説明

周波数シンセサイザ装置及び変調周波数変位調整方法

【課題】2つの変調経路を有する周波数シンセサイザ装置において、DACから電圧制御発振器に出力される制御電圧の振幅を適切に調整することができる。
【解決手段】周波数シンセサイザ装置10は、入力電圧に応じた発振周波数で発振する電圧制御発振器14、電圧制御発振器14からの信号を分周するプログラマブル分周器20、分周信号と基準クロックとの位相差を電圧制御発振器14に出力する周波数位相比較器22、送信データに応じて目標周波数変位分周波数を変位させる場合の調整電圧を電圧制御発振器14に出力するDAC12、調整電圧の校正時に、電圧制御発振器14を基準電圧電源に接続するスイッチ32、任意の送信データをDAC12に出力して発振させた状態で分周信号の周波数をカウントしたカウント値に基づいて、目標周波数変位に対応する調整電圧に対応した調整データを設定する変調周波数変位校正回路30を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数シンセサイザ装置及び変調周波数変位調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、PLL(フェーズ・ロック・ループ)回路を用いた周波数シンセサイザが知られている。また、例えば特許文献1の第9図には、PLL回路を用いた周波数シンセサイザと、周波数切替時にPLL回路の外側から制御電圧を電圧制御発振器に印加するDACと、を組み合わせた2点周波数変調器が開示されている。
【0003】
また、高精度の周波数制御が可能な周波数シンセサイザとして、ΔΣ変調等を用いて分周比を等価的に非整数とし、発振周波数を連続的に変化できるようにしたフラクショナルN周波数シンセサイザが知られている。そして、2点周波数変調器にフラクショナルN周波数シンセサイザを用いた図17に示すような周波数シンセサイザ装置100も従来から知られている。このような周波数シンセサイザ装置100では、送信データを周波数偏移変調(FSK:frequency shift keying)により変調して送信することができる。
【0004】
図17に示すように、周波数シンセサイザ装置100は、フラクショナルN周波数シンセサイザ11、DAC(デジタル・アナログ・コンバータ)12、電圧制御発振器14、及び加算器16を含んで構成されている。
【0005】
フラクショナルN周波数シンセサイザ11は、ΔΣ変調器18、プログラマブル分周器20、周波数位相比較器22、及びループフィルタ24を含んで構成されている。
【0006】
送信データは、加算器16及びDAC12に入力される。加算器16は、送信データ及びチャネル周波数設定データが入力される。チャネル周波数設定データは、電圧制御発振器14が発振する発振周波数(搬送周波数)に対応したデータである。
【0007】
加算器16は、入力された送信データと周波数設定データとを加算した加算データをΔΣ変調器18へ出力する。
【0008】
ΔΣ変調器18は、入力された加算データをΔΣ変調し、これを分周比設定信号としてプログラマブル分周器20に出力する。
【0009】
プログラマブル分周器20では、電圧制御発振器14から出力された信号を、ΔΣ変調器18から出力された分周比設定信号により定まる分周比で分周した分周信号を周波数位相比較器22に出力する。
【0010】
周波数位相比較器22は、入力された基準クロックとプログラマブル分周器20から出力された分周信号との位相を比較し、その位相差に応じた位相差信号をループフィルタ24に出力する。ループフィルタ24は、入力された位相差信号を平滑化処理し、電圧制御信号として電圧制御発振器14に出力する。
【0011】
一方、DAC12は、入力された送信データをデジタル・アナログ変換したアナログ信号を電圧制御発振器14に出力する。
【0012】
電圧制御発振器14は、ループフィルタ24から入力された電圧制御信号に応じた周波数(チャネル周波数)で発振し、これをDAC12から入力されたアナログ信号でFSK変調した信号を出力する。例えば、周波数変位をΔFとすると、DAC12に入力された送信データが‘1’であればチャネル周波数から+ΔF分周波数が偏移したFSK変調信号が電圧制御発振器14から出力され、送信データが‘0’であればチャネル周波数から−ΔF分周波数が偏移したFSK変調信号が電圧制御発振器14から出力される。
【0013】
ここで、送信データが図18(A)に示すような波形の信号であった場合、DAC12のみで電圧制御発振器14を制御した場合は、電圧制御発振器14から出力されるFSK変調された信号は同図(C)に示すような波形となる。同図(C)に示すように、DAC12のみの制御によって電圧制御発振器14から出力される信号を変調した場合は、フラクショナルN周波数シンセサイザ11には送信データが入力されず、発振周波数がロックされた状態となるため、FSK変調された信号はハイパスフィルタのような特性となる。一方、フラクショナルN周波数シンセサイザ11のみの制御によって電圧制御発振器14から出力される信号を変調した場合は、電圧制御発振器14から出力されるFSK変調された信号は同図(D)に示すような波形となる。同図(D)に示すように、フラクショナルN周波数シンセサイザ11のみの制御によってFSK変調された信号はローパスフィルタのような特性を有している。
【0014】
すなわち、フラクショナルN周波数シンセサイザ11のみでは、送信データのビットレートが高くなるとPLLでの追従が追いつかなくなる場合がある。このため、図17に示すような周波数シンセサイザ装置100のように、DAC12と組み合わせた2点周波数変調器とすることにより、図18(B)に示すように、送信データが高ビットレートでも電圧制御発振器14から適切にFSK変調された信号が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平2−100519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、周波数シンセサイザ装置100は、2つの変調経路を有するため、周波数変調を行う際に、周波数変位を2つの変調経路で一致させるのが難しい、という問題があった。フラクショナルN周波数シンセサイザでは、周波数変位は高精度に制御されるため、直接変調経路であるDAC12から電圧制御発振器14に出力される制御電圧の振幅を適切に調整する必要がある。
【0017】
本発明は、上述した課題を解決するために提案されたものであり、2つの変調経路を有する周波数シンセサイザ装置において、DACから電圧制御発振器に出力される制御電圧の振幅を適切に調整することができる周波数シンセサイザ装置及び変調周波数変位調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明の周波数シンセサイザ装置は、 入力された制御電圧に応じた発振周波数で発振する電圧制御発振手段と、前記電圧制御発振手段からの出力信号を分周すると共に、入力された周波数設定信号に基づいて分周比を可変可能な分周手段と、前記分周手段により分周された分周信号と基準クロックとの位相差を前記制御電圧として前記電圧制御発振手段に出力する周波数位相比較手段と、前記送信データを前記電圧制御発振手段に出力すると共に、前記送信データに応じて目標周波数変位分前記発振周波数から周波数を変位させる場合の調整電圧を前記電圧制御発振手段に出力する調整電圧出力手段と、前記調整電圧の校正時に、前記電圧制御発振手段を前記周波数位相比較手段から予め定めた基準電圧を供給する基準電圧電源に切り替え接続するスイッチと、前記調整電圧の校正時に、任意の送信データを前記調整電圧出力手段に出力して前記電圧制御発振手段を発振させた状態で前記分周信号の周波数をカウントしたカウント値に基づいて、前記目標周波数変位に対応する前記調整電圧に対応した調整データを設定する設定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項2記載の発明は、前記設定手段は、‘1’の前記送信データを前記調整電圧出力手段に出力した場合の前記カウント値、‘0’の前記送信データを前記調整電圧出力手段に出力した場合の前記カウント値、及び前記送信データを前記調整電圧出力手段に出力しない無変調の場合の前記カウント値、のうち2つのカウント値の差分に基づいて、前記目標周波数変位に対応する前記調整電圧を設定することを特徴とする。
【0020】
請求項3記載の発明は、前記設定手段は、‘1’の前記送信データを前記調整電圧出力手段に出力した場合の前記カウント値と‘0’の前記送信データを前記調整電圧出力手段に出力した場合の前記カウント値と、の差分に基づいて、前記目標周波数変位に対応する前記調整電圧を設定することを特徴とする。
【0021】
請求項4記載の発明は、前記設定手段は、前記調整電圧の校正時に、前記スイッチが前記基準電圧電源に接続されてから予め定めた周波数不安定期間を経過した後に、前記周波数のカウントを開始することを特徴とする。
【0022】
請求項5記載の発明は、前記設定手段は、前記調整電圧の校正時に、前記カウント値が予め定めた許容範囲外の値である場合には、前記周波数を再カウントすることを特徴とする。
【0023】
請求項6記載の発明は、前記分周手段が、予め定めた固定の分周比で前記電圧制御発振手段からの出力信号を分周する第1の分周手段と、前記第1の分周手段で分周された分周信号を前記周波数設定信号に基づく分周比で分周して前記周波数位相比較手段に出力する第2の分周手段と、を含み、前記設定手段は、前記第1の分周手段からの分周信号の周波数をカウントすることを特徴とする。
【0024】
請求項7記載の発明は、前記分周手段が、予め定めた固定の分周比で前記電圧制御発振手段からの出力信号を分周する第1の分周手段と、前記第1の分周手段で分周された分周信号を前記周波数設定信号に基づく分周比で分周して前記周波数位相比較手段に出力する第2の分周手段と、を含み、前記設定手段は、前記第2の分周手段からの分周信号の周波数をカウントすることを特徴とする。
【0025】
請求項8記載の発明は、前記設定手段は、前記目標周波数変位をN倍した周波数変位に対応する前記調整電圧を求め、当該求めた調整電圧の1/Nの調整電圧を前記目標周波数変位に対応した調整電圧として設定することを特徴とする。
【0026】
請求項9記載の発明は、前記設定手段は、前記調整データの各ビットの前記周波数変位に対する重みに基づいて、前記調整データの各ビットを設定する際の前記周波数のカウント期間を、前記調整データのビット毎に設定することを特徴とする。
【0027】
請求項10記載の発明は、前記設定手段は、前記調整データの各ビットの前記周波数変位に対する重みと、予め定めた調整データを前記調整電圧出力手段に出力して前記周波数をカウントした際のカウント値と、に基づいて、前記調整データを設定することを特徴とする。
【0028】
請求項11記載の発明は、前記電圧制御発振手段は、電圧感度定数が異なる2つの可変容量回路と、前記調整電圧の校正時には、前記2つの可変容量回路のうち電圧感度定数が小さい可変容量回路を選択して前記周波数位相比較手段に接続する選択手段と、を含むことを特徴とする。
【0029】
請求項12記載の発明は、前記電圧制御発振手段は、並列接続された複数の可変容量回路と、前記調整電圧の校正時には、前記複数の可変容量回路から選択した可変容量回路を前記調整電圧出力手段に接続する接続手段と、を含むことを特徴とする。
【0030】
請求項13記載の発明は、前記複数の可変容量回路の各々の容量値が2のべき乗の比となるように各々設定されたことを特徴とする。
【0031】
請求項14記載の発明は、前記設定手段は、予め定めた発振周波数について設定した前記調整電圧に基づいて、前記発振周波数と異なる発振周波数における前記調整電圧を設定することを特徴とする。
【0032】
請求項15記載の発明の変調周波数変位調整方法は、入力された制御電圧に応じた発振周波数で発振し、前記発振周波数で発振された信号を入力された周波数設定信号に基づいて分周比を可変可能に分周し、分周された分周信号と基準クロックとの位相差を前記制御電圧として前記発振周波数で発振する電圧制御発振手段に出力し、前記送信データを前記電圧制御発振手段に出力すると共に、前記送信データに応じて目標周波数変位分前記発振周波数から周波数を変位させる場合の調整電圧を前記電圧制御発振手段に出力し、前記調整電圧の校正時に、前記電圧制御発振手段を前記分周信号と基準クロックとの位相を比較する周波数位相比較手段から予め定めた基準電圧を供給する基準電圧電源に切り替え接続し、前記調整電圧の校正時に、任意の送信データを前記調整電圧を出力する調整電圧出力手段に出力して前記電圧制御発振手段を発振させた状態で前記分周信号の周波数をカウントしたカウント値に基づいて、前記目標周波数変位に対応する前記調整電圧に対応した調整データを設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、2つの変調経路を有する周波数シンセサイザ装置において、DACから電圧制御発振器に出力される制御電圧の振幅を適切に調整することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態に係る周波数シンセサイザ装置の構成図である。
【図2】変調周波数変位校正回路のブロック図である。
【図3】変調周波数変位校正回路で実行される処理のフローチャートである。
【図4】周波数変位の校正について説明するためのタイミングチャートである。
【図5】周波数変位の校正について説明するためのタイミングチャートである。
【図6】周波数変位の校正について説明するためのタイミングチャートである。
【図7】DAC調整値と変調周波数変位との関係を示す図である。
【図8】周波数不安定期間は周波数をカウントしない場合について説明するためのタイミングチャートである。
【図9】第2実施形態に係る周波数シンセサイザ装置の構成図である。
【図10】第3実施形態に係る周波数シンセサイザ装置の構成図である。
【図11】第6実施形態に係る電圧制御発振器の構成図である。
【図12】第7実施形態に係る電圧制御発振器の構成図である。
【図13】DAC調整値と変調周波数変位との関係を示す図である。
【図14】第8実施形態に係る電圧制御発振器の構成図である。
【図15】第9実施形態に係る電圧制御発振器の構成図である。
【図16】第9実施形態に係る電圧制御発振器の構成図である。
【図17】従来例に係る周波数シンセサイザ装置の構成図である。
【図18】周波数シンセサイザ装置におけるFSK変調について説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
(第1実施形態)
【0037】
図1には、本発明の第1実施形態に係る周波数シンセサイザ装置10の構成を示した。
【0038】
図1に示すように、周波数シンセサイザ装置10は、フラクショナルN周波数シンセサイザ11、DAC(デジタル・アナログ・コンバータ)12、電圧制御発振器14、加算器16、及び変調周波数変位校正回路30を含んで構成されている。
【0039】
フラクショナルN周波数シンセサイザ11は、ΔΣ変調器18、プログラマブル分周器20、周波数位相比較器22、ループフィルタ24、及びスイッチ32を含んで構成されている。
【0040】
送信データは、加算器16及びDAC12に入力される。加算器16は、送信データ及びチャネル周波数設定データが入力される。チャネル周波数設定データは、電圧制御発振器14が発振する発振周波数(搬送周波数)に対応したデータである。
【0041】
加算器16は、入力された送信データと周波数設定データとを加算した加算データをΔΣ変調器18へ出力する。
【0042】
ΔΣ変調器18は、入力された加算データをΔΣ変調し、これを分周比設定信号としてプログラマブル分周器20に出力する。
【0043】
プログラマブル分周器20では、電圧制御発振器14から出力された信号を、ΔΣ変調器18から出力された分周比設定信号により定まる分周比で分周した分周信号を周波数位相比較器22及び変調周波数変位校正回路30に出力する。
【0044】
周波数位相比較器22は、入力された基準クロックとプログラマブル分周器20から出力された分周信号との位相を比較し、その位相差に応じた位相差信号をループフィルタ24に出力する。ループフィルタ24は、入力された位相差信号を平滑化処理し、電圧制御信号として電圧制御発振器14に出力する。
【0045】
一方、DAC12は、入力された送信データをデジタル・アナログ変換したアナログ信号を電圧制御発振器14に出力する。
【0046】
電圧制御発振器14は、ループフィルタ24から入力された電圧制御信号に応じた周波数(チャネル周波数)で発振し、これをDAC12から入力されたアナログ信号でFSK変調した信号を出力する。例えば、周波数変位をΔFとすると、DAC12に入力された送信データが‘1’であればチャネル周波数から+ΔF分周波数が偏移したFSK変調信号が電圧制御発振器14から出力され、送信データが‘0’であればチャネル周波数から−ΔF分周波数が偏移したFSK変調信号が電圧制御発振器14から出力される。
【0047】
変調周波数変位校正回路30は、図2に示すように、制御部30A、周波数変位の校正時に任意の‘0’、‘1’のデジタル変調データを生成するデータ生成部30B、プログラマブル分周器20から出力された分周信号の‘1’又は‘0’の数を予め定めたカウント期間内でカウントするカウント部30C、カウント部30Cでカウントしたカウント値及びプログラマブル分周器20の分周比に基づいて、周波数変位を算出する周波数変位算出部30D、DAC12に出力する最適なDAC調整値を探索する探索部30E、探索部30Eで探索した最適なDAC調整値を記憶する記憶部30Fを含んで構成されている。
【0048】
変調周波数変位校正回路30は、周波数位相量の校正時(例えばLSI製造時等)には、電圧制御発振器14から出力される信号の発振周波数が、チャネル周波数を中心として、送信データが‘0’か‘1’かに応じて所望の周波数変位で精度良く周波数変位するための、DAC12に出力するDAC調整値を調整し、その値を記憶しておく。
【0049】
そして、通常動作時には、入力された送信データをDAC12に出力すると共に、入力された送信データが‘1’ならば符号がプラスのDAC調整値をDAC12に出力し、入力された送信データが‘0’ならば符号がマイナスのDAC調整値をDAC12に出力する。従って、入力された送信データが‘1’であれば、電圧制御発振器14から出力される信号の周波数が、チャネル周波数からDAC調整値に応じた周波数変位だけプラス側に変位し、入力された送信データが‘0’であれば、電圧制御発振器14から出力される信号の周波数が、チャネル周波数からDAC調整値に応じた周波数変位だけマイナス側に変位する。これにより、精度のよいFSK変調信号が得られる。
【0050】
スイッチ32は、周波数変位の校正時には、予め定めた基準電圧を発生させる図示しない基準電圧電源とループフィルタ24とを接続し、通常動作時には、周波数位相比較器22とループフィルタ24とを接続するように切り替えられる。
【0051】
次に、周波数変位の校正時に変調周波数変位校正回路30で実行される処理について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0052】
校正時には、基準電圧を発生する図示しない基準電圧電源は電圧制御発振器14と接続され、フラクショナルN周波数シンセサイザ11は、開ループとなる。従って、無変調時には、基準電圧に応じた周波数で電圧制御発振器14は発振する。また、変調周波数変位校正回路30は、ΔΣ変調器18に分周比を固定にするように指示する。これにより、プログラマブル分周器20は、予め定めた分周比で電圧制御発振器14からの出力信号を分周して変調周波数変位校正回路30に出力する。
【0053】
なお、本実施形態では、変調周波数変位校正回路30がDAC12に出力するDAC調整値のビット数nは、4ビットであるものとする。また、最上位ビットは(n−1)ビット目、最下位ビットは0ビット目とする。
【0054】
まず、ステップ100では、DAC調整値を0に初期化する。すなわち、DAC調整値の各ビットを‘0’に初期化する。
【0055】
ステップ102では、ビット番号Nを最上位ビット(ここではn−1=3)にセットする。
【0056】
ステップ104では、DAC調整値のNビット目に‘1’をセットしてDAC12に出力する。
【0057】
ステップ106では、周波数変位を測定する。例えば、チャネル周波数F0が2400MHz、周波数変位fdevが500kHzの場合のFSK変調波の場合の周波数変位の測定について説明する。また、分周比は説明を簡単にするため1とする。
【0058】
この場合、無変調時には電圧制御発振器14の発振周波数が2400MHzとなり、送信データが‘1’の場合には電圧制御発振器14の発振周波数が2400.5MHzとなり、送信データが‘0’の場合には電圧制御発振器14の発振周波数が2399.5MHzとなる必要がある。
【0059】
そこで、無変調時、すなわち送信データがDAC12に出力されない状態における電圧制御発振器14から出力される出力信号の周波数(パルス数)を予め定めたカウント期間、例えば1msの期間でカウントすると共に、送信データ‘1’がDAC12に出力された状態で電圧制御発振器14から出力される出力信号の周波数又は送信データ‘0’がDAC12に出力された状態で電圧制御発振器14から出力される出力信号の周波数を予め定めたカウント期間カウントする。そして、両者の差分が500となれば、チャネル周波数から500kHz周波数がプラス側に変位していることとなる。
【0060】
図4には、送信データが‘1’の場合の周波数変位の測定について示した。同図に示すように、最初は、送信データ‘1’をDAC12に出力しない無変調状態(データ開始信号が‘L’)で、電圧制御発振器14から出力される出力信号の周波数を予め定めたカウント期間カウントする。次に、送信データ‘1’をDAC12に出力する(データ開始信号が‘H’)と共に、電圧制御発振器14から出力される出力信号の周波数を予め定めたカウント期間カウントする。そして、両者の差分のカウント値を求める。この両者の差分のカウント値がチャネル周波数からの周波数変位(測定周波数変位)に相当する。
【0061】
なお、送信データ‘0’をDAC12に出力して周波数変位を測定するようにしてもよい。図5には、送信データが‘0’の場合の周波数変位の測定について示した。この場合も、図4の場合と同様に、最初は、送信データ‘0’をDAC12に出力しない無変調状態(データ開始信号が‘L’)で、電圧制御発振器14から出力される出力信号の周波数を予め定めたカウント期間カウントする。次に、送信データ‘0’をDAC12に出力する(データ開始信号が‘H’)と共に、電圧制御発振器14から出力される出力信号の周波数を予め定めたカウント期間カウントする。そして、両者の差分のカウント値を求める。この両者の差分のカウント値がチャネル周波数からの周波数変位(測定周波数変位)に相当する。
【0062】
ステップ108では、ステップ106で求めた両者の差分のカウント値が、目標周波数変位(ここでは500kHz)に相当するカウント値(ここでは500)以上になったか否かが判断される。
【0063】
そして、測定周波数変位が目標周波数変位以上となった場合には、ステップ110へ移行し、DAC調整値のNビット目に‘0’をセットする。一方、測定周波数変位が目標周波数変位未満の場合には、ステップ112へ移行する。
【0064】
ステップ112では、N=0か否かを判断し、N=0でない場合にはステップ114へ移行し、N=0の場合には、ステップ116へ移行する。
【0065】
ステップ114では、NにN−1を代入して、ステップ104へ戻って上記と同様の処理をN=0になるまで繰り返す。
【0066】
ステップ116では、DAC調整値を記憶部30Fに記憶する。
【0067】
このように、最上位ビットから順に‘1’をセットし、測定周波数変位が目標周波数変位以上であれば、そのビットを‘0’にセットし、測定周波数変位が目標周波数変位未満であれば、そのビットを‘1’にセットする処理を最下位ビットまで行うことにより、測定周波数変位が目標周波数変位に最も近くなるDAC調整値が設定される。すなわち、図3に示す処理は、所謂2進探索アルゴリズムによりDAC調整値の最適値を探索する処理である。
【0068】
なお、ステップ106の周波数変位の測定においては、無変調時のカウント値と、送信データ‘1’又は送信データ‘0’をDAC12に出力したときの変調時のカウント値と、の差分を算出する場合について説明したが、送信データ‘1’をDAC12に出力したときの変調時のカウント値と、送信データ‘0’をDAC12に出力したときの変調時のカウント値と、の差分を算出し、これが目標周波数変位の2倍の値に相当するカウント値になったか否かを判断するようにしてもよい。上記の例では、カウント値が1000となれば、目標周波数変位だけ周波数が変位したこととなる。
【0069】
図6には、送信データ‘1’をDAC12に出力したときの変調時のカウント値と、送信データ‘0’をDAC12に出力したときの変調時のカウント値と、の差分を算出して周波数変位を測定する場合について示した。この場合、最初は、送信データ‘1’をDAC12に出力すると共に、電圧制御発振器14から出力される出力信号の周波数を予め定めたカウント期間カウントする。次に、送信データ‘0’をDAC12に出力すると共に、電圧制御発振器14から出力される出力信号の周波数を予め定めたカウント期間カウントする。そして、両者の差分のカウント値を求める。この両者の差分のカウント値の1/2の値がチャネル周波数からの周波数変位に相当する。
【0070】
これにより、無変調時のカウント値と、送信データ‘1’又は送信データ‘0’をDAC12に出力したときの変調時のカウント値と、の差分を算出する場合と比較して、カウント期間が同じであれば2倍の差分が得られるため、DAC調整値の探索を2倍の精度で行うことができる。逆に、カウント期間を1/2にしても、DAC調整値の探索を同じ精度で行うことができる。
【0071】
一般に、カウント期間を長くとってカウント値が大きくなるようにすれば、周波数変位の校正を精度良く行うことができるが、校正に時間がかかる。そこで、本来の目標周波数変位のN倍の周波数変位を目標周波数変位として上記の処理を行い、その結果得られたDAC調整値の1/NをDAC12に出力するDAC調整値として設定するようにしてもよい。これにより、カウント期間を長くすることなく、精度良くDAC調整値を探索することができる。
【0072】
図7には、DAC調整値と周波数変位との関係を示した。同図に示すように、目標周波数変位のN倍の周波数変位を得るには、目標周波数変位を得るのに最適なDAC調整値のN倍のDAC調整値をDAC12に出力すればよい。従って、目標周波数変位のN倍の周波数変位を得るのに最適なDAC調整値を1/N倍すれば、目標周波数変位を得るのに最適なDAC調整値が求められる。
【0073】
ところで、校正時に、フラクショナルN周波数シンセサイザ11を開ループにして直ぐに上記の処理を行うと、開ループ直後の電圧制御発振器14の周波数ドリフトにより、電圧制御発振器14の出力信号の周波数を正確にカウントできない場合がある。そこで、図8に示すように、電圧制御発振器14の発振周波数が安定するまでの予め定めた待ち時間T(周波数不安定期間)が経過した後の周波数安定期間に上記の処理を実行することが好ましい。これにより、精度良くDAC調整値を探索することができる。
【0074】
また、開ループ時に電圧制御発振器14の周波数をカウントする際、そのカウント値が、外乱等の環境変化の影響を受けて電圧制御発振器14の発振周波数の許容範囲を逸脱する場合がある。そこで、カウント値がチャネル周波数を中心として予め定めた許容範囲外となる場合には、そのカウント値を無効とし、再度カウントするようにしてもよい。例えば、チャネル周波数が2.4GHzの場合で、カウント期間を1μsとした場合、無変調時のカウント値は理想状態であれば2400となるはずである。そして、例えば2.4GHzを中心として±100MHzの範囲を越えた場合は周波数が異常であり外乱等の影響があると判断できる場合には、閾値を100(100MHzに相当)に設定する。これにより、外乱等の影響によってカウント値が異常となっても、再度カウント値をカウントすることで、精度良くDAC調整値を探索することができる。
【0075】
(第2実施形態)
【0076】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部分については同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0077】
図9には、本実施形態に係る周波数シンセサイザ装置10Aを示した。本実施形態では、プログラマブル分周器20が、前置分周器20Aと分周器20Bとで構成されており、前置分周器20Aの出力信号が変調周波数変位校正回路30に出力される点が第1実施形態で説明した周波数シンセサイザ装置10と異なる。
【0078】
前置分周器(プリスケーラ)20Aでは、電圧制御発振器14からの出力信号を予め定めた分周比1/Pで分周し、分周器20B及び変調周波数変位校正回路30に出力する。
【0079】
分周器20Bは、前置分周器20Aから出力された信号を、予め定めた分周比1/Nで分周して周波数位相比較器22及びΔΣ変調器18に出力する。
【0080】
このような構成では、前置分周器20Aは、通常動作時及び校正時の何れにおいても分周比が固定となるので、校正時に変調周波数変位校正回路30がΔΣ変調器18に分周比を固定にするための制御信号を出力する必要がなく、変調周波数変位校正回路30の制御を簡略化することができる。
【0081】
(第3実施形態)
【0082】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、上記実施形態と同一部分については同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0083】
図10には、本実施形態に係る周波数シンセサイザ装置10Bを示した。本実施形態では、プログラマブル分周器20が、前置分周器20Aと分周器20Bとで構成されており、後段の分周器20Bの出力信号が変調周波数変位校正回路30に出力される点が第2実施形態で説明した周波数シンセサイザ装置10Bと異なる。
【0084】
本実施形態に係る周波数シンセサイザ装置10Bでは、ΔΣ変調器18は、校正時でも分周器20Bに対して分周比を固定にするように指示するのではなく、通常動作時と同様に、ΔΣ変調した信号を分周器20Bに出力する。
【0085】
このような構成とすることにより、電圧制御発振器14からの出力信号を分数分周することが可能になり、より細かいステップで発振周波数をずらして校正することができる。
【0086】
(第4実施形態)
【0087】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態では、DAC調整値の各ビットの変調周波数変位の重みに基づいて、図3のステップ106の処理におけるカウント期間をビット毎に設定する場合について説明する。
【0088】
例えばDAC調整値を4ビット、1LSB当たりの出力電圧を100mV、電圧制御発振器14の変調感度Kvoを0.5MHz/Vとした場合、DAC調整値の各ビットDAC<3>〜DAC<0>と、DAC12からの出力電圧[mV]及び変調周波数変位[kHz]との対応関係を表1に示す。
【0089】
【表1】

ここで、チャネル周波数が2400MHz、周波数変位が500kHz、送信データ‘1’の変調周波数が2400.5MHz、送信データ‘0’の変調周波数が2399.5MHz、無変調時の電圧制御発振器14の発振周波数を2400MHzのFSK変調波を想定し、カウント期間を1msとする。この場合、周波数変位は500kHzであることから、図3のステップ106において、図6に示すように送信データ‘1’のカウント値と送信データ‘0’のカウント値とに基づいて測定周波数変位を求める場合は、ステップ108の判断で用いられる目標周波数変位は1000kHzとなる。
【0090】
上記表1より、例えばDAC調整値の3ビット目、すなわちDAC<3>については、周波数変位の重みは400kHzである。このため、DAC調整値をDAC(3:0)=1000とした場合、カウント期間は1msなので、理想状態では、送信データ‘1’の場合のカウント値は2400400となり、送信データが‘0’の場合のカウント値は2399600となる。
【0091】
この場合、送信データ‘1’の場合と送信データ‘0’の場合のカウント値との差分は800となり、目標値から200ずれていることになるが、DAC<3>のビット分解能は上記表1より400kHzであるため、図3のステップ106におけるカウント期間を1msより短くしても、DAC<3>にビットが立つか立たないかを判定することができる。例えば、DAC<3>の場合、カウント期間を1msの1/100である1μsとしても、図3の処理においてDAC<3>にビットが立つか立たないかを判定できる。
【0092】
従って、図3の処理において、DAC調整値のビットが上位から下位に向かうに従って、すなわち周波数変位の重みが小さくなるに従ってカウント期間が長くなるように、各ビットについてのカウント期間を設定するようにしてもよい。これにより、各ビットでカウント期間を固定にした場合と比較して、最適なDAC調整値を探索する時間を短縮することができる。
【0093】
(第5実施形態)
【0094】
次に、本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態では、DAC調整値の各ビットの変調周波数変位の重みに基づいて、図3のステップ106の処理を、予め定めたビットだけ行い、他のビットについては、前記予め定めたビットについてステップ106の処理を行った結果に基づいて設定する場合について説明する。
【0095】
なお、ここでは、想定されるFSK変調波は第4実施形態と同一であり、DAC調整値のビット数、1LSB当たりの出力電圧、電圧制御発振器14の変調感度Kvo、DAC調整値の各ビットDAC<3>〜DAC<0>と、DAC12からの出力電圧[mV]及び変調周波数変位[kHz]との対応関係も第4実施形態と同一である場合について説明する。
【0096】
例えば、DAC調整値DAC(3:0)=1000とした場合、カウント期間は1msなので、理想状態では、送信データ‘1’の場合のカウント値は2400400となり、送信データが‘0’の場合のカウント値は2399600となり、その差分は800となる。そして、送信データ‘1’のカウント値と送信データ‘0’のカウント値とに基づいて測定周波数変位を求める場合における目標値1000から200ずれていることになるため、周波数変位が100kHz小さいことが判る。
【0097】
従って、上記表1より周波数変位の重みが100kHzであるDAC<1>にビットを立てることにより、不足している100kHz分の周波数変位を補うことができるため、DAC調整値をDAC<3:0>=1010とすればよい。
【0098】
このように、特定のビットについてのみ図3のステップ106の処理を行って、その結果に基づいて他のビットを設定することにより、図3のステップ106の処理は1回だけ実行すればよく、ステップ108〜ステップ114の処理に代えて、上記のように周波数変位に応じた重みのビットを立てる処理を実行すればよい。これにより、最適なDAC調整値を設定する時間を短縮することができる。
【0099】
(第6実施形態)
【0100】
次に、本発明の第6実施形態について説明する。本実施形態では、電圧制御発振器の感度定数を選択できる電圧制御発振器を用いる場合について説明する。なお、電圧制御発振器以外の部分は、第1実施形態で説明した周波数シンセサイザ装置10と同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0101】
図11には、本実施形態に係る電圧制御発振器14Aを示した。同図に示すように、電圧制御発振器14は、コイル40、可変容量回路42、44A、44B、可変容量素子46、及び負性抵抗48が並列接続された構成である。
【0102】
可変容量回路42は、コンデンサ50A、可変容量ダイオード(バリキャップ)52A、52B、コンデンサ50Bが直列に接続された構成である。可変容量ダイオード52A、52Bのアノード間には、DAC12の出力端が接続されている。
【0103】
可変容量回路44Aは、コンデンサ54A、可変容量ダイオード56A、56B、コンデンサ54Bが直列に接続された構成である。可変容量ダイオード56A、56Bのアノード間には、スイッチSW1を介してループフィルタ24が接続されている。
【0104】
可変容量回路44Bは、コンデンサ58A、可変容量ダイオード60A、60B、コンデンサ58Bが直列に接続された構成である。可変容量ダイオード60A、60Bのアノード間には、スイッチSW2を介してループフィルタが接続されている。
【0105】
ここで、可変容量回路44Aの可変容量ダイオード56A、56Bの電圧感度定数(容量に相当)Kv1と、可変容量回路44Bの可変容量ダイオード60A、60Bの電圧感度定数Kv2とは異なる値となっており、例えばKv1>Kv2である。
【0106】
そして、通常動作時には、スイッチSW1がオンすると共にスイッチSW2がオフし、可変容量回路44Aが選択される。一方、校正時には、スイッチSW2がオンすると共にスイッチSW1がオフし、可変容量回路44Bが選択される。これにより、校正時には、電圧制御発振器14の電圧感度定数が通常動作時よりも小さくなり、フラクショナルN周波数シンセサイザ11を開ループにすることにより発生する位相雑音により校正の精度が悪化するのを抑制することができる。
【0107】
(第7実施形態)
【0108】
次に、本発明の第7実施形態について説明する。本実施形態では、DAC12に接続される可変容量回路を複数個備えた電圧制御発振器を用いる場合について説明する。なお、電圧制御発振器以外の部分は、第1実施形態で説明した周波数シンセサイザ装置10と同一であるので、詳細な説明は省略する。また、第6実施形態で説明した電圧制御発振器14Aと同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0109】
図12には、本実施形態に係る電圧制御発振器14を示した。同図に示すように、電圧制御発振器14Bは、コイル40、N個の可変容量回路70〜70、可変容量回路72、可変容量素子46、及び負性抵抗48が並列接続された構成である。
【0110】
N個の可変容量回路70〜70は、スイッチSW〜SWを介してDAC12と接続されている。
【0111】
なお、可変容量回路70〜70の構成は同一であり、コンデンサ74A、可変容量ダイオード76A、76B、コンデンサ74Bが直列に接続された構成である。従って、可変容量回路70〜70の容量値は同一である。
【0112】
可変容量回路72は、コンデンサ78A、可変容量ダイオード80A、80B、コンデンサ78Bが直列に接続された構成である。従って、可変容量回路70〜70の容量値は同一である。
【0113】
このような構成の電圧制御発振器14では、通常動作時にはN個のスイッチのうち予め定めたスイッチがオンされ、他のスイッチはオフされる。また、校正時には、N個のスイッチが全てオンし、本来の目標周波数変位のN倍の目標周波数変位を目標周波数変位として最適なDAC調整値を探索する。
【0114】
図13には、本実施形態に係る電圧制御発振器14を用いた場合のDAC調整値と周波数変位との関係を示した。同図に示すように、一つのスイッチのみオンさせた場合のDAC調整値に対する変調周波数変位の傾きaと比較して、N個のスイッチ全てオンさせた場合のDAC調整値に対する周波数変位の傾きNaはN倍となる。従って、N個のスイッチを全てオンし、本来の目標周波数変位のN倍の目標周波数変位を目標周波数変位として最適なDAC調整値を探索することにより、本来の目標周波数変位に対応したDAC調整値を探索することができる。また、複数の可変容量回路70〜70を備えているので、様々な周波数変位の校正に対応することができる。
【0115】
(第8実施形態)
【0116】
次に、本発明の第8実施形態について説明する。本実施形態では、DAC12に接続される可変容量回路を複数個備えた電圧制御発振器を用いた場合の変形例について説明する。なお、電圧制御発振器以外の部分は、第1実施形態で説明した周波数シンセサイザ装置10と同一であるので、詳細な説明は省略する。また、第7実施形態で説明した電圧制御発振器14Bと同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0117】
図14には、本実施形態に係る電圧制御発振器14Cを示した。同図に示すように、電圧制御発振器14Bは、コイル40、N+1個の可変容量回路70〜70、可変容量回路72、可変容量素子46、及び負性抵抗48が並列接続された構成である。
【0118】
N個の可変容量回路70〜70は、スイッチSW〜SWを介してDAC12と接続されている。
【0119】
そして、可変容量回路70〜70の構成は、図12の電圧制御発振器14Bと同様であるが、その容量値が2のべき乗の比となるように構成されている点が電圧制御発振器14Bと異なる。すなわち、可変容量回路70の容量値をC0(=2×C0)とすると、可変容量回路700の容量値は2×C0、可変容量回路70の容量値は2×C0、・・・可変容量回路70の容量値は2×C0となっている。
【0120】
このように、可変容量回路70〜70の容量値が2のべき乗の比となるように構成されていることにより、第7実施形態で説明した電圧制御発振器14Bと比較して、DAC12に接続される可変容量回路の数を減らすことができ、回路のサイズを小さくすることができる。
【0121】
(第9実施形態)
【0122】
次に、本発明の第9実施形態について説明する。本実施形態では、1つのチャネル周波数における周波数変位の校正を行って最適なDAC調整値を求めた場合に、その結果に基づいて、他のチャネル周波数における周波数変位のDAC調整値を求める場合について説明する。なお、装置構成は第1実施形態で説明した周波数シンセサイザ装置10と同一であるので、詳細な説明は省略する。また、図11の電圧制御発振器14Aと同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0123】
図15には、電圧制御発振器14の構成を示した。なお、図15では、ループフィルタ24が接続される可変容量回路については図示を省略している。電圧制御発振器14は、コイル40、可変容量回路42、可変容量素子46、及び負性抵抗48が並列接続された構成である。可変容量回路42は、コンデンサ50A、可変容量ダイオード52A、52B、及びコンデンサ50Bが直列接続された構成であり、可変容量ダイオード52A、52Bのアノード間にDAC12の出力端が接続されている。
【0124】
例えば、コイル40のインダクタンスをL、可変容量回路42の容量値をCdev0、可変容量素子46の容量値をC0、チャネル周波数(発振周波数)をF0とすると、次式が成り立つ。
【0125】
F0=1/(2π・sqrt(L(C0+Cdev0)) ・・・(1)
【0126】
また、図16に示すように、コイル40のインダクタンスをL、可変容量回路42の容量値をCdev1、可変容量素子46の容量値をC1、チャネル周波数(発振周波数)をF1とすると、次式が成り立つ。
【0127】
F1=1/(2π・sqrt(L(C1+Cdev1)) ・・・(2)
【0128】
また、これら2つの周波数における周波数変位をfdevとすると、次式が成り立つ。
【0129】
F0−fdev=1/(2π・sqrt(L(C0+Cdev0)) ・・・(3)
【0130】
F1−fdev=1/(2π・sqrt(L(C1+Cdev1)) ・・・(4)
【0131】
上記(1)〜(4)式より、Cdev1とCdev0の関係が近似的に次式で表わされる。ただし、fdevがF0やF1に対して十分に小さいと仮定する。
【0132】
Cdev1=(F0/F1)×Cdev0 ・・・(5)
【0133】
なお、Cdev0はDAC12の出力電圧によって決まる。その容量変動値がDAC12の出力電圧に対して線形である領域を使うことにより、Cdev0はDAC12の出力電圧Vdac0を用いて次式で表される。
【0134】
Cdev0=A×Vdac0 ・・・(6)
【0135】
ここで、Aは比例定数を表す。
【0136】
上記(5)、(6)式よりチャネル周波数F1での可変容量回路42の容量値Cdev1は次式で表される。
【0137】
Cdev1=(F0/F1)×A×Vdac0 ・・・(7)
【0138】
上記(7)式よりチャネル周波数F1での変調周波数変位に必要なDAC12の調整電圧Vdac1は次式で表される。
【0139】
Vdac1=(F0/F1)×Vdac0 ・・・(8)
【0140】
上記(8)式により、ある1つのチャネル周波数でDAC12のDAC調整値を求めておけば、他のチャネル周波数でのDAC調整値を算出することができる。これにより、チャネル周波数毎に図3に示す処理を実行する必要がないため、DAC調整値を各チャネル周波数におけるDAC調整値の設定を短時間で行うことができる。
【0141】
なお、上記各実施形態では、フラクショナルN周波数シンセサイザ11にΔΣ変調器18を備えた構成の場合について説明したが、分周比を可変にすることができるものであればΔΣ変調器18に限られるものではない。
【符号の説明】
【0142】
10、10A、10B、100 周波数シンセサイザ装置
11 フラクショナルN周波数シンセサイザ
12 DAC(調整電圧出力手段)
14、14A、14B、14C 電圧制御発振器(電圧制御発振手段)
16 加算器
18 ΔΣ変調器
20 プログラマブル分周器(分周手段)
20A 前置分周器
20B 分周器
22 周波数位相比較器(周波数位相比較手段)
24 ループフィルタ
30 変調周波数変位校正回路(設定手段)
32 スイッチ
40 コイル
42 可変容量回路
44A、44B 可変容量回路
46 可変容量素子
48 負性抵抗
50A、50B、54A、54B、58A、58B コンデンサ
52A、52B、56A、56B、60A、60B 可変容量ダイオード
70〜70 可変容量回路
72 可変容量回路
74A、74B、78A、78B、80A、80B コンデンサ
80A、80B 可変容量ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された制御電圧に応じた発振周波数で発振する電圧制御発振手段と、
前記電圧制御発振手段からの出力信号を分周すると共に、入力された周波数設定信号に基づいて分周比を可変可能な分周手段と、
前記分周手段により分周された分周信号と基準クロックとの位相差を前記制御電圧として前記電圧制御発振手段に出力する周波数位相比較手段と、
前記送信データを前記電圧制御発振手段に出力すると共に、前記送信データに応じて目標周波数変位分前記発振周波数から周波数を変位させる場合の調整電圧を前記電圧制御発振手段に出力する調整電圧出力手段と、
前記調整電圧の校正時に、前記電圧制御発振手段を前記周波数位相比較手段から予め定めた基準電圧を供給する基準電圧電源に切り替え接続するスイッチと、
前記調整電圧の校正時に、任意の送信データを前記調整電圧出力手段に出力して前記電圧制御発振手段を発振させた状態で前記分周信号の周波数をカウントしたカウント値に基づいて、前記目標周波数変位に対応する前記調整電圧に対応した調整データを設定する設定手段と、
を備えた周波数シンセサイザ装置。
【請求項2】
前記設定手段は、‘1’の前記送信データを前記調整電圧出力手段に出力した場合の前記カウント値、‘0’の前記送信データを前記調整電圧出力手段に出力した場合の前記カウント値、及び前記送信データを前記調整電圧出力手段に出力しない無変調の場合の前記カウント値、のうち2つのカウント値の差分に基づいて、前記目標周波数変位に対応する前記調整電圧を設定する
請求項1記載の周波数シンセサイザ装置。
【請求項3】
前記設定手段は、‘1’の前記送信データを前記調整電圧出力手段に出力した場合の前記カウント値と‘0’の前記送信データを前記調整電圧出力手段に出力した場合の前記カウント値と、の差分に基づいて、前記目標周波数変位に対応する前記調整電圧を設定する
請求項2記載の周波数シンセサイザ装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記調整電圧の校正時に、前記スイッチが前記基準電圧電源に接続されてから予め定めた周波数不安定期間を経過した後に、前記周波数のカウントを開始する
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の周波数シンセサイザ装置。
【請求項5】
前記設定手段は、前記調整電圧の校正時に、前記カウント値が予め定めた許容範囲外の値である場合には、前記周波数を再カウントする
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の周波数シンセサイザ装置。
【請求項6】
前記分周手段が、予め定めた固定の分周比で前記電圧制御発振手段からの出力信号を分周する第1の分周手段と、前記第1の分周手段で分周された分周信号を前記周波数設定信号に基づく分周比で分周して前記周波数位相比較手段に出力する第2の分周手段と、を含み、前記設定手段は、前記第1の分周手段からの分周信号の周波数をカウントする
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の周波数シンセサイザ装置。
【請求項7】
前記分周手段が、予め定めた固定の分周比で前記電圧制御発振手段からの出力信号を分周する第1の分周手段と、前記第1の分周手段で分周された分周信号を前記周波数設定信号に基づく分周比で分周して前記周波数位相比較手段に出力する第2の分周手段と、を含み、前記設定手段は、前記第2の分周手段からの分周信号の周波数をカウントする
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の周波数シンセサイザ装置。
【請求項8】
前記設定手段は、前記目標周波数変位をN倍した周波数変位に対応する前記調整電圧を求め、当該求めた調整電圧の1/Nの調整電圧を前記目標周波数変位に対応した調整電圧として設定する
請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の周波数シンセサイザ装置。
【請求項9】
前記設定手段は、前記調整データの各ビットの前記周波数変位に対する重みに基づいて、前記調整データの各ビットを設定する際の前記周波数のカウント期間を、前記調整データのビット毎に設定する
請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の周波数シンセサイザ装置。
【請求項10】
前記設定手段は、前記調整データの各ビットの前記周波数変位に対する重みと、予め定めた調整データを前記調整電圧出力手段に出力して前記周波数をカウントした際のカウント値と、に基づいて、前記調整データを設定する
請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の周波数シンセサイザ装置。
【請求項11】
前記電圧制御発振手段は、電圧感度定数が異なる2つの可変容量回路と、前記調整電圧の校正時には、前記2つの可変容量回路のうち電圧感度定数が小さい可変容量回路を選択して前記周波数位相比較手段に接続する選択手段と、を含む
請求項1〜請求項10の何れか1項に記載の周波数シンセサイザ装置。
【請求項12】
前記電圧制御発振手段は、並列接続された複数の可変容量回路と、前記調整電圧の校正時には、前記複数の可変容量回路から選択した可変容量回路を前記調整電圧出力手段に接続する接続手段と、を含む請求項1〜請求項11の何れか1項に記載の周波数シンセサイザ装置。
【請求項13】
前記複数の可変容量回路の各々の容量値が2のべき乗の比となるように各々設定された
請求項12記載の周波数シンセサイザ装置。
【請求項14】
前記設定手段は、予め定めた発振周波数について設定した前記調整電圧に基づいて、前記発振周波数と異なる発振周波数における前記調整電圧を設定する
請求項1〜請求項13の何れか1項に記載の周波数シンセサイザ装置。
【請求項15】
入力された制御電圧に応じた発振周波数で発振し、
前記発振周波数で発振された信号を入力された周波数設定信号に基づいて分周比を可変可能に分周し、
分周された分周信号と基準クロックとの位相差を前記制御電圧として前記発振周波数で発振する電圧制御発振手段に出力し、
前記送信データを前記電圧制御発振手段に出力すると共に、前記送信データに応じて目標周波数変位分前記発振周波数から周波数を変位させる場合の調整電圧を前記電圧制御発振手段に出力し、
前記調整電圧の校正時に、前記電圧制御発振手段を前記分周信号と基準クロックとの位相を比較する周波数位相比較手段から予め定めた基準電圧を供給する基準電圧電源に切り替え接続し、
前記調整電圧の校正時に、任意の送信データを前記調整電圧を出力する調整電圧出力手段に出力して前記電圧制御発振手段を発振させた状態で前記分周信号の周波数をカウントしたカウント値に基づいて、前記目標周波数変位に対応する前記調整電圧に対応した調整データを設定する
変調周波数変位調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−23626(P2012−23626A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160912(P2010−160912)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(308033711)ラピスセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】