説明

可変容量圧縮機の容量制御システム

【課題】容量制御弁の消費電力が削減される可変容量圧縮機の容量制御システムの提供。
【解決手段】可変容量圧縮機の容量制御システム(A)は、目標吸入圧力を設定する目標吸入圧力設定手段(420)と、ソレノイド(254)を有し、制御圧力を調整するための容量制御弁と、外部情報検知手段(403,404,405,406,407,408)によって検知された外部情報に基づいて、可変容量圧縮機の吐出容量が最大であると仮定したときの吸入圧力の推定値である推定吸入圧力を演算する吸入圧力推定手段(414)と、目標吸入圧力設定手段(420)によって設定された目標吸入圧力及び吸入圧力推定手段(414)によって演算された推定吸入圧力に基づいて、容量制御弁のソレノイド(254)に供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを調整する制御電流調整手段(422,424)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに適用される可変容量圧縮機の容量制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用空調システムに用いられる往復動型の可変容量圧縮機は、ハウジングを備え、ハウジングの内部には吐出室、吸入室、クランク室及びシリンダボアが区画形成される。クランク室内を延びる駆動軸には斜板が傾動可能に連結され、斜板を含む変換機構は、駆動軸の回転をシリンダボア内に配置されたピストンの往復運動に変換する。ピストンの往復運動は、吸入室からシリンダボア内への作動流体の吸入、吸入した作動流体の圧縮及び圧縮された作動流体の吐出室への吐出工程を実行する。
【0003】
ピストンのストローク長、即ち圧縮機の吐出容量は、クランク室の圧力(制御圧力)を変化させることにより可変となり、吐出容量を制御するために、吐出室とクランク室とを連通する給気通路には容量制御弁が配置され、クランク室と吸入室とを連通する抽気通路には絞りが配置される。
吐出容量の制御には吸入室の圧力(吸入圧力)を制御対象とする吸入圧力制御があり、吸入圧力制御を実行するための容量制御弁には、ソレノイドとともに、吸入圧力を感知するための感圧器を内蔵するものがある(例えば特許文献1参照)。このような容量制御弁を用いた可変容量圧縮機の容量制御システムでは、吸入圧力の目標である目標吸入圧力がソレノイドの電磁力即ち通電量によって決定され、吸入圧力は、目標吸入圧力に近付くように感圧器によって機械的にフィードバック制御される。
【0004】
より詳しくは、感圧器は、例えばベローズ若しくはダイアフラムを用いて構成される。ベローズを用いた感圧器の場合、真空又は大気圧に保たれたベローズの内側に圧縮コイルばねが配置され、ベローズの一端には、外側から吸入圧力が作用する。従って、感圧器のベローズは、吸入圧力の減少に伴い伸張しようとする。
容量制御弁の弁体は、ソレノイドの電磁力とともに、感圧器のベローズが伸張しようとして発生する押圧力が作用するよう配置されている。そして、吸入圧力がソレノイドの通電量に対応して定まる目標吸入圧力に収束するよう、ベローズが伸縮することにより容量制御弁の開度が変化する。
【特許文献1】特開平10-2284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸入圧力制御方式の可変容量圧縮機の容量制御システムによれば、吸入圧力が目標吸入圧力に到達するまで、特に可変容量圧縮機の起動直後で車室等の冷房状態が目標値に到達していない場合、可変容量圧縮機が最大吐出容量で動作する。これに関連して、この種の容量制御システムには以下のような問題がある。
吸入圧力を目標吸入圧力に到達させるためには、容量制御弁のソレノイドの通電量が操作される。例えば、吸入圧力を低下させるときには、ソレノイドの通電量は目標吸入圧力に基づいて決定される値まで瞬時に増大され、これにより可変容量圧縮機の吐出容量が増大させられる。すなわち、吸入圧力を制御対象とする容量制御システムは、ソレノイドの通電量と目標吸入圧力との間に存する相関関係に基づいて成立している。
【0006】
しかしながら、この一方で、可変容量圧縮機には機械的に定まる最大吐出容量があり、吐出容量が最大吐出容量になる通電量(以下、最大容量通電量という)を超えてソレノイドに通電したとしても、最大吐出容量を超えて吐出容量が増大することはない。つまり、最大吐出容量に到達すると、吐出容量と通電量との間には相関が無くなり、通電量の超過分は無駄になる。
【0007】
従来の容量制御システムでは、最大容量通電量を考慮することなく、目標吸入圧力との相関関係に基づいてソレノイドの通電量が決定されている。それ故、吸入圧力が目標吸入圧力に到達するまでの間、ソレノイドに供給される通電量が最大容量通電量を超過し、容量制御弁の消費電力に無駄が発生していた。
また、車両若しくは空調システムの運転状況によっては、吸入圧力を目標吸入圧力に近付けるためであっても、可変容量圧縮機の起動直後から可変容量圧縮機を最大吐出容量で動作させる必要がない場合がある。
【0008】
例えば、車両が高速走行をしているような場合、可変容量圧縮機の回転数が非常に高くなり、可変容量圧縮機の能力も増大する。しかしながら、空調システムの能力は、空調システム全体の構成によって、特に蒸発器の能力によって制約を受ける。それ故、可変容量圧縮機の能力が増大したとしても、可変容量圧縮機の能力を十分に活用することができない。従ってこのような場合、可変容量圧縮機が最大吐出容量で動作すると、可変容量圧縮機で動力が無駄に消費されるという問題がある。
【0009】
更に、可変容量圧縮機の回転数が非常に高く、かつ、空調システムの蒸発器にかかる熱負荷が非常に大きい場合、可変容量圧縮機が最大吐出容量で動作すると、可変容量圧縮機にかかる負荷が過大となり、可変容量圧縮機の故障を招く虞がある。
本発明は上述した事情に基づいてなされたもので、その目的の1つは、容量制御弁の消費電力が削減される可変容量圧縮機の容量制御システムを提供することにある。
【0010】
また、本発明の目的の1つは、可変容量圧縮機の消費動力が削減される可変容量圧縮機の容量制御システムを提供することにある。
更に、本発明の目的の1つは、可変容量圧縮機の信頼性が確保される可変容量圧縮機の容量制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するべく、本発明によれば、空調システムの冷凍サイクルを構成すべく冷媒が循環する循環路に放熱器、膨張器及び蒸発器とともに介挿される可変容量圧縮機に適用され、吸入圧力を目標吸入圧力に近付けるために制御圧力を調整する容量制御システムにおいて、1つ以上の外部情報を検知するための外部情報検知手段と、前記外部情報検知手段によって検知された外部情報に基づいて、前記目標吸入圧力を設定する目標吸入圧力設定手段と、ソレノイドを有し、前記制御圧力を調整するための容量制御弁と、前記外部情報検知手段によって検知された外部情報に基づいて、前記可変容量圧縮機の吐出容量が最大であると仮定したときの前記吸入圧力の推定値である推定吸入圧力を演算する吸入圧力推定手段と、前記目標吸入圧力設定手段によって設定された目標吸入圧力及び前記吸入圧力推定手段によって演算された推定吸入圧力に基づいて、前記容量制御弁のソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを調整する制御電流調整手段とを具備することを特徴とする可変容量圧縮機の容量制御システムが提供される(請求項1)。
【0012】
好ましくは、前記制御電流調整手段は、前記目標吸入圧力が前記推定吸入圧力よりも低いとき、前記吸入圧力を前記目標吸入圧力に到達させるために必要な制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータに比べ、前記ソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを小さくする(請求項2)。
好ましくは、前記制御電流調整手段は、前記目標吸入圧力を基準として閾値を設定する閾値設定手段を含み、前記閾値が前記推定吸入圧力よりも低いとき、前記吸入圧力が前記閾値に到達するために必要な制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータに比べ、前記ソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを小さくする(請求項3)。
【0013】
好ましくは、前記制御電流調整手段は、前記目標吸入圧力を基準として閾値を設定する閾値設定手段と、前記推定吸入圧力を基準として指標を設定する指標設定手段とを含み、前記閾値が前記指標よりも低いとき、前記吸入圧力が前記閾値に到達するために必要な制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータに比べ、前記ソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを小さくする(請求項4)。
【0014】
好ましくは、前記閾値は、前記目標吸入圧力のばらつき範囲の上限値及び下限値のうち一方であり、前記目標吸入圧力と前記閾値との差は、前記目標吸入圧力の大小に応じて変化する(請求項5)。
好ましくは、前記閾値は、前記目標吸入圧力のばらつき範囲の下限値であり、前記指標は、前記推定吸入圧力のばらつき範囲の上限値である(請求項6)。
【0015】
好ましくは、前記制御電流調整手段は、前記目標吸入圧力若しくは前記閾値が前記推定吸入圧力若しくは前記閾値よりも低いときに、前記吸入圧力が前記推定吸入圧力若しくは前記指標に到達するのに必要な制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータ以下になるよう、前記ソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを小さくする(請求項7)。
【0016】
好ましくは、前記外部情報検知手段は、前記可変容量圧縮機の回転数に関連を有する物理量を検知する回転数検知手段を有し、前記制御電流調整手段は、前記回転数検知手段によって検知された物理量が所定値以上であるときに、前記可変容量圧縮機の吐出容量が最大よりも小さくなるように前記ソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを制限する(請求項8)。
【0017】
好ましくは、前記外部情報検知手段は、前記蒸発器の熱負荷を検知する熱負荷検知手段を有し、前記制御電流調整手段は、前記熱負荷検知手段によって検知された前記蒸発器の熱負荷が所定値以上であるときに、前記可変容量圧縮機の吐出容量が最大よりも小さくなるように前記ソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを制限する(請求項9)。
【0018】
好ましくは、前記吸入圧力推定手段は、前記外部情報検知手段によって検知された外部情報を、当該外部情報と前記推定吸入圧力との間の関係を示す実験式に代入して前記推定吸入圧力を演算する(請求項10)。
好ましくは、前記外部情報検知手段は、前記冷凍サイクルの吐出圧力領域の何れかの部位における前記冷媒の圧力である吐出圧力を検知するための吐出圧力検知手段と、前記蒸発器の熱負荷を検知するための熱負荷検知手段と、前記蒸発器の出口での前記冷媒の過熱度を検知するための過熱度検知手段と、前記可変容量圧縮機の回転数に相当する物理量を検知する回転数検知手段とを含み、前記吸入圧力推定手段は、前記吐出圧力検知手段によって検知された前記吐出圧力と、前記熱負荷検知手段によって検知された前記蒸発器の熱負荷と、前記過熱度検知手段によって検知された前記冷媒の過熱度と、前記回転数検知手段によって検知された前記可変容量圧縮機の回転数に関連する物理量と、前記吸入圧力との関係を示す実験式を用いて前記推定吸入圧力を演算する(請求項11)。
【0019】
好ましくは、前記膨張器は、前記蒸発器の出口での前記冷媒の温度に基づいて前記冷媒の流量を調整する温度自動膨張弁であり、
前記過熱度検知手段は、前記蒸発器の出口での前記冷媒の温度若しくは当該温度に関連する物理量を検知する手段と、前記膨張器の入口での前記冷媒の圧力を検知するための膨張器入口圧力検知手段とを含み、前記過熱度検知手段は、前記蒸発器の出口での前記冷媒の温度若しく当該温度に関連する物理量と前記膨張器の入口での前記冷媒の圧力に基づいて、前記過熱度を検知する(請求項12)。
【0020】
好ましくは、前記空調システムは車両に適用され、前記熱負荷検知手段は、外気温度を検知するための外気温度センサと、前記蒸発器のためのファンに印加される電圧を検知するための蒸発器ファン電圧検知手段とを少なくとも含む(請求項13)。
好ましくは、前記外部情報検知手段は、前記蒸発器を通過した直後の空気流の温度の目標である蒸発器目標出口空気温度を設定する蒸発器目標出口温度設定手段を含み、前記目標吸入圧力推定手段は、前記蒸発器を通過した直後の空気流の温度が蒸発器目標出口温度設定手段によって設定された蒸発器目標出口空気温度に近づくように前記目標吸入圧力を設定する(請求項14)。
【0021】
好ましくは、前記容量制御弁は、前記冷凍サイクルの吐出圧力領域の何れかの部位における前記冷媒の圧力を吐出圧力としたときに、前記吐出圧力を受けるとともに、前記吐出圧力と対抗する方向にて前記吸入圧力及び制御圧力のうち一方と前記ソレノイドの電磁力とを受けて弁孔を開閉可能な弁体を有し、前記弁孔を開閉して前記制御圧力を変化させることにより前記可変容量圧縮機の容量を調整可能であり、前記外部情報検知手段は、前記吐出圧力を検知するための吐出圧力検知手段を含み、前記制御電流調整手段は、前記吐出圧力検知手段によって検知された吐出圧力と前記目標吸入圧力とに基づいて、前記吸入圧力が前記目標吸入圧力に到達するために必要な制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを演算する(請求項15)。
【0022】
好ましくは、前記可変容量圧縮機は、内部に吐出室、クランク室、吸入室及びシリンダボアが区画形成されたハウジングと、前記シリンダボアに配設されたピストンと、前記ハウジング内に回転可能に支持された駆動軸と、前記駆動軸の回転を前記ピストンの往復運動に変換する傾角可変の斜板要素を含む変換機構と、前記吐出室と前記クランク室とを連通する給気通路と、前記吸入室と前記クランク室とを連通する抽気通路とを備え、前記容量制御弁は、前記給気通路及び前記抽気通路のうち一方に介挿されている(請求項16)。
【発明の効果】
【0023】
本発明の請求項1の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、吸入圧力推定手段が、外部情報に基づいて、可変容量圧縮機の吐出容量が最大であると仮定したときの吸入圧力の推定値である推定吸入圧力を演算する。そして、制御電流調整手段が、目標吸入圧力及び推定吸入圧力に基づいて、ソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを調整する。制御電流調整手段が、目標吸入圧力にのみ基づくのではなく、目標吸入圧力及び推定吸入圧力に基づいて制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを調整することにより、可変容量圧縮機が最大吐出容量で動作しているときに、ソレノイドに供給される過剰な制御電流が削減される。この結果として、この容量制御システムによれば、容量制御弁における消費電力が削減される。
【0024】
請求項2の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、制御電流調整手段は、目標吸入圧力が推定吸入圧力よりも低いとき、吸入圧力を目標吸入圧力に到達させるために必要な制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータに比べ、ソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを小さくする。これにより、可変容量圧縮機が最大吐出容量で動作しているときに、ソレノイドに供給される過剰な制御電流が削減され、容量制御弁における消費電力が削減される。
【0025】
請求項3の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、制御電流調整手段は、閾値が推定吸入圧力よりも低いとき、吸入圧力が閾値に到達するために必要な制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータに比べ、ソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを小さくする。閾値は、例えば目標吸入圧力のばらつきを考慮して設定される。これにより、可変容量圧縮機が最大吐出容量で動作しているときに、ソレノイドに供給される過剰な制御電流が削減され、容量制御弁における消費電力が削減される。
【0026】
請求項4の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、制御電流調整手段は、閾値が指標よりも低いとき、吸入圧力が閾値に到達するために必要な制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータに比べ、ソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを小さくする。閾値は、例えば目標吸入圧力のばらつきを考慮して設定され、指標は、例えば推定吸入圧力のばらつきを考慮して設定される。これにより、可変容量圧縮機が最大吐出容量で動作しているときに、ソレノイドに供給される過剰な制御電流が確実に削減され、容量制御弁における消費電力が削減される。
【0027】
請求項5の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、閾値は、目標吸入圧力のばらつき範囲の上限値及び下限値のうち一方であり、目標吸入圧力と閾値との差は、目標吸入圧力の大小に応じて変化する。この容量制御システムでは、閾値が指標に比べて低いときに、可変容量圧縮機が最大吐出容量で動作していると実質的に判定しており、目標吸入圧力と閾値との差が目標吸入圧力の大小に応じて変化することにより、当該判定精度が向上する。この結果として、可変容量圧縮機が最大吐出容量で動作しているときに、ソレノイドに供給される過剰な制御電流が一層確実に削減され、容量制御弁における消費電力が削減される。
【0028】
請求項6の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、閾値は、前記目標吸入圧力のばらつき範囲の下限値であり、指標は、推定吸入圧力のばらつき範囲の上限値である。これにより、可変容量圧縮機が最大吐出容量で動作しているときに、ソレノイドに供給される過剰な制御電流が一層確実に削減され、容量制御弁における消費電力が削減される。
請求項7の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、制御電流調整手段は、目標吸入圧力若しくは閾値が推定吸入圧力若しくは指標よりも低いときに、推定吸入圧力若しくは指標に到達するのに必要な制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータ以下になるよう、ソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを小さくする。これにより、可変容量圧縮機が最大吐出容量で動作しているときに、ソレノイドに過剰な制御電流が供給されるのが防止され、容量制御弁における消費電力が一層削減される。
【0029】
また、制御電流調整手段が、推定吸入圧力若しくは指標に到達するのに必要な制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータ以下になるよう、ソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを小さくすることによって、最大吐出容量を基準とした吐出容量制御状態にて、可変容量圧縮機を確実に動作させることが可能となる。この結果として、この容量制御システムによれば、可変容量圧縮機の消費動力が削減されるとともに、可変容量圧縮機の信頼性が確保される。
【0030】
請求項8の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、可変容量圧縮機の回転数が高いときに、可変容量圧縮機の吐出容量が最大よりも小さくなることで、可変容量圧縮機にかかる負担が軽減される。この結果として、可変容量圧縮機の故障が防止され、可変容量圧縮機の信頼性が向上する。また、可変容量圧縮機の吐出容量が最大よりも小さくなることで、可変容量圧縮機の消費動力が削減される。
【0031】
請求項9の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、蒸発器の熱負荷が高いときに、可変容量圧縮機の吐出容量が最大よりも小さくなることで、可変容量圧縮機にかかる負担が軽減される。この結果として、可変容量圧縮機の故障が防止され、可変容量圧縮機の信頼性が向上する。また、可変容量圧縮機の吐出容量が最大よりも小さくなることで、可変容量圧縮機の消費動力が削減される。
【0032】
請求項10の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、外部情報を実験式に代入して推定吸入圧力を演算することにより、推定吸入圧力が正確に演算される。この結果として、容量制御弁の消費電力が的確に削減される。
請求項11の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、吸入圧力推定手段が、吐出圧力、蒸発器の熱負荷、蒸発器の出口での冷媒の過熱度及び可変容量圧縮機の回転数に関連する物理量に基づいて推定吸入圧力を演算することにより、吸入圧力が精度良く推定される。この結果として、ソレノイドに供給される過剰な制御電流が確実に削減され、容量制御弁における消費電力が削減される。
【0033】
請求項12の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、過熱度検知手段が、蒸発器の出口での冷媒の温度若しく当該温度に関連する物理量と、膨張器の入口での冷媒の圧力に基づいて過熱度を検知することで、過熱度が正確に検知される。この結果として、吸入圧力の推定精度が一層高くなり、ソレノイドに供給される過剰な制御電流が確実に削減され、容量制御弁における消費電力が削減される。
【0034】
請求項13の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、熱負荷検知手段が、外気温度及びに及び蒸発器ファンの電圧に少なくとも基づいて熱負荷を精度良く検知する。この結果として、吸入圧力推定手段によって、吸入圧力が精度良く推定される。
一方、外気温度センサ及び蒸発器ファン電圧検知手段は、いずれも特殊な手段ではなく、空調システムの構成が複雑になることはない。この結果として、この容量制御システムによれば、簡単な構成にて、ソレノイドに供給される過剰な制御電流が確実に削減され、容量制御弁における消費電力が削減される。
【0035】
請求項14の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、蒸発器を通過した直後の空気流の温度が蒸発器目標出口空気温度に近付き、空調システムにより空調される車室等の温度制御の精度が向上する。
請求項15の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、弁体に作用する吐出圧力に対し、吸入圧力若しくは制御圧力とソレノイドの電磁力とが対抗する方向に作用するため、吸入圧力の制御範囲が広い。この結果として、可変容量圧縮機の起動直後から、容量制御弁の消費電力が有効に削減される。
【0036】
請求項16の可変容量圧縮機の容量制御システムが適用された可変容量圧縮機は、往復動型であり、斜板要素の最小傾角で規定されるピストンのストロークを非常に小さく設定できる。このため最小吐出容量が非常に小さく、吐出容量の機械的な可変範囲が広い。従って、往復動型の可変容量圧縮機に本発明に係る容量制御システムを適用することにより、可変容量圧縮機の吐出容量の可変範囲が広く且つ容量制御弁の消費電力が削減された空調システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の第1実施形態の可変容量圧縮機の容量制御システムAについて説明する。
図1は、容量制御システムAが適用された車両用空調システムの冷凍サイクル10を示し、冷凍サイクル10は、作動流体としての冷媒が循環する循環路12を備える。循環路12には、冷媒の流動方向でみて、圧縮機100、放熱器(凝縮器又はガスクーラ)14、膨張器16及び蒸発器18が順次介挿され、圧縮機100が作動すると、圧縮機100の吐出容量に応じて循環路12を冷媒が循環する。
【0038】
すなわち、圧縮機100は、冷媒の吸入工程、吸入した冷媒の圧縮工程及び圧縮した冷媒の吐出工程からなる一連のプロセスを行う。
放熱器14は、圧縮機100から吐出された冷媒を冷却する機能を有し、冷却された冷媒は、膨張器16を通過することによって膨張させられる。膨張した冷媒は蒸発器18内で気化し、気化した冷媒は圧縮機100に吸入される。
【0039】
蒸発器18は、車両用空調システムの空気回路の一部も構成しており、蒸発器18を通過する空気流は、蒸発器18内の冷媒によって気化熱を奪われることによって冷却される。気化した冷媒は、蒸発器18の出口において過熱度を有するが、過熱度は膨張器16によって所定値に略保たれる。
より詳しくは、図2に示したように、膨張器16は円筒状のケーシング180を有し、ケーシング180の一端側には入口ポート180aが形成されている。また、ケーシング180の中央部には出口ポート180bが形成され、入口ポート180aと出口ポート180bとは、ケーシング180の内部に設けられた弁孔182を通じて連通している。弁孔182は入口ポート180a側にて弁体184によって開閉され、弁体184には、閉弁方向に圧縮コイルばね185の付勢力fs1が作用している。
【0040】
また、ケーシング180の他端側には凹所180cが形成され、凹所180cと第2ポート180bとの間は、弁孔182と同軸上を延びる挿通孔186を通じて連通している。挿通孔186には伝達ロッド188が挿通され、伝達ロッド188の一端は弁体184に連結されている。伝達ロッド188の他端には、フランジ付きのエンドキャップ190が固定され、エンドキャップ190には、凹所180c内に配置された圧縮コイルばね192の付勢力fs2が閉弁方向に作用している。
【0041】
また、ケーシング180の他端には、ダイアフラム194を介して円錐形状のカバー196が固定されている。ダイアフラム194は可撓性を有する金属製の薄板からなり、ダイアフラム194及びカバー196によって区画された気密な空間内には、充填剤197が気液混合状態で充填されている。
ダイアフラム194の中央部にはエンドキャップ190が当接し、感温部の内部の圧力Ptが上昇することにより、弁体184が開弁方向に付勢される。
【0042】
また、ケーシング180の他端側には、均圧路180dが形成され、均圧路180dは、ケーシング180の他端とダイアフラム194との間の隙間と、カバー196の外部とを連通する。
膨張器16は、ブロック198内に固定され、ブロック198には入口側流路198a、出口側流路198b及び感温路198cが形成されている。入口側流路198aを通じて、膨張器16の入口ポート180aと放熱器14とが連通し、出口側流路198bを通じて、膨張器16の出口ポート180bと蒸発器18とが連通する。
【0043】
感温路198cを通じて、蒸発器18と圧縮機100とが連通しているが、膨張器16のカバー196は、感温路198c内に位置している。従って、感温路198c内を流れる冷媒がカバー196の外面に接することにより、カバー196内の充填剤197の温度は、感温路198cを流れる冷媒の温度と等しくなる。また、均圧路180dを通じて、ダイアフラム194の外面には、感温路198cを流れる冷媒の圧力、つまり蒸発器18の出口での冷媒の圧力Peが作用する。
【0044】
上述した膨張器16は温度自動膨張弁であり、ダイアフラム194、カバー196及び充填剤197が感温部を構成している。膨張器16は、感温部にて蒸発器18の出口での冷媒の温度を感知し、蒸発器18の出口での冷媒の過熱度SHが所定値になるように、自身を通過する冷媒の流量を調整する。
ここで、図3の直線C1は、膨張器16の入口での冷媒の圧力Pinが所定の一定値であるときの、蒸発器18の出口における冷媒の温度と圧力Peとの関係(過熱度特性)を示しており、膨張器16の構造によって定まる。曲線C2は、冷媒(R134a)の飽和温度と飽和圧力との関係を示しており、横軸方向での直線C1と曲線C2との差が、蒸発器18の出口における冷媒の過熱度SHに対応する。
【0045】
一方、図4は、膨張器16の感温部の温度が一定であるとした場合における、膨張器16の入口での冷媒の圧力Pinと蒸発器18の出口での冷媒の過熱度SHとの関係を示す。図4から、膨張器16の入口での冷媒の圧力Pinが変化するのに伴い、蒸発器18の出口での冷媒の過熱度SHが変化することがわかる。
なお、膨張器16において、弁体184に作用する開弁方向の力をFoとし、閉弁方向に作用する力をFcとすると、Fo及びFcは、式(1)、(2)でそれぞれ表される。そして、膨張器16の開弁条件は、式(3)にて示される。
【0046】
Fo=(Pt−Pe)・Sd−(Pout−Pe)・Ser−fs2 ・・・(1)
Fc=fs1+(Pin−Pout)・Sev ・・・(2)
Fo>Fc ・・・(3)
但し、式(1),(2)中、Poutは膨張器16の出口での冷媒の圧力、Sdはダイアフラム194の有効面積、Sevは弁体184のシール面積、Serは伝達ロッド188の断面積である。また、Ptは、前述したように感温部の内部の圧力である。
【0047】
再び図1を参照すると、容量制御システムAが適用される圧縮機100は可変容量圧縮機であり、例えば斜板式のクラッチレス圧縮機である。圧縮機100はシリンダーブロック101を備え、シリンダーブロック101には、複数のシリンダボア101aが形成されている。シリンダーブロック101の一端にはフロントハウジング102が連結され、シリンダーブロック101の他端には、バルブプレート103を介してリアハウジング(シリンダヘッド)104が連結されている。
【0048】
シリンダーブロック101及びフロントハウジング102はクランク室105を規定し、クランク室105内を縦断して駆動軸106が延びている。駆動軸106は、クランク室105内に配置された環状の斜板107を貫通し、斜板107は、駆動軸106に固定されたロータ108と連結部109を介してヒンジ結合されている。従って、斜板107は、駆動軸106に沿って移動しながら傾動可能である。
【0049】
ロータ108と斜板107との間を延びる駆動軸106の部分には、斜板107を最小傾角に向けて付勢するコイルばね110が装着され、斜板107を挟んで反対側の部分、即ち斜板107とシリンダーブロック101との間を延びる駆動軸106の部分には、斜板107を最大傾角に向けて付勢するコイルばね111が装着されている。
駆動軸106は、フロントハウジング102の外側に突出したボス部102a内を貫通し、駆動軸106の外端には、動力伝達装置としてのプーリ112に連結されている。プーリ112は、ボール軸受113を介してボス部102aによって回転自在に支持され、外部駆動源としてのエンジン114のプーリとの間にベルト115が架け回される。
【0050】
ボス部102aの内側には軸封装置116が配置され、フロントハウジング102の内部と外部とを遮断している。駆動軸106はラジアル方向及びスラスト方向にベアリング117,118,119,120によって回転自在に支持され、エンジン114からの動力がプーリ112に伝達され、プーリ112の回転と同期して回転可能である。
シリンダボア101a内にはピストン130が配置され、ピストン130には、クランク室105内に突出したテール部が一体に形成されている。テール部に形成された凹所130a内には一対のシュー132が配置され、シュー132は斜板107の外周部に対し挟み込むように摺接している。従って、シュー132を介して、ピストン130と斜板107とは互いに連動し、駆動軸106の回転によりピストン130がシリンダボア101a内を往復動する。
【0051】
リアハウジング104の内部には、吸入室140及び吐出室142が区画形成され、吸入室140は、バルブプレート103に設けられた吸入孔103aを介してシリンダボア101aと連通可能である。吐出室142は、バルブプレート103に設けられた吐出孔103bを介してシリンダボア101aと連通している。なお、吸入孔103a及び吐出孔103bは、図示しない吸入弁及び吐出弁によってそれぞれ開閉される。
【0052】
シリンダーブロック101の外側にはマフラ150が設けられ、マフラケーシング152は、シリンダーブロック101に一体に形成されたマフラベース101bに図示しないシール部材を介して接合されている。マフラケーシング152及びマフラベース101bはマフラ空間154を規定し、マフラ空間154は、リアハウジング104、バルブプレート103及びマフラベース101bを貫通する吐出通路156を介して吐出室142と連通している。
【0053】
マフラケーシング152には吐出ポート152aが形成され、マフラ空間154には、吐出通路156と吐出ポート152aとの間を遮るように逆止弁170が配置されている。具体的には、逆止弁170は、吐出通路156側の圧力とマフラ空間154側の圧力との圧力差に応じて開閉し、圧力差が所定値より小さい場合閉作動し、圧力差が所定値より大きい場合開作動する。
【0054】
したがって吐出室142は、吐出通路156、マフラ空間154及び吐出ポート152aを介して循環路12の往路部分と連通可能であり、マフラ空間154は逆止弁170によって断続される。一方、吸入室140は、リアハウジング104に形成された吸入ポート104aを介して循環路12の復路部分と連通している。
リアハウジング104には、容量制御弁(電磁制御弁)200が収容され、容量制御弁200は給気通路160に介挿されている。給気通路160は、吐出室142とクランク室105との間を連通するようにリアハウジング104からバルブプレート103を経てシリンダーブロック101にまで亘っている。
【0055】
一方、吸入室140は、クランク室105と抽気通路162を介して連通している。抽気通路162は、駆動軸106とベアリング119,120との隙間、空間164及びバルブプレート103に形成された固定オリフィス103cからなる。
また、吸入室140は、リアハウジング104に形成された感圧通路166を通じて、給気通路160とは独立して容量制御弁200に接続されている。
【0056】
より詳しくは、図5に示すように、容量制御弁200は、弁ユニットとソレノイドユニットとからなる。弁ユニットは、円筒状の弁ハウジング202を有し、弁ハウジング202の内部には弁孔204が形成されている。弁孔204は、弁ハウジング202の軸線方向に延び、弁孔204の一端は出口ポート206に繋がっている。出口ポート206は、弁ハウジング202を径方向に貫通しており、弁孔204は出口ポート206及び給気通路160の下流側部分を介してクランク室105と連通している。
【0057】
弁ハウジング202のソレノイドユニット側には弁室208が区画され、弁孔204の他端は弁室208の端壁にて開口している。弁室208内には、円柱状の弁体210が収容され、弁体210は、弁室208内を弁ハウジング202の軸線方向に移動可能である。弁体210の一端が弁室208の端壁に当接することにより、弁体210は弁孔204を閉塞可能であり、弁室208の端壁は弁座として機能する。
【0058】
また、弁ハウジング202には入口ポート212が形成され、入口ポート212も弁ハウジング202を径方向に貫通している。入口ポート212は、給気通路160の上流側部分を介して吐出室142と連通している。入口ポート212は、弁室208の周壁にて開口しており、入口ポート212、弁室208、弁孔204及び出口ポート206を通じて、吐出室142とクランク室105とは連通可能となっている。
【0059】
更に、弁ハウジング202には、ソレノイドユニットと反対側に感圧室214が区画され、感圧室214の周壁には感圧ポート216が形成されている。感圧ポート216及び感圧通路166を通じて、感圧室214は吸入室140と連通している。また、感圧室214と弁孔204との間には軸方向孔218が設けられ、軸方向孔218は、弁孔204と同軸上を延びている。
【0060】
弁体210の他端には、感圧ロッド220が一体且つ同軸に連結されている。感圧ロッド220は、弁孔204及び軸方向孔218内を延び、感圧ロッド220の先端部は、感圧室214内に突出している。感圧ロッド220は先端側に大径部を有しており、感圧ロッド220の大径部は、軸方向孔218の内周面によって摺動可能に支持されている。従って、感圧ロッド220の大径部によって、感圧室214と弁孔204との間の気密性が確保されている。
【0061】
感圧室214の端壁は、弁ハウジング202の端部に圧入されたキャップ222により形成され、キャップ222は段付きの有底円筒状をなす。キャップ222の小径部には、支持部材224の筒部が摺動自在に嵌合され、キャップ222の底壁と支持部材224との間には強制解放ばね226が配置されている。
感圧室214内には感圧器228が収容され、感圧器228の一端が支持部材224に固定されている。従って、キャップ222は、支持部材224を介して感圧器228を支持している。
【0062】
感圧器228はベローズ230を有し、ベローズ230は、弁ハウジング202の軸線方向に伸縮可能である。ベローズ230の両端はキャップ232,234によって気密に閉塞され、ベローズ230の内部は、真空状態(減圧状態)に保たれている。また、ベローズ230の内部には、圧縮コイルばね236が配置され、圧縮コイルばね236は、ベローズ230が伸張するように、キャップ232,234を相互に離間する方向に付勢している。
【0063】
感圧器228のキャップ234は、アダプタ238を介して感圧ロッド220に当接可能であり、感圧室214内の圧力が低下して感圧器228が伸張した場合、感圧ロッド220を介して弁体210が開弁方向に付勢される。
なお、弁ハウジング202に対するキャップ222の圧入量は、容量制御弁200が所定の動作をするように調整される。
【0064】
一方、ソレノイドユニットは、弁ハウジング202に同軸的に連結された円筒状のソレノイドハウジング240を有し、ソレノイドハウジング240内には、同心上に円筒状の固定コア242が配置されている。固定コア242の一端部は、弁ハウジング202の端部に嵌合して弁室208を区画するとともに、弁体210を摺動自在に支持している。
固定コア242の中央部から他端部に亘る部分には、有底のスリーブ244が嵌合されている。スリーブ244の底壁と固定コア242の他端との間には、コア収容空間248が区画され、コア収容空間248には可動コア246が配置されている。可動コア246は、スリーブ244によって摺動自在に支持され、ソレノイドハウジング240の軸線方向に往復動可能である。
【0065】
弁体210の他端には、固定コア242内を延びるソレノイドロッド250の一端が当接し、ソレノイドロッド250の他端部は、可動コア246と一体に固定されている。従って、弁体210は、可動コア246に連動して閉弁方向に移動する。可動コア246とスリーブ244の底壁との間には、圧縮コイルばね252が配置され、圧縮コイルばね252は、可動コア246及びソレノイドロッド250を介して弁体210を閉弁方向に常時付勢する。
【0066】
スリーブ244の周囲には、ボビン253に巻回された状態でソレノイド254が配置されている。ソレノイドハウジング240、固定コア242及び可動コア246はいずれも磁性材料で形成されて磁気回路を構成し、一方、スリーブ244は非磁性のステンレス系材料で形成されている。
ここで、固定コア242の先端部の根元には、径方向孔256が形成され、弁ハウジング202には、径方向孔256と感圧室214とを連通する連通孔258が形成されている。また、固定コア242の中央部及び他端部の内径は、弁体210及びソレノイドロッド250の外径よりも大きく、感圧室214とコア収容空間248との間は、固定コア242の中央部及び他端部の内側、径方向孔256及び連通孔258を介して連通している。
【0067】
従って、弁体210の一端面には、クランク室105の圧力(クランク圧力Pc)が開弁方向の力として作用し、一方、弁体210の他端面には吸入室140の圧力(吸入圧力Ps)が閉弁方向の力として作用する。
なお、弁孔204の面積と、固定コア242の先端部に支持される弁体210の部分の断面積とを同等に設定することによって、弁体210の開閉動作には、弁室208内の圧力、換言すれば、吐出室142の圧力(吐出圧力Pd)は関与しない。この場合、容量制御弁200の吸入圧力制御特性は、吐出圧力Pdの影響を受けない。この結果として、図6及び式(4)に示すように、ソレノイド254に供給する電流(制御電流I)に基づいて、制御対象となる吸入圧力Psの目標値(目標吸入圧力Pss)が一義的に決定される。
【0068】
【数1】

【0069】
なお、式(4)中のF(I)は、ソレノイド254に通電することによって可動コア246に作用する電磁力であり、Sbは、ベローズの有効面積である。また、fs3は圧縮コイルばね252の付勢力であり、fs4は、感圧器228の圧縮コイルばね236の付勢力である。
ソレノイド254には圧縮機100の外部に設けられた制御装置400Aが接続され、制御装置400Aからソレノイド254に制御電流Iが供給されると、可動コア246に電磁力F(I)が作用する。電磁力F(I)によって、可動コア246は固定コア242に向けて吸引され、これにより弁体210が閉弁方向に付勢される。
【0070】
図7は、制御装置400Aを含む容量制御システムAの概略構成を示したブロック図である。
容量制御システムAは、1つ以上の外部情報を検知する外部情報検知手段を有し、外部情報検知手段は、蒸発器目標温度設定手段401及び蒸発器出口空気温度検知手段としての蒸発器温度センサ402を含む。
【0071】
蒸発器目標温度設定手段401は、車室内温度設定を含む種々の外部情報に基づいて、圧縮機100の吐出容量制御の目標となる蒸発器18の出口での空気温度Teの目標値(蒸発器目標出口空気温度Tes)を設定し、そして、設定した蒸発器目標出口空気温度Tesを外部情報の1つとして制御装置400Aに入力する。蒸発器目標温度設定手段401は、例えば、空調システム全体の動作を制御するエアコン用ECUの一部により構成することができる。
【0072】
蒸発器温度センサ402は、空気回路における蒸発器18の出口に設置され(図1参照)、蒸発器18を通過した直後の空気温度Teを検知する。検知された空気温度Teは、外部情報の1つとして制御装置400Aに入力される。
また、外部情報検知手段は吐出圧力検知手段を含み、吐出圧力検知手段は、その一部を構成する圧力センサ403を有する。吐出圧力検知手段は、吐出室142の冷媒の圧力である吐出圧力Pdを検知するための手段である。圧力センサ403は、放熱器14の入口側に装着され(図1参照)、当該部位における冷媒の圧力(以下、検知圧力Phという)を検知し、制御装置400Aに入力する。
【0073】
なお、吐出圧力Pd及び検知圧力Phは、冷凍サイクル10の吐出圧力領域の圧力という一般的な意味においては、いずれも吐出圧力である。冷凍サイクル10の吐出圧力領域とは、吐出室142から放熱器14の入口までの領域をさす。また、冷凍サイクル10の高圧領域とは、吐出室142から膨張器16の入口までの領域をさす。圧力センサ403は、高圧領域のいずれかの部位で冷媒の圧力を検知することができればよい。
【0074】
これに対し、冷凍サイクル10の吸入圧力領域とは、蒸発器18の出口から吸入室140に亘る領域をさす。また、吐出圧力領域及び高圧領域には、圧縮工程にあるシリンダボア101aも含まれ、吸入圧力領域には、吸入工程にあるシリンダボア101aも含まれる。
更に、外部情報検知手段は、外気温度センサ404及び車内温度センサ405を含む。外気温度センサ404は、車両のエアーインテーク部に配置され、車両用空調システムの空気回路に導入される外気の温度Taを検知する。車内温度センサ405は、車室内に設置されて車室内の空気の温度Ttを検知する。
【0075】
また更に、外部情報検知手段は、蒸発器ファン電圧検知手段406及び内外気切換ドア位置検出手段407を含む。蒸発器ファン電圧検知手段406は、蒸発器ファンのファンモータに印加される電圧Vfを検知する。蒸発器ファンは、車両用空調システムの空気回路において、蒸発器18を通過する空気流を生成し、電圧Vfは、蒸発器ファンによる送風量の指標となる。
【0076】
内外気切換ドア位置検出手段407は、内外気切換ドアの位置を検知する。車両用空調システムは、内外気切換ドアの位置に応じて、空気回路における通風経路が変更されるが、内外気切換ドア位置検出手段407によって、通風経路の状態Asが検知される。換言すれば、内外気切換ドア位置検出手段407によって、車両用空調システムが外気導入モード及び内気循環モードのうちいずれで動作しているかが検知される。
【0077】
内外気切換ドア位置検知手段407は、例えば、位置検出スイッチを用いて構成することができる。
また、外部情報検知手段は、圧縮機100の回転数Ncnを検知するための圧縮機回転数検知手段を含む。圧縮機回転数検知手段は、エンジン114の回転数を検知するエンジン回転数センサ408を有し、エンジン回転数センサ408によって検知されたエンジン114の回転数に、所定のプーリー比を乗じることにより、圧縮機100の回転数Ncnを検知することができる。
【0078】
圧縮機回転数検知手段の構成は特に限定されず、圧縮機100の回転数Ncnに関連する物理量に基づいて、圧縮機100の回転数Ncnを検知可能であればよい。例えば、車速とギヤ位置とから回転数Ncnを検知してもよい。また、スロットル開度(アクセル開度)を含む情報に基づいて回転数Ncnを検知してもよい。なお、圧縮機100の回転数Ncnに関連する物理量には、圧縮機100の回転数自体も含まれる。
【0079】
制御装置400Aは、例えば、独立したECU(電子制御ユニット)によって構成されるが、エアコン用ECU又はエンジン114の動作を制御するエンジン用ECUに含ませてもよい。また、蒸発器目標温度設定手段401を制御装置400Aに含ませてもよい。
制御装置400Aは、圧力補正手段410、過熱度演算手段412及び吸入圧力推定手段414を有する。
【0080】
圧力補正手段410は、圧力センサ403とともに吐出圧力検知手段を構成しており、圧力センサ403によって検知された検知圧力Phを補正することにより、吐出圧力Pdを演算により求める。そして、圧力補正手段410は、演算した吐出圧力Pdを吸入圧力推定手段414に入力する。
このように検知圧力Phを補正するのは、吐出室142と放熱器14の入口との間では、同じ吐出圧力領域であっても、特に熱負荷が大きいときには、冷媒の圧力に差が生じるためである。吐出圧力Pdは、検知圧力Phを変数とする関数Pd=f(Ph)によって演算することができる。関数f(Ph)は予め求めておくことができる。
【0081】
過熱度演算手段412は、蒸発器18の出口での冷媒の温度若しくは当該温度に関連する物理量と、膨張器16の入口での冷媒の圧力Pin若しくは当該圧力Pinに関連する物理量に基づいて、冷媒の過熱度SHを演算する。具体的には、前者の物理量として蒸発器18の熱負荷Qや冷媒の循環量、後者の物理量として圧力センサ403によって検知された検知圧力Phを用いることができる。
【0082】
蒸発器18の熱負荷Qは、後述するように、例えば、外気温度Ta、車室内温度Tt、蒸発器ファンの電圧Vf及び通風経路の状態As等に基づいて演算することができる。
膨張器16の入口での冷媒の圧力Pin若しくは当該圧力Pinに関連する物理量に基づいて過熱度SHを演算するのは、図4に示したように、蒸発器18の出口における冷媒の過熱度SHが、膨張器16の入口での冷媒の圧力Pinに依存して変化するためである。
【0083】
つまり、蒸発器18の出口での冷媒の過熱度SHは、検知圧力Ph及び熱負荷Qを変数とする関数SH=g(Ph,Q)によって演算することができ、圧力センサ403及び過熱度演算手段412は、過熱度検知手段を構成している。関数g(Ph,Q)は予め求めておくことができる。
なお、過熱度SHが図4に示したように膨張器16の入口での圧力Pinに対して依存性を有するのは、膨張器16が前述した式(1)〜(3)の関係に基づいて動作することによる。膨張器16の入口圧力Pin、即ち、冷凍サイクル10の高圧領域の圧力が変化すると、弁体184を閉じる方向の力Fcが変化し、過熱度SHが変化してしまうのである。
【0084】
そして、過熱度演算手段412は、演算により検知した過熱度SHを吸入圧力推定手段414に入力する。
なお、過熱度検知手段として、蒸発器18の出口での冷媒の温度を検知するセンサを用いてもよい。
吸入圧力推定手段414は、圧縮機100が機械的に決定される最大吐出容量で動作していると仮定して、外部情報検知手段によって検知された外部情報に基づいて、吸入圧力Psの推定値である推定吸入圧力Pseを演算する。
【0085】
具体的には、吸入圧力推定手段414は、外部情報検知手段によって検知された外部情報を実験式に代入することにより、推定吸入圧力Pseを演算する。実験式は、外部情報と吸入圧力Psとの関係を示すものであり、予め実験によって求めておくことができる。実験式は、マップであってもよい。
実験式は、好ましくは、吐出圧力Pdと、膨張器16の入口での冷媒の過冷度SCと、蒸発器18の熱負荷Qと、蒸発器18の出口での冷媒の過熱度SHと、圧縮機100の回転数Ncnと、吸入圧力Psとの関係を示すものである。これら吐出圧力Pd、過冷度SC、熱負荷Q、過熱度SH及び回転数Ncnと、吸入圧力Psとの関係を示す実験式によれば、吸入圧力Psを正確に推定することができる。例えば、実験式はPse=h(Pd,SC,Q,SH,Ncn)で示される。
【0086】
実験式は、式中に変数として含まれる量をそれぞれと関連を有する他の量にて置換することによって、書き換えることができる。
例えば、蒸発器18の熱負荷Qは、外気温度Ta、車室内温度Tt、蒸発器ファンの電圧Vf及び通風経路の状態Asを変数とする関数Q=i(Ta,Tt,Vf,As)にて演算することができる。すなわち、通風系路の状態Asが外気導入モードである場合には、外気温度Ta及び電圧Vfを変数として熱負荷Qを演算することができる。一方、通風系路の状態Asが内気循環モードである場合には、車室内温度Tt及び電圧Vfを変数として熱負荷Qを演算することができる。
【0087】
このため、実験式:Pse=j(Pd,SC,Ta,Tt,Vf,As,SH,Ncn)によっても、推定吸入圧力Pseを演算することができる。
なお、外気及び車室内の湿度が判れば、蒸発器18の熱負荷Qの演算精度が向上するため、外部情報検知手段に、外気湿度センサ及び車室内湿度センサを更に含ませ、外気及び車室内の湿度に更に基づいて熱負荷Qを検知しても良い。
【0088】
また、外気導入モードにおいて、車速Vsが所定値以上の場合、蒸発器18の送風量に車速Vsの影響が及ぶ。このため、外部情報検知手段に車速センサを更に含ませ、外気温度Ta、車室内温度Tt、電圧Vf及び車速Vsを変数として含む関数Q=k(Ta,Tt,Vf,Vs,As)によって熱負荷Qを演算してもよい。
また、膨張器16の入口の冷媒の過冷度SCは、温度自動膨張弁である膨張器16を使用した冷凍サイクル10では大きく変化しない。このため、例えば、適当な概算値を予め設定しておき、この概算値を他の既知の変数である吐出圧力Pd、外気温度Ta、電圧Vf及び通風経路の状態As等で補正すれば、十分な精度で過冷度SCを演算することができる。
【0089】
従って、実験式:Pse=l(Pd,Ta,Tt,Vf,As,SH,Ncn)によっても、推定吸入圧力Pseを演算することができる。
以上をまとめると、吸入圧力推定手段414は、実験式:Pse=h(Pd,SC,Q,SH,Ncn)のみならず、その変形である実験式:Pse=l(Pd,Ta,Tt,Vf,As,SH,Ncn)等によっても、推定吸入圧力Pseを演算することができる。
【0090】
そこで、本実施形態では、外部情報検知手段、吐出圧力検知手段、過熱度検知手段及び圧縮機回転数検知手段によって検知された、吐出圧力Pd、外気温度Ta、車室内温度Tt、蒸発器ファンの電圧Vf、過熱度SH及び圧縮機100の回転数Ncnを、予め求めておいた実験式:Pse=l(Pd,Ta,Tt,Vf,As,SH,Ncn)に代入することにより、推定吸入圧力Pseを演算する。この場合、既存のセンサを外部情報検知手段として用いながら、圧縮機100が最大吐出容量で運転されている状態における吸入圧力Psの推定値をほぼ正確に推定することができる。
【0091】
なお、前述したようにPd=f(Ph)であり且つSH=g(Ph,Q)であるため、実験式:Pse=m(Ph,Ta,Tt,Vf,As,Ncn)によっても、推定吸入圧力Pseを演算することができる。この場合も、既存のセンサを外部情報検知手段として用いながら、圧縮機100が最大吐出容量で運転されている状態における吸入圧力Psの推定値をほぼ正確に推定することができる。
【0092】
また、制御装置400Aは、目標吸入圧力設定手段420、制御信号制限手段422及びソレノイド駆動手段424を有する。
目標吸入圧力設定手段420は目標吸入圧力Pssを設定する。目標吸入圧力Pssは、制御目標となる吸入圧力Psの目標値である。
本実施形態では、目標吸入圧力設定手段420は、蒸発器温度センサ402によって実際に検知された蒸発器出口空気温度Teと、蒸発器目標温度設定手段401によって設定された蒸発器目標出口空気温度Tesとの偏差ΔTに基づいて、目標吸入圧力Pssを設定する。すなわち、目標吸入圧力設定手段420は、蒸発器出口空気温度Teが蒸発器目標出口空気温度Tesに近付くように、目標吸入圧力Pssを設定する。
【0093】
つまり、目標吸入圧力設定手段420にとって、蒸発器温度センサ402及び蒸発器目標温度設定手段401は、外部情報としての蒸発器出口空気温度Te及びその目標値である蒸発器目標出口空気温度Tesをそれぞれ提供する外部情報検知手段である。
なお、目標吸入圧力Pssを設定すれば、図6及び式(4)に示したように制御電流Iが定まることから、目標吸入圧力設定手段420が目標吸入圧力Pssを設定することには、制御電流I若しくは制御電流Iに関連するパラメータとしてのデューティ比を設定することが含まれる。
【0094】
例えば、目標吸入圧力設定手段420は、PI制御又はPID制御に則して制御電流Iを演算することができる。演算された制御電流Iは、予め定められた上下限の範囲内に制限されていてもよい。そして、目標吸入圧力設定手段420は、演算された制御電流I若しくは当該制御電流Iに関連するパラメータとしてのデューティ比に対応する信号(吐出容量制御信号)を生成し、制御信号制限手段422に入力する。
【0095】
制御信号制限手段422には、吐出容量制御信号とともに、吸入圧力推定手段414によって演算された推定吸入圧力Pseも入力される。制御信号制限手段422は、吐出容量制御信号及び推定吸入圧力Pseに基づいて、必要に応じて吐出容量制御信号に所定の制限を加える。そして、制御信号制限手段422は、吐出容量制御信号をソレノイド駆動手段424に入力する。
【0096】
具体的には、制御信号制限手段422は閾値設定手段を含み、閾値設定手段は、目標吸入圧力設定手段420で演算された目標吸入圧力Pss若しくは制御電流Iを基準として、閾値を設定する。閾値は、目標吸入圧力Pssそのものであってもよいが、目標吸入圧力Pssのばらつき範囲を考慮して設定することができる。例えば、閾値は、目標吸入圧力Pssのばらつき範囲の上限値PssH又は下限PssLであってもよい。目標吸入圧力Pssのばらつきは、容量制御弁200の生産時における部品寸法公差等により発生する。
【0097】
なお、上限値PssH又は下限値PssLと目標吸入圧力Pssとの差は、図6に示したように、制御電流Iの大小に基づいて変化させてもよい。
また、制御信号制限手段422は指標設定手段を含み、指標設定手段は、吸入圧力推定手段414で演算された推定吸入圧力Pseを基準として指標を設定する。指標は、推定吸入圧力Pseそのものであってもよいが、推定吸入圧力Pseのばらつき範囲を考慮して設定することができる。例えば、指標は、推定吸入圧力Pseのばらつき範囲の上限値PseH又は下限値PseLであってもよい。
【0098】
それから、制御信号制限手段422は比較手段を含み、比較手段は閾値と指標とを比較する。制御信号制限手段422は、比較の結果として閾値が指標よりも小さい場合には、ソレノイド254に供給される制御電流I若しくは当該制御電流のデューティ比が、閾値に対応する制御電流I若しくは当該制御電流Iのデューティ比よりも小さくなるよう吐出容量制御信号を変更する。そして、制御信号制限手段422は、変更した吐出容量制御信号をソレノイド駆動手段424に入力する。
【0099】
なお、閾値に対応する制御電流Iとは、制御電流Iをソレノイド254に供給したときに、感圧器228によるフィードバック制御における吸入圧力Psの基準値が閾値と等しくなる電流であり、換言すれば、吸入圧力Psが閾値に到達するために必要な電流である。
好ましくは、図6に示したように、制御信号制限手段422は、閾値が指標よりも小さい場合には、ソレノイド254に供給される制御電流I若しくは当該制御電流Iのデューティ比が、指標に対応する制御電流Ii若しくはデューティ比になるよう、吐出容量制御信号を変更する。
【0100】
閾値の場合と同様に、指標に対応する制御電流Iiは、制御電流Iをソレノイド254に供給したときに、感圧器228によるフィードバック制御における吸入圧力Psの基準値が指標と等しくなる電流であり、換言すれば、吸入圧力Psが指標に到達するのに必要な電流である。
一方、制御信号制限手段422は、閾値が指標に等しいかそれよりも大きい場合には、吐出容量制御信号を変更せずに、目標吸入圧力設定手段420から入力された吐出容量制御信号をソレノイド駆動手段424に入力する。
【0101】
ソレノイド駆動手段424は、吐出容量制御信号に基づき、ソレノイド254に制御電流Iを供給し、容量制御弁200を駆動する。つまり、制御信号制限手段422及びソレノイド駆動手段424は制御電流調整手段を構成し、制御電流調整手段は、目標吸入圧力設定手段420によって設定された目標吸入圧力Pss及び吸入圧力推定手段によって演算された推定吸入圧力Pseに基づいて、容量制御弁200のソレノイド254に供給される制御電流I若しくは当該制御電流Iに関連するパラメータを調整する。
【0102】
図8は、ソレノイド駆動手段424の構成を示す。
ソレノイド駆動手段424は、スイッチング素子430を有し、スイッチング素子430は、電源450とアースとの間を延びる電源ラインに、容量制御弁200のソレノイド254と直列に介挿されている。スイッチング素子430は、電源ラインを電気的に断続可能であり、スイッチング素子430の動作によって、所定の駆動周波数(例えば400〜500Hz)のPWM(パルス幅変調)にてソレノイド254に制御電流Iが供給される。
【0103】
なお、フライホイール回路を形成すべく、ソレノイド254と並列にダイオード432が接続される。
スイッチング素子430には、制御信号発生手段434から所定の駆動信号が入力され、この信号に対応して、PWMにおけるデューティ比が変更される。
また、電源ラインには、電流センサ436が介挿され、電流センサ436は、ソレノイド254を流れる制御電流Iを検知する。電流センサ436は、制御電流Iに相当する物理量を検知可能であれば電流計に限られず、電圧計であってもよい。
【0104】
電流センサ436は、制御電流比較判定手段438に検知した制御電流Iを入力し、制御電流比較判定手段438は、制御信号制限手段422から吐出容量制御信号として入力された制御電流Iと、電流センサ436によって検知された制御電流Iとを比較する。そして、制御電流比較判定手段438は、比較結果に基づいて、検知された制御電流Iが入力された制御電流Iに近付くように、制御信号発生手段434が発生する駆動信号を変更する。
【0105】
すなわち、ソレノイド駆動手段424は、所定の駆動周波数(例えば400〜500Hz)のPWM(パルス幅変調)にてデューティ比を変更することで、ソレノイド254に供給される制御電流Iを調整する。そして、ソレノイド駆動手段424は、ソレノイド254に流れる制御電流Iを検知して、検知した制御電流Iが制御信号制限手段422から入力された制御電流Iに近付くようにフィードバック制御する。
【0106】
なお、ソレノイド駆動手段424がデューティ比で制御電流Iを調整する場合、制御信号制限手段422は、制御電流Iと関連を有するパラメータとしてデューティ比を演算してもよく、この場合、制御信号制限手段422によって生成される吐出容量制御信号は、ソレノイド駆動手段424に所定のデューティ比で制御電流Iを供給させるための信号である。
【0107】
つまり、吐出容量制御信号は、制御電流Iに対応する信号であってもよいし、制御電流Iと関連のあるデューティ比等のパラメータに対応する信号であってもよい。
以下、上述した車両用空調システムの動作(使用方法)を説明する。
図9は、制御装置400Aが実行するプログラムのメインルーチンを示している。メインルーチンは、例えば車両のエンジンキーがオン状態になると起動され、オフ状態になると停止される。
【0108】
メインルーチンでは、起動すると先ず、初期条件が設定される(S10)。具体的には、ソレノイド254に供給される制御電流Iが、初期値Iに設定される。初期値Iが供給されている間、容量制御弁200は開いた状態にあり、圧縮機100の容量は、機械的に決定される最小容量になる。初期値Iはゼロであってもよい。
なお、圧縮機100の容量が最小であるとき、逆止弁170の前後の圧力差は所定値よりも低く、圧縮機100は冷凍サイクル10に冷媒を吐出することができない。このため、最小の吐出容量でシリンダボア101aから吐出室142に吐出された冷媒は、吐出室142から給気経路160を経てクランク室105に流入し、次いで、クランク室105から抽気通路162を経て吸入室140に戻る。つまり、圧縮機100の容量が最小であるとき、冷媒は圧縮機100の内部を循環する。
【0109】
S10の後、車両用空調システムのエアコンスイッチ(A/C)がオンであるか否かが判定される(S12)。即ち、乗員が、車室の冷房又は除湿を要求しているか否かが判定される。エアコンスイッチがオフの場合(Noの場合)、メインルーチンはS10に戻る。エアコンスイッチがオンの場合(Yesの場合)、サブルーチンである吸入圧力制御ルーチンS14が実行される。
【0110】
図10は、吸入圧力制御ルーチンS14の詳細を示すフローチャートである。
吸入圧力制御ルーチンS14では、圧縮機100の吐出容量制御の目標となる蒸発器目標出口空気温度Tesが設定され読み込まれる(S100)とともに、蒸発器温度センサ402によって検知された蒸発器出口空気温度Teが読み込まれる(S102)。
それから、蒸発器目標出口空気温度Tesと、実際の蒸発器出口空気温度Teとの偏差ΔTが演算される(S104)。演算された偏差ΔTに基づいて、例えばPI制御のための所定の演算式により制御電流Iが演算される(S106)。
【0111】
なお、S106の演算式中、制御電流Iが含まれているが、制御電流Iの初期値はIである。また、吸入圧力制御ルーチンS14を1回実行するごとに、S104で偏差ΔTが演算され、S106の演算式中の偏差ΔTの添字nは、偏差ΔTが今回のS104で演算されたものであることを示す。同様に添字n−1は、偏差ΔTが前回のS104で演算されたものであることを示す。
【0112】
ここで、前述したように、制御電流Iが決まれば、目標吸入圧力Pssを一義的に決定可能であることから、S106で制御電流Iを演算することは、目標吸入圧力Pssを設定することに相当する。
この後、演算された制御電流Iは、予め設定された下限値I1以上であるか否か比較判定される(S108)。S108の判定結果がNoであれば、下限値I1が制御電流Iとして読み込まれる(S110)。S108の判定結果がYesであれば、演算された制御電流Iは、予め設定された上限値I2以下であるか否か比較判定される(S112)。S112の判定結果がNoであれば、上限値I2が制御電流Iとして読み込まれる(S114)。
【0113】
従って、S106で演算された制御電流Iは、下限値I1以上で且つ上限値I2以下であればそのまま維持され、それ以外の場合には、下限値I1又は上限値I2で置換される。
一方、吸入圧力制御ルーチンS14では、S106で設定された目標吸入圧力Pssに基づいて閾値が設定される(S116)。本実施形態では、例えば、目標吸入圧力Pssのばらつき範囲の下限値PssLが閾値として設定される。
【0114】
また、外部情報検知手段によって検知された外部情報に基づいて、圧縮機100が最大容量で作動していると仮定したときの、吸入圧力Psの推定値である推定吸入圧力Pseが演算される(S118)。そして、演算された推定吸入圧力Pseに基づいて、指標が設定される。本実施形態では、例えば、推定吸入圧力Pseのばらつき範囲の上限値PseHが指標として設定される(S120)。
【0115】
この後、閾値が指標以上であるか否か比較判定される(S122)。S122の判定の結果がYesの場合、S106で演算された制御電流I、又は、下限値I1若しくは上限値I2で置換された制御電流Iが出力される(S124)。
S122の判定の結果がNoの場合、S120で設定された指標に対応する制御電流Iiが演算され、演算された制御電流Iiが制御電流Iとして読み込まれる(S126)。そして、S126で読み込まれた制御電流IがS124で出力される。ソレノイド駆動手段は、S124で出力された制御電流Iに近付くように、ソレノイド254に実際に供給される制御電流Iを調整する。
【0116】
かくして、エアコンスイッチがオン状態の場合、容量制御弁200のソレノイドユニット254に対し、初期値Iよりも大きな制御電流Iが供給される。制御電流Iによって発生した電磁力F(I)は、制御電流Iに対応した弁開度にて容量制御弁200を閉じる。これによって、吐出室142とクランク室105との間の給気通路160が断続的若しくは連続的に遮断され、クランク圧力Pcが低下する。特に、エアコンスイッチがオフ状態からオン状態に切り替えられた直後、換言すれば、圧縮機100の起動直後には、給気通路160は略連続的に遮断され、クランク圧力Pcが吸入圧力Psまで低下する。
【0117】
制御圧力としてのクランク圧力Pcの低下に伴い、斜板107の傾角が増してピストン130のストロークが増大する。特に、エアコンスイッチがオン状態に切り替えられた直後には、圧縮機100の吐出容量は最大になる。この結果として、吐出室142の圧力が高まり、逆止弁170の前後差圧が所定値を超えると、逆止弁170が開弁して圧縮機100から冷媒が吐出される。
【0118】
上述した容量制御システムAによれば、吸入圧力Psの目標値が目標吸入圧力Pssに設定されていても、S122の判定結果において閾値が指標よりも低ければ、指標に対応する制御電流Iiが制御電流Iとしてソレノイド254に供給される。図6の制御電流Iと目標吸入圧力Pssとの関係を参照すれば、ソレノイド254に制御電流Iiが供給されることで、吸入圧力Psが指標に近付く。
【0119】
そして、吸入圧力Psは、吸入圧力制御ルーチンS14が繰り返される間に徐々に低下するため、推定吸入圧力Pse及び指標も徐々に小さくなる。最終的には、S122の判定結果において、閾値が指標以上になる。
閾値が指標以上になると、目標吸入圧力Pssに対応する制御電流Iがソレノイド254に供給される。ソレノイド254に制御電流Iが供給されることで、吸入圧力Psが目標吸入圧力Pssに近付く。そして、吸入圧力Psが目標吸入圧力Pssに近付くと、感圧器228が伸縮することによって、吸入圧力Psが目標吸入圧力Pssに維持される。そしてこの結果として、蒸発器出口空気温度Teが蒸発器目標出口空気温度Tesに近付くように吐出容量が制御されるため、車室の温度が高精度にて制御され、車室の快適性が確保される。
【0120】
上述した容量制御システムAでは、制御電流調整手段を構成する制御信号制限手段422は、閾値が指標よりも低いとき、吸入圧力Psが閾値に到達するために必要な制御電流I若しくは当該制御電流に関連するパラメータに比べ、ソレノイド254に供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを小さくする。
具体的には、容量制御システムAでは、制御電流調整手段は、閾値が指標よりも低いときに、吸入圧力Psが指標に到達するのに必要な制御電流Iiまで、ソレノイド254に供給される制御電流I若しくは当該制御電流Iに関連するパラメータを小さくする。これにより、図6を参照すると、ΔIだけ制御電流Iが削減される。この結果として、容量制御システムAでは、圧縮機100が最大吐出容量で動作しているときに、ソレノイド254に過剰な制御電流Iが供給されるのが防止され、容量制御弁200における消費電力が削減される。
【0121】
従来の容量制御システムにおいて、ソレノイドに過剰な制御電流Iが供給されていたのは、可変容量圧縮機には機械的に定まる最大吐出容量があることを考慮せずに、目標吸入圧力Pssのみに基づいて制御電流Iを決定していたからである。すなわち、吐出容量が最大吐出容量になる最大容量通電量を超えてソレノイドに通電したとしても、最大吐出容量を超えて吐出容量が増大することはないことが考慮されていなかったのである。
【0122】
これに対し、容量制御システムAでは、目標吸入圧力Pss及び推定吸入圧力Pseに基づいて制御電流Iを調整することによって、最大容量通電量を超えて制御電流Iを供給することを防止し、これにより容量制御弁200における消費電力の削減を図っているのである。
また、容量制御システムAでは、吸入圧力推定手段414が、吐出圧力検知手段で検知された吐出圧力Pdと、過熱度検知手段で検知された過熱度SHと、外気温度センサ404で検知された外気温度Taと、車内温度センサ405で検知された車室内温度Ttと、蒸発器ファン電圧検知手段406で検知された電圧Vfと、内外気切換ドア位置検知手段407で検知された通風系路の状態Asと、エンジン回転数センサ408で検知された圧縮機回転数Ncnに基づいて推定吸入圧力Pseを演算することにより、吸入圧力Psが精度良く推定される。
【0123】
一方、吐出圧力検知手段、外気温度センサ404、車内温度センサ405、蒸発器ファン電圧検知手段406、内外気切換ドア位置検知手段407及びエンジン回転数センサ408はいずれも特殊な手段ではなく、空調システムの構成が複雑になることはない。
これらの結果として、容量制御システムAによれば、簡単な構成にて、ソレノイド254に供給される過剰な制御電流Iが確実に削減され、容量制御弁200における消費電力が削減される。
【0124】
なお、容量制御システムAでは、過熱度検知手段が、膨張器16の入口での冷媒の圧力Pinに基づいて過熱度SHを演算することによって、過熱度SHひいては推定吸入圧力Pseの推定精度が一層高くなる。これにより、簡単な構成にて、ソレノイド254に供給される過剰な制御電流Iが確実に削減され、容量制御弁200における消費電力が削減される。
【0125】
容量制御システムAが適用された圧縮機100は、往復動型であり、斜板107の最小傾角で規定されるピストン130のストロークを非常に小さく設定できる。このため、最小吐出容量が非常に小さく、吐出容量の機械的な可変範囲が広い。このため、圧縮機100に容量制御システムAをすれば、圧縮機100の吐出容量の可変範囲が広く且つ消費電力が削減された空調システムを提供することができる。
【0126】
以下、本発明の第2実施形態の容量制御システムBについて説明する。
容量制御システムBは、容量制御弁200に代えて、図11に示された容量制御弁300を用いて圧縮機100の吐出容量を制御する。
より詳しくは、容量制御弁300は、弁ユニットと弁ユニットを開閉作動させる駆動ユニットとからなる。弁ユニットは、円筒状の弁ハウジング301を有し、弁ハウジング301の一端には入口ポート(弁孔301a)が形成されている。弁孔301aは、給気通路160の上流側部分を介して吐出室142と連通し、且つ、弁ハウジング301の内部に区画された弁室303に開口している。
【0127】
弁室303内には、円柱状の弁体304が収容されている。弁体304は、弁室303内を弁ハウジング301の軸線方向に移動可能であり、弁ハウジング301の端面に当接することで弁孔301aを閉塞可能である。すなわち、弁ハウジング301の端面は弁座として機能する。
また、弁ハウジング301の外周面には出口ポート301bが形成され、出口ポート301bは、給気通路160の下流側部分を介してクランク室105と連通する。出口ポート301bも弁室303に開口しており、弁孔301a、弁室303及び出口ポート301bを通じて、吐出室142とクランク室105とは連通可能である。
【0128】
駆動ユニットは円筒状のソレノイドハウジング310を有し、ソレノイドハウジング310は弁ハウジング301の他端に同軸的に連結されている。ソレノイドハウジング310の開口端は、エンドキャップ312によって閉塞され、ソレノイドハウジング310内には、ボビン314に巻回されたソレノイド316が収容されている。
またソレノイドハウジング310内には、同心上に円筒状の固定コア318が収容され、固定コア318は、弁ハウジング301からエンドキャップ312に向けてソレノイド316の中央まで延びている。固定コア318のエンドキャップ312側はスリーブ320によって囲まれ、スリーブ320は、エンドキャップ312側に閉塞端を有する。
【0129】
固定コア318は、中央に挿通孔318aを有し、挿通孔318aの一端は弁室303に開口している。また、固定コア318とスリーブ320の閉塞端との間には、円筒状の可動コア322を収容する可動コア収容空間324が規定され、挿通孔318aの他端は、可動コア収容空間324に開口している。
挿通孔318aには、ソレノイドロッド326が摺動可能に挿通され、ソレノイドロッド326の一端に弁体304が一体且つ同軸的に連結されている。ソレノイドロッド326の他端は可動コア収容空間324内に突出し、ソレノイドロッド326の他端部は、可動コア322に形成された貫通孔に嵌合され、ソレノイドロッド326と可動コア322とは一体化されている。また、可動コア322の段差面と固定コア318の端面との間には、開放ばね328が配置され、可動コア322と固定コア318との間には所定の隙間が確保されている。
【0130】
可動コア322、固定コア318、ソレノイドハウジング310及びエンドキャップ312は磁性材料で形成され、磁気回路を構成する。スリーブ320は非磁性材料のステンレス系材料で形成されている。
ソレノイドハウジング310には感圧ポート310aが形成され、感圧ポート310aには、感圧通路166を介して吸入室140が接続されている。固定コア318の外周面には、軸線方向に延びる感圧溝318bが形成され、感圧ポート310aと感圧溝318bとは互いに連通している。従って、感圧ポート310a及び感圧溝318bを通じて、吸入室140と可動コア収容空間324とが連通し、ソレノイドロッド326を介して、弁体304の背面側には、閉弁方向に吸入室140の圧力、則ち吸入圧力Psが作用する。
【0131】
ソレノイド316には、圧縮機100の外部に設けられた制御装置400Bが接続され、制御装置400Bから制御電流Iが供給されると、ソレノイド316は電磁力G(I)を発生する。ソレノイド316の電磁力G(I)は、可動コア322を固定コア318に向けて吸引し、弁体304に対して閉弁方向に作用する。
容量制御弁300にあっては、好ましくは、弁体304が弁孔301aを閉じた時に吐出室142の圧力、則ち吐出圧力Pdが作用する弁体304の受圧面積(シール面積Svと呼ぶ)と、吸入圧力Psが作用する弁体304の面積、即ちソレノイドロッド326の断面積とが同等に形成される。
【0132】
この場合、弁体304には、開閉方向にクランク室105の圧力、則ちクランク圧力Pcは、実質的にほとんど作用しない。従って、弁体304に作用する力は、吐出圧力Pdと、吸入圧力Psと、ソレノイド316の電磁力G(I)と、開放ばね328の付勢力fs5であり、吐出圧力Pd及び開放ばね328の付勢力fs5は開弁方向、それ以外の吸入圧力Ps及びソレノイド316の電磁力G(I)は、開弁方向とは対抗する閉弁方向に作用する。
【0133】
この関係は、式(5)で示され、式(5)を変形すると式(6)となる。これらの式(5)、(6)から、吐出圧力Pdと、電磁力G(I)即ち制御電流Iが決まれば、吸入圧力Psが決まることがわかる。
【0134】
【数2】

【0135】
このような関係に基づけば、図12に示したように、吸入圧力Psの目標値として目標吸入圧力Pssを予め決定し、変動する吐出圧力Pdの情報がわかれば、発生させるべき電磁力G(I)つまり制御電流Iを演算できる。そして、ソレノイド316に供給される制御電流Iをこの演算された制御電流Iに等しくなるよう調整すれば、吸入圧力Psが目標吸入圧力Pssに近付くように弁体304が動作し、クランク圧力Pcが調整される。すなわち、吸入圧力Psが目標吸入圧力Pssに近付くように吐出容量が制御される。
【0136】
このように吸入圧力Psを目標吸入圧力Pssに近付けるような制御では、図12を参照すれば、吐出圧力Pdの高低に応じて、目標吸入圧力Pssの設定範囲、換言すれば吸入圧力Psの制御範囲を高低スライド可能である。すなわち、任意の吐出圧力Pd1のときの吸入圧力Psの制御範囲は、吐出圧力Pd1よりも低い吐出圧力Pd2のときの吸入圧力Psの制御範囲よりも高圧側にスライドさせられる。
【0137】
また式(6)から、シール面積Svを小さく設定すれば、小さな電磁力G(I)で、任意の吐出圧力Pdにおける目標吸入圧力Pssの制御範囲を拡大可能であることがわかる。上記目標吸入圧力Pssの制御範囲のスライドと、この制御範囲の拡大との相乗効果を発揮させれば、目標吸入圧力Pssの制御範囲が大幅に拡大される。
なお、ソレノイド316への通電量を増加させると、吸入圧力Psを低下させることができる。一方、ソレノイド316への通電量をゼロとすれば、開放ばね328の付勢力fs5により弁体304が離間して弁孔301aが強制開放される。これにより吐出室142からクランク室105に冷媒が導入され、吐出容量は最小に維持される。
【0138】
図13は、制御装置400Bを含む容量制御システムBの概略構成を示したブロック図である。
容量制御システムBは、目標吸入圧力設定手段420に代えて、目標吸入圧力設定手段426及び制御信号演算手段428を有する点において、容量制御システムAとは異なる。よって、以下では、目標吸入圧力設定手段426及び制御信号演算手段428について説明する。
【0139】
目標吸入圧力設定手段426は、蒸発器温度センサ402によって実際に検知された蒸発器出口空気温度Teと、蒸発器目標温度設定手段401によって設定された蒸発器目標出口空気温度Tesとの偏差ΔTに基づいて、制御目標となる吸入圧力Psの目標値である目標吸入圧力Pssを設定する。
容量制御システムAの目標吸入圧力設定手段420は、制御電流Iも設定したが、容量制御システムBの目標吸入圧力設定手段426は、目標吸入圧力Pssを設定するのみである。そして、設定された目標吸入圧力Pssは、制御信号演算手段428に入力される。
【0140】
制御信号設定手段428は、目標吸入圧力設定手段420によって設定された目標吸入圧力Pssと、吐出圧力検知手段によって検知された吐出圧力Pdとに基づいて、ソレノイド316に供給されるべき制御電流Iを演算する。演算された制御電流Iは、予め定められた上下限の範囲内に制限されていてもよい。そして、制御信号設定手段428は、演算された制御電流I若しくは当該制御電流Iに関連するパラメータとしてのデューティ比に対応する信号(吐出容量制御信号)を生成し、制御信号制限手段422に入力する。
【0141】
以下、上述した容量制御システムBの動作(使用方法)を説明する。
制御装置400Bが実行するメインルーチンは、制御装置400Aが実行するメインルーチンと略同じである。図9を参照すると、制御装置400Bが実行するメインルーチンの初期条件設定S16では、ソレノイド316に供給される制御電流Iが、圧縮機100の吐出容量が最小容量となる初期値Iに設定される。
【0142】
ただし、制御装置400Bが実行する吸入圧力制御ルーチンS18は、制御装置400Aが実行する吸入圧力制御ルーチンS14とは相違する。このためS16では、更に、フラグF1がゼロに設定されるとともに、タイマがゼロにリセットされる。また、S16では、目標吸入圧力Pssが初期値Pssに設定される。初期値Pssは、例えば、外気温度Taに応じて次式により設定される。
【0143】
Pss0=K1・Ta+K2 (K1,K2は定数)
図14は、容量制御システムBが実行する吸入圧力制御ルーチンS18の詳細を示すフローチャートである。
吸入圧力制御ルーチンS18では、吐出圧力検知手段によって検知された吐出圧力Pdが読み込まれる(S150)。
【0144】
また、吸入圧力制御ルーチンS18では、フラグF1が0であるか否かが判定される(S152)。初期条件ではフラグF1は0であるので判定結果はYesとなり、タイマがスタートさせられて経過時間tの計測が開始され(S154)、フラグF1が1に設定される(S156)。
それから、目標吸入圧力設定ルーチンS158で制御目標となる目標吸入圧力Pssが設定される。この後、S158で設定された目標吸入圧力Pssと、吐出圧力検知手段によって検知された吐出圧力Pdとから所定の演算式により、ソレノイド316へ通電される制御電流Iが演算される(S160)。例えば図14に示したように、制御電流Iは、吐出圧力Pdと目標吸入圧力Pssとの差に比例定数b1を乗じた値に定数b2を足した値として演算される。
【0145】
S160で演算された制御電流Iは、予め設定された下限値I3以上であるか否か比較判定される(S162)。S162の判定の結果、演算された制御電流Iが下限値I3よりも小さい場合(Noの場合)、下限値I3が制御電流Iとして読み込まれる(S164)。
一方、S162の判定の結果、演算された制御電流Iが下限値I3以上であれば(Yesの場合)、演算された制御電流Iは、予め設定された下限値I3より大きい上限値I4以下であるか否か比較判定される(S166)。S166の判定の結果、制御電流Iが上限値I4を超えていれば(Noの場合)、上限値I4が制御電流Iとして読み込まれる(S168)。
【0146】
以下、閾値の設定(S170)、推定吸入圧力Pseの演算(S172)、指標の設定(S174)、閾値と指標との比較判定(S176)、指標に対応する制御電流Iiでの制御電流Iの置換(S180)及び制御電流Iの出力(S178)は、容量制御システムAのメインルーチンにおけるS112〜S126の場合と略同じである。
ただし、S170の閾値の設定では、S158で設定された目標吸入圧力Pssに基づいて閾値が設定され、本実施形態では、例えば、目標吸入圧力Pssのばらつき範囲の下限値PssLが閾値として設定される。
【0147】
また、S180において、指標に対応する制御電流Iiで制御電流Iを置換するときには、S160の場合と同様に、次式:
Ii=b1・(Pd-PseH)+b2 (b1,b2定数)
に基づいて制御電流Iiが演算される。そして、演算された制御電流Iiで制御電流Iが置換される。
【0148】
S178の後、プログラムは吸入圧力制御ルーチンS18からメインルーチンに戻り、S12の判定結果がYesであれば、2回目の吸入圧力制御ルーチンS18が実行される。
2回目の吸入圧力制御ルーチンS18では、前回のS156でフラグF1が1に設定されたためS152の判定結果がNoとなり、タイマにより計測された経過時間tが所定時間t1に到達したか否かが判定される(S182)。S182の判定の結果、タイマのスタートから所定時間t1経過していなければ(Yesの場合)、前回のS158で設定された目標吸入圧力Pssと今回のS150で読み込まれた吐出圧力Pdから制御電流Iが演算される(S160)。この後、初回と同様にS178を経由し、制御装置400Bはメインルーチンに戻る。
【0149】
一方、タイマの経過時間tが所定時間t1を超えると、S182の判定結果がNoとなり、タイマがリセットされ(S184)、フラグF1が0に設定される(S186)。つまり目標吸入圧力Pssは所定時間t1毎に更新される。この更新時間としての所定時間t1は、例えば5秒に設定される。
つまり制御装置400Bでは、常時読込まれる吐出圧力Pdと、所定時間t1ごとに更新される目標吸入圧力Pssとに基づいて、吸入圧力Psが目標吸入圧力Pssを維持するように制御電流Iが演算される。そして、閾値が指標よりも小さければ、ソレノイド316には、吐出圧力Pd及び目標吸入圧力Pssに基づいて演算された制御電流Iではなく、吐出圧力Pd及び指標に基づいて演算された制御電流Iiが供給される。
【0150】
図15は、図14中の目標吸入圧力設定ルーチンS158の詳細を示すフローチャートである。
目標吸入圧力設定ルーチンS158における、蒸発器目標出口空気温度Tesの設定読込み(S200)、蒸発器出口空気温度の読込み(S202)及び偏差ΔTの演算(S204)は、容量制御システムAの吸入圧力制御ルーチンS14におけるS100、S102及びS104とそれぞれ同じである。
【0151】
そして、演算された偏差ΔTに基づいて、例えばPI制御のための所定の演算式により目標吸入圧力Pssが演算される(S206)。
なお、S206の演算式中、目標吸入圧力Pssが含まれているが、目標吸入圧力Pssの初期値はPssである。
また、目標吸入圧力設定ルーチンS158を1回実行するごとに、S204で偏差ΔTが演算され、S206の演算式中の偏差ΔTの添字nは、偏差ΔTが今回のS204で演算されたものであることを示す。同様に添字n−1は、偏差ΔTが前回のS204で演算されたものであることを示す。
【0152】
この後、演算された目標吸入圧力Pssは、予め設定された下限値Ps1以上であるか否か比較判定される(S208)。S208の判定の結果がNoであれば、下限値Ps1が目標吸入圧力Pssとして読み込まれる(S210)。
一方、S208の判定の結果がYesであれば、演算されたPssは、予め設定されたPs1より大きい上限値Ps2以下であるか否か比較判定される(S212)。S212の判定結果がNoであれば、上限値Ps2が目標吸入圧力Pssとして読み込まれる(S214)。
【0153】
従って、S208及びS212の判定の結果、Ps1≦Pss≦Ps2であれば、S203で演算された目標吸入圧力Pssがそのまま目標吸入圧力Pssとして設定される。
上述した容量制御システムBにおいても、閾値が指標よりも小さいときに、ソレノイド316に供給される制御電流Iを指標に対応する制御電流Iiまで小さくすることにより、容量制御弁300の消費電力が削減される。
【0154】
また、容量制御システムBでは、容量制御弁300が、吸入圧力Psを機械的にフィードバック制御するための感圧器228を有さない、簡単な構造を有する。このため圧縮機100における容量制御弁300の装着スペースの確保が容易になるとともに取付け姿勢の自由度が高くなる。
一方、この容量制御システムBでは、感圧器228を有さない容量制御弁300を用いても、目標吸入圧力設定手段426が目標吸入圧力Pssを設定し、目標吸入圧力Pss及び吐出圧力Pdに基づいて制御電流Iを演算することにより、吸入圧力Psが目標吸入圧力Pssに近付くように吐出容量が制御される。
【0155】
更に、この容量制御システムBでは、弁体304に作用する吐出圧力Pdに対し、吸入圧力Psとソレノイド316の電磁力G(I)とが対抗する方向に作用するため、吸入圧力Psの制御範囲が広い。この結果として、この容量制御システムBを備えた空調システムによれば、エアコンスイッチがオンにされた直後から、換言すれば、圧縮機100の起動直後から、容量制御弁300の消費電力が有効に削減される。
【0156】
一方、圧縮機100は、往復動型であり、斜板107の最小傾角で規定されるピストン130のストロークを非常に小さく設定できる。このため、最小吐出容量が非常に小さく、吐出容量の機械的な可変範囲が広い。従って、圧縮機100に容量制御システムBを適用した場合、目標吸入圧力Pssを設定することにより吸入圧力Psの制御範囲を拡大した効果が十分に発揮され、吐出容量の可変範囲が広く且つ消費電力が削減された空調システムを提供することができる。
【0157】
本発明は、上述した第1実施形態及び第2実施形態に限定されることはなく、種々の変形が可能である。
第1及び第2実施形態の容量制御システムA,Bでは、圧力センサ403が吐出圧力領域にて冷媒の圧力を検知したけれども、圧力センサ403を配置する部位は特に限定されず、冷凍サイクル10の高圧領域の何れかの部位に配置してもよい。すなわち、高圧領域の冷媒の圧力に基づいて、推定吸入圧力Pse及び過熱度SHをそれぞれ演算してもよい。なお、高圧領域とは、吐出圧力領域に放熱器14から膨張器16の入口までの領域を加えた領域である。
【0158】
第1及び第2実施形態の容量制御システムA,Bでは、S122の判定結果において閾値が指標よりも低いときに、制御電流Iiを制御電流Iとして出力したけれども、ソレノイド254,316に供給される制御電流Iを制御電流Iiに等しくなるまで小さくしなくても、目標吸入圧力Pssに到達するのに必要な制御電流Iよりも小さくすればよい。制御電流Iを小さくした分だけ容量制御弁200,300の消費電力が削減されるからである。
【0159】
ただし、消費動力をより一層削減するためには、ソレノイド254,316に供給される制御電流Iを制御電流Iiに等しくなるまで小さくするか、若しくは、ソレノイド254,316に供給される制御電流Iを制御電流Iiよりも小さくするのが好ましい。
その上、ソレノイド254,316に供給される制御電流Iを制御電流Iiに等しくなるまで小さくした場合、従来、最大吐出容量で動作していた領域において、圧縮機100が、指標をフィードバック制御の基準とした吐出容量制御状態で確実に動作するため、圧縮機100の消費動力が削減されるとともに信頼性が確保される。
【0160】
また特に、圧縮機100の回転数Ncnが所定値以上であるときに、ソレノイド254,316に供給される制御電流Iを制御電流Iiよりも小さくすれば、吸入圧力Psが目標吸入圧力Pssに到達するまでの時間を増大することなく、圧縮機100の吐出容量を最大吐出容量よりも小さくすることによって、圧縮機100での消費動力が削減される。これは以下の理由による。
【0161】
車両若しくは空調システムの運転状況によっては、吸入圧力Psを目標吸入圧力Pssに近付けるためであっても、圧縮機100の起動直後から圧縮機100を最大吐出容量で動作させる必要がない場合がある。
例えば、車両が高速走行をしているような場合、圧縮機100の回転数Ncnが非常に高くなり、圧縮機100の能力も増大する。しかしながら、空調システムの能力は、空調システム全体の構成によって、特に蒸発器18の能力によって制約を受ける。それ故、圧縮機100の能力が増大したとしても、圧縮機100の能力を十分に活用することができない。従ってこのような場合、圧縮機100が最大吐出容量で動作すると、圧縮機100で動力が無駄に消費される。
【0162】
そこで、圧縮機100の回転数Ncnが所定値以上であるときに、ソレノイド254,316に供給される制御電流Iを制御電流Iiよりも小さくすれば、蒸発器18の能力に合わせて圧縮機100の能力が抑制され、圧縮機100の消費動力を節約することができる。
また特に、圧縮機100の回転数Ncnが所定値以上であり且つ蒸発器18の熱負荷Qが所定値以上であるときに、ソレノイド254,316に供給される制御電流Iを制御電流Iiよりも小さくすれば、圧縮機100での消費動力の削減効果が大であるのみならず、圧縮機100の機械的負荷が軽減される。この結果として、圧縮機100の信頼性も確保される。
【0163】
第1及び第2実施形態の容量制御システムA,Bでは、閾値として、目標吸入圧力Pssのばらつき範囲の下限値PssLが設定されていたけれども、閾値は、目標吸入圧力Pssに基づいて設定されていればよい。従って、閾値として、目標吸入圧力Pss自体若しくは目標吸入圧力Pssのばらつき範囲の上限値PssHを設定してもよい。
また、指標として、推定吸入圧力Pseのばらつき範囲の上限値PseHが設定されていたけれども、指標は、推定吸入圧力Pseに基づいて設定されていればよい。従って、指標として、推定吸入圧力Pse自体若しくは推定吸入圧力Pseのばらつき範囲の下限値PseLを設定してもよい。
【0164】
そして、閾値として、目標吸入圧力Pss、そのばらつき範囲の下限値PssL及び上限値PssHから選択された1つを用いることができ、指標として、推定吸入圧力Pse、そのばらつき範囲の下限値PseL及び上限値PseHから選択された1つを用いることができることから、閾値と指標との組み合わせは9通りある。これらの組み合わせから、閾値と指標との組み合わせを適宜選択することができる。
【0165】
なお、第1及び第2実施形態の容量制御システムA,Bのように、閾値として目標吸入圧力Pssのばらつき範囲の下限値PssLを設定し、指標として推定吸入圧力Pseのばらつき範囲の上限値PseHを設定した場合、最大容量通電量を超える制御電流Iがソレノイド254,316に供給されるのが確実に防止される。これは以下の理由による。
下限値PssLは、容量制御弁200,300の生産時における部品寸法公差等により発生する目標吸入圧力Pssのばらつきの範囲の下限値であることから、下限値PssLは、目標吸入圧力Pssに対応する制御電流Iをソレノイド254,316に供給したときに吸入圧力Psが到達しうる最小値である。
【0166】
一方、上限値PseHは、推定吸入圧力Pseの推定精度により発生する推定吸入圧力Pseのばらつき範囲の上限値であることから、推定吸入圧力Pseを推定している時点において、上限値PseHは、現実の吸入圧力Psがとりうる最大値である。
従って、閾値としての下限値PssLが指標としての上限値PseHよりも低ければ(PssL<PseH)、目標吸入圧力Pssに対応する制御電流Iをソレノイド254,316に供給したときに吸入圧力Psが到達可能な圧力が、推定時点の現実の吸入圧力Psよりも低い可能性がある。このため、PssL<PseHの場合には、圧縮機100が最大吐出容量で作動している可能性があり、圧縮機100が最大吐出容量で作動していれば、ソレノイド254,316に供給される制御電流Iを目標吸入圧力Pssに対応する制御電流Iよりも小さくすることにより、過剰な制御電流Iを削減することができる。
【0167】
従って、PssL<PseHの場合に制御電流Iを小さくすれば、目標吸入圧力Pss及び推定吸入圧力Pseにばらつきがあったとしても、最大容量通電量を超える制御電流Iがソレノイド254,316に供給されるのが確実に防止される。
第1及び第2実施形態の容量制御システムA,Bでは、閾値として、目標吸入圧力Pssのばらつき範囲の上限値PssH又は下限値PssLを設定することができるが、目標吸入圧力Pssと閾値との差は、目標吸入圧力Pssの大小に応じて変化させるのが好ましい。具体的には、目標吸入圧力Pssが大きいほど、目標吸入圧力Pssと閾値との差が大きくなるのが好ましい。容量制御システムA,Bでは、閾値が指標に比べて低いときに、圧縮機100が最大吐出容量で動作していると実質的に判定しており、目標吸入圧力Pssと閾値との差が目標吸入圧力Pssの大小に応じて変化することにより、当該判定精度が向上するからである。そしてこの結果として、圧縮機100が最大吐出容量で動作しているときに、ソレノイド254,316に供給される過剰な制御電流Iが一層確実に削減され、容量制御弁200,300における消費電力が削減される。
【0168】
第1及び第2実施形態の容量制御システムA,Bでは、蒸発器18の熱負荷Qを検知するための熱負荷検知手段の構成は特に限定されない。熱負荷検知手段は、外気温度Ta、外気湿度、日射量、蒸発器ファンの送風量及び当該送風量に関連する蒸発器ファンの電圧Vf、内外気切換ドア位置、車内温度設定、吹き出し口位置、エアミックスドア位置、車室内温度Tt、車室内湿度、空気回路における蒸発器18の入口での空気の温度及び湿度、車室内各部表面温度、冷凍サイクル10の高圧領域及び低圧領域での冷媒の温度、並びに、車両の乗員数等よりなる群から選択された1種以上を用いて、熱負荷Qを検知することができる。ただし、熱負荷Qを精度良く検知するために、熱負荷検知手段は、外気温度センサ404と蒸発器ファン電圧検知手段406とを少なくとも有するのが好ましい。
【0169】
第1及び第2実施形態の容量制御システムA,Bでは、吐出容量制御信号が、制御電流Iを調整するためのデューティ比に対応する場合には、ソレノイド駆動手段424は、電流センサ436を有していなくてもよい。
なおこの場合、容量制御システムAでは、目標吸入圧力Pssとスイッチング素子430を駆動するデューティ比との相関を予め求めておけばよい。蒸発器目標温度設定手段401によって設定された蒸発器目標出口空気温度Tesと蒸発器温度センサ402によって検知された蒸発器出口空気温度Teとの偏差ΔTが決まると、当該相関に基づいて、デューティ比を演算することができる。
【0170】
また、容量制御システムBでは、制御電流Iとデューティ比との相関を予め求めておけば、S160、S180において、当該相関に基づいて直接デューティ比を演算することができる。
第2実施形態の容量制御システムBでは、吸入圧力制御ルーチンS18のS160及びS180において、制御電流Iの演算式としてI=α・Pd−β・Pss+γ(ただしα、β、γは定数)を用いても良いし、演算式に(Pd−Pss)の項を含ませて非線形としても良い。
【0171】
第1及び第2実施形態の容量制御システムA,Bでは、蒸発器温度センサ402を使用しないで、設定された蒸発器目標出口空気温度Tesと、外部情報に基づいて、目標吸入圧力Pssを設定してもよい。
目標吸入圧力Pssの設定に用いられる外部情報としては、蒸発器18の熱負荷Qを検知するために用いられる外部情報と同じものを用いることができ、更には、圧縮機100や車両の運転状態に関する情報を用いることができる。車両の運転状態に関する情報とは、例えば、エンジン114の回転数、車速、加速度等である。
【0172】
第1実施形態の容量制御システムAにおいては、容量制御弁200の弁体210に対し、開閉方向にて、吐出圧力Pd及びクランク圧力Pcが作用していなかったが、吐出圧力Pd又はクランク圧力Pcが開弁方向又は閉弁方向にて弁体に作用する容量制御弁を用いてもよい。
第2実施形態の容量制御システムBにおいては、容量制御弁300の弁体304に対して、吐出圧力Pd及び吸入圧力Psが相互に対抗するように作用するが、吐出圧力Pdと吸入圧力Psとが対抗しているときに、更にクランク圧力Pcが作用してもよい。
【0173】
第2実施形態の容量制御システムBにおいては、容量制御弁300のために、機械的に吸入圧力Psをフィードバック制御する感圧器は不要である。ただし、弁体304に対し、吐出圧力Pd、吸入圧力Ps又は電磁力G(I)を作用させるために、ベローズやダイアフラムを用いてもよい。
例えば、一端が開口し、他端が閉塞した小型のベローズを用いた場合、ベローズの閉塞端を、弁孔301aとは反対側の弁体304の一端に固定する。ソレノイドロッド326先端側の部分は、ベローズの開口端を通じてベローズの内側に挿入され、ソレノイドロッド325の先端をベローズの閉塞端の内面に連結する。これにより、ソレノイドロッド326が弁体304を電磁力G(I)にて付勢可能にする。そして、ベローズの内側の圧力は吸入圧力Psに等しくなるようにし、弁体304に吸入圧力Psを作用させる。
【0174】
第1及び第2実施形態の容量制御システムA,Bが適用された圧縮機100は、クラッチレス圧縮機であったが、容量制御システムA,Bは、電磁クラッチを装着した圧縮機にも適用可能である。圧縮機100は斜板式の往復動圧縮機であったけれども、揺動板式の往復動圧縮機であってもよい。揺動板式の圧縮機は、揺動板を揺動させるための要素を有し、斜板107及びこの要素をまとめて斜板要素という。圧縮機100は、電動モータで駆動されるものであってもよい。
【0175】
更に、容量制御システムA,Bは、スクロール式やベーン式の可変容量圧縮機にも適用可能である。すなわち、弁体にソレノイドの電磁力が作用する容量制御弁を用いて、吐出容量を変化させるための制御圧力を容量制御弁の弁開度によって変化させることができれば、あらゆる可変容量圧縮機に適用可能である。
なお、制御圧力とは、往復動圧縮機の場合には、クランク室の圧力(クランク圧力Pc)である。
【0176】
第1及び第2実施形態の容量制御システムA,Bが適用された圧縮機100では、抽気通路162の流量を規制してクランク圧力Pcを昇圧するために、抽気通路162に絞り要素として固定オリフィス103cを配置したが、絞り要素として、流量可変の絞りを用いてもよく、また、弁を配置して弁開度を調整してもよい。
第1及び第2実施形態の容量制御システムA,Bでは、容量制御弁200,300は、吐出室142とクランク室105との間を繋ぐ給気通路160に配置されていたけれども、圧縮機100が斜板式又は揺動板式の場合、給気通路160に容量制御弁300を配置せずに、クランク室105と吸入室140との間を繋ぐ抽気通路162に容量制御弁を配置してもよい。即ち、給気通路160の開度を制御する入口制御に限定されず、抽気通路162の開度を制御する出口制御であってもよい。
【0177】
第1及び第2実施形態の容量制御システムA,Bに用いられた容量制御弁200,300によれば、制御電流Iが小さくなるほど吸入圧力Psが低下したけれども、制御電流Iが大きくなるほど吸入圧力Psが低下するように動作する容量制御弁を用いてもよい。この場合、目標吸入圧力Pss若しくは閾値が推定吸入圧力Pse若しくは指標よりも低いときに、吐出容量が最大吐出容量以下になるよう、制御電流I若しくは当該制御電流Iに関連するパラメータが大きくされる。従って、かかる容量制御弁を用いた場合には、目標吸入圧力Pss及び推定吸入圧力Pseに基づいて、制御電流I若しくは当該制御電流Iに関連するパラメータを調整したとしても、容量制御弁の消費電力の削減効果は得られないものの、吐出容量を最大吐出容量以下にすることにより、圧縮機100の信頼性が確保される。
【0178】
第1及び第2実施形態の容量制御システムA,Bでは、膨張器16として、温度自動膨張弁を用いたけれども、膨張器16はこれに限定されず、オリフィスや電子膨張弁でもよい。
第1及び第2実施形態の容量制御システムA,Bが適用される冷凍サイクル10では、冷媒はR134aや二酸化炭素に限定されず、その他の新冷媒を使用してもよい。つまり、容量制御システムA,Bは、従来の空調システムにも適用可能である。
【0179】
最後に、本発明に係る可変容量圧縮機の容量制御システムは、車両用空調システム以外の室内用空調システム等、空調システム全般に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】第1実施形態の容量制御システムを適用した車両用空調システムの冷凍サイクルの概略構成を可変容量縮機の縦断面とともに示す図である。
【図2】図1の冷凍サイクルに用いられた膨張器の概略構成を示す縦断面図である。
【図3】図1の冷凍サイクルにおける過熱度特性を示すためのグラフであり、C1は膨張器の入口での冷媒の圧力が一定の場合の蒸発器の出口での冷媒の温度と圧力との関係を示し、C2は膨張器の充填剤の飽和温度と飽和圧力との関係を示す。
【図4】図1の冷凍サイクルにおける、蒸発器の出口での冷媒の過熱度と膨張器の入口での冷媒の圧力との関係を示すグラフである。
【図5】図1の冷凍サイクルに用いられた容量制御弁の概略構成を、圧縮機における容量制御弁の接続状態とともに説明するための図である。
【図6】図1の冷凍サイクルにおける、容量制御弁の制御電流と目標吸入圧力との関係、並びに、閾値及び指標を示すグラフである。
【図7】第1実施形態の容量制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図8】図7の容量制御システムにおける、ソレノイド駆動手段の概略構成を説明するためのブロック図である。
【図9】図7の容量制御システムが実行するメインルーチンを示す制御フローチャートである。
【図10】図9のメインルーチンに含まれる吸入圧力制御ルーチンの制御フローチャートである。
【図11】第2実施形態の容量制御システムに用いられる容量制御弁の概略構成を、圧縮機における容量制御弁の接続状態とともに説明するための図である。
【図12】図11の容量制御弁における、制御電流、目標吸入圧力及び吐出圧力の関係を示すグラフである。
【図13】第2実施形態の容量制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図14】図13の容量制御システムが実行するメインルーチンに含まれる吸入圧力制御ルーチンの制御フローチャートである。
【図15】図14の吸入圧力制御ルーチンに含まれる目標吸入圧力設定ルーチンの制御フローチャートである。
【符号の説明】
【0181】
254 ソレノイド
401 蒸発器目標温度設定手段(外部情報検知手段)
402 蒸発器温度センサ(外部情報検知手段)
403 圧力センサ(外部情報検知手段)
404 外気温度センサ(外部情報検知手段)
405 車内温度センサ(外部情報検知手段)
406 蒸発器ファン電圧検知手段(外部情報検知手段)
407 内外気切換ドア位置検知手段(外部情報検知手段)
408 エンジン回転数センサ(外部情報検知手段)
414 吸入圧力推定手段
420 目標吸入圧力設定手段
422 制御信号制限手段(制御電流調整手段)
424 ソレノイド駆動手段(制御電流調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調システムの冷凍サイクルを構成すべく冷媒が循環する循環路に放熱器、膨張器及び蒸発器とともに介挿される可変容量圧縮機に適用され、吸入圧力を目標吸入圧力に近付けるために制御圧力を調整する容量制御システムにおいて、
1つ以上の外部情報を検知するための外部情報検知手段と、
前記外部情報検知手段によって検知された外部情報に基づいて、前記目標吸入圧力を設定する目標吸入圧力設定手段と、
ソレノイドを有し、前記制御圧力を調整するための容量制御弁と、
前記外部情報検知手段によって検知された外部情報に基づいて、前記可変容量圧縮機の吐出容量が最大であると仮定したときの前記吸入圧力の推定値である推定吸入圧力を演算する吸入圧力推定手段と、
前記目標吸入圧力設定手段によって設定された目標吸入圧力及び前記吸入圧力推定手段によって演算された推定吸入圧力に基づいて、前記容量制御弁のソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを調整する制御電流調整手段と
を具備することを特徴とする可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項2】
前記制御電流調整手段は、
前記目標吸入圧力が前記推定吸入圧力よりも低いとき、前記吸入圧力を前記目標吸入圧力に到達させるために必要な制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータに比べ、前記ソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを小さくする
ことを特徴とする請求項1に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項3】
前記制御電流調整手段は、
前記目標吸入圧力を基準として閾値を設定する閾値設定手段を含み、
前記閾値が前記推定吸入圧力よりも低いとき、前記吸入圧力が前記閾値に到達するために必要な制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータに比べ、前記ソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを小さくする
ことを特徴とする請求項1に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項4】
前記制御電流調整手段は、
前記目標吸入圧力を基準として閾値を設定する閾値設定手段と、
前記推定吸入圧力を基準として指標を設定する指標設定手段とを含み、
前記閾値が前記指標よりも低いとき、前記吸入圧力が前記閾値に到達するために必要な制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータに比べ、前記ソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを小さくする
ことを特徴とする請求項1に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項5】
前記閾値は、前記目標吸入圧力のばらつき範囲の上限値及び下限値のうち一方であり、
前記目標吸入圧力と前記閾値との差は、前記目標吸入圧力の大小に応じて変化する
ことを特徴とする請求項4に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項6】
前記閾値は、前記目標吸入圧力のばらつき範囲の下限値であり、前記指標は、前記推定吸入圧力のばらつき範囲の上限値であることを特徴とする請求項4又は5に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項7】
前記制御電流調整手段は、前記目標吸入圧力若しくは前記閾値が前記推定吸入圧力若しくは前記閾値よりも低いときに、前記吸入圧力が前記推定吸入圧力若しくは前記指標に到達するのに必要な制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータ以下になるよう、前記ソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを小さくすることを特徴とする請求項2乃至6の何れかに記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項8】
前記外部情報検知手段は、前記可変容量圧縮機の回転数に関連を有する物理量を検知する回転数検知手段を有し、
前記制御電流調整手段は、前記回転数検知手段によって検知された物理量が所定値以上であるときに、前記可変容量圧縮機の吐出容量が最大よりも小さくなるように前記ソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを制限する
ことを特徴とする請求項7に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項9】
前記外部情報検知手段は、前記蒸発器の熱負荷を検知する熱負荷検知手段を有し、
前記制御電流調整手段は、前記熱負荷検知手段によって検知された前記蒸発器の熱負荷が所定値以上であるときに、前記可変容量圧縮機の吐出容量が最大よりも小さくなるように前記ソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを制限する
ことを特徴とする請求項8に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項10】
前記吸入圧力推定手段は、前記外部情報検知手段によって検知された外部情報を、当該外部情報と前記推定吸入圧力との間の関係を示す実験式に代入して前記推定吸入圧力を演算することを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項11】
前記外部情報検知手段は、
前記冷凍サイクルの吐出圧力領域の何れかの部位における前記冷媒の圧力である吐出圧力を検知するための吐出圧力検知手段と、
前記蒸発器の熱負荷を検知するための熱負荷検知手段と、
前記蒸発器の出口での前記冷媒の過熱度を検知するための過熱度検知手段と、
前記可変容量圧縮機の回転数に相当する物理量を検知する回転数検知手段とを含み、
前記吸入圧力推定手段は、前記吐出圧力検知手段によって検知された前記吐出圧力と、前記熱負荷検知手段によって検知された前記蒸発器の熱負荷と、前記過熱度検知手段によって検知された前記冷媒の過熱度と、前記回転数検知手段によって検知された前記可変容量圧縮機の回転数に関連する物理量と、前記吸入圧力との関係を示す実験式を用いて前記推定吸入圧力を演算する
ことを特徴とする請求項10に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項12】
前記膨張器は、前記蒸発器の出口での前記冷媒の温度に基づいて前記冷媒の流量を調整する温度自動膨張弁であり、
前記過熱度検知手段は、前記蒸発器の出口での前記冷媒の温度若しくは当該温度に関連する物理量を検知する手段と、前記膨張器の入口での前記冷媒の圧力を検知するための膨張器入口圧力検知手段とを含み、
前記過熱度検知手段は、前記蒸発器の出口での前記冷媒の温度若しく当該温度に関連する物理量と前記膨張器の入口での前記冷媒の圧力に基づいて、前記過熱度を検知する
ことを特徴とする請求項11に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項13】
前記空調システムは車両に適用され、
前記熱負荷検知手段は、
外気温度を検知するための外気温度センサと、
前記蒸発器のためのファンに印加される電圧を検知するための蒸発器ファン電圧検知手段と
を少なくとも含む
ことを特徴とする請求項11に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項14】
前記外部情報検知手段は、前記蒸発器を通過した直後の空気流の温度の目標である蒸発器目標出口空気温度を設定する蒸発器目標出口温度設定手段を含み、
前記目標吸入圧力推定手段は、前記蒸発器を通過した直後の空気流の温度が蒸発器目標出口温度設定手段によって設定された蒸発器目標出口空気温度に近づくように前記目標吸入圧力を設定する
ことを特徴とする請求項1乃至13の何れかに記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項15】
前記容量制御弁は、前記冷凍サイクルの吐出圧力領域の何れかの部位における前記冷媒の圧力を吐出圧力としたときに、前記吐出圧力を受けるとともに、前記吐出圧力と対抗する方向にて前記吸入圧力及び制御圧力のうち一方と前記ソレノイドの電磁力とを受けて弁孔を開閉可能な弁体を有し、前記弁孔を開閉して前記制御圧力を変化させることにより前記可変容量圧縮機の容量を調整可能であり、
前記外部情報検知手段は、前記吐出圧力を検知するための吐出圧力検知手段を含み、
前記制御電流調整手段は、前記吐出圧力検知手段によって検知された吐出圧力と前記目標吸入圧力とに基づいて、前記吸入圧力が前記目標吸入圧力に到達するために必要な制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを演算する
ことを特徴とする請求項1乃至14の何れかに記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
【請求項16】
前記可変容量圧縮機は、
内部に吐出室、クランク室、吸入室及びシリンダボアが区画形成されたハウジングと、
前記シリンダボアに配設されたピストンと、
前記ハウジング内に回転可能に支持された駆動軸と、
前記駆動軸の回転を前記ピストンの往復運動に変換する傾角可変の斜板要素を含む変換機構と、
前記吐出室と前記クランク室とを連通する給気通路と、
前記吸入室と前記クランク室とを連通する抽気通路とを備え、
前記容量制御弁は、前記給気通路及び前記抽気通路のうち一方に介挿されている
ことを特徴とする請求項1乃至15の何れかに記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2009−62822(P2009−62822A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228936(P2007−228936)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】