説明

受光素子、発光装置、光ヘッド、及び画像形成装置

【課題】光ヘッドの光量検出を高精度に実施することのできる光検出素子を備えた光ヘッドを提供する。
【解決手段】発光素子と、前記発光素子から出力される光を検出する光検出素子とを備えた光ヘッドであって、前記光検出素子は、トランジスタで構成され、OFF領域で動作するように構成され、光検出素子のドレイン電流が流れない状態で光電流のみを取り出すことができるため、効率よく高精度の光検出を行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光素子、発光装置、光ヘッド及び光ヘッドを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のファックスやプリンタ等の画像形成装置は、急速に小型化・低コスト化が進んでおり、装置を構成する要素の小型化・低コスト化にむけて研究が進められている。
【0003】
画像形成装置の画像形成方法は、発熱抵抗体の熱を利用して、熱転写などにより画像を形成する感熱記録方法、微小なインク粒子を印刷物に塗布するインクジェット法、光を利用する方法などが挙げられる。このうち光を利用した画像形成装置は、光を感光体に照射することで感光体を帯電させ、静電気により感光体に付着したトナーを記録紙などの印刷対象に転写することで画像を形成している。感光体に照射される光の制御は、光ヘッドと呼ばれる露光装置が行う。光ヘッドは光源と前記光源の駆動制御を行う回路等を備えており、光源としては、主にレーザー装置や発光ダイオードが使用されている。
【0004】
光ヘッドを省スペースで構成するためには、光源や光源の駆動制御を行う回路の小型化が必要になる。薄膜トランジスタの普及により、駆動制御回路の小型化は容易に実現することが可能になった。一方、光源であるレーザー装置や発光ダイオードの小型化は、技術的に複雑となるので、これを実行した場合は製造コストの増大を避けることが困難になる。
【0005】
製造コストの増大を抑えながら光源の小型化を図る手段として、光ヘッドの光源として有機エレクトロルミネッセント素子、または無機エレクトロルミネッセント素子などに代表されるエレクトロルミネッセント素子を用いた光ヘッドが提案されている。エレクトロルミネッセントとは、発光体に対して電界を印加することによって得られる発光(ルミネッセント)現象のことである。有機エレクトロルミネッセント素子は、素子を構成する有機物の発光層に電位差を与えて電子と正孔を注入し、電子と正孔の結合により生じるエネルギーを有機分子の発光現象に利用して光を得る発光デバイスである。一方の無機エレクトロルミネッセント素子は、素子を構成する発光層を無機物に置き換えたものであり、発光原理は有機エレクトロルミネッセントと同様である。
【0006】
有機エレクトロルミネッセント素子、無機エレクトロルミネッセント素子の基本構成は、有機物、または無機物の層を陽極と陰極で挟むという単純なものである。電極と有機層、または無機層を薄膜状に形成して小型化することは、化学気相法、スパッタ法やスピンコート法などの加工技術により容易に実行可能であるため、レーザー装置や発光ダイオードを小型化する場合に比べ、製造コストの増大を抑えることができる。
【0007】
エレクトロルミネッセント素子のうち、有機エレクトロルミネッセント素子を光ヘッドの光源に用いた例として、特許文献1、特許文献2がある。特許文献1では発光・検出素子、特許文献2では画素を基準として、光ヘッドの構成についての説明がされている。両特許文献の発光部は、有機エレクトロルミネッセント素子からなる発光層、光量補正に用いる光検出素子、及び発光層の駆動制御を行う回路となる薄膜トランジスタ等からなる積層体であり、基本的には同一の構成をしている。また、どちらの特許文献も駆動制御回路側から光を出力する形式であり、このような光の出力形式をボトムエミッションという。
【0008】
【特許文献1】特開2002−144634号公報
【特許文献2】特開2002−178560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この特許文献1及び特許文献2における光ヘッドは、図13にその構成概略図を示すように、数種類の材料の層からなる積層体で構成される。この光ヘッドは、ガラス基板100の上にベースコート層101を設け、駆動回路および光源となるエレクトロルミネッセント素子およびその駆動回路を形成するが、このベースコート層101の一部の上に光検出素子120を配設する。次に、酸化シリコン膜などからなる層間絶縁膜103を積層体の上に形成する。この状態で陽極111、陰極113間に電圧を印加し、発光層112に電位差を与えて発光させる。
【0010】
ところで、光検出素子を構成する薄膜トランジスタは、層間絶縁膜103を介してエレクトロルミネッセント素子の陽極111に対向しているが、この陽極111の電位の影響を少なからずうけることになり、これをゲート電極とした薄膜トランジスタとして動作することになる。ところがこの薄膜トランジスタのドレイン電流は、光電変換によって生じる光電流の100倍程度と大きいため、ドレイン電流が流れているときは、微小な光電流を検出するのは極めて困難なことになる。
【0011】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたもので、光ヘッドの光量検出を高精度に実施することのできる光検出素子を備えた光ヘッドを提供することを目的とする。
また、本発明は、高精度の光検出を行うことのできる受光素子、発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、発光素子と、前記発光素子から出力される光を検出する光検出素子とを備えた光ヘッドであって、前記光検出素子は、トランジスタで構成され、OFF領域で動作するように構成されたことを特徴とする。
この構成により、光検出素子のドレイン電流が流れない状態で光電流のみを取り出すことができるため、効率よく高精度の光検出を行うことが可能となる。
【0013】
また本発明は、上記光ヘッドにおいて、第1の電極と第2の電極とで発光層を挟むように形成された光源としてのエレクトロルミネッセント素子と、前記エレクトロルミネッセント素子から出力される光を検出する光電変換層を備えた光検出素子とが積層配置され、前記光検出素子は、前記エレクトロルミネッセント素子の、前記光検出素子側に位置する第1の電極をゲート電極とした薄膜トランジスタであるものを含む。
この構成により、エレクトロルミネッセント素子の第1の電極が光検出素子を構成する薄膜トランジスタのゲート電極として作用し、このゲート電位を調整することにより、この薄膜トランジスタをOFF状態で動作させることが可能となる。
【0014】
また本発明は、上記光ヘッドにおいて、前記エレクトロルミネッセント素子の、前記光検出素子側に位置する第1の電極が、絶縁膜を介して前記光検出素子の光電変換部全体を覆うように構成されたものを含む。
この構成により、第1の電極によるゲート電界を光電変換部全体に印加することができ、制御性を高めることができる。
【0015】
また本発明は、上記光ヘッドにおいて、前記薄膜トランジスタは、閾値電圧が0V以下となるように、チャネル領域のドーピング濃度が調整されたものを含む。
この構成により、チャネル領域を構成する多結晶シリコン層などの半導体層へのドーピング濃度を調整するのみで極めて効率よく閾値電圧を調整することができ、光検出素子を構成するこの薄膜トランジスタをOFF状態で動作させることが可能となる。
【0016】
また本発明は、上記光ヘッドにおいて、前記薄膜トランジスタは、レベルシフト回路を介して光検出素子用の駆動回路に接続されたものを含む。
この構成により、ゲート電位をエレクトロルミネッセント素子の第1の電極の電位からシフトさせて使用することができ、これにより光検出素子を構成するこの薄膜トランジスタをOFF状態で動作させることが可能となる。
【0017】
また本発明は、上記光ヘッドにおいて、前記レベルシフト回路は前記薄膜トランジスタのゲート・ドレイン間に接続されたトランジスタスイッチ回路網であるものを含む。
この構成により、ゲート電位をエレクトロルミネッセント素子の第1の電極の電位から所望の電位だけシフトさせて使用することができ、これにより光検出素子を構成するこの薄膜トランジスタをOFF状態で動作させることが可能となる。
【0018】
また本発明は、上記光ヘッドにおいて、前記レベルシフト回路は前記発光素子の形成される基板上に集積化された回路であるものを含む。
この構成により、配線の引き回しによる電圧降下を低減することができ小型で動作速度の速い光量補正回路を構成することができ、制御性の高い光ヘッドを提供することが可能となる。
【0019】
また本発明は前記光ヘッドにおいて、1つの発光領域に対して1つの光検出素子を配置したことを特徴とする光ヘッドである。光ヘッドは複数の光出射領域を列状に配置して構成される。1つの光出射領域に対して、1つの光検出素子を対応させて配置することで、複数の光出射領域から出力される光を同時に計測することが可能となり、光ヘッド全体の光量の測定を高速に行うことが可能となる。
【0020】
また本発明は前記光ヘッドにおいて、光源として有機エレクトロルミネッセント素子を用いたものを含む。有機エレクトロルミネッセント素子は、低電力で高い輝度を得ることができるため消費電力の点で優れた光ヘッドを提供することが可能となる。
【0021】
また本発明は前記光ヘッドにおいて、光源として無機エレクトロルミネッセント素子を用いたものを含む。無機エレクトロルミネッセント素子は、スクリーン印刷で製造が可能であるため生産時の欠陥が少なく、且つクリーンルーム等の設備も必要としないので、高い量産性を持つ。したがって製造コスト的に優れた光ヘッドを提供することが可能となる。
【0022】
また本発明は前記光ヘッドにおいて、光量補正用の検出素子を配置したものを含む。光量の補正を目的とした光検出素子を配置すれば、前記光検出素子から光量の補正に適格な電気信号をエレクトロルミネッセント素子にフィードバックすることができるため、光量の制御を適切に行うことが可能となる。
【0023】
また本発明は前記光ヘッドにおいて、光の発光時間の補正を目的とした光検出素子を配置したものを含む。光の発光時間の補正を目的とした光検出素子を配置すれば、前記光検出素子から光の発光時間の補正に適格な電気信号をエレクトロルミネッセント素子にフィードバックすることができるため、発光時間の制御を適切に行うことが可能となる。
【0024】
また本発明は前記光ヘッドにおいて、光検出素子が、エレクトロルミネッセント素子の駆動回路となる薄膜トランジスタと同じ層から形成されたものを含む。薄膜トランジスタと光検出素子をエッチング等の加工方法を用いて同じ層から形成することで、光ヘッドの製造工程が簡素化し、製造に要するコストを低減させることが可能になる。特にガラス基板上への多結晶シリコン層の形成工程は、高温プロセスを経ることになるが、1回の調整で極めて制御性よく信頼性の高い特性を得ることが可能となる。
【0025】
また本発明は、上述した光ヘッドを備えたことを特徴とする画像形成装置である。発光分布が均一な光ヘッドを搭載することで、耐久性、画質の点で優れた画像形成装置が得られる。
ここでエレクトロルミネッセント素子の光検出素子側に形成される第1の電極は通常陽極であり、透光性を有する電極材料で構成される。
【0026】
また、本発明の受光素子は、トランジスタで構成され、OFF領域で動作するように構成される。
【0027】
また、本発明の受光素子は、少なくともゲート、ソース、ドレインを有する薄膜トランジスタで構成された受光素子であって、前記ゲートに印加する電位を操作して、前記ドレインに電流が流れない状態を前記受光素子の能動状態とする。
【0028】
また、本発明の発光装置は、上記受光素子を備えている。
【発明の効果】
【0029】
本発明の光ヘッドの構成において、光検出素子を構成する薄膜トランジスタをOFF領域で動作させるようにすることにより、微小な電流である光電流を効率よく検出し高精度で信頼性の高い光量検出が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0031】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における画像形成装置の露光部に設けられる光ヘッドの構成を示す断面図であり、図2はその要部の上面図であり、光源としてのエレクトロルミネッセント素子110およびその周辺の断面図であり、光検出素子120を構成する各層の上下配置の関係が示されている。この光ヘッドは、光検出素子120を構成する薄膜トランジスタ(TFT)のチャネル層121iの不純物濃度を調整することにより、閾値電圧が第1の電極の電位よりも高くなるように構成することにより、前記光検出素子120が、OFF領域で動作するように構成したことを特徴とする。図2に示すように、エレクトロルミネッセント素子110が、基板上に形成された光検出素子120を構成する薄膜トランジスタの上層に積層され、エレクトロルミネッセント素子110の光検出素子120側に位置する第1の電極111としての陽極が光検出素子120の光電変換部全体を覆うように形成されるため、エレクトロルミネッセント素子の第1の電極が、光検出素子の光電変換部全体に対向してなるようにし、この第1の電極111の電位に対し、光検出素子の閾値電圧が高くなるように調整し、前記光検出素子120が、OFF領域で動作するように構成したことを特徴とする。
【0032】
この構成により、光検出素子のドレイン電流が流れない状態で光電流のみを取り出すことができるため、効率よく高精度の光検出を行うことが可能となる。
【0033】
また、第1の電極が光検出素子の光電変換部全体を覆うように構成しているため、第1の電極が光検出素子のゲート電極として有効に作用し、安定した電位であるこの第1の電極の電位によって光検出素子のチャネル特性の制御が確実となり、安定した発光特性をもつ光ヘッドを提供することが可能となる。また発光層を挟んで第1の電極に対向するように設けられる第2の電極115としての陰極が上層側に形成される。
【0034】
また、この光ヘッドでは、光検出素子120の素子領域を構成する多結晶シリコンの島領域121の外縁がエレクトロルミネッセント素子の光出射領域ALEの外側となるように形成されている。このように、段差を形成する結果となる光検出素子120の島領域121すなわちここでは、素子領域ARの外縁がエレクトロルミネッセント素子の光出射領域ALEの外側となるように形成し、エレクトロルミネッセント素子の光出射領域に相当する領域には段差はなく、発光層の下地は平坦面を構成しており、したがって光ヘッドの有効領域となる光出射領域では光ヘッドの発光層が均一に形成される。
【0035】
本実施の形態の光ヘッドは、図1に示すように、表面に平坦化のためのベースコート層101を形成したガラス基板100上に、光検出素子120と、エレクトロルミネッセント素子110とを順次積層するとともに、光検出素子120の出力に応じて、駆動電流または駆動時間を補正しつつ前記エレクトロルミネッセント素子を駆動するためのスイッチングトランジスタ130としての薄膜トランジスタと、この薄膜トランジスタに接続されたチップICとしての駆動回路(140)を搭載したものである。そして、光検出素子120はベースコート層101表面に形成された多結晶シリコン層からなる島領域ARを帯状のi層からなるチャネル領域を隔てて 所望の濃度にドープすることによりソース領域121S、ドレイン領域121Dを形成し、この上層に形成される酸化シリコン膜からなる第1の絶縁膜122、第2の絶縁膜123を貫通するようにスルーホールを介して形成された多結晶シリコン層からなるソースおよびドレイン電極125S,125Dで構成される。また、この上層に保護層124としての窒化シリコン膜を介して、エレクトロルミネッセント素子110が形成されており、陽極となるITO(インジウム錫酸化物)111、保護膜124、発光層112、陰極113の順に各層が積層形成されている。
【0036】
一方、光検出素子120を構成する各層は、駆動トランジスタとしての選択トランジスタ130と同一の製造工程で形成される。すなわちチャネル領域131Cをはさんでソース領域132S,132Dが、光検出素子の半導体島と同一工程で形成され、これにコンタクトするソース・ドレイン電極134S,134Dが積層され、ゲート電極133とで選択トランジスタとしての薄膜トランジスタを構成している。
これら各層は、CVD法による半導体薄膜の形成、フォトリソグラフィによるパターニング、不純物イオンの注入、絶縁膜の形成、など通例の半導体プロセスを経て形成される。
【0037】
ここで、ガラス基板100は無色透明なガラスの一枚板である。ガラス基板100としては、例えば透明または半透明のソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英ガラス等の無機酸化物ガラス、無機フッ化物ガラス等の無機ガラスを用いることができる。
【0038】
その他の材料をガラス基板100として採用することも可能であり、例えば透明または半透明のポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリフッ化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリレート、非晶質ポリオレフィン、フッ素系樹脂ポリシロキサン、ポリシラン等のポリマー材料を用いた高分子フィルム等、あるいは透明または半透明のAs23、As4010、S40Ge10等のカルコゲノイドガラス、ZnO、Nb2O、Ta25、SiO、Si34、HfO2、TiO2等の金属酸化物および窒化物等の材料、或いは発光領域から出射される光を、基板を介すことなく取り出す場合には、不透明のシリコン、ゲルマニウム、炭化シリコン、ガリウム砒素、窒化ガリウム等の半導体材料、或いは顔料等を含んだ前述の透明基板材料、表面に絶縁処理を施した金属材料等から適宜選択して用いることができ、複数の基板材料を積層した積層基板を用いることもできる。
【0039】
またガラス基板100などの基板の表面あるいは基板内部には、後述するようにエレクトロルミネッセント素子110を駆動するための抵抗・コンデンサ・インダクタ・ダイオード・トランジスタ等からなる回路を集積化して形成しても良い。
【0040】
さらに用途によっては特定波長のみを透過する材料、光−光変換機能をもった特定の波長の光へ変換する材料などであってもよい。また基板は絶縁性であることが望ましいが、特に限定されるものではなく、エレクトロルミネッセント素子110の駆動を妨げない範囲或いは用途によって導電性を有していても良い。
【0041】
ガラス基板100の上には、ベースコート層101が形成される。ベースコート層101は、例えばSiNからなる第1の層と、SiOからなる第2の層の2つから構成される。SiN、SiOの各層は蒸着法等によっても形成できるが、スパッタ法により形成することが望ましい。
【0042】
ベースコート層101の上には、エレクトロルミネッセント素子110の選択トランジスタ130、及び光検出素子120が同一工程で形成される多結晶シリコン層を用いて形成される。エレクトロルミネッセント素子110の駆動用回路は、抵抗・コンデンサ・インダクタ・ダイオード・トランジスタ等の回路素子から構成されるが、光ヘッドの小型化を考慮すると薄膜トランジスタを用いることが望ましい。実施の形態1において光検出素子120は、図1から明らかなように発光層112を含むエレクトロルミネッセント素子110と、光の出力面となるガラス基板100の中間に位置しており、且つ光検出素子110の素子領域Aは光出射領域ALEよりも大きい。また光出射領域ALEは、光検出素子120の内側に存在するため、光を透過しない材料を光検出素子120に用いることはできない。したがって、発光層112から出力された光を妨げないようにするため、光検出素子120には透明性を有した材料を用いなければならない。透明性を有した光検出素子120の材料としては、例えば多結晶シリコンを選択することが望ましい。
【0043】
実施の形態1では、ベースコート層101の上に一様な半導体層を形成した後、半導体層に対してエッチング加工を施すことにより、選択トランジスタ130及び光検出素子120を同じ層から形成している。同一の金属層から島状に独立した選択トランジスタ130及び光検出素子120の金属層を一括で形成する加工は、製造工数の削減と製造コストの抑制に有利である。なお光検出素子120において、光出射領域ALEから出力される光を受ける素子領域Aは光検出素子120となる島状に構成された多結晶シリコンまたは非晶質シリコンの表面である。
【0044】
エレクトロルミネッセント素子110の発光層112に電界をかけるための選択トランジスタ130及び光検出素子120の上には、この酸化シリコン膜からなる第1の絶縁層122、第2の絶縁層123と保護層124とが、エレクトロルミネッセント素子の陽極としてのITO111との間でゲート絶縁膜として作用し、この膜厚による電圧降下によってITOの電位からの降下幅が決定される。このゲート絶縁膜3を構成する第1の絶縁層122、第2の絶縁層123と保護層124は、例えばSiO等から成り、蒸着法、スパッタ法等により形成される。
【0045】
また、選択トランジスタ130の真上にあるゲート絶縁膜としての第1の絶縁層122の表面にはゲート電極133が形成される。ゲート電極133の材料としては、例えばCrが用いられる。ゲート電極133は、蒸着法、スパッタ法等により形成される。
【0046】
ゲート電極133が形成された基板表面に、第2の絶縁層123が形成される。第2の絶縁層123は、これまで形成してきた積層体の全表面に渡って形成される。第2の絶縁層123は、例えばSiN等から成り、蒸着法、スパッタ法等により形成される。
【0047】
第2の絶縁層の上には、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dが形成される。光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極としてのソース電極125Sは光検出素子120のソース・ドレイン領域121S,121Dに接続されており、光検出素子120から出力される電気信号の伝達と光検出素子120の接地を行う。ソース電極134S及びドレイン電極134Dは、選択トランジスタ130のソース・ドレイン領域132S,132Dに接続されており、ソース電極134Sとドレイン電極134Dの間に所定の電位差を付与した状態で先述したゲート電極133に所定の電位を付与することで、選択トランジスタ130はスイッチング素子としての機能を有するようになり、発光素子としてのエレクトロルミネッセント素子110の駆動を行う回路として動作する。光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dの材料としては、例えばCr等の金属が用いられる。図1に示すように、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極は第1の絶縁膜122及び第2の絶縁層123を貫通して光検出素子120の端部と接続されており、ソース電極134S及びドレイン電極134Dも同様に第1の絶縁膜122及び第2の絶縁層123を貫通して選択トランジスタ130の端部に接続されている。したがって、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dの形成に先立ち、第1の絶縁膜122及び第2の絶縁層123に対して、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極としてのソース電極125Sと光検出素子120を接続するためのスルーホール、ソース電極134S及びドレイン電極134Dと選択トランジスタ130を接続するためのスルーホールを設ける必要がある。このスルーホールは光検出素子120の表面と選択トランジスタ130の表面、即ち光検出素子120と光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極としてのソース電極125Sの接触面と選択トランジスタ130とソース電極134S及びドレイン電極134Dの接触面が露出するまでの深さを持ったものであり、光検出素子120及び選択トランジスタ130の端部の真上にエッチング加工等により設けられる。エッチングにはハロゲン系のエッチングガスを用いる。フォトリソグラフィにより、開口を形成したレジストパターンで表面を被覆した状態でエッチングガスを導入し、パターニングする。(第1の絶縁膜122及び第2の絶縁層123のスルーホールを開口する。)このとき、エッチングガスには光検出素子120及び選択トランジスタ130を構成する材料と化学反応を生じないものを選択する。光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極としてのソース電極125Sと光検出素子120の接触面、ソース電極134S及びドレイン電極134Dと選択トランジスタ130の接触面を露出させる加工が終了した後、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dを形成する。ソース電極134S及びドレイン電極134Dは、センサ電極となる金属層を第2の絶縁層123の表面、先述したスルーホールの表面及び両センサ電極、光検出素子120の表面及び選択トランジスタ130の接触面の表面に一様に形成した後、この金属層に対してフォトリソグラフィにより形成したレジストパターンをマスクとしてエッチングを施し、一様の金属層を光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dに分割することにより得られる。
【0048】
光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dが形成された後に、保護膜124が形成される。保護膜124は、例えばSiN等から成り、蒸着法、スパッタ法等により形成される。
【0049】
保護膜124の上には、陽極111が形成される。陽極111は、例えばITO(インジウム錫酸化物)からなる。陽極111の構成材料としてはITOの他にIZO(亜鉛ドープ酸化インジウム)、ATO(SbをドープしたSnO2)、AZO(AlをドープしたZnO)、ZnO、SnO、In等を用いることができる。陽極111は図1のように、光検出素子120に対して真上にあたる保護膜124の表面に形成される。図1に示すように、陽極111は保護膜124を貫通してドレイン電極134Dの端部に接続されている。したがって陽極111の形成の前には、保護膜124に対して陽極111とドレイン電極134Dを接続するためのスルーホールを設ける必要がある。このスルーホールはドレイン電極134Dの表面、即ちドレイン電極134Dと陽極111との接触面が露出するまでの深さを持ったものであり、ドレイン電極134Dの端部に真上にエッチング加工等により設けられる。このエッチング加工が施された後、陽極111の層が形成される。陽極111は蒸着法等によっても形成できるがスパッタ法により形成することが望ましい。なお実施の形態1では陽極111としてITOを用いている。
【0050】
陽極111が形成された後、画素規制部としての窒化シリコン膜114が形成される。画素規制部としての窒化シリコン膜114の材料としては絶縁性が高く、絶縁破壊に対して強く、かつ製膜性が良くパターニング性が高いものが望ましい。実施の形態1では画素規制部としての窒化シリコン膜114を構成する材料として、窒化シリコン、窒化アルミニウムを用いている。画素規制部としての窒化シリコン膜114は、後述する発光層112と陽極111との間に設けられ、光出射領域ALEの領域外にある発光層112を陽極111から絶縁し、発光層112の発光する箇所を規制している。したがって、画素規制部としての窒化シリコン膜114に重なる発光層112の領域は非発光領域となり、画素規制部としての窒化シリコン膜114に重ならない領域が光出射領域ALEとなる。画素規制部としての窒化シリコン膜114は、発光層112の光出射領域ALEが光検出素子120の素子領域Aよりも小さくなるように規制し、且つ光出射領域ALEを光検出素子120の素子領域Aの内側に配置するように構成される。
【0051】
画素規制部としての窒化シリコン膜114が形成された後、発光層112が形成される。発光層112は無機発光材料、若しくは以降詳細に説明する高分子系、あるいは低分子系の有機発光材料から形成される。発光層112を形成する無機発光材料としては、チタン・リン酸カリウム、バリウム・ホウ素酸化物、リチウム・ホウ素酸化物等を用いることができる。発光層112を構成する高分子系の有機発光材料としては、可視領域で蛍光または燐光特性を有しかつ製膜性の良いものが望ましく、例えばポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレン等のポリマー発光材料等を用いることができる。また、発光層112を構成する低分子系の有機発光材料としては、Alq3やBe−ベンゾキノリノール(BeBq)の他に、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)−1,3,4−チアジアゾール、4,4'−ビス(5,7−ベンチル−2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン、4,4'−ビス〔5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル〕スチルベン、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ベンチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフィン、2,5−ビス(〔5−α,α−ジメチルベンジル〕−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、2,5−ビス〔5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル〕−3,4−ジフェニルチオフェン、2,5−ビス(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、4,4'−ビス(2−ベンゾオキサイゾリル)ビフェニル、5−メチル−2−〔2−〔4−(5−メチル−2−ベンゾオキサイゾリル)フェニル〕ビニル〕ベンゾオキサイゾリル、2−〔2−(4−クロロフェニル)ビニル〕ナフト〔1,2−d〕オキサゾール等のベンゾオキサゾール系、2,2'−(p−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系、2−〔2−〔4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニル〕ビニル〕ベンゾイミダゾール、2−〔2−(4−カルボキシフェニル)ビニル〕ベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系等の蛍光増白剤や、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)マグネシウム、ビス(ベンゾ〔f〕−8−キノリノール)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウムオキシド、トリス(8−キノリノール)インジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、8−キノリノールリチウム、トリス(5−クロロ−8−キノリノール)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノール)カルシウム、ポリ〔亜鉛−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリノニル)メタン〕等の8−ヒドロキシキノリン系金属錯体やジリチウムエピンドリジオン等の金属キレート化オキシノイド化合物や、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ジスチリルベンゼン、1,4−ビス(2−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)2−メチルベンゼン等のスチリルベンゼン系化合物や、2,5−ビス(4−メチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス(4−エチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス〔2−(1−ナフチル)ビニル〕ピラジン、2,5−ビス(4−メトキシスチリル)ピラジン、2,5−ビス〔2−(4−ビフェニル)ビニル〕ピラジン、2,5−ビス〔2−(1−ピレニル)ビニル〕ピラジン等のジスチルピラジン誘導体や、ナフタルイミド誘導体や、ペリレン誘導体や、オキサジアゾール誘導体や、アルダジン誘導体や、シクロペンタジエン誘導体や、スチリルアミン誘導体や、クマリン系誘導体や、芳香族ジメチリディン誘導体等が用いられる。さらに、アントラセン、サリチル酸塩、ピレン、コロネン等も用いられる。あるいは、ファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム等の燐光発光材料を用いることもできる。高分子系材料、低分子系材料からなる発光層112は、材料をトルエン、キシレン等の溶媒に溶解したものをスピンコート法で層状に成形し、溶解液中の溶媒を揮発させることで得られる。
【0052】
また実施の形態1では、発光層112を便宜上単一の層として記述しているが、発光層112を陽極111の側から順に正孔輸送層/電子ブロック層/上述した有機発光材料層(ともに図示せず)の三層構造としてもよいし、発光層112を陰極113の側から順に電子輸送層/有機発光材料層(ともに図示せず)の二層構造、あるいは陽極111の側から順に正孔輸送層/有機発光材料層の2層構造(ともに図示せず)、あるいは陰極113の側から順に正孔注入層/正孔輸送層/電子ブロック層/有機発光材料層/正孔ブロック層/電子輸送層/電子注入層のごとく7層構造(ともに図示せず)としてもよい。またはより単純に発光層112が上述した有機発光材料のみからなる単層構造であってもよい。このように実施の形態1において発光層112と呼称する場合は、発光層112が正孔輸送層、電子ブロック層、電子輸送層などの機能層を有する多層構造である場合も含んでいる。後に説明する他の実施の形態についても同様である。
【0053】
上述した機能層における正孔輸送層としては、正孔移動度が高く、透明で製膜性の良いものが望ましくTPDの他に、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物や、1,1−ビス{4−(ジ−P−トリルアミノ)フェニル}シクロヘキサン、4,4',
4''−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N',N'−テトラキス(P−トリル)−P−フェニレンジアミン、1−(N,N−ジ−P−トリルアミノ)ナフタレン、4,4'
−ビス(ジメチルアミノ)−2−2'−ジメチルトリフェニルメタン、N,N,N',N'
−テトラフェニル−4,4'−ジアミノビフェニル、N、N'−ジフェニル−N、N'−ジ
−m−トリル−4、4'−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾ−ル等の芳香族第
三級アミンや、4−ジ−P−トリルアミノスチルベン、4−(ジ−P−トリルアミノ)−4'−〔4−(ジ−P−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン等のスチルベン化合物や、
トリアゾール誘導体や、オキサジザゾール誘導体や、イミダゾール誘導体や、ポリアリールアルカン誘導体や、ピラゾリン誘導体や、ピラゾロン誘導体や、フェニレンジアミン誘導体や、アニールアミン誘導体や、アミノ置換カルコン誘導体や、オキサゾール誘導体や、スチリルアントラセン誘導体や、フルオレノン誘導体や、ヒドラゾン誘導体や、シラザン誘導体や、ポリシラン系アニリン系共重合体や、高分子オリゴマーや、スチリルアミン化合物や、芳香族ジメチリディン系化合物や、ポリ−3,4エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、テトラジヘクシルフルオレニルビフェニル(TFB)あるいはポリ3−メチルチオフェン(PMeT)といったポリチオフェン誘導体等の有機材料が用いられる。また、ポリカーボネート等の高分子中に低分子の正孔輸送層用の有機材料を分散させた、高分子分散系の正孔輸送層も用いられる。またMoO、V、WO、TiO、SiO、MgO等の無機酸化物を用いることもある。またこれらの正孔輸送材料は電子ブロック材料として用いることもできる。
【0054】
上述した機能層における電子輸送層としては、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)等のオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、シロール誘導体からなるポリマー材料等、あるいは、ビス(2−メチル−8−キノリノレート)−(パラ−フェニルフェノレート)アルミニウム(BAlq)、バソフプロイン(BCP)等が用いられる。またこれらの電子輸送層を構成可能な材料は正孔ブロック材料として用いることもできる。
【0055】
発光層112が形成された後、陰極113が形成される。陰極113は、例えばAl等の金属を蒸着法等によって層状に形成することにより得られる。有機エレクトロルミネッセント素子110の陰極113としては仕事関数の低い金属もしくは合金、例えばAg、Al、In、Mg、Ti等の金属や、Mg−Ag合金、Mg−In合金等のMg合金や、Al−Li合金、Al−Sr合金、Al−Ba合金等のAl合金等が用いられる。あるいは、Ba、Ca、Mg、Li、Cs等の金属、あるいは、LiF、CaOといったこれら金属のフッ化物や酸化物からなる有機物層に当接する第1の電極層と、その上に形成されるAg、Al、Mg、In等の金属材料からなる第2の電極とからなる金属の積層構造を用いることもできる。
【0056】
図1に示すような実施の形態1の光ヘッドは、有機エレクトロルミネッセント素子の選択トランジスタ130側から光を出力する方式を採用しており、このような有機エレクトロルミネッセント素子の構造をボトムエミッションという。ボトムエミッション構造は、ガラス基板100の側から光を取り出すため、既に述べたように光検出素子120は透明度の高い材料、例えば多結晶シリコン(ポリシリコン)で構成される必要がある。多結晶シリコンで構成された光検出素子120は非晶質シリコン(アモルファスシリコン)で構成したものと比較して光電流の生起能力が低いという問題があるが、例えばコンデンサ(図示せず)を有機エレクトロルミネッセント素子110の近傍に設け、光検出素子120から出力された電流に基づく電荷をコンデンサに所定期間蓄積して、その後に電圧変換を行なうような処理回路を設けることで解決することができる。ボトムエミッション構造の場合は、光を取り出す側の電極(陽極)の透明化が容易なため、製造が簡単になるという利点がある。
【0057】
図2は、本発明の実施の形態1における光ヘッドの光検出素子近傍の構成を示した構成平面図である。
【0058】
図2に示すように実施の形態1の光ヘッドは、複数のエレクトロルミネッセント素子110を主走査方向(素子列の方向)に配置して構成されており、1つの発光領域(光出射領域ALE)に対して、1つの光検出素子120を対応させて配置している。このような構造とすることで、光検出素子120によって各有機エレクトロルミネッセント素子110の発光光量を独立して計測できる。即ち同時に複数の有機エレクトロルミネッセント素子110の光量を計測することが可能となり、計測時間を大幅に短縮できる。
【0059】
図2では、光検出素子120、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、光出射領域ALE、素子領域A、発光層112の陽極となるITO(インジウム錫酸化物)111、コンタクトホールH及びドレイン電極134Dの相互関係が示されている。光検出素子120は、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極としてのソース電極125Sと接続されている。光検出素子出力電極としてのドレイン電極125Dは、光検出素子120が光の補正のために出力する電気信号を補正回路(図示せず)に伝達する電極である。この電気信号を基に、補正回路が生成するフィードバック信号が決定され、このフィードバック信号を基に光の補正に必要な処理が行われる。実施の形態1ではこのフィードバック信号に基づいて各エレクトロルミネッセント素子110の発光光量を補正するようにしており、図示しないドライバ回路によって各エレクトロルミネッセント素子110を駆動する電流値を制御している。このように実施の形態1では光検出素子120の出力に基づいて発光光量を制御しているが、フィードバック信号に基づいて各エレクトロルミネッセント素子110の駆動時間を制御する、いわゆるPWM制御を行なうように構成してもよい。
【0060】
光検出素子接地電極としてのソース電極125Sは、光検出素子120の接地を行う電極である。発光素子としてのエレクトロルミネッセント素子110の陽極であるITO(インジウム錫酸化物)111は、選択トランジスタ130のドレイン電極134Dと接続されており、エレクトロルミネッセント素子110はドレイン電極134Dを介して選択トランジスタ130で制御されている。
【0061】
図1、図2に示すように実施の形態1の光ヘッドは、島状に形成された多結晶シリコン(ポリシリコン)から構成される光検出素子120を主走査方向に列状に配置し、各有機エレクトロルミネッセント素子110においては画素規制部としての窒化シリコン膜114により光出射領域ALEが制限された発光層112の下部に光出射領域ALEよりも大きな素子領域Aを有した光検出素子120を配置したことが分かる。光出射領域ALEよりも光検出素子120の素子領域A(島状に形成された多結晶シリコンの島状部分)を大きくすることで、発光層112の局所的な層厚の変化を抑えることができ、発光層112を流れる電流の偏りを抑えることができる。したがって、均一な発光分布と寿命の向上を実現した光ヘッドを製造することができる。
【0062】
さらに、実施の形態1の光ヘッドに搭載される島状に構成された光検出素子120の素子領域Aは発光領域すなわち光出射領域ALEに比べて大きいため、発光層からの出力光を光の補正に用いる電気信号へと効率的に変換することができる。
【0063】
次に、本発明の光ヘッドで用いられる光量補正回路について説明する。光量補正回路は、図3に等価回路を示すように、チャージアンプを備えた駆動用IC150と、この駆動用IC150の入力端子に接続されるように前述したガラス基板100に集積化して形成された補正回路部Cとで構成され、この補正回路部Cは前述したスイッチングトランジスタ130と、光検出素子120と、この光検出素子に並列接続され、光検出素子の出力電流をチャージするコンデンサ140とで構成される。このコンデンサ140は図1の断面図に図示していないが、光検出素子のソース電極134S,ドレイン電極134Dにそれぞれ接続されるようにこれらと同一工程で形成された導電性膜で、第1および第2の絶縁膜122,123を挟むことによって形成されている。
【0064】
ここで光検出素子は、光検出素子は、エレクトロルミネッセント素子からの光によって多結晶シリコン層121iで光電変換が行われ、ソース領域からドレイン領域に流れる電流を光電流として取り出すことにより、光量を検出するものである。しかしながら、前述したように、エレクトロルミネッセント素子110の陽極であるITO電極111をゲート電極とし、このゲート電極の電位によって光検出素子のチャネル領域である多結晶シリコン層121iに電界がかかり、これにより、ドレイン電流Iが流れることになる。このドレイン電流Iが上記光電変換電流に付加されることになるため、ドレイン電極125Dからセンサ出力として補正回路部C(図3参照)に出力される光電変換電流は実際の光電変換電流にドレイン電流Iを加えたものとなる。このため光量検出精度が低下するという問題がある。このゲート電圧Vgとドレイン電流IDとの関係を測定した結果を図4に実線で示す。この図から明らかなように、この薄膜トランジスタのドレイン電流が0である領域すなわち、トランジスタの動作がオフとなる領域(OFF領域)で使用するのが望ましい。
【0065】
望ましくは、図4に破線で示すように、ゲート電位をマイナス方向にシフトさせるようにすることにより、薄膜トランジスタをOFF領域で使用することができ、暗電流をほとんど皆無とすることができる。
また、この光検出素子を構成する薄膜トランジスタのチャネル領域となる多結晶シリコン層121i全体がエレクトロルミネッセント素子の陽極であるITO電極で完全に覆われている状態が、ゲート電界によってチャネルを制御するのにより有効である。
本発明では、光検出素子の出力を高精度に検出することは極めて重要であるため、光検出素子を構成する薄膜トランジスタをOFF状態で検出することが重要である。
また、この光検出素子を構成する薄膜トランジスタのチャネル領域121iとなる多結晶シリコン層全体がエレクトロルミネッセント素子の陽極であるITO電極で完全に覆われている状態が、ゲート電界によってチャネルを制御するのにより有効である。
【0066】
そしてこの光検出素子の出力は図5(a)乃至(g)にタイミングチャートを示すように選択トランジスタ130のスイッチングにより、コンデンサ140に所望の回数分の点灯時間分チャージされた電流を取り出すことにより、高精度の光量検出が可能となる。ここで図5(a)は、チャージの状態を示す図、図5(b)は、選択トランジスタの動作を示す図、図5(c)は、エレクトロルミネッセント素子の点灯タイミングを示す図、図5(d)は、容量素子140の電位を示す図、図5(e)は、オペアンプの出力電圧を示す図、図5(f)は、データの読み出し動作を示す図、図5(g)は、光量検出信号示す図、である。
なお、光検出素子の出力を高精度に検出することは極めて重要であるため、光検出素子を構成する薄膜トランジスタをOFF状態で検出することが重要である。したがって、光検出素子のゲート電位を調整することにより、所望の検出精度を得ることができる。
【0067】
まず、選択トランジスタ130がONとなり、容量素子140に初期電圧Vrefをチャージする(S1:リセットステップ)。
そして、この選択トランジスタ130がOFFとなると、容量素子140にチャージされた電荷は光検出素子120を流れる光電流により減少する(S2:点灯ステップ)。
この状態でチャージアンプ150のスイッチングトランジスタ153がOFFとなり、チャージアンプは測定可能な状態となる(S3:測定開始ステップ)。
そして、選択トランジスタ130がONとなり、容量素子140で失われた電荷はチャージアンプの容量素子152から供給される。その結果チャージアンプ150のオペアンプの出力電圧Vr0は上昇する。この期間も光検出素子の光電流は流れ、Vr0は上昇するが、短期間の微小電流であるため影響はほとんど無視できる(S4:電荷転送ステップ)。
そして選択トランジスタ130がOFFとなり、Vr0が確定する。この電圧をADコンバータで取り込み、測光動作が終了し、ADコンバータの出力D0が確定する(S5:リードステップ)。
【0068】
なお本発明の実施の形態1の変形例として、図6に示すように、ガラス基板の裏面側にクロム薄膜からなる遮光膜104を形成し、この開口により第2の光出射領域ALE1を規定している。この第2の光出射領域ALE1を前記実施の形態1で説明した画素規定部としての窒化シリコン膜114の開口よりも小さく形成することにより、窒化シリコン膜114に起因する発光層の段差部を光出射領域から除外することができ、発光層をより均一化することが可能となる。他の構成については前記実施の形態1と同様である。
【0069】
なお、上記光ヘッドにおいて、エレクトロルミネッセント素子の第1の電極111としての陽極は、前記チャネル領域121iと同程度の幅を持つように形成するようにしてもよい。
この構成により、ゲート電界が高効率で印加される上、エレクトロルミネッセント素子の発光層そのものが平坦面上に形成されることになり、下地の段差に起因する発光層の膜厚のばらつきを回避することが可能となる。また、このときソース・ドレイン領域上は発光領域とならないため、光出射領域と発光領域をほぼ一致させることもでき、微細なライン状の光出射領域を得ることができる。従って、微細化に伴う高ピッチ化に際してもクロストークの回避が可能となる。このように副走査方向に小さい露光スポット(ライン)を得ることができるため、面積変調に基づく多値再現に有効となる。
露光ヘッドと感光体は副走査方向に相対移動しており、この相対移動に伴って、露光面積が変わる。面積変調という面だけから考えると、理想的には露光スポット形状は、副走査方向に幅を持たない一本の線であることが望ましい。ただし、この場合の発光輝度は無限大でなくてはならない。つまり、この場合は副走査方向の発光領域が小さくなるために、発光面積が小さくなり、露光条件としては、エネルギー的には厳しくなるため、高輝度化を図る必要がある。
【0070】
(実施の形態2)
次に本発明の図7は、光ヘッドをトップエミッション構造で構成した場合の断面図である。トップエミッション構造とは、ボトムエミッション構造とは逆に発光層112から出力された光を発光層112の上部にある陰極側に出力する形式のことである。図3の構成では、ガラス基板100の上に金属からなる反射層105を設け、光の出力が陰極側にされる構造になっている。
【0071】
この構造を採用した場合は、図示するように有機エレクトロルミネッセント素子110の発光層112で生起した光のうち、光検出素子120とは反対の方向に出射された光で図示しない感光体(後に説明する図9の28Y〜28Kを参照)を露光することとなる。一方、発光層112にて生起される光は露光に供する方向とは逆方向、即ち光検出素子120側にも出射されており、この光を光検出素子120で受光することとなる。
【0072】
トップエミッション構造を採用した場合、露光に供する光は光検出素子120を透過する必要がないため、光検出素子120は透明度の高い多結晶シリコンを敢えて用いる必要はなく、光電流の生起能力が高い非晶質シリコン(アモルファスシリコン)で光検出素子120を構成するとよい。
【0073】
さてトップエミッション構造を実施するためには、陰極を透明な金属材料で構成する必要があるが技術的に難しい。そこで図7のように、ごく薄いAl、Ag等の金属層(薄膜陰極)113aとITOのような透明電極113bとを積層させて陰極として用いている。金属層113aはごく薄いため、透光性が確保された陰極が実現できる。トップエミッション構造は、ボトムエミッション構造に比べて製造工数が増えるため製造コストは増加するが、発光効率の良い光ヘッドを構成することができる。
【0074】
以上詳細に光ヘッドを構成するエレクトロルミネッセント素子110および光検出素子120の構成および作用について説明した。実施の形態1では光ヘッドにおける発光素子(エレクトロルミネッセント素子)列を一列として説明したが、これを複数列に構成して発光光量を実質的に高めるように構成してもよい。
【0075】
また上述してきたエレクトロルミネッセント素子110と光検出素子120の構造については、これを2次元的に配置して表示装置に応用することももちろん可能である。
【0076】
なお本発明の実施の形態2の変形例として、図8に示すように、ガラス基板の裏面側にクロム薄膜からなる遮光膜106を形成し、この開口により第2の光出射領域ALE1を規定している。この第2の光出射領域ALE1を前記実施の形態1で説明した画素規定部としての窒化シリコン膜114の開口よりも小さく形成することにより、窒化シリコン膜114に起因する発光層の段差部を光出射領域から除外することができ、発光層をより均一化することが可能となる。他の構成については前記実施の形態1と同様である。
【0077】
(実施の形態3)
図9は本発明の光ヘッドを用いた画像形成装置21の構成を示した図である。図9において、画像形成装置21は装置内にイエロー現像ステーション22Y、マゼンタ現像ステーション22M、シアン現像ステーション22C、ブラック現像ステーション22Kの4色分の現像ステーションを縦方向に階段状に配列し、その上方には記録紙23が収容される給紙トレイ24を配設すると共に、各現像ステーション22Y〜22Kに対応した箇所には給紙トレイ24から供給された記録紙23の搬送路となる記録紙搬送路25を上方から下方の縦方向に配置したものである。
【0078】
現像ステーション22Y〜22Kは、記録紙搬送路25の上流側から順に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を形成するものであり、イエロー現像ステーション22Yは感光体28Y、マゼンタ現像ステーション22Mには感光体28M、シアン現像ステーション22Cには感光体28C、ブラック現像ステーション22Kには感光体28Kが含まれ、更に各現像ステーション22Y〜22Kには図示しない現像スリーブ、帯電器等、一連の電子写真方式における現像プロセスを実現する部材が含まれている。
【0079】
更に各現像ステーション22Y〜22Kの下部には感光体28Y〜28Kの表面を露光して静電潜像を形成するための露光装置33Y、33M、33C、33Kが配置されている。なお実施の形態1で示した光ヘッドは、露光装置33Y、33M、33C、33Kに搭載されている。
【0080】
さて現像ステーション22Y〜22Kは充填された現像剤の色が異なっているが、構成は現像色に関わらず同一であるため、以降の説明を簡単にするため特に必要がある場合を除いて現像ステーション22、感光体28、露光装置33のごとく特定の色を明示せずに説明する。
【0081】
図10は本発明の実施の形態2の画像形成装置21における現像ステーション22の周辺を示す構成図である。図10において、現像ステーション22の内部にはキャリアとトナーを混合物である現像剤26が充填されている。27a、27bは現像剤26を攪拌する攪拌パドルであり、攪拌パドル27aと27bの回転によって現像剤26中のトナーはキャリアとの摩擦によって所定の電位に帯電されると共に、現像ステーション22の内部を巡回することでトナーとキャリアが十分に攪拌混合される。感光体28は図示しない駆動源によって方向D3に回転する。29は帯電器であり感光体28の表面を所定の電位に帯電する。30は現像スリーブ、31は薄層化ブレードである。現像スリーブ30は内部に複数の磁極が形成されたマグロール32を有している。薄層化ブレード31によって現像スリーブ30の表面に供給される現像剤26の層厚が規制されると共に、現像スリーブ30は図示しない駆動源によって方向D4に回転し、この回転およびマグロール32の磁極の作用によって現像剤26は現像スリーブ30の表面に供給され、後述する露光装置によって感光体28に形成された静電潜像を現像するとともに、感光体28に転写されなかった現像剤26は現像ステーション22の内部に回収される。
【0082】
33は既に説明した露光装置である。実施の形態1の光ヘッドを搭載した露光装置33を応用した画像形成装置21は、既に述べたように露光装置33が長期に渡って安定に潜像を形成できるため、製品寿命が長く、さらに実施の形態1の光ヘッドを搭載した露光装置33は所望の形状の静電潜像を長期にわたって得られるために常に高画質の画像を形成することができる。
【0083】
さて実施の形態2における露光装置33は有機エレクトロルミネッセント素子を600dpi(dot/inch)の解像度で直線状に配置したもので、帯電器29によって所定の電位に帯電した感光体28に対し、画像データに応じて選択的に有機エレクトロルミネッセント素子をON/OFFすることで、最大A4サイズの静電潜像を形成する。この静電潜像部分に現像スリーブ30の表面に供給された現像剤26のうちトナーのみが付着し、静電潜像が顕画化される。
【0084】
感光体28に対し記録紙搬送路25と対向する位置には転写ローラ36が設けられており、図示しない駆動源により方向D5に回転する。転写ローラ36には所定の転写バイアスが印加されており、感光体28上に形成されたトナー像を、記録紙搬送路25を搬送されてきた記録紙に転写する。
【0085】
以降図9に戻って説明を続ける。
【0086】
これまで説明してきたように、実施の形態2における画像形成装置21は複数の現像ステーション22Y〜22Kを縦方向に階段状に配列したタンデム型のカラー画像形成装置であり、カラーインクジェットプリンタと同等クラスのサイズを目指すものである。現像ステーション22Y〜22Kは複数のユニットが配置されるため、画像形成装置21の小型化を図るためには現像ステーション22Y〜22Kそのものの小型化と共に、現像ステーション22Y〜22Kの周辺に配置される作像プロセスに関与する部材を小さくし、現像ステーション22Y〜22Kの配置ピッチを極力小さくする必要がある。
【0087】
オフィス等においてデスクトップに画像形成装置21を設置した際のユーザの使い勝手、特に給紙時や排紙時の記録紙23へのアクセス性を考慮すると、画像形成装置21の底面から給紙口65までの高さは250mm以下にすることが望ましい。これを実現するためには画像形成装置21の全体の構成の中で現像ステーション22Y〜22K全体の高さを100mm程度に抑える必要がある。
【0088】
しかしながら既存の例えばLEDヘッドは厚みが15mm程度あり、これを現像ステーション22Y〜22K間に配置すると目標を達成することが困難である。本発明者等の検討結果によれば露光装置33の厚みを7mm以下とすると、現像ステーション22Y〜22K間の隙間に露光装置33Y〜33Kを配置しても現像ステーション全体の高さを100mm以下に抑えることが可能である。
【0089】
37はトナーボトルであり、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーが格納されている。トナーボトル37から各現像ステーション22Y〜22Kには、図示しないトナー搬送用のパイプが配設され、各現像ステーション22Y〜22Kにトナーを供給している。
【0090】
38は給紙ローラであり、図示しない電磁クラッチを制御することで方向D1に回転し、給紙トレイ24に装填された記録紙23を記録紙搬送路25に送り出す。
【0091】
給紙ローラ38と最上流のイエロー現像ステーション22Yの転写部位との間に位置する記録紙搬送路25には、入口側のニップ搬送手段としてレジストローラ39、ピンチローラ40対が設けられている。レジストローラ39、ピンチローラ40対は、給紙ローラ38により搬送された記録紙23を一時的に停止させ、所定のタイミングでイエロー現像ステーション22Yの方向に搬送する。この一時停止によって記録紙23の先端がレジストローラ39、ピンチローラ40対の軸方向と平行に規制され、記録紙23の斜行を防止する。
【0092】
41は記録紙通過検出センサである。記録紙通過検出センサ41は反射型センサ(フォトリフレクタ)によって構成され、反射光の有無で記録紙23の先端および後端を検出する。
【0093】
さてレジストローラ39の回転を開始すると(図示しない電磁クラッチによって動力伝達を制御し、回転ON/OFFを行う)記録紙23は記録紙搬送路25に沿ってイエロー現像ステーション22Yの方向に搬送されるが、レジストローラ39の回転開始のタイミングを起点として、各現像ステーション22Y〜22Kの近傍に配置された露光装置33Y〜33Kによる静電潜像の書き込みタイミングが独立して制御される。
【0094】
最下流のブラック現像ステーション22Kの更に下流側に位置する記録紙搬送路25には出口側のニップ搬送手段として定着器43が設けられている。定着器43は加熱ローラ44と加圧ローラ45から構成されている。加熱ローラ44は表面から近い順に、発熱ベルト、ゴムローラ、芯材(共に図示せず)から構成されている多層構造のローラである。このうち発熱ベルトは更に3層構造を有するベルトであり、表面に近い方から離型層、シリコンゴム層、基材層(共に図示せず)から構成される。離型層は厚み約20〜30マイクロメートルのフッ素樹脂からなり、加熱ローラ44に離型性を付与する。シリコンゴム層は約170マイクロメートルのシリコンゴムで構成され、加圧ローラ45に適度な弾性を与える。基材層は鉄・ニッケル・クロム等の合金である磁性材料によって構成されている。
【0095】
26は励磁コイルが内包された背面コアである。背面コア46の内部には表面が絶縁された銅製の線材(図示せず)を所定本数束ねた励磁コイルを加熱ローラ44の回転軸方向に延伸し、かつ加熱ローラ44の両端部において、加熱ローラ44の周方向に沿って周回して形成されている。励磁コイルに半共振型インバータである励磁回路(図示せず)から約30kHzの交流電流を印加すると、背面コア46と加熱ローラ44の基材層によって構成される磁路に磁束が生じる。この磁束によって加熱ローラ44の発熱ベルトの基材層に渦電流が形成され基材層が発熱する。基材層で生じた熱はシリコンゴム層を経て離型層まで伝達され、加熱ローラ44の表面が発熱する。
【0096】
47は加熱ローラ44の温度を検出するための温度センサである。温度センサ47は金属酸化物を主原料とし、高温で焼結して得られるセラミック半導体であり、温度に応じて負荷抵抗が変化することを応用して接触した対象物の温度を計測することができる。温度センサ47の出力は図示しない制御装置に入力され、制御装置は温度センサ47の出力に基づいて背面コア46内部の励磁コイルに出力する電力を制御し、加熱ローラ44の表面温度が約170゜Cとなるように制御する。
【0097】
この温度制御がなされた加熱ローラ44と加圧ローラ45によって形成されるニップ部に、トナー像が形成された記録紙23が通紙されると、記録紙23上のトナー像は加熱ローラ44と加圧ローラ45によって加熱および加圧され、トナー像が記録紙23上に定着される。
【0098】
48は記録紙後端検出センサであり、記録紙23の排出状況を監視するものである。52はトナー像検出センサである。トナー像検出センサ52は発光スペクトルの異なる複数の発光素子としてのエレクトロルミネッセント素子(共に可視光)と単一の受光素子(光検出素子)を用いた反射型センサユニットであり、記録紙23の地肌と画像形成部分とで、画像色に応じて吸収スペクトルが異なることを利用して画像濃度を検出するものである。またトナー像検出センサ52は画像濃度のみならず、画像形成位置も検出できるため、実施の形態1における画像形成装置21ではトナー像検出センサ52を画像形成装置21の幅方向に2ヶ所設け、記録紙23上に形成した画像位置ずれ量検出パターンの検出位置に基づき、画像形成タイミングを制御している。
【0099】
53は記録紙搬送ドラムである。記録紙搬送ドラム53は表面を200マイクロメートル程度の厚さのゴムで被覆した金属製ローラであり、定着後の記録紙23は記録紙搬送ドラム53に沿って方向D2に搬送される。このとき記録紙23は記録紙搬送ドラム53によって冷却されると共に、画像形成面と逆方向に曲げられて搬送される。これによって記録紙全面に高濃度の画像を形成した場合などに発生するカールを大幅に軽減することができる。その後、記録紙23は蹴り出しローラ55によって方向D6に搬送され、排紙トレイ59に排出される。
【0100】
54はフェイスダウン排紙部である。フェイスダウン排紙部54は支持部材56を中心に回動可能に構成され、フェイスダウン排紙部54を開放状態にすると、記録紙23は方向D7に排紙される。このフェイスダウン排紙部54は閉状態では記録紙搬送ドラム53と共に記録紙23の搬送をガイドするように、背面に搬送経路に沿ったリブ57が形成されている。
【0101】
58は駆動源であり、実施の形態1ではステッピングモータを採用している。駆動源58によって、給紙ローラ38、レジストローラ39、ピンチローラ40、感光体(28Y〜28K)、および転写ローラ(36Y〜36K)を含む各現像ステーション22Y〜22Kの周辺部、定着器43、記録紙搬送ドラム53、蹴り出しローラ55の駆動を行っている。
【0102】
61はコントローラであり、外部のネットワークを介して図示しないコンピュータ等からの画像データを受信し、プリント可能な画像データを展開、生成する。
【0103】
62はエンジン制御部である。エンジン制御部62は画像形成装置21のハードウェアやメカニズムを制御し、コントローラ61から転送された画像データに基づいて記録紙23にカラー画像を形成すると共に、画像形成装置21の制御全般を行っている。
【0104】
63は電源部である。電源部63は、露光装置33Y〜33K、駆動源58、コントローラ61、エンジン制御部62へ所定電圧の電力供給を行うと共に、定着器43の加熱ローラ44への電力供給を行っている。また感光体28の表面の帯電、現像スリーブ(図7における図番30を参照)に印加する現像バイアス、転写ローラ36に印加する転写バイアス等のいわゆる高圧電源系もこの電源部に含まれている。
【0105】
また電源部63には電源監視部64が含まれ、少なくともエンジン制御部62に供給される電源電圧をモニターできるようになっている。このモニター信号はエンジン制御部62において検出され、電源スイッチのオフや停電等の際に発生する電源電圧の低下を検出している。
【0106】
以上の説明においては本発明をカラー画像形成装置に適用した場合について説明したが、たとえばブラックなど単色の画像形成装置に適用することもできる。また、カラー画像形成装置に適用した場合、現像色はイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4色に限定されるものではない。
【0107】
本発明の画像形成装置21は、発光分布が均一で、耐久性に優れた露光装置33Y〜33Kを搭載しているため、画質と耐久性に優れている。
【0108】
(実施の形態4)
次に本発明の実施の形態4について説明する。
前記実施の形態1では、光検出素子を構成する薄膜トランジスタの閾値電圧を、チャネル領域の不純物濃度によって調整したが、本実施の形態では光検出素子を調整するのではなく、この薄膜トランジスタ(120)のゲート・ドレイン間に図11(a)に示すように電圧源を接続し、ゲート電位を、この薄膜トランジスタが常にOFF領域となるような電位に、維持するようにしたことを特徴とするものである。この電圧源は、例えば図11(b)に等価回路を示すように、コンデンサを用いた電圧源で構成することも可能である。
このように、本実施の形態では、図11(a)および(b)に等価回路を示すように、トランジスタスイッチ回路網190を接続し、レベルシフト回路を構成することにより、常にゲート電位をこの薄膜トランジスタがOFF領域となるような電位に維持する。
【0109】
次に図11(b)と図12を用いて、電気回路によるレベルシフト動作を説明する。
190は図11(b)に示された電圧源回路は、電圧ソース+Vbの接続されたトランジスタ1904と、VITOに接続されたトランジスタ1903と、Vpに接続されたトランジスタ1902と電圧を保持するコンデンサ1901を具備してなるものである。
この回路は信号Bにより動作し、信号Bが高電位のときトランジスタ1904とトランジスタ1902がONとなり+Vbがコンデンサ1901に印加され、コンデンサ1901に充電される。次に信号Bが低電位に変わると、トランジスタ1904およびトランジスタ1902はOFFとなりトランジスタ1903がONになる。そのときコンデンサ1901はVITOと接続された電圧源となる。次に信号Aが高電位になると、コンデンサ1901はセンサに接続され、センサのソース・ドレイン間に電位差を与え、薄膜トランジスタ120のゲート電位を所望の値にシフトさせる。
【0110】
このトランジスタスイッチ回路網190は図11(b)に示すように(図11(b)は図11(a)の要部を示す図である)、光検出素子を構成する薄膜トランジスタ120に対してゲート同士およびドレイン同士を接続された第1のトランジスタTrAと、これらのドレインにキャパシタBcを介してドレインを接続された第2のトランジスタTrBとを具備してなるものである。なおこの第2のトランジスタTrBのゲートは、第1のトランジスタTrAおよび光検出素子を構成する薄膜トランジスタ120のゲートに共通接続されている。
この第1および第2のトランジスタTrA,Bに順次、信号電圧A,Bを印加して、これらをオンオフすることにより、薄膜トランジスタ120のゲート電位を所望の値にシフトさせる。
【0111】
このときの各トランジスタの電位を図12に示す。図12(a)は、スイッチング用の薄膜トランジスタのオンオフ電位、図12(b)は、エレクトロルミネッセント素子の陽極111の電位VITOを示す図、図12(c)は、光検出素子とレベルシフト回路を構成する第1のトランジスタTrAのゲート電位、図12(d)は、第2のトランジスタTrBのゲート電位、図12(e)は光検出回路のキャパシタVcへの出力電流をそれぞれ示す。なお、本発明では陽極すなわちITOの電位がプラスのときに、信号Bが接続されているトランジスタをOFFにし、BCと電源ラインを切り離したあと、信号Aが接続されているトランジスタをONにすることにより、BCに溜まった電圧によって常にOFF領域で駆動することが容易に可能となる。
【0112】
この図12(e)に示す光検出回路のキャパシタVcへの出力電流からあきらかなように、本実施の形態のトランジスタスイッチ回路網を用いたレベルシフト回路によって光検出素子としての薄膜トランジスタのゲートレベルを0V以下にシフトすることにより、この薄膜トラジスタをOFF領域で使用することができ、安定して、ばらつきのない出力電流を得ることができることがわかる。
【0113】
以上説明してきたように、ゲート電位をエレクトロルミネッセント素子の第1の電極の電位から所望の電位だけシフトさせ、図4における破線で示したような領域で薄膜トランジスタが動作するようにし、光検出素子を構成するこの薄膜トランジスタを常にOFF状態で動作させることが可能となる。
【0114】
なお、実施の形態1では、光検出素子(受光素子)はトランジスタで構成され、OFF領域で動作するように構成されている。また発光素子と光検出素子(受光素子)の複合体は単一の発光装置とみなすことができるが、この場合は発光装置の光検出素子(受光素子)はトランジスタで構成され、OFF領域で動作するように構成されている。
【0115】
以上画像形成装置に応用される光ヘッドを例にして説明してきたが、本発明に係る受光素子、発光ユニットは、ディスプレイなどの表示装置、画像読み取り装置に搭載されるイメージセンサにもほぼ同様の態様にて適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の受光素子、発光装置、光ヘッド及び画像形成装置は、複写機、プリンタ、マルチファンクションプリンタ、ファクシミリあるいは表示装置などに適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の実施の形態1に記載の光ヘッドを構成するエレクトロルミネッセント素子110およびその周辺の断面図
【図2】本発明の実施の形態1に記載の光ヘッドの光検出素子近傍の構成を示した平面構成説明図
【図3】本発明の実施の形態1に記載の光ヘッドの光量検出回路の等価回路図
【図4】本発明の実施の形態1に記載の光ヘッドの光検出素子の特性を示す図
【図5】本発明の実施の形態1に記載の光ヘッドの光量検出フローを示す図
【図6】本発明の実施の形態1に記載の光ヘッドの変形例を示す断面図
【図7】本発明の実施の形態2に記載の光ヘッドをトップエミッション構造で構成した場合の断面図
【図8】本発明の実施の形態2に記載の光ヘッドの変形例を示す断面図
【図9】本発明の光ヘッドを用いた画像形成装置21の構成図
【図10】本発明の実施の形態3に記載の画像形成装置21における現像ステーション22の周辺を示す構成図
【図11】本発明の実施の形態4に記載の光ヘッドの光量検出回路の要部を示す等価回路図
【図12】本発明の実施の形態4に記載の光ヘッドの光量検出回路の動作特性を示すタイムチャート図
【図13】従来例の光ヘッドの構成に関する概略図
【符号の説明】
【0118】
100 ガラス基板
101 オーバーコート層
110 エレクトロルミネッセント素子
111 陽極
112 発光層
113 陰極
114 画素規制部
120 光検出素子
121 多結晶シリコン層
121S,D ソース・ドレイン領域
121i チャネル領域
122 第1の絶縁層
123 第2の絶縁層
124 保護層
125S、D ソース・ドレイン電極
130 駆動トランジスタ
131 活性層
132S,D ソース・ドレイン領域
133 ゲート電極
134S、D ソース・ドレイン電極
21 画像形成装置
22 現像ステーション
22Y 現像ステーション
22M 現像ステーション
22C 現像ステーション
22K 現像ステーション
23 記録紙
24 給紙トレイ
25 記録紙搬送路
26 現像剤
27a 攪拌パドル
27b 攪拌パドル
28 感光体
28Y 感光体
28M 感光体
28C 感光体
28K 感光体
29 帯電器
30 現像スリーブ
31 薄層化ブレード
32 マグロール
33 露光装置
33Y 露光装置
33M 露光装置
33C 露光装置
33K 露光装置
36 転写ローラ
37 トナーボトル
38 給紙ローラ
39 レジストローラ
40 ピンチローラ
41 記録紙通過検出センサ
43 定着器
44 加熱ローラ
45 加圧ローラ
46 背面コア
47 温度センサ
48 記録紙後端検出センサ
52 トナー像検出センサ
53 記録紙搬送ドラム
54 フェイスダウン排出部
55 蹴り出しローラ
56 支持部材
57 リブ
58 駆動源
59 排紙トレイ
61 コントローラ
62 エンジン制御部
63 電源部
64 電源監視部
65 給紙口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、前記発光素子から出力される光を検出する光検出素子とを備えた光ヘッドであって、
前記光検出素子は、トランジスタで構成され、OFF領域で動作するように構成された光ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の光ヘッドであって、
第1の電極と第2の電極とで発光層を挟むように形成された光源としてのエレクトロルミネッセント素子と、前記エレクトロルミネッセント素子から出力される光を検出する光電変換層を備えた光検出素子とが積層配置され、
前記光検出素子は、前記エレクトロルミネッセント素子の、前記光検出素子側に位置する第1の電極をゲート電極とした薄膜トランジスタである光ヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載の光ヘッドであって、
前記エレクトロルミネッセント素子の、前記光検出素子側に位置する第1の電極が、絶縁膜を介して前記光検出素子の光電変換部全体を覆うように構成された光ヘッド。
【請求項4】
請求項2に記載の光ヘッドであって、
前記薄膜トランジスタは、閾値電圧が0V以下となるように、チャネル領域のドーピング濃度が調整された光ヘッド。
【請求項5】
請求項2に記載の光ヘッドであって、
前記薄膜トランジスタは、レベルシフト回路を介して光検出素子用の駆動回路に接続された光ヘッド。
【請求項6】
請求項5に記載の光ヘッドであって、
前記レベルシフト回路は前記薄膜トランジスタのゲート・ドレイン間に接続されたトランジスタスイッチ回路網である光ヘッド。
【請求項7】
請求項5又は6のいずれかに記載の光ヘッドであって、
前記レベルシフト回路は前記発光素子の形成される基板上に集積化された回路である光ヘッド。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の光ヘッドであって、
前記光検出素子が、前記エレクトロルミネッセント素子の光出射領域ごとに1個配置された光ヘッド。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の光ヘッドであって、
前記エレクトロルミネッセント素子は発光層として有機半導体層を用いた有機エレクトロルミネッセント素子である光ヘッド。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載の光ヘッドであって、
前記エレクトロルミネッセント素子は発光層として無機半導体層を用いた無機エレクトロルミネッセント素子である光ヘッド。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の光ヘッドであって、
前記光検出素子の出力に基づいて前記エレクトロルミネッセント素子の光量を補正する光量補正手段を備えた光ヘッド。
【請求項12】
請求項10に記載の光ヘッドであって、
前記光量補正手段は、前記エレクトロルミネッセント素子の発光時間を補正する発光時間補正手段を備えた光ヘッド。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の光ヘッドであって、
光検出素子は、光源の駆動回路を構成する薄膜トランジスタと同一の半導体層で構成された光ヘッド。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載の光ヘッドであって、
同一基板上に複数のエレクトロルミネッセント素子を配列すると共に、各エレクトロルミネッセント素子に対応して光検出素子を積層配列して構成された光ヘッド。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の光ヘッドを像形成用の露光手段として用いた画像形成装置。
【請求項16】
トランジスタで構成され、OFF領域で動作するように構成された受光素子。
【請求項17】
少なくともゲート、ソース、ドレインを有する薄膜トランジスタで構成された受光素子であって、前記ゲートに印加する電位を操作して、前記ドレインに電流が流れない状態を前記受光素子の能動状態とする受光素子。
【請求項18】
請求項16記載の受光素子を備えた発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−290329(P2007−290329A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123739(P2006−123739)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】