説明

周辺監視装置

【課題】運転者の注意力を重要な障害物に集中させることができる周辺監視装置の提供。
【解決手段】車両の進行方向の状況を監視する周辺監視装置であって、上記車両の進行方向を含む領域を撮像する撮像部と、上記撮像部が得た撮像画像に基づき、上記領域にある障害物を検出する障害物検出部と、上記車両の運転者の心理状態を検出する心理状態検出部と、上記障害物検出部が検出した障害物のうち、上記注意喚起枠で囲う障害物の数を、上記心理状態検出部が検出した心理状態に基づいて設定する注意喚起対象設定部と、上記注意喚起対象設定部で設定された数の障害物を個別に囲う注意喚起枠を上記撮像画像に重畳する重畳部と、上記注意喚起枠が重畳された上記撮像画像を表示する表示部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は周辺監視装置に関し、より詳しくは、運転者に注意喚起する障害物の数を運転者の心理状態に基づいて設定することにより、運転者の注意力を重要な障害物に集中させることができる周辺監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、夜間の車両運転を支援するために、ナイトビューシステムが開発されている。ナイトビューシステムは、車両前方領域を近赤外線ランプで照射し、当該領域を近赤外線カメラで撮像する。ナイトビューシステムは、近赤外線カメラの撮像画像に基づき、歩行者を検出し、歩行者を囲う注意喚起枠を上記撮像画像に重畳してメータ表示部等に表示する。これにより、運転者に対し歩行者の存在が注意喚起される。ヘッドライトの光が届かない領域であっても、運転者は、メータ表示部等を見て、歩行者の存在を認識することができる。
【0003】
しかしながら、運転者が瞬間的に認識できる障害物の数には限界がある。特に、過度の緊張状態にあるような場合には、その数が減少する傾向にある。そのような実情を考慮せずに、赤外線カメラで撮像された歩行者全てについて注意喚起を促すと、運転者は注意力が分散し、最も注意すべき歩行者への注意力が低下してしまう可能性がある。
【0004】
特許文献1には、カメラの撮像画像に基づいて注意対象物を検出し、検出した注意対象物の危険度合および運転者の疲労度合に基づいて、注意喚起する対象物を選択するようにした車両用表示装置が提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、注意喚起対象物を選択する基準に、運転者の心理状態を入れていない。運転者の注意力の度合は、一般に、運転者の心理状態と密接な関係があると言われている。従って、運転者の心理状態を判断基準に入れることなく、注意喚起対象物を選択することは好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−240362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、運転者に注意喚起する障害物の数を運転者の心理状態に基づいて設定することにより、運転者の注意力を重要な障害物に集中させることができる周辺監視装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、
車両の進行方向の状況を監視する周辺監視装置であって、
上記車両の進行方向を含む領域を撮像する撮像部と、
上記撮像部が得た撮像画像に基づき、上記領域にある障害物を検出する障害物検出部と、
上記車両の運転者の心理状態を検出する心理状態検出部と、
上記障害物検出部が検出した障害物のうち、上記注意喚起枠で囲う障害物の数を、上記心理状態検出部が検出した心理状態に基づいて設定する注意喚起対象設定部と、
上記注意喚起対象設定部で設定された数の障害物を個別に囲う注意喚起枠を上記撮像画像に重畳する重畳部と、
上記注意喚起枠が重畳された上記撮像画像を表示する表示部とを備えた周辺監視装置である。
【0009】
第1の発明によれば、運転者の心理状態に基づいて、注意喚起枠で囲う障害物の数が設定される。これにより、運転者の心理状態が良好なときは注意喚起枠で囲う障害物の数を多目に設定し、運転者の心理状態が良好でないときは注意喚起枠で囲う障害物の数を少な目に設定することが可能となる。よって、第1の発明によれば、運転者の心理状態に応じて、注意喚起対象の数を適切な数に設定することができる。これにより、運転者の心理状態が良好な場合、および、運転者の心理状態が良好でない場合のいずれであっても、運転者の注意力を重要な障害物に集中させることができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、
上記心理状態検出部は、運転者から当該運転者の緊張度合を表すパラメータ値を検出し、検出したパラメータ値に基づき、運転者の緊張度合を検出することを特徴とする。
【0011】
第2の発明によれば、心理状態検出部が運転者の緊張度合を検出する。よって、第2の発明によれば、運転者の注意力を左右しやすい運転者の緊張度合を検出することができる。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、
上記心理状態検出部は、運転者の心拍数および発汗量の少なくともいずれか一方を検出し、検出した値に基づき、運転者の緊張度合を検出することを特徴とする。
【0013】
第3の発明によれば、緊張度合を反映する心拍数および発汗量に基づいて、運手者の緊張度合が検出される。よって、第3の発明によれば、ほぼ正確に運転者の緊張度合を検出することができる。
【0014】
第4の発明は、第2の発明において、
上記注意喚起対象設定部は、上記心理状態検出部が検出した心理状態に基づいて、運転者が認識可能な障害物の数を算出し、算出した数に基づいて、上記注意喚起枠で囲う障害物の数を設定することを特徴とする。
【0015】
第4の発明によれば、運転者の心理状態に基づいて、運転者が認識可能な障害物の数が算出され、その算出数に基づいて、注意喚起枠で囲う障害物の数が設定される。よって、運転者の心理状態に応じた適切な数の障害物に対して注意喚起がなされる。
【0016】
第5の発明は、第3の発明において、
上記注意喚起対象設定部は、上記心理状態検出部が検出した緊張度合に基づいて、運転者が認識可能な障害物の数を算出し、算出した数に基づいて、上記注意喚起枠で囲う障害物の数を設定することを特徴とする。
【0017】
第5の発明によれば、運転者の緊張度合に基づいて、運転者が認識可能な障害物の数が算出され、その算出数に基づいて、注意喚起枠で囲う障害物の数が設定される。よって、運転者の緊張度合に応じた適切な数の障害物に対して注意喚起がなされる。
【0018】
第6の発明は、第2乃至第5いずれかの発明において、
上記注意喚起対象設定部は、検出された障害物の中で運転者が特に注意すべき障害物を抽出し、
上記重畳部は、運転者が特に注意すべき障害物を囲う注意喚起枠を、他の障害物を囲う注意喚起枠よりも強調した態様で重畳することを特徴とする。
【0019】
第6の発明によれば、運転者が特に注意すべき障害物を囲う注意喚起枠が、他の障害物を囲む注意喚起枠よりも強調した態様で重畳される。よって、特に注意すべき障害物に対してより一層の注意喚起がなされる。
【0020】
第7の発明は、第1乃至第5いずれかの発明において、
上記車両の通過領域を予測する予測部をさらに備え、
上記注意喚起対象設定部は、上記予測部が予測した通過領域内の障害物の少なくとも一部に対して上記注意喚起枠を設定し、
上記注意喚起対象設定部が上記注意喚起枠を設定する障害物の数は、上記心理状態検出部が検出した心理状態に基づいて設定されることを特徴とする。
【0021】
第7の発明によれば、車両の予測通過領域内の障害物を囲うように注意喚起枠が重畳される。よって、車両の通過予想領域内の障害物に対して、集中的に注意喚起がなされる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、運転者に注意喚起する障害物の数を運転者の心理状態に基づいて設定することにより、運転者の注意力を重要な障害物に集中させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態に係る周辺監視装置の構成を示すブロック図
【図2】図1における表示部に表示される画面の一例を示す図
【図3】運転者に注意喚起する障害物を示す図
【図4】図1に示される周辺監視装置の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施形態)
本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る周辺監視装置の構成を示すブロック図である。図2は、図1における表示部に表示される画面の一例を示す図である。図3は、運転者に注意喚起する障害物を示す図である。
【0025】
本発明の実施形態に係る周辺監視装置1は、車両の進行方向の状況を監視しつつ、運転者に対して障害物への注意喚起を促す装置である。
【0026】
周辺監視装置1は、撮像部2と、障害物検出部3と、心理状態検出部6と、注意喚起対象設定部16と、重畳部4と、予測部11と、表示部5とを備える。障害物検出部3と、心理状態検出部6と、注意喚起対象設定部16と、重畳部4と、予測部11は、ECU(Electronic Control Unit)7内に設けられた機能部である。ECU7は、CPU、ROM、RAM(ROM、RAMを、以下、記憶部と総称する)等で構成されている。ECU(Electronic Control Unit)7には、赤外線投光器17と、運転者状態センサ19と、車両状態センサ20と、システムスイッチ18が接続されている。周辺監視装置1は、例えば、車両に搭載される。
【0027】
赤外線投光器17は、撮像部2で撮像する領域に近赤外線を照射する。運転者状態センサ19は、運転者の心理状態(具体的には緊張状態)を検出するめのセンサであり、例えば心拍数センサおよび発汗量センサの少なくともいずれか一方で構成される。車両状態センサ20は、車両の進行状態を検出するセンサであり、例えば、車速センサおよび操舵角センサで構成される。システムスイッチ18は、周辺監視装置1をオン、オフするためのスイッチであり、例えば、車外の明るさを検知して、車外が明るいときには周辺監視装置1をオフし、車外が暗いときには周辺監視装置1をオンするスイッチである。
【0028】
撮像部2は、車両の進行方向を含む領域を撮像する。撮像部2は、例えばデジタルカメラである。撮像部2は、具体的には、例えば、車両の前方、および左右斜め前方の領域を撮像する。
【0029】
障害物検出部3は、撮像部2が得た撮像画像に基づき、撮像領域にある障害物8を検出する。障害物8の種類は特に限定されないが、例えば、歩行者である。障害物検出部3は、例えばパターンマッチング法により、撮像画像内の歩行者等の障害物8を検出する。
【0030】
心理状態検出部6は、車両の運転者の心理状態を検出する。運転者の心理状態は、具体的には、運転者の緊張度合を意味する。緊張度合には、イライラ(苛々)度合が含まれる。心理状態検出部6は、運転者から当該運転者の緊張度合を表すパラメータ値を検出し、検出したパラメータ値に基づき、運転者の緊張度合を検出する。具体的には、心理状態検出部6は、運転者の心拍数および発汗量の少なくともいずれか一方をパラメータ値として検出し、検出したパラメータ値に基づき、運転者の緊張度合を算出する。
【0031】
予測部11は、車両の通過領域を予測する。通過領域の予測は、例えば、車両の操舵角、車速等に基づいて行うことができる。なお、通過領域の予測方法はこれに限られない。通過領域の予測は、例えば、カーナビゲーション情報、GPS情報に基づいて行われてもよい。
【0032】
注意喚起対象設定部16は、障害物検出部3が検出した障害物のうち、注意喚起枠9(図3参照)で囲う障害物8の数を、心理状態検出部6が検出した心理状態に基づいて設定する。具体的には、注意喚起対象設定部16は、心理状態検出部6が検出した心理状態(具体的には緊張度合)に基づいて、運転者が瞬間的に(同時に)認識可能な障害物8の数を算出し、算出した数に基づいて、注意喚起枠9で囲う障害物8の数を設定する。一般的に、運転者が過度に緊張した状態にあると、注意力が低下し、運転者が瞬間的に(同時に)認識できる障害物の数が低下するからである。運転者の緊張度合と、運転者が瞬間的に認識可能な障害物8の数(以下、認知可能数と称する場合がある)は、相互に対応付けられて記憶部に格納されている。注意喚起対象設定部16は、心理状態検出部6で算出された緊張度合と、記憶部に格納されている緊張度合を照合することにより、心理状態検出部6で算出された緊張度合に対応する認知可能数を算出する。算出された認知可能数に基づき、注意喚起枠9で囲う障害物8の数が設定される。
【0033】
また、注意喚起対象設定部16は、障害物検出部3が検出した障害物8のうち、運転者が注意すべき障害物8を抽出する。運転者が注意すべき障害物8は、特に限定されるものではないが、例えば、車両と衝突する可能性がある障害物であり、具体的には、車両がこれから通過すると予想される領域(通過予測領域13(図3参照))内に位置する障害物である。注意喚起対象設定部16は、予測部11が予測した通過予測領域13内の障害物8の少なくとも一部に対して注意喚起枠9を設定する。
【0034】
通過予測領域13内に位置する障害物8の数が、運転者が瞬間的に認識できる障害物8の数(認知可能数)より大きい場合には、通過予測領域13内に位置する障害物8のうち、比較的危険度の高い障害物が優先的に注意喚起枠9で囲まれる。一方、通過予測領域13内に位置する障害物8の数が、運転者が瞬間的に認識できる障害物8の数以下である場合には、通過予測領域13内にいる障害物8の全てが注意喚起枠9で囲まれる。通過予測領域13については、後ほど、詳述する。また、障害物検出部3は、運転者が注意すべき障害物8の中で運転者が特に注意すべき障害物8を抽出する。運転者が特に注意すべき障害物8については、後述する。
【0035】
重畳部4は、注意喚起対象設定部16で設定された数の障害物8を個別に囲う注意喚起枠9を、撮像画像に重畳する(図2参照)。図2に示される例では、撮像画像を表示する画面23内の様子が示されている。道路22に白線21が設けられており、左側の白線21の付近に障害物(歩行者)8が位置している。障害物8は、注意喚起枠9で囲まれて表示される。注意喚起枠9は、障害物検出部3が検出した障害物8全てを囲うのではなく、運転者が注意すべき障害物8を囲う。また、重畳部4は、運転者が特に注意すべき障害物8を囲う注意喚起枠9を、他の障害物8を囲う注意喚起枠9よりも強調した態様で重畳する(図3中段の○で囲んだアルファベット符号を参照)。
【0036】
図3の上段は、時間が経過したときの各シーンにおける車両の前方状況を示している。シーンaからシーンfに向かうにつれて時間が経過している。なお、図3の上段では、車両の位置が各シーン間で固定されて示されているが、図示の便宜上、固定しているだけであり、実際には、各障害物(歩行者)と車両は双方動いており、各障害物と車両の相対位置も刻々と変化している。
【0037】
各シーンにおいて、車両の通過予測領域13を規定する端部規定線14,15が示されている。通過予測領域13は、車両が通過すると予想される領域と、当該領域の車幅方向外側へある程度余裕を持たせた領域とを含んだ領域とされている。図3上段の「A」「B」「C」「X」「Y」は、障害物である歩行者の位置を示している。通過予測領域13内に位置する障害物(シーンaでは、障害物A,B,C)は太字で表わされている。太字で表わされた障害物は、車両と衝突する危険度が高い障害物であるため、注意喚起枠9で囲まれて表示部5に表示される(図3の中段、下段を参照)。なお、図3の中段は、図3の上段の各シーンにおいて、注意喚起枠9で囲まれる障害物を示している。図3の下段は、図3の上段の各シーンにおいて、注意喚起枠9で囲まれる障害物が表示部5で表示されるイメージを示している。通過予測領域13の外部に位置する障害物(シーンaでは、障害物X,Y)は、細字で表わされている。細字で表わされた障害物は、車両と衝突する危険度が低い障害物であるため、注意喚起枠9で囲まれずに表示部5に表示される(図3の中段、下段を参照)。
【0038】
図3の中段に示される一点鎖線は、各シーンにおける運転者の情報処理限界量を示す。この情報処理限界量は、具体的には、運転者が瞬間的に(同時に)認識できる障害物の数を意味している。情報処理限界量は、運転者の心理状態(具体的には緊張状態)に応じて変動する。運転者は、シーンaでは、緊張度合が比較的低いため、3人の歩行者を同時に認識できるが、シーンb,cでは、緊張度合が比較的高いため、2人の歩行者しか同時に認識できない。よって、シーンbでは、障害物A,B,Cが通過予測領域13内にいるものの、障害物A,Bのみが注意喚起枠9で囲まれる。なお、通過予測領域13内に位置する障害物の数が、運転者が同時に認識できる障害物の数より大きい場合には、通過予測領域13内にいる障害物のうち、比較的危険度の高い障害物が優先的に注意喚起枠9で囲まれる。従って、シーンbでは、車両に近い障害物A,Bのみが注意喚起枠9で囲まれ、シーンcでは、車両に近い障害物B,Cのみが注意喚起枠9で囲まれる。通過予測領域13内に位置していたにも拘わらず、一点鎖線(情報処理限界量)を超えていたために注意喚起枠9で囲まれなかった障害物は、その後、注意喚起枠9で囲まれる条件が揃ったときに、他の障害物を囲う注意喚起枠9よりも強調した態様で表示される。運転者が本来注意すべき障害物のうち、注意喚起されなかったものについては、その後、注意喚起の条件が揃ったときには、運転者に強く注意喚起する必要があるからである。例えば、シーンbでは注意喚起されなかった障害物Cは、シーンcでは強く注意喚起される。強く注意喚起する手法は特に限定されないが、例えば、注意喚起枠9を太く表示したり、注意喚起枠9の輝度を高くしたり、注意喚起枠9の色を一層目立つ色にしたり、或いは、注意喚起枠9をフラッシングする手法が挙げられる。シーンdでは、運転者の情報処理限界量が再び高くなったので、3人の歩行者(障害物)に対して注意喚起がなされており、しかも、シーンcでは注意喚起されなかった障害物Dに対して強い注意喚起がなされている。シーンeでは、3人に対して注意喚起することができるが、注意喚起すべき歩行者が2人なので、2人に対してのみ注意喚起がなされている。シーンfでは、4人に対して注意喚起することができるが、注意喚起すべき歩行者が1人なので、1人に対してのみ注意喚起がなされている。
【0039】
表示部10は、注意喚起枠9が重畳された撮像画像を表示する。表示部10は、例えば、液晶表示型メータ(ファイングラフィックメータ)、カーナビゲーション装置の液晶表示部に設けることができる。
【0040】
次に、周辺監視装置1の動作について、図4のフローチャートを参照しつつ説明する。以下、障害物が歩行者であるものとして説明する。
まず、撮像部2が、車両の前方および左右斜め前方の領域を撮像する(ステップS1)。次いで、障害物検出部3が、撮像部2が取得した撮像画像に基づき、撮像領域にある歩行者を検出する(ステップS2)。次いで、障害物検出部3は、検出した歩行者の中で運転者が注意すべき歩行者を抽出する(ステップS3)。運転者が注意すべき歩行者は、図3に示される例では、通過予測領域13内に位置する歩行者である。
【0041】
次いで、心理状態検出部6は、運転者の心理状態(緊張度合)を検出する(ステップS4)。次いで、重畳部4は、心理状態検出部6が検出した心理状態に基づき、注意喚起枠9で囲う歩行者の上限数を算出する(ステップS5)。この上限数は、運転者が瞬間的に(同時に)認識できる歩行者の数である。次いで、重畳部4は、通過予測領域13内にいる歩行者の数が、運転者が瞬間的に認識できる歩行者の数以下であるかどうかを判断する(ステップS6)。通過予測領域13内にいる歩行者の数が、運転者が瞬間的に認識できる歩行者の数以下である場合には、ステップS7に移行する。一方、通過予測領域13内にいる歩行者の数が、運転者が瞬間的に認識できる歩行者の数より大きい場合には、ステップS8に移行する。
【0042】
ステップS7では、重畳部4が、通過予測領域13内にいる歩行者全てについて、歩行者毎に、当該歩行者を囲む注意喚起枠9を撮像画像に重畳する。ステップS7の後は、ステップS9に移行する。一方、ステップS8では、重畳部4が、通過予測領域13内にいる歩行者のうち、車両に近い位置におり、かつ、運転者が瞬間的に認識できる数の歩行者について、歩行者毎に、当該歩行者を囲む注意喚起枠9を撮像画像に重畳する。ステップS7の後は、ステップS9に移行する。
【0043】
ステップS9では、表示部5は、注意喚起枠9が重畳された撮像画像を表示する。ステップS9の後、ステップS1に戻る。なお、通過予測領域13内に位置していたにも拘わらず、一点鎖線(情報処理限界量)を超えていたために注意喚起枠9で囲まれなかった歩行者は、その後、注意喚起枠9で囲まれる条件が揃ったときに、他の歩行者を囲う注意喚起枠9よりも強調した態様で表示される。
以上が、周辺監視装置1の動作である。
【0044】
以上説明したように、周辺監視装置1によれば、運転者の心理状態に基づいて、注意喚起枠9で囲う障害物8の数が設定される。これにより、運転者の心理状態が良好なときは注意喚起枠9で囲う障害物8の数を多目に設定し、運転者の心理状態が良好でないときは注意喚起枠9で囲う障害物8の数を少な目に設定することが可能となる。よって、周辺監視装置1によれば、運転者の心理状態に応じて、注意喚起対象の数を適切な数に設定することができる。これにより、運転者の心理状態が良好な場合、および、運転者の心理状態が良好でない場合のいずれであっても、運転者の注意力を重要な障害物8に集中させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、夜間の車両運転を支援するナイトビューシステム等に利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 周辺監視装置
2 撮像部
3 障害物検出部
4 重畳部
5 表示部
6 心理状態検出部
7 ECU
8,A,B,C,D,E,F 障害物
9 注意喚起枠
10 表示部
11 予測部
13 通過予測領域
14,15 端部規定線
16 注意喚起対象設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方向の状況を監視する周辺監視装置であって、
前記車両の進行方向を含む領域を撮像する撮像部と、
前記撮像部が得た撮像画像に基づき、前記領域にある障害物を検出する障害物検出部と、
前記車両の運転者の心理状態を検出する心理状態検出部と、
前記障害物検出部が検出した障害物のうち、前記注意喚起枠で囲う障害物の数を、前記心理状態検出部が検出した心理状態に基づいて設定する注意喚起対象設定部と、
前記注意喚起対象設定部で設定された数の障害物を個別に囲う注意喚起枠を前記撮像画像に重畳する重畳部と、
前記注意喚起枠が重畳された前記撮像画像を表示する表示部とを備えた周辺監視装置。
【請求項2】
前記心理状態検出部は、運転者から当該運転者の緊張度合を表すパラメータ値を検出し、検出したパラメータ値に基づき、運転者の緊張度合を検出することを特徴とする請求項1に記載の周辺監視装置。
【請求項3】
前記心理状態検出部は、運転者の心拍数および発汗量の少なくともいずれか一方を検出し、検出した値に基づき、運転者の緊張度合を検出することを特徴とする請求項2に記載の周辺監視装置。
【請求項4】
前記注意喚起対象設定部は、前記心理状態検出部が検出した心理状態に基づいて、運転者が認識可能な障害物の数を算出し、算出した数に基づいて、前記注意喚起枠で囲う障害物の数を設定することを特徴とする請求項2に記載の周辺監視装置。
【請求項5】
前記注意喚起対象設定部は、前記心理状態検出部が検出した緊張度合に基づいて、運転者が認識可能な障害物の数を算出し、算出した数に基づいて、前記注意喚起枠で囲う障害物の数を設定することを特徴とする請求項3に記載の周辺監視装置。
【請求項6】
前記注意喚起対象設定部は、検出された障害物の中で運転者が特に注意すべき障害物を抽出し、
前記重畳部は、運転者が特に注意すべき障害物を囲う注意喚起枠を、他の障害物を囲う注意喚起枠よりも強調した態様で重畳することを特徴とする請求項2乃至5いずれか1項に記載の周辺監視装置。
【請求項7】
前記車両の通過領域を予測する予測部をさらに備え、
前記注意喚起対象設定部は、前記予測部が予測した通過領域内の障害物の少なくとも一部に対して前記注意喚起枠を設定し、
前記注意喚起対象設定部が前記注意喚起枠を設定する障害物の数は、前記心理状態検出部が検出した心理状態に基づいて設定されることを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項に記載の周辺監視装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−150475(P2011−150475A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10141(P2010−10141)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】