説明

可変バルブ機構

【課題】弁体の開度が大きくなるほど開き易くなり、回動軸に対するこじれや打音の発生を防止でき、スムースに開閉できる可変バルブ機構を提供すること。
【解決手段】ねじりコイルばね51と、支持部材52と、弁体53とを有し、排気通路25a内を流動する排気ガスの圧力で弁体53が付勢力に抗して回動することにより排気通路25aの開状態が変化する可変バルブ機構において、弁体53を回動自在に支持する回動軸54とねじりコイルばね51に挿通される挿通軸55とを備え、ねじりコイルばね51が、第1アーム部62および第2アーム部63とを有し、支持部材52が、第1アーム部62を支持する第1アーム支持部74と、挿通軸55を支持する挿通軸支持部73と、回動軸54を支持する回動軸支持部72とを有し、弁体53が、第2アーム部63を支持する第2アーム支持部83を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変バルブ機構に関し、特に、流体通路内の流体の流動に応じて流体通路の開度の変化が可能な可変バルブ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の可変バルブ機構として、支点軸と、この支点軸の廻りに揺動可能に支持された弁体と、この弁体を閉弁方向に付勢する付勢部材と有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この可変バルブ機構においては、付勢部材が、弁体側作用点と固定側作用点との間での伸張方向の付勢力により、弁体を閉弁方向に付勢するようにしている。また、固定側作用点は、開口に対して弁体と反対側に設けられるとともに、付勢部材による弁体の支点軸廻りのモーメントが弁体の開度増加により減少する位置に固定側作用点を設けている。
【0003】
この構成により、弁体の開度が大きくなるに応じて付勢部材による弁体の閉弁方向への付勢力が小さくなり、回動トルクが下がる非線形のバルブ機構となっている。
その結果、排気ガスの流動による圧力が高まると徐々に開き易くなり、内燃機関の中・高速回転における排気ガスの背圧の上昇を抑制でき、出力を向上させることができる。
また、付勢部材が開口に対して弁体の裏側に配置されているので、付勢部材が直接、高温の排気ガスに晒され難くなり付勢部材の劣化を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4612233号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来の可変バルブ機構においては、付勢部材がねじりコイルばねで構成されており、コイルの巻き方向に圧縮してセットされる構造となっている。そのため、弁体が開くとき、本来の回転中心となるコイルの軸線方向と異なる方向で回動したり、コイルがねじれてこじりが発生してしまうという問題がある。この場合、ねじりコイルばねの圧縮に対する復元方向が、本来の弁体の回動方向と異なってしまうため、所期の付勢力が得られなくなるという問題があった。
【0006】
また、従来の可変バルブ機構は、弁体の最大開度で弁体がストッパに突き当たる構造で構成されているので、排気ガスの流動が速いとき、弁体の回動速度が速くなり、勢いがつきすぎて弁体がストッパに衝突することになる。このとき、弁体とストッパとの間で打音が発生してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、弁体の開度が大きくなるほど開き易くなり、回動軸に対するこじれや打音の発生を防止することができ、スムースに開閉することができる可変バルブ機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る可変バルブ機構は、上記課題を解決するため、(1)ねじりコイルばねと、前記ねじりコイルばねの付勢力により流体通路を閉状態とする弁体と、前記ねじりコイルばねおよび前記弁体を支持する支持部材とを有し、前記流体通路内を流動する流体の圧力で前記弁体が前記付勢力に抗して回動することにより前記流体通路の開状態が変化する可変バルブ機構において、前記弁体を回動自在に支持する回動軸と、前記ねじりコイルばねに挿通される挿通軸とを備え、前記ねじりコイルばねが、第1アーム部および第2アーム部とを有し、前記支持部材が、前記第1アーム部を支持する第1アーム支持部と、前記挿通軸を支持する挿通軸支持部と、前記回動軸を支持する回動軸支持部とを有し、前記弁体が、前記第2アーム部を支持する第2アーム支持部を有することを特徴とする。
【0009】
この構成により、本発明に係る可変バルブ機構は、弁体の開度が大きくなるほど開き易くなり、回動軸に対するこじれや打音の発生を防止することができ、スムースに開閉することができる。すなわち、ねじりコイルばねに挿通軸が挿通されているので、ねじりコイルばねが弁体の開度に応じて変位しても、挿通軸にガイドされるので、回動軸に対するこじれの発生を防止することができる。
【0010】
上記(1)に記載の可変バルブ機構において、好ましくは、(2)前記挿通軸は、前記流体通路を形成する流体通路形成部材の内壁面から放射外方に離隔した位置に配置されたことを特徴とする。
【0011】
この構成により、挿通軸が、流体通路から離隔することになるので、例えば、弁体の開度が全開時においても、流体通路内を流動する流体に晒されることはなく、ねじりコイルばねの流体による劣化を著しく抑制することができる。
【0012】
上記(1)または(2)に記載の可変バルブ機構において、好ましくは、(3)前記回動軸と前記挿通軸とが略平行に配置されたことを特徴とする。
【0013】
この構成により、回動軸と挿通軸とが略平行に配置されていると、ねじりコイルばねがコイルの周方向に変位し易くなり、回動軸に対するねじれやこじれの発生をより防止することができる。
【0014】
上記(1)〜(3)に記載の可変バルブ機構において、好ましくは、(4)前記挿通軸の外周面と前記ねじりコイルばねの内周面との間に隙間が形成されたことを特徴とする。
【0015】
この構成により、挿通軸の外周面とねじりコイルばねの内周面との間に隙間が存在するので、挿通軸にねじりコイルばねが当接して、隙間が0になるまでは、ねじりコイルばねが挿通軸に触れることなくスムースに変位することができる。すなわち、弁体をスムースに開閉することができる。
【0016】
上記(1)〜(4)のいずれかに記載の可変バルブ機構において、好ましくは、(5)前記弁体の回動により、前記ねじりコイルばねが変位して前記内周面が前記外周面に当接したとき、前記弁体の回動が規制される回動規制状態となることを特徴とする。
【0017】
この構成により、弁体の打音の問題が解消される。すなわち、従来の可変バルブ機構においては、ストッパにより直接、弁体の回動を規制していたので、弁体とストッパとの衝突により打音が発生するという問題があった。しかしながら、本発明に係る可変バルブ機構は、回動規制状態のとき、弁体が最大開度となるので、直接、弁体とストッパとが衝突するということはなく、打音の問題が解消される。
【0018】
上記(1)〜(5)のいずれかに記載の可変バルブ機構において、好ましくは、(6)前記回動規制状態のとき、前記第2アーム支持部が、前記第1アーム支持部と前記回動軸の軸心とを結ぶ直線と、前記挿通軸との間に位置することを特徴とする。
【0019】
この構成により、回動規制状態のとき、第2アーム支持部が、第1アーム支持部と回動軸の軸心とを結ぶ直線と、挿通軸との間に設定されるので、弁体の最大開度で、ねじりコイルばねの復元力(N)を弁体に作用させることができる。したがって、弁体の自重による開方向の力に抗してスムースに弁体を閉方向に回動させることができる。
また、ねじりコイルばねは、弁体からオフセットされた位置であって、流体の流動方向に対して弁体の後方に配置されることになり、流体の流動に晒されることはなく、ねじりコイルばねの流体による劣化を著しく抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、弁体の開度が大きくなるほど開き易くなり、回動軸に対するこじれや打音の発生を防止することができ、スムースに開閉することができる可変バルブ機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る可変バルブ機構の実施形態を示す図であり、内燃機関の排気系の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る可変バルブ機構の実施形態を示す図であり、一部を断面で示すマフラの斜視図である。
【図3】本発明に係る可変バルブ機構の実施形態を示す図であり、上流側から見たマフラの側面図である。
【図4】図3のA−A断面を示すマフラの断面図である。
【図5】本発明に係る可変バルブ機構の実施形態を示す図であり、可変バルブ機構の正面図である。
【図6】図5のB−B断面を示す可変バルブ機構の断面図である。
【図7】本発明に係る可変バルブ機構の実施形態を示す図であり、(a)は支持部材の正面図を示し、(b)は支持部材の側面図を示す。
【図8】本発明に係る可変バルブ機構の実施形態を示す図であり、弁体が回動規制状態にあるときの可変バルブ機構の断面図である。
【図9】本発明に係る可変バルブ機構の実施形態を示す図であり、バルブ開度とバルブ開方向の付勢力との関係を示すグラフである。
【図10】本発明に係る可変バルブ機構の実施形態を示すマフラの断面図であり、(a)は、可変バルブ機構が閉状態のときの排気ガスの流動を示し、(b)は、可変バルブ機構が開状態のときの排気ガスの流動を示す。
【図11】本発明に係る可変バルブ機構の実施形態の変形例を示す図であり、可変バルブ機構の正面図である。
【図12】図11のC−C断面を示す可変バルブ機構の断面図である。
【図13】本発明に係る可変バルブ機構の実施形態の変形例を示す図であり、他の構造を有するマフラの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る可変バルブ機構の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
本発明に係る可変バルブ機構は、実施形態に係る排気装置20のマフラ30を構成している。まず、排気装置20の構成を説明する。
実施形態に係る排気装置20は、図1に示すように、直列4気筒の内燃機関としてのエンジン10に接続されており、エンジン10から排出される排気ガスを浄化するとともに、排気音の発生を抑制し排気ガスを大気に排出するよう構成されている。なお、本実施形態における排気ガスは、本発明の可変バルブ機構における流体を構成している。
【0024】
エンジン10は、車両を駆動するエンジン本体11と、エンジン本体11から排出される排気ガスを流通させる排気マニホールド12とを有している。なお、エンジン10は、直列4気筒に限らず、直列3気筒または直列5気筒以上であってもよく、左右に分割されたそれぞれのバンクに3気筒以上の気筒を有するV型エンジンであってもよい。
【0025】
排気マニホールド12は、エンジン本体11の第1気筒から第4気筒にそれぞれ連通する排気ポートにそれぞれ接続される4つの排気枝管12aと、排気枝管12aの下流側を集合させる排気集合管12bとから構成されている。このエンジン10の各気筒から排気される排気ガスは、排気枝管12aを介して排気集合管12bに導入されるようになっている。
【0026】
排気装置20は、触媒コンバータ21と、自在継手22を介して触媒コンバータ21に連結されたフロントパイプ23と、自在継手24を介してフロントパイプ23に連結されたセンターパイプ25と、センターパイプ25と接続されたマフラ30とを備えている。この排気装置20は、車両の床下に弾性的に垂下されるようにしてエンジン10の下流側に設置されている。なお、上流側とは、エンジン10から排出される排気ガスの排気方向における上流側を示し、下流側とは、この排気ガスの排気方向における下流側を示している。
【0027】
触媒コンバータ21は、ハニカム基材や粒状の活性アルミナ製担体に白金、パラジウム等の触媒を付着させたものからなり、本体ケースに収納されている。この触媒コンバータ21の上流端は、排気集合管12bの下流端に接続されており、排気集合管12bから流入する排気ガス中のNOxの還元やCO、HCの酸化を行うようになっている。
【0028】
フロントパイプ23は、円筒状に形成されており、上流端で触媒コンバータ21の排気ガス流出口と連通し触媒コンバータ21から流出する排気ガスを上流端から下流端に流通させる排気通路23aを有している。センターパイプ25も、フロントパイプ23と同様、流体通路としての排気通路25aを有しており、フロントパイプ23から流出する排気ガスを上流端から下流端に流通させるようになっている。センターパイプ25の下流端は、マフラ30のインレットパイプ部25Aを構成しており、インレットパイプ部25Aから排気ガスがマフラ30内に流入するようになっている。なお、実施形態のインレットパイプ部25Aは、本発明の可変バルブ機構に係わる流体通路形成部材を構成している。
【0029】
図2〜図4に示すように、マフラ30は、マフラ本体31と、区画部材としてのセパレータ32、33と、前述のインレットパイプ部25Aと、アウトレットパイプ34と、可変バルブ機構35とを含んで構成されている。インレットパイプ部25Aからマフラ本体31に流入した排気ガスは、アウトレットパイプ34から排出されるようになっており、マフラ本体31内で排気音が消音されるようになっている。
【0030】
マフラ本体31は、円筒状に形成されたアウタシェル41と、アウタシェル41の両端を閉塞し内部空間を画成するエンドプレート42、43とを含んで構成されている。このエンドプレート42、43はそれぞれアウタシェル41にかしめ構造などの固定手段により固定され、内部空間から外部に排気ガスが漏出しないようになっている。
このエンドプレート42とエンドプレート43との間には、セパレータ32が介装されるとともに、セパレータ32とエンドプレート43との間には、セパレータ33が介装されている。
【0031】
セパレータ32は、マフラ本体31内の内部空間を排気方向上流側に位置する共鳴室30Aと、この共鳴室30Aの排気方向下流側に位置する拡張室30Bとに区画している。
また、セパレータ33は、マフラ本体31内の内部空間を拡張室30Bと、この拡張室30Bの排気方向下流側に位置する拡張室30Cとに区画している。
また、エンドプレート42には挿通孔42aが形成され、セパレータ32には挿通孔32aが形成され、さらにセパレータ33には挿通孔33aが形成されており、これらの挿通孔42a、32a、33aにはインレットパイプ部25Aが挿通されている。
【0032】
また、エンドプレート43に挿通孔43aが形成され、セパレータ33に挿通孔33bが形成されており、これらの挿通孔43a、33bにはアウトレットパイプ34が挿通されている。さらに、セパレータ33には、拡張室30Cと拡張室30Bとを連通する連通孔33cが形成されており、拡張室30C内の排気ガスが、連通孔33cを通って拡張室30Bに流入する際に、さらに拡張されるようになっている。
【0033】
インレットパイプ部25Aは、図4に示すように、拡張室30C内で開口する下流開口端25bを有している。
また、インレットパイプ部25Aは、排気通路25aと共鳴室30Aとを連通する連通通路25cが形成された連通管25Bを有している。この連通管25Bは、インレットパイプ部25Aの軸線方向に対して略直交するようインレットパイプ部25Aから突出し、このインレットパイプ部25Aの突出方向の先端部が共鳴室30A内で開口する開口端25dを有している。
【0034】
ここで、拡張室とは、一般にインレットパイプ内の流通通路の断面積(mm)に対して比較的大きな断面積(mm)を有し、所定の容積(mm)を備えた空洞からなる。
この拡張室においては、排気ガスが、流通通路から拡張室内に流入する際、その体積が急激に拡張され、内燃機関の排気脈動からなる圧力変動が弱められて、排気音の音圧レベル(dB)が広い周波数帯域に亘って低減されるといういわゆる拡張効果が得られる。
【0035】
また、共鳴室とは、一般にヘルムホルツの共鳴原理を利用して特定周波数(Hz)の排気音を共鳴させるよう、共鳴部材の内部に形成された所定の容積(mm)を有する空洞からなる。この共鳴部材は、一般に筒部材に連通部材を介して連結されており、筒部材は気流通路を有し、連通部材は、気流通路と空洞とを連通するいわゆる首の部分からなる連通通路を有している。この構成により、特定周波数(Hz)の排気音がこの空洞内で共鳴することができる。
【0036】
このマフラ30においては、インレットパイプ部25Aの排気通路25aから連通通路25cを経由して共鳴室30A内に排気ガスが導入されることにより、ヘルムホルツ共鳴によって特定の周波数(Hz)の排気音の音圧レベルが低減されるようになっている。すなわち、共鳴室30A内で、排気音が消音されるようになっている。
【0037】
アウトレットパイプ34は、拡張室30B内で開口する上流開口端34aと、マフラ本体31の外方に位置し大気中に開口する下流開口端34bと、この上流開口端34aと下流開口端34bとの間に形成された排気通路34cとを有している。拡張室30B内の排気ガスは、上流開口端34aから流入し排気通路34cを通って下流開口端34bから大気中に排出されるようになっている。
【0038】
可変バルブ機構35は、図5に示すように、ねじりコイルばね51と、支持部材52と、弁体53と、回動軸54と、挿通軸55とを含んで構成されている。
ねじりコイルばね51は、金属材料を巻回して形成されたコイル部61と、第1アーム部としての第1アーム部62と、第2アーム部としての第2アーム部63とを有している。これらの各構成要素は一体的に形成されている。
【0039】
コイル部61は、ばね用線材をコイリングすることにより形成され、所定のばね定数(N・mm/rad)を有している。コイル部61の使用材料径(mm)、縦弾性係数(Kgf/mm)、コイル中心径(mm)、有効巻数などの諸元はマフラ30の種類、構造、大きさなどの諸元に基づいて適宜選択される。
【0040】
第1アーム部62は、コイル部61から延在する一方端の先端部分がコイル部61の軸線とほぼ平行になるようコイル部61側に折れ曲がって形成されている。
第2アーム部63も、第1アーム部62と同様には、コイル部61から延在する他方端の先端部分がコイル部61の軸線とほぼ平行になるようコイル部61側に折れ曲がって形成されている。
【0041】
図6に示すように、ねじりコイルばね51に荷重が負荷されていない状態で、第1アーム部62と一点鎖線で示す第2アーム部63とのなす角は、θで形成されている。ねじりコイルばね51が組み込まれた状態では、第1アーム部62と実線で示す第2アーム部63とのなす角は、θとなり、弁体53を閉状態にする方向の付勢力が加わるようになっている。
【0042】
支持部材52は、図7(a)、(b)に示すように、平坦に形成された本体部71と、回動軸支持部72と、挿通軸支持部73と、第1アーム支持部74と、取付部75とを有している。これらの各構成要素は、板金のプレス加工や鍛造などの製作工程を経て一体的に形成されている。
【0043】
回動軸支持部72は、一端で本体部71から屈曲して形成された一端部72aと、他端で、一端部72aと同方向に屈曲して形成された他端部72bと、一端部72aおよび他端部72bを貫通して形成された貫通孔72cとを有している。
挿通軸支持部73は、回動軸支持部72と同様、一端で、本体部71から屈曲して形成された一端部73aと、他端で、一端部73aと同方向に屈曲して形成された他端部73bと、一端部73aおよび他端部73bを貫通して形成された貫通孔73cとを有している。
【0044】
第1アーム支持部74は、本体部71の挿通軸支持部73側の端面の中央部分で湾曲して形成されている。
取付部75は、第1アーム支持部74の対向側で半円弧状に形成されており、図4に示すインレットパイプ部25Aの下流開口端25bの近傍に溶接などの接合手段により接合されるようになっている。
【0045】
弁体53は、円盤状に形成された本体部81と、回動部82と、第2アーム支持部83とを有し、一体的に形成されている。
本体部81の下部は直線状にカットされており、インレットパイプ部25Aの排気通路25aが開口され、弁体53に開口53aが画成される。弁体53が閉状態のとき、排気ガスはこの開口53aを通って流通するようになっている。
【0046】
回動部82は、円弧状に屈曲して形成され、内側に回動軸54が挿通されて、回動軸54の軸心を中心として回動するようになっている。
第2アーム支持部83は、本体部81の回動部82の中央部分で湾曲して形成されており、ねじりコイルばね51の第2アーム部63を回動可能に支持している。
【0047】
回動軸54は、円柱状に形成され、一端で回動軸支持部72の一端部72aの貫通孔72cに挿入され、他端で回動軸支持部72の他端部72bの貫通孔72cに挿入されて回動軸54は、回動軸支持部72に回動可能に支持されるようになっている。
この回動軸54は、弁体53の回動部82に挿入されて弁体53と一体化されて弁体53とともに回動するようになっている。なお、この回動軸54は、弁体53の回動部82に回動可能に挿入されて、弁体53が回動軸54の外周を回動するようにしてもよい。
【0048】
挿通軸55は、円筒状に形成された大径の軸部55aと、軸部55aの一端に形成された小径の連結部55bと、他端に形成された小径の連結部55cとを有している。
連結部55bは、挿通軸支持部73の一端部73aの貫通孔73cに挿入され、連結部55cは挿通軸支持部73の他端部73bの貫通孔73cに挿入されて、挿通軸55は、挿通軸支持部73に図示しない固定手段により固定されるようになっている。
図6に示すように、この挿通軸55の外周面とコイル部61の内周面との間に隙間sが画成されるようになっている。
この回動軸54と挿通軸55とは、互いに略平行になるよう支持部材52に支持されている。
【0049】
この可変バルブ機構35は、図8に示すように、矢印aで示す排気ガスの流動による圧力(Pa)に応じて開くようになっている。したがって、排気ガスの流動が大きい程、大きく開くよう開度が可変になっている。
【0050】
またこの可変バルブ機構35は、弁体53の開度が大きくなると、コイル部61が変位して前述の隙間sが徐々に小さくなり、挿通軸55の外周面とコイル部61の内周面とが当接し隙間sがゼロになったとき、コイル部61の変位が規制される。すなわち、挿通軸55は、コイル部61の変位を規制するストッパとして機能する。その結果、弁体53は、それ以上開かなくなり、隙間sがゼロになったとき、すなわち回動規制状態となったとき、弁体53は最大開度になる。
【0051】
この弁体53が最大開度のとき、ねじりコイルばね51の第2アーム部63の軸心Jは、第1アーム部62の軸心Jと、回動軸54の軸心Jとを結ぶ直線Lと、挿通軸55との間に位置することになる。すなわち、弁体53が最大開度のとき、軸心Jが、直線Lを超えて回動しないので、コイル部61の復元力(N)により、弁体53が閉じる方向に付勢されることになり、排気ガスの流動が小さくなると弁体53が速やかに閉じる方向に回動することになる。
【0052】
この第2アーム部63の軸心Jが、軸心Jを中心として回動するとともに、コイル部61は、軸心Jの変位に伴って変位するので、付勢方向が変化し、図9に示すように、弁体53のバルブ開方向の付勢力(N)は、バルブ開度(deg)が大きくなるほど徐々に小さくなる。したがって、弁体53は、従来の線形バルブと比較して、図9に描かれる非線形バルブの特性を有するので、開度が大きくなるほど開き易くなり、排気ガスの流動にしたがって速やかに開き、エンジンに対する背圧の影響を少なくすることができる。
【0053】
次に、排気装置20の作用について説明する。
【0054】
まず、図1に示す排気装置20の上流側のエンジン10が始動されると、エンジン10の各気筒から排気される排気ガスは、排気マニホールド12から触媒コンバータ21に導入され、触媒コンバータ21によってNOxの還元やCO、HCの酸化などの排気ガスの浄化が行われる。浄化された排気ガスは、フロントパイプ23の排気通路23aおよびセンターパイプ25の排気通路25aを通ってインレットパイプ部25A内に導入される。
【0055】
インレットパイプ部25A内に導入された排気ガスの一部は、図10(a)の矢印で示すように、連通通路25cを通って開口端25dから共鳴室30Aに導入される。
共鳴室30Aで、ヘルムホルツの共鳴により、気柱共鳴が励起される特定周波数(Hz)での共鳴が減衰されるので、排気音が消音されることになる。
連通通路25cに流入しなかった排気ガスは、排気通路25aを流通し、可変バルブ機構35に到達する。
【0056】
可変バルブ機構35は、エンジン10の始動直後でエンジン回転数(rpm)が比較的低回転数領域にある場合や、エンジン10の減速時の場合には、排気通路25a内を通る排気ガスの流量が比較的少ないので、排気ガスの流動の圧力(Pa)が加わっても開かない。
【0057】
その結果、排気ガスは弁体53の開口53aから拡張室30Cに流入し、拡張効果によって排気音は消音される。すなわち、排気ガスが拡張室30Cに流入する際、その体積が急激に拡張され、エンジン10の排気脈動からなる圧力変動が弱められて、排気騒音の音圧レベル(dB)が広い周波数帯域に亘って低減される。したがって、この体積の拡張の割合が大きいほど排気騒音は大きく低減されることになる。
拡張室30Cに流入した排気ガスは、さらにセパレータ33の連通孔33cを通って拡張室30Bに流入し、さらに拡張効果により消音された後、アウトレットパイプ34の上流開口端34aから排気通路34cに流入し、下流開口端34bから大気に排出される。
【0058】
また、可変バルブ機構35が閉状態であると、排気通路25a内の排気ガスの圧力が比較的高くなるので、よりヘルムホルツの共鳴を有効に機能させることができ、消音効果が大きくなる。
【0059】
他方、エンジン10が加速時など比較的高回転数領域にある場合には、排気通路25a内を通る排気ガスの流量が比較的多いので、図10(b)に示すように、可変バルブ機構35は、排気ガスの流動の圧力により回動する。その結果、排気通路25aは開状態となる。
【0060】
そして、排気ガスはインレットパイプ部25Aの下流開口端25bを通って、拡張室30Cに流入する。この排気ガスは、さらにセパレータ33の連通孔33cを通って拡張室30Bに流入し、アウトレットパイプ34の上流開口端34aから排気通路34cに流入し、下流開口端34bから大気に排出される。
また、インレットパイプ部25A内に導入された排気ガスの一部は、連通通路25cを通って開口端25dから共鳴室30Aにも導入されることになる。
【0061】
実施形態に係る排気装置20においては、可変バルブ機構35が前述のように構成されているので、次の効果が得られる。
【0062】
すなわち、可変バルブ機構35は、ねじりコイルばね51、支持部材52、弁体53、回動軸54および挿通軸55を備え、ねじりコイルばね51が、第1アーム部62および第2アーム部63とを有し、支持部材52が、第1アーム支持部74と、挿通軸支持部73と、回動軸支持部72とを有し、弁体53が、第2アーム支持部83を有する構造で構成されている。
【0063】
そして、回動軸54と挿通軸55とが略平行に配置されるとともに、挿通軸55の外周面とねじりコイルばね51の内周面との間に隙間sが形成されている。
また、弁体53の回動により、ねじりコイルばね51が変位して挿通軸55に当接したとき、弁体53の回動が規制される回動規制状態となるよう構成されている。この回動規制状態のとき、第2アーム支持部83の軸心Jは、第1アーム支持部74の軸心Jと回動軸54の軸心Jとを結ぶ直線Lと、挿通軸55との間に位置するよう構成されている。
【0064】
その結果、可変バルブ機構35は、弁体53の開度が大きくなるほど開き易くなり、回動軸54に対するこじれや打音の発生を防止することができ、スムースに開閉することができるという効果が得られる。
【0065】
すなわち、ねじりコイルばね51に挿通軸55が挿通されているので、ねじりコイルばね51が変位しても、挿通軸55にガイドされるので、回動軸54に対するこじれの発生を防止することができるという効果が得られる。
また、挿通軸55は、インレットパイプ25Aの内壁面から放射外方に離隔した位置にオフセットされているので、例えば、弁体53の開度が全開時においても、排気通路25a内を流動する排気ガスに晒されることはなく、ねじりコイルばね51の排気ガスによる劣化を著しく抑制することができる。
また、回動軸54と挿通軸55とが略平行に配置されているので、ねじりコイルばね51がコイルの周方向に変位し易くなり、回動軸54に対するねじれやこじれの発生をより防止することができるという効果が得られる。
【0066】
また、挿通軸55の外周面とねじりコイルばね51の内周面との間に隙間sが形成されているので、挿通軸55にねじりコイルばね51が当接し、隙間sが0になるまでは、ねじりコイルばね51が挿通軸55に触れることなくスムースに変位することができるという効果が得られる。すなわち、弁体53をスムースに開閉することができるという効果が得られる。
【0067】
また、回動規制状態のとき、軸心Jは直線Lと、挿通軸55との間に位置するよう構成されているので、弁体53の最大開度で、ねじりコイルばね51の復元力(N)を弁体53に作用させることができ、弁体53の自重による開方向の力に抗してスムースに弁体53を閉方向に回動させることができるという効果が得られる。
【0068】
また、従来の可変バルブ機構においては、ストッパにより直接、弁体の回動を規制していたので、弁体とストッパとの衝突により打音が発生するという問題があった。しかしながら、実施形態の可変バルブ機構35においては、回動規制状態のとき、弁体53が最大開度となるので、直接、弁体53とストッパとが衝突するということはなく、打音の問題が解消されるという効果が得られる。
【0069】
また、ねじりコイルばね51は、弁体53の上部であって、排気ガスの流動方向に対して弁体53の後方に配置されているので、排気ガスの流動に晒されることはなく、ねじりコイルばね51の排気ガスによる劣化を著しく抑制することができるという効果が得られる。
【0070】
実施形態のマフラ30においては、図5および図6に示すように、可変バルブ機構35の支持部材52をインレットパイプ部25Aの上方側に設けた場合について説明した。
しかしながら、可変バルブ機構35の支持部材52をインレットパイプ部25Aの上方側以外の位置に設けるようにしてもよい。
【0071】
例えば、図11および図12に示すように、可変バルブ機構35の支持部材52をインレットパイプ部25Aの下方側に設けるようにしてもよく、インレットパイプ部25Aの左方側や右方側など、インレットパイプ部25Aの外周側で360度の任意の位置に設けるようにしてもよい。
また、例えば、マフラ30内のセパレータ33に形成された連通孔33cを開閉するよう、セパレータ33に設けるようにしてもよい。このように、本発明に係る可変バルブ機構は、任意の位置に設けることができ、設計の自由度が高まるという効果が得られる。
【0072】
実施形態の可変バルブ機構35においては、ねじりコイルばね51を、図5に示す構造で構成した場合について説明した。しかしながら、ねじりコイルばね51を他の構造で構成するようにしてもよい。例えば、ねじりコイルばねを2つのコイル部を要するいわゆるダブルトーションばねで構成してもよく、他の形状を有するねじりコイルばねで構成するようにしてもよい。
【0073】
また、実施形態の可変バルブ機構35においては、支持部材52と、回動軸54と、挿通軸55とを別部材の構造で構成した場合について説明した。しかしながら、これらの構成要素を別部材の構造以外の構造で構成するようにしてもよい。
例えば、支持部材52と回動軸54とを一体のもので構成するようにしてもよく、支持部材52と挿通軸55とを一体のもので構成するようにしてもよい。
【0074】
また、実施形態のマフラ30を、内部空間に、1個の共鳴室および2個の拡張室が形成される3室構造で構成した場合について説明した。しかしながら、それ以外の構造によりマフラを構成するようにしてもよい。例えば、図13に示すように、マフラを2室構造で構成するようにしてもよい。
【0075】
この2室構造のマフラ120は、図13に示すように、マフラ本体91と、セパレータ32と、インレットパイプ92と、アウトレットパイプ95と、可変バルブ機構35とを含んで構成されている。マフラ本体91は、円筒状に形成されたアウタシェル93と、アウタシェル93の両端を閉塞し内部空間を画成するエンドプレート42、43とを含んで構成されている。このエンドプレート42とエンドプレート43との間には、セパレータ32が介装されている。
【0076】
セパレータ32は、マフラ本体91内の内部空間を排気方向上流側に位置する共鳴室120Aと、この共鳴室120Aの排気方向下流側に位置する拡張室120Bとに区画している。また、エンドプレート42には挿通孔42aが形成され、セパレータ32には挿通孔32aが形成され、これらの挿通孔42a、32aにはインレットパイプ92が挿通されている。また、エンドプレート43に挿通孔43aが形成され、アウトレットパイプ95が挿通されている。
【0077】
インレットパイプ92は、上流側の排気パイプと接続される上流開口端92aと、拡張室120B内で開口する下流開口端92bと、この上流開口端92aと下流開口端92bとの間に形成された排気通路92cとを有している。
また、インレットパイプ92は、排気通路92cと共鳴室120Aとを連通する連通通路92eが形成された連通管92dを有しており、共鳴室120A内で開口する開口端92fを有している。
【0078】
アウトレットパイプ95は、拡張室120B内で開口する上流開口端95aと、マフラ本体91の外方で大気中に開口する下流開口端95bと、上流開口端95aから下流開口端95bまで連通する流通通路95cとを有している。このように、マフラ120が構成されているので、第1実施形態と同様に可変バルブ機構35が作用し、エンジン10が低回転から高回転までの全域で気柱共鳴による排気音の音圧の増大が抑制される。
【0079】
以上説明したように、本発明に係る可変バルブ機構は、弁体の開度が大きくなるほど開き易くなり、回動軸に対するこじれや打音の発生を防止することができ、スムースに開閉することができるので、可変バルブ機構全般に有用である。
【符号の説明】
【0080】
10 エンジン
11 エンジン本体
20 排気装置
25 センターパイプ
25A インレットパイプ部(流体通路形成部材)
25a、92c 排気通路(流体通路)
25b、92b、95b 下流開口端
30、120 マフラ
30A、120A 共鳴室
30B、30C、120B 拡張室
35 可変バルブ機構
52 支持部材
51 ねじりコイルばね
53 弁体
54 回動軸
55 挿通軸
61 コイル部
62 第1アーム部
63 第2アーム部
71 本体部
72 回動軸支持部
73 挿通軸支持部
74 第1アーム支持部
75 取付部
81 本体部
82 回動部
83 第2アーム支持部
、J、J 軸心
L 直線
s 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじりコイルばねと、前記ねじりコイルばねの付勢力により流体通路を閉状態とする弁体と、前記ねじりコイルばねおよび前記弁体を支持する支持部材とを有し、前記流体通路内を流動する流体の圧力で前記弁体が前記付勢力に抗して回動することにより前記流体通路の開状態が変化する可変バルブ機構において、
前記弁体を回動自在に支持する回動軸と、
前記ねじりコイルばねに挿通される挿通軸とを備え、
前記ねじりコイルばねが、第1アーム部および第2アーム部とを有し、
前記支持部材が、前記第1アーム部を支持する第1アーム支持部と、前記挿通軸を支持する挿通軸支持部と、前記回動軸を支持する回動軸支持部とを有し、
前記弁体が、前記第2アーム部を支持する第2アーム支持部を有することを特徴とする可変バルブ機構。
【請求項2】
前記挿通軸は、前記流体通路を形成する流体通路形成部材の内壁面から放射外方に離隔した位置に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の可変バルブ機構。
【請求項3】
前記回動軸と前記挿通軸とが略平行に配置されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の可変バルブ機構。
【請求項4】
前記挿通軸の外周面と前記ねじりコイルばねの内周面との間に隙間が形成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1の請求項に記載の可変バルブ機構。
【請求項5】
前記弁体の回動により、前記ねじりコイルばねが変位して前記内周面が前記外周面に当接したとき、前記弁体の回動が規制される回動規制状態となることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1の請求項に記載の可変バルブ機構。
【請求項6】
前記回動規制状態のとき、前記第2アーム支持部が、前記第1アーム支持部と前記回動軸の軸心とを結ぶ直線と、前記挿通軸との間に位置することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1の請求項に記載の可変バルブ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−87677(P2013−87677A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228143(P2011−228143)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】