、81を介してブーツバンド72、74が大径部70a及び小径部70bを締め付けることになる。
【0034】
シール部材81はブーツ70の素材よりも圧縮永久歪量が小さいものである。すなわち、ブーツ70の素材は、例えば、JIS K 6253によるタイプDデュロメータ硬さが35以上50以下の熱可塑性ポリエステルエラストマーであり、シール部材81の圧縮永久歪量がこの熱可塑性ポリエステルエラストマーよりも小さい。しかも、継手作動時(130℃程度の高温温度下)における大径部70a及び小径部70bにおいて弾性復元力を有するものである。ここで、圧縮永久歪とは、長時間にわたり圧縮荷重を受けたゴムの永久変形した率のことである。
【0035】
このため、シール部材81は、耐熱限界温度が130℃以上のものが望ましく、アクリルゴム(ACM)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコンゴム(VMQ、FVMQ等)、あるいはフッ素ゴム(FKM、FFKM、FEPM等)などが好適である。
【0036】
このように、本発明では、バンド(ブーツバンド72)と装着体M(ブーツ70)の外嵌部(大径部70a又は小径部70b)との間に、前記装着体M(ブーツ70)よりも圧縮永久歪が小さいシール部材81を介在させることになる。この場合、シール部材81が、バンド72に加硫一体化されていても、接着剤を介してバンド72に接着されていてもよい。
【0037】
ここで、加硫とは、架橋反応の一種で、ゴム系の原材料(生ゴムなど)を加工する際に、弾性や強度を確保するために、硫黄などを加える工程のことである。材料の分子内にある多重結合部に反応し、加えられた硫黄を媒介とした分子間結合が、新たに作り出される。この反応により、材料の分子量は増大し、それに伴い、ゴムの弾性や強度が飛躍的に向上する。
【0038】
接着剤を介して接着する場合、使用する接着剤としては、ブーツ70の材質やシール部材81の材質等に応じて種々選択できるが、例えば、アクリル系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤等を用いることができる。
【0039】
本発明の取付構造では、継手作動時における高温環境下で、装着体(ブーツ70)の圧縮永久歪みによる弾性復元力(反発力)の低下に起因して、装着体(ブーツ70)とシャフトS(又は外側継手部材52の外径面)との間に所定のシール性(密着性)が得られなくなった状態、つまり、装着体(ブーツ70)がバンド72,74による締め付けでいわゆる「へたり」が生じる状態となっても、シール部材81の圧縮永久歪量が小さいので、バンド72,74による締め付けによってシール部材81に「へたり」が生ぜず、装着体(ブーツ70)をシャフトS(又は外側継手部材52の外径面)に密着させることができる。すなわち、シール部材81が装着体Mに代わってシール性(密着性)を確保することができ、安定したシール性能(密着性能)を発揮することができる。特に、シール部材81が高温環境下でも弾性復元力を有するので、熱影響によるシール部材81の劣化が安定して防止され、シール性能(密着性能)の低下は抑制される。
【0040】
前記シール部材81の肉厚としては、使用するブーツ70の材質、及び大径部70aや小径部70bの肉厚、大径部70aや小径部70bの径寸法等によって、多少の相違があるが、ブーツ70の材質を熱可塑性エラストマーとし、シール部材81の材質をニトリル系ゴムとした場合に、1mm以上5mm以下であるのが好ましい。
【0041】
シール部材81の肉厚を1mm以上としたのは、1mm未満では、肉厚が小さすぎて、装着体(ブーツ70)に代わってシール性(密着性)を確保することができにくいからである。また、シール部材81の肉厚を5mm以下としたのは、5mmを超えると、肉厚が大きすぎて、ブーツ70に対する締め付け力が低下してブーツ70は安定したシール性能を発揮できない。
【0042】
次に、図4はダイナミックダンパ100が装着されたドライブシャフトを示し、このダイナミックダンパ100のドライブシャフトへの装着は本発明にかかる取付構造を介して行われる。
【0043】
ドライブシャフトは、中間シャフト101(S)と、中間シャフト101(S)の一方の端部に連結される固定式等速自在継手102と、中間シャフト101(S)の他方の端部に連結される摺動式等速自在継手103とを備える。なお、この場合の摺動式等速自在継手103は、図1に示したトリポード型等速自在継手であるので、この継手103の説明は省略する。
【0044】
固定式等速自在継手102は、内球面103に複数のトラック溝104が円周方向等間隔に軸方向に沿って形成された外側継手部材105と、外球面106に外側継手部材105のトラック溝104と対をなす複数のトラック溝107が円周方向等間隔に軸方向に沿って形成された内側継手部材108と、外側継手部材105のトラック溝104と内側継手部材108のトラック溝107との間に介在してトルクを伝達する複数のボール109と、外側継手部材105の内球面103と内側継手部材108の外球面106との間に介在してボール109を保持するケージ110とを備えている。
【0045】
外側継手部材105は、前記トラック溝107を有するマウス部105aと、このマウス部105aの底壁から突設されるステム部105bとを備える。内側継手部材108は、その孔部の内径面に雌スプライン111が形成され、中間シャフト101の他方の端部がこの孔部に嵌入される。この場合、中間シャフト101の他方の端部の外径面には雄スプライン112が形成され、シャフト101の雄スプライン112と内側継手部材108の雌スプライン111とがスプライン嵌合される。
【0046】
また、外側継手部材105の開口部は、装着体Mとしてのブーツ115にて塞がれる。ブーツ115は、大径部115aと、小径部115bと、大径部115aと小径部115bとを連結する蛇腹部115cとを備える。大径部115aがマウス部105aの外径面開口部側のブーツ装着部116に外嵌され、この状態でブーツバンド120を締め付けることによって、大径部115aがマウス部105aのブーツ装着部116に装着される。小径部115bがシャフト101のブーツ装着部117に外嵌され、この状態でブーツバンド121を締め付けることによって、小径部115bがシャフト101のブーツ装着部117に装着される。
【0047】
この場合も、ブーツ115の大径部115aと、外側継手部材105のブーツ装着部116との間にシール部材81が介在され、ブーツ115の小径部115bと、シャフト101のブーツ装着部117との間にシール部材81が介在される。なお、外側継手部材105のブーツ装着部116の外径面には、ブーツ115の大径部115aの内径部が嵌合する周方向溝が設けられ、シャフト101のブーツ装着部117には、摺動式等速自在継手側のブーツ装着部73と同様、周方向溝と、この周方向溝の両開口部の一対の周方向凸条とが設けられている。また、ブーツ115の大径部115aの外径面には、シール部材81を介してブーツバンド120が嵌合する周方向凹溝が形成され、ブーツ115の小径部115bの外径面には、シール部材81を介してブーツバンド121が嵌合する周方向凹溝が形成されている。
【0048】
このシール部材81は、前記図1〜図3等に示すシール部材81と同様の構成である。このため、この固定式等速自在継手であっても、前記図1等に示す摺動式等速自在継手に用いた取付構造と同様の作用効果を奏する。
【0049】
シャフト101に装着されるダイナミックダンパ100は、図5に示すように、シャフト101に取り付けられる短筒状の固定部(取付部)125と、この固定部125の外周側に設けられる短筒状のおもり部(ウエイト部)126と、おもり部126を固定部125に保持するための保持部127とを備える。保持部127は固定部125の外径側に配設される連結部128を介して固定部125に連結される。また、保持部127はおもり部126を包囲する外皮にて構成される。
【0050】
固定部125、連結部128、及び保持部127は、前記ブーツ材料と同様、熱可塑性ポリエステルエラストマー等の樹脂から構成される一体成形品である。この場合、固定部125の一部が保持部127よりも軸方向(この実施形態では、摺動式等速自在継手側)に突出して、バンド装着部130が形成され、このバンド装着部130に装着されるバンド132を締め付けることによって、このバンド装着部130がシャフト101に取り付けられる。
【0051】
バンド装着部130の外径面に周方向溝131が設けられ、この周方向溝131にシール部材81を介して、前記ブーツバンド72(74)と同様のバンド132を装着して、このバンドを締め付けることになる。このため、ダイナミックダンパ100は安定した密着性能が発揮され、高温環境下での使用であっても安定して共振振動を防止することが可能となる。
【0052】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、前記実施形態では、バンドとしてオメガバンドを用いたが、リング部と、このリング部を拡縮させて操作部とを備えたいわゆるワンタッチ式ブーツバンドと呼ばれるものであってもよい。また、ブーツ材料として、前記実施形態では、JIS K 6253によるタイプDデュロメータ硬さが35以上50以下の熱可塑性ポリエステルエラストマーを用いたが、JIS K 6253によるタイプDデュロメータ硬さが50以上70以下のゴム材料であってもよい。すなわち、シール部材81として、装着体(ブーツ等)よりも圧縮永久歪が小さく、かつ使用される通常雰囲気の高温環境下において弾性復元力を有するものであればよい。また、この発明にかかる取付構造を用いる等速自在継手として、トリポード型、クロスグルーブ型等の他の摺動式等速自在継手や、ツェッパ型、バーフィールド型、アンダーカットフリー型等の固定式等速自在継手を採用できる。
【符号の説明】
【0053】
52 外側継手部材
72,74 バンド
81 シール部材
100 ダイナミックダンパ
120 ブーツバンド
121 ブーツバンド
132 バンド
M 装着体
S シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
等速自在継手から延びるシャフトに外嵌部が外嵌された状態でバンドの締め付けにより装着体をシャフトに取り付ける取付構造であって、
バンドと装着体の外嵌部との間に、前記装着体よりも圧縮永久歪が小さいシール部材を介在させ、かつこのシール部材は使用される通常雰囲気の高温環境下において弾性復元力を有することを特徴とする取付構造。
【請求項2】
等速自在継手の外側継手部材に外嵌部が外嵌された状態でバンドの締め付けにより装着体を外側継手部材に取り付ける取付構造であって、
バンドと装着体の外嵌部との間に、前記装着体よりも圧縮永久歪が小さいシール部材を介在させ、かつこのシール部材は使用される通常雰囲気の高温環境下において弾性復元力を有することを特徴とする取付構造。
【請求項3】
前記装着体は、等速自在継手用樹脂ブーツであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の取付構造。
【請求項4】
前記装着体は、ダイナミックダンパであることを特徴とする請求項1に記載の取付構造。
【請求項5】
前記シール部材が、バンドに加硫一体化されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の取付構造。
【請求項6】
前記シール部材が、接着剤を介してバンドに接着されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の取付構造。
【請求項7】
前記シール部材の肉厚を5mm以下としたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−144851(P2011−144851A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4709(P2010−4709)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】