説明

含窒素単量体、高分子化合物、レジスト材料及びパターン形成方法

【課題】高解像性を有し、プロセス適応性に優れ、露光後のパターン形状が良好で、ラインエッジラフネスが小いポジ型レジスト材料を提供する。
【解決手段】一般式(1)で示される単量体。


(R1はH、F、CH3又はCF3、R2はH又は一価又は二価の炭化水素基、R3は特定の酸不安定基、A1は二価の炭化水素基、A2は二価又は三価の炭化水素基、A2とR2は互いに結合して隣接する窒素原子と共に環を形成してもよい。k1は0又は1。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のカーバメート構造を有する単量体、及びこれを(共)重合してなる高分子化合物、ポジ型レジスト材料、特にKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、電子ビーム(EB)露光及び真空紫外光(EUV)露光用化学増幅ポジ型レジスト材料、及びこれを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。特にフラッシュメモリー市場の拡大と記憶容量の増大化が微細化を牽引している。最先端の微細化技術としては、ArFリソグラフィーによる65nmノードのデバイスの量産が行われており、次世代のArF液浸リソグラフィーによる45nmノードの量産準備が進行中である。次次世代の32nmノードとしては、水よりも高屈折率の液体と高屈折率レンズ、高屈折率レジストを組み合わせた超高NAレンズによる液浸リソグラフィー、波長13.5nmの真空紫外光(EUV)リソグラフィー、ArFリソグラフィーの二重露光(ダブルパターニングリソグラフィー)などが候補であり、検討が進められている。
【0003】
EBやX線などの非常に短波長な高エネルギー線においては、レジスト材料に用いられている炭化水素のような軽元素は吸収がほとんどなく、ポリヒドロキシスチレンベースのレジスト材料が検討されている。EB用レジストは、実用的にはマスク描画用途に用いられてきた。
【0004】
近年、マスク製作技術が問題視されるようになってきた。露光に用いられる光がg線の時代から、縮小投影露光装置が用いられており、その縮小倍率は1/5であったが、チップサイズの拡大と、投影レンズの大口径化と共に1/4倍率が用いられるようになってきたため、マスクの寸法ずれがウエハー上のパターンの寸法変化に与える影響が問題になっている。パターンの微細化と共に、マスクの寸法ずれの値よりもウエハー上の寸法ずれの方が大きくなってきていることが指摘されている。この問題点を計る尺度として、マスク寸法変化を分母、ウエハー上の寸法変化を分子として計算されたMask Error Enhancement Factor(MEEF)が求められている。45nm級のパターンでは、MEEFが4を超えることも珍しくない。縮小倍率が1/4でMEEFが4であれば、マスク製作において実質等倍マスクと同等の精度が必要であることが言える。
マスク製作用露光装置は線幅の精度を上げるため、レーザービームによる露光装置から電子ビーム(EB)による露光装置が用いられてきた。更にEBの電子銃における加速電圧を上げることによってより一層の微細化が可能になることから、10keVから30keV、最近は50keVが主流であり、100keVの検討も進められている。
【0005】
酸発生剤を添加し、光あるいは電子線の照射によって酸を発生させて脱保護反応を起こす化学増幅型レジスト材料にとって、酸の未露光部分への拡散を制御し、コントラストを向上させる目的でのクエンチャーの添加効果は非常に効果的であった。そのために多くのアミンクエンチャーが提案された。
ベーク中の酸及びアミンクエンチャーの蒸発とそれらの再付着により、パターンの形状や寸法が変化する問題が指摘されている。この現象は、例えばラインアンドスペースパターンの周辺部が遮光されているダークマスクを用いた場合と、周辺部が透明なブライトマスクを使った場合に生じる。ダークマスクの周辺部では光が照射されないのでレジスト膜内にはアミンクエンチャーが過剰となっており、ブライトマスクの周辺部では光照射によって発生した酸が過剰となっている。これまで酸の蒸発と再付着によるパターンの変形が主に報告されてきたが、アミンクエンチャーの蒸発も同様に問題である。
また、酸発生剤として、4−アルコキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムカチオン等のアルキルスルホニウム塩が開発されているが、このアルキルスルホニウム塩はアミン等による求核置換反応等を受け易く、レジスト溶液が高感度化するなど、安定性の低さが問題となっている。この酸発生剤に対して求核置換反応を起こさないアミンクエンチャーの開発が望まれているが、求核置換反応を起こさないピリジンやアニリンなどの弱塩基のアミンクエンチャーは、酸の捕獲性能が弱く、酸拡散を抑える性能が低い問題があった。
真空中の露光となるEUVやEB露光においても、クエンチャーの蒸発によって露光中に感度が高感度化する事象が指摘されており、また、アミンクエンチャーの拡散による像のぼけも指摘されている。レジスト材料の安定性を損ねることなく、熱による蒸発や拡散が小さく、かつ酸の捕捉性能に優れるクエンチャーの開発が望まれている。
【0006】
これまでに、液浸露光時の塩基性成分の溶出の低減や、焦点深度(DOF)などのリソグラフィー特性の向上を目的として、レジスト樹脂単位にアミンを導入した重合体が提案されおり(特許文献1,2:特開2008−133312号公報、特開2009−181062号公報)、クエンチャーの揮発、拡散を抑えることは可能であるが、ラフネスの抑制などの点で不十分であった。
また孤立パターンのマージン向上や、レジスト材料の安定性向上などを目的として、tert−ブトキシカルボニル化アミンなど、種々のカーバメート型クエンチャーが開発された(特許文献3,4:特許第3790649号公報、特開2007−298569号公報)。カーバメート型クエンチャーは、塩基性は低いので、前述の酸発生剤の安定性を向上させる長所があるが、これらもクエンチャーの揮発、拡散制御という点では不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−133312号公報
【特許文献2】特開2009−181062号公報
【特許文献3】特許第3790649号公報
【特許文献4】特開2007−298569号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】SPIE Vol.5039 p1(2003)
【非特許文献2】SPIE Vol.6520 p65203L−1(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、従来のポジ型レジスト材料を上回る高解像度、プロセス適応性を有し、露光後のパターン形状の矩形性が高く、ラフネスが小さいポジ型レジスト材料、特に化学増幅ポジ型レジスト材料、及びそのベース樹脂となり得る高分子化合物と該高分子化合物を得るためのモノマー、並びに上記レジスト材料を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、近年要望される高解像度のレジスト材料を得るべく鋭意検討を重ねた結果、酸によって分解しアミノ基が発生するカーバメート構造を有する繰り返し単位と、好ましくは更に酸によってカルボキシル基及び/又はヒドロキシ基を繰り返し単位として有する高分子化合物を含有する化学増幅ポジ型レジスト材料が、酸の拡散を抑える効果が高く、これ自身の拡散が非常に小さいためにパターンの解像度と矩形性が高く、しかも真空中の蒸発もないことによりEB、EUV露光に最適であることを知見し、本発明を完成させたものである。
【0011】
即ち、本発明は、下記事項を提供する。
請求項1:
下記一般式(1)で示される単量体。
【化1】


[式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R2は水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価又は二価の炭化水素基を示す。R3は炭素数1〜15の酸不安定基を示す。A1は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の二価の炭化水素基を示す。A2は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の二価又は三価の炭化水素基を示し、A2とR2は互いに結合して隣接する窒素原子と共に環を形成してもよい。k1は0又は1を示す。但し、k1=0のとき、R3で示される酸不安定基は以下の式で示すいずれかの基である。
【化2】


(式中、破線は結合手を示す。)]
請求項2:
下記一般式(2)で示される繰り返し単位aを含有することを特徴とする高分子化合物。
【化3】


[式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R2は水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価又は二価の炭化水素基を示す。R3は炭素数1〜15の酸不安定基を示す。A1は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の二価の炭化水素基を示す。A2は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の二価又は三価の炭化水素基を示し、A2とR2は互いに結合して隣接する窒素原子と共に環を形成してもよい。k1は0又は1を示す。但し、k1=0のとき、R3で示される酸不安定基は以下の式で示すいずれかの基である。
【化4】


(式中、破線は結合手を示す。)aは0<a<1.0の範囲である。]
請求項3:
請求項2記載の一般式(2)で示される繰り返し単位と、酸によってカルボキシル基及び/又はヒドロキシ基が発生する酸不安定基を含有する繰り返し単位とを共重合してなることを特徴とする高分子化合物。
請求項4:
酸によってカルボキシル基及び/又はヒドロキシ基が発生する酸不安定基を含有する繰り返し単位が、下記一般式(3)に示される繰り返し単位b又はcを有するものであることを特徴とする請求項3記載の高分子化合物。
【化5】


(式中、R4、R6は水素原子又はメチル基を示す。R5、R8は酸不安定基を示す。R7は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基もしくは該アルキレン基の水素原子が1個脱離した三価の基であり、エーテル基又はエステル基を有していてもよく、あるいは、フェニレン基又はナフチレン基を示す。Yは単結合又は−C(=O)−O−R9−を示し、R9は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基又はエステル基を有していてもよく、あるいは、フェニレン基又はナフチレン基を示す。Zは単結合又は−C(=O)−O−R10−を示し、R10は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基又はエステル基を有していてもよく、あるいは、フェニレン基又はナフチレン基を示す。上記フェニレン基及びナフチレン基はそれぞれフッ素原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、アミド基、又は炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシ基で置換されていてもよい。nは1又は2、bは0≦b<1.0、cは0≦c<1.0であり、かつ0<b+c<1の範囲である。)
請求項5:
前記繰り返し単位a、b、cに加えて、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ラクトン環、カーボネート基、チオカーボネート基、カルボニル基、環状アセタール基、エーテル基、エステル基、スルホン酸エステル基、シアノ基、アミド基、−O−C(=O)−G−(Gは硫黄原子又はNHである。)から選ばれる密着性基を有する繰り返し単位dを共重合してなることを特徴とする高分子化合物。
請求項6:
請求項2乃至5のいずれか1項記載の高分子化合物と有機溶剤を含有することを特徴とするポジ型レジスト材料。
請求項7:
更に、酸発生剤を含有する化学増幅型のレジスト材料であることを特徴とする請求項6記載のポジ型レジスト材料。
請求項8:
更に、添加剤として塩基性化合物及び/又は界面活性剤を配合してなることを特徴とする請求項6又は7記載のポジ型レジスト材料。
請求項9:
請求項6乃至8のいずれか1項記載のポジ型レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
請求項10:
露光する高エネルギー線が、g線、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、電子ビーム、又は波長3〜15nmの範囲の軟X線であることを特徴とする請求項9記載のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポジ型レジスト材料は、特に、酸の拡散を抑える効果が高く、かつクエンチャー成分の揮発、拡散も抑えることができ、これによって高解像性を有し、露光余裕度があり、プロセス適応性に優れ、露光後のパターン形状が良好で、ラインエッジラフネスが小さく、真空中の寸法安定性が良好である。従って、これらの優れた特性を有することから実用性が極めて高く、超LSI用レジスト材料及びマスクパターン形成材料として非常に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明者らは、レジスト材料への配合により、高解像度、プロセス適応性を有し、露光後の矩形性が高く、ラインエッジラフネスが小さい良好なパターン形状を与える未知の化合物について鋭意検討を重ねた。その結果、下記一般式(1)で示される含窒素単量体が、後述する方法により高収率かつ簡便に得られ、更に、この単量体を用いて得られる高分子化合物を配合して用いれば、高解像で、矩形性が高く、ラインエッジラフネスの小さい良好なパターン形状を与える化学増幅ポジ型レジスト材料が得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0014】
【化6】


[式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R2は水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価又は二価の炭化水素基を示す。R3は炭素数1〜15の酸不安定基を示す。A1は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の二価の炭化水素基を示す。A2は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の二価又は三価の炭化水素基を示し、A2とR2は互いに結合して隣接する窒素原子と共に環を形成してもよい。k1は0又は1を示す。但し、k1=0のとき、R3で示される酸不安定基は以下の式で示すいずれかの基である。
【化7】


(式中、破線は結合手を示す。)]
【0015】
2の炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状又は環状の一価炭化水素基として、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、tert−アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基等のアルキル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
3の炭素数1〜15の酸不安定基として、具体的には下記A〜Qのものが例示できる。但し、k=0の場合、酸不安定基は下記A〜Jに限定される。
【化8】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0017】
1の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の二価の炭化水素基として、具体的には下記のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化9】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0018】
2の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の二価の炭化水素基として、具体的には下記のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化10】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0019】
2とR2が互いに結合して隣接する窒素原子と共に環を形成する場合、A2は三価、R2は二価の炭化水素基であり、具体的には下記のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化11】

(式中、R1とR3、A1及びk1は前記と同様である。)
【0020】
上記一般式(1)で示される本発明の含窒素単量体は、カーバメート構造を有しており、酸の存在下にカーバメートの脱保護反応が進行し、一級又は二級アミンが生じるため、塩基性が増大する(下記反応式)。
【化12】

(式中、R1〜R3、A1、A2及びk1は前記と同様である。)
【0021】
即ち、上記式(1)で示される含窒素単量体から得られる繰り返し単位を持つ高分子化合物は、レジスト膜中で発生した酸により脱保護を起こし、上記式(1’)の持つアミン構造を生じた後、クエンチャーとして機能し得る。
【0022】
本発明の含窒素単量体(1)は、カーバメートの酸不安定基R3の構造や、含窒素部分を構成するR2、A2の構造、更に上記式中k1で示される重合性の(メタ)アクリル部分と含窒素部分とを繋ぐリンカー単位の長さを適宜選択することにより、カーバメートの脱保護反応性や、発生したアミン部分の塩基性の強弱など、レジスト膜中でのクエンチャーとしての挙動を制御することが可能である。その中でも、アミン単位としては、原材料の入手のし易さ、製造の容易さ等からピロリジン、ピペリジン等の環状二級アミン単位が好ましい。同様の理由から、酸不安定基R3としてはtert−ブチル基、tert−アミル基、アリルオキシ基、ベンジル基等が好ましく用いられる。
【0023】
好ましく用いられる含窒素単量体を下記に挙げるが、これらに限定されるものではない。
【化13】

【0024】
【化14】

【0025】
【化15】

【0026】
上記一般式(1)で示される本発明の含窒素単量体は、例えば、下記反応式に示す方法により得ることができるが、これらに限定されるものではない。以下、式中で用いられる破線は結合手を示す。
【化16】

(式中、R1〜R3、A1、A2及びk1は上記と同様である。X1はハロゲン原子又は−OR11を示す。R11は下記式(8)
【化17】

を示す。X2はハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基又はアシルオキシ基を示す。)
【0027】
なお、上記一般式(1)において、k1が1の場合には、下記に示す別法を用いることができる。
【化18】

(式中、R1〜R3、A1、A2及びk1は上記と同様である。X3はハロゲン原子を示す。X4はハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基又はアシルオキシ基を示す。MaはLi、Na、K、Mg1/2、Ca1/2又は置換もしくは未置換のアンモニウムを示す。)
【0028】
ステップi)はアミノアルコール(4)とアルコキシカルボニル化剤(5)との反応によりヒドロキシカーバメート(6)に導く反応である。
【0029】
ステップi)における反応は公知の方法により容易に進行するが、アルコキシカルボニル化剤(5)としては二炭酸ジエステル{式(5)においてX1が−OR11の場合}、又はハロ炭酸エステル{式(5)においてX1がハロゲン原子の場合}が好ましい。二炭酸ジエステルを用いる場合は、塩化メチレン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ヘキサン等の溶剤中、アミノアルコール(4)、二炭酸ジベンジル、二炭酸ジ−tert−ブチル、二炭酸ジ−tert−アミル等の対応する二炭酸ジエステル、トリエチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、N,N−ジメチルアニリン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じて冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。ハロ炭酸エステルを用いる場合は、無溶剤あるいは塩化メチレン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ヘキサン等の溶剤中、アミノアルコール(4)、クロロ炭酸アリル、クロロ炭酸ベンジル等の対応するハロ炭酸エステル、トリエチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、N,N−ジメチルアニリン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じて冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。アルコキシカルボニル化剤(5)の使用量は、条件により種々異なるが、例えば、原料のアミノアルコール(4)1モルに対して、1.0〜5.0モル、特に1.0〜2.0モルとすることが望ましい。塩基の使用量は条件により種々異なるが、例えば、原料のアミノアルコール(4)1モルに対して、0〜5.0モル、特に0〜2.0モルとすることが望ましい。反応時間はガスクロマトグラフィー(GC)やシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常0.5〜24時間程度である。反応混合物から通常の水系処理(aqueous work−up)によりヒドロキシカーバメート(6)を得ることができ、必要があれば蒸留、クロマトグラフィー、再結晶などの常法に従って精製することができる。
【0030】
ステップii)はヒドロキシカーバメート(6)とエステル化剤(7)との反応により本発明の含窒素単量体(1)に導く反応である。
【0031】
ステップii)における反応は公知の方法により容易に進行するが、エステル化剤(7)としては、酸クロリド{式(7)においてX2が塩素原子の場合}、カルボン酸{式(7)においてX2が水酸基の場合}、又は酸無水物{式(7)においてX2がアシルオキシ基の場合}が特に好ましい。酸クロリドを用いる場合は、無溶剤あるいは塩化メチレン、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン等の溶剤中、ヒドロキシカーバメート(6)、メタクリロイルクロリドなどの対応する酸クロリド、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じて冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。また、カルボン酸を用いる場合は、トルエン、ヘキサン等の溶剤中、ヒドロキシカーバメート(6)とメタクリル酸等の対応するカルボン酸を酸触媒の存在下加熱し、必要に応じて生じる水を系外に除くなどして行うのがよい。用いる酸触媒としては例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などの無機酸類、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸類等が挙げられる。酸無水物を用いる場合は、無溶剤あるいは塩化メチレン、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン等の溶剤中、ヒドロキシカーバメート(6)、メタクリル酸無水物などの対応する酸無水物、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じて冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。反応時間はガスクロマトグラフィー(GC)やシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常0.5〜24時間程度である。反応混合物から通常の水系処理(aqueous work−up)により含窒素単量体(1)を得ることができ、必要があれば蒸留、クロマトグラフィー、再結晶などの常法に従って精製することができる。
【0032】
ステップiii)はヒドロキシカーバメート(6)とエステル化剤(9)との反応によりハロエステル(10)に導く反応である。
【0033】
ステップiii)における反応は公知の方法により容易に進行するが、エステル化剤(9)としては、酸クロリド{式(9)においてX4が塩素原子の場合}又はカルボン酸{式(9)においてX4が水酸基の場合}が特に好ましい。酸クロリドを用いる場合は、無溶剤あるいは塩化メチレン、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン等の溶剤中、ヒドロキシカーバメート(6)、2−クロロ酢酸クロリド、3−クロロプロピオン酸クロリド等の対応する酸クロリド、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じて冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。また、カルボン酸を用いる場合は、トルエン、ヘキサン等の溶剤中、ヒドロキシカーバメート(6)と2−クロロ酢酸、3−クロロプロピオン酸等の対応するカルボン酸を酸触媒の存在下加熱し、必要に応じて生じる水を系外に除くなどして行うのがよい。用いる酸触媒としては例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などの無機酸類、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸類等が挙げられる。反応時間はガスクロマトグラフィー(GC)やシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常0.5〜24時間程度である。反応混合物から通常の水系処理(aqueous work−up)によりハロエステル(10)を得ることができ、必要があれば蒸留、クロマトグラフィー、再結晶などの常法に従って精製することができる。
【0034】
ステップiv)はハロエステル(10)とカルボン酸塩化合物(11)との反応により単量体(12)、即ち本発明の含有窒素単量体(1)に導く反応である。
【0035】
ステップiv)における反応は、常法に従って行うことができる。カルボン酸塩化合物(11)としては、各種カルボン酸金属塩などの市販のカルボン酸塩化合物をそのまま用いてもよいし、メタクリル酸、アクリル酸等の対応するカルボン酸と塩基より反応系内でカルボン酸塩化合物を調製して用いてもよい。カルボン酸塩化合物(11)の使用量は、原料であるハロエステル(10)1モルに対し0.5〜10モル、特に1.0〜3.0モルとすることが好ましい。0.5モル未満の使用では原料が大量に残存するため収率が大幅に低下する場合があり、10モルを超える使用では使用原料費の増加、釜収率の低下などによりコスト面で不利となる場合がある。対応するカルボン酸と塩基より反応系内でカルボン酸塩化合物を調製する場合に用いることができる塩基としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジン、コリジン、N,N−ジメチルアニリン等のアミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水酸化物類;炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩類;ナトリウムなどの金属類;水素化ナトリウムなどの金属水素化物;ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシドなどの金属アルコキシド類;ブチルリチウム、臭化エチルマグネシウム等の有機金属類;リチウムジイソプロピルアミド等の金属アミド類から選択して単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。塩基の使用量は、対応するカルボン酸1モルに対し0.2〜10モル、特に0.5〜2.0モルとすることが好ましい。0.2モル未満の使用では大量のカルボン酸が無駄になるためコスト面で不利になる場合があり、10モルを超える使用では副反応の増加により収率が大幅に低下する場合がある。反応時間はガスクロマトグラフィー(GC)やシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常0.5〜24時間程度である。反応混合物から通常の水系処理(aqueous work−up)により含窒素単量体(1)を得ることができ、必要があれば蒸留、クロマトグラフィー、再結晶などの常法に従って精製することができる。
【0036】
本発明で用いる高分子化合物は、下記一般式(2)で示される繰り返し単位aを含むことを特徴とする。なお、以下では、一般式(2)で示される繰り返し単位を含む高分子化合物を、高分子化合物(P1)と呼ぶことにする。
【化19】

(式中、R1〜R3、A1、A2及びk1は上記と同様である。0<a<1.0である。)
【0037】
高分子化合物(P1)は、上記一般式(2)で示される繰り返し単位中にカーバメート構造を含む。そのため、高分子化合物(P1)をレジスト材料中に配合して用いた場合、前述した機構により、クエンチャーとして機能し得る。
高分子化合物(P1)は、繰り返し単位中でアミンクエンチャーが発生し機能するため、クエンチャー成分の揮発が抑えられ、ケミカルフレアによる欠陥のない、高解像性の良好なパターン形状を得ることが期待できる。
【0038】
本発明の高分子化合物(P1)では、一般式(2)で示される繰り返し単位aに加えて、下記一般式(3)で示される、酸不安定基で置換されたカルボキシル基及び/又はヒドロキシ基を有する繰り返し単位b及び/又はcを1つ以上共存させることができる。酸不安定基で置換されたカルボキシル基及び/又はヒドロキシ基を有する繰り返し単位は下記一般式(3)に示される。
【化20】

(式中、R4、R6は水素原子又はメチル基を示す。R5、R8は酸不安定基を示す。R7は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基もしくは該アルキレン基の水素原子が1個脱離した三価の基であり、エーテル基又はエステル基を有していてもよく、あるいは、フェニレン基又はナフチレン基を示す。Yは単結合又は−C(=O)−O−R9−を示し、R9は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基又はエステル基を有していてもよく、あるいは、フェニレン基又はナフチレン基を示す。Zは単結合又は−C(=O)−O−R10−を示し、R10は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基又はエステル基を有していてもよく、あるいは、フェニレン基又はナフチレン基を示す。上記フェニレン基及びナフチレン基はそれぞれフッ素原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、アミド基、又は炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシ基で置換されていてもよい。nは1又は2、bは0≦b<1.0、cは0≦c<1.0であり、かつ0<b+c<1の範囲である。)
【0039】
ここで、上記一般式(3)中、R5、R8で示す酸不安定単位について説明する。酸不安定単位とは、カルボン酸、フェノール、フルオロアルコール等の酸性基が酸不安定基により保護された構造を有する繰り返し単位であり、酸によって脱保護し、アルカリ現像液に対するポリマーの溶解性を向上させることができる。式(3)で示される繰り返し単位は、bはカルボン酸が酸不安定基Lにより保護された構造であり、R5の酸不安定基としては種々用いることができるが、具体的には下記一般式(L1)で示されるアルコキシメチル基、下記一般式(L2)〜(L8)で示される三級アルキル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。特に好ましい酸不安定基は、下記式(L2)〜(L5)で示される基である。また、c単位のR8は下記式(L1)、(L2)のものが好ましく用いられる。
【0040】
【化21】

【0041】
上記式中、破線は結合手を示す。RL01、RL02は、水素原子、又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、アダマンチル基等が例示できる。RL03は、炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい一価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができる。具体的には、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基としては上記RL01、RL02と同様のものが例示でき、置換アルキル基としては下記の基等が例示できる。
【0042】
【化22】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0043】
L01とRL02、RL01とRL03、RL02とRL03とは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には、環の形成に関与するRL01とRL02、RL01とRL03、又はRL02とRL03は、それぞれ炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0044】
L04、RL05、RL06は、それぞれ独立に炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基等が例示できる。
【0045】
L07は、炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。上記置換されていてもよいアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換された基、又はこれらのメチレン基の一部が酸素原子又は硫黄原子に置換された基等が例示できる。上記置換されていてもよいアリール基としては、具体的にはフェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基等が例示できる。式(L3)において、mは0又は1、nは0,1,2,3のいずれかであり、2m+n=2又は3を満足する数である。
【0046】
L08は、炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。具体的には、RL07と同様のもの等が例示できる。RL09〜RL18は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の一価の炭化水素基を示す。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示できる。RL09とRL10、RL09とRL11、RL09とRL12、RL10とRL12、RL11とRL12、RL13とRL14、RL15とRL16、又はRL16とRL17は、互いに結合して環を形成していてもよく、その場合、環の形成に関与するRL09とRL10、RL09とRL11、RL09とRL12、RL10とRL12、RL11とRL12、RL13とRL14、RL15とRL16、又はRL16とRL17は、炭素数1〜15の二価の炭化水素基を示し、具体的には上記一価の炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等が例示できる。また、RL09とRL11、RL11とRL17、又はRL15とRL17は、隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい。
【0047】
L19は、炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様のもの等が例示できる。
【0048】
L20は、炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様の基等が例示できる。
【0049】
Xは、これが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はノルボルナン環を形成する二価の基を示す。RL21、RL22は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。RL21とRL22は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、置換又は非置換のシクロペンタン環、又はシクロヘキサン環を形成する二価の基を示す。pは1又は2を示す。
【0050】
L23は、炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様の基等が例示できる。
【0051】
Yは、これが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はノルボルナン環を形成する二価の基を示す。RL24、RL25は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。RL24とRL25は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、置換又は非置換のシクロペンタン環、又はシクロヘキサン環を形成する二価の基を示す。qは1又は2を示す。
【0052】
L26は、炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様の基等が例示できる。
【0053】
Zは、これが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はノルボルナン環を形成する二価の基を表す。RL27、RL28は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。RL27とRL28は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、置換又は非置換のシクロペンタン環、又はシクロヘキサン環を形成する二価の基を示す。
【0054】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち直鎖状又は分岐状のものとしては、具体的には下記の基等が例示できる。
【化23】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0055】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち環状のものとしては、具体的にはテトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が例示できる。
【0056】
上記式(L2)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブチル基、tert−アミル基、及び下記の基等が例示できる。
【化24】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0057】
上記式(L3)の酸不安定基としては、具体的には1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−n−プロピルシクロペンチル基、1−イソプロピルシクロペンチル基、1−n−ブチルシクロペンチル基、1−sec−ブチルシクロペンチル基、1−シクロヘキシルシクロペンチル基、1−(4−メトキシ−n−ブチル)シクロペンチル基、1−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル基、1−(7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、3−メチル−1−シクロペンテン−3−イル基、3−エチル−1−シクロペンテン−3−イル基、3−メチル−1−シクロヘキセン−3−イル基、3−エチル−1−シクロヘキセン−3−イル基等が例示できる。
【0058】
上記式(L4)の酸不安定基としては、下記一般式(L4−1)〜(L4−4)で示される基が特に好ましい。
【化25】

(式中、RL41は上記の通り。)
【0059】
上記式(L4−1)〜(L4−4)中、破線は結合位置及び結合方向を示す。RL41は、それぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の一価炭化水素基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を例示できる。
【0060】
上記式(L4−1)〜(L4−4)には、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るが、上記式(L4−1)〜(L4−4)は、これらの立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0061】
例えば、上記式(L4−3)は下記一般式(L4−3−1)、(L4−3−2)で示される基から選ばれる1種又は2種の混合物を代表して表すものとする。
【化26】

(式中、RL41は上記の通り。)
【0062】
また、上記式(L4−4)は下記一般式(L4−4−1)〜(L4−4−4)で示される基から選ばれる1種又は2種以上の混合物を代表して表すものとする。
【化27】

(式中、RL41は上記の通り。)
【0063】
上記式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)は、それらのエナンチオ異性体及びエナンチオ異性体混合物をも代表して示すものとする。
【0064】
なお、式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)の結合方向がそれぞれビシクロ[2.2.1]ヘプタン環に対してexo側であることによって、酸触媒脱離反応における高反応性が実現される(特開2000−336121号公報参照)。これらビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格を有する三級exo−アルキル基を置換基とする単量体の製造において、下記一般式(L4−1−endo)〜(L4−4−endo)で示されるendo−アルキル基で置換された単量体を含む場合があるが、良好な反応性の実現のためにはexo比率が50%以上であることが好ましく、exo比率が80%以上であることが更に好ましい。
【化28】

(式中、RL41は上記の通り。)
【0065】
上記式(L4)の酸不安定基としては、具体的には下記の基等が例示できる。
【化29】


(式中、破線は結合手を示す。)
【0066】
上記式(L5)の酸不安定基としては、具体的には下記の基等が例示できる。
【化30】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0067】
上記式(L6)の酸不安定基としては、具体的には下記の基等が例示できる。
【化31】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0068】
上記式(L7)の酸不安定基としては、具体的には下記の基等が例示できる。
【化32】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0069】
上記式(L8)の酸不安定基としては、具体的には下記の基等が例示できる。
【化33】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0070】
繰り返し単位bを得るためのモノマーは、具体的には下記に例示される。
【化34】

(式中、R4、R5は前記と同様である。)
【0071】
【化35】

(式中、R4、R5は前記と同様である。)
【0072】
繰り返し単位cを得るためのモノマーは、具体的には下記に例示される。
【化36】

(式中、R6、R8は前記と同様である。)
【0073】
【化37】

(式中、R6、R8は前記と同様である。)
【0074】
本発明の高分子化合物としては、繰り返し単位a、b、cに加えて、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ラクトン環、カーボネート基、チオカーボネート基、カルボニル基、環状アセタール基、エーテル基、エステル基、スルホン酸エステル基、シアノ基、アミド基、−O−C(=O)−G−(Gは硫黄原子又はNHである。)から選ばれる密着性基を有する繰り返し単位dを共重合することができる。ヒドロキシ基、カルボキシル基、ラクトン環、カーボネート基、チオカーボネート基、カルボニル基、環状アセタール基、エーテル基、エステル基、スルホン酸エステル基、シアノ基、アミド基、−O−C(=O)−G−(Gは硫黄原子又はNHである。)から選ばれる密着性基を有する繰り返し単位dは、具体的には下記に例示される。
【0075】
【化38】

【0076】
【化39】

【0077】
【化40】

【0078】
【化41】

【0079】
【化42】

【0080】
【化43】

【0081】
【化44】

【0082】
上記繰り返し単位dのうち、ヒドロキシ基を有するモノマーの場合、重合時にヒドロキシ基をエトキシエトキシ基などの酸によって脱保護し易いアセタールで保護しておき、重合後に弱酸と水によって脱保護を行ってもよいし、あるいはアセチル基、ホルミル基、ピバロイル基等で保護しておき、重合後にアルカリ加水分解を行うこともできる。
【0083】
本発明の高分子化合物では、特開2006−178317号公報記載の下記一般式(13)で示されるスルホニウム塩を持つ繰り返し単位e1、e2、e3を共重合することができる。特開2006−178317号公報には、スルホン酸が主鎖に直結したスルホニウム塩が提案されている。ポリマー主鎖に酸発生剤を結合させることによって、酸拡散を小さくし、酸拡散のぼけによる解像性の低下を防止することができる。また、酸発生剤が均一に分散することによってエッジラフネス(LER、LWR)を改善することができる。
【0084】
【化45】

(上記式中、R20、R24、R28は水素原子又はメチル基、R21は単結合、フェニレン基、−O−R−、又は−C(=O)−Y−R−を示す。Yは酸素原子又はNHを示し、Rは炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基を示し、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、エーテル基(−O−)又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。R22、R23、R25、R26、R27、R29、R30、R31は同一又は異種の炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでいてもよく、又は炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又はチオフェニル基を示す。Z0は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R32−、又は−C(=O)−Z1−R32−を示す。Z1は酸素原子又はNH、R32は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基を示し、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。M-は非求核性対向イオンを表す。)
【0085】
-の非求核性対向イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハライドイオン、トリフレート、1,1,1−トリフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等のフルオロアルキルスルホネート、トシレート、ベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5−ペンタフルオロベンゼンスルホネート等のアリールスルホネート、メシレート、ブタンスルホネート等のアルキルスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等のイミド酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチドなどのメチド酸を挙げることができる。
【0086】
更には、下記一般式(K−1)に示されるα位がフルオロ置換されたスルホネート、下記一般式(K−2)に示されるα,β位がフルオロ置換されたスルホネートが挙げられる。
【化46】

【0087】
一般式(K−1)中、R102は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜20のアリール基であり、エーテル基、エステル基、カルボニル基、ラクトン環、又はフッ素原子を有していてもよい。
一般式(K−2)中、R103は水素原子、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アシル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又はアリーロキシ基であり、エーテル基、エステル基、カルボニル基、又はラクトン環を有していてもよい。
【0088】
また、下記一般式(14)に示されるインデンf1、アセナフチレンf2、クロモンf3、クマリンf4、ノルボルナジエンf5などの繰り返し単位fを共重合することもできる。
【0089】
【化47】

(式中、R110〜R114は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は一部もしくは全てがハロゲン原子で置換されたアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルカノイル基又はアルコキシカルボニル基、炭素数6〜10のアリール基、ハロゲン原子、又は1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基を示す。Xはメチレン基、酸素原子、又は硫黄原子を示す。f1は0≦f1≦0.4、f2は0≦f2≦0.4、f3は0≦f3≦0.4、f4は0≦f4≦0.4、f5は0≦f5≦0.4、0≦f1+f2+f3+f4+f5≦0.4である。)
【0090】
繰り返し単位a、b、c、d、e、f以外に共重合できる繰り返し単位gとしては、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン、メチレンインダンなどが挙げられる。
【0091】
これら高分子化合物を合成するには、1つの方法としては、繰り返し単位a〜gを与えるモノマーのうち所望のモノマーを、有機溶剤中、ラジカル重合開始剤を加えて加熱重合を行い、共重合体の高分子化合物を得ることができる。
【0092】
重合時に使用する有機溶剤としてはトルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルエチルエトン、γブチロラクトン等が例示できる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示でき、好ましくは50〜80℃に加熱して重合できる。反応時間としては2〜100時間、好ましくは5〜20時間である。
【0093】
ヒドロキシスチレン、ヒドロキシビニルナフタレンを共重合する場合は、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシビニルナフタレンの代わりにアセトキシスチレン、アセトキシビニルナフタレンを用い、重合後上記アルカリ加水分解によってアセトキシ基を脱保護してポリヒドロキシスチレン、ヒドロキシポリビニルナフタレンにする方法もある。
【0094】
アルカリ加水分解時の塩基としては、アンモニア水、トリエチルアミン等が使用できる。また反応温度としては−20〜100℃、好ましくは0〜60℃であり、反応時間としては0.2〜100時間、好ましくは0.5〜20時間である。
【0095】
ここで、繰り返し単位a〜cの割合は、0<a<1.0、0≦b<1.0、0≦c<1.0、0.1≦b+c<1.0、0<d<1.0、0≦e1≦0.5、0≦e2≦0.5、0≦e3≦0.5、0≦e1+e2+e3≦0.5、0≦f≦0.5、0≦g≦0.5、好ましくは0.01≦a≦0.8、0≦b≦0.8、0≦c≦0.8、0.1≦b+c≦0.8、0.1≦d≦0.9、0≦e1≦0.4、0≦e2≦0.4、0≦e3≦0.4、0≦e1+e2+e3≦0.4、0≦f≦0.4、0≦g≦0.4、より好ましくは0.02≦a≦0.7、0≦b≦0.7、0≦c≦0.7、0.1≦b+c≦0.7、0.15≦d≦0.85、0≦e1≦0.3、0≦e2≦0.3、0≦e3≦0.3、0≦e1+e2+e3≦0.3、0≦f≦0.3、0≦g≦0.3である。なお、a+b+c+d+e+f+g=1である。
【0096】
本発明のポジ型レジスト材料に用いられる高分子化合物は、それぞれ重量平均分子量が1,000〜500,000、好ましくは2,000〜30,000である。重量平均分子量が小さすぎるとレジスト材料が耐熱性に劣るものとなり、大きすぎるとアルカリ溶解性が低下し、パターン形成後に裾引き現象が生じ易くなってしまう。
なお、重量平均分子量(Mw)は、溶剤としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いたポリスチレン換算による測定値である。
【0097】
更に、本発明のポジ型レジスト材料に用いられる高分子化合物においては、多成分共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が広い場合は低分子量や高分子量のポリマーが存在するために、露光後、パターン上に異物が見られたり、パターンの形状が悪化したりする。それ故、パターンルールが微細化するに従ってこのような分子量、分子量分布の影響が大きくなり易いことから、微細なパターン寸法に好適に用いられるレジスト材料を得るには、使用する多成分共重合体の分子量分布は1.0〜2.0、特に1.0〜1.5と狭分散であることが好ましい。
また、組成比率や分子量分布や分子量が異なる2つ以上のポリマーや、繰り返し単位aを共重合していないポリマーをブレンドすることも可能である。
【0098】
本発明に用いられる高分子化合物は、ポジ型レジスト材料のベース樹脂として好適で、このような高分子化合物をベース樹脂とし、これに有機溶剤、酸発生剤、溶解制御剤、塩基性化合物、界面活性剤等を目的に応じ適宜組み合わせて配合してポジ型レジスト材料を構成することによって、露光部では前記高分子化合物が触媒反応により現像液に対する溶解速度が加速されるので、極めて高感度のポジ型レジスト材料とすることができ、レジスト膜の溶解コントラスト及び解像性が高く、露光余裕度があり、プロセス適応性に優れ、露光後のパターン形状が良好でありながら、より優れたエッチング耐性を示し、特に酸拡散を抑制できることから粗密寸法差が小さく、これらのことから実用性が高く、超LSI用レジスト材料として非常に有効なものとすることができる。特に、酸発生剤を含有させ、酸触媒反応を利用した化学増幅ポジ型レジスト材料とすると、より高感度のものとすることができると共に、諸特性が一層優れたものとなり極めて有用なものとなる。
【0099】
また、ポジ型レジスト材料に溶解制御剤を配合することによって、露光部と未露光部との溶解速度の差を一層大きくすることができ、解像度を一層向上させることができる。
【0100】
更に、塩基性化合物を添加することによって、例えばレジスト膜中での酸の拡散速度を抑制し解像度を一層向上させることができるし、界面活性剤を添加することによってレジスト材料の塗布性を一層向上あるいは制御することができる。
【0101】
本発明のポジ型レジスト材料には、本発明のパターン形成方法に用いる化学増幅ポジ型レジスト材料を機能させるために酸発生剤を含んでもよく、例えば、活性光線又は放射線に感応して酸を発生する化合物(光酸発生剤)を含有してもよい。光酸発生剤としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わないが、好適な光酸発生剤としては特開2009−269953号公報記載のスルホニウム塩及び同公報中に記載されている(F)成分の光酸発生剤、並びに特許第3995575号公報記載の光酸発生剤が挙げられ、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤のいずれでもよい。
【0102】
本発明では、特に下記一般式(15)で示されるスルホニウム塩が好適に用いられる。
【化48】

(式中、RP5、RP6、RP7はそれぞれ独立に、フッ素原子、水酸基又はエーテル結合を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはRP5、RP6及びRP7のうちいずれか2つ以上がそれぞれ結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。RP8は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。RP9はヘテロ原子を含んでもよい炭素数6〜30の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。)
【0103】
上記一般式(15)のスルホニウムカチオンとして、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化49】

【0104】
上記一般式(15)のスルホネートアニオン上の置換基RP9として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化50】

【0105】
上記スルホニウムカチオンとスルホネートアニオンは、レジスト材料中でのスルホニウムカチオンの安定性や、露光波長での酸発生効率、又は発生酸の拡散性などを考慮して好適な組み合わせを適宜選択することが可能である。好ましくは下記スルホニウム塩が挙げられる。
【0106】
【化51】

【0107】
【化52】

【0108】
【化53】

【0109】
【化54】

【0110】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト材料は、更に、有機溶剤、塩基性化合物、溶解制御剤、界面活性剤、アセチレンアルコール類のいずれか1つ以上を含有することができる。
【0111】
有機溶剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0144]〜[0145]に記載のシクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類及びその混合溶剤が挙げられる。
【0112】
塩基性化合物としては特開2008−111103号公報の段落[0146]〜[0164]に記載の一級、二級、三級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物、あるいは特許第3790649号公報に記載のカーバメート基を有する化合物を挙げることができる。
【0113】
また、特開2008−158339号公報に記載されているα位がフッ素化されていないスルホン酸、及びカルボン酸のスルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩をクエンチャーとして用いることもできる。このα位がフッ素化されていないスルホン酸塩、及びカルボン酸塩と、光酸発生剤から発生したα位がフッ素化されたスルホン酸、イミド酸、メチド酸が共存すると、α位がフッ素化されていないスルホン酸、及びカルボン酸が塩交換により生じる。このα位がフッ素化されていないスルホン酸、及びカルボン酸の酸強度では、レジスト樹脂は脱保護反応を起こさないため、該スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩はクエンチャーとして機能する。特に、α位がフッ素化されていないスルホン酸、及びカルボン酸のスルホニウム塩、ヨードニウム塩は光分解性があるために、光強度が強い部分のクエンチ能が低下すると共に、α位がフッ素化されたスルホン酸、イミド酸、メチド酸の濃度が増加する。これによって露光部分のコントラストが向上する。
【0114】
界面活性剤としては特開2008−111103号公報の段落[0165]〜[0166]、溶解制御剤としては特開2008−122932号公報の段落[0155]〜[0178]、アセチレンアルコール類としては段落[0179]〜[0182]に記載のものを用いることができる。
【0115】
この場合、酸発生剤の配合量は、ベース樹脂100質量部に対し0.01〜100質量部、特に0.1〜80質量部とすることが好ましく、有機溶剤の配合量は、ベース樹脂100質量部に対し50〜10,000質量部、特に100〜5,000質量部であることが好ましい。また、ベース樹脂100質量部に対し、溶解制御剤は0〜50質量部、特に0〜40質量部、塩基性化合物は0〜100質量部、特に0.001〜50質量部、界面活性剤は0〜10質量部、特に0.0001〜5質量部の配合量とすることが好ましい。
なお、上記一般式(13)で示される繰り返し単位e1、e2、e3から選ばれる重合性の酸発生剤が共重合されている場合は、必ずしも酸発生剤は添加しなくてもよい。
【0116】
スピンコート後のレジスト表面の撥水性を向上させるための高分子化合物を添加することもできる。この撥水性向上剤はトップコートを用いない液浸リソグラフィーに用いることができる。このような撥水性向上剤は特定構造の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有し、特開2007−297590号公報、特開2008−111103号公報、特開2008−122932号公報に例示されている。
【0117】
レジスト材料に添加される撥水性向上剤は、現像液の有機溶剤に溶解する必要がある。前述の特定の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する撥水性向上剤は、現像液への溶解性が良好である。撥水性向上剤として、アミノ基やアミン塩を繰り返し単位として共重合した高分子化合物は、ポストエクスポージャベーク(PEB)中の酸の蒸発を防いで現像後のホールパターンの開口不良を防止する効果が高い。撥水性向上剤の添加量は、レジスト材料のベース樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。
【0118】
本発明のポジ型レジスト材料、例えば有機溶剤と、一般式(2)で示される酸によってアミノ基が発生するカーバメートと酸脱離基とを有する高分子化合物と、酸発生剤、塩基性化合物を含む化学増幅ポジ型レジスト材料を種々の集積回路製造に用いる場合は、特に限定されないが公知のリソグラフィー技術を適用することができる。
【0119】
例えば、本発明のポジ型レジスト材料を、集積回路製造用の基板(Si、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi等)上にスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により塗布膜厚が0.1〜2.0μmとなるように塗布する。これをホットプレート上で60〜150℃、10秒〜30分間、好ましくは80〜120℃、30秒〜20分間プリベークする。次いで、紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線、真空紫外線(軟X線)等の高エネルギー線、特にg線、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、電子ビーム、波長3〜15nmの軟X線から選ばれる光源で目的とするパターンを所定のマスクを通じてもしくは直接露光を行う。露光量は1〜200mJ/cm2程度、特に10〜100mJ/cm2、又は0.1〜100μC/cm2程度、特に0.5〜50μC/cm2となるように露光することが好ましい。ArFエキシマレーザーによる193nmの露光の場合は大気中や窒素気流中のドライ雰囲気でもよいし、水中の液浸露光であってもよい。ArF液浸リソグラフィーにおいては液浸溶剤として純水、又はアルカン等の屈折率が1以上で露光波長に高透明の液体が用いられる。液浸リソグラフィーでは、プリベーク後のレジスト膜と投影レンズの間に、純水やその他の液体を挿入する。これによってNAが1.0以上のレンズ設計が可能となり、より微細なパターン形成が可能になる。液浸リソグラフィーはArFリソグラフィーを45nmノードまで延命させるための重要な技術である。液浸露光の場合は、レジスト膜上に残った水滴残りを除去するための露光後の純水リンス(ポストソーク)を行ってもよいし、レジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために、プリベーク後のレジスト膜上に保護膜を形成させてもよい。液浸リソグラフィーに用いられるレジスト保護膜としては、例えば、水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶剤に溶解させた材料が好ましい。次に、ホットプレート上で60〜150℃、10秒〜30分間、好ましくは80〜120℃、30秒〜20分間ポストエクスポージャベーク(PEB)する。
【0120】
更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜10質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、3秒〜3分間、好ましくは5秒〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより、光を照射した部分は現像液に溶解し、露光されなかった部分は溶解せず、基板上に目的のポジ型のパターンが形成される。なお、本発明のレジスト材料は、特に高エネルギー線の中でも電子線、真空紫外線(軟X線)、X線、γ線、シンクロトロン放射線による微細パターニングに最適である。
【0121】
一般的に広く用いられているTMAH水溶液よりも、アルキル鎖を長くしたTEAH、TPAH、TBAHは現像中の膨潤を低減させてパターンの倒れを防ぐ効果がある。特許第3429592号公報には、アダマンタンメタクリレートのような脂環構造を有する繰り返し単位と、tert−ブチルメタクリレートのような酸不安定基を有する繰り返し単位を共重合し、親水性基が無くて撥水性の高いポリマーの現像のために、TBAH水溶液を用いた例が提示されている。
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)現像液は2.38質量%の水溶液が最も広く用いられている。これは0.26Nに相当し、TEAH、TPAH、TBAH水溶液も同じ規定度であることが好ましい。0.26NとなるTEAH、TPAH、TBAHの質量は、それぞれ3.84質量%、5.31質量%、6.78質量%である。
【0122】
EB、EUVで解像される32nm以下のパターンにおいて、ラインがよれたり、ライン同士がくっついたり、くっついたラインが倒れたりする現象が起きている。これは、現像液中に膨潤して膨らんだライン同士がくっつくのが原因と考えられる。膨潤したラインは、現像液を含んでスポンジのように軟らかいために、リンスの応力で倒れ易くなっている。アルキル鎖を長くした現像液はこのような理由で、膨潤を防いでパターン倒れを防ぐ効果がある。
【実施例】
【0123】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0124】
[合成例1]
本発明の含窒素単量体を以下に示す方法で合成した。
[合成例1−1]メタクリル酸=1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イル(monomer−1)の合成
【化55】

窒素雰囲気下、1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−オール50g、トリエチルアミン26.8g、4−ジメチルアミノピリジン2.9g、トルエン200gの混合溶液に、氷冷下メタクリル酸無水物40gを40℃以下で滴下した。室温にて4時間撹拌後、20℃以下で水100gを滴下し、反応を停止した。通常の水系後処理の後、減圧蒸留を行い、メタクリル酸=1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イル48.9gを得た(収率90%)。
IR(D−ATR):ν=2953、1721、1699、1638、1429、1366、1327、1294、1274、1239、1168、1030、990、944、863、815、752cm-1
1H−NMR(300MHz in DMSO−d6):δ=6.04(1H、m)、5.67(1H、m)、4.91(1H、m)、3.53(2H、m)、3.25(2H、m)、1.87(1H、s)、1.79(2H、m)、1.50(1H、m)、1.39(9H、s)ppm。
【0125】
[合成例1−2]メタクリル酸=1−アリルオキシカルボニルピペリジン−4−イル(monomer−2)の合成
【化56】

1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−オールの代わりに1−アリルオキシカルボニルピペリジン−4−オールを使用した以外は、[合成例1−1]と同様の方法でメタクリル酸=1−アリルオキシカルボニルピペリジン−4−イルを得た(収率87%)。
【0126】
[合成例1−3]メタクリル酸=(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イルオキシカルボニル)メチル(monomer−3)の合成
【化57】

メタクリル酸無水物の代わりに、メタクリロイルオキシ酢酸クロリドを使用した以外は、[合成例1−1]と同様の方法によりメタクリル酸=(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イルオキシカルボニル)メチルを得た(収率79%)。
【0127】
[合成例2]
本発明のレジスト材料に用いる高分子化合物を以下に示す処方で合成した。得られた高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は、溶剤としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算値として測定した。
【0128】
[合成例2−1]polymer−1の合成
窒素雰囲気としたフラスコに1.1gのメタクリル酸=1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イル、19.3gのメタクリル酸=1−(1−メチルエチル)シクロペンチル、9.2gのメタクリル酸=2−オキソ−4−オキサヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−6−イル、10.4gのメタクリル酸2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル、2.3gのV−601(和光純薬工業(株)製)、70gのMEK(メチルエチルケトン)をとり、単量体−重合開始剤溶液を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに25gのMEKをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体−重合開始剤溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま2時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、激しく撹拌した0.5kgのメタノールに滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体をヘキサン0.3gで2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して35gの白色粉末状の共重合体を得た。共重合体を13C−NMRで分析したところ、共重合組成比は上記の単量体順で2.0/44.4/22.2/31.4モル%であった。溶剤としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は6,200であった。
【化58】

【0129】
[合成例2−2〜2−11、比較合成例1〜3]polymer−2〜polymer−11及びpolymer−X,Y,Zの合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、上記[合成例2−1]と同様の手順により、下記に示した実施例ポリマー(polymer−2〜polymer−11)及び比較例ポリマー(polymer−X,Y,Z)を製造した。
【0130】
【化59】

【0131】
【化60】

【0132】
【化61】

【0133】
【化62】

【0134】
[実施例1−1〜22、比較例1−1〜4]
ArFレジスト溶液の調製
上記合成例で得られた高分子化合物を使用し、下記表1に示す組成で下記界面活性剤A(オムノバ社製)0.01質量%を含む溶剤中に溶解してレジスト材料を調合し、更にレジスト材料を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過することにより、レジスト溶液をそれぞれ調製した。
【0135】
なお、表1において、上記合成例で示した高分子化合物と共にレジスト材料として使用した光酸発生剤、溶剤、アルカリ可溶型界面活性剤(SF−1)及びクエンチャーは下記の通りである。
P−1〜P−10:polymer−1〜polymer−10
P−X:polymer−X
P−Y:polymer−Y
PAG−1:トリフェニルスルホニウム=2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネート
PAG−2:4−ヒドロキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウム=2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネート
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
GBL:γ−ブチロラクトン
Q−1:2−モルホリノエチル=シクロヘキサンカルボキシレート
Q−2:トリフェニルスルホニウム=10−カンファースルホネート
アルカリ可溶型界面活性剤(SF−1):下記式(特開2008−122932号公報に記載の化合物)
ポリ(メタクリル酸=3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−1,1−ジメチル−2−トリフルオロメチルプロピル・メタクリル酸=1,1,1−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−6−メチル−2−トリフルオロメチルヘプタ−4−イル)
【化63】

界面活性剤A:3−メチル−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)オキセタン・テトラヒドロフラン・2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール共重合物(オムノバ社製)(下記式)
【化64】

【0136】
【表1】

【0137】
ArF露光パターニング評価
上記表1に示す組成で調製したレジストR−1〜R−22及び比較レジストR−23〜R26を、シリコンウエハーに信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボンの含有量が80質量%)を200nm、その上に珪素含有スピンオンハードマスクSHB−A941(珪素の含有量が43質量%)を35nmの膜厚で成膜したトライレイヤープロセス用の基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを90nmにした。これをArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.78、ダイポール開口35度、Azimuthally偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)を用いて露光量を変化させながら露光を行った後、任意の温度にて60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%のTMAH水溶液で30秒間パドル現像を行い、純粋でリンスし、スピンドライした。
【0138】
レジストの評価は、50nmのトレンチパターン(ピッチ150nm)を解像する露光量を最適露光量(Eop、mJ/cm2)とした。各レジストとも、最適露光量におけるパターンの形状及びラフネス(LWR)を(株)日立ハイテクノロジーズ製SEM(S−9380)で測定した。
トレンチパターン形状の評価基準は、以下のものとした。
矩形:パターン側壁が垂直であり、ボトム(基板付近)からトップまで寸法変化が少なく良好。
T−トップ:トップ付近で寸法が大きくなり、不適。添加されたアミンクエンチャーのベーク(PEB)中の揮発が原因の1つと考えられる。
各レジスト材料のPEB温度及び評価結果を表2に示す。
【0139】
【表2】

【0140】
[実施例2−1〜3、比較例2−1,2]
保存安定性評価
上記表1に示す組成で調製したレジスト溶液の一部を用いて、レジスト調製後、30℃で1ヶ月経過後のEop値と初期Eopとを比較することにより調べた。
下記式より感度変動値を求めた。
【数1】

負の値はレジストが高感度化したことを示す。絶対値が小さいほどレジスト中の組成物に経時変化が起こらず、保存安定性が高いことを示す。
各レジスト材料の評価結果を表3に示す。
【0141】
【表3】

【0142】
EUV露光評価
上記合成例で得られたpolymer−11、polymer−Zを用いて、表4に示される組成で溶解させた溶液を、0.2μmサイズのフィルターで濾過してポジ型レジスト材料を調製した。なお、表4において、上記合成例で示した高分子化合物と共にレジスト材料として使用した溶剤及びクエンチャーは下記の通りである。
P−11:polymer−11
P−Z:polymer−Z
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
CyH:シクロヘキサノン
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
Q−3:2−モルホリノエチル=n−ドデカノエート
【0143】
得られたポジ型レジスト材料をヘキサメチルジシラザン(HMDS)ベーパープライム処理した直径4インチφのSi基板上にスピンコートし、ホットプレート上で105℃で60秒間プリベークして50nmのレジスト膜を作製した。これに、NA0.3、ダイポール照明でEUV露光を行った。
露光後直ちにホットプレート上で60秒間ポストエクスポージャベーク(PEB)を行って2.38質量%のTMAH水溶液で30秒間パドル現像を行い、ポジ型のパターンを得た。得られたレジストパターンは、35nmのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量における、最小の寸法を解像力とし、35nmLSのエッジラフネス(LWR)をSEM(S−4300)で測定した。
レジスト組成とEUV露光における感度、解像度の結果も併せて表4に示す。
【0144】
【表4】

【0145】
表2、表3の結果より、本発明の含窒素単量体を用いて得られた高分子化合物を含むレジスト材料では、トレンチパターンの矩形性、ラフネス(LWR)に優れることが示された。これは、クエンチャー成分がレジスト樹脂中に結合した形で存在するため、アミン成分の揮発が抑えられる結果、従来のアミンクエンチャー添加のレジスト材料と比較して、ケミカルフレアの無い矩形性の高い良好なパターン形状を与えたものと考えられる。また、保存中に感度変動を起こすことなく、アルキルスルホニウム塩などの光酸発生剤との併用が可能であることが示唆された。
また、表4のEUV露光評価の結果から、本発明のレジスト材料が、EUV露光においてアミンクエンンチャー添加のレジスト材料と比較して、高解像でラフネス(LWR)に優れることが確認された。
【0146】
以上のように、本発明の含窒素単量体を用いて得られた高分子化合物を含むレジスト材料は高解像で矩形性、ラフネスに優れたパターン形状を与え、かつアルキルスルホニウム塩の保存安定性の低さを改善可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される単量体。
【化1】


[式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R2は水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価又は二価の炭化水素基を示す。R3は炭素数1〜15の酸不安定基を示す。A1は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の二価の炭化水素基を示す。A2は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の二価又は三価の炭化水素基を示し、A2とR2は互いに結合して隣接する窒素原子と共に環を形成してもよい。k1は0又は1を示す。但し、k1=0のとき、R3で示される酸不安定基は以下の式で示すいずれかの基である。
【化2】


(式中、破線は結合手を示す。)]
【請求項2】
下記一般式(2)で示される繰り返し単位aを含有することを特徴とする高分子化合物。
【化3】


[式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R2は水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価又は二価の炭化水素基を示す。R3は炭素数1〜15の酸不安定基を示す。A1は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の二価の炭化水素基を示す。A2は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の二価又は三価の炭化水素基を示し、A2とR2は互いに結合して隣接する窒素原子と共に環を形成してもよい。k1は0又は1を示す。但し、k1=0のとき、R3で示される酸不安定基は以下の式で示すいずれかの基である。
【化4】


(式中、破線は結合手を示す。)aは0<a<1.0の範囲である。]
【請求項3】
請求項2記載の一般式(2)で示される繰り返し単位と、酸によってカルボキシル基及び/又はヒドロキシ基が発生する酸不安定基を含有する繰り返し単位とを共重合してなることを特徴とする高分子化合物。
【請求項4】
酸によってカルボキシル基及び/又はヒドロキシ基が発生する酸不安定基を含有する繰り返し単位が、下記一般式(3)に示される繰り返し単位b又はcを有するものであることを特徴とする請求項3記載の高分子化合物。
【化5】


(式中、R4、R6は水素原子又はメチル基を示す。R5、R8は酸不安定基を示す。R7は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基もしくは該アルキレン基の水素原子が1個脱離した三価の基であり、エーテル基又はエステル基を有していてもよく、あるいは、フェニレン基又はナフチレン基を示す。Yは単結合又は−C(=O)−O−R9−を示し、R9は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基又はエステル基を有していてもよく、あるいは、フェニレン基又はナフチレン基を示す。Zは単結合又は−C(=O)−O−R10−を示し、R10は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基又はエステル基を有していてもよく、あるいは、フェニレン基又はナフチレン基を示す。上記フェニレン基及びナフチレン基はそれぞれフッ素原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、アミド基、又は炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシ基で置換されていてもよい。nは1又は2、bは0≦b<1.0、cは0≦c<1.0であり、かつ0<b+c<1の範囲である。)
【請求項5】
前記繰り返し単位a、b、cに加えて、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ラクトン環、カーボネート基、チオカーボネート基、カルボニル基、環状アセタール基、エーテル基、エステル基、スルホン酸エステル基、シアノ基、アミド基、−O−C(=O)−G−(Gは硫黄原子又はNHである。)から選ばれる密着性基を有する繰り返し単位dを共重合してなることを特徴とする高分子化合物。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1項記載の高分子化合物と有機溶剤を含有することを特徴とするポジ型レジスト材料。
【請求項7】
更に、酸発生剤を含有する化学増幅型のレジスト材料であることを特徴とする請求項6記載のポジ型レジスト材料。
【請求項8】
更に、添加剤として塩基性化合物及び/又は界面活性剤を配合してなることを特徴とする請求項6又は7記載のポジ型レジスト材料。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項記載のポジ型レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
露光する高エネルギー線が、g線、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、電子ビーム、又は波長3〜15nmの範囲の軟X線であることを特徴とする請求項9記載のパターン形成方法。

【公開番号】特開2012−144666(P2012−144666A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5428(P2011−5428)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】