含金属副産物の造粒物製造方法および造粒設備
【課題】金属材の製造工程で発生するスケール等の含金属副産物およびダストを原料とする造粒物を、低コストで製造する。
【解決手段】金属材の製造工程で発生した含金属副産物に、同じく製造工程で発生したダストを20重量%以上の割合となるように造粒設備に装入し、水分を加えて転動造粒する。造粒設備で転動造粒された全ての造粒物の内、取扱い性が良好な粒径5mm以上の造粒物が得られる。また得られた造粒物は、運搬等に際して崩壊することのない強度を有する。しかも、転動造粒する造粒設備は構成が簡単でコストは低廉であるから、造粒物の製造コストも低廉に抑えることができる。
【解決手段】金属材の製造工程で発生した含金属副産物に、同じく製造工程で発生したダストを20重量%以上の割合となるように造粒設備に装入し、水分を加えて転動造粒する。造粒設備で転動造粒された全ての造粒物の内、取扱い性が良好な粒径5mm以上の造粒物が得られる。また得られた造粒物は、運搬等に際して崩壊することのない強度を有する。しかも、転動造粒する造粒設備は構成が簡単でコストは低廉であるから、造粒物の製造コストも低廉に抑えることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材製造工程で発生したスケールやグラインダー粉等の含金属副産物を用いた造粒物の製造方法およびこの製造方法に用いられる造粒設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶解、鋳造、圧延、精整等の各工程を経て金属鋼材を製造する鋼材製造工程においては、各工程でFe,Ni,Cr等の有価金属を含む含金属副産物が発生する。例えば、鋳片や鋼片の表面欠陥を除去することでスカーフィング屑が発生し、圧延工程においては材料表面に生じた酸化物が剥離して酸化スケールが生じ、分塊圧延の切断時には切断屑が発生し、鋼片や製品の表面疵を除去する際にはグラインダー粉等が発生する。そして、有価金属を含む含金属副産物は、資源回収の観点から金属原料として溶解炉に装入して再利用することが望まれている。
【0003】
しかし、前記含金属副産物は溶解原料としては細かく、そのままの状態では取扱いが不便であるので、含金属副産物の再利用をためらわせる原因となっていた。そこで、含金属副産物を、圧縮造粒(特許文献1参照)や転動造粒(特許文献2参照)して造粒物にすることで、取扱いの容易化を図ることが考えられる。
【特許文献1】特開2004−35951号公報
【特許文献2】特開2002−97514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1には、鉄の酸化スケールやダスト等の鉄分含有廃棄物に廃プラスチックをバインダーとして混合し、廃プラスチックを加熱することで、鉄分含有廃棄物を圧縮造粒してブリケットを形成する方法が提案されている。しかしながら、スケール、ダストおよびバインダーの混合物をブリケットに造粒するブリケットマシンは、使用する原料の粒径、水分を造粒前に厳密に調整する必要があり、それによって造粒物の製造コストが高くなる傾向があるという難点が指摘される。しかも、バインダーとしてプラスチックを用いる場合は、該プラスチックを加熱して軟化することでバインダーとして機能させるため、加熱装置も必要となって装置コストが更に嵩む問題がある。
【0005】
特許文献2には、フライアッシュに対して、スケール等の鉄分含有廃棄物、廃砂、廃プラスチック、製紙スラッジ、廃トナーのうちの少なくとも一種を混合したうえで転動造粒して造粒物を形成する方法が開示されている。前述したスケールおよびグラインダ粉等の含金属副産物は、粒径が1mm以下のものから15mm程度のものまであり、粒度分布の範囲も広く、形状も不均一である。すなわち、含金属副産物は、取扱い性に難がある程度に細かいものの、転動造粒により造粒物を形成するためには粒径が大きいので、単にフライアッシュに混合して混練するだけでは造粒物を効率よく形成することができない。また、造粒物を形成したとしても造粒物の圧潰強度が小さく、搬送の途中で造粒物が崩れることがあり、含金属副産物を電気炉で有価金属源として再利用できる割合(回収率)が低くなってしまう。
【0006】
すなわち本発明は、前述した従来の技術に内在している前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、鋼材製造工程で発生するスケールやグラインダ粉等の含金属副産物を低廉なコストで取扱い性に優れた造粒物にできる含金属副産物の造粒物製造方法および造粒設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る含金属副産物の造粒物製造方法は、
鋼材製造工程で発生した含金属副産物と、ダストとを混合し、ダストを20重量%以上包含すると共に、水分率が4重量%〜15重量%の範囲にある混合物を転動造粒することで、造粒物を製造することを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、ダストを20重量%以上の割合で含金属副産物に混合すると共に、混合物の水分率を4重量%〜15重量%の範囲にすることで、バインダーとしてプラスチックを用いることなく含金属副産物を転動造粒で造粒することができ、製造コストを低廉に抑えることができる。
【0008】
また前述した課題を解決し、所期の目的を達成するため、請求項2の発明に係る含金属副産物の造粒物製造方法は、
鋼材製造工程で発生した含金属副産物と、ダストと、凝集材とを混合し、水分率が4重量%〜15重量%の範囲にある混合物を転動造粒することで、造粒物を製造することを特徴とする。
請求項2に係る発明によれば、含金属副産物にダストと凝集材を混合すると共に、混合物の水分率を4重量%〜15重量%の範囲にすることで、バインダーとしてプラスチックを用いることなく含金属副産物を転動造粒で造粒することができ、製造コストを低廉に抑えることができる。しかも、凝集材の凝集効果によって、粒径が大きく取扱い性が良好な造粒物を製造することができる。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記含金属副産物が、1mm以上の粒径の割合が70重量%以上の範囲にあることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、粒径が大きな含金属副産物を多く含んでいても造粒物を形成し得る。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記ダストが、0.5mm以下の粒径の割合が95重量%以上の範囲にあることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、細かなダストを用いることにより、造粒性が向上する。
【0011】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、本願の請求項5に係る発明の含金属副産物の造粒物製造方法に用いられる造粒設備は、
請求項1〜4の何れか一項に記載の含金属副産物の造粒物製造方法に用いられる造粒設備であって、
鋼材製造工程で発生する含金属副産物、ダストおよび添加材や水が装入される円筒形状の処理槽と、
前記処理槽の半径方向に延在する一側部から該一側部に対向する他側部へ向けて処理槽の底面から離間する傾斜姿勢で該処理槽の内部に設置され、処理槽の中心を軸として前記一側部を回転方向前側とした正方向と前記他側部を回転方向前側とした逆方向とに回転するブレードと、
前記ブレードと共に前記処理槽の中心を軸として該処理槽の内部を正逆方向に回転しつつ、該ブレードの正方向と同一方向に自転するロータと、
前記ロータの自転速度、前記ブレードの回転方向および回転速度を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
造粒初期段階で、前記ブレードを第1回転速度で逆方向に回転すると共に、前記ロータを第1自転速度で回転し、
造粒中期段階で、前記ブレードを前記第1回転速度より高速に設定した第2回転速度で正方向に回転すると共に、前記ロータを前記第1自転速度より低速に設定した第2自転速度で回転し、
造粒終期段階で、前記ブレードを前記第2回転速度で正方向に回転すると共に、前記ロータを前記第2自転速度より低速に設定した第3自転速度で回転するように制御することを特徴とする。
請求項5に係る発明によれば、造粒物の形成段階に合わせて、ブレードの回転方向および回転速度、ロータの自転速度を調節することで、粒径が大きい含金属副産物を含んでいても、転動造粒により造粒物を形成することができる。特に、造粒初期段階で処理槽底面とブレードとの間で含金属副産物を破砕して、造粒物の核を形成しているので、他に凝固剤や吸着剤等を添加しなくても、粒径が大きい含金属副産物から造粒物を形成することができる。しかも、含金属副産物の破砕、混合、混練および造粒を1つの設備で行なうことが可能であって設備を軽減できるから、含金属副産物から造粒物を形成するために要するコストを低減し得る。更に、得られた造粒物は、凝固剤や吸着剤等の作用により表面的に固められたものではなく、転動造粒における粒同士の吸着および圧密化の繰返しによって形成されるので、強度に優れている。従って、得られた造粒物は、分解しにくく、優れた取扱い性を有しており、搬送途中での崩壊を抑制できるから、含金属副産物の再利用効率を向上し得る。
【0012】
請求項6に係る発明は、前記処理槽の前記含金属副産物が接触する部分、前記ブレードおよび前記ロータを耐摩耗性金属材料で構成したことを要旨とする。
請求項6に係る発明によれば、含金属副産物が接触する部分を耐摩耗性材料で構成してあるから、含金属副産物を使用する際の摩耗や損傷を抑制でき、設備の寿命を向上できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る含金属副産物の造粒物製造方法および造粒設備によれば、取扱いが容易な造粒物を低廉に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明に係る含金属副産物の造粒物製造方法およびこの製造方法に用いられる造粒設備につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【実施例1】
【0015】
先ず、本発明に係る含金属副産物の造粒物製造方法に好適に用いられる造粒設備について説明する。図1は、造粒設備30を備える再資源化プラント10を示す概略平面図である。再資源化プラント10は、含金属副産物を受入れる第1ホッパー12と、炭化珪素(SiC)等の還元材を受入れる第2ホッパー14と、ダストを貯蔵するダストサイロ24と、含金属含有物、還元材、ダストおよび水の混合物から造粒物を形成する造粒・整粒設備とを備えている。造粒・整粒設備は、混合物を転動造粒することで造粒物を形成する造粒設備30を備え、この造粒設備30の造粒処理によって混合物のほとんどが取扱いし易い大きさまで成長した造粒物とされるが、取扱いし易い大きさまで成長していない粒状物や未造粒の混合物(これらの粒状物と混合物とを総称して未造粒物という)が生じる場合がある。そこで、本例の造粒・整粒設備では、造粒設備30から取出された造粒物および未造粒物を受入れ、未造粒物から造粒物を形成する整粒処理を行なう整粒設備70が設けられている。なお、還元材は、造粒物を電気炉に装入して再利用した際に、溶鋼から不純物を除去する目的で配合されるものであり、転動造粒による造粒物の形成に関して還元材を配合することは必須要件ではない。
【0016】
ここで、鋼材製造工程で発生する含金属副産物とは、鋳片や鋼片の表面欠陥を除去することで発生するスカーフィング屑、圧延工程において材料表面に生じて剥離した酸化スケール、分塊圧延の切断時に発生する切断屑、あるいは鋼片や製品の表面疵を除去する際に発生するグラインダー粉等を云い、これらの単体あるいは複数を組合わせたものを使用する。またダストとは、金属原料を電気炉等で溶解した際に集塵されたダストや製鋼および鋼材加工工程で集塵されるダストである。また明細書中において「ダスト」とは、粉塵発生施設から集塵機で集塵した粉塵を総称し、また「スケール」とは、金属材の加工工程において発生した表面酸化物を総称し、更に、「グラインダー粉」とは、金属材の加工工程において素材を切断したり切削した際に発生した金属屑を総称して用いている。
【0017】
前記第1ホッパー12には、目幅が60mm程度に設定された振動スクリーン(図示せず)が設けられ、含金属副産物のうち転動造粒に適していない大きい粒径のものを振動スクリーンにより排除している。また、第1ホッパー12と造粒設備30との間には、第1ホッパー12から造粒設備30に含金属副産物を移送する第1コンベヤ16が設置され、第2ホッパー14と造粒設備30との間には、第2ホッパー14から造粒設備30に還元材を移送する第2コンベヤ17が設置されている。
【0018】
前記再資源化プラント10では、ダストの排出元毎およびダストの成分毎にダストサイロ24が夫々設けられ、4基のダストサイロ24を備える例を挙げている。本例では、取鍋精錬装置(LF)から回収されたダストと、アルゴン酸素脱炭装置(AOD)から回収されたダストと、電気炉におけるニッケル系のダストと、電気炉におけるクロム系のダストとが夫々のダストサイロ24に分けて貯蔵されている。各ダストサイロ24は、貯蔵したダストを空気圧送により造粒設備30に移送する移送管25を夫々備えている。各移送管25は、移送終端が造粒設備30の上部に設けられた計量器26に夫々接続され、ダストサイロ24から移送管25を介して移送したダストを計量器26で受けて、計量器26で計量した所要量のダストを造粒設備30に装入するようになっている。なお計量器26は、各ダストサイロ24に対応して1つずつ設けられ、ダストサイロ24毎に切分けて造粒設備30にダストが装入される。
【0019】
前記造粒設備30の下部には、造粒設備30から取出された造粒物および未造粒物を受取って整粒設備70に移送する第3コンベヤ18が設置されている。そして、整粒設備70の取出側には、整粒設備70で形成された造粒物を受取って、造粒物を集積する製品ヤード100まで移送する第4コンベヤ19が設置されている。なお、第1コンベヤ16、第2コンベヤ17、第3コンベヤ18および第4コンベヤ19には、カバーが設けられ、粉塵が外部に漏出したり、雨水が移送物に混入しないようになっている。
【0020】
図2〜図5を参照して、造粒設備30について具体的に説明する。造粒設備30は、含金属副産物、還元材、ダストおよび水を受入れる円筒形状の処理槽32と、この処理槽32の内部に設けられたブレード52と、同じく処理槽32の内部に設けられたロータ56と、造粒設備30の各機器を制御する制御手段68とを備えている。処理槽32は、縦方向に軸線を延在させた有底の処理槽本体と、この処理槽本体と同心で内部に立設された円筒形状の内壁34とからなる二重円筒形状であって、内壁34と処理槽本体の外壁32aとの間が造粒処理を行なう処理空間33になっている。内壁34は、処理槽本体に対して回転可能に配設される。また、内壁34の外面には、平面視において断面三角形状で、処理空間33に突出する突部36が、処理槽32の中心を挟んで対称な関係で複数(本例では2基)配設されている(図2参照)。
【0021】
前記処理槽32は、上方に開放すると共に、底部に取出口32bが開設されており、取出口32bはシリンダ等の作動機構37b(図4参照)によりスライド移動可能な遮蔽板37aで常には塞がれている(図2参照)。造粒設備30は、造粒処理の適宜タイミングで遮蔽板37aを作動機構37bにより取出口32bを開放する方向に移動して、取出口32bを介して処理槽32の処理空間33から造粒物および未造粒物を第3コンベヤ18に受渡すようになっている。また、処理槽32の上方には、第1コンベヤ16から含金属副産物を受取って処理槽32に受渡す第1受容部20、第2コンベヤ17から還元材を受取って処理槽32に受渡す第2受容部22、計量した水を供給する給水手段28、前記複数の計量器26および集塵機(図示せず)が配設されている(図1参照)。なお、処理槽32の上部は、カバー(図示せず)で覆われている。
【0022】
前記処理槽32は、処理空間33に装入された含金属副産物および還元材の重量を計測することで、含金属副産物および還元材の装入量を計量する計量手段38を備え(図4参照)、この計量手段38は、制御手段68に電気的に接続されている。制御手段68は、計量手段38による含金属副産物または還元材の計量に基づいて、第1コンベヤ16または第2コンベヤ17を停止して、処理空間33に所要量の含金属副産物または還元材を装入するようになっている。このように、造粒設備30の処理空間33には、各計量器26により計量されたダストと、計量手段38により計量された含金属副産物および還元材と、給水手段28により計量された水とが装入される。
【0023】
前記処理槽32における内壁34の内部には、中心に第1回転軸40が回転自在に立設され、第1回転軸40の下部は処理槽32の外底部に設けられた第1変速機構42を介して、処理槽32の外側に設けられた第1モータ44に接続されている(図3参照)。なお、第1モータ44および第1変速機構42は、制御手段68に電気的に夫々接続されている(図4参照)。第1回転軸40の上部には、該第1回転軸40を挟んで対称な関係で処理槽32の半径方向に延在するアーム46が設けられ、アーム46は第1回転軸40の回転と共に回転するよう構成される。またアーム46には、該アーム46の延在方向と異なる方向で処理槽32の半径方向に延在させて、一対の第1支持腕48,48が第1回転軸40を挟んで対称に配設されている(図2参照)。各第1支持腕48には、第1回転軸40の回転につれて処理槽32の中心を軸として回転するブレード52と、このブレード52における処理槽32の内底面32cに対する離間間隔を調節する隙間調節機構54とからなる攪拌体50が下垂した状態で設けられている(図3または図5参照)。
【0024】
前記ブレード52は、攪拌体50における隙間調節機構54の下部に、処理槽32の半径方向に延在させて配設された板状の部材である。ブレード52は、該ブレード52における処理槽32の半径方向に沿う一側部52aからこの一側部52aに対向する他側部52bへ向けて処理槽32の内底面32cから離間する傾斜姿勢で設置されている(図5参照)。またブレード52は、処理槽32の内壁34近傍から該内壁34と外壁32aとの略中間部までの間に延在するように設定される(図2参照)。
【0025】
図5に示すように、前記隙間調節機構54は、第1支持腕側に接続した第1ブラケット54aと、この第1ブラケット54aに対して軸部54bを介して処理槽32の周方向へ揺動可能に接続されて、下部にブレード52を備える第2ブラケット54cと、第1ブラケット54aに対して第2ブラケット54cを位置決めするストッパ54dとから構成される。そして、隙間調節機構54は、ストッパ54dの取付位置を変更して、第1ブラケット54aに対する第2ブラケット54cの下垂角度を調節することで、処理槽32の内底面32cに対するブレード52の傾斜角度および離間間隔が変更可能になっている。なお、ブレード52と処理槽32の内底面32cとの離間間隔は、含金属副産物の粒径との関係で設定される。
【0026】
前記ブレード52は、制御手段68の制御に基づいて第1変速機構42により任意の方向および回転速度で、処理槽32の中心を軸として回転可能に構成される。ここで、ブレード52における傾斜下端の一側部52aを回転方向前側とした回転方向が正方向であって、傾斜上端の他側部52bを回転方向前側とした回転方向が逆方向である。またブレード52は、造粒設備30における造粒初期段階で第1回転速度で逆方向に回転し、造粒中期段階で第1回転速度より高速に設定した第2回転速度で正方向に回転し、造粒終期段階で第2回転速度で正方向に回転するようになっている。本例では、第1回転速度が7rpmで、第2回転速度が11rpmに設定されている。
【0027】
前記アーム46には、第1回転軸40を挟んで処理槽32の半径方向に延出した両端部に夫々下垂した状態で配設されたロータ56と、第2モータ58と、この第2モータ58の回転をロータ56に伝達する第2変速機構60とが設けられている(図3参照)。第2モータ58および第2変速機構60は、制御手段68に電気的に夫々接続されている(図4参照)。ロータ56は、アーム46の回転によりブレード52と共に、処理槽32の中心を軸としてブレード52と同一方向に同一速度で回転すると共に、アーム46に対してブレード52における正方向の回転と同一方向に自転するよう構成される。またアーム46の下面には、内壁34が取付けられ、アーム46の回転につれて内壁34および内壁34の突部36が回転するようになっている。
【0028】
前記ロータ56は、上部が第2変速機構60に接続された第2回転軸56aと、この第2回転軸56aの下部に設けられて、第2回転軸56aの半径方向外側へ延出した複数の羽根56bとから構成される(図2参照)。ロータ56には、第2回転軸56aにおける同一高さで放射状に延出する複数の羽根56bからなる羽根組が、上下の関係で多段(本例では4段)に配設されている(図3参照)。最下段の羽根組を構成する各羽根56bの下面には、処理槽32の内底面32c側へ突出する複数の突起部56cが設けられている。またロータ56は、回転時に処理空間33における半径方向の略全域に亘って羽根56bが通過するようになっている。そして、図6に示すように、各羽根56bの自転方向に沿う断面形状は、自転方向に沿う方向に長辺を延在した矩形を基本として、回転方向前側の上角部には、回転方向後側から前側につれて下方傾斜するテーパが形成されている。
【0029】
前記ロータ56は、制御手段68の制御に基づく第2変速機構60によって、任意の自転速度で自転するよう構成される。またロータ56は、造粒設備30における造粒初期段階で第1自転速度で自転し、造粒中期段階で第1自転速度より低速に設定した第2自転速度で自転し、造粒終期段階で第2自転速度より低速に設定した第3自転速度で自転するようなっている。本例では、第1自転速度が241rpmで、第2自転速度が162rpmで、第3自転速度が110rpmに設定されている。
【0030】
前記アーム46には、該アーム46および第1支持腕48の延在方向と異なる方向で処理槽32の半径方向に沿って延在する複数(本例では2基)の第2支持腕62が、第1回転軸40を挟んで対称な関係で配設されている。各第2支持腕62の先端には、処理槽32における外壁32aの内面に沿って延在するスクレーパ64が設けられている。スクレーパ64は、平面視において処理槽32の中心側に突出する断面三角形状の部材であって、アーム46の回転につれて外壁32aの内面に沿って回転して、外壁32aの内面に付着する混合物を除去するようになっている。
【0031】
前記造粒設備30では、含金属副産物、ダストおよび水との混合物が接触する部分が、耐摩耗性金属材料で構成されている。耐摩耗性金属材料としては、例えばハイクロム系やタングステン系等の高張力鋼が採用される。本例では、処理槽32の底板と、攪拌体50、ロータ56の羽根56b、内壁34の突部36およびスクレーパ64が耐摩耗性金属材料で構成されている。
【0032】
次に、前記整粒設備70について、図7〜図9を参照して具体的に説明する。整粒設備70は、軸線を横方向に延在させた姿勢で架台72に設置された中空の円筒体74と、この円筒体74を周方向に回転する回転機構82と、円筒体74を傾動する傾動機構88とを備えている。また整粒設備70は、回転機構82および傾動機構88が電気的に接続する制御部94を備え(図9参照)、この制御部94の制御下に円筒体74の回転速度および傾動角度を調節できるようになっている。
【0033】
前記円筒体74は、一方の側端面(一方の側部)74aに開設された第1開口部76と、他方の側端面(他方の側部)74bに開設された第2開口部78とを有し、整粒処理を行なう内部空間77を介して第1開口部76と第2開口部78とが連通している。円筒体74の第1開口部76には、造粒設備30から取出された造粒物および未造粒物を移送する第3コンベヤ18の移送終端部が臨み、第1開口部76を介して第3コンベヤ18から造粒物および未造粒物が内部空間77に装入されるようになっている(図7参照)。また、第2開口部78には、該第2開口部78から放出される造粒物を受けるシュート79が臨み、このシュート79の下方に、整粒設備70と製品ヤード100との間に設置された第4コンベヤ19の移送始端部が配置される。
【0034】
前記円筒体74の内部空間77には、円筒体74の内周面74cから半径方向内側に突出する複数(本例では3基)の堰部材80が配設されている(図8参照)。複数の堰部材80は、円筒体74の内周面74cにおける同一円周上に、周方向に離間して隙間をあけた状態で配設されている。円筒体74では、堰部材80により造粒物等の第1開口部76側から第2開口部78側への移動が阻まれる一方、隙間を介して造粒物等の第1開口部76側から第2開口部78側への移動が許容されるようになっている。なお、堰部材80には、水を含んだ混合物の付着を防止する板(図示せず)が装着されている。
【0035】
前記回転機構82は、第3モータ84の回転を制御部94の制御に基づいて第3変速機構86で変速して円筒体74に伝達し、例えば2rpm〜20rpm(好適には10rpm)の範囲の回転速度で円筒体74を回転するよう構成される。制御部94は、整粒処理において、回転速度を次第に減速するまたは回転速度を段階的に減速するように第3変速機構86を制御している。
【0036】
前記傾動機構88は、円筒体74における他方の側端面74b側に設けられ、架台72に対して円筒体74を傾動可能に支持する軸支部90と、円筒体74における一方の側端面74a側に設けられ、一方の側端面74a側を架台72に対して昇降するシリンダ等を備える昇降部92とから構成される。そして、制御部94により昇降部92を制御することによって、円筒体74は、軸線を水平方向に延在させた水平姿勢と、一方の側端面74a側が他方の側端面74b側より上方に位置した傾斜姿勢との間で傾動される。これにより円筒体74は、傾斜角度(水平面と円筒体74の軸線とがなす角度)が、0°〜2°の範囲で適宜に調節される。ここで、整粒設備70は、整粒処理の初期において、円筒体74を0°に近い1°の傾斜角度で運転し、整粒処理が進行するにつれて円筒体74の傾斜角度を次第にまたは段階的に大きくするようになっている。
【0037】
次に、前記造粒設備30を用いた図10に示す実施例1に係る含金属副産物の造粒物製造方法について、再資源化プラント10による全体の処理の流れに含めて説明する。最初に、造粒設備30の処理槽32に対し、含金属副産物、還元材およびダストの材料が所定の割合となるように計量して装入される造粒前処理が行なわれる。図示しないストックヤードに貯蔵されている含金属副産物を第1ホッパー12に装入して、過大な含金属副産物を振動スクリーンにより除去した後、含金属副産物は第1コンベヤ16により造粒設備30における処理槽32の上方に位置する第1受容部20へ受渡される。そして、第1受容部20を介して処理槽32に含金属副産物が装入され、計量手段38による処理槽32に受入れた含金属副産物の計量に基づいて、第1コンベヤ16を停止することで、予め設定した量の含金属副産物が処理槽32に入る。
【0038】
前記含金属副産物は、粒径が大きなものであって単独での転動造粒により造粒物を形成できない、1mm以上の粒径の割合が、処理槽32への装入量全体のうち70重量%以上の範囲にあるものが用いられる。ここで、本願発明で粒径とは、粒の最も長い部分の寸法をいう。
【0039】
一方、ストックヤードに含金属副産物と別に貯蔵されている還元材は、第2ホッパー14、第2コンベヤ17および第2受容部22を介して処理槽32に装入される。計量手段38による還元材の計量に基づいて第2コンベヤ17を停止することで、予め設定した量の還元材が処理槽32に入る。なお、含金属副産物と還元材とは、処理槽32への装入タイミングをずらすことで計量手段38により夫々独立して計量される。
【0040】
前記ダストは、ダストサイロ24から対応の移送管25を介して空気圧送されて、対応の計量器26に移送されて、計量器26で計量することで設定量のダストが処理槽32に装入される。ここで、ダストとしては、金属原料を電気炉等で溶解した際に集塵されたダストや製鋼および鋼材加工工程で集塵されたダストを用いる。このダストとしては、粒径が小さく単独での造粒が可能な、0.5mm以下の粒径の割合が、処理槽32への装入量全体において95重量%以上の範囲にあるものが用いられる。またダストは、混合物全体において20重量%以上の割合となるように含金属副産物と混合される。なお、処理槽32に装入するダストとしては、複数のダストサイロ24から移送した成分の異なるダストを適宜の割合で装入して配合しても、単一のダストを装入してもよい。ダストの混合割合が、20重量%より少ないと、造粒自体ができなくなったり、造粒できたとしても造粒物の強度が足りず、運搬等に際して簡単に崩壊してしまうおそれがある。すなわち、ダストの混合割合を20重量%以上とすることにより、運搬等に支障のない圧潰強度が0.5MPa以上の造粒物を製造可能である。但し、ダストの混合割合を多くすると、含金属副産物の割合が減るため、該副産物の再利用率を勘案すると、ダストの混合割合の上限は、50重量%とするのが好ましい。
【0041】
前記水は、含金属副産物およびダストからなる混合物が4重量%〜15重量%の水分率となるように調整して供給される。すなわち、含金属副産物が水分を含んでいる場合には、処理槽32で水が供給されないこともある。ここで、水分率が4重量%より少ない場合は、粒径の小さな造粒物しかできなくなったり、造粒自体が難しくなる。なお、含金属副産物、ダストおよび水の供給順については、含金属副産物とダストとを充分に混合した後、水を供給する。
【0042】
このように、造粒設備30の処理槽32には、含金属副産物、還元材、ダストおよび水の材料が独立した搬入路を経て装入されるので、各材料が搬入過程で混ざることがなく、材料毎に容易に計量することができる。すなわち、混合物における各材料の配合を正確に行なうことができ、後工程の造粒処理で造粒物を効率よく形成することができる。
【0043】
前記造粒前処理で、含金属副産物、還元材およびダストを所要の配合割合となるように装入した混合物は、造粒設備30において転動造粒を行なう造粒処理を経て造粒物とされる。造粒処理は、大きくは3つの段階に分けられ、混合物を解砕すると共に混合する造粒初期段階と、混合物を造粒して造粒物を形成する造粒中期段階と、造粒物を成長させる造粒終期段階とを有している。
【0044】
前記造粒初期段階では、ブレード52が低速の第1回転速度で逆方向に回転されると共に、ロータ56が高速の第1自転速度で回転される。ブレード52を処理槽32の中心を軸として逆方向に回転することで、回転方向前側から後側へ向けて下方傾斜するブレード52によって、混合物に対して処理槽32の内底面32cへ向けて力が作用する(図5(b)参照)。すなわち混合物は、ブレード52と処理槽32の内底面32cとに挟まれて潰されるので、比較的粒径の大きい含金属副産物を破砕して細かくし得ると共に、含金属副産物、還元材およびダストを混合・混練することができる。また、ブレード52を低速な第1回転速度で回転することで、混合物に対して長い時間に亘って力を加えることができ、破砕および混練を効率よく行なうことができる。そして、ロータ56を高速な第1自転速度で自転させつつ、ブレード52と共に処理槽32の中心を軸として逆方向に回転することで、混合物を攪拌しつつほぐして細かくすることができる。このように造粒初期段階では、含金属副産物を破砕および解砕することで、造粒物の核となる粒を形成することができると共に、混合物の粒度分布の均一化を図ることができる。すなわち、造粒設備30において、装入された全ての含金属副産物における粒径が1mm以上のものの割合を70重量%から50重量%まで減少することができる。鋼材製造工程の各工程で回収された含金属副産物の粒径には大きなバラツキがあり、大きな粒径のものは転動造粒に際して核となり得ない場合があるが、造粒設備30によれば、造粒初期段階で含金属副産物を適切な粒径まで破砕し得るので、粒径が1mm以上のものを選別除去したり、大きな粒を破砕する前処理を行なう必要がなく、設備を簡略化できる。
【0045】
前記造粒中期段階では、給水手段28から処理槽32に対して、水が混合物全体の4重量%〜15重量%の範囲となるように調節して供給される。また造粒中期段階では、ブレード52が第1回転速度より高速に設定した第2回転速度で正方向に回転すると共に、ロータ56が第1自転速度より低速に設定した第2自転速度で回転される。ブレード52を処理槽32の中心を軸として正方向に回転することで、回転方向前側から後側へ向けて上方傾斜するブレード52によって、混合物が処理槽32の内底面32c側から上方へ向けて掻き上げられる(図5(a)参照))。すなわち混合物は、ブレード52によって処理槽32の内底面32cから剥がされてブレード52の上面を転動する過程で、粒同士が接触して接合して粒状物として成長し始める。ここで、造粒中期段階の前に造粒初期段階で含金属副産物を予め破砕して核となる粒を形成してあるから、粒状物の形成が円滑に行なわれる。また粒状物は、更に転動することで圧密化されて、内部に包含していた過剰水分が粒の表面に侵出するので、表面に侵出した過剰水分による表面張力によって、粒または他の小さな粒が粒状物の表面に付着して更に成長する。そして、ブレード52の一側部52aと処理槽32の内底面32cとの離間間隔より粒状物が大きくなると、一部の粒状物はブレード52の一側部52aに押されて処理槽32の内底面32cを転動し、他の粒状物は、ブレード52によって掻き上げられて攪拌される。更に、ロータ56を高速な第1自転速度より低く設定した中速な第2自転速度で自転させつつ、ブレード52と共に処理槽32の中心を軸として正方向に回転することで、羽根56bにより比較的大きい粒状物、小さい粒状物および混合物を攪拌して、両者の接触機会を多くして粒状物の成長が図られる。
【0046】
前記造粒中期段階では、ブレード52およびロータ56が第1回転速度より高速に設定された中速の第2回転速度で回転されているので、処理槽32の混合物および粒状物の接触機会を多く設けることができる。これに対してロータ56は、混合物の解砕を図る第1自転速度より速度を落とした中速の第2自転速度で自転するように設定してあるから、造粒中期段階で形成された粒状物の破壊を抑制しつつ羽根56bにより攪拌することができる。
【0047】
前記造粒終期段階では、ブレード52が第2回転速度で正方向に回転されると共に、ロータ56が第2自転速度より低速に設定した第3自転速度で回転される。造粒終期段階では、ブレード52およびロータ56を処理槽32の中心を軸として正方向に回転することで、造粒中期段階と同様に、ロータ56により混合物および粒状物を攪拌すると共に、ブレード52により混合物および粒状物を処理槽32の内底面32c側から掻き上げつつ、粒状物を転動させて成長を図っている。そして、造粒終期段階では、粒状物がある程度大きくなっているので、ロータ56の自転速度を造粒中期段階の第2自転速度より更に減速した低速の第3自転速度とすることで、羽根56bによる粒状物の破壊を抑制している。但し、造粒終期段階である程度大きくなり過ぎた造粒物は、ロータ56の自転によって羽根56bにより小型の粒状物に分断されて、再び粒状物同士を吸着して成長させる。
【0048】
前記造粒設備30での造粒終期段階を終えて形成された造粒物および造粒物まで至っていない未造粒物は、第3コンベヤ18によって移送されて、整粒設備70の円筒体74に第1開口部76を介して装入される。円筒体74に装入された造粒物および未造粒物は、回転機構82により円筒体74が周方向に回転されることで、円筒体74の内周面74cを転動するから、未造粒物同士または未造粒物と造粒物とが接触して互いに接合する。また、円筒体74は、傾動機構88により他方の側端面74bを傾斜下端として傾いているので、造粒物および未造粒物は、装入側の第1開口部76側から取出側の第2開口部78へ向けて周方向に転動しつつ移動する。ここで、整粒設備70は、整粒処理の初期において、円筒体74の回転速度が高速に設定されているので、未造粒物同士または未造粒物と造粒物との接触機会を多くすることができ、造粒物への円滑な成長を図り得る。そして、整粒設備70は、整粒処理が進行するにつれて、次第にまたは段階的に円筒体74の回転速度を低下させるので、造粒物同士の衝突等に起因する造粒物の分解を抑制することができる。
【0049】
前記整粒設備70は、整粒処理の初期において、円筒体74の傾動角度が小さくなるように傾動機構88を制御しているので、造粒物および未造粒物の円筒体74での滞留時間を長くすることができる。すなわち、未造粒物が第2開口部78から放出されることを抑制できる。そして、整粒設備70は、整粒処理が進行するにつれて、次第にまたは段階的に円筒体74の傾動角度を大きくすることで、成長した造粒物を第2開口部78から適宜に放出することができる。しかも、円筒体74の内周面74cには、複数の堰部材80が立設されているから、これらの堰部材80で造粒物および未造粒物の移動を阻んで、造粒物および未造粒物の滞留時間を稼ぐことができる。
【0050】
このように、整粒設備70による整粒処理で未造粒物は造粒物まで成長し、得られた造粒物は第2開口部78およびシュート79を介して第4コンベヤ19に受渡され、第4コンベヤ19により移送されて製品ヤード100で貯蔵される。
【0051】
以上に説明した含金属副産物の造粒物製造方法では、造粒設備30で転動造粒された全ての造粒物の内、取扱い性が良好な粒径5mm以上の造粒物の割合が50%以上となる。また得られた造粒物は、運搬等に際して崩壊することのない0.5MPa以上の圧潰強度を有する。しかも、転動造粒する造粒設備30は、従来例で説明したブリケットマシンに比べてコストは低廉であるから、造粒物の製造コストも低廉に抑えることができる。
【0052】
前記造粒設備30によれば、粒状物の形成段階に合わせて、ブレード52の回転方向および回転速度、ロータ56の自転速度を前述の如く変更することで、粒径が大きい含金属副産物を含んでいても、造粒物を形成することができる。すなわち、造粒初期段階でブレード52により含金属副産物を破砕して、粒状物の核となる粒を形成しているので、他にプラスチック等のバインダーや凝固剤や吸着剤等を添加しなくても、粒径が大きい含金属副産物を含んでいても造粒物を形成することができる。しかも、含金属副産物の破砕、混合、混練および造粒を1つの造粒設備30で行なうことができるので、設備および破砕処理の手間を軽減できる。更に、得られた造粒物は、凝固剤や吸着剤等の作用により表面的に固められたものではなく、転動造粒における粒同士の吸着および圧密化の繰返しによって形成されるので、強度に優れている。従って、得られた造粒物は、分解しにくく、優れた取扱い性を有しており、搬送途中での崩壊を抑制できるから、含金属副産物の再利用効率を向上し得る。このように、造粒設備30によれば、低廉なコストで含金属副産物から造粒物を形成することができる。
【0053】
前記造粒処理では、ブレード52およびロータ56の回転と共に、処理槽32の内壁34が処理槽32の中心を軸として回転するので、内壁34に設置された突部36によって、内壁34側の混合物または粒状物が外壁32a側に押出される。また、ブレード52およびロータ56の回転と共に、スクレーパ64が処理槽32の中心を軸として外壁32aに沿って回転することで、外壁32a側の混合物または粒状物が内壁34側に押出される。これにより、処理槽32の処理空間33に装入した混合物および粒状物の全体を、ロータ56の羽根56bによりまんべんなく解砕および攪拌することができ、よってブレード52による破砕、混合、混練および転動をむらなく行なうことができる。すなわち、造粒処理の時間を短縮できると共に、処理槽32に装入した含金属副産物の造粒物への転化率を上げることができるから、含金属副産物の再利用効率をより向上できる。
【0054】
前記造粒設備30は、混合物および粒状物が接触する部分が耐摩耗性金属材料で構成されているから、鉄等の金属を多く含む含金属副産物の如く硬いものであっても、ブレード52、ロータ56、処理槽32の外壁32aおよび内壁34、内壁34の突部36またはスクレーパ64等の摩耗や損傷を抑制することができる。すなわち、造粒設備30の寿命を向上し、メンテナンスの手間を軽減することができる。
【0055】
ここで、条件によっては造粒設備30の造粒処理により、混合物の全体を造粒物とすることができない場合がある。前記整粒設備70によれば、造粒設備30から取出された取扱いし易い大きさまで成長していない粒状物や未造粒の混合物からなる未造粒物を、造粒物と共に円筒体74に装入して円筒体74の内周面を転動させることで、未造粒物同士または未造粒物と造粒物とを吸着・接合させることができる。すなわち、製鋼工程で再利用するためには取扱い性が悪い未造粒物を、整粒設備70により造粒物にできるから、含金属副産物の再利用効率を向上し得ると共に、取扱い性を向上し得る。しかも、整粒設備70の整粒処理によって、造粒物の一層の圧密化を図ることができ、造粒物の強度を上げて取扱い性をより向上し得る。
【0056】
〔実験例1〕
実施例1の含金属副産物の造粒物製造方法について、含金属副産物として、一般特殊鋼系の製造工程で発生した、Fe:67重量%を主成分とするスカーフスケールおよびFe:69重量%を主成分とする酸化スケールを用いると共に、ダストとして同じく一般特殊鋼系の製造工程で発生した、Fe:25重量%を主成分とする精錬炉ダストを用い、還元材としてSiCを7重量%、水分を10重量%で混合する前提で、図11に示す混合割合で含金属副産物およびダストを混合した第1発明例1〜5の原料およびダストの混合割合を20重量%より少なくした比較例1,2の原料を転動造粒して得た造粒物につき、製造された造粒物全体に対する粒径5mm以上の造粒物の割合を、図12に示す。前述した造粒設備30を用い、処理槽32に含金属副産物、ダストおよび還元材を装入し、90秒間の造粒初期段階を行なった後、水を加えて造粒中期段階を60秒間、造粒終期段階を180秒間行なうことで造粒物を転動造粒した。ここで、第1回転速度が7rpmで、第2回転速度が11rpmに設定され、第1自転速度が241rpmで、第2自転速度が162rpmで、第3自転速度が110rpmに設定される。また製造された造粒物の圧潰強度を図13に示すと共に、造粒物の落下強度を図14に示す。なお、圧潰強度は、一軸の圧縮測定器を用いて造粒物が破壊する時の最大圧縮荷重で示し、落下強度は、2mの高さからコンクリート床に造粒物を自由落下させた時の未破壊率で示す。
【0057】
また、含金属副産物として、SUS系の製造工程で発生した、Fe:60重量%,Ni:2.8重量%,Cr:5.2重量%を主成分とするSUSスケールを用いると共に、ダストとして同じくSUS系の製造工程で発生した、Fe:30重量%,Ni:1.5重量%,Cr:7重量%を主成分とする電炉ダストを用い、含金属副産物を45重量%、ダストを45重量%、SiCを10重量%で混合した第1発明例6の造粒物についても、造粒物全体に対する粒径5mm以上の造粒物の割合、圧潰強度および落下強度を、図12〜図14に示す。なお、図12〜図14において、第1発明例6については、図11に示す各例と区別するために、黒丸で示す。
【0058】
実験例1から、含金属副産物およびダストの材質が一般鋼系またはSUS系の何れの場合も、ダストの混合割合を20重量%より多くした第1発明例1〜5および6の何れも、粒径5mm以上の造粒物の割合が50%以上となることが確認された。また、第1発明例1〜5および6の圧潰強度は、0.5MPa以上で、落下強度は、80%以上であり、何れも運搬等に際して崩壊しない実用上問題のない高い値が得られた。しかるに、ダストの混合割合が20重量%より少ない比較例1および2では、造粒自体ができなかった。
【実施例2】
【0059】
実施例2に係る含金属副産物の造粒物製造方法では、図15に示すように、前述した含金属副産物およびダストに加えて、凝集材を造粒設備30に装入し、水分を加えて転動造粒することで造粒物を製造する。凝集材としては、PAC(ポリ塩化アルミニウム),固化材(ベントナイト,セメント,生石灰,でん粉等)等、凝集効果を有するものが用いられる。また凝集材の添加割合は、0.5〜5重量%の範囲で設定される。凝集材の添加割合が0.5重量%より少ないと、凝集効果が得られず、また5重量%より多くても凝集効果が飽和する。なお、造粒した造粒物の水分は、4重量%〜15重量%の範囲であった。また、造粒設備30の運転方法は、実施例1と同様である。
【0060】
実施例2のように凝集材を添加することで、造粒設備で造粒された全ての造粒物の内、取扱い性が良好な粒径5mm以上の造粒物ができる。特に、PACおよびベントナイトを用いた場合は、造粒物全体における粒径5mm以上となる造粒物の割合が増加(50%以上)し、取扱い性が更に良好となる。また得られた造粒物は、運搬等に際して崩壊することのない、圧潰強度が0.5MPa以上の値を有する。しかも、転動造粒する造粒設備は、ブリケットマシンに比べてコストは低廉であるから、造粒物の製造コストも低廉に抑えることができる。なお、凝集材を添加した場合は、ダストの混合割合を20重量%より少なくしても造粒は可能であり、含金属副産物の再利用率を高めることができる。また、造粒設備における転動造粒に際し、凝集材として水ガラスを添加すると、造粒物の強度が更に向上する。特に、CaO等の発熱性を有する成分を有する含金属副産物およびダストを原料とする場合は、水ガラスの添加による強度向上の効果が高い。
【0061】
〔実験例2〕
実施例2の含金属副産物の造粒物製造方法について、実験例1で用いたと同じ組成の一般特殊鋼系の含金属副産物およびダストを用い、還元材としてSiC、凝集材としてPACを用いると共に、水分を10重量%で混合する前提で、図16に示す混合割合とした第2発明例1および第2発明例2の原料を転動造粒した造粒物につき、製造された造粒物全体に対する粒径5mm以上の造粒物の割合および圧潰強度を測定した結果を、図17に示す。また凝集材として、ベントナイトを用いた第2発明例3、セメントを用いた第2発明例4、生石灰を用いた第2発明例5およびでん粉を用いた第2発明例6の各実験結果を、図17に示す。但し、第2発明例3〜6の各素材の混合割合は、図16に示す。なお、図17に示す各例の実験結果において、棒グラフで示す粒径が5mm以上のもののうち、10mmより大きい粒径の割合部分にハッチングを付した。また、圧潰強度は、実験例1と同じ方法で測定した。
【0062】
更に、実験例1で用いたと同じ組成のSUS系の含金属副産物およびダストを用い、含金属副産物を45重量%、ダストを45重量%、SiCを10重量%、凝集材としてPACを0.5重量%で配合した第2発明例7の造粒物について、製造された造粒物全体に対する粒径5mm以上の造粒物の割合および圧潰強度を測定した結果を、図17に示す。更にまた、第2発明例と同じ一般鋼系の含金属副産物、ダストおよび還元材(配合割合は図16参照)を用い、凝集材を添加しない比較例3および4の造粒物を製造し、製造された造粒物全体に対する粒径5mm以上の造粒物の割合および圧潰強度を測定した結果を、図17に示す。
【0063】
実験例2から、含金属副産物およびダストの材質が一般鋼系またはSUS系の何れの場合も、凝集材を添加することで、粒径5mm以上の造粒物が得られ、また圧潰強度も、運搬等に際して崩壊することのない0.5MPa以上の高い値が得られた。また、含金属副産物、ダストおよびSiCの配合割合を同じとして、凝集材(PAC)を添加した第2発明例2と、添加しない比較例4との比較から、凝集材を添加することで、粒径5mm以上の造粒物全体における粒径10mm以上の造粒物の割合が多くなることが確認された。なお、凝集材については、ダストの混合割合を20重量%より多くした場合では、PACやベントナイトを用いることで、粒径5mm以上の造粒物の割合を50%以上とし得ることが確認され、またベントナイトに比べてPACの方が少ない使用量で充分な効果が得られ、材料費コストを低減し得る効果が期待できる。
【0064】
前述した実施例は、更に以下の如く変更を行なうことも可能である。
(1)実施例では、造粒設備で形成した造粒物および造粒物に至っていない未造粒物を整粒設備で成長させたが、整粒設備を省くこともできる。
(2)実施例の整粒設備は、両端面に開口部を夫々設けたが、造粒物の取出し側の開口部は、他方の側端面側に偏倚した位置の周面(側部)に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の好適な実施例1および2に係る含金属副産物の造粒物製造方法に用いられる造粒設備を備えた再資源化プラントを示す概略平面図である。
【図2】図1で示す造粒設備を示す平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図2で示す造粒設備の制御ブロック図である。
【図5】図3で示す造粒設備において、ブレードを拡大して示す側面図であって、(a)は正方向に回転した場合であり、(b)は逆方向に回転した場合を示す。
【図6】ロータの羽根を拡大して示す図2のB−B線断面図である。
【図7】図1で示す整粒設備を一部破断して示す側面図である。
【図8】図7のC−C線断面図である。
【図9】図7で示す整粒設備の制御ブロック図である。
【図10】実施例1に係る含金属副産物の造粒物製造方法を説明する概略図である。
【図11】実験例1における各例の混合割合を示す図である。
【図12】実験例1におけるダストの混合割合と、造粒物全体に対する粒径5mm以上の造粒物の割合との関係を示すグラフ図である。
【図13】実験例1におけるダストの混合割合と圧潰強度との関係を示すグラフ図である。
【図14】実験例1におけるダストの混合割合と落下強度との関係を示すグラフ図である。
【図15】実施例2に係る含金属副産物の造粒物製造方法を説明する概略図である。
【図16】実験例2における各例の混合割合を示す図である。
【図17】実験例2における各例の実験結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0066】
32 処理槽,32c 内底面(底面),38 計量手段,52 ブレード,
52a 一側部,52b 他側部,56 ロータ,68 制御手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材製造工程で発生したスケールやグラインダー粉等の含金属副産物を用いた造粒物の製造方法およびこの製造方法に用いられる造粒設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶解、鋳造、圧延、精整等の各工程を経て金属鋼材を製造する鋼材製造工程においては、各工程でFe,Ni,Cr等の有価金属を含む含金属副産物が発生する。例えば、鋳片や鋼片の表面欠陥を除去することでスカーフィング屑が発生し、圧延工程においては材料表面に生じた酸化物が剥離して酸化スケールが生じ、分塊圧延の切断時には切断屑が発生し、鋼片や製品の表面疵を除去する際にはグラインダー粉等が発生する。そして、有価金属を含む含金属副産物は、資源回収の観点から金属原料として溶解炉に装入して再利用することが望まれている。
【0003】
しかし、前記含金属副産物は溶解原料としては細かく、そのままの状態では取扱いが不便であるので、含金属副産物の再利用をためらわせる原因となっていた。そこで、含金属副産物を、圧縮造粒(特許文献1参照)や転動造粒(特許文献2参照)して造粒物にすることで、取扱いの容易化を図ることが考えられる。
【特許文献1】特開2004−35951号公報
【特許文献2】特開2002−97514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1には、鉄の酸化スケールやダスト等の鉄分含有廃棄物に廃プラスチックをバインダーとして混合し、廃プラスチックを加熱することで、鉄分含有廃棄物を圧縮造粒してブリケットを形成する方法が提案されている。しかしながら、スケール、ダストおよびバインダーの混合物をブリケットに造粒するブリケットマシンは、使用する原料の粒径、水分を造粒前に厳密に調整する必要があり、それによって造粒物の製造コストが高くなる傾向があるという難点が指摘される。しかも、バインダーとしてプラスチックを用いる場合は、該プラスチックを加熱して軟化することでバインダーとして機能させるため、加熱装置も必要となって装置コストが更に嵩む問題がある。
【0005】
特許文献2には、フライアッシュに対して、スケール等の鉄分含有廃棄物、廃砂、廃プラスチック、製紙スラッジ、廃トナーのうちの少なくとも一種を混合したうえで転動造粒して造粒物を形成する方法が開示されている。前述したスケールおよびグラインダ粉等の含金属副産物は、粒径が1mm以下のものから15mm程度のものまであり、粒度分布の範囲も広く、形状も不均一である。すなわち、含金属副産物は、取扱い性に難がある程度に細かいものの、転動造粒により造粒物を形成するためには粒径が大きいので、単にフライアッシュに混合して混練するだけでは造粒物を効率よく形成することができない。また、造粒物を形成したとしても造粒物の圧潰強度が小さく、搬送の途中で造粒物が崩れることがあり、含金属副産物を電気炉で有価金属源として再利用できる割合(回収率)が低くなってしまう。
【0006】
すなわち本発明は、前述した従来の技術に内在している前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、鋼材製造工程で発生するスケールやグラインダ粉等の含金属副産物を低廉なコストで取扱い性に優れた造粒物にできる含金属副産物の造粒物製造方法および造粒設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る含金属副産物の造粒物製造方法は、
鋼材製造工程で発生した含金属副産物と、ダストとを混合し、ダストを20重量%以上包含すると共に、水分率が4重量%〜15重量%の範囲にある混合物を転動造粒することで、造粒物を製造することを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、ダストを20重量%以上の割合で含金属副産物に混合すると共に、混合物の水分率を4重量%〜15重量%の範囲にすることで、バインダーとしてプラスチックを用いることなく含金属副産物を転動造粒で造粒することができ、製造コストを低廉に抑えることができる。
【0008】
また前述した課題を解決し、所期の目的を達成するため、請求項2の発明に係る含金属副産物の造粒物製造方法は、
鋼材製造工程で発生した含金属副産物と、ダストと、凝集材とを混合し、水分率が4重量%〜15重量%の範囲にある混合物を転動造粒することで、造粒物を製造することを特徴とする。
請求項2に係る発明によれば、含金属副産物にダストと凝集材を混合すると共に、混合物の水分率を4重量%〜15重量%の範囲にすることで、バインダーとしてプラスチックを用いることなく含金属副産物を転動造粒で造粒することができ、製造コストを低廉に抑えることができる。しかも、凝集材の凝集効果によって、粒径が大きく取扱い性が良好な造粒物を製造することができる。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記含金属副産物が、1mm以上の粒径の割合が70重量%以上の範囲にあることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、粒径が大きな含金属副産物を多く含んでいても造粒物を形成し得る。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記ダストが、0.5mm以下の粒径の割合が95重量%以上の範囲にあることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、細かなダストを用いることにより、造粒性が向上する。
【0011】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、本願の請求項5に係る発明の含金属副産物の造粒物製造方法に用いられる造粒設備は、
請求項1〜4の何れか一項に記載の含金属副産物の造粒物製造方法に用いられる造粒設備であって、
鋼材製造工程で発生する含金属副産物、ダストおよび添加材や水が装入される円筒形状の処理槽と、
前記処理槽の半径方向に延在する一側部から該一側部に対向する他側部へ向けて処理槽の底面から離間する傾斜姿勢で該処理槽の内部に設置され、処理槽の中心を軸として前記一側部を回転方向前側とした正方向と前記他側部を回転方向前側とした逆方向とに回転するブレードと、
前記ブレードと共に前記処理槽の中心を軸として該処理槽の内部を正逆方向に回転しつつ、該ブレードの正方向と同一方向に自転するロータと、
前記ロータの自転速度、前記ブレードの回転方向および回転速度を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
造粒初期段階で、前記ブレードを第1回転速度で逆方向に回転すると共に、前記ロータを第1自転速度で回転し、
造粒中期段階で、前記ブレードを前記第1回転速度より高速に設定した第2回転速度で正方向に回転すると共に、前記ロータを前記第1自転速度より低速に設定した第2自転速度で回転し、
造粒終期段階で、前記ブレードを前記第2回転速度で正方向に回転すると共に、前記ロータを前記第2自転速度より低速に設定した第3自転速度で回転するように制御することを特徴とする。
請求項5に係る発明によれば、造粒物の形成段階に合わせて、ブレードの回転方向および回転速度、ロータの自転速度を調節することで、粒径が大きい含金属副産物を含んでいても、転動造粒により造粒物を形成することができる。特に、造粒初期段階で処理槽底面とブレードとの間で含金属副産物を破砕して、造粒物の核を形成しているので、他に凝固剤や吸着剤等を添加しなくても、粒径が大きい含金属副産物から造粒物を形成することができる。しかも、含金属副産物の破砕、混合、混練および造粒を1つの設備で行なうことが可能であって設備を軽減できるから、含金属副産物から造粒物を形成するために要するコストを低減し得る。更に、得られた造粒物は、凝固剤や吸着剤等の作用により表面的に固められたものではなく、転動造粒における粒同士の吸着および圧密化の繰返しによって形成されるので、強度に優れている。従って、得られた造粒物は、分解しにくく、優れた取扱い性を有しており、搬送途中での崩壊を抑制できるから、含金属副産物の再利用効率を向上し得る。
【0012】
請求項6に係る発明は、前記処理槽の前記含金属副産物が接触する部分、前記ブレードおよび前記ロータを耐摩耗性金属材料で構成したことを要旨とする。
請求項6に係る発明によれば、含金属副産物が接触する部分を耐摩耗性材料で構成してあるから、含金属副産物を使用する際の摩耗や損傷を抑制でき、設備の寿命を向上できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る含金属副産物の造粒物製造方法および造粒設備によれば、取扱いが容易な造粒物を低廉に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明に係る含金属副産物の造粒物製造方法およびこの製造方法に用いられる造粒設備につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【実施例1】
【0015】
先ず、本発明に係る含金属副産物の造粒物製造方法に好適に用いられる造粒設備について説明する。図1は、造粒設備30を備える再資源化プラント10を示す概略平面図である。再資源化プラント10は、含金属副産物を受入れる第1ホッパー12と、炭化珪素(SiC)等の還元材を受入れる第2ホッパー14と、ダストを貯蔵するダストサイロ24と、含金属含有物、還元材、ダストおよび水の混合物から造粒物を形成する造粒・整粒設備とを備えている。造粒・整粒設備は、混合物を転動造粒することで造粒物を形成する造粒設備30を備え、この造粒設備30の造粒処理によって混合物のほとんどが取扱いし易い大きさまで成長した造粒物とされるが、取扱いし易い大きさまで成長していない粒状物や未造粒の混合物(これらの粒状物と混合物とを総称して未造粒物という)が生じる場合がある。そこで、本例の造粒・整粒設備では、造粒設備30から取出された造粒物および未造粒物を受入れ、未造粒物から造粒物を形成する整粒処理を行なう整粒設備70が設けられている。なお、還元材は、造粒物を電気炉に装入して再利用した際に、溶鋼から不純物を除去する目的で配合されるものであり、転動造粒による造粒物の形成に関して還元材を配合することは必須要件ではない。
【0016】
ここで、鋼材製造工程で発生する含金属副産物とは、鋳片や鋼片の表面欠陥を除去することで発生するスカーフィング屑、圧延工程において材料表面に生じて剥離した酸化スケール、分塊圧延の切断時に発生する切断屑、あるいは鋼片や製品の表面疵を除去する際に発生するグラインダー粉等を云い、これらの単体あるいは複数を組合わせたものを使用する。またダストとは、金属原料を電気炉等で溶解した際に集塵されたダストや製鋼および鋼材加工工程で集塵されるダストである。また明細書中において「ダスト」とは、粉塵発生施設から集塵機で集塵した粉塵を総称し、また「スケール」とは、金属材の加工工程において発生した表面酸化物を総称し、更に、「グラインダー粉」とは、金属材の加工工程において素材を切断したり切削した際に発生した金属屑を総称して用いている。
【0017】
前記第1ホッパー12には、目幅が60mm程度に設定された振動スクリーン(図示せず)が設けられ、含金属副産物のうち転動造粒に適していない大きい粒径のものを振動スクリーンにより排除している。また、第1ホッパー12と造粒設備30との間には、第1ホッパー12から造粒設備30に含金属副産物を移送する第1コンベヤ16が設置され、第2ホッパー14と造粒設備30との間には、第2ホッパー14から造粒設備30に還元材を移送する第2コンベヤ17が設置されている。
【0018】
前記再資源化プラント10では、ダストの排出元毎およびダストの成分毎にダストサイロ24が夫々設けられ、4基のダストサイロ24を備える例を挙げている。本例では、取鍋精錬装置(LF)から回収されたダストと、アルゴン酸素脱炭装置(AOD)から回収されたダストと、電気炉におけるニッケル系のダストと、電気炉におけるクロム系のダストとが夫々のダストサイロ24に分けて貯蔵されている。各ダストサイロ24は、貯蔵したダストを空気圧送により造粒設備30に移送する移送管25を夫々備えている。各移送管25は、移送終端が造粒設備30の上部に設けられた計量器26に夫々接続され、ダストサイロ24から移送管25を介して移送したダストを計量器26で受けて、計量器26で計量した所要量のダストを造粒設備30に装入するようになっている。なお計量器26は、各ダストサイロ24に対応して1つずつ設けられ、ダストサイロ24毎に切分けて造粒設備30にダストが装入される。
【0019】
前記造粒設備30の下部には、造粒設備30から取出された造粒物および未造粒物を受取って整粒設備70に移送する第3コンベヤ18が設置されている。そして、整粒設備70の取出側には、整粒設備70で形成された造粒物を受取って、造粒物を集積する製品ヤード100まで移送する第4コンベヤ19が設置されている。なお、第1コンベヤ16、第2コンベヤ17、第3コンベヤ18および第4コンベヤ19には、カバーが設けられ、粉塵が外部に漏出したり、雨水が移送物に混入しないようになっている。
【0020】
図2〜図5を参照して、造粒設備30について具体的に説明する。造粒設備30は、含金属副産物、還元材、ダストおよび水を受入れる円筒形状の処理槽32と、この処理槽32の内部に設けられたブレード52と、同じく処理槽32の内部に設けられたロータ56と、造粒設備30の各機器を制御する制御手段68とを備えている。処理槽32は、縦方向に軸線を延在させた有底の処理槽本体と、この処理槽本体と同心で内部に立設された円筒形状の内壁34とからなる二重円筒形状であって、内壁34と処理槽本体の外壁32aとの間が造粒処理を行なう処理空間33になっている。内壁34は、処理槽本体に対して回転可能に配設される。また、内壁34の外面には、平面視において断面三角形状で、処理空間33に突出する突部36が、処理槽32の中心を挟んで対称な関係で複数(本例では2基)配設されている(図2参照)。
【0021】
前記処理槽32は、上方に開放すると共に、底部に取出口32bが開設されており、取出口32bはシリンダ等の作動機構37b(図4参照)によりスライド移動可能な遮蔽板37aで常には塞がれている(図2参照)。造粒設備30は、造粒処理の適宜タイミングで遮蔽板37aを作動機構37bにより取出口32bを開放する方向に移動して、取出口32bを介して処理槽32の処理空間33から造粒物および未造粒物を第3コンベヤ18に受渡すようになっている。また、処理槽32の上方には、第1コンベヤ16から含金属副産物を受取って処理槽32に受渡す第1受容部20、第2コンベヤ17から還元材を受取って処理槽32に受渡す第2受容部22、計量した水を供給する給水手段28、前記複数の計量器26および集塵機(図示せず)が配設されている(図1参照)。なお、処理槽32の上部は、カバー(図示せず)で覆われている。
【0022】
前記処理槽32は、処理空間33に装入された含金属副産物および還元材の重量を計測することで、含金属副産物および還元材の装入量を計量する計量手段38を備え(図4参照)、この計量手段38は、制御手段68に電気的に接続されている。制御手段68は、計量手段38による含金属副産物または還元材の計量に基づいて、第1コンベヤ16または第2コンベヤ17を停止して、処理空間33に所要量の含金属副産物または還元材を装入するようになっている。このように、造粒設備30の処理空間33には、各計量器26により計量されたダストと、計量手段38により計量された含金属副産物および還元材と、給水手段28により計量された水とが装入される。
【0023】
前記処理槽32における内壁34の内部には、中心に第1回転軸40が回転自在に立設され、第1回転軸40の下部は処理槽32の外底部に設けられた第1変速機構42を介して、処理槽32の外側に設けられた第1モータ44に接続されている(図3参照)。なお、第1モータ44および第1変速機構42は、制御手段68に電気的に夫々接続されている(図4参照)。第1回転軸40の上部には、該第1回転軸40を挟んで対称な関係で処理槽32の半径方向に延在するアーム46が設けられ、アーム46は第1回転軸40の回転と共に回転するよう構成される。またアーム46には、該アーム46の延在方向と異なる方向で処理槽32の半径方向に延在させて、一対の第1支持腕48,48が第1回転軸40を挟んで対称に配設されている(図2参照)。各第1支持腕48には、第1回転軸40の回転につれて処理槽32の中心を軸として回転するブレード52と、このブレード52における処理槽32の内底面32cに対する離間間隔を調節する隙間調節機構54とからなる攪拌体50が下垂した状態で設けられている(図3または図5参照)。
【0024】
前記ブレード52は、攪拌体50における隙間調節機構54の下部に、処理槽32の半径方向に延在させて配設された板状の部材である。ブレード52は、該ブレード52における処理槽32の半径方向に沿う一側部52aからこの一側部52aに対向する他側部52bへ向けて処理槽32の内底面32cから離間する傾斜姿勢で設置されている(図5参照)。またブレード52は、処理槽32の内壁34近傍から該内壁34と外壁32aとの略中間部までの間に延在するように設定される(図2参照)。
【0025】
図5に示すように、前記隙間調節機構54は、第1支持腕側に接続した第1ブラケット54aと、この第1ブラケット54aに対して軸部54bを介して処理槽32の周方向へ揺動可能に接続されて、下部にブレード52を備える第2ブラケット54cと、第1ブラケット54aに対して第2ブラケット54cを位置決めするストッパ54dとから構成される。そして、隙間調節機構54は、ストッパ54dの取付位置を変更して、第1ブラケット54aに対する第2ブラケット54cの下垂角度を調節することで、処理槽32の内底面32cに対するブレード52の傾斜角度および離間間隔が変更可能になっている。なお、ブレード52と処理槽32の内底面32cとの離間間隔は、含金属副産物の粒径との関係で設定される。
【0026】
前記ブレード52は、制御手段68の制御に基づいて第1変速機構42により任意の方向および回転速度で、処理槽32の中心を軸として回転可能に構成される。ここで、ブレード52における傾斜下端の一側部52aを回転方向前側とした回転方向が正方向であって、傾斜上端の他側部52bを回転方向前側とした回転方向が逆方向である。またブレード52は、造粒設備30における造粒初期段階で第1回転速度で逆方向に回転し、造粒中期段階で第1回転速度より高速に設定した第2回転速度で正方向に回転し、造粒終期段階で第2回転速度で正方向に回転するようになっている。本例では、第1回転速度が7rpmで、第2回転速度が11rpmに設定されている。
【0027】
前記アーム46には、第1回転軸40を挟んで処理槽32の半径方向に延出した両端部に夫々下垂した状態で配設されたロータ56と、第2モータ58と、この第2モータ58の回転をロータ56に伝達する第2変速機構60とが設けられている(図3参照)。第2モータ58および第2変速機構60は、制御手段68に電気的に夫々接続されている(図4参照)。ロータ56は、アーム46の回転によりブレード52と共に、処理槽32の中心を軸としてブレード52と同一方向に同一速度で回転すると共に、アーム46に対してブレード52における正方向の回転と同一方向に自転するよう構成される。またアーム46の下面には、内壁34が取付けられ、アーム46の回転につれて内壁34および内壁34の突部36が回転するようになっている。
【0028】
前記ロータ56は、上部が第2変速機構60に接続された第2回転軸56aと、この第2回転軸56aの下部に設けられて、第2回転軸56aの半径方向外側へ延出した複数の羽根56bとから構成される(図2参照)。ロータ56には、第2回転軸56aにおける同一高さで放射状に延出する複数の羽根56bからなる羽根組が、上下の関係で多段(本例では4段)に配設されている(図3参照)。最下段の羽根組を構成する各羽根56bの下面には、処理槽32の内底面32c側へ突出する複数の突起部56cが設けられている。またロータ56は、回転時に処理空間33における半径方向の略全域に亘って羽根56bが通過するようになっている。そして、図6に示すように、各羽根56bの自転方向に沿う断面形状は、自転方向に沿う方向に長辺を延在した矩形を基本として、回転方向前側の上角部には、回転方向後側から前側につれて下方傾斜するテーパが形成されている。
【0029】
前記ロータ56は、制御手段68の制御に基づく第2変速機構60によって、任意の自転速度で自転するよう構成される。またロータ56は、造粒設備30における造粒初期段階で第1自転速度で自転し、造粒中期段階で第1自転速度より低速に設定した第2自転速度で自転し、造粒終期段階で第2自転速度より低速に設定した第3自転速度で自転するようなっている。本例では、第1自転速度が241rpmで、第2自転速度が162rpmで、第3自転速度が110rpmに設定されている。
【0030】
前記アーム46には、該アーム46および第1支持腕48の延在方向と異なる方向で処理槽32の半径方向に沿って延在する複数(本例では2基)の第2支持腕62が、第1回転軸40を挟んで対称な関係で配設されている。各第2支持腕62の先端には、処理槽32における外壁32aの内面に沿って延在するスクレーパ64が設けられている。スクレーパ64は、平面視において処理槽32の中心側に突出する断面三角形状の部材であって、アーム46の回転につれて外壁32aの内面に沿って回転して、外壁32aの内面に付着する混合物を除去するようになっている。
【0031】
前記造粒設備30では、含金属副産物、ダストおよび水との混合物が接触する部分が、耐摩耗性金属材料で構成されている。耐摩耗性金属材料としては、例えばハイクロム系やタングステン系等の高張力鋼が採用される。本例では、処理槽32の底板と、攪拌体50、ロータ56の羽根56b、内壁34の突部36およびスクレーパ64が耐摩耗性金属材料で構成されている。
【0032】
次に、前記整粒設備70について、図7〜図9を参照して具体的に説明する。整粒設備70は、軸線を横方向に延在させた姿勢で架台72に設置された中空の円筒体74と、この円筒体74を周方向に回転する回転機構82と、円筒体74を傾動する傾動機構88とを備えている。また整粒設備70は、回転機構82および傾動機構88が電気的に接続する制御部94を備え(図9参照)、この制御部94の制御下に円筒体74の回転速度および傾動角度を調節できるようになっている。
【0033】
前記円筒体74は、一方の側端面(一方の側部)74aに開設された第1開口部76と、他方の側端面(他方の側部)74bに開設された第2開口部78とを有し、整粒処理を行なう内部空間77を介して第1開口部76と第2開口部78とが連通している。円筒体74の第1開口部76には、造粒設備30から取出された造粒物および未造粒物を移送する第3コンベヤ18の移送終端部が臨み、第1開口部76を介して第3コンベヤ18から造粒物および未造粒物が内部空間77に装入されるようになっている(図7参照)。また、第2開口部78には、該第2開口部78から放出される造粒物を受けるシュート79が臨み、このシュート79の下方に、整粒設備70と製品ヤード100との間に設置された第4コンベヤ19の移送始端部が配置される。
【0034】
前記円筒体74の内部空間77には、円筒体74の内周面74cから半径方向内側に突出する複数(本例では3基)の堰部材80が配設されている(図8参照)。複数の堰部材80は、円筒体74の内周面74cにおける同一円周上に、周方向に離間して隙間をあけた状態で配設されている。円筒体74では、堰部材80により造粒物等の第1開口部76側から第2開口部78側への移動が阻まれる一方、隙間を介して造粒物等の第1開口部76側から第2開口部78側への移動が許容されるようになっている。なお、堰部材80には、水を含んだ混合物の付着を防止する板(図示せず)が装着されている。
【0035】
前記回転機構82は、第3モータ84の回転を制御部94の制御に基づいて第3変速機構86で変速して円筒体74に伝達し、例えば2rpm〜20rpm(好適には10rpm)の範囲の回転速度で円筒体74を回転するよう構成される。制御部94は、整粒処理において、回転速度を次第に減速するまたは回転速度を段階的に減速するように第3変速機構86を制御している。
【0036】
前記傾動機構88は、円筒体74における他方の側端面74b側に設けられ、架台72に対して円筒体74を傾動可能に支持する軸支部90と、円筒体74における一方の側端面74a側に設けられ、一方の側端面74a側を架台72に対して昇降するシリンダ等を備える昇降部92とから構成される。そして、制御部94により昇降部92を制御することによって、円筒体74は、軸線を水平方向に延在させた水平姿勢と、一方の側端面74a側が他方の側端面74b側より上方に位置した傾斜姿勢との間で傾動される。これにより円筒体74は、傾斜角度(水平面と円筒体74の軸線とがなす角度)が、0°〜2°の範囲で適宜に調節される。ここで、整粒設備70は、整粒処理の初期において、円筒体74を0°に近い1°の傾斜角度で運転し、整粒処理が進行するにつれて円筒体74の傾斜角度を次第にまたは段階的に大きくするようになっている。
【0037】
次に、前記造粒設備30を用いた図10に示す実施例1に係る含金属副産物の造粒物製造方法について、再資源化プラント10による全体の処理の流れに含めて説明する。最初に、造粒設備30の処理槽32に対し、含金属副産物、還元材およびダストの材料が所定の割合となるように計量して装入される造粒前処理が行なわれる。図示しないストックヤードに貯蔵されている含金属副産物を第1ホッパー12に装入して、過大な含金属副産物を振動スクリーンにより除去した後、含金属副産物は第1コンベヤ16により造粒設備30における処理槽32の上方に位置する第1受容部20へ受渡される。そして、第1受容部20を介して処理槽32に含金属副産物が装入され、計量手段38による処理槽32に受入れた含金属副産物の計量に基づいて、第1コンベヤ16を停止することで、予め設定した量の含金属副産物が処理槽32に入る。
【0038】
前記含金属副産物は、粒径が大きなものであって単独での転動造粒により造粒物を形成できない、1mm以上の粒径の割合が、処理槽32への装入量全体のうち70重量%以上の範囲にあるものが用いられる。ここで、本願発明で粒径とは、粒の最も長い部分の寸法をいう。
【0039】
一方、ストックヤードに含金属副産物と別に貯蔵されている還元材は、第2ホッパー14、第2コンベヤ17および第2受容部22を介して処理槽32に装入される。計量手段38による還元材の計量に基づいて第2コンベヤ17を停止することで、予め設定した量の還元材が処理槽32に入る。なお、含金属副産物と還元材とは、処理槽32への装入タイミングをずらすことで計量手段38により夫々独立して計量される。
【0040】
前記ダストは、ダストサイロ24から対応の移送管25を介して空気圧送されて、対応の計量器26に移送されて、計量器26で計量することで設定量のダストが処理槽32に装入される。ここで、ダストとしては、金属原料を電気炉等で溶解した際に集塵されたダストや製鋼および鋼材加工工程で集塵されたダストを用いる。このダストとしては、粒径が小さく単独での造粒が可能な、0.5mm以下の粒径の割合が、処理槽32への装入量全体において95重量%以上の範囲にあるものが用いられる。またダストは、混合物全体において20重量%以上の割合となるように含金属副産物と混合される。なお、処理槽32に装入するダストとしては、複数のダストサイロ24から移送した成分の異なるダストを適宜の割合で装入して配合しても、単一のダストを装入してもよい。ダストの混合割合が、20重量%より少ないと、造粒自体ができなくなったり、造粒できたとしても造粒物の強度が足りず、運搬等に際して簡単に崩壊してしまうおそれがある。すなわち、ダストの混合割合を20重量%以上とすることにより、運搬等に支障のない圧潰強度が0.5MPa以上の造粒物を製造可能である。但し、ダストの混合割合を多くすると、含金属副産物の割合が減るため、該副産物の再利用率を勘案すると、ダストの混合割合の上限は、50重量%とするのが好ましい。
【0041】
前記水は、含金属副産物およびダストからなる混合物が4重量%〜15重量%の水分率となるように調整して供給される。すなわち、含金属副産物が水分を含んでいる場合には、処理槽32で水が供給されないこともある。ここで、水分率が4重量%より少ない場合は、粒径の小さな造粒物しかできなくなったり、造粒自体が難しくなる。なお、含金属副産物、ダストおよび水の供給順については、含金属副産物とダストとを充分に混合した後、水を供給する。
【0042】
このように、造粒設備30の処理槽32には、含金属副産物、還元材、ダストおよび水の材料が独立した搬入路を経て装入されるので、各材料が搬入過程で混ざることがなく、材料毎に容易に計量することができる。すなわち、混合物における各材料の配合を正確に行なうことができ、後工程の造粒処理で造粒物を効率よく形成することができる。
【0043】
前記造粒前処理で、含金属副産物、還元材およびダストを所要の配合割合となるように装入した混合物は、造粒設備30において転動造粒を行なう造粒処理を経て造粒物とされる。造粒処理は、大きくは3つの段階に分けられ、混合物を解砕すると共に混合する造粒初期段階と、混合物を造粒して造粒物を形成する造粒中期段階と、造粒物を成長させる造粒終期段階とを有している。
【0044】
前記造粒初期段階では、ブレード52が低速の第1回転速度で逆方向に回転されると共に、ロータ56が高速の第1自転速度で回転される。ブレード52を処理槽32の中心を軸として逆方向に回転することで、回転方向前側から後側へ向けて下方傾斜するブレード52によって、混合物に対して処理槽32の内底面32cへ向けて力が作用する(図5(b)参照)。すなわち混合物は、ブレード52と処理槽32の内底面32cとに挟まれて潰されるので、比較的粒径の大きい含金属副産物を破砕して細かくし得ると共に、含金属副産物、還元材およびダストを混合・混練することができる。また、ブレード52を低速な第1回転速度で回転することで、混合物に対して長い時間に亘って力を加えることができ、破砕および混練を効率よく行なうことができる。そして、ロータ56を高速な第1自転速度で自転させつつ、ブレード52と共に処理槽32の中心を軸として逆方向に回転することで、混合物を攪拌しつつほぐして細かくすることができる。このように造粒初期段階では、含金属副産物を破砕および解砕することで、造粒物の核となる粒を形成することができると共に、混合物の粒度分布の均一化を図ることができる。すなわち、造粒設備30において、装入された全ての含金属副産物における粒径が1mm以上のものの割合を70重量%から50重量%まで減少することができる。鋼材製造工程の各工程で回収された含金属副産物の粒径には大きなバラツキがあり、大きな粒径のものは転動造粒に際して核となり得ない場合があるが、造粒設備30によれば、造粒初期段階で含金属副産物を適切な粒径まで破砕し得るので、粒径が1mm以上のものを選別除去したり、大きな粒を破砕する前処理を行なう必要がなく、設備を簡略化できる。
【0045】
前記造粒中期段階では、給水手段28から処理槽32に対して、水が混合物全体の4重量%〜15重量%の範囲となるように調節して供給される。また造粒中期段階では、ブレード52が第1回転速度より高速に設定した第2回転速度で正方向に回転すると共に、ロータ56が第1自転速度より低速に設定した第2自転速度で回転される。ブレード52を処理槽32の中心を軸として正方向に回転することで、回転方向前側から後側へ向けて上方傾斜するブレード52によって、混合物が処理槽32の内底面32c側から上方へ向けて掻き上げられる(図5(a)参照))。すなわち混合物は、ブレード52によって処理槽32の内底面32cから剥がされてブレード52の上面を転動する過程で、粒同士が接触して接合して粒状物として成長し始める。ここで、造粒中期段階の前に造粒初期段階で含金属副産物を予め破砕して核となる粒を形成してあるから、粒状物の形成が円滑に行なわれる。また粒状物は、更に転動することで圧密化されて、内部に包含していた過剰水分が粒の表面に侵出するので、表面に侵出した過剰水分による表面張力によって、粒または他の小さな粒が粒状物の表面に付着して更に成長する。そして、ブレード52の一側部52aと処理槽32の内底面32cとの離間間隔より粒状物が大きくなると、一部の粒状物はブレード52の一側部52aに押されて処理槽32の内底面32cを転動し、他の粒状物は、ブレード52によって掻き上げられて攪拌される。更に、ロータ56を高速な第1自転速度より低く設定した中速な第2自転速度で自転させつつ、ブレード52と共に処理槽32の中心を軸として正方向に回転することで、羽根56bにより比較的大きい粒状物、小さい粒状物および混合物を攪拌して、両者の接触機会を多くして粒状物の成長が図られる。
【0046】
前記造粒中期段階では、ブレード52およびロータ56が第1回転速度より高速に設定された中速の第2回転速度で回転されているので、処理槽32の混合物および粒状物の接触機会を多く設けることができる。これに対してロータ56は、混合物の解砕を図る第1自転速度より速度を落とした中速の第2自転速度で自転するように設定してあるから、造粒中期段階で形成された粒状物の破壊を抑制しつつ羽根56bにより攪拌することができる。
【0047】
前記造粒終期段階では、ブレード52が第2回転速度で正方向に回転されると共に、ロータ56が第2自転速度より低速に設定した第3自転速度で回転される。造粒終期段階では、ブレード52およびロータ56を処理槽32の中心を軸として正方向に回転することで、造粒中期段階と同様に、ロータ56により混合物および粒状物を攪拌すると共に、ブレード52により混合物および粒状物を処理槽32の内底面32c側から掻き上げつつ、粒状物を転動させて成長を図っている。そして、造粒終期段階では、粒状物がある程度大きくなっているので、ロータ56の自転速度を造粒中期段階の第2自転速度より更に減速した低速の第3自転速度とすることで、羽根56bによる粒状物の破壊を抑制している。但し、造粒終期段階である程度大きくなり過ぎた造粒物は、ロータ56の自転によって羽根56bにより小型の粒状物に分断されて、再び粒状物同士を吸着して成長させる。
【0048】
前記造粒設備30での造粒終期段階を終えて形成された造粒物および造粒物まで至っていない未造粒物は、第3コンベヤ18によって移送されて、整粒設備70の円筒体74に第1開口部76を介して装入される。円筒体74に装入された造粒物および未造粒物は、回転機構82により円筒体74が周方向に回転されることで、円筒体74の内周面74cを転動するから、未造粒物同士または未造粒物と造粒物とが接触して互いに接合する。また、円筒体74は、傾動機構88により他方の側端面74bを傾斜下端として傾いているので、造粒物および未造粒物は、装入側の第1開口部76側から取出側の第2開口部78へ向けて周方向に転動しつつ移動する。ここで、整粒設備70は、整粒処理の初期において、円筒体74の回転速度が高速に設定されているので、未造粒物同士または未造粒物と造粒物との接触機会を多くすることができ、造粒物への円滑な成長を図り得る。そして、整粒設備70は、整粒処理が進行するにつれて、次第にまたは段階的に円筒体74の回転速度を低下させるので、造粒物同士の衝突等に起因する造粒物の分解を抑制することができる。
【0049】
前記整粒設備70は、整粒処理の初期において、円筒体74の傾動角度が小さくなるように傾動機構88を制御しているので、造粒物および未造粒物の円筒体74での滞留時間を長くすることができる。すなわち、未造粒物が第2開口部78から放出されることを抑制できる。そして、整粒設備70は、整粒処理が進行するにつれて、次第にまたは段階的に円筒体74の傾動角度を大きくすることで、成長した造粒物を第2開口部78から適宜に放出することができる。しかも、円筒体74の内周面74cには、複数の堰部材80が立設されているから、これらの堰部材80で造粒物および未造粒物の移動を阻んで、造粒物および未造粒物の滞留時間を稼ぐことができる。
【0050】
このように、整粒設備70による整粒処理で未造粒物は造粒物まで成長し、得られた造粒物は第2開口部78およびシュート79を介して第4コンベヤ19に受渡され、第4コンベヤ19により移送されて製品ヤード100で貯蔵される。
【0051】
以上に説明した含金属副産物の造粒物製造方法では、造粒設備30で転動造粒された全ての造粒物の内、取扱い性が良好な粒径5mm以上の造粒物の割合が50%以上となる。また得られた造粒物は、運搬等に際して崩壊することのない0.5MPa以上の圧潰強度を有する。しかも、転動造粒する造粒設備30は、従来例で説明したブリケットマシンに比べてコストは低廉であるから、造粒物の製造コストも低廉に抑えることができる。
【0052】
前記造粒設備30によれば、粒状物の形成段階に合わせて、ブレード52の回転方向および回転速度、ロータ56の自転速度を前述の如く変更することで、粒径が大きい含金属副産物を含んでいても、造粒物を形成することができる。すなわち、造粒初期段階でブレード52により含金属副産物を破砕して、粒状物の核となる粒を形成しているので、他にプラスチック等のバインダーや凝固剤や吸着剤等を添加しなくても、粒径が大きい含金属副産物を含んでいても造粒物を形成することができる。しかも、含金属副産物の破砕、混合、混練および造粒を1つの造粒設備30で行なうことができるので、設備および破砕処理の手間を軽減できる。更に、得られた造粒物は、凝固剤や吸着剤等の作用により表面的に固められたものではなく、転動造粒における粒同士の吸着および圧密化の繰返しによって形成されるので、強度に優れている。従って、得られた造粒物は、分解しにくく、優れた取扱い性を有しており、搬送途中での崩壊を抑制できるから、含金属副産物の再利用効率を向上し得る。このように、造粒設備30によれば、低廉なコストで含金属副産物から造粒物を形成することができる。
【0053】
前記造粒処理では、ブレード52およびロータ56の回転と共に、処理槽32の内壁34が処理槽32の中心を軸として回転するので、内壁34に設置された突部36によって、内壁34側の混合物または粒状物が外壁32a側に押出される。また、ブレード52およびロータ56の回転と共に、スクレーパ64が処理槽32の中心を軸として外壁32aに沿って回転することで、外壁32a側の混合物または粒状物が内壁34側に押出される。これにより、処理槽32の処理空間33に装入した混合物および粒状物の全体を、ロータ56の羽根56bによりまんべんなく解砕および攪拌することができ、よってブレード52による破砕、混合、混練および転動をむらなく行なうことができる。すなわち、造粒処理の時間を短縮できると共に、処理槽32に装入した含金属副産物の造粒物への転化率を上げることができるから、含金属副産物の再利用効率をより向上できる。
【0054】
前記造粒設備30は、混合物および粒状物が接触する部分が耐摩耗性金属材料で構成されているから、鉄等の金属を多く含む含金属副産物の如く硬いものであっても、ブレード52、ロータ56、処理槽32の外壁32aおよび内壁34、内壁34の突部36またはスクレーパ64等の摩耗や損傷を抑制することができる。すなわち、造粒設備30の寿命を向上し、メンテナンスの手間を軽減することができる。
【0055】
ここで、条件によっては造粒設備30の造粒処理により、混合物の全体を造粒物とすることができない場合がある。前記整粒設備70によれば、造粒設備30から取出された取扱いし易い大きさまで成長していない粒状物や未造粒の混合物からなる未造粒物を、造粒物と共に円筒体74に装入して円筒体74の内周面を転動させることで、未造粒物同士または未造粒物と造粒物とを吸着・接合させることができる。すなわち、製鋼工程で再利用するためには取扱い性が悪い未造粒物を、整粒設備70により造粒物にできるから、含金属副産物の再利用効率を向上し得ると共に、取扱い性を向上し得る。しかも、整粒設備70の整粒処理によって、造粒物の一層の圧密化を図ることができ、造粒物の強度を上げて取扱い性をより向上し得る。
【0056】
〔実験例1〕
実施例1の含金属副産物の造粒物製造方法について、含金属副産物として、一般特殊鋼系の製造工程で発生した、Fe:67重量%を主成分とするスカーフスケールおよびFe:69重量%を主成分とする酸化スケールを用いると共に、ダストとして同じく一般特殊鋼系の製造工程で発生した、Fe:25重量%を主成分とする精錬炉ダストを用い、還元材としてSiCを7重量%、水分を10重量%で混合する前提で、図11に示す混合割合で含金属副産物およびダストを混合した第1発明例1〜5の原料およびダストの混合割合を20重量%より少なくした比較例1,2の原料を転動造粒して得た造粒物につき、製造された造粒物全体に対する粒径5mm以上の造粒物の割合を、図12に示す。前述した造粒設備30を用い、処理槽32に含金属副産物、ダストおよび還元材を装入し、90秒間の造粒初期段階を行なった後、水を加えて造粒中期段階を60秒間、造粒終期段階を180秒間行なうことで造粒物を転動造粒した。ここで、第1回転速度が7rpmで、第2回転速度が11rpmに設定され、第1自転速度が241rpmで、第2自転速度が162rpmで、第3自転速度が110rpmに設定される。また製造された造粒物の圧潰強度を図13に示すと共に、造粒物の落下強度を図14に示す。なお、圧潰強度は、一軸の圧縮測定器を用いて造粒物が破壊する時の最大圧縮荷重で示し、落下強度は、2mの高さからコンクリート床に造粒物を自由落下させた時の未破壊率で示す。
【0057】
また、含金属副産物として、SUS系の製造工程で発生した、Fe:60重量%,Ni:2.8重量%,Cr:5.2重量%を主成分とするSUSスケールを用いると共に、ダストとして同じくSUS系の製造工程で発生した、Fe:30重量%,Ni:1.5重量%,Cr:7重量%を主成分とする電炉ダストを用い、含金属副産物を45重量%、ダストを45重量%、SiCを10重量%で混合した第1発明例6の造粒物についても、造粒物全体に対する粒径5mm以上の造粒物の割合、圧潰強度および落下強度を、図12〜図14に示す。なお、図12〜図14において、第1発明例6については、図11に示す各例と区別するために、黒丸で示す。
【0058】
実験例1から、含金属副産物およびダストの材質が一般鋼系またはSUS系の何れの場合も、ダストの混合割合を20重量%より多くした第1発明例1〜5および6の何れも、粒径5mm以上の造粒物の割合が50%以上となることが確認された。また、第1発明例1〜5および6の圧潰強度は、0.5MPa以上で、落下強度は、80%以上であり、何れも運搬等に際して崩壊しない実用上問題のない高い値が得られた。しかるに、ダストの混合割合が20重量%より少ない比較例1および2では、造粒自体ができなかった。
【実施例2】
【0059】
実施例2に係る含金属副産物の造粒物製造方法では、図15に示すように、前述した含金属副産物およびダストに加えて、凝集材を造粒設備30に装入し、水分を加えて転動造粒することで造粒物を製造する。凝集材としては、PAC(ポリ塩化アルミニウム),固化材(ベントナイト,セメント,生石灰,でん粉等)等、凝集効果を有するものが用いられる。また凝集材の添加割合は、0.5〜5重量%の範囲で設定される。凝集材の添加割合が0.5重量%より少ないと、凝集効果が得られず、また5重量%より多くても凝集効果が飽和する。なお、造粒した造粒物の水分は、4重量%〜15重量%の範囲であった。また、造粒設備30の運転方法は、実施例1と同様である。
【0060】
実施例2のように凝集材を添加することで、造粒設備で造粒された全ての造粒物の内、取扱い性が良好な粒径5mm以上の造粒物ができる。特に、PACおよびベントナイトを用いた場合は、造粒物全体における粒径5mm以上となる造粒物の割合が増加(50%以上)し、取扱い性が更に良好となる。また得られた造粒物は、運搬等に際して崩壊することのない、圧潰強度が0.5MPa以上の値を有する。しかも、転動造粒する造粒設備は、ブリケットマシンに比べてコストは低廉であるから、造粒物の製造コストも低廉に抑えることができる。なお、凝集材を添加した場合は、ダストの混合割合を20重量%より少なくしても造粒は可能であり、含金属副産物の再利用率を高めることができる。また、造粒設備における転動造粒に際し、凝集材として水ガラスを添加すると、造粒物の強度が更に向上する。特に、CaO等の発熱性を有する成分を有する含金属副産物およびダストを原料とする場合は、水ガラスの添加による強度向上の効果が高い。
【0061】
〔実験例2〕
実施例2の含金属副産物の造粒物製造方法について、実験例1で用いたと同じ組成の一般特殊鋼系の含金属副産物およびダストを用い、還元材としてSiC、凝集材としてPACを用いると共に、水分を10重量%で混合する前提で、図16に示す混合割合とした第2発明例1および第2発明例2の原料を転動造粒した造粒物につき、製造された造粒物全体に対する粒径5mm以上の造粒物の割合および圧潰強度を測定した結果を、図17に示す。また凝集材として、ベントナイトを用いた第2発明例3、セメントを用いた第2発明例4、生石灰を用いた第2発明例5およびでん粉を用いた第2発明例6の各実験結果を、図17に示す。但し、第2発明例3〜6の各素材の混合割合は、図16に示す。なお、図17に示す各例の実験結果において、棒グラフで示す粒径が5mm以上のもののうち、10mmより大きい粒径の割合部分にハッチングを付した。また、圧潰強度は、実験例1と同じ方法で測定した。
【0062】
更に、実験例1で用いたと同じ組成のSUS系の含金属副産物およびダストを用い、含金属副産物を45重量%、ダストを45重量%、SiCを10重量%、凝集材としてPACを0.5重量%で配合した第2発明例7の造粒物について、製造された造粒物全体に対する粒径5mm以上の造粒物の割合および圧潰強度を測定した結果を、図17に示す。更にまた、第2発明例と同じ一般鋼系の含金属副産物、ダストおよび還元材(配合割合は図16参照)を用い、凝集材を添加しない比較例3および4の造粒物を製造し、製造された造粒物全体に対する粒径5mm以上の造粒物の割合および圧潰強度を測定した結果を、図17に示す。
【0063】
実験例2から、含金属副産物およびダストの材質が一般鋼系またはSUS系の何れの場合も、凝集材を添加することで、粒径5mm以上の造粒物が得られ、また圧潰強度も、運搬等に際して崩壊することのない0.5MPa以上の高い値が得られた。また、含金属副産物、ダストおよびSiCの配合割合を同じとして、凝集材(PAC)を添加した第2発明例2と、添加しない比較例4との比較から、凝集材を添加することで、粒径5mm以上の造粒物全体における粒径10mm以上の造粒物の割合が多くなることが確認された。なお、凝集材については、ダストの混合割合を20重量%より多くした場合では、PACやベントナイトを用いることで、粒径5mm以上の造粒物の割合を50%以上とし得ることが確認され、またベントナイトに比べてPACの方が少ない使用量で充分な効果が得られ、材料費コストを低減し得る効果が期待できる。
【0064】
前述した実施例は、更に以下の如く変更を行なうことも可能である。
(1)実施例では、造粒設備で形成した造粒物および造粒物に至っていない未造粒物を整粒設備で成長させたが、整粒設備を省くこともできる。
(2)実施例の整粒設備は、両端面に開口部を夫々設けたが、造粒物の取出し側の開口部は、他方の側端面側に偏倚した位置の周面(側部)に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の好適な実施例1および2に係る含金属副産物の造粒物製造方法に用いられる造粒設備を備えた再資源化プラントを示す概略平面図である。
【図2】図1で示す造粒設備を示す平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図2で示す造粒設備の制御ブロック図である。
【図5】図3で示す造粒設備において、ブレードを拡大して示す側面図であって、(a)は正方向に回転した場合であり、(b)は逆方向に回転した場合を示す。
【図6】ロータの羽根を拡大して示す図2のB−B線断面図である。
【図7】図1で示す整粒設備を一部破断して示す側面図である。
【図8】図7のC−C線断面図である。
【図9】図7で示す整粒設備の制御ブロック図である。
【図10】実施例1に係る含金属副産物の造粒物製造方法を説明する概略図である。
【図11】実験例1における各例の混合割合を示す図である。
【図12】実験例1におけるダストの混合割合と、造粒物全体に対する粒径5mm以上の造粒物の割合との関係を示すグラフ図である。
【図13】実験例1におけるダストの混合割合と圧潰強度との関係を示すグラフ図である。
【図14】実験例1におけるダストの混合割合と落下強度との関係を示すグラフ図である。
【図15】実施例2に係る含金属副産物の造粒物製造方法を説明する概略図である。
【図16】実験例2における各例の混合割合を示す図である。
【図17】実験例2における各例の実験結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0066】
32 処理槽,32c 内底面(底面),38 計量手段,52 ブレード,
52a 一側部,52b 他側部,56 ロータ,68 制御手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材製造工程で発生した含金属副産物と、ダストとを混合し、ダストを20重量%以上包含すると共に、水分率が4重量%〜15重量%の範囲にある混合物を転動造粒することで、造粒物を製造する
ことを特徴とする含金属副産物の造粒物製造方法。
【請求項2】
鋼材製造工程で発生した含金属副産物と、ダストと、凝集材とを混合し、水分率が4重量%〜15重量%の範囲にある混合物を転動造粒することで、造粒物を製造する
ことを特徴とする含金属副産物の造粒物製造方法。
【請求項3】
前記含金属副産物は、1mm以上の粒径の割合が70重量%以上の範囲にある請求項1または2記載の含金属副産物の造粒物製造方法。
【請求項4】
前記ダストは、0.5mm以下の粒径の割合が95重量%以上の範囲にある請求項1〜3の何れか一項に記載の含金属副産物の造粒物製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の含金属副産物の造粒物製造方法に用いられる造粒設備であって、
鋼材製造工程で発生する含金属副産物、ダストおよび添加材や水が装入される円筒形状の処理槽(32)と、
前記処理槽(32)の半径方向に延在する一側部(52a)から該一側部(52a)に対向する他側部(52b)へ向けて処理槽(32)の底面(32c)から離間する傾斜姿勢で該処理槽(32)の内部に設置され、処理槽(32)の中心を軸として前記一側部(52a)を回転方向前側とした正方向と前記他側部(52b)を回転方向前側とした逆方向とに回転するブレード(52)と、
前記ブレード(52)と共に前記処理槽(32)の中心を軸として該処理槽(32)の内部を正逆方向に回転しつつ、該ブレード(52)の正方向と同一方向に自転するロータ(56)と、
前記ロータ(56)の自転速度、前記ブレード(52)の回転方向および回転速度を制御する制御手段(68)とを備え、
前記制御手段(68)は、
造粒初期段階で、前記ブレード(52)を第1回転速度で逆方向に回転すると共に、前記ロータ(56)を第1自転速度で回転し、
造粒中期段階で、前記ブレード(52)を前記第1回転速度より高速に設定した第2回転速度で正方向に回転すると共に、前記ロータ(56)を前記第1自転速度より低速に設定した第2自転速度で回転し、
造粒終期段階で、前記ブレード(52)を前記第2回転速度で正方向に回転すると共に、前記ロータ(56)を前記第2自転速度より低速に設定した第3自転速度で回転するように制御する
ことを特徴とする含金属副産物の造粒物製造方法に用いられる造粒設備。
【請求項6】
前記処理槽(32)の前記含金属副産物が接触する部分、前記ブレード(52)および前記ロータ(56)を耐摩耗性金属材料で構成した請求項5記載の含金属副産物の造粒物製造方法に用いられる造粒設備。
【請求項1】
鋼材製造工程で発生した含金属副産物と、ダストとを混合し、ダストを20重量%以上包含すると共に、水分率が4重量%〜15重量%の範囲にある混合物を転動造粒することで、造粒物を製造する
ことを特徴とする含金属副産物の造粒物製造方法。
【請求項2】
鋼材製造工程で発生した含金属副産物と、ダストと、凝集材とを混合し、水分率が4重量%〜15重量%の範囲にある混合物を転動造粒することで、造粒物を製造する
ことを特徴とする含金属副産物の造粒物製造方法。
【請求項3】
前記含金属副産物は、1mm以上の粒径の割合が70重量%以上の範囲にある請求項1または2記載の含金属副産物の造粒物製造方法。
【請求項4】
前記ダストは、0.5mm以下の粒径の割合が95重量%以上の範囲にある請求項1〜3の何れか一項に記載の含金属副産物の造粒物製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の含金属副産物の造粒物製造方法に用いられる造粒設備であって、
鋼材製造工程で発生する含金属副産物、ダストおよび添加材や水が装入される円筒形状の処理槽(32)と、
前記処理槽(32)の半径方向に延在する一側部(52a)から該一側部(52a)に対向する他側部(52b)へ向けて処理槽(32)の底面(32c)から離間する傾斜姿勢で該処理槽(32)の内部に設置され、処理槽(32)の中心を軸として前記一側部(52a)を回転方向前側とした正方向と前記他側部(52b)を回転方向前側とした逆方向とに回転するブレード(52)と、
前記ブレード(52)と共に前記処理槽(32)の中心を軸として該処理槽(32)の内部を正逆方向に回転しつつ、該ブレード(52)の正方向と同一方向に自転するロータ(56)と、
前記ロータ(56)の自転速度、前記ブレード(52)の回転方向および回転速度を制御する制御手段(68)とを備え、
前記制御手段(68)は、
造粒初期段階で、前記ブレード(52)を第1回転速度で逆方向に回転すると共に、前記ロータ(56)を第1自転速度で回転し、
造粒中期段階で、前記ブレード(52)を前記第1回転速度より高速に設定した第2回転速度で正方向に回転すると共に、前記ロータ(56)を前記第1自転速度より低速に設定した第2自転速度で回転し、
造粒終期段階で、前記ブレード(52)を前記第2回転速度で正方向に回転すると共に、前記ロータ(56)を前記第2自転速度より低速に設定した第3自転速度で回転するように制御する
ことを特徴とする含金属副産物の造粒物製造方法に用いられる造粒設備。
【請求項6】
前記処理槽(32)の前記含金属副産物が接触する部分、前記ブレード(52)および前記ロータ(56)を耐摩耗性金属材料で構成した請求項5記載の含金属副産物の造粒物製造方法に用いられる造粒設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
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【図5】
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【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−7645(P2009−7645A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170992(P2007−170992)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【出願人】(000154901)株式会社北川鉄工所 (63)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【出願人】(000154901)株式会社北川鉄工所 (63)
【Fターム(参考)】
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