説明

可燃性廃棄物の燃料化方法

【課題】システム全体の設備・運転コストを低減し、安定運転を維持しながら、可燃性廃棄物を効率よく燃料化することが可能な可燃性廃棄物の燃料化方法を提供する。
【解決手段】プラスチック類、スポンジ類、繊維類、ゴム類及び木質類からなる群より選択される一以上を主成分とする可燃性廃棄物W1を1次破砕機4により粗砕する工程と、可燃性廃棄物W1に含まれる異物I、Mを除去する工程と、異物I、Mを除去した粗砕物W3を2次破砕機9により破砕する工程と、破砕物W4をバーナー10に吹き込む工程とを含み、粗砕物W3の水分を5質量%以下とした上で、2次破砕機9の動力が一定になるように粗砕物W3を2次破砕機9に供給する可燃性廃棄物の燃料化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性廃棄物の燃料化方法に関し、特に、プラスチック類等の可燃物を含む廃棄物を燃料として利用するために用いられる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃プラスチックなどの可燃性廃棄物をある程度の寸法以下に粉砕し、燃料化する技術が用いられている。しかし、単に粉砕したプラスチック粉砕物を、微粉炭や重油等の燃焼装置用の代替燃料として使用すると、着地燃焼し易く、その結果、被焼成物の品質の劣化を引き起こす虞があった。そこで、着地燃焼を防ぐため、粉砕物の微粉化を進めると、過剰粉砕となり、特に、難粉砕性のプラスチックでは粉砕コストが高騰するという問題があった。
【0003】
そこで、本出願人は、特許文献1に記載のように、セメントキルンの窯前から吹き込んだプラスチック破砕物は、約800〜1600℃の温度で、キルン空間滞留時間が概ね2秒程度であること、プラスチックの重量と表面積によって燃え切り時間が異なり、比表面積の大きなプラスチックほど燃え切り時間が短いことなどの知見に基づき、プラスチックを比表面積200cm2/g以上で、かつ重量0.01g以上0.1g以下として、800℃以上の焼成炉で燃焼させることで、特定重量までの粉砕・破断に留めても、形状因子を規定すれば、総じてキルン空間滞留時間内に燃え切らすことができ、良好な性状の焼成物を得ることのできるプラスチックの燃料化方法を提案した。
【0004】
一方、焼成炉等で燃焼させるためのプラスチック破砕物を得るため、種々の破砕機が使用されているが、破砕機の回転刃等の破損、スクリーンの目詰まりなどの運転上の問題による稼働率の低下に鑑み、特許文献2には、破砕機内に配置された回転刃と固定刃により廃プラスチックを破砕し、破砕された廃プラスチックをスクリーンを通過させて排出する一軸ローター回転式破砕機を用い、回転刃を60rpm〜150rpmの低速で回転させながら、破砕機内を上下方向に空気吸引して破砕された廃プラスチックを排出する破砕装置等が提案されている。
【0005】
また、可燃性廃棄物には、砂、石、ガラス、銅、アルミニウム等の非鉄系異物や、鉄系異物も混在し、バーナー等で燃焼させる際の発熱量の変動を招くため、事前に除去する必要がある。また、これらの異物は、破砕処理において破砕刃の欠損等の原因となり、メンテナンスコストの増加や稼動率の低下を招いていた。このため、従来の可燃性廃棄物の燃料化方法においては、持ち込まれた可燃性廃棄物を1次破砕するとともに、1次破砕した破砕物から金属類等の異物を除去し、その後、2次破砕して燃料化物として使用していた。
【0006】
この際、金属類等の異物を除去するにあたって、図5に示すような異物除去装置が用いられている。この異物除去装置24は、振動コンベア21の上方に配置された磁力選鉱機22と、磁力選鉱機22の下流側に配置されたスクリーン23とで構成され、プラスチック類、スポンジ類、繊維類、ゴム類、木質類、建設系廃棄物等の可燃性廃棄物の粗砕物から、鉄系異物Mを磁力選鉱機22で除去し、砂、石、ガラス、銅、アルミニウム等の非鉄系異物Iをスクリーン23で除去する。
【0007】
そして、異物を除去した後2次破砕して得られた燃料化物は、ロータリーキルンの窯前部の近傍に設置したタンクに搬送して貯蔵し、適宜、必要量を計量しながらバーナーに供給してロータリーキルン内に吹き込むようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−181658号公報
【特許文献2】特開2007−190481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献1に記載のプラスチックの燃料化方法では、プラスチックを表面積200cm2/g以上で、かつ重量0.01g以上0.1g以下に破砕するが、表面積を所定の範囲以上に維持しながら、重量を所定の範囲内に収めるように破砕するのは容易ではなく、改善の余地があった。
【0010】
また、上記特許文献2に記載の廃プラスチックの破砕装置では、回転刃が60rpm以上150rpm以下と低速回転を行うため、破砕物を得るのに長時間を要するという問題もあった。
【0011】
さらに、上記従来の異物除去装置24は、鉄系異物Mと非鉄系異物Iの各々を除去するため、選別装置22、23が別々に設置されており、広い設置場所を確保する必要があるとともに、設備コストや運転コストが高くなるという問題があった。
【0012】
また、上記従来の燃料化方法において、燃料化物を定量で途切れることなくバーナーから吹き込むためには、2次破砕した破砕物を貯蔵するタンクとして、十分な貯蔵量を確保可能な大容量のタンクが必要になる。そのため、タンクやその周辺設備のコストが増大し、システム全体としての設備費が高騰するという問題があった。
【0013】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、システム全体の設備・運転コストを低減し、安定運転を維持しながら、可燃性廃棄物を効率よく燃料化することが可能な可燃性廃棄物の燃料化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明は、可燃性廃棄物の燃料化方法であって、プラスチック類、スポンジ類、繊維類、ゴム類及び木質類からなる群より選択される一以上を主成分とする可燃性廃棄物を1次破砕機により粗砕する工程と、該粗砕物に含まれる異物を除去する工程と、前記異物を除去した粗砕物を2次破砕機により破砕する工程と、該破砕物をバーナーに吹き込む工程とを含み、前記粗砕物の水分を5質量%以下とした上で、前記2次破砕機の動力が一定になるように該粗砕物を該破砕機に供給することを特徴とする。
【0015】
ここで、プラスチック類とは、高分子量の重合体であって、溶融して流動状体として成形可能なものをいい、該重合体に充填材、可塑剤、顔料、安定剤等を添加した物も含むものとする。また、スポンジ類とは、合成樹脂等を海綿状にした物をいう。繊維類とは、天然繊維又は化学繊維を素材とし、布状、紐状、糸状、綿状等の形態を呈する物をいう。ゴム類とは、外力を加えて除くと略々瞬時に元に戻る性質を有する物体であって、天然ゴム、石油等から合成する合成ゴム、再生ゴムなどをいう。木質類とは、廃木材、木質部分の廃棄物等、素材が木材である物をいう。
【0016】
そして、本発明によれば、プラスチック類等を主成分とする可燃性廃棄物を1次破砕機で粗砕し、異物除去装置で異物を除去した後、2次破砕機で破砕して破砕物を吹込装置によってバーナーに吹き込むため、燃料使用時の発熱量の変動を抑制し、安定運転を維持しながら可燃性廃棄物を燃料として利用することができ、破砕刃の欠損等を回避することもできる。
【0017】
また、粗砕物の水分を5質量%以下とした上で、2次破砕機の動力が一定になるように該粗砕物を該破砕機に供給することにより、2次破砕機の閉塞を防止しながら、安定して破砕物をバーナーに吹き込むことができる。
【0018】
上記可燃性廃棄物の燃料化方法において、前記異物を除去した粗砕物を、前記2次破砕機により長軸径平均15mm以下に破砕し、該破砕物を前記バーナーに吹き込むことができる。
【0019】
また、上記破砕物を、破砕後直ちに上記バーナーに吹き込むことができる。これにより、破砕物を貯蔵するための大容量の貯蔵手段が不要となり、設備コストを低減することが可能になる。
【0020】
上記可燃性廃棄物の燃料化方法において、前記破砕物を他の燃料とともに前記バーナーに吹き込み、該他の燃料の吹き込み量を増減して、該バーナーから供給される該破砕物及び他の燃料の燃焼により発生する熱量を調整することができる。これにより、必要な熱量を確保しながら、可燃性廃棄物を最大限に利用することが可能になる。
【0021】
前記可燃性廃棄物の燃料化方法において、前記異物を除去した粗砕物を貯蔵手段に一時的に貯蔵し、該貯蔵手段から必要量の粗砕物を抜き出して前記2次破砕機に供給する工程をさらに含み、前記貯蔵手段での粗砕物の貯蔵量に応じて前記1次破砕機への可燃性廃棄物の供給量を制御することができる。これによれば、貯蔵手段における粗砕物の貯蔵量を維持し、2次破砕機へ粗砕物を安定して供給することができる。
【0022】
前記可燃性廃棄物の燃料化方法において、前記異物を除去した粗砕物を貯蔵手段に一時的に貯蔵し、該貯蔵手段から必要量の粗砕物を抜き出して前記2次破砕機に供給する工程をさらに含み、前記貯蔵手段での粗砕物の貯蔵量に応じて前記1次破砕機の運転速度を制御することができる。これによれば、1次破砕機での破砕処理速度を調整し、粗砕物の生成量が過多とならないように制限することができる。
【0023】
前記可燃性廃棄物の燃料化方法において、前記2次破砕機の負荷電流に応じて該2次破砕機への粗砕物の供給量を制御することができ、これにより、2次破砕機の過負荷を防止することが可能になる。
【0024】
前記可燃性廃棄物の燃料化方法において、前記貯蔵手段からの粗砕物の抜き出し量に応じて、前記2次破砕機で生成された破砕物を前記バーナーに誘引する風量を制御することができ、これによれば、バーナーに破砕物を供給する際に空気比が激しく変動するのを防止したり、風量を誘引する装置の消費電力を低減することが可能になる。
【0025】
前記可燃性廃棄物の燃料化方法において、前記2次破砕機により生成される破砕物の嵩密度を0.03kg/L以上0.20kg/L以下、好ましくは0.06kg/L以上0.10kg/Lとすることができる。また、前記2次破砕機により生成される破砕物の長軸径の平均値を3mm以上15mm以下、好ましくは5mm以上10mm以下で、最大値を25mm以下とすることができる。この場合、破砕物のバーナー用燃料としての使用時において、着火し易く、短時間で燃え切るようになり、好適に燃料として利用することが可能になる。
【0026】
また、前記可燃性廃棄物の燃料化方法において、前記破砕物を、前記バーナーに0.4Nm3/kg以上3.0Nm3/kg以下の単位質量あたりの空気量で吹き込むことができる。これにより、破砕物を主燃料と同様に使用することができ、化石燃料の使用量を効率的に低減することができる。
【0027】
さらに、上記可燃性廃棄物の燃料化方法において、上記除去した異物をロール圧縮し、無機物を破砕するとともに、薄片化した金属を渦電流分離装置で回収することができる。回収した金属薄片を資源として回収し、無機物を別途処理することで、燃料として利用できなかった廃棄物を効率よく処理することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明によれば、システム全体の設備・運転コストを低減し、安定運転を維持しながら、可燃性廃棄物を効率よく燃料化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る可燃性廃棄物の燃料化方法を実施するための装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の燃料化装置の1次破砕機を示す概略図であって、(a)は断面図、(b)は分解斜視図である。
【図3】図1の燃料化装置の異物除去装置を示す概略構成図である。
【図4】図1の燃料化装置の2次破砕機を示す概略断面図である。
【図5】従来の異物除去装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。尚、図1において、実線は可燃性廃棄物の流れを示し、破線は制御信号等の電気信号の流れを示す。
【0031】
図1は、本発明にかかる可燃性廃棄物の燃料化方法を実施するための装置を示し、この燃料化装置1は、可燃性廃棄物Wを受け入れるホッパ2と、ホッパ2から供給される可燃性廃棄物Wに含まれる、砂、石、ガラス等の異物Fを除去するトロンメル3と、異物が除去された可燃性廃棄物W1を粗砕する1次破砕機4と、1次破砕後の粗砕物W2から異物を除去する振動コンベア5及び磁力選鉱機6からなる異物除去装置7と、異物が除去された粗砕物W3を一時的に貯蔵する中間タンク8と、中間タンク8からの粗砕物W3を破砕する2次破砕機9と、2次破砕された破砕物W4をキルンバーナー10に吹き込む第1のファン11と、主燃料としての微粉炭Cをキルンバーナー10に吹き込む第2のファン12とを備える。
【0032】
また、各種の制御手段として、1次破砕機4の負荷に応じてホッパ2からの可燃性廃棄物Wの排出量を制御する破砕機負荷制御手段13と、中間タンク8のタンクレベルに応じて1次破砕機4及び2次破砕機9の運転/停止を制御する破砕制御手段14と、2次破砕機9の負荷に応じて中間タンク8からの粗砕物W3の排出量を制御する供給/過負荷防止制御手段15と、中間タンク8からの粗砕物W3の排出量に応じて第1のファン11の風量を制御する風量比例制御手段16とを備える。
【0033】
ホッパ2は、持ち込まれた可燃性廃棄物Wを受け入れ、供給量を調整しながら後段の装置に供給するために備えられる。ここで、可燃性廃棄物Wとは、建設系廃棄物、白物家電の保温材、廃自動車シュレッダーダスト等のプラスチック類、スポンジ類、繊維類、ゴム類及び木質類等の可燃物を含有する廃棄物をいう。
【0034】
尚、建設系廃棄物とは、建物の建設に伴う廃棄物、建物のリフォームなどに伴う廃棄物、建物の解体工事に伴う廃棄物をいい、また、白物家電の保温材とは、廃冷蔵庫等の処分時に発生する廃ウレタンなどをいう。さらに、廃自動車シュレッダーダストとは、ASRと呼ばれ、廃棄された自動車のエンジンなどを取り除いた後の廃車ガラを工業用シュレッダーで粉々に粉砕して鉄等を回収した後、産業廃棄物として廃棄されるプラスチック、ガラス、ゴムなどの破片をいう。
【0035】
トロンメル3は、可燃性廃棄物Wに含まれる大粒径(例えば、20mm以上の粒径)の砂、石、ガラス等の異物Fを除去し、2次破砕機9の刃の寿命を延ばすとともに、異物を含まない燃焼性のよい燃料を得るために設けられる。
【0036】
1次破砕機4は、トロンメル3で大粒径の異物Fが除去された可燃性廃棄物W1を長軸径200mm以下に粗砕し、2次破砕機9の刃の寿命を延ばすとともに、異物を含まない燃焼性のよい燃料を得るために設けられる。
【0037】
この1次破砕機4には、(株)ホーライ製のEH−6090等の一軸ローター回転式破砕機を用いることが好ましい。この1次破砕機4は、図2に示すように、上下方向に2分割される本体35(35A、35B)内に、シャンク33とブレード34からなる回転刃32と、相対向して配置された一対の固定刃37と、回転刃32の下方に位置する半割筒状のスクリーン36等からなる。
【0038】
回転刃32は、母台になるシャンク33と、シャンク33にボルトで設置されたブレード34で構成され、減速機(不図示)を介して本体35内で回転する。ブレード34の刃先は、回転軸38の軸線方向(矢印X方向)に対して傾斜したヘリカルカッターとなっている。また、このブレード34は、回転軸38の軸線方向に、複数段にわたって配置され、隣接する2つの段の回転刃32に位相差を与え、その位相差は、60°以下に設定される。尚、回転刃32に位相差を与えるのは、粗砕時に回転刃32に付加される衝撃を緩和して1次破砕機4の過負荷を回避するためである。
【0039】
回転刃32に対応する一対の固定刃37は、本体35の分割面に、進退調整自在に取付けられる。本体35の下部排出ゾーンには、粗砕物の粒度を目開き寸法で決定する半割筒状のスクリーン36が設置される。
【0040】
上記構成を有する1次破砕機4を用い、粗砕時に、回転刃32の回転数が20rpm以上60rpm以下、スクリーン36の目開きが30mm以上200mm以下、スクリーンと回転刃との間隔が20mm以上100mm以下に設定することが好ましい。
【0041】
上記構成により、本体35Bの上部から投入された可燃性廃棄物W1を、回転刃32によって引き込み、ブレード34と固定刃37の刃先間に作用する剪断力によって粗砕することができる。この際、スクリーン36の目開き以下の粒度に達したものは、目開きを通過して下方に排出され、目開き以上の粗砕物は、回転刃32によって上部に持ち上げられ、繰返し粗砕される。
【0042】
図1に戻り、異物除去装置7は、1次破砕機4で粗砕された粗砕物W2からガラス、銅、アルミニウム等の非鉄系異物Iと、鉄系異物Mを除去するために備えられる。この異物除去装置7は、図3に示すように、振動コンベア5と磁力選鉱機6とで構成され、振動コンベア5の搬送面にスクリーン5aを備え、その上方に磁力選鉱機6が配置される。スクリーン5aの目開きは、1mm以上50mm以下に設定される。振動コンベア5は、磁力選鉱機6によって磁化されないように、ステンレス鋼等の材料を用いて製作する必要がある。
【0043】
尚、振動コンベア5の搬送面には、スクリーン5a以外にも、多孔板、又は複数のスリットが穿設された板状部材を配置することもでき、多孔板を配置した際には、多孔板に穿設された孔の径を1mm以上50mm以下にし、複数のスリットが穿設された板状部材を配置した際には、各々のスリットの幅を1mm以上50mm以下とすることで、上記スクリーン5aを配置した場合と略々同等の効果を奏する。
【0044】
図1に戻り、中間タンク8は、2次破砕機9の前段において、1次破砕及び異物除去を行った粗砕物W3を一時的に貯蔵するために備えられる。この中間タンク8には、中間タンク8からの粗砕物W3の抜き出し量を調整するためのオートフィーダ等の計量機17が付設される。
【0045】
2次破砕機9は、中間タンク8から供給される粗砕物W3を長軸径平均15mm以下に破砕して燃料を製造するために備えられ、(株)ホーライ製、A−561 J形等の一軸高速剪断式粉砕機等を用いることができる。この2次破砕機9は、図4に示すように、本体41内に、シャンク43とブレード44からなる回転刃42と、一対の固定刃47と、回転刃42の下方に位置する半割筒状のスクリーン46等からなる。
【0046】
上記回転刃42は、小ブロックに分割されたオープンカッターであり、強靭であるとともに、高い冷却効果(発熱防止効果)を備えている。
【0047】
この2次破砕機9において、本体41の上部から投入された粗砕物は、回転刃42のブレード44と固定刃47との間に作用する剪断力によって破砕される。この際、スクリーン46の目開き以下の粒度に達したものは下部に排出され、目開き以上の破砕物は、回転刃42によって持ち上げられ、繰り返し破砕される。
【0048】
次に、上記構成を有する燃料化装置1を用いた本発明にかかる可燃性廃棄物の燃料化方法について、図1を中心に参照しながら説明する。
【0049】
受け入れた可燃性廃棄物Wをホッパ2から排出し、トロンメル3に投入して砂、石、ガラス等の異物を除去する。次に、異物が除去された可燃性廃棄物W1を1次破砕機4に投入し、長軸径平均200mm以下に粗砕する。
【0050】
上記の際、破砕機負荷制御手段13によって、1次破砕機4の負荷が一定になるようにホッパ2からの可燃性廃棄物Wの供給量を制御したり、1次破砕機4の運転速度を制御して破砕処理速度を調整し、粗砕物W2の生成量を調整する。尚、上述のように1次破砕機4が回転刃32を備えるタイプのものである場合には、回転刃32の回転数を制御することによって運転速度を制御することができる。
【0051】
また、破砕制御手段14によって、中間タンク8のタンクレベルによる1次、2次破砕機4、9の運転制御を行う。具体的には、レベルHで1次破砕機4を停止し、レベルLとレベルHとの間の中間レベルでは、1次、2次破砕機4、9の運転速度を制御し、レベルLで2次破砕機9を停止する。2次破砕機9の運転速度についても、回転刃42の回転数を変化させることで制御することができる。これにより、粗砕物W3の生成量が過多となったり、粗砕物W3の供給量が過少とならないように制御することができる。
【0052】
異物除去装置7では、図3に示すように、粗砕物W2が振動コンベア5で運ばれる際に、スクリーン5aの目開き(1mm以上50mm以下)から砂、石、ガラス、銅、アルミニウム等の非鉄系異物Iが落下して除去され、振動コンベア5上に残った粗砕物W2からは、磁力選鉱機6によって鉄系異物Mが除去される。異物が除去された粗砕物W3は、中間タンク8へと搬送され、中間タンク8において一時的に貯蔵される。尚、粗砕物W2から除去した異物は、回収して別途資源として再利用する。
【0053】
この異物除去装置7は、振動コンベア5の搬送面にスクリーン5aを備えているため、1つの処理工程で粗砕物W2から鉄系・非鉄系異物(M+I)の両方を同時に除去することができ、さらに設置スペースや設備コスト、運転コストも低減することもできる。また、2次破砕機9による粗砕物W3の破砕前に金属屑や砂、石を除去することで、2次破砕機9のブレード44及び固定刃47の欠け、摩耗スピードを低減させ、ブレード44及び固定刃47の寿命を2倍から3倍に延ばすことができるようになる。
【0054】
一方、粗砕物W2から除去された非鉄系異物Iは、ロール圧縮機(不図示)に供給してロール圧縮してもよい。この際、砂、石、ガラス等の無機物は破砕され、銅、アルミニウム等の金属は、薄片化される。ロール圧縮された異物を渦電流分離装置(不図示)に供給してもよく、銅、アルミニウム等の金属は資源として回収し、砂、石、ガラス等の無機物を分離して別途処理することができる。
【0055】
また、異物除去装置7の下流には、比重差選別機(不図示)を備えてもよい。これにより、粗砕物W2から、ダイオキシン類等の発生の際に触媒作用をする銅の金属片等を除去し、有害物質発生の抑制や、不完全燃焼の防止をすることが可能となる。
【0056】
図1に戻り、計量機17を通じて中間タンク8内の粗砕物W3を抜き出し、2次破砕機9に供給して長軸径平均15mm以下に破砕する。これにより、粗砕物W3を繊維状物(綿状物)の状態とし、燃料として使用し易い(燃焼し易い)性状とする。
【0057】
また、2次破砕機9による粗砕物W3の破砕に際しては、粗砕物W3の水分を5質量%以下とした上で、2次破砕機9の動力が一定になるように粗砕物W3を2次破砕機9に供給することが好ましい。水分を5質量%以下とすることで、2次破砕機9の閉塞を防止しながら安定して粗砕物W3を破砕することができる。尚、2次破砕機9の回転刃42の回転数が少ない程、回転刃42及び固定刃47の寿命が長くなるが、破砕に長時間を要する。また、スクリーン46の目開きは、受け入れた可燃性廃棄物Wの性状、所望する燃料の性状に応じて適宜変更する。
【0058】
このようにして生成された破砕物W4は、プラスチック、ゴム、繊維状物、スポンジ状物、ガラス、金属等の破砕物であって、繊維状物を50質量%以上含有し、嵩密度が0.03kg/L以上0.20kg/L以下で、長軸径の平均値が3mm以上15mm以下(好ましくは5mm以上10mm以下)、最も長軸径が大きい物でも25mm以下となる。このような状態にすることで、破砕物W4をバーナー用燃料として使用する場合に、着火し易く、短時間で燃え切るようになる。
【0059】
尚、繊維状物とは、前記繊維類のみを指す意ではなく、前記プラスチック類、スポンジ類、繊維類、ゴム類及び木質類からなる群より選択される一以上を破砕することにより、微細な糸状物の集合体となったものをいう。この繊維状物のアスペクト比を3以上とすることが好ましく、10以上とすることがより好ましい。
【0060】
尚、嵩密度が0.20kg/Lを超える場合には、着地燃焼の原因となり、0.03kg/L未満の場合には、搬送等の面で非効率的となるため好ましくない。また、長軸径の平均値が15mmを超える場合には、燃料が絡み合って団塊状となって着地燃焼の原因となり、3mm未満の場合には、破砕に要する動力が過大となり好ましくない。
【0061】
次いで、2次破砕機9で生成された破砕物W4を第1のファン11により引き込み、第2のファン12を通じて供給される微粉炭Cとともに、キルンバーナー10に吹き込んでバーナー用燃料として用いる。キルンバーナー10への吹き込みにあたっては、原則として、2次破砕機9で生成される破砕物W4の全量をキルンバーナー10に吹き込み、必要な熱量の調整は、微粉炭Cの吹き込み量の増減により行う。これにより、可能な限り多くの破砕物W4を使用し、持ち込まれた可燃性廃棄物Wを効率よく処理することができる。
【0062】
また、供給/過負荷防止制御手段15において、2次破砕機9の負荷電流を検出し、計量機17での粗砕物W3の抜き出し量を調整する。具体的には、2次破砕機9の負荷電流が高くなるのに応じて、2次破砕機9への粗砕物W3の供給量を低減するように制御し、2次破砕機9の過負荷を防止する。すなわち、粗砕物W3が水分を保有する場合には、粉砕過程で2次破砕機9内に詰まり易くなるため、それを速やかに察知して粗砕物W3の投入量を調整し、2次破砕機9の保護を図る。また、2次破砕機9への粗砕物W3の供給量を制御することで、キルンバーナー10への破砕物W4の連続供給が途切れないようにする。
【0063】
これと並行して、風量比例制御手段16において、計量機17での粗砕物W3の抜き出し量に応じて、第1のファン11の風量を調整する。これにより、2次破砕機9での破砕物W4の生成量と、第1のファン11での破砕物W4の引き込み量とを整合させ、破砕物W4の風送時に空気比が激しく変動するのを防止したり、第1のファン11の消費電力を低減することができる。
【0064】
以上のように、本実施の形態によれば、2次破砕からバーナー吹き込みまでを一体化させるため、2次破砕後の破砕物W4を貯蔵するための大容量のタンクが不要となり、設備費を低減することが可能になる。特に、粗砕物W3や破砕物W4の流れを各種の制御手段13〜16で制御するため、2次破砕までの工程を安定して連続的に進めながら、中間タンク8の容量に合わせて粗砕物W3の流通量を制限することができる。これによって、中間タンク8に多大な余裕容量が不要となり、小型のタンクを用いることができるようになるため、設備費を大幅に削減できる。また、バーナー吹き込み前の処理で確実に異物除去した破砕物W4を最大量で安定して吹き込むことができるため、燃料使用時の発熱量の変動を抑制しながら、効率よく可燃性廃棄物Wを処理することが可能になる。尚、破砕物W4を直ぐに燃料として供給しない場合は、従来のように、貯蔵するためのタンクを備えてもよい。
【0065】
また、上記実施の形態においては、破砕機負荷制御手段13によるホッパ2からの可燃性廃棄物Wの供給量の制御と、破砕制御手段14による1次破砕機4の運転/停止状態の制御との双方を行っているが、これらのうちの一方のみを行うようにしてもよい。
【0066】
さらに、上記実施の形態においては、1次破砕機4の前段で異物を除去する手段として、トロンメル3を用いるが、例えば、ロータリースクリーン等の他の異物除去装置を用いることもできる。また、1次破砕機4の後段で異物を除去する磁力選鉱機6、振動コンベア5等においても同様であり、これらに限定されるものではなく、他の除去装置を用いることもできる。
【0067】
また、本発明にかかる燃料化方法で製造された燃料である破砕物W4は、セメントキルン以外にも種々の燃焼炉等でバーナーから炉内に吹き込んで燃料として用いることができる。
【0068】
次に、上記破砕物W4をキルンバーナー10で燃焼させた場合の燃焼性に関する試験例について説明する。
【0069】
表1に、この試験に用いた破砕物と、比較例として用いた微粉炭の性状を示す。表2は、これらをキルンバーナー10で燃焼させた場合の試験結果を示す。尚、試験は2回行った。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
表1に示すように、破砕物は、微粉炭の約90%と高い熱量を有することが判る。そして、この破砕物を微粉炭とともにキルンバーナー10に吹き込んで燃焼させると、表2に示すように、燃焼寄与率が92〜93%と、燃料として効率良く機能していることが分かる。尚、燃焼寄与率の算出式は以下の通りである。
【0073】
燃焼寄与率(%)=微粉炭熱量原単位減量/破砕物熱量原単位増量
=((3)−(4))×100/((2)−(1))
【0074】
尚、上記実施例1、2において、破砕物を第1のファン11(図1参照)によってキルンバーナー10に吹き込む空気量が過剰となり熱量損失を起こした懸念があり、そのような状態でも上記高寄与率が達成されたので、上記空気量を適切に調整することで、さらに寄与率を高めることも可能と考えられる。
【符号の説明】
【0075】
1 可燃性廃棄物の燃料化装置
2 ホッパ
3 トロンメル
4 1次破砕機
5 振動コンベア
5a スクリーン
6 磁力選鉱機
7 異物除去装置
8 中間タンク
9 2次破砕機
10 キルンバーナー
11 第1のファン
12 第2のファン
13 破砕機負荷制御手段
14 破砕制御手段
15 供給/過負荷防止制御手段
16 風量比例制御手段
17 計量機
32 回転刃
33 シャンク
34 ブレード
35(35A、35B) 本体
36 スクリーン
37 固定刃
38 回転軸
41 本体
42 回転刃
43 シャンク
44 ブレード
46 スクリーン
47 固定刃
C 微粉炭
F 異物
I 非鉄系異物
M 鉄系異物
W、W1 可燃性廃棄物
W2、W3 粗砕物
W4 破砕物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック類、スポンジ類、繊維類、ゴム類及び木質類からなる群より選択される一以上を主成分とする可燃性廃棄物を1次破砕機により粗砕する工程と、
該粗砕物に含まれる異物を除去する工程と、
前記異物を除去した粗砕物を2次破砕機により破砕する工程と、
該破砕物をバーナーに吹き込む工程とを含み、
前記粗砕物の水分を5質量%以下とした上で、前記2次破砕機の動力が一定になるように該粗砕物を該破砕機に供給することを特徴とする可燃性廃棄物の燃料化方法。
【請求項2】
前記異物を除去した粗砕物を、前記2次破砕機により長軸径15mm以下に破砕し、
該破砕物を前記バーナーに吹き込むことを特徴とする請求項1に記載の可燃性廃棄物の燃料化方法。
【請求項3】
前記破砕物を、破砕後直ちに前記バーナーに吹き込むことを特徴とする請求項1又は2に記載の可燃性廃棄物の燃料化方法。
【請求項4】
前記破砕物を他の燃料とともに前記バーナーに吹き込み、該他の燃料の吹き込み量を増減して、該バーナーから供給される該破砕物及び他の燃料の燃焼により発生する熱量を調整することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の可燃性廃棄物の燃料化方法。
【請求項5】
前記異物を除去した粗砕物を貯蔵手段に一時的に貯蔵し、該貯蔵手段から必要量の粗砕物を抜き出して前記2次破砕機に供給する工程をさらに含み、
前記貯蔵手段での粗砕物の貯蔵量に応じて前記1次破砕機への可燃性廃棄物の供給量を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の可燃性廃棄物の燃料化方法。
【請求項6】
前記異物を除去した粗砕物を貯蔵手段に一時的に貯蔵し、該貯蔵手段から必要量の粗砕物を抜き出して前記2次破砕機に供給する工程をさらに含み、
前記貯蔵手段での粗砕物の貯蔵量に応じて前記1次破砕機の運転速度を制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の可燃性廃棄物の燃料化方法。
【請求項7】
前記2次破砕機の負荷電流に応じて該2次破砕機への粗砕物の供給量を制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の可燃性廃棄物の燃料化方法。
【請求項8】
前記貯蔵手段からの粗砕物の抜き出し量に応じて、前記2次破砕機で生成された破砕物を前記バーナーに誘引する風量を制御することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の可燃性廃棄物の燃料化方法。
【請求項9】
前記2次破砕機により生成される破砕物の嵩密度が0.03kg/L以上0.20kg/L以下であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の可燃性廃棄物の燃料化方法。
【請求項10】
前記2次破砕機により生成される破砕物の長軸径の平均値が3mm以上15mm以下であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の可燃性廃棄物の燃料化方法。
【請求項11】
前記破砕物を、前記バーナーに0.4Nm3/kg以上3.0Nm3/kg以下の単位質量あたりの空気量で吹き込むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の可燃性廃棄物の燃料化方法。
【請求項12】
前記除去した異物をロール圧縮し、無機物を破砕するとともに、薄片化した金属を渦電流分離装置で回収することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の可燃性廃棄物の燃料化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−153889(P2012−153889A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−24665(P2012−24665)
【出願日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【分割の表示】特願2010−523875(P2010−523875)の分割
【原出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】