説明

合わせガラス

【課題】使い勝手をあまり損ねることなく、中間膜の品質を良好に維持することのできる合わせガラスを用いた、ガラスパネル、およびガラス積層体を提供する。
【解決手段】辺縁に凹部形成用面取り1を設けた板ガラス2の複数枚を間に中間膜3を介装して、かつ、凹部形成用面取り1同士が臨む姿勢で接着、積層して前記中間膜3の辺縁側にシール材収容凹部4を形成し、該シール材収容凹部4内にシール材5を充填して中間膜3の前記辺縁側からの外部への露出を防止して合わせガラス6を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合わせガラスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数枚の板ガラスを間に中間膜を介装して接着、積層した合わせガラスとしては、従来、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において、合わせガラスは、接着用中間膜を介して2枚のガラス板を貼り合わせて形成され、各ガラス板にはエッジ部の面取りなどが施される。この合わせガラスは、その図面に示すように、外周面において2枚の板ガラスの間から接着用中間膜の端縁が外部に露出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-128546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例は中間膜が劣化しやすいという欠点がある。
【0005】
すなわち、設置に際して辺縁に適宜の縁部材などを取り付ける場合に、合わせガラスの外周面に接着剤を塗布したときには、接着剤が中間膜と接触してしまう。上記中間膜としてガラス同士の接着に適した接着材料を、上記接着剤としてガラスと縁部材との接着に適した他の接着材料を用いた場合、これらの接触は不要な化学反応を生じさせてしまうおそれがあり、この化学反応を原因として中間膜が劣化してしまうおそれがある。また、接着剤が中間膜と必ずしも接触していなくとも、接着剤の近傍で中間膜が露出していれば、固化などに伴って接着剤から発生したガスが中間膜に不測の悪影響を与えるおそれがあることも否定できない。
【0006】
これらの問題は、上述した接着剤と中間膜について、化学反応までをも配慮した組み合わせにすれば足りるが、この場合には、接着剤や中間膜の種類が制限されてしまうことになるため、上記接着剤として接着強度に優れたものが使用できなくなってしまったり、あるいは、上記中間膜として紫外線透過防止機能などの所望の付加機能を備えたものが使用できなくなってしまったり、さらには、上記接着剤や中間膜として安価なものが使用できなくなってしまったりなどといった多様な面で使い勝手が悪くなるおそれがある。
【0007】
本発明は上述の欠点を解消すべくなされたものであって、使い勝手をあまり損ねることなく中間膜の品質を良好に維持することができる合わせガラスの提供を目的とする。また、本発明の他の目的は、合わせガラスを用いたものであって、同様に使い勝手をあまり損ねることなく中間膜の品質を良好に維持することができるガラスパネル、およびガラスシャッタの提供にある。加えて、本発明のさらに他の目的は、同様に使い勝手をあまり損ねることなく中間膜の品質を良好に維持することができる合わせガラスの設置構造、およびガラス積層体の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば上記目的は、
辺縁に凹部形成用面取り1を設けた板ガラス2の複数枚を間に中間膜3を介装して、かつ、凹部形成用面取り1、1同士が臨む姿勢で接着、積層して前記中間膜3の辺縁側にシール材収容凹部4を形成し、該シール材収容凹部4内にシール材5を充填して中間膜3の前記辺縁側からの外部への露出を防止した合わせガラスを提供することにより達成される。
【0009】
本発明によれば、各板ガラス2の辺縁には凹部形成用面取り1が設けられ、該凹部形成用面取り1、1同士が臨む姿勢で中間膜3を介して接着、積層されることにより、中間膜3の辺縁側にシール材収容凹部4が形成される。このシール材収容凹部4内にはシール材5が充填されて中間膜3の当該辺縁側からの外部への露出が防止される。
【0010】
したがって本発明によれば、例えば適宜の縁部材への固定に際して合わせガラスの辺縁に接着剤を塗布した場合にも、この接着剤に起因する中間膜3の不要な化学変化などをシール材5によって防止、あるいは抑制することができる。
【0011】
上記シール材収容凹部4は、合わせガラスの辺縁に溝状に形成され、その内部に充填されるシール材5の接着強度、および、その厚さ、すなわち中間膜3の上記接着剤に起因する劣化を防止あるいは抑制することが期待しうる厚さなどを考慮した上でその表面積や深さが決定される。この考慮はまた、シール材5として用いられる材料の特性に応じて行うことが可能である。また、凹部形成用面取り1は、その一対が並ぶことにより、以上のようにして表面積等が決定されるシール材収容凹部4を形成できるようにその大きさ等が決定される。
【0012】
すなわち、上述した従来例にもあるように板ガラス2には、一般に、いわゆるハマグリのように割れたり欠けたりしてしまうことを防ぐために、エッジに糸面取りとしての小さな面取りが施される。これに対し本願発明における凹部形成用面取り1は、上述したようにシール材収容凹部4を形成することを目的とするもので、したがって上述した一般の面取りとは目的が全く異なるものであり、また、この相違は、凹部形成用面取り1が、上述したようにして表面積や深さが決定されるもの、すなわちその表面積や深さに関し、シール材5の上述した性能を考慮したときに一般の面取りよりも格段大きく形成される傾向にあるという構成上にも表れている。
【0013】
以上のように、シール材収容凹部4は、例えば糸面取り部分同士を臨ませたものに比して格段大きく形成されるため、シール材5を上述した化学反応を緩衝しうる厚さにした場合にも、合わせガラスの端面からはみ出さないようにすることが可能となる。シール材5の合わせガラス端面からのはみ出しを防いだ場合には、シール材5がより剥離しにくくなる上に、外観も良好で、さらに、合わせガラスの端面に接着剤を介して、例えば縁部材を接着したときに、その接着強度を効率的に確保することができる。
【0014】
上記シール材5は、少なくとも露出する中間膜3の近傍に配置されるものであるため、劣化するような化学変化を中間膜3に起こさせない材料に選定される。また、上述したようにシール材5は、シール材収容凹部4の表面積、大きさにおいて、所望の接着強度、化学反応の緩衝性能を発揮しうるものが選定される。具体的なシール材5の材料は、中間膜3の材料などを考慮して実験的に選定することができる。同様に、シール材5は、上述したように接着剤の近傍に露出して配置される場合があるため、接着剤の材料をも考慮してその材料が選定される。
【0015】
また、本発明によれば上述した他の目的は、
複数枚の板ガラス2を間に中間膜3を介装して接着、積層した合わせガラス6と、
該合わせガラス6の辺縁に取り付けられる縁部材7とを有し、
前記合わせガラス6には、中間膜3の前記縁部材7側にシール材収容凹部4が形成され、該シール材収容凹部4内に充填されるシール材5により中間膜3の前記縁部材7側への露出を防止して縁部材7が接着剤8により取り付けられるガラスパネルを提供することにより達成される。
【0016】
この発明において、合わせガラス6には縁部材7が接着剤8により取り付けられ、シール材5は、上記接着剤8側への中間膜3の露出を防止し、中間膜3の接着剤8に起因する劣化を防止、あるいは抑制する。シール材収容凹部4は、上述と同じようにして表面積等を決定することもできるが、シール材5によって中間膜3の接着剤8側への露出を防止して縁部材7を合わせガラス6に取り付けてしまうこの発明においては、シール材収容凹部4からはみ出したシール材5も縁部材7によって覆われた状態にできるため、積極的にシール材5をシール材収容凹部4からはみ出させることを前提としてその表面積等を決定しても足りる。
【0017】
縁部材7は、合わせガラス6の辺縁を保護するものなどとして機能することができ、また、合わせガラス6の所望の物や場所への固定、取り付けに際して活用することも可能で、これによれば固定作業等を容易に行うことができる。この縁部材7は強度の高い材料、例えば金属材料により形成することができる。
【0018】
さらに、本発明によれば上述した他の目的は、
建築物9の開口部10に所定間隔を隔てて設置される一対のガイドレール11、11と、
該ガイドレール11、11に摺接して移動する被ガイド桟12が対向辺縁に取り付けられた合わせガラス6の複数を有し、
各合わせガラス6には、接着、積層された複数の板ガラス2の間に介装される中間膜3の前記被ガイド桟12側にシール材収容凹部4が形成され、該シール材収容凹部4内に充填されるシール材5により中間膜3の前記被ガイド桟12側への露出を防止して被ガイド桟12が接着剤8により取り付けられるガラスシャッタを提供することにより達成される。
【0019】
この発明において、合わせガラス6は、接着剤8により被ガイド桟12を対向辺縁に取り付けられ、機械的な可動部品として構成される。シール材5によって中間膜3の接着剤8側への露出を防ぐことにより、中間膜3の劣化を防いで強い接着強度の接着剤8を適宜利用することができる。シール材5は、常に外気に曝されるような使用条件のときには、耐候性に優れたものを選定することが望ましい。
【0020】
加えて、本発明によれば上述したさらに他の目的は、
合わせガラス6の辺縁に取り付けられた縁部材7を支持杆13により支持して設置され、
前記合わせガラス6は、接着、積層された複数の板ガラス2の間に介装される中間膜3の前記縁部材7側にシール材収容凹部4を有し、該シール材収容凹部4内に充填されるシール材5により中間膜3の前記縁部材7側への露出を防止して縁部材7が接着剤8により取り付けられる合わせガラス6の設置構造を提供することにより達成される。
【0021】
この発明において、合わせガラス6は、接着剤8によって辺縁に取り付けられた縁部材7を支持杆13によって支持されることにより所定位置に設置される。合わせガラス6はその透明感、強度などにより建築材料として有用であり、縁部材7をその支持のためのアタッチメントとして機能させることにより、所望の場所に簡単に設置することができる。合わせガラス6の中間膜3はシール材5によって縁部材7側への露出が防がれており、これにより中間膜3の劣化を防いで耐候性の良好な接着剤8を適宜利用することができる。
【0022】
また、本発明によれば上述したさらに他の目的は、
中間膜3によって板ガラス2を被保護部材14に接着、積層したガラス積層体本体15と、
該ガラス積層体本体15の辺縁に取り付けられる縁部材7とを有し、
前記ガラス積層体本体15には、中間膜3の前記縁部材7側にシール材収容凹部4が形成され、該シール材収容凹部4内に充填されるシール材5により中間膜3の前記縁部材7側への露出を防止して縁部材7が接着剤8により取り付けられるガラス積層体を提供することにより達成される。
【0023】
この発明においてガラス積層体本体15の辺縁には、接着剤8により縁部材7が取り付けられ、ガラス積層体本体15の中間膜3の上記接着剤8側への露出がシール材5により防止される。被保護部材14は光透過性や適宜の強度を備えた板ガラス2を利用して保護されるもの、例えば太陽電池セルとして構成することが可能で、この場合には、板ガラス2の反対面、すなわち裏面側に適宜の支持基材が配置され、この支持基材と板ガラス2とを太陽電池セルを間に挟んで中間膜3により接着、積層した太陽電池モジュールとして構成することができる。この場合中間膜3の劣化防防止により、太陽電池セルへの太陽光の入射量を良好に維持することができる。縁部材7は、ガラス積層体本体15の辺縁を保護するものや、所望の物や場所に取り付けるときの取り付け基部などとして機能することができる。この縁部材7は、強度の高い材料、例えば金属材料により形成することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、使い勝手をあまり損ねることなく中間膜の品質を良好に維持することができる合わせガラスを提供することができるため、その透明感や装飾性を良好に維持することができる。また、合わせガラスを用いたガラスパネルやガラスシャッタ、さらには合わせガラスの支持構造、ガラス積層体であって、同様に使い勝手をあまり損ねることなく中間膜の品質を良好に維持することができるものを提供することができるため、その透明感や装飾性、光透過性を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】合わせガラスを示す図で、(a)は一部を破断して積層構造を示した正面図、(b)は板ガラス同士の接着作業を示す要部断面図、(c)はシール材のシール材収容凹部への投入作業を示す要部断面図、(d)はシール材のシール材収容凹部への充填作業を示す図である。
【図2】ガラスパネルを示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)の2B-2B線断面図、(c)はその変形例を示す正面図、(d)は(c)の2D-2D線断面図である。
【図3】ガラスシャッタを示す図で、(a)は正面図、(b)は要部断面図、(c)は(a)の3C-3C線断面図、(d)は(a)の3D-3D線断面図である。
【図4】ガラス手摺を示す図で、(a)はガラス手摺の正面図、(b)は(a)の4B-4B線断面図、(c)は(a)の4C-4C線断面図である。
【図5】太陽電池モジュールを示す図で、(a)は要部断面図、(d)はシール材による太陽電池モジュール本体のシール作業を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に本発明に係る合わせガラス6を示す。この実施の形態において、合わせガラス6は、図1(a)に示すように、2枚の強化ガラスからなる板ガラス2、2と、これらの板ガラス2、2間に介装されて板ガラス2、2同士を接着する中間膜3とを有して構成される。中間膜3は、この実施の形態においてはポリプロピレン樹脂により形成される。
【0027】
また、各板ガラス2において合わせガラス6の厚さ方向の外側に位置するエッジ、すなわち合わせガラス6においてエッジを構成することとなる各板ガラス2のエッジには、割れや欠けを防止するための糸面取り20が施されるとともに、中間膜3側に位置するエッジには、凹部形成用面取り1が施される。凹部形成用面取り1は、図1(b)に示すように、上記糸面取り20よりも大きいサイズで、糸面取り20と同じ45度、あるいは、合わせガラス6の外側から中間膜3に対して45度よりもやや鋭角に交差する程度の角度で形成される。この凹部形成用面取り1のサイズや角度は、後述するシール材5に要求される接着強度や、中間膜3の外側における厚さなどを考慮して決定される。
【0028】
以上の合わせガラス6は、上述した凹部形成用面取り1の対により、外方に向かって漸次拡大する断面略V字形状のシール材収容凹部4が外周面に溝状に形成され、このシール材収容凹部4内には、シール材5が充填される。シール材5は、中間膜3にその劣化をもたらすような化学反応を生じさせることがないとともに、後述する構造用シール材(接着剤8)にもその劣化をもたらすような化学反応を生じさせることがなく、かつ、この構造用シール材8と中間膜3の間に介在することにより、これらが化学的に反応してしまうことを緩衝できるものが使用される。この実施の形態においては、このようなシール材5として主剤を合成物とする反応型接着剤であって耐久性や耐候性に優れた反応接着シリコーンゴムが使用される。この反応接着シリコーンゴムは、上述したような中間膜等の化学的な安定性を阻害しないものとして発明者の実験により確認されたものである。
【0029】
したがって以上の合わせガラス6は、板ガラス2、2間に介装される中間膜3により、全体の強度を補強することができるとともに、万一板ガラス2が割れてしまったときの破片の飛散を防止することができる。また、シール材5により中間膜3の合わせガラス6外周面からの外部への露出が防止される。
【0030】
以上の合わせガラス6の製造工程を以下に説明する。先ず、形成する合わせガラス6に応じたサイズの板ガラス2を2枚用意するとともに、この板ガラス2、2間に介装する中間膜3を用意する。各板ガラス2には、上述したように糸面取り20が施されとともに、凹部形成用面取り1が施される。また、その端面は平滑面にされる。以上の処理は、既存のガラス加工設備を利用して行うことができる。
【0031】
一方、中間膜3は、板ガラス2の凹部形成用面取り1を除いた領域、すなわち板ガラス2の平面部に対応するサイズにされ、より詳細には、縮み代や伸び代を考慮して後述する加熱・加圧処理後に上述した平面部に合致する程度になるようなサイズにされる。
【0032】
次に、図1(b)に示すように、中間膜3を2枚の板ガラス2、2で挟むように加圧処理するとともに加熱処理することにより、中間膜3によって板ガラス2、2同士を接着する。加熱加圧処理により中間膜3は、各板ガラス2の凹部形成用面取り1の形成領域を除く平面部の全面に接着する。なお、加圧加熱処理は例えばオートクレーブ内で行われ、また、処理後に適宜の養生期間が設定される。
【0033】
また、このような板ガラス2、2同士の接着、積層により、凹部形成用面取り1、1同士が対峙して断面略V字形状のシール材収容凹部4が形成され、この状態で中間膜3は、その端縁がシール材収容凹部4の底面をなすようにして外部に露出する。この中間膜3の露出を防止するために、次に、シール材収容凹部4内にシール材5が充填される。
【0034】
上述したように反応接着シリコーンゴムを用いる本発明において、シール材5は、加熱による化学反応によって周囲の部材に接着するものが使用される。また、このシール材5の充填作業に先立って、シール材収容凹部4の内壁面はきれいに清掃され、さらに、必要に応じてプライマーが塗布される。
【0035】
シール材5のシール材収容凹部4内への充填作業は、先ず、常温下で適宜の柔軟性がある定型タイプからなるシール材5をシール材収容凹部4内に詰め込むことによりなされる。図1(c)に示すように、先ず最初に、必要に応じてヘラ等を用いて手作業でシール材収容凹部4内にシール材5を押し込むようにしてあてがい、この状態で合わせガラス6の端面からはみ出してしまう量のシール材5を、図1(d)に示すように、ローラ等21で強くシール材収容凹部4内に押し込む。次いで、押し込み後にまだはみ出してしまっている部分をヘラ等22で適宜除去した後、シール材5を固化するための加熱処理を加圧下で行う。シール材5の反応接着温度が上述した中間膜3の処理温度よりも低いこの実施の形態において、この加熱処理に中間膜3が反応等してしまうことはなく、この後、適宜の養生期間を経て冷却されると、合わせガラス6が完成する。
【0036】
なお、以上の実施の形態、および以下の説明において、シール材5として反応接着シリコーンゴムを用いる場合を示すが、上述したように中間膜等に不要な化学的な反応をもたらさないことを条件として、例えば主剤が天然物であったり、熱可塑性や熱硬化性のものであったり、無機系接着剤であったり、さらには、水や溶剤の蒸発によって固化・接着するもの、瞬間接着剤など種々のものを採用することができる。
【0037】
以上の合わせガラス6を用いて形成されるガラスパネルAを図2に示す。図2(a)および(b)に示すように、ガラスパネルAは、上述した合わせガラス6の辺縁に縁部材7を取り付けて形成される。
【0038】
縁部材7は、合わせガラス6の辺縁の長さと同じ程度の長さを備え、ステンレス等の適宜の金属の板材を断面コ字形状に折り曲げて形成される。この縁部材7は、合わせガラス6の各辺縁に被さるようして装着され、その4個が矩形の合わせガラス6の各辺縁を枠状に囲むように装着されて合わせガラス6の周縁部を保護する。縁部材7の取り付けには、一般に構造用シール8と呼ばれるもの、すなわち、一般のシール材に比べて長時間大きな荷重がかかっても接着特性の低下が少なく、信頼性の高い適宜の汎用性の高いものが使用され、具体的には、適宜の弾性を備えたシリコーン系の接着剤であって少なくとも上述したシール材5とは異なる組成のものが使用される。上記構造用シール8は合わせガラス6と縁部材7の隙間、すなわち合わせガラス6の辺縁周辺に充填され、上述したシール材5により中間膜3との接触が禁止される。
【0039】
図2(c)および(d)に以上のガラスパネルAの変形例を示す。この変形例は合わせガラス6を後述するガラスシャッタのスラットBに利用した場合を示すもので、合わせガラス6には、ガラスシャッタのガイドレール11に摺接して移動する被ガイド桟12が両側縁に装着され、これに対応して、両側縁のみにシール材収容凹部4が形成され、両側縁のみにシール材5が充填されて縁部材7が装着される。
【0040】
被ガイド桟12は、各縁部材7の合わせガラス6反対面に連結部材23を介して被ガイド体24を装着して形成される。被ガイド体24は、合わせガラス6の辺縁と同じ程度の長さを有し、ステンレス等からなる適宜の金属板材を折り曲げるなどして形成される。その断面形状は、底壁24aの両端から直交方向にそれぞれ側壁24bを立設し、各側壁24bの先端からさらに、漸次近接する方向に傾斜壁24cを延設させて形成される。また、上記底壁24aの側壁24b反対面には、後述する昇降装置25との連結のための連結ピン24dが形成される。
【0041】
連結部材23も同様に合わせガラス6の辺縁と同じ程度の長さを有し、ステンレス等からなる適宜の金属板材を折り曲げるなどして形成される。この連結部材23は、底片23aの両端から漸次拡開する方向に傾斜して立ち上がる傾斜片23bを延設させた断面形状を有し、上記縁部材7の底壁7aの合わせガラス6反対面に対して上記底片23aが固定されて傾斜片23bが縁部材7の反対方に向かって延設される。連結部材23の縁部材7への固定は、図示しないボルト止めなどによって適宜行われ、連結に際しては、連結部材23が縁部材7よりもやや下方にずれて位置するようにされる。また、各傾斜片23bは、上述した被ガイド体24の傾斜壁24cにボルト26aとナット26bにより着脱自在に連結され、連結状態において、連結部材23と被ガイド体24とは上下方向に同じ高さ位置に合わせられる。
【0042】
したがってこの変形例においてガラスパネルAは両側縁に縁部材7を装着して形成され、この縁部材7の外側に連結部材23を介して被ガイド体24を装着して形成される被ガイド桟12が合わせガラス6の両側縁に配置される。連結部材23と被ガイド体24がボルト26aとナット26bにより着脱自在であることにより、合わせガラス6が破損したときには連結部材23を被ガイド体24から取り外して簡単に、かつ構造用シール8と中間膜3の不測の接触を確実に防止して交換することができる。
【0043】
また、この変形例においてガラスパネルAには、図2(c)および図3(d)に示すように、縁部材7が装着されない合わせガラス6の上下縁にクッション収容部27が形成される。クッション収容部27は、合わせガラス6の上下縁に溝状に形成され、脆性の高いガラス素材同士の衝突を避けるために離隔配置せざるをえない上下のスラットBの間の隙間を閉塞するクッション28を収容する。この実施の形態においてクッション収容部27は断面矩形形状に形成されるが、クッション28の安定性等を考慮した上で上述したシール材収容凹部4と同様に断面三角形状など適宜の断面形状にすることも可能である。また、中間膜3は、上述した凹部形成用面取り1に加えて、クッション収容部27を除く平面部にほぼ合致するサイズにされる。以上のクッション収容部27は、上述したシール材収容凹部4同様、各板ガラス2の辺縁に予めクッション収容部形成用切欠29を設けておき、これらを対峙させて形成される。
【0044】
また、上記クッション28は、ゴム等の適宜の弾性材を中空形状にして形成され、上述したクッション収容部27の深さ寸法の倍以上の高さ寸法で、その上下部分をそれぞれクッション収容部27に収容させたときに外部に露出する中間部分が上述した縁部材7と連結部材23の高さ方向のずれ寸法よりもやや大きい高さ寸法になるように形成される。このクッション28は、各合わせガラス6の上縁に形成されたクッション収容部27に対して底部が固定されて各合わせガラス6に装着される。
【0045】
図3に以上のように被ガイド桟12を装着した合わせガラス6を用いたガラスシャッタを示す。ガラスシャッタは、上述したように合わせガラス6に被ガイド桟12を装着して形成されるスラットBの複数と、建築物9の開口部10の両側縁部に立設され、上述した被ガイド桟12に摺接してその移動方向をガイドするガイドレール11とを有する。
【0046】
ガイドレール11は、ステンレス等の適宜の金属材料により形成され、上記開口部10の高さ寸法と同じ程度の長さ寸法を備える。このガイドレール11は、断面略コ字形状で、断面方向の開放端周りにはスラットBを挟むように対峙する壁面からなるガイド部11aを有する。一対のガイドレール11、11は、それぞれの断面方向の開放端を向かい合わせるようにして配置される。なお、図3において30は地面である。
【0047】
また、この実施の形態においてガラスシャッタは、開閉操作を容易にするための昇降装置25を備える。昇降装置25は、図3(a)および(b)に示すように、ガイドレール11の上端よりもさらに上方に配置され、スラットBを収容する収容スペースを備えて構成される。この昇降装置25は、各スラットBの連結ピン24dに連結されるチェーン31を備え、このチェーン31をモータ32により正逆回転可能なスプロケット33によって引き出し、巻き取り自在にして形成される。上記スプロケット33は各ガイドレール11の直上位置に配置され、軸体34により同期回転する。また、上記チェーン31は、一端がスプロケット33から垂下されてガイドレール11内を通り、各スラットBの連結ピン24dに脱離不能に連結される。このチェーン31における各スラットBの連結間隔は、同時に多数のスラットBを引き上げるシャッタ開放動作時において、上下方向に隣接するスラットB間に適宜の隙間を生じる程度にされ、したがってシャッタ閉塞時においては、スラットBの自重、および縁部材7と連結部材23の高さ方向のずれによって上述したクッション28が潰されてスラットB間の隙間が適当に閉塞される。
【0048】
また、チェーン31の巻き取りによって引き上げられたスラットBは、そのままチェーン31とともにスプロケット33周りを移動し、上述した収容スペースに移動する。この収容スペースは、図3(b)に示すようにスプロケット33近傍まで水平方向に延設された吊り下げレール35を備え、上述したようにスプロケット33周りを通り抜けた連結ピン24dを順次支承して複数のスラットBを水平方向に並べるようにして収容する。なお、図3(b)において36は歯車、37、37’はベルト、38は、昇降装置25を建築物9外方から覆うカバーである。
【0049】
したがって図示しないコントローラによってモータ32を駆動操作すると、複数のスラットBを吊り下げレール35に吊り下げて収容された位置からガイドレール11によって開口部10を閉塞する位置に移動させることができ、反対にまた、開口部10を閉塞する位置から収容位置に移動させることができる。スラットBの上下移動は、被ガイド桟12をガイドレール11でガイドして、すなわちガイドレール11のガイド部11aに被ガイド体24の側壁24aが摺接することにより移動方向を管理される。また、各スラットBの合わせガラス6は、被ガイド桟12を装着する構造用シール8の中間膜3との接触がシール材5により防止されるため、中間膜3の劣化を防止することができ、板ガラス2の透明性を含めた外観の意匠性が良好に維持される。さらに上縁においては、クッション28により中間膜3の外部への露出が防止されることから、仮に降雨があっても、中間膜3の辺縁が長期間水にさらされてしまうことはない。加えて、合わせガラス6の上下に上述した縁部材7等が装着されず、クッション28が見える程度に過ぎないため、閉塞性を確保しつつ良好な透明感を発揮することができる。
【0050】
図4に上述したようなガラスパネルAを用いて形成したベランダのガラス手摺を示す。この実施の形態において、ベランダの床面39には所定間隔で支柱13A(支持杆13)が立設され、各支柱13Aの上端部間には手摺杆13B(支持杆13)が架設される。また、各支柱13Aの下端部間には下框13C(支持杆13)が架設され、上述した支柱13A、手摺杆13B、およびこの下框13Cを枠として、その内部にガラスパネルAが固定される。
【0051】
この実施の形態において、上記ガラスパネルAは、合わせガラス6の上下端縁に縁部材7を装着して形成され、また、合わせガラス6は、縁部材7が装着される上下端縁を含む全周縁にシール材収容凹部4を備えるとともに、全周縁にシール材5を充填して形成される。このガラスパネルAは、図4(a)および(b)に示すように、支柱13A、13A間に複数が並べられ、上下端縁部が手摺杆13Bと下框13Cに支持される。
【0052】
図4(b)に示すように、手摺杆13Bや下框13Cは、縁部材7を呑み込むことができる容積を内部に備えたパネル支持部41を有し、該パネル支持部41により縁部材7を介してガラスパネルAの辺縁を支持する。このパネル支持部41は、この実施の形態においては図4(b)に示すように縁部材7に外嵌することによりガラスパネルAを所定位置に固定するが、例えば、縁部材7を適宜のパッキンや構造用シールを介して支持することも可能である。また、この実施の形態において、複数のガラスパネルAの側縁同士は、上述と同じような構造用シール8によって隙間を塞がれる。
【0053】
したがってガラス手摺は、構造用シール8の極めて狭い間隔を除けば、支柱13A13A間においてガラス素材により水平方向に連続した良好な透明感を提供する。ガラスパネルAの設置は、手摺杆13Bや下框13Cのパネル支持部41に縁部材7を嵌合させるだけでよく、あまり手間がかかることはない。また、シール材5によって中間膜3と構造用シール8との接触が防止されるため、板ガラス2の透明性を含めた外観の意匠性が良好に維持される。
【0054】
図5に上述したような板ガラス2と中間膜3を用いて形成される太陽電池モジュールを示す。太陽電池モジュールは、図5(a)に示すように、モジュール本体(ガラス積層体本体15)の辺縁に縁部材7を装着して形成される。
【0055】
上記モジュール本体15は、強化ガラスからなる板ガラス2の複数で太陽電池セル(被保護部材14)を挟むようにして形成され、太陽電池セル14と同様に板ガラス2、2間に介装される中間膜3により板ガラス2、2同士が接着され、また、この中間膜3を封止材として機能させて太陽電池セル14の外部への露出が防止される。各板ガラス2は、上述同様、周縁に凹部形成用面取り1を備え、中間膜3による接着状態で周縁にシール材収容凹部4が形成され、シール材5が充填される。縁部材7は、上述同様例えばステンレスの板材により形成される。
【0056】
また、太陽電池セル14のリード線42は、中間膜3、シール材5、構造用シール8内を通って外部に引き出され、図外の充電用バッテリ等に接続されて太陽光発電した電気を蓄電できるようにされる。さらに、以上の太陽電池モジュールは複数がリード線42を介して直列接続され、この接続に際して縁部材7はリード線42を隠すものとしても機能する。
【0057】
図5(b)は上述したモジュール本体15の製造作業を示すもので、この実施の形態においては太陽電池セル14の表裏面にそれぞれ中間膜3を介装して板ガラス2同士を接着した後、リード線42を跨ぐようにしてシール材5がそれぞれシール材収容凹部4に充填される。リード線42は図示しないシリコン性のチューブによりシール材5との接触を防止される。
【0058】
したがって太陽電池モジュールは、中間膜3と構造用シール8との接触をシール材5により防止して太陽電池セル14への採光性を良好に確保することができる。なお、以上においては太陽電池セル14の裏面側にも板ガラス2を配置する場合を示したが、これに代えて適宜のシート体を用いることも可能であり、この場合において、シート体への凹部形成用面取り1の加工が難しいときには、表面側の板ガラス2に形成する凹部形成用面取り1をより大きくすれば足りる。また、複数の中間膜3に代えてより厚い中間膜3の単数を介装したり、中間膜3に加えて太陽電池セル14周りに充填される封止材をも介装してモジュール本体15を形成することも可能で、このように封止材を介装する場合には、シール材5の封止材との相性を配慮すれば足りる。
【0059】
なお、以上の実施の形態においては、中間膜3としてポリプロピレン樹脂を用いる場合を示したが、例えばこの種のものとして多用されているポリビニルブチラール樹脂やエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を用いることも可能で、この場合にはこれらに対する相性を考慮してシール材5の材料を決定すればよい。また、板ガラス2として網入りガラスを用いて強度を高めることも可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 凹部形成用面取り
2 板ガラス
3 中間膜
4 シール材収容凹部
5 シール材
6 合わせガラス
7 縁部材
8 接着剤
9 建築物
10 開口部
11 ガイドレール
12 被ガイド桟
13 支持杆
14 太陽電池セル
15 太陽電池モジュール本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
辺縁に凹部形成用面取りを設けた板ガラスの複数枚を間に中間膜を介装して、かつ、凹部形成用面取り同士が臨む姿勢で接着、積層して前記中間膜の辺縁側にシール材収容凹部を形成し、該シール材収容凹部内にシール材を充填して中間膜の前記辺縁側からの外部への露出を防止した合わせガラス。
【請求項2】
複数枚の板ガラスを間に中間膜を介装して接着、積層した合わせガラスと、
該合わせガラスの辺縁に取り付けられる縁部材とを有し、
前記合わせガラスには、中間膜の前記縁部材側にシール材収容凹部が形成され、該シール材収容凹部内に充填されるシール材により中間膜の前記縁部材側への露出を防止して縁部材が接着剤により取り付けられるガラスパネル。
【請求項3】
建築物の開口部に所定間隔を隔てて設置される一対のガイドレールと、
該ガイドレールに摺接して移動する被ガイド桟が対向辺縁に取り付けられた合わせガラスの複数を有し、
各合わせガラスには、接着、積層された複数の板ガラスの間に介装される中間膜の前記被ガイド桟側にシール材収容凹部が形成され、該シール材収容凹部内に充填されるシール材により中間膜の前記被ガイド桟側への露出を防止して被ガイド桟が接着剤により取り付けられるガラスシャッタ。
【請求項4】
合わせガラスの辺縁に取り付けられた縁部材を支持杆により支持して設置され、
前記合わせガラスは、接着、積層された複数の板ガラスの間に介装される中間膜の前記縁部材側にシール材収容凹部を有し、該シール材収容凹部内に充填されるシール材により中間膜の前記縁部材側への露出を防止して縁部材が接着剤により取り付けられる合わせガラスの設置構造。
【請求項5】
中間膜によって板ガラスを被保護部材に接着、積層したガラス積層体本体と、
該ガラス積層体本体の辺縁に取り付けられる縁部材とを有し、
前記ガラス積層体本体には、中間膜の前記縁部材側にシール材収容凹部が形成され、該シール材収容凹部内に充填されるシール材により中間膜の前記縁部材側への露出を防止して縁部材が接着剤により取り付けられるガラス積層体。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−11941(P2011−11941A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157252(P2009−157252)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(593161102)株式会社昭栄 (3)
【Fターム(参考)】