説明

合成ガスを浄化するためのプロセス

本明細書では、流動層ガス化装置において生成される合成ガスを浄化するための装置および方法が開示され、金属汚染物質、特に、アルカリ金属、ハロゲン、微粒子、および遷移金属ならびに硫黄含有汚染物質が、タールおよびアンモニアの触媒熱分解に先立って除去される。さらに、合成ガスからアンモニアを除去するための装置および方法が開示される。本発明により例えば、合成ガスを浄化するためのプロセスであって、a)触媒キャンドルフィルタの上流で、合成ガスを1つ以上の吸着剤と接触させて、浄化合成ガスを形成すること、および、b)前記浄化合成ガスに混合分解触媒を含有するキャンドルフィルタを通過させ、アンモニアおよびタールを除去し、それによって精製合成ガスを生成すること、を含む、プロセスが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2008年10月22日に出願された米国特許仮出願第61/107,478号からの優先権の利益を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書では、石炭またはバイオマスから生成される、例えば、流動層または噴流ガス化装置において生成される、合成ガスを浄化するためのプロセスが開示され、統合された小型システムにおいて、金属汚染物質、ハロゲン化物汚染物質、および硫黄含有汚染物質が除去された後、微粒子が除去され、タールおよびアンモニア汚染物質の触媒熱分解が行われる。さらに、合成ガスからアンモニアを除去するためのプロセスが開示される。
【背景技術】
【0003】
石炭およびバイオマスのガス化から生じる合成ガスの使用には、高度なエネルギー生成の需要および代替燃料の生成に関して、ますます関心が高まっている。分散発電および液体燃料生成に対する関心から、小型であるが簡素で頑丈、かつ有効な合成ガスクリーンアップを含む、より小型のガス化装置が所望される。小型、簡素、かつ頑丈であるという特徴は、分散発電の有効性と同様に重要である。これらの特徴がなければ、分散発電システムは、生成される電力または液体燃料の量に対して費用が高すぎて構築および稼動できない。しかしながら、さらに、敏感な下流構成要素、例えば、ガスタービンブレード、燃料電池、ガス分離膜、および合成ガス再形成触媒、例えば、水性ガスシフト(wgs)触媒またはフィッシャートロプシュ(FT)触媒の汚染および被毒を排除するために、合成ガスは、汚染物質、例えば、金属、硫黄、アンモニア、タール、アルカリ、粒状物質等を含まない状態でなければならない。
【0004】
したがって、合成ガスを処理して、タール、金属、アンモニア、ハロゲン化物、微粒子、および硫黄汚染物質のレベルを減少させるための小型で有効なプロセスが必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
合成ガスの生成に有用な炭素バイオマスは、バイオマスの源に応じて、可変量の不純物を含む。不純物は、硫黄化合物、窒素化合物、ハロゲン化物、粒状物質、および金属、ならびにバイオマス中に存在するか、またはガス化プロセス中に形成され得るタール等の他の不純物を含む。硫黄化合物は、それ自体が汚染されるのを回避するとともに、合成ガスを燃料源として使用するか、または他の有用な炭素含有生成物の合成のために合成ガスを処理するか、のいずれかを行う装置の下流汚染を防ぐために除去される。窒素化合物、すなわち、アンモニア、酸化窒素等も、酸化窒素汚染の源でとなり得る。金属、例えば、カリウム、鉛等は、すべてのバイオマスにおいて、非炭素燃料灰の一部として見出される。金属は、合成ガス処理および変換プロセスの他の要素を含む物質と反応して、有効性を弱め得るか、そうでなければ、要素自体を破壊し得る。例えば、カリウムおよび他の金属は、反応して、フィルタ要素の表面上で溶解および集合する、共融固体を形成し得る。ハロゲン化物は、高価な触媒を永久に損傷し、粒状物質は、タービンブレードおよびブラインド触媒を損傷し得る。燃料電池は、典型的には合成ガスにおいて見出される汚染物質のいずれにも耐性がない。
【0006】
本明細書では、低レベルの金属、硫黄化合物、タール、ハロゲン化物、粒状物質、およびアンモニアを有する合成ガスを生成するためのプロセスが開示される。プロセスは、硫黄およびハロゲン化物除去においてカルシウム系吸着剤、および、タールおよびアンモニアの熱分解および微粒子の除去において、流動層ガス化装置の床、または高温多孔セラミックフィルタを備える噴流ガス化装置のキャンドルフィルタの注入上流における、金属を含有する蒸気の捕獲および封じ込めにおいてアルミノケイ酸塩系吸着剤を併せて使用する。さらに、合成ガスからアンモニア汚染物質を除去するための酸化窒素の使用が開示される。
【0007】
さらに、フィルタの上流において金属を捕獲することによって、セラミックおよび金属フィルタの寿命を延長するためのプロセスが開示される(ガス化領域または乾舷において、またはキャンドルフィルタ要素の表面上のいずれかにおいて、吸着剤は、フィルタ要素との接触および潜在的に反応する前に、合成ガス流において金属蒸気、ハロゲン化物、および硫黄を捕獲することができる)。吸着剤は、各個別のシステム、ガス化装置、および燃料の種類と協働するように設計される。例えば、ほとんどの場合、吸着剤注入システムは、キャンドルフィルタ要素の表面上で被覆されるが、残りの粒状物質と混合される金属を捕獲するように設計されるため、注入される吸着剤の種類および負荷は、特定のガス化装置および燃料の種類に対して存在する、特定の灰および炭の種類および負荷に対して調整される。金属の捕獲およびエントレインメントは、合成ガス流路における1つ以上の段階において、金属を捕獲するための吸着剤の注入によって達成され、例えば、続いて、ガス化装置、あるいは吸着剤をガス化装置の床に添加することができる。また、配合者によって所望される任意の時点において、吸着剤を注入するために適合することができる、1つ以上の装置も開示される。
【0008】
これらおよび他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明、図面、および添付の特許請求の範囲を読むことから、当業者に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】アンモニア汚染物質を除去するための方法として、酸化窒素を使用するために適合される、汎用改良ガス化装置を示す。
【図2】還元環境における落下管試験に続いて、フィルタケーキにおいて見出される不溶性金属のプロットを示し、それぞれのフィルタケーキにおいて測定される、吸着剤/金属の等量比の関数としてプロットされる。図2に示されるように、いずれの試験においても、ごくわずかな溶解性シリコンまたはアルミニウムが見出され、ごくわずかな溶解性金属/吸着剤反応生成物が形成されたことを示唆している。これは、メタカオリナイト結晶構造が損傷を受けておらず、ごくわずかな粒子の溶解が発生したに過ぎないことの証拠でもある。さらに、カリウムの50%〜85%が、すべてのフィルタケーキに対して不溶性であり、カリウムの有意な反応性捕獲が発生したことを示唆している。したがって、図2に表わされるデータは、有意な吸着剤の利用を示す。図2における吸着剤/金属等量比の金属捕獲ラインは、4つの異なる等量比=1/1、1/2、1/4、および1/8に基づいて捕獲することができる、金属の最大パーセンテージを示す。
【図3】合成ガスを浄化するために有用な多数の細長い多孔セラミックキャンドルフィルタを有するろ過領域を示す。
【図4】タールおよびアンモニアを分解するための多孔セラミック内面および外面、ならびに混合触媒を有する細長い多孔セラミックキャンドルフィルタを示す。
【図5】フィルタ表面から粒状物質を後方に吹き飛ばすための不活性ガス間にホールドを備える、多数の細長い多孔セラミックキャンドルフィルタを有するろ過領域を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
開示されるプロセスを説明する前に、本明細書で説明される態様は、特定の実施形態、装置、または構成に限定されるものではなく、したがって、当然のことながら異なり得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の態様のみを説明する目的であり、本明細書において特に定義されない限り、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0011】
本明細書におけるすべてのパーセンテージ、比率、および割合は、特に明記されない限り、重量である。すべての温度は、特に明記されない限り、摂氏(℃)である。引用されるすべての文書は、関連する部分において、参照により本明細書に組み込まれ、任意の文書の引用は、それが本発明に関する先行技術であることを認めるものではない。
【0012】
本明細書において、および以下の特許請求の範囲において、多数の用語が参照され、それらは以下の意味を有するものとして定義される。
【0013】
本明細書全体において、文脈上特に必要のない限り、「含む(comprise)」という語、または「comprises」または「comprising」等の変型は、明記される構成要素、特徴、要素、もしくはこと、または構成要素、特徴、要素、またはことの群の包含を意味するが、任意の他の整数もしくはこと、または整数もしくはことの群の除外を意味するものではないことを理解されたい。
【0014】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上特に明記されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「薬学的担体」に対する参照は、2つ以上のそのような担体等の混合物を含む。
【0015】
「任意の」または「任意で」は、後次に説明される事象または状況が発生し得るか、または発生し得ないこと、および説明は、事象または状況が発生する例と、発生しない例とを含むことを意味する。
【0016】
範囲は、本明細書において、「約」1つの特定値から、および/または「約」別の特定値までとして表わされ得る。そのような範囲が表わされる場合、別の態様は、1つの特定値から、および/または他の特定値を含む。同様に、値が近似値として表わされる場合は、先行詞「約」を使用することによって、特定の値が別の態様を形成することを理解されたい。範囲の各終端は、他の終端に関連して、および他の終端から独立して有意であることをさらに理解されたい。
【0017】
構成要素の重量パーセント(重量%)は、特に反対に記載されない限り、構成要素が含まれる製剤または組成物の総重量に基づく。
【0018】
本明細書で使用されるとき、「接触する」という用語は、少なくとも1つの物質が別の物質に物理的に接触することを含む。
【0019】
本明細書で使用されるとき、「十分な量」および「十分な時間」という用語は、1つまたは複数の所望の結果を達成する、例えば、ある分量のポリマーを溶解するために必要とされる量および時間を含む。
【0020】
本明細書で一般に使用される「混合物」または「混合」は、2つ以上の異なる構成要素の物理的な組み合わせを意味する。吸着剤の場合において、吸着剤の混合物または混合は、単一の化学種である吸着剤とは対照的に、2つ以上の異なる吸着剤の混合または組み合わせである。例えば、CaOは、単一の吸着剤であり、カルシウムと酸素の混合物ではない。
【0021】
本明細書で使用されるとき、「合成ガス」という用語は、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、および炭素含有燃料が蒸気および酸素と反応して生成される他のガスの混合物を含む。炭素の源は、石炭、バイオマス、および都市固形廃棄物を含む。
【0022】
本明細書で使用されるとき、「生合成ガス」は、精製工程または手順を経ていない、例えば、最終ろ過工程、すなわち、キャンドルフィルタ含有分解触媒を通過していない、合成ガスを含む。生合成ガスは、開示される装置内で、例えば、説明される装置の混合流動層における石炭またはバイオマスのガス化によって形成することができる。例えば、「生合成ガス」という用語は、ガス化領域から乾舷に出るガスを意味し得、合成ガスは、金属および硫黄化合物を除去するためのガス化領域において処置された。さらに、生合成ガスは、個別の工程において調製することができ、本明細書で開示される浄化要素と適合される、第2の装置に遷移され得る。生合成ガスは、ガス化装置においても形成され、様々な段階において、ろ過領域に進入する前に、生合成ガスは、粒子状固体、タール、および金属汚染物質を含み得る。
【0023】
本明細書で使用されるとき、「浄化合成ガス」は、少なくとも1つの吸着剤と接触した合成ガスを意味する。吸着剤は、金属、硫黄、または他の汚染物質を除去するために有用なものであり得る。浄化合成ガスは、タールおよび他の炭化水素樹脂を含み、したがって、タールおよび/または他の樹脂を除去するための分解触媒または他の手段を経る。
【0024】
本明細書で使用されるとき、「バイオマスの源」は、ガス化される任意の炭素含有物質を意味する。石炭は、バイオマスの形態ではないが、本明細書で論じられるガス化システムの潜在的な燃料源として含まれる。他のバイオマス源の非限定例は、都市固形廃棄物またはスラッジ、スイッチグラス、森林ごみ、木質チップ、藻類、トウモロコシ茎葉、および稲わらを含む。
【0025】
本明細書で使用されるとき、いくつかの実施形態において、「ガス化領域」は、「流動層」または「バブリング層」と同義的に使用され得る。
【0026】
本明細書で使用されるとき、「乾舷」は、固体の比較的密度の高いバブリング流動層上の空間を意味し、小さい粒子は、バブリング層から離脱し、ガス流とともに容器から移される。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「浄化合成ガス」は、ガス化装置を出るガス、または金属および硫黄化合物を除去するため、およびタールおよびアンモニア不純物を除去するために処置された集合プレナムにおいて収集されるガスを意味する。
【0028】
本明細書で使用されるとき、「分解する(cracking)、「分解される(cracked)」、またはそれらの変型は、1つより多くの炭素を含む炭化水素が、適切な触媒と反応して、1つの炭素原子を含む化学種をもたらすことを意味する。例えば、エタンを含む生合成ガスは、配合者によって所望される任意のモノカーボン化合物、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン等に分解される。
【0029】
本明細書で使用されるとき、「タール」は、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族化合物、多環式炭化水素、および1つ以上のヘテロ原子、すなわち、窒素および硫黄を有する炭化水素を含む物質を含有する炭素を意味する。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「燃料灰」は、生合成ガス源の非炭素部分を意味する。例えば、最大10%の金属、硫黄化合物等を含む石炭の源は、10重量%の燃料灰を有する。本プロセスは、石炭およびバイオマスから生成される、合成ガスから燃料灰を除去する。
【0031】
開示されるプロセスおよび装置は、所望のニーズを満たすために、配合者によって構成され得る。開示されるプロセスおよび装置は、合成ガスの浄化に対する、いくつかの満たされていない利点を提供する。精製される合成ガスの精度が高い程、合成ガスの使用において現れる悪影響は低くなる。例えば、様々な不純物を含む、発電に使用される合成ガスは、金属および灰に起因する汚染によって、バーナーを害し得る。フィッシャートロプシュプロセスによる変換に使用される合成ガスは、不要な不純物を含まないことも望ましい。
【0032】
小型システムにおいて、合成ガスを再形成するための追加の技術と組み合わされて、炭化物質、すなわち、石炭、コーク、重油、木質チップ、都市固形廃棄物、農業廃棄物、藻類、所定のバイオマス作物から合成燃料を生成するための多数の異なるガス化プロセスから生成される合成ガスを処理するための複数の合成ガスクリーンアップ技術を含む、合成ガス処理システムが開示される。生合成ガス中に存在する重金属は、灰および他の粒子状固体を除去するために使用される下流フィルタを汚染し得る。金属吸着剤は、流動層、流動層の上、または生合成ガスがフィルタに進入する前の任意の時点で添加することができる。さらに、生合成ガス中に存在する他の望ましくない物質は、通常、フェノール、芳香族炭化水素、アンモニア、シアン化水素、脂肪族炭化水素等を含む。
【0033】
プロセス
開示されるプロセスは、任意の互換容器または本明細書で上述される要素を含む任意の装置において使用するために適合され得る。例えば、既存の石炭またはバイオマスガス化装置を使用することができるか、または1つ以上の装置を並行または連続して配置し、生成された合成ガスの浄化、すなわち、石炭のガス化、または既存の生合成ガスの源の精製または再精製をもたらし得る。
【0034】
一態様において、開示されるプロセスは、
a)合成ガスを1つ以上の吸着剤と接触させて、金属、硫黄、およびハロゲン化物を捕獲することであって、接触は、触媒キャンドルフィルタの上流で行われて浄化合成ガスを形成すること、および
b)浄化合成ガスに混合分割分解触媒を含有するキャンドルフィルタを通過させ、アンモニアおよびタールを除去し、それによって精製合成ガスを生成すること、を含む。
【0035】
別の態様において、開示されるプロセスは、
a)合成ガスを1つ以上の吸着剤と接触させて、金属、硫黄、およびハロゲン化物を、触媒キャンドルフィルタの上流で捕獲すること、および
b)合成ガスにタールを分解する混合触媒を含有する触媒キャンドルフィルタを通過させて、精製合成ガスを形成すること、を含み、
工程(b)における触媒は、水性ガスシフト反応を促進し、それによって、精製合成ガス中に存在する水素ガス対一酸化炭素ガスの比率を調整する。
【0036】
開示されるプロセスの本態様の一反復は、
a)生合成ガスの源を、
i)カオリン粘土またはカオリン含有金属、
ii)カルシウム系吸着剤、
から選択される1つ以上の吸着剤と接触させ、それによって金属および硫黄汚染物質を除去して、浄化合成ガスを形成すること、
b)工程(a)で形成された浄化合成ガスに触媒フィルタ要素を通過させ、それによって、固体粒子および灰を除去することであって、さらなるタールが分解され、触媒フィルタ要素は、希土類金属酸化物または塩、遷移金属酸化物または塩、もしくはそれらの組み合わせを含み、それによって精製合成ガスを形成すること、を含む。
【0037】
開示されるプロセスの本態様の別の反復は、
a)流動層石炭またはバイオマスガス化装置において精製される生合成ガスの源を、
i)カオリン粘土またはカオリナイト含有物質、
ii)カルシウム系吸着剤、
を含む吸着剤混合物と接触させ、それによって金属および硫黄汚染物質を除去して、浄化合成ガスを形成すること、
b)工程(a)において形成される合成ガスに、触媒分解フィルタ要素を通過させ、それによって、固体粒子および灰を除去し、タールおよび他の炭化水素構成要素を分解することであって、分解フィルタは、希土類金属酸化物または塩、遷移金属酸化物または塩、もしくはそれらの組み合わせを含み、それによって精製合成ガスを形成すること、を含む。
【0038】
一反復において、カオリン粘土およびカルシウム系吸着剤は、キャンドルフィルタの上流で注入される。
【0039】
精製合成ガスは、約0.1重量十億分率(ppb)(1.0x10−7%)〜約100重量ppm(0.1%)の任意の単一不純物を含み得る。一実施形態において、精製合成ガスは、約100ppb〜約1ppmの任意の単一不純物を含む。
【0040】
金属用の吸着剤は、合成ガス原料中に存在する金属を捕獲する、反応する、吸着する、または捕捉することができる、任意の材料であり得る。例えば、金属吸着剤は、結晶性アルミノケイ酸塩粘土であり得る。一実施形態において、金属吸着剤は、カオリン粘土である。合成ガス中の金属汚染物質は、As、Be、Cd、Co、Cr、Fe、K、Na、Ni、Mn、Pb、Sb、およびSeを含み得る。バイオマスまたは褐炭に由来する合成ガスの場合、KおよびNaの濃度は、他の考えられる金属汚染物質のそれらを上回るであろう。したがって、一実施形態において、吸着剤は、KおよびNaの除去が得られるように選択される。金属の除去とは、精製合成ガスが、わずか10,000重量ppb(0.01%)の任意の単一金属汚染物質を含むことを意味する。別の実施形態において、金属汚染物質は、約1,000ppb未満のレベルまで除去されるが、さらなる実施形態において、金属汚染物質は、約100ppb未満のレベルまで除去される。
【0041】
一実施例において、カオリン粘土またはカオリナイト含有金属は、鉛、カドミウム、ナトリウム、およびカリウム等の微量金属を捕獲することができ、カルシウム系吸着剤は、HS、COS、およびCS等の硫黄含有種を捕獲することができる。
【0042】
金属吸着剤の1つの有用な源は、カオリン粘土を含有する、所定の製紙工場副産物を含む。カオリン粘土は、紙製品の製造に使用され、60重量%もの所定の脱炭化形態の脱インクスラッジを含み得る。この物質から生成される吸着剤は、吸着剤およびカオリン粘土において、カルシウム形態と関連付けられる利点を有するであろう。カルシウム吸着剤は、一部の金属種を捕獲し、カルシウム形態は、硫黄およびハロゲン化物化合物も捕獲するであろう。カルシウムは、一部の重タールの分解も助け得る。これらの機序のすべては、温度依存である。
【0043】
使用時に、金属吸着剤の量は、約0.01重量%〜約100重量%の燃料灰含有量を含み得る。一実施形態において、金属吸着剤は、約1重量%〜約10重量%の燃料灰含有量を含む。別の実施形態において、金属吸着剤は、約0.1重量%〜約5重量%の燃料灰含有量を含む。さらなる実施形態において、金属吸着剤は、約1重量%〜約2重量%の燃料灰含有量を含む。なおもさらなる実施形態において、金属吸着剤は、約0.01重量%〜約2重量%の燃料灰含有量を含む。さらに別の実施形態において、金属吸着剤は、約0.1重量%〜約2重量%の燃料灰含有量を含む。使用時に、しかしながら、金属吸着剤の量は、約0.01重量%〜約100重量%の任意の量の燃料灰含有量、例えば、0.01重量%、0.02重量%、0.03重量%、0.04重量%、0.05重量%、0.06重量%、0.07重量%、0.08重量%、0.09重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、および10重量%を含み得る。金属吸着剤の量は、その任意の分数量、例えば、0.055重量%、0.33重量%、および4.92重量%であり得る。さらに、吸着剤の量は、合成ガス原料の含有量の変化、例えば、異なる合成ガス原料が使用されることに起因する金属汚染物質レベルの変化によって、プロセス中に変化し得る。
【0044】
硫黄用の吸着剤は、合成ガス原料中に存在する硫黄含有化合物を捕獲する、反応する、または吸着することができる、またはしたがって、浄化プロセス中に形成される、任意の物質であり得る。例えば、硫黄吸着剤は、カルシウム系またはカルシウム含有物質であり得る。一実施形態において、硫黄吸着剤は、石炭、粉砕石炭、石炭石、粉砕石炭石等である。別の実施形態において、吸着剤は、水酸化カルシウム(Ca(OH))、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化カルシウム(CaO)等、またはそれらの混合物である。除去され得る硫黄含有化合物は、有機または無機硫黄化合物であり得る。非限定例には、HS、COS、CS等が挙げられる。
【0045】
使用時に、硫黄用の吸着剤の量は、開始原料、例えば、石炭、バイオマス、または廃棄物中に存在する硫黄の量に応じて調整される。したがって、(注入されるすべての種類の)吸着剤のカルシウム含有量は、カルシウムのモル数対硫黄のモル数が、約0.5:1〜約5:1となるように調整される。一実施形態において、カルシウムのモル数対硫黄のモル数は、約1:1〜約5:1である。
【0046】
さらなる実施形態において、カルシウムのモル数対硫黄のモル数は、約2:1〜約5:1である。さらに別の実施形態において、カルシウムのモル数対硫黄のモル数は、約0.5:1〜約2:1である。なおもさらなる実施形態において、カルシウムのモル数対硫黄のモル数は、約1:1〜約1.5:1である。なおもさらに別の実施形態において、カルシウムのモル数対硫黄のモル数は、約1:1である。中に存在する
さらに、吸着剤の量は、吸着剤の摂取に起因して、プロセス中に異なり得るか、または吸着剤の量は、合成ガス原料の含有量における任意の変化、例えば、異なる合成ガス原料の源が使用される場合の硫黄含有レベルの変化を補償するように調整され得る。
【0047】
使用される硫黄吸着剤の量は、合成ガス中に存在する硫黄原子の量に対する、吸着剤中に存在するカルシウム原子の比率に基づいて、存在する硫黄汚染物質の量に対する吸着剤の量を調整することによって決定することもできる。一実施形態において、硫黄吸着剤カルシウム対合成ガス硫黄のモル比は、約5:1〜約1:1である。別の実施形態において、硫黄吸着剤カルシウム対合成ガス硫黄のモル比は、約2:1〜約1:1である。さらなる実施形態において、硫黄吸着剤カルシウム対合成ガス硫黄のモル比は、約1.5:1〜約1:1である。さらに別の実施形態において、硫黄吸着剤カルシウム対合成ガス硫黄のモル比は、約1:1〜約1:2である。
【0048】
しかしながら、吸着剤の量は、浄化合成ガスが、多少の汚染物質を有し得るように、配合者によって調整され得る。例えば、一部の合成ガスは、用途に応じて、必然的に他の合成ガスよりも金属汚染物質を含まない。バルク加熱に使用される合成ガスは、より低い純度を要し得る、すなわち、汚染物質のレベルが高く、一方、装置に使用される合成ガスには、高い純度が求められ得る。したがって、キャンドルフィルタに進入する生合成ガスは、約1百万分率(ppm)未満の1つ以上の金属を含み得る。別の実施形態において、キャンドルフィルタに進入する生合成ガスは、約100十億分率(ppb)未満の1つ以上の金属を含み得る。さらなる実施形態において、キャンドルフィルタに進入する生合成ガスは、約10ppb未満の1つ以上の金属を含み得る。なおもさらなる実施形態において、キャンドルフィルタに進入する生合成ガスは、約1ppb未満の1つ以上の金属を含み得る。
【0049】
使用時に、生合成ガスの源が吸着剤と接触される場合、接触は、少なくとも約700℃の温度で行うことができる。一実施形態において、接触温度は、約700℃〜約1300℃である。別の実施形態において、接触温度は、約815℃〜約875℃である。しかしながら、温度は、700℃を超える任意の温度、例えば、815℃、816℃、817℃、818℃、819℃、820℃、821℃、822℃、823℃、824℃、825℃、826℃、827℃、828℃、829℃、830℃、831℃、832℃、833℃、834℃、835℃、836℃、837℃、838℃、839℃、840℃、841℃、842℃、843℃、844℃、845℃、846℃、847℃、848℃、849℃、850℃、851℃、852℃、853℃、854℃、855℃、856℃、857℃、858℃、859℃、860℃、861℃、862℃、863℃、864℃、865℃、866℃、867℃、868℃、869℃、870℃、871℃、872℃、873℃、874℃、および875℃を有し得る。しかしながら、接触温度は、約750℃〜約1200℃の任意の分数温度、例えば、830.5℃、843.7℃、および851.88℃を有し得る。
【0050】
開示されるプロセスは、処理した合成ガスが最終ろ過領域に進入する前に、アンモニアガス汚染物質を除去するように適合され得る。逆選択触媒還元(逆SCR)反応は、従来の石炭火力発電所の燃料ガス流から酸化窒素(NO)を除去するために使用されるものと同一の反応を伴う。この反応は、以下の等式1において概説される。
6NO+4NH→5N+6HO 等式1
本プロセスにおいて、アンモニアガスをガス流に注入して酸化窒素、すなわち、汚染物質として存在するNO種を除去する代わりに、酸化窒素を生ガス流に注入して、汚染アンモニアを除去する。この反応が使用される場合、流動層ガス化装置を出る処理した合成ガスは、それが隣接する容器に進入する前に冷却されなければならず、NOとNHとの触媒反応が生じる。この反応に必要な温度範囲は、300〜450℃の範囲内である。酸化窒素添加の1つの短所は、酸化窒素が、ガス化装置、例えば、石炭またはバイオマスガス化装置において生成される、合成ガス中に存在する一酸化炭素と反応し得るという事実である。この望ましくない反応は、以下の等式2において概説される。
2NO+2CO→N+2CO 等式2
したがって、さらなる態様において、本開示は、合成ガスを浄化するためのプロセスに関し、
a)生合成ガスを、
i)カオリン粘土またはカオリン含有物質、非晶質アルミノケイ酸塩、アルミン酸塩、およびケイ酸塩、ならびに鉛、カドミウム、ヒ素およびセレニウム、ナトリウム、およびカリウム等の微量金属を捕獲するカルシウム系吸着剤、
ii)HS、COS、およびCS等の硫黄含有種を捕獲するカルシウム系吸着剤、および
iii)塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、塩化水素、臭化水素、フッ化水素、およびヨウ化水素から選択される、ハロゲン化物含有汚染物質を捕獲するカルシウム系またはマグネシウム系吸着剤、ならびに
iv)i)〜(iii)に列挙される前記汚染物質のうちの1つより多くを除去することができる吸着剤、
から選択される吸着剤の混合物と、約700℃以上の高温で接触させ、それによって、吸着剤粒子上に、金属、硫黄種、およびハロゲン化物から選択される1つ以上の汚染物質を捕獲することであって、吸着剤粒子は、浄化合成ガスを形成するように、下流フィルタにおいて捕獲されること、
b)工程(a)において形成された浄化合成ガスに、触媒分解フィルタ要素を通過させ、それによって吸着剤粒子および灰を除去し、タールおよび他の炭化水素成分を分解することであって、分解フィルタは、希土類金属酸化物または塩、遷移金属酸化物または塩、あるいはそれらの組み合わせを含み、それによって硫黄非含有、無金属の分解合成ガスを形成すること、
c)前記硫黄非含有、無金属の分解合成ガスに、冷却ゾーンを通過させることであって、前記合成ガスは、少なくとも370℃の温度に冷却され、冷却された硫黄非含有、無金属の分解合成ガスを形成すること、
d)前記冷却された硫黄非含有、無金属の分解合成ガスに、酸化窒素の源を含む容器を通過させることであって、前記酸化窒素は、前記硫黄非含有、無金属の分解合成ガス中に存在するアンモニア汚染物質と反応して、精製合成ガスを生成することと、を含む。
【0051】
図1は、汎用の改良された石炭またはバイオマスガス化装置100を表し、処理された合成ガスがガス化装置を出て、処理した合成ガスに酸化窒素(NO)を注入した後に冷却された後の任意の時点で、酸化窒素を注入して、等式1に従って、アンモニアガス汚染物質を除去することができる。以下は、改良されたガス化装置110の顕著な構成要素である(ガス化領域A′、乾舷B、収集領域C、ろ過領域D、収集プレナムE、冷却領域F、酸化窒素反応領域G、燃料入口120、酸素/ガス流入口130、スラグ出口および/またはリサイクル出口140、フィルタ150、逆噴射ガス入口160、処理合成ガス出口170、処理ガス入口175、冷却された処理ガス出口180、冷却された処理ガス入口185、酸化窒素入口190、および精製合成ガス出口195)。領域Gにおける酸化窒素による合成ガスの処理に加えて、金属および硫黄吸着剤を、装置に適合されるプロセスにおける任意の時点で添加して、汚染物質、すなわち、金属、硫黄含有化合物等を除去し、存在するタールを分解することができる。
【0052】
金属汚染物質に起因する損傷からフィルタを保護するためのプロセスも開示され、金属吸着剤をろ過領域の上流に注入することを含む。図3は、合成ガス浄化プロセスの一部として使用され得る、典型的なろ過領域300を表す。ろ過領域300は、通常、1つ以上の金属または硫黄吸着剤と接触させた合成ガス流320を処理するための複数のキャンドルフィルタ310を含む。フィルタを通過した後、浄化合成ガスは、プレナム340に収集され、ガス流330を介して出る。浄化合成ガスは、任意で、下流でさらに処理、すなわち、酸化窒素と接触して、存在する任意のアンモニアをさらに除去することができる。
【0053】
図4は、合成ガス内に存在するタールおよびアンモニア汚染物質を熱分解することができる、触媒物質410の充填層を有する、典型的なキャンドルフィルタ400の切断図を表す。触媒層物質410は、合成ガス430の流れが、外側セラミック壁420を通って流れ、それによって、触媒物質410と接触できるように、2つの対向する多孔セラミック壁420および422の間に収容され、アンモニアが除去され、および/またはタールが熱分解される。精製合成ガスは、次に、内側セラミック壁422を通過し、精製合成ガスとしてキャンドルフィルタを出る。
【0054】
図4に表されるような典型的な市販のキャンドルフィルタは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、″Development of a tar reforming catalyst for integration in a ceramic filter element and use in hot gas cleaning,″Ind.Eng.Chem.Res.46,pp.1945−1951(2007)において、Nackenらによって説明されるように、PALL(登録商標)により開発されたフィルタを含む。細長い多孔セラミックキャンドルフィルタは、生合成ガスが含み得る任意のタールおよびアンモニア汚染物質の両方を分解することができる、任意の混合触媒を含み得る。
【0055】
キャンドルフィルタは、重タール、ならびに低分子量タール、例えば、ナフタレンおよびフェノールを除去するための分解触媒を含有し得る。これらの触媒の非限定例には、ニッケルまたはオリビン[(Mg,Ni)SiO]、および強アルミナ格子またはガラスセラミクス等の他のミネラル上にドープされる他の遷移金属、すなわち、参照によりその全体が本明細書に含まれる、Felix L.による″Thermally Impregnated Ni−Olivine Catalysts for Decomposing TAR in Biomass Gasification″,Paper)B5.3,16th European Biomass Conference and Exhibition,Valencia,Spain,June 2−6,(2008)により開示されるものが挙げられる。
【0056】
さらに、ろ過システムの前にタールを分解するための触媒および/または吸着剤、またはキャンドルフィルタ内に位置付けられる触媒層の一部のいずれかとして、ドロマイト(CaMg(CO)を使用することができる。一旦活性化されると、例えば、約800℃で焼成されると、金属、特に鉄およびニッケルを添加して、フィルタの触媒タール分解能力を増強することができる。
【0057】
一実施形態において、硫黄、酸、微量金属、および任意で存在し得る他の吸着剤により捕獲されない他の汚染物質を除去するために、ドロマイトおよび酸化カルシウムを、キャンドルの上流で合成ガスに注入することができる。さらに、Ni汚染の予防は、アルミナ基質を使用して、Li、K、Ca、およびMg等のプロモータに沿って、Niを載置することによって行うことができる。触媒表面層の電気状態および形状を変更することによって、プロモータは、結晶面の表面自由エネルギーを変更し、それによって、Ni結晶に対して電子を放出し、NiSの形態の不活性化されたNiの形成を脆弱化する。
【0058】
タール分解触媒として使用され得る、さらなるニッケル化合物は、NiMoである。タール分解触媒の他の非限定例には、Al、CaO、SiO、およびCuMnが挙げられる。
【0059】
図5は、精製領域の代替構成を表し、キャンドルフィルタは、灰、すす、およびキャンドルフィルタの外壁の多孔を通過できない他の物質を収集するためのダストカバーをさらに含む。図5は、図示されるような不活性ガス逆噴射マニホールド520を含むように改良された、収集プレナム510を有するろ過領域500を表す。本実施例において、不活性ガス流530aは、入口530を通ってマニホールド520に進入し、空洞管550を通って1つ以上のキャンドルフィルタ540に下方配向され、ダストカバー上に収集された粒状物質が吹き飛ばされる。逆噴射マニホールドが使用中の場合、浄化合成ガスは、任意で、ガス流560aを介して出口560から出続ける。
【実施例】
【0060】
合成ガスからのアンモニアの除去
実施例1
内径3.5cm、加熱領域の長さ114cm、および触媒層の深さ60cmの反応管の場合は、シミュレート合成ガスにより処理される。シミュレート合成ガスは、40,000ppm(4重量%)のアンモニアを含有する窒素ガスを含んでいた。シミュレートガスを、10L/分の流速で反応管に注入したところ、触媒層におけるガス残留時間は約3.5秒であった。触媒層のすぐ先に酸化窒素をシミュレート合成ガス流に注入した。加熱領域の温度は、約260℃〜約450℃まで変化した。試験は、大気圧で行った。本システムは、約3,000ppmのNHの生成を約16barのガス化圧でシミュレートした。これらの実験の結果を表Iに示す。
【0061】
【表1】

【0062】
実施例2
本明細書で説明されるように、酸化窒素は、合成ガスの一酸化炭素との望ましくない副反応において反応して、窒素ガスおよび二酸化炭素を形成し得る。本プロセスは、この副反応が排除されるか、または有意に減少される条件下で行われる。一酸化炭素および水素ガスを、実施例1から得たシミュレート合成ガス流に添加した。370℃以下の温度で、酸化窒素による一酸化炭素の消費は、顕著でなくなった。260℃において、シミュレート合成ガス流において減少したアンモニアの量は、約40,000ppm〜約560ppmになり、約2.5:1のNO:NHモル比を使用して、98.6%減少した。約2:1のNO:NHモル比において、84%のアンモニアの減少が達成された。
【0063】
上記結果は、アンモニア濃度3000ppmを有する合成ガス状態に適用されると、一酸化炭素濃度は、約2.5:1のNO:NHモル比において、合成ガス流の15%〜から合成ガスの14.7%に減少されるにすぎない。約2:1のNO:NHモル比において、二酸化炭素レベルは、合成ガス流の14.85%に減少されるにすぎない。したがって、本プロセスは、合成ガス中に存在する汚染アンモニアを除去することができるが、一酸化炭素のレベルにわずかに影響するにすぎないか、または一酸化炭素のレベルに全く影響しない。
【0064】
合成ガスからの金属汚染物質の除去
実施例3 試験は固定層反応器において行い、汚染金属を容易に添加するように、触媒フィルタ要素をシミュレートした。反応器は、改良された流動層触媒分解触媒を含有した。本実施例において、改良された酸化ルテニウム系物質を試験した。触媒の平均粒径は、70μmであった。温度は約425℃に維持した。合成ガスは、混入流石炭ガス化装置から220psigの圧力で反応器を通過し、様々な有機物の分解は、反応器を出入りするガスのフーリエ変換赤外(FTIR)分析によって評価した。60時間の連続合成ガス処理において、表2の結果が得られた。
【0065】
【表2】

【0066】
実施例4
以下の試験は、合成ガスから金属を捕獲する際、開示されるフィルタを損傷から保護する、すなわち、触媒の保護における、高温吸着剤の有効性を評価するために行った。輸送ガス化装置のろ過領域の上流における金属吸着剤の注入をシミュレートするために、試験は、約815℃の温度に維持された管炉内で行った。合成ガスは、混入流石炭ガス化装置から約220psigの圧力で、管炉内の管を通過し、管炉の出口において、焼結金属フィルタを通過した。反応器入口において、室を導入して、知られている量の金属を合成ガスに気化させた。微量金属の捕獲に使用される吸着剤を注入するために、管を反応器の中心線に沿って導入した。この管の末端を、反応器内の様々な位置に挿入して、フィルタに暴露する前に、合成ガスにおける吸着剤の共鳴時間を変えて、添加される金属の捕獲効率に対する共鳴時間および吸着剤の有効性を測定することができる。
【0067】
図10は、スリップ流試験の後にフィルタケーキ内で見出される金属のグラフであり、吸着剤/金属比の関数でプロットされる。図10における様々なデータポイントは、フィルタ上に存在するシリコンの量に基づく、不溶性カリウム/カオリナイトの量(●)、フィルタ上に存在するアルミニウムの量に基づく不溶性カリウム/カオリナイトの量(□)、フィルタ上に存在するアルミニウムの量に基づく不溶性シリコン/カオリナイトの量(▲)、およびフィルタ上に存在するアルミニウムの量に基づく不溶性アルミニウム/カオリナイトの量(▽)を示す。金属捕獲は、カオリナイト吸着剤対金属(KOからのカリウム)の4つの異なる等量比、1:1、1:2、1:4、および1:8の比率で試験した。図10に示されるように、試験した比率のいずれの場合も、フィルタケーキにおいてごく少量の不溶性シリコンまたはアルミニウムが見出され、ごくわずかな可溶性金属/吸着剤共晶生成物が形成されたことを示唆している。さらに、これらの結果は、メタカオリナイト結晶構造が損傷なく維持されたこと、および極めてわずかな粒子の溶解が発生したことの証拠を提供する。図示されるように、粒子内で形成されたカリウムの50%〜85%が不溶性であり、それによって、カリウムの有意な反応捕獲が発生したこと、および形成されたカリウム/吸着剤生成物が安定性であることを示唆している。
【0068】
走査電子顕微鏡法(SEM)およびエネルギー分散分光(EDS)分析は、合成ガス中のカリウムが、吸着剤の注入なしに鉄マイナスアルミニドキャンドルフィルタと接触されると、次にカリウムは、キャンドルフィルタ要素と反応し、キャンドルフィルタ要素を破壊し始め、さらにはフィルタ物質からアルミニウムを移動および引き出すことを示した。
【0069】
本開示の特定の実施形態が例示および説明されたが、本開示の精神および範囲を逸脱することなく、様々な他の変更および修正を行うことができることは、当業者に明らかとなるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲において、本開示の範囲内である、すべてのそのような変更および修正を網羅することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ガスを浄化するためのプロセスであって、
a)触媒キャンドルフィルタの上流で、合成ガスを1つ以上の吸着剤と接触させて、浄化合成ガスを形成すること、および、
b)前記浄化合成ガスに混合分解触媒を含有するキャンドルフィルタを通過させ、アンモニアおよびタールを除去し、それによって精製合成ガスを生成すること、を含む、プロセス。
【請求項2】
合成ガスを浄化するためのプロセスであって、
a)合成ガスを1つ以上の触媒キャンドルフィルタの上流で1つ以上の吸着剤と接触させること、および、
b)前記合成ガスに、混合触媒を含有する前記触媒キャンドルフィルタを通過させ、それによってタールを分解して精製合成ガスを形成すること、を含み、
工程(b)における前記触媒は、水−ガス転化反応をさらに促進し、それによって前記精製合成ガス中に存在する水素ガス対一酸化炭素ガスの比率を調整する、プロセス。
【請求項3】
合成ガスを浄化するためのプロセスであって、
a)生合成ガスを
i)カオリン粘土またはカオリン含有物質、非晶質アルミノケイ酸塩、アルミン酸塩、およびケイ酸塩、ならびに鉛、カドミウム、ヒ素およびセレニウム、ナトリウム、およびカリウム等の微量金属を捕獲するカルシウム系吸着剤、
ii)HS、COS、およびCS等の硫黄含有種を捕獲するカルシウム系吸着剤、および
iii)塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、塩化水素、臭化水素、フッ化水素、およびヨウ化水素から選択される、ハロゲン化物含有汚染物質を捕獲するカルシウム系またはマグネシウム系吸着剤、ならびに
iv)(i)〜(iii)に列挙される前記汚染物質のうちの1つより多くを除去することができる吸着剤、
から選択される吸着剤の混合物と、約700℃以上の高温で接触させ、それによって、吸着剤粒子上に金属、硫黄種、およびハロゲン化物から選択される1つ以上の汚染物質を捕獲することであって、前記吸着剤粒子は、浄化合成ガスを形成するように、下流フィルタにおいて捕獲されること、
b)ステップ(a)において形成された前記浄化合成ガスに、触媒分解フィルタ要素を通過させ、それによって前記吸着剤粒子および灰を除去し、タールおよび他の炭化水素成分を分解することであって、前記分解フィルタは、希土類金属酸化物または塩、遷移金属酸化物または塩、あるいはそれらの組み合わせを含み、それによって硫黄非含有、無金属の分解合成ガスを形成すること、
c)前記硫黄非含有、無金属の分解合成ガスに、冷却ゾーンを通過させることであって、前記合成ガスは、少なくとも370℃の温度に冷却され、冷却された硫黄非含有、無金属の分解合成ガスを形成すること、
d)前記冷却された硫黄非含有、無金属の分解合成ガスに、酸化窒素の源を含む容器を通過させることであって、前記酸化窒素は、前記硫黄非含有、無金属の分解合成ガス中に存在するアンモニア汚染物質と反応して、精製合成ガスを生成すること、を含む、方法。
【請求項4】
合成ガスを精製するための方法であって、
a)生合成ガスの源を
i)カオリン粘土またはカオリン含有金属、
ii)カルシウム系吸着剤、
から選択される1つ以上の吸着剤と接触させ、それによって、金属および硫黄汚染物質を除去して、浄化合成ガスを形成すること、
b)ステップ(a)で形成された前記浄化合成ガスに、触媒フィルタ要素を通過させて、それによって固体粒子および灰を除去することであって、さらにタールが分解され、前記触媒フィルタ要素は、希土類金属酸化物または塩、遷移金属酸化物または塩、あるいはそれらの組み合わせを含み、それによって精製合成ガスを形成すること、を含む、方法。
【請求項5】
前記合成ガスの源は石炭である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記合成ガスの源は、都市固形廃棄物またはスラッジ、スイッチグラス、森林ごみ、木質チップ、藻類、トウモロコシ茎葉、および稲わらから選択されるバイオマスである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記金属吸着剤は、カオリン粘土、カオリン含有金属、カルシウム系吸着剤、またはそれらの混合物から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記硫黄吸着剤は、カルシウム系もしくはカルシウム含有物質、マグネシウム系吸着剤、またはアルカリ系吸着剤、あるいはそれらの混合物から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ハロゲン吸着剤は、カルシウム系もしくはカルシウム含有物質、マグネシウム系吸着剤、またはアルカリ系吸着剤、あるいはそれらの混合物から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記硫黄吸着剤は、石灰、粉砕石灰、石灰石、または粉砕石灰石から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記硫黄吸着剤は、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、ドロマイト、酸化マグネシウム、リサイクルパルプ、または紙くず材料から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
各汚染物質のための前記吸着剤は、同一の吸着剤であるか、または1つを超える汚染物質を吸着できる吸着剤の組み合わせである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記硫黄吸着剤は、カルシウムを含み、添加される前記硫黄吸着剤の量は、カルシウムのモル数対硫黄のモル数が、約0.5:1〜約5:1になるようにする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
タール分解触媒は、前記合成ガスの前記触媒フィルタへの進入前に、前記合成ガス流に添加される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
ドロマイトまたは他の化合物から選択されるタール分解触媒は、前記合成ガスの前記触媒フィルタへの進入前に、前記合成ガスの中に注入される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記触媒フィルタは、酸化ニッケル、酸化ニッケル、遷移金属、または希土類金属をドロマイト基質上に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記触媒フィルタは、基質上に蒸着されるニッケル触媒を含み、Li、K、Ca、およびMgから選択される1つ以上のプロモータをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記プロセスは、石炭ガス化装置において行われる、請求項1〜17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
さらに酸化窒素の源が添加される、請求項1、2、または4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記金属吸着剤は、前記合成ガスに分解触媒を通過させる前に、前記合成ガスに添加される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記分解触媒は、希土類金属または遷移金属酸化物もしくは塩である、請求項1〜16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記分解触媒は、プラチナ、パラジウム、イリジウム、オスミウム、ロジウム、ルテニウム、レニウム、ランタン、バナジウム、またはニッケル、あるいはそれらの混合物の酸化物または塩である、請求項1〜16のいずれか一項に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−506483(P2012−506483A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533321(P2011−533321)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/061625
【国際公開番号】WO2010/048376
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(506319259)サザン リサーチ インスティチュート (5)
【Fターム(参考)】