説明

同一電界効果トランジスタを利用して生分子を検出する方法

【課題】同一電界効果トランジスタを利用して生分子を検出する方法を提供する。
【解決手段】電界効果トランジスタを利用した生分子検出方法において、電界効果トランジスタは、半導体基板、基板と異なる電導型にドーピングされたソース領域及びドレイン領域、ソース領域とドレイン領域との間に配置されたチャネル領域、チャネル領域上に配置され、生分子を検出する検出表面を有する絶縁層、絶縁層の検出表面から離隔されて配置された基準電極を備えることを特徴とし、生分子を含有する第1試料を、前記電界効果トランジスタの検出表面に提供し、前記電界効果トランジスタの第1電気信号の変化を測定するステップと、第2試料を同一の前記電界効果トランジスタの検出表面に提供し、前記電界効果トランジスタの第2電気信号の変化を測定するステップと、前記第1電気信号と前記第2電気信号とを比較するステップと、を含む生分子の検出方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果トランジスタを利用してターゲット生分子の存在または濃度を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的な信号で生分子を検出するセンサーのうち、トランジスタを備える構造を有するトランジスタ基盤のバイオセンサーがある。これは、半導体工程を利用して製作されるものであって、電気的な信号の転換が速いという長所があって、これまでこれについての多くの研究が進められてきた。
【0003】
電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor、以下、‘FET’ともいう)を使用して、生物学的な反応を測定する基本特許として特許文献1がある。特許文献1は、抗原−抗体反応を、表面電荷密度の変化による半導体反転層の変化を電流で測定するバイオセンサーに関するものであり、当該抗原−抗体反応として用いられる生分子は蛋白質に関するものである。特許文献2は、バイオ単量体をゲートの表面に吸着させて相補的な単量体との混成化の程度をFETで測定することに関する。
【0004】
特許文献3は、CCD(Charged Coupled Device)を使用して結合された生分子による吸光現象で混成化の度合いを測定する方法を開示している。特許文献4及び5では、TFT(Thin Film Transistor)を使用し、回路を接続させて信号対ノイズ比を向上させる内容を開示している。
【0005】
このようなFETをバイオセンサーとして使用する場合には、従来の方式に比べてコスト及び時間が少なくかかり、IC(Integrated Circuit)/MEMS工程との接続が容易であるという点で大きい長所を有している。
【0006】
図1Aは、従来のFETの構造を概略的に示す図面である。図1Aを参照すれば、n型またはp型にドーピングされた基板11上の両側部に、基板11と異なる電導性にドーピングされたソース12a及びドレイン12bが形成されており、基板11上にソース12a及びドレイン12bと接触するゲート13が形成されている。一般的に、前記ゲート13は、酸化層14、ポリシリコン層15及びゲート電極層16を備え、基準電極17に対向するゲート電極層16の表面16aには、プローブ生分子が付着される。プローブ生分子は、所定のターゲット生分子と水素結合によって結合し、これを電気的な方法で測定してプローブ生分子とターゲット生分子との結合程度を測定する。
【0007】
図1Bは、ゲート電極16の表面16aにプローブ生分子18を固定させ、前記プローブ生分子18にターゲット生分子が結合する過程を概略的に示す図面である。図1Bを参照すれば、前記ゲート電極16の表面にプローブ生分子18の固定の度合い、及び前記固定されたプローブ生分子18にターゲット生分子の結合の程度によってチャンネルを通じて流れる電流の強度がそれぞれ変わり、したがって、それによってターゲット生分子を検出しうる。
【0008】
一般的に、前記FETを利用した従来の生分子の検出方法は、正確性及び敏感度を向上させるために二つ以上のFETを使用する。前記FETのうち一部を標的生分子と反応しないレファレンスFETとして、及び残りのセンサーを前記標的生分子と反応するセンシングFETとして使用する。前記レファレンスFET及びセンシングFETでのノイズ信号が同一であるという仮定下に、前記センシングFETで測定された電気的信号から前記レファレンスFETで測定された電気的信号を差し引くことによって、前記標的生分子のみの電気的信号を検出する。
【0009】
例えば、特許文献6では、二つのそれぞれ異なるセンサーを使用して測定したデータを比較して、代表因子を推論する方法が開示されている。
【0010】
しかし、前記従来の方法において、レファレンスFET及びセンシングFETでのノイズ信号が同一であるという仮定を信頼できないという問題点がある。すなわち、現在のFETの製作技術レベルで、たとえ同じ規格のFETを同じ工程で製作するとしても、前記FETは、同じ試料に対して非常に大きい偏差の反応レベルを表すという問題点がある。それにより、レファレンスFETの信号がセンシングFETの信号より、かえって大きくなる場合も発生しうる。
【特許文献1】米国特許第4,238,757号明細書
【特許文献2】米国特許第4,777,019号明細書
【特許文献3】米国特許第5,846,708号明細書
【特許文献4】米国特許第5,466,348号明細書
【特許文献5】米国特許第6,203,981号明細書
【特許文献6】WO第03/062811号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記従来の技術の問題点を解決するために案出されたものであって、本発明の目的は、生分子の存在または濃度を容易かつ正確に検出しうる生分子の検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的を達成するために、本発明は、電界効果トランジスタを利用してターゲット生分子を検出する方法において、前記電界効果トランジスタは、半導体材料で構成された基板、前記基板内に相互に離隔されて形成され、前記基板と異なる電導型にドーピングされたソース領域及びドレイン領域、前記ソース領域とドレイン領域との間に配置されたチャンネル領域、前記チャンネル領域上に配置されるものであって、ターゲット生分子を検出する検出表面を有する絶縁層、ならびに前記絶縁層と離隔されて対向する基準電極を備えることを特徴とし、第1ターゲット生分子を含有する第1試料を前記電界効果トランジスタの検出表面に提供することにより生ずる前記電界効果トランジスタの第1電気的信号の変化を測定するステップと、第2試料を同一の前記電界効果トランジスタの検出表面に提供することにより生ずる前記電界効果トランジスタの第2電気的信号の変化を測定するステップと、前記第1電気的信号と前記第2電気的信号とを比較するステップと、を含むことを特徴とする同一電界効果トランジスタを利用して生分子を検出する方法を提供する。
【0013】
本発明の一具体例において、前記第2試料を提供する前に、生分子を含有しない溶液で前記電界効果トランジスタの検出表面を洗浄するステップをさらに含みうる。
【0014】
本発明の一具体例において、前記電界効果トランジスタの電気的信号は、ドレイン電流、ゲート・ソース電圧、及びソース・ドレイン電圧からなる群から選択される少なくとも一つでありうる。
【0015】
本発明の一具体例において、前記生分子は、核酸または蛋白質でありうる。
【0016】
本発明の一具体例において、前記核酸は、PCR産物またはその精製物でありうる。
【0017】
本発明の一具体例において、前記第1試料は、テンプレート及びプライマー存在下にPCRを行った産物を含有し、前記第2試料は、プライマー存在下にPCRを行った産物を含有できる。
【0018】
本発明の一具体例において、前記第1電気的信号と前記第2電気的信号とを比較するステップは、前記第1電気的信号及び前記第2電気的信号の大きさの比率を計算することでありうる。
【0019】
本発明の一具体例において、前記半導体材料は、シリコンであり、前記電気的絶縁材料は、二酸化シリコン、窒化シリコンまたは金属酸化物でありうる。
【0020】
本発明の一具体例において、前記基板は、n型にドーピングされており、前記ソース領域及びドレイン領域は、それぞれp型にドーピングされている。
【0021】
本発明の一具体例において、前記基板は、p型にドーピングされており、前記ソース領域及びドレイン領域は、それぞれn型にドーピングされている。
【0022】
また、本発明は、電界効果トランジスタを利用してターゲット生分子を検出する方法において、前記電界効果トランジスタは、半導体材料で構成された基板、前記基板内に相互に離隔されて形成され、前記基板と異なる電導型にドーピングされたソース領域及びドレイン領域、前記ソース領域とドレイン領域との間に配置されたチャンネル領域、前記チャンネル領域上に配置されるものであって、ターゲット分子を検出する検出表面を有する絶縁層、ならびに前記絶縁層上に離隔されて配置された基準電極を備えることを特徴とし、既知の異なる濃度を有する複数の生分子をそれぞれ含有する複数の試料を前記電界効果トランジスタの検出表面及び基準電極にそれぞれ提供することにより生ずる前記電界効果トランジスタの複数の電気的信号変化をそれぞれ測定するステップと、未知の濃度を有するターゲット生分子を含有する試料を前記同じ電界効果トランジスタの検出表面に提供することにより生ずる前記電界効果トランジスタの電気的信号変化を測定するステップと、前記ターゲット生分子の電気的信号変化を前記複数の電気的信号変化と比較して、前記ターゲット生分子の濃度を推定するステップと、を含むことを特徴とする同一電界効果トランジスタを利用して生分子を検出する方法を提供する。
【0023】
本発明の一具体例において、前記複数の試料を、前記電界効果トランジスタの検出表面に提供することにより生じる前記電界効果トランジスタの複数の電気的信号の変化をそれぞれ測定するステップ(I)中、当該複数の試料の各試料を、前記電界効果トランジスタの検出表面に提供する毎に、生分子を含有していない溶液で(ゲートとして作用する)前記電界効果トランジスタの検出表面に提供して洗浄するステップをさらに含みうる。
【0024】
本発明の一具体例において、前記電界効果トランジスタの電気的信号は、ドレイン電流、ゲート・ソース電圧、及びソース・ドレイン電圧からなる群からで選択される少なくとも一つでありうる。
【0025】
本発明の一具体例において、前記生分子は、核酸または蛋白質でありうる。
【0026】
本発明の一具体例において、前記核酸は、PCR産物またはその精製物でありうる。
【0027】
前記半導体材料は、シリコンであり、前記絶縁層は、二酸化シリコン、窒化シリコンまたは金属酸化物を含むものでありうる。
【0028】
本発明の一具体例において、前記基板は、n型にドーピングされており、前記ソース領域及びドレイン領域は、それぞれp型にドーピングされている。
【0029】
本発明の一具体例において、前記基板は、p型にドーピングされており、前記ソース領域及びドレイン領域は、それぞれn型にドーピングされている。
【発明の効果】
【0030】
本発明の生分子の検出方法によれば、レファレンスFETとセンシングFETとを使用する従来の技術において、前記FETの間の敏感度及び性能が異なって、生分子検出に対する誤差が発生する可能性が大きいという問題点を解決しうる。すなわち、本発明による生分子の検出方法によれば、生分子を正確かつ容易に検出しうる。また、生分子が固定されたFETを使用しないため、FETの製作時に工程が簡単であり、追加工程時に生じるFET間の特性差を大きく減らせる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、添付された図面を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【0032】
本発明は、FETを利用して生分子の固定なしにターゲット生分子の存在または濃度を検出する方法に関するものである。
【0033】
図2は、本発明による生分子の検出方法に使われるFETの構造を概略的に示す図面である。
【0034】
図2を参照すれば、本発明による生分子の検出方法に使われるFETは、半導体材料で構成された基板21、前記基板21内に相互離隔されて形成され、前記基板21と異なる電導型にドーピングされたソース領域22a及びドレイン領域22b、前記ソース領域22aとドレイン領域22bとの間に配置されたチャンネル領域、前記チャンネル領域上に配置されるものであって、ターゲット生分子を検出する検出表面23a(以下検出表面とも称する)を有する絶縁層23、及び前記絶縁層23上に離隔されて配置された基準電極24を備える。
【0035】
なお、本明細書において「ターゲット生分子を検出する検出表面を有する絶縁層」は、生分子が絶縁層の表面に、直接または間接的に結合、固定されることをいう。
【0036】
本発明において、前記FETは、従来のバイオセンサーまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Seiconductor)素子に使用されてきたいかなるFETも使われ、n−MOS及びp−MOSの2つとも可能である。例えば、前記基板21がn型にドーピングされた場合、前記ソース22a及びドレイン22bは、それぞれp型にドーピングされてもよく、逆に、前記基板21がp型にドーピングされた場合、前記ソース22a及びドレイン22bは、それぞれn型にドーピングされてもよい。
【0037】
前記FETにおいて、ソース22aは、キャリア、例えば、自由電子または正孔を供給し、ドレイン22bは、前記ソース22aから供給されたキャリアが到達する部位であり、ゲートとして作用する検出表面23aは、前記ソース22aとドレイン22bとの間のキャリアの流れを制御する役割を行う。
【0038】
前記基板21を構成する半導体材料は、シリコンであることが好ましく、前記絶縁層23を構成する電気的絶縁材料は、生分子が固定されていない任意の材料であり、例えば、二酸化シリコン、窒化シリコンまたは金属酸化物などが前記絶縁層23に含まれることが好ましい。また、前記絶縁層23に生分子が固定されていない他の材料で構成される付加層が形成されている。
【0039】
なお、本明細書において「結合」、「固定」という用語は、生分子が絶縁層に水素結合により吸着されている場合だけではなく、ファンデルワールス力などの物理的吸着も含む、さらにイオン結合などの化学結合による化学的吸着も含む概念である。
【0040】
望ましくは、前記FETは、マイクロチャンネル内に形成されている。この場合、前記基板21は、前記マイクロチャンネルの内面を構成でき、前記ゲート電極24は、前記マイクロチャンネル内部または内面に配置されうる。
【0041】
本発明による生分子の検出方法の一具体例は、同一FETを利用して試料間の電気的信号を比較することによって、ターゲット生分子の存在を検出することを特徴とすることが好ましい。
【0042】
本発明の方法を利用して生分子の存在を検出するために、まず、第1ターゲット生分子を含有する第1試料を、前記FETの検出表面に提供し、それにより前記FETの検出表面にターゲット分子が結合または固定されることにより生じる前記FETの第1電気的信号の変化を測定する。
【0043】
本発明において、前記生分子は、核酸または蛋白質でありうる。
【0044】
前記核酸は、多様な核酸、類似核酸、またはその混成体を意味し、例えば、DNA、RNA、PNA(Peptide Nucleic Acid)、LNA(Locked Nucleic Acid)及びその混成体で構成された群から選択されうる。また、前記核酸は、オリゴヌクレオチドまたはPCR産物であるが、PCR産物またはその精製物であることが望ましい。
【0045】
前記蛋白質は、例えば、酵素、基質、抗原、抗体、リガンド、アプタマー及び受容体からなる群から選択されうる。
【0046】
前記FETの電気的信号は、ドレイン電流、ゲート・ソース電圧、及びソース・ドレイン電圧からなる群から選択されることが好ましい。
【0047】
次いで、前記第1試料をFETのターゲット生分子を検出する検出表面に提供した後に、生分子を含有していない溶液を前記FETの検出表面及び基準電極に提供して洗浄することが好ましい。前記溶液は、電解質溶液であることが望ましい。
【0048】
次いで、第2試料を前記FETと同一の検出表面および基準電極との間に提供し、前記FETの第2電気的信号の変化を測定する。
【0049】
望ましくは、前記第1試料は、テンプレート及びプライマーの存在下にPCR(Polymerase Chain Reaction)を行った産物を含有し、前記第2試料は、テンプレートがないという点を除いては、同じPCRを行った産物を含有しうる。または、前記第2試料は、前記第1試料と異なる濃度のPCR産物を含有することもある。すなわち、本明細書において「プライマー存在下にPCRを行った産物」とは、テンプレートがないプライマー単独をいう。
【0050】
次いで、前記第1電気的信号と前記第2電気的信号とを比較する。前記比較方法は、ターゲット生分子の種類、特性及び濃度によって多様に行われうる。例えば、前記電気的信号の比較ステップは、下記式1のように、第1電気的信号及び前記第2電気的信号の比率を計算することによって行われることが好ましい。
【0051】
【数1】

【0052】
本発明による生分子の検出方法の他の具体例は、同一FETを利用して試料間の電気的信号を比較することによって、標的生分子の濃度を検出することを特徴とする。
【0053】
本濃度検出方法に使われうるFETは、前述した通りである。
【0054】
本発明の方法を利用して生分子の濃度を検出するために、まず、既知の異なる濃度を有する複数の生分子をそれぞれ含有する複数の試料を、前記FETの絶縁層及び基準電極の間に提供し、前記複数の試料の各々の前記FETの複数の電気的信号変化をそれぞれ測定する(ステップI)。
【0055】
本発明において、前記生分子は、核酸または蛋白質でありうる。さらに詳細な内容は、前述した部分を参照できる。
【0056】
前記FETの電気的信号は、ドレイン電流、ゲート・ソース電圧、及びソース・ドレイン電圧のからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0057】
次いで、未知の濃度を有するターゲット生分子を含有する試料を、前記FETと同一の検出表面に提供し、前記FETの電気的信号変化を測定する(ステップII)。
【0058】
また、上記ステップIにおいて、複数の試料をFETの絶縁層及び基準電極の間に提供した後、必要に応じて当該複数の試料をFETの絶縁層及び基準電極に結合または固定されている生分子を洗浄するために、複数の試料の各々を提供した後、他の試料をFETの絶縁層及び基準電極の間に提供する前に生分子を含有していない溶液で、前記FETのゲート電極に提供して洗浄することが好ましい。
【0059】
次いで、前記ターゲット生分子の電気的信号変化を前記複数の電気的信号変化と比較して、前記ターゲット生分子の濃度を推定する。
【0060】
本発明による生分子の検出方法の最も望ましい具体例は、前記PCR産物を検出することである。もし、試料内に標的生分子が存在したならば、PCRが行われており、逆に試料内に標的生分子が存在していないならば、PCRが行われなかったため、PCR産物を検出することによって、前記試料内に標的生分子が存在するか否かということと、その濃度とを検出しうる。
【0061】
本発明の生分子の検出方法によれば、レファレンスFETとセンシングFETとを使用する従来の技術において、前記FET間の敏感度及び性能が異なって生分子検出に対する誤差が発生する可能性が大きいという問題点を解決しうる。すなわち、本発明による生分子の検出方法によれば、生分子を正確かつ容易に検出しうる。また、生分子が固定されたFETを使用しないため、FETの製作時に工程が簡単であり、追加工程時に生じるFET間の特性の差を大きく減らせる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を通じて、本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、単に、本発明を例示するためのものであるので、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されると解釈されるものではない。
【0063】
実施例1
本発明によるFET基盤のバイオセンサーの製造
本発明で使用したFET素子は、X−FAB Semiconductor Foundries(ドイツ)の設備を利用して製作し、前記メーカのXC10−1.0um CMOS工程を使用した。ソースとドレインとの間のチャンネル上に酸化シリコンを形成した後、これをパターニングして検出表面23aを有する絶縁層23を形成し、その上に検出表面23aに離隔された基準電極を形成して、図2のような形態のFETを製造した。
【0064】
次いで、露出された検出表面23a及び基準電極24を含むFETの表面を注意深く洗浄した。洗浄は、純粋アセトン及び水で行い、洗い出した後に乾燥した。前記基板の洗浄過程は、半導体製造工程で利用されるウェットステーションを利用した。洗浄が終わった後に、スピンドライを利用して乾燥した。
【0065】
実施例2
本発明によるFET基盤のバイオセンサーを利用したPCR産物の検出
実施例1で製造した4×12 FET基盤のバイオセンサーアレイを利用して、PCR産物の存在を検出できるか否かを確認した。
【0066】
このために、前記FET基盤のバイオセンサーにPCR産物、洗浄用バッファ及びNTC(Negative Control)を交互に注入した。
【0067】
図3は、本発明によるFETの検出表面と基準電極との間にPCR産物、洗浄用バッファ及びNTCを交互に注入する順序を概略的に示す図面である。図3を参照すれば、一つ以上のFET基盤のバイオセンサー31に順次にカリブラント溶液32、洗浄溶液33a、PCR産物34a、洗浄溶液33b、NTC 35a、洗浄溶液33c、PCR産物34b、洗浄溶液33d、NTC 35b及び洗浄溶液33eを順次に提供した。
【0068】
本実施例で使われたカリブラント溶液として0.1mM NaOAcを利用した。前記カリブラント溶液は、FETの条件を何れも同一に再設定するために使われる。
【0069】
また、本実施例で使われた洗浄溶液は、0.01mMのリン酸バッファ(pH6.04)を利用した。
【0070】
また、本実施例で使われたPCR産物は、スタフィロコックス アウレウス(Staphylococcus aureus)バクテリアのテンプレートを利用して、PCR増幅過程を経、使われたフォワード及びリバースプライマーの塩基配列は、それぞれ5’−(TAG CAT ATC AGA AGG CAC ACCC)−3’及び5’−(ATC CAC TCA AGA GAG ACA ACA TT)−3’であった。増幅が完了したPCR産物は、240bpの大きさを有し、前記PCR産物を含有するリン酸バッファのpHは、6.47であり、PCR産物の濃度は、5ng/μlであった。
【0071】
また、本実施例で使われたNTC溶液は、PCR過程中にテンプレートを除去してPCR産物の生産を阻害して、PCR産物を除外した他の物質の阻害効果を確認するためである。全てのPCR過程は、前記実施例1と同一であり、単に、テンプレートのみ添加していないままPCRが進められた。PCR過程後にPCR増幅が起きなかったため、PCR産物の濃度は明らかではない。これは、試料内に標的DNAが存在せず、PCRが行われていない場合を仮定するためのものである。
【0072】
図3と同じ順序でFETの検出表面と基準電極との間にPCR産物、洗浄用バッファ及びNTCを交互に注入した場合、48個のFETのうち同一FET基盤のバイオセンサーから得たPCR産物の電流変化値及びNTC電流変化値を、式2に代入して得た値の平均及び標準偏差を表1に表した。
【0073】
【数2】

【0074】
PCR産物を含有する溶液と洗浄溶液とのpH差が前記電流変化に影響を及ぼしたか否か確認した結果、前述したように、前記二つの溶液のpH差は0.43であり、それによる電流変化は、無視できるレベルであった。
【0075】
表1に示したように、前記方法によれば、PCR産物及びNTCを効果的に区別して検出でき、特に、標準偏差が小さくて前記検出結果は有意であるということが分かる。
【0076】
比較例1
FET基盤のバイオセンサーを利用したPCR産物の検出
実施例1と同じ過程を行い、但し、48個のFETのうち任意の二つのセンサーからそれぞれ得たPCR産物の電流変化値及びNTC電流変化値を式2に代入して得た値の平均及び標準偏差を表1に表した。
【0077】
表1に表したように、前記方法によれば、標準偏差が過度に大きくてPCR産物及びNTCを有意的に区別して検出できないということが分かる。
【0078】
【表1】

【0079】
実施例3
本発明によるFET基盤のバイオセンサーを利用したPCR産物の濃度検出
実施例1で製造した同一FET基盤のバイオセンサーを利用して、PCR産物の濃度を検出できるか否かを確認した。
【0080】
このために、前記FET基盤のバイオセンサーに異なる濃度の複数のPCR産物及び洗浄用バッファを交互に注入した。
【0081】
図4Aは、本発明によるFETの検出表面に異なる濃度の複数のPCR産物及び洗浄用バッファを交互に注入する順序を概略的に示す図面である。図4Aを参照すれば、一つ以上のFET基盤のバイオセンサー41に順次に10ng/μlのPCR産物42、洗浄溶液43a、5ng/μlのPCR産物44、洗浄溶液43b、1ng/μlのPCR産物45、洗浄溶液43c、0.5ng/μlのPCR産物46、洗浄溶液43d、0.25ng/μlのPCR産物47及び洗浄溶液43eを順次に提供した。
【0082】
本実施例で使われた洗浄溶液及びPCR産物は、実施例1で使用したものと同じである。
【0083】
図4Bは、図4Aと同じ順序でFETの検出表面に異なる濃度の複数のPCR産物及び洗浄用バッファを交互に注入する場合の電圧変化を測定したグラフである。
【0084】
図4Bを参照すれば、PCR産物の濃度及び表面電位の変化量は、相互一定した比例関係がある。したがって、濃度の不明なPCR産物を前記同じFETに注入して、表面電位の変化量を得、その値を図4Bの値と比較することによって、前記PCR産物の濃度が分かった。
【0085】
以上、本発明についてその望ましい実施例を中心に説明した。当業者は、本発明が本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で変形された形態で具現されうるということが分かるであろう。したがって、開示された実施例は、限定的な観点ではなく、説明的な観点で考慮されねばならない。本発明の範囲は、前述した説明ではなく、特許請求の範囲に現れており、それと同等な範囲内にある全ての差異点は、本発明に含まれていると解釈されねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、生分子の検出関連の技術分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1A】従来のFETの構造を概略的に示す図面である。
【図1B】図1AのFETのゲート電極の表面にプローブ生分子を固定させ、前記プローブ生分子にターゲット生分子が結合する過程を概略的に示す図面である。
【図2】本発明による生分子の検出方法に使われるFETの構造を概略的に示す図面である。
【図3】本発明によるFETの検出表面にPCR産物、洗浄用バッファ及びNTCを交互に注入する順序を概略的に示す図面である。
【図4A】本発明によるFETの検出表面に異なる濃度の複数のPCR産物及び洗浄用バッファを交互に注入する順序を概略的に示す図面である。
【図4B】図4Aと同じ順序でFETの検出表面に異なる濃度の複数のPCR産物及び洗浄用バッファを交互に注入する場合の電圧変化を測定したグラフである。
【符号の説明】
【0088】
21 基板
22a ソース領域
22b ドレイン領域
23 絶縁層
24 ゲート電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界効果トランジスタを利用してターゲット生分子を検出する方法において、
前記電界効果トランジスタは、半導体材料で構成された基板、前記基板内に相互に離隔されて形成され、前記基板と異なる電導型にドーピングされたソース領域及びドレイン領域、前記ソース領域とドレイン領域との間に配置されたチャンネル領域、前記チャンネル領域上に配置されるものであって、ターゲット生分子を検出する検出表面を有する絶縁層、ならびに前記絶縁層上に離隔されて配置された基準電極を備えることを特徴とし、
第1ターゲット生分子を含有する第1試料を前記電界効果トランジスタの検出表面に提供することによる生じる前記電界効果トランジスタの第1電気的信号の変化を測定するステップと、
第2試料を同一の前記電界効果トランジスタの検出表面に提供することによる生じる前記電界効果トランジスタの第2電気的信号の変化を測定するステップと、
前記第1電気的信号と前記第2電気的信号とを比較するステップと、を含むことを特徴とする同一電界効果トランジスタを利用して生分子を検出する方法。
【請求項2】
前記第2試料を提供する前に、生分子を含有しない溶液で、前記電界効果トランジスタの検出表面を洗浄するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の同一電界効果トランジスタを利用して生分子の検出方法。
【請求項3】
前記電界効果トランジスタの電気的信号は、ドレイン電流、ゲート・ソース電圧、及びソース・ドレイン電圧からなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1または2に記載の同一電界効果トランジスタを利用して生分子の検出方法。
【請求項4】
前記ターゲット生分子は、核酸または蛋白質であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の同一電界効果トランジスタを利用して生分子の検出方法。
【請求項5】
前記核酸は、PCR産物またはその精製物であることを特徴とする請求項4に記載の同一電界効果トランジスタを利用して生分子の検出方法。
【請求項6】
前記第1試料は、テンプレート及びプライマー存在下にPCRを行った産物を含有し、前記第2試料は、プライマー存在下にPCRを行った産物を含有することを特徴とする請求項1に記載の同一電界効果トランジスタを利用して生分子の検出方法。
【請求項7】
前記第1電気的信号と前記第2電気的信号とを比較するステップは、前記第1電気的信号及び前記第2電気的信号の大きさの比率を計算することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の同一電界効果トランジスタを利用して生分子の検出方法。
【請求項8】
前記半導体材料は、シリコンであり、前記絶縁層は、二酸化シリコン、窒化シリコンまたは金属酸化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の同一電界効果トランジスタを利用して生分子の検出方法。
【請求項9】
電界効果トランジスタを利用してターゲット生分子を検出する方法において、
前記電界効果トランジスタは、半導体材料で構成された基板、前記基板内に相互離隔されて形成され、前記基板と異なる電導型にドーピングされたソース領域及びドレイン領域、前記ソース領域とドレイン領域との間に配置されたチャンネル領域、前記チャンネル領域上に配置されるものであって、ターゲット生分子を検出する検出表面を有する絶縁層、ならびに前記絶縁層に離隔配置された基準電極を備えることを特徴とし、
既知の相異なる濃度を有する複数の生分子をそれぞれ含有する複数の試料を、前記電界効果トランジスタの検出表面に提供することにより生じる前記電界効果トランジスタの複数の電気的信号の変化をそれぞれ測定するステップ(I)と、
未知の濃度を有するターゲット生分子を含有する試料を、同一の前記電界効果トランジスタの検出表面に提供することにより生じる前記電界効果トランジスタの電気的信号の変化を測定するステップ(II)と、
前記ステップ(II)の電気的信号の変化と、前記ステップ(I)の複数の電気的信号の変化とを比較して前記ターゲット生分子の濃度を推定するステップと、を含むことを特徴とする同一電界効果トランジスタを利用して生分子を検出する方法。
【請求項10】
前記複数の試料を、前記電界効果トランジスタの検出表面に提供することにより生じる前記電界効果トランジスタの複数の電気的信号の変化をそれぞれ測定するステップ(I)中、当該複数の試料の各試料を、前記電界効果トランジスタの検出表面に提供する毎に、生分子を含有しない溶液で前記電界効果トランジスタの検出表面を洗浄するステップをさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の同一電界効果トランジスタを利用して生分子の検出方法。
【請求項11】
前記電界効果トランジスタの電気的信号は、ドレイン電流、ゲート・ソース電圧、及びソース・ドレイン電圧からなる群から選択された少なくとも一つであることを特徴とする請求項9または10に記載の同一電界効果トランジスタを利用して生分子の検出方法。
【請求項12】
前記生分子は、核酸または蛋白質であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の同一電界効果トランジスタを利用して生分子の検出方法。
【請求項13】
前記核酸は、PCR産物またはその精製物であることを特徴とする請求項12に記載の同一電界効果トランジスタを利用して生分子の検出方法。
【請求項14】
前記半導体材料は、シリコンであり、前記絶縁層は、二酸化シリコン、窒化シリコンまたは金属酸化物を含むことを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載の同一電界効果トランジスタを利用して生分子の検出方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2007−304089(P2007−304089A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97498(P2007−97498)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】