受光装置、光学装置および受光装置の製造方法
【課題】波長が0.7μmから3μm程度までの近赤外〜赤外域に、高感度で、高品位の受光信号を得ることができる受光装置等を提供する。
【解決手段】InP基板1の裏面において、画素に対応する領域ごとに位置するマイクロレンズ21を備え、マイクロレンズが、波長0.7μm〜3μmの光に対する透過率のレンジが25%以下で、かつ該透過率が70%以上である樹脂材料で形成されている。
【解決手段】InP基板1の裏面において、画素に対応する領域ごとに位置するマイクロレンズ21を備え、マイクロレンズが、波長0.7μm〜3μmの光に対する透過率のレンジが25%以下で、かつ該透過率が70%以上である樹脂材料で形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光装置、光学装置および受光装置の製造方法に関し、より具体的には、波長が少なくとも1〜2.5μmの近赤外〜赤外域に高い感度を有する受光装置、光学装置および受光装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高密度で受光素子が二次元アレイ化されたイメージセンサでは、光の利用効率を高めるために、すなわち受光感度を高めるために、受光素子ごとにマイクロレンズを配列する構造が用いられる。たとえばInP基板上に形成された受光素子において、InP基板裏面をレンズ形状に加工してモノリシックレンズとする方法の提案がなされている(特許文献1)。また、薄板状のシリコン、ゲルマニウムまたはサファイアを加工してマイクロアレイレンズを形成した後、このマイクロアレイレンズを、受光素子アレイ(センサ)に貼り合わせる方法が開示されている(特許文献2)。さらにセンサ上にレンズの下地となる樹脂層を形成し、その上に樹脂製マイクロレンズを、その表面に微細な凹凸が生じるように形成することで反射を抑制して集光効率を高める方法の提案もなされている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−30082号公報
【特許文献2】特開平10−209414号公報
【特許文献3】特開2009−116056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のInP基板にモノリシックにマイクロレンズを形成する場合、均一にレンズ形状を得ることが難しい。とくにInPは、加工が難しい上に屈折率が3.4と高いので、高い加工精度で加工しないと受光部の集光度を高めることが難しい。また、シリコンなどの上にマイクロレンズアレイを形成した場合、受光素子アレイに精度よく位置合わせして貼り合わせることが難しく、製造歩留まりが低下する。
また樹脂層を下地としたマイクロレンズアレイでは、樹脂による光吸収が生じて所定域の受光感度を劣化させる。
【0005】
本発明は、少なくとも波長1μm〜2.5μmの近赤外〜赤外域に、高感度で、高品位の受光信号を得ることができる受光装置、光学装置および受光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の受光装置は、InP基板に形成された複数の画素を備える。この受光装置では、InP基板の裏面において、画素に対応する領域ごとに位置するマイクロレンズを備え、マイクロレンズが、波長0.7μm〜3μmの光に対する透過率の変動幅が25%以下で、かつ該透過率が70%以上である樹脂材料で形成されていることを特徴とする。
【0007】
InP基板上にエピタキシャル成長したIII−V族化合物半導体は、近赤外域または近赤外〜赤外域に対応するバンドギャップを持ち、近赤外域または近赤外〜赤外域の光を受光するために用いられる。受光部は画素よりも小さく画素内部の所定範囲に形成される。これは各画素が独立して機能して、画素間でクロストークなどが生じないために必要である。平面的に見て受光部は画素から距離をあけて小さい範囲に形成されるので、InP基板の裏面に到達した光は、すべてが受光に寄与するわけではない。このため、InP基板に到達する光の利用率をさらに高めることが可能である。
上記構成によれば、画素に対応する領域ごとにマイクロレンズ(集光レンズ)が配置される。集光レンズは、平行光線またはほぼ平行な光線を、焦点付近に集めることができる。このため、InP基板裏面に到達した光の多くまたはほとんどを、受光部に集光することができ、光の利用効率を高めることができる。
そして、マイクロレンズを、波長0.7μm〜3μmに対する透過率の変動幅が25%以下で、かつ該透過率が70%以上である樹脂材料で形成するので、樹脂材料における加工容易性を得ながら、波長0.7μm〜3μmで信頼性の高いマイクロレンズを得ることができる。このため、少なくとも波長1μm〜2.5μmの光を高い感度で受光することができ、マイクロレンズを形成する材料によるかく乱のない、高品位の画像、または高品位の受光信号を得ることができる。
上記の複数の画素は、一次元に配列されていてもよいし、二次元に配列されていてもよい。二次元配列の場合、ROIC(読み出し回路Read Out IC)の読み出し電極と画素電極との接続のために、基板裏面入射は必然となる。一次元の場合は、基板裏面入射でも、基板と反対側のエピタキシャル層表面入射でもよいが、やはりROICの読み出し電極とのバンプ接続の簡便さを考慮すると一次元の場合でも、基板裏面入射のほうがよく、本発明では、一次元配列の場合でも、基板裏面入射を想定している。
なお、複数の画素ごとにマイクロレンズを設けたものはシート状であり、マイクロレンズアレイ、マイクロレンズシートなどと呼ばれる。
【0008】
樹脂材料が、CH結合を実質的に含まないようにするのがよい。
これは、CH結合を含む樹脂は、波長0.7μm〜3μmの波長域に大きな吸収帯を持つ。このため、CH結合を持つ樹脂材料でマイクロレンズを形成すると、受光信号よりも大きな、上記吸収帯による変調を受ける。この結果、受光信号の信頼性が低下する。CH結合を実質的に含まない樹脂材料を用いて当該マイクロレンズを形成することで、感度を向上させた上で、信頼性の高い高品位の受光信号を得ることができる。
【0009】
上記目的を達成するのにはフッ素系樹脂を選択するのがよく、中でもCH結合を有しない透明な脂環式のフッ素樹脂を主成分とする非晶性フッ素樹脂を選択するのが好ましい。具体的には、下記の化学式(1)で表される材料が前記非晶性フッ素樹脂に該当し、旭硝子製サイトップ、ルミフロン(商品名)を挙げることができる。これらのフッ素樹脂を用いた場合、波長0.7μm〜3μmの光に対する透過率の変動幅が25%以下で、かつ該透過率が70%以上となる。このため、受光装置の感度を高めた上で、高品質の受光信号を得ることができる。
【化1】
【0010】
InP基板の裏面とマイクロレンズとの間にSiN膜またはSiON膜がコートされているのがよい。
これによって、SiN膜またはSiON膜による反射防止作用を得て受光感度を向上させることができる。同時に、SiN膜またはSiON膜とフッ素樹脂等の樹脂との接着性(固着性)が良好であるため、マイクロレンズまたはマイクロレンズアレイを確実に固定することができる。
【0011】
InP基板の裏面とマイクロレンズとの間にSiN膜またはSiON膜がコートされており、(i)そのSiN膜もしくはSiON膜の表層に当該SiN膜もしくはSiON膜の接着力を増強する処理剤が付されているか、または(ii)マイクロレンズを構成する樹脂材料に接着力を増強する処理剤が含まれており、その処理剤を介在させてマイクロレンズがSiN膜もしくはSiON膜固定されている構成をとることができる。
SiN膜またはSiON膜とフッ素樹脂との接着性に問題が有る場合、上記の接着力を増強する処理剤を用いる。たとえば、フッ素樹脂中に微量の添加剤を配合する。あるいは、当該SiN膜またはSiON膜に当該添加剤(接着増強剤)を含むある種の溶剤を塗布後に高温に放置して前溶剤を揮発させることで、SiN膜またはSiON膜との接着力の更なる向上をはかることができる。ここで、微量の処理剤として最適な材料としては、アミン系シランカップリング剤(信越化学製KBM903)やメルカブト系シランカップリング剤(信越化学製KBM803)、メタクリル系シランカップリング剤(KBM503)、等のCH結合含量の比較的少ないシラン処理剤を例示できる。そして、シラン処理剤の使用量としては、SiN膜またはSiON膜とフッ素樹脂との接着性と、CH結合の増加に伴う0.7μm〜3μmの波長域における透過率低下の観点から、非晶性フッ素樹脂100重量部に対して、概ね1重量部以下とするのが好ましい。
【0012】
InP基板の裏面に接着力を増強するための処理剤の下地処理層が形成され、その下地処理層を介在させて、マイクロレンズがInP基板の裏面に固定されている構成をとることもできる。この場合、SiN膜もしくはSiON膜は用いずに、処理剤により接着力を増強する。
【0013】
画素の境界に沿ってマイクロレンズを囲むように、該マイクロレンズの厚み以下の、深さの溝または高さの壁、が形成されるのがよい。
上記の構成によって、隣の画素のマイクロレンズとの接触を避けながら、画素一杯にマイクロレンズを設けることで光の利用効率を向上させることができる。この場合、マイクロレンズは、マイクロノズルによって液滴状の樹脂を滴出させて形成される。
【0014】
InP基板上に受光層および窓層を備え、画素の中核を占める光を受光する受光部は、窓層から不純物を選択拡散されて受光層に形成されたpn接合を含み、該受光部は隣の受光部と選択拡散されていない領域で隔てられており、画素は、受光部を中心として選択拡散されていない領域で囲まれており、マイクロレンズは、受光部に中心を合わせ選択拡散されていない領域を覆うのがよい。
なお、上記のpn接合は、次のように、広く解釈するのがよい。受光層内において、不純物元素が選択拡散で導入される側と反対の面側の領域の不純物濃度が、真性半導体とみなせるほど低い不純物領域(i領域と呼ばれる)であり、上記拡散導入された不純物領域と当該i領域との間に形成される接合をも含むものとできる。すなわち、上記のpn接合は、pi接合またはni接合などであってもよく、さらに、これらpi接合またはni接合におけるp濃度またはn濃度がバックグランド程度に低い場合も含むものとするのがよい。
上記の構成によって、選択拡散による不純物フロントであるpn接合を主要部とする受光部は、隣の受光部と比較的大きな間隔をあけて位置する。このため、選択拡散されない領域である上記間隔に進行してきた光は、受光されずに通り過ぎる場合が多い。上記のマイクロレンズを配置されることで、選択拡散による受光部の形成を行っても、高い感度を得ることができる。
【0015】
受光部の径と、選択拡散されていない領域の最小幅とが、ほぼ同じであり、マイクロレンズは画素を占めるように該画素の区画に内接するように形成されるのがよい。
これによって、受光される可能性のない光の照射領域をほとんど無くすことができ、感度を向上させることができる。
【0016】
受光層は、InPに±0.5%の範囲内で格子整合する異なる二つのIII−V族化合物半導体の、タイプ2の多重量子井戸構造(MQW:Multi Quantum Well)によって構成されることができる。
近赤外域の長波長に受光感度を持たせるために、タイプ2のMQWを利用すると、異なる二つのIII−V族化合物半導体の層の界面で受光が生じる。このため、感度を確保するために層界面またはペア数を数十〜数百、形成するのが普通であるが、それでも感度が不足する。このようなタイプ2のMQWの受光層をもつ場合、マイクロレンズを配置することで、近赤外域の長波長側まで受光域を拡大した上で、高い感度を得ることができる。
【0017】
本発明の光学装置は、上記のいずれかの受光装置と、読み出し回路(ROIC:Read
Out IC)とを備えることを特徴とする。
これによって、高感度であって、かつ高信頼性の受光信号が得られる光学装置を提供することができる。光学装置は、上記の受光装置と読み出し回路とを含めばどのような装置であってもよい。
【0018】
本発明の受光装置の製造方法は、InP基板に、少なくとも波長1μm〜2.5μmに受光感度を有する受光素子を画素として該受光素子のアレイを形成する工程と、InP基板の裏面に画素ごとにフッ素樹脂を主成分とするマイクロレンズを設け、該InP基板全体にマイクロレンズアレイを形成する工程とを備え、マイクロレンズアレイの形成工程では、フッ素樹脂を溶媒に溶かして粘度を調整したフッ素樹脂含有剤を、マイクロノズルを用いて放出して前記画素の領域ごとにフッ素樹脂含有剤の滴状体または山状体を形成し、次いで乾燥処理してフッ素樹脂による該マイクロレンズアレイを形成することを特徴とする。上記のフッ素樹脂含有剤は、非晶性フッ素樹脂と処理剤としてのシランカップリング剤(例えばアミノシランカップリング剤)を100:0.1の比率で溶媒に溶かして粘度を調整したフッ素樹脂含有剤としてもよい。これを、マイクロノズルを用いて放出して画素の領域ごとにフッ素樹脂含有剤の滴状体または山状体を形成し、次いで乾燥処理してフッ素樹脂による該マイクロレンズアレイを形成することができる。また、必要に応じて、前記フッ素樹脂含有剤の滴状体または山状体を形成する前に、前記InP基板に処理剤としてシランカップリング剤を噴霧した後、乾燥処理を行う工程を含めることもできる。
さらにInP基板裏面にSiN膜またはSiON膜のコート膜を形成し、そのSiN膜またはSiON膜の接着力により、フッ素樹脂によるマイクロレンズアレイとの固定をより安定化してもよい。
また、SiN膜もしくはSiON膜を形成する際そのSiN膜もしくはSiON膜の接着力を増強する処理剤をそのSiN膜もしくはSiON膜の表層に付し、その後、前記マイクロレンズアレイを形成して、マイクロレンズアレイの接着力増強をはかってもよい。
【0019】
上記の方法によれば、マイクロポッティングまたはインクジェットによってフッ素樹脂含有剤を滴状に放出して、乾燥処理を経てフッ素樹脂製のマイクロレンズアレイを、能率良く簡単に得ることができる。フッ素樹脂含有剤は、撥水性とできるので、下地との間に大きな接触角をもって滴状体または山状体を形成することができる。これによって、経済性に優れ、感度が高く、高品位の受光信号をもたらす受光装置を簡単に得ることができる。
【0020】
マイクロレンズアレイの形成工程の前に、滴状または山状のフッ素樹脂含有剤が、隣の画素のフッ素樹脂含有剤の滴状体または山状体と接触して融合しないように、隣り合う画素の境界に溝または壁を設けるのがよい。
インクジェットまたはマイクロポッティング法では、上記のフッ素樹脂含有剤は、溶媒が9割前後を占めるので液体に近い。このため隣り合う画素の滴状体どうしが接触すると表面張力等の影響で融合してしまい、撥水性が損なわれてマイクロレンズの体をなさない形状となる。上記の溝または壁を画素の境界に設けることで、接触を防ぐことができ、個々の滴状体または山城体からマイクロレンズを形成することができる。
なお、前述のごとく、マイクロレンズが形成されるフッ素樹脂と、InP基板との接着性を向上させる手段として、前記フッ素樹脂含有剤の滴状体または山状体を形成する前にInP基板に噴霧器を用いて、処理剤であるシランカップリング剤を2.3回噴霧し、当該基板を85℃で2時間程乾燥処理させることもできる。この場合、マイクロレンズを形成する非晶質フッ素樹脂中には、処理剤としてのシランカップリング剤を予め配合させる必要もなくなり、かつ、本乾燥工程により、波長0.7μm〜3μmの波長域の光透過性に悪影響を与える余分なCH結合物質がマイクロレンズ等に存在することを抑制させることができる。
【0021】
壁を設けるとき、InP基板の裏面に被覆層を形成し、次いで、被覆層の壁になる部分以外の部分をエッチングによって除去するのがよい。
これによって、たとえば被覆層をSiN膜、親水性のレジスト膜などとして、簡単にこれらの壁を形成して、滴状体の融合が生じることなく、画素ごとに一つのマイクロレンズを形成することができる。
【0022】
本発明の別の受光装置の製造方法は、InP基板に、少なくとも波長1μm〜2.5μmに受光感度を有する受光素子を画素として該受光素子のアレイを形成する工程と、InP基板の裏面に画素ごとにフッ素樹脂を主成分とするマイクロレンズを設け、該InP基板全体にマイクロレンズアレイを形成する工程とを備える。そしてマイクロレンズアレイの形成工程は、マイクロレンズアレイの雌型となる型を準備する工程と、フッ素樹脂を溶媒に溶かして粘度を調整したフッ素樹脂含有剤をInP基板の裏面に塗布して塗布層を形成する工程と、適度に乾燥した塗布層に、画素と位置合わせしながら、型を押し当ててマイクロレンズとなる凸レンズが配列されたマイクロレンズアレイを形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0023】
上記の押し型を用いる方法によれば、能率よく簡単にマイクロレンズアレイを形成することができる。InP基板の裏面にフッ素樹脂含有剤を塗布する方法は、何でもよいが、たとえばスクリーン印刷法、スピンコート法などを用いるのがよい。
上記の押し型を用いてマイクロレンズアレイを形成する場合においても、マイクロノズルを用いる方法と同じように、SiN膜またはSiON膜のコート膜を介在させて、マイクロレンズアレイとInP基板との接着の安定化を図ってもよい。また、上記コート膜の有無によらず、接着力を増強する処理剤を、(InP基板裏面に直接付す、フッ素樹脂含有剤に配合する、SiN膜またはSiON膜の表層に付す)のうちのいずれかの処理またはこれらを組み合わせた処理を行って、接着の増強を図ってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の受光装置によれば、少なくとも波長1μm〜2.5μmの近赤外〜赤外域に、高感度で、高品位の受光信号を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態1における受光装置および光学装置を示す図である。
【図2】図1の受光装置の一部分の平面図である。
【図3】フッ素樹脂の透過率と波長の関係を示し、(a)は波長2.0μm以上の範囲、(b)は波長0.7μm〜2.0μmの範囲、を示す図である。
【図4】図1の受光装置の変形例であって、本発明の、受光装置およびそれを組み込んだ光学装置を示す図である。
【図5】実施の形態1における受光装置の製造方法を示すフローチャートである。
【図6】(a)は溝の形成方法、(b)は壁の形成方法、を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態2における受光装置および光学装置を説明するための図である(型を押し当てる工程は、ROICと組み合わせる前に、受光装置単独で行う。)。
【図8】実施の形態2における受光装置の製造方法を示すフローチャートである。
【図9】(a)は、本発明の実施の形態3における受光装置および光学装置、(b)は(a)の受光装置内の受光層、を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態4における受光装置および光学装置を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態5の受光装置の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態における、受光装置50および光学装置100を示す図である。受光装置50には、複数の画素Pが形成されている。InP基板1には、受光層3/窓層5、を含むInP系エピタキシャル層が形成されている。p型領域6は、選択拡散マスクパターン17の開口部から選択拡散された、たとえば亜鉛(Zn)などのp型不純物が導入され、受光層3内にまで延びている。選択拡散マスクパターン17は保護膜を兼ねており、p型不純物である亜鉛(Zn)の選択拡散に用いられたあとそのまま残されている。画素Pは、図示しない共通のグランド電極と、p型領域上にオーミック接触する画素電極11との間に逆バイアス電圧を印加されて、pn接合15から張り出す空乏層において対象とする近赤外光を受光する。このとき、電子正孔対が発生するが、これを、画素電極およびグランド電極で読み出して受光信号を得る。
受光信号を読み出す読み出し回路(ROIC:Read Out IC)70の読み出し電極71と、受光装置50の画素電極11とは、対面した状態で、接続バンプ9,79によって導電接続される。このようなROICを用いて受光装置の画素Pからの受光信号を読み出す場合、上述のように基板(裏面)入射となる。
【0027】
本実施の形態における特徴は、次の2点である。
(1)InP基板1の裏面に集光レンズとなるマイクロレンズ21が配置されている。このマイクロレンズ21は凸レンズであり、フッ素樹脂で形成されている。このあとフッ素樹脂の波長0.7μm〜3μmでの透過率を示すが、フッ素樹脂は、CH結合を含まないために、波長0.7μm〜3μmに大きな吸収バンドを持たない。またフッ素樹脂の屈折率は1.3〜1.5程度である。このため、高精細な加工を行わなくても、凸レンズを画素Pの領域ごとに設けることで、平行光線またはほぼ平行光線を、焦点面付近に位置する受光部またはpn接合15の付近に光を集めることができる。マイクロレンズの表面の曲率は、焦点距離がある程度短くなっても(pn接合15より上部でフォーカスしても)、当該上部でクロスしたあと拡大して受光部には集光されるので精度はそれほど必要としない。また、焦点距離がある程度長くなっても、光束は確実に受光部に集められる。
この結果、受光感度を高めることができる。上記のように、pn接合15は、選択拡散されたp型領域6の先端部に形成され、ここから逆バイアス電圧で張り出す空乏層において受光が遂行される。このため、平面的にみて、InP基板1の裏面に照射された光のうち、多くの部分はpn接合15を通らずに通過してしまう(図2参照)。
【0028】
図2は、図1に示す受光装置の一部の平面図である。p型領域6および画素Pの二次元配列を示している。図1および図2において、たとえば、p型領域6を形成するための選択拡散マスクパターン17の開口径は15μmであり、画素ピッチは30μmである。p型領域6の画素Pにおける平面占有率は、20%程度である。換言すれば、平行光線またはほぼ平行な光線がInP基板に到達したあと、反射する分はゼロとして、約20%程度が受光する可能性を持つにすぎない。
一般に、選択拡散によるp型領域6または画素Pの形成は、隣り合う画素P間でクロストークなどの干渉が生じないように、十分な間隔をとる必要がある。また、選択拡散では、深さ方向だけでなく、開口部から導入された不純物が、わずかであるが横方向に拡散することも考慮する必要がある。このため、平面的にみて、p型領域6の直径と同程度の間隔(p型領域6の間の選択拡散されていない領域の最小幅)をあけているのが実情である。この結果、図2に示すように、p型領域6は、20%程度の平面占有率となる。ただ、画素Pの他の画素からの独立性を保つための他の方法、たとえば画素の境界に、メサエッチングによって深い溝を入れる方法に比べて、結晶が損傷を受けにくく、暗電流を低くできる利点を有する。
【0029】
図2に示すように、感度を上げるためマイクロレンズ21を画素に内接するように一杯に形成すると、上記の受光に寄与する可能性のある光は、78%程度に大きく向上する。図1に示すように、凸レンズは、その凸レンズに照射された平行光線またはほぼ平行光線を、焦点面付近に位置する受光部またはpn接合15の付近に集めることができる。物体等の表面から反射されて受光装置50に到達する光は、ほとんど平行であり、凸レンズまたはマイクロレンズ21の作用により焦点面付近に集光される。
【0030】
図3は、フッ素樹脂の透過率を示す図である。フッ素樹脂は、図3(a),(b)に示すように、0.7μm〜2.0μm、2.0μm〜3.5μmの波長域で、95%、93%の透過率を示す。その上、透過率の変動がなく、波長に対してほとんどフラットである。
CH結合を含む樹脂の場合、波長に対する変動が大きい。すなわちCH結合を含む樹脂は、波長1μm〜2.5μmという肝心要の重要な波長域に吸収帯を持つ。また、酸化ケイ素などは、やはり肝心な波長1μm〜3μmに非常に大きな吸収帯を、複数、持つ。このためCH結合を含む樹脂や酸化ケイ素によるマイクロレンズを設けて、受光に寄与する可能性のある光量を増やして感度を上げることができたとしても、マイクロレンズの透過率の変動が、集光によって強調されて受光信号に含まれてしまう。このため受光信号の信頼性を損なうことになる。
本実施の形態のように、フッ素樹脂製のマイクロレンズ21を用いることで、受光に寄与する可能性のある光量を増やして感度を上げた上で、高い信頼性の受光信号を得ることができる。
【0031】
(2)もう一つの点は、画素の境界に溝22を設けていることである。マイクロレンズ21は、できるだけ大きい面積とするために、画素Pの正方形内に内接するように設ける場合、次の問題を生じる。マイクロポッティングまたはインクジェットによって、液体に近い粘度のフッ素樹脂含有剤の滴状体を画素ごとに配置するとき、目一杯大きくすると相互に接触しやすくなる(製造方法については、このあと説明する)。乾燥前に接触が生じると表面張力等の影響で、その二つの滴状体は融合して、下地との接触角が小さくなり滴状を維持しなくなり、下地に濡れるような形態をとる。この結果、レンズの体をなさなくなる。このため、図1および図2に示すように、画素P間に溝22を設けて、溝によって滴状体の越境を防止することができる。
【0032】
上記の溝22は、壁であってもよい。図4は、図1に示す溝22を壁23に置き換えた受光装置50を示す図である。壁23によっても、画素P内の滴状体の越境を防止することができる。
溝22または壁23の形状は、たとえば、次の寸法とすることができる。
<溝>:幅1μm、深さ1μm〜2μm
<壁>:幅1μm、高さ0.11μm〜0.3μm
【0033】
図5は、本発明の実施の形態の受光装置50の製造方法を示すフローチャートである。まず、InP基板に受光素子アレイを形成する。次いで、図1または図4に示すように、溝22とするか、または壁23とするかに応じて、InP基板1の裏面に、溝22または壁23を形成する。
この間、マイクロレンズを形成するためのフッ素樹脂含有剤を調整しておく。フッ素樹脂としては、CH結合を有しない透明な脂環式のフッ素樹脂を主成分とする非晶性フッ素樹脂を選択するのが好ましい。具体的には、下記の化学式(1)で表される非晶性フッ素樹脂が好ましく、例えば旭硝子製サイトップ、ルミフロン(商品名)を挙げることができる。これらのフッ素樹脂を用いた場合、波長0.7μm〜3μmの光に対する透過率の変動幅が25%以下で、かつ該透過率が70%以上となる。
【化1】
【0034】
希釈溶剤としては、エタノール、イソプロピルアルコール/酢酸イソブチル、水など溶媒となるものであれば何でもよい。マイクロノズルを用いて、インクジェットまたはマイクロポッティングによって滴状体を画素ごとに置く場合、たとえばフッ素樹脂ポリマーは5〜15%、残りの溶媒等は95%〜85%程度とするのがよい。上述のように、滴状体または山状体の表面の曲率は、焦点距離がある程度短くなっても(pn接合15より上部でフォーカスしても)、受光部には集光されるので精度はそれほど必要としない。また、焦点距離がある程度長くなっても、集光は確実にされて感度を向上させる。
マイクロノズルによって画素Pごとにフッ素樹脂含有剤の滴状体または山状体を形成してゆく。すべての画素Pに滴状体を配置した後、乾燥処理に入る。乾燥処理では、70℃〜250℃の範囲内の一定温度に保持した恒温槽に入れて、溶媒を除去する。数回に分けて、低温槽から高温槽へと段階的に昇温して行ってもよい。
【0035】
図6(a)は溝22の形成方法を、また図6(b)は壁23の形成方法を占めずフローチャートである。溝22の場合は、画素Pの境界に沿ってダイシングをするか、またはエッチングによって溝を形成する。また、壁23の場合は、InP基板1の裏面に、たとえばCVD(Chemical Vapor Deposition)法によってSiN膜を形成する。厚みは壁23の厚み、たとえば0.11μm〜0.3μmとするのがよい。このあと、エッチングによって、壁23となる部分以外の領域を除去する。
上記の製造方法によれば、とくに大掛かりな装置を必要としないで、簡単かつ容易に、マイクロポッティング法またはインクジェット法によって、滴状体または山状体の画素からの越境を防止しながら、高い製造歩留まりで、感度を大きく向上させるマイクロレンズ21の配列を得ることができる。
【0036】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2における受光装置50および光学装置100、並びにこれらの製造方法、を説明するための図である。本実施の形態においても、マイクロレンズ21を備える受光装置50と、読み出し回路(ROIC)70とが組み合わされている点では、実施の形態1と同じである。本実施の形態では、マイクロレンズ21が、マイクロレンズ21の表面形状に対応する雌型である型35を用いてインプリント法で形成される点で、実施の形態1と異なる。
ただし、図7では、光学装置100に組み上げたあとマイクロレンズ21を形成するように描いてあるが、これはあくまで説明の便宜上のことであって、実際は、型を押し当ててマイクロレンズを形成する工程は、読み出し回路と組み合わせる前に、受光装置50単独について行う。この留意点を前提として、図7に要点を示すように、希釈された乾燥前で、塑性加工しやすい状態のフッ素樹脂含有層21aに対して、型35の表面35fを押し当てて、マイクロレンズ21の配列を形成する。
【0037】
図8にインプリント法によるマイクロレンズ配列を形成する手順を示す。インプリント法においては型35の製作が重要である。この押し当て用の型35は、微細な加工を行うため電子ビーム露光によるリソグラフィによって凹凸を付けて形成することができる。型35の材料は、耐摩耗性が要求されることから石英などを用いるのがよい。
フッ素樹脂含有剤の層21aを形成するとき、粘度の調整は、マイクロポッティング法またはインクジェット法の場合よりも、固めにするのがよい。上記の方法で製作された型35を押し当てることで、マイクロレンズ21の配列を簡単に得ることができる。
マイクロポッティング法で形成されたマイクロレンズか、またはインプリント法で形成されたマイクロレンズかは、マイクロレンズを検鏡することで特定することができる。また、マイクロポッティング法では、溝22または壁23を伴う場合が多いので、これによっても識別することができる。
【0038】
(実施の形態3)
図9(a)は、本発明の実施の形態3における受光装置50および光学装置100を示す図であり、図9(b)は、画素に含まれる受光層3等の拡大図である。本実施の形態における受光層3は、GaAsSb3aとInGaAs3bとをペアとするタイプ2の多重量子井戸構造MQWである。このタイプ2のMQWでは、GaAsSbの価電子帯の電子が、InGaAsの伝導帯に遷移して、電子/正孔を生じることで、受光が起きる。GaAsSbの価電子帯とInGaAsの伝導帯とのエネルギ差は、GaAsSb(InGaAs)内の価電子帯と伝導帯とのエネルギ差よりも小さいので、エネルギの低い長波長の光を受光することができる。しかし、上記のように、GaAsSbの価電子帯の電子が、InGaAsの伝導帯に遷移するため、多重量子井戸構造MQWの界面、すなわち図9(b)に例示する界面Kにおいてのみ受光が生じる。このようにタイプ2のMQWでは、バルク内で生じる遷移現象に比べて遷移が生じる場所が限られるため、たとえMQWのペア数を多くしても、感度は小さくなる。
【0039】
また、タイプ2のMQWを受光層3とする受光素子では、良好な結晶性を保つために特有の構造を伴う。たとえば不純物濃度があまり高くなるとMQWの結晶性が害されるため、選択拡散のための拡散濃度分布調整層4を配置して、この拡散濃度分布調整層4内で、p型不純物濃度を急減させて、受光層3には、低い範囲に安定した濃度分布を入れるようにする。また、選択拡散による画素形成そのものも、タイプ2のMQWの結晶性には好ましい。
【0040】
タイプ2のMQWによる受光層3を有し、受光感度を長波長側に拡大することはできるものの、本質的に感度が低い受光メカニズムによる。このような受光装置において、上述のマイクロレンズ21は、大きな威力を発揮することができる。すなわち、本実施の形態の受光装置50および光学装置100は、近赤外域の長波長域に感度を拡大しながら、その受光メカニズムに起因する低い受光感度を補って、所定レベル以上の感度を確保することができる。また、マイクロレンズ21は、フッ素樹脂製であるため、近赤外域およびその長波長域で、高品位の受光信号を得ることができる。
【0041】
(実施の形態4)
図10は、実施の形態4における受光装置50および光学装置100を示す図である。実施の形態1〜3では、マイクロレンズ21は、InP基板1の裏面に、直接、接して配置される。しかし、本実施の形態では、マイクロレンズ21とInP基板1の裏面との間にSiN膜またはSiON膜27が配置されている。これによって、SiN膜またはSiON膜27による反射防止作用を得て受光感度を向上させることができる。同時に、SiN膜またはSiON膜とフッ素樹脂等の樹脂との接着性(固着性)が良好であるため、マイクロレンズまたはマイクロレンズアレイを確実に固定することができる。マイクロレンズは、実施の形態1〜3のいずれの方法で製作してもよい。また、図10には、マイクロレンズ間の溝や壁はないが、その溝または壁をマイクロレンズ21の間に配置してもよい。
【0042】
所定の場合には、SiN膜またはSiON膜とフッ素樹脂との接着性に問題が生じることがある。このような場合には、フッ素樹脂中に微量の添加剤を配合する。あるいは、当該SiN膜またはSiON膜に当該添加剤を含むある種の溶剤を塗布後に高温に放置して前溶剤を揮発させることで、SiN膜またはSiON膜との接着力の更なる向上をはかることができる。ここで、微量の処理剤として最適な材料としては、アミン系シランカップリング剤(信越化学製KBM903)やメルカブト系シランカップリング剤(信越化学製KBM803)、メタクリル系シランカップリング剤(KBM503)、等のCH結合含量の比較的少ないシラン処理剤を例示できる。そして、シラン処理剤の使用量としては、SiN膜またはSiON膜とフッ素樹脂との接着性と、CH結合の増加に伴う0.7μm〜3μmの波長域における透過率低下の観点から、非晶性フッ素樹脂100重量部に対して、概ね1重量部以下とするのが好ましい。
【0043】
(実施の形態5)
図11は、実施の形態5における受光装置50の部分拡大図である。実施の形態4では、SiN膜またはSiON膜をマイクロレンズ21とInP基板1との間に配置した。本実施の形態では、マイクロレンズが形成されるフッ素樹脂と、InP基板との接着性を向上させるために、InP基板1の裏面に下地処理層29を形成する。すなわち、フッ素樹脂含有剤の滴状体または山状体を形成する前にInP基板1の裏面に、噴霧器を用いて処理剤であるシランカップリング剤を2.3回噴霧し、当該基板を85℃で2時間程乾燥処理させることで、下地処理層29を形成する。このあとのマイクロレンズ21は、実施の形態1〜4のいずれの方法で製造してもよい。これによって、マイクロレンズ21は、InP基板1の裏面に強固に固着される。
この場合、マイクロレンズ21を形成する非晶質フッ素樹脂中には、処理剤としてのシランカップリング剤を予め配合させる必要もなくなり、かつ、乾燥工程により、波長0.7μm〜3μmの波長域の光透過性に悪影響を与える余分なCH結合物質がマイクロレンズ等に存在するのを減らすことができる。
【0044】
上記において、本発明の実施の形態および実施例について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態および実施例は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の受光装置等によれば、所定のマイクロレンズを配置することで、波長が0.7μmから3μm程度までの近赤外〜赤外域に、高感度で、高品位の受光信号を得ることができる。また、これらのマイクロレンズは、フッ素樹脂製とすることで、近赤外域およびその長波長域で吸収のないフラットな透過率−波長特性なので、樹脂による加工容易性という利点を得ながら、高い信頼性の受光信号を得ることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 InP基板、3 受光層またはタイプ2(InAs/GaSb)MQW受光層、3a GaAsSb、3b InGaAs、4 拡散濃度分布調整層、5 窓層、6 p型領域、9 バンプ、11 画素電極(p部電極)、15 pn接合、17 選択拡散マスクパターン(保護膜)、21 マイクロレンズ、21a フッ素樹脂含有剤の層、22 溝、23 壁、27 SiN膜またはSiON膜、29 下地処理層、35 型、35f 型の表面、50 受光装置、70 ROIC、71 読み出し電極、79 バンプ、100 光学装置、K MQWのペア境界、P 画素。
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光装置、光学装置および受光装置の製造方法に関し、より具体的には、波長が少なくとも1〜2.5μmの近赤外〜赤外域に高い感度を有する受光装置、光学装置および受光装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高密度で受光素子が二次元アレイ化されたイメージセンサでは、光の利用効率を高めるために、すなわち受光感度を高めるために、受光素子ごとにマイクロレンズを配列する構造が用いられる。たとえばInP基板上に形成された受光素子において、InP基板裏面をレンズ形状に加工してモノリシックレンズとする方法の提案がなされている(特許文献1)。また、薄板状のシリコン、ゲルマニウムまたはサファイアを加工してマイクロアレイレンズを形成した後、このマイクロアレイレンズを、受光素子アレイ(センサ)に貼り合わせる方法が開示されている(特許文献2)。さらにセンサ上にレンズの下地となる樹脂層を形成し、その上に樹脂製マイクロレンズを、その表面に微細な凹凸が生じるように形成することで反射を抑制して集光効率を高める方法の提案もなされている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−30082号公報
【特許文献2】特開平10−209414号公報
【特許文献3】特開2009−116056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のInP基板にモノリシックにマイクロレンズを形成する場合、均一にレンズ形状を得ることが難しい。とくにInPは、加工が難しい上に屈折率が3.4と高いので、高い加工精度で加工しないと受光部の集光度を高めることが難しい。また、シリコンなどの上にマイクロレンズアレイを形成した場合、受光素子アレイに精度よく位置合わせして貼り合わせることが難しく、製造歩留まりが低下する。
また樹脂層を下地としたマイクロレンズアレイでは、樹脂による光吸収が生じて所定域の受光感度を劣化させる。
【0005】
本発明は、少なくとも波長1μm〜2.5μmの近赤外〜赤外域に、高感度で、高品位の受光信号を得ることができる受光装置、光学装置および受光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の受光装置は、InP基板に形成された複数の画素を備える。この受光装置では、InP基板の裏面において、画素に対応する領域ごとに位置するマイクロレンズを備え、マイクロレンズが、波長0.7μm〜3μmの光に対する透過率の変動幅が25%以下で、かつ該透過率が70%以上である樹脂材料で形成されていることを特徴とする。
【0007】
InP基板上にエピタキシャル成長したIII−V族化合物半導体は、近赤外域または近赤外〜赤外域に対応するバンドギャップを持ち、近赤外域または近赤外〜赤外域の光を受光するために用いられる。受光部は画素よりも小さく画素内部の所定範囲に形成される。これは各画素が独立して機能して、画素間でクロストークなどが生じないために必要である。平面的に見て受光部は画素から距離をあけて小さい範囲に形成されるので、InP基板の裏面に到達した光は、すべてが受光に寄与するわけではない。このため、InP基板に到達する光の利用率をさらに高めることが可能である。
上記構成によれば、画素に対応する領域ごとにマイクロレンズ(集光レンズ)が配置される。集光レンズは、平行光線またはほぼ平行な光線を、焦点付近に集めることができる。このため、InP基板裏面に到達した光の多くまたはほとんどを、受光部に集光することができ、光の利用効率を高めることができる。
そして、マイクロレンズを、波長0.7μm〜3μmに対する透過率の変動幅が25%以下で、かつ該透過率が70%以上である樹脂材料で形成するので、樹脂材料における加工容易性を得ながら、波長0.7μm〜3μmで信頼性の高いマイクロレンズを得ることができる。このため、少なくとも波長1μm〜2.5μmの光を高い感度で受光することができ、マイクロレンズを形成する材料によるかく乱のない、高品位の画像、または高品位の受光信号を得ることができる。
上記の複数の画素は、一次元に配列されていてもよいし、二次元に配列されていてもよい。二次元配列の場合、ROIC(読み出し回路Read Out IC)の読み出し電極と画素電極との接続のために、基板裏面入射は必然となる。一次元の場合は、基板裏面入射でも、基板と反対側のエピタキシャル層表面入射でもよいが、やはりROICの読み出し電極とのバンプ接続の簡便さを考慮すると一次元の場合でも、基板裏面入射のほうがよく、本発明では、一次元配列の場合でも、基板裏面入射を想定している。
なお、複数の画素ごとにマイクロレンズを設けたものはシート状であり、マイクロレンズアレイ、マイクロレンズシートなどと呼ばれる。
【0008】
樹脂材料が、CH結合を実質的に含まないようにするのがよい。
これは、CH結合を含む樹脂は、波長0.7μm〜3μmの波長域に大きな吸収帯を持つ。このため、CH結合を持つ樹脂材料でマイクロレンズを形成すると、受光信号よりも大きな、上記吸収帯による変調を受ける。この結果、受光信号の信頼性が低下する。CH結合を実質的に含まない樹脂材料を用いて当該マイクロレンズを形成することで、感度を向上させた上で、信頼性の高い高品位の受光信号を得ることができる。
【0009】
上記目的を達成するのにはフッ素系樹脂を選択するのがよく、中でもCH結合を有しない透明な脂環式のフッ素樹脂を主成分とする非晶性フッ素樹脂を選択するのが好ましい。具体的には、下記の化学式(1)で表される材料が前記非晶性フッ素樹脂に該当し、旭硝子製サイトップ、ルミフロン(商品名)を挙げることができる。これらのフッ素樹脂を用いた場合、波長0.7μm〜3μmの光に対する透過率の変動幅が25%以下で、かつ該透過率が70%以上となる。このため、受光装置の感度を高めた上で、高品質の受光信号を得ることができる。
【化1】
【0010】
InP基板の裏面とマイクロレンズとの間にSiN膜またはSiON膜がコートされているのがよい。
これによって、SiN膜またはSiON膜による反射防止作用を得て受光感度を向上させることができる。同時に、SiN膜またはSiON膜とフッ素樹脂等の樹脂との接着性(固着性)が良好であるため、マイクロレンズまたはマイクロレンズアレイを確実に固定することができる。
【0011】
InP基板の裏面とマイクロレンズとの間にSiN膜またはSiON膜がコートされており、(i)そのSiN膜もしくはSiON膜の表層に当該SiN膜もしくはSiON膜の接着力を増強する処理剤が付されているか、または(ii)マイクロレンズを構成する樹脂材料に接着力を増強する処理剤が含まれており、その処理剤を介在させてマイクロレンズがSiN膜もしくはSiON膜固定されている構成をとることができる。
SiN膜またはSiON膜とフッ素樹脂との接着性に問題が有る場合、上記の接着力を増強する処理剤を用いる。たとえば、フッ素樹脂中に微量の添加剤を配合する。あるいは、当該SiN膜またはSiON膜に当該添加剤(接着増強剤)を含むある種の溶剤を塗布後に高温に放置して前溶剤を揮発させることで、SiN膜またはSiON膜との接着力の更なる向上をはかることができる。ここで、微量の処理剤として最適な材料としては、アミン系シランカップリング剤(信越化学製KBM903)やメルカブト系シランカップリング剤(信越化学製KBM803)、メタクリル系シランカップリング剤(KBM503)、等のCH結合含量の比較的少ないシラン処理剤を例示できる。そして、シラン処理剤の使用量としては、SiN膜またはSiON膜とフッ素樹脂との接着性と、CH結合の増加に伴う0.7μm〜3μmの波長域における透過率低下の観点から、非晶性フッ素樹脂100重量部に対して、概ね1重量部以下とするのが好ましい。
【0012】
InP基板の裏面に接着力を増強するための処理剤の下地処理層が形成され、その下地処理層を介在させて、マイクロレンズがInP基板の裏面に固定されている構成をとることもできる。この場合、SiN膜もしくはSiON膜は用いずに、処理剤により接着力を増強する。
【0013】
画素の境界に沿ってマイクロレンズを囲むように、該マイクロレンズの厚み以下の、深さの溝または高さの壁、が形成されるのがよい。
上記の構成によって、隣の画素のマイクロレンズとの接触を避けながら、画素一杯にマイクロレンズを設けることで光の利用効率を向上させることができる。この場合、マイクロレンズは、マイクロノズルによって液滴状の樹脂を滴出させて形成される。
【0014】
InP基板上に受光層および窓層を備え、画素の中核を占める光を受光する受光部は、窓層から不純物を選択拡散されて受光層に形成されたpn接合を含み、該受光部は隣の受光部と選択拡散されていない領域で隔てられており、画素は、受光部を中心として選択拡散されていない領域で囲まれており、マイクロレンズは、受光部に中心を合わせ選択拡散されていない領域を覆うのがよい。
なお、上記のpn接合は、次のように、広く解釈するのがよい。受光層内において、不純物元素が選択拡散で導入される側と反対の面側の領域の不純物濃度が、真性半導体とみなせるほど低い不純物領域(i領域と呼ばれる)であり、上記拡散導入された不純物領域と当該i領域との間に形成される接合をも含むものとできる。すなわち、上記のpn接合は、pi接合またはni接合などであってもよく、さらに、これらpi接合またはni接合におけるp濃度またはn濃度がバックグランド程度に低い場合も含むものとするのがよい。
上記の構成によって、選択拡散による不純物フロントであるpn接合を主要部とする受光部は、隣の受光部と比較的大きな間隔をあけて位置する。このため、選択拡散されない領域である上記間隔に進行してきた光は、受光されずに通り過ぎる場合が多い。上記のマイクロレンズを配置されることで、選択拡散による受光部の形成を行っても、高い感度を得ることができる。
【0015】
受光部の径と、選択拡散されていない領域の最小幅とが、ほぼ同じであり、マイクロレンズは画素を占めるように該画素の区画に内接するように形成されるのがよい。
これによって、受光される可能性のない光の照射領域をほとんど無くすことができ、感度を向上させることができる。
【0016】
受光層は、InPに±0.5%の範囲内で格子整合する異なる二つのIII−V族化合物半導体の、タイプ2の多重量子井戸構造(MQW:Multi Quantum Well)によって構成されることができる。
近赤外域の長波長に受光感度を持たせるために、タイプ2のMQWを利用すると、異なる二つのIII−V族化合物半導体の層の界面で受光が生じる。このため、感度を確保するために層界面またはペア数を数十〜数百、形成するのが普通であるが、それでも感度が不足する。このようなタイプ2のMQWの受光層をもつ場合、マイクロレンズを配置することで、近赤外域の長波長側まで受光域を拡大した上で、高い感度を得ることができる。
【0017】
本発明の光学装置は、上記のいずれかの受光装置と、読み出し回路(ROIC:Read
Out IC)とを備えることを特徴とする。
これによって、高感度であって、かつ高信頼性の受光信号が得られる光学装置を提供することができる。光学装置は、上記の受光装置と読み出し回路とを含めばどのような装置であってもよい。
【0018】
本発明の受光装置の製造方法は、InP基板に、少なくとも波長1μm〜2.5μmに受光感度を有する受光素子を画素として該受光素子のアレイを形成する工程と、InP基板の裏面に画素ごとにフッ素樹脂を主成分とするマイクロレンズを設け、該InP基板全体にマイクロレンズアレイを形成する工程とを備え、マイクロレンズアレイの形成工程では、フッ素樹脂を溶媒に溶かして粘度を調整したフッ素樹脂含有剤を、マイクロノズルを用いて放出して前記画素の領域ごとにフッ素樹脂含有剤の滴状体または山状体を形成し、次いで乾燥処理してフッ素樹脂による該マイクロレンズアレイを形成することを特徴とする。上記のフッ素樹脂含有剤は、非晶性フッ素樹脂と処理剤としてのシランカップリング剤(例えばアミノシランカップリング剤)を100:0.1の比率で溶媒に溶かして粘度を調整したフッ素樹脂含有剤としてもよい。これを、マイクロノズルを用いて放出して画素の領域ごとにフッ素樹脂含有剤の滴状体または山状体を形成し、次いで乾燥処理してフッ素樹脂による該マイクロレンズアレイを形成することができる。また、必要に応じて、前記フッ素樹脂含有剤の滴状体または山状体を形成する前に、前記InP基板に処理剤としてシランカップリング剤を噴霧した後、乾燥処理を行う工程を含めることもできる。
さらにInP基板裏面にSiN膜またはSiON膜のコート膜を形成し、そのSiN膜またはSiON膜の接着力により、フッ素樹脂によるマイクロレンズアレイとの固定をより安定化してもよい。
また、SiN膜もしくはSiON膜を形成する際そのSiN膜もしくはSiON膜の接着力を増強する処理剤をそのSiN膜もしくはSiON膜の表層に付し、その後、前記マイクロレンズアレイを形成して、マイクロレンズアレイの接着力増強をはかってもよい。
【0019】
上記の方法によれば、マイクロポッティングまたはインクジェットによってフッ素樹脂含有剤を滴状に放出して、乾燥処理を経てフッ素樹脂製のマイクロレンズアレイを、能率良く簡単に得ることができる。フッ素樹脂含有剤は、撥水性とできるので、下地との間に大きな接触角をもって滴状体または山状体を形成することができる。これによって、経済性に優れ、感度が高く、高品位の受光信号をもたらす受光装置を簡単に得ることができる。
【0020】
マイクロレンズアレイの形成工程の前に、滴状または山状のフッ素樹脂含有剤が、隣の画素のフッ素樹脂含有剤の滴状体または山状体と接触して融合しないように、隣り合う画素の境界に溝または壁を設けるのがよい。
インクジェットまたはマイクロポッティング法では、上記のフッ素樹脂含有剤は、溶媒が9割前後を占めるので液体に近い。このため隣り合う画素の滴状体どうしが接触すると表面張力等の影響で融合してしまい、撥水性が損なわれてマイクロレンズの体をなさない形状となる。上記の溝または壁を画素の境界に設けることで、接触を防ぐことができ、個々の滴状体または山城体からマイクロレンズを形成することができる。
なお、前述のごとく、マイクロレンズが形成されるフッ素樹脂と、InP基板との接着性を向上させる手段として、前記フッ素樹脂含有剤の滴状体または山状体を形成する前にInP基板に噴霧器を用いて、処理剤であるシランカップリング剤を2.3回噴霧し、当該基板を85℃で2時間程乾燥処理させることもできる。この場合、マイクロレンズを形成する非晶質フッ素樹脂中には、処理剤としてのシランカップリング剤を予め配合させる必要もなくなり、かつ、本乾燥工程により、波長0.7μm〜3μmの波長域の光透過性に悪影響を与える余分なCH結合物質がマイクロレンズ等に存在することを抑制させることができる。
【0021】
壁を設けるとき、InP基板の裏面に被覆層を形成し、次いで、被覆層の壁になる部分以外の部分をエッチングによって除去するのがよい。
これによって、たとえば被覆層をSiN膜、親水性のレジスト膜などとして、簡単にこれらの壁を形成して、滴状体の融合が生じることなく、画素ごとに一つのマイクロレンズを形成することができる。
【0022】
本発明の別の受光装置の製造方法は、InP基板に、少なくとも波長1μm〜2.5μmに受光感度を有する受光素子を画素として該受光素子のアレイを形成する工程と、InP基板の裏面に画素ごとにフッ素樹脂を主成分とするマイクロレンズを設け、該InP基板全体にマイクロレンズアレイを形成する工程とを備える。そしてマイクロレンズアレイの形成工程は、マイクロレンズアレイの雌型となる型を準備する工程と、フッ素樹脂を溶媒に溶かして粘度を調整したフッ素樹脂含有剤をInP基板の裏面に塗布して塗布層を形成する工程と、適度に乾燥した塗布層に、画素と位置合わせしながら、型を押し当ててマイクロレンズとなる凸レンズが配列されたマイクロレンズアレイを形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0023】
上記の押し型を用いる方法によれば、能率よく簡単にマイクロレンズアレイを形成することができる。InP基板の裏面にフッ素樹脂含有剤を塗布する方法は、何でもよいが、たとえばスクリーン印刷法、スピンコート法などを用いるのがよい。
上記の押し型を用いてマイクロレンズアレイを形成する場合においても、マイクロノズルを用いる方法と同じように、SiN膜またはSiON膜のコート膜を介在させて、マイクロレンズアレイとInP基板との接着の安定化を図ってもよい。また、上記コート膜の有無によらず、接着力を増強する処理剤を、(InP基板裏面に直接付す、フッ素樹脂含有剤に配合する、SiN膜またはSiON膜の表層に付す)のうちのいずれかの処理またはこれらを組み合わせた処理を行って、接着の増強を図ってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の受光装置によれば、少なくとも波長1μm〜2.5μmの近赤外〜赤外域に、高感度で、高品位の受光信号を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態1における受光装置および光学装置を示す図である。
【図2】図1の受光装置の一部分の平面図である。
【図3】フッ素樹脂の透過率と波長の関係を示し、(a)は波長2.0μm以上の範囲、(b)は波長0.7μm〜2.0μmの範囲、を示す図である。
【図4】図1の受光装置の変形例であって、本発明の、受光装置およびそれを組み込んだ光学装置を示す図である。
【図5】実施の形態1における受光装置の製造方法を示すフローチャートである。
【図6】(a)は溝の形成方法、(b)は壁の形成方法、を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態2における受光装置および光学装置を説明するための図である(型を押し当てる工程は、ROICと組み合わせる前に、受光装置単独で行う。)。
【図8】実施の形態2における受光装置の製造方法を示すフローチャートである。
【図9】(a)は、本発明の実施の形態3における受光装置および光学装置、(b)は(a)の受光装置内の受光層、を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態4における受光装置および光学装置を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態5の受光装置の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態における、受光装置50および光学装置100を示す図である。受光装置50には、複数の画素Pが形成されている。InP基板1には、受光層3/窓層5、を含むInP系エピタキシャル層が形成されている。p型領域6は、選択拡散マスクパターン17の開口部から選択拡散された、たとえば亜鉛(Zn)などのp型不純物が導入され、受光層3内にまで延びている。選択拡散マスクパターン17は保護膜を兼ねており、p型不純物である亜鉛(Zn)の選択拡散に用いられたあとそのまま残されている。画素Pは、図示しない共通のグランド電極と、p型領域上にオーミック接触する画素電極11との間に逆バイアス電圧を印加されて、pn接合15から張り出す空乏層において対象とする近赤外光を受光する。このとき、電子正孔対が発生するが、これを、画素電極およびグランド電極で読み出して受光信号を得る。
受光信号を読み出す読み出し回路(ROIC:Read Out IC)70の読み出し電極71と、受光装置50の画素電極11とは、対面した状態で、接続バンプ9,79によって導電接続される。このようなROICを用いて受光装置の画素Pからの受光信号を読み出す場合、上述のように基板(裏面)入射となる。
【0027】
本実施の形態における特徴は、次の2点である。
(1)InP基板1の裏面に集光レンズとなるマイクロレンズ21が配置されている。このマイクロレンズ21は凸レンズであり、フッ素樹脂で形成されている。このあとフッ素樹脂の波長0.7μm〜3μmでの透過率を示すが、フッ素樹脂は、CH結合を含まないために、波長0.7μm〜3μmに大きな吸収バンドを持たない。またフッ素樹脂の屈折率は1.3〜1.5程度である。このため、高精細な加工を行わなくても、凸レンズを画素Pの領域ごとに設けることで、平行光線またはほぼ平行光線を、焦点面付近に位置する受光部またはpn接合15の付近に光を集めることができる。マイクロレンズの表面の曲率は、焦点距離がある程度短くなっても(pn接合15より上部でフォーカスしても)、当該上部でクロスしたあと拡大して受光部には集光されるので精度はそれほど必要としない。また、焦点距離がある程度長くなっても、光束は確実に受光部に集められる。
この結果、受光感度を高めることができる。上記のように、pn接合15は、選択拡散されたp型領域6の先端部に形成され、ここから逆バイアス電圧で張り出す空乏層において受光が遂行される。このため、平面的にみて、InP基板1の裏面に照射された光のうち、多くの部分はpn接合15を通らずに通過してしまう(図2参照)。
【0028】
図2は、図1に示す受光装置の一部の平面図である。p型領域6および画素Pの二次元配列を示している。図1および図2において、たとえば、p型領域6を形成するための選択拡散マスクパターン17の開口径は15μmであり、画素ピッチは30μmである。p型領域6の画素Pにおける平面占有率は、20%程度である。換言すれば、平行光線またはほぼ平行な光線がInP基板に到達したあと、反射する分はゼロとして、約20%程度が受光する可能性を持つにすぎない。
一般に、選択拡散によるp型領域6または画素Pの形成は、隣り合う画素P間でクロストークなどの干渉が生じないように、十分な間隔をとる必要がある。また、選択拡散では、深さ方向だけでなく、開口部から導入された不純物が、わずかであるが横方向に拡散することも考慮する必要がある。このため、平面的にみて、p型領域6の直径と同程度の間隔(p型領域6の間の選択拡散されていない領域の最小幅)をあけているのが実情である。この結果、図2に示すように、p型領域6は、20%程度の平面占有率となる。ただ、画素Pの他の画素からの独立性を保つための他の方法、たとえば画素の境界に、メサエッチングによって深い溝を入れる方法に比べて、結晶が損傷を受けにくく、暗電流を低くできる利点を有する。
【0029】
図2に示すように、感度を上げるためマイクロレンズ21を画素に内接するように一杯に形成すると、上記の受光に寄与する可能性のある光は、78%程度に大きく向上する。図1に示すように、凸レンズは、その凸レンズに照射された平行光線またはほぼ平行光線を、焦点面付近に位置する受光部またはpn接合15の付近に集めることができる。物体等の表面から反射されて受光装置50に到達する光は、ほとんど平行であり、凸レンズまたはマイクロレンズ21の作用により焦点面付近に集光される。
【0030】
図3は、フッ素樹脂の透過率を示す図である。フッ素樹脂は、図3(a),(b)に示すように、0.7μm〜2.0μm、2.0μm〜3.5μmの波長域で、95%、93%の透過率を示す。その上、透過率の変動がなく、波長に対してほとんどフラットである。
CH結合を含む樹脂の場合、波長に対する変動が大きい。すなわちCH結合を含む樹脂は、波長1μm〜2.5μmという肝心要の重要な波長域に吸収帯を持つ。また、酸化ケイ素などは、やはり肝心な波長1μm〜3μmに非常に大きな吸収帯を、複数、持つ。このためCH結合を含む樹脂や酸化ケイ素によるマイクロレンズを設けて、受光に寄与する可能性のある光量を増やして感度を上げることができたとしても、マイクロレンズの透過率の変動が、集光によって強調されて受光信号に含まれてしまう。このため受光信号の信頼性を損なうことになる。
本実施の形態のように、フッ素樹脂製のマイクロレンズ21を用いることで、受光に寄与する可能性のある光量を増やして感度を上げた上で、高い信頼性の受光信号を得ることができる。
【0031】
(2)もう一つの点は、画素の境界に溝22を設けていることである。マイクロレンズ21は、できるだけ大きい面積とするために、画素Pの正方形内に内接するように設ける場合、次の問題を生じる。マイクロポッティングまたはインクジェットによって、液体に近い粘度のフッ素樹脂含有剤の滴状体を画素ごとに配置するとき、目一杯大きくすると相互に接触しやすくなる(製造方法については、このあと説明する)。乾燥前に接触が生じると表面張力等の影響で、その二つの滴状体は融合して、下地との接触角が小さくなり滴状を維持しなくなり、下地に濡れるような形態をとる。この結果、レンズの体をなさなくなる。このため、図1および図2に示すように、画素P間に溝22を設けて、溝によって滴状体の越境を防止することができる。
【0032】
上記の溝22は、壁であってもよい。図4は、図1に示す溝22を壁23に置き換えた受光装置50を示す図である。壁23によっても、画素P内の滴状体の越境を防止することができる。
溝22または壁23の形状は、たとえば、次の寸法とすることができる。
<溝>:幅1μm、深さ1μm〜2μm
<壁>:幅1μm、高さ0.11μm〜0.3μm
【0033】
図5は、本発明の実施の形態の受光装置50の製造方法を示すフローチャートである。まず、InP基板に受光素子アレイを形成する。次いで、図1または図4に示すように、溝22とするか、または壁23とするかに応じて、InP基板1の裏面に、溝22または壁23を形成する。
この間、マイクロレンズを形成するためのフッ素樹脂含有剤を調整しておく。フッ素樹脂としては、CH結合を有しない透明な脂環式のフッ素樹脂を主成分とする非晶性フッ素樹脂を選択するのが好ましい。具体的には、下記の化学式(1)で表される非晶性フッ素樹脂が好ましく、例えば旭硝子製サイトップ、ルミフロン(商品名)を挙げることができる。これらのフッ素樹脂を用いた場合、波長0.7μm〜3μmの光に対する透過率の変動幅が25%以下で、かつ該透過率が70%以上となる。
【化1】
【0034】
希釈溶剤としては、エタノール、イソプロピルアルコール/酢酸イソブチル、水など溶媒となるものであれば何でもよい。マイクロノズルを用いて、インクジェットまたはマイクロポッティングによって滴状体を画素ごとに置く場合、たとえばフッ素樹脂ポリマーは5〜15%、残りの溶媒等は95%〜85%程度とするのがよい。上述のように、滴状体または山状体の表面の曲率は、焦点距離がある程度短くなっても(pn接合15より上部でフォーカスしても)、受光部には集光されるので精度はそれほど必要としない。また、焦点距離がある程度長くなっても、集光は確実にされて感度を向上させる。
マイクロノズルによって画素Pごとにフッ素樹脂含有剤の滴状体または山状体を形成してゆく。すべての画素Pに滴状体を配置した後、乾燥処理に入る。乾燥処理では、70℃〜250℃の範囲内の一定温度に保持した恒温槽に入れて、溶媒を除去する。数回に分けて、低温槽から高温槽へと段階的に昇温して行ってもよい。
【0035】
図6(a)は溝22の形成方法を、また図6(b)は壁23の形成方法を占めずフローチャートである。溝22の場合は、画素Pの境界に沿ってダイシングをするか、またはエッチングによって溝を形成する。また、壁23の場合は、InP基板1の裏面に、たとえばCVD(Chemical Vapor Deposition)法によってSiN膜を形成する。厚みは壁23の厚み、たとえば0.11μm〜0.3μmとするのがよい。このあと、エッチングによって、壁23となる部分以外の領域を除去する。
上記の製造方法によれば、とくに大掛かりな装置を必要としないで、簡単かつ容易に、マイクロポッティング法またはインクジェット法によって、滴状体または山状体の画素からの越境を防止しながら、高い製造歩留まりで、感度を大きく向上させるマイクロレンズ21の配列を得ることができる。
【0036】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2における受光装置50および光学装置100、並びにこれらの製造方法、を説明するための図である。本実施の形態においても、マイクロレンズ21を備える受光装置50と、読み出し回路(ROIC)70とが組み合わされている点では、実施の形態1と同じである。本実施の形態では、マイクロレンズ21が、マイクロレンズ21の表面形状に対応する雌型である型35を用いてインプリント法で形成される点で、実施の形態1と異なる。
ただし、図7では、光学装置100に組み上げたあとマイクロレンズ21を形成するように描いてあるが、これはあくまで説明の便宜上のことであって、実際は、型を押し当ててマイクロレンズを形成する工程は、読み出し回路と組み合わせる前に、受光装置50単独について行う。この留意点を前提として、図7に要点を示すように、希釈された乾燥前で、塑性加工しやすい状態のフッ素樹脂含有層21aに対して、型35の表面35fを押し当てて、マイクロレンズ21の配列を形成する。
【0037】
図8にインプリント法によるマイクロレンズ配列を形成する手順を示す。インプリント法においては型35の製作が重要である。この押し当て用の型35は、微細な加工を行うため電子ビーム露光によるリソグラフィによって凹凸を付けて形成することができる。型35の材料は、耐摩耗性が要求されることから石英などを用いるのがよい。
フッ素樹脂含有剤の層21aを形成するとき、粘度の調整は、マイクロポッティング法またはインクジェット法の場合よりも、固めにするのがよい。上記の方法で製作された型35を押し当てることで、マイクロレンズ21の配列を簡単に得ることができる。
マイクロポッティング法で形成されたマイクロレンズか、またはインプリント法で形成されたマイクロレンズかは、マイクロレンズを検鏡することで特定することができる。また、マイクロポッティング法では、溝22または壁23を伴う場合が多いので、これによっても識別することができる。
【0038】
(実施の形態3)
図9(a)は、本発明の実施の形態3における受光装置50および光学装置100を示す図であり、図9(b)は、画素に含まれる受光層3等の拡大図である。本実施の形態における受光層3は、GaAsSb3aとInGaAs3bとをペアとするタイプ2の多重量子井戸構造MQWである。このタイプ2のMQWでは、GaAsSbの価電子帯の電子が、InGaAsの伝導帯に遷移して、電子/正孔を生じることで、受光が起きる。GaAsSbの価電子帯とInGaAsの伝導帯とのエネルギ差は、GaAsSb(InGaAs)内の価電子帯と伝導帯とのエネルギ差よりも小さいので、エネルギの低い長波長の光を受光することができる。しかし、上記のように、GaAsSbの価電子帯の電子が、InGaAsの伝導帯に遷移するため、多重量子井戸構造MQWの界面、すなわち図9(b)に例示する界面Kにおいてのみ受光が生じる。このようにタイプ2のMQWでは、バルク内で生じる遷移現象に比べて遷移が生じる場所が限られるため、たとえMQWのペア数を多くしても、感度は小さくなる。
【0039】
また、タイプ2のMQWを受光層3とする受光素子では、良好な結晶性を保つために特有の構造を伴う。たとえば不純物濃度があまり高くなるとMQWの結晶性が害されるため、選択拡散のための拡散濃度分布調整層4を配置して、この拡散濃度分布調整層4内で、p型不純物濃度を急減させて、受光層3には、低い範囲に安定した濃度分布を入れるようにする。また、選択拡散による画素形成そのものも、タイプ2のMQWの結晶性には好ましい。
【0040】
タイプ2のMQWによる受光層3を有し、受光感度を長波長側に拡大することはできるものの、本質的に感度が低い受光メカニズムによる。このような受光装置において、上述のマイクロレンズ21は、大きな威力を発揮することができる。すなわち、本実施の形態の受光装置50および光学装置100は、近赤外域の長波長域に感度を拡大しながら、その受光メカニズムに起因する低い受光感度を補って、所定レベル以上の感度を確保することができる。また、マイクロレンズ21は、フッ素樹脂製であるため、近赤外域およびその長波長域で、高品位の受光信号を得ることができる。
【0041】
(実施の形態4)
図10は、実施の形態4における受光装置50および光学装置100を示す図である。実施の形態1〜3では、マイクロレンズ21は、InP基板1の裏面に、直接、接して配置される。しかし、本実施の形態では、マイクロレンズ21とInP基板1の裏面との間にSiN膜またはSiON膜27が配置されている。これによって、SiN膜またはSiON膜27による反射防止作用を得て受光感度を向上させることができる。同時に、SiN膜またはSiON膜とフッ素樹脂等の樹脂との接着性(固着性)が良好であるため、マイクロレンズまたはマイクロレンズアレイを確実に固定することができる。マイクロレンズは、実施の形態1〜3のいずれの方法で製作してもよい。また、図10には、マイクロレンズ間の溝や壁はないが、その溝または壁をマイクロレンズ21の間に配置してもよい。
【0042】
所定の場合には、SiN膜またはSiON膜とフッ素樹脂との接着性に問題が生じることがある。このような場合には、フッ素樹脂中に微量の添加剤を配合する。あるいは、当該SiN膜またはSiON膜に当該添加剤を含むある種の溶剤を塗布後に高温に放置して前溶剤を揮発させることで、SiN膜またはSiON膜との接着力の更なる向上をはかることができる。ここで、微量の処理剤として最適な材料としては、アミン系シランカップリング剤(信越化学製KBM903)やメルカブト系シランカップリング剤(信越化学製KBM803)、メタクリル系シランカップリング剤(KBM503)、等のCH結合含量の比較的少ないシラン処理剤を例示できる。そして、シラン処理剤の使用量としては、SiN膜またはSiON膜とフッ素樹脂との接着性と、CH結合の増加に伴う0.7μm〜3μmの波長域における透過率低下の観点から、非晶性フッ素樹脂100重量部に対して、概ね1重量部以下とするのが好ましい。
【0043】
(実施の形態5)
図11は、実施の形態5における受光装置50の部分拡大図である。実施の形態4では、SiN膜またはSiON膜をマイクロレンズ21とInP基板1との間に配置した。本実施の形態では、マイクロレンズが形成されるフッ素樹脂と、InP基板との接着性を向上させるために、InP基板1の裏面に下地処理層29を形成する。すなわち、フッ素樹脂含有剤の滴状体または山状体を形成する前にInP基板1の裏面に、噴霧器を用いて処理剤であるシランカップリング剤を2.3回噴霧し、当該基板を85℃で2時間程乾燥処理させることで、下地処理層29を形成する。このあとのマイクロレンズ21は、実施の形態1〜4のいずれの方法で製造してもよい。これによって、マイクロレンズ21は、InP基板1の裏面に強固に固着される。
この場合、マイクロレンズ21を形成する非晶質フッ素樹脂中には、処理剤としてのシランカップリング剤を予め配合させる必要もなくなり、かつ、乾燥工程により、波長0.7μm〜3μmの波長域の光透過性に悪影響を与える余分なCH結合物質がマイクロレンズ等に存在するのを減らすことができる。
【0044】
上記において、本発明の実施の形態および実施例について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態および実施例は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の受光装置等によれば、所定のマイクロレンズを配置することで、波長が0.7μmから3μm程度までの近赤外〜赤外域に、高感度で、高品位の受光信号を得ることができる。また、これらのマイクロレンズは、フッ素樹脂製とすることで、近赤外域およびその長波長域で吸収のないフラットな透過率−波長特性なので、樹脂による加工容易性という利点を得ながら、高い信頼性の受光信号を得ることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 InP基板、3 受光層またはタイプ2(InAs/GaSb)MQW受光層、3a GaAsSb、3b InGaAs、4 拡散濃度分布調整層、5 窓層、6 p型領域、9 バンプ、11 画素電極(p部電極)、15 pn接合、17 選択拡散マスクパターン(保護膜)、21 マイクロレンズ、21a フッ素樹脂含有剤の層、22 溝、23 壁、27 SiN膜またはSiON膜、29 下地処理層、35 型、35f 型の表面、50 受光装置、70 ROIC、71 読み出し電極、79 バンプ、100 光学装置、K MQWのペア境界、P 画素。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
InP基板に形成された複数の画素を備える受光装置であって、
前記InP基板の裏面において、前記画素に対応する領域ごとに位置するマイクロレンズを備え、
前記マイクロレンズが、波長0.7μm〜3μmの光に対する透過率の変動幅が25%以下で、かつ該透過率が70%以上である樹脂材料で形成されていることを特徴とする、受光装置。
【請求項2】
前記樹脂材料が、CH結合を含まないことを特徴とする、請求項1に記載の受光装置。
【請求項3】
前記樹脂材料がフッ素樹脂であることを特徴とする、請求項1または2に記載の受光装置。
【請求項4】
前記フッ素樹脂が、化学式(1)で表される基本単位を持つ非晶質フッ素樹脂であることを特徴とする、請求項3に記載の受光装置。
【化1】
【請求項5】
前記InP基板の裏面と前記マイクロレンズとの間にSiN膜またはSiON膜がコートされていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の受光装置。
【請求項6】
前記InP基板の裏面と前記マイクロレンズとの間にSiN膜またはSiON膜がコートされており、(i)そのSiN膜もしくはSiON膜の表層に当該SiN膜もしくはSiON膜の接着力を増強する処理剤が付されているか、または(ii)前記マイクロレンズを構成する前記樹脂材料に接着力を増強する処理剤が含まれており、その処理剤を介在させて前記マイクロレンズが前記SiN膜もしくはSiON膜固定されていることを特徴とする、請求項1〜4に記載の受光装置。
【請求項7】
前記InP基板の裏面に接着力を増強するための処理剤の下地処理層が形成され、その下地処理層を介在させて、前記マイクロレンズが前記InP基板の裏面に固定されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記画素の境界に沿って前記マイクロレンズを囲むように、該マイクロレンズの厚み以下の、深さの溝または高さの壁、が形成されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の受光装置。
【請求項9】
前記InP基板上に受光層および窓層を備え、前記画素の中核を占める光を受光する受光部は、前記窓層から不純物を選択拡散されて前記受光層に形成されたpn接合を含み、該受光部は隣の受光部と選択拡散されていない領域で隔てられており、前記画素は、前記受光部を中心として前記選択拡散されていない領域で囲まれており、前記マイクロレンズは、前記受光部に中心を合わせ前記選択拡散されていない領域を覆うことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の受光装置。
【請求項10】
前記pn接合は、pi接合またはni接合などであってもよく、さらに、これらpi接合またはni接合におけるp濃度またはn濃度がバックグランド程度に低い場合も含むものであることを特徴とする、請求項9に記載の受光装置。
【請求項11】
前記受光部の径と、前記選択拡散されていない領域の最小幅とが、ほぼ同じであり、前記マイクロレンズは前記画素を占めるように該画素の区画に内接するように形成されていることを特徴とする、請求項9または10に記載の受光装置。
【請求項12】
前記受光層は、InPに±0.5%の範囲内で格子整合する二つのIII−V族化合物半導体の、タイプ2の多重量子井戸構造(MQW:Multi Quantum Well)によって構成されることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか1項に記載の受光装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の受光装置と、読み出し回路(ROIC:Read
Out IC)とを備えることを特徴とする、光学装置。
【請求項14】
InP基板に、少なくとも波長1μm〜2.5μmに受光感度を有する受光素子を画素として該受光素子のアレイを形成する工程と、
前記InP基板の裏面に前記画素ごとにフッ素樹脂を主成分とするマイクロレンズを設け、該InP基板全体にマイクロレンズアレイを形成する工程とを備え、
前記マイクロレンズアレイの形成工程では、フッ素樹脂を溶媒に溶かして粘度を調整したフッ素樹脂含有剤を、マイクロノズルを用いて放出して前記画素の領域ごとにフッ素樹脂含有剤の滴状体または山状体を形成し、次いで乾燥処理してフッ素樹脂による該マイクロレンズアレイを形成することを特徴とする、受光装置の製造方法。
【請求項15】
前記マイクロレンズアレイの形成工程の前に、前記滴状または山状のフッ素樹脂含有剤が、隣の画素のフッ素樹脂含有剤の滴状体または山状体と接触して融合しないように、隣り合う前記画素の境界に溝または壁を設けることを特徴とする、請求項14に記載の受光装置の製造方法。
【請求項16】
前記壁を設けるとき、前記InP基板の裏面に被覆層を形成し、次いで、被覆層の前記壁になる部分以外の部分をエッチングによって除去することを特徴とする、請求項15に記載の受光装置の製造方法。
【請求項17】
InP基板に、少なくとも波長1μm〜2.5μmに受光感度を有する受光素子を画素として該受光素子のアレイを形成する工程と、
前記InP基板の裏面に前記画素ごとにフッ素樹脂を主成分とするマイクロレンズを設け、該InP基板全体にマイクロレンズアレイを形成する工程とを備え、
前記マイクロレンズアレイの形成工程は、
前記マイクロレンズアレイの雌型となる型を準備する工程と、
前記フッ素樹脂を溶媒に溶かして粘度を調整したフッ素樹脂含有剤を前記InP基板の裏面に塗布して塗布層を形成する工程と、
適度に乾燥した前記塗布層に、前記画素と位置合わせしながら、前記型を押し当ててマイクロレンズとなる凸レンズが配列されたマイクロレンズアレイを形成する工程とを備えることを特徴とする、受光装置の製造方法。
【請求項18】
前記InP基板に前記受光素子のアレイを形成した後で前記マイクロレンズを設ける前に、そのInP基板にSiN膜またはSiON膜のコート膜を形成し、その後、前記コート膜に接して前記マイクロレンズを設けることを特徴とする、請求項14〜17のいずれか1項に記載の受光装置の製造方法。
【請求項19】
前記InP基板に、(i)SiN膜もしくはSiON膜を形成し、その形成の際そのSiN膜もしくはSiON膜の表層に当該SiN膜もしくはSiON膜の接着力を増強する処理剤を付し、その後、前記マイクロレンズアレイを形成する、かまたは(ii)SiN膜もしくはSiON膜を形成し、次いで前記フッ素樹脂に予め接着力を増強する処理剤を含ませたフッ素樹脂含有剤を用いて前記マイクロレンズを設けることを特徴とする、請求項14〜17のいずれか1項に記載の受光装置の製造方法。
【請求項20】
前記InP基板の裏面に、接着力を増強する処理剤の下地処理層を形成し、その下地処理層上に前記マイクロレンズを設けることを特徴とする、請求項14〜17のいずれか1項に記載の受光装置の製造方法。
【請求項1】
InP基板に形成された複数の画素を備える受光装置であって、
前記InP基板の裏面において、前記画素に対応する領域ごとに位置するマイクロレンズを備え、
前記マイクロレンズが、波長0.7μm〜3μmの光に対する透過率の変動幅が25%以下で、かつ該透過率が70%以上である樹脂材料で形成されていることを特徴とする、受光装置。
【請求項2】
前記樹脂材料が、CH結合を含まないことを特徴とする、請求項1に記載の受光装置。
【請求項3】
前記樹脂材料がフッ素樹脂であることを特徴とする、請求項1または2に記載の受光装置。
【請求項4】
前記フッ素樹脂が、化学式(1)で表される基本単位を持つ非晶質フッ素樹脂であることを特徴とする、請求項3に記載の受光装置。
【化1】
【請求項5】
前記InP基板の裏面と前記マイクロレンズとの間にSiN膜またはSiON膜がコートされていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の受光装置。
【請求項6】
前記InP基板の裏面と前記マイクロレンズとの間にSiN膜またはSiON膜がコートされており、(i)そのSiN膜もしくはSiON膜の表層に当該SiN膜もしくはSiON膜の接着力を増強する処理剤が付されているか、または(ii)前記マイクロレンズを構成する前記樹脂材料に接着力を増強する処理剤が含まれており、その処理剤を介在させて前記マイクロレンズが前記SiN膜もしくはSiON膜固定されていることを特徴とする、請求項1〜4に記載の受光装置。
【請求項7】
前記InP基板の裏面に接着力を増強するための処理剤の下地処理層が形成され、その下地処理層を介在させて、前記マイクロレンズが前記InP基板の裏面に固定されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記画素の境界に沿って前記マイクロレンズを囲むように、該マイクロレンズの厚み以下の、深さの溝または高さの壁、が形成されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の受光装置。
【請求項9】
前記InP基板上に受光層および窓層を備え、前記画素の中核を占める光を受光する受光部は、前記窓層から不純物を選択拡散されて前記受光層に形成されたpn接合を含み、該受光部は隣の受光部と選択拡散されていない領域で隔てられており、前記画素は、前記受光部を中心として前記選択拡散されていない領域で囲まれており、前記マイクロレンズは、前記受光部に中心を合わせ前記選択拡散されていない領域を覆うことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の受光装置。
【請求項10】
前記pn接合は、pi接合またはni接合などであってもよく、さらに、これらpi接合またはni接合におけるp濃度またはn濃度がバックグランド程度に低い場合も含むものであることを特徴とする、請求項9に記載の受光装置。
【請求項11】
前記受光部の径と、前記選択拡散されていない領域の最小幅とが、ほぼ同じであり、前記マイクロレンズは前記画素を占めるように該画素の区画に内接するように形成されていることを特徴とする、請求項9または10に記載の受光装置。
【請求項12】
前記受光層は、InPに±0.5%の範囲内で格子整合する二つのIII−V族化合物半導体の、タイプ2の多重量子井戸構造(MQW:Multi Quantum Well)によって構成されることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか1項に記載の受光装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の受光装置と、読み出し回路(ROIC:Read
Out IC)とを備えることを特徴とする、光学装置。
【請求項14】
InP基板に、少なくとも波長1μm〜2.5μmに受光感度を有する受光素子を画素として該受光素子のアレイを形成する工程と、
前記InP基板の裏面に前記画素ごとにフッ素樹脂を主成分とするマイクロレンズを設け、該InP基板全体にマイクロレンズアレイを形成する工程とを備え、
前記マイクロレンズアレイの形成工程では、フッ素樹脂を溶媒に溶かして粘度を調整したフッ素樹脂含有剤を、マイクロノズルを用いて放出して前記画素の領域ごとにフッ素樹脂含有剤の滴状体または山状体を形成し、次いで乾燥処理してフッ素樹脂による該マイクロレンズアレイを形成することを特徴とする、受光装置の製造方法。
【請求項15】
前記マイクロレンズアレイの形成工程の前に、前記滴状または山状のフッ素樹脂含有剤が、隣の画素のフッ素樹脂含有剤の滴状体または山状体と接触して融合しないように、隣り合う前記画素の境界に溝または壁を設けることを特徴とする、請求項14に記載の受光装置の製造方法。
【請求項16】
前記壁を設けるとき、前記InP基板の裏面に被覆層を形成し、次いで、被覆層の前記壁になる部分以外の部分をエッチングによって除去することを特徴とする、請求項15に記載の受光装置の製造方法。
【請求項17】
InP基板に、少なくとも波長1μm〜2.5μmに受光感度を有する受光素子を画素として該受光素子のアレイを形成する工程と、
前記InP基板の裏面に前記画素ごとにフッ素樹脂を主成分とするマイクロレンズを設け、該InP基板全体にマイクロレンズアレイを形成する工程とを備え、
前記マイクロレンズアレイの形成工程は、
前記マイクロレンズアレイの雌型となる型を準備する工程と、
前記フッ素樹脂を溶媒に溶かして粘度を調整したフッ素樹脂含有剤を前記InP基板の裏面に塗布して塗布層を形成する工程と、
適度に乾燥した前記塗布層に、前記画素と位置合わせしながら、前記型を押し当ててマイクロレンズとなる凸レンズが配列されたマイクロレンズアレイを形成する工程とを備えることを特徴とする、受光装置の製造方法。
【請求項18】
前記InP基板に前記受光素子のアレイを形成した後で前記マイクロレンズを設ける前に、そのInP基板にSiN膜またはSiON膜のコート膜を形成し、その後、前記コート膜に接して前記マイクロレンズを設けることを特徴とする、請求項14〜17のいずれか1項に記載の受光装置の製造方法。
【請求項19】
前記InP基板に、(i)SiN膜もしくはSiON膜を形成し、その形成の際そのSiN膜もしくはSiON膜の表層に当該SiN膜もしくはSiON膜の接着力を増強する処理剤を付し、その後、前記マイクロレンズアレイを形成する、かまたは(ii)SiN膜もしくはSiON膜を形成し、次いで前記フッ素樹脂に予め接着力を増強する処理剤を含ませたフッ素樹脂含有剤を用いて前記マイクロレンズを設けることを特徴とする、請求項14〜17のいずれか1項に記載の受光装置の製造方法。
【請求項20】
前記InP基板の裏面に、接着力を増強する処理剤の下地処理層を形成し、その下地処理層上に前記マイクロレンズを設けることを特徴とする、請求項14〜17のいずれか1項に記載の受光装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−160691(P2012−160691A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109658(P2011−109658)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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