同期装置、同期方法及び同期プログラム並びにデータ再生装置
【課題】本発明は、周波数誤差の引込範囲を広げて位相同期の能力を向上できるようにする。
【解決手段】本発明は、周波数誤差検出回路33において位相検出器54により補間信号pkにおける位相誤差Δτ(k)を検出し、差分算出器55により当該位相誤差Δτ(k)と1クロック前の位相誤差Δτ(k−1)との差分を基に周波数誤差Δf(k)及びその移動平均である平均周波数誤差Δfa(k)を算出し、位相同期部8において周波数収束ループ又は周波数初期値ループを形成して周波数誤差Δf(k)に基づく周波数補正値DF又は平均周波数誤差Δfa(k)に基づく平均周波数補正値DFAをLPF25の積分項に加算することにより、当該位相同期部8における周波数誤差Δf(k)を高速に且つ安定してほぼ0に収束させることができる。
【解決手段】本発明は、周波数誤差検出回路33において位相検出器54により補間信号pkにおける位相誤差Δτ(k)を検出し、差分算出器55により当該位相誤差Δτ(k)と1クロック前の位相誤差Δτ(k−1)との差分を基に周波数誤差Δf(k)及びその移動平均である平均周波数誤差Δfa(k)を算出し、位相同期部8において周波数収束ループ又は周波数初期値ループを形成して周波数誤差Δf(k)に基づく周波数補正値DF又は平均周波数誤差Δfa(k)に基づく平均周波数補正値DFAをLPF25の積分項に加算することにより、当該位相同期部8における周波数誤差Δf(k)を高速に且つ安定してほぼ0に収束させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は同期装置、同期方法及び同期プログラム並びにデータ再生装置に関し、例えば光ディスク装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスク装置においては、例えばBlu−ray Disc(登録商標)方式やDVD(Digital Versatile Disc)方式等の種々の記録方式に従い、光ディスクに対してデータを記録し、また当該データを読み出して再生するようになされたものが広く普及している。
【0003】
この光ディスク装置では、例えば光ディスクからデータを読み出す際、当該光ディスクにレーザ光を照射してその反射光を基に再生RF(Radio Frequency)信号を生成し、当該再生RF信号をサンプリングしてそのサンプル値を基に離散的な符号値に変換し、最終的に所望のデータを再生するようになされている。
【0004】
ここで光ディスク装置は、再生RF信号をサンプリングする際、PLL(Phase Locked Loop、位相同期ループ)回路によってサンプリングのタイミング(すなわち位相)を本来のサンプリングすべきタイミング(以下、これを目標位相と呼ぶ)に極力近づけることにより、所望のデータを精度良く再生し得るようになされている。
【0005】
また光ディスク装置の中には、一次の位相同期回路と二次の位相同期回路とを切り替えることにより、PLL回路による位相の同期(いわゆる引き込み)を高速化するようになされたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−107352号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで近年の光ディスク装置では、光ディスクに対するデータの書込速度及び当該光ディスクからの読出速度が高速化されているものの、PLL回路の動作速度に限界があるため、当該PLL回路内にパイプラインディレイが用いられることがある。
【0007】
この場合、光ディスク装置は、このパイプラインディレイによりPLL回路のループ内に遅延(いわゆるループディレイ)を生じさせることになり、さらにこの遅延が長引いた場合、位相誤差のみでなく周波数誤差を生じさせる可能性がある。
【0008】
しかしながら、かかる構成の光ディスク装置では、PLL回路において位相の同期を高速化することはできるものの、引き込み可能な周波数誤差の範囲、すなわちキャプチャレンジを広げることはできない。
【0009】
このためこの光ディスク装置では、周波数誤差を十分に吸収することができず引き込みに時間を要してしまい、特に比較的長いループディレイが生じていた場合には破綻してしまう可能性もあるという問題があった。
【0010】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、周波数誤差の引込範囲を広げて位相同期の能力を向上させ得る同期装置、同期方法及び同期プログラム、並びに周波数誤差の引込範囲を広げて位相同期の能力を向上させることによりデータの再生精度を向上させ得るデータ再生装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため本発明の同期装置、同期方法及び同期プログラムにおいては、入力データをサンプリングする際のサンプリングクロックをPLL(Phase Locked Loop)回路によって制御することにより、当該入力データにおける本来サンプリングすべき目標位相に対して当該サンプリングクロックの位相を同期させる際に、入力データをサンプリングクロックのタイミングでサンプリングしたサンプリングデータとサンプリングクロックとから位相誤差を検出し、位相誤差の検出結果における微分係数を基に周波数誤差を検出し、検出した周波数誤差を基に算出した周波数補正値をPLL回路におけるループフィルタの積分項に加算することにより当該周波数誤差を0に近づけるようサンプリングクロックの周波数を補正するようにした。
【0012】
これにより周波数誤差を精度良く検出することができ、また当該周波数誤差をPLL回路におけるループフィルタに反映させることにより当該周波数誤差を直接的に補正することができる。
【0013】
また本発明のデータ再生装置においては、記録媒体から読み出した読出データをサンプリングする際のサンプリングクロックをPLL回路によって制御することにより、当該読出データにおける本来サンプリングすべき目標位相に対して当該サンプリングクロックの位相を同期させてデータを再生するデータ再生装置であって、記録媒体にアクセスすることにより読出データを生成する読出データ生成手段と、読出データをサンプリングクロックのタイミングでサンプリングしたサンプリングデータとサンプリングクロックとから位相誤差を検出する位相誤差検出手段と、位相誤差の検出結果における微分係数を基に周波数誤差を検出する周波数誤差検出手段と、検出した周波数誤差を基に算出した周波数補正値をPLL回路におけるループフィルタの積分項に加算することにより当該周波数誤差を0に近づけるようサンプリングクロックの周波数を補正する周波数補正手段と、サンプリングデータに所定の信号処理を施すことによりデータを再生する再生処理手段とを設けるようにした。
【0014】
これにより周波数誤差を精度良く検出することができ、また当該周波数誤差をPLL回路におけるループフィルタに反映させることにより当該周波数誤差を直接的に補正することができ、結果的にデータの再生精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、周波数誤差を精度良く検出することができ、また当該周波数誤差をPLL回路におけるループフィルタに反映させることにより当該周波数誤差を直接的に補正することができるので、かくして周波数誤差の引込範囲を広げて位相同期の能力を向上させ得る同期装置、同期方法及び同期プログラムを実現できる。
【0016】
また本発明によれば、周波数誤差を精度良く検出することができ、また当該周波数誤差をPLL回路におけるループフィルタに反映させることにより当該周波数誤差を直接的に補正することができるので、かくして周波数誤差の引込範囲を広げて位相同期の能力を向上させることによりデータの再生精度を向上させ得るデータ再生装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0018】
(1)光ディスク装置の構成
(1−1)光ディスク装置の全体構成
図1において、光ディスク装置1は制御部2によって統括制御されており、全体としてBlu−ray Disc(登録商標)方式の光ディスク100に対して記録データに基づいたデータ列を記録し、また当該光ディスク100から当該データ列を読み出して再生データを生成するようになされている。
【0019】
制御部2は図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラム等の各種プログラムを読み出し、これをRAM(Random Access Memory)に展開して実行することにより、光ディスク100に対するデータの記録や再生を制御するようになされている。
【0020】
光ディスク装置1は、光ディスク100に対してデータを記録する場合、外部から入力された記録データに対して変調回路3によって所定の変調処理を施すことにより変調データDMを生成し、これを記録制御回路4へ供給する。
【0021】
記録制御回路4は、光ピックアップ5を制御し変調データDMに応じた光ビームを当該光ピックアップ5から光ディスク100の信号記録層に照射させることにより、記録データに応じたパターンでなるピット列を当該光ディスク100に形成する。
【0022】
また光ディスク装置1は、光ディスク100からデータを再生する際、制御部2による制御のもとで光ピックアップ5から当該光ディスク100にレーザ光を照射し、その反射光を検出して光電変換することにより再生RF信号SRFを生成し、これをアンプ6によって増幅し、さらにAGC(Auto Gain Control)回路7により信号レベルを調整した後、これを位相同期部8へ供給する。なお、以下では、位相同期部8へ供給される再生RF信号SRFを入力信号SIと呼ぶ。
【0023】
位相同期部8は、入力信号SIとサンプリングクロックとのタイミング調整や補間処理等を行うITR(interpolated Timing Recovery)回路を構成しており、PLL(Phase Locked Loop)回路9により当該入力信号SIにおける本来サンプリングすべき目標位相に対して当該サンプリングクロックの位相を同期させると共に、PR(Partial Response)等化器10による信号波形の整形を行う。
【0024】
また位相同期部8は、AGC回路7へゲインのフィードバック制御用の信号を送出すると共に、等化波形信号yk(ただしkはクロックを表す)を最尤復号器11へ出力する。
【0025】
最尤復号器11は、位相同期部8から供給された等化波形信号ykを基に最尤(ML:Maximum Likelihood)復号処理を行い、その結果得られた復号データを復調回路12へ供給する。
【0026】
復調回路12は、最尤復号器11から供給された復号データに対して所定の復調処理等を施すことにより再生データを生成する。
【0027】
このように光ディスク装置1は、光ディスク100から読み出した再生RF信号SRFを基に、位相同期部8においてPLL回路9による位相の同期を行うと共にPR等化回路10により波形の整形を行い、さらに最尤復号処理や復調処理を施すことにより再生データを生成するようになされている。
【0028】
(1−2)位相同期部の基本回路構成
ところで位相同期部8は、基本的には図2に示すような回路構成を有しており、全体としてディジタルのPLLを用いたITR回路を構成している。この位相同期部8は、入力信号SIに対してタイミング調整等の処理を行うことにより、後段の復調回路12(図1)において本来のサンプリングタイミングにおける再生データを生成させ得るようになされている。
【0029】
ちなみにITR回路については、非特許文献1や非特許文献2等に基本理論が解説されている。またこのITRを利用した光ディスク装置として、本願発明と同一の出願人による出願がなされている(例えば特許文献2)。
【0030】
【非特許文献1】Floyd M. Gardner,“Interpolation in Digital Modems-Part I: Fundamentals” IEEE TRANSACTIONS,VOL.41, NO.3,MARCH 1993
【非特許文献2】Lars Erup,“Interpolation in Digital Modems-Part II: Implementation and Performance” IEEE TRANSACTIONS, VOL.41, NO.6,JUNE 1993
【特許文献2】特開2005−108295公報
【0031】
位相同期部8のA/D(Analog/Digital)変換器20は、発振器21から供給される所定周期のクロック信号CLKに合わせて、アナログの入力信号SIを取り込んでアナログディジタル変換することによりディジタル入力信号DIを生成し、これをインターポレータ22へ順次供給する。
【0032】
インターポレータ22は、基本動作として、NCO(Number Controlled Oscillator)回路26から供給されるサンプリング位相μk(詳しくは後述する)に基づき、ディジタル入力信号DIを補間することにより補間信号pkを生成し、これをPR等化回路10(図1)と対応するPRイコライザ23へ送出するようになされている。
【0033】
PRイコライザ23は、補間信号pkに対してPR等化処理を施すことにより、符号間干渉を前提とした上でこの時点のサンプリングクロックにおける補間信号pkの値がほぼ整数比となるように波形を整形して等化波形信号ykを生成し、当該等化波形信号ykを位相誤差検出器24へ送出する。
【0034】
位相誤差検出器24は、等化波形信号ykを基に、所定の目標位相と現位相との位相誤差に応じて位相誤差信号Δτkを検出し、これをLPF(Low Pass Filter)回路25へ送出する。
【0035】
LPF回路25は、制御工学的に2次の制御ループを構成してサンプリング位相を更新するためのタイミング差を算出する回路であり、位相誤差信号Δτkの低域成分を抽出することによりタイミング差νkを算出し、これをNCO回路26へ送出する。
【0036】
NCO回路26は、アナログのPLL回路におけるVCO(Voltage Controlled Oscillator)に相当するものであり、タイミング差νkに基づいてサンプリング位相μkを生成し、これをインターポレータ22へ供給する。これに応じてインターポレータ22は、新たに供給されたサンプリング位相μkを基に、入力信号SIに対するサンプリングクロックの位相を変化させる。
【0037】
このように位相同期部8は、インターポレータ10、PR等化部11、位相誤差検出器12、LPF回路13、及びNCO回路14によってディジタルPLL回路を構成しており(以下、これを位相収束ループと呼ぶ)、現位相と目標位相との位相誤差を検出して当該位相誤差を縮めるようサンプリングクロックの位相を変化させるといった一連のループ処理を繰り返すことにより、当該現位相を当該目標位相に徐々に近づけ、当該位相誤差を収束させていくようになされている。
【0038】
(1−3)位相同期部の実際の回路構成
ところで位相同期部8は、実際には、図2との対応部分に同一符号を付して示す図3のような回路構成を有している。
【0039】
この図3に示すように、位相同期部8には、図2に示した基本回路構成と比較して、位相誤差検出器24とLPF回路25との間にスイッチ31が設けられ、また周波数誤差検出回路33やタイミングマネージャ43等が設けられている(詳しくは後述する)。
【0040】
(1−3−1)インターポレータの構成
インターポレータ22は、図4に示すような回路構成を有しており、全体としてn(nは整数)段のFIR(Finite Impulse Response)フィルタによって構成されている。
【0041】
実際上インターポレータ22は、ディジタル入力信号DIを(n−1)個のシフトレジスタ22B1〜22B(n−1)によって順次シフトしていくことにより、1クロック前のディジタル入力信号DI(n−1)から(n−1)クロック前のディジタル入力信号DI(1)までをそれぞれ取り込んで保持(ラッチ)する。
【0042】
そのうえインターポレータ22は、A/D変換器20から供給されたディジタル入力信号DI(説明の都合上、これをディジタル入力信号DI(n−1)とする)及びシフトレジスタ22B1〜22B(n−1)によってそれぞれ遅延されたディジタル入力信号DI(n−2)〜DI(0)をそれぞれ乗算器22C1〜22Cnに供給する。
【0043】
これに加えてインターポレータ22は、補間フィルタ係数算出部22Aにおいてサンプリング位相μkを用いた所定の演算処理によりn個のフィルタ係数h(0)〜h(n−1)を算出し(詳しくは後述する)、これらをそれぞれ乗算器22C1〜22Cnに供給する。
【0044】
インターポレータ22は、乗算器22C1〜22Cnによりディジタル入力信号DI(n−1)〜DI(0)にフィルタ係数h(0)〜h(n−1)をそれぞれ乗じ、これらを加算器22Dによって全て加算することにより、補間信号pk(kはクロックを表す)を生成する。
【0045】
このようにインターポレータ22は、ディジタル入力信号DIをFIRフィルタにより遅延させると共に、サンプリング位相μkを用いて算出したフィルタ係数h(0)〜h(n−1)をFIRフィルタに適用することにより、補間信号pkを生成するようになされている。
【0046】
ところで光ディスク装置1(図1)では、光ディスク100により反射されたレーザ光の光路における光学的特性やアンプ6等における周波数特性等の影響により、再生RF信号SRFの高域成分が劣化されている可能性がある。この場合、位相同期部8では、インターポレータ22に供給されるディジタル入力信号DIも高域成分が劣化されることになるため、後段の位相誤差検出器24等において位相を検出する際の検出性能が劣化してしまう。
【0047】
そこでインターポレータ22は、補間フィルタ係数算出部22Aにおいて、高域成分を強調するフィルタ係数h(0)〜h(n−1)を算出し得るよう予め選定された係数制御信号CCを制御部2(図1)から取得するようになされている。
【0048】
一般に、Blu−ray Disc(登録商標)方式のような光記録の場合、最も高い周波数となる、すなわち最短波長となる2Tの周波数は、チャンネル周波数の1/4に相当する。
【0049】
そこで、1/4チャンネル周波数を強調するような特性を有するべく、次式のような周波数空間での関数を仮定する。
【0050】
【数1】
【0051】
ただし、インターポレータ22のタップ数をn、時間分解能をMとする。またディジタル演算を前提とした離散周波数となるため、周波数を整数iで表すものとする。
【0052】
この関数G(i)において、時間分解能Mを64、タップ数nを32としたときのシミュレーションによる波形の一部を図5に示す。この図5に示した波形は、チャンネル周波数iを32とした場合に相当しており、またタップ数n=32の1/4であるタップ数n=8において極大値となっている。すなわち、この関数G(i)が1/4チャンネル周波数を強調する特性を有していることが示された。
【0053】
次に、この関数G(i)に対して逆FFT(Fast Fourier Transform)処理を施すことにより得られる関数g(i)の波形を図6に示す。この場合、時間分解能Mが64、タップ数nが32であるため、64×32=2048[個]の演算結果を得ることができる。このときの演算結果は、インターポレータ22のフィルタ係数hとして用いることができる。
【0054】
実際上、制御部2(図1)は、この関数g(i)を予め所定の記憶手段により記憶しており、当該関数g(i)を示す係数制御信号CCをインターポレータ22(図4)の補間フィルタ係数算出部22Aへ供給するようになされている。
【0055】
これに応じてインターポレータ22の補間フィルタ係数算出部22Aは、制御部2から供給される係数制御信号CCに従い、NCO回路26から供給されるサンプリング位相μkを用いて、次式のようにフィルタ係関数g(i)及び数h(0)〜h(n−1)を算出する。
【0056】
【数2】
ただしjはタップ番号を示し、0≦j≦n−1を満たす整数である。
【0057】
その後インターポレータ22は、フィルタ係数h(0)〜h(n−1)をFIRフィルタの係数(すなわちタップ係数)として用いることにより、ディジタル入力信号DIに対して補間を行うと共に高域成分を強調した補間信号pkを生成するようになされている。
【0058】
このようにインターポレータ22は、目標とする周波数特性を設定し、当該周波数特性に対して逆FFT処理を施すことにより周波数軸から時間軸への変換を行い、その変換結果を基にFIRフィルタのフィルタ係数を算出して当該FIRフィルタに適用するようになされている。
【0059】
(1−3−2)LPFの構成
次に、LPF回路25(図3)の構成について説明する。LPF回路25は、まず位相誤差検出器24から供給された位相誤差Δτkを乗算器25A及び25Bへ送出する。
【0060】
乗算器25Aは、位相誤差Δτkに所定の係数αを乗じて乗算値d1を生成し、これを加算器25Fへ供給する。また乗算器25Bは、位相誤差Δτkに所定の係数ρを乗じて乗算値d2を生成し、これを加算器25Cへ供給する。
【0061】
加算器25Cは、後述する周波数補正値DFと乗算値d2とを加算することにより加算値d3を生成し、これを加算器25Dへ供給する。
【0062】
加算器25Dは、シフトレジスタ25Eから供給される、1クロック前における当該加算器25Dからの出力信号である遅延値d5と加算値d3とを加算して加算値d4を生成し、これをシフトレジスタ25Eへ供給する。
【0063】
シフトレジスタ25Eは、加算値d4を1クロック分遅延させることにより、遅延値d5を生成し、これを加算器25Fへ供給する。
【0064】
またシフトレジスタ25Eは、後述する平均周波数補正値DFAが供給された場合、当該平均周波数補正値DFAを保持すると共に、当該平均周波数補正値DFAを遅延値d5として加算器25Fに供給するようになされている。
【0065】
加算器25Fは、乗算器25Aから供給される乗算値d1とシフトレジスタ25Eから供給される遅延値d5とを加算することにより、タイミング差νkを算出する。
【0066】
このタイミング差νkは、位相誤差Δτkを基に、係数α及び係数ρによって定められるカットオフ周波数以下の低域成分のみを抽出したものであり、インターポレータ22においてサンプリングクロックの位相を変化させる際における変化量を表している。
【0067】
このようにLPF回路25は、位相誤差Δτkを基にタイミング差νkを算出し、これをNCO回路26へ送出するようになされている。
【0068】
(2)周波数誤差の検出及び補正
ところで位相同期部8は、全体として位相を同期させるためのPLL回路であるため、引き込み可能な周波数誤差の範囲、すなわちキャプチャレンジをできるだけ拡大することが望ましい。
【0069】
そこで位相同期部8には、図3に示したように、周波数誤差を検出するための周波数誤差検出回路33が設けられている。この周波数誤差検出回路33は、インターポレータ22から補間信号pkの供給を受け、当該補間信号pkを基にディジタル入力信号DIの周波数とNCO26における周波数との周波数誤差を検出するようになされている。
【0070】
なお、ここではBlu−ray Disc(登録商標)を前提とし、インターポレータ22から供給された補間信号pkは、当該インターポレータ22においてPR(1,x,1)のようなパーシャルレスポンス波形に等化されているものとする(ただしxは任意の実数)。
【0071】
(2−1)周波数誤差検出回路の構成
図7に示すように、周波数誤差検出回路33は、インターポレータ22から出力された補間信号pk(説明の都合上、以下これをクロック(k+3)における補間信号p(k+3)とする)を遅延部50のシフトレジスタ50A、ゼロクロス検出回路51及びパターンセレクタ53へ供給する。
【0072】
遅延部50は、5段のシフトレジスタ50A〜50Eが直列に接続されており、それぞれ補間信号p(k+3)を1クロックずつ遅延させることにより生成した補間信号p(k+2)〜y(k−2)をそれぞれパターンセレクタ53へ供給する。
【0073】
ゼロクロス検出回路51は、補間信号p(k+3)をゼロレベルと比較することにより正又は負のいずれの符号であるかを検出する。ちなみに、この時点ではサンプリングクロックが未だ目標位相に追従できていない可能性もあるため、このとき検出された符号は、当該補間信号p(k+3)を基に符号を仮判定した結果とも言える。
【0074】
ゼロクロス検出回路51は、検出された符号が正の時には値”+1”、また当該符号が負の時には値”−1”とするNRZ(Non Return Zero)の検出結果x(k+3)を生成し、これを遅延部51のシフトレジスタ51A及びパターンセレクタ53へ供給する。
【0075】
遅延部52は、遅延部50と同様、5段のシフトレジスタ52A〜52Eが直列に接続されており、それぞれ検出結果x(k+3)を1クロックずつ遅延させることにより生成した検出結果x(k+2)〜x(k−2)をそれぞれパターンセレクタ53へ供給する。
【0076】
パターンセレクタ53は、時間的に連続した6個の検出結果x(k+3)〜x(k−2)を時系列に配列した仮判定パターンを判定対称とし、特定パターン”+1、+1、+1、−1、−1、−1”又は”−1、−1、−1、+1、+1、+1”と一致した場合のみ、検出結果xにおける変化点(すなわち補間信号pkの符号の変化点)の近傍である検出結果x(k)及びx(k+1)と、このときの補間信号p(k)及びp(k+1)とを位相検出器54へ送出する。
【0077】
この場合、パターンセレクタ53においては、”+1”及び”−1”をそれぞれ3連続ずつさせたパターンを特定パターンとしていることから、検出結果xとして”+1”又は”−1”が2連続のみとなる部分、すなわち2Tが含まれる部分では、この特定パターンとは一致しないことになる。
【0078】
この結果、パターンセレクタ53は、補間信号pkの符号が変化する符号変化点のうち、最短波長である2Tによる符号変化点を除いた符号変化点のみを検出して位相検出器54へ送出することになる。
【0079】
これによりパターンセレクタ53は、最短波長でなり周波数が高いために正常な周波数誤差の検出が困難な2Tにおける符号変化点を除外することができ、後段において検出する周波数誤差の精度を低下させることを未然に防止することができる。
【0080】
位相検出器54は、次式に従って符号変化点の前後における補間信号p(k)同士を加算することにより位相誤差Δτkを算出し、後段の差分算出器55へ送出するようになされている。
【0081】
【数3】
【0082】
この場合、位相検出器54は補間信号p(k)の波形が符号変化点の付近においてほぼ線形であると見なすことができ、符号変化点の前後における補間信号p(k)の加算値(換言すれば、絶対値同士の差分値)が位相誤差の大きさとほぼ比例関係にあることを利用している。
【0083】
また位相検出器54は、(3)式に示したように、符号変化点以外では直前の位相誤差Δτ(k−1)を保持し、これを位相誤差Δτ(k)として出力するようになされている。これは、位相検出器54において、符号変化点以外では位相誤差Δτ(k)を直接算出することができないものの、位相誤差Δτ(k)が1クロック単位で大きく変化する可能性が極めて低いため、当該位相誤差Δτ(k)を直前の位相誤差Δτ(k−1)に近似し得ると共に、当該位相誤差Δτ(k)を”0”等の他の値とした場合よりも本来の値に近づけ得る点を考慮したためである。
【0084】
差分算出器55は、位相誤差Δτ(k)と1クロック前の位相誤差Δτ(k−1)との差分を算出する(すなわち1−Dの演算を行う)ことにより、当該位相誤差Δτ(k)の微分係数を求める。ここで一般的な性質として、位相誤差を微分することにより周波数誤差を得ることができるため、以下ではこの微分係数を周波数誤差Δf0(k)とする。差分算出器55は、このようにして得られた周波数誤差Δf0(k)を後段の不連続値除去器56へ送出する。
【0085】
ここで、実際の位相誤差と検出値(すなわち位相誤差Δτ(k))との関係を図8に実線で示し、合わせて周波数誤差Δf0(k)を波線で示す。この図8において、位相誤差Δτ(k)の連続部分(すなわち検出値が−1から+1の間となる部分)では、周波数誤差Δf0(k)の検出値がおよそ0〜0.5の範囲で連続的に変化しているものの、位相誤差Δτ(k)が逆相へ飛び越すタイミング(すなわち検出値が−1又は+1であるタイミング)では、周波数誤差Δf0(k)の検出値がその近傍とは不連続な負の値となっている。
【0086】
この場合、この不連続な負の値である周波数誤差Δf0(k)は、位相誤差Δτ(k)が不連続となった影響を受けており、正しい周波数誤差を表していない。このため、仮に周波数誤差検出回路33がこのときの周波数誤差Δf0(k)を後段の処理に用いると、位相同期部8(図3)は、全体として周波数誤差の吸収に時間を要したり、あるいは当該周波数誤差を正常に吸収できなくなってしまう可能性がある。
【0087】
そこで不連続値除去器56は、次式に示すように、周波数誤差Δf0(k)の絶対値が所定の閾値TH(例えば1)未満となる場合には、当該周波数誤差Δf0(k)を正常な値と見なしてそのまま用い、当該絶対値が当該閾値THを超えた場合には当該周波数誤差Δf(k)が不適切な値であると見なして値”0”に置き換えることにより、不連続値を除去した周波数誤差Δf(k)を生成し、これをスイッチ34(図3)及び移動平均算出器57へ送出する。
【0088】
【数4】
【0089】
移動平均算出器57は、周波数誤差Δf(k)の移動平均を算出することにより、当該周波数誤差Δf(k)を統計的に処理した平均周波数誤差Δfa(k)を生成し、これをスイッチ37(図3)へ送出する。
【0090】
このように周波数誤差検出回路33は、補間信号pkを基に位相誤差Δτ(k)を算出し、さらに当該位相誤差Δτ(k)の微分係数を基に周波数誤差Δf(k)及び平均周波数誤差Δfa(k)を生成するようになされている。
【0091】
(2−2)周波数誤差の補正
ところで位相同期部8は、タイミングマネージャ43の制御に基づいてスイッチ31、36、39及び42をそれぞれオン状態又はオフ状態に切り替えることにより、周波数誤差の補正を行うようになされている(詳しくは後述する)。
【0092】
(2−2−1)ループによる周波数誤差の補正
位相同期部8は、周波数誤差検出回路33から供給される周波数誤差Δf(k)を乗算器35へ供給する。乗算器35は、係数γ1が入力されており、当該周波数誤差Δf(k)に当該係数γ1を乗じることにより周波数補正値DFを生成し、これをスイッチ36へ供給する。
【0093】
ここで係数γ1は、周波数誤差Δf(k)の値と当該周波数誤差Δf(k)に応じた最適な周波数補正値DFとの対応関係を基に予め選定された係数であり、ループのゲインに相当するものである。
【0094】
位相同期部8は、スイッチ36がオン状態である場合、周波数補正値DFをLPF25の加算器25Cへ供給する。これに応じてLPF25は、この周波数補正値DFに基づいたタイミング差νkを算出し、これをNCO回路26へ送出する。
【0095】
このときLPF25は、周波数誤差Δf(k)に係数γ1を乗じることにより生成された周波数補正値DFを基に、この時点における当該周波数誤差Δf(k)を適切に補正し得るタイミング差νkを算出することができる。これに応じてNCO26は、当該周波数誤差Δf(k)を0に近づけさせるようなサンプリング位相μkを算出し、これをインターポレータ22へ供給する。
【0096】
また位相同期部8は、他のスイッチ31等をオフ状態に切り替えるようになされており、これによりインターポレータ22、周波数誤差検出回路33、乗算器35、LPF25及びNCO26によって構成される、周波数誤差Δf(k)に関する一次のループ(以下、これを周波数収束ループと呼ぶ)を形成し、スイッチ36がオン状態である間、当該周波数収束ループにおける一連の処理を繰り返す。
【0097】
このように位相同期部8は、スイッチ36がオン状態に切り替えられている場合、周波数誤差検出回路33から供給される周波数誤差Δf(k)を基に周波数補正値DFを算出し、当該周波数補正値DFに基づくタイミング差νkをNCO26に供給することにより周波数誤差Δf(k)を0に近づけ、この周波数収束ループにおける一連の処理を繰り返すことにより、当該周波数誤差Δf(k)を徐々に0に収束させていくようになされている。
【0098】
(2−2−2)初期値設定による周波数誤差の補正
一方、位相同期部8は、周波数誤差検出回路33から供給される平均周波数誤差Δfa(k)を乗算器38へ供給する。乗算器38は、係数γ0が入力されており、当該平均化周波数誤差Δf(k)に当該係数γ1を乗じることにより平均周波数補正値DFAを生成し、これをスイッチ36へ供給する。
【0099】
ここで係数γ0は、係数γ1と同様、平均周波数誤差Δfa(k)の値と当該平均周波数誤差Δfa(k)に応じた最適な平均周波数補正値DFAとの対応関係を基に予め選定された係数である。
【0100】
また平均周波数補正値DFAは、周波数誤差検出回路33において周波数誤差Δf(k)の移動平均として統計的に算出された平均周波数誤差Δfa(k)に基づく値であるため、1回の処理で周波数誤差Δf(k)を適切に補正し得る値となる。
【0101】
位相同期部8は、スイッチ39がオン状態である場合、平均周波数補正値DFAをLPF25のシフトレジスタ25Eへ供給する。また位相同期部8は、このときスイッチ31をオフ状態に切り替えるようになされており、これによりインターポレータ22、周波数誤差検出回路33、乗算器35、LPF25及びNCO26によって構成される、周波数誤差Δf(k)に関するループ(以下、これを周波数初期値ループと呼ぶ)を形成する。
【0102】
これに応じてLPF25は、この平均周波数補正値DFAに基づいたタイミング差νkを算出し、これをNCO回路26へ送出する。このときLPF25は、平均周波数誤差Δfa(k)に係数γ0を乗じることにより生成された平均周波数補正値DFAを基に、この時点における周波数誤差Δf(k)を1回の処理で適切に補正し得るタイミング差νkを算出することができる。
【0103】
すなわちLPF25は、いわゆる初期値に相当する平均周波数補正値DFAが与えられることにより、ループ処理の最初の段階で位相同期部8における周波数誤差をほぼ0に合わせ、いわゆる周波数リスタートを行い得るようなタイミング差νkをNCO26へ供給することができる。
【0104】
NCO26は、平均周波数補正値DAに基づいて生成されたタイミング差νkを基に、
サンプリング位相μkを生成し、これをインターポレータ22へ供給する。これに応じてインターポレータ22は、当該サンプリング位相μkを基にサンプリングクロックの周波数を補正することにより、1回の処理により当該サンプリングクロックと目標位相との周波数誤差をほぼ0に収束させる。
【0105】
このように位相同期部8は、スイッチ39がオン状態に切り替えられている場合、周波数誤差検出回路33から供給される平均周波数誤差Δfa(k)を基に平均周波数補正値DFAを算出し、当該平均周波数補正値DFAを用いて周波数初期値ループにより周波数誤差Δf(k)を1回の処理でほぼ0に収束させるようになされている。
【0106】
(2−3)位相誤差の補正
ところで位相同期部8は、周波数誤差を収束ループにより徐々に補正し、また当該周波数誤差を周波数初期値ループにより1回の処理でほぼ0に補正することに加え、位相誤差を1回の処理でほぼ0に補正し得るようにもなされている。
【0107】
実際上位相同期部8には、移動平均算出回路40が設けられており、位相誤差検出回路24から位相誤差Δτkが供給されるようになされている。
【0108】
移動平均算出回路40は、所定の計測期間における位相誤差Δτkの移動平均を算出することにより、複数の当該位相誤差Δτkを統計的に処理した値として平均位相誤差Δτakを生成し、これを乗算器41へ供給する。乗算器41は、係数γ2が入力されており、平均位相誤差Δτakに当該係数γ2を乗じることにより平均位相補正値DPAを算出し、これをスイッチ42へ供給する。
【0109】
ここで係数γ2は、平均位相誤差Δτakの値と当該平均位相誤差Δτakに応じた最適な平均位相補正値DPAとの対応関係を基に予め選定された係数であり、位相初期値ループのゲインに相当するものである。
【0110】
また平均位相補正値DPAは、移動平均算出回路40において位相誤差Δτkの移動平均として算出された平均位相誤差Δτakに基づく値であるため、1回の処理で位相誤差Δτkをほぼ0に収束させるよう当該位相誤差を補正する値となる。
【0111】
このため位相同期部8は、スイッチ42がオン状態に切り替えられている場合、位相同期部8における位相誤差を1回の処理でほぼ0に近づけ得る平均位相補正値DPAを初期値としてNCO回路26へ供給することができる。
【0112】
また位相同期部8は、このときスイッチ31をオフ状態に切り替えるようになされており、これによりインターポレータ22、PRイコライザ23、位相誤差検出器24、移動平均算出回路40、乗算器41及びNCO26によって構成される、位相誤差Δτkに関するループ(以下、これを位相初期値ループと呼ぶ)を形成する。
【0113】
ところでNCO26は、次式に従いタイミング差νkを基にサンプリング位相μkを算出している。ただしεはインターポレータ22におけるオーバーサンプリングレートを表す。
【0114】
【数5】
【0115】
この位相初期値ループの場合、NCO26は、(5)式におけるサンプリング位相μkを次式によって与えられるサンプリング位相μkに置き換えることになる。
【0116】
【数6】
【0117】
このことは、位相同期部8において、平均位相補正値DPAを初期値とし、最初に位相誤差Δτkをほぼ0に補正してから以降の位相同期処理を行う、いわゆるゼロ位相リスタートを行うことになる。
【0118】
このように位相同期部8は、スイッチ42がオン状態に切り替えられると共にスイッチ31がオフ状態に切り替えられている場合、移動平均算出回路40から供給される平均位相誤差Δτakを基に平均位相補正値DPAを算出し、当該平均位相補正値DPAを初期値として用い、位相初期値ループにより位相誤差Δτkを1回の処理でほぼ0に補正させるようになされている。
【0119】
(2−4)タイミングの制御
ところで位相同期部8は、タイミングマネージャ43によってスイッチ31、36、39及び42を統括的に制御することにより、図2に示した位相収束ループ、上述した周波数収束ループ、周波数初期値ループ又は位相初期値ループのいずれかに切り替えるようになされている。
【0120】
実際上タイミングマネージャ43は、スイッチ31を制御して位相同期部8全体を位相収束ループに切り替えるための位相収束ループ切替信号EP、スイッチ36を制御して位相同期部8全体を周波数収束ループに切り替えるための周波数収束ループ切替信号EF、スイッチ39を制御して位相同期部8全体を周波数初期値ループに切り替えるための周波数初期値ループ切替信号EFR、及びスイッチ42を制御して位相同期部8全体を位相初期値ループに切り替えるための位相初期値ループ切替信号EPRを出力し得るようになされている。
【0121】
さらにタイミングマネージャ43は、図9(A)〜(D)に示すように、位相収束ループ切替信号EP、周波数収束ループ切替信号EF、周波数初期値ループ切替信号EFR及び位相初期値ループ切替信号EPRをそれぞれオン状態又はオフ状態に切り替えるタイミングが予め設定されたモード1〜モード4の4種類の動作モードを有しており、制御部2(図1)から供給されるモード制御信号CMに応じて、いずれかの動作モードに切り替えるようになされている。
【0122】
ちなみに図9(A)〜(D)では、各信号が”H”レベルのときに該当するスイッチをオン状態に切り替え、反対に各信号が”L”レベルのときに該当するスイッチをオフ状態に切り替えることを表している。
【0123】
タイミングマネージャ43は、モード1に切り替えられた場合、図9(A)に示したように、最初のクロックk0の時点から位相同期部8を位相収束ループに切り替え、位相誤差を徐々に収束させる。
【0124】
またタイミングマネージャ43は、モード2に切り替えられた場合、図9(B)に示したように、最初のクロックk0の時点ではいずれのループにも切り替えず、クロックk1の時点で位相同期部8を周波数初期値ループに切り替え、その直後のクロックk2の時点で位相収束ループに切り替える。これにより位相同期部8は、平均周波数誤差Δfa(k)を基に1回の処理で周波数誤差をほぼ0に補正させ、その後位相誤差を徐々に収束させることができる。
【0125】
またタイミングマネージャ43は、モード3に切り替えられた場合、図9(C)に示したように、最初のクロックk0の時点で位相同期部8を周波数収束ループに切り替え、しばらく経過した後のクロックk3の時点で位相収束ループに切り替える。これにより位相同期部8は、周波数誤差Δf(k)を基に周波数誤差を徐々に0に収束させ、その後位相誤差を徐々に0に収束させることができる。
【0126】
またタイミングマネージャ43は、モード4に切り替えられた場合、図9(D)に示したように、最初のクロックk0の時点で位相同期部8を周波数収束ループに切り替え、しばらく経過した後のクロックk4の時点で位相初期値ループに切り替え、さらにその直後のクロックk5の時点で位相収束ループに切り替える。これにより位相同期部8は、周波数誤差Δf(k)を基に周波数誤差を徐々に0に収束させると共に、位相誤差Δτkの移動平均である平均位相誤差Δτakを算出しておき、次に当該平均位相誤差Δτakを基に位相誤差を1回の処理でほぼ0に補正して、その後当該位相誤差を0近傍の値に維持することができる。
【0127】
このように位相同期部8は、制御部2から与えられるモード制御信号CMに基づいて動作モードを切り替えることにより、図9(A)〜(D)に示したタイミングに従いスイッチ31、36、39、42を制御して当該位相同期部8全体を位相収束ループ、周波数収束ループ、周波数初期値ループ又は位相初期値ループのいずれかに切り替えるようになされており、これにより周波数誤差及び位相誤差を高速且つ安定して0に収束させるようになされている。
【0128】
(3)動作及び効果
以上の構成において、光ディスク装置1の位相同期部8は、ディジタルPLL回路としての基本回路構成(図2)に加えて設けられた周波数誤差検出回路33(図3)により、補間信号pkにおける周波数誤差Δf(k)を算出する。
【0129】
このとき周波数誤差検出回路33は、差分算出器55において、位相検出器54(図7)から供給される位相誤差Δτ(k)とその前のクロックにおける位相誤差Δτ(k−1)との差分を算出することにより、当該位相誤差Δτ(k)の微分係数として周波数誤差Δf0(k)を求めることができるため、簡易な演算処理により精度良く当該周波数誤差Δf0(k)を得ることができる。
【0130】
また周波数誤差検出回路33は、位相検出器54において、符号変化点以外では直前の位相誤差Δτ(k−1)を位相誤差Δτ(k)として出力することにより、当該符号変化点以外で位相誤差Δτ(k)を「0」等の他の値にした場合に後段の差分算出器55において誤った周波数誤差を算出することを未然に防止することができる。
【0131】
また周波数誤差検出回路33は、パターンセレクタ53において特定パターン”+1、+1、+1、−1、−1、−1”又は”−1、−1、−1、+1、+1、+1”と一致した場合のみ、検出結果xの変化前後に相当する検出結果x(k)及びx(k+1)と、このときの補間信号p(k)及びp(k+1)とを位相検出器54へ送出するため、最短波長である2Tによる符号変化点(すなわち−1、+1、+1、−1又は+1、−1、−1、+1)を除いた符号変化点のみを検出して位相検出器54へ送出することができる。
【0132】
これにより周波数誤差検出回路33は、最短波長でなり周波数が高いために正常な周波数誤差Δf(k)の検出が困難な2Tにおける符号変化点を除外することができ、周波数誤差Δf(k)の検出精度の低下を未然に防止することができる。
【0133】
さらに周波数誤差検出回路33は、周波数誤差Δf0(k)に含まれる不連続な値(図8)、すなわち位相誤差Δτ(k)が不連続となった影響により不適切な周波数誤差Δf0(k)を不連続値除去器56によって除外し周波数誤差Δf(k)として後段へ送出することにより、当該周波数誤差Δf(k)の精度を高めることができる。
【0134】
一方、位相同期部8は、スイッチ36がオン状態に切り替えられている場合、周波数誤差検出回路33により検出された周波数誤差Δf(k)に対して係数γ1を乗じることにより、当該周波数誤差Δf(k)を補正するのに適した周波数補正値DFを算出することができる。
【0135】
このとき位相同期部8は、スイッチ36がオン状態に切り替えられている間、周波数補正値DFをLPF25の積分項に与えタイミング差νkをNCO26に供給して周波数誤差Δf(k)を0に近づける、といった周波数収束ループにおける一連の処理を繰り返すことにより、当該周波数誤差Δf(k)を徐々に0に収束させていくことができる。
【0136】
また位相同期部8は、スイッチ39がオン状態に切り替えられた場合、周波数誤差検出回路33により周波数誤差Δf(k)の移動平均として算出された平均周波数誤差Δfa(k)に対して係数γ0を乗じることにより、当該平均周波数誤差Δfa(k)を補正するのに適した平均周波数補正値DFAを算出し、これをLPF25に供給することができる。
【0137】
このとき位相同期部8は、周波数誤差検出回路33において、スイッチ39がオン状態に切り替えられるまでの所定計測期間に渡って周波数誤差Δf(k)の移動平均を算出することにより、周波数誤差Δf(k)を高精度化した値に相当する平均周波数誤差Δfa(k)を得ることができる。
【0138】
このため位相同期部8は、スイッチ39がオン状態に切り替えられたときに、平均周波数誤差Δfa(k)に基づく平均周波数補正値DFAを1回(1クロック)だけLPF25の積分項に与えることにより、このときの周波数誤差Δf(k)が高精度に反映されたタイミング差νkをNCO26に供給することができ、周波数初期値ループにおける一連の処理を1回のみ実行して周波数誤差Δf(k)をほぼ0に補正する、いわゆる周波数リスタートを実現できる。
【0139】
このように位相同期部8は、周波数収束ループ又は周波数初期値ループを形成し、周波数誤差Δf(k)に基づく周波数補正値DF又は平均周波数誤差Δfa(k)に基づく平均周波数補正値DFAをLPF25の積分項に加算することにより、当該周波数誤差Δf(k)を0に近づけるよう補正することができる。
【0140】
また位相同期部8は、位相初期値ループにおいて、周波数初期値ループと同様の処理を位相に関して実行することにより、位相誤差Δτkを高精度化した値に相当する平均位相誤差Δτakを算出し、これに係数γ2を乗じて平均位相補正値DPAを算出し、これをNCO26に供給して位相誤差Δτkを1回の処理でほぼ0に補正させることができる。
【0141】
さらに位相同期部8は、制御部2(図1)から供給されるモード制御信号CMに基づいてタイミングマネージャ43の動作モードをモード1〜モード4(図9(A)〜(D))に切り替え、当該動作モードに応じてスイッチ31、36、39及び42を制御することにより、当該モード制御信号CMが供給されるだけで、予め定められたタイミングで位相収束ループ、周波数収束ループ、周波数初期値ループ又は位相初期値ループに切り替えることができる。
【0142】
例えば位相同期部8は、モード1(図9(A))に切り替えられた場合、周波数誤差Δf(k)に関して一切補正することなく、基本回路構成(図2)のような位相収束ループのみにより位相誤差Δτkを徐々に収束させることになる。
【0143】
しかしながら位相同期部8は、例えば図10に波形を示すように、周波数誤差が比較的大きい場合(約2%)、位相収束ループのみでは約10000クロック経過後も位相誤差及び周波数誤差を吸収することができない。言い換えれば、位相同期部8では、ディジタル入力信号DIがキャプチャレンジを超えた状態となってしまう。
【0144】
これに対して位相同期部8は、モード3に切り替えられた場合、まず周波数収束ループにより周波数誤差を徐々に0に収束させた後、次に位相収束ループにより位相誤差を0に収束させることになる。
【0145】
位相同期部8は、このモード3では、例えば図11に波形を示すように、図10と同様に周波数誤差が比較的大きい場合、周波数収束ループによる一連の処理を開始した500クロック付近で周波数誤差Δfk(図中実線で示す)及び位相誤差Δτk(図中波線で示す)のいずれも大きく変動しているものの、約750クロック付近以降では周波数誤差Δfkが比較的小さい値にまとまり、また位相誤差Δτkがほぼ一定の値に収束していることから、周波数誤差Δfkをほぼ0に収束することができる。
【0146】
その後位相同期部8は、約1200クロック付近で位相収束ループに切り替えることにより、位相誤差Δτkを安定且つ高速にほぼ0に収束させることができる。
【0147】
すなわち位相同期部8は、ディジタル入力信号DIにおける周波数誤差が比較的大きい場合(約2%)でも、モード3のように周波数収束ループにより周波数誤差Δfkを0に収束させることができるので、モード0のときと比較してキャプチャレンジを拡大することができる。
【0148】
ちなみに図11では、位相誤差Δτkの「飛び越し」が生じたことにより、不連続点を除去する前の周波数誤差Δf0(k)(図中一点鎖線で示す)が±1を超え、いわゆるスパイク状の波形となっているものの、不連続点を除去した周波数誤差Δf(k)は±1の範囲内に収まっており、当該周波数誤差Δf0(k)から不連続点を除去して当該周波数誤差Δf(k)を生成することが有効であることも示されている。
【0149】
ここで、位相同期部8のモード1及びモード3において、ディジタル入力信号DIの周波数を様々に変化させた場合における、位相の同期を完了する(すなわち位相誤差をほぼ0に収束し終える)までのクロック数のシミュレーション結果を図12に示す。
【0150】
この図12に示されているように、位相同期部8は、周波数誤差に関する補正を行わないモード1において、周波数誤差が約±0.3%を超えると実質的に位相を同期できなくなってしまう、すなわちキャプチャレンジが約±0.3%であったものの、周波数誤差を0に収束させるよう補正するモード3において、周波数誤差が±3%以上の範囲であっても、当該周波数誤差を比較的少ないクロック数で収束できている、すなわちキャプチャレンジが約±3%以上(約10倍以上)に拡大されていることがわかる。
【0151】
そのうえ位相同期部8は、インターポレータ22において、(1)式に示した関数g(i)に基づいて算出したフィルタ係数h(0)〜h(n−1)をFIRフィルタの係数として用いることにより、ディジタル入力信号DIに対して高域成分を強調した補間信号pkを生成することができる。
【0152】
例えば位相同期部8は、仮に補間フィルタ係数算出部22A(図4)においてフィルタ係数h(0)〜h(n−1)として非特許文献1や非特許文献2等のようにSinc関数を用いた場合、インターポレータ22から出力される補間信号pkのアイパターンを測定した場合、図13に示すように、最短波長のアイパターンが十分に開いていない可能性が高い。
【0153】
このようにアイパターンが十分に開いていない場合、位相同期部では、後段のゼロクロス検出等において誤った検出結果を得ることになってしまう。
【0154】
これに対して位相同期部8は、インターポレータ22において、関数g(i)に基づいて算出したフィルタ係数h(0)〜h(n−1)をFIRフィルタの係数として用いることにより、ディジタル入力信号DIにおける高域成分を強調することができるので、図14に示すように、補間信号pkにおけるアイパターンが十分に開いた状態とすることができ、これにより後段のゼロクロス検出等において検出精度を向上させることができる。
【0155】
以上の構成によれば、光ディスク装置1の位相同期部8は、周波数誤差検出回路33により、位相誤差Δτ(k)と1クロック前の位相誤差Δτ(k−1)との差分を基に、簡易な演算処理により精度良く補間信号pkにおける周波数誤差Δf(k)を算出し、周波数収束ループ又は周波数初期値ループを形成して周波数誤差Δf(k)に基づく周波数補正値DF又は平均周波数誤差Δfa(k)に基づく平均周波数補正値DFAをLPF25の積分項に加算することにより、当該位相同期部8における周波数誤差Δf(k)を高速に且つ安定してほぼ0に収束させることができる。
【0156】
(4)他の実施の形態
なお上述した実施の形態においては、ディジタルPLL回路を形成する位相同期部8に本発明を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、アナログ/ディジタル混在のPLL回路に対して本発明を適用するようにしても良い。
【0157】
例えば図2との対応部分に同一符号を付した図15に基本回路構成を示すように、位相同期部60は、発振器21、インターポレータ22及びNCO26に代えて、ディジタル/アナログ(D/A)変換器61及びVCO(Voltage Controlled Oscillator)62が設けられている。
【0158】
この場合、位相同期部60は、実際には図3との対応部分に同一符号を付した図16のような回路構成を有する。この位相同期部60においても、周波数誤差検出回路33は、上述した位相同期部8における周波数誤差検出回路33と同様、位相誤差Δτkを基に周波数誤差Δf(k)及び平均周波数誤差Δfa(k)を検出することができる。これに応じて位相同期部60は、当該周波数誤差Δf(k)及び平均周波数誤差Δfa(k)を基に、周波数収束ループ又は周波数初期値ループにより周波数誤差をほぼ0に収束させることができる。
【0159】
また上述した実施の形態においては、周波数誤差検出回路33の位相検出器54(図9)において、(3)式に示したように、符号変化点以外では直前の位相誤差Δτ(k−1)を位相誤差Δτ(k)として出力するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば符号変化点以外では所定の定数(例えば0.2等)を出力するようにしたり、或いは直前の位相誤差Δτ(k−1)等を基に予測した値とする等しても良い。
【0160】
さらに上述した実施の形態においては、周波数誤差検出回路33のパターンセレクタ53(図9)において特定パターン”+1、+1、+1、−1、−1、−1”又は”−1、−1、−1、+1、+1、+1”と一致した場合のみ、検出結果xの変化点である検出結果x(k)及びx(k+1)と、このときの補間信号p(k)及びp(k+1)とを位相検出器54へ送出することにより、最短波長である2Tによる符号変化点を除外するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、他の特定パターンを用いて他の記録マークによる符号変化点を除外するようにしても良い。
【0161】
また、例えば当該2Tによる符号変化点においても周波数誤差を精度良く検出できることが判明している場合に、当該パターンセレクタ53を設けないようにしても良い。
【0162】
さらに上述した実施の形態においては、不連続値除去器56において周波数誤差Δf0(k)における不連続値を除去する際、閾値TH(例えば+1)を用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該閾値THを0以外の種々の値としたり、或いは当該不連続値除去器56をヒステリシスコンパレータによって構成するようにしても良い。
【0163】
或いは、当該不連続値除去器56を省略するようにしても良い。この場合、周波数誤差Δf(k)の精度を低下させることになるものの、周波数誤差検出回路33の構成を簡易化することができる。
【0164】
さらに上述した実施の形態においては、タイミングマネージャ43が動作モードとしてモード1〜モード4の4種類のいずれかに切り替えるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、位相収束ループ切替信号EP、周波数収束ループ切替信号EF、周波数初期値ループ切替信号EFR及び位相初期値ループ切替信号EPRのいずれか1つがオン状態となり、或いは全てがオフ状態となるようにして適宜組み合わせた他の動作モードに切り替えるようにしても良い。この場合、モードの数は1以上の任意の数とすれば良く、また各切替信号をオン状態又はオフ状態に切り替えるタイミングについては、シミュレーションや実験等の結果に基づき適宜定めるようにすれば良い。
【0165】
さらにこの場合、例えば光ディスク100の種類(例えば記録層の数やレーザ光の透過率・反射率の違い等)毎にそれぞれ最適な動作モードを予め選定しておき、実際に光ディスク装置1に装填された光ディスク100の種類を判別し、その種類に応じて当該動作モードを切り替える等しても良い。
【0166】
さらに上述した実施の形態においては、位相同期部8において、乗算器35及びスイッチ36を用いて周波数誤差Δf(k)を基に当該周波数誤差Δf(k)を徐々に0に収束させる周波数収束ループと、乗算器38及びスイッチ39を用いて平均周波数誤差Δfa(k)を基に周波数誤差Δf(k)を1回でほぼ0に補正する周波数初期値ループの2系統のループを設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、周波数収束ループ又は周波数初期値ループのいずれか一方のみを設けるようにしても良い。
【0167】
さらに上述した実施の形態においては、位相同期部8に対して移動平均算出回路40、乗算器41及びスイッチ42により位相初期値ループを設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該移動平均算出回路40、当該乗算器41及び当該スイッチ42を省略して当該位相初期値ループを設けないようにしても良い。
【0168】
さらに上述した実施の形態においては、周波数誤差検出回路33の移動平均算出器57において周波数誤差Δf(k)の移動平均を算出することにより平均周波数誤差Δfa(k)を生成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば周波数誤差Δf(k)を2乗した値の加算平均値の平方根等、複数の当該周波数誤差Δf(k)を基に統計的に算出した値を当該平均周波数誤差Δfa(k)とするようにしても良い。また位相同期部8の移動平均算出器40についても同様である。
【0169】
さらに上述した実施の形態においては、インターポレータ22の補間フィルタ係数算出部22Aにおいて、制御部2からの係数制御信号CCを基に、関数g(i)を用いて係数h(0)〜h(n−1)を生成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば当該関数g(i)に代わる、種々の周波数特性に対応した複数種類の関数を予め用意しておき、制御部2から光ディスク100の種類等に応じて関数を切り替えるような係数制御信号CCを送出し、種々の周波数特性が得られるような係数h(0)〜h(n−1)を生成するようにしても良い。
【0170】
この場合、制御部2からインターポレータ22の補間フィルタ係数算出部22Aに対して、係数制御信号CCを送出する代わりに関数g(i)又はこれに代わる他の関数を演算式等の形式で直接供給するようにしても良い。
【0171】
さらには、例えば制御部2から補間フィルタ係数算出部22Aに対して関数g(i)を用いないような係数制御信号CCを送出し、或いは補間フィルタ係数算出部22Aが制御部2から係数制御信号CCを取得しないようにし、当該補間フィルタ係数算出部22Aにおいて高域成分を強調しないような係数h(0)〜h(n−1)を生成するようにしても良い。これにより、後段において周波数誤差Δf(k)の検出精度が低下するものの、当該インターポレータ22における演算処理量を削減することができる。
【0172】
さらに上述した実施の形態においては、光ディスク装置1において光ディスク100から読み出した再生RF信号SRF(図1)の位相を同期するための位相同期部8に本発明を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば磁気ディスク装置の磁気ディスクから読み出した再生RF信号の位相を同期するための位相同期部に本発明を適用するようにしても良い。この場合、光記録と磁気記録との違いに応じて、PR等化や記録マーク長が異なることを考慮してインターポレータにおける広域強調特性やパターンセレクタにおける除外するパターン、或いはPRイコライザにおける補正特性等を適宜変更すればよい。
【0173】
さらに上述した実施の形態においては、光ディスク装置1において光ディスク100から読み出した再生RF信号SRF(図1)の位相を同期するための位相同期部8に本発明を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の位相同期回路に本発明を適用するようにしても良い。
【0174】
さらに上述した実施の形態においては、図3に示した位相同期部8をハードウェアによって構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば図3におけるアナログ/ディジタル変換器20及び発振器21以外の各回路をソフトウェアにより構成するようにしても良い。
【0175】
この場合、具体的にはDSP(Digital Signal Processor)に所定の位相同期プログラムを実行させる等すれば良く、当該位相同期プログラムの格納媒体としては、制御部2の記憶部(図示せず)に予め記憶させておいたり、フレキシブルディスクやメモリースティック(ソニー株式会社の登録商標)等の外部記憶媒体としても良い。また、当該位相同期プログラムを外部記憶媒体から内部の記憶部にインストールするようにしても良く、このときUSB(Universal Serial Bus)やEthernet(登録商標)等の有線方式の通信ケーブル、或いはIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g等の無線LAN(Local Area Network)を介するようにしても良い。
【0176】
さらに上述した実施の形態においては、位相誤差検出手段としてのゼロクロス検出回路51及び位相検出器54と、周波数誤差検出手段としての差分算出器55と、周波数補正手段としての乗算器35、乗算器38とによって同期装置としての位相同期部8を構成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の回路構成でなる位相誤差検出手段と、周波数誤差検出手段と、周波数補正手段とによって同期装置を構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明は、種々のPLL回路でも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】本発明の一実施形態による光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図2】位相同期部の基本回路構成を示すブロック図である。
【図3】位相同期部の詳細な回路構成を示すブロック図である。
【図4】インターポレータの回路構成を示すブロック図である。
【図5】補間フィルタの周波数特性を示す略線図である。
【図6】インターポレータのタップ係数を示す略線図である。
【図7】周波数誤差検出回路の構成を示すブロック図である。
【図8】位相誤差と周波数誤差との関係を示す略線図である。
【図9】各動作モードにおける切替スイッチの制御タイミングを示すタイミングチャートである。
【図10】モード1におけるシミュレーション結果を示す略線図である。
【図11】モード3におけるシミュレーション結果を示す略線図である。
【図12】位相同期に要するクロック数の説明に供する略線図である。
【図13】補間信号のアイパターンを示す略線図である。
【図14】高周波成分を強調した補間信号のアイパターンを示す略線図である。
【図15】アナログ/ディジタル混在による位相同期部の基本回路構成を示すブロック図である。
【図16】アナログ/ディジタル混在による位相同期部の詳細な回路構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0179】
1……光ディスク装置、2……制御部、8、60……位相同期部、22……インターポレータ、22A……補間フィルタ係数算出部、24……位相誤差検出器、25……LPF、26……NCO、31、36、39、42……スイッチ、33……周波数誤差検出回路、35、38、41……乗算器、40……移動平均算出回路、43……タイミングマネージャ、50、52……遅延部、51……ゼロクロス検出回路、53……パターンセレクタ、54……位相検出器、55……差分算出器、56……不連続値除去器、57……移動平均算出器、SI……ディジタル入力信号、pk……補間信号、yk……波形等化信号、Δτk……位相誤差信号、νk……タイミング差、μk……サンプリング位相、h(0)〜h(n−1)……フィルタ係数、CC……係数制御信号、Δf0(k)、Δf(k)……周波数誤差、Δfa(k)……平均周波数誤差、DF……周波数補正値、DFA……平均周波数補正値、Δτak……平均位相誤差、DPA……平均位相補正値、γ0、γ1、γ2……係数、CM……モード制御信号。
【技術分野】
【0001】
本発明は同期装置、同期方法及び同期プログラム並びにデータ再生装置に関し、例えば光ディスク装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスク装置においては、例えばBlu−ray Disc(登録商標)方式やDVD(Digital Versatile Disc)方式等の種々の記録方式に従い、光ディスクに対してデータを記録し、また当該データを読み出して再生するようになされたものが広く普及している。
【0003】
この光ディスク装置では、例えば光ディスクからデータを読み出す際、当該光ディスクにレーザ光を照射してその反射光を基に再生RF(Radio Frequency)信号を生成し、当該再生RF信号をサンプリングしてそのサンプル値を基に離散的な符号値に変換し、最終的に所望のデータを再生するようになされている。
【0004】
ここで光ディスク装置は、再生RF信号をサンプリングする際、PLL(Phase Locked Loop、位相同期ループ)回路によってサンプリングのタイミング(すなわち位相)を本来のサンプリングすべきタイミング(以下、これを目標位相と呼ぶ)に極力近づけることにより、所望のデータを精度良く再生し得るようになされている。
【0005】
また光ディスク装置の中には、一次の位相同期回路と二次の位相同期回路とを切り替えることにより、PLL回路による位相の同期(いわゆる引き込み)を高速化するようになされたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−107352号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで近年の光ディスク装置では、光ディスクに対するデータの書込速度及び当該光ディスクからの読出速度が高速化されているものの、PLL回路の動作速度に限界があるため、当該PLL回路内にパイプラインディレイが用いられることがある。
【0007】
この場合、光ディスク装置は、このパイプラインディレイによりPLL回路のループ内に遅延(いわゆるループディレイ)を生じさせることになり、さらにこの遅延が長引いた場合、位相誤差のみでなく周波数誤差を生じさせる可能性がある。
【0008】
しかしながら、かかる構成の光ディスク装置では、PLL回路において位相の同期を高速化することはできるものの、引き込み可能な周波数誤差の範囲、すなわちキャプチャレンジを広げることはできない。
【0009】
このためこの光ディスク装置では、周波数誤差を十分に吸収することができず引き込みに時間を要してしまい、特に比較的長いループディレイが生じていた場合には破綻してしまう可能性もあるという問題があった。
【0010】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、周波数誤差の引込範囲を広げて位相同期の能力を向上させ得る同期装置、同期方法及び同期プログラム、並びに周波数誤差の引込範囲を広げて位相同期の能力を向上させることによりデータの再生精度を向上させ得るデータ再生装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため本発明の同期装置、同期方法及び同期プログラムにおいては、入力データをサンプリングする際のサンプリングクロックをPLL(Phase Locked Loop)回路によって制御することにより、当該入力データにおける本来サンプリングすべき目標位相に対して当該サンプリングクロックの位相を同期させる際に、入力データをサンプリングクロックのタイミングでサンプリングしたサンプリングデータとサンプリングクロックとから位相誤差を検出し、位相誤差の検出結果における微分係数を基に周波数誤差を検出し、検出した周波数誤差を基に算出した周波数補正値をPLL回路におけるループフィルタの積分項に加算することにより当該周波数誤差を0に近づけるようサンプリングクロックの周波数を補正するようにした。
【0012】
これにより周波数誤差を精度良く検出することができ、また当該周波数誤差をPLL回路におけるループフィルタに反映させることにより当該周波数誤差を直接的に補正することができる。
【0013】
また本発明のデータ再生装置においては、記録媒体から読み出した読出データをサンプリングする際のサンプリングクロックをPLL回路によって制御することにより、当該読出データにおける本来サンプリングすべき目標位相に対して当該サンプリングクロックの位相を同期させてデータを再生するデータ再生装置であって、記録媒体にアクセスすることにより読出データを生成する読出データ生成手段と、読出データをサンプリングクロックのタイミングでサンプリングしたサンプリングデータとサンプリングクロックとから位相誤差を検出する位相誤差検出手段と、位相誤差の検出結果における微分係数を基に周波数誤差を検出する周波数誤差検出手段と、検出した周波数誤差を基に算出した周波数補正値をPLL回路におけるループフィルタの積分項に加算することにより当該周波数誤差を0に近づけるようサンプリングクロックの周波数を補正する周波数補正手段と、サンプリングデータに所定の信号処理を施すことによりデータを再生する再生処理手段とを設けるようにした。
【0014】
これにより周波数誤差を精度良く検出することができ、また当該周波数誤差をPLL回路におけるループフィルタに反映させることにより当該周波数誤差を直接的に補正することができ、結果的にデータの再生精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、周波数誤差を精度良く検出することができ、また当該周波数誤差をPLL回路におけるループフィルタに反映させることにより当該周波数誤差を直接的に補正することができるので、かくして周波数誤差の引込範囲を広げて位相同期の能力を向上させ得る同期装置、同期方法及び同期プログラムを実現できる。
【0016】
また本発明によれば、周波数誤差を精度良く検出することができ、また当該周波数誤差をPLL回路におけるループフィルタに反映させることにより当該周波数誤差を直接的に補正することができるので、かくして周波数誤差の引込範囲を広げて位相同期の能力を向上させることによりデータの再生精度を向上させ得るデータ再生装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0018】
(1)光ディスク装置の構成
(1−1)光ディスク装置の全体構成
図1において、光ディスク装置1は制御部2によって統括制御されており、全体としてBlu−ray Disc(登録商標)方式の光ディスク100に対して記録データに基づいたデータ列を記録し、また当該光ディスク100から当該データ列を読み出して再生データを生成するようになされている。
【0019】
制御部2は図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラム等の各種プログラムを読み出し、これをRAM(Random Access Memory)に展開して実行することにより、光ディスク100に対するデータの記録や再生を制御するようになされている。
【0020】
光ディスク装置1は、光ディスク100に対してデータを記録する場合、外部から入力された記録データに対して変調回路3によって所定の変調処理を施すことにより変調データDMを生成し、これを記録制御回路4へ供給する。
【0021】
記録制御回路4は、光ピックアップ5を制御し変調データDMに応じた光ビームを当該光ピックアップ5から光ディスク100の信号記録層に照射させることにより、記録データに応じたパターンでなるピット列を当該光ディスク100に形成する。
【0022】
また光ディスク装置1は、光ディスク100からデータを再生する際、制御部2による制御のもとで光ピックアップ5から当該光ディスク100にレーザ光を照射し、その反射光を検出して光電変換することにより再生RF信号SRFを生成し、これをアンプ6によって増幅し、さらにAGC(Auto Gain Control)回路7により信号レベルを調整した後、これを位相同期部8へ供給する。なお、以下では、位相同期部8へ供給される再生RF信号SRFを入力信号SIと呼ぶ。
【0023】
位相同期部8は、入力信号SIとサンプリングクロックとのタイミング調整や補間処理等を行うITR(interpolated Timing Recovery)回路を構成しており、PLL(Phase Locked Loop)回路9により当該入力信号SIにおける本来サンプリングすべき目標位相に対して当該サンプリングクロックの位相を同期させると共に、PR(Partial Response)等化器10による信号波形の整形を行う。
【0024】
また位相同期部8は、AGC回路7へゲインのフィードバック制御用の信号を送出すると共に、等化波形信号yk(ただしkはクロックを表す)を最尤復号器11へ出力する。
【0025】
最尤復号器11は、位相同期部8から供給された等化波形信号ykを基に最尤(ML:Maximum Likelihood)復号処理を行い、その結果得られた復号データを復調回路12へ供給する。
【0026】
復調回路12は、最尤復号器11から供給された復号データに対して所定の復調処理等を施すことにより再生データを生成する。
【0027】
このように光ディスク装置1は、光ディスク100から読み出した再生RF信号SRFを基に、位相同期部8においてPLL回路9による位相の同期を行うと共にPR等化回路10により波形の整形を行い、さらに最尤復号処理や復調処理を施すことにより再生データを生成するようになされている。
【0028】
(1−2)位相同期部の基本回路構成
ところで位相同期部8は、基本的には図2に示すような回路構成を有しており、全体としてディジタルのPLLを用いたITR回路を構成している。この位相同期部8は、入力信号SIに対してタイミング調整等の処理を行うことにより、後段の復調回路12(図1)において本来のサンプリングタイミングにおける再生データを生成させ得るようになされている。
【0029】
ちなみにITR回路については、非特許文献1や非特許文献2等に基本理論が解説されている。またこのITRを利用した光ディスク装置として、本願発明と同一の出願人による出願がなされている(例えば特許文献2)。
【0030】
【非特許文献1】Floyd M. Gardner,“Interpolation in Digital Modems-Part I: Fundamentals” IEEE TRANSACTIONS,VOL.41, NO.3,MARCH 1993
【非特許文献2】Lars Erup,“Interpolation in Digital Modems-Part II: Implementation and Performance” IEEE TRANSACTIONS, VOL.41, NO.6,JUNE 1993
【特許文献2】特開2005−108295公報
【0031】
位相同期部8のA/D(Analog/Digital)変換器20は、発振器21から供給される所定周期のクロック信号CLKに合わせて、アナログの入力信号SIを取り込んでアナログディジタル変換することによりディジタル入力信号DIを生成し、これをインターポレータ22へ順次供給する。
【0032】
インターポレータ22は、基本動作として、NCO(Number Controlled Oscillator)回路26から供給されるサンプリング位相μk(詳しくは後述する)に基づき、ディジタル入力信号DIを補間することにより補間信号pkを生成し、これをPR等化回路10(図1)と対応するPRイコライザ23へ送出するようになされている。
【0033】
PRイコライザ23は、補間信号pkに対してPR等化処理を施すことにより、符号間干渉を前提とした上でこの時点のサンプリングクロックにおける補間信号pkの値がほぼ整数比となるように波形を整形して等化波形信号ykを生成し、当該等化波形信号ykを位相誤差検出器24へ送出する。
【0034】
位相誤差検出器24は、等化波形信号ykを基に、所定の目標位相と現位相との位相誤差に応じて位相誤差信号Δτkを検出し、これをLPF(Low Pass Filter)回路25へ送出する。
【0035】
LPF回路25は、制御工学的に2次の制御ループを構成してサンプリング位相を更新するためのタイミング差を算出する回路であり、位相誤差信号Δτkの低域成分を抽出することによりタイミング差νkを算出し、これをNCO回路26へ送出する。
【0036】
NCO回路26は、アナログのPLL回路におけるVCO(Voltage Controlled Oscillator)に相当するものであり、タイミング差νkに基づいてサンプリング位相μkを生成し、これをインターポレータ22へ供給する。これに応じてインターポレータ22は、新たに供給されたサンプリング位相μkを基に、入力信号SIに対するサンプリングクロックの位相を変化させる。
【0037】
このように位相同期部8は、インターポレータ10、PR等化部11、位相誤差検出器12、LPF回路13、及びNCO回路14によってディジタルPLL回路を構成しており(以下、これを位相収束ループと呼ぶ)、現位相と目標位相との位相誤差を検出して当該位相誤差を縮めるようサンプリングクロックの位相を変化させるといった一連のループ処理を繰り返すことにより、当該現位相を当該目標位相に徐々に近づけ、当該位相誤差を収束させていくようになされている。
【0038】
(1−3)位相同期部の実際の回路構成
ところで位相同期部8は、実際には、図2との対応部分に同一符号を付して示す図3のような回路構成を有している。
【0039】
この図3に示すように、位相同期部8には、図2に示した基本回路構成と比較して、位相誤差検出器24とLPF回路25との間にスイッチ31が設けられ、また周波数誤差検出回路33やタイミングマネージャ43等が設けられている(詳しくは後述する)。
【0040】
(1−3−1)インターポレータの構成
インターポレータ22は、図4に示すような回路構成を有しており、全体としてn(nは整数)段のFIR(Finite Impulse Response)フィルタによって構成されている。
【0041】
実際上インターポレータ22は、ディジタル入力信号DIを(n−1)個のシフトレジスタ22B1〜22B(n−1)によって順次シフトしていくことにより、1クロック前のディジタル入力信号DI(n−1)から(n−1)クロック前のディジタル入力信号DI(1)までをそれぞれ取り込んで保持(ラッチ)する。
【0042】
そのうえインターポレータ22は、A/D変換器20から供給されたディジタル入力信号DI(説明の都合上、これをディジタル入力信号DI(n−1)とする)及びシフトレジスタ22B1〜22B(n−1)によってそれぞれ遅延されたディジタル入力信号DI(n−2)〜DI(0)をそれぞれ乗算器22C1〜22Cnに供給する。
【0043】
これに加えてインターポレータ22は、補間フィルタ係数算出部22Aにおいてサンプリング位相μkを用いた所定の演算処理によりn個のフィルタ係数h(0)〜h(n−1)を算出し(詳しくは後述する)、これらをそれぞれ乗算器22C1〜22Cnに供給する。
【0044】
インターポレータ22は、乗算器22C1〜22Cnによりディジタル入力信号DI(n−1)〜DI(0)にフィルタ係数h(0)〜h(n−1)をそれぞれ乗じ、これらを加算器22Dによって全て加算することにより、補間信号pk(kはクロックを表す)を生成する。
【0045】
このようにインターポレータ22は、ディジタル入力信号DIをFIRフィルタにより遅延させると共に、サンプリング位相μkを用いて算出したフィルタ係数h(0)〜h(n−1)をFIRフィルタに適用することにより、補間信号pkを生成するようになされている。
【0046】
ところで光ディスク装置1(図1)では、光ディスク100により反射されたレーザ光の光路における光学的特性やアンプ6等における周波数特性等の影響により、再生RF信号SRFの高域成分が劣化されている可能性がある。この場合、位相同期部8では、インターポレータ22に供給されるディジタル入力信号DIも高域成分が劣化されることになるため、後段の位相誤差検出器24等において位相を検出する際の検出性能が劣化してしまう。
【0047】
そこでインターポレータ22は、補間フィルタ係数算出部22Aにおいて、高域成分を強調するフィルタ係数h(0)〜h(n−1)を算出し得るよう予め選定された係数制御信号CCを制御部2(図1)から取得するようになされている。
【0048】
一般に、Blu−ray Disc(登録商標)方式のような光記録の場合、最も高い周波数となる、すなわち最短波長となる2Tの周波数は、チャンネル周波数の1/4に相当する。
【0049】
そこで、1/4チャンネル周波数を強調するような特性を有するべく、次式のような周波数空間での関数を仮定する。
【0050】
【数1】
【0051】
ただし、インターポレータ22のタップ数をn、時間分解能をMとする。またディジタル演算を前提とした離散周波数となるため、周波数を整数iで表すものとする。
【0052】
この関数G(i)において、時間分解能Mを64、タップ数nを32としたときのシミュレーションによる波形の一部を図5に示す。この図5に示した波形は、チャンネル周波数iを32とした場合に相当しており、またタップ数n=32の1/4であるタップ数n=8において極大値となっている。すなわち、この関数G(i)が1/4チャンネル周波数を強調する特性を有していることが示された。
【0053】
次に、この関数G(i)に対して逆FFT(Fast Fourier Transform)処理を施すことにより得られる関数g(i)の波形を図6に示す。この場合、時間分解能Mが64、タップ数nが32であるため、64×32=2048[個]の演算結果を得ることができる。このときの演算結果は、インターポレータ22のフィルタ係数hとして用いることができる。
【0054】
実際上、制御部2(図1)は、この関数g(i)を予め所定の記憶手段により記憶しており、当該関数g(i)を示す係数制御信号CCをインターポレータ22(図4)の補間フィルタ係数算出部22Aへ供給するようになされている。
【0055】
これに応じてインターポレータ22の補間フィルタ係数算出部22Aは、制御部2から供給される係数制御信号CCに従い、NCO回路26から供給されるサンプリング位相μkを用いて、次式のようにフィルタ係関数g(i)及び数h(0)〜h(n−1)を算出する。
【0056】
【数2】
ただしjはタップ番号を示し、0≦j≦n−1を満たす整数である。
【0057】
その後インターポレータ22は、フィルタ係数h(0)〜h(n−1)をFIRフィルタの係数(すなわちタップ係数)として用いることにより、ディジタル入力信号DIに対して補間を行うと共に高域成分を強調した補間信号pkを生成するようになされている。
【0058】
このようにインターポレータ22は、目標とする周波数特性を設定し、当該周波数特性に対して逆FFT処理を施すことにより周波数軸から時間軸への変換を行い、その変換結果を基にFIRフィルタのフィルタ係数を算出して当該FIRフィルタに適用するようになされている。
【0059】
(1−3−2)LPFの構成
次に、LPF回路25(図3)の構成について説明する。LPF回路25は、まず位相誤差検出器24から供給された位相誤差Δτkを乗算器25A及び25Bへ送出する。
【0060】
乗算器25Aは、位相誤差Δτkに所定の係数αを乗じて乗算値d1を生成し、これを加算器25Fへ供給する。また乗算器25Bは、位相誤差Δτkに所定の係数ρを乗じて乗算値d2を生成し、これを加算器25Cへ供給する。
【0061】
加算器25Cは、後述する周波数補正値DFと乗算値d2とを加算することにより加算値d3を生成し、これを加算器25Dへ供給する。
【0062】
加算器25Dは、シフトレジスタ25Eから供給される、1クロック前における当該加算器25Dからの出力信号である遅延値d5と加算値d3とを加算して加算値d4を生成し、これをシフトレジスタ25Eへ供給する。
【0063】
シフトレジスタ25Eは、加算値d4を1クロック分遅延させることにより、遅延値d5を生成し、これを加算器25Fへ供給する。
【0064】
またシフトレジスタ25Eは、後述する平均周波数補正値DFAが供給された場合、当該平均周波数補正値DFAを保持すると共に、当該平均周波数補正値DFAを遅延値d5として加算器25Fに供給するようになされている。
【0065】
加算器25Fは、乗算器25Aから供給される乗算値d1とシフトレジスタ25Eから供給される遅延値d5とを加算することにより、タイミング差νkを算出する。
【0066】
このタイミング差νkは、位相誤差Δτkを基に、係数α及び係数ρによって定められるカットオフ周波数以下の低域成分のみを抽出したものであり、インターポレータ22においてサンプリングクロックの位相を変化させる際における変化量を表している。
【0067】
このようにLPF回路25は、位相誤差Δτkを基にタイミング差νkを算出し、これをNCO回路26へ送出するようになされている。
【0068】
(2)周波数誤差の検出及び補正
ところで位相同期部8は、全体として位相を同期させるためのPLL回路であるため、引き込み可能な周波数誤差の範囲、すなわちキャプチャレンジをできるだけ拡大することが望ましい。
【0069】
そこで位相同期部8には、図3に示したように、周波数誤差を検出するための周波数誤差検出回路33が設けられている。この周波数誤差検出回路33は、インターポレータ22から補間信号pkの供給を受け、当該補間信号pkを基にディジタル入力信号DIの周波数とNCO26における周波数との周波数誤差を検出するようになされている。
【0070】
なお、ここではBlu−ray Disc(登録商標)を前提とし、インターポレータ22から供給された補間信号pkは、当該インターポレータ22においてPR(1,x,1)のようなパーシャルレスポンス波形に等化されているものとする(ただしxは任意の実数)。
【0071】
(2−1)周波数誤差検出回路の構成
図7に示すように、周波数誤差検出回路33は、インターポレータ22から出力された補間信号pk(説明の都合上、以下これをクロック(k+3)における補間信号p(k+3)とする)を遅延部50のシフトレジスタ50A、ゼロクロス検出回路51及びパターンセレクタ53へ供給する。
【0072】
遅延部50は、5段のシフトレジスタ50A〜50Eが直列に接続されており、それぞれ補間信号p(k+3)を1クロックずつ遅延させることにより生成した補間信号p(k+2)〜y(k−2)をそれぞれパターンセレクタ53へ供給する。
【0073】
ゼロクロス検出回路51は、補間信号p(k+3)をゼロレベルと比較することにより正又は負のいずれの符号であるかを検出する。ちなみに、この時点ではサンプリングクロックが未だ目標位相に追従できていない可能性もあるため、このとき検出された符号は、当該補間信号p(k+3)を基に符号を仮判定した結果とも言える。
【0074】
ゼロクロス検出回路51は、検出された符号が正の時には値”+1”、また当該符号が負の時には値”−1”とするNRZ(Non Return Zero)の検出結果x(k+3)を生成し、これを遅延部51のシフトレジスタ51A及びパターンセレクタ53へ供給する。
【0075】
遅延部52は、遅延部50と同様、5段のシフトレジスタ52A〜52Eが直列に接続されており、それぞれ検出結果x(k+3)を1クロックずつ遅延させることにより生成した検出結果x(k+2)〜x(k−2)をそれぞれパターンセレクタ53へ供給する。
【0076】
パターンセレクタ53は、時間的に連続した6個の検出結果x(k+3)〜x(k−2)を時系列に配列した仮判定パターンを判定対称とし、特定パターン”+1、+1、+1、−1、−1、−1”又は”−1、−1、−1、+1、+1、+1”と一致した場合のみ、検出結果xにおける変化点(すなわち補間信号pkの符号の変化点)の近傍である検出結果x(k)及びx(k+1)と、このときの補間信号p(k)及びp(k+1)とを位相検出器54へ送出する。
【0077】
この場合、パターンセレクタ53においては、”+1”及び”−1”をそれぞれ3連続ずつさせたパターンを特定パターンとしていることから、検出結果xとして”+1”又は”−1”が2連続のみとなる部分、すなわち2Tが含まれる部分では、この特定パターンとは一致しないことになる。
【0078】
この結果、パターンセレクタ53は、補間信号pkの符号が変化する符号変化点のうち、最短波長である2Tによる符号変化点を除いた符号変化点のみを検出して位相検出器54へ送出することになる。
【0079】
これによりパターンセレクタ53は、最短波長でなり周波数が高いために正常な周波数誤差の検出が困難な2Tにおける符号変化点を除外することができ、後段において検出する周波数誤差の精度を低下させることを未然に防止することができる。
【0080】
位相検出器54は、次式に従って符号変化点の前後における補間信号p(k)同士を加算することにより位相誤差Δτkを算出し、後段の差分算出器55へ送出するようになされている。
【0081】
【数3】
【0082】
この場合、位相検出器54は補間信号p(k)の波形が符号変化点の付近においてほぼ線形であると見なすことができ、符号変化点の前後における補間信号p(k)の加算値(換言すれば、絶対値同士の差分値)が位相誤差の大きさとほぼ比例関係にあることを利用している。
【0083】
また位相検出器54は、(3)式に示したように、符号変化点以外では直前の位相誤差Δτ(k−1)を保持し、これを位相誤差Δτ(k)として出力するようになされている。これは、位相検出器54において、符号変化点以外では位相誤差Δτ(k)を直接算出することができないものの、位相誤差Δτ(k)が1クロック単位で大きく変化する可能性が極めて低いため、当該位相誤差Δτ(k)を直前の位相誤差Δτ(k−1)に近似し得ると共に、当該位相誤差Δτ(k)を”0”等の他の値とした場合よりも本来の値に近づけ得る点を考慮したためである。
【0084】
差分算出器55は、位相誤差Δτ(k)と1クロック前の位相誤差Δτ(k−1)との差分を算出する(すなわち1−Dの演算を行う)ことにより、当該位相誤差Δτ(k)の微分係数を求める。ここで一般的な性質として、位相誤差を微分することにより周波数誤差を得ることができるため、以下ではこの微分係数を周波数誤差Δf0(k)とする。差分算出器55は、このようにして得られた周波数誤差Δf0(k)を後段の不連続値除去器56へ送出する。
【0085】
ここで、実際の位相誤差と検出値(すなわち位相誤差Δτ(k))との関係を図8に実線で示し、合わせて周波数誤差Δf0(k)を波線で示す。この図8において、位相誤差Δτ(k)の連続部分(すなわち検出値が−1から+1の間となる部分)では、周波数誤差Δf0(k)の検出値がおよそ0〜0.5の範囲で連続的に変化しているものの、位相誤差Δτ(k)が逆相へ飛び越すタイミング(すなわち検出値が−1又は+1であるタイミング)では、周波数誤差Δf0(k)の検出値がその近傍とは不連続な負の値となっている。
【0086】
この場合、この不連続な負の値である周波数誤差Δf0(k)は、位相誤差Δτ(k)が不連続となった影響を受けており、正しい周波数誤差を表していない。このため、仮に周波数誤差検出回路33がこのときの周波数誤差Δf0(k)を後段の処理に用いると、位相同期部8(図3)は、全体として周波数誤差の吸収に時間を要したり、あるいは当該周波数誤差を正常に吸収できなくなってしまう可能性がある。
【0087】
そこで不連続値除去器56は、次式に示すように、周波数誤差Δf0(k)の絶対値が所定の閾値TH(例えば1)未満となる場合には、当該周波数誤差Δf0(k)を正常な値と見なしてそのまま用い、当該絶対値が当該閾値THを超えた場合には当該周波数誤差Δf(k)が不適切な値であると見なして値”0”に置き換えることにより、不連続値を除去した周波数誤差Δf(k)を生成し、これをスイッチ34(図3)及び移動平均算出器57へ送出する。
【0088】
【数4】
【0089】
移動平均算出器57は、周波数誤差Δf(k)の移動平均を算出することにより、当該周波数誤差Δf(k)を統計的に処理した平均周波数誤差Δfa(k)を生成し、これをスイッチ37(図3)へ送出する。
【0090】
このように周波数誤差検出回路33は、補間信号pkを基に位相誤差Δτ(k)を算出し、さらに当該位相誤差Δτ(k)の微分係数を基に周波数誤差Δf(k)及び平均周波数誤差Δfa(k)を生成するようになされている。
【0091】
(2−2)周波数誤差の補正
ところで位相同期部8は、タイミングマネージャ43の制御に基づいてスイッチ31、36、39及び42をそれぞれオン状態又はオフ状態に切り替えることにより、周波数誤差の補正を行うようになされている(詳しくは後述する)。
【0092】
(2−2−1)ループによる周波数誤差の補正
位相同期部8は、周波数誤差検出回路33から供給される周波数誤差Δf(k)を乗算器35へ供給する。乗算器35は、係数γ1が入力されており、当該周波数誤差Δf(k)に当該係数γ1を乗じることにより周波数補正値DFを生成し、これをスイッチ36へ供給する。
【0093】
ここで係数γ1は、周波数誤差Δf(k)の値と当該周波数誤差Δf(k)に応じた最適な周波数補正値DFとの対応関係を基に予め選定された係数であり、ループのゲインに相当するものである。
【0094】
位相同期部8は、スイッチ36がオン状態である場合、周波数補正値DFをLPF25の加算器25Cへ供給する。これに応じてLPF25は、この周波数補正値DFに基づいたタイミング差νkを算出し、これをNCO回路26へ送出する。
【0095】
このときLPF25は、周波数誤差Δf(k)に係数γ1を乗じることにより生成された周波数補正値DFを基に、この時点における当該周波数誤差Δf(k)を適切に補正し得るタイミング差νkを算出することができる。これに応じてNCO26は、当該周波数誤差Δf(k)を0に近づけさせるようなサンプリング位相μkを算出し、これをインターポレータ22へ供給する。
【0096】
また位相同期部8は、他のスイッチ31等をオフ状態に切り替えるようになされており、これによりインターポレータ22、周波数誤差検出回路33、乗算器35、LPF25及びNCO26によって構成される、周波数誤差Δf(k)に関する一次のループ(以下、これを周波数収束ループと呼ぶ)を形成し、スイッチ36がオン状態である間、当該周波数収束ループにおける一連の処理を繰り返す。
【0097】
このように位相同期部8は、スイッチ36がオン状態に切り替えられている場合、周波数誤差検出回路33から供給される周波数誤差Δf(k)を基に周波数補正値DFを算出し、当該周波数補正値DFに基づくタイミング差νkをNCO26に供給することにより周波数誤差Δf(k)を0に近づけ、この周波数収束ループにおける一連の処理を繰り返すことにより、当該周波数誤差Δf(k)を徐々に0に収束させていくようになされている。
【0098】
(2−2−2)初期値設定による周波数誤差の補正
一方、位相同期部8は、周波数誤差検出回路33から供給される平均周波数誤差Δfa(k)を乗算器38へ供給する。乗算器38は、係数γ0が入力されており、当該平均化周波数誤差Δf(k)に当該係数γ1を乗じることにより平均周波数補正値DFAを生成し、これをスイッチ36へ供給する。
【0099】
ここで係数γ0は、係数γ1と同様、平均周波数誤差Δfa(k)の値と当該平均周波数誤差Δfa(k)に応じた最適な平均周波数補正値DFAとの対応関係を基に予め選定された係数である。
【0100】
また平均周波数補正値DFAは、周波数誤差検出回路33において周波数誤差Δf(k)の移動平均として統計的に算出された平均周波数誤差Δfa(k)に基づく値であるため、1回の処理で周波数誤差Δf(k)を適切に補正し得る値となる。
【0101】
位相同期部8は、スイッチ39がオン状態である場合、平均周波数補正値DFAをLPF25のシフトレジスタ25Eへ供給する。また位相同期部8は、このときスイッチ31をオフ状態に切り替えるようになされており、これによりインターポレータ22、周波数誤差検出回路33、乗算器35、LPF25及びNCO26によって構成される、周波数誤差Δf(k)に関するループ(以下、これを周波数初期値ループと呼ぶ)を形成する。
【0102】
これに応じてLPF25は、この平均周波数補正値DFAに基づいたタイミング差νkを算出し、これをNCO回路26へ送出する。このときLPF25は、平均周波数誤差Δfa(k)に係数γ0を乗じることにより生成された平均周波数補正値DFAを基に、この時点における周波数誤差Δf(k)を1回の処理で適切に補正し得るタイミング差νkを算出することができる。
【0103】
すなわちLPF25は、いわゆる初期値に相当する平均周波数補正値DFAが与えられることにより、ループ処理の最初の段階で位相同期部8における周波数誤差をほぼ0に合わせ、いわゆる周波数リスタートを行い得るようなタイミング差νkをNCO26へ供給することができる。
【0104】
NCO26は、平均周波数補正値DAに基づいて生成されたタイミング差νkを基に、
サンプリング位相μkを生成し、これをインターポレータ22へ供給する。これに応じてインターポレータ22は、当該サンプリング位相μkを基にサンプリングクロックの周波数を補正することにより、1回の処理により当該サンプリングクロックと目標位相との周波数誤差をほぼ0に収束させる。
【0105】
このように位相同期部8は、スイッチ39がオン状態に切り替えられている場合、周波数誤差検出回路33から供給される平均周波数誤差Δfa(k)を基に平均周波数補正値DFAを算出し、当該平均周波数補正値DFAを用いて周波数初期値ループにより周波数誤差Δf(k)を1回の処理でほぼ0に収束させるようになされている。
【0106】
(2−3)位相誤差の補正
ところで位相同期部8は、周波数誤差を収束ループにより徐々に補正し、また当該周波数誤差を周波数初期値ループにより1回の処理でほぼ0に補正することに加え、位相誤差を1回の処理でほぼ0に補正し得るようにもなされている。
【0107】
実際上位相同期部8には、移動平均算出回路40が設けられており、位相誤差検出回路24から位相誤差Δτkが供給されるようになされている。
【0108】
移動平均算出回路40は、所定の計測期間における位相誤差Δτkの移動平均を算出することにより、複数の当該位相誤差Δτkを統計的に処理した値として平均位相誤差Δτakを生成し、これを乗算器41へ供給する。乗算器41は、係数γ2が入力されており、平均位相誤差Δτakに当該係数γ2を乗じることにより平均位相補正値DPAを算出し、これをスイッチ42へ供給する。
【0109】
ここで係数γ2は、平均位相誤差Δτakの値と当該平均位相誤差Δτakに応じた最適な平均位相補正値DPAとの対応関係を基に予め選定された係数であり、位相初期値ループのゲインに相当するものである。
【0110】
また平均位相補正値DPAは、移動平均算出回路40において位相誤差Δτkの移動平均として算出された平均位相誤差Δτakに基づく値であるため、1回の処理で位相誤差Δτkをほぼ0に収束させるよう当該位相誤差を補正する値となる。
【0111】
このため位相同期部8は、スイッチ42がオン状態に切り替えられている場合、位相同期部8における位相誤差を1回の処理でほぼ0に近づけ得る平均位相補正値DPAを初期値としてNCO回路26へ供給することができる。
【0112】
また位相同期部8は、このときスイッチ31をオフ状態に切り替えるようになされており、これによりインターポレータ22、PRイコライザ23、位相誤差検出器24、移動平均算出回路40、乗算器41及びNCO26によって構成される、位相誤差Δτkに関するループ(以下、これを位相初期値ループと呼ぶ)を形成する。
【0113】
ところでNCO26は、次式に従いタイミング差νkを基にサンプリング位相μkを算出している。ただしεはインターポレータ22におけるオーバーサンプリングレートを表す。
【0114】
【数5】
【0115】
この位相初期値ループの場合、NCO26は、(5)式におけるサンプリング位相μkを次式によって与えられるサンプリング位相μkに置き換えることになる。
【0116】
【数6】
【0117】
このことは、位相同期部8において、平均位相補正値DPAを初期値とし、最初に位相誤差Δτkをほぼ0に補正してから以降の位相同期処理を行う、いわゆるゼロ位相リスタートを行うことになる。
【0118】
このように位相同期部8は、スイッチ42がオン状態に切り替えられると共にスイッチ31がオフ状態に切り替えられている場合、移動平均算出回路40から供給される平均位相誤差Δτakを基に平均位相補正値DPAを算出し、当該平均位相補正値DPAを初期値として用い、位相初期値ループにより位相誤差Δτkを1回の処理でほぼ0に補正させるようになされている。
【0119】
(2−4)タイミングの制御
ところで位相同期部8は、タイミングマネージャ43によってスイッチ31、36、39及び42を統括的に制御することにより、図2に示した位相収束ループ、上述した周波数収束ループ、周波数初期値ループ又は位相初期値ループのいずれかに切り替えるようになされている。
【0120】
実際上タイミングマネージャ43は、スイッチ31を制御して位相同期部8全体を位相収束ループに切り替えるための位相収束ループ切替信号EP、スイッチ36を制御して位相同期部8全体を周波数収束ループに切り替えるための周波数収束ループ切替信号EF、スイッチ39を制御して位相同期部8全体を周波数初期値ループに切り替えるための周波数初期値ループ切替信号EFR、及びスイッチ42を制御して位相同期部8全体を位相初期値ループに切り替えるための位相初期値ループ切替信号EPRを出力し得るようになされている。
【0121】
さらにタイミングマネージャ43は、図9(A)〜(D)に示すように、位相収束ループ切替信号EP、周波数収束ループ切替信号EF、周波数初期値ループ切替信号EFR及び位相初期値ループ切替信号EPRをそれぞれオン状態又はオフ状態に切り替えるタイミングが予め設定されたモード1〜モード4の4種類の動作モードを有しており、制御部2(図1)から供給されるモード制御信号CMに応じて、いずれかの動作モードに切り替えるようになされている。
【0122】
ちなみに図9(A)〜(D)では、各信号が”H”レベルのときに該当するスイッチをオン状態に切り替え、反対に各信号が”L”レベルのときに該当するスイッチをオフ状態に切り替えることを表している。
【0123】
タイミングマネージャ43は、モード1に切り替えられた場合、図9(A)に示したように、最初のクロックk0の時点から位相同期部8を位相収束ループに切り替え、位相誤差を徐々に収束させる。
【0124】
またタイミングマネージャ43は、モード2に切り替えられた場合、図9(B)に示したように、最初のクロックk0の時点ではいずれのループにも切り替えず、クロックk1の時点で位相同期部8を周波数初期値ループに切り替え、その直後のクロックk2の時点で位相収束ループに切り替える。これにより位相同期部8は、平均周波数誤差Δfa(k)を基に1回の処理で周波数誤差をほぼ0に補正させ、その後位相誤差を徐々に収束させることができる。
【0125】
またタイミングマネージャ43は、モード3に切り替えられた場合、図9(C)に示したように、最初のクロックk0の時点で位相同期部8を周波数収束ループに切り替え、しばらく経過した後のクロックk3の時点で位相収束ループに切り替える。これにより位相同期部8は、周波数誤差Δf(k)を基に周波数誤差を徐々に0に収束させ、その後位相誤差を徐々に0に収束させることができる。
【0126】
またタイミングマネージャ43は、モード4に切り替えられた場合、図9(D)に示したように、最初のクロックk0の時点で位相同期部8を周波数収束ループに切り替え、しばらく経過した後のクロックk4の時点で位相初期値ループに切り替え、さらにその直後のクロックk5の時点で位相収束ループに切り替える。これにより位相同期部8は、周波数誤差Δf(k)を基に周波数誤差を徐々に0に収束させると共に、位相誤差Δτkの移動平均である平均位相誤差Δτakを算出しておき、次に当該平均位相誤差Δτakを基に位相誤差を1回の処理でほぼ0に補正して、その後当該位相誤差を0近傍の値に維持することができる。
【0127】
このように位相同期部8は、制御部2から与えられるモード制御信号CMに基づいて動作モードを切り替えることにより、図9(A)〜(D)に示したタイミングに従いスイッチ31、36、39、42を制御して当該位相同期部8全体を位相収束ループ、周波数収束ループ、周波数初期値ループ又は位相初期値ループのいずれかに切り替えるようになされており、これにより周波数誤差及び位相誤差を高速且つ安定して0に収束させるようになされている。
【0128】
(3)動作及び効果
以上の構成において、光ディスク装置1の位相同期部8は、ディジタルPLL回路としての基本回路構成(図2)に加えて設けられた周波数誤差検出回路33(図3)により、補間信号pkにおける周波数誤差Δf(k)を算出する。
【0129】
このとき周波数誤差検出回路33は、差分算出器55において、位相検出器54(図7)から供給される位相誤差Δτ(k)とその前のクロックにおける位相誤差Δτ(k−1)との差分を算出することにより、当該位相誤差Δτ(k)の微分係数として周波数誤差Δf0(k)を求めることができるため、簡易な演算処理により精度良く当該周波数誤差Δf0(k)を得ることができる。
【0130】
また周波数誤差検出回路33は、位相検出器54において、符号変化点以外では直前の位相誤差Δτ(k−1)を位相誤差Δτ(k)として出力することにより、当該符号変化点以外で位相誤差Δτ(k)を「0」等の他の値にした場合に後段の差分算出器55において誤った周波数誤差を算出することを未然に防止することができる。
【0131】
また周波数誤差検出回路33は、パターンセレクタ53において特定パターン”+1、+1、+1、−1、−1、−1”又は”−1、−1、−1、+1、+1、+1”と一致した場合のみ、検出結果xの変化前後に相当する検出結果x(k)及びx(k+1)と、このときの補間信号p(k)及びp(k+1)とを位相検出器54へ送出するため、最短波長である2Tによる符号変化点(すなわち−1、+1、+1、−1又は+1、−1、−1、+1)を除いた符号変化点のみを検出して位相検出器54へ送出することができる。
【0132】
これにより周波数誤差検出回路33は、最短波長でなり周波数が高いために正常な周波数誤差Δf(k)の検出が困難な2Tにおける符号変化点を除外することができ、周波数誤差Δf(k)の検出精度の低下を未然に防止することができる。
【0133】
さらに周波数誤差検出回路33は、周波数誤差Δf0(k)に含まれる不連続な値(図8)、すなわち位相誤差Δτ(k)が不連続となった影響により不適切な周波数誤差Δf0(k)を不連続値除去器56によって除外し周波数誤差Δf(k)として後段へ送出することにより、当該周波数誤差Δf(k)の精度を高めることができる。
【0134】
一方、位相同期部8は、スイッチ36がオン状態に切り替えられている場合、周波数誤差検出回路33により検出された周波数誤差Δf(k)に対して係数γ1を乗じることにより、当該周波数誤差Δf(k)を補正するのに適した周波数補正値DFを算出することができる。
【0135】
このとき位相同期部8は、スイッチ36がオン状態に切り替えられている間、周波数補正値DFをLPF25の積分項に与えタイミング差νkをNCO26に供給して周波数誤差Δf(k)を0に近づける、といった周波数収束ループにおける一連の処理を繰り返すことにより、当該周波数誤差Δf(k)を徐々に0に収束させていくことができる。
【0136】
また位相同期部8は、スイッチ39がオン状態に切り替えられた場合、周波数誤差検出回路33により周波数誤差Δf(k)の移動平均として算出された平均周波数誤差Δfa(k)に対して係数γ0を乗じることにより、当該平均周波数誤差Δfa(k)を補正するのに適した平均周波数補正値DFAを算出し、これをLPF25に供給することができる。
【0137】
このとき位相同期部8は、周波数誤差検出回路33において、スイッチ39がオン状態に切り替えられるまでの所定計測期間に渡って周波数誤差Δf(k)の移動平均を算出することにより、周波数誤差Δf(k)を高精度化した値に相当する平均周波数誤差Δfa(k)を得ることができる。
【0138】
このため位相同期部8は、スイッチ39がオン状態に切り替えられたときに、平均周波数誤差Δfa(k)に基づく平均周波数補正値DFAを1回(1クロック)だけLPF25の積分項に与えることにより、このときの周波数誤差Δf(k)が高精度に反映されたタイミング差νkをNCO26に供給することができ、周波数初期値ループにおける一連の処理を1回のみ実行して周波数誤差Δf(k)をほぼ0に補正する、いわゆる周波数リスタートを実現できる。
【0139】
このように位相同期部8は、周波数収束ループ又は周波数初期値ループを形成し、周波数誤差Δf(k)に基づく周波数補正値DF又は平均周波数誤差Δfa(k)に基づく平均周波数補正値DFAをLPF25の積分項に加算することにより、当該周波数誤差Δf(k)を0に近づけるよう補正することができる。
【0140】
また位相同期部8は、位相初期値ループにおいて、周波数初期値ループと同様の処理を位相に関して実行することにより、位相誤差Δτkを高精度化した値に相当する平均位相誤差Δτakを算出し、これに係数γ2を乗じて平均位相補正値DPAを算出し、これをNCO26に供給して位相誤差Δτkを1回の処理でほぼ0に補正させることができる。
【0141】
さらに位相同期部8は、制御部2(図1)から供給されるモード制御信号CMに基づいてタイミングマネージャ43の動作モードをモード1〜モード4(図9(A)〜(D))に切り替え、当該動作モードに応じてスイッチ31、36、39及び42を制御することにより、当該モード制御信号CMが供給されるだけで、予め定められたタイミングで位相収束ループ、周波数収束ループ、周波数初期値ループ又は位相初期値ループに切り替えることができる。
【0142】
例えば位相同期部8は、モード1(図9(A))に切り替えられた場合、周波数誤差Δf(k)に関して一切補正することなく、基本回路構成(図2)のような位相収束ループのみにより位相誤差Δτkを徐々に収束させることになる。
【0143】
しかしながら位相同期部8は、例えば図10に波形を示すように、周波数誤差が比較的大きい場合(約2%)、位相収束ループのみでは約10000クロック経過後も位相誤差及び周波数誤差を吸収することができない。言い換えれば、位相同期部8では、ディジタル入力信号DIがキャプチャレンジを超えた状態となってしまう。
【0144】
これに対して位相同期部8は、モード3に切り替えられた場合、まず周波数収束ループにより周波数誤差を徐々に0に収束させた後、次に位相収束ループにより位相誤差を0に収束させることになる。
【0145】
位相同期部8は、このモード3では、例えば図11に波形を示すように、図10と同様に周波数誤差が比較的大きい場合、周波数収束ループによる一連の処理を開始した500クロック付近で周波数誤差Δfk(図中実線で示す)及び位相誤差Δτk(図中波線で示す)のいずれも大きく変動しているものの、約750クロック付近以降では周波数誤差Δfkが比較的小さい値にまとまり、また位相誤差Δτkがほぼ一定の値に収束していることから、周波数誤差Δfkをほぼ0に収束することができる。
【0146】
その後位相同期部8は、約1200クロック付近で位相収束ループに切り替えることにより、位相誤差Δτkを安定且つ高速にほぼ0に収束させることができる。
【0147】
すなわち位相同期部8は、ディジタル入力信号DIにおける周波数誤差が比較的大きい場合(約2%)でも、モード3のように周波数収束ループにより周波数誤差Δfkを0に収束させることができるので、モード0のときと比較してキャプチャレンジを拡大することができる。
【0148】
ちなみに図11では、位相誤差Δτkの「飛び越し」が生じたことにより、不連続点を除去する前の周波数誤差Δf0(k)(図中一点鎖線で示す)が±1を超え、いわゆるスパイク状の波形となっているものの、不連続点を除去した周波数誤差Δf(k)は±1の範囲内に収まっており、当該周波数誤差Δf0(k)から不連続点を除去して当該周波数誤差Δf(k)を生成することが有効であることも示されている。
【0149】
ここで、位相同期部8のモード1及びモード3において、ディジタル入力信号DIの周波数を様々に変化させた場合における、位相の同期を完了する(すなわち位相誤差をほぼ0に収束し終える)までのクロック数のシミュレーション結果を図12に示す。
【0150】
この図12に示されているように、位相同期部8は、周波数誤差に関する補正を行わないモード1において、周波数誤差が約±0.3%を超えると実質的に位相を同期できなくなってしまう、すなわちキャプチャレンジが約±0.3%であったものの、周波数誤差を0に収束させるよう補正するモード3において、周波数誤差が±3%以上の範囲であっても、当該周波数誤差を比較的少ないクロック数で収束できている、すなわちキャプチャレンジが約±3%以上(約10倍以上)に拡大されていることがわかる。
【0151】
そのうえ位相同期部8は、インターポレータ22において、(1)式に示した関数g(i)に基づいて算出したフィルタ係数h(0)〜h(n−1)をFIRフィルタの係数として用いることにより、ディジタル入力信号DIに対して高域成分を強調した補間信号pkを生成することができる。
【0152】
例えば位相同期部8は、仮に補間フィルタ係数算出部22A(図4)においてフィルタ係数h(0)〜h(n−1)として非特許文献1や非特許文献2等のようにSinc関数を用いた場合、インターポレータ22から出力される補間信号pkのアイパターンを測定した場合、図13に示すように、最短波長のアイパターンが十分に開いていない可能性が高い。
【0153】
このようにアイパターンが十分に開いていない場合、位相同期部では、後段のゼロクロス検出等において誤った検出結果を得ることになってしまう。
【0154】
これに対して位相同期部8は、インターポレータ22において、関数g(i)に基づいて算出したフィルタ係数h(0)〜h(n−1)をFIRフィルタの係数として用いることにより、ディジタル入力信号DIにおける高域成分を強調することができるので、図14に示すように、補間信号pkにおけるアイパターンが十分に開いた状態とすることができ、これにより後段のゼロクロス検出等において検出精度を向上させることができる。
【0155】
以上の構成によれば、光ディスク装置1の位相同期部8は、周波数誤差検出回路33により、位相誤差Δτ(k)と1クロック前の位相誤差Δτ(k−1)との差分を基に、簡易な演算処理により精度良く補間信号pkにおける周波数誤差Δf(k)を算出し、周波数収束ループ又は周波数初期値ループを形成して周波数誤差Δf(k)に基づく周波数補正値DF又は平均周波数誤差Δfa(k)に基づく平均周波数補正値DFAをLPF25の積分項に加算することにより、当該位相同期部8における周波数誤差Δf(k)を高速に且つ安定してほぼ0に収束させることができる。
【0156】
(4)他の実施の形態
なお上述した実施の形態においては、ディジタルPLL回路を形成する位相同期部8に本発明を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、アナログ/ディジタル混在のPLL回路に対して本発明を適用するようにしても良い。
【0157】
例えば図2との対応部分に同一符号を付した図15に基本回路構成を示すように、位相同期部60は、発振器21、インターポレータ22及びNCO26に代えて、ディジタル/アナログ(D/A)変換器61及びVCO(Voltage Controlled Oscillator)62が設けられている。
【0158】
この場合、位相同期部60は、実際には図3との対応部分に同一符号を付した図16のような回路構成を有する。この位相同期部60においても、周波数誤差検出回路33は、上述した位相同期部8における周波数誤差検出回路33と同様、位相誤差Δτkを基に周波数誤差Δf(k)及び平均周波数誤差Δfa(k)を検出することができる。これに応じて位相同期部60は、当該周波数誤差Δf(k)及び平均周波数誤差Δfa(k)を基に、周波数収束ループ又は周波数初期値ループにより周波数誤差をほぼ0に収束させることができる。
【0159】
また上述した実施の形態においては、周波数誤差検出回路33の位相検出器54(図9)において、(3)式に示したように、符号変化点以外では直前の位相誤差Δτ(k−1)を位相誤差Δτ(k)として出力するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば符号変化点以外では所定の定数(例えば0.2等)を出力するようにしたり、或いは直前の位相誤差Δτ(k−1)等を基に予測した値とする等しても良い。
【0160】
さらに上述した実施の形態においては、周波数誤差検出回路33のパターンセレクタ53(図9)において特定パターン”+1、+1、+1、−1、−1、−1”又は”−1、−1、−1、+1、+1、+1”と一致した場合のみ、検出結果xの変化点である検出結果x(k)及びx(k+1)と、このときの補間信号p(k)及びp(k+1)とを位相検出器54へ送出することにより、最短波長である2Tによる符号変化点を除外するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、他の特定パターンを用いて他の記録マークによる符号変化点を除外するようにしても良い。
【0161】
また、例えば当該2Tによる符号変化点においても周波数誤差を精度良く検出できることが判明している場合に、当該パターンセレクタ53を設けないようにしても良い。
【0162】
さらに上述した実施の形態においては、不連続値除去器56において周波数誤差Δf0(k)における不連続値を除去する際、閾値TH(例えば+1)を用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該閾値THを0以外の種々の値としたり、或いは当該不連続値除去器56をヒステリシスコンパレータによって構成するようにしても良い。
【0163】
或いは、当該不連続値除去器56を省略するようにしても良い。この場合、周波数誤差Δf(k)の精度を低下させることになるものの、周波数誤差検出回路33の構成を簡易化することができる。
【0164】
さらに上述した実施の形態においては、タイミングマネージャ43が動作モードとしてモード1〜モード4の4種類のいずれかに切り替えるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、位相収束ループ切替信号EP、周波数収束ループ切替信号EF、周波数初期値ループ切替信号EFR及び位相初期値ループ切替信号EPRのいずれか1つがオン状態となり、或いは全てがオフ状態となるようにして適宜組み合わせた他の動作モードに切り替えるようにしても良い。この場合、モードの数は1以上の任意の数とすれば良く、また各切替信号をオン状態又はオフ状態に切り替えるタイミングについては、シミュレーションや実験等の結果に基づき適宜定めるようにすれば良い。
【0165】
さらにこの場合、例えば光ディスク100の種類(例えば記録層の数やレーザ光の透過率・反射率の違い等)毎にそれぞれ最適な動作モードを予め選定しておき、実際に光ディスク装置1に装填された光ディスク100の種類を判別し、その種類に応じて当該動作モードを切り替える等しても良い。
【0166】
さらに上述した実施の形態においては、位相同期部8において、乗算器35及びスイッチ36を用いて周波数誤差Δf(k)を基に当該周波数誤差Δf(k)を徐々に0に収束させる周波数収束ループと、乗算器38及びスイッチ39を用いて平均周波数誤差Δfa(k)を基に周波数誤差Δf(k)を1回でほぼ0に補正する周波数初期値ループの2系統のループを設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、周波数収束ループ又は周波数初期値ループのいずれか一方のみを設けるようにしても良い。
【0167】
さらに上述した実施の形態においては、位相同期部8に対して移動平均算出回路40、乗算器41及びスイッチ42により位相初期値ループを設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該移動平均算出回路40、当該乗算器41及び当該スイッチ42を省略して当該位相初期値ループを設けないようにしても良い。
【0168】
さらに上述した実施の形態においては、周波数誤差検出回路33の移動平均算出器57において周波数誤差Δf(k)の移動平均を算出することにより平均周波数誤差Δfa(k)を生成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば周波数誤差Δf(k)を2乗した値の加算平均値の平方根等、複数の当該周波数誤差Δf(k)を基に統計的に算出した値を当該平均周波数誤差Δfa(k)とするようにしても良い。また位相同期部8の移動平均算出器40についても同様である。
【0169】
さらに上述した実施の形態においては、インターポレータ22の補間フィルタ係数算出部22Aにおいて、制御部2からの係数制御信号CCを基に、関数g(i)を用いて係数h(0)〜h(n−1)を生成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば当該関数g(i)に代わる、種々の周波数特性に対応した複数種類の関数を予め用意しておき、制御部2から光ディスク100の種類等に応じて関数を切り替えるような係数制御信号CCを送出し、種々の周波数特性が得られるような係数h(0)〜h(n−1)を生成するようにしても良い。
【0170】
この場合、制御部2からインターポレータ22の補間フィルタ係数算出部22Aに対して、係数制御信号CCを送出する代わりに関数g(i)又はこれに代わる他の関数を演算式等の形式で直接供給するようにしても良い。
【0171】
さらには、例えば制御部2から補間フィルタ係数算出部22Aに対して関数g(i)を用いないような係数制御信号CCを送出し、或いは補間フィルタ係数算出部22Aが制御部2から係数制御信号CCを取得しないようにし、当該補間フィルタ係数算出部22Aにおいて高域成分を強調しないような係数h(0)〜h(n−1)を生成するようにしても良い。これにより、後段において周波数誤差Δf(k)の検出精度が低下するものの、当該インターポレータ22における演算処理量を削減することができる。
【0172】
さらに上述した実施の形態においては、光ディスク装置1において光ディスク100から読み出した再生RF信号SRF(図1)の位相を同期するための位相同期部8に本発明を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば磁気ディスク装置の磁気ディスクから読み出した再生RF信号の位相を同期するための位相同期部に本発明を適用するようにしても良い。この場合、光記録と磁気記録との違いに応じて、PR等化や記録マーク長が異なることを考慮してインターポレータにおける広域強調特性やパターンセレクタにおける除外するパターン、或いはPRイコライザにおける補正特性等を適宜変更すればよい。
【0173】
さらに上述した実施の形態においては、光ディスク装置1において光ディスク100から読み出した再生RF信号SRF(図1)の位相を同期するための位相同期部8に本発明を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の位相同期回路に本発明を適用するようにしても良い。
【0174】
さらに上述した実施の形態においては、図3に示した位相同期部8をハードウェアによって構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば図3におけるアナログ/ディジタル変換器20及び発振器21以外の各回路をソフトウェアにより構成するようにしても良い。
【0175】
この場合、具体的にはDSP(Digital Signal Processor)に所定の位相同期プログラムを実行させる等すれば良く、当該位相同期プログラムの格納媒体としては、制御部2の記憶部(図示せず)に予め記憶させておいたり、フレキシブルディスクやメモリースティック(ソニー株式会社の登録商標)等の外部記憶媒体としても良い。また、当該位相同期プログラムを外部記憶媒体から内部の記憶部にインストールするようにしても良く、このときUSB(Universal Serial Bus)やEthernet(登録商標)等の有線方式の通信ケーブル、或いはIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g等の無線LAN(Local Area Network)を介するようにしても良い。
【0176】
さらに上述した実施の形態においては、位相誤差検出手段としてのゼロクロス検出回路51及び位相検出器54と、周波数誤差検出手段としての差分算出器55と、周波数補正手段としての乗算器35、乗算器38とによって同期装置としての位相同期部8を構成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の回路構成でなる位相誤差検出手段と、周波数誤差検出手段と、周波数補正手段とによって同期装置を構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明は、種々のPLL回路でも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】本発明の一実施形態による光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図2】位相同期部の基本回路構成を示すブロック図である。
【図3】位相同期部の詳細な回路構成を示すブロック図である。
【図4】インターポレータの回路構成を示すブロック図である。
【図5】補間フィルタの周波数特性を示す略線図である。
【図6】インターポレータのタップ係数を示す略線図である。
【図7】周波数誤差検出回路の構成を示すブロック図である。
【図8】位相誤差と周波数誤差との関係を示す略線図である。
【図9】各動作モードにおける切替スイッチの制御タイミングを示すタイミングチャートである。
【図10】モード1におけるシミュレーション結果を示す略線図である。
【図11】モード3におけるシミュレーション結果を示す略線図である。
【図12】位相同期に要するクロック数の説明に供する略線図である。
【図13】補間信号のアイパターンを示す略線図である。
【図14】高周波成分を強調した補間信号のアイパターンを示す略線図である。
【図15】アナログ/ディジタル混在による位相同期部の基本回路構成を示すブロック図である。
【図16】アナログ/ディジタル混在による位相同期部の詳細な回路構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0179】
1……光ディスク装置、2……制御部、8、60……位相同期部、22……インターポレータ、22A……補間フィルタ係数算出部、24……位相誤差検出器、25……LPF、26……NCO、31、36、39、42……スイッチ、33……周波数誤差検出回路、35、38、41……乗算器、40……移動平均算出回路、43……タイミングマネージャ、50、52……遅延部、51……ゼロクロス検出回路、53……パターンセレクタ、54……位相検出器、55……差分算出器、56……不連続値除去器、57……移動平均算出器、SI……ディジタル入力信号、pk……補間信号、yk……波形等化信号、Δτk……位相誤差信号、νk……タイミング差、μk……サンプリング位相、h(0)〜h(n−1)……フィルタ係数、CC……係数制御信号、Δf0(k)、Δf(k)……周波数誤差、Δfa(k)……平均周波数誤差、DF……周波数補正値、DFA……平均周波数補正値、Δτak……平均位相誤差、DPA……平均位相補正値、γ0、γ1、γ2……係数、CM……モード制御信号。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力データをサンプリングする際のサンプリングクロックをPLL(Phase Locked Loop)回路によって制御することにより、当該入力データにおける本来サンプリングすべき目標位相に対して当該サンプリングクロックの位相を同期させる同期装置であって、
上記入力データを上記サンプリングクロックのタイミングでサンプリングしたサンプリングデータと上記サンプリングクロックとから位相誤差を検出する位相誤差検出手段と、
上記位相誤差の検出結果における微分係数を基に周波数誤差を検出する周波数誤差検出手段と、
上記検出した周波数誤差を基に算出した周波数補正値を上記PLL回路におけるループフィルタの積分項に加算することにより当該周波数誤差を0に近づけるよう上記サンプリングクロックの周波数を補正する周波数補正手段と
を具えることを特徴とする同期装置。
【請求項2】
上記周波数補正手段は、
上記周波数誤差の検出結果に所定の係数を乗じることにより上記周波数補正値を算出し、当該周波数補正値を上記PLL回路におけるループフィルタの積分項に加算して上記サンプリングクロックの周波数を補正する処理を繰り返すことにより上記周波数誤差を0に近づける
ことを特徴とする請求項1に記載の同期装置。
【請求項3】
上記周波数補正手段において上記サンプリングクロックの周波数を補正する処理を繰り返す間に上記位相誤差の検出結果に対する統計的処理を行い、その結果得られた位相誤差推測値に所定の係数を乗じることにより位相補正値を算出し、当該位相補正値を上記PLLにおけるVCO(Voltage Controlled Oscillator)又はNCO(Numerical Control Oscillator)の初期位相値として上記PLLのリスタートを行う
ことを特徴とする請求項2に記載の同期装置。
【請求項4】
上記周波数補正手段は、
複数の上記周波数誤差の検出結果を基に統計的処理により周波数誤差推測値を生成し、当該周波数誤差推測値に所定の係数を乗じることにより上記周波数補正値を算出し、当該周波数補正値を上記PLL回路のループフィルタにおける積分項の初期値とすることにより、上記周波数誤差をほぼ0に合わせて周波数リスタートを行う
ことを特徴とする請求項1に記載の同期装置。
【請求項5】
上記位相誤差検出手段は、
上記サンプリングデータを所定レベルと比較することにより符号を仮判定した結果を用い、当該仮判定した結果を時系列に沿って配列した仮判定パターンが所定のデータパターンと一致した部分に対応する上記サンプリングデータを用いて上記位相誤差を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の同期装置。
【請求項6】
上記位相誤差検出手段は、
上記仮判定した結果が上記データパターンと一致しないときには、その直前の上記位相誤差を新たな位相誤差とする
ことを特徴とする請求項5に記載の同期装置。
【請求項7】
上記周波数誤差検出手段は、
複数の上記周波数誤差に基づく統計的処理により、上記位相誤差の検出結果における逆相への飛び越しタイミングを検出し、当該飛び越しタイミングに対応した上記周波数誤差を除外する
ことを特徴とする請求項1に記載の同期装置。
【請求項8】
上記周波数誤差検出手段は、
上記周波数誤差の絶対値が所定の閾値を超えた時点を上記飛び越しタイミングとして検出し、当該周波数誤差を所定の固定値に置き換える
ことを特徴とする請求項7に記載の同期装置。
【請求項9】
上記周波数誤差検出手段は、
上記位相誤差の検出結果とその直前のタイミングにおける上記位相誤差の検出結果との差分を算出することにより上記周波数誤差を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の同期装置。
【請求項10】
上記PLL回路は、所定の補間フィルタおいて上記サンプリングデータと所定のタップ係数との畳み込み演算により当該サンプリングデータに対する補間を行うと共に、上記位相誤差を基にフィードバックループにより上記サンプリングクロックの位相を制御するITR(Interpolated Timing Recovery)回路であって、
上記入力データを等化する際の目標周波数特性を周波数軸から時間軸へ変換することにより生成される変換値を用いて上記補間フィルタにおける上記タップ係数を生成するタップ係数生成手段と
ことを特徴とする請求項1に記載の同期装置。
【請求項11】
入力データをサンプリングする際のサンプリングクロックをPLL回路によって制御することにより、当該入力データにおける本来サンプリングすべき目標位相に対して当該サンプリングクロックの位相を同期させる同期方法であって、
上記入力データを上記サンプリングクロックのタイミングでサンプリングしたサンプリングデータと上記サンプリングクロックとから位相誤差を検出する位相誤差検出ステップと、
上記位相誤差の検出結果における微分係数を基に周波数誤差を検出する周波数誤差検出ステップと、
上記検出した周波数誤差を基に算出した周波数補正値を上記PLL回路におけるループフィルタの積分項に加算することにより当該周波数誤差を0に近づけるよう上記サンプリングクロックの周波数を補正する周波数補正ステップと
を具えることを特徴とする同期方法。
【請求項12】
入力データをサンプリングする際のサンプリングクロックをPLL回路によって制御することにより、当該入力データにおける本来サンプリングすべき目標位相に対して当該サンプリングクロックの位相を同期させる同期装置に対して、
上記入力データを上記サンプリングクロックのタイミングでサンプリングしたサンプリングデータと上記サンプリングクロックとから位相誤差を検出する位相誤差検出ステップと、
上記位相誤差の検出結果における微分係数を基に周波数誤差を検出する周波数誤差検出ステップと、
上記検出した周波数誤差を基に算出した周波数補正値を上記PLL回路におけるループフィルタの積分項に加算することにより当該周波数誤差を0に近づけるよう上記サンプリングクロックの周波数を補正する周波数補正ステップと
を実行させることを特徴とする同期プログラム。
【請求項13】
記録媒体から読み出した読出データをサンプリングする際のサンプリングクロックをPLL回路によって制御することにより、当該読出データにおける本来サンプリングすべき目標位相に対して当該サンプリングクロックの位相を同期させてデータを再生するデータ再生装置であって、
上記記録媒体にアクセスすることにより上記読出データを生成する読出データ生成手段と、
上記読出データを上記サンプリングクロックのタイミングでサンプリングしたサンプリングデータと上記サンプリングクロックとから位相誤差を検出する位相誤差検出手段と、
上記位相誤差の検出結果における微分係数を基に周波数誤差を検出する周波数誤差検出手段と、
上記検出した周波数誤差を基に算出した周波数補正値を上記PLL回路におけるループフィルタの積分項に加算することにより当該周波数誤差を0に近づけるよう上記サンプリングクロックの周波数を補正する周波数補正手段と、
上記サンプリングデータに所定の信号処理を施すことにより上記データを再生する再生処理手段と、
を具えることを特徴とするデータ再生装置。
【請求項1】
入力データをサンプリングする際のサンプリングクロックをPLL(Phase Locked Loop)回路によって制御することにより、当該入力データにおける本来サンプリングすべき目標位相に対して当該サンプリングクロックの位相を同期させる同期装置であって、
上記入力データを上記サンプリングクロックのタイミングでサンプリングしたサンプリングデータと上記サンプリングクロックとから位相誤差を検出する位相誤差検出手段と、
上記位相誤差の検出結果における微分係数を基に周波数誤差を検出する周波数誤差検出手段と、
上記検出した周波数誤差を基に算出した周波数補正値を上記PLL回路におけるループフィルタの積分項に加算することにより当該周波数誤差を0に近づけるよう上記サンプリングクロックの周波数を補正する周波数補正手段と
を具えることを特徴とする同期装置。
【請求項2】
上記周波数補正手段は、
上記周波数誤差の検出結果に所定の係数を乗じることにより上記周波数補正値を算出し、当該周波数補正値を上記PLL回路におけるループフィルタの積分項に加算して上記サンプリングクロックの周波数を補正する処理を繰り返すことにより上記周波数誤差を0に近づける
ことを特徴とする請求項1に記載の同期装置。
【請求項3】
上記周波数補正手段において上記サンプリングクロックの周波数を補正する処理を繰り返す間に上記位相誤差の検出結果に対する統計的処理を行い、その結果得られた位相誤差推測値に所定の係数を乗じることにより位相補正値を算出し、当該位相補正値を上記PLLにおけるVCO(Voltage Controlled Oscillator)又はNCO(Numerical Control Oscillator)の初期位相値として上記PLLのリスタートを行う
ことを特徴とする請求項2に記載の同期装置。
【請求項4】
上記周波数補正手段は、
複数の上記周波数誤差の検出結果を基に統計的処理により周波数誤差推測値を生成し、当該周波数誤差推測値に所定の係数を乗じることにより上記周波数補正値を算出し、当該周波数補正値を上記PLL回路のループフィルタにおける積分項の初期値とすることにより、上記周波数誤差をほぼ0に合わせて周波数リスタートを行う
ことを特徴とする請求項1に記載の同期装置。
【請求項5】
上記位相誤差検出手段は、
上記サンプリングデータを所定レベルと比較することにより符号を仮判定した結果を用い、当該仮判定した結果を時系列に沿って配列した仮判定パターンが所定のデータパターンと一致した部分に対応する上記サンプリングデータを用いて上記位相誤差を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の同期装置。
【請求項6】
上記位相誤差検出手段は、
上記仮判定した結果が上記データパターンと一致しないときには、その直前の上記位相誤差を新たな位相誤差とする
ことを特徴とする請求項5に記載の同期装置。
【請求項7】
上記周波数誤差検出手段は、
複数の上記周波数誤差に基づく統計的処理により、上記位相誤差の検出結果における逆相への飛び越しタイミングを検出し、当該飛び越しタイミングに対応した上記周波数誤差を除外する
ことを特徴とする請求項1に記載の同期装置。
【請求項8】
上記周波数誤差検出手段は、
上記周波数誤差の絶対値が所定の閾値を超えた時点を上記飛び越しタイミングとして検出し、当該周波数誤差を所定の固定値に置き換える
ことを特徴とする請求項7に記載の同期装置。
【請求項9】
上記周波数誤差検出手段は、
上記位相誤差の検出結果とその直前のタイミングにおける上記位相誤差の検出結果との差分を算出することにより上記周波数誤差を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の同期装置。
【請求項10】
上記PLL回路は、所定の補間フィルタおいて上記サンプリングデータと所定のタップ係数との畳み込み演算により当該サンプリングデータに対する補間を行うと共に、上記位相誤差を基にフィードバックループにより上記サンプリングクロックの位相を制御するITR(Interpolated Timing Recovery)回路であって、
上記入力データを等化する際の目標周波数特性を周波数軸から時間軸へ変換することにより生成される変換値を用いて上記補間フィルタにおける上記タップ係数を生成するタップ係数生成手段と
ことを特徴とする請求項1に記載の同期装置。
【請求項11】
入力データをサンプリングする際のサンプリングクロックをPLL回路によって制御することにより、当該入力データにおける本来サンプリングすべき目標位相に対して当該サンプリングクロックの位相を同期させる同期方法であって、
上記入力データを上記サンプリングクロックのタイミングでサンプリングしたサンプリングデータと上記サンプリングクロックとから位相誤差を検出する位相誤差検出ステップと、
上記位相誤差の検出結果における微分係数を基に周波数誤差を検出する周波数誤差検出ステップと、
上記検出した周波数誤差を基に算出した周波数補正値を上記PLL回路におけるループフィルタの積分項に加算することにより当該周波数誤差を0に近づけるよう上記サンプリングクロックの周波数を補正する周波数補正ステップと
を具えることを特徴とする同期方法。
【請求項12】
入力データをサンプリングする際のサンプリングクロックをPLL回路によって制御することにより、当該入力データにおける本来サンプリングすべき目標位相に対して当該サンプリングクロックの位相を同期させる同期装置に対して、
上記入力データを上記サンプリングクロックのタイミングでサンプリングしたサンプリングデータと上記サンプリングクロックとから位相誤差を検出する位相誤差検出ステップと、
上記位相誤差の検出結果における微分係数を基に周波数誤差を検出する周波数誤差検出ステップと、
上記検出した周波数誤差を基に算出した周波数補正値を上記PLL回路におけるループフィルタの積分項に加算することにより当該周波数誤差を0に近づけるよう上記サンプリングクロックの周波数を補正する周波数補正ステップと
を実行させることを特徴とする同期プログラム。
【請求項13】
記録媒体から読み出した読出データをサンプリングする際のサンプリングクロックをPLL回路によって制御することにより、当該読出データにおける本来サンプリングすべき目標位相に対して当該サンプリングクロックの位相を同期させてデータを再生するデータ再生装置であって、
上記記録媒体にアクセスすることにより上記読出データを生成する読出データ生成手段と、
上記読出データを上記サンプリングクロックのタイミングでサンプリングしたサンプリングデータと上記サンプリングクロックとから位相誤差を検出する位相誤差検出手段と、
上記位相誤差の検出結果における微分係数を基に周波数誤差を検出する周波数誤差検出手段と、
上記検出した周波数誤差を基に算出した周波数補正値を上記PLL回路におけるループフィルタの積分項に加算することにより当該周波数誤差を0に近づけるよう上記サンプリングクロックの周波数を補正する周波数補正手段と、
上記サンプリングデータに所定の信号処理を施すことにより上記データを再生する再生処理手段と、
を具えることを特徴とするデータ再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−122774(P2007−122774A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310077(P2005−310077)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]