説明

周辺監視装置

【課題】 ドップラーセンサ1を用いて、該ドップラーセンサ1の設置位置周辺に位置する移動物体の動きを監視する場合に、外乱周波数が存在する環境下にあっても、監視すべき移動物体(特に人)の動きを正確に把握できるようにして、該移動物体の車両Cの車室内への侵入等を正確に予測できるようにする。
【解決手段】 FFT解析部13にてFFT解析により周波数レベルが求められた全バンド幅のうち所定の周波数範囲の最大及び最小周波数を含むバンド幅を除く少なくとも1つが、第1の設定レベル以上の周波数レベルとなる特定バンド幅である場合において、該特定バンド幅に対して周波数の高い側及び低い側にそれぞれ隣接する2つのバンド幅の周波数レベルが共に、上記第1の設定レベルよりも低い第2の設定レベル以下であるときには、外乱周波数除去部14にて上記特定バンド幅の周波数レベルを低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドップラーセンサを用いて、該ドップラーセンサの設置位置周辺に位置する移動物体の動きを監視して、該移動物体の車両の車室内への侵入等を予測する周辺監視装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の車室内への侵入検知装置として、該車両のドアが開けられたときに異常であると判定して警報等を行うものがよく知られている。また、例えば特許文献1に示されているように、車室内に人が侵入したときに生じるドップラーシフトを利用して人の車室内への侵入を検知するものもある。
【特許文献1】特開2004−181982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記従来の侵入検知装置では、人が車室内に侵入した後に漸く検知できるものであるため、手遅れとなる場合が多い。
【0004】
そこで、特許文献1の考え方を更に推し進めて、ドップラーセンサにより事前に人等の移動物体の侵入を予測して、侵入が予測される場合に警報を行う等の対応を行うようにすることが考えられる。このドップラーセンサは、マイクロ波等の送信波を発射して、該送信波が物体で反射してなる反射波を受信し、これら送信波及び反射波の周波数のずれ量(上記物体の移動速度に応じて変化)を信号として出力するものである。そして、ドップラーセンサからの出力信号をFFT解析することで、所定の周波数範囲を所定数の一定周波数幅に分割してなる各バンド幅毎に周波数レベルを求め、該バンド幅の周波数レベルに基づいて移動物体の動きを監視することになる。
【0005】
しかしながら、ドップラーセンサは、特定の周波数を発する蛍光灯の光等の影響を受け易く、このような周波数がドップラーセンサに対して外乱周波数となって、その周波数を含むバンド幅の周波数レベルがかなり高くなってしまう。この結果、侵入の予測が不正確となる可能性が高くなる。特に人が車室内に侵入する前では、送信波が人以外の物にも多数反射するため、これらがノイズとして存在し、このため、上記のような外乱周波数が存在しない環境下であっても、人の動きを正確に把握することが元々困難な状況にあり、このような状況下で外乱周波数が存在すると、侵入の予測がより一層不正確となる。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記のようにドップラーセンサを用いて、該ドップラーセンサの設置位置周辺に位置する移動物体の動きを監視する場合に、外乱周波数が存在する環境下にあっても、監視すべき移動物体(特に人)の動きを正確に把握できるようにして、該移動物体の車両の車室内への侵入等を正確に予測できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、FFT解析により周波数レベルが求められた全バンド幅のうち所定の周波数範囲の最大及び最小周波数を含むバンド幅を除く少なくとも1つが、第1の設定レベル以上の周波数レベルとなる特定バンド幅である場合において、該特定バンド幅に対して周波数の高い側及び低い側にそれぞれ隣接する2つのバンド幅の周波数レベルが共に、上記第1の設定レベルよりも低い第2の設定レベル以下であるときには、上記特定バンド幅の周波数レベルを低下させるようにした。
【0008】
具体的には、請求項1の発明では、ドップラーセンサからの出力信号をFFT解析することで、所定の周波数範囲を所定数の一定周波数幅に分割してなる各バンド幅毎に周波数レベルを求め、該バンド幅の周波数レベルに基づいて、該ドップラーセンサの設置位置周辺に位置する移動物体の動きを監視する周辺監視装置を対象とする。
【0009】
そして、上記FFT解析により周波数レベルが求められた全バンド幅のうち上記所定の周波数範囲の最大及び最小周波数を含むバンド幅を除く少なくとも1つが、第1の設定レベル以上の周波数レベルとなる特定バンド幅である場合において、該特定バンド幅に対して周波数の高い側及び低い側にそれぞれ隣接する2つの隣接バンド幅の周波数レベルが共に、上記第1の設定レベルよりも低い第2の設定レベル以下であるときには、上記特定バンド幅の周波数レベルを低下させる補正手段を備えているものとする。
【0010】
すなわち、外乱周波数が存在する環境下で移動物体が存在しない場合には、その外乱周波数を含むバンド幅の周波数レベルのみが他のバンド幅に比べてかなり高くなるので、第1の設定レベル以上の周波数レベルとなる特定バンド幅に対して周波数の高い側及び低い側にそれぞれ隣接する2つの隣接バンド幅の周波数レベルが第1の設定レベルよりも低い第2の設定レベル以下であれば、その特定バンド幅は、外乱周波数を含むバンド幅であると認定することができる。一方、移動物体が存在する場合には、外乱周波数が存在しても、隣接バンド幅の周波数レベルも特定バンド幅の周波数レベルと同じ程度に高くなるので、隣接バンド幅の周波数レベルが第2の設定レベルよりも大きければ、移動物体と認定することができる。また、外乱周波数が複数存在する場合であっても、それら外乱周波数同士で、通常、或る程度の周波数差があり、複数の外乱周波数によって隣接バンド幅も特定バンド幅となることは殆どなく、特定バンド幅とその隣接バンド幅の周波数レベルとを比較することで、全ての外乱周波数を含むバンド幅を正確に認定することができる。そして、この特定バンド幅の周波数レベルは補正手段により低下されるので、外乱周波数の影響がなくなり、監視すべき移動物体の動きを正確に把握できるようになる。
【0011】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、補正手段は、特定バンド幅の周波数レベルを2つの隣接バンド幅の周波数レベルの平均値に設定するように構成されているものとする。
【0012】
このことにより、特定バンド幅の周波数レベルを通常のノイズレベルと略同じレベルに設定して、監視すべき移動物体の動きをより正確に把握できるようになる。
【0013】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、ドップラーセンサは、車両の車室内に設置されており、上記車両周辺に位置する移動物体の動きを監視して、該移動物体の該車両の車室内への侵入を予測するように構成されているものとする。
【0014】
すなわち、車両はどこに停車するか分からないので、予め外乱周波数を予測しておくことは困難であるが、本発明では、予め外乱周波数を予測できなくても、外乱周波数の影響をなくして、監視すべき移動物体の動きを正確に把握することができ、本発明の有効な利用を図ることができる。そして、人が車室内に侵入する前に事前にその侵入を正確に予測することができるようになる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の周辺監視装置によると、周波数レベルが第1の設定レベル以上となる特定バンド幅が存在する場合において、該特定バンド幅に対して周波数の高い側及び低い側にそれぞれ隣接する2つの隣接バンド幅の周波数レベルが共に、上記第1の設定レベルよりも低い第2の設定レベル以下であるときには、上記特定バンド幅の周波数レベルを低下させるようにしたことにより、外乱周波数の影響をなくして、監視すべき移動物体の動きを正確に把握できるようになり、該移動物体の車両の車室内への侵入等を正確に予測できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る周辺監視装置の構成を示し、この周辺監視装置は、ドップラーセンサ1と、該ドップラーセンサ1からの出力信号を受けて、異常であるか正常であるかを判定して、異常であれば警報を行うためにLED等を作動させる制御を行うコントローラ11とで構成されている。
【0018】
上記ドップラーセンサ1は、誘電体発信器2を有していて、送信用アンテナ3より周波数fsの送信波(本実施形態では24GHzのマイクロ波)を発射するとともに、該送信波が物体で反射してなる反射波を受信用アンテナ4で受信するようになっている。この反射波の周波数foは、上記物体の移動速度に応じて変化する。そして、ドップラーセンサ1は、ショットキーバリヤダイオード5により、送信波及び反射波の周波数のずれ量|fs−fo|を信号(オフセット電圧からなるアナログ信号)として出力するようになっており、この信号により移動している物体を検知できるとともに、その移動速度も分かることになる。
【0019】
上記ドップラーセンサ1は、図2に示すように、車両C(自動車)の車室内前端部に設けられたインストルメントパネル21(マイクロ波を通す材質で構成されている)内の車幅方向中央部に設置されていて、該設置位置の車両後方側の一点鎖線で囲む範囲、つまり車室及び車両Cの側方及び後方を取り囲む範囲(車両Cから約1m以内の範囲)を移動物体の検知範囲としている。
【0020】
上記ドップラーセンサ1からの出力信号は、アンプ9に入力されて増幅された後、コントローラ11内に設けたA/D変換器12に入力されて、このA/D変換器12によりアナログ信号がデジタル信号に変換され、このデジタル信号がFFT解析部13に入力される。
【0021】
上記FFT解析部13は、ドップラーセンサ1からの出力信号をFFT解析することで、所定の周波数範囲を所定数の一定周波数幅に分割してなる各バンド幅毎に周波数レベルを求める。本実施形態では、移動物体として人を前提としているので、所定の周波数範囲としては0〜126Hzで十分である。そして、一定周波数幅は2Hzとし、63個のバンド幅の周波数レベルをそれぞれ求めることになる。尚、一定周波数幅については、後述の如く外乱周波数の影響を確実になくす観点からは1Hz程度に小さくするのが好ましいが、本実施形態では、コントローラ11の処理能力や演算速度を考慮して2Hzとしている(こうしても外乱周波数を十分になくすことができる)。
【0022】
例えば、人が車両Cの側方から車両Cのサイドドアに接近して立ち止まり、それから遠ざかる場合、上記バンド幅の周波数レベルは、図3(a)〜(f)のように変化する。すなわち、図3(a)では、上記検知範囲に入って間もないときであり、そこから人が車両Cに接近するに従って、図3(b)及び(c)に示すように、特に上記周波数範囲の中央部から少し低い周波数を含む複数のバンド幅の周波数レベルが上昇していき、これに伴って、全バンド幅の周波数レベルの総和(所定の周波数範囲内における全エネルギー量)も上昇していく。そして、人が車両Cに最も接近して立ち止まると、図3(d)に示すように、上記バンド幅の周波数レベルが低下し、これに伴って、全バンド幅の周波数レベルの総和も低下する。このときの周波数レベルは通常のレベルに近いノイズレベルである。続いて、人がそこから遠ざかると、図3(e)に示すように、上記バンド幅の周波数レベルが上記接近時と同レベルに上昇し、やがて人が上記検知範囲の外側まで移動すると、図3(f)に示すように、上記バンド幅の周波数レベルが低下する。
【0023】
ここで、特定の周波数を発してその周波数がドップラーセンサ1に対して外乱周波数となるもの(例えば50Hzや60Hzの蛍光灯の光等)が存在しかつ移動物体が存在しない場合には、図4に示すように、その外乱周波数を含むバンド幅(図4では、3つ存在している)の周波数レベルのみが第1の設定レベル以上と高くなり、他のバンド幅の周波数レベルは、第1の設定レベルよりも低い第2の設定レベル以下となる(他のバンド幅の周波数レベルは通常のノイズレベルである)。したがって、上記FFT解析により周波数レベルが求められた全バンド幅のうち上記所定の周波数範囲の最大及び最小周波数を含むバンド幅を除く少なくとも1つが、第1の設定レベル以上の周波数レベルとなる特定バンド幅である場合において、該特定バンド幅に対して周波数の高い側及び低い側にそれぞれ隣接する2つの隣接バンド幅の周波数レベルが共に、上記第1の設定レベルよりも低い第2の設定レベル以下であれば、特定バンド幅は外乱周波数を含むバンド幅であると認定することができる。一方、移動物体(人)が存在する場合には、外乱周波数が存在しても、隣接バンド幅の周波数レベルも特定バンド幅の周波数レベルと同じ程度に高くなるので、隣接バンド幅の周波数レベルが第2の設定レベルよりも大きければ、移動物体と認定することができる。
【0024】
上記FFT解析部13における解析結果は外乱周波数除去部14に入力され、この外乱周波数除去部14は、上記外乱周波数を除去する。すなわち、上記特定バンド幅が存在する場合には、該特定バンド幅に対して周波数の高い側及び低い側にそれぞれ隣接する2つの隣接バンド幅の周波数レベルが共に上記第2の設定レベル以下であるか否かを判定し、2つの隣接バンド幅の周波数レベルが共に第2の設定レベル以下であるときには、上記特定バンド幅の周波数レベルを低下させるようにする。このことで、外乱周波数除去部14は、特定バンド幅の周波数レベルを低下させる補正手段を構成することになる。本実施形態では、特定バンド幅の周波数レベルを2つの隣接バンド幅の周波数レベルの平均値に設定する。これにより、外乱周波数を通常のノイズレベルに低下させることができ、外乱周波数による影響をなくすことが可能となる。尚、特定バンド幅の周波数レベルを、2つの隣接バンド幅の周波数レベルの平均値に設定する代わりに、一定のレベル(0を含む)に設定してもよい。
【0025】
そして、上記FFT解析部13における解析結果は、上記外乱周波数除去部14で外乱周波数が除去された後に異常/正常判定部15に入力される。この異常/正常判定部15は、上記全バンド幅の周波数レベルの総和を所定時間(第1所定時間と、該第1所定時間よりも長い第2所定時間とがある)毎に演算するとともに、この演算された総和に基づいて基準レベル(つまりノイズレベル)を設定する。この基準レベルに所定レベルを加算して異常レベルを設定する。本実施形態では、後に詳細に説明するように、レベルが互いに異なる3つの異常レベル(第1〜第3異常レベル)を設定する。そして、上記演算された総和と上記異常レベルとの比較により、異常であるか正常であるかを判定する。このことで、異常/正常判定部15は、上記全バンド幅の周波数レベルの総和を所定時間毎に演算する演算手段と、該演算手段により演算された総和に基づいて基準レベルを設定する基準レベル設定手段と、基準レベルに所定レベルを加算して、異常レベルを設定する異常レベル設定手段と、上記総和と上記異常レベルとの比較により、異常であるか正常であるかを判定する判定手段とを構成する。尚、上記所定時間毎に演算された総和は全てメモリに記憶される。また、上記異常/正常判定部15における判定結果も上記メモリに記憶される。
【0026】
上記異常/正常判定部15における判定結果(上記メモリの内容)は信号出力制御部16に出力され、この信号出力制御部16は、この判定結果、及び上記総和(最大値)と上記異常レベルとの関係に応じて、後述の如く、LEDを点灯させたり、音声による警報を行ったり、車両Cのユーザが所持している携帯機に異常があった旨を通報したりする制御を行う。
【0027】
尚、本周辺監視装置には、上記異常レベルを変更するための異常レベル変更ダイヤルスイッチと、音声による警報を行えないようにするためのキャンセルスイッチとが設けられており、この異常レベル変更ダイヤルスイッチのダイヤル操作量によって、車両Cのユーザが上記異常レベル(特に第1異常レベル)を好みのレベルに変更することができるとともに(但し、最大変更量は制限される)、キャンセルスイッチの操作により、異常であると判定されても、音声による警報を行なわないようにすることができる。
【0028】
上記車両Cのユーザが該車両Cを止めて車両Cから離れる際に、車両Cのドアを施錠するためのキーレス施錠スイッチを操作すると、スタート信号がON状態となり、このスタート信号がON状態となったときからt1時間(車両Cのユーザが検知範囲外に出ることが十分に可能な時間(例えば10秒))経過後に、ドップラーセンサ1がON状態となって作動し始め、この作動開始直後のt2時間の間(例えば10秒間)に、異常/正常判定部15が第1所定時間毎に上記全バンド幅の周波数レベルの総和(上述の如く特定バンド幅の周波数レベルは、2つの隣接バンド幅の周波数レベルの平均値として加算される)を演算し、そのt2時間の間に得られた数の上記総和を平均し、この平均値を最初の基準レベルに設定し、この最初の基準レベルの設定以降に、ドップラーセンサ1の設置位置周辺(車両C周辺)に位置する移動物体(人)の動きを監視して、該移動物体の該車両Cの車室内への侵入を予測することになる。一方、車両Cのドアを解錠するためのキーレス解錠スイッチを操作したときには、上記スタート信号がOFF状態となって、監視を止める。
【0029】
上記異常/正常判定部15は、上記異常レベルとして、レベルが互いに異なる第1〜第3異常レベルを設定する。第1異常レベルは、例えば図3(b)に示すように、人が車両Cに接近しつつあるレベルであって、第1〜第3異常レベルのうち最も低いレベルである。第2異常レベルは、例えば図3(c)に示すように、人が車両Cに対し車室内を覗き込める位置まで接近したようなレベルであって、2番目に高いレベルである。第3異常レベルは、人が車両Cの車室内に侵入したレベルであって、最も高いレベルである。
【0030】
そして、異常/正常判定部15は、所定時間毎に演算された上記総和が上記第1異常レベルを越えかつ該第1異常レベルを越えたときから第1設定時間T1(例えば6秒)経過前に該第1異常レベル以下となったときには、異常であると判定する。すなわち、車両Cの車室内に侵入しようとする人は、通常、車両Cにかなり接近し、その接近後に立ち止まって車室内を覗き込む。したがって、この人の動きは、図3(a)〜(d)に示すように変化するので、上記総和は、第1異常レベルを越えたときから第1設定時間T1後には、第1異常レベル以下となる。このとき、異常/正常判定部15は、異常である(侵入が予測される、又は侵入の可能性が高い)と判定する。
【0031】
上記異常であるとの判定後に、信号出力制御部16は、音声による警報を行うか、又は、音声による警報を行うことに加えて、上記携帯機に異常があった旨を通報する。すなわち、上記総和が上記第1異常レベルを越えてから該第1異常レベル以下となるまでの間に、その総和の最大値が第1異常レベルを越えかつ第3異常レベル以下であった場合には、音声による警報を例えば5秒間程度行うが、携帯機への通報までは行わない。一方、上記総和の最大値が第3異常レベルを越えていた場合には、車室内に既に侵入された可能性が高いと判定し、音声による警報及び携帯機への通報の両方を行う。そして、信号出力制御部16は、上記総和が上記第1異常レベルを越えている間(但し、後述の如く正常であると判定されたときを除く)、異常/正常判定部15により異常であると判定されなくても、LEDを点滅させて、人が接近しないように光による威嚇を行う。尚、上記総和が上記第1異常レベルを越えてから該第1異常レベル以下となるまでの間に、その総和の最大値が第2異常レベルを越えた場合に、音声による警報及び携帯機への通報の両方を行うようにしてもよい。
【0032】
一方、上記異常であるとの判定前において、上記総和が上記第1異常レベルを越えないとき、若しくは、上記総和が上記第1異常レベルを越えかつ該第1異常レベルを越えたときから上記第1設定時間T1経過しても該第1異常レベル以下とならないとき、又は、上記異常であるとの判定後において、上記総和が第2設定時間T2(例えばT1と同程度)以上継続して上記第1異常レベルを越えないときには、正常であると判定する。
【0033】
ここで、上記異常であるとの判定前において、上記総和が上記第1異常レベルを越えないとき、又は、上記異常であるとの判定後において、上記総和が第2設定時間T2以上継続して上記第1異常レベルを越えないときには、該第1異常レベルを越えたときよりも、上記総和を演算する間隔である所定時間を長くする(第2所定時間(例えば1秒程度)にする)。すなわち、ドップラーセンサ1を間欠作動させ、これに合わせて演算の間隔を長くする。このようにしても、正常であるとの判定時であるので、特に問題は生じない。また、ドップラーセンサ1の動作電流を低減して、消費電力を低減することができる。尚、上記総和が第1異常レベルを越えたときには、ドップラーセンサ1を連続作動させ、所定時間も第1所定時間と短くする。
【0034】
また、上記異常であるとの判定前において、上記総和が上記第1異常レベルを越えないとき、又は、上記異常であるとの判定後において、上記総和が第2設定時間T2以上継続して上記第1異常レベルを越えないときには、上記基準レベルを、所定のタイミングで、それまでに演算された、第1異常レベルを越えていない複数の総和に基づいて設定した新たな基準レベルに更新する。例えば、10回総和を演算したタイミングで、その10個(但し、後述の如く一定条件を満たさないものを除く)の総和の平均値を求めて、該平均値を新たな基準レベルに設定する。その際、現在の基準レベルを含んだ所定のレベル範囲内にない総和を、新たな基準レベルの設定に用いないようにする。これは、突発的に大きなノイズが生じたとき等のデータを排除して、基準レベルを精度良く求めるためである。そして、そのまま上記総和が上記第1異常レベルを越えなければ、再び10回総和を演算したタイミングで、その10個の総和の平均値を求めて、該平均値を新たな基準レベルに設定する。尚、本実施形態では、新たな基準レベルと現在の基準レベルとの差が所定値以上である場合(特に新たな基準レベルが基準レベルに対し所定値以上高い場合)には、基準レベルを新たな基準レベルに更新しないようにする。これは、車両Cの周辺に人がいるために上記平均値が高くなった可能性があり、その人が単なる通行人であって異常であるとまでは判断できないが、その人を監視する必要はあるからである。つまり、基準レベルを高くすると、異常であるとの判定がなされなくなる可能性があるので、基準レベルを更新しないようにする。
【0035】
また、上記総和が上記第1異常レベルを越えかつ該第1異常レベルを越えたときから第1設定時間T1経過しても該第1異常レベル以下とならないときにも、上記基準レベルを、上記第1設定時間T1内に演算された総和に基づいて設定した新たな基準レベルに更新する(このときには、新たな基準レベルと現在の基準レベルとの差に関係なく更新する)。すなわち、上記総和が第1設定時間T1以上第1異常レベルを越えるということは、人が車両Cに接近して車室内を覗き込むために立ち止まったのではなくて、携帯電話の電波等の影響でノイズレベルが高くなったと判断して、基準レベルをその高いレベルに更新する。このときも、例えば、第1設定時間T1内に演算された複数の総和の平均値を求めて、該平均値を新たな基準レベルに設定すればよい。この基準レベルの更新により、第1〜第3異常レベルは上昇するので、上記総和が上記第1異常レベルを越えなくなり、正常であると判定されるようになる。これにより、ドップラーセンサ1を間欠作動させることになる。
【0036】
一方、上記総和が上記第1異常レベルを越えたときには、正常であるとの判定がなされるまでは、基準レベルを更新しない。これは、上記総和が上記第1異常レベルを越えたときには、異常であると判定される可能性が高いにも拘わらず、この段階で基準レベルを更新してしまうと、異常であるとの判定がなされなくなる可能性があるからである。
【0037】
次に、上記コントローラの基本的な制御動作を、図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0038】
先ず、最初のステップS1で、スタート信号がON状態にあるか、OFF状態にあるかを判定し、この判定の結果、ON状態にあるときには、ステップS2に進む一方、OFF状態であるときには、ステップS1の動作を繰り返す。
【0039】
上記ステップS2では、スタート信号がON状態となったときからt1時間経過するまでの間、初期設定動作を行うとともに、LEDを点滅させる。この初期設定については、具体的には、上記異常レベル変更ダイヤルスイッチの操作量に応じて、異常レベルを設定する際に基準レベルに加算する所定レベルを変更設定し、キャンセルスイッチの状態に応じて、異常であるとの判定時に音声警報を行う警報有りモードに設定するか、音声警報を行わない警報無しモードに設定する。また、作動状態モードを「0」に設定しておく。この作動状態モードは、ドップラーセンサ1が間欠作動状態にあるときには、「1」に設定され、連続作動状態にあるときには、「2」に設定されるが、ドップラーセンサ1の作動開始直後のt2時間の間だけは、このように「0」に設定され(この間、ドップラーセンサ1は連続作動状態にある)、後述のFFT解析・判定処理(ステップS4)を一度行うと、その後は、ドップラーセンサ1の作動状態に応じて、「1」又は「2」に設定されるようになっている。
【0040】
次のステップS3では、再びスタート信号の状態を判定し、この判定の結果、ON状態であるときには、ステップS4に進む一方、OFF状態であるときには、上記ステップS1に戻る。
【0041】
上記ステップS4では、FFT解析部13、外乱周波数除去部14及び異常/正常判定部15において、後に詳細に説明するFFT解析・判定処理を行い、次のステップS5では、信号出力制御部16において、上記FFT解析・判定処理における判定結果、及び全バンド幅の周波数レベルの総和(最大値)と異常レベルとの関係に応じて、LEDを点灯させたり、音声による警報を行ったり、携帯機に異常があった旨を通報したりする制御を行う。
【0042】
次のステップS6では、上記作動状態モードを判定し、この作動状態モードが「1」であるときには、ステップS7に進む一方、作動状態モードが「2」であるときには、上記ステップS3に戻る。
【0043】
上記ステップS7では、スタート信号のON/OFF状態を判定し、ON状態にあるときには、ステップS8に進む一方、OFF状態であるときには、上記ステップS1に戻る。
【0044】
上記ステップS8では、上記ステップS4と同様に、FFT解析・判定処理を行い、次のステップS9で、上記作動状態モードを判定し、この作動状態モードが「1」であるときには、上記ステップS7に戻る一方、作動状態モードが「2」であるときには、上記ステップS3に戻る。
【0045】
上記ステップS4又はS8におけるFFT解析・判定処理は、具体的には、図6に示すようになっている。
【0046】
すなわち、ステップS101で、ドップラーセンサ1からの出力信号を入力し、次のステップS102で、FFT解析部13において、ドップラーセンサ1からの出力信号をFFT解析することで、所定の周波数範囲を所定数の一定周波数幅に分割してなる各バンド幅毎に周波数レベルを求める。
【0047】
次のステップS103では、外乱周波数除去部14において、外乱周波数除去処理を行う。この外乱周波数除去処理の具体処理を、図7に示す。この外乱周波数除去処理は、上記所定の周波数範囲の最大及び最小周波数を含むバンド幅を除いて、各バンド幅毎に順次行われる。
【0048】
すなわち、ステップS201で、当該バンド幅の周波数レベルが第1の設定レベルX以上であるか否かを判定し、この判定がYESであるとき(当該バンド幅が特定バンド幅であるとき)には、ステップS202に進む一方、判定がNOであるとき(当該バンド幅が特定バンド幅でないとき)には、ステップS204に進む。
【0049】
上記ステップS202では、当該バンド幅に対して周波数の高い側及び低い側にそれぞれ隣接する2つの隣接バンド幅の周波数レベルが第2の設定レベルY以下であるか否かを判定し、この判定がYESであるときには、ステップS203に進み、しかる後にステップS204に進む一方、判定がNOであるときには、そのままステップS204に進む。
【0050】
上記ステップS203では、当該バンド幅の周波数レベルを修正する。つまり、上述の如く、当該バンド幅の周波数レベルを2つの隣接バンド幅の周波数レベルの平均値に設定する。
【0051】
上記ステップS204では、全バンド幅についてステップS201〜S203の処理が終了したか否かを判定し、この判定がNOであるときには、上記ステップS201に戻って次のバンド幅について上記ステップS201〜S203の処理を繰り返す一方、判定がYESであるときには、外乱周波数除去処理を終了する。
【0052】
この外乱周波数除去処理により、蛍光灯の光等のような外乱周波数による影響がなくなり、異常/正常判定部15において、異常であるか正常であるかの判定を正確に行うことができるようになる。
【0053】
図6のフローチャートに戻って、次のステップS104では、異常/正常判定部15において、基準レベル計算処理を行う。この基準レベル計算処理の具体処理を、図8に示す。
【0054】
すなわち、ステップS301で、上記作動状態モードを判定する。この作動状態モードが「0」であるときには、ステップS302に進んで、N1回(t2時間内に演算された回数)分のデータ(この基準レベル計算処理では、全バンド幅の周波数レベルの総和のことをデータという)の平均値を基準レベルに設定し、しかる後に基準レベル計算処理を終了する。
【0055】
また、上記作動状態モードが「1」であるときには、ステップS303に進んで、N2回(例えば10回)分のデータのうち、一定条件を満たしたデータのみの平均値を新たな基準レベルに設定する。この一定条件を満たしたデータとは、現在の基準レベルを含んだ上記所定のレベル範囲内にあるデータのことである。つまり、上述の如く、現在の基準レベルを含んだ所定のレベル範囲内にないデータ(突発的に大きなノイズが生じたとき等のデータ)を、新たな基準レベルの設定に用いないようにする。こうして基準レベルを新たな基準レベルに更新し、しかる後に基準レベル計算処理を終了する。
【0056】
さらに、上記作動状態モードが「2」であるときには、ステップS304に進んで、データが第1異常レベルを越えてから第1設定時間T1経過したか否かを判定し、この判定がYESであるときには、ステップS305に進み、しかる後に基準レベル計算処理を終了する一方、判定がNOであるときには、ステップS306に進み、しかる後に基準レベル計算処理を終了する。
【0057】
上記ステップS305では、N3回(T1時間内に演算された回数)分のデータの平均値を新たな基準レベルに設定し、この新たな基準レベルに更新する。一方、上記ステップS306では、基準レベルをそのままにして更新しないようにする。
【0058】
再び図6のフローチャートに戻って、次のステップS105では、異常/正常判定部15において、異常/正常判定処理を行い、しかる後にFFT解析・判定処理を終了する。
【0059】
上記異常/正常判定処理は、具体的には、図9に示す如く行われる。すなわち、ステップS401では、上記設定した基準レベルに上記所定レベル(異常レベル変更ダイヤルスイッチの操作量に応じて変更したもの)を加算して、異常レベル(第1〜第3異常レベル)を設定し、全バンド幅の周波数レベルの総和と該異常レベルとの比較により、異常であるか正常であるかを判定し、この判定結果をメモリに記憶する。
【0060】
次のステップS402では、上記警報有りモードに設定されているか、上記警報無しモードに設定されているか否かを判定し、警報無しモードに設定されているときには、ステップS403に進み、しかる後にステップS405に進む一方、警報有りモードに設定されているときには、ステップS404に進み、しかる後にステップS405に進む。
【0061】
上記ステップS403では、全バンド幅の周波数レベルの総和の最大値を上記メモりに記憶するだけとし、信号出力制御部16には該メモリの内容を出力しないようにする。一方、上記ステップS404では、信号出力制御部16に上記メモリの内容を出力する。
【0062】
上記ステップS405では、携帯電話のOFF信号を検知したか否かを判定し、この判定がYESであるときには、ステップS406に進んで、上記メモリを初期化(リセット)し、しかる後に異常/正常判定処理を終了する一方、判定がNOであるときには、そのまま異常/正常判定処理を終了する。尚、上記ステップS404の判定は、一定時間内に全バンド幅の周波数レベルの総和が一定レベル以上低下したか否かによって行う。すなわち、携帯電話がON状態になっていると、その電波によって全バンド幅の周波数レベルの総和が高くなり、OFF状態になると、全バンド幅の周波数レベルの総和が急激に低下するので、一定時間内に全バンド幅の周波数レベルの総和が一定レベル以上低下したときに、携帯電話のOFF信号を検知したと判定する。
【0063】
次に、上記周辺監視装置の動作の基本例を図10のタイムチャートに基づいて説明する。
【0064】
先ず、車両Cのユーザがキーレス施錠スイッチを操作してスタート信号がON状態となると、このON状態となったときからt1時間経過後に、ドップラーセンサ1がON状態となって作動し始め、この作動開始からt2時間の間に、全バンド幅の周波数レベルの総和を所定時間(第1所定時間)毎に演算し、そのt2時間の間に得られた数(N1)の上記総和を平均して、この平均値を最初の基準レベルに設定する。図10では、最初の基準レベルがAに設定される。
【0065】
尚、ユーザは、上記t1時間の間に、ドップラーセンサ1の検知範囲外に完全に出るようにする。
【0066】
上記t2時間経過後に、ドップラーセンサ1の設置位置周辺(車両C周辺)に位置する移動物体(人)の動きが監視される。図10では、所定時間毎に演算された上記総和が、上記基準レベル(及び異常レベル変更ダイヤルスイッチの操作量)に基づいて設定した第1異常レベルを越えないので、正常であると判定する。このとき、ドップラーセンサ1は間欠作動状態にあり、上記総和の演算間隔である所定時間は第2所定時間となる。そして、N2回総和を演算したタイミングで、そのN2個(但し、上記所定のレベル範囲外のものは除く)の総和の平均値を求めて、該平均値を新たな基準レベルに設定更新する。図10では、基準レベルが、B、Cと順に更新されていく(この基準レベルの更新により、図10における「全バンド幅の周波数レベルの総和の変化」の欄の「基準レベル」、「第1異常レベル」等のレベルが変化することになるが、基準レベルの変化量は小さいので、図10では変化させていない)。
【0067】
図10では、基準レベルがCに更新された後に、上記総和が第1異常レベルを越えることになる。これにより、LEDが点滅する。また、ドップラーセンサ1は連続作動状態となるとともに、上記総和の演算間隔である所定時間が第1所定時間となる。基準レベルは、更新されずCのままとなる。
【0068】
そして、上記総和が第1異常レベルを越えたときからT1時間経過前に第1異常レベル以下となる。この間の上記総和の最大値は、第1異常レベルを越えかつ第3異常レベル以下である。これにより、異常であると判定されて、音声警報が行われる。但し、携帯機への通報までは行われない。
【0069】
上記異常であるとの判定後、T2時間経過前に上記総和が再び第1異常レベルを越えることになる。これにより、LEDが再び点滅する。そして、上記総和が第1異常レベルを越えたときからT1時間経過前に第1異常レベル以下となり、異常であると判定されて、音声警報が行われる。このときの上記総和の最大値も、第1異常レベルを越えかつ第3異常レベル以下であるので、携帯機への通報までは行われない。尚、その後、異常警報を行っている間に、上記総和が第1異常レベルを越えかつ該第1異常レベルを越えたときからT1時間経過前に該第1異常レベル以下となって、異常であると判定されるが、異常警報を行っている間は、その判定結果が信号出力制御部16に出力されない。
【0070】
続いて、図10では、上記最後の異常であるとの判定後において、上記総和がT2時間以上継続して第1異常レベルを越えないので、正常であると判定される。これにより、ドップラーセンサ1は間欠作動状態となり、上記総和の演算間隔である所定時間は第2所定時間となる。また、基準レベルが、上記T2時間内に演算された、第1異常レベルを越えていない総和に基づいて設定した新たな基準レベルDに更新される。それからしばらくの間、上記総和が第1異常レベルを越えないので、正常であるとの判定が続き、基準レベルはEに更新される。
【0071】
図10では、基準レベルがEに更新された後に、上記総和が第1異常レベルを越える。これにより、LEDが点滅する。また、ドップラーセンサ1は連続作動状態となるとともに、上記総和の演算間隔である所定時間が第1所定時間となる。基準レベルは、更新されずEのままとなる。
【0072】
そして、上記総和が第1異常レベルを越えたときからT1時間経過前に該第1異常レベル以下となる。このときの上記総和の最大値は、第3異常レベルを超える。これにより、異常であると判定されて、音声警報が行われるとともに、携帯機への通報がなさる。
【0073】
続いて、異常であるとの判定が数回あった後、上記総和が再び第1異常レベルを越えるが、異常レベルを越えたときからT1時間経過しても第1異常レベルを越えた状態が続く。これにより、携帯電話の電波等の影響でノイズレベルが上昇したと判断されて、正常であると判定される。そして、LEDの点滅は中止されるとともに、ドップラーセンサ1は間欠作動状態となり、上記総和の演算間隔である所定時間は第2所定時間となる。さらに、基準レベルが、上記T1時間内に演算された総和に基づいて設定した新たな基準レベルFに更新される。
【0074】
基準レベルがFに更新されると、基準レベルが大きく変化し、異常レベルがこれまでよりもかなり高くなるため、上記総和が高いレベルであっても、第1異常レベルを超えないことになる。この結果、正常であるとの判定が続き、基準レベルがG、Hと順に更新される。
【0075】
図10では、基準レベルがHに更新されるタイミングのあたりで、一定時間内に全バンド幅の周波数レベルの総和が一定レベル以上低下する。これにより、携帯電話のOFF信号が検知されたこととなり、メモリをリセットするとともに、そのリセット後に得た複数回(基準レベルを早く下げるべく、通常よりも少ない回数にする(例えば5回))の上記総和の平均値を新たな基準レベルに設定更新する。図10では、基準レベルがIに更新される。これにより、基準レベルが、最初のAと略同じレベルになり、異常レベルも最初と略同じレベルになる。
【0076】
その後、上記総和が第1異常レベルを越えず、基準レベルがJに設定更新され、やがて、ユーザが車両Cに戻ってキーレス解錠スイッチを操作することで、スタート信号がOFF状態となって、監視を止める。
【0077】
したがって、上記実施形態では、FFT解析により周波数レベルが求められた全バンド幅のうち所定の周波数範囲の最大及び最小周波数を含むバンド幅を除く少なくとも1つが、第1の設定レベル以上の周波数レベルとなる特定バンド幅である場合において、該特定バンド幅に対して周波数の高い側及び低い側にそれぞれ隣接する2つの隣接バンド幅の周波数レベルが共に、上記第1の設定レベルよりも低い第2の設定レベル以下であるときには、上記特定バンド幅の周波数レベルを低下させるようにしたので、全ての外乱周波数を含むバンド幅を正確に認定することができ、これら外乱周波数の影響をなくして、正常であるか異常であるかの判定を正確に行うことができる。よって、監視すべき移動物体(人)の動きを正確に把握することができ、移動物体の車両Cの車室内への侵入を正確に予測できるようになる。
【0078】
尚、上記実施形態では、ドップラーセンサ1を車両Cの車室内に設置して、車両C周辺に位置する移動物体(人)の動きを監視するようにしたが、ドップラーセンサ1の設置位置は、車両に限らず、どこであってもよい。例えば、ドップラーセンサ1を家の玄関等に設置して、移動物体の家の中への侵入を予測するようにすることも可能である。
【0079】
また、本発明は、ドップラーセンサを用いて、その出力信号をFFT解析するものであれば、どのような周辺監視装置にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、ドップラーセンサを用いて、該ドップラーセンサの設置位置周辺に位置する移動物体の動きを監視する周辺監視装置に有用であり、特に移動物体(人)の車両の車室内への侵入を予測する場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施形態に係る周辺監視装置の構成を示すブロック図である。
【図2】ドップラーセンサの設置位置及び検知範囲を示す車両の平面図である。
【図3】人が車両の側方から車両のサイドドアに接近して立ち止まり、それから遠ざかる場合において、各バンド幅毎の周波数レベルの変化を示す図である。
【図4】外乱周波数が存在する場合における各バンド幅毎の周波数レベルの一例を示す図である。
【図5】コントローラの制御動作を示すフローチャートである。
【図6】FFT解析・判定処理の具体処理を示すフローチャートである。
【図7】外乱周波数除去処理の具体処理を示すフローチャートである。
【図8】基準レベル計算処理の具体処理を示すフローチャートである。
【図9】異常/正常判定処理の具体処理を示すフローチャートである。
【図10】周辺監視装置の動作の基本例を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0082】
C 車両
1 ドップラーセンサ
11 コントローラ
13 FFT解析部
14 外乱周波数除去部(補正手段)
15 異常/正常判定部
16 信号出力制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドップラーセンサからの出力信号をFFT解析することで、所定の周波数範囲を所定数の一定周波数幅に分割してなる各バンド幅毎に周波数レベルを求め、該バンド幅の周波数レベルに基づいて、該ドップラーセンサの設置位置周辺に位置する移動物体の動きを監視する周辺監視装置であって、
上記FFT解析により周波数レベルが求められた全バンド幅のうち上記所定の周波数範囲の最大及び最小周波数を含むバンド幅を除く少なくとも1つが、第1の設定レベル以上の周波数レベルとなる特定バンド幅である場合において、該特定バンド幅に対して周波数の高い側及び低い側にそれぞれ隣接する2つの隣接バンド幅の周波数レベルが共に、上記第1の設定レベルよりも低い第2の設定レベル以下であるときには、上記特定バンド幅の周波数レベルを低下させる補正手段を備えていることを特徴とする周辺監視装置。
【請求項2】
請求項1記載の周辺監視装置において、
補正手段は、特定バンド幅の周波数レベルを2つの隣接バンド幅の周波数レベルの平均値に設定するように構成されていることを特徴とする周辺監視装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の周辺監視装置において、
ドップラーセンサは、車両の車室内に設置されており、
上記車両周辺に位置する移動物体の動きを監視して、該移動物体の該車両の車室内への侵入を予測するように構成されていることを特徴とする周辺監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−209202(P2006−209202A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16780(P2005−16780)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【出願人】(591273269)株式会社サーキットデザイン (29)
【Fターム(参考)】