説明

含窒素カーボンアロイ、その製造方法及びそれを用いた炭素触媒

【課題】貴金属以外の金属が均一に担持され、酸素還元活性が充分に高く、精製容易かつ幅広い構造を選択できる低分子の有機化合物を焼成して得られる含窒素カーボンアロイ、その製造方法及びそれを用いた炭素触媒を提供する。
【解決手段】含窒素カーボンアロイは、分子量60〜1000の含窒素結晶性有機化合物を含む有機材料を焼成して得る。製造方法は(1)含窒素結晶性有機化合物と前記無機金属及び/又は無機金属塩とを混合する工程(2)不活性雰囲気下で室温から炭素化温度まで昇温する工程(3)500℃〜1000℃で、0.1時間〜100時間保持する炭素化工程(4)炭素化温度から室温まで冷却する冷却工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は含窒素カーボンアロイ、その製造方法及びそれを用いた炭素触媒に係り、更に詳しくは、低分子量の含窒素結晶性有機化合物に由来する含窒素カーボンアロイ、その製造方法及びそれを用いた炭素触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、白金(Pt)やパラジウム(Pd)等を用いる貴金属系触媒が、高い酸素還元活性を有する触媒として、例えば自動車や家庭用電熱併給システム等に使用される固体高分子電解質形燃料電池に用いられてきた。しかし、このような貴金属系触媒は高コストであるため、さらなる普及が難しくなっているのが現状である。
そのため、白金を大幅に低減した触媒や、白金を使用することなく形成された触媒の技術開発が進められている。例えば、特許文献1では、ポリフルフリルアルコール、フェノールホルムアルデヒド、メラミン樹脂等の前駆体に、コバルトフタロシアニン、鉄フタロシアニン等の金属錯体を混合して重合した重合物を焼成して得たカーボンアロイを用いた触媒が提案されている。このようにして得られたカーボンアロイ触媒は、金属錯体が均一に分散された後にその金属以外の部分、例えばフタロシアニンが分解されるので、金属が均一に担持され、酸素還元活性が高くなることが知られている(非特許文献1)。
また、特許文献3には金属錯体と環状の有機化合物を混合して加熱処理して得た燃料電池用電極触媒が記載されている。特許文献4には芳香族骨格からなる単核錯体を加熱処理、放射線照射処理又は放電処理の何れかの変性処理をして得た変性金属錯体からなる触媒が記載されている。
【0003】
しかし、このカーボンアロイ触媒はポリマー材料中に含有溶剤などの低分子不純物が存在するため、これを除去する必要があり製造工程が煩雑である。その点では、低分子化合物はあらかじめ精製することで高純度の前駆体を調整することが可能であり、前駆体の選択の幅を広げられる利点がある。
低分子化合物を原料として用いたカーボンアロイとしては、特許文献2に金属錯体と不飽和化合物とを焼成したものが開示されている。特許文献5には金属錯体とヘテロ原子2個以上を同一の環に有する骨格を持つ多環式有機化合物とを焼成したものが開示されている。しかし金属錯体は、精製が難しく、また不飽和化合物も金属錯体の配位子と反応させる必要があり、構造も限定されるため、酸素還元活性が高いカーボンアロイを安定して調製する事は容易ではなく低分子化合物を用いた利益が得にくい。非特許文献3には、含窒素多環式有機化合物とグルコン酸第二鉄、酢酸マグネシウムを混合、焼成した例が開示されている。しかし、酸素還元活性が上記の重合物由来のカーボンアロイに比して低いため、白金やパラジウム等の貴金属の使用を排除することが難しい。
【0004】
一方、金属原子を含まない低分子化合物は、精製の困難性や構造の限定などの問題点を有さない。しかし、例えば非特許文献2において、アミノ酸、グルコース、乳酸鉄を混合後、脱水反応して、焼成した例が開示されている。ここではアミノ酸単独では350℃で分解して炭素化できないことが明らかにされている。このように、金属原子を有さない低分子化合物を焼成して炭素化させることは困難であるため、当業者において、金属原子を有さない低分子化合物からカーボンアロイは得られないとされてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−26746号公報
【特許文献2】特開2009−39623号公報
【特許文献3】特開2009−173627号公報
【特許文献4】特開2009−234918号公報
【特許文献5】特開2010−270107号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】平成21年度触媒学会燃料電池関連触媒研究会講演会及び発表会予稿集:「燃料電池用新電極触媒の進展」尾崎純一ら(平成21年3月17日、東京理科大)
【非特許文献2】Jun Maruyama, Ikuo Abe, Journal of the Electrochemical Society,154(3), B297(2007)
【非特許文献3】Jun Maruyama, Carbon, 48, 3271(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の問題点を解決するものであり、貴金属以外の金属が均一に担持され、酸素還元活性が充分に高く、精製容易かつ幅広い構造を選択できる低分子の有機化合物を焼成して得られるカーボンアロイ、その製造方法及びそれを用いた炭素触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、分子量60〜2000の含窒素結晶性有機化合物を含む有機材料を焼成することによって、酸素還元活性が充分に高い含窒素カーボンアロイが得られることを見出した。更に、含窒素結晶性有機化合物に無機金属又は無機金属塩を混合することにより、金属が均一に担持され、酸素還元活性がより高い含窒素カーボンアロイが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
具体的には、金属原子を有さない低分子化合物を焼成すると気化してしまうが、該低分子化合物を結晶化することにより分子間相互作用を向上させて焼成時の気化を抑制することができる。また結晶化した化合物を用いることで、その結晶構造に対応した様々な構造の格子間構造を有するカーボンアロイを簡便に調製し、格子間構造と密接に関連する触媒活性や導電性の制御を可能とした。
更に、有機材料中の金属酸化物等は取り除くことが好ましいとの報告もあるが(特許文献4)、それに反し、有機材料が無機金属及び無機金属塩から選択される少なくとも1種を含む態様が、より優れた効果を奏することを見出した。これは含窒素結晶性低分子化合物、及び無機金属又は無機金属塩を用いることにより、結晶エッジに極めて規則正しく窒素原子と金属が均一に位置して、あらかじめ窒素と金属が相互作用するため、窒素原子と金属の組成比が、高酸素還元活性を有する組成に自然に形成されて高酸素還元活性のカーボンアロイが得られたと考えられる。
すなわち、上記課題は以下の手段により達成することができる。
【0010】
〔1〕
分子量60〜2000の含窒素結晶性有機化合物を含む有機材料を焼成して得られた含窒素カーボンアロイ。但し、該含窒素結晶性有機化合物には、含窒素金属錯体を含まない。
〔2〕
前記有機材料がさらに、無機金属、及び無機金属塩から選択される少なくとも1種を含む〔1〕に記載の含窒素カーボンアロイ。
〔3〕
前記含窒素結晶性有機化合物が、ニトリル化合物、アミド化合物、又はキナクリドン化合物である〔1〕又は〔2〕に記載の含窒素カーボンアロイ。
〔4〕
前記含窒素結晶性有機化合物が分子内にニトリル基、アミド基、及び4−キノロン骨格から選択される少なくとも1つ、及び不飽和結合を有する有機化合物である〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイ。
〔5〕
前記含窒素結晶性有機化合物が分子内にニトリル基およびアミド基から選択される少なくとも1つと、更に、ニトリル基、アミド基、ハロゲン原子、及び水酸基から選択される少なくとも1つと、不飽和結合とを有する有機化合物である〔4〕に記載の含窒素カーボンアロイ。
〔6〕
前記含窒素結晶性有機化合物が顔料である〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイ。
〔7〕
前記含窒素結晶性有機化合物の窒素含率が0.1質量%〜55質量%である〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイ。
〔8〕
前記有機材料が、窒素雰囲気下で400℃におけるΔTgが−95%以上−0.1%以下である難揮発性化合物である〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイ。
〔9〕
前記焼成が500℃〜1000℃の焼成温度、かつ、不活性ガスまたは非酸化性ガス流通下で行われる〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイ。
〔10〕
前記不活性ガスまたは非酸化性ガスの流速が内径36mmφ当たり0.01〜2.0リットル/分である〔9〕に記載の含窒素カーボンアロイ。
〔11〕
1)前記含窒素結晶性有機化合物と前記無機金属及び/又は無機金属塩とを混合する工程と
2)不活性雰囲気下で室温から炭素化温度まで毎分1℃以上1000℃以下で昇温する昇温工程と
3)500℃〜1000℃で、0.1時間〜100時間保持する炭素化工程と
4)炭素化温度から室温まで冷却する冷却工程と
を含む〔2〕〜〔10〕のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
〔12〕
〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイを含有する炭素触媒。
〔13〕
〔12〕に記載の炭素触媒と高分子電解質とを含有する燃料電池。
〔14〕
〔12〕に記載の炭素触媒を含有する蓄電装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、精製容易かつ幅広い構造を選択できる低分子の含窒素結晶性有機化合物を含む有機材料を焼成することによって、酸素還元活性が充分に高い含窒素カーボンアロイが得られることを見出した。更に、含窒素結晶性有機化合物に無機金属又は無機金属塩を混合することにより金属が均一に担持され、酸素還元活性がより高く、所望の格子構造を有する含窒素カーボンアロイを提供することができる。該含窒素カーボンアロイは、炭素触媒として使用することができ、該炭素触媒は、燃料電池や環境触媒の用途に応用することができる。
また本発明によれば、上記含窒素カーボンアロイの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のカーボンアロイを用いた燃料電池の概略構成図である。
【図2】本発明のカーボンアロイを用いた電気二重層キャパシタの概略構成図である。
【図3】本発明による実施例2、5、8、10、14、21、24及び比較例4による燃料電池の電圧−電流密度曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで、本明細書中で用いられるハメットの置換基定数σp値について若干説明する。
ハメット則はベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳細に記載されている。なお、本発明において各置換基をハメットの置換基定数σpにより限定したり説明したりするが、これは上記の成書で見出せる、文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなく、その値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合にその範囲内に含まれるであろう置換基をも含むことはいうまでもない。本発明の一般式(1)又は(2)、で表される顔料はベンゼン誘導体ではないが、置換基の電子効果を示す尺度として、置換位置に関係なくσp値を使用する。本発明においては今後、σp値をこのような意味で使用する。
【0014】
また、本発明における置換基とは、置換可能な基であればよく、例えばハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子又は沃素原子)、ヒドロキシ基、シアノ基、脂肪族基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アリール基(置換する位置は問わない)、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、脂肪族オキシ基(アルコキシ基又は、アルキレンオキシ基、エチレンオキシ基若しくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、チオカルバモイル基、脂肪族カルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、ヘテロ環カルボニルオキシ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシアミノ基、アリールオキシアミノ基、スルファモイルアミノ基、アシルスルファモイルアミノ基、オキサモイルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、カルバモイルアミノ基、メルカプト基、脂肪族チオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、スルファモイル基、脂肪族スルホニルウレイド基、アリールスルホニルウレイド基、ヘテロ環スルホニルウレイド基、脂肪族スルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルファモイル基、アリールスルファモイル基、ヘテロ環スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルフォニルスルファモイル基又はその塩、カルバモイルスルファモイル基、スルホンアミド基、脂肪族ウレイド基、アリールウレイド基、ヘテロ環ウレイド基、脂肪族スルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、脂肪族スルフィニル基、アリールスルフィニル基、ニトロ基、ニトロソ基、ジアゾ基、アゾ基、ヒドラジノ基、ジ脂肪族オキシホスフィニル基、ジアリールオキシホスフィニル基、シリル基(例えばトリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)、シリルオキシ基(例えばトリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ボロノ基、イオン性親水性基(例えば、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基及び4級アンモニウム基)等を挙げることができる。これらの置換基群は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基から選択される基を挙げることができる。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)含窒素カーボンアロイ
本発明の含窒素カーボンアロイは、分子量60〜2000の含窒素結晶性有機化合物を含む有機材料を焼成して得られる。
【0016】
(含窒素結晶性有機化合物)
本発明において、含窒素結晶性有機化合物とは結晶性を有する化合物であって、窒素を含むものをいう。例えば、窒素を含む化合物であって、炭化水素骨格における炭素原子が酸素、窒素、硫黄などのヘテロ原子に置換された化合物、又は炭化水素骨格における水素原子が酸素、窒素、硫黄などのヘテロ原子を含む官能基で置換された化合物を挙げることができる。また、分子が規則的に配列しやすいという結晶性を有する必要がある。但し、含窒素結晶性有機化合物には含窒素金属錯体を含まない。含窒素金属錯体は、精製が困難であり、含窒素配位子と金属錯体の組成比が一定であるため、焼成時に分解した際、含窒素配位子の分解速度と配位金属錯体の気化速度の制御ができず目的とする含窒素カーボンアロイを得ることが難しい。たとえ、含窒素金属錯体と低分子有機化合物とを混ぜ合わせたとしても、含窒素金属錯体結晶が分解し、金属が直接還元を被るため、生成した近接金属同士が凝集結晶化しやすくなる。酸洗浄により金属が除去されてしまうため、得られる含窒素カーボンアロイが不均一になるため求める機能が低減する。たとえば触媒で有れば触媒活性が低下する等の理由より、本願に適しない。
【0017】
(結晶構造)
本発明にかかる含窒素結晶性有機化合物は、π-π相互作用、配位結合、電荷移動相互作用、及び水素結合より選択される、2つ以上の結合又は相互作用により結晶構造を形成していることが好ましい。結晶構造を形成した低分子化合物を用いることにより分子間相互作用を向上させて、含窒素カーボンアロイを得る際の焼成時の気化を抑制することができるためである。
【0018】
ここで言う結晶構造とは結晶中の分子の配列様式・配置様式のことをいう。言い換えると、結晶構造は単位格子の繰り返し構造からなり、分子はこの単位胞内の任意の部位に配置して、配向をしている。また、結晶中、分子は均一な様体をなしている。すなわち、結晶中の官能基の配置が均一であるため、分子の各相互作用は、単位胞内もしくは単位胞外で同一である。たとえば、積層構造を有する窒素結晶性有機化合物の場合、芳香環、複素環、縮合多環、縮合複素多環、不飽和基(C≡N基、ビニル基、アリル基、アセチレン基)等は相互作用(例えば芳香環はface−to−faceでπ−π相互作用(π−πスタック))が生じる。これらの環や基における不飽和結合由来の炭素のSP2軌道もしくはSP軌道が分子間で規則正しく等間隔で重なることで積層し、積層カラム構造を形成する。
【0019】
さらにこの積層カラム構造において、隣接する積層カラム間は水素結合またはファンデルワールス相互作用により、分子間距離が規定された均一な構造を有する。このため、結晶内の熱伝達が容易に達成される効果を有する。
また、本発明にかかる含窒素結晶性有機化合物は低分子化合物でありながら結晶性を有し、熱に対してフォノン(量子化された格子振動)により振動緩和され耐熱性を有する。そのため分解温度が炭素化温度まで保持され、分解物の気化が低減されて炭素化され、カーボンアロイ骨格が形成される。
【0020】
非結晶性の化合物では焼成時に配向が制御できないことから、不均一な炭素材料となるため、好ましくない。
【0021】
含窒素結晶性有機化合物は、さらに融点が25℃以上であることが好ましい。融点が25℃未満であると、焼成時に耐熱性に寄与する空気層が存在せず、温度と蒸気圧の関係から沸騰もしくは突沸してしまい、炭素材料を得ることができない。
【0022】
本発明にかかる含窒素結晶性有機化合物は、分子量が60〜2000であって、窒素原子を含む結晶性の有機化合物であれば特に制限はない。本発明にかかる含窒素結晶性有機化合物の分子量は好ましくは100〜1500、より好ましくは130〜1000である。
【0023】
含窒素結晶性有機化合物は、例えば、前記置換基群のうち、1つ以上の官能基を有し、及び/又はヘテロ環基を有することが好ましく、中でも、ハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子または沃素原子)、ヒドロキシ基(水酸基)、シアノ基、脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、脂肪族アミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシアミノ基、アリールオキシアミノ基、スルファモイルアミノ基、アシルスルファモイルアミノ基、オキサモイルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、又はカルバモイルアミノ基の内、1つ以上の官能基を有することがさらに好ましい。含窒素結晶性有機化合物としては、アミン類、イミン類、ニトリル類、イミド類、アミド類等の含窒素結晶性有機化合物が挙げられるが結晶性や耐熱性の観点からニトリル化合物、アミド化合物、キナクリドン化合物であることがより好ましく、ニトリル化合物、又はアミド化合物であることが更に好ましい。
【0024】
上記含窒素結晶性有機化合物は、分子内にニトリル基、アミド基、4−キノロン骨格から選択される少なくとも1つ及び不飽和結合を有する有機化合物であることが好ましく、分子内にニトリル基およびアミド基から選択される少なくとも1つ及び不飽和結合を有する有機化合物であることがより好ましく、分子内にニトリル基およびアミド基から選択される少なくとも1つと、更にニトリル基、アミド基、ハロゲン原子、および水酸基から選択される少なくとも1つと、不飽和結合とを有する有機化合物であることがさらに好ましく、分子内にニトリル基およびアミド基から選択される少なくとも1つと、ニトリル基、アミド基、ハロゲン原子から選択される少なくとも1つと、不飽和結合とを有する有機化合物であることが更により好ましい。
分子内にニトリル基又はアミド基を有することで、焼成して得られる含窒素カーボンアロイにおいて、C、N、金属からなる高酸素還元活性を有する活性点が生成すると考えられる。
【0025】
さらに窒素結晶性有機化合物は不飽和結合によって芳香族環を形成していることが好ましく、芳香族環として、ヘテロ原子を1つ含む複素環、ベンゼン環が好ましく、最も好ましくは置換もしくは無置換のベンゼン環、置換もしくは無置換のピリジン環である。不飽和結合が存在することで、前記相互作用が生じ、カーボンアロイ骨格を形成すると思われる。
【0026】
さらに、積層カラム間にたとえばアミド基、アミン基、ニトリル基の窒素(N)、ヘテロ環のヘテロ元素(ピリジル基の窒素(N))、カルボニル基、エーテル基、ヒドロキシ基のカルコゲン元素(O,S,Se)、ハロゲン元素(F,Cl,Br,I)などを有するとたとえばプロトン(H)との間で水素結合が生じる。水素結合と配位結合、電荷移動相互作用、酸塩基相互作用、ファンデルワールス相互作用等が、3次元的、2次元網目状に1つ以上存在するか、あるいは多点相互作用で積層カラム間を制御するといった効果がある。
【0027】
これらの含窒素結晶性有機化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、含窒素結晶性有機化合物中の金属含有量は10ppm以下であることが好ましい。なお、分子量を上記範囲とすることで、焼成前の精製が容易となる。
【0028】
含窒素結晶性有機化合物の窒素含率は、0.1質量%〜55質量%であることが好ましく、1質量%〜30質量%であることがより好ましく、更に4質量%〜20質量%であることが特に好ましい。上記範囲で窒素原子(N)を含有する化合物を使用することにより、別途窒素源となる化合物を導入する必要がなく、結晶エッジに規則正しく窒素原子と金属が均一に位置して、窒素と金属が相互作用しやすくなる。これにより窒素原子と金属の組成比がより高酸素還元活性を有する組成比となり得る。
【0029】
また、含窒素結晶性有機化合物は、窒素雰囲気下で400℃におけるΔTGが−95%〜−0.1%である難揮発性化合物であることが好ましく、−95%〜−1%である難揮発性化合物であることがより好ましく、−90%〜−5%であることが特に好ましい。また、含窒素結晶性有機化合物に無機金属または無機金属塩(好ましくは金属塩化物)を混合してもよい。焼成時に気化しないで、炭素化すればよい。
ここで、ΔTGは含窒素結晶性有機化合物、または、含窒素結晶性有機化合物および無機金属または無機金属塩との混合物のTG−DTA測定において、窒素を毎分100mL流通下、30℃から1000℃まで毎分10℃で昇温した際、室温(30℃)における重量を基準にした400℃での質量減少率を指す。
ΔTGの値を当該範囲とした難揮発性化合物とすることで、焼成時の分解を防止することができ、得られる炭素収率も高くなる。
【0030】
上記含窒素複素環式化合物としては、含窒素複素単環化合物及び含窒素縮合複素環化合物が挙げられ、含窒素複素単環化合物としては、5員環化合物であるピロール及びその誘導体、ピラゾールやイミダゾール等のジアゾール類及びその誘導体、トリアゾール類及びその誘導体、並びに、6員環化合物であるピリジン及びその誘導体、ピリダジンやピリミジンやピラジン等のジアジン類及びその誘導体、トリアジン類及び、メラミンやシアヌル酸等のトリアジン類誘導体等が挙げられる。また、含窒素縮合複素環化合物としては、キノリン、フェナントロリン、プリン等が挙げられる。
【0031】
上記アミン類としては、第1級〜第3級アミン、ジアミン類、トリアミン類、ポリアミン類及びアミノ化合物等が挙げられる。第1級〜第3級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン及びトリメチルアミン等の脂肪族アミン、並びに、アニリン等の芳香族アミン及びその誘導体等が挙げられ、ジアミン類としては、エチレンジアミン等が挙げられ、アミノ化合物としては、エタノールアミン等のアミノアルコール等が挙げられる。また、上記イミン類としては、ピロリジン及びエチレンイミン等が挙げられる。更に、上記ニトリル類としては、アセトニトリル等の脂肪族ニトリル及びベンゾニトリル、フタロニトリル、イソフタロニトリル、テレフタロニトリル、テトラシアノベンゼン等の芳香族ニトリルおよびそのハロゲン化物、イソニトリル、アミノ酸等が挙げられる。上記アミド類としては、カルボン酸アミド、N置換アミド、Nジ置換アミド等のN置換アミド、芳香族アミド、芳香族ジアミド等の芳香族アミド、ウレア(尿素)、カルバミド、ウレタン、ラクタム、ラクチム、ヒドラジド、イミド酸、イミド酸エステル等が挙げられる。
【0032】
上記含窒素複素環式化合物は顔料であることが好ましい。
顔料は分子間でπ−π相互作用により、積層カラム構造を形成し、積層カラム間を水素結合又はファンデルワールス相互作用により、分子間距離が規定された均一な構造を有するため、結晶内の熱伝達が容易に達成される効果を有する。また、低分子化合物でありながら結晶性を有し、熱に対してフォノン(量子化された格子振動)により振動緩和され耐熱性を有する。そのため分解温度が炭素化温度まで保持され、分解物の気化が低減されて炭素化が達成される効果を有する。
なかでも、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キナクリドン系顔料、オキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、キノフタロン系顔料、および上記顔料をラテント化したラテント顔料(後述)、また染料を金属イオンで顔料化したレーキ顔料等の顔料が好ましく、ジケトピロロピロール系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、および上記顔料をラテント化したラテント顔料(後述)がより好ましい。これらの顔料を焼成すると分解生成するベンゾニトリル(Ph−CN)骨格が反応活性種となり、より高い酸素還元反応活性を有するカーボンアロイ触媒が生成するからである。また金属種(M)が共存することによりPh−CN…Mの錯体を形成し、更に高酸素還元反応活性なカーボンアロイが生成する。
【0033】
含窒素結晶性有機化合物としては、下記一般式(1)で表わされる含窒素結晶性有機化合物、その互変異性体、それらの塩又はそれらの水和物を挙げることができる。
【0034】
【化1】

【0035】
一般式(1)中、Z、及びZはそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、ヒドロキシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基(−CONH)、又はスルホニル基を表し、nは1〜3の整数を表わす。n=2の場合は、Z、及びZを介した2量体構造を示し、n=3の場合は、Z、及びZを含むベンゼン環又はトリアジン環を介した3量体構造を示す。Aは、下記一般式(A−1)〜(A−39)のいずれかを示す。
【0036】
【化2】

【0037】
一般式(A−1)〜(A−39)中、R51〜R60はそれぞれ独立に水素原子、又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5又は6員環を形成してもよい。*は一般式(1)中のピロリドン構造との結合位置を表す。
【0038】
、及びZが表す脂肪族基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Z、及びZの脂肪族基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、i−プロピル、シクロヘキシル、t−ブチル等が挙げられる。
【0039】
、及びZが表すアリール基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Z、及びZのアリール基として、好ましくは総炭素原子数6〜12のアリール基であり、より好ましくは総炭素原子数6〜10のアリール基であり、例えばフェニル、3−メトキシフェニル、4−カルバモイルフェニル等が挙げられる。
【0040】
、及びZが表すヘテロ環基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、縮環していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Z、及びZのヘテロ環基として、好ましくは総炭素原子数2〜16のヘテロ環基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜12の5〜6員環のヘテロ環基であり、例えば1−ピロリジニル、4−モルホリニル、2−ピリジル、1−ピロリル、1−イミダゾリル、1−ベンゾイミダゾリル等が挙げられる。
【0041】
、及びZが表す脂肪族オキシカルボニル基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Z、及びZの脂肪族オキシカルボニル基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルコキシカルボニル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、i−プロピルオキシカルボニル、カルバモイルメトキシカルボニル等が挙げられる。
【0042】
、及びZが表すカルバモイル基としては、置換基を有していてもよい。置換基を有する場合の置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましくは、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等である。Z、及びZの置換基を有していてもよいカルバモイル基として、好ましくはカルバモイル基、総炭素原子数2〜9のアルキルカルバモイル基、総炭素原子数3〜10のジアルキルカルバモイル基、総炭素原子数7〜13のアリールカルバモイル基、総炭素原子数3〜12のヘテロ環カルバモイル基であり、より好ましくはカルバモイル基、総炭素原子数2〜7のアルキルカルバモイル基、総炭素原子数3〜6のジアルキルカルバモイル基、総炭素原子数7〜11のアリールカルバモイル基、総炭素原子数3〜10のヘテロ環カルバモイル基であり、例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、フェニルカルバモイル、4−ピリジンカルバモイル等が挙げられる。
【0043】
、及びZで表されるスルファモイル基としては置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましくは、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等である。置換基を有していてもよいスルファモイル基として、好ましくはスルファモイル基、総炭素原子数1〜9のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数2〜10のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数7〜13のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2〜12のヘテロ環スルファモイル基であり、より好ましくはスルファモイル基、総炭素原子数1〜7のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数3〜6のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数6〜11のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2〜10のヘテロ環スルファモイル基であり、例えば、スルファモイル、メチルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル、4−ピリジンスルファモイル等が挙げられる。
【0044】
、及びZは互いに結合して5〜6員環を形成していてもよい。Z、及びZはが互いに結合して形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環、ピロリドン環等が挙げられる。好ましくは、ピロリドン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、であり、より好ましくはピロリドン環である。
【0045】
51〜R60が表す置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R51〜R59の置換基として、好ましくはハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子又は沃素原子)、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいウレイド基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基又はスルホニル基等であり、より好ましくはハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子又は沃素原子)、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいウレイド基、脂肪族オキシ基、シアノ基等である。
【0046】
本発明の効果の点でR51〜R59は水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子又は沃素原子)、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいウレイド基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基又はスルホニル基等である場合が好ましく、水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子又は沃素原子)、脂肪族基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいウレイド基、脂肪族オキシ基、シアノ基である場合はより好ましい。
【0047】
60で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R60の置換基として、好ましくは脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、R60及びR60に隣接するR51〜R59とを介した芳香族5〜6員ヘテロ環等であり、より好ましくは脂肪族基、アリール基、該結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基、R60及びR60に隣接するR51〜R59とを介した芳香族5〜6員ヘテロ環である。
【0048】
本発明の効果の点で、R60は脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基である場合が好ましく、脂肪族基、アリール基、該結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基、R60及びR60に隣接するR51〜R59とを介した芳香族5〜6員ヘテロ環である場合はより好ましく、該結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基、R60及びR60に隣接するR51〜R59とを介した芳香族5〜6員ヘテロ環である場合は更に好ましい。R60が該結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基があることにより、π-π分子間相互作用だけでなく、分子内水素結合を介した相互作用により耐熱性が付与されやすくなる。また、R60及びR60に隣接するR51〜R59とを介した芳香族5〜6員ヘテロ環があることにより、π-π分子間相互作用により耐熱性が付与されるだけでなく、カーボンアロイのグラフェン内に窒素原子を置換することができ、カーボンアロイのグラフェン内に窒素が導入されやすくなり、酸素還元反応活性に優れる。
【0049】
52〜R54で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。本発明の効果の点で、R52〜R54として、好ましくは、ヘテロ環基、ハメットの置換基定数σp値が0.2以上の電子求引性基であり、σp値が0.30以上の電子求引性基であることが好ましい。上限としては1.0以下の電子求引性基である。
【0050】
σp値が0.20以上の電子求引性基であるR52〜R54の具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、σp値が0.20以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、又はセレノシアネート基が挙げられる。
【0051】
本発明において、前記一般式(1)におけるAが下記一般式(A−1)〜(A-16)、(A-39)のいずれかを表すことが好ましく、(A−1)〜(A-4)、(A−6)〜(A-8)、(A-10)、(A-39)のいずれかを表すことがより好ましい。
Aとして挙げられた(A−1)〜(A−39)を用いることにより、分解生成物中にCN結合が生成し、このCNと金属とが相互作用することによって、炭素化まで窒素が保持される。そのため、カーボンアロイのグラフェン内に窒素が導入されやすくなり、酸素還元反応活性に優れるため好ましい。特に、このような構造的特徴を有する顔料を用いることが好ましい。
複素環の中で、(A−2)〜(A−4)、(A−6)〜(A-8)、(A-10)、(A-39)であれば、ヘテロ環内に窒素が含まれるため、含窒素結晶性有機化合物の結晶構造に由来したエッジ部に規則正しく窒素が配列するため遊離した金属イオンが配位するため好ましい。
【0052】
前記一般式(1)で表わされる含窒素結晶性有機化合物は、下記一般式(2)で表わされる含窒素結晶性有機化合物であることが好ましい。
【0053】
【化3】

【0054】
一般式(2)中、Z、及びZは水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、ヒドロキシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基(−CONH)、又はスルホニル基を表し、nは1〜3の整数を表わす。n=2の場合は、Z、及びZを介した同一構造がC2対称の2量体構造を示し、n=3の場合は、Z、及びZを含むベンゼン環を介した同一構造がC3対称の3量体構造を示す。Aは、一般式(1)における一般式(A−1)〜(A−39)を示す。なお*は一般式(2)中のピロリドン構造との結合位置を表す。
【0055】
一般式(2)で表される含窒素結晶性有機化合物のZ、Z、A、及びnの好ましい置換基、範囲は、一般式(1)におけるZ、Z、A、及びnと同じである。
【0056】
前記一般式(2)で表わされる含窒素結晶性有機化合物は、下記一般式(3)で表わされる含窒素結晶性有機化合物であることが好ましい。
【0057】
【化4】

【0058】
(一般式(3)中、Aは上記一般式(A−1)〜(A−39)を示す。なお*は一般式(3)中のAとの結合位置を表す。)
【0059】
一般式(3)で表される含窒素結晶性有機化合物のAの好ましい置換基、範囲は、一般式(1)におけるAと同じである。
【0060】
前記一般式(1)で表わされる含窒素結晶性有機化合物は、下記一般式(4)で表わされる含窒素結晶性有機化合物であることが好ましい。
【0061】
【化5】

【0062】
一般式(4)中、Z、及びZはそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、ヒドロキシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基(−CONH)、又はスルホニル基を表し、nは1〜3の整数を表わす。n=2の場合は、Z、及びZを介した同一構造がC2対称の2量体構造を示し、n=3の場合は、Z、及びZを含むベンゼン環を介した同一構造がC3対称の3量体構造を示す。R61〜R65はそれぞれ独立に水素原子、又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5又は6員環を形成してもよい。
【0063】
一般式(4)で表される含窒素結晶性有機化合物のR61〜R65の好ましい置換基、範囲は、一般式(1)におけるR51〜R55と同じである。
【0064】
前記一般式(3)又は一般式(4)で表わされる含窒素結晶性有機化合物は、下記一般式(5)で表わされる含窒素結晶性有機化合物であることが好ましい。
【0065】
【化6】

【0066】
(一般式(5)中、R61〜R70はそれぞれ独立に水素原子、又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5又は6員環を形成してもよい。)
【0067】
一般式(5)で表される含窒素結晶性有機化合物のR61〜R70の好ましい置換基、範囲は、一般式(1)におけるR51〜R55と同じである。
【0068】
前記一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されない。
なお、下記の具体例中Meはメチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【0069】
【化7】

【0070】
また、本発明において顔料は構造において限定されるものではなく、マゼンタ顔料、イエロー顔料、及びシアン顔料のいずれであってもよい。有機顔料としては例えば、ペリレン化合物顔料、ペリノン化合物顔料、キナクリドン化合物顔料、キナクリドンキノン化合物顔料、アントラキノン化合物顔料、アントアントロン化合物顔料、ベンズイミダゾロン化合物顔料、ジスアゾ縮合化合物顔料、ジスアゾ化合物顔料、アゾ化合物顔料、インダントロン化合物顔料、インダンスレン化合物顔料、キノフタロン化合物顔料、キノキサリンジオン化合物顔料、無金属フタロシアニン化合物顔料、トリアリールカルボニウム化合物顔料、ジオキサジン化合物顔料、アミノアントラキノン化合物顔料、ジケトピロロピロール化合物顔料、ナフトールAS化合物顔料、チオインジゴ化合物顔料、イソインドリン化合物顔料、イソインドリノン化合物顔料、ピラントロン化合物顔料、イソビオラントロン化合物顔料、又はそれらの混合物のマゼンタ顔料、イエロー顔料、又はシアン顔料、および上記顔料をラテント化したラテント顔料およびそれらの混合物、上述の顔料との混合物を用いてもよい。
【0071】
更に詳しくは、例えば、C.I.Pigment Red.190(PR190、C.I.番号71140)、C.I.Pigment Red.224(PR224、C.I.番号71127)、C.I.Pigment Violet.29(PV29、C.I.番号71129)等のペリレン系顔料、
C.I.Pigment Orange.43(PO43、C.I.番号71105)、若しくはC.I.Pigment Red.194(PR194、C.I.番号71100)等のペリノン系顔料、
C.I.Pigment Violet.19(PV19、C.I.番号73900)、C.I.Pigment Violet.42(PV42)、C.I.Pigment Red.122(PR122、C.I.番号73915)、C.I.Pigment Red.192(PR192、C.I.番号739155)、C.I.Pigment Red.202(PR202、C.I.番号73907)、C.I.Pigment Red.207(PR207、C.I.番号73900、73906)、若しくはC.I.Pigment Red.209(PR209、C.I.番号73905)のキナクリドン系顔料、
C.I.Pigment Red.206(PR206、C.I.番号73900/73920)、C.I.Pigment Orange.48(PO48、C.I.番号73900/73920)、若しくはC.I.Pigment Orange.49(PO49、C.I.番号73900/73920)等のキナクリドンキノン系顔料、
C.I.Pigment Yellow.147(PY147、C.I.番号60645)等のアントラキノン系顔料、
C.I.Pigment Red.168(PR168、C.I.番号59300)等のアントアントロン系顔料、
C.I.Pigment Brown.25(PB25、C.I.番号12510)、C.I.Pigment Violet.32(PV32、C.I.番号12517)、C.I.Pigment Yellow.180(PY180、C.I.番号21290)、C.I.Pigment Yellow.181(PY181、C.I.番号11777) 、C.I.Pigment Orange.62(PO62、C.I.番号11775)、若しくはC.I.Pigment Red.185(PR185、C.I.番号12516)等のベンズイミダゾロン系顔料、
C.I.Pigment Yellow.93(PY98、C.I.番号20710)、C.I.Pigment Yellow.94(PY94、C.I.番号20038)、C.I.Pigment Yellow.95(PY95、C.I.番号20034)、C.I.Pigment Yellow.128(PY128、C.I.番号20037)、 C.I.Pigment Yellow.166(PY166、C.I.番号20035)、C.I.Pigment Orange.34(PO34、C.I.番号21115)、C.I.Pigment Orange.13(PO13、C.I.番号21110)、C.I.Pigment Orange.31(PO31、C.I.番号20050)、C.I.Pigment Red.144(PR144、C.I.番号20735)、C.I.Pigment Red.166(PR166、C.I.番号20730)、 C.I.Pigment Red.220(PR220、C.I.番号20055)、C.I.Pigment Red.221(PR221、C.I.番号20065)、C.I.Pigment Red.242(PR242、C.I.番号20067)、C.I.Pigment Red.248(PR248)、C.I.Pigment Red.262(PR262)、若しくはC.I.Pigment Brown.23(PB23、C.I.番号20060)等のジスアゾ縮合系顔料、
C.I.Pigment Yellow.13(PY13、C.I.番号21100)、C.I.Pigment Yellow.83(PY83、C.I.番号21108)、若しくはC.I.Pigment Yellow.188(PY188、C.I.番号21094) 等のジスアゾ系顔料、
C.I.Pigment Red.187(PR187、C.I.番号12486)、C.I.Pigment Red.170(PR170、C.I.番号12475)、C.I.Pigment Yellow.74(PY74、C.I.番号11714)等のアゾ系顔料、
C.I.Pigment Blue.60(PB60、C.I.番号69800)等のインダントロン系顔料、
C.I.Pigment Yellow.138(PY138、C.I.番号56300)等のキノフタロン系顔料
C.I.Pigment Green.7(PG7、C.I.番号74260)、C.I.Pigment Green.36(PG36、C.I.番号74265)、若しくはPigment Blue.16(PB16、C.I.番号74100)、等のフタロシアニン系顔料、
C.I.Pigment Violet.23(PV23、C.I.番号51319)、若しくはC.I.Pigment Violet.37(PV37、C.I.番号51345)等のジオキサジン系顔料、
C.I.Pigment Red.177(PR177、C.I.番号65300)等のアミノアントラキノン系顔料、
C.I.Pigment Red.254(PR254、C.I.番号56110)、C.I.Pigment Red.255(PR255C.I.番号561050)、C.I.Pigment Red.264(PR264、C.I.番号561300)、C.I.Pigment Red.272(PR272)、C.I.Pigment Orange.71(PO71、C.I.番号561200)、若しくはC.I.Pigment Orange.73(PO73)等のジケトピロロピロール系顔料、
C.I.Pigment Red.88(PR88、C.I.番号73312)等のチオインジゴ系顔料、
C.I.Pigment Yellow.139(PY139、C.I.番号56298)、C.I.Pigment Yellow.185(PY185、C.I.番号12516)、C.I.Pigment Orange.66(PO66、C.I.番号48210)、若しくはC.I.Pigment Orange.69(PO69、C.I.番号56292)等のイソインドリン系顔料、
C.I.Pigment Yellow.109(PY109、C.I.番号56284)、C.I.Pigment Yellow.110(PY110、C.I.番号56280)、C.I.Pigment Yellow.137(PY137、C.I.番号561600)、若しくはC.I.Pigment Orange.61(PO61、C.I.番号11295)等のイソインドリノン系顔料、
C.I.Pigment Orange.40(PO40、C.I.番号59700)、若しくはC.I.Pigment Red.216(PR216、C.I.番号59710)等のピラントロン系顔料、
又はC.I.Pigment Violet.31(PV31)(60010)等のイソビオラントロン系顔料、である。中でも、キナクリドン化合物顔料、ジケトピロロピロール化合物顔料、イソインドリン系顔料、キノフタロン系顔料、および上記顔料をラテント化したラテント顔料が好ましく、
C.I.Pigment Red.254(PR254、C.I.番号56110)、C.I.Pigment Red.255(PR255、C.I.番号561050)、C.I.Pigment Red.264(PR264、C.I.番号561300)、C.I.Pigment Red.272(PR272、C.I.番号561150)、C.I.Pigment Orange.71(PO71)、若しくはC.I.Pigment Orange.73(PO73)等のジケトピロロピロール系顔料、
C.I.Pigment Violet.19(PV19、C.I.番号73900)、C.I.Pigment Violet.42(PV142)、C.I.Pigment Red.122(PR122、C.I.番号73915)、C.I.Pigment Red.192(PR192)、C.I.Pigment Red.202(PR202、C.I.番号73907)、C.I.Pigment Red.207(PR207、C.I.番号73900、73906)、若しくはC.I.Pigment Red.209(PR209、C.I.番号73905)のキナクリドン系顔料、C.I.Pigment Yellow.139(PY139、C.I.番号56298)、C.I.Pigment Yellow.185(PY185、C.I.番号12516)、C.I.Pigment Orange.66(PO66、C.I.番号48210)、若しくはC.I.Pigment Orange.69(PO69、C.I.番号56292)等のイソインドリン系顔料、
C.I.Pigment Yellow.109(PY109、C.I.番号56284)、C.I.Pigment Yellow.110(PY110、C.I.番号56280)、C.I.Pigment Yellow.137(PY137、C.I.番号561600)、若しくはC.I.Pigment Orange.61(PO61、C.I.番号11295)等のイソインドリノン系顔料、
C.I.Pigment Yellow.138(PY138、C.I.番号56300)等のキノフタロン系顔料、がより好ましい。
【0072】
また、上記顔料をラテント化したラテント顔料(潜在顔料)を用いてもよいし、これらのラテント顔料(潜在顔料)を単独で用いてもよく、2種類以上組合せて用いてもよい。顔料と組み合わせて使用しても良い。
本発明において用いられるラテント顔料(潜在顔料)とは、熱分解性基を有する化合物であり、かつ、熱等のエネルギーを付加することにより有機顔料に容易に変換し得る化合物である。ラテント顔料(潜在顔料)としては、顔料を構成する母体骨格に溶媒可溶性を促進させる保護基が導入された化合物が挙げられ、導入された保護基は、化学的処理、光分解的処理、熱処理などにより容易に脱離され、その結果、母体骨格が現れて顔料化が起こり、本来の顔料の色が発色する。
ラテント顔料(潜在顔料)については、Nature 388巻、131頁(1997)に記載されている。更に、例えば、特開平9−3362号公報、国際公開番号第98/32802号公報、国際公開番号第98/45757号公報、国際公開番号第98/58027号公報、国際公開番号第99/01511号公報、特開平11−92695号公報、特開平11−310726号公報に記載の、様々な色、構造を有するラテント顔料(潜在顔料)が挙げられている。
【0073】
好ましくは、特開2010−083982〔0066〕〔化21〕〜〔化27〕で記載の化合物を用いることができる。また、市販のものを用いても良い。
【0074】
より好ましくはPR254−LP、PR122−LP等のラテント顔料である。
【0075】
【化8】

【0076】
含窒素結晶性有機化合物としては、下記一般式(11)で表わされる含窒素結晶性有機化合物、その互変異性体、それらの塩又はそれらの水和物を挙げることができる。
【0077】
【化9】

【0078】
一般式(11)中、Aは一般式(A−1)〜(A−39)のいずれかを示す。一般式(A−1)〜(A−39)中、R51〜R60は水素原子、又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5又は6員環を形成してもよいし、縮合複素多環であっても良い。なお、一般式(A−1)〜(A−39)中の*は一般式(11)中のニトリル構造との結合位置を表す。
【0079】
【化10】

【0080】
一般式(11)で表される含窒素結晶性有機化合物のAの好ましい置換基、範囲は、一般式(1)におけるAと同じである。
【0081】
さらに好ましくは、下記一般式(13)から(18)で表される化合物である。
なお、下記の具体例中Meはメチル基を表し、Phはフェニル基、t−Buはtert−ブチル基を表す。
【0082】
【化11】

【0083】
(無機金属及び無機金属塩)
有機材料は、含窒素結晶性有機化合物に加え、無機金属、及び無機金属塩から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これにより、窒素原子との相互作用によって、より高い酸素還元活性を有するカーボンアロイが生成し得る。窒素結晶性有機化合物を含む有機材料を焼成することにより、含窒素結晶性有機化合物が分解し、生成した分解生成物が気相中で含窒素カーボンアロイ触媒を形成する。その際に、気相中に金属が近傍に存在すると、分解生成物は金属と相互作用(錯体を形成)し、含窒素カーボンアロイ触媒の性能が更に向上する。
また、カーボンアロイは、微粒子状の炭素粒子を形成し、好ましくは乱層構造を有する炭素粒子(たとえばナノシェル構造)を少なくとも一部に含有していることが好ましい。
本実施の形態のカーボンアロイは、遷移金属又は遷移金属化合物が添加されることが好ましく、該好ましい態様においては、窒素原子(N)を構成元素として含む含窒素結晶性有機化合物を炭素化することにより製造される。このとき窒素原子(N)を構成元素として含む含窒素結晶性有機化合物に添加されている遷移金属又は遷移金属化合物の触媒作用等により、窒素原子(N)が炭素触媒表面に高濃度に固定化された含窒素カーボンアロイを形成し、この窒素原子(N)と相互作用した遷移金属又は遷移金属化合物を含んだ炭素微粒子が形成されることが好ましい。
【0084】
本実施の形態のカーボンアロイが高い活性を示す要因として以下のことが考えられる。窒素結晶性有機化合物は分子間でπ−π相互作用により、積層カラム構造を形成し、積層カラム間を水素結合又はファンデルワールス相互作用により、分子間距離が規定された均一な構造を有しているこの相互作用を加熱により分解、又は/そして気化し、結晶であるため、極めて熱伝達が容易であり、高濃度な反応場が形成され、炭素結晶が多点で生成する。場合によっては遷移金属又は遷移金属化合物と相互作用することにより、触媒的に炭素化が促進される。従って、一般に、カーボンアロイの基本構造は、炭素がsp混成軌道により化学結合し、二次元に広がった六角網面構造を持つ炭素原子の集合体であるグラフェンが、積層した構造である。
本実施の形態のカーボンアロイは、極めてエッジ面が多い特徴を有すると考える。
含窒素結晶性有機化合物、の形状は、炭素触媒の活性を有する限り特に限定はされない。例えば、球状以外の多くの楕円、扁平、角型など、大きく歪んだ構造を示すことがあり、シート状、繊維状、ブロック状、柱状、粒子状等が挙げられる。
【0085】
無機金属及び無機金属塩から選択される少なくとも1種に含有される金属は炭素触媒の活性を阻害しない限り種類が限定されるものではない。
該金属としては、例えば、II〜IV価の典型金属、遷移金属、又は内遷移金属が挙げられる。これらを具体的に示せば、例えば、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、インジウム(In)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、タリウム(Tl)、若しくは鉛(Pb)の典型金属、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、ランタン(La)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、若しくは水銀(Hg)の遷移金属、又はセリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、トリウム(Th)、プロトアクチニウム(Pa)、ウラン(U)、ネプツリウム(Np)、若しくはアメリシウム(Am)のランタニド系・アクチニド系の内遷移金属などが挙げられる。
【0086】
より好ましくは遷移金属であり、更に好ましくは、周期律表の3族から12族の第4周期に属する元素が挙げられる。このような遷移金属としてコバルト(Co)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、チタン(Ti)、バリウム(V)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、セリウム(Ce)等が挙げられ、なかでもコバルト(Co)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銅(Cu)又はセリウム(Ce)であることが好ましい。コバルト、鉄、マンガン、ニッケル、クロム、銅、セリウム及びその塩等の化合物は、炭素触媒の触媒活性を向上させるナノサイズのシェル構造を形成することに優れ、その中でも特に、コバルト、鉄は、ナノサイズのシェル構造を形成することに優れるため好ましい。また、炭素触媒に含有されたコバルト、鉄は、炭素触媒中において触媒の酸素還元活性を向上させることができる。遷移金属として最も好ましくはコバルトである。コバルト含有含窒素カーボンアロイは経時酸化を受けて機能劣化を生じにくいため、保存安定性に優れるためである。
なお、炭素触媒の活性を阻害しない限り、遷移金属以外の元素(例えば、ホウ素、アルカリ金属(Na,K,Cs)、アルカリ土類(Mg,Ca,Ba)、鉛、スズ、インジウム、タリウム等)が1種類以上含まれてもよい。
【0087】
無機金属塩としては、特に限定はされないが、水酸化物、酸化物、窒化物、硫酸化物、亜硫酸化物、硫化物、スルホン化物、カルボニル化物、硝酸化物、亜硝酸化物、ハロゲン化物等とすることができる。好ましくは対イオンがハロゲンイオン、硝酸イオン又は硫酸イオンである。対イオンがハロゲンイオン、硝酸イオン又は硫酸イオンであるハロゲン化物、硝酸化物、又は硫酸化物であれば加熱分解時に生成した炭素表面で炭素と結合し、比表面積を増大させるため好ましい。
また無機金属塩は結晶水を含むことができる。無機金属塩が結晶水を含むことにより熱伝導率が向上するため、均一に焼成可能になる点で好ましい。結晶水を含む無機金属塩としては、例えば、塩化コバルト含水塩、塩化鉄(III)含水塩、塩化コバルト、塩化鉄(II)含水塩を好適に使用することができる。
【0088】
本発明の含窒素カーボンアロイは無機金属、無機金属塩から選択される少なくとも1つと含窒素結晶性有機化合物との合計100質量部に対して無機金属、無機金属塩から選択される少なくとも1つが0.001〜45質量部、含窒素結晶性有機化合物が99.999〜55質量部である有機材料を焼成して得られることが好ましく、更に好ましくは無機金属、無機金属塩から選択される少なくとも1つが0.1〜40質量部、含窒素結晶性有機化合物が99.9〜60質量部、最も好ましくは無機金属塩から選択される少なくとも1つが1〜30質量部、含窒素結晶性有機化合物が99〜70質量部である。
【0089】
この範囲にすることによって、高い酸素還元反応活性(ORR活性)を有するカーボンアロイが生成し得る。例えば、前記有機材料において含窒素結晶性有機化合物が55質量部以下であると、揮発した無機金属及び無機金属塩の金属同士がクラスターを形成する場合がある。そしてこの金属同士が金属粒子となる。これは、前記有機材料における無機金属、及び無機金属塩に対して含窒素結晶性有機化合物の割合が少ないため、金属同志が会合するためである。
金属粒子はシングルナノメートルサイズではORR活性に一部寄与するが、数十ナノメートルサイズを超える大きな金属粒子はORR活性には非関与である。
現時点で、ORR活性のメカニズムは、十分に解明されていないが、以下のことが推測される。触媒活性部位(少なくともCとNと金属イオンを構成要件とする金属配位物、あるいは配置空間(場))を生成または形成し、酸素が触媒活性部位に吸着・配位後、酸素は還元を被る。
すなわち、焼成後の粉砕および酸洗浄の過程において、析出した金属粒子が酸洗浄によって除去されると、触媒活性部位(金属配位物、あるいは配置空間(場))を生成または形成することができないため、酸素が触媒活性部位に吸着・配位できず、ORR活性を十分に発揮できない。
【0090】
一方、金属源および含窒素結晶性有機化合物を上記の範囲で混合することによって、個々の金属源の周りに十分に含窒素結晶性有機化合物が存在し、金属同志が会合しクラスターを形成するのを抑制することができる。そのため、焼成によって含窒素結晶性有機化合物から含窒素カーボンアロイが生成し、活性が生じるグラファイト内部に生成するエッジ部、およびグラファイト外部のエッジ部分において金属が含窒素カーボンアロイに程よく(緩やかに)配位することで触媒活性部位を形成するため、ORR活性を十分に発揮することができる。
【0091】
ORR活性は、実施例にて詳述する方法により電流密度を求め、これをORR活性値として測定することができる。高出力を得るために、酸素還元する際の電流密度値が低いことが好ましく、具体的には、−100μA/cm以下が好ましく、−250μA/cm以下がより好ましく、−1100μA/cm以下が更に好ましく、最も好ましくは−1300μA/cm以下である。
【0092】
なお、焼成前の有機材料において、含窒素結晶性有機化合と無機金属や無機金属塩は均一分散させる必要がないという利点を有する。すなわち、含窒素結晶性低分子有機化合物が焼成分解した際に、その分解生成物と無機金属塩等の気化物が接触していれば、酸素還元反応活性を有する活性種が形成すると考えられるため、室温での含窒素結晶性有機化合物と無機金属塩等との混合状態にカーボンアロイの酸素還元反応活性は影響を受けない。
【0093】
なお、無機金属及び無機金属塩の粒径は、直径0.001μm以上100μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.01μm以上10μm以下である。無機金属及び無機金属塩の粒径をこの範囲内にすることで、含窒素結晶性有機化合物と均一に混合させることが可能となり、含窒素結晶性有機化合物が分解生成時に錯体を形成しやすくなる。
前記無機金属の表面は酸化されていてもよく、焼成中、無機金属が再生すればよい。
【0094】
本発明の好ましい態様としては、以下の組み合わせを挙げることができる。
無機金属及び無機金属塩から選択される少なくとも1種に含有される金属と、含窒素結晶性有機化合物との、好ましい組み合わせとしては、無機コバルト、無機コバルト塩、無機鉄、あるいは無機鉄塩と、ニトリル化合物、アミド化合物、あるいはキナクリドン化合物との組み合わせである。さらに好ましくは無機コバルト、あるいは無機コバルト塩と、分子内にニトリル基、アミド基、および又は4−キノロン骨格から選択される少なくとも1つ及び不飽和結合を有する有機化合物との組み合わせであり、もっとも好ましくは、無機コバルトあるいは無機コバルト塩と、分子内にニトリル基およびアミド基から選択される少なくとも1つと、更にニトリル基、アミド基、ハロゲン原子、又は水酸基から選択される少なくとも1つと、不飽和結合とを有する有機化合物との組み合わせである。
【0095】
(カーボンアロイ)
上記有機材料の焼成により得られた本発明のカーボンアロイは、窒素が導入されている含窒素カーボンアロイである。本発明のカーボンアロイは、炭素がsp混成軌道により化学結合し、二次元に広がった六角網面構造を持つ炭素原子の集合体であるグラフェンが存在する。
そして、この六角網面構造に窒素原子が導入されると、下記の構造に分類される。
i)O−X型(NOX):酸化された状態で、ハロゲン、酸素等と窒素原子が結合しているもの
ii)グラフェン窒素置換型(N):グラフェンの網目の隣接する六角形の境界部にある1つの炭素原子がそのまま窒素原子に置換されたもの
iii)ピロール型(N):グラフェンの六角形から、窒素原子を含む五角形に変化したもの
iV)ピリジン型(N):グラフェンの網目の六角形の境界部でない1つの炭素原子(主として分子の外周部にある)が窒素原子に置換されたもの
V)ピリドン型(N6*):窒素原子が2つの炭素原子と結合して、六角形を構成すると共に、窒素原子と結合している1つの炭素原子に、OH基又はOが結合しているもの等
この炭素触媒中の表面窒素原子の含有量と表面炭素原子の含有量はXPS(X線光電子分光)によって測定される。上述の構造の違いにより、XPSのN1sスペクトルに異なった結合エネルギーのピークとして現れる。この特長を利用して、ピーク分離して強度を比較することにより、それぞれの存在比を求めることができる。
典型的な各窒素状態のピーク位置は、以下の通りである。
i)NOXが402.9±0.2eV、
ii)Nが401.2±0.2eV、
iii)Nが400.5±0.2eV、
iV)Nが398.5±0.2eV
なお、これらの他に、OH基がついた炭素に結合しているピリドン型の窒素原子も存在し得るが、Nと同じ400.5±0.2eVにピークを持つので、N型窒素原子と区別することはできない(E.Raymundo−Pinero et al.,Carbon,40,p.597〜608(2002)参照)。したがって、本明細書においては、ピリドン型窒素原子(N6*)もN型窒素原子に包含されるものとして記載する。金属との結合に適しているかどうかは、窒素原子が孤立電子対を有しているかどうかによる。これは、窒素原子の孤立電子対が金属イオンの空軌道に電子を供与することで配位結合を形成することによる。上記の種々の窒素原子のうち、N型とN型の窒素原子は孤立電子対を持つので金属との結合に有効であるが、NOX型とN型の窒素原子は有効ではない。
従って、XPSのN1sスペクトルのピーク分離により求めたN型及びN型窒素原子の数の和と全窒素原子の数の和との比{(N+N)/N}が0.2〜1.0であることが好ましく、0.3〜1.0であることがより好ましい。この比{(N+N)/N}が0.2未満の場合には、金属と結合できる有効な窒素原子の数が少なく、十分な酸素還元触媒特性が得られなくなる場合がある。また、この比{(N+N)/N}の上限は、原理的に1である。
【0096】
更に、本発明のカーボンアロイにおいて、炭素触媒中の表面窒素原子の含有量は表面の炭素に対して原子比(N/C)で0.05以上0.3以下であることがより好ましい。窒素原子と炭素原子との原子比(N/C)が0.05未満の場合には、金属と結合する有効な窒素原子の数が減少し、十分な酸素還元触媒特性が得られなくなる。また、窒素原子と炭素原子との原子比(N/C)が0.4を超える場合には、カーボンアロイの炭素骨格の強度が低下し、また電気伝導性が低下する。
【0097】
また、カーボンアロイの骨格は、少なくとも炭素原子及び窒素原子により形成されていればよく、その他の原子として水素原子や酸素原子等を含んでいてもよい。その場合、その他の原子と炭素原子及び窒素原子との原子比((その他の原子)/(C+N))は0.3以下であることが好ましい。
【0098】
比表面積分析は、カーボンアロイを所定の容器に入れて液体窒素温度(−196℃)に冷却し、容器内に窒素ガスを導入して吸着させ、その吸着等温線から単分子吸着量と吸着パラメーターを算出し、窒素の分子占有断面積(0.162cm)から試料の比表面積を算出して求める BET(Brunauer-Emmett-Teller)法により求めることができる。
これらの比表面積、平均細孔径及び細孔容量は、以下に述べる方法により求めることができる。すなわち、カーボンアロイを所定の容器に入れて液体窒素温度(−196℃)に冷却し、容器内に窒素ガスを導入して定容量法又は質量法によりその吸着量を求める。次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットして窒素吸着等温線を得る。この窒素吸着等温線を用い、SPE(Subtracting Pore Effect)法により比表面積、平均細孔径及び細孔容量を算出することができる(K.Kaneko, C.Ishii, M.Ruike, H.Kuwabara, Carbon 30, 1075, 1986)。上記SPE法とは、α−プロット法、t−プロット法等によってミクロ細孔解析を行い、ミクロ細孔の強いポテンシャル場の効果を取り除いて比表面積等を算出する方法であり、ミクロ細孔性多孔体の比表面積等の算出においてBET法よりも精度の高い方法である。
【0099】
カーボンアロイの細孔形状は特に制限されず、例えば、表面のみに細孔が形成されていても、表面のみならず内部にも細孔が形成されていてもよく、内部にも細孔が形成されている場合には、例えば、トンネル状に貫通したものであってもよく、また、球状又は六角柱状等の多角形状の空洞が互いに連結したような形状を有していてもよい。
【0100】
カーボンアロイの比表面積は、30m/g以上であることが好ましく、35m/g以上であることがより好ましく、40m/g以上であることが特に好ましい。比表面積が30m/g未満の場合には、担持成分との接触面積の低下及び担持成分を取り込む細孔の減少が生じ、十分な酸素還元触媒特性が得られない場合がある。ただし、触媒活性部位(少なくともCとNと金属イオンを構成要件とする金属配位物、あるいは配置空間(場))が高密度に生成・形成した場合は必ずしも上記範囲外でもよい。
ただし、比表面積が1000m/g以上の場合には、細孔奥まで酸素が十分に行き届かなくなるため、十分な酸素還元触媒特性が得られない場合がある。
【0101】
また、カーボンアロイの平均細孔径は、1〜50nmであることが好ましく、2〜10nmであることがより好ましい。平均細孔径が1nm未満の場合には、細孔の大きさが担持成分の大きさよりも小さくなることが多くなり、十分な酸素還元触媒特性が得られない場合がある。また、平均細孔径が50nmを超える場合には、比表面積の低下を招き、やはり十分な酸素還元触媒特性が得られない場合がある。
【0102】
更に、カーボンアロイの細孔容量は、上記比表面積及び平均細孔径によっても変動するため特に制限されないが、0.1〜50ml/gであることが好ましく、0.2〜2.5ml/gであることがより好ましい。
【0103】
本発明のカーボンアロイの形状は、酸化還元反応活性を有する限り特に限定はされない。例えば、シート状、繊維状、ブロック状、柱状、粒子状、球状以外の多くの楕円、扁平、角型など、大きく歪んだ構造等が挙げられる。分散がし易いという観点から好ましくはブロック状、粒子状である。
【0104】
更に、本発明のカーボンアロイを溶媒に分散させることにより、カーボンアロイを含有するスラリーを作製することができる。これにより、例えば、燃料電池の電極触媒や、蓄電装置の電極材の作製を容易する際に、カーボンアロイが溶媒に分散されたスラリーを支持材料に塗布して焼成、乾燥させて、任意の形状に加工した炭素触媒を形成することができる。このようにカーボンアロイをスラリーとすることにより、炭素触媒の加工性が向上し、容易に電極触媒や電極材として用いることができる。
溶媒としては、燃料電池の電極触媒や、蓄電装置の電極材を作製する際に用いられる溶媒を適宜選択して使用することができる。例えば蓄電装置の電極材を作製する際に用いられる溶媒としては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(GBL)等一般的な極性溶媒を単独又は複数混合して使用することができる。また、燃料電池の電極触媒を作製する際に用いられる溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン等を挙げることができる。
【0105】
なお、本発明のカーボンアロイは、ラマンスペクトルのG−Bandの半値幅が60cm−1以上であることが好ましく、70cm−1以上であることがより好ましく、80cm−1以上であることが特に好ましい。カーボンアロイ表面にエッジ部が増え、触媒活性が向上するばかりでなく、任意の焼成部をとっても触媒活性が等しくなるためだからである。
【0106】
(2)含窒素カーボンアロイの製造方法
本発明の含窒素カーボンアロイの製造方法は、
1)含窒素結晶性有機化合物と無機金属及び/又は無機金属塩とを混合する工程、
2)不活性雰囲気下で室温から炭素化温度まで毎分1℃以上1000℃以下で昇温する昇温工程、
3)500℃〜1000℃まで、0.1〜100時間保持する炭素化工程、
4)炭素化温度から室温まで冷却する冷却工程を含む。
以下工程を処理と読みかえる。
【0107】
本発明の製造方法は、含窒素結晶性有機化合物と無機金属塩等とを含む有機材料を炭素化温度まで加熱処理することを特徴とする。
【0108】
この炭素化温度までの加熱処理において、昇温処理の部分をまとめて不融化処理とする。
炭素化処理の焼成温度は、含窒素結晶性有機化合物が熱分解及び炭素化する温度であれば特に制限されないが、500〜1000℃であることが好ましく、550〜950℃であることがより好ましく、600〜900℃の範囲であることが更に好ましい。反応温度を500℃以上にすることによって、十分に炭化が進んで高い触媒性能を有するカーボンアロイが得られる。また、反応温度が1000℃以下であれば炭素骨格中に窒素が残留し、所望のN/C原子比とすることでき、十分な酸素還元反応活性が得られる。反応温度が1000℃を超える場合には、炭素骨格中に窒素が残留し難いため、N/C原子比が低下し、酸素還元反応活性が低くなる傾向にある。更に、炭化物の収率が著しく低減し、炭化物が収率よく製造できない場合がある。
【0109】
炭素化処理においては、被処理物を500℃〜1000℃で、0.1時間〜100時間保持し、より好ましくは1時間〜10時間保持する。10時間を超えて炭化処理しても処理時間に相応する効果は得られない場合がある。
【0110】
炭素化処理は、不活性雰囲気下で行うことが好ましく、不活性ガスまたは非酸化性ガス流通下で行うことが好ましい。ガスの流速は、内径36mmφ当たり0.01〜2.0リットル/分であることが好ましく、内径36mmφ当たり0.05〜1.0リットル/分であることがより好ましく、内径36mmφ当たり0.1〜0.5リットル/分のガスを流通させることが特に好ましい。毎分0.01リットル以下で焼成した場合、焼成時に副生したアモルファス状炭素を留去することができず、生成する含窒素カーボンアロイの処理温度低下を引き起こす、また、毎分2.0リットル以上で焼成した場合、炭化する前に基質が気化してしまい含窒素カーボンアロイが生成しないため好ましくない。流速がこの範囲であると、好適に目的とする含窒素カーボンアロイを得ることができるので好ましい。
【0111】
第一段階で高温度での炭化処理を行うと、カーボンアロイの収率が低減するが、得られるカーボンアロイの結晶子サイズがそろい、そのため金属が均一に分布し、活性が高い状態を保持する。結果として、優れた酸素還元性能を有するカーボンアロイの製造が可能になった。
【0112】
またこの昇温処理を二段階に分けて昇温しても良い。より具体的には、比較的低温での第一段階の処理を行うことで、熱に不安定な不純物成分、溶媒等を除去することができる。
続いて、第二段階の処理を行うことで、有機材料の分解反応と炭素化反応を連続して行うことができるばかりでなく、分解生成物と金属とが相互作用して、金属を、より活性が高い状態で安定化することができる。例えば鉄イオンを、2価の状態で含むものとすることができる。その結果、高い酸素還元性能を有するカーボンアロイを製造することができる。
【0113】
更に、第二段階の処理を行うことで、続く炭素化処理における処理温度を上げることができ、炭素構造の規則性がより高められたカーボンアロイを得ることが可能になる。その結果、カーボンアロイの導電性が向上し、高い酸素還元性能が得られ、また、触媒としての耐久性も向上する。
【0114】
第一段階の温度まで昇温するのは、熱に安定な構造だけを保持し、第二段階の処理での余熱操作を行う。第二段階で、炭素化温度まで昇温するのは、適切なカーボンアロイを得るためである。一方、炭素化温度を超えると炭化が過剰に進み、適切なカーボンアロイが得られない場合があることに加え、収率が低下するおそれがある。
【0115】
第一段階の昇温処理は、不活性雰囲気下で行うことが好ましい。不活性雰囲気とは、窒素ガスや希ガス雰囲気下などのガス雰囲気をいう。なお、酸素が含まれていたとしても、被処理物を燃焼させない程度まで酸素量を制限した雰囲気であればよい。当該雰囲気は、閉鎖系又は新たなガスを流通させる流通系の何れであってもよく、好ましくは流通系とする。流通系とする場合には、ガスの流速は、内径36mmφ当たり0.01〜2.0リットル/分のガスを流通させることが好ましく、ガスの流速は、内径36mmφ当たり0.05〜1.0リットル/分のガスを流通させることがより好ましく、ガスの流速は、内径36mmφ当たり0.1〜0.5リットル/分のガスを流通させることが特に好ましい。
【0116】
第一段階の昇温処理では、含窒素結晶性有機化合物と無機金属塩等とを含む有機材料を100℃〜500℃まで昇温することが好ましく、150℃〜400℃まで昇温することが更に好ましい。こうすることにより、均一な予備炭化物が得られる。
【0117】
第一段階の昇温処理は、含窒素結晶性有機化合物と無機金属塩等とを含む有機材料を炭化装置等に挿入した後に常温から所定温度まで昇温してもよいし、或いは、所定温度の炭化装置等へ有機材料を挿入してもよい。好適には、常温から所定温度まで昇温するのがよい。常温から所定温度まで昇温する場合には、昇温速度を一定にすることが好ましい。より具体的には、昇温速度は毎分1℃以上1000℃以下で昇温することが好ましく、毎分1℃以上500℃以下で昇温することがより好ましい。
【0118】
第二段階の昇温処理は、第一段階の昇温処理の終了後にそのまま温度を上げて第二段階の昇温処理を行ってもよい。また、一旦室温まで冷却した後に温度を上げ、第二段階の昇温処理を行ってもよい。また、第一段階の昇温処理後に予備炭化物を室温まで冷却した際には、均一に粉砕してもよいし、更に成形してもよい。
より具体的には、昇温速度は毎分10℃以上1000℃以下で昇温することが好ましく、毎分10℃以上500℃以下で昇温することがより好ましい。
第二段階の昇温処理は、不活性雰囲気下で行うことが好ましく、流通系とする場合には、ガスの流速は、内径36mmφ当たり0.01〜2.0リットル/分のガスを流通させることが好ましく、ガスの流速は、内径36mmφ当たり0.05〜1.0リットル/分のガスを流通させることがより好ましく、ガスの流速は、内径36mmφ当たり0.1〜0.5リットル/分のガスを流通させることが特に好ましい。
第一段階でのガス流量と異なっていても良い。
【0119】
炭素化処理は、賦活剤の存在下で行うことが好ましい。賦活剤の存在下、高温で炭化処理することにより、カーボンアロイの細孔が発達して表面積が増大し、カーボンアロイの表面における金属の露出度が向上することにより、触媒としての性能が向上する。なお、炭化物の表面積は、N吸着量により測定することができる。
【0120】
使用できる賦活剤は、特に制限されないが、例えば、二酸化炭素、水蒸気、空気、酸素、アルカリ金属水酸化物、塩化亜鉛、及びリン酸からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができ、更に好ましくは、二酸化炭素、水蒸気、空気、酸素からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。二酸化炭素や水蒸気などの気体賦活剤は、第二炭化処理の雰囲気中に2〜80モル%、好ましくは10〜60モル%含有させればよい。2モル%以上であれば十分な賦活効果が得られる一方で、80モル%を超える場合には賦活効果が顕著になり炭化物の収率が著しく低減し、効率よく炭化物を製造することができなくなるおそれがある。また、アルカリ金属水酸化物等の固体賦活剤は、固体の状態で被炭化物と混合してもよく、或いは、水等の溶媒で溶解又は希釈した後、被炭化物を含浸するか、或いはスラリー状にして被炭化物に練り込んでもよい。液体賦活剤は、水等で希釈した後、被炭化物を含浸するか或いは被炭化物に練り込めばよい。
【0121】
炭素化後に窒素原子を導入することもできる。このとき、窒素原子を導入する方法としては、液相ドープ法、気相ドープ法、又は、気相−液相ドープ法を用いて行うことができる。例えば、カーボンアロイに窒素源であるアンモニア雰囲気下で200℃以上800℃以下、5分以上180分以下保持することにより、熱処理して、炭素触媒の表面に窒素原子を導入することができる。
【0122】
また、炭素化処理後に、カーボンアロイを室温まで冷却した後、粉砕処理を行ってもよい。粉砕処理は当業者に公知のいずれの方法でも行うことができ、例えば、ボールミルを用いて粉砕することができる。
【0123】
(3)用途
本発明の含窒素カーボンアロイの用途は、構造材料、電極材料、ろ過材料、触媒材料など特に限定されないが、キャパシタやリチウム2次電池などの蓄電装置の電極材料として用いることが好ましく、高い酸素還元反応活性を有することを特徴とする燃料電池や亜鉛空気電池、リチウム空気電池などの炭素触媒として用いることがより好ましい。また、固体高分子電解質膜と、該固体高分子電解質膜に接して設けられた触媒層とを備えた電極膜接合体において、上記触媒を該触媒層に含むことができる。更に、上記電極膜接合体は、燃料電池に備えることができる。
【0124】
図1に本発明のカーボンアロイから成る炭素触媒を用いた燃料電池10の概略構成図を示す。炭素触媒はアノード電極及びカソード電極に適用されている。
燃料電池10は、固体高分子電解質14を挟むように、対向配置されたセパレータ12、アノード電極触媒(燃料極)13、カソード電極触媒(酸化剤極)15及びセパレータ16とから構成される。固体高分子電解質14としては、パーフルオロスルホン酸樹脂膜を代表とするフッ素系陽イオン交換樹脂膜が用いられる。また、炭素触媒をアノード電極触媒13及びカソード電極触媒15として、固体高分子電解質14の双方に接触させることにより、アノード電極触媒13及びカソード電極触媒15に炭素触媒を備えた燃料電池10が構成される。上述の炭素触媒を固体高分子電解質の双方の面に形成し、アノード電極触媒13及びカソード電極触媒15を電極反応層側で固体高分子電解質14の両主面にホットプレスにより密着することにより、MEA(Membrane Electrode Assembly)として一体化させる。
【0125】
従来の燃料電池では、集電体としての機能も有する多孔質のシート(例えば、カーボンペーパー)からなるガス拡散層を、セパレータとアノード及カソード電極触媒との間に介在させていた。これに対して図1の燃料電池10では、比表面積が大きく、更に、気体の拡散性が高い炭素触媒がアノード及びカソード電極触媒として用いることができる。上述の炭素触媒を電極として使用することにより、ガス拡散層が無い場合にも炭素触媒にガス拡散層の作用を持たせ、アノード及びカソード電極触媒13,15とガス拡散層とを一体化した燃料電池を構成することができるため、ガス拡散層を省略することによる燃料電池の小型化や、コストの削減が可能となる。
【0126】
上記セパレータ12,16は、アノード及びカソード電極触媒層13,15を支持すると共に燃料ガスHや酸化剤ガスO等の反応ガスの供給・排出を行う。そして、アノード及びカソード電極触媒13,15にそれぞれ反応ガスが供給されると、両電極に備えられた炭素触媒と固体高分子電解質14との境界において、気相(反応ガス)、液相(固体高分子電解質膜)、固相(両電極が持つ触媒)の三相界面が形成される。そして、電気化学反応を生じさせることで直流電力が発生する。
上記電気化学反応において、
カソード側:O+4H++4e→2H
アノード側:H→2H++2e
の反応が起こり、アノード側で生成されたHイオンは固体高分子電解質14中をカソード側に向かって移動し、e(電子)は外部の負荷を通ってカソード側に移動する。一方、カソード側では酸化剤ガス中に含まれる酸素と、アノード側から移動してきたH+イオン及びeとが反応して水が生成される。この結果、上述の燃料電池は、水素と酸素とから直流電力を発生し、水を生成することになる。
【0127】
次に、本発明のカーボンアロイから成る炭素触媒を電極材に適用した蓄電装置について説明する。図2に該炭素触媒を用いた、蓄電容量に優れた電気二重層キャパシタ20の概略構成図を示す。
図2に示した電気二重層キャパシタ20は、セパレータ23を介して、分極性電極である第1の電極21及び第2の電極22が対向し、外装蓋24aと外装ケース24bの中に収容されている。また、第1の電極21及び第2の電極22は、それぞれ集電体25を介して、外装蓋24aと外装ケース24bに接続されている。また、セパレータ23には、電解液が含浸されている。そして、ガスケット26を介して電気的に絶縁させた状態で、外装蓋24aと外装ケース24bとをかしめて密封させて電気二重層キャパシタ20が構成されている。
【0128】
図2の電気二重層キャパシタ20において、上述の炭素触媒を第1の電極21及び第2の電極22に適用することができる。そして、電極材に炭素触媒が適用された電気二重層キャパシタを構成することができる。上述の炭素触媒は、ナノシェル炭素が集合した繊維状の構造を有し、更に、繊維径がナノメートル単位であるため比表面積が大きく、キャパシタにおいて電荷が蓄積する電極界面が大きい。更に、上述の炭素触媒は、電解液に対して電気化学的に不活性であり、適度な電気導電性を有する。このため、キャパシタの電極として適用することにより、電極の単位体積あたりの静電容量を向上させることができる。
【0129】
また、上述のキャパシタと同様に、例えば、リチウムイオン二次電池の負極材等のように、炭素材料から構成される電極材として上述の炭素触媒を適用することができる。そして、炭素触媒の比表面積が大きいことにより、蓄電容量の大きな二次電池を構成することができる。
【0130】
次に、本発明のカーボンアロイを、白金等の貴金属を含む環境触媒の代替品として使用する例について説明する。
汚染空気に含まれる汚染物質を(主にガス状物質)等を分解処理により除去するための排ガス浄化用触媒として、白金等の貴金属系の材料が単独又は複合化物されて構成された触媒材料による環境触媒が用いられている。これらの白金等の貴金属を含む排ガス浄化用触媒の代替品として、上述の炭素触媒を使用することができる。上述の炭素触媒は、酸素還元反応触媒作用が付与されているため、汚染物質等の被処理物質の分解機能を有する。このため、上述の炭素触媒を用いて環境触媒を構成することにより、白金等の高価な貴金属類を使用する必要がないため、低コストの環境触媒を提供することができる。また、比表面積が大きいことにより、単位体積あたりの被処理物質を分解する処理面積を大きくすることができ、単位体積あたりの分解機能が優れた環境触媒を構成できる。
なお、上述の炭素触媒を担体として、従来の環境触媒に使用されている白金等の貴金属系の材料が単独又は複合化物を担持させることにより、より分解機能等の触媒作用に優れた環境触媒を構成することができる。なお、上述の炭素触媒を備える環境触媒は、上述の排ガス浄化用触媒だけでなく、水処理用の浄化触媒として用いることもできる。
【0131】
また、本発明のカーボンアロイは、広く化学反応用の触媒として使用することができ、中でも白金触媒の代替品として使用することができる。つまり、白金等の貴金属を含む化学工業用の一般的なプロセス触媒の代替品として、上述の炭素触媒を使用することができる。このため、上述の炭素触媒によれば、白金等の高価な貴金属類を使用することなく、低コストの化学反応プロセス触媒を提供することができる。更に、上述の炭素触媒は、比表面積が大きいことにより、単位体積あたりの化学反応効率に優れた化学反応プロセス触媒を構成することができる。
このような化学反応用の炭素触媒は、例えば、水素化反応用触媒、脱水素反応用触媒、酸化反応用触媒、重合反応用触媒、改質反応用触媒、水蒸気改質用触媒等に適用することができる。更に具体的には、「触媒調製(講談社)白崎高保、藤堂尚之共著、1975年」等の触媒に関する文献を参照し、各々の化学反応に炭素触媒を適用することが可能である。
【実施例】
【0132】
本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0133】
(実施例1)
<PR254の炭素材料合成(1C)>
[不融化及び炭素化処理]
ピグメントレッド254(東京化成工業社製、PR254)1.001gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から300℃まで毎分1℃昇温、300℃から800℃まで毎分10℃昇温、800℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(1B)0.346gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(1B)をメノウ乳鉢で粉砕し、炭素材料(1C)を得た。
【0134】
【化12】

【0135】
分子式:C1810Cl、分子量:357.190
元素分析(計算値):C,60.53;H,2.82;Cl,19.85;N,7.84;O,8.96
【0136】
(比較例1)
<PhOHの炭素材料合成(C1C)>
[不融化及び炭素化処理]
フェノール(和光純薬社製、PhOH) 1.000gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から300℃まで毎分1℃昇温、300℃から700℃まで毎分10℃昇温、700℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却したところ、炭素材料を得ることができなかった。
フェノールをフタロニトリル(和光純薬社製、PN)に変更した場合でも同様に、炭素材料を得ることができなかった。
フェノール
分子式:CO、分子量:94.11
元素分析(計算値):C,76.57;H,6.43;N,0.00;O,17.00
フタロニトリル
分子式:C8H、分子量:128.13
元素分析(計算値):C,74.99;H,3.15;N,21.86
【0137】
(比較例2)
<MeCNの炭素材料合成(C2C)>
[不融化および炭素化処理]
アセトニトリル(和光純薬社製、MeCN) 1.000gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から300℃まで毎分1℃昇温、300℃から700℃まで毎分10℃昇温、700℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却したところ、炭素材料を得ることができなかった。
アセトニトリル
分子式:C、分子量:41.05
元素分析(計算値):C,58.51;H,7.37;N,34.12
【0138】
(実施例2)
<塩化鉄(III)6水和物添加PR202混合物の炭素材料合成(2C)>
[塩化鉄(III)6水和物添加PR202混合物の調整]
2,9−ジクロロキナクリドン(PR202、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、CINQUASIA Magenta P(商品名)) 4.0gに、塩化鉄(III)6水和物(和光純薬社製)を1.017g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化鉄(III)6水和物添加PR202混合物(2A)を得た。
[不融化及び炭素化処理]
塩化鉄(III)6水和物添加PR202混合物(2A)1.002gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から300℃まで毎分1℃昇温、300℃から700℃まで毎分10℃昇温、700℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(2B)0.529gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(2B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。更に得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(2C)を得た。
【0139】
【化13】

【0140】
分子式:C2010Cl、分子量:381.212
元素分析(計算値):C,63.01;H,2.64;Cl,18.60;N,7.35;O,8.39
【0141】
(実施例3)
<塩化鉄(III)6水和物添加PO71混合物の炭素材料合成(3C)>
[塩化鉄(III)6水和物添加PO71混合物の調整]
ピグメントオレンジ71(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、CROMOPHTAL DPP ORANGE TR(商品名),PO71) 4.0gに、塩化鉄(III)6水和物(和光純薬社製)を1.065g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化鉄(III)6水和物添加PO71混合物(3A)を得た。
[不融化及び炭素化処理]
塩化鉄(III)6水和物添加PO71混合物(3A)1.006gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から300℃まで毎分1℃昇温、300℃から700℃まで毎分10℃昇温、700℃で1時間保持した。その後、30分かけて室温まで冷却し、炭素材料(3B)0.390gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(3B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。更に得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(3C)を得た。
【0142】
【化14】

【0143】
分子式:C2010、分子量:338.319
元素分析(計算値):C,71.00;H,2.98;N,16.56;O,9.46
【0144】
(実施例4)
<塩化鉄(III)添加PR254混合物の炭素材料合成(4C)>
[塩化鉄(III)添加PR254混合物の調整]
ピグメントレッド254(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGAPHOR
RED BT−CF(商品名)PR254) 4.0gに、塩化鉄(III)(和光純薬社製)を0.606g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化鉄(III)添加PR254混合物(4A)を得た。
[不融化及び炭素化処理]
塩化鉄(III)添加PR254混合物(4A)1.003gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から300℃まで毎分1℃昇温、300℃から700℃まで毎分10℃昇温、700℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(4B)0.372gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(4B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。更に得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(4C)を得た。
【0145】
(実施例5)
<塩化鉄(III)6水和物添加PR254混合物の炭素材料合成(5C)>
[塩化鉄(III)6水和物添加PR254混合物の調整]
ピグメントレッド254(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGAPHOR RED BT−CF(商品名)PR254)3.00gに、塩化鉄(III)6水和物(和光純薬社製)を1.614g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化鉄(III)6水和物添加PR254混合物(5A)を得た。
[不融化及び炭素化処理]
塩化鉄(III)6水和物添加PR254混合物(5A)1.010gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から300℃まで毎分1℃昇温、300℃から800℃まで毎分10℃昇温、800℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(5B)0.341gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(5B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。更に得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(5C)を得た。
【0146】
(実施例6)
<塩化鉄(III)6水和物添加PR254ラテント顔料混合物の炭素材料合成(6C)>
[塩化鉄(III)6水和物添加PR254ラテント顔料混合物の調整]
特開2010−083982の本文中、段落番号〔0072〕〔化24〕〔0139〕〔化13〕(12)で例示されたPR254ラテント顔料(潜在顔料、PR254−LP)4.00gに、塩化鉄(III)6水和物(和光純薬社製)を0.544g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化鉄(III)6水和物添加PR254ラテント顔料混合物(6A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化鉄(III)6水和物添加PR254ラテント顔料混合物(6A)1.013gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から300℃まで毎分1℃昇温、300℃から700℃まで毎分10℃昇温、700℃で1時間保持した。その後、30分かけて室温まで冷却し、炭素材料(6B)0.259gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(6B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(6C)を得た。
【0147】
【化15】

【0148】
分子式:C2830Cl、分子量:497.456
元素分析(計算値):C,67.60;H,6.08;Cl,14.25;N,5.63;O,6.43
【0149】
(実施例7)
<塩化鉄(III)6水和物添加PR254混合物の炭素材料合成(7C)>
[塩化鉄(III)6水和物添加PR254混合物の調整]
ピグメントレッド254(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGAPHOR
RED BT−CF(商品名)PR254)3.0gに、塩化鉄(III)6水和物(和光純薬社製)を0.757g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化鉄(III)6水和物添加PR254混合物(7A)を得た。
[不融化及び炭素化処理]
塩化鉄(III)6水和物添加PR254混合物(7A)1.003gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から300℃まで毎分1℃昇温、300℃から700℃まで毎分10℃昇温、700℃で1時間保持した。その後、30分かけて室温まで冷却し、炭素材料(7B)0.372gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(7B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。更に得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(7C)を得た。
【0150】
(実施例8)
<塩化鉄(II)4水和物添加PR254混合物の炭素材料合成(8C)>
[塩化鉄(II)4水和物添加PR254混合物の調整]
ピグメントレッド254(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGAPHOR
RED BT−CF(商品名)PR254) 4.0gに、塩化鉄(II)4水和物(和光純薬社製)を0.742g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化鉄(II)4水和物添加PR254混合物(8A)を得た。
[不融化及び炭素化処理]
塩化鉄(II)4水和物添加PR254混合物(8A)1.005gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から300℃まで毎分1℃昇温、300℃から700℃まで毎分10℃昇温、700℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(8B)0.390gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(8B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。更に得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(8C)を得た。
【0151】
(実施例9)
<塩化鉄(III)6水和物添加4,5‐ジクロロフタロニトリル(DCP)混合物の炭素材料合成(9C)>
[塩化鉄(III)6水和物添加DCP混合物の調整]
4,5‐ジクロロフタロニトリル(東京化成社製、DCP)5.04gに、塩化鉄(III)6水和物(和光純薬社製)を1.15g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化鉄(III)6水和物添加DCP混合物(9A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化鉄(III)6水和物添加DCP混合物(9A)1.022gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分500℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、30分かけて室温まで冷却し、炭素材料(9B)0.250gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(9B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(9C)を得た。
4,5‐ジクロロフタロニトリル
分子式:CCl、分子量:197.02
元素分析(計算値):C,48.77;H,1.02;N,14.22;Cl,35.99
【0152】
(比較例3)
<Fe−Pcの炭素材料合成(C3C)>
[不融化及び炭素化処理]
鉄フタロシアニン(東京化成工業(株)社製、Fe−Pc) 1.007gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から300℃まで毎分1℃昇温、300℃から700℃まで毎分10℃昇温、700℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(C3B)0.684gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(C3B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。更に得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(C3C)を得た。
【0153】
【化16】

【0154】
分子式:C3216FeN、分子量:568.368
元素分析(計算値):C,67.62;H,2.84;Fe,9.83;N,19.71
【0155】
(実施例10)
<塩化コバルト(II)6水和物添加4,5‐ジクロロフタロニトリル(DCP)混合物の炭素材料合成(10C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加DCP混合物の調整]
4,5‐ジクロロフタロニトリル(東京化成社製、DCP)4.00gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を0.805g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加DCP混合物(10A)を得た。
[不融化及び炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加DCP混合物(10A)1.032gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分5℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(10B)0.323gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(10B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。更に得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(10C)を得た。
【0156】
(実施例11)
<塩化コバルト(II)6水和物添加PR122混合物の炭素材料合成(11C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加PR122混合物の調整]
2,9−ジメチルキナクリドン(PR122、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、クロモフタレインピンクPT(商品名)) 4.0gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を1.016g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加PR122混合物(11A)を得た。
[不融化及び炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加PR122混合物(11A)1.003gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から300℃まで毎分1℃昇温、300℃から700℃まで毎分10℃昇温、700℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(11B)0.670gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(11B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。更に得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(11C)を得た。
【0157】
【化17】

【0158】
分子式:C2216、分子量:340.375
元素分析(計算値):
C,77.63;H,4.74;N,8.23;O,9.40
【0159】
(実施例12)
<塩化コバルト(II)6水和物添加4−ヒロドキシフタロニトリル(4−HPN)混合物の炭素材料合成(12C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加4−HPN混合物の調整]
4−ヒロドキシフタロニトリル(東京化成社製、4−HPN)4.26gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を1.10g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加4−HPN混合物(12A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加4−HPN混合物(12A)1.003gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分500℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、30分かけて室温まで冷却し、炭素材料(12B)0.503gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(12B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(12C)を得た。
4−ヒロドキシフタロニトリル
分子式:C、分子量:144.13
元素分析(計算値):C,66.67;H,2.80;N,19.44;O,11.10
【0160】
(実施例13)
<塩化コバルト(II)6水和物添加4,5−ジヒドロキシベンゾニトリル(4,5−DHBN)混合物の炭素材料合成(13C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加4,5−DHBN混合物の調整]
4,5−ジヒドロキシベンゾニトリル(和光純薬工業社製、4,5−DHBN)5.00gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を1.47g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加4,5−DHBN混合物(13A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加4,5−DHBN混合物(13A)1.008gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分500℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、30分かけて室温まで冷却し、炭素材料(13B)0.174gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(13B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(13C)を得た。
4,5−ジヒドロキシベンゾニトリル
分子式:C、分子量:135.12
元素分析(計算値):C,62.22;H,3.73;N,10.37;O,23.37
【0161】
(実施例14)
<塩化コバルト(II)6水和物添加フタロニトリル(PN)混合物の炭素材料合成(14C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加PN混合物の調整]
フタロニトリル(東京化成社製、PN)4.00gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を1.24g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加PN混合物(14A)を得た。
[不融化及び炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加PN混合物(14A)1.002gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分500℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、30分かけて室温まで冷却し、炭素材料(14B)0.092gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(14B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。更に得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(14C)を得た。
フタロニトリル
分子式:C、分子量:128.13
元素分析(計算値):C,74.99;H,3.15;N,21.86
【0162】
(実施例15)
<塩化コバルト(II)6水和物、バルカンブラック(VB)添加フタロニトリル(PN)混合物の炭素材料合成(15C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加PN・VB混合物の調整]
フタロニトリル(東京化成社製、PN)4.00gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を1.24g添加後、メノウ乳鉢で混合し、得られた混合物2.00gにバルカンブラック(Cabot社製、XC−72(商品名)、VB)2.00gを添加して、塩化コバルト(II)6水和物添加PN・VB混合物(15A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加PN・VB混合物(15A)1.004gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分500℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、30分かけて室温まで冷却し、炭素材料(15B)0.546gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(15B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(15C)を得た。
【0163】
(実施例16)
<塩化コバルト(II)6水和物、バルカンブラック(VB)添加4−ヒロドキシフタロニトリル(4−HPN)混合物の炭素材料合成(16C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加4−HPN・VB混合物の調整]
4−ヒロドキシフタロニトリル(東京化成社製、4−HPN))4.26gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を1.10g添加後、メノウ乳鉢で混合し、得られた混合物2.00gにバルカンブラック(Cabot社製、XC−72(商品名)、VB)2.00gを添加して、塩化コバルト(II)6水和物添加4−HPN・VB混合物(16A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加4−HPN・VB混合物(16A)1.004gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分10℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(16B)0.667gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(16B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(16C)を得た。
【0164】
(実施例17)
<塩化コバルト(II)6水和物添加マロノニトリル(MN)混合物の炭素材料合成(17C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加MN混合物の調整]
マロノニトリル(和光純薬工業社製、MN)5.00gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を3.00g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加MN混合物(17A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加MN混合物(17A)1.042gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分500℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、30分かけて室温まで冷却し、炭素材料(17B)0.239gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(17B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(17C)を得た。
マロノニトリル
分子式:C、分子量:66.06
元素分析(計算値):C,54.54;H,3.05;N,42.41
【0165】
(実施例18)
<塩化コバルト(II)6水和物添加2−シアノベンズアミド(2−CBA)混合物の炭素材料合成(18C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加2−CBA混合物の調整]
2−シアノベンズアミド(東京化成社製、2−CBA)5.13gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を1.39g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加2−CBA混合物(18A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加2−CBA混合物(18A)1.023gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分5℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、30分かけて室温まで冷却し、炭素材料(18B)0.260gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(18B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(18C)を得た。
2−シアノベンズアミド
分子式:CO、分子量:66.06
元素分析(計算値):C,65.75;H,4.14;N,19.17;O,10.95
【0166】
(実施例19)
<塩化コバルト(II)6水和物添加3−シアノベンズアミド(3−CBA)混合物の炭素材料合成(19C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加3−CBA混合物の調整]
J.Chem.Soc., Perkin Trans.I、13、1679(1994).に例示されている化合物16a(3−シアノベンズアミド、3−CBA) 4.00gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を1.085g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加3−CBA混合物(19A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加3−CBA混合物(19A)1.003gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分500℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、30分かけて室温まで冷却し、炭素材料(19B)0.075gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(19B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(19C)を得た。
3−シアノベンズアミド
分子式:CO、分子量:66.06
元素分析(計算値):C,65.75;H,4.14;N,19.17;O,10.95
【0167】
(実施例20)
<塩化コバルト(II)6水和物添加4−クロロニトロベンゾニトリル(Cl−Ph−CN)混合物の炭素材料合成(20C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加Cl−Ph−CN混合物の調整]
4−クロロニトロベンゾニトリル(東京化成社製、Cl−Ph−CN)4.0gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を1.15g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加Cl−Ph−CN混合物(20A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加Cl−Ph−CN混合物(20A)1.012gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分500℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、30分かけて室温まで冷却し、炭素材料(20B)0.0526gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(20B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(20C)を得た。
4−クロロニトロベンゾニトリル
分子式:CCl、分子量:137.57
元素分析(計算値):C,61.12;H,2.93;N,10.18;Cl,25.77
【0168】
(実施例21)
<塩化コバルト(II)6水和物、ケッチェンブラック(KB)添加4−クロロニトロベンゾニトリル混合物の炭素材料合成(21C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加Cl−Ph−CN・KB混合物の調整]
4−クロロニトロベンゾニトリル(東京化成社製、Cl−Ph−CN)4.0gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を1.15g添加後、メノウ乳鉢で混合し、得られた混合物2.0gにケッチェンブラック(ライオン社製、EC300J(商品名)、KB)2.0gを添加して、塩化コバルト(II)6水和物添加Cl−Ph−CN・KB混合物(21A)を得た。
[不融化及び炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加Cl−Ph−CN・KB混合物(21A)0.514gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分500℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、30分かけて室温まで冷却し、炭素材料(21B)0.292gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(21B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。更に得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(21C)を得た。
【0169】
(実施例22)
<塩化コバルト(II)6水和物、バルカンブラック(VB)添加4,5−ジクロロフタロニトリル(DCP)混合物の炭素材料合成(22C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加DCP・VB混合物の調整]
4,5−ジクロロフタロニトリル(東京化成社製、DCP)4.00gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を0.805g添加後、メノウ乳鉢で混合し、得られた混合物2.0gにバルカンブラック(Cabot社製、XC−72(商品名)、VB)2.0gを添加して、塩化コバルト(II)6水和物添加DCP・KB混合物(22A)を得た。
[不融化及び炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加DCP・VB混合物(22A)1.003gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分500℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、30分かけて室温まで冷却し、炭素材料(22B)0.632gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(22B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。更に得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(22C)を得た。
【0170】
(実施例23)
<塩化コバルト(II)6水和物添加PR254ラテント顔料(PR254−LP)混合物の炭素材料合成(23C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加PR254−LP混合物の調整]
特開2010−083982の本文中、段落番号〔0072〕〔化24〕、〔0158〕〔化17〕(12)で例示されたPR254ラテント顔料(潜在顔料、PR254−LP)4.00gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を0.479g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加PR254−LP混合物(23A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加PR254−LP混合物(23A)0.996gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から300℃まで毎分1℃昇温、300℃から700℃まで毎分10℃昇温、700℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(23B)0.270gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(23B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(23C)を得た。
【0171】
(実施例24)
<硝酸コバルト(II)6水和物添加PR254混合物の炭素材料合成(24C)>
[硝酸コバルト(II)6水和物添加PR254混合物の調整]
ピグメントレッド254(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGAPHOR
RED BT−CF(商品名)PR254) 4.0gに、硝酸コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を1.09g添加後、メノウ乳鉢で混合し、硝酸コバルト(II)6水和物添加PR254混合物(24A)を得た。
[不融化及び炭素化処理]
硝酸コバルト(II)6水和物添加PR254混合物(24A)1.004gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から300℃まで毎分1℃昇温、300℃から700℃まで毎分10℃昇温、700℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(24B)0.366gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(24B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。更に得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(24C)を得た。
【0172】
(実施例25)
<塩化コバルト(II)6水和物添加PR254混合物の炭素材料合成(25C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加PR254混合物の調整]
ピグメントレッド254(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGAPHOR RED BT−CF(商品名)PR254) 4.0gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を0.888g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加PR254混合物(25A)を得た。
[不融化及び炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加PR254混合物(25A)1.000gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から300℃まで毎分1℃昇温、300℃から800℃まで毎分10℃昇温、800℃で1時間保持した。その後、30分かけて室温まで冷却し、炭素材料(25B)0.328gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(25B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。更に得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(25C)を得た。
【0173】
(実施例26)
<塩化コバルト(II)6水和物添加PY138混合物の炭素材料合成(26C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加PY138混合物の調整]
ピグメントイエロー138(BASF社製、PALIOTOL YELLOW P0960(商品名)PY138) 4.0gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を0.457g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加PY138混合物(26A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加PY138混合物(26A)1.041gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分10℃昇温、700℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(26B)0.559gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(26B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(26C)を得た。
【0174】
【化18】

【0175】
分子式:C26Cl、分子量:693.961
元素分析(計算値):C,45.00;H,0.87;Cl,40.87;N,4.04;O,9.22
【0176】
(実施例27)
<塩化コバルト(II)6水和物添加PY185混合物の炭素材料合成(27C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加PY185混合物の調整]
ピグメントイエロー185(BASF社製、Paliotol YELLOW P1155(商品名)PY185) 3.0gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を0.701g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加PR254混合物(27A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加PY185混合物(27A)1.031gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分10℃昇温、700℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(27B)0.362gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(27B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(27C)を得た。
【0177】
【化19】

【0178】
分子式:C1611、分子量:337.290
元素分析(計算値):C,56.98;H,3.29;N,20.76;O,18.97
【0179】
(実施例34)
<塩化コバルト(II)6水和物添加PY109混合物の炭素材料合成(34C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加PY109混合物の調整]
ピグメントイエロー109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、Irgazin Yellow 2GLTE(商品名)PY109)
4.00gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を0.484g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加PY109混合物(34A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加PY109混合物(34A)1.007gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分10℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(34B)0.506gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(34B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を110℃で1時間真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(34C)を得た。
【0180】
【化20】

【0181】
分子式:C23Cl、分子量:655.959
元素分析(計算値):C,42.11;H,1.23;Cl, 43.24;N, 8.54;O, 4.88
【0182】
(実施例35)
<塩化コバルト(II)6水和物添加PY110混合物の炭素材料合成(35C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加PY110混合物の調整]
ピグメントイエロー110(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、Irgazin Yellow 2RLT(商品名)PY110)4.00gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を0.494g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加PY110混合物(35A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加PY109混合物(35A)1.031gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分10℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(35B)0.540gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(35B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を110℃で1時間真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(35C)を得た。
【0183】
【化21】

【0184】
分子式:C22Cl、分子量:641.933
元素分析(計算値):C,41.16;H,0.94;Cl,44.18;N,8.73; O,4.98
【0185】
(実施例36)
<塩化コバルト(II)6水和物添加PY139混合物の炭素材料合成(36C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加PY139混合物の調整]
ピグメントイエロー139(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、Chromophtal Yellow 2RF(商品名)PY139)4.00gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を0.864g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加PY139混合物(36A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加PY139混合物(36A)1.020gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分10℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(36B)0.331gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(36B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を110℃で1時間真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(36C)を得た。
【0186】
【化22】

【0187】
分子式:C16、分子量:367.273
元素分析(計算値):C,52.32;H,2.47;N,19.07;O,26.14
【0188】
(実施例28)
<塩化コバルト(II)6水和物添加1,2,4,5−テトラシアノベンゼン(TCB)混合物の炭素材料合成(28C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加TCB混合物の調整]
1,2,4,5−テトラシアノベンゼン(東京化成社製、TCB)5.27gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を1.17g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加TCB混合物(28A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加TCB混合物(28A)1.008gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分5℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、30分かけて室温まで冷却し、炭素材料(28B)0.071gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(28B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(28C)を得た。
1,2,4,5−テトラシアノベンゼン
分子式:C10、分子量:178.15
元素分析(計算値):C,67.42;H,1.13;N,31.45
【0189】
(実施例29)
<塩化コバルト(II)6水和物添加3,4,5,6−テトラクロロフタロニトリル(TCPN)混合物の炭素材料合成(29C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加TCPN混合物の調整]
3,4,5,6−テトラクロロフタロニトリル(シグマアルドリッチ社製、TCPN)5.03gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を0.75g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加TCPN混合物(29A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加TCPN混合物(29A)1.004gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分500℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、30分かけて室温まで冷却し、炭素材料(29B)0.040gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(29B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(29C)を得た。
3,4,5,6−テトラクロロフタロニトリル
分子式:CCl、分子量:265.91
元素分析(計算値):C,36.13;H,0.00;N,10.53;Cl,53.33
【0190】
(実施例30)
<塩化コバルト(II)6水和物添加7、7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)混合物の炭素材料合成(30C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加TCNQ混合物の調整]
7、7,8,8−テトラシアノキノジメタン(東京化成社製、TCNQ)1.98gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を0.384g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加TCNQ混合物(30A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加TCNQ混合物(30A)1.004gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分5℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、30分かけて室温まで冷却し、炭素材料(30B)0.141gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(30B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(30C)を得た。
【0191】
【化23】

【0192】
分子式:C12、分子量:204.187
元素分析(計算値):C,70.59;H,1.97;N,27.44
【0193】
(実施例31)
<塩化コバルト(II)6水和物添加2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)混合物の炭素材料合成(31C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加DDQ混合物の調整]
2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(和光純薬社製、DDQ)4.00gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を0.699g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加DDQ混合物(31A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加DDQ混合物(31A)1.052gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分5℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、30分かけて室温まで冷却し、炭素材料(31B)0.042gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(31B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(30C)を得た。
【0194】
【化24】

【0195】
分子式:CCl、分子量:227.004
元素分析(計算値):C, 42.33; Cl, 31.24; N, 12.34; O, 14.10
【0196】
(実施例32)
<塩化コバルト(II)6水和物添加4,5‐ジクロロフタロアミド(DCPA)混合物の炭素材料合成(32C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加DCPA混合物の調整]
4,5‐ジクロロフタロアミド(東京化成社製、DCPA)5.00gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を0.85g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加DCPA混合物(32A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加DCPA混合物(32A)1.014gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分5℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、30分かけて室温まで冷却し、炭素材料(32B)0.041gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(32B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(32C)を得た。
4,5‐ジクロロフタロアミド
分子式:CCl、分子量:233.05
元素分析(計算値):C,41.23;H,2.59;N,12.02;O,13.73;Cl,30.42
【0197】
(実施例33)
<塩化コバルト(II)6水和物添加2,6−ジシアノピリジン(2,6−DCPy)混合物の炭素材料合成(33C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加2,6−DCPy混合物の調整]
2、6−ジシアノピリジン(アルドリッチ社製、2,6−DCPy)5.16gに、塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)を1.58g添加後、メノウ乳鉢で混合し、塩化コバルト(II)6水和物添加2,6−DCPy混合物(33A)を得た。
[不融化および炭素化処理]
塩化コバルト(II)6水和物添加2,6−DCPy混合物(33A)1.027gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分5℃で昇温、700℃で1時間保持した。その後、30分かけて室温まで冷却し、炭素材料(33B)0.140gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(33B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。さらに得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(33C)を得た。
2、6−ジシアノピリジン
分子式:C、分子量:129.12
元素分析(計算値):C,65.11;H,2.34;N,32.54
【0198】
(比較例4)
<Co−Pcの炭素材料合成(C4C)>
[不融化及び炭素化処理]
コバルトフタロシアニン(アルドリッチ社製、Co−Pc) 1.005gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から300℃まで毎分1℃昇温、300℃から700℃まで毎分10℃昇温、700℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(C4B)0.789gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(C4B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。更に得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(C4C)を得た。
【0199】
【化25】

【0200】
分子式:C3216CoN、分子量:571.456
元素分析(計算値):C,67.26;H,2.82;Co,10.31;N,19.61
【0201】
(比較例5)
<Co−PQの炭素材料合成(C5C)>
[ポリキノリノール(PQ)の合成]
8−キノリノール10g、ホルムアルデヒド10g、シュウ酸二水和物1gを100mLナスフラスコに入れ、100℃で一晩還流させた。そこへ1M−HCl5.5mLを加え、同じように一晩還流させた。得られた固体を吸引ろ過し、蒸留水で3回洗浄し一晩真空乾燥させてポリキノリノール(PQ)を得た。
[コバルトポリキノリノール錯体(Co−PQ)の調整]
PQを3.3gとりDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)100mLに溶解させた。そこに塩化コバルト(II)0.9gをDMAc(ジメチルアセトアミド)50mLに溶解させたものを加えて一晩静置した。この溶液をエバポレーター(90℃)で濃縮後、純水に3000mLに滴下した。得られた沈殿をフィルターろ過して、DMAcから再沈させ、フィルターろ過後、コバルトポリキノリノール錯体(Co−PQ)を得た。なお、得られたCo−PQの組成はCo(PQ)であった。
[不融化及び炭素化処理]
コバルトポリキノリノール錯体(Co−PQ) 1.001gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から300℃まで毎分1℃昇温、300℃から700℃まで毎分10℃昇温、700℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(C5B)0.522gを得た。
[粉砕・酸洗浄処理]
炭素材料(C5B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾した。更に得られた炭素材料を60℃で一晩真空乾燥し、酸洗浄済み炭素材料(C5C)を得た。
【0202】
【化26】

【0203】
ポリキノリノール(PQ)
分子式:(C10)n、分子量:MW14,000
元素分析(計算値):C,76.42;H,4.49;N,8.91;O,10.18
コバルトポリキノリノール錯体(Co−PQ)
分子式:(C3021Co)n、式量:530.44
元素分析(計算値):C,67.9;H,4.43.99;N,7.92;O,9.05;Co,11.10
【0204】
(比較例6)
<塩化コバルト(II)6水和物添加アセトニトリル(MeCN)混合物の炭素材料合成(C6C)>
[塩化コバルト(II)6水和物添加MeCN混合物の調整、不融化および炭素化処理]
アセトニトリル(和光純薬社製、MeCN) 0.5gと塩化コバルト(II)6水和物(和光純薬社製)0.50gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素を毎分300mL、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分10℃昇温、700℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、紫色残存物(C6B)を得た。この紫色残存物(C6B)を濃塩酸洗浄・ろ過を3回繰返し、水で洗浄後、風乾したところ、ろ紙上に何も残存せず、炭素材料を得ることができなかった。
【0205】
<物性評価>
[有機材料の揮発性及び耐熱性評価]
実施例1〜33と比較例1〜6に用いた有機材料の耐熱性評価は、示差熱・熱質量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、EXSTAR6000シリーズ TG/DTA6200、TG−DTA)を用い、窒素雰囲気下で30℃から1000℃まで毎分10℃で昇温した際、室温における質量を基準にした400℃での質量減少率(ΔTg)を算出して求めた。結果は表1〜3に示した。
【0206】
[カーボンアロイ塗付電極の作製]
実施例1〜33と比較例3〜5で得られたカーボンアロイ材料10mgに、バインダーとしてナフィオン溶液(5%アルコール水溶液)110mgと溶媒としての水2.4mL、1−プロパノール(IPA)1.6mLを加え、7mmφのアタッチメントを接続した超音波ホモジナイザー(日精社製、US−150T(商品名))で30分間分散させた。得られた分散物を4μL採取して回転ディスク電極に塗布し、室温で乾燥させてカーボンアロイ塗付電極を得た。
作製した各実施例及び比較例の試料に関して、各特性評価を行った。結果は表1〜3に示した。
【0207】
[酸素還元反応(ORR)測定]
Automatic Polarization System(北斗電工(株)社製、HZ−3000(商品名))に回転電極装置(北斗電工(株)社製、HR−201(商品名))を接続し、作用極は前記で得られたカーボンアロイ塗付電極、対極と参照極はそれぞれ白金電極と飽和カロメル電極(SCE)を用いて測定を行った。
【0208】
[酸素還元に関する電極活性試験手順]
以下の手順により測定した。
A.カーボンアロイ材料塗付電極のクリーニングのため、20℃、アルゴンを30分以上バブリングした0.1M硫酸水溶液中で掃引電位0.946〜―0.204V(vs.SCE)、掃引速度50mV/s、10サイクルのサイクリックボルタンメトリーを測定した。
B.ブランク測定のため、20℃、アルゴンを30分以上バブリングした0.1M硫酸水溶液中で掃引電位0.746〜―0.204V(vs.SCE)、掃引速度5mV/s、電極回転速度1500rpmでリニアースイープボルタンメトリーを測定した。
C.酸素還元活性測定のため、酸素を30分以上バブリングした0.5M硫酸水溶液中で掃引電位0.746〜−0.204V(vs.SCE)、掃引速度5mV/s、電極回転数1500rpmでリニアースイープボルタンメトリーを測定した。
D.Cの測定データからBの測定データを減算し、真の酸素還元活性として採用した。得られたボルタモグラム(図3:電圧−電流密度曲線)から、電圧0.5V vs.NHEの時の電流密度を求め、これをORR活性値とした。
【0209】
[BET測定]
試料前処理装置(日本ベル社製、BELPREP−flow(商品名))を用いて、200℃、3時間、真空下で乾燥した。
自動比表面積/細孔分布測定装置(日本ベル社製、BELSORP−miniII(商品名))を用いて簡易測定条件で測定した。
比表面積分析は、装置備え付けの解析プログラムを用いて、BET(Brunauer-Emmett-Teller)法により求めた。
【0210】
[顕微Raman測定]
顕微ラマン(堀場ジョバイボン社製、分散型ラマンシステムT6400(商品名))Arイオンレーザー(514,5nm)励起、対物レンズ100倍焦点レンズ(分解能1μm)を用いてラマンスペクトルを測定した。
得られたスペクトルのうち、1320cm−1付近と1600cm−1付近をそれぞれD−Band(C(SP3))とG−Band(C(SP2))とに波形分離し、得られたD−Bandの半値幅(ΔD)を求め、これを乱層度とした。
【0211】
【表1】

【0212】
【表2】

【0213】
【表3】

【0214】
【化27】

【符号の説明】
【0215】
10…燃料電池、
12…セパレータ、
13…アノード電極触媒、
14…固体高分子電解質、
15…カソード電極触媒、
16…セパレータ、
20…電気二重層キャパシタ、
21…第1の電極、
22…第2の電極、
23…セパレータ、
24a…外装蓋、
24b…外装ケース、
25…集電体、
26…ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量60〜2000の含窒素結晶性有機化合物を含む有機材料を焼成して得られた含窒素カーボンアロイ。但し、該含窒素結晶性有機化合物には、含窒素金属錯体を含まない。
【請求項2】
前記有機材料がさらに、無機金属、及び無機金属塩から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の含窒素カーボンアロイ。
【請求項3】
前記含窒素結晶性有機化合物が、ニトリル化合物、アミド化合物、又はキナクリドン化合物である請求項1又は2に記載の含窒素カーボンアロイ。
【請求項4】
前記含窒素結晶性有機化合物が分子内にニトリル基、アミド基、及び4−キノロン骨格から選択される少なくとも1つ、及び不飽和結合を有する有機化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイ。
【請求項5】
前記含窒素結晶性有機化合物が分子内にニトリル基およびアミド基から選択される少なくとも1つと、更に、ニトリル基、アミド基、ハロゲン原子、及び水酸基から選択される少なくとも1つと、不飽和結合とを有する有機化合物である請求項4に記載の含窒素カーボンアロイ。
【請求項6】
前記含窒素結晶性有機化合物が顔料である請求項1〜5のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイ。
【請求項7】
前記含窒素結晶性有機化合物の窒素含率が0.1質量%〜55質量%である請求項1〜6のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイ。
【請求項8】
前記有機材料が、窒素雰囲気下で400℃におけるΔTgが−95%以上−0.1%以下である難揮発性化合物である請求項1〜7のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイ。
【請求項9】
前記焼成が500℃〜1000℃の焼成温度、かつ、不活性ガスまたは非酸化性ガス流通下で行われる請求項1〜8のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイ。
【請求項10】
前記不活性ガスまたは非酸化性ガスの流速が内径36mmφ当たり0.01〜2.0リットル/分である請求項9に記載の含窒素カーボンアロイ。
【請求項11】
1)前記含窒素結晶性有機化合物と前記無機金属及び/又は無機金属塩とを混合する工程と
2)不活性雰囲気下で室温から炭素化温度まで毎分1℃以上1000℃以下で昇温する昇温工程と
3)500℃〜1000℃で、0.1時間〜100時間保持する炭素化工程と
4)炭素化温度から室温まで冷却する冷却工程と
を含む請求項2〜10のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイを含有する炭素触媒。
【請求項13】
請求項12に記載の炭素触媒と高分子電解質とを含有する燃料電池。
【請求項14】
請求項12に記載の炭素触媒を含有する蓄電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−225431(P2011−225431A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70943(P2011−70943)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】