説明

可変動弁機構およびこれを用いた内燃機関

【課題】簡単、軽量および低価格でバルブリフト量の可変制御を行う可変動弁機構を提供する。
【解決手段】可変動弁機構1の回転カム4とスイングアーム7との間にコントロールアーム6を揺可能に設置した。コントロールアーム6は、一対のコントロールレバーを有している。この一対のコントロールレバーは、コントロールシャフト5を中心として回転方向に対しては共に動くが、コントロールシャフト5の軸方向に対しては一方だけが移動可能であり互いの間隔が可変とされている。回転カム4の回転によりコントロールアーム6が連動し、スイングアーム7のローラ8を押し下げる際に、コントロールアーム6の一対のコントロールレバーの間隔を変えることによりローラ8の押し下げ量を変えてバルブリフト量を変えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変動弁機構およびこれを用いた内燃機関に関し、更に詳しくは、簡単、軽量、低価格でバルブリフト量の可変制御を行うことが可能な可変動弁機構およびこれを用いた内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の運転状態(回転数や負荷等)に応じて、吸・排気バルブの位相やバルブリフト量を連続的に可変とする可変動弁機構が種々紹介されている。
【0003】
図13〜図16に可変動弁機構の一例の構成を示す。図13および図15は高リフト時、図14および図16は低リフト時であり、この間をバルブ50は連続的に動く。カム51は、ロッカーアーム52に直接作動せず、中間アーム(Intermediate Arm)53を介して作動する。中間アーム53の上方のピボットポイント54を左右に動かすことにより、中間アーム53のレバー比、ロッカーアーム52のレバー比が共に変化し、大きな変化(バルブリフト量daがバルブリフト量dbに変化)を得る構造になっている。
【0004】
この構造では、中間アーム53の追加により、動弁系の重量が増加し、バルブスプリング荷重を強化しなければならない。また、中間アーム53とロッカーアーム52との間に摩擦が生じるため燃費が低下する。さらに、カムシャフトの上方にピボットポイント54を配置するので、エンジンの全高が高くなり、車両への搭載に制約が生じるという問題がある。
【0005】
また、図17〜図19の可変動弁機構の構成では、カムシャフト60のリフトを、コントロールシャフト61にヘリカルギアで固定されているローラーアーム62で受け、同様にスプラインで固定されているアーム63がバルブ64を押し下げる。コントロールシャフト61を軸方向に移動させると、ローラーアーム62のみヘリカルギアに沿って回転しアーム63との相対角が変わることにより、バルブリフトを可変としている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【0006】
この構造では、1気筒につき、コントロールシャフト61に2つのアーム63と1つのローラーアーム62とを装着し、その内側にスプラインまたはヘリカルギアを持ったシャフトがあり、さらに、その内側に軸方向に移動させるシャフトを持った三重構造となっている。このため、構造が複雑で、重量も増え、価格が高くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−60497号公報
【特許文献2】特開2001−263015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、簡単、軽量および低価格でバルブリフト量の可変制御を行うことが可能な可変動弁機構を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、排気ガスを低減でき、また、燃費を向上させることが可能で、しかも、車両搭載性に優れた内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の可変動弁機構は、クランクシャフトにより回転駆動するカムシャフトの回転トルクをバルブに伝達し、前記バルブの開閉を制御する可変動弁機構において、前記カムシャフトに設けられた回転カムと、前記カムシャフトから離れた位置に設けられたコントロールシャフトに揺動可能に軸支され、前記回転カムの回転動作に連動するコントロールカムと、前記カムシャフトおよび前記コントロールシャフトから離れた位置に揺動可能に軸支され、前記コントロールカムの揺動動作に連動するスイングアームと、前記スイングアームに回転可能に軸支され、前記コントロールカムの揺動動作に際して前記コントロールカムが接触するローラと、前記スイングアームに接続された前記バルブとを備え、前記コントロールカムは、第1カムおよび第2カムを備えており、前記第1カムおよび前記第2カムは、前記コントロールシャフトを中心として回転方向に対しては共に動くが、前記コントロールシャフトの軸方向に対してはいずれか一方だけが移動可能であり互いの間隔が可変に構成され、前記ローラの外周には、前記ローラの中心方向に向かって狭くなる溝が形成されており、前記溝に前記コントロールカムが接触した際に、前記コントロールカムの前記第1カムと前記第2カムとの間隔に応じて前記ローラの押し下げ量を変えて前記バルブのリフト量を変えるものである。
【0011】
また、上記の可変動弁機構において、前記コントロールシャフトを軸方向に移動する移動手段を備え、前記第1カムは、前記コントロールシャフトの軸受けに固定され、前記第2カムは、前記コントロールシャフトに固定されており、前記コントロールシャフトを前記移動手段によって軸方向に移動すると、前記第1カムが固定されたままの状態で前記第2カムが移動することにより前記第1カムと前記第2カムとの間隔を変えるものである。
【0012】
また、上記の可変動弁機構において、前記コントロールカムにおいて前記ローラとの接触側には、前記ローラの前記溝に嵌まるテーパが形成されているものである。この構成によれば、コントロールカムによるローラの押し下げを滑らかに行うことができ、コントロールカムとローラとの摩擦を低減できるので、内燃機関の燃費を向上させることができる。
【0013】
また、上記の目的を達成するための本発明の内燃機関は、前記可変動弁機構を有するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の可変動弁機構によれば、コントロールカムの第1、第2カムの間隔の調整によりバルブリフト量の可変制御を行うことができるので、簡単、軽量および低価格でバルブリフト量の可変制御を行うことができる。
【0015】
また、本発明の可変動弁機構を用いた内燃機関によれば、バルブリフト量の可変制御を行うことが可能な可変動弁機構を用いたことにより、排気ガスを低減でき、また、燃費を向上させることができる。また、可変動弁機構のコントロールシャフトの支点をカムシャフトよりも低く配置することができる。また、この可変動弁機構を用いた内燃機関の全高を低く抑えることができるので、車両搭載性に優れた内燃機関となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態である可変動弁機構の構成図である。
【図2】図1のI−I線の断面図である。
【図3】図1の可変動弁機構のコントロールアームの固定側のコントロールレバーの平面図である。
【図4】図3のII−II線の断面図である。
【図5】図1の可変動弁機構のコントロールアームの可動側のコントロールレバーの平面図である。
【図6】図5のIII−III線の断面図である。
【図7】バルブの閉弁時の図1の可変動弁機構の構成図である。
【図8】バルブの開弁時の図1の可変動弁機構の構成図である。
【図9】一対のコントロールレバーの間隔を最小に設定した場合の可変動弁機構の図1のI−I線に相当する箇所の断面図である。
【図10】図9の可変動弁機構のバルブの開弁時の構成図である。
【図11】移動手段とコントロールシャフトとの接続状態を示した構成図である。
【図12】図1の可変動弁機構を搭載したエンジンの要部断面図である。
【図13】高リフト時の可変動弁機構の一例の構成図である。
【図14】低リフト時の可変動弁機構の一例の構成図である。
【図15】高リフト時の可変動弁機構の一例の構成図である。
【図16】低リフト時の可変動弁機構の一例の構成図である。
【図17】可変動弁機構の一例の要部断面図である。
【図18】図17の可変動弁機構の構成要素の要部斜視図である。
【図19】図18の構成要素の一部を破断して示した要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態の可変動弁機構およびこれを用いたエンジン(内燃機関)について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は本実施の形態の可変動弁機構の構成図、図2は図1のI−I線の断面図、図3は図1の可変動弁機構のコントロールアームの固定側コントロールレバーの平面図、図4は図3のII−II線の断面図、図5は図1の可変動弁機構のコントロールアームの可動側コントロールレバーの平面図、図6は図5のIII−III線の断面図を示している。
【0019】
本実施の形態の可変動弁機構1は、車両のエンジンのクランクシャフトにより回転駆動するカムシャフト2の回転トルクをバルブ3に伝達し、バルブ3の開閉を制御する機構であり、図1に示すように、上記カムシャフト2およびバルブ3の他に、回転カム4と、コントロールシャフト5と、コントロールアーム(コントロールカム)6と、スイングアーム7と、ローラ8と、エンドピポット9とを有している。
【0020】
カムシャフト2には、その軸方向に沿って複数の回転カム4が一体的に設けられている。回転カム4は、その外周一部に中心から径方向への距離が部分的に長い突部4aが形成されており、カムシャフト2に垂直な断面の全体形状が略卵形に形成されている。
【0021】
カムシャフト2の一端には、カムシャフトプーリー(図示せず)が取り付けられている。このカムシャフトプーリーはタイミングベルトまたはタイミングチェーン(図示せず)を通じて後述のクランクシャフトに接続されている。これにより、クランクシャフトの回転トルクがカムシャフト2に伝えられる。カムシャフトプーリーに代えてタイミングギア11をカムシャフト2の一端に接合する構成としても良い。この場合、タイミングギアによりクランクシャフトからの回転駆動力がカムシャフト2に伝達される。
【0022】
このカムシャフト2から離れた位置には、コントロールシャフト5がカムシャフト2の軸方向に沿うように設けられている。コントロールシャフト5には、その軸方向に沿って複数のコントロールアーム6が揺動可能に軸支されている。このコントロールアーム6は、回転カム4の回転動作に連動する。コントールシャフト5の一端には、図2に示すように、接続シャフト10が接続されている。この接続シャフト10の他端には、後述の移動手段が接続されている。
【0023】
図1に示すように、カムシャフト2およびコントロールシャフト5から離れた位置には、スイングアーム7が揺動可能に軸支されている。このスイングアーム7は、コントロールアーム6の揺動動作に連動する。このスイングアーム7において、長手方向の一端側にはバルブ3が接続され、他端側にはエンドピポット9が接続され、さらに、それらの間には、ローラ8が回転可能に軸支されている。
【0024】
バルブ3は、ポペットバルブが使用されており、ヘッド部3a、フェース部3b、ステム部3cおよびステムエンド部3dを有している。ここでは、バルブ3が閉じており、バルブ3のフェース部3bがエンジンのバルブガイド13に接触している。
【0025】
図2に示すように、ローラ8には、コントロールアーム6の揺動動作に際してコントロールアーム6が接触する。このローラ8の外周には、ローラ8の中心方向に向かって狭くなるV字状の溝8aが形成されている。
【0026】
上記コントロールアーム6は、固定側のコントロールレバー(第1カム)6aと、可動側のコントロールレバー(第2カム)6bとを備えている。この一対のコントロールレバー6a,6bで構成されるコントロールアーム6の先端側には、テーパ部6cが形成されている。このテーパ部6cは、コントロールアーム6の動作時にローラ8に接する部分であり、一対のコントロールレバー6a,6bで断面略V字状を成している。このようなテーパ部6cを設けたことにより、コントロールアーム6によるローラ8の押し下げに際し、その押し下げを滑らかに行うことができるので、コントロールアーム6とローラ8との摩擦を低減できる。その結果、エンジンの燃費を向上させることができる。
【0027】
図3〜図6に示すように、一対のコントロールレバー6a,6bは、各々が向かい合う側に形成されたスプライン6d,6eで嵌合されている。これにより、一対のコントロールレバー6a,6bは、コントロールシャフト5を中心として回転方向に対して、双方同士が固定され、互いの相対的な平面位置がずれることなく共に動く。なお、スプライン6dは、コントロールレバー6aの軸支用開口の内周に、コントロールシャフト5の軸方向に延びる複数の溝がその内周に沿って配置されることで形成されている。スプライン6eは、コントロールレバー6aの軸支用開口に嵌合するようにコントロールレバー6bに形成された突状部の外周に、コントロールシャフト5の軸方向に延びる複数の溝がその外周に沿って配置されることで形成されている。
【0028】
また、図2に示すように、固定側のコントロールレバー6aは、コントロールシャフト5の軸受け部11に接合され固定されている。一方、可動側のコントロールレバー6bは、その軸支用開口の内周に形成された溝6fに、コントロールシャフト5の外周に形成された突起が嵌合されることでコントロールシャフト5に接合され固定されている。これにより、コントロールシャフト5を上記移動手段によって軸方向(矢印P1に示す方向)に移動すると、固定側のコントロールレバー6aは固定されたままの状態で、可動側のコントロールレバー6bがコントロールシャフト5と共にその軸方向に移動する。その結果、一対のコントロールレバー6a,6bの間隔を所望の間隔に変えることができる。なお、一対のコントロールレバー6a,6bを接触可能にして、その間隔を零にすることもできる。
【0029】
次に、本実施の形態の可変動弁機構1の動作について図7および図8を参照しながら説明する。図7はバルブ3の閉弁時の可変動弁機構1の状態を示し、図8はバルブ3の開弁時の可変動弁機構1の状態を示している。なお、図7および図8にはカムシャフト2およびコントロールシャフト5の中心線および回転座標を示す。
【0030】
断面は図2と同じであり、一対のコントロールレバー6a,6bの間隔は最大に設定されている。
【0031】
図7の段階では、回転カム4の突部4aがコントロールアーム6(コントロールレバー6a,6b)の側面には接していない。また、通気口12は閉じており、バルブ3のフェース部3bがエンジンのバルブガイド13に接している。
【0032】
続いて、図8の矢印P2に示すように、回転カム4を図8の左回りに回転すると、回転カム4の突部4aが次第にコントロールアーム6(コントロールレバー6a,6b)の側面に接するようになり、コントロールアーム6が下方側に押される。これにより、コントロールアーム6の断面V字状のテーパ部6cが、ローラ8の外周のV字状の溝8aに嵌まった状態で接触しローラ8を押し下げる。その結果、スイングアーム7の一端側が下方に下がる(エンジン本体側に近づく)ので、バルブ3も押し下げられ、バルブ3のフェース部3bがバルブガイド13から離れ通気口12が開く。
【0033】
回転カム4の突部4aの頂点がコントロールアーム6(コントロールレバー6a,6b)の側面に接したところでバルブリフト量が最も大きくなる。なお、この時のコントロールアーム6の回転角度をαとし、バルブリフト量をdmxとする。ここでは、一対のコントロールレバー6a,6bの間隔を最大にしているので、バルブリフト量dmxは可変動弁機構1が設定し得る最大のバルブリフト量となる。
【0034】
次に、一対のコントロールレバー6a,6bの間隔の調整(変更)によるバルブリフト量の調整(変更)動作について図9および図10を参照しながら説明する。図9は一対のコントロールレバー6a,6bの間隔を最小に設定した場合の可変動弁機構1の図1のI−I線に相当する箇所の断面図を示し、図10は図9の可変動弁機構1のバルブ3の開弁時の状態を示している。なお、図10にもカムシャフト2およびコントロールシャフト5の中心線および回転座標を示す。
【0035】
まず、図9に示すように、接続シャフト10をその軸方向(図9の矢印P3に示す左方向)に移動し、可動側のコントロールレバー6bを、固定側のコントロールレバー6aに近づける。これにより、一対のコントロールレバー6a,6bの間隔を図2、図7、図8の場合よりも狭め、最小値にする。
【0036】
この状態で回転カム4を回転させると、図10に示すように、回転カム4の突部4aの頂点がコントロールアーム6(コントロールレバー6a,6b)に接したところでバルブリフト量が最大となる。この時、コントロールアーム6の回転角度αは図8の場合と同じであるが、一対のコントロールレバー6a,6bの間隔を図8の場合よりも狭めているので、コントロールアーム6のテーパ部6cがローラ8の溝8aに接する点が変わり、テーパ部6cのローラ8に対する押圧量が小さくなる。これにより、ローラ8の押し下げ量を小さくすることができるので、バルブリフト量dmnを図8の場合のバルブリフト量dmxよりも小さくすることができる。ここでは、一対のコントロールレバー6a,6bの間隔を最小にしているので、バルブリフト量dmnは可変動弁機構1が設定し得る最小のバルブリフト量となる。
【0037】
このように本実施の形態の可変動弁機構1によれば、コントロールアーム6の一対のコントロールレバー6a,6bの間隔調整によりバルブリフト量の可変制御を行うことができる。すなわち、複雑な構造体を追加することなく簡単な構造でバルブリフト量を可変制御できるので、簡単、軽量および低価格でバルブリフト量の可変制御を行うことができる。
【0038】
次に、上記移動手段を用いたバルブリフト量の可変制御方法について図11を参照しながら説明する。図11は、移動手段とコントロールシャフト5との接続状態を示している。
【0039】
移動手段としては、例えば直流モータ15が使用されている。直流モータ15のハウジング15a内には、中空状のロータコイル15bが収容され、その外周には、ステータマグネット15cが配置されている。ロータコイル15bの中空内には、回転軸15dのウォーム歯車部分が収容されている。ロータコイル15bは、ブラシ15eを通じてエンジンの制御装置(図示せず)に電気的に接続されている。
【0040】
この直流モータ15の回転軸15dには、接続シャフト10が接続されており、これを介してコントロールシャフト5が接続されている。すなわち、直流モータ15の回転軸15dの回転動作をウォーム歯車部分により軸方向の移動に変換することで、これに接続されたコントロールシャフト5をその軸方向に移動させてコントロールレバー6a,6bの間隔を調整する。
【0041】
接続シャフト10の軸方向途中には、接続シャフト10の直径が軸方向に沿って次第に細くなるようなテーパ部10aが部分的に形成されており、そのテーパ部10aにセンサ17が配置されている。センサ17は、コントロールシャフト5の軸方向の実際のストロークを検出するためのものであり、例えばテーパ部10aの外周を取り囲むように配置されたピックアップコイルにより形成されている。
【0042】
エンジンの制御装置は、エンジンの回転数と負荷に応じたバルブリフト量になるように、直流モータ15に制御信号を連続的に送る。エンジンの回転数については、例えばエンジンの燃料噴射制御装置の制御用データから通信により取得し、負荷については、例えば制御装置のROM(Read Only Memory)に記録された既存の計算値等により取得する。直流モータ15は、エンジンの制御装置からの制御信号に基づいて、一対のコントロールレバー6a,6bの間隔がエンジンの回転数や負荷に適した間隔、すなわち、バルブリフト量がエンジンの回転数や負荷に最適な値になるように、コントロールシャフト5を移動する。この時、エンジンの制御装置は、センサ17で検出されたコントロールシャフト5の実際の移動量と、目標とした移動量とを比較し、その値にずれがある場合は、直流モータ15にコントロールシャフト5の移動量を補正するための制御信号を送る。
【0043】
このように本実施の形態の可変動弁機構1によれば、バルブリフト量を連続的に最適な値に設定することができる。また、コントロールシャフト5の実際のストローク値を検出してそれに基づいてコントロールシャフト5の移動量(すなわち、コントロールレバー6a,6bの間隔)を補正できるので、バルブリフト量を高精度に設定することができる。
【0044】
次に、図12は、上記の可変動弁機構1を搭載したエンジン18の要部断面図を示している。
【0045】
エンジン18のシリンダ19内のピストン21は、コネクティングロッド22を通じてクランクシャフト23に接続されている。ピストン21の往復運動(図12の上下動)は、クランクシャフト23により回転運動に変換される。
【0046】
ここでは、可変動弁機構1がエンジン18の吸気口12a側に設置されている場合が例示されている。シリンダ19の燃焼室19aは、吸気口12aを通じて吸気管24aに接続される。一方、エンジン18の排気口12b側には、従来技術の可変動弁機構25が設置されている。従来技術の可変動弁機構25は、回転カム4がスイングアーム7のローラ8を直接押す構成となっている。燃焼室19aは、排気口12bを通じて排気管24bに接続される。本実施の形態の可変動弁機構1は、排気口12b側のみに設置しても良いし、吸気口12a側および排気口12b側の両方に設置しても良い。なお、符号26は、バルブ3に閉じる力を与えているバルブスプリングである。
【0047】
本実施の形態のエンジン18においては、コントロールシャフト5の支点(軸中心)をカムシャフト2よりも低く(エンジン本体に近い側に)配置することができるので、エンジン18の全高を低く抑えることができる。これにより、車両搭載性に優れたエンジン18を提供することができる。
【0048】
また、本実施の形態のエンジン18によれば、本実施の形態の可変動弁機構1を用いたことにより、バルブリフト量をエンジン18の状態に応じて連続的に最適値に設定することができるので、排気ガスを低減でき、また、動力性能や燃費を向上させることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 可変動弁機構
2 カムシャフト
3 バルブ
4 回転カム
4a 突部
5 コントロールシャフト
6 コントロールアーム(コントロールカム)
6a コントロールレバー(第1カム)
6b コントロールレバー(第2カム)
6c テーパ部
7 スイングアーム
8 ローラ
8a 溝
11 軸受け部
15 直流モータ(移動手段)
18 エンジン(内燃機関)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトにより回転駆動するカムシャフトの回転トルクをバルブに伝達し、前記バルブの開閉を制御する可変動弁機構において、
前記カムシャフトに設けられた回転カムと、
前記カムシャフトから離れた位置に設けられたコントロールシャフトに揺動可能に軸支され、前記回転カムの回転動作に連動するコントロールカムと、
前記カムシャフトおよび前記コントロールシャフトから離れた位置に揺動可能に軸支され、前記コントロールカムの揺動動作に連動するスイングアームと、
前記スイングアームに回転可能に軸支され、前記コントロールカムの揺動動作に際して前記コントロールカムが接触するローラと、
前記スイングアームに接続された前記バルブとを備え、
前記コントロールカムは、第1カムおよび第2カムを備えており、
前記第1カムおよび前記第2カムは、前記コントロールシャフトを中心として回転方向に対しては共に動くが、前記コントロールシャフトの軸方向に対してはいずれか一方だけが移動可能であり互いの間隔が可変に構成され、
前記ローラの外周には、前記ローラの中心方向に向かって狭くなる溝が形成されており、前記溝に前記コントロールカムが接触した際に、前記コントロールカムの前記第1カムと前記第2カムとの間隔に応じて前記ローラの押し下げ量を変えて前記バルブのリフト量を変える可変動弁機構。
【請求項2】
前記コントロールシャフトを軸方向に移動する移動手段を備え、
前記第1カムは、前記コントロールシャフトの軸受けに固定され、
前記第2カムは、前記コントロールシャフトに固定されており、
前記コントロールシャフトを前記移動手段によって軸方向に移動すると、前記第1カムが固定されたままの状態で前記第2カムが移動することにより前記第1カムと前記第2カムとの間隔を変える請求項1記載の可変動弁機構。
【請求項3】
前記コントロールカムにおいて前記ローラとの接触側には、前記ローラの前記溝に嵌まるテーパが形成されている請求項1または2記載の可変動弁機構。
【請求項4】
請求項1,2または3記載の可変動弁機構を有する内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−236362(P2010−236362A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82143(P2009−82143)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】