説明

周波数コムを有する同期方式の干渉計

本発明は、1)第1周波数コムと、2)干渉を生成するべく、第1周波数コムと相互作用するべく構成された第2周波数コムと、3)2つのコムの周波数成分中の周波数成分のサブセットの間においてうなり信号を隔離する手段であって、この周波数成分のサブセットは、好ましくは、第1周波数コムの単一ライン及び第2周波数コムの単一ラインであるが、これは、必須ではない、手段と、4)このうなり信号を監視し、且つ、この信号を第1及び第2周波数コムの周波数成分全体の間のうなり干渉信号を記録する取得ユニット装置用のトリガとして又はクロックとして使用する手段と、を有する干渉計に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉計の分野に関する。本発明は、干渉計と、この干渉計において干渉を計測する方法と、に関する。
【0002】
本発明は、更に詳しくは、1)第1周波数コムと、2)干渉を生成するべく、第1周波数コムと相互作用するべく適合された第2周波数コムと、3)2つのコムの周波数成分中の周波数成分のサブセットの間のうなり信号を隔離する手段であって、この周波数成分のサブセットは、好ましくは、第1周波数コムの単一ライン及び第2周波数コムの単一ラインであるが、これは、必須ではない、手段と、このうなり信号を監視すると共に、第1及び第2周波数コムの周波数成分全体の間のうなり干渉信号を記録する装置のためのトリガとして又はクロックとして使用する手段と、を有する干渉計に関する。
【0003】
従って、本発明は、縞の変動の監視に基づいたトリガ方式の改善された干渉計を提供する。本明細書に記述されている同期方法は、2つのコムの狭帯域部分におけるうなり周波数の判定と、時間に伴うコムの不安定性とは無関係に新しいグリッドによる干渉分光信号のサンプリングを可能にするトリガ又はクロック方式におけるその知識の使用法と、に基づいている。
【0004】
本発明の第2の態様によれば、分光吸収及び分散シグネチャを具備するサンプルを分析する干渉分光法が提供される。この干渉分光法は、1)検討対象のサンプルを精査する第1周波数コムと、2)干渉を生成するべく、第1周波数コムと相互作用するべく適合された第2周波数コムであって、この第2コムは、サンプルを精査してもよく、或いは、精査しなくてもよい、第2周波数コムと、2つのコムの周波数成分中の周波数成分のサブセットの間のうなり信号を隔離する手段であって、この周波数成分のサブセットは、好ましくは、第1周波数コムの単一ライン及び第2周波数コムの単一ラインであるが、これは必須ではない、手段と、4)このうなり信号を時間の関数として監視すると共に、この信号を第1及び第2周波数コムの周波数成分全体の間のうなり干渉信号を記録する装置のためのトリガとして又はクロックとして使用する手段と、5)4)に記述されている信号をクロックとして又はトリガとして使用し、第1及び第2周波数コムの周波数成分全体の間のうなり干渉信号を記録する手段と、を有する。
【背景技術】
【0005】
光周波数コム(FC)は、位相コヒーレントな等距離のレーザーラインから構成された光スペクトルである。周波数コムについては、当技術分野において、例えば、R. Holzwarth、J. Reichert、T. Udem、T.W. Hanschの「Generation of stabilized, ultra−short light pulses and the use thereof for synthesizing optical frequencies」という名称の2004年の特許文献1、又はR. Holzwarth、T. Udem、T.W. Hanschの「Method and device for producing radio frequency waves」という名称の2006年の特許文献2、又は非特許文献1から周知であり、且つ、周波数の計測において最も頻繁に使用されている。
【0006】
又、2つの周波数コムに基づいた干渉計についても、当技術分野においては、例えば、非特許文献2又は非特許文献3から周知である。これらのシステムにおいては、わずかに異なる繰返しレートを有する2つの類似した周波数コムの間の時間ドメインの干渉パターンを記録している。要点は、現実的な計測を実現するべく、対象のスペクトルを特徴付けている光周波数のダウンコンバージョンを実行するというものである。単一の検出器を使用し、一般的には、時間の関数として、インターフェログラムと呼ばれるデータを記録可能である。分光を目的として、このインターフェログラムをフーリエ変換可能である。この干渉計は、可動部品を伴わないことから、非常に高速の取得時間をもたらすことができる。
【0007】
01及びf02が第1及び第2周波数コムの個別のオフセットであり、frep1及びfrep2が第1及び第2周波数コムの個別の繰返しレートであり、且つ、nが、通常、105〜106のレンジの整数であるとした際に、第1コムが次式のように表され、
01+n.frep1
且つ、第2コムが次式のように表される場合には、
02+n.frep2
である。これらのうなり信号は、次式のとおりである。
【数1】

これは、コムの繰返しレート及びオフセットの差にのみ依存しており、これらの差は、記録シーケンスの時間スケールにおいて一定であることを要する。
【0008】
光周波数のダウンコンバージョンは、2つの類似したFCの間の干渉から得られる。以下においては、これらの2つのコムをFC1とFC2と呼ぶ。これらは、互いの間に次式の関係を有するわずかに異なる繰返しレート周波数frep1及びfrep2を具備している。
rep1=frep2(1+a);0<a<<1
【0009】
それぞれのコム成分f1,n及びf2,nの間のうなり差分周波数bnは、次式によって付与される。
n=f1,n−f2,n=anfrep2+(f01−f02
これは、aがダウンコンバージョン係数であることを示している。換言すれば、通常は無線周波数ドメインにおいて発生する2つのコムからのラインのペアの間のうなり信号は、光スペクトルのダウンコンバージョンされたイメージを提供する。エイリアシングを回避するべく、aは、a<frep2/2となるように選択しなければならない。但し、これは、可動ミラーによって誘発されるダウンコンバージョン係数よりも3桁だけ大きい。更には、無線周波数ドメインにおけるコヒーレントな信号のヘテロダイン検出に起因し、効率的な技術的雑音の除去を伴って非常に微弱な信号を検出可能であり、且つ、非コヒーレントな光源によるものとは異なり、Co添加(co−additions)が不要である。この方式は、多重型であり、従って、単一検出器による広範なスペクトルドメインの同時分析が可能である。逐次法又はマルチチャネル法と比較した際の計測時間の大幅な低減という利益と共に、この多重型の方式は、広範なスペクトルドメインの観察という固有の利点を具備している。
【0010】
しかしながら、これらの既知のシステムにおいては、2つのコムの残留不安定性を考慮していない。コムをロックした際にも、パラメータfrep1、frep2、f01、f02は、短時間スケール(数μs以上)において、わずかな変動に遭遇し、これらの変動は、106分の1未満であってよい。これらの残留不安定性に起因し、2つのコムの繰返しレートの間の差が変動することがあり、この結果、干渉パターンサンプリングの誤差がもたらされる。このような干渉計においては、実際に、計測時間にわたって、frep2及び(f01−f02)を一定に維持する必要があり、適宜、両方の周波数コムの繰返しレートの安定性と、キャリア−エンベロープオフセット周波数の安定性と、に対する非常に大きな制約を伴っている。換言すれば、非常に短時間でありうる計測時間内において、2つの独立したコム供給源の間の相対的なコヒーレンスを強制的に実現しなければならない。この制約は、厳しいものであり、この結果、この方法の単純な手段による実際的な実装が妨げられている。非特許文献4に示されているように、最新の基準空洞を使用してコムをロックすることにより、優れた結果を得ることは可能であるが、このようなシステムは、周波数計測の最新の且つ高価なツールに関する広範な知識を必要としており、従って、一般的な分光法の実験室、産業界、又は現場での計測において使用することは不可能である。この2つのコムの繰返しレート及びキャリア−エンベロープオフセットの差に関する安定性の制約は、コム供給源のドップラーシフトされた複製が、コムの安定性とは無関係に、干渉計の可動ミラーの適切な制御によって生成されるマイケルソン干渉計を伴うフーリエ変換分光法(FTS)のものとは異なる。又、これは、無線周波数又は光クロックとのコムの位相コヒーレンスが長い時間スケール(数秒)にわたって必要とされる計測における周波数コムの使用法とも異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,785,303号明細書
【特許文献2】米国特許第7,026,594号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「Optical frequency metrology」、T. Udem、R. Holzwarth、T.W. Hansch著、Nature 416、233(2002)
【非特許文献2】「Time−Domain mid−infrared frequency comb spectrometer」、Keilmann他著、Opt. Lett. 29、1542〜1544頁(2004)
【非特許文献3】「Spectrometry with frequency combs」、Schiller, S.著、Opt. Lett. 27、766〜768頁(2002)
【非特許文献4】「Coherent multiheterodyne spectroscopy using stabilized optical frequency combs」、I. Coddington、W. C. Swann、及びN. R.Newbury著、Physical Review Letters 100、013902(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、コムの不安定性を補償する2つの周波数コムに基づいた改善された干渉計を提供することにある。換言すれば、提案されている装置及び方法は、時間の関数として変化するそのライン位置を少なくとも1つのコムが具備する2つの周波数コムの間の干渉の計測を可能にする。提案されている装置は、従来技術の精度及び計測時間の制限を克服するべく、2つの周波数コムの間におけるマッピングの変動の監視を許容する。この結果、周波数コムの安定性に対する制約が低減される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、干渉計は、第1周波数コム生成器と、干渉を生成するべく、第1周波数コム信号と相互作用するべく適合された第2周波数コム生成器と、−コムの不安定性について同期化されたクロックとして機能するか又は干渉プロセスのサンプリングのトリガを可能にするシステムとを有する。
【0015】
又、本発明は、周波数コムフーリエ変換分光法(FC−FTS)にも関係し、且つ、サンプルのスペクトルを計測する分光装置にも関係しており、この装置は、前項までの請求項中のいずれか一項記載の干渉計を有し、前述の第1周波数コム生成器及び前述の第2周波数コム生成器の中の少なくとも1つのものは、サンプルと相互作用するべく適合されている。
【0016】
添付図面を参照し、本発明の好適な実施例について詳細に説明することとする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】フーリエ変換分光法用の吸収分光計において適合された周波数コム干渉計の概略図を示す。
【図2】(A)及び(B)は、それぞれ、2つの光周波数コムスペクトルの一例と、例示用の周波数コム供給源の対応するうなりスペクトルとを示すプロットである。
【図3】本発明によるデータ取得のトリガを可能にするシステムの概念図を示す。
【図4】本発明によるデータ取得用のクロックとして機能するシステムの概念図を示す。
【図5】コム同期化うなり信号のスペクトルフィルタリングをCWレーザーの支援によって実行する本発明による干渉計の詳細な実施例を示す。
【図6】本発明において提案されている方法の適用を伴うことなしに通常得られる歪んだスペクトルを示す。
【図7】図4の原理の特定の実施例による、本発明による同期方法を使用した干渉分光システムを示すブロックダイアグラムを示す。
【図8】図7の干渉分光システムを使用して記録された歪みを伴わないスペクトルを示す。
【図9】コム同期うなり信号のスペクトルフィルタリングを受動型フィルタによって実行する本発明による干渉計の詳細な実施例を示す。
【図10A】サンプルの吸収及び/又は分散を精査する分光計として本発明の干渉計を使用するための光学レイアウトの一例を示すプロットである。
【図10B】サンプルの吸収及び/又は分散を精査する分光計として本発明の干渉計を使用するための光学レイアウトの一例を示すプロットである。
【図10C】サンプルの吸収及び/又は分散を精査する分光計として本発明の干渉計を使用するための光学レイアウトの一例を示すプロットである。
【図11】干渉計によって得られたインターフェログラムを示す。
【図12】差動計測を伴う本発明の干渉計の一実施例を示す。
【図13】(A)〜(D)は、速度変調用の本発明の一態様を示す。
【図14】Zeeman分光法用の本発明の一態様を示す。
【図15】偏光変調を伴う本発明の一態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
関連出願に対する参照
本出願は、2008年7月25日付けで出願された米国仮特許出願第61/083620号の利益を主張するものであり、この内容は、本引用により、そのすべてが本開示に包含される。
添付図面を参照し、本発明の好適な実施例について詳細に説明することとするが、添付図面においては、類似の参照符号によって類似の要素を示している。本明細書に提示されている同期方法を有する干渉計については、周波数コムフーリエ変換分光法及びすべての関係する計測法(ハイパースペクトル撮像、顕微鏡検査法、振動円2色法、減衰全反射、Zeeman変調、速度変調、選択的検出法、時間分解分光法など)の例示用の例を検討することによって十分に理解することが可能であるが、この同期方法を有する干渉計は、本明細書に記述されているアプリケーション以外にも使用可能であることに留意されたい。例えば、本明細書に記述されている同期法を有する干渉計は、OCT(Optical Coherence Tomography)、干渉測長、LIDAR(Light Detection And Ranging)、反射計測法、線形光学サンプリング、電界の間の相互相関計測において使用するべく適合可能である。本明細書に具体的に記述されてはいない波面又は振幅再結合に基づいたその他の干渉分光アプリケーションも、この同期方法から利益を享受可能である。
【0019】
当技術分野において知られているように、周波数コムは、スペクトルレンジにわたって規則的に離隔したレーザー単色放射ラインからなるスペクトル供給源である。通常は、フェムト秒レーザーが使用されており、これにより、フェムト秒周波数コム(FFC)が得られる。或いは、この代わりに、トロイダル微小共振器又は光ファイバを含む適切な材料内における4波混合により、コムを生成することも可能である。又、コムは、位相変調された電気光学装置によって生成することも可能である。
【0020】
要すれば、モード同期レーザーを使用する際には、極めて短いパルスが、周期T=l/Vgにおいて、モード同期レーザーから周期的に放射され、ここで、lは、レーザー空洞の長さであり、且つ、Vgは、正味の群速度である。空洞内における分散に起因し、群及び位相速度が異なることになり、この結果、それぞれのパルスのエンベロープのピークとの関係におけるキャリアの位相シフトがもたらされる。周波数ドメインにおいては、スペクトル、即ち、一連の周期的パルスのフーリエ変換は、レーザーモードの櫛歯から構成されており、これらは、パルス繰返し周波数frepだけ離隔している。モード周波数は、fn=nfrep+f0という関係を遵守しており、ここで、nは、整数であり、且つ、f0は、キャリア−エンベロープパルス間位相シフトに起因したものである。現時点においては、コムの出力スペクトルは、1オクターブを超えて伸張可能であり、且つ、frep及びf0の最良の安定化レベルは、完全なグリッドからの1019分の1を上回る逸脱が存在しないようなものになっている。
【0021】
換言すれば、周波数コムは、等距離のラインから構成された光スペクトルである。モード同期レーザーから周波数コムを生成するには、周期性が、パルスのエンベロープに対してのみならず、1つの一定の位相以外に、それらの光学位相を含むパルスの電界の全体に対しても、適用されることが必要である。従って、パルス間におけるコヒーレンスが必要である。
【0022】
図1に示されているように、且つ、それ自体が周知であるように、干渉計1の特定のレイアウトは、周波数コム「周波数コム1」と、周波数コム「周波数コム2」と、を有する。「周波数コム1」は、セル100内に収容されたサンプルを精査する。周波数コム「周波数コム1」及び「周波数コム1」のビームスプリッタ101上における再結合から生成される干渉を検出器102によって計測し、且つ、インターフェログラムをコンピュータ103において計測する。無線周波数ドメインにおいて発生するわずかに異なる繰返しレートを具備した2つのコムからのラインのペアの間のうなり信号は、光スペクトルのダウンコンバージョンされたイメージを提供する。
【0023】
干渉計は、必ずしも、サンプル100を精査する必要はなく、且つ、サンプル100は、存在する場合には、両方のコムと相互作用可能であることに留意されたい。又、振幅再結合の代わりに波面再結合を使用することも可能である。その場合には、ビームスプリッタ101は不要である。
【0024】
本発明によれば、周波数コムFC1及びFC2は、互いの間に次式による関係を有するわずかに異なる繰返しレート周波数frep1及びfrep2を具備する。
rep1=frep2(1+a);0<a<<1
【0025】
本発明によれば、繰返しレート及びキャリア−エンベロープオフセットが安定化されるか又はフリーランニング状態にあるフェムト秒モード同期レーザーにより、周波数コムFC1及びFC2を生成可能である。モード同期レーザーは、非線形光ファイバによって幅を拡張可能であり、且つ、差分/合計周波数生成、高調波生成、及び/又はパラメトリック相互作用などの周波数変換システムに対して結合することも可能である。又、周波数コムFC1及びFC2は、4波混合効果により、又は連続波レーザーによってシーディングされた電気光学装置により、生成することも可能である。
【0026】
本発明による分光計は、前述の図1の干渉計1を有する。1及び2と付番されている(図2(A)に示されている)それぞれのレーザーのスペクトルは、パルス繰返し周波数frep,iだけ離隔したレーザーモードfn,iのコムであり、
n,i=f0,i+nfrep,i
である。ここで、モード同期レーザーに基づいた周波数コムの場合には、i=1又は2であり、整数nは、通常、105〜106の範囲であり、且つ、f0,iは、レーザー空洞内のパルスの群及び位相速度の間の差によって誘発されるキャリア−エンベロープオフセット周波数である。繰返し周波数は、一般に、無線周波数ドメインに位置する(この例においては、これらは、100MHzに近接しており、frep,1−frep,2は、自由スペクトルレンジに応じて、10Hz〜20kHzの範囲である)。1つのレーザーが吸収サンプルを精査し(図1)、且つ、両方のビームがビームミキサ上において合成される。高速フォトダイオード上において記録されたそれらのうなり信号lを増幅し、且つ、パーソナルコンピュータ上において高分解能デジタイザを使用してサンプリングする。
【0027】
図2(B)に示されているそれぞれのコム成分f1,n及びf2,nの間のうなり差分周波数bnは、次式によって付与される。
n=f1,n−f2,n=nafrep2+(f01−f02
この式は、aがダウンコンバージョン係数であることを示している。
【0028】
従って、光検出器上において記録されるインターフェログラムは、次のように記述可能である。
【数2】

ここで、Anは、サンプルの吸収によって減衰した2つのレーザーの電界の振幅の積である。マイケルソン干渉計において発生するものと同様に、光スペクトルの周波数fn,i=f0,i+nfrep,iが、f0,1−f0,2+n(frep,1−frep,2)にダウンコンバージョンされる。但し、可動部品の不存在に起因し、エリアジングによって制限されるダウンコンバージョンは、マイケルソンに基づいたFTSにおけるような可聴レンジにではなく、0〜frep,i/2の無線周波数ドメインに結び付くことになる。この結果、記録時間の大幅な低減がもたらされる。次いで、信号I(t)をフーリエ変換してスペクトルを明らかにするが、光分解能は、計測時間が長いほど、良好になる。干渉分光信号は、2つのレーザーからのフェムト秒パルスが一致した際に、1/δ=1(frep,1−frep,2)ごとに発生する一連の周期的な大きなバーストを示す。複数のこのようなバーストを含む時間的シーケンスをフーリエ変換することにより、コムラインが分解される。コムパラメータ(frep1、frep2、f01、f02)を無線周波数カウンタによって簡単に計測可能であることから、この後に、光絶対周波数スケールを容易に取得可能である。又、スペクトル内に存在している既知の分子又は原子ラインを使用し、光周波数軸をリスケーリングすることも可能である。
【0029】
うなり信号の(数μ秒ほどに短いものであってよい)計測時間において、コムの中の1つのものの少なくとも1つのパラメータ(frep1、frep2、f01、f02)が、時間の関数として、わずかに変動可能である。換言すれば、bnは、時間の関数である。従って、図2(B)は、ダウンコンバージョンされたスペクトルの瞬間的なイメージを提供しているに過ぎない。繰り返しレートにおける変動は、高調波指数nによって増幅されるため、実際には、コムの繰返しレート(frep1、frep2)の変動は、キャリア−エンベロープオフセット周波数(f01、f02)の変動よりも格段に厄介である。従って、一定の時間インターバルにおけるインターフェログラムのサンプリングは、歪んだ情報をもたらすことになる。
【0030】
本発明の主要な部分は、最も厄介なコムの変動に同期した方式においてインターフェログラムをサンプリングする簡単な方法を提供している。新しいサンプリンググリッドが提供される。考え方は、干渉するコムから2つの個別のラインの間のうなり信号を隔離し、且つ、コムのラインの位置が無視可能な方式で変動する場合には正弦波である結果的に得られた信号を、2つのコム全体の間の干渉分光信号のサンプリングプロセスのためのトリガとして(同期うなり信号のゼロ交差をトリガとして使用する特別な例示用の実施例における図3)又はクロックとして(図4)使用するというステップを有する。尚、コムラインが十分に隔離されない場合にも、即ち、同期うなり信号がラインの複数のペアのうなり信号を有する場合にも、同期プロセスは、依然として機能する。ただし、時間シーケンスにおいてより制限される、即ち、フーリエ変換分光法の分解能がより制限される。
【0031】
図5に示されている第1実施例によれば、同期装置は、まず、それぞれのコムから単一ラインを隔離するステップを有する。「周波数コム1」によって供給される光学信号の一部分が、ビームスプリッタの支援により、高速光検出器501に送られる一方で、信号の大部分は、干渉分光計測のために使用される(いくつかの例について後述する)。連続波レーザー503のビームも、同一の検出器501に入射している。連続波レーザー503は、コムと同一のスペクトル領域内において、周波数fcwにおいて放射する。これは、基準に対してロックすることも可能であり、又はフリーランニング状態にあってもよく、且つ、主には、そのスペクトル純度及びその周波数安定性により、干渉分光計測の最大サンプリング持続時間が決定される。周波数コム1とcwレーザーの間のうなり信号が、部分的に無線周波数及びマイクロ波ドメイン内に位置するダウンコンバージョンされたモードのコムである。光検出器501の帯域及び更なる電子フィルタリング502の適切な選択肢により、(nfrep1+f01−fcw)と表現可能である単一コムラインとcwレーザーの間のうなり信号を隔離可能である。同一のcwレーザー503との周波数コム2の単一ラインの電気うなり信号(mfrep2+f02−fcw)を隔離するべく、光検出器504及び電子フィルタ505と共に、同一の手順を周波数コム2に対して適用する。cwレーザーの寄与分を除去すると共に2つのコムラインの間のクロックうなり信号(nfrep1+f01−mfrep2−f02)を提供するべく、本明細書に記述されているように得られた2つのうなり信号を電子ミキサ506によって混合する。n及びmは、好ましくは、(nfrep1+f01−mfrep2−f02)が、Max(frep1,frep2)であるナイキスト基準によって強制されるサンプリング周波数を上回るように、選択される。時間に伴って変化する周期を具備するこの正弦波の特別なマーカー(例えば、ゼロ交差であるが、これに限定されるものではない)を使用し、取得ユニット508における干渉分光信号のデータ取得をトリガする。干渉分光信号は、周波数コム1及び2のスペクトルの全体(又は、フィルタリングされた部分)の間のうなり信号から到来する。これを高速光検出器507上において計測し、且つ、取得ユニット508上において監視する。電子フィルタ及び増幅器を507と508の間に挿入し、信号対雑音比を改善可能である。或いは、この代わりに、図5に示されているように、この(nfrep1+f01−mfrep2−f02)周波数信号は、取得ユニット508に対するクロックとして機能することも可能である。取得ユニット508は、例えば、パーソナルコンピュータに搭載された高速デジタイザであってよい。次いで、データポイントを、例えば、コンピュータのハードドライブ上に保存するか、又はフィールドプログラマブルゲートアレイ上においてコーディングするか、又は保存の前に直接的にフーリエ変換する。
【0032】
吸収サンプルのフーリエ分光法を目的としたこの実施例の特定の例によれば、2つのErドープファイバレーザーにより、約100MHzの繰返しレートにおいて、且つ、20mWの出力パワーにおいて、パルスを放射している。2つのコムの繰返しレートの間の差を150Hzに等しい値となるように設定する。それぞれのコムの繰返しレートを水晶発振器に対して安定化させるが、それぞれのコムのキャリア−エンベロープオフセットは、安定化させない。2つのコムを50−50ビームミキサによって再合成し、且つ、後述するように、干渉計の2つの出力を改善された計測ダイナミクスに対して計測する。信号を自家製の電子回路及び取得システムによって増幅及びデジタル化する。図6は、本発明を使用することなしに得られたスペクトルを示す。位相誤差により、ラインが大きく歪んでいる。1557.4nmで放射するフリーランニング型の連続波Erドープファイバレーザーは、図5に示されている原理に基づいて、図7に示されている詳細な方式に従って、周波数コムのそれぞれのものとの間においてうなりを生成する。図7においては、cw型のErドープファイバレーザーを光学的に隔離し、且つ、そのビームを、50/50ファイバカプラの支援により、2つの部分に分割している。周波数コム1の出力におけるビームの一部分により、ガス相のアセチレンからなるサンプルを精査している。これが検出器上において周波数コム2の出力におけるビームの一部分との間においてうなりを生成し、且つ、このうなり信号を取得ユニットを使用して監視する。取得ユニットは、干渉分光信号をフィルタリング及び増幅するためのデジタイザ及び適切な電子回路から構成可能である。周波数コム1のビームの別の部分は、うなり検出ユニットに送付され、そこで、そのラインは、cwレーザーからのビームとの間においてうなりを生成する。うなり検出ユニットは、2つの光ビームの間の無線周波数又はマイクロ波うなり信号を計測するための手段である。これは、高速光検出器と、例えば、1つ又は両方の光ビームを均衡させるか、偏光させるか、又はフィルタリングするためのオプティクスと、生成された電気信号をフィルタリングするための電子回路と、から構成される。このうなり検出ユニットの出力において、周波数コム1の単一ラインとcwレーザーの間のうなり信号に対応する42MHzの周波数における電子信号を生成し、フィルタリングし、且つ、増幅し、ミキサに対して送付する。同様の方式により、周波数コム2の1つのラインとcwレーザーの間のうなり信号を118MHzの周波数において生成し、且つ、ミキサの第2入力に向かって送付する。それぞれのコムからの2つの個別のラインの間のうなり信号は、結果的に、76MHzの周波数においてミキサの出力において供給される。これは、フィルタリングされ、増幅され、且つ、取得ユニットを使用した干渉分光信号のサンプリングのためのクロックとして使用される。図8は、取得ユニットとして使用される16ビットの180Mサンプル/秒のデジタイザ用のクロックとしてこの76MHz信号を使用した際に計測されたスペクトルを示す。図8のスペクトルにおいては、歪みが顕著ではない。
【0033】
代替構成を利用し、2つのコムの間のクロックうなり信号を生成可能である。例えば、第2実施例は、同期方式において、cwレーザーを使用する代わりに、光学フィルタリングに基づいたものであってよい。図9に示されているように、それぞれのコムを光学フィルタ又はファイバ・ブラッグ格子又はファブリーペロー空洞又はこれらの任意の組合せによって周波数フィルタリング可能である。2つのフィルタリングされたコムは、高速フォトダイオード上においてうなりを生成する。適切な電子フィルタリングの後に、クロックうなり信号(nfrep1+f01−mfrep2−f02)を取得ユニット用のクロック又はトリガとして使用する。
【0034】
本発明の更なる態様については後述する。これらの態様は、干渉計の前述の第1及び第2実施例との組合せにおいて使用することも可能であり、或いは、単独で使用することも可能である。
【0035】
本発明の前述の第1及び第2実施例は、吸収サンプルの周波数コムフーリエ変換分光法を目的とした特定の例示用の実施例に従って使用可能である。図10に示されているように、いくつかの光学構成を実装可能である。図10(A)においては、周波数コムFC1のみがサンプル1000と相互作用している。サンプル1000は、直接的に精査することも可能であり、或いは、シングルパスセルの内部に、又はマルチパスセルの内部に、又はコムFC1と共振する高フィネス空洞の内部に挿入することも可能である。コムFC1及びFC2からの2つのビームをビームコンバイナ上において再合成する。ビームコンバイナの1つ又は両方の出力を使用し、高速光検出器上において干渉分光信号を計測可能である。これらの検出器は、単純な光検出器(フォトダイオード、ボロメータ、アンテナ)から、或いは、光検出器に結合された、例えば、周波数増倍装置などの非線形周波数コンバータから構成可能である。これらの検出器は、マイクロフォンであってもよい。図10(B)においては、周波数コムFC1及びFC2の両方がサンプル1000と相互作用している。同時吸収及び分散計測の場合には、干渉計の光学レイアウトを図10(C)に示されているように実装可能である。2つの周波数コムFC1及びFC2は、わずかに異なるライン間隔を具備している。これらのコムの中の1つのものであるFC1は、セルを透過し、且つ、第2コムに対してヘテロダイン処理され、この結果、コムFC1のそれぞれのラインが経験した吸収及び分散に関する情報を含むダウンコンバージョンされた無線周波数コムがもたらされる。適切な光学系によってコムビームを2つの干渉計に伝達する。サンプルを精査する干渉計は、セルを収容すると共にサンプルのインターフェログラムI1(t)をもたらし、サンプルを伴わない基準として機能している干渉計は、正規化インターフェログラム(I2(t))を提供する。2つのインターフェログラム(サンプルに伴うもの及び伴わないもの)を同時に計測し、且つ、複素フーリエ変換によって演算する。これらの2つのスペクトルの複素数比の位相及び要素は、それぞれ、検出された放射に対してサンプルによって印加された位相シフト及び減衰を付与し、これにより、媒質の光学定数の完全な特徴付け、その屈折率、及び吸収係数に対するアクセスが提供される。或いは、この代わりに、2つのインターフェログラムI1(t)及びI2(t)の間の差をデジタル化の前に適切な差動増幅器によって直接的に計測することも可能である。この場合には、改善された信号対雑音比により、サンプルのスペクトルシグネチャのインターフェログラムのみが計測される。
【0036】
周波数コムは、サンプルと相互作用し、且つ、吸収及び分散に起因した減衰及び位相シフトを経験する。この相互作用は、exp(−δ(ω)−iφ(ω))と表現可能であり、ここで、δは、振幅減衰であり、且つ、φは、位相シフトである。δi,n及びφi,nが、周波数f0,i+nfrep,iにおいてコムi(i=1又は2)が経験するそれぞれの成分を表すという表記法を採用する。図10(A)に示されているように、コムFC1のみがサンプル1000と相互作用している。インターフェログラムIの表現は、次の興味深い項を含んでいる。
【数3】

【0037】
式(1)の第1の項は、周波数f0,1+nfrep,1におけるスペクトル情報が周波数((f0,1−f0,2)+anfrep2)においてダウンコンバージョンされることを示している。このインターフェログラムは、従来のFTSからのインターフェログラムに類似している。周波数frep,2における信号の同期検出の実行は、追加情報をもたらさないことから、興味深いものではない。
【0038】
図10(B)に示されているように、コムFC1及びFC2の両方がサンプル1000と相互作用することも可能である。インターフェログラムの表現は、次の興味深い項を含んでいる。
【数4】

【0039】
式(2)の第1行は、同期検出を伴うことなしに、インターフェログラムの直接的な検出によって計測された量である。式(1)のインターフェログラムから得られたものと比較すれば、コムFC1及びFC2の両方がサンプルと相互作用を経験しているため、この検出は、相対的に高感度であるが、周波数依存性を有することから、即ち、周波数の増大に伴って、2つのコムの周波数の間の差が増大していることから、計測ラインの形状が、多少複雑になっている。又、同位相及び直交位相検出に起因して吸収及び分散を取得可能であるため、frep,2周波数における同期検出は興味深い。
【0040】
インターフェログラムは、その最大及び最小サンプルの間において約106の比率を提示可能である。時間の関数としての干渉分光信号の重要な減少が、図11に示されているインターフェログラムに示されている。従って、フーリエ変換分光法と関連した、特に高スペクトル分解能におけるものであるが、これに限定されはしない、主要な問題点の1つは、計測値の限定されたダイナミックレンジに起因している。周波数コムフーリエ変換分光法においては、直流成分I0は、もはや、定数ではなく、パルス繰返しレートのフーリエ成分にリンクされた時間tの関数I0(t)となる。従って、この結果、サンプリングがひどく劣化する可能性があり、これを電子フィルタリングによって十分に除去することは困難である。重要な技術的考慮事項は、現時点において稼働している大部分の高速取得ボードが、16ビットの、即ち、655538個の異なる計測レベルの、限れたダイナミックレンジしか提供しておらず、これが本質的にADCコンバータを特徴付けているという点にある。従って、記録手順において、市販の製品を直接的に使用することはできない。
【0041】
特定の例示用の実施例は、いくつかの要点の組合せであるダイナミックレンジの解決策を提供している。図12に示されているように、変調されていないバックグランドを除去し、且つ、インターフェログラムの変調された部分のみを得るべく、干渉計の2つの出力A及びBにおいて供給された高速検出器信号IA及びIBを均衡させ、且つ、減算する。実際には、差分信号(GAA−GBB)を極小化させることにより、それぞれIA及びIBに対して適用される2つの電子利得GA及びGBを実験の前に判定しておく。これらの利得は、実験において固定される。干渉分光信号を取得ユニットの最大入力値に対してできる限り適合させるべく、時間に応じて、異なる電子利得GTを差分信号に対して適用する。
【0042】
利得は、リアルタイムにスイッチング可能であり、或いは、いくつかの記録チャネルを帰納的な選択のために使用可能である。或いは、この代わりに、コンピュータプログラムにより、既定の方式によって利得を変化させる。この後者の場合には、最良の計測サンプルがコンピュータプログラムによって帰納的に選択され、最終的な値GT(GAA−GBB)を正規化することにより、良好に計測されたインターフェログラムの全体が返される。後述するように、デジタル化の前に同期検出を実行可能である。
【0043】
本発明の特定の実施例によれば、2つのレシーバA及びBによって計測された信号は、周波数繰返しレートfrepにおいて同期状態において検出される。frepは、通常、無線周波数レンジ0.1〜5GHzに位置するため、この時間ドメイン法は、約20kHzの可聴周波数においてインターフェログラムを検出する現時点において最良の市販の干渉計と比べた際に、技術的雑音を大幅に低減する。更には、式(2)から観察可能なように、同位相及び直交位相無線周波数信号のフーリエ変換から、吸収及び分散パラメータが一度に得られる。この方法は、チューニング可能なレーザーを伴う周波数変調分光法に類似している。これは、広帯域カバレージと、最適な変調指数と、外部変調が不要であるという更なる利益を具備している。
【0044】
又、本発明は、後述するように、選択的分光法に対して適合することも可能である。
【0045】
第1に、速度変調は、原子又は分子イオンの遷移を選択的に検出することを目的としている。図13に示されているように、FC−FTSにより、様々な方式を実装可能である。図13(A)及び図13(B)は、直流放電1300を使用している。中性種は、電界の影響を受けにくい一方で、イオンは、電界に起因し、正味のドリフト速度を獲得する。この速度の影響は、イオンの遷移の周波数がドップラーシフトされるというものである。2つの干渉計を形成するべく、図13(A)におけるように、それぞれのコムを、或いは、図13(B)におけるように、それらの中の1つのもののみを2つのカウンタ伝播ビームに分割可能である。図13(A)及び図13(B)に示されているように差動検出によって(この場合には、本発明の特定の実施例に従って、それぞれ、S1及びS2並びにS3及びS4である2つの干渉計の2つの出力が使用される)又は帰納的に生成可能である2つの結果的に得られるインターフェログラム又はスペクトルの間の差が選択的情報をもたらすが、これは、1つのスペクトルにおいては、すべてのイオン周波数が青色シフトされ、且つ、もう1つのものにおいては、赤色シフトされることによる。すべての中性信号及び系統的誤差をスペクトルから除去することにより、イオン遷移の2つのドップラーシフトされた成分のみが残る。
【0046】
図13(C)及び図13(D)は、交流変調された放電1301を利用し、放電変調又はインターフェログラムの記録時間に依存した周波数レートにおいて反対のドップラーシフトを有する2つのインターフェログラムを取得している。交流変調における同期検出は、中性シグネチャをキャンセルする。図13(A)、図13(B)、図13(C)、図13(D)に示されているダブル差動検出方式は、信号対雑音比の改善には好ましいが、必須ではないことに留意されたい。図13(A)又は図13(B)の方式における選択的検出の場合には、例えば、検出器S1及びS3(又は、S2及びS4)において計測されたインターフェログラムの間の差又は結果的に得られるスペクトルの間の差を検討することで十分である。図13(C)又は図13(D)の方式における選択的検出の場合には、例えば、検出器S1(又は、S2)における信号のみを検討することで十分である。
【0047】
第2に、Zeeman分光法を実行可能である。図14(A)に示されている第1の方式においては、供給源1401と相互作用する磁界1400が周期的に変化している。同期又は差動検出の後に、周波数シフトされた磁界による遷移のみが検出される。但し、Zeeman分割の対称性を考慮しなければならない。BC+BMとBC−BMの間において磁界を変調しなければならず、この場合に、BC及びBMは、磁界の2つの定数値である。BCは、BMに等しくてよいが、ゼロであってはならず、さもなければ、信号変動が検出されなくなる。或いは、この代わりに、図14(B)に示されているように、差動検出のために、一定の磁界BC+BMによってセル1402を精査するものと、一定の磁界BC−BMによってセル1403を精査するもう1つのものと、という2つのビームにコムビームを分割することも可能である。速度変調の場合と同様に、干渉計の2つの出力を使用して選択的検出を実現することが望ましいが、これは、必須ではない。図14(A)においては、検出器S1(又は、S2)における信号のみを計測可能である。図14(B)においては、例えば、検出器S1及びS3(又は、S2及びS4)において計測されたインターフェログラムの間の差又は結果的に得られるスペクトルの差を考慮することで十分である。
【0048】
Zeeman分光法と同様に、電界を印加及び変調し、Stark効果の影響を受け易い遷移を選択的に検出可能である。
【0049】
第3に、図15に示されているように、偏光変調FCFTSの様々な方式を実装可能である。図15(A)に概略的に示されているように、1つ(図15(A)に示されているように、サンプル1501を精査するコムFC1)又は両方のコムFC1及びFC2に対して偏光変調器1500を使用可能であり、且つ、逐次、高速で、所与の偏光によって1つのインターフェログラムを、そして、もう1つの偏光によって第2のものを計測可能であり、且つ、それらを減算可能である。又、図15(B)に示されているように、1つ(図15(B)のFC1)又は両方のコムビームを偏光器1502及び1503によって提供された相補的な偏光を有する2つのビームに分割することも可能である。図15(B)に示されているように、図15(B)のFC1からの2つのビームは、サンプル1504を精査し、且つ、直接的な差動検出が実行される。或いは、この代わりに、2つのインターフェログラムを取得し、且つ、帰納的に減算することも可能である。偏光変調は、偏光の影響を受け易い遷移を選択的に検出するのに有用である。これは、線形(s及びp偏光の間の比較)又は振動円2色法(左及び右円偏光放射の間の比較)とも呼ばれる。研究の主題のいくつかの例は、薄い固体薄膜内のキラル分子又は分子の向き、液晶、或いは、常磁性種からのZeeman遷移である。2つの偏光状態による放射の吸収の間の差は、多くの場合に、極めて小さい。この考え方は、逐次的に、高速で、2つの異なる状態において偏光された光とサンプルの相互作用から結果的に得られるスペクトルを比較するというものである。図15において、干渉計の2つの出力の使用は、本発明の特定の例示用の実施例である。速度及びZeeman変調について既に前述したように、図15(A)の構成における単一の検出器S1又はS2を使用可能である。図15(B)においては、例えば、検出器S1及びS3(又は、S2及びS4)において計測されたインターフェログラムの間の差又は結果的に得られるスペクトルの間の差を考慮することで十分である。
【0050】
又、本発明は、後述するように、時間分解アプリケーションに対して適合させることも可能である。従来の分光法においては、時間分解FTSは、FTSのすべての周知の利点、特に、観察の広いスペクトルレンジによって、動的な現象を調査するための強力なツールであった。時間分解FTSは、すべての光学経路−差分位置において励起された観察対象のサンプルの進展の時間サンプリングを実行するステップを有する。実験の終了時点において、供給源の進展の時間サンプルと同数のインターフェログラムが得られ、且つ、これらを変換することにより、それぞれが所与の時点における光源を特徴付けるスペクトルが得られる。但し、主要な制限事項は、観察対象のサンプルが十分に反復的且つ再現可能な方式によって振舞わなければならないという点にある。
【0051】
動的な研究用の時間分解FC−FTSは、この制限を克服可能である。様々な方式を観察対象の時間分解能に応じて実装可能である。更には、高分解能スペクトル用の取得時間は、1ミリ秒、或いは、低分解能情報の場合には、1μ秒のレベルに過ぎないことから、リアルタイムの広帯域分光法又は単一イベント分光法への道が本発明によって開かれる。
【0052】
完全なインターフェログラムを計測するのに必要な時間よりも低い時間分解能の場合には、計測原理は単純である。これは、順番にインターフェログラムを計測するステップを有する。2つのコムからのレーザーパルスがオーバーラップする際に発生するバーストを誘発するべく、コムの中の1つのものの繰返しレートを変化させることにより、時間分解能を最大で数μ秒に改善可能である。このコムの中の1つのものの繰返しレートの変動は、例えば、圧電トランスデューサによってレーザー空洞の1つのものの長さを変調することによって実現可能である。供給源が反復的な方式によって振舞う場合には、この方法を数回にわたって反復し、信号対雑音比を改善可能である。
【0053】
供給源の時間分解能又は繰返しレートが最適なサンプリング要件に適合しない際には、特定のサンプリング及び同期方式を開発しなければならない。この考え方は、供給源の稼働条件を満足させるように2つのコムの間の周波数差を調節することにより、インターフェログラムのサンプリングレートを低減するというものである。
【0054】
望ましい時間分解能が、2つのコムの間の最適な周波数差から結果的に得られる個別のそれぞれのインターフェログラムのサンプリングステップよりも高く、且つ、対象の供給源が高繰返しレートを具備する場合には、時間ドメインのインターフェログラムの高周波数サンプリングを実行可能であり、且つ、それぞれが所与の時点における供給源の吸収の特徴を示すいくつかのインターフェログラムを生成するべくサンプルを帰納的に再配置することができる。次いで、供給源を第1時間サンプルインターフェログラムのサンプリングステップに対して同期させなければならない。
【0055】
又、本発明は、後述するように、反射計測に対して適合させることも可能である。FC−FTSによれば、サンプルによって放射された光を観察する代わりに、サンプルによって反射された光を観察可能である。サンプルは、バルク材料、即ち、平坦な反射表面上に存在する材料のレイヤ(コム放射の波長よりも薄い又は厚いもの)であってよい。
【0056】
更には、減衰全反射によれば、非常に容易なサンプル調製により、液体又は固体相においてサンプルを精査可能である。サンプルとの直接的な接触状態にある内部表面上において少なくとも一回反射するように、適切に選択された結晶にプローブ光ビームを通過させる。この反射は、通常は、数マイクロメートルだけ、サンプル内に延長するエバネッセント波を形成する。それぞれのエバネッセント波からの減衰エネルギーを光ビームに伝達して戻し、且つ、次いで、結晶によって伝達されたビームをその結晶からの出射の際にFT分光計の第2コムによって収集する。減衰全反射FC−FTSは、結晶/サンプルアセンブリを精査する2つのコムによって実装することも可能である。
【0057】
又、本発明は、後述するように、空間分解計測に対して適合させることも可能である。
【0058】
第1に、レーザービームの断面が小さくてよいことから、巨視的サンプルの小さな空間領域を選択的に精査可能である。
【0059】
第2に、サンプルの組成をマッピングするためのFCFTSを伴う効率的な方法は、アレイ検出器によって同時にすべてのFTスペクトルを計測するというものである。適切なオプティクスを有するアレイ検出器によって物体を撮像する。画像のそれぞれの点からのスペクトルの同時計測は、ハイパースペクトル撮像をもたらす。
【0060】
第3に、FC−FTSを伴う顕微鏡検査法は、フーリエ変換分光法を伴う顕微鏡検査法とレーザー供給源を伴う顕微鏡検査法の利点を1つに統合する。正確な空間診断及び非常に短い計測時間と共に、空間分解能の増大を得ることができる。
【0061】
第4に、レーザービームの低発散及び高強度に起因し、FC−FTSは、サンプルの長い柱状部を精査可能である。或いは、この代わりに、レーザービームは、対象のサンプルに到達する前に、長距離を伝播可能である。又、LIDAR型FC−FTSの実験を実装することも可能であり、強力な周波数コムからのサンプルによって散乱した光を集光し、かつ、第2コムと共に分析可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉計(1)であって、
第1周波数コム生成器(FC1)と、
干渉(I)を生成するべく、前記第1周波数コム生成器(FC1)と相互作用するべく適合された第2周波数コム生成器(FC2)と、
を有し、
前記干渉計は、前記第1周波数コムの第1の単一ライン及び前記第2周波数コムの第2の単一ラインを隔離する手段(3、4)と、前記第1の単一ライン及び前記第2の単一ラインから少なくとも1つのうなり信号を生成するうなり生成手段と、を有する干渉計。
【請求項2】
第1外部基準光の生成器及び第2外部基準光の生成器を更に有し、前記うなり生成手段は、前記第1の単一ラインと前記第1外部基準光との第1うなり信号と、前記第2の単一ラインと前記第2外部基準光との第2うなり信号と、を生成するべく適合されている請求項1に記載の干渉計。
【請求項3】
前記うなり生成手段は、前記第1の単一ラインと前記第2の単一ラインとのうなり信号を生成するべく適合されている請求項1に記載の干渉計。
【請求項4】
前記隔離手段は、光学フィルタ及び/又はファイバ・ブラッグ格子及び/又はファブリーペローエタロン及び/又は電子フィルタリングを有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の干渉計。
【請求項5】
前記隔離手段は、前記第1周波数コム生成器及び前記第2周波数コム生成器との間においてうなりを生成するべく適合された連続波レーザーを有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の干渉計。
【請求項6】
請求項1に記載された前記うなり信号において前記干渉のデータ取得をトリガするべく適合された計測手段を更に有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の干渉計。
【請求項7】
請求項1に記載の前記うなり信号を前記干渉のデータ取得のためのクロックとして使用するべく適合された計測手段を更に有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の干渉計。
【請求項8】
2つの出力(A、B)と、前記2つの出力を差動計測する手段と、を具備する請求項1〜7のいずれか一項に記載の干渉計。
【請求項9】
サンプルのスペクトルを計測する分光装置であって、
請求項1〜8のいずれか一項に記載の干渉計を有し、
前記第1周波数コム生成器及び前記第2周波数コム生成器のうちの少なくとも一つは、前記サンプルと相互作用するべく適合されている、分光装置。
【請求項10】
前記第1周波数コム生成器及び前記第2周波数コム生成器のうちの一つのみが前記サンプルと相互作用するべく適合されている請求項9に記載の分光装置。
【請求項11】
前記第1周波数コム生成器及び前記第2周波数コム生成器が前記サンプルと相互作用するべく適合されている請求項8に記載の分光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2011−529180(P2011−529180A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519249(P2011−519249)
【出願日】平成21年7月20日(2009.7.20)
【国際出願番号】PCT/IB2009/006288
【国際公開番号】WO2010/010438
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【出願人】(508348956)マックス−プランク−ゲゼルシャフト ツア フェルデルンク デア ヴィッセンシャフテン エー.ファウ. (4)
【Fターム(参考)】