説明

同報通信システム及びプログラム

【課題】一の端末が複数のグループから音声による同報通信を同時に受けた場合であっても、優先順位が高く設定されたグループの音声を確実に聴取できるようにする。
【解決手段】自己の端末が所属する1又は複数のグループと、当該グループ毎の優先順位とを対応付けて設定する設定手段と、サーバからの同報通信を受信した際に、この同報通信の発信元端末が所属するグループに対応付けて設定された優先順位に基づいて、前記サーバから受信した音声の出力を制御する制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一の端末から送信された音声を他の複数の端末に同報通信する同報通信システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット等のオープンなネットワークの普及により、このネットワークに接続された所定のサーバを介し複数の端末間で同報通信を行うことができるようになっている。例えば、従来、端末よりサーバへ情報種別の登録要求を発行し、グループに加入し、サーバにおいてメッセージの情報種別と、該情報種別への端末の登録状況と、グループアドレスの記録に基づいて配信先のグループを決定し、サーバより決定された配信先のグループに属する端末へメッセージを配信することで、同報通信を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、同報通信とは、通信網に接続された複数の端末に同じ情報を一度に送信することを目的とした通信を意味している。
【特許文献1】特開平10−285162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の技術では、サーバに対し配信を依頼するグループを事前に登録する必要があるため、使用する環境に変化が生じた場合にはサーバの登録内容を設定しなおさなければならず、その作業が煩雑なものとなる。
また、一の端末が音声による同報通信を複数のグループから同時に受けた場合には、複数のグループからの音声が混在して出力されることになるため、優先的に受信したいグループから配信された音声であっても、どのグループから配信された音声かを識別することができず、聴取し辛いという問題がある。
【0004】
本発明の課題は、一の端末が複数のグループから音声による同報通信を同時に受けた場合であっても、優先順位が高く設定されたグループの音声を確実に聴取できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために,請求項1記載の発明は、
複数の端末と、当該複数の端末と通信回線を介して接続されるサーバとを有し、一の端末から送信された音声を、前記サーバを介して他の端末に同報通信する同報通信システムであって、
前記端末は、
自己の端末が所属する1又は複数のグループと、当該グループ毎の優先順位とを対応付けて設定する設定手段と、
前記サーバからの同報通信を受信した際に、この同報通信の発信元端末が所属するグループに対応付けて設定された優先順位に基づいて、前記サーバから受信した音声の出力を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
更に、端末のコンピュータに対して、上述した請求項1記載の発明に示した主要機能を実現させるためのプログラムを提供する(請求項6記載の発明)。
【0006】
なお、請求項1記載の発明は次のようなものであってもよい。
前記制御手段は、前記発信元端末が所属するグループの優先順位に応じて、前記受信した音声が出力される際の音量を異ならしめる(請求項2記載の発明)。
【0007】
前記制御手段は、前記発信元端末が所属するグループの優先順位に応じて、前記受信した音声が出力される際の音色を異ならしめる(請求項3記載の発明)。
【0008】
前記制御手段は、前記発信元端末が所属するグループの優先順位に応じて、前記受信した音声が出力される際の出力チャンネルを異ならしめる(請求項4記載の発明)。
【0009】
前記制御手段は、前記発信元端末が所属するグループの優先順位に応じて、前記受信した音声が出力される際の音響効果を異ならしめる(請求項5記載の発明)。
【発明の効果】
【0010】
請求項1又は6記載の発明によれば、サーバからの同報通信を受信した際に、この同報通信の発信元端末が所属するグループに対応付けて設定された優先順位に基づいて、前記サーバから受信した音声の出力を制御するため、一の端末が複数のグループから音声による同報通信を同時に受けた場合であっても、優先順位が高く設定されたグループの音声を確実に聴取することができる。
また、端末側にて設定を行うため、使用する環境に変化が生じた場合であっても、設定変更に係る作業を容易に行うことができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、発信元端末が所属するグループの優先順位に応じて、前記受信した音声が出力される際の音量を異ならしめることが可能であるため、一の端末が複数のグループから音声による同報通信を同時に受けた場合であっても、優先順位が高く設定されたグループの音声を確実に聴取することができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、発信元端末が所属するグループの優先順位に応じて、前記受信した音声が出力される際の音色を異ならしめることが可能であるため、一の端末が複数のグループから音声による同報通信を同時に受けた場合であっても、優先順位が高く設定されたグループの音声を確実に聴取することができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、発信元端末が所属するグループの優先順位に応じて、前記受信した音声が出力される際の出力チャンネルを異ならしめることが可能であるため、一の端末が複数のグループから音声による同報通信を同時に受けた場合であっても、優先順位が高く設定されたグループの音声を確実に聴取することができる。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、発信元端末が所属するグループの優先順位に応じて、前記受信した音声が出力される際の音響効果を異ならしめることが可能であるため、一の端末が複数のグループから音声による同報通信を同時に受けた場合であっても、優先順位が高く設定されたグループの音声を確実に聴取することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されないものとする。
【0016】
まず、図1を参照して本実施の形態における同報通信システム100の構成を説明する。図1に示すとおり、同報通信システム100は、サーバ10、無線通信装置20、複数の端末30等から構成され、サーバ10と各端末30とは、無線通信装置20を介して相互にデータの送受信が可能となっている。なお、サーバ10、無線通信装置20及び端末30の数量は、図示例に限定されないものとする。
【0017】
サーバ10は、一の端末から送信された音声データを、複数の端末に同報通信するサーバ装置であって、グループ単位(図中、グループ1〜グループ3参照)で音声データの同報通信を無線通信装置20を介して行う。
【0018】
無線通信装置20は、サーバ10と各端末30との間で送受信されるデータの中継を行う無線基地局であって、PDC(Personal Digital Cellular)方式や、W−CDMA(Wide Band Code Division Multiple Access)方式、IEEE802.11諸規格に準拠した無線方式、Bluetooth等の無線通信を行うことが可能な無線装置を備え、各端末30との間に無線通信網Wを形成する。また、無線通信装置20は、サーバ10と接続するためのルータやTA(Terminal Adapter)、LANアダプタ等のインターフェースを備え、ネットワークNを介してサーバ10と接続される。なお、本実施形態では、サーバ10と無線通信装置20との間が有線により接続されるものとしたが、これに限らず、無線により接続される態様としてもよい。また、無線通信装置20と各端末30との間が無線により接続されるものとしたが、これに限らず、有線により接続される態様としてもよい。
【0019】
端末30は、携帯電話端末やPDA等の携帯情報端末であって、無線通信装置20を介してサーバ10に音声データを送信することで特定のグループに同報通信を行うとともに、自己の端末が所属するグループ宛の同報通信を無線通信装置20を介してサーバ10から受信する。なお、本実施形態では、各端末30のそれぞれにはIPアドレスがユニークに割り振られているものとし、また、各端末30を一意的に識別可能なホストネーム等の端末名が付与されているものとする。
【0020】
次に、図2を参照して、サーバ10の内部構成について説明する。
図2に示すとおり、サーバ10は、制御部11、表示部12、操作部13、記憶部14、音声パケット転送部15、伝送制御部16により構成される。
【0021】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)(何れも不図示)等から構成され、記憶部14に記憶された各種制御プログラムを読み出してRAM内に形成されたワークメモリに展開し、該制御プログラムに従って、各部の動作を集中制御する。また、制御部11は、RAMに展開した制御プログラムとの協働により、後述するグループ登録処理S10、配信先登録処理S30、同報配信処理S50を実行する。
【0022】
表示部12は、LCD(Liquid Crystal Display)やELD(Electro Luminescence Display)パネル等により構成され、制御部11から入力される表示データに基づいて画面表示を行う。
【0023】
操作部13は、文字入力キー,数字入力キーその他各種機能に対応付けられたキーを備えたキーボード、マウス等を含み、ユーザによる操作に応じた操作信号を制御部11に出力する。
【0024】
記憶部14は、プログラムやデータ等が予め記憶された記録媒体(不図示)を有し、この記録媒体は磁気的、光学的記録媒体、若しくは半導体等の不揮発性メモリで構成されている。記録媒体は、記憶部14に固定的に設けたもの、若しくは着脱自在に装着するものであり、記録媒体にはサーバ10に対応するシステムプログラム、該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラム、これらのプログラムで処理されたデータ等を記憶する。これらの各処理プログラムは、読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部11は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0025】
また、記憶部14は、その記憶媒体に、同報通信システム100の端末30において区分けされる各グループの名称を示したグループ名と、当該グループ名に所属する端末30に関する情報(以下、端末情報という)とが対応付けて登録された配信テーブル141を記憶している。
【0026】
記録媒体に記憶するプログラム、データは、その一部若しくは全部を他の機器から伝送制御部16を介して受信し記憶する構成にしてもよい。また、上記プログラムをネットワーク回線等の伝送媒体を介してサーバやクライアントへ伝送してこれらの機器にインストールする構成としてもよい。なお、上記プログラム、データには、コンピュータのハードウェアと一体化されたファームウェアによって実現されるものも含まれる。
【0027】
音声パケット転送部15は、制御部11による制御の下、端末30から送信された音声データを、伝送制御部16を介して同報配信する。ここで、音声パケット転送部15により同報配信される音声データは、TCP/IPの規約に準拠したパケット単位で送信されるものとする。
【0028】
伝送制御部16は、ルータやTA(Terminal Adapter)、LANアダプタ等によって構成され、無線通信装置20との通信制御を行う。
【0029】
次に、図3を参照して、端末30の内部構成について説明する。
図3に示すとおり、端末30は、制御部31、表示部32、操作部33、記憶部34、音声入力部35、音声出力部36、音声パケット組立・分解部37、音声減衰部38、音声ミキシング部39、伝送制御部40等により構成される。
【0030】
制御部31は、CPU、ROM、RAM(何れも不図示)等から構成され、記憶部34に記憶された各種制御プログラムを読み出してRAM内に形成されたワークメモリに展開し、該制御プログラムに従って、各部の動作を集中制御する。また、制御部31は、RAMに展開した制御プログラムとの協働により、後述する受信グループ設定処理S20、音声データ送信処理S40、音声データ受信処理S70を実行する。
【0031】
表示部32は、LCDやELDパネル等により構成され、制御部31から入力される表示データに基づいて画面表示を行う。
【0032】
操作部33は、文字入力キー,数字入力キーその他各種機能に対応付けられたキーを備えたキーボード、マウス等のポインティングデバイス等を含み、ユーザによる操作に応じた操作信号を制御部31に出力する。
【0033】
記憶部34は、プログラムやデータ等が予め記憶された記録媒体(不図示)を有し、この記録媒体は磁気的、光学的記録媒体、若しくは半導体等の不揮発性メモリで構成されている。記録媒体は、記憶部34に固定的に設けたもの、若しくは着脱自在に装着するものであり、記録媒体には端末30に対応するシステムプログラム、該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラム、これらのプログラムで処理されたデータ等を記憶する。これらの各処理プログラムは、読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部31は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0034】
また、記憶部34は、その記憶媒体に、後述する受信グループ設定処理S20により設定される当該端末30が所属するグループと、このグループ毎の優先順位とが対応付けて登録された所属グループテーブル341を記憶している。
【0035】
また、記憶部34は、その記憶媒体に、サーバ10から同報通信としてグループ単位で送信される音声データを、この同報通信の送信対象となったグループ名と対応付けて記憶する受信音声テーブル342を記憶している。
【0036】
記録媒体に記憶するプログラム、データは、その一部若しくは全部を他の機器から伝送制御部40を介して受信し記憶する構成にしてもよい。また、上記プログラムをネットワーク回線等の伝送媒体を介してサーバやクライアントへ伝送してこれらの機器にインストールする構成としてもよい。なお、上記プログラム、データには、コンピュータのハードウェアと一体化されたファームウェアによって実現されるものも含まれる。
【0037】
音声入力部35は、ユーザから発せられた音声を集音し電気信号に変換するマイクロフォン等の音声入力装置351、音声入力装置351から出力される電気信号を増幅又は減衰する音量増幅装置352、音量増幅装置352で増幅された電気信号をデジタル化することで音声データ(PCMデータ)として出力する音声符号化部353から構成される。
【0038】
音声出力部36は、音声データ(PCMデータ)をアナログ化し音声信号として出力する音声復号化部361、音声復号化部361によりアナログ化された音声信号を増幅又は減衰する音量増幅装置362、音量増幅装置362により増幅又は減衰された音声信号を出力(再生)するスピーカ等の音声出力装置363から構成される。
【0039】
音声パケット組立・分解部37は、伝送制御部40を介してパケット単位で入力される音声データの組立又は分解を行い、当該処理された音声データを受信音声テーブル342に記憶する。
【0040】
音声減衰部38は、制御部31の下、受信音声テーブル342に記憶された音声データの音量を減衰する。
【0041】
音声ミキシング部39は、受信音声テーブル342に記憶された音声データをミキシング(合成)し、一の音声データとして生成する。
【0042】
伝送制御部40は、PDC方式や、W−CDMA方式、IEEE802.11諸規格に準拠した無線方式、Bluetooth等の無線通信を行うことが可能な無線装置等により構成され、無線通信網を介して接続される無線通信装置20との通信制御を行う。
【0043】
次に、図4を参照して、本同報通信システム100において同報配信が行われるまでの手順について説明する。図4は、サーバ10及び各端末30にて行われる処理を時系列的に説明するための図であって、図面上部から下部にかけて時間の経過を示している。
以下、各処理について説明する。
【0044】
<登録処理>
まず、図5参照して、図4に示された各処理について説明する。
図5は、サーバ10で行われるグループ登録処理S10の内容を模式的に示した図である。同図に示すように、ユーザから操作部13を介して入力される入力信号に応じ、制御部11は、記憶部14に記憶された配信テーブル141に、1又は複数のグループ名の登録を行う。ここで、入力されるグループ名、グループの数は任意に設定可能であるものとする。なお、本実施形態では、グループ名として、グループ1、2、3が配信テーブル141に登録されるものとする。
【0045】
<受信グループ設定処理及び配信先登録処理>
図6は、端末30で行われる受信グループ設定処理S20及びサーバ10で行われる配信先登録処理S30の内容を模式的に示した図である。また、図7は、受信グループ設定処理S20及び配信先登録処理S30の手順の流れを示すラダーチャートである。
【0046】
以下、図6及び図7を参照して、受信グループ設定処理S20及び配信先登録処理S30を説明する。なお、ステップS21〜S29の各処理は、制御部21と、不図示のRAMに展開された制御プログラムとの協働により実行される処理を示しており、ステップS31〜S36の各処理は、制御部11と不図示のRAMに展開された制御プログラムとの協働により実行される処理を示している。
【0047】
まず、端末30からサーバ10に対し、グループ一覧の取得を要求する要求情報が送信される(ステップS21)。一方、サーバ10では、この送信された要求情報が受信されると(ステップS31)、配信テーブル141に登録されたグループ名が抽出され(ステップS32)、この抽出されたグループ名が要求情報の送信元である端末30へと送信される(ステップS33)。
【0048】
次いで、端末30では、サーバ10からのグループ名が受信されると(ステップS22)、このグループ名が表示部32に表示される(ステップS23)。ここで、操作部33を介して自己の端末30が所属を希望するグループに対し、優先順位が入力されるまで待機が行われ(ステップS24;No)、入力されたと判定されると(ステップS24;Yes)、優先順位が入力されたグループ名と当該グループ名に対応する優先順位とが所属グループテーブル341に対応付けて登録されるとともに(ステップS25)、優先順位が入力されたグループ毎に専用の受信ポート番号が設定される(ステップS26)。例えば、図6の所属グループテーブル341に示すように、グループ名がグループ1、2、3の夫々に対して優先順位が1、2、3と対応付けて登録された場合には、自己の端末30は、グループ1、2、3に所属することなり、それぞれのグループ毎に3つの異なる受信ポート番号が設定されることになる。
【0049】
続いて、優先順位が入力されたグループ名と、自己の端末30の端末情報とが受信グループ設定情報としてサーバ10に送信される(ステップS27)。ここで、端末情報には、自己の端末30の端末名、IPアドレス、受信ポート番号等で含まれるものとし、複数のグループ名が含まれる際には、ステップS26においてグループ名毎に設定された受信ポート番号がグループ名と対応付けられているものとする。
【0050】
一方、サーバ10では、端末30から送信された受信グループ設定情報が受信されると(ステップS34)、配信テーブル141において、この受信グループ設定情報で指示されたグループ名に、端末30の関する情報を対応付けて登録される(ステップS35)。そして、ステップS35の登録が正常に終了したか否かを報知するステイタス情報が端末30に送信され(ステップS36)、配信先登録処理S30は終了する。
【0051】
一方、端末30では、サーバ10から送信されたステイタス情報が受信されると(ステップS28)、このステイタス情報が報知する内容が表示部32に表示されて(ステップS29)、受信グループ設定処理S20は終了する。
【0052】
上記処理により、報通信システム100の端末30は、図1に示すように、グループ1、2、3の何れか又は全てのグループに所属することとなる。
【0053】
<音声データ送信処理及び同報配信処理>
図8は、端末30で行われる音声データ送信処理S40及びサーバ10で行われる同報配信処理S50における送信権取得に係る処理の内容を模式的に示した図である。また、図9は、端末30で行われる音声データ送信処理S40及びサーバ10で行われる同報配信処理S50における配信処理の内容を模式的に示した図である。また、図10は、音声データ送信処理S40及び同報配信処理S50の手順の流れを示すラダーチャートであり、図11は同報配信処理S50における配信処理の手順の流れを示すフローチャートである。
【0054】
以下、図8〜図12を参照して、音声データ送信処理S40及び同報配信処理S50を説明する。なお、ステップS41〜S46の各処理は、制御部21と、不図示のRAMに展開された制御プログラムとの協働により実行される処理を示しており、ステップS51〜S61の各処理は、制御部11と不図示のRAMに展開された制御プログラムとの協働により実行される処理を示している。
【0055】
まず、表示部32に送受信操作画面が表示され(ステップS41)、この送受信操作画面において、送信ボタンが押下されているか否かが判定される(ステップS42)。ここで、送信ボタンが押下されていないと判定された場合には(ステップS42;No)、本処理は直ちに終了する。
【0056】
図12は。表示部32に表示された送受信操作画面の一例を示す図である。同図において送信ボタンB1は、自己の端末30が所属するグループ毎に設けられており、何れか一のグループの送信ボタンB1を択一的に押下できるようになっており、この送信ボタンに対応するグループが送信対象として選択される。
【0057】
図10に戻り、ステップS42において送信ボタンが押下されていると判定された場合には(ステップS42;Yes)、送信対象として選択されたグループに対する送信権を要求する要求情報がサーバ10に送信される(ステップS43)。なお、ここで要求情報は、送信対象として選択されたグループ名及び自己の端末の端末名が少なくとも含まれているものとする。
【0058】
一方、サーバ10では、端末30から送信された要求情報が受信されると(ステップS51)、配信テーブル141を参照し、この要求情報に含まれたグループ名のグループ内において送信権が設定された端末が存在するか否かが判定される(ステップS52)。ここで、存在しないと判定された場合には(ステップS52;No)、端末30に対し送信権が設定され(ステップS53)、送信権が取得された旨を通知するステイタス情報とともに、音声データ送信用のIPアドレス及びポート番号を指示する情報が端末30に送信される(ステップS54)。
【0059】
ここで、図8を参照して、送信権の設定について説明する。ステップS52において、同一グループ内において送信権が設定された端末が存在しないと判定されると、配信テーブル141において、このグループに所属する要求情報を送信した端末30(図中、A端末に対応)に対し、フラグが設定される等により当該端末に送信権が設定される(ステップS53)。
【0060】
図10に戻り、ステップS52において、送信権が設定された端末が存在すると判定された場合には(ステップS52;Yes)、送信権が取得できない旨を通知するステイタス情報が送信されて(ステップS55)、ステップS51へと再び戻る。
【0061】
次いで、要求情報に含まれたグループ名に対応付けて登録された端末に関する情報が配信テーブル141抽出され(ステップS56)、この抽出された端末情報がリスト形式で登録された端末リストが生成される(ステップS57)。なお、ここで音声データの送信元端末30は、端末リストから除外されるものとする。そして、この端末リストに登録された端末情報に基づいて、当該端末情報に含まれたIPアドレス及びポート番号宛に送信開始を通知する送信開始信号が送信されて(ステップS58)、ステップS59の配信処理へと移行する。
【0062】
一方、端末30側では、サーバ10から受信されるステイタス情報が送信権の取得が許可されたものか否かが判定され、許可されないと判定された場合には(ステップS44;No)本処理は直ちに終了する。また、ステップS44において、許可されたと判定された場合には(ステップS44;Yes)、この送信権情報とともに受信された音声データ送信用のIPアドレス及びポート番号宛に、音声入力部35を介して入力された音声データがパケット単位でサーバ10へと送信される(ステップS45)。ここで音声データは、自己の端末30が所属するグループ毎に設定されたポート番号のうち、送信対象となるグループのポート番号から送信されるものとする。
【0063】
以下、図11を参照してステップS59の配信処理を説明する。
まず、端末30から送信される音声データの受信が待機され(ステップS591;No)、音声データが受信されると(ステップS591;Yes)、ステップS57で生成された端末リストの先頭から順次端末情報が読み出され(ステップS592)、当該読み出された端末情報に含まれるIPアドレス及びポート番号宛に音声データが送信される(ステップS593)。
【0064】
次いで、端末リストに登録された全ての端末情報が読み込まれたか否かが判定され、読み込まれていないと判定された場合には(ステップS594;No)、ステップS592に再び戻り、全ての端末情報の読み出しが完了するまでステップS592〜ステップS594が繰り返し実行される。また、ステップS594において、全ての端末情報が読み込まれたと判定された場合には(ステップS594;Yes)、ステップS60に移行する。
【0065】
図10に戻り、端末30において、送受信操作画面の送信ボタンB1の押下が解除(OFF)されることで、送信権の返却が行われた場合には、送信権を返却する旨の返却情報が送信されて(ステップS46)、音声データ送信処理S40は終了する。
【0066】
一方、サーバ10では、ステップS58において端末30から返却情報が受信されたか否かが判定され、受信されないと判定された場合には(ステップS58)、ステップS57に再び戻る。また、ステップS58において、返却情報が受信されたと判定された場合には(ステップS58;Yes)、配信テーブル141に基づいて、この返却情報の送信元IPアドレス及びポート番号から端末30が特定され(ステップS59)、当該端末30に設定された送信権が解除される(ステップS60)。そして、この解除された端末30が所属するグループに係る端末リストに登録された各端末に対し、送信終了を通知する送信終了情報が送信されて(ステップS61)、同報配信処理S50は終了する。
【0067】
<音声データ受信処理>
図13は、端末30で行われる音声データ受信処理S70における音声データの受信に係る処理の内容を模式的に示した図である。また、図14は、端末30で行われる音声データ受信処理S70における音声出力制御に係る処理の内容を模式的に示した図である。また、図15は、端末30で行われる音声データ受信処理S70における音声出力に係る処理の内容を模式的に示した図である。
【0068】
図16は、音声データ受信処理S70の手順の流れを示すフローチャートであって、図17は、音声データ受信処理S70の音声出力制御処理の手順を示すフローチャートである。
【0069】
以下、図13〜図18を参照して、音声データ受信処理S70を説明する。なお、ステップS71〜S80の各処理は、制御部31と、不図示のRAMに展開された制御プログラムとの協働により実行される処理を示している。
【0070】
まず、サーバ10から送信される送信開始情報の受信が待機され(ステップS71;No)、この送信開始情報が受信されると(ステップS71;Yes)、当該送信開始情報を受信したIPアドレス及びポート番号に基づいて音声受信を行うグループが特定され(ステップS72)、この特定されたグループに対応する送受信操作画面の受信状態表示領域A1(図12参照)に「受信中」の文字が表示される(ステップS73)。
【0071】
次いで、サーバ10からの音声データが受信されると(ステップS74)、音声データに対し音声パケット組立・分解部37により所定の処理が施された後、この音声データがステップS72で特定されたグループと対応付けて、受信音声テーブル342に記憶される(ステップS75)。そして、ステップS76の音声出力制御処理へと移行する。
【0072】
ここで、図17を参照して、ステップS76の音声出力制御処理について説明する。
まず、受信された音声データ数を計数するカウンタCが「0」に設定された後(ステップS761)、所属グループテーブル341に設定された各グループの優先順位に基づいて、受信音声テーブル342に登録されたグループのうち優先順位が高く設定されたグループ名から順次取得される(ステップS762;Yes)。
【0073】
ステップS763では、ステップS762で取得されたグループ名に対応する音声データが、受信音声テーブル342に記憶されているか否かが判定され、記憶されていないと判定された場合には(ステップS763;No)、ステップS752に再び戻り、次に優先順位が高く設定されたグループ名が取得される。また、ステップS763において、音声データが記憶されていると判定された場合には(ステップS763;Yes)、カウンタCに1インクリメントされ(ステップS764)、そのカウンタCの値が2以上か否かが判定される(ステップS765)。
【0074】
カウンタCの値が2を下回ると判定された場合には(ステップS765;No)、ステップS762に再び戻り、次に優先順位が高く設定されたグループ名が取得される。また、カウンタCの値が2以上と判定された場合には(ステップS765;Yes)、ステップS762において直近に取得されたグループ名に係る音声データの音量が、音声減衰部38により所定量減衰された後(ステップS766)、ステップS762に再び戻り、次に優先順位が高く設定されたグループ名が取得される。
【0075】
ここで、カウンタCの値が2以上となる場合とは、即ち、端末30が複数のグループに所属し、且つ、この各グループ宛に同報送信が同時になされた場合であって、図1の場合、複数のグループに包含される端末30において起こりうる状況である。
【0076】
一方、ステップS762において、全グループ名が取得された場合には(ステップS762;No)、図16のステップS77へと移行する。
【0077】
ステップS77では、受信音声テーブル342に記憶された音声データが、音声ミキシング部39によりミキシングされて(ステップS77)、音声出力部36から出力される(ステップS78)。
【0078】
ここで、図18を参照して、ステップS766及びステップS77において音声データに施される処理について説明する。図18において、各グラフGは受信音声テーブル342に記憶された1パケット分の音声データを示しており、グラフを構成する矩形状のバーBは、1の音声データを示している。また、各グラフの横軸は時間、縦軸は音声データの大きさ(音量)を示している。なお、各グループ毎の優先順位は、図6で示したように、グループ1、グループ2、グループ3夫々に対し優先順位1、2、3と設定されており、数値が低いほど優先順位が高くなっている。
【0079】
図18(a)は、グループ1、2、3に対応する音声データを夫々示したグラフである。この場合、上述した音声出力制御処理(ステップS76)により、図18(b)に示すようにグループ2及びグループ3の音声データの音量が所定量減衰されることとになる。このように、グループの優先順位に応じて、音声データが出力される際の音量を異ならしめることが可能であるため、一の端末が複数のグループから音声による同報通信を同時に受けた場合であっても、優先順位が高く設定されたグループの音声を確実に聴取することができる。
【0080】
なお、同図においては、グループ2及びグループ3の音声データを同等の音量まで減衰させているが、これに限らず、優先順位が最も低いグループ3の音量をグループ2の音声データの音量より減衰させることとしてもよい。
【0081】
次いで実行されるステップS77のミキシング処理では、図18(c)で示すように、グループ1、2、3の夫々に対応する音声データがミキシングされて、一の音声データとして生成されることになる。
【0082】
図16に戻り、サーバ10から送信終了情報が受信されたか否かが判定され、受信されていないと判定された場合には(ステップS79;No)、ステップS74へと再び戻り、引き続き音声データの受信が行われる。また、ステップS79において、送信終了情報が受信されたと判定された場合には(ステップS79;Yes)、表示部32に表示された送受信操作画面において、送信終了が確認されたグループの受信状態表示領域A1(図12参照)に表示された「受信中」の文字が消去され(ステップS80)、本処理は終了する。
【0083】
以上のように、本実施形態によれば、サーバ10からの同報通信を受信した際に、この同報通信の発信元端末が所属するグループに対応付けて設定された優先順位に基づいて、前記サーバから受信した音声の出力を制御するため、一の端末が複数のグループから音声による同報通信を同時に受けた場合であっても、優先順位が高く設定されたグループの音声を確実に聴取することができる。
また、端末側にて設定を行うため、使用する環境に変化が生じた場合であっても、設定変更に係る作業を容易に行うことができる。
【0084】
尚、本発明の適用は、上述した例に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0085】
例えば、図19に示すように、端末30が、音声データの波長を変調する音声波長変調部41を備え、この音声波長変調部41によりグループの優先順位に応じて音声データの音色を異ならしめる態様としてもよい。この場合、上記した実施形態と同様、一の端末が複数のグループから音声による同報通信を同時に受けた場合に、優先順位が高く設定されたグループの音声を確実に聴取することができる。
【0086】
また、端末30が、ステレオ(2チャンネル)出力が可能な音声出力装置363を備えるとともに、図20に示すように、音声データの出力チャンネルを切り換える音声チャンネル切換部42を備え、この音声チャンネル切換部42によりグループの優先順位に応じて音声データの出力チャンネルを異ならしめる態様としてもよい。この場合、上記した実施形態と同様、一の端末が複数のグループから音声による同報通信を同時に受けた場合に、優先順位が高く設定されたグループの音声を確実に聴取することができる。
【0087】
また、図21に示すように、端末30が、音声データの位相を変調する音声位相変調部43を備え、この音声位相変調部43によりグループの優先順位に応じて音声データ出力の際の音響効果を異ならしめる態様としてもよい。ここで、音響効果とは、例えば、音声データが出力される音場に仮想的な立体感を付与することであって、優先順位が高く設定された音声データを近くに、優先順位が低く設定された音声データを遠くにといった効果が挙げられる。この場合、上記した実施形態と同様、一の端末が複数のグループから音声による同報通信を同時に受けた場合に、優先順位が高く設定されたグループの音声を確実に聴取することができる。
【0088】
また、上記実施形態では、1グループあたり1の送信権が設定されるものとしたが、これに限らず、複数の送信権が設定される態様としてもよい。
【0089】
また、サーバ10からの指示に応じて、各端末に設定されたグループ毎の優先順位が変更される態様としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】同報通信システムの構成を示した図である。
【図2】サーバの内部構成を示した図である。
【図3】端末の内部構成を示した図である。
【図4】同報通信が行われるまでの手順を説明するための図である。
【図5】グループ登録処理の内容を模式的に示した図である。
【図6】受信グループ設定処理及び配信先登録処理の内容を模式的に示した図である。
【図7】受信グループ設定処理及び配信先登録処理の手順を示したラダーチャートである。
【図8】音声データ送信処理及び同報配信処理の内容を模式的に示した図である。
【図9】配信処理の内容を模式的に示した図である。
【図10】音声データ送信処理及び同報配信処理の手順を示したラダーチャートである。
【図11】配信処理の手順を示したフローチャートである。
【図12】送受信操作画面の一例を示した図である。
【図13】音声データ受信処理における音声データの受信に係る処理の内容を模式的に示した図である。
【図14】音声データ受信処理における音声出力制御に係る処理の内容を模式的に示した図である。
【図15】音声データ受信処理における音声出力に係る処理の内容を模式的に示した図である。
【図16】音声データ受信処理の手順を示したフローチャートである。
【図17】音声出力制御処理の手順を示したフローチャートである。。
【図18】音声出力制御処理を説明するための図である。
【図19】他の態様における音声出力制御に係る処理の内容を模式的に示した図である。
【図20】他の態様における音声出力制御に係る処理の内容を模式的に示した図である。
【図21】他の態様における音声出力制御に係る処理の内容を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0091】
100 同報通信システム
10 サーバ
11 制御部
12 表示部
13 操作部
14 記憶部
141 配信テーブル
15 音声パケット転送部
16 伝送制御部
20 無線通信装置
30 端末
31 制御部
32 表示部
33 操作部
34 記憶部
341 所属グループテーブル
342 受信音声テーブル
35 音声入力部
36 音声出力部
37 音声データ組立・分解部
38 音声減衰部
39 音声ミキシング部
40 伝送制御部
41 音声波長変調部
42 音声チャンネル切換部
43 音声位相変調部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末と、当該複数の端末と通信回線を介して接続されるサーバとを有し、一の端末から送信された音声を、前記サーバを介して他の端末に同報通信する同報通信システムであって、
前記端末は、
自己の端末が所属する1又は複数のグループと、当該グループ毎の優先順位とを対応付けて設定する設定手段と、
前記サーバからの同報通信を受信した際に、この同報通信の発信元端末が所属するグループに対応付けて設定された優先順位に基づいて、前記サーバから受信した音声の出力を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする同報通信システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記発信元端末が所属するグループの優先順位に応じて、前記受信した音声が出力される際の音量を異ならしめることを特徴とする請求項1に記載の同報通信システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記発信元端末が所属するグループの優先順位に応じて、前記受信した音声が出力される際の音色を異ならしめることを特徴とする請求項1に記載の同報通信システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記発信元端末が所属するグループの優先順位に応じて、前記受信した音声が出力される際の出力チャンネルを異ならしめることを特徴とする請求項1に記載の同報通信システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記発信元端末が所属するグループの優先順位に応じて、前記受信した音声が出力される際の音響効果を異ならしめることを特徴とする請求項1に記載の同報通信システム。
【請求項6】
他の端末から送信された音声の同報通信をサーバから受信する端末のコンピュータに、
自己の端末が所属する1又は複数のグループと、当該グループ毎の優先順位とを対応付けて設定する設定機能と、
前記サーバからの同報通信を受信した際に、この同報通信の発信元端末が所属するグループに対応付けて設定された優先順位に基づいて、前記サーバから受信した音声の出力を制御する制御機能と、
を実現させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2007−74381(P2007−74381A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259343(P2005−259343)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】