説明

合成樹脂シートと不織布との積層シート及びその積層シートによる容器並びに容器の成形方法

【課題】外層となる硬質或いは半硬質の合成樹脂シートの内側凹部の底部及び側部と非接触の不織布のみに収納物品が接触することになるので、外部からの衝撃が該収納物品に損傷を与えることを防止することが可能となるものである。
【解決手段】薄厚の合成樹脂シートに物品を収納するための凹部を形成し、該凹部の内側となる底面及び側面全体を非貼着状態で不織布を配設し、該凹部の上端周枠のみを合成樹脂シートと貼着してなることを特徴とする請求項1又は2記載の合成樹脂シートと不織布との積層シートによる容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イチゴ、完熟トマト、モモ等の軟らかい果物類又は魚やその切身等の魚類或いは卵や瓶類等の壊れ易い物品等を収納する容器の材料となる合成樹脂シートと不織布との積層シート及びその積層シートによる容器並びに容器の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟質な果物、魚類或いは卵や瓶類等の壊れ易い物品等を収納する容器は、段ボール製や比較的軟質な合成樹脂製の容器に直接収納したり、或いは別体となる緩衝部材を利用している。上記軟質な容器は、その材料自身の有する柔軟性により緩衝容器としているが、それには限界があり、想定する以上の大きな衝撃が加わると物品に損傷を与えることが多かった。また、別体の緩衝部材を利用するものは、物品間に該緩衝部材を配設するのに手間がかかると同時に、使用後の廃棄物対策も必要であった。
【0003】
また、薄厚の外側部材の内側に弾力性のある部材を一体化した容器が存在するが、それら容器は外側と内側の材料が一体となったものを加工するか、外側部材を加工して所定形状の収納部を完成させた後、該収納部となる内側に弾力性のある部材を全面にわたって強く貼着している。それらにより完成した容器は、上記同様、収納物品に衝撃が伝わり易かったし、後者のものにあっては、外側となる外形を成形する工程及び該緩衝部材を外形部材に貼着する工程の少なくとも異なる二工程を必要とするものであった。
【0004】
また、下記する文献のように、プラスチックシートの内側に不織布を貼着積層したものを成形し、内側の凹部に不織布が位置するようにし、その底部側のプラスチックシートの一部に凹部を形成することにより不織布層を分離し、空隙が存在するようにした容器及びその製造方法が存在するが、この文献はプラスチックシート層と不織布層とが底部側の一部を除き底部及び側部全体が一体的に成形される容器である。
【0005】
上記容器の製造方法は、容器本体の内層を構成する不織布層と、外層を構成するプラスチックシート層からなる積層材料を、予め加熱した後、上下金型間に挟んでプラグで下金型に押し付け、該下金型を通じて吸排気することによって、真空圧成形によりトレー本体を製造するものである。そして、該プラグで型押し後、凹凸を設けた下金型を通じて真空成型する際に、不織布層は通気性があるために吸引されないので下金型に設けた容器の底部となる部分の一部の該凹部には密着することなく、容器本体の外層を構成するプラスチックシート層のみが不織布層から剥離して下金型の凹部に密着することになり、得られる容器の底部の一部に該凹部に相当する空隙部が形成されるものである。
【0006】
上記のように、プラスチックシートと不織布との間には底部の一部に空隙部が形成されることになるが、それ以外の他の内側の底部及び側部はプラスチックシートと不織布とが強固に密着されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−151219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、内側に不織布を積層したプラスチック容器が存在するが、それらのものはプラスチックの外層とその内側の不織布とが全面にわたり強固に一体とされているか或いはその一部を除き他の多くの箇所が強固に一体化されているため、収納される物品は、その全て或いはその多くが不織布とプラスチックとが一体となっている底部或いは側部に当接することになる。従って、収納物品は外層となるプラスチック層からの衝撃を直接受けることになり、それにより損傷が加えられることが多くなる。本発明は上記欠点を解決したもので、外層となる硬質或いは半硬質の合成樹脂シートの内側凹部の底部及び側部と非接触の不織布のみに収納物品が接触することになるので、外部からの衝撃が該収納物品に損傷を与えることを防止することが可能となるものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、薄厚の合成樹脂シート上に不織布を積層した積層シートにおいて、該不織布の周辺部のみを該合成樹脂シートと強固に貼着し、その内側を非貼着或いは極めて弱い状態での貼着で積層してなる合成樹脂シートと不織布との積層シートを特徴とする。
【0010】
また、上記薄厚の合成樹脂シートをPET、PVC、PS、PP、PE製のいずれかのシートとした合成樹脂シートと不織布との積層シートを特徴とする。
【0011】
更に、上記薄厚の合成樹脂シート上に不織布を積層した積層シートの該合成樹脂シートに物品を収納するための凹部を形成し、不織布は該凹部の内側となる底面及び側面全体と空隙を有する非貼着状態で凹部内に配設し、該凹部の上端周辺部枠は強固に固定され内側の枠部は該合成樹脂シートと接触するか或いは弱く貼着してなる合成樹脂シートと不織布との積層シートによる容器を特徴とする。
【0012】
また、上記薄厚の合成樹脂シートをPET、PVC、PS、PP、PE製のいずれかのシートとした合成樹脂シートと不織布との積層シートによる容器を特徴とする。
【0013】
更に、以下の工程よりなる薄厚合成樹脂シートと不織布とを積層した上記積層シートによる容器の成形方法を特徴とする。
1.真空成形機の下金型は、吸引により合成樹脂シートに収納部を形成するための凹部を形成し、上金型は、該凹部の中心位置に該凹部の開口部より小さな突出物としてプラグを形成する工程、
2.プラグは、合成樹脂シートが下金型により成形される収納部の内側となる底面及び側面に接することのないようにその押し込み寸法を下金型の凹部の深さより浅く調整する工程、
3.上記真空成形機の上下金型面に加熱された積層シートを合成樹脂シートを下に不織布を上にして載置する工程、
4.真空成形機の作動により、合成樹脂シートは吸引されて下金型の凹部に沿った収納部とされ、不織布は、該合成樹脂シートの凹部の内側底面及び内側側面の全面との間に空隙が形成するようにプラグ押圧され、該不織布上に物品を収納しても該合成樹脂シートの凹部内側面に該物品が接することのない不織布で囲まれた収納部を完成する工程。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、合成樹脂シートと不織布との積層シート及びその積層シートによる容器並びにその成形方法により、収納物品を収納する凹部内側面の該不織布を凹部の形を形成する該合成樹脂シートから空隙を有して非貼着状態とすることにより、収納される軟らかい物品を柔軟な不織布によって保持し、それらを傷つけることない収納手段を提供することが可能となった。
【0015】
また、物品収納部となる凹部の内側底面及び内側側面を形成する合成樹脂シートと不織布との間に所定の空隙を形成することができるので、魚等の切身等によって生じた血は、該不織布を通過して該空隙に移行させることができ、切身から血を分離して保持することができ、それらの鮮度及び見栄えを向上させることが可能となった。
【0016】
更に、収納物品の下側全面も浮いた不織布により保持されることになるので、収納物品はその外周部全体が同一環境条件で保持され、果物類や魚類等は部位による鮮度上のバランスを崩すことなく収納することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の合成樹脂シートと不織布とを積層した積層シートの斜視図。
【図2】真空成形機の上・下の金型と積層シートとの関係を示す概略断面図。
【図3】真空成形機によって合成樹脂シートと不織布との積層シートを容器に成形した状態の一実施例の平面図。
【図4】真空成形機によって合成樹脂シートと不織布との積層シートを容器に成形した状態の一実施例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参考に本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の合成樹脂シートと不織布とを積層した積層シートの斜視図を示している。該積層シート1は、合成樹脂シート2と不織布3とを積層したシートで、合成樹脂材料は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVC(ポリ塩化ビニール)、PS(ポリスチレン)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)等の素材厚0.1mm〜2.0mmの薄厚の材料で、特にポリエチレンテレフタレート(以下、総称してPETシート2という)が最適である。該不織布3は、特にポリエステル系不織布を積層したものが最適である。該PETシート2は、透明性や強度に優れ、薄くて耐久性を有する熱可塑性合成樹脂材料である。また、該不織布3は、容器として加工される適宜大きさとした柔軟性のある材料であれば上記の材料に限定されるものではない。該PETシート2には、その周辺部4を強固な接着手段により貼着し、その内側を非貼着或いは極めて弱い状態で該不織布を貼着し積層一体化している。
【0020】
周辺部4での接着長及びその幅並びにその接着力は、真空成形機5によって成形される大きさやプラグによって不織布3が押圧されることにより該不織布3に引張力が作用しても剥がれることのない強さが得られるように適宜選定される。
【0021】
他方、内側に位置する部分は、非貼着か或いは上記周辺部4の接着力と比較して極めて弱い状態での貼着、例えば、周辺部4の接着力の1/5乃至1/50程度としている。これは下記する真空成形機5によりPETシート2を収納部とするための凹部を形成する通常の吸引力により吸引されたとき、その凹部上にある吸引されることのない不織布3とPETシート2とが容易に分離できる程度の接着力としている。
【0022】
上記内側の不織布3を非貼着としたものは、成形される容器が比較的大きな容器でその周辺部4が枠や鍔部となるものに最適である。
【0023】
図2は、本発明のPETシート2と不織布3との積層シートを加工成形する真空成形機5の下金型6と上金型7及び積層シートとの関係を示した概略断面図である。加熱された該積層シート1を下方側から吸引すると、周辺部4を除いた内側の不織布3の貼着力が無いか或いは吸引力より弱いため、PETシート2のみが凹部の形成された下金型6の形状に沿った大きさと適宜個数の物品収納凹部8に形成されることになる。同時に、上金型7からは該物品収納凹部8の中心位置に対応した位置から突出した該凹部の開口部より小さな突出物としたプラグ9により該PETシート2上の吸引されない不織布3を該物品収納凹部8の内側へ押し込むことになる。
【0024】
上記プラグ9の突出寸法は、図2及び図4のように、吸引成形されるPETシート2の物品収納凹部8の内側深さより短くされているので、不織布3が該プラグ9により押圧されても該不織布3が該物品収納凹部8の内側底部10及び内側側部11に接することはない。
【0025】
上記成形により、PETシート2には、例えば、図3の平面図に示すような、下金型6の凹部により物品収納凹部8が適数個成形されることになる。他方、該PETシート2上に配設された不織布3は、真空成形機5により吸引されることがないのでプラグ9により押圧された寸法だけ該物品収納凹部8の内側に押し込まれるが、図4の断面図に示すように、該凹部8の内側底部10及び内側側部11に接することなく、該物品収納凹部8の内側空間に浮いた状態となる。
【0026】
従って、該内側底部10及び内側側部11と不織布3の物品収納凹部8に押し込まれた底部12及び側部13との間に物品を収納してもPETシート2と接触することのない空隙Sが形成されることになる。これにより該不織布3上にイチゴ、トマト、モモ等の軟らかい果物や魚の切身等の軟らかな食品、或いは卵や瓶類又は精密機器やその部品等の壊れ易い製品等の様々な物品を収納し、それら物品により柔軟な不織布3が下方或いは側方へ押し込まれても該物品は該内側底部10や内側側部11に接することなく不織布3に支持された状態で収納されることになる。
【0027】
図3は、真空成形した積層シートの一実施例の平面図を示している。図に示すように、下金型6の凹部により16個の物品収納凹部8、8´をPETシート2に成形している。該PETシート2には、不織布3の周辺部4のみが強固に貼着され、その内側の枠部14は極めて弱い状態での貼着となり、該物品収納凹部8内では非貼着の該不織布3と該PETシート2との間に空隙Sが形成されている。
【0028】
該物品収納凹部8の各凹部には同じ種類の物品が収納されることになるので該物品により不織布3が下方へ引っ張られても各凹部毎でほぼ均等に下方へ引っ張られることになるので該枠部14ではPETシート2と不織布3とが弱い状態で貼着状態を維持でき、該不織布3が浮き上がることはない。
【0029】
また、大きな物品収納凹部の場合は、不織布3は周辺部4が枠となりPETシート2に強固に貼着され、その内側は該物品収納凹部の内側へ空隙をもって押し込まれた状態となる。
【0030】
更に、重い収納物品の場合は、該不織布3が下方側へ強く引っ張られることになるので、収納時等のことを考慮し、枠部14では不織布との貼着がある程度得られるような強さの貼着となるように予め調整しておくことができる。
【0031】
図3では、16個の物品収納凹部8、8´を示しているが、これと対応する別体の物品収納凹部のある容器を蓋側として使用することにより収納物品が上側からも強く押圧されることのない収納容器を得ることができる。また、容器の中心部15に折り曲げ部を形成し、その箇所を折り曲げ自在とすることにより他方側の8個の凹部を蓋側の物品収納凹部8´とすることができ、軟弱な物品は該物品収納凹部8、8´内の不織布3で囲まれた状態で収納保持されることになる。
【0032】
なお、16個の物品収納凹部8、8´の上側に他の不織布や柔軟性のある材料のものを蓋として被覆使用することにより収納物品の上側を傷めずに保持することも可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 積層シート
2 PETシート
3 不織布
4 周辺部
5 真空成形機
6 下金型
7 上金型
8、8´ 物品収納凹部
9 プラグ
10 内側底部
11 内側側部
12 底部
13 側部
14 枠部
15 中心部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄厚の合成樹脂シート上に不織布を積層した積層シートにおいて、該不織布の周辺部のみを該合成樹脂シートと強固に貼着し、その内側を非貼着或いは極めて弱い状態での貼着で積層してなることを特徴とする合成樹脂シートと不織布との積層シート。
【請求項2】
薄厚の合成樹脂シートをPET、PVC、PS、PP、PE製のいずれかのシートとしたことを特徴とする請求項1記載の合成樹脂シートと不織布との積層シート。
【請求項3】
薄厚の合成樹脂シート上に不織布を積層した積層シートの該合成樹脂シートに物品を収納するための凹部を形成し、不織布は該凹部の内側となる底面及び側面全体と空隙を有する非貼着状態で凹部内に配設し、該凹部の上端周辺部枠は強固に固定され内側の枠部は該合成樹脂シートと接触するか或いは弱く貼着してなることを特徴とする合成樹脂シートと不織布との積層シートによる容器。
【請求項4】
薄厚の合成樹脂シートをPET、PVC、PS、PP、PE製のいずれかのシートとしたことを特徴とする請求項3記載の合成樹脂シートと不織布との積層シートによる容器。
【請求項5】
以下の工程よりなることを特徴とする請求項1又は2記載の積層シートによる容器の成形方法。
1.真空成形機の下金型は、吸引により合成樹脂シートに収納部を形成するための凹部を形成し、上金型は、該凹部の中心位置に該凹部の開口部より小さな突出物としてプラグを形成する工程、
2.プラグは、合成樹脂シートが下金型により成形される収納部の内側となる底面及び側面に接することのないようにその押し込み寸法を下金型の凹部の深さより浅く調整する工程、
3.上記真空成形機の上下金型面に加熱された積層シートを合成樹脂シートを下に不織布を上にして載置する工程、
4.真空成形機の作動により、合成樹脂シートは吸引されて下金型の凹部に沿った収納部とされ、不織布は、該合成樹脂シートの凹部の内側底面及び内側側面の全面との間に空隙が形成するようにプラグ押圧され、該不織布上に物品を収納しても該合成樹脂シートの凹部内側面に該物品が接することのない不織布で囲まれた収納部を完成する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−260308(P2010−260308A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114645(P2009−114645)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(507265281)ジャパン・プラス株式会社 (2)
【Fターム(参考)】