説明

合わせガラス用点取付けシステム

本発明は直接的な点取付け型積層システムであって、(1)熱可塑性中間層、(2)剛構造荷重担持層(構造層)の少なくとも1枚のシート、(3)少なくとも1つのレセプター手段、および(4)少なくとも1つの取付け手段、を含み、前記熱可塑性中間層が、少なくとも1つの表面においてその構造層の少なくとも1枚のシートに結合されており、そして、少なくとも1つのレセプター手段がさらに、熱可塑性中間層に接着的に結合され、それによって構造層に接着的に結合されており、
取付け手段および/またはレセプター手段が、構造層の膨張係数の約90%〜約110%の膨張係数を有する材料から作られているという更なる条件で、レセプター手段が機械的に前記取付け手段を受け入れるような位置にある。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許仮出願第60/400,234号明細書(2002年7月31日出願)の利益を主張したPCT出願番号PCT/US03/24118号明細書(2003年7月31日出願)の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、住宅および建築物、キャビネットおよび陳列ケースにおける棚、およびガラスにおける構造強度と改良された安全性が望まれるようなその他の物品において、有用である。建築においては、ボルトおよび/またはその他の非接着性締結具を使用した直接的な点支持(direct point−support)システムの手段により、ガラスをフレームおよび建築物の支持構造に取付けることには利点がある。たとば、ボルト締めグレージングシステムによって、最小限の、高度に透明性の高い外観に設計することが可能となる。自動車用途においては、グレージングを車両に取付けて、構造的一体性や取付け/交換の容易さを得たり、乗降や換気その他を目的とした、移動可能なグレージングを作ったりすることが望まれている。
【0003】
直接的な点取付けにより支持構造に結合することが可能なグレージングシステム(以後「ボルト締めガラス」と呼ぶ)を製造することに、まったく問題がないという訳ではない。ボルト締めガラスシステムを使用することについては、従来のボルト締めガラスプロセスに固有の各種の要因のために、困難となることもあり得る。たとえば、ボルト締めガラスシステムでは、強化ガラスを使用する必要があるが、それによって光学的透明性が低下する可能性がある。さらに、1枚のガラス積層(one glass−ply)とポリマー中間層は、不静定な構造要素として扱われることが多い。
【0004】
従来の安全合わせガラスには一般に、ガラスまたはその他の透明プラスチック材料のシートの間に設けた熱可塑性シーティングが含まれる。それらの合わせガラス複合材料は、耐衝撃性能、耐候性、透明性を含めた厳しい要求を満たすことが求められている。しかしながら、中間層が存在することは、ボルト締めガラスを使用する際の困難の原因ともなりうる。支持構造への点取付け(point attachment)の締め付け力が原因で、中間層のクリープが起きる可能性がある。ボルト締めガラス積層物を使用する際のもう1つの問題は、積層プロセスの際に、中間層における穴とガラスの穴とを位置合わせしておかなければならないということにある。従来のボルト締めガラスシステムでは、中間層と締結具との間のなじみ性、さらには取付けの耐久性に関するさらなる問題も起こりうる。
【0005】
そのような問題の1つが、積層物を構成するのに使用した材料の物理的性質において差がある結果として、応力因子がガラス積層物の中に蓄積され得るということである。他の対象物を支持するために使用することを目的とした構造積層物においては、建築上の支持構造としての積層物が、その積層物を組み立てる間、あるいは目的とする用途で使用している間のいずれかにおいて、応力によって積層物の破損がもたらされる可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のボルト締めガラスシステムにおける問題点を克服することが可能な、ボルト締めガラス積層物が得られれば望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様において、本発明は直接的な点取付け型積層システムであって、(1)熱可塑性中間層、(2)剛構造荷重担持層(構造層)の少なくとも1枚のシート、(3)少なくとも1つのレセプター手段、および(4)少なくとも1つの取付け手段、が含まれ、前記熱可塑性中間層が、少なくとも1つの表面においてその構造層の少なくとも1枚のシートに結合されており、そして、少なくとも1つのレセプター手段がさらに、熱可塑性中間層に接着的に結合され、それによって構造層に接着的に結合されており、取付け手段および/またはレセプター手段が、構造層の膨張係数の約90%〜約110%の膨張係数を有する材料から作られているという更なる条件で、レセプター手段が機械的に前記取付け手段を受け入れるような位置にある。
【0008】
また別な態様において、本発明は、支持構造に直接的に点取付けするのに適したグレージングシステムを作製するための方法であって、以下の(1)熱可塑性中間層、(2)剛構造荷重担持層(構造層)の少なくとも1枚のシート、(3)少なくとも1つのレセプター手段、および(4)少なくとも1つの取付け手段、を含む積層物を組み立てる工程を含み、前記熱可塑性中間層が、少なくとも1つの表面においてその構造層の少なくとも1枚のシートに結合されており、そして、少なくとも1つのレセプター手段がさらに、熱可塑性中間層に接着的に結合され、それによって構造層に接着的に結合されており、取付け手段および/またはレセプター手段が、構造層の膨張係数の約90%〜約110%の膨張係数を有する材料から作られているという更なる条件で、レセプター手段が機械的に前記取付け手段を受け入れるような位置にある。
【0009】
本発明のまた別な態様において、本発明は、取付け手段およびレセプター手段を介して支持構造に直接的に点取付けするのに適した、合わせガラス荷重担持構造システムを作製するための方法であって、取付け手段および/またはレセプター手段が、ガラスの膨張係数の約90%〜約110%の範囲内の膨張係数を有するよう積層物を構成するための材料を選択する工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
1つの実施態様において、本発明は、少なくとも2層の剛直構造支持体の間に差し込んだ熱可塑性中間層を含む荷重担持支持システムである。その剛直な支持構造は、プラスチック、金属、木材、石材、またはガラスなどであってよい。その支持構造が剛直なプラスチックまたはガラスであるのが好ましく、その剛直な支持構造がガラスであれば最も好ましい。特に好ましい実施態様においては、そのガラスは、可視スペクトル内のほとんどの波長の光を透過する。また別な好ましい実施態様においては、そのガラスまたは中間層が着色されていたり、その上に装飾画像を印刷されていたりしてもよい。その荷重担持支持システムは、直接的な点取付けを介して支持構造に取付けることが可能であるが、ここで、その直接的な点取付けは、取付け手段を受けるためのレセプターを含み、前記レセプターは、取付け手段を受け入れるような状態で、中間層の中に埋め込まれる。本発明を実施するにあたっては、その荷重担持支持システムは支持構造に取付けられ、レセプターによって受け入れられた取付け手段を介して、支持構造により支持される。
【0011】
本発明の目的のための支持構造は、建築物、壁面、パネル、天井、床、階段、サスペンションワイヤ、またはその他の荷重担持機能を有する各種の建築物構造または下部構造であってよい。本発明の目的のためには、窓は荷重担持構造物とはみなさないが、その理由は、それらをフレームの中に嵌めたときに、それらの上に置いた荷重以上の荷重を支持することを求められていないからである。
【0012】
本発明の目的のための荷重担持システムは、床または天井、階段、テーブル、椅子、デスク、柱、展示のための基礎、または荷重担持能力を発揮できるようなものなどであってよい。
【0013】
好適な取付け手段は、その積層物を支持構造に取付けるためのいかなる手段であってもよい。好適な取付け手段としては、たとえば、ボルト、金属ピン、クランプ、釘、ねじ釘、ロープ、鎖、つなぎ鎖、スナップ、クリップ、またはそれらの各種組合せなどの少なくとも1つを挙げることができる。考慮しておくべき重要な点は、その取付け手段が適している、すなわち、目的とする荷重担持用途において充分な支持と強度を与えることが可能である、ということである。
【0014】
好適なレセプター手段は、取付け手段と共に働いてグレージングシステムと支持構造との間の取付けができるようなものであれば、いかなるものであってもよい。好適なレセプター手段は、一般に頑丈であると考えられている各種の材料で構成することができるが、そのような材料としてはたとえば:金属、たとえば鋼、アルミニウム、チタン、真鍮、鉛、クロム、銅など、プラスチック、たとえばポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ナイロン、ポリ(アルキル)アクリレート、など、天然素材、たとえば石材、木材など、または、本明細書で述べた好適な材料から得られる複合材料などが挙げられる。ただし、そのレセプターの材料は、中間層として使用されるポリマー材料と結合することが可能であるか、および/またはそのレセプター手段を保持する穴または窪んだ領域をライニングすることが可能な材料であって、本明細書で先に述べたように、積層物の中で使用される他の材料と両立するような膨張係数を有しているものでなければならない。
【0015】
好適な熱可塑性中間層は、ガラスに対して、およびさらには取付け手段のためのレセプターを形成するのに使用される構造材料に対して、接着的結合を形成することが可能なものであれば、いかなるものであってもよい。好適な熱可塑性中間層は、ガラスに対して、および取付け具および/またはレセプターに対して、必要な接着性を有していて、その積層物が、建築用途または工業用途において、意図した通りの性能を発揮するような中間層なら、いかなるものであってもよい。たとえば、好適な中間層は、エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体とエチレンを共重合させることにより形成される酸コポリマーから得ることができる。カルボン酸の誘導体は周知であるが、好適な誘導体は、本明細書で使用するのに適した酸コポリマーを全面的または部分的に中和することにより形成されるアイオノマー性のポリマーである。好適な酸コポリマーまたはアイオノマーとしては、たとえば、本願特許出願人から市販されている商品名サーリン(Surlyn)(登録商標)および/またはヌクレル(Nucrel)(登録商標)を購入することができる。その他の好適な熱可塑性中間層としては、たとえば、可塑化のレベルが低い(可塑剤が30pph部未満の)「硬質の(stiff)」ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリエステルたとえばポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリウレタンなどが挙げられる。異なった中間層の組合せ(複合中間層)を含む多層積層物も本発明の範囲内とみなす。
【0016】
本発明の中間層は、本明細書に記載した目的のために使用したときに構造的に健全な積層物が得られるのであれば、いかなる厚みであってもよい。その厚みは実際には、その積層構造物が目的とする用途によって決めればよい。用途が定まれば、適切な厚みは容易に求めることが可能である。本発明の目的のためには、本発明の中間層または複合中間層は、約0.150mm〜約20mmの範囲の中のいずれかの厚みを有することができる。中間層の厚みは、意図する目的またはグレージングの用途によるが、少なくとも約0.200mmの厚みとする。さらに他の用途または使用においては、中間層を、少なくとも約0.250mmもしくはその整数倍、または少なくとも約1mmもしくはその整数倍、または少なくとも約1.33mmもしくはその整数倍とすることができる。いくつかのそれ以外の用途においては、中間層の厚みを10、11、12、13または15mmほどにも厚く規定することが適当な場合もある。使用する中間層の厚みは、コストおよび商品入手性などその他の要因から決めることもできる。
【0017】
その積層物は、公知の従来のガラス積層技術に従って作製することができるが、ただし、その積層物にはレセプターおよび取付け手段を受けるための穴が開いていなくてはならず、また、その熱可塑性中間層は、ガラス表面およびさらにはレセプターと接着的結合を形成して、それにより中間層、レセプターおよびガラス表面が好適な接着力をもって一体化されるようにしなければならない。
【0018】
本発明の実施にあたっては、たとえば、棚、床、天井、踏み板または踏み面、階段、家具たとえばテーブル、椅子、または本箱、家電製品のためのスタンド、ステレオ装置またはテレビのためのスタンド、および/または類似の用途などの、荷重担持用途にその積層物を用いるのが好ましい。その他の用途としては、たとえば、手すり、傾斜またはカーテンウォールグレージング構造物、自動車の車幅灯、自動車のサンルーフおよび/またはムーンルーフなどが挙げられる。そのような用途においては、その積層物の中の固有の応力によって、その積層物に荷重を担持させようとしたときに、早々とクラックが入ったり、破損したりする結果が起こりうる。
【0019】
本発明においては、荷重担持ガラス積層物の中で応力亀裂が発生することを、実質的に抑制または最小化するための方法を提供するが、ここで、構成材料を適切に選択することによって、その積層物中の内部応力を顕著に低下させている。取付け手段および/またはレセプター手段を作製するために使用される材料を、その積層物に使用されるガラスと類似の膨張係数を有するようにするようにマッチングさせることによって、本発明の積層物中における内部応力を実質的に低下させることが可能となることが見出された。本明細書に記載した方法によって構成材料をマッチングさせることによって、作製プロセスの間およびさらには荷重応力下において、改良された安定性を有する積層物が得られる。取付け手段および/またはレセプター手段を選択して、選択した材料の膨張係数(CTE)が、その積層物を作るのに用いたガラスの膨張係数(CTE)の約90%〜約110%になるようにすべきである。CTEが、CTEの約92%〜約108%であるのが好ましく、CTEの約94%〜約106%であればより好ましく、CTEの約95%〜約105%であれば最も好ましい。
【0020】
具体的な好ましい実施態様においては、取付け手段および/またはレセプター手段には、以下のような材料が含まれる:金属、プラスチック、たとえばポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ナイロン、ポリ(アルキル)アクリレート、など、天然材料たとえば、石材、木材など。取付け手段および/またはレセプター手段のための構成材料が、鋼、アルミニウム、チタン、真鍮、鉛、クロム、銅などからなる群より選択される金属であるのがより好ましい。材料を選択して、それが、その積層物中で使用されるガラスの膨張係数に比較的近い線膨張係数を有するようにする。
【0021】
本明細書に記載されているような改良を得るためには、ガラスの膨張係数を、取付け手段およびレセプター手段のための膨張係数と適切にマッチングさせることが、本発明にとっては極めて重要である。本発明を実施するのに使用される材料の膨張係数を求めるためには従来からの方法を使用することができるが、あるいは別な方法として、それらの材料の物性表から、それらの数値を確認することも容易に可能である。
【0022】
ガラスの厚みもまた、その積層物の意図する用途および使用法に応じて、変化させることができる。本明細書において考えるとき、使用するガラスの厚みは、その積層物の意図する目的を満たすような積層物が得られるのであれば、いくらであってもよいが、ただし、ガラスシートの厚みを、(コスト面から望ましい)最小厚みと(積層物の強さとの関連で好ましい)最大厚みとの間とするのが望ましい。本明細書で有用なガラスシートの厚みは、少なくとも0.25mmとするのがよい。
【0023】
本発明のまた別な実施態様においては、取付け手段および/またはレセプター手段のために使用する構成材料は、一定圧力における取付け手段および/またはレセプター手段のCTE(CTE)が、一定圧力におけるガラスのCTE(CTE)の約95%〜約105%となるように、ガラスをマッチングさせることができる。CTEが、CTEの約96%〜約104%となるのが好ましく、約97%〜約103%であればより好ましく、約98%〜約102%であれば、最も好ましい。
【実施例】
【0024】
以下の実施例と比較例を用いて、本発明をさらに説明する。これらの実施例はいかなる点においても、本発明の範囲を限定する意図はなく、またそれらを、本明細書において特許請求するかまたは記載している本発明と矛盾するような特許請求項または詳細を定義するのに使用すべきではない。
【0025】
以下の実施例においては、各種の取付けシステムにおける応力の発生についての、有限要素シミュレーションの結果を示す。システムの内部残留応力は、金属インサートタイプと中間層の厚みを適切に選択することによって最小化することが可能であることを、それらは示している。図1にインサートの詳細と使用した有限要素モデルを示した。
【0026】
(実施例1)
インサートを、304ステンレススチールと0.76mmのセントリーグラス(SentryGlas,登録商標)プラス(Plus)とから作製し、ポリマー中間層シムを使用する。表1に、作製温度から冷却した後における、予想されるシステム残留応力の発生を示す。
【0027】
(実施例2)
インサートを、チタン合金と0.76mmのセントリーグラス(SentryGlas,登録商標)プラス(Plus)とから作製し、ポリマー中間層シムを使用する。表1に、作製温度から冷却した後における、予想されるシステム残留応力の発生を示す。この実施例は、最小のシステム残留応力を示すであろうと予想されることに注目されたい。
【0028】
(実施例3)
インサートを、17−4PHステンレススチールと2.29mmのセントリーグラス(SentryGlas,登録商標)プラス(Plus)とから作製し、ポリマー中間層シムを使用する。表1に、作製温度から冷却した後における、予想されるシステム残留応力の発生を示す。
【0029】
(実施例4)
インサートを、チタン合金と2.29mmのセントリーグラス(SentryGlas,登録商標)プラス(Plus)とから作製し、ポリマー中間層シムを使用する。表1に、作製温度から冷却した後における、予想されるシステム残留応力の発生を示す。
【0030】
(実施例5)
インサートを、17−4PHステンレススチールと0.76mmのセントリーグラス(SentryGlas,登録商標)プラス(Plus)とから作製し、ポリマー中間層シムを使用する。表1に、作製温度から冷却した後における、予想されるシステム残留応力の発生を示す。
【0031】
(実施例6)
ガラス積層物を以下の方法により調製することができる。3000mm×200mm×6mm(厚み)の強化ガラスのシートを、リン酸三ナトリウムの脱イオン水溶液(5g/リットル)を用いて洗浄し、脱イオン水を用いて完全に洗い流し、乾燥させる。ガラスの1枚のシートを平らに置くか、またはその代わりとして、積層物を作製しすいような位置に置く。81%のエチレンと19%のメタクリル酸からできていて、37%がナトリウムイオンで中和されており、そのメルトインデックス(MI)が2であるアイオノマー樹脂のシート(厚み0.76mm)を、そのガラスの露出表面の上に置く。前記アイオノマーシートの湿分レベルは、0.06重量%未満とするべきである。そのアイオノマーシートは、エンボス法によって表面粗さを与えてあって、組み立てた境界面それぞれの間の空気を容易に逃がせるようになっている。第二のガラス部品を、そのアイオノマーシートの上に置き、アイオノマー樹脂の第二の部品(これは、第一のアイオノマーシートと同じであっても、異なっていてもよい)をその第二のガラスの上に置く。次いで第三のガラス部品をその第二のアイオノマーシートの上に置くが、その第二と第三のガラスシートは、積層物の組立物の中にインサートがはまりこむことができるように、窪んだ箇所を有するようにする。次いで第三のアイオノマーシート(その他のアイオノマーシートと同じであっても、異なっていてもよい)を、第三のガラスシートの上に置き、第四のガラスシートをその第三のアイオノマーシートの上に置いて、ガラス/アイオノマーシートが交互に存在する積層組み立て物を作るが、ここでその中側のガラスシートが、金属インサートを受け入れるのに適した、窪んだ箇所を形成している。さらなるアイオノマー材料をその窪んだ箇所の中に置いて、インサートとアイオノマーとの間の「機械的な」結合を可能として、積層組み立て物を完成させる。このインサートは、この特許技術の主題に含まれるような、適切な熱膨張係数を有するような好適な材料である。たとえば、チタン金属をインサート材料として使用することができる。ポリエステルテープの断片を用いて、予備組み立て物をテープ止めし、それぞれの層の相対的な配置を保持することも可能である。ナイロンの布片を予備組み立て物のまわりに配して、層の間から空気が抜けやすいようにすることもできる。次いでその予備組み立て物を真空ポンプに接続したナイロン真空バッグの中に入れる。真空をかけて、間に入っている空気を実質的に除去するようにする(バッグの中の空気の圧力を絶対圧50ミリバール未満にまで低下させる)。次いでその積層組み立て物を空気オートクレーブの中に置いて、圧力と温度を、15分かけて、常温常圧から135℃、200psiにまで上げる。次いでその温度と圧力を充分な時間(典型的には30〜120分)の間保持して、積層組み立て物が適切に加熱されるようにしなければならない。次いで温度を20分以内で40℃まで下げ、圧力を常圧にまで低下させ、ユニットを取り出す。次いで、階段の踏み面、床タイルユニット、天井、手すり、傾斜およびカーテンウォールグレージング構造物などにとって、必要あるいは好都合と考えられるような、高い荷重担持用途について、その積層組み立て物の機械的試験を実施する。
【0032】
上記の実施例では、材料のための熱膨張係数(CTE)として以下の数値を用いた:
【0033】
【表1】

【0034】
(実施例7)
実施例1において説明した調製方法に従い、長さ80mm、幅20mm、厚み0.6mmの軟鋼インサートを用いて、積層物(55mm×80mm)を調製した。鋼の部分を、深さ20mm、幅20mmのガラスの2枚の外側層によって定まる領域の中に積層させた。同じ金属インサートを、その積層物の反対側にも積層し、それによって、その金属タブを引張試験機(インストロン(Instron))に取付けられるようにして、通常の引張試験か、そうでなければASTM D638に記載の試験法に従って、試験を行った。この方法により、インサートを積層物構造物の中から引き抜くのに必要な力を評価することができた。この場合の破壊モードは、積層物の外側のタブの金属破壊であった。このインサートは、積層物の中で完全に元のままに留まり、金属インサートとそれを取り巻くアイオノマー材料との間では、目につくような損傷、変形、層剥離または分離は認められなかった。
【0035】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】インサートを示す積層物の図である。
【図2】図1の積層物において、その上側の層を除いて、インサートをより明らかに見えるようにした図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接的な点取付け型積層システムであって、(1)熱可塑性中間層、(2)剛構造荷重担持層(構造層)の少なくとも1枚のシート、(3)少なくとも1つのレセプター手段、および(4)少なくとも1つの取付け手段、を含み、前記熱可塑性中間層が、少なくとも1つの表面において、前記構造層の少なくとも1枚のシートに結合されており、そして、少なくとも1つのレセプター手段がさらに、前記熱可塑性中間層に接着的に結合され、それによって前記構造層に接着的に結合されており、
前記取付け手段および/または前記レセプター手段が前記構造層の膨張係数の約90%〜約110%の膨張係数を有する材料から作られているという更なる条件で、前記レセプター手段が機械的に前記取付け手段を受け入れるような位置にあることを特徴とする積層システム。
【請求項2】
前記熱可塑性中間層が、エチレンと、エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体とを共重合させることにより得られるコポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の積層システム。
【請求項3】
前記中間層が、約0.30mm〜約1.5mmの厚みを有することを特徴とする請求項2に記載の積層システム。
【請求項4】
それぞれのガラスシートが、少なくとも約0.25mmの厚みを有することを特徴とする請求項3に記載の積層システム。
【請求項5】
前記積層物が、少なくとも2枚のガラスのシートを含むことを特徴とする請求項4に記載の積層システム。
【請求項6】
それぞれのガラスシートが、1℃あたり約5ppm〜約10ppmの範囲の膨張係数を有していることを特徴とする請求項5に記載の積層システム。
【請求項7】
前記取付け手段および/または前記レセプター手段が、前記ガラスの膨張係数の約92%〜約108%の膨張係数を有する材料から作られていることを特徴とする請求項6に記載の積層システム。
【請求項8】
前記取付け手段および/または前記レセプター手段が、前記ガラスの膨張係数の約94%〜約106%の膨張係数を有する材料から作られていることを特徴とする請求項7に記載の積層システム。
【請求項9】
前記取付け手段および/または前記レセプター手段が、前記ガラスの膨張係数の約95%〜約105%の膨張係数を有する材料から作られていることを特徴とする請求項8に記載の積層システム。
【請求項10】
前記取付け手段および/または前記レセプター手段が、金属材料であることを特徴とする請求項9に記載の積層システム。
【請求項11】
前記積層物が、床タイル、階段の踏み板、ガラス壁、または天井タイルとして有用であることを特徴とする請求項10に記載の積層システム。
【請求項12】
支持構造に対して直接的に点取付けするのに好適なグレージングシステムを調製するための方法であって、(1)熱可塑性中間層、(2)剛構造荷重担持層(構造層)の少なくとも1枚のシート、(3)少なくとも1つのレセプター手段、および(4)少なくとも1つの取付け手段、を含む積層物を組み立てる工程を含み、前記熱可塑性中間層が、少なくとも1つの表面において前記構造層の少なくとも1枚のシートに結合されており、そして、少なくとも1つのレセプター手段がさらに、前記熱可塑性中間層に接着的に結合され、それによって前記構造層に接着的に結合されており、
前記取付け手段および/または前記レセプター手段が前記構造層の膨張係数の約90%〜約110%の膨張係数を有する材料から作られているという更なる条件で、前記レセプター手段が機械的に前記取付け手段を受け入れるような位置にあることを特徴とする方法。
【請求項13】
取付け手段およびレセプター手段を介して支持構造に直接的に点取付けするのに好適な、ガラス積層グレージングシステムを作製するための方法であって、前記取付け手段および/または前記レセプター手段を、前記ガラスの膨張係数の約90%〜約110%の膨張係数を有する材料から作るように前記積層物を構成するための材料を選択する工程を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−516917(P2007−516917A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533805(P2006−533805)
【出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/019138
【国際公開番号】WO2004/113067
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】