可変焦点距離レンズ、光学装置、可変焦点距離レンズの調整方法
【課題】良好な光学性能を達成可能で低コストの可変焦点距離レンズとこれを有する光学装置、可変焦点距離レンズの調整方法を提供すること。
【解決手段】物体側から順に、負屈折力の前方レンズ群GFと、正屈折力の中央レンズ群GMと、正屈折力の後方レンズ群GRとを有し、前方レンズ群GF内の少なくとも1つの空気間隔と、前方レンズ群GFと中央レンズ群GMの空気間隔と、中央レンズ群GMと後方レンズ群GRの空気間隔とを変化させることにより焦点距離を変化させ、前方レンズ群GFと中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとを組み立てた後に、前方レンズ群GFの一部のレンズ群をチルト偏心させ、後方レンズ群GRの一部または全部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行う調整機構を有する可変焦点距離レンズ。
【解決手段】物体側から順に、負屈折力の前方レンズ群GFと、正屈折力の中央レンズ群GMと、正屈折力の後方レンズ群GRとを有し、前方レンズ群GF内の少なくとも1つの空気間隔と、前方レンズ群GFと中央レンズ群GMの空気間隔と、中央レンズ群GMと後方レンズ群GRの空気間隔とを変化させることにより焦点距離を変化させ、前方レンズ群GFと中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとを組み立てた後に、前方レンズ群GFの一部のレンズ群をチルト偏心させ、後方レンズ群GRの一部または全部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行う調整機構を有する可変焦点距離レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変焦点距離レンズとこれを有する光学装置、可変焦点距離レンズの調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、写真用カメラ、電子スチルカメラ、ビデオカメラ等に適した各種の可変焦点距離レンズが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−323655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の可変焦点距離レンズは、製造時に偏心誤差が生じると結像性能が劣化するという問題があった。また、結像性能の劣化を防ぐためには、各レンズ、レンズ室、機構部品の形状精度を高め偏心誤差を低減する必要があったが、加工精度を高めなければならないためコストダウンが困難であった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、良好な光学性能を達成可能で低コストの可変焦点距離レンズとこれを有する光学装置、可変焦点距離レンズの調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、物体側から順に、負屈折力の前方レンズ群と、正屈折力の中央レンズ群と、正屈折力の後方レンズ群とを有し、前記前方レンズ群内の少なくとも1つの空気間隔と、前記前方レンズ群と前記中央レンズ群の空気間隔と、前記中央レンズ群と前記後方レンズ群の空気間隔とを変化させることにより焦点距離を変化させ、前記前方レンズ群と前記中央レンズ群と前記後方レンズ群とを組み立てた後に、前記前方レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させ、前記後方レンズ群の一部または全部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行う調整機構を有することを特徴とする可変焦点距離レンズを提供する。
【0007】
また、本発明は、前記可変焦点距離レンズを有することを特徴とする光学装置を提供する。
【0008】
また、本発明は、物体側から順に、負屈折力の前方レンズ群と、正屈折力の中央レンズ群と、正屈折力の後方レンズ群とを有し、前記前方レンズ群内の少なくとも1つの空気間隔と、前記前方レンズ群と前記中央レンズ群の空気間隔と、前記中央レンズ群と前記後方レンズ群の空気間隔とを変化させることにより焦点距離を変化させる可変焦点距離レンズの調整方法であって、前記前方レンズ群と前記中央レンズ群と前記後方レンズ群とを組み立てた後に、前記前方レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させ、前記後方レンズ群の一部または全部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことを特徴とする可変焦点距離レンズの調整方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、良好な光学性能を達成可能で低コストの可変焦点距離レンズとこれを有する光学装置、可変焦点距離レンズの調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施例から第4実施例に係る可変焦点距離レンズのレンズ構成を示す断面図である。
【図2】製造時に偏心誤差が発生しなかった場合の第1実施例から第4実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【図3】製造時に偏心誤差が発生した場合の第1実施例から第4実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【図4】第1実施例に係る可変焦点距離レンズの機構を示す断面図である。
【図5】図4に示される可変焦点距離レンズの第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整を行うための機構を示す図であり、物体側から見た図である。
【図6】図4に示される可変焦点距離レンズの後方レンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うための機構を示す図であり、像側から見た図である。
【図7】製造時の偏心誤差がある場合に、第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群をシフト偏心させる位置調整を行って結像性能を補正した場合の第1実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【図8】第2実施例に係る可変焦点距離レンズの機構を示す断面図である。
【図9】図8に示される可変焦点距離レンズの第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整を行うための機構を示す図であり、物体側から斜めに見た図である。
【図10】図8に示される可変焦点距離レンズの後方レンズ群の一部の第4Aレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うための機構を示す図であり、光軸に垂直な断面図である。
【図11】製造時の偏心誤差がある場合に、第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群の一部の第4Aレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行って結像性能を補正した場合の第2実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【図12】第3実施例に係る可変焦点距離レンズの機構を示す断面図である。
【図13】製造時の偏心誤差がある場合に、第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群の一部の第4Aレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行って結像性能を補正した場合の第3実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【図14】第4実施例に係る可変焦点距離レンズの機構を示す断面図である。
【図15】製造時の偏心誤差がある場合に、第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群をシフト偏心させる位置調整を行って結像性能を補正した場合の第4実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【図16】第1実施例に係る可変焦点距離レンズを備えたカメラの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願の一実施形態に係る可変焦点距離レンズと、可変焦点距離レンズの調整方法について説明する。
【0012】
本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、物体側から順に、負屈折力の前方レンズ群と、正屈折力の中央レンズ群と、正屈折力の後方レンズ群とを有し、前方レンズ群内の少なくとも1つの空気間隔と、前方レンズ群と中央レンズ群の空気間隔と、中央レンズ群と後方レンズ群の空気間隔とを変化させることにより焦点距離を変化させ、前方レンズ群と中央レンズ群と後方レンズ群とを組み立てた後に、前方レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させ、後方レンズ群の一部または全部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行う調整機構を有する構成である。
【0013】
この構成により、製造時の偏心誤差によって発生する偏心収差による結像性能の劣化を広角端から望遠端までの全焦点域で補正できる。なお、前方レンズ群の一部のレンズ群または後方レンズ群の一部または全部のレンズ群のどちらか一方のみで補正しようとすると、良好に偏心収差が補正できるのは焦点距離範囲のごく一部に限られ、その他の焦点距離範囲では偏心収差が残存し結像性能の劣化を十分補正できない。この問題は、可変焦点距離レンズの変倍比が大きくなるほど顕著となる。
【0014】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、以下の条件式(1)、(2)、(3)を満足することが望ましい。
(1) 2.0<MAt/MAw
(2) MBt/MBw<2.0
(3) 2.0<(MAt/MAw)/(MBt/MBw)
但し、MAtは可変焦点距離レンズの望遠端状態における前方レンズ群の一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、MAwは可変焦点距離レンズの広角端状態における前方レンズ群の一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、MBtは可変焦点距離レンズの望遠端状態における後方レンズ群の一部または全部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、MBwは可変焦点距離レンズの広角端状態における後方レンズ群の一部または全部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率である。なお、後方レンズ群の一部または全部のレンズ群と像面との間にレンズ群が存在しない場合は、MBt=MBw=1.0とする。
【0015】
条件式(1)〜(3)は、可変焦点距離レンズの前方レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させ、後方レンズ群の一部または全部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことで、可変焦点距離レンズの広角端から望遠端までの全焦点域で偏心収差による結像性能の劣化を補正するのに適したレンズ群の倍率関係を規定する。前方レンズ群の一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率の変化を、後方レンズ群の一部または全部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率の変化に比べて大きくするよう構成することにより、広角端から望遠端までの全焦点域で良好な補正を実現できる。
【0016】
条件式(1)の下限値を下回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
条件式(2)の上限値を上回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
条件式(3)の下限値を下回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
なお、実施形態の効果を確実にするために、条件式(1)の下限値を2.5にすることが好ましい。
また、実施形態の効果を確実にするために、条件式(2)の上限値を1.5にすることが好ましい。
また、実施形態の効果を確実にするために、条件式(3)の下限値を2.5にすることが好ましい。
【0017】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、前方レンズ群は、物体側から順に、正屈折力の第1レンズ群と負屈折力の第2レンズ群とからなり、広角端状態から望遠端状態への変倍に際し、第1レンズ群と第2レンズ群の空気間隔は拡大し、第2レンズ群と中央レンズ群の空気間隔は縮小し、中央レンズ群と後方レンズ群の空気間隔は縮小することが望ましい。
この構成により、高変倍率化の達成に有利である。
【0018】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、調整機構は、第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群全部をシフト偏心させる位置調整を行うことが望ましい。
第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群全部をシフト偏心させる位置調整によって、広角端から望遠端までの全焦点域で偏心収差の良好な補正を実現できる。
【0019】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、以下の条件式(4)、(5)、(6)を満足することが望ましい。
(4) 5.0<M1t/M1w
(5) M4t/M4w<2.0
(6) 5.0<(M1t/M1w)/(M4t/M4w)
但し、M1tは可変焦点距離レンズの望遠端状態における第1レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M1wは可変焦点距離レンズの広角端状態における第1レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M4tは可変焦点距離レンズの望遠端状態における後方レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M4wは可変焦点距離レンズの広角端状態における後方レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率である。なお、後方レンズ群と像面との間にレンズ群が存在しない場合は、M4t=M4w=1.0とする。
【0020】
条件式(4)〜(6)は、可変焦点距離レンズの第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群全部をシフト偏心させる位置調整を行うことで、可変焦点距離レンズの広角端から望遠端までの全焦点域で偏心収差による結像性能の劣化を補正するのに適したレンズ群の倍率関係を規定する。第1レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率の変化を、後方レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率の変化に比べて大きくするよう構成することにより、広角端から望遠端までの全焦点域で良好な補正を実現できる。
【0021】
条件式(4)の下限値を下回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
条件式(5)の上限値を上回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
条件式(6)の下限値を下回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
なお、実施形態の効果を確実にするために、条件式(4)の下限値を10.0にすることが好ましい。
また、実施形態の効果を確実にするために、条件式(5)の上限値を1.5にすることが好ましい。
また、実施形態の効果を確実にするために、条件式(6)の下限値を10.0にすることが好ましい。
【0022】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、調整機構は、第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群の一部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことが望ましい。
第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群の一部をシフト偏心させる位置調整によって、広角端から望遠端までの全焦点域で偏心収差の良好な補正を実現できる。
【0023】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、以下の条件式(7)、(8)、(9)を満足することが望ましい。
(7) 2.0<M2t/M2w
(8) M4At/M4Aw<2.0
(9) 2.0<(M2t/M2w)/(M4At/M4Aw)
但し、M2tは可変焦点距離レンズの望遠端状態における第2レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M2wは可変焦点距離レンズの広角端状態における第2レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M4Atは可変焦点距離レンズの望遠端状態における後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M4Awは可変焦点距離レンズの広角端状態における後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率である。なお、後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間にレンズ群が存在しない場合は、M4At=M4Aw=1.0とする。
【0024】
条件式(7)〜(9)は、可変焦点距離レンズの第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群の一部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことで、可変焦点距離レンズの広角端から望遠端までの全焦点域で偏心収差による結像性能の劣化を補正するのに適したレンズ群の倍率関係を規定する。第2レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率の変化を、後方レンズ群の一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率の変化に比べて大きくするよう構成することにより、広角端から望遠端までの全焦点域で良好な補正を実現できる。
【0025】
条件式(7)の下限値を下回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
条件式(8)の上限値を上回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
条件式(9)の下限値を下回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
なお、実施形態の効果を確実にするために、条件式(7)の下限値を2.5にすることが好ましい。
また、実施形態の効果を確実にするために、条件式(8)の上限値を1.5にすることが好ましい。
また、実施形態の効果を確実にするために、条件式(9)の下限値を2.5にすることが好ましい。
【0026】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、調整機構は、第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群の一部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことが望ましい。
第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群の一部をシフト偏心させる位置調整によって、広角端から望遠端までの全焦点域で偏心収差の良好な補正を実現できる。
【0027】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、以下の条件式(10)、(11)、(12)を満足することが望ましい。
(10) 5.0<M1t/M1w
(11) M4At/M4Aw<2.0
(12) 5.0<(M1t/M1w)/(M4At/M4Aw)
但し、M1tは可変焦点距離レンズの望遠端状態における第1レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M1wは可変焦点距離レンズの広角端状態における第1レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M4Atは可変焦点距離レンズの望遠端状態における後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M4Awは可変焦点距離レンズの広角端状態における後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率である。なお、後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間にレンズ群が存在しない場合は、M4At=M4Aw=1.0とする。
【0028】
条件式(10)〜(12)は、可変焦点距離レンズの第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群の一部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことで、可変焦点距離レンズの広角端から望遠端までの全焦点域で偏心収差による結像性能の劣化を補正するのに適したレンズ群の倍率関係を規定する。第1レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率の変化を、後方レンズ群の一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率の変化に比べて大きくするよう構成することにより、広角端から望遠端までの全焦点域で良好な補正を実現できる。
【0029】
条件式(10)の下限値を下回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
条件式(11)の上限値を上回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
条件式(12)の下限値を下回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
【0030】
なお、実施形態の効果を確実にするために、条件式(10)の下限値を10.0にすることが好ましい。
また、実施形態の効果を確実にするために、条件式(11)の上限値を1.5にすることが好ましい。
また、実施形態の効果を確実にするために、条件式(12)の下限値を10.0にすることが好ましい。
【0031】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、調整機構は、第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群全部をシフト偏心させる位置調整を行うことが望ましい。
【0032】
第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群全部をシフト偏心させる位置調整によって、広角端から望遠端までの全焦点域で偏心収差の良好な補正を実現できる。
【0033】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、以下の条件式(13)、(14)、(15)を満足することが望ましい。
(13) 2.0<M2t/M2w
(14) M4t/M4w<2.0
(15) 2.0<(M2t/M2w)/(M4t/M4w)
但し、M2tは可変焦点距離レンズの望遠端状態における第2レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M2wは可変焦点距離レンズの広角端状態における第2レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M4tは可変焦点距離レンズの望遠端状態における後方レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M4wは可変焦点距離レンズの広角端状態における後方レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率である。なお、後方レンズ群と像面との間にレンズ群が存在しない場合は、M4t=M4w=1.0とする。
【0034】
条件式(13)〜(15)は、可変焦点距離レンズの第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群全部をシフト偏心させる位置調整を行うことで、可変焦点距離レンズの広角端から望遠端までの全焦点域で偏心収差による結像性能の劣化を補正するのに適したレンズ群の倍率関係を規定する。第2レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率の変化を、後方レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率の変化に比べて大きくするよう構成することにより、広角端から望遠端までの全焦点域で良好な補正を実現できる。
【0035】
条件式(13)の下限値を下回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
条件式(14)の上限値を上回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
条件式(15)の下限値を下回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
【0036】
なお、実施形態の効果を確実にするために、条件式(13)の下限値を2.5にすることが好ましい。
また、実施形態の効果を確実にするために、条件式(14)の上限値を1.5にすることが好ましい。
また、実施形態の効果を確実にするために、条件式(15)の下限値を2.5にすることが好ましい。
【0037】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、後方レンズ群の一部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行う場合には、後方レンズ群は、物体側から順に、正屈折力の第4Aレンズ群と、第4Bレンズ群とからなり、調整機構は第4Aレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことが望ましい。
第4Aレンズ群をシフト偏心させることにより、偏心収差の良好な補正を実現できる。
【0038】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズの調整方法は、物体側から順に、負屈折力の前方レンズ群と、正屈折力の中央レンズ群と、正屈折力の後方レンズ群とを有し、前方レンズ群内の少なくとも1つの空気間隔と、前方レンズ群と中央レンズ群の空気間隔と、中央レンズ群と後方レンズ群の空気間隔とを変化させることにより焦点距離を変化させる可変焦点距離レンズの調整方法であって、前方レンズ群と中央レンズ群と後方レンズ群とを組み立てた後に、前方レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させ、後方レンズ群の一部または全部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行う。
【0039】
この調整方法により、製造時の偏心誤差によって発生する偏心収差による結像性能の劣化を広角端から望遠端までの全焦点域で補正できる。なお、前方レンズ群の一部のレンズ群または、後方レンズ群の一部または全部のレンズ群のどちらか一方のみで補正しようとすると、良好に偏心収差が補正できるのは焦点距離範囲のごく一部に限られ、その他の焦点距離範囲では偏心収差が残存し結像性能の劣化を十分補正できない。この問題は、可変焦点距離レンズの変倍比が大きくなるほど顕著となる。
【0040】
(実施例)
以下、本実施形態に係る各実施例について図面を参照しつつ説明する。
【0041】
第1実施例から第4実施例に係る可変焦点距離レンズは、レンズ構成が共通で、製造時の偏心誤差による結像性能の劣化を良好に補正するための後述する調整機構が相違する。よって、重複する部分について、ここでまとめて説明を行う。
【0042】
図1は、第1実施例から第4実施例に係る可変焦点距離レンズのレンズ構成を示す断面図である。
【0043】
図1に示すように、第1実施例から第4実施例に係る可変焦点距離レンズのレンズ系は、光軸に沿って物体側から順に、負屈折力の前方レンズ群GFと、正屈折力の中央レンズ群GMと、正屈折力の後方レンズ群GRとから構成されている。前方レンズ群GFは、光軸に沿って物体側から順に、正屈折力の第1レンズ群G1と、負屈折力の第2レンズ群G2とからなり、中央レンズ群GMは、光軸に沿って物体側から順に、正屈折力の第3Aレンズ群G3Aと、負屈折力の第3Bレンズ群G3Bと、負屈折力の第3Cレンズ群G3Cとからなり、中央レンズ群GMの物体側に虹彩絞りSを有し、後方レンズ群GRは、光軸に沿って物体側から順に、正屈折力の第4Aレンズ群G4Aと、負屈折力の第4Bレンズ群G4Bとからなる。
【0044】
広角端状態Wから望遠端状態Tへの変倍に際し、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の空気間隔が拡大し、第2レンズ群G2と中央レンズ群GMの空気間隔が縮小し、中央レンズ群GMと後方レンズ群GRの空気間隔が縮小するように、各レンズ群が移動する。
【0045】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と両凸正レンズL12との接合正レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13とからなる。
【0046】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と、両凹負レンズL22と、両凸正レンズL23と、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL24と物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL25との接合負レンズとからなり、負メニスカスレンズL21は物体側に薄い樹脂層を有し、樹脂面を非球面形状としたレンズである。
【0047】
第3Aレンズ群G3Aは、光軸に沿って物体側から順に、両凸正レンズL31と、両凸正レンズL32と、両凸正レンズL33と両凹負レンズL34との接合正レンズとからなる。
【0048】
第3Bレンズ群G3Bは、光軸に沿って物体側から順に、両凹負レンズL35と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL36との接合負レンズからなり、両凹負レンズL35は物体側の面が非球面のレンズである。
【0049】
第3Cレンズ群G3Cは、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL37からなる。
【0050】
第4Aレンズ群G4Aは、両凸正レンズL41からなり、両凸正レンズL41は物体側の面が非球面のレンズである。
【0051】
第4Bレンズ群G4Bは、光軸に沿って物体側から順に、両凹負レンズL42と両凸正レンズL43との接合負レンズからなる。
【0052】
像面Iは、不図示の撮像素子上に形成され、該撮像素子はCCDやCMOS等から構成されている。
【0053】
以下の表1に第1実施例から第4実施例に係る可変焦点距離レンズのレンズ系の諸元値を掲げる。
【0054】
表中の(面データ)において、物面は物体面、面番号は物体側からの面の番号、rは曲率半径、dは面間隔、ndはd線(波長λ=587.6nm)における屈折率、νdはd線(波長λ=587.6nm)におけるアッベ数、(可変)は可変面間隔、(絞り)は虹彩絞りS、像面は像面Iをそれぞれ表している。なお、空気の屈折率nd=1.000000は記載を省略している。また、曲率半径r欄の「∞」は平面を示している。
【0055】
(非球面データ)において、非球面は以下の式で表される。
X(y)=(y2/r)/[1+[1−κ(y2/r2)]1/2]
+A4×y4+A6×y6+A8×y8+A10×y10
ここで、光軸に垂直な方向の高さをy、高さyにおける光軸方向の変位量(各非球面の頂点の接平面から各非球面までの光軸に沿った距離)をX(y)、基準球面の曲率半径(近軸曲率半径)をr、円錐係数をκ、n次の非球面係数をAnとする。なお、「E-n」は「×10−n」を示し、例えば「1.234E-05」は「1.234×10−5」を示す。また、各非球面は、(面データ)において、面番号の右側に「*」を付して示している。
【0056】
(各種データ)において、ズーム比はレンズ系の変倍比、Wは広角端状態、Mは中間焦点距離状態、Tは望遠端状態、fは焦点距離、FNOはFナンバー、2ωは画角(単位:「°」)、Yは像高、TLはレンズ系全長、Bfはバックフォーカス、diは面番号iでの可変面間隔値を表している。
【0057】
(ズームレンズ群データ)は、各レンズ群の始面番号とレンズ群の焦点距離をそれぞれ示す。
【0058】
なお、以下の全ての諸元値において、掲載されている焦点距離f、曲率半径r、面間隔dその他の長さ等は、特記の無い場合一般に「mm」が使われるが、光学系は比例拡大または比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。また、単位は「mm」に限定されること無く他の適当な単位を用いることもできる。
【0059】
(表1)
(面データ)
面番号 r d nd νd
物面 ∞ ∞
1 123.9595 2.0000 1.850260 32.35
2 65.8189 9.3000 1.497820 82.52
3 -679.8190 0.1000
4 66.6349 6.2000 1.593190 67.87
5 419.9308 (可変)
6* 162.3242 0.1500 1.553890 38.09
7 146.0754 1.0000 1.834807 42.72
8 16.1304 6.5500
9 -35.2760 1.0000 1.882997 40.76
10 60.4450 0.1000
11 37.3723 5.2000 1.846660 23.78
12 -32.7279 0.8214
13 -23.9463 1.0000 1.882997 40.76
14 -252.4150 2.0000 1.808090 22.79
15 -72.4479 (可変)
16(絞り) ∞ 1.0000
17 36.7222 3.3000 1.593190 67.87
18 -118.1963 0.1000
19 41.3768 3.1500 1.487490 70.41
20 -92.3429 0.1000
21 42.3403 3.8000 1.487490 70.41
22 -41.0036 1.0000 1.805181 25.43
23 259.3609 3.8191
24* -63.6485 1.0000 1.806100 40.94
25 22.0000 2.9000 1.805181 25.43
26 150.5781 4.2000
27 -45.8244 1.0000 1.882997 40.76
28 -215.9895 (可変)
29* 77.1794 3.1500 1.589130 61.16
30 -37.1187 0.1000
31 -261.2949 1.0000 1.882997 40.76
32 39.9808 4.4000 1.518229 58.93
33 -48.5209 (Bf)
像面 ∞
(非球面データ)
第6面
κ = -5.7774
A4 = 6.79980E-06
A6 = -2.52730E-08
A8 = 8.26150E-11
A10 = -1.02860E-13
第24面
κ = 2.8196
A4 = 4.59750E-06
A6 = 4.28350E-09
A8 = 0.00000E+00
A10 = 0.00000E+00
第29面
κ = -6.5363
A4 = -1.95310E-05
A6 = 1.79050E-08
A8 = -1.55070E-10
A10 = 4.13770E-13
(各種データ)
ズーム比 15.70
W M T
f = 18.54 50.00 290.99
FNO = 4.11 5.39 5.86
2ω = 78.00 30.78 5.48
Y = 14.20 14.20 14.20
TL = 160.01 187.27 237.80
Bf = 39.12 69.40 99.17
d5 2.15 25.00 65.69
d15 40.45 20.28 2.00
d28 8.85 3.15 1.50
(ズームレンズ群データ)
群 始面 焦点距離
F 1 −20.11(W) −28.50(M) −110.68(T)
1 1 103.25
2 6 −15.13
M 17 44.77
3A 17 25.59
3B 24 −54.94
3C 27 −66.05
R 29 47.36
4A 29 42.98
4B 31 −698.29
【0060】
図2は、製造時に偏心誤差が発生しなかった場合の第1実施例から第4実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【0061】
図3は、製造時に偏心誤差が発生した場合の第1実施例から第4実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【0062】
各収差図において、Yは像高(単位:「mm」)を表し、像高10mm、0mm(センター)、−10mmにおけるコマ収差がそれぞれ示されている。なお、以下の説明で参照する他の収差図においても同様である。
【0063】
(第1実施例)
次に、第1実施例に係る可変焦点距離レンズの調整機構について説明する。第1実施例は、製造時の偏心誤差による結像性能の劣化を良好に補正するため、第1レンズ群G1をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群GRをシフト偏心させる位置調整を行う調整機構を有する。
【0064】
図4は、第1実施例に係る可変焦点距離レンズの機構を示す断面図である。
【0065】
図5は、図4に示される可変焦点距離レンズの第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整を行うための機構を示す図であり、物体側から見た図である。
【0066】
図6は、図4に示される可変焦点距離レンズの後方レンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うための機構を示す図であり、像側から見た図である。
【0067】
図4に示すように、第1実施例に係る可変焦点距離レンズ1において、第1レンズ群G1は環状の第1保持部材3に保持され、第2レンズ群G2は略円筒状の第2保持部材5に保持され、中央レンズ群GMは略円筒状の第3保持部材39に保持され、後方レンズ群GRは環状の第4保持部材41に保持されている。
【0068】
第1保持部材3は、第1ネジ13と第2ネジ15によって環状の第1摺動部材17に固定され、第2保持部材5は環状の第2摺動部材19に固定され、第3保持部材39は環状の第3摺動部材43に固定され、第4保持部材41は、第3ネジ45によって環状の第4摺動部材47に固定されている。
【0069】
第1実施例の可変焦点距離レンズ1のレンズ系は、円筒状の固定筒29と、固定筒29に回転可能に内嵌した円筒状のカム筒31の内側に収納されている。第1摺動部材17、第2摺動部材19、第3摺動部材43、第4摺動部材47の外周の縁部には、図示しないカムピンがそれぞれ設けられており、これらのカムピンはカム筒31に形成された図示しないカム溝と係合している。図示しない機構によって固定筒29に対してカム筒31を回転させることにより、第1摺動部材17、第2摺動部材19、第3摺動部材43、第4摺動部材47を光軸に沿って前後に移動させることができる。
【0070】
固定筒29にはマウント部材33が固定され、固定筒29はマウント部材33を介して不図示のカメラ等の撮像装置に固定される。また、虹彩絞りSは、第3摺動部材43に固定された絞り機構35によって開閉される。
【0071】
第1保持部材3は、第1レンズ群G1を保持する円筒部3aと、円筒部3aの径方向外方に延在するフランジ部3bとを有する。フランジ部3bには、フランジ部3bを光軸方向に貫通する3つのバカ穴3cが周方向に略等間隔で形成されていると共に、フランジ部3bを光軸方向に貫通する3つのネジ穴3dが周方向に略等間隔で形成されている。これらの計6つのバカ穴3cとネジ穴3dは、周方向に略等間隔で交互に形成されている。バカ穴3cの径は、第1ネジ13の軸直径よりも大きく形成されている。また、第1摺動部材17には、光軸方向に見て3つのバカ穴3cと一致する位置に3つのネジ穴17aが形成されている。
【0072】
図4と図5に示すように、3つの第1ネジ13は、3つのバカ穴3cにそれぞれ挿通されると共に、3つのネジ穴17aにそれぞれ螺合している。また、3つの第2ネジ15は、3つのネジ穴3dにそれぞれ螺合している。
【0073】
第1ネジ13を締める又は緩めることで、第1ネジ13の頭部が第1保持部材3を光軸方向像側に押す力を加減し、第2ネジ15を締める又は緩めることで、第2ネジ15が第1保持部材3を光軸方向物体側に引く力を加減することによって、第1摺動部材17に対する第1保持部材3の傾き具合を調整して固定することができる。即ち、光軸に対して第1レンズ群G1をチルト偏心させる位置調整を行うことができる。
【0074】
第4保持部材41は、後方レンズ群GRを保持する円筒部41aと、円筒部41aの径方向外方に延在するフランジ部41bとを有する。フランジ部41bには、フランジ部41bを光軸方向に貫通する3つのバカ穴41cが周方向に略等間隔で形成されている。バカ穴41cの径は、第3ネジ45の軸直径よりも大きく形成されている。また、第4摺動部材47には、光軸方向に見て3つのバカ穴41cと一致する位置に3つのネジ穴47aが形成されている。
【0075】
図4と図6に示すように、3つの第3ネジ45は、3つのバカ穴41cにそれぞれ挿通されると共に、3つのネジ穴47aにそれぞれ螺合しており、フランジ部41b、即ち第4保持部材41を像側から第4摺動部材47に固定している。
【0076】
第3ネジ45の軸直径に比べてバカ穴41cの径に余裕があるため、締め付けてある第3ネジ45を一旦緩めることにより、第4摺動部材47に対して第4保持部材41を光軸に垂直な方向へ移動することができる。そして第4保持部材41を最適な位置に移動した後、再び第3ネジ45を締めることで、第4保持部材41を最適な位置に固定することができる。即ち、光軸に対して後方レンズ群GRをシフト偏心させる位置調整を行うことができる。
【0077】
以下の表2に、第1実施例に係る可変焦点距離レンズ1における条件式(1)〜(6)の対応値を掲げる。
【0078】
なお、第1実施例において、MAtは望遠端状態における第2レンズ群G2と中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、MAwは広角端状態における第2レンズ群G2と中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、後方レンズ群GRと像面Iとの間にレンズ群が存在しないのでMBt=MBw=1.0、M1tは望遠端状態における第2レンズ群G2と中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、M1wは広角端状態における第2レンズ群G2と中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、後方レンズ群GRと像面Iとの間にレンズ群が存在しないのでM4t=M4w=1.0である。
【0079】
(表2)
(条件式対応値)
(1) MAt/MAw=15.70
(2) MBt/MBw=1.000
(3) (MAt/MAw)/(MBt/MBw)=15.70
(4) M1t/M1w=15.70
(5) M4t/M4w=1.000
(6) (M1t/M1w)/(M4t/M4w)=15.70
【0080】
図7は、製造時の偏心誤差がある場合に、第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群をシフト偏心させる位置調整を行って結像性能を補正した場合の第1実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【0081】
図2、図3、図7の収差図を比較すると、図7では製造時の偏心誤差による結像性能の劣化が広角端状態から望遠端状態にわたって良好に補正されていることがわかる。
【0082】
(第2実施例)
次に、第2実施例に係る可変焦点距離レンズの調整機構について説明する。第2実施例は、製造時の偏心誤差による結像性能の劣化を良好に補正するため、第2レンズ群G2をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群GRの一部の第4Aレンズ群G4Aをシフト偏心させる位置調整を行う調整機構を有する。なお、第1実施例と構造が同じ部分は同一の符号を用いて説明する。
【0083】
図8は、第2実施例に係る可変焦点距離レンズの機構を示す断面図である。
【0084】
図9は、図8に示される可変焦点距離レンズの第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整を行うための機構を示す図であり、物体側から斜めに見た図である。
【0085】
図10は、図8に示される可変焦点距離レンズの後方レンズ群の一部の第4Aレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うための機構を示す図であり、光軸に垂直な断面図である。
【0086】
図8に示すように、第2実施例に係る可変焦点距離レンズ61において、第1レンズ群G1は略円筒状の第1保持部材51に保持され、第2レンズ群G2は略円筒状の第2保持部材53に保持され、中央レンズ群GMは略円筒状の第3保持部材39に保持され、後方レンズ群GRの一部の第4Aレンズ群G4Aは環状の第4保持部材7に保持され、後方レンズ群GRの残る一部の第4Bレンズ群G4Bは略円筒状の第5保持部材11に保持されている。
【0087】
第1保持部材51は環状の第1摺動部材55に固定され、第2保持部材53は環状の第2摺動部材57に固定され、第3保持部材39は環状の第3摺動部材43に固定され、第4保持部材7は、第4ネジ21によって環状の第4摺動部材23に固定され、第5保持部材11も環状の第4摺動部材23に固定されている。
【0088】
第2実施例の可変焦点距離レンズ61のレンズ系は、円筒状の固定筒29と、固定筒29に回転可能に内嵌した円筒状のカム筒31の内側に収納されている。第1摺動部材55、第2摺動部材57、第3摺動部材43、第4摺動部材23の外周の縁部には、図示しないカムピンがそれぞれ設けられており、これらのカムピンはカム筒31に形成された図示しないカム溝と係合している。なお、第2摺動部材57に設けられたカムピン57dは図9に図示されている。図示しない機構によって固定筒29に対してカム筒31を回転させることにより、第1摺動部材55、第2摺動部材57、第3摺動部材43、第4摺動部材23を光軸に沿って前後に移動させることができる。
【0089】
固定筒29にはマウント部材33が固定され、固定筒29はマウント部材33を介して不図示のカメラ等の撮像装置に固定される。また、虹彩絞りSは、第3摺動部材43に固定された絞り機構35によって開閉される。
【0090】
図8と図9に示すように、第2摺動部材57は、光軸を中心とする2重の円環状構造を有し、第2保持部材53を保持する内側円環部57aと、外側円環部57bとが、内側円環部57aの外周に沿って略等間隔で形成された3つの結合部57cによってつながっている。外側円環部57bの外周には、周方向に略等間隔で3つの上述のカムピン57dが固定されている。
【0091】
外側円環部57bには、周方向に延びる3つの長孔57eが周方向に略等間隔で形成されている。それぞれの長孔57eの両端には、略光軸方向物体側に延びる切欠き57fが形成されている。また、それぞれの長孔57eの中央にはイモビス59が嵌っており、この部分の長孔57e内の物体側の面には、イモビス59をカム筒31の径方向内方にねじ込むことで長孔57eを光軸方向に押し広げるためのテーパー面57gが形成されている。なお、第2摺動部材57を光軸方向に見たとき、それぞれのイモビス59と、その近傍の結合部57c、光軸は、略同一直線上にある。
【0092】
固定筒29には、径方向に見て3つのイモビス59と一致する位置に3つの穴29bが形成されており、カム筒31には、径方向に見て3つのイモビス59と一致する位置に3つの穴31bが形成されている。それぞれのイモビス59の頭部には六角形の穴59aが形成されており、それぞれのイモビス59は、外部から穴29bと穴31bを通してヘックスキーを差し込み、回転操作することができるようになっている。なお、塵埃などが固定筒29やカム筒31の内部に入り込むことを防ぐため、イモビス59を回転操作する時以外は、図示しないゴムリングなどで穴29bと穴31bを塞いでいる。
【0093】
イモビス59を長孔57eにねじ込むことにより、長孔57eを押し広げて外側円環部57bを弾性変形させ、結合部57cを介して外側円環部57bにつながった内側円環部57aをカムピン57dに対して傾けることができる。なお、長孔57eに切欠き57fが形成されているため、イモビス59のねじ込みにより外側円環部57bを変形させやすくなる。
【0094】
イモビス59を締める又は緩めることにより、内側円環部57aが保持する第2保持部材53のカムピン57dに対する傾き具合を調整して固定することができる。即ち、光軸に対して第2レンズ群G2をチルト偏心させる位置調整を行うことができる。
【0095】
第4保持部材7は、第4Aレンズ群G4Aを保持する円筒部7aと、円筒部7aの径方向外方に延在するフランジ部7bとを有し、フランジ部7bは第4摺動部材23に形成された円環状の溝23aに嵌め込まれている。第4摺動部材23には、第4摺動部材23を円筒部7aの径方向に貫通する3つのネジ穴23bが溝23aに沿って略等間隔で形成されている。また、固定筒29には、円筒部7aの径方向に見て3つのネジ穴23bと一致する位置に3つの穴29aが形成されており、カム筒31には、円筒部7aの径方向に見て3つのネジ穴23bと一致する位置に3つの穴31aが形成されている。
【0096】
図8と図10に示すように、3つの第4ネジ21は、3つのネジ穴23bにそれぞれ螺合すると共に、先端がフランジ部7bの縁部にそれぞれ当接している。また、それぞれの第4ネジ21は、外部から穴29aと穴31aを通してドライバーを差し込み、回転操作することができるようになっている。なお、塵埃などが固定筒29やカム筒31の内部に入り込むことを防ぐため、第4ネジ21を回転操作する時以外は、図示しないゴムリングなどで穴29aと穴31aを塞いでいる。
【0097】
第4ネジ21を締める又は緩めることで、第4ネジ21を円筒部7aの径方向に進退させることにより、第4摺動部材23に対して第4保持部材7を光軸に垂直な方向へ移動して固定することができる。即ち、光軸に対して第4Aレンズ群G4Aをシフト偏心させる位置調整を行うことができる。
【0098】
以下の表3に、第2実施例に係る可変焦点距離レンズ61における条件式(1)〜(3)と条件式(7)〜(9)の対応値を掲げる。
【0099】
なお、第2実施例において、MAtは望遠端状態における中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、MAwは広角端状態における中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、MBtは望遠端状態における後方レンズ群GRの一部の第4Bレンズ群G4Bの結像倍率、MBwは広角端状態における後方レンズ群GRの一部の第4Bレンズ群G4Bの結像倍率、M2tは望遠端状態における中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、M2wは広角端状態における中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、M4Atは望遠端状態における後方レンズ群GRの一部の第4Bレンズ群G4Bの結像倍率、M4Awは広角端状態における後方レンズ群GRの一部の第4Bレンズ群G4Bの結像倍率である。
【0100】
(表3)
(条件式対応値)
(1) MAt/MAw=2.85
(2) MBt/MBw=0.927
(3) (MAt/MAw)/(MBt/MBw)=3.07
(7) M2t/M2w=2.85
(8) M4At/M4Aw=0.927
(9) (M2t/M2w)/(M4At/M4Aw)=3.07
【0101】
図11は、製造時の偏心誤差がある場合に、第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群の一部の第4Aレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行って結像性能を補正した場合の第2実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【0102】
図2、図3、図11の収差図を比較すると、図11では製造時の偏心誤差による結像性能の劣化が広角端状態から望遠端状態にわたって良好に補正されていることがわかる。
【0103】
(第3実施例)
次に、第3実施例に係る可変焦点距離レンズの調整機構について説明する。第3実施例は、製造時の偏心誤差による結像性能の劣化を良好に補正するため、第1レンズ群G1をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群GRの一部の第4Aレンズ群G4Aをシフト偏心させる位置調整を行う調整機構を有する。なお、第1実施例、第2実施例と構造が同じ部分は同一の符号を用いて説明するか、或いは同一の符号を図に示して説明を省略する。
【0104】
図12は、第3実施例に係る可変焦点距離レンズの機構を示す断面図である。
【0105】
図12に示すように、第3実施例に係る可変焦点距離レンズ37において、第1レンズ群G1は環状の第1保持部材3に保持され、第2レンズ群G2は略円筒状の第2保持部材5に保持され、中央レンズ群GMは略円筒状の第3保持部材39に保持され、後方レンズ群GRの一部の第4Aレンズ群G4Aは環状の第4保持部材7に保持され、後方レンズ群GRの残る一部の第4Bレンズ群G4Bは略円筒状の第5保持部材11に保持されている。
【0106】
第1保持部材3は、第1ネジ13と第2ネジ15によって環状の第1摺動部材17に固定され、第2保持部材5は環状の第2摺動部材19に固定され、第3保持部材39は環状の第3摺動部材43に固定され、第4保持部材7は、第4ネジ21によって環状の第4摺動部材23に固定され、第5保持部材11も環状の第4摺動部材23に固定されている。
【0107】
第3実施例の可変焦点距離レンズ37のレンズ系は、円筒状の固定筒29と、固定筒29に回転可能に内嵌した円筒状のカム筒31の内側に収納されている。第1摺動部材17、第2摺動部材19、第3摺動部材43、第4摺動部材23の外周の縁部には、図示しないカムピンがそれぞれ設けられており、これらのカムピンはカム筒31に形成された図示しないカム溝と係合している。図示しない機構によって固定筒29に対してカム筒31を回転させることにより、第1摺動部材17、第2摺動部材19、第3摺動部材43、第4摺動部材23を光軸に沿って前後に移動させることができる。
【0108】
固定筒29にはマウント部材33が固定され、固定筒29はマウント部材33を介して不図示のカメラ等の撮像装置に固定される。また、虹彩絞りSは、第3摺動部材43に固定された絞り機構35によって開閉される。
【0109】
第1保持部材3を第1摺動部材17に固定するための構造は、第1実施例と同じであるため同一の符号を図12に示して説明を省略するが、第1実施例と同様の方法により、第1摺動部材17に対する第1保持部材3の傾き具合を調整して固定することができる。即ち、光軸に対して第1レンズ群G1をチルト偏心させる位置調整を行うことができる。
【0110】
第4保持部材7を第4摺動部材23に固定するための構造は、第2実施例と同じであるため同一の符号を図12に示して説明を省略するが、第2実施例と同様の方法により、第4摺動部材23に対して第4保持部材7を光軸に垂直な方向へ移動して固定することができる。即ち、光軸に対して第4Aレンズ群G4Aをシフト偏心させる位置調整を行うことができる。
【0111】
以下の表4に、第3実施例に係る可変焦点距離レンズ37における条件式(1)〜(3)と条件式(10)〜(12)の対応値を掲げる。
【0112】
なお、第3実施例において、MAtは望遠端状態における第2レンズ群G2と中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、MAwは広角端状態における第2レンズ群G2と中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、MBtは望遠端状態における後方レンズ群GRの一部の第4Bレンズ群G4Bの結像倍率、MBwは広角端状態における後方レンズ群GRの一部の第4Bレンズ群G4Bの結像倍率、M1tは望遠端状態における第2レンズ群G2と中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、M1wは広角端状態における第2レンズ群G2と中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、M4Atは望遠端状態における後方レンズ群GRの一部の第4Bレンズ群G4Bの結像倍率、M4Awは広角端状態における後方レンズ群GRの一部の第4Bレンズ群G4Bの結像倍率である。
【0113】
(表4)
(条件式対応値)
(1) MAt/MAw=15.70
(2) MBt/MBw=0.927
(3) (MAt/MAw)/(MBt/MBw)=16.94
(10) M1t/M1w=15.70
(11) M4At/M4Aw=0.927
(12) (M1t/M1w)/(M4At/M4Aw)=16.94
【0114】
図13は、製造時の偏心誤差がある場合に、第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群の一部の第4Aレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行って結像性能を補正した場合の第3実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【0115】
図2、図3、図13の収差図を比較すると、図13では製造時の偏心誤差による結像性能の劣化が広角端状態から望遠端状態にわたって良好に補正されていることがわかる。
【0116】
(第4実施例)
次に、第4実施例に係る可変焦点距離レンズの調整機構について説明する。第4実施例は、製造時の偏心誤差による結像性能の劣化を良好に補正するため、第2レンズ群G2をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群GRをシフト偏心させる位置調整を行う調整機構を有する。なお、第1実施例、第2実施例と構造が同じ部分は同一の符号を用いて説明するか、或いは同一の符号を図に示して説明を省略する。
【0117】
図14は、第4実施例に係る可変焦点距離レンズの機構を示す断面図である。
【0118】
図14に示すように、第4実施例に係る可変焦点距離レンズ49において、第1レンズ群G1は略円筒状の第1保持部材51に保持され、第2レンズ群G2は略円筒状の第2保持部材53に保持され、中央レンズ群GMは略円筒状の第3保持部材39に保持され、後方レンズ群GRは環状の第4保持部材41に保持されている。
【0119】
第1保持部材51は環状の第1摺動部材55に固定され、第2保持部材53は環状の第2摺動部材57に固定され、第3保持部材39は環状の第3摺動部材43に固定され、第4保持部材41は、第3ネジ45によって環状の第4摺動部材47に固定されている。
【0120】
第4実施例の可変焦点距離レンズ49のレンズ系は、円筒状の固定筒29と、固定筒29に回転可能に内嵌した円筒状のカム筒31の内側に収納されている。第1摺動部材55、第2摺動部材57、第3摺動部材43、第4摺動部材47の外周の縁部には、図示しないカムピンがそれぞれ設けられており、これらのカムピンはカム筒31に形成された図示しないカム溝と係合している。図示しない機構によって固定筒29に対してカム筒31を回転させることにより、第1摺動部材55、第2摺動部材57、第3摺動部材43、第4摺動部材47を光軸に沿って前後に移動させることができる。
【0121】
固定筒29にはマウント部材33が固定され、固定筒29はマウント部材33を介して不図示のカメラ等の撮像装置に固定される。また、虹彩絞りSは、第3摺動部材43に固定された絞り機構35によって開閉される。
【0122】
第2摺動部材57の構造は第2実施例と同じであるため同一の符号を図14に示して説明を省略するが、第2実施例と同様、イモビス59を締める又は緩めることにより、内側円環部57aが保持する第2保持部材53のカムピン57d(第2実施例の図9参照)に対する傾き具合を調整して固定することができる。即ち、光軸に対して第2レンズ群G2をチルト偏心させる位置調整を行うことができる。
【0123】
第4保持部材41を第4摺動部材47に固定するための構造は、第1実施例と同じであるため同一の符号を図14に示して説明を省略するが、第1実施例と同様の方法により、第4摺動部材47に対して第4保持部材41を光軸に垂直な方向へ移動して固定することができる。即ち、光軸に対して後方レンズ群GRをシフト偏心させる位置調整を行うことができる。
【0124】
以下の表5に、第4実施例に係る可変焦点距離レンズ49における条件式(1)〜(3)と条件式(13)〜(15)の対応値を掲げる。
【0125】
なお、第4実施例において、MAtは望遠端状態における中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、MAwは広角端状態における中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、後方レンズ群GRと像面Iとの間にレンズ群が存在しないのでMBt=MBw=1.0、M2tは望遠端状態における中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、M2wは広角端状態における中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、後方レンズ群GRと像面Iとの間にレンズ群が存在しないのでM4t=M4w=1.0である。
【0126】
(表5)
(条件式対応値)
(1) MAt/MAw=2.85
(2) MBt/MBw=1.000
(3) (MAt/MAw)/(MBt/MBw)=2.85
(13) M2t/M2w=2.85
(14) M4t/M4w=1.000
(15) (M2t/M2w)/(M4t/M4w)=2.85
【0127】
図15は、製造時の偏心誤差がある場合に、第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群をシフト偏心させる位置調整を行って結像性能を補正した場合の第4実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【0128】
図2、図3、図15の収差図を比較すると、図15では製造時の偏心誤差による結像性能の劣化が広角端状態から望遠端状態にわたって良好に補正されていることがわかる。
【0129】
なお、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、前方レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群の一部または全部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことに加え、さらに、中央レンズ群の一部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行う構成としても良い。中央レンズ群の一部のレンズ群をシフト偏心させることにより、偏心収差のさらに良好な補正を実現できる。特に、中央レンズ群を、物体側から順に、正屈折力の第3Aレンズ群と、負屈折力の第3Bレンズ群と、負屈折力の第3Cレンズ群とからなるよう構成し、第3Cレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行う構成とするのが望ましく、第3Cレンズ群をシフト偏心させることにより、偏心収差のさらに良好な補正を実現できる。
【0130】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、前方レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群の一部または全部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことに加え、さらに、中央レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させる位置調整を行う構成としても良い。中央レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させることにより、偏心収差のさらに良好な補正を実現できる。特に、中央レンズ群を、物体側から順に、正屈折力の第3Aレンズ群と、負屈折力の第3Bレンズ群と、負屈折力の第3Cレンズ群とからなるよう構成し、第3Bレンズ群をチルト偏心させる位置調整を行う構成とするのが望ましく、第3Bレンズ群をチルト偏心させることにより、偏心収差のさらに良好な補正を実現できる。
【0131】
以上のように、本実施形態によれば、良好な光学性能を達成可能で低コストの可変焦点距離レンズと、その調整方法を提供することができる。さらに、変倍比が大きい可変焦点距離レンズにおいて、広角端状態から望遠端状態にわたる可変焦点距離全域で良好な光学性能を達成することができる。
【0132】
次に、本実施形態に係る可変焦点距離レンズを搭載したカメラについて説明する。なお、第1実施例に係る可変焦点距離レンズ1を搭載した場合について説明するが、他の実施例でも同様である。
【0133】
図16は、第1実施例に係る可変焦点距離レンズを備えたカメラの構成を示す図である。
【0134】
図16において、カメラ63は、撮影レンズとして第1実施例に係る可変焦点距離レンズ1を備えたデジタル一眼レフカメラである。カメラ63において、不図示の物体(被写体)からの光は、撮影レンズ1で集光されて、クイックリターンミラー65を介して焦点板67に結像される。そして焦点板67に結像されたこの光は、ペンタプリズム69中で複数回反射されて接眼レンズ71へ導かれる。これにより撮影者は、被写体像を接眼レンズ71を介して正立像として観察することができる。
【0135】
また、撮影者によって不図示のレリーズボタンが押されると、クイックリターンミラー65が光路外へ退避し、不図示の被写体からの光は撮像素子73へ到達する。これにより被写体からの光は、撮像素子73によって撮像されて、被写体画像として不図示のメモリに記録される。このようにして、撮影者はカメラ63による被写体の撮影を行うことができる。
【0136】
カメラ63に撮影レンズとして第1実施例に係る可変焦点距離レンズ1を搭載することにより、高い性能を有するカメラを実現することができる。
【0137】
なお、本発明を分かり易く説明するために実施形態の構成要件を付して説明したが、本発明はこれに限定されるものでない。
【符号の説明】
【0138】
GF 前方レンズ群
S 虹彩絞り
GM 中央レンズ群
GR 後方レンズ群
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3A 第3Aレンズ群
G3B 第3Bレンズ群
G3C 第3Cレンズ群
G4A 第4Aレンズ群
G4B 第4Bレンズ群
I 像面
1 可変焦点距離レンズ
13 第1ネジ
15 第2ネジ
21 第4ネジ
45 第3ネジ
59 イモビス
63 カメラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変焦点距離レンズとこれを有する光学装置、可変焦点距離レンズの調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、写真用カメラ、電子スチルカメラ、ビデオカメラ等に適した各種の可変焦点距離レンズが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−323655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の可変焦点距離レンズは、製造時に偏心誤差が生じると結像性能が劣化するという問題があった。また、結像性能の劣化を防ぐためには、各レンズ、レンズ室、機構部品の形状精度を高め偏心誤差を低減する必要があったが、加工精度を高めなければならないためコストダウンが困難であった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、良好な光学性能を達成可能で低コストの可変焦点距離レンズとこれを有する光学装置、可変焦点距離レンズの調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、物体側から順に、負屈折力の前方レンズ群と、正屈折力の中央レンズ群と、正屈折力の後方レンズ群とを有し、前記前方レンズ群内の少なくとも1つの空気間隔と、前記前方レンズ群と前記中央レンズ群の空気間隔と、前記中央レンズ群と前記後方レンズ群の空気間隔とを変化させることにより焦点距離を変化させ、前記前方レンズ群と前記中央レンズ群と前記後方レンズ群とを組み立てた後に、前記前方レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させ、前記後方レンズ群の一部または全部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行う調整機構を有することを特徴とする可変焦点距離レンズを提供する。
【0007】
また、本発明は、前記可変焦点距離レンズを有することを特徴とする光学装置を提供する。
【0008】
また、本発明は、物体側から順に、負屈折力の前方レンズ群と、正屈折力の中央レンズ群と、正屈折力の後方レンズ群とを有し、前記前方レンズ群内の少なくとも1つの空気間隔と、前記前方レンズ群と前記中央レンズ群の空気間隔と、前記中央レンズ群と前記後方レンズ群の空気間隔とを変化させることにより焦点距離を変化させる可変焦点距離レンズの調整方法であって、前記前方レンズ群と前記中央レンズ群と前記後方レンズ群とを組み立てた後に、前記前方レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させ、前記後方レンズ群の一部または全部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことを特徴とする可変焦点距離レンズの調整方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、良好な光学性能を達成可能で低コストの可変焦点距離レンズとこれを有する光学装置、可変焦点距離レンズの調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施例から第4実施例に係る可変焦点距離レンズのレンズ構成を示す断面図である。
【図2】製造時に偏心誤差が発生しなかった場合の第1実施例から第4実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【図3】製造時に偏心誤差が発生した場合の第1実施例から第4実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【図4】第1実施例に係る可変焦点距離レンズの機構を示す断面図である。
【図5】図4に示される可変焦点距離レンズの第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整を行うための機構を示す図であり、物体側から見た図である。
【図6】図4に示される可変焦点距離レンズの後方レンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うための機構を示す図であり、像側から見た図である。
【図7】製造時の偏心誤差がある場合に、第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群をシフト偏心させる位置調整を行って結像性能を補正した場合の第1実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【図8】第2実施例に係る可変焦点距離レンズの機構を示す断面図である。
【図9】図8に示される可変焦点距離レンズの第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整を行うための機構を示す図であり、物体側から斜めに見た図である。
【図10】図8に示される可変焦点距離レンズの後方レンズ群の一部の第4Aレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うための機構を示す図であり、光軸に垂直な断面図である。
【図11】製造時の偏心誤差がある場合に、第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群の一部の第4Aレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行って結像性能を補正した場合の第2実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【図12】第3実施例に係る可変焦点距離レンズの機構を示す断面図である。
【図13】製造時の偏心誤差がある場合に、第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群の一部の第4Aレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行って結像性能を補正した場合の第3実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【図14】第4実施例に係る可変焦点距離レンズの機構を示す断面図である。
【図15】製造時の偏心誤差がある場合に、第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群をシフト偏心させる位置調整を行って結像性能を補正した場合の第4実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【図16】第1実施例に係る可変焦点距離レンズを備えたカメラの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願の一実施形態に係る可変焦点距離レンズと、可変焦点距離レンズの調整方法について説明する。
【0012】
本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、物体側から順に、負屈折力の前方レンズ群と、正屈折力の中央レンズ群と、正屈折力の後方レンズ群とを有し、前方レンズ群内の少なくとも1つの空気間隔と、前方レンズ群と中央レンズ群の空気間隔と、中央レンズ群と後方レンズ群の空気間隔とを変化させることにより焦点距離を変化させ、前方レンズ群と中央レンズ群と後方レンズ群とを組み立てた後に、前方レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させ、後方レンズ群の一部または全部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行う調整機構を有する構成である。
【0013】
この構成により、製造時の偏心誤差によって発生する偏心収差による結像性能の劣化を広角端から望遠端までの全焦点域で補正できる。なお、前方レンズ群の一部のレンズ群または後方レンズ群の一部または全部のレンズ群のどちらか一方のみで補正しようとすると、良好に偏心収差が補正できるのは焦点距離範囲のごく一部に限られ、その他の焦点距離範囲では偏心収差が残存し結像性能の劣化を十分補正できない。この問題は、可変焦点距離レンズの変倍比が大きくなるほど顕著となる。
【0014】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、以下の条件式(1)、(2)、(3)を満足することが望ましい。
(1) 2.0<MAt/MAw
(2) MBt/MBw<2.0
(3) 2.0<(MAt/MAw)/(MBt/MBw)
但し、MAtは可変焦点距離レンズの望遠端状態における前方レンズ群の一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、MAwは可変焦点距離レンズの広角端状態における前方レンズ群の一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、MBtは可変焦点距離レンズの望遠端状態における後方レンズ群の一部または全部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、MBwは可変焦点距離レンズの広角端状態における後方レンズ群の一部または全部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率である。なお、後方レンズ群の一部または全部のレンズ群と像面との間にレンズ群が存在しない場合は、MBt=MBw=1.0とする。
【0015】
条件式(1)〜(3)は、可変焦点距離レンズの前方レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させ、後方レンズ群の一部または全部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことで、可変焦点距離レンズの広角端から望遠端までの全焦点域で偏心収差による結像性能の劣化を補正するのに適したレンズ群の倍率関係を規定する。前方レンズ群の一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率の変化を、後方レンズ群の一部または全部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率の変化に比べて大きくするよう構成することにより、広角端から望遠端までの全焦点域で良好な補正を実現できる。
【0016】
条件式(1)の下限値を下回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
条件式(2)の上限値を上回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
条件式(3)の下限値を下回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
なお、実施形態の効果を確実にするために、条件式(1)の下限値を2.5にすることが好ましい。
また、実施形態の効果を確実にするために、条件式(2)の上限値を1.5にすることが好ましい。
また、実施形態の効果を確実にするために、条件式(3)の下限値を2.5にすることが好ましい。
【0017】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、前方レンズ群は、物体側から順に、正屈折力の第1レンズ群と負屈折力の第2レンズ群とからなり、広角端状態から望遠端状態への変倍に際し、第1レンズ群と第2レンズ群の空気間隔は拡大し、第2レンズ群と中央レンズ群の空気間隔は縮小し、中央レンズ群と後方レンズ群の空気間隔は縮小することが望ましい。
この構成により、高変倍率化の達成に有利である。
【0018】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、調整機構は、第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群全部をシフト偏心させる位置調整を行うことが望ましい。
第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群全部をシフト偏心させる位置調整によって、広角端から望遠端までの全焦点域で偏心収差の良好な補正を実現できる。
【0019】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、以下の条件式(4)、(5)、(6)を満足することが望ましい。
(4) 5.0<M1t/M1w
(5) M4t/M4w<2.0
(6) 5.0<(M1t/M1w)/(M4t/M4w)
但し、M1tは可変焦点距離レンズの望遠端状態における第1レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M1wは可変焦点距離レンズの広角端状態における第1レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M4tは可変焦点距離レンズの望遠端状態における後方レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M4wは可変焦点距離レンズの広角端状態における後方レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率である。なお、後方レンズ群と像面との間にレンズ群が存在しない場合は、M4t=M4w=1.0とする。
【0020】
条件式(4)〜(6)は、可変焦点距離レンズの第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群全部をシフト偏心させる位置調整を行うことで、可変焦点距離レンズの広角端から望遠端までの全焦点域で偏心収差による結像性能の劣化を補正するのに適したレンズ群の倍率関係を規定する。第1レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率の変化を、後方レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率の変化に比べて大きくするよう構成することにより、広角端から望遠端までの全焦点域で良好な補正を実現できる。
【0021】
条件式(4)の下限値を下回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
条件式(5)の上限値を上回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
条件式(6)の下限値を下回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
なお、実施形態の効果を確実にするために、条件式(4)の下限値を10.0にすることが好ましい。
また、実施形態の効果を確実にするために、条件式(5)の上限値を1.5にすることが好ましい。
また、実施形態の効果を確実にするために、条件式(6)の下限値を10.0にすることが好ましい。
【0022】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、調整機構は、第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群の一部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことが望ましい。
第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群の一部をシフト偏心させる位置調整によって、広角端から望遠端までの全焦点域で偏心収差の良好な補正を実現できる。
【0023】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、以下の条件式(7)、(8)、(9)を満足することが望ましい。
(7) 2.0<M2t/M2w
(8) M4At/M4Aw<2.0
(9) 2.0<(M2t/M2w)/(M4At/M4Aw)
但し、M2tは可変焦点距離レンズの望遠端状態における第2レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M2wは可変焦点距離レンズの広角端状態における第2レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M4Atは可変焦点距離レンズの望遠端状態における後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M4Awは可変焦点距離レンズの広角端状態における後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率である。なお、後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間にレンズ群が存在しない場合は、M4At=M4Aw=1.0とする。
【0024】
条件式(7)〜(9)は、可変焦点距離レンズの第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群の一部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことで、可変焦点距離レンズの広角端から望遠端までの全焦点域で偏心収差による結像性能の劣化を補正するのに適したレンズ群の倍率関係を規定する。第2レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率の変化を、後方レンズ群の一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率の変化に比べて大きくするよう構成することにより、広角端から望遠端までの全焦点域で良好な補正を実現できる。
【0025】
条件式(7)の下限値を下回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
条件式(8)の上限値を上回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
条件式(9)の下限値を下回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
なお、実施形態の効果を確実にするために、条件式(7)の下限値を2.5にすることが好ましい。
また、実施形態の効果を確実にするために、条件式(8)の上限値を1.5にすることが好ましい。
また、実施形態の効果を確実にするために、条件式(9)の下限値を2.5にすることが好ましい。
【0026】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、調整機構は、第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群の一部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことが望ましい。
第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群の一部をシフト偏心させる位置調整によって、広角端から望遠端までの全焦点域で偏心収差の良好な補正を実現できる。
【0027】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、以下の条件式(10)、(11)、(12)を満足することが望ましい。
(10) 5.0<M1t/M1w
(11) M4At/M4Aw<2.0
(12) 5.0<(M1t/M1w)/(M4At/M4Aw)
但し、M1tは可変焦点距離レンズの望遠端状態における第1レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M1wは可変焦点距離レンズの広角端状態における第1レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M4Atは可変焦点距離レンズの望遠端状態における後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M4Awは可変焦点距離レンズの広角端状態における後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率である。なお、後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間にレンズ群が存在しない場合は、M4At=M4Aw=1.0とする。
【0028】
条件式(10)〜(12)は、可変焦点距離レンズの第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群の一部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことで、可変焦点距離レンズの広角端から望遠端までの全焦点域で偏心収差による結像性能の劣化を補正するのに適したレンズ群の倍率関係を規定する。第1レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率の変化を、後方レンズ群の一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率の変化に比べて大きくするよう構成することにより、広角端から望遠端までの全焦点域で良好な補正を実現できる。
【0029】
条件式(10)の下限値を下回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
条件式(11)の上限値を上回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
条件式(12)の下限値を下回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
【0030】
なお、実施形態の効果を確実にするために、条件式(10)の下限値を10.0にすることが好ましい。
また、実施形態の効果を確実にするために、条件式(11)の上限値を1.5にすることが好ましい。
また、実施形態の効果を確実にするために、条件式(12)の下限値を10.0にすることが好ましい。
【0031】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、調整機構は、第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群全部をシフト偏心させる位置調整を行うことが望ましい。
【0032】
第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群全部をシフト偏心させる位置調整によって、広角端から望遠端までの全焦点域で偏心収差の良好な補正を実現できる。
【0033】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、以下の条件式(13)、(14)、(15)を満足することが望ましい。
(13) 2.0<M2t/M2w
(14) M4t/M4w<2.0
(15) 2.0<(M2t/M2w)/(M4t/M4w)
但し、M2tは可変焦点距離レンズの望遠端状態における第2レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M2wは可変焦点距離レンズの広角端状態における第2レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M4tは可変焦点距離レンズの望遠端状態における後方レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率、M4wは可変焦点距離レンズの広角端状態における後方レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率である。なお、後方レンズ群と像面との間にレンズ群が存在しない場合は、M4t=M4w=1.0とする。
【0034】
条件式(13)〜(15)は、可変焦点距離レンズの第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群全部をシフト偏心させる位置調整を行うことで、可変焦点距離レンズの広角端から望遠端までの全焦点域で偏心収差による結像性能の劣化を補正するのに適したレンズ群の倍率関係を規定する。第2レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率の変化を、後方レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率の変化に比べて大きくするよう構成することにより、広角端から望遠端までの全焦点域で良好な補正を実現できる。
【0035】
条件式(13)の下限値を下回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
条件式(14)の上限値を上回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
条件式(15)の下限値を下回った場合、広角端から望遠端までの全焦点域での偏心収差の補正が困難となる。
【0036】
なお、実施形態の効果を確実にするために、条件式(13)の下限値を2.5にすることが好ましい。
また、実施形態の効果を確実にするために、条件式(14)の上限値を1.5にすることが好ましい。
また、実施形態の効果を確実にするために、条件式(15)の下限値を2.5にすることが好ましい。
【0037】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、後方レンズ群の一部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行う場合には、後方レンズ群は、物体側から順に、正屈折力の第4Aレンズ群と、第4Bレンズ群とからなり、調整機構は第4Aレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことが望ましい。
第4Aレンズ群をシフト偏心させることにより、偏心収差の良好な補正を実現できる。
【0038】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズの調整方法は、物体側から順に、負屈折力の前方レンズ群と、正屈折力の中央レンズ群と、正屈折力の後方レンズ群とを有し、前方レンズ群内の少なくとも1つの空気間隔と、前方レンズ群と中央レンズ群の空気間隔と、中央レンズ群と後方レンズ群の空気間隔とを変化させることにより焦点距離を変化させる可変焦点距離レンズの調整方法であって、前方レンズ群と中央レンズ群と後方レンズ群とを組み立てた後に、前方レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させ、後方レンズ群の一部または全部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行う。
【0039】
この調整方法により、製造時の偏心誤差によって発生する偏心収差による結像性能の劣化を広角端から望遠端までの全焦点域で補正できる。なお、前方レンズ群の一部のレンズ群または、後方レンズ群の一部または全部のレンズ群のどちらか一方のみで補正しようとすると、良好に偏心収差が補正できるのは焦点距離範囲のごく一部に限られ、その他の焦点距離範囲では偏心収差が残存し結像性能の劣化を十分補正できない。この問題は、可変焦点距離レンズの変倍比が大きくなるほど顕著となる。
【0040】
(実施例)
以下、本実施形態に係る各実施例について図面を参照しつつ説明する。
【0041】
第1実施例から第4実施例に係る可変焦点距離レンズは、レンズ構成が共通で、製造時の偏心誤差による結像性能の劣化を良好に補正するための後述する調整機構が相違する。よって、重複する部分について、ここでまとめて説明を行う。
【0042】
図1は、第1実施例から第4実施例に係る可変焦点距離レンズのレンズ構成を示す断面図である。
【0043】
図1に示すように、第1実施例から第4実施例に係る可変焦点距離レンズのレンズ系は、光軸に沿って物体側から順に、負屈折力の前方レンズ群GFと、正屈折力の中央レンズ群GMと、正屈折力の後方レンズ群GRとから構成されている。前方レンズ群GFは、光軸に沿って物体側から順に、正屈折力の第1レンズ群G1と、負屈折力の第2レンズ群G2とからなり、中央レンズ群GMは、光軸に沿って物体側から順に、正屈折力の第3Aレンズ群G3Aと、負屈折力の第3Bレンズ群G3Bと、負屈折力の第3Cレンズ群G3Cとからなり、中央レンズ群GMの物体側に虹彩絞りSを有し、後方レンズ群GRは、光軸に沿って物体側から順に、正屈折力の第4Aレンズ群G4Aと、負屈折力の第4Bレンズ群G4Bとからなる。
【0044】
広角端状態Wから望遠端状態Tへの変倍に際し、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の空気間隔が拡大し、第2レンズ群G2と中央レンズ群GMの空気間隔が縮小し、中央レンズ群GMと後方レンズ群GRの空気間隔が縮小するように、各レンズ群が移動する。
【0045】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と両凸正レンズL12との接合正レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13とからなる。
【0046】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と、両凹負レンズL22と、両凸正レンズL23と、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL24と物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL25との接合負レンズとからなり、負メニスカスレンズL21は物体側に薄い樹脂層を有し、樹脂面を非球面形状としたレンズである。
【0047】
第3Aレンズ群G3Aは、光軸に沿って物体側から順に、両凸正レンズL31と、両凸正レンズL32と、両凸正レンズL33と両凹負レンズL34との接合正レンズとからなる。
【0048】
第3Bレンズ群G3Bは、光軸に沿って物体側から順に、両凹負レンズL35と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL36との接合負レンズからなり、両凹負レンズL35は物体側の面が非球面のレンズである。
【0049】
第3Cレンズ群G3Cは、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL37からなる。
【0050】
第4Aレンズ群G4Aは、両凸正レンズL41からなり、両凸正レンズL41は物体側の面が非球面のレンズである。
【0051】
第4Bレンズ群G4Bは、光軸に沿って物体側から順に、両凹負レンズL42と両凸正レンズL43との接合負レンズからなる。
【0052】
像面Iは、不図示の撮像素子上に形成され、該撮像素子はCCDやCMOS等から構成されている。
【0053】
以下の表1に第1実施例から第4実施例に係る可変焦点距離レンズのレンズ系の諸元値を掲げる。
【0054】
表中の(面データ)において、物面は物体面、面番号は物体側からの面の番号、rは曲率半径、dは面間隔、ndはd線(波長λ=587.6nm)における屈折率、νdはd線(波長λ=587.6nm)におけるアッベ数、(可変)は可変面間隔、(絞り)は虹彩絞りS、像面は像面Iをそれぞれ表している。なお、空気の屈折率nd=1.000000は記載を省略している。また、曲率半径r欄の「∞」は平面を示している。
【0055】
(非球面データ)において、非球面は以下の式で表される。
X(y)=(y2/r)/[1+[1−κ(y2/r2)]1/2]
+A4×y4+A6×y6+A8×y8+A10×y10
ここで、光軸に垂直な方向の高さをy、高さyにおける光軸方向の変位量(各非球面の頂点の接平面から各非球面までの光軸に沿った距離)をX(y)、基準球面の曲率半径(近軸曲率半径)をr、円錐係数をκ、n次の非球面係数をAnとする。なお、「E-n」は「×10−n」を示し、例えば「1.234E-05」は「1.234×10−5」を示す。また、各非球面は、(面データ)において、面番号の右側に「*」を付して示している。
【0056】
(各種データ)において、ズーム比はレンズ系の変倍比、Wは広角端状態、Mは中間焦点距離状態、Tは望遠端状態、fは焦点距離、FNOはFナンバー、2ωは画角(単位:「°」)、Yは像高、TLはレンズ系全長、Bfはバックフォーカス、diは面番号iでの可変面間隔値を表している。
【0057】
(ズームレンズ群データ)は、各レンズ群の始面番号とレンズ群の焦点距離をそれぞれ示す。
【0058】
なお、以下の全ての諸元値において、掲載されている焦点距離f、曲率半径r、面間隔dその他の長さ等は、特記の無い場合一般に「mm」が使われるが、光学系は比例拡大または比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。また、単位は「mm」に限定されること無く他の適当な単位を用いることもできる。
【0059】
(表1)
(面データ)
面番号 r d nd νd
物面 ∞ ∞
1 123.9595 2.0000 1.850260 32.35
2 65.8189 9.3000 1.497820 82.52
3 -679.8190 0.1000
4 66.6349 6.2000 1.593190 67.87
5 419.9308 (可変)
6* 162.3242 0.1500 1.553890 38.09
7 146.0754 1.0000 1.834807 42.72
8 16.1304 6.5500
9 -35.2760 1.0000 1.882997 40.76
10 60.4450 0.1000
11 37.3723 5.2000 1.846660 23.78
12 -32.7279 0.8214
13 -23.9463 1.0000 1.882997 40.76
14 -252.4150 2.0000 1.808090 22.79
15 -72.4479 (可変)
16(絞り) ∞ 1.0000
17 36.7222 3.3000 1.593190 67.87
18 -118.1963 0.1000
19 41.3768 3.1500 1.487490 70.41
20 -92.3429 0.1000
21 42.3403 3.8000 1.487490 70.41
22 -41.0036 1.0000 1.805181 25.43
23 259.3609 3.8191
24* -63.6485 1.0000 1.806100 40.94
25 22.0000 2.9000 1.805181 25.43
26 150.5781 4.2000
27 -45.8244 1.0000 1.882997 40.76
28 -215.9895 (可変)
29* 77.1794 3.1500 1.589130 61.16
30 -37.1187 0.1000
31 -261.2949 1.0000 1.882997 40.76
32 39.9808 4.4000 1.518229 58.93
33 -48.5209 (Bf)
像面 ∞
(非球面データ)
第6面
κ = -5.7774
A4 = 6.79980E-06
A6 = -2.52730E-08
A8 = 8.26150E-11
A10 = -1.02860E-13
第24面
κ = 2.8196
A4 = 4.59750E-06
A6 = 4.28350E-09
A8 = 0.00000E+00
A10 = 0.00000E+00
第29面
κ = -6.5363
A4 = -1.95310E-05
A6 = 1.79050E-08
A8 = -1.55070E-10
A10 = 4.13770E-13
(各種データ)
ズーム比 15.70
W M T
f = 18.54 50.00 290.99
FNO = 4.11 5.39 5.86
2ω = 78.00 30.78 5.48
Y = 14.20 14.20 14.20
TL = 160.01 187.27 237.80
Bf = 39.12 69.40 99.17
d5 2.15 25.00 65.69
d15 40.45 20.28 2.00
d28 8.85 3.15 1.50
(ズームレンズ群データ)
群 始面 焦点距離
F 1 −20.11(W) −28.50(M) −110.68(T)
1 1 103.25
2 6 −15.13
M 17 44.77
3A 17 25.59
3B 24 −54.94
3C 27 −66.05
R 29 47.36
4A 29 42.98
4B 31 −698.29
【0060】
図2は、製造時に偏心誤差が発生しなかった場合の第1実施例から第4実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【0061】
図3は、製造時に偏心誤差が発生した場合の第1実施例から第4実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【0062】
各収差図において、Yは像高(単位:「mm」)を表し、像高10mm、0mm(センター)、−10mmにおけるコマ収差がそれぞれ示されている。なお、以下の説明で参照する他の収差図においても同様である。
【0063】
(第1実施例)
次に、第1実施例に係る可変焦点距離レンズの調整機構について説明する。第1実施例は、製造時の偏心誤差による結像性能の劣化を良好に補正するため、第1レンズ群G1をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群GRをシフト偏心させる位置調整を行う調整機構を有する。
【0064】
図4は、第1実施例に係る可変焦点距離レンズの機構を示す断面図である。
【0065】
図5は、図4に示される可変焦点距離レンズの第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整を行うための機構を示す図であり、物体側から見た図である。
【0066】
図6は、図4に示される可変焦点距離レンズの後方レンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うための機構を示す図であり、像側から見た図である。
【0067】
図4に示すように、第1実施例に係る可変焦点距離レンズ1において、第1レンズ群G1は環状の第1保持部材3に保持され、第2レンズ群G2は略円筒状の第2保持部材5に保持され、中央レンズ群GMは略円筒状の第3保持部材39に保持され、後方レンズ群GRは環状の第4保持部材41に保持されている。
【0068】
第1保持部材3は、第1ネジ13と第2ネジ15によって環状の第1摺動部材17に固定され、第2保持部材5は環状の第2摺動部材19に固定され、第3保持部材39は環状の第3摺動部材43に固定され、第4保持部材41は、第3ネジ45によって環状の第4摺動部材47に固定されている。
【0069】
第1実施例の可変焦点距離レンズ1のレンズ系は、円筒状の固定筒29と、固定筒29に回転可能に内嵌した円筒状のカム筒31の内側に収納されている。第1摺動部材17、第2摺動部材19、第3摺動部材43、第4摺動部材47の外周の縁部には、図示しないカムピンがそれぞれ設けられており、これらのカムピンはカム筒31に形成された図示しないカム溝と係合している。図示しない機構によって固定筒29に対してカム筒31を回転させることにより、第1摺動部材17、第2摺動部材19、第3摺動部材43、第4摺動部材47を光軸に沿って前後に移動させることができる。
【0070】
固定筒29にはマウント部材33が固定され、固定筒29はマウント部材33を介して不図示のカメラ等の撮像装置に固定される。また、虹彩絞りSは、第3摺動部材43に固定された絞り機構35によって開閉される。
【0071】
第1保持部材3は、第1レンズ群G1を保持する円筒部3aと、円筒部3aの径方向外方に延在するフランジ部3bとを有する。フランジ部3bには、フランジ部3bを光軸方向に貫通する3つのバカ穴3cが周方向に略等間隔で形成されていると共に、フランジ部3bを光軸方向に貫通する3つのネジ穴3dが周方向に略等間隔で形成されている。これらの計6つのバカ穴3cとネジ穴3dは、周方向に略等間隔で交互に形成されている。バカ穴3cの径は、第1ネジ13の軸直径よりも大きく形成されている。また、第1摺動部材17には、光軸方向に見て3つのバカ穴3cと一致する位置に3つのネジ穴17aが形成されている。
【0072】
図4と図5に示すように、3つの第1ネジ13は、3つのバカ穴3cにそれぞれ挿通されると共に、3つのネジ穴17aにそれぞれ螺合している。また、3つの第2ネジ15は、3つのネジ穴3dにそれぞれ螺合している。
【0073】
第1ネジ13を締める又は緩めることで、第1ネジ13の頭部が第1保持部材3を光軸方向像側に押す力を加減し、第2ネジ15を締める又は緩めることで、第2ネジ15が第1保持部材3を光軸方向物体側に引く力を加減することによって、第1摺動部材17に対する第1保持部材3の傾き具合を調整して固定することができる。即ち、光軸に対して第1レンズ群G1をチルト偏心させる位置調整を行うことができる。
【0074】
第4保持部材41は、後方レンズ群GRを保持する円筒部41aと、円筒部41aの径方向外方に延在するフランジ部41bとを有する。フランジ部41bには、フランジ部41bを光軸方向に貫通する3つのバカ穴41cが周方向に略等間隔で形成されている。バカ穴41cの径は、第3ネジ45の軸直径よりも大きく形成されている。また、第4摺動部材47には、光軸方向に見て3つのバカ穴41cと一致する位置に3つのネジ穴47aが形成されている。
【0075】
図4と図6に示すように、3つの第3ネジ45は、3つのバカ穴41cにそれぞれ挿通されると共に、3つのネジ穴47aにそれぞれ螺合しており、フランジ部41b、即ち第4保持部材41を像側から第4摺動部材47に固定している。
【0076】
第3ネジ45の軸直径に比べてバカ穴41cの径に余裕があるため、締め付けてある第3ネジ45を一旦緩めることにより、第4摺動部材47に対して第4保持部材41を光軸に垂直な方向へ移動することができる。そして第4保持部材41を最適な位置に移動した後、再び第3ネジ45を締めることで、第4保持部材41を最適な位置に固定することができる。即ち、光軸に対して後方レンズ群GRをシフト偏心させる位置調整を行うことができる。
【0077】
以下の表2に、第1実施例に係る可変焦点距離レンズ1における条件式(1)〜(6)の対応値を掲げる。
【0078】
なお、第1実施例において、MAtは望遠端状態における第2レンズ群G2と中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、MAwは広角端状態における第2レンズ群G2と中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、後方レンズ群GRと像面Iとの間にレンズ群が存在しないのでMBt=MBw=1.0、M1tは望遠端状態における第2レンズ群G2と中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、M1wは広角端状態における第2レンズ群G2と中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、後方レンズ群GRと像面Iとの間にレンズ群が存在しないのでM4t=M4w=1.0である。
【0079】
(表2)
(条件式対応値)
(1) MAt/MAw=15.70
(2) MBt/MBw=1.000
(3) (MAt/MAw)/(MBt/MBw)=15.70
(4) M1t/M1w=15.70
(5) M4t/M4w=1.000
(6) (M1t/M1w)/(M4t/M4w)=15.70
【0080】
図7は、製造時の偏心誤差がある場合に、第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群をシフト偏心させる位置調整を行って結像性能を補正した場合の第1実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【0081】
図2、図3、図7の収差図を比較すると、図7では製造時の偏心誤差による結像性能の劣化が広角端状態から望遠端状態にわたって良好に補正されていることがわかる。
【0082】
(第2実施例)
次に、第2実施例に係る可変焦点距離レンズの調整機構について説明する。第2実施例は、製造時の偏心誤差による結像性能の劣化を良好に補正するため、第2レンズ群G2をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群GRの一部の第4Aレンズ群G4Aをシフト偏心させる位置調整を行う調整機構を有する。なお、第1実施例と構造が同じ部分は同一の符号を用いて説明する。
【0083】
図8は、第2実施例に係る可変焦点距離レンズの機構を示す断面図である。
【0084】
図9は、図8に示される可変焦点距離レンズの第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整を行うための機構を示す図であり、物体側から斜めに見た図である。
【0085】
図10は、図8に示される可変焦点距離レンズの後方レンズ群の一部の第4Aレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うための機構を示す図であり、光軸に垂直な断面図である。
【0086】
図8に示すように、第2実施例に係る可変焦点距離レンズ61において、第1レンズ群G1は略円筒状の第1保持部材51に保持され、第2レンズ群G2は略円筒状の第2保持部材53に保持され、中央レンズ群GMは略円筒状の第3保持部材39に保持され、後方レンズ群GRの一部の第4Aレンズ群G4Aは環状の第4保持部材7に保持され、後方レンズ群GRの残る一部の第4Bレンズ群G4Bは略円筒状の第5保持部材11に保持されている。
【0087】
第1保持部材51は環状の第1摺動部材55に固定され、第2保持部材53は環状の第2摺動部材57に固定され、第3保持部材39は環状の第3摺動部材43に固定され、第4保持部材7は、第4ネジ21によって環状の第4摺動部材23に固定され、第5保持部材11も環状の第4摺動部材23に固定されている。
【0088】
第2実施例の可変焦点距離レンズ61のレンズ系は、円筒状の固定筒29と、固定筒29に回転可能に内嵌した円筒状のカム筒31の内側に収納されている。第1摺動部材55、第2摺動部材57、第3摺動部材43、第4摺動部材23の外周の縁部には、図示しないカムピンがそれぞれ設けられており、これらのカムピンはカム筒31に形成された図示しないカム溝と係合している。なお、第2摺動部材57に設けられたカムピン57dは図9に図示されている。図示しない機構によって固定筒29に対してカム筒31を回転させることにより、第1摺動部材55、第2摺動部材57、第3摺動部材43、第4摺動部材23を光軸に沿って前後に移動させることができる。
【0089】
固定筒29にはマウント部材33が固定され、固定筒29はマウント部材33を介して不図示のカメラ等の撮像装置に固定される。また、虹彩絞りSは、第3摺動部材43に固定された絞り機構35によって開閉される。
【0090】
図8と図9に示すように、第2摺動部材57は、光軸を中心とする2重の円環状構造を有し、第2保持部材53を保持する内側円環部57aと、外側円環部57bとが、内側円環部57aの外周に沿って略等間隔で形成された3つの結合部57cによってつながっている。外側円環部57bの外周には、周方向に略等間隔で3つの上述のカムピン57dが固定されている。
【0091】
外側円環部57bには、周方向に延びる3つの長孔57eが周方向に略等間隔で形成されている。それぞれの長孔57eの両端には、略光軸方向物体側に延びる切欠き57fが形成されている。また、それぞれの長孔57eの中央にはイモビス59が嵌っており、この部分の長孔57e内の物体側の面には、イモビス59をカム筒31の径方向内方にねじ込むことで長孔57eを光軸方向に押し広げるためのテーパー面57gが形成されている。なお、第2摺動部材57を光軸方向に見たとき、それぞれのイモビス59と、その近傍の結合部57c、光軸は、略同一直線上にある。
【0092】
固定筒29には、径方向に見て3つのイモビス59と一致する位置に3つの穴29bが形成されており、カム筒31には、径方向に見て3つのイモビス59と一致する位置に3つの穴31bが形成されている。それぞれのイモビス59の頭部には六角形の穴59aが形成されており、それぞれのイモビス59は、外部から穴29bと穴31bを通してヘックスキーを差し込み、回転操作することができるようになっている。なお、塵埃などが固定筒29やカム筒31の内部に入り込むことを防ぐため、イモビス59を回転操作する時以外は、図示しないゴムリングなどで穴29bと穴31bを塞いでいる。
【0093】
イモビス59を長孔57eにねじ込むことにより、長孔57eを押し広げて外側円環部57bを弾性変形させ、結合部57cを介して外側円環部57bにつながった内側円環部57aをカムピン57dに対して傾けることができる。なお、長孔57eに切欠き57fが形成されているため、イモビス59のねじ込みにより外側円環部57bを変形させやすくなる。
【0094】
イモビス59を締める又は緩めることにより、内側円環部57aが保持する第2保持部材53のカムピン57dに対する傾き具合を調整して固定することができる。即ち、光軸に対して第2レンズ群G2をチルト偏心させる位置調整を行うことができる。
【0095】
第4保持部材7は、第4Aレンズ群G4Aを保持する円筒部7aと、円筒部7aの径方向外方に延在するフランジ部7bとを有し、フランジ部7bは第4摺動部材23に形成された円環状の溝23aに嵌め込まれている。第4摺動部材23には、第4摺動部材23を円筒部7aの径方向に貫通する3つのネジ穴23bが溝23aに沿って略等間隔で形成されている。また、固定筒29には、円筒部7aの径方向に見て3つのネジ穴23bと一致する位置に3つの穴29aが形成されており、カム筒31には、円筒部7aの径方向に見て3つのネジ穴23bと一致する位置に3つの穴31aが形成されている。
【0096】
図8と図10に示すように、3つの第4ネジ21は、3つのネジ穴23bにそれぞれ螺合すると共に、先端がフランジ部7bの縁部にそれぞれ当接している。また、それぞれの第4ネジ21は、外部から穴29aと穴31aを通してドライバーを差し込み、回転操作することができるようになっている。なお、塵埃などが固定筒29やカム筒31の内部に入り込むことを防ぐため、第4ネジ21を回転操作する時以外は、図示しないゴムリングなどで穴29aと穴31aを塞いでいる。
【0097】
第4ネジ21を締める又は緩めることで、第4ネジ21を円筒部7aの径方向に進退させることにより、第4摺動部材23に対して第4保持部材7を光軸に垂直な方向へ移動して固定することができる。即ち、光軸に対して第4Aレンズ群G4Aをシフト偏心させる位置調整を行うことができる。
【0098】
以下の表3に、第2実施例に係る可変焦点距離レンズ61における条件式(1)〜(3)と条件式(7)〜(9)の対応値を掲げる。
【0099】
なお、第2実施例において、MAtは望遠端状態における中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、MAwは広角端状態における中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、MBtは望遠端状態における後方レンズ群GRの一部の第4Bレンズ群G4Bの結像倍率、MBwは広角端状態における後方レンズ群GRの一部の第4Bレンズ群G4Bの結像倍率、M2tは望遠端状態における中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、M2wは広角端状態における中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、M4Atは望遠端状態における後方レンズ群GRの一部の第4Bレンズ群G4Bの結像倍率、M4Awは広角端状態における後方レンズ群GRの一部の第4Bレンズ群G4Bの結像倍率である。
【0100】
(表3)
(条件式対応値)
(1) MAt/MAw=2.85
(2) MBt/MBw=0.927
(3) (MAt/MAw)/(MBt/MBw)=3.07
(7) M2t/M2w=2.85
(8) M4At/M4Aw=0.927
(9) (M2t/M2w)/(M4At/M4Aw)=3.07
【0101】
図11は、製造時の偏心誤差がある場合に、第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群の一部の第4Aレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行って結像性能を補正した場合の第2実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【0102】
図2、図3、図11の収差図を比較すると、図11では製造時の偏心誤差による結像性能の劣化が広角端状態から望遠端状態にわたって良好に補正されていることがわかる。
【0103】
(第3実施例)
次に、第3実施例に係る可変焦点距離レンズの調整機構について説明する。第3実施例は、製造時の偏心誤差による結像性能の劣化を良好に補正するため、第1レンズ群G1をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群GRの一部の第4Aレンズ群G4Aをシフト偏心させる位置調整を行う調整機構を有する。なお、第1実施例、第2実施例と構造が同じ部分は同一の符号を用いて説明するか、或いは同一の符号を図に示して説明を省略する。
【0104】
図12は、第3実施例に係る可変焦点距離レンズの機構を示す断面図である。
【0105】
図12に示すように、第3実施例に係る可変焦点距離レンズ37において、第1レンズ群G1は環状の第1保持部材3に保持され、第2レンズ群G2は略円筒状の第2保持部材5に保持され、中央レンズ群GMは略円筒状の第3保持部材39に保持され、後方レンズ群GRの一部の第4Aレンズ群G4Aは環状の第4保持部材7に保持され、後方レンズ群GRの残る一部の第4Bレンズ群G4Bは略円筒状の第5保持部材11に保持されている。
【0106】
第1保持部材3は、第1ネジ13と第2ネジ15によって環状の第1摺動部材17に固定され、第2保持部材5は環状の第2摺動部材19に固定され、第3保持部材39は環状の第3摺動部材43に固定され、第4保持部材7は、第4ネジ21によって環状の第4摺動部材23に固定され、第5保持部材11も環状の第4摺動部材23に固定されている。
【0107】
第3実施例の可変焦点距離レンズ37のレンズ系は、円筒状の固定筒29と、固定筒29に回転可能に内嵌した円筒状のカム筒31の内側に収納されている。第1摺動部材17、第2摺動部材19、第3摺動部材43、第4摺動部材23の外周の縁部には、図示しないカムピンがそれぞれ設けられており、これらのカムピンはカム筒31に形成された図示しないカム溝と係合している。図示しない機構によって固定筒29に対してカム筒31を回転させることにより、第1摺動部材17、第2摺動部材19、第3摺動部材43、第4摺動部材23を光軸に沿って前後に移動させることができる。
【0108】
固定筒29にはマウント部材33が固定され、固定筒29はマウント部材33を介して不図示のカメラ等の撮像装置に固定される。また、虹彩絞りSは、第3摺動部材43に固定された絞り機構35によって開閉される。
【0109】
第1保持部材3を第1摺動部材17に固定するための構造は、第1実施例と同じであるため同一の符号を図12に示して説明を省略するが、第1実施例と同様の方法により、第1摺動部材17に対する第1保持部材3の傾き具合を調整して固定することができる。即ち、光軸に対して第1レンズ群G1をチルト偏心させる位置調整を行うことができる。
【0110】
第4保持部材7を第4摺動部材23に固定するための構造は、第2実施例と同じであるため同一の符号を図12に示して説明を省略するが、第2実施例と同様の方法により、第4摺動部材23に対して第4保持部材7を光軸に垂直な方向へ移動して固定することができる。即ち、光軸に対して第4Aレンズ群G4Aをシフト偏心させる位置調整を行うことができる。
【0111】
以下の表4に、第3実施例に係る可変焦点距離レンズ37における条件式(1)〜(3)と条件式(10)〜(12)の対応値を掲げる。
【0112】
なお、第3実施例において、MAtは望遠端状態における第2レンズ群G2と中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、MAwは広角端状態における第2レンズ群G2と中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、MBtは望遠端状態における後方レンズ群GRの一部の第4Bレンズ群G4Bの結像倍率、MBwは広角端状態における後方レンズ群GRの一部の第4Bレンズ群G4Bの結像倍率、M1tは望遠端状態における第2レンズ群G2と中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、M1wは広角端状態における第2レンズ群G2と中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、M4Atは望遠端状態における後方レンズ群GRの一部の第4Bレンズ群G4Bの結像倍率、M4Awは広角端状態における後方レンズ群GRの一部の第4Bレンズ群G4Bの結像倍率である。
【0113】
(表4)
(条件式対応値)
(1) MAt/MAw=15.70
(2) MBt/MBw=0.927
(3) (MAt/MAw)/(MBt/MBw)=16.94
(10) M1t/M1w=15.70
(11) M4At/M4Aw=0.927
(12) (M1t/M1w)/(M4At/M4Aw)=16.94
【0114】
図13は、製造時の偏心誤差がある場合に、第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群の一部の第4Aレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行って結像性能を補正した場合の第3実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【0115】
図2、図3、図13の収差図を比較すると、図13では製造時の偏心誤差による結像性能の劣化が広角端状態から望遠端状態にわたって良好に補正されていることがわかる。
【0116】
(第4実施例)
次に、第4実施例に係る可変焦点距離レンズの調整機構について説明する。第4実施例は、製造時の偏心誤差による結像性能の劣化を良好に補正するため、第2レンズ群G2をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群GRをシフト偏心させる位置調整を行う調整機構を有する。なお、第1実施例、第2実施例と構造が同じ部分は同一の符号を用いて説明するか、或いは同一の符号を図に示して説明を省略する。
【0117】
図14は、第4実施例に係る可変焦点距離レンズの機構を示す断面図である。
【0118】
図14に示すように、第4実施例に係る可変焦点距離レンズ49において、第1レンズ群G1は略円筒状の第1保持部材51に保持され、第2レンズ群G2は略円筒状の第2保持部材53に保持され、中央レンズ群GMは略円筒状の第3保持部材39に保持され、後方レンズ群GRは環状の第4保持部材41に保持されている。
【0119】
第1保持部材51は環状の第1摺動部材55に固定され、第2保持部材53は環状の第2摺動部材57に固定され、第3保持部材39は環状の第3摺動部材43に固定され、第4保持部材41は、第3ネジ45によって環状の第4摺動部材47に固定されている。
【0120】
第4実施例の可変焦点距離レンズ49のレンズ系は、円筒状の固定筒29と、固定筒29に回転可能に内嵌した円筒状のカム筒31の内側に収納されている。第1摺動部材55、第2摺動部材57、第3摺動部材43、第4摺動部材47の外周の縁部には、図示しないカムピンがそれぞれ設けられており、これらのカムピンはカム筒31に形成された図示しないカム溝と係合している。図示しない機構によって固定筒29に対してカム筒31を回転させることにより、第1摺動部材55、第2摺動部材57、第3摺動部材43、第4摺動部材47を光軸に沿って前後に移動させることができる。
【0121】
固定筒29にはマウント部材33が固定され、固定筒29はマウント部材33を介して不図示のカメラ等の撮像装置に固定される。また、虹彩絞りSは、第3摺動部材43に固定された絞り機構35によって開閉される。
【0122】
第2摺動部材57の構造は第2実施例と同じであるため同一の符号を図14に示して説明を省略するが、第2実施例と同様、イモビス59を締める又は緩めることにより、内側円環部57aが保持する第2保持部材53のカムピン57d(第2実施例の図9参照)に対する傾き具合を調整して固定することができる。即ち、光軸に対して第2レンズ群G2をチルト偏心させる位置調整を行うことができる。
【0123】
第4保持部材41を第4摺動部材47に固定するための構造は、第1実施例と同じであるため同一の符号を図14に示して説明を省略するが、第1実施例と同様の方法により、第4摺動部材47に対して第4保持部材41を光軸に垂直な方向へ移動して固定することができる。即ち、光軸に対して後方レンズ群GRをシフト偏心させる位置調整を行うことができる。
【0124】
以下の表5に、第4実施例に係る可変焦点距離レンズ49における条件式(1)〜(3)と条件式(13)〜(15)の対応値を掲げる。
【0125】
なお、第4実施例において、MAtは望遠端状態における中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、MAwは広角端状態における中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、後方レンズ群GRと像面Iとの間にレンズ群が存在しないのでMBt=MBw=1.0、M2tは望遠端状態における中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、M2wは広角端状態における中央レンズ群GMと後方レンズ群GRとの合成結像倍率、後方レンズ群GRと像面Iとの間にレンズ群が存在しないのでM4t=M4w=1.0である。
【0126】
(表5)
(条件式対応値)
(1) MAt/MAw=2.85
(2) MBt/MBw=1.000
(3) (MAt/MAw)/(MBt/MBw)=2.85
(13) M2t/M2w=2.85
(14) M4t/M4w=1.000
(15) (M2t/M2w)/(M4t/M4w)=2.85
【0127】
図15は、製造時の偏心誤差がある場合に、第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と後方レンズ群をシフト偏心させる位置調整を行って結像性能を補正した場合の第4実施例に係る可変焦点距離レンズの無限遠合焦状態でのd線(波長λ=587.6nm)に対するコマ収差図を示し、(a)は広角端状態、(b)は中間焦点距離状態、(c)は望遠端状態をそれぞれ示す。
【0128】
図2、図3、図15の収差図を比較すると、図15では製造時の偏心誤差による結像性能の劣化が広角端状態から望遠端状態にわたって良好に補正されていることがわかる。
【0129】
なお、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、前方レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群の一部または全部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことに加え、さらに、中央レンズ群の一部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行う構成としても良い。中央レンズ群の一部のレンズ群をシフト偏心させることにより、偏心収差のさらに良好な補正を実現できる。特に、中央レンズ群を、物体側から順に、正屈折力の第3Aレンズ群と、負屈折力の第3Bレンズ群と、負屈折力の第3Cレンズ群とからなるよう構成し、第3Cレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行う構成とするのが望ましく、第3Cレンズ群をシフト偏心させることにより、偏心収差のさらに良好な補正を実現できる。
【0130】
また、本実施形態に係る可変焦点距離レンズは、前方レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させる位置調整と、後方レンズ群の一部または全部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことに加え、さらに、中央レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させる位置調整を行う構成としても良い。中央レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させることにより、偏心収差のさらに良好な補正を実現できる。特に、中央レンズ群を、物体側から順に、正屈折力の第3Aレンズ群と、負屈折力の第3Bレンズ群と、負屈折力の第3Cレンズ群とからなるよう構成し、第3Bレンズ群をチルト偏心させる位置調整を行う構成とするのが望ましく、第3Bレンズ群をチルト偏心させることにより、偏心収差のさらに良好な補正を実現できる。
【0131】
以上のように、本実施形態によれば、良好な光学性能を達成可能で低コストの可変焦点距離レンズと、その調整方法を提供することができる。さらに、変倍比が大きい可変焦点距離レンズにおいて、広角端状態から望遠端状態にわたる可変焦点距離全域で良好な光学性能を達成することができる。
【0132】
次に、本実施形態に係る可変焦点距離レンズを搭載したカメラについて説明する。なお、第1実施例に係る可変焦点距離レンズ1を搭載した場合について説明するが、他の実施例でも同様である。
【0133】
図16は、第1実施例に係る可変焦点距離レンズを備えたカメラの構成を示す図である。
【0134】
図16において、カメラ63は、撮影レンズとして第1実施例に係る可変焦点距離レンズ1を備えたデジタル一眼レフカメラである。カメラ63において、不図示の物体(被写体)からの光は、撮影レンズ1で集光されて、クイックリターンミラー65を介して焦点板67に結像される。そして焦点板67に結像されたこの光は、ペンタプリズム69中で複数回反射されて接眼レンズ71へ導かれる。これにより撮影者は、被写体像を接眼レンズ71を介して正立像として観察することができる。
【0135】
また、撮影者によって不図示のレリーズボタンが押されると、クイックリターンミラー65が光路外へ退避し、不図示の被写体からの光は撮像素子73へ到達する。これにより被写体からの光は、撮像素子73によって撮像されて、被写体画像として不図示のメモリに記録される。このようにして、撮影者はカメラ63による被写体の撮影を行うことができる。
【0136】
カメラ63に撮影レンズとして第1実施例に係る可変焦点距離レンズ1を搭載することにより、高い性能を有するカメラを実現することができる。
【0137】
なお、本発明を分かり易く説明するために実施形態の構成要件を付して説明したが、本発明はこれに限定されるものでない。
【符号の説明】
【0138】
GF 前方レンズ群
S 虹彩絞り
GM 中央レンズ群
GR 後方レンズ群
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3A 第3Aレンズ群
G3B 第3Bレンズ群
G3C 第3Cレンズ群
G4A 第4Aレンズ群
G4B 第4Bレンズ群
I 像面
1 可変焦点距離レンズ
13 第1ネジ
15 第2ネジ
21 第4ネジ
45 第3ネジ
59 イモビス
63 カメラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、負屈折力の前方レンズ群と、正屈折力の中央レンズ群と、正屈折力の後方レンズ群とを有し、
前記前方レンズ群内の少なくとも1つの空気間隔と、前記前方レンズ群と前記中央レンズ群の空気間隔と、前記中央レンズ群と前記後方レンズ群の空気間隔とを変化させることにより焦点距離を変化させ、
前記前方レンズ群と前記中央レンズ群と前記後方レンズ群とを組み立てた後に、前記前方レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させ、前記後方レンズ群の一部または全部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行う調整機構を有することを特徴とする可変焦点距離レンズ。
【請求項2】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の可変焦点距離レンズ。
2.0<MAt/MAw
MBt/MBw<2.0
2.0<(MAt/MAw)/(MBt/MBw)
但し、
MAt:前記可変焦点距離レンズの望遠端状態における前記前方レンズ群の一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
MAw:前記可変焦点距離レンズの広角端状態における前記前方レンズ群の一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
MBt:前記可変焦点距離レンズの望遠端状態における前記後方レンズ群の一部または全部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
MBw:前記可変焦点距離レンズの広角端状態における前記後方レンズ群の一部または全部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
なお、前記後方レンズ群の一部または全部のレンズ群と像面との間にレンズ群が存在しない場合は、MBt=MBw=1.0とする。
【請求項3】
前記前方レンズ群は、物体側から順に、正屈折力の第1レンズ群と負屈折力の第2レンズ群とからなり、広角端状態から望遠端状態への変倍に際し、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の空気間隔は拡大し、前記第2レンズ群と前記中央レンズ群の空気間隔は縮小し、前記中央レンズ群と前記後方レンズ群の空気間隔は縮小することを特徴とする請求項1又は2に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項4】
前記調整機構は、前記第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、前記後方レンズ群全部をシフト偏心させる位置調整を行うことを特徴とする請求項3に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項5】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項4に記載の可変焦点距離レンズ。
5.0<M1t/M1w
M4t/M4w<2.0
5.0<(M1t/M1w)/(M4t/M4w)
但し、
M1t:前記可変焦点距離レンズの望遠端状態における前記第1レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M1w:前記可変焦点距離レンズの広角端状態における前記第1レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M4t:前記可変焦点距離レンズの望遠端状態における前記後方レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M4w:前記可変焦点距離レンズの広角端状態における前記後方レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
なお、前記後方レンズ群と像面との間にレンズ群が存在しない場合は、M4t=M4w=1.0とする。
【請求項6】
前記調整機構は、前記第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、前記後方レンズ群の一部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことを特徴とする請求項3に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項7】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項6に記載の可変焦点距離レンズ。
2.0<M2t/M2w
M4At/M4Aw<2.0
2.0<(M2t/M2w)/(M4At/M4Aw)
但し、
M2t:前記可変焦点距離レンズの望遠端状態における前記第2レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M2w:前記可変焦点距離レンズの広角端状態における前記第2レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M4At:前記可変焦点距離レンズの望遠端状態における前記後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M4Aw:前記可変焦点距離レンズの広角端状態における前記後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
なお、前記後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間にレンズ群が存在しない場合は、M4At=M4Aw=1.0とする。
【請求項8】
前記調整機構は、前記第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、前記後方レンズ群の一部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことを特徴とする請求項3に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項9】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項8に記載の可変焦点距離レンズ。
5.0<M1t/M1w
M4At/M4Aw<2.0
5.0<(M1t/M1w)/(M4At/M4Aw)
但し、
M1t:前記可変焦点距離レンズの望遠端状態における前記第1レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M1w:前記可変焦点距離レンズの広角端状態における前記第1レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M4At:前記可変焦点距離レンズの望遠端状態における前記後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M4Aw:前記可変焦点距離レンズの広角端状態における前記後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
なお、前記後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間にレンズ群が存在しない場合は、M4At=M4Aw=1.0とする。
【請求項10】
前記調整機構は、前記第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、前記後方レンズ群全部をシフト偏心させる位置調整を行うことを特徴とする請求項3に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項11】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項10に記載の可変焦点距離レンズ。
2.0<M2t/M2w
M4t/M4w<2.0
2.0<(M2t/M2w)/(M4t/M4w)
但し、
M2t:前記可変焦点距離レンズの望遠端状態における前記第2レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M2w:前記可変焦点距離レンズの広角端状態における前記第2レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M4t:前記可変焦点距離レンズの望遠端状態における前記後方レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M4w:前記可変焦点距離レンズの広角端状態における前記後方レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
なお、前記後方レンズ群と像面との間にレンズ群が存在しない場合は、M4t=M4w=1.0とする。
【請求項12】
前記後方レンズ群は、物体側から順に、正屈折力の第4Aレンズ群と、第4Bレンズ群とからなり、前記調整機構は前記第4Aレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことを特徴とする請求項6から9のいずれか1項に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の可変焦点距離レンズを有することを特徴とする光学装置。
【請求項14】
物体側から順に、負屈折力の前方レンズ群と、正屈折力の中央レンズ群と、正屈折力の後方レンズ群とを有し、
前記前方レンズ群内の少なくとも1つの空気間隔と、前記前方レンズ群と前記中央レンズ群の空気間隔と、前記中央レンズ群と前記後方レンズ群の空気間隔とを変化させることにより焦点距離を変化させる可変焦点距離レンズの調整方法であって、
前記前方レンズ群と前記中央レンズ群と前記後方レンズ群とを組み立てた後に、前記前方レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させ、前記後方レンズ群の一部または全部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことを特徴とする可変焦点距離レンズの調整方法。
【請求項1】
物体側から順に、負屈折力の前方レンズ群と、正屈折力の中央レンズ群と、正屈折力の後方レンズ群とを有し、
前記前方レンズ群内の少なくとも1つの空気間隔と、前記前方レンズ群と前記中央レンズ群の空気間隔と、前記中央レンズ群と前記後方レンズ群の空気間隔とを変化させることにより焦点距離を変化させ、
前記前方レンズ群と前記中央レンズ群と前記後方レンズ群とを組み立てた後に、前記前方レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させ、前記後方レンズ群の一部または全部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行う調整機構を有することを特徴とする可変焦点距離レンズ。
【請求項2】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の可変焦点距離レンズ。
2.0<MAt/MAw
MBt/MBw<2.0
2.0<(MAt/MAw)/(MBt/MBw)
但し、
MAt:前記可変焦点距離レンズの望遠端状態における前記前方レンズ群の一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
MAw:前記可変焦点距離レンズの広角端状態における前記前方レンズ群の一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
MBt:前記可変焦点距離レンズの望遠端状態における前記後方レンズ群の一部または全部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
MBw:前記可変焦点距離レンズの広角端状態における前記後方レンズ群の一部または全部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
なお、前記後方レンズ群の一部または全部のレンズ群と像面との間にレンズ群が存在しない場合は、MBt=MBw=1.0とする。
【請求項3】
前記前方レンズ群は、物体側から順に、正屈折力の第1レンズ群と負屈折力の第2レンズ群とからなり、広角端状態から望遠端状態への変倍に際し、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の空気間隔は拡大し、前記第2レンズ群と前記中央レンズ群の空気間隔は縮小し、前記中央レンズ群と前記後方レンズ群の空気間隔は縮小することを特徴とする請求項1又は2に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項4】
前記調整機構は、前記第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、前記後方レンズ群全部をシフト偏心させる位置調整を行うことを特徴とする請求項3に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項5】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項4に記載の可変焦点距離レンズ。
5.0<M1t/M1w
M4t/M4w<2.0
5.0<(M1t/M1w)/(M4t/M4w)
但し、
M1t:前記可変焦点距離レンズの望遠端状態における前記第1レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M1w:前記可変焦点距離レンズの広角端状態における前記第1レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M4t:前記可変焦点距離レンズの望遠端状態における前記後方レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M4w:前記可変焦点距離レンズの広角端状態における前記後方レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
なお、前記後方レンズ群と像面との間にレンズ群が存在しない場合は、M4t=M4w=1.0とする。
【請求項6】
前記調整機構は、前記第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、前記後方レンズ群の一部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことを特徴とする請求項3に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項7】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項6に記載の可変焦点距離レンズ。
2.0<M2t/M2w
M4At/M4Aw<2.0
2.0<(M2t/M2w)/(M4At/M4Aw)
但し、
M2t:前記可変焦点距離レンズの望遠端状態における前記第2レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M2w:前記可変焦点距離レンズの広角端状態における前記第2レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M4At:前記可変焦点距離レンズの望遠端状態における前記後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M4Aw:前記可変焦点距離レンズの広角端状態における前記後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
なお、前記後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間にレンズ群が存在しない場合は、M4At=M4Aw=1.0とする。
【請求項8】
前記調整機構は、前記第1レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、前記後方レンズ群の一部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことを特徴とする請求項3に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項9】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項8に記載の可変焦点距離レンズ。
5.0<M1t/M1w
M4At/M4Aw<2.0
5.0<(M1t/M1w)/(M4At/M4Aw)
但し、
M1t:前記可変焦点距離レンズの望遠端状態における前記第1レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M1w:前記可変焦点距離レンズの広角端状態における前記第1レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M4At:前記可変焦点距離レンズの望遠端状態における前記後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M4Aw:前記可変焦点距離レンズの広角端状態における前記後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
なお、前記後方レンズ群の前記一部のレンズ群と像面との間にレンズ群が存在しない場合は、M4At=M4Aw=1.0とする。
【請求項10】
前記調整機構は、前記第2レンズ群をチルト偏心させる位置調整と、前記後方レンズ群全部をシフト偏心させる位置調整を行うことを特徴とする請求項3に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項11】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項10に記載の可変焦点距離レンズ。
2.0<M2t/M2w
M4t/M4w<2.0
2.0<(M2t/M2w)/(M4t/M4w)
但し、
M2t:前記可変焦点距離レンズの望遠端状態における前記第2レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M2w:前記可変焦点距離レンズの広角端状態における前記第2レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M4t:前記可変焦点距離レンズの望遠端状態における前記後方レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
M4w:前記可変焦点距離レンズの広角端状態における前記後方レンズ群と像面との間に位置する全てのレンズ群の合成結像倍率
なお、前記後方レンズ群と像面との間にレンズ群が存在しない場合は、M4t=M4w=1.0とする。
【請求項12】
前記後方レンズ群は、物体側から順に、正屈折力の第4Aレンズ群と、第4Bレンズ群とからなり、前記調整機構は前記第4Aレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことを特徴とする請求項6から9のいずれか1項に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の可変焦点距離レンズを有することを特徴とする光学装置。
【請求項14】
物体側から順に、負屈折力の前方レンズ群と、正屈折力の中央レンズ群と、正屈折力の後方レンズ群とを有し、
前記前方レンズ群内の少なくとも1つの空気間隔と、前記前方レンズ群と前記中央レンズ群の空気間隔と、前記中央レンズ群と前記後方レンズ群の空気間隔とを変化させることにより焦点距離を変化させる可変焦点距離レンズの調整方法であって、
前記前方レンズ群と前記中央レンズ群と前記後方レンズ群とを組み立てた後に、前記前方レンズ群の一部のレンズ群をチルト偏心させ、前記後方レンズ群の一部または全部のレンズ群をシフト偏心させる位置調整を行うことを特徴とする可変焦点距離レンズの調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−42660(P2012−42660A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183076(P2010−183076)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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