説明

可動式ヘッドレスト成形型

【課題】実用性の高い可動式ヘッドレスト成形型を提供する。
【解決手段】可動式ヘッドレスト10の成形型30において、(a)ヘッドレスト本体(本体と略す)12の背面を区画するキャビティ面42が形成され、固定的に設けられる背面側下型32と、(b)背面側下型の上端部に回動可能に取り付けられ、ステー14を成形型の外部に延出させる背面側ステー溝52が形成された背面側上型34と、(c)本体の正面を区画するキャビティ面46が形成され、下端部において背面側下型に回動可能に取り付けられる正面側下型36と、(d)正面側下型の上端部に回動可能に取り付けられ、背面側ステー溝と対向する正面側ステー溝54が形成され、その溝から連続してステーに沿って本体の内部に延び出す延出部58を有する正面側上型38とを備えるように構成する。この構成により、本体と延出部とを殆ど干渉させることなく、ヘッドレストを脱型することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形型、詳しくは、可動式ヘッドレストを成形するための可動式ヘッドレスト成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドレストの多くは、可動式、非可動式のものに関わらず、発泡成形により成形されるヘッドレスト本体と、そのヘッドレスト本体の内部から外部に向かって延び出すステーとを備えており、ヘッドレスト本体とステーとが一体成形されている。つまり、ヘッドレストを成形するための成形型の内部に、ステーの一端部が挿入されるとともに、その成形型の内部から外部に向かってステーの他端部が延び出した状態の成形型の内部に、発泡原料が注入されることで、ヘッドレストが成形される。このため、ヘッドレストの成形型には、ステーを貫通させるための貫通孔を形成する必要がある。さらに、成形型からのヘッドレストの抜き取り易さを考慮して、4つの型から構成されたヘッドレスト成形型が存在する。
【0003】
具体的には、下記特許文献に記載されているように、(a)ヘッドレスト本体の背面を区画する背面側キャビティ面が形成された背面側下型と、(b)その背面側下型の上端部を覆うように背面側下型に回動可能に取り付けられるとともに、ステーを成形型の外部に延び出させるための背面側ステー溝が形成された背面側上型と、(c)ヘッドレスト本体の正面を区画する正面側キャビティ面が形成され、下端部において背面側下型に回動可能に取り付けられる正面側下型と、(d)その正面側下型の上端部を覆うように正面側下型に回動可能に取り付けられるとともに、成形型が閉じられた状態で背面側ステー溝と対向する正面側ステー溝が形成された正面側上型とから構成された成形型が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−191016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
4つの型から構成されるヘッドレスト成形型では、4つの型のうちの1つのものが固定的に設けられるとともに、残りの3つのものが回動可能とされており、それら3つの型を回動させることで、ヘッドレストを成形型から比較的容易に抜き取ることが可能となっている。また、ヘッドレストには、ヘッドレスト本体の内部においてステーを揺動可能に保持するステー保持具を備え、シートバックに取り付けられたヘッドレストの角度を変更することができる可動式ヘッドレストが存在する。この可動式ヘッドレストでは、ステーが、ヘッドレスト本体の内部に位置するステーの一端部を中心に揺動するため、ステーの揺動時にステーとヘッドレスト本体とが干渉しないように、ヘッドレスト本体内部にステーに沿って空洞を形成する必要がある。このため、可動式ヘッドレストを成形するための成形型では、この空洞を形成すために、上記4つの型のいずれかの形状に工夫を凝らし、そのいずれかの型をヘッドレスト本体内部に入り込むような形状とする必要が有る。しかし、ヘッドレスト本体内部に入り込むような形状の型では、ヘッドレストの脱型時に、その型とヘッドレスト本体とが干渉し、ヘッドレスト本体が破損する虞が有る。
【0006】
このように、可動式ヘッドレスト成形型は、改良の余地を多分に残すものとなっており、種々の改良を施すことによって、可動式ヘッドレスト成形型の実用性が向上すると考えられる。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高い可動式ヘッドレスト成形型を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願の請求項1に記載の可動式ヘッドレスト成形型は、発泡成形により成形されるヘッドレスト本体と、そのヘッドレスト本体の内部から外部に向かって延び出すステーと、前記ヘッドレスト本体の内部において前記ステーを揺動可能に保持するステー保持具とから構成される可動式ヘッドレストを成形するための可動式ヘッドレスト成形型であって、前記ヘッドレスト本体の背面を区画する背面側キャビティ面が形成され、当該可動式ヘッドレスト成形型が設置される設置部に固定される背面側下型と、その背面側下型の上端部を覆うように前記背面側下型に回動可能に取り付けられるとともに、前記ステーを当該可動式ヘッドレスト成形型の外部に延び出させるための背面側ステー溝が形成された背面側上型と、前記ヘッドレスト本体の正面を区画する正面側キャビティ面が形成され、下端部において前記背面側下型に回動可能に取り付けられる正面側下型と、その正面側下型の上端部を覆うように前記正面側下型に回動可能に取り付けられるとともに、当該可動式ヘッドレスト成形型が閉じられた状態で前記背面側ステー溝と対向する正面側ステー溝が形成され、その正面側ステー溝から連続して前記ステーに沿って前記ヘッドレスト本体の内部に延び出す正面側延出部を有する正面側上型とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の可動式ヘッドレスト成形型は、請求項1に記載の可動式ヘッドレスト成形型において、前記背面側上型が、前記背面側ステー溝から連続して前記ステーに沿って前記ヘッドレスト本体の内部に延び出す背面側延出部を有し、その背面側延出部の延出量が、前記正面側延出部の延出量より少なくされ、前記背面側延出部の前記背面側ステー溝が形成された面とは反対側の面と、その反対側の面から前記背面側上型の回動中心に接近する方向に連続する面とのなす角度が、90°より大きくされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の可動式ヘッドレスト成形型では、正面側上型に、正面側ステー溝から連続してステーに沿ってヘッドレスト本体の内部に延び出す正面側延出部が形成されている。その正面側延出部によって、ヘッドレスト本体の内部に空洞が形成され、ステー揺動時におけるステーとヘッドレスト本体部との干渉を避けることが可能となる。さらに、請求項1に記載の可動式ヘッドレスト成形型では、背面側下型が、成形型が設置される設置部に固定されている。このため、ヘッドレストの脱型時には、正面側下型と正面側上型とが一体的に、背面側下型に対して回動されるとともに、背面側上型も背面側下型に対して回動される。これにより、ヘッドレスト本体の内部に正面側延出部が入り込んだ状態のヘッドレストが、正面側下型と正面側上型と共に、背面側下型に対して回動される。つまり、ヘッドレストが、背面側下型と背面側上型とから脱型される。そして、正面側上型が正面側下型に対して回動されることで、ヘッドレスト本体の内部に正面側延出部が入り込んだ状態のヘッドレストが、正面側下型から脱型される。最後に、ヘッドレストを正面側上型から脱型することで、ヘッドレストが可動式ヘッドレスト成形型から脱型される。このように、請求項1に記載の可動式ヘッドレスト成形型によれば、ヘッドレスト本体と正面側延出部とを殆ど干渉させることなく、ヘッドレストを可動式ヘッドレスト成形型から脱型することが可能となり、可動式ヘッドレスト成形型の実用性を向上させることが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の可動式ヘッドレスト成形型では、背面側上型に、正面側延出部の延出量より少ない延出量の背面側延出部が形成され、その背面側延出部の背面側ステー溝が形成された面とは反対側の面と、その反対側の面から背面側上型の回動中心に接近する方向に連続する面とのなす角度が、90°より大きくされている。これにより、背面側上型が背面側下型に対して回動される際に、背面側延出部とヘッドレスト本体との干渉を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例である可動式ヘッドレスト成形型によって成形された可動式ヘッドレストを示す斜視図である
【図2】本発明の実施例である可動式ヘッドレスト成形型を示す側面図である。
【図3】図2に示す可動式ヘッドレスト成形型の断面図である。
【図4】図3に示す可動式ヘッドレスト成形型から可動式ヘッドレストを脱型する際の可動式ヘッドレスト成形型の断面図である。
【図5】比較例の可動式ヘッドレスト成形型の断面図である。
【図6】図5に示す可動式ヘッドレスト成形型から可動式ヘッドレストを脱型する際の可動式ヘッドレスト成形型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0013】
<可動式ヘッドレストの構成>
図1に、可動式ヘッドレスト10を斜め前方からの視点において示す。可動式ヘッドレスト10は、発泡成形により成形されるヘッドレスト本体12と、ヘッドレスト本体12をシートバックに取り付けるためのステー14と、ステー14を揺動可能に保持するステー保持具16とから構成されている。ステー保持具16は、プレート状とされており、ヘッドレスト本体の内部に固定的に設けられている。ステー14は、逆U字形状とされており、1対の脚部18と、それら1対の脚部18を繋ぐ中間部20とに区分けされる。ステー14は、中間部20を軸心として、ステー保持具16に揺動可能に保持されており、1対の脚部18の先端部がヘッドレスト本体12の外部に延び出している。このような構造により、可動式ヘッドレスト10では、ヘッドレスト本体12がステー14の中間部20を中心に揺動可能な構造とされている。
【0014】
<可動式ヘッドレスト成形型の構成>
本発明は、可動式ヘッドレスト10を成形するための成形型であり、この可動式ヘッドレスト成形型(以下、「成形型」と略す場合がある)30を図2〜図4に示す。図2は、成形型30の側面図であり、図3は、成形型30が閉じられた状態での断面図である。また、図4は、成形型30が開けられた状態での断面図である。なお、図2〜図4における左右方向を前後方向と称し、各図における左側に向かう方向を前方,右側にむか方向を後方と称し、説明を行う。
【0015】
成形型30は、後方側下型32と、その後方側下型32の上端部を覆うように設けられる後方側上型34と、後方側下型32の前方に設けられる前方側下型36と、その前方側下型36の上端部を覆うように設けられる前方側上型38とから構成されている。後方側下型32は、成形型30が設置される設置台40に着脱可能に固定されており、ヘッドレスト本体12の背面を区画する背面側キャビティ面42が形成されている。その後方側下型32と後方側上型34とは、それぞれの後方側の端面に設けられた第1ヒンジ44によって連結されており、後方側上型34は、後方側下型32に対して回動可能とされている。
【0016】
また、後方側下型32の前方に設けられた前方側下型36には、ヘッドレスト本体12の正面を区画する正面側キャビティ面46が形成されており、前方側下型36と後方側下型32とは、それぞれの下端面に設けられた第2ヒンジ48によって連結されている。こにより、前方側下型36は、後方側下型32に対して回動可能とされており、それら2つの型32,36が閉じられた状態で、背面側キャビティ面42と正面側キャビティ面46とが連続するようになっている。
【0017】
また、前方側下型36の上方に設けられた前方側上型38と、前方側下型36とは、それぞれの前方側の端面に設けられた第3ヒンジ50によって連結されており、前方側上型38は、前方側下型36に対して回動可能とされている。このような構造により、4つの型32,34,36,38が閉じられた状態で、前方側上型38の後方側の端面と後方側上型34の前方側の端面とが密着し、4つの型32,34,36,38の内部、つまり、成形型30の内部に、ヘッドレスト本体12を区画するためのキャビティ面が形成される。
【0018】
また、後方側上型34の前方側の端面には、ステー14の脚部18を成形型30の外部に延び出させるための第1ステー溝52が形成され、前方側上型38の後方側の端面には、成形型30が閉じられた状態で第1ステー溝52と向かい合うように第2ステー溝54が形成されている。それら2つの溝52,54は、成形型30が閉じられた状態で、成形型30の内部と外部とを連通する連通孔を構成しており、その連通孔を通って、ステー14の脚部18が成形型30の内部から外部に延び出している。
【0019】
さらに、第1ステー溝52が形成された後方側上型34には、その第1ステー溝52から連続してステー14の脚部18に沿って成形型30の内部に延び出す第1延出部56が形成されている。そして、第2ステー溝54が形成された前方側上型38には、その第2ステー溝54から連続してステー14の脚部18に沿って成形型30の内部に延び出す第2延出部58が形成されている。第2延出部58の延出量は、第1延出部56の延出量より多くされており、その第2延出部58によって、ヘッドレスト本体12の内部にステーに沿った空洞60が形成される。この空洞60により、ヘッドレスト本体12がステー14の中間部20を中心に揺動する際に、ステー14の脚部18とヘッドレスト本体12とが干渉しないようになっている。
【0020】
<成形型による可動式ヘッドレストの成形>
本成形型30によって可動式ヘッドレスト10を成形する際には、図3に示すように、ステー保持具16によって揺動可能に保持されたステー14を、第1ステー溝52と第2ステー溝54とによって形成される連通孔に挿通し、ステー保持具16を、成形型30のキャビティ内に位置させた状態で成形型30を閉じる。そして、その閉じられた状態の成形型30内に、ウレタンフォーム原料等の発泡原料を原料注入口(図示省略)から注入する。これにより、成形型30の内部で、発泡原料が発泡し、ヘッドレスト本体12が成形され、ヘッドレスト本体12とステー保持具16とが一体化される。なお、背面側キャビティ面42と正面側キャビティ面46との境界は、図2での後方側下型32と前方側下型36との境界面62上に位置する。このため、発泡成形によるバリは、ヘッドレスト本体12の背面と側面との境界線上に形成されることになり、バリの除去痕を目立たなくすることが可能となっている。
【0021】
そして、成形型30内部でヘッドレスト本体12が発泡成形された後に、成形型30を構成する4つの型のうち後方側下型32を除く3つの型が順次回動されて、可動式ヘッドレスト10が成形型30から脱型される。具体的に説明すれば、まず、図4に示すように、前方側下型36と前方側上型38とが一体的に、前方に向かって回動されるとともに、後方側上型34が、上方に向かって回動される。この際、ヘッドレスト本体12の内部に第2延出部58が入り込んだ状態の可動式ヘッドレスト10が、前方側下型36と前方側上型38と共に、前方に向かって回動される。また、可動式ヘッドレスト10の前方への回動に伴って、ヘッドレスト本体12が後方側上型34の第1延出部56と当接し、その後方側上型34は、ヘッドレスト本体12の一部(図4でのドット部)66を変形させつつ上方に向かって回動される。それら前方側下型36と後方側上型34との回動により、可動式ヘッドレスト10は、後方側下型32と後方側上型34とから脱型される。
【0022】
次に、前方側下型36と前方側上型38とが共に大きく回動された後、具体的には、90°程度回動された後に、前方側上型38が前方側下型36に対して回動されることで、ヘッドレスト本体12の内部に第2延出部58が入り込んだ状態の可動式ヘッドレスト10が、前方側下型36から脱型される。最後に、可動式ヘッドレスト10を第2延出部58の延び出す方向に引き抜くことで、可動式ヘッドレスト10が前方側上型38から脱型される。このように、成形型30を構成する4つの型のうち後方側下型32を除く3つの型を回動させることで、可動式ヘッドレスト10が成形型30から脱型される。
【0023】
<本成形型と他の成形型との比較>
本成形型30では、ステー14の脚部18とヘッドレスト本体12との干渉を避けるための空洞60を形成する第2延出部58が、前方側上型38に設けられている。このような空洞を形成する延出部が、前方側上型38とは異なる型に設けられた成形型70を、比較例として、図5および図6に示す。図5は、成形型70が閉じられた状態での断面図であり、図6は、成形型70が開けられた状態での断面図である。なお、図5および図6における左右方向を前後方向と称し、各図における左側に向かう方向を前方,右側にむか方向を後方と称し、説明を行う。ただし、比較例の成形型70は、上記成形型30と同様に、4つの型から構成されており、比較的に似た構造とされている。このため、比較例の成形型70についての説明は、簡単なものとする。
【0024】
成形型70は、後方側下型72と、その後方側下型72の上端部に回動可能に設けられる後方側上型74と、後方側下型72の前方側の面に回動可能に設けられる前方側下型76と、その前方側下型76の上端部に回動可能に設けられる前方側上型78とから構成されている。後方側下型72は、成形型70が設置される設置台80に着脱可能に固定されており、ヘッドレスト本体12の正面を区画する正面側キャビティ面82が形成されている。一方、前方側下型76には、ヘッドレスト本体12の正面を区画する正面側キャビティ面86が形成されている。
【0025】
また、後方側上型74の前方側の端面には、第1ステー溝84が形成され、前方側上型78の後方側の端面には、第2ステー溝86が形成されており、それら2つの溝84,86によって構成される連通孔を通って、ステー14の脚部18が成形型70の内部から外部に延び出している。さらに、第1ステー溝84が形成された後方側上型74には、その第1ステー溝84から連続してステー14の脚部18に沿って成形型70の内部に延び出す第1延出部88が形成されている。一方、第2ステー溝86が形成された前方側上型78には、その第2ステー溝86から連続してステー14の脚部18に沿って成形型70の内部に延び出す第2延出部90が形成されている。第1延出部88の延出量は、第2延出部90の延出量より多くされており、第1延出部88によって、ヘッドレスト本体12の内部にステー14に沿った空洞60が形成される。
【0026】
このように構成された成形型70では、可動式ヘッドレスト10を脱型する際に、成形型70を構成する4つの型のうち後方側下型72を除く3つの型が順次回動されて、可動式ヘッドレスト10が成形型70から脱型される。具体的に説明すれば、まず、図6に示すように、前方側下型76と前方側上型78とが一体的に、前方に向かって回動されるとともに、後方側上型74が、上方に向かって回動される。この際、ヘッドレスト本体12の内部に入り込んだ第1延出部88が、ヘッドレスト本体12の一部(図6でのドット部)92を変形させつつ、上方に向かって回動される。そして、前方側下型76と前方側上型78とが一体的に、前方に向かって回動されることで、ヘッドレスト本体12の内部から第1延出部88が抜き取られつつ、可動式ヘッドレスト10が、前方側下型76と前方側上型78と共に、前方に向かって回動される。これにより、可動式ヘッドレスト10は、後方側下型72と後方側上型74とから脱型される。
【0027】
そして、前方側下型76と前方側上型78とが共に大きく回動された後、具体的には、90°程度回動された後に、前方側上型78が前方側下型76に対して回動されることで、ヘッドレスト本体12の内部に第2延出部90が入り込んだ状態の可動式ヘッドレスト10が、前方側下型76から脱型される。さらに、可動式ヘッドレスト10を第2延出部90の延び出す方向に引き抜くことで、可動式ヘッドレスト10が、前方側上型78から脱型される。このような成形型70の一連の動きによって、可動式ヘッドレスト10が成形型70から脱型される。
【0028】
変形例の成形型70では、ヘッドレスト本体12内部に空洞60を形成するための第1延出部88が、後方側上型74に形成されており、脱型時に第1延出部88をヘッドレスト本体12内部から抜き取る際に、図6に示すように、ヘッドレスト本体12の一部92が、第1延出部88によって、大きく変形させられる。一方、本成形型30では、図4に示すように、ヘッドレスト本体12内部に空洞60を形成するための第2延出部58より少ない延出量の第1延出部56が、後方側上型34に形成されている。このため、脱型時に第1延出部56をヘッドレスト本体12内部から抜き取る際に、第1延出部56によって変形させられるヘッドレスト本体12の変形量は、図4と図6と比較して分かるように、変形例の成形型70でのヘッドレスト本体12の変形量の半分程度とされている。したがって、本成形型30によれば、脱型時におけるヘッドレスト本体12の変形量を少なくすることが可能となり、ヘッドレスト本体12、つまり、可動式ヘッドレスト10の成形性を向上させることが可能となる。
【0029】
また、変形例の成形型70では、図5に示すように、第1延出部88の第1ステー溝84が形成された面とは反対側の面92と、その反対側の面92から後方側上型74の回動中心に接近する方向に連続する面94とのなす角度が、90度とされている。一方、本成形型30では、図3に示すように、第1延出部56の第1ステー溝52が形成された面とは反対側の面96と、その反対側の面96から後方側上型34の回動中心に接近する方向に連続する面98とのなす角度が、90度より大きくされている。これにより、本成形型30では、変形例の成形型70と比較して、後方側上型34を回動させる際に、ヘッドレスト本体12内部から第1延出部56を抜き取り易くなっている。
【0030】
ちなみに、上記実施例において、可動式ヘッドレスト10は、可動式ヘッドレストの一例であり、その可動式ヘッドレスト10を構成するヘッドレスト本体12,ステー14,ステー保持具16は、ヘッドレスト本体,ステー,ステー保持具の一例である。可動式ヘッドレスト10を成形するための成形型30は、可動式ヘッドレスト成形型の一例であり、成形型30を構成する後方側下型32,後方側上型34,前方側下型36,前方側上型38は、背面側下型,背面側上型,正面側下型,正面側上型の一例である。後方側下型32が固定される設置部40は、設置部の一例であり、後方側下型32に形成される背面側キャビティ面42は、背面側キャビティ面の一例である。前方側下型36に形成される正面側キャビティ面46は、正面側キャビティ面の一例である。後方側上型34に形成される第1ステー溝52,第1延出部56は、背面側ステー溝,背面側延出部の一例であり、前方側上型38に形成される第2ステー溝54,第2延出部58は、正面側ステー溝,正面側延出部の一例である。
【符号の説明】
【0031】
10:可動式ヘッドレスト
12:ヘッドレスト本体
14:ステー
16:ステー保持具16
30:可動式ヘッドレスト成形型
32:後方側下型(背面側下型)
34:後方側上型(背面側上型)
36:前方側下型(正面側下型)
38:前方側上型(正面側上型)
40:設置部
42:背面側キャビティ面
46:正面側キャビティ面
52:第1ステー溝(背面側ステー溝)
54:第2ステー溝(正面側ステー溝)
56:第1延出部(背面側延出部)
58:第2延出部(正面側延出部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成形により成形されるヘッドレスト本体と、そのヘッドレスト本体の内部から外部に向かって延び出すステーと、前記ヘッドレスト本体の内部において前記ステーを揺動可能に保持するステー保持具とから構成される可動式ヘッドレストを成形するための可動式ヘッドレスト成形型であって、
前記ヘッドレスト本体の背面を区画する背面側キャビティ面が形成され、当該可動式ヘッドレスト成形型が設置される設置部に固定される背面側下型と、
その背面側下型の上端部を覆うように前記背面側下型に回動可能に取り付けられるとともに、前記ステーを当該可動式ヘッドレスト成形型の外部に延び出させるための背面側ステー溝が形成された背面側上型と、
前記ヘッドレスト本体の正面を区画する正面側キャビティ面が形成され、下端部において前記背面側下型に回動可能に取り付けられる正面側下型と、
その正面側下型の上端部を覆うように前記正面側下型に回動可能に取り付けられるとともに、当該可動式ヘッドレスト成形型が閉じられた状態で前記背面側ステー溝と対向する正面側ステー溝が形成され、その正面側ステー溝から連続して前記ステーに沿って前記ヘッドレスト本体の内部に延び出す正面側延出部を有する正面側上型と
を備えた可動式ヘッドレスト成形型。
【請求項2】
前記背面側上型が、
前記背面側ステー溝から連続して前記ステーに沿って前記ヘッドレスト本体の内部に延び出す背面側延出部を有し、
その背面側延出部の延出量が、前記正面側延出部の延出量より少なくされ、
前記背面側延出部の前記背面側ステー溝が形成された面とは反対側の面と、その反対側の面から前記背面側上型の回動中心に接近する方向に連続する面とのなす角度が、90°より大きくされた請求項1に記載の可動式ヘッドレスト成形型。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−95101(P2013−95101A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241859(P2011−241859)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】