説明

嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子の修飾因子

哺乳動物の細胞膜におけるCFTRの活性を調節するのに使用できる、CFTR活性の修飾因子およびその組成物の必要性もある。そうしたCFTR活性の修飾因子を用いてCFTRにおける変異によって引き起こされる疾患を治療する方法が必要である。哺乳動物のエクスビボでの細胞膜におけるCFTR活性を調節する方法が必要である。本発明は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(「CFTR」)の修飾因子、その組成物、およびそれを用いた方法に関する。本発明は、CFTRの修飾因子を使用して疾患を治療する方法にも関する。(I)または薬学的に許容されるその塩。(式中、環Aは


から選択される)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年10月23日出願の「MODULATORS OF CYSTIC FIBROSIS TRANSMEMBRANE CONDUCTANCE REGULATOR」と題された米国仮特許出願番号61/107,830号に対して米国特許法の119条における優先権の利益を主張し、その全体の内容が本明細書中で参考として援用される。
【0002】
本発明は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(「CFTR」)の修飾因子、その組成物およびそれを用いる方法に関する。本発明は、CFTRの修飾因子を使用して疾患を治療する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
ATPカセットトランスポーターは、様々な薬剤、潜在的に有毒性の薬物および生体異物ならびにアニオンの輸送を制御する膜トランスポータータンパク質のファミリーである。それらは、特異的な活性のために、細胞のアデノシン三リン酸(ATP)と結合し、それを用いる同種の膜タンパク質である。これらのトランスポーターのいくつかは、化学療法剤に対して悪性癌細胞を防御する多剤耐性タンパク質(MDR1−P糖タンパク質または多剤耐性タンパク質、MRP1のような)として発見された。これまで、48個のそうしたトランスポーターが特定されており、その配列同一性および機能に基づいて7つのファミリーにグループ分けされている。
【0004】
疾患と一般に関係するATPカセットトランスポーターのファミリーの1つのメンバーは、cAMP/ATP媒介陰イオンチャンネル、CFTRである。CFTRは、膜を貫通するアニオンフラックス、ならびに他のイオンチャンネルおよびタンパク質の活性をそれが制御する吸収上皮および分泌上皮細胞を含む様々な細胞型において発現される。上皮細胞では、CFTRが正常に機能することは、呼吸および消化組織を含む体全体で、電解質輸送を維持するのに重要である。CFTRは、それぞれが6つの膜貫通らせんと1つのヌクレオチド結合ドメインを含む膜貫通ドメインの縦列反復で構成されたタンパク質をコードする約1480個のアミノ酸を含む。その2つの膜貫通ドメインは、チャンネル活性および細胞輸送を制御する複数のリン酸化部位を有する大きな極性の制御(R)ドメインによって連結されている。
【0005】
CFTRをコードする遺伝子は特定されており、その配列は決定されている(非特許文献1;非特許文献2、非特許文献3を参照されたい)。この遺伝子の欠陥は、CFTRにおける変異を引き起こして、ヒトにおける最も一般的な致命的遺伝的疾患である嚢胞性線維症(「CF」)をもたらす。米国において、幼児2,500人に約1人が嚢胞性線維症を発症している。米国の全人口のうちの1000万に及ぶ人が、明らかな病的影響なしで、欠陥遺伝子の単一コピーを担持している。その一方、CF関連遺伝子の2つのコピーを有する個体は、慢性肺疾患を含むCFの身体を衰弱させる致命的な影響に苦しんでいる。
【0006】
嚢胞性線維症を有する患者においては、呼吸上皮で内因的に発現したCFTRにおける変異は頂端アニオン分泌の低下をもたらし、イオンおよび液輸送における不均衡を引き起こす。結果としてのアニオン輸送の低下は、肺における粘液蓄積の増進と付随する微生物感染をもたらし、これは最終的にCF患者を死に至らしめる。呼吸器系疾患に加えて、CF患者は一般に、胃腸障害および膵機能不全に苦しみ、もし治療されないままでいたら死に至る。さらに、嚢胞性線維症を有する男性の大部分は不妊性であり、嚢胞性線維症を有する女性では受胎能力が低下する。CF関連遺伝子の2つのコピーの深刻な影響とは対照的に、CF関連遺伝子の単一のコピーを有する個体は、コレラおよび下痢によってもたらされる脱水に対して高い耐性を示し、これはおそらく、個体群内においてCF遺伝子が比較的高い頻度で存在することを説明している。
【0007】
CF染色体のCFTR遺伝子の配列分析によれば、様々な病原性の変異が解明されている(非特許文献4;非特許文献5;および非特許文献6;非特許文献7)。これまで、1000を超える、CF遺伝子における病原性の変異が確認されている(http://www.genet.sickkids.on.ca/cftr/)。最も多く見られる変異は、CFTRアミノ酸配列の508位におけるフェニルアラニンの欠失であり、一般にこれはΔF508−CFTRと称される。この変異は、嚢胞性線維症の症例の約70%において起こり、重症疾患と関係している。
【0008】
ΔF508−CFTRにおける残基508の欠失は、新生タンパク質が正確に折りたたまれるのを妨げる。その結果、変異タンパク質がERを出て原形質膜へ移動することができなくなる。結果として膜の中に存在するチャンネルの数は、野生型CFTRを発現する細胞において見られる数よりずっと少なくなる。輸送障害に加えて、この変異はチャンネルゲート開閉の欠陥をもたらす。膜におけるチャンネル数の減少とチャンネルゲート開閉の欠陥が一緒になって、上皮を貫通するアニオン輸送の低下をもたらし、イオンおよび液輸送の欠陥をもたらす。(非特許文献8)。しかし、研究によれば、膜中でのΔF508−CFTRの数の減少は、野生型CFTRより少ないにしても、有効であることが示されている(非特許文献9;Denningら、上記;非特許文献10)。ΔF508−CFTR、R117H−CFTRおよびG551D−CFTRに加えて、輸送、合成および/またはチャンネルゲート開閉の欠陥をもたらすCFTRにおける他の病原性の変異は、上方制御または下方制御されて、アニオン分泌を変え、疾患の増悪および重症度を改変する可能性がある。
【0009】
CFTRは、アニオンに加えて様々な分子を輸送するが、この役割(アニオン、塩素イオンおよび重炭酸塩イオンの輸送)は、上皮を貫通してイオンおよび水を輸送する重要な機序における1つの要素を表していることは明らかである。他の要素には、細胞中への塩素イオンの取込みに関係する、上皮のNaチャンネル、ENaC、Na/2Cl/Kコトランスポーター、Na−K−ATPaseポンプおよび側底膜Kチャンネルが含まれる。
【0010】
これらの要素は一緒になって、細胞内でのその選択的な発現および局在化によって、上皮を貫通する一定方向の輸送を実現するように作用する。塩素イオン吸収は、頂端膜に存在するENaCおよびCFTRの協調活性と、細胞の側底面で発現されるNa−K−ATPaseポンプおよびClチャンネルによって起こる。腔側からの塩素イオンの二次的能動輸送は、細胞内塩素イオンの蓄積をもたらし、次いでこれは、Clイオンチャンネルを介して受動的に細胞から離れ、一定方向の輸送をもたらすことができる。側底面上のNa/2Cl/Kコトランスポーター、Na−K−ATPaseポンプおよび側底膜Kチャンネルと腔側上のCFTRの配置は、腔側上のCFTRを介して塩素イオンの分泌を調整する。水はおそらくそれ自体能動的に輸送されないので、上皮を貫通するその流れは、ナトリウムおよび塩素イオンのバルクフローによってもたらされる微小な経上皮浸透勾配に依存する。
【0011】
CFTRにおける変異に起因する重炭酸塩イオン輸送の欠陥は、特定の分泌機能における欠陥を引き起こすと仮定される。例えば、非特許文献11を参照されたい。
【0012】
中程度のCFTR機能不全に関係するCFTRにおける変異は、CFとある種の疾患症状を共有するがCFの診断基準に当てはまらない状態を有する患者においても明らかである。これらの疾患には、先天性両側性輸精管欠損、特発性慢性膵炎、慢性気管支炎および慢性鼻副鼻腔炎が含まれる。変異体CFTRが、変更遺伝子または環境因子と共に危険因子であると考えられる他の疾患には、原発性硬化性胆管炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症およびぜんそくが含まれる。
【0013】
たばこの煙、低酸素および低酸素シグナル伝達を誘発する環境因子はCFTR機能を損なうことも実証されており、慢性気管支炎などの特定の形態の呼吸器系疾患の原因となる可能性がある。CFTR機能の欠陥に起因するがCFの診断基準に当てはまらない疾患は、CFTR関連疾患と位置付けられる。
【0014】
嚢胞性線維症に加えて、CFTR活性の調節は、CFTRによって媒介される分泌性疾患および他のタンパク質折りたたみ(不全)疾患などの、CFTRにおける変異によっては直接引き起こされない他の疾患に有益であり得る。CFTRは、多くの細胞の上皮を貫通する塩素イオンおよび重炭酸塩イオンフラックスを制御して、流体運動、タンパク質可溶化、粘液粘度および酵素活性をコントロールする。CFTRにおける欠陥は、気道または肝臓および膵臓を含む多くの器官中の導管の閉塞を引き起こす恐れがある。増強物質は、細胞膜中に存在するCFTRのゲート開閉活性を増進させる化合物である。粘液の濃厚化、流体制御障害、粘液クリアランス障害、または炎症および組織破壊をもたらす導管閉塞に関係するどの疾患も、増強物質の候補である可能性がある。
【0015】
それらには、これらに限定されないが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、ぜんそく、喫煙誘発性COPD、慢性気管支炎、鼻副鼻腔炎、便秘、ドライアイ疾患およびシェーグレン症候群、胃食道逆流症、胆石、直腸脱および炎症性大腸炎が含まれる。COPDは、漸進的であり、完全には可逆的ではない空気流制限を特徴とする。空気流制限は、粘液分泌過多、肺気腫および細気管支炎に起因する。変異体または野生型CFTRの活性化因子は、COPDによくある粘液分泌過多および粘膜毛様体クリアランス障害の治療の可能性を提供する。具体的には、CFTRを貫通するアニオン分泌の増大は、気道表面液中への液輸送を容易にし、粘液に潤いを与え、繊毛周囲流体の粘度を最適化することができる。これは、粘膜毛様体クリアランスの増進と、COPDに伴う症状の減退をもたらすことになる。さらに、気道クリアランスの向上に起因して進行中の感染症および炎症を阻止することによって、CFTR修飾因子は、肺気腫を特徴づける気道の実質性(parenchimal)破壊を防止または遅延させ、かつ、気道疾患における粘液分泌過多のもとにある(underlyses)、粘液を分泌する細胞の数およびサイズを減少または逆転させることができる。ドライアイ疾患は、涙液産生の減少ならびに異常な涙液膜脂質、タンパク質およびムチンプロファイルを特徴とする。ドライアイには多くの原因があり、そのいくつかには、年齢、レーシック眼科手術、関節炎、薬物療法、化学火傷/熱傷、アレルギーならびに嚢胞性線維症およびシェーグレン症候群などの疾患が含まれる。CFTRを介したアニオン分泌の増大は、角膜内皮細胞および目の周囲の分泌腺からの流輸送を増進させ、角膜の潤いを高める。これは、ドライアイ疾患に伴う症状を緩和する助けとなる。シェーグレン症候群は、免疫系が、目、口、皮膚、呼吸組織、肝臓、膣および腸を含む体全体の水分生成腺を攻撃する自己免疫疾患である。その症状には、ドライアイ、口および膣ならびに肺の疾患が含まれる。この疾患(シェーグレン症候群)は、関節リウマ、全身性狼瘡、全身性硬化症、多発性筋炎(polymypositis)/皮膚筋炎にも関係する。タンパク質輸送の欠陥は、それに対する治療法の選択肢が限定される疾患を引き起こすと考えられている。CFTR活性の修飾因子は、病気にかかっている様々な器官に潤いを与えることができ、随伴する症状を軽減する助けとなり得る。嚢胞性線維症を有する個体は、腸閉塞の再発エピソード、および直腸脱(rectal polapse)、胆石、胃食道逆流症、GI悪性腫瘍および炎症性大腸炎のより高い発生率を有しており、これは、CFTR機能がそうした疾患を予防するのに重要な役割を果たせることを示唆している。
【0016】
上記で論じたように、ΔF508−CFTRにおける残基508の欠失は、新生タンパク質が正確に折りたたまれるのを妨げ、この変異タンパク質がERを出て原形質膜へ移動できないようにすると考えられる。結果として、不十分な量の成熟タンパク質しか原形質膜に存在せず、上皮組織内の塩素イオン輸送は著しく低下する。実際に、ER機構によるCFTRのERプロセッシングの欠陥のこの細胞現象は、CF疾患だけでなく、広範囲の孤立性で遺伝性の疾患の基礎にあることが示されている。ER機構が正常に機能しない可能性のある2つの仕方は、分解に至るタンパク質のER搬出との連関の喪失によるか、または、これらの欠陥のある/ミスフォールドしたタンパク質のER蓄積によるものである[非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16]。ER機能不全の第1の部類と関係する疾患は、嚢胞性線維症(上記で論じたようなミスフォールドしたΔF508−CFTRに起因する)、遺伝性肺気腫(a1−抗トリプシン;非Piz変異体に起因する)、遺伝性ヘモクロマトーシス、凝固−線維素溶解性欠乏症、例えばプロテインC欠乏症、1型遺伝性血管性浮腫、脂質プロセッシング欠乏症、例えば家族性高コレステロール血症、1型乳糜血症、無βリポタンパク血症、リソソーム蓄積症、例えばI細胞病/偽ハーラー、ムコ多糖症(リソソームプロセッシング酵素に起因する)、サンドホフ/テイサックス(β−ヘキソサミニダーゼに起因する)、クリグラーナジャーII型(UDP−グルクロニル−シアリック−トランスフェラーゼに起因する)、多腺性内分泌障害/高インスリン血(hyperinsulemia)、真性糖尿病(インスリン受容体に起因する)、ラロン型小人症(成長ホルモン受容体に起因する)、ミエロペルオキシダーゼ欠損症(myleoperoxidase deficiency)、原発性甲状腺機能低下症(プレプロ副甲状腺ホルモンに起因する)、メラノーマ(チロシナーゼに起因する)である。ER機能不全の後者の部類と関係する疾患は、グリカン糖鎖異常CDG1型、遺伝性肺気腫(α1−抗トリプシン(PiZ変異体、)に起因する、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症(I型、II型、IV型プロコラーゲンに起因する)、遺伝性低フィブリノゲン血症(フィブリノゲンに起因する)、ACT欠乏症(α1−抗キモトリプシンに起因する)、尿崩症(DI)、ニューロフィシン性DI(バソプレシンホルモン(vasopvessin hormone)/V2−受容体に起因する)、腎性(neprogenic)DI(アクアポリンIIに起因する)、シャルコーマリートゥース病(末梢ミエリンタンパク質22に起因する)、ペリツェウスメルツバッハー病(Perlizaeus−Merzbacher disease)、神経変性疾患、例えばアルツハイマー病(βAPPおよびプレセニリンに起因する)、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上麻痺、ピック病、いくつかのポリグルタミン神経障害、例えばハンチントン病、脊髄小脳失調I型(spinocerebullar ataxia type I)、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体および筋強直性ジストロフィー、ならびに海綿状脳症、例えば遺伝性クロイツフェルトヤコブ病(プリオンタンパク質プロセッシング欠損症に起因する)、ファブリー病(リソソームα−ガラクトシダーゼAに起因する)、シュトロイスラー−シャインカー症候群(Prpプロセッシング欠損症に起因する)、膵炎性不妊症(infertility pancreatitis)、膵機能不全、骨粗しょう症、骨減少症、ゴーハム症候群、クロリドチャンネル病、先天性筋強直症(トムセンおよびベッカー型)、バーター症候群III型、デント病、過剰驚愕症、てんかん、過剰驚愕症、リソソーム蓄積症、アンジェルマン症候群、原発性線毛機能不全(PCD)、内臓逆位を伴うPCD(カールタジュナー症候群としても公知)、内臓逆位および毛様体形成不全を伴わないPCDならびに肝疾患である。
【0017】
CFTRにおける変異に関係する他の疾患には、先天性両側性輸精管欠損(CBAVD)によって引き起こされる男性不妊症、軽度の肺疾患、特発性膵炎およびアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)が含まれる。非特許文献17(これを参照により本明細書に組み込む)を参照されたい。
【0018】
CFTR活性の上方調節に加えて、CFTR修飾因子によるアニオン分泌の減少は分泌性下痢の治療に有益であり得、そこでは、分泌促進活性化による塩素イオン輸送の結果として、上皮水分輸送は劇的に増大する。この機序は、cAMPの上昇とCFTRの刺激を含む。
【0019】
下痢には多くの原因があるが、過剰な塩素イオン輸送からもたらされる下痢性疾患の主な結果はすべてに共通しており、脱水、アシドーシス、成長障害および死を含む。急性および慢性の下痢は、世界の多くの地域において、主要な医学的課題を代表するものである。下痢は、栄養失調における重要な因子であり、かつ5才未満の子供の死亡(5,000,000人の死者/年)の主要原因でもある。
【0020】
分泌性下痢は、後天性免疫不全症候群(AIDS)および慢性炎症性大腸炎(IBD)を有する患者においてもやはり危険な状態である。その重症度と件数は旅行する国や地域によるが、1600万人の先進工業国から発展途上国への旅行者が毎年下痢を発症している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Gregory,R. J.ら(1990年)Nature 347巻:382〜386頁
【非特許文献2】Rich,D. P.ら(1990年)Nature 347巻:358〜362頁
【非特許文献3】Riordan,J. R.ら(1989年)Science 245巻:1066〜1073頁
【非特許文献4】Cutting,G. R.ら(1990年)Nature 346巻:366〜369頁
【非特許文献5】Dean,M.ら(1990年)Cell 61巻:863:870頁
【非特許文献6】Kerem,B−S.ら(1989年)Science 245巻:1073〜1080頁
【非特許文献7】Kerem,B−Sら(1990年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87巻:8447〜8451頁
【非特許文献8】Quinton,P. M.(1990年)、FASEB J.4巻:2709〜2727頁
【非特許文献9】Dolmansら(1991年)、Nature Lond. 354巻:526〜528頁
【非特許文献10】Pasyk and Foskett(1995年)、J. Cell. Biochem. 270巻:12347〜550頁
【非特許文献11】「Cystic fibrosis:impaired bicarbonate secretion and mucoviscidosis」、Paul M. Quinton、Lancet 2008年;372巻:415〜417頁
【非特許文献12】Aridor Mら、Nature Med.、5巻(7号)745〜751頁(1999年)
【非特許文献13】Shastry,B.S.ら、Neurochem. International、43巻、1〜7頁(2003年)
【非特許文献14】Rutishauser,J.ら、Swiss Med Wkly、132巻、211〜222頁(2002年)
【非特許文献15】Morello,JPら、TIPS、21巻、466〜469頁(2000年)
【非特許文献16】Bross P.ら、Human Mut.、14巻、186〜198頁(1999年)
【非特許文献17】「CFTR−opathies:disease phenotypes associated with cystic fibrosis transmembrane regulator gene mutations」、Peader G. Noone and Michael R. Knowles、Respir. Res. 2001年、2巻:328〜332頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、野生型および変異型のヒトCFTRの強力で選択的なCFTR増強物質の必要性がある。これらのCFTR変異体には、これらに限定されないが、ΔF508del、G551D、R117H、2789+5G−>Aが含まれる。
【0023】
哺乳動物の細胞膜におけるCFTRの活性を調節するのに使用できる、CFTR活性の修飾因子およびその組成物の必要性もある。
【0024】
そうしたCFTR活性の修飾因子を用いてCFTRにおける変異によって引き起こされる疾患を治療する方法が必要である。
【0025】
哺乳動物のエクスビボでの細胞膜におけるCFTR活性を調節する方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の化合物および薬学的に許容されるその組成物は、CFTR活性の修飾因子として有用であることをここに見出した。それらの化合物は一般式(I):
【0027】
【化1】

(式中、R、R、RおよびAは以下に概略説明され、部類および下位部類で説明される)
または薬学的に許容されるその塩である。
【0028】
これらの化合物および薬学的に許容される組成物は、CFTRにおける変異に伴う様々な疾患、障害または状態を治療するまたはその重症度を軽減するのに有用である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の化合物の概要:
本発明は、CFTR活性の修飾因子として有用な式(I)の化合物:
【0030】
【化2】

(式中、環Aは、
【0031】
【化3】

から選択され、
は、−CF、−CNまたは−C≡CCHN(CHであり、
は、水素、−CH、−CF、−OHまたは−CHOHであり、
は、水素、−CH、−OCHまたは−CNである)
ただし、RとRは同時に水素であることはない)
または薬学的に許容されるその塩に関する。
【0032】
化合物および定義:
本発明の化合物は、上記に概略説明され、本明細書で開示する部類、下位部類および種類でさらに示されるものが含まれる。本明細書での使用では、別段の記載のない限り、以下の定義が適用されるものとする。
【0033】
本明細書で用いる「ABC−トランスポーター」という用語は、インビボまたはインビトロで存在する、少なくとも1つの結合ドメインを含むABC−トランスポータータンパク質またはそのフラグメントを意味する。本明細書で用いる「結合ドメイン」という用語は、修飾因子と結合することができるABC−トランスポーター上のドメインを意味する。例えば、Hwang,T. C.ら、J. Gen. Physiol.(1998年):111巻(3号)、477〜90頁を参照されたい。
【0034】
本明細書で用いる「CFTR」という用語は、ΔF508CFTR、R117H CFTRおよびG551D CFTRを含むがそれに限定されない、制御因子活性の能力のある嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子またはその変異を意味する(例えば、CFTR変異についてのhttp://www.genet.sickkids.on.ca/cftr/を参照されたい)。
【0035】
本明細書で用いる「調節する(modulating)」という用語は、測定可能量で増大または減少させることを意味する。
【0036】
本明細書で用いる「正常CFTR」または「正常CFTR機能」という用語は、喫煙、汚染などの環境因子または肺に炎症をもたらすすべてのものに起因する任意の機能的障害を伴わない野生型様のCFTRを意味する。
【0037】
本明細書で用いる「低いCFTR」または「低いCFTR機能」という用語は、正常CFTRより低い、または正常CFTR機能より低いことを意味する。
【0038】
本発明のために、化学元素は、Handbook of Chemistry and Physics、75th Edの元素周期表、CAS版によって特定される。さらに、有機化学の一般的原理は、「Organic Chemistry」、Thomas Sorrell、University Science Books、Sausalito:1999年、および「March’s Advanced Organic Chemistry」、5th Ed.、Ed.:Smith、M. B. and March、J.、John Wiley & Sons、New York:2001年に記載されている。これらの内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【0039】
本発明で想定される置換基の組合せは、好ましくは、安定なまたは化学的に実現可能な化合物の生成をもたらすものである。本明細書で用いる「安定な」という用語は、その製造、検出、好ましくはその回収、精製、および本明細書で開示する目的の1つまたは複数のための使用を可能にする条件にかけた場合、実質的に変化しない化合物を指す。いくつかの実施形態では、安定な化合物または化学的に実現可能な化合物は、水分または他の化学的に反応性の条件がないもとで、40℃以下の温度で少なくとも1週間保持しても実質的に変化しない化合物である。
【0040】
本明細書で用いる「保護基」という用語は、多官能化合物の1つまたは複数の所望反応点を一時的に封鎖するために用いられる物質を指す。特定の実施形態では、保護基は以下の特徴:a)良好な収率で選択的に反応して、他の反応点の1つまたは複数で起こる反応に対して安定な保護された基体を提供すること、および、b)再生された官能基を攻撃しない試薬によって良好な収率で選択的に取り除くことができるということの1つもしくは複数または好ましくはそのすべてを有する。保護基の例は、Greene,T.W.,Wuts、P. G in 「Protective Groups in Organic Synthesis」、Third Edition、John Wiley & Sons、New York:1999年、およびこの本の他の版に詳述されている。その内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【0041】
別段の言及のない限り、本明細書で示す構造は、その構造のすべての異性体(例えば、鏡像異性体的、ジアステレオマー的および幾何学的(または立体配座的))形態の構造;例えば、各不斉中心についてのR型およびS型構造、Z型およびE型二重結合異性体ならびにZ型およびE型の配座異性体を含むことも意味する。したがって、本発明の化合物の単一の立体化学的異性体、ならびに鏡像異性体的、ジアステレオマー的および幾何学的(または立体配座的)混合物は本発明の範囲内である。別段の言及のない限り、本発明の化合物のすべての互変異性形態は本発明の範囲内である;例えば、式(I)の化合物は互変異性体:
【0042】
【化4】

として存在することができる。
【0043】
さらに、別段の言及のない限り、本明細書で示す構造は、1つまたは複数の同位体的に濃縮された原子が存在することだけが異なる化合物を含むことも意味する。例えば、水素を重水素または三重水素で置き換えていること、あるいは、炭素を13C−または14C−濃縮炭素で置き換えていること以外は本発明の構造を有する化合物は本発明の範囲内である。そうした化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析ツールまたはプローブとして有用である。そうした化合物、特に重水素原子を含む化合物は、改変された代謝特性を示すことができる。
【0044】
例示化合物の説明:
本発明は、式(I)の化合物:
【0045】
【化5】

(式中、環Aは、
【0046】
【化6】

から選択され、
は、−CF、−CNまたは−C≡CCHN(CHであり、
は、水素、−CH、−CF、−OHまたは−CHOHであり、
は、水素、−CH、−OCHまたは−CNであり、
ただし、RとRは同時に水素であることはない)
または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0047】
一実施形態では、環Aは
【0048】
【化7】

である。
【0049】
一実施形態では、環Aは
【0050】
【化8】

である。
【0051】
他の実施形態では、環Aは
【0052】
【化9】

である。
【0053】
さらに他の実施形態では、環Aは
【0054】
【化10】

である。
【0055】
一実施形態では、Rは−CFである。
【0056】
他の実施形態では、Rは−CNである。
【0057】
他の実施形態では、Rは−C≡CCHN(CHである。
【0058】
一実施形態では、Rは−CHである。
【0059】
他の実施形態では、Rは−CFである。
【0060】
他の実施形態では、Rは−OHである。
【0061】
他の実施形態では、Rは−CHOHである。
【0062】
一実施形態では、Rは−CHである。
【0063】
一実施形態では、Rは−OCHである。
【0064】
他の実施形態では、Rは−CNである。
【0065】
一実施形態では、Rは水素であり、Rは、−CH、−OCHまたは−CNである。
【0066】
他の実施形態では、Rは、−CH、−CF、−OHまたは−CHOHであり、Rは水素である。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態では、環Aは
【0068】
【化11】

であり、Rは−CFであり、Rは水素であり、Rは、−CH、−OCHまたは−CNである。他の実施形態では、Rは−CNである。さらに他の実施形態では、Rは−C≡CCHN(CHである。一実施形態では、Rは−CHである。またはRは−OCHである。またはRは−CNである。
【0069】
本発明のさらなる実施形態では、環Aは
【0070】
【化12】

であり、Rは−CFであり、Rは、−CH、−CF、−OHまたは−CHOHであり、Rは、水素である。他の実施形態では、Rは−CNである。さらに他の実施形態では、Rは−C≡CCHN(CHである。一実施形態では、Rは−CHである。またはRは−CFである。またはRは−OHである。またはRは−CHOHである。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態では、環Aは
【0072】
【化13】

であり、Rは−CFであり、Rは水素であり、Rは、−CH、−OCHまたは−CNである。他の実施形態では、Rは−CNである。さらに他の実施形態では、Rは−C≡CCHN(CHである。一実施形態では、Rは−OCHである。またはRは−CHである。またはRは−CNである。
【0073】
本発明のさらなる実施形態では、環Aは
【0074】
【化14】

であり、Rは−CFであり、Rは、−CH、−CF、−OHまたは−CHOHであり、Rは、水素である。他の実施形態では、Rは−CNである。さらに他の実施形態では、Rは−C≡CCHN(CHである。一実施形態では、Rは−CHである。またはRは−CFである。またはRは−OHである。またはRは−CHOHである。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態では、環Aは
【0076】
【化15】

であり、Rは−CFであり、Rは水素であり、Rは、−CH、−OCHまたは−CNである。他の実施形態では、Rは−CNである。さらに他の実施形態では、Rは−C≡CCHN(CHである。一実施形態では、Rは−CHである。またはRは−OCHである。またはRは−CNである。
【0077】
本発明のさらなる実施形態では、環Aは
【0078】
【化16】

であり、Rは−CFであり、Rは、−CH、−CF、−OHまたは−CHOHであり、Rは、水素である。他の実施形態では、Rは−CNである。さらに他の実施形態では、Rは−C≡CCHN(CHである。一実施形態では、Rは−CHである。またはRは−CFである。またはRは−OHである。またはRは−CHOHである。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態では、環Aは
【0080】
【化17】

であり、Rは−CFであり、Rは水素であり、Rは、−CH、−OCHまたは−CNである。他の実施形態では、Rは−CNである。さらに他の実施形態では、Rは−C≡CCHN(CHである。一実施形態では、Rは−CHである。またはRは−OCHである。またはRは−CNである。
【0081】
本発明のさらなる実施形態では、環Aは
【0082】
【化18】

であり、Rは−CFであり、Rは、−CH、−CF、−OHまたは−CHOHであり、Rは、水素である。他の実施形態では、Rは−CNである。さらに他の実施形態では、Rは−C≡CCHN(CHである。一実施形態では、Rは−CHである。またはRは−CFである。またはRは−OHである。またはRは−CHOHである。
【0083】
本発明の代表的化合物を以下の表1に示す。
【0084】
【表1−1】

【0085】
【表1−2】

基本合成スキーム
本発明の化合物は、当業界で公知であり、スキーム1〜3で示す方法で容易に調製される。
【0086】
【化19】

スキーム1は、置換ベンゼン誘導体1aおよび2aから式(I)の化合物を調製する収束的アプローチを示す。最終的な変換において、カルボン酸1dをアミン2cとカップリングして式(I)の化合物を得るアミド生成は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中のO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)およびトリエチルアミンか、または2−メチルテトラヒドロフラン中のプロピルスルホン酸(propyl sulfronic acid)環状無水物(T3P(登録商標))およびピリジンを用いて実施することができる。カルボン酸1dは、1aを適切なマロン酸エステル(COR)CH=CH(OR)(Rはメチル、エチルなどのアルキル基である)と加熱により縮合させて1bを得ることから始める一連の反応によって対応する置換ベンゼン誘導体1aから調製する。
【0087】
化合物1bを、Dowthermまたはジフェニルエーテル中での加熱還流による分子内環化(ステップb)、続くパラジウム触媒による脱ハロゲン化条件下での封鎖ハロ基の除去(ステップc)(必要なら)および酸または塩基触媒によるけん化(ステップd)を含む3つの一連のステップを経てカルボン酸1dに転換させる。脱保護ステップとけん化ステップの順番は逆にすることができる;すなわちスキーム1に示すように、ステップcは、ステップdの前でも後でも行うことができる。
【0088】
再びスキーム1を参照して、アニリン誘導体2cを、ニトロベンゼン2aから3つの一連のステップを経て調製することができる。したがって、トリエチルアミンの存在下での本明細書で定義するニトロベンゼン2aの環状アミン
【0089】
【化20】

とのカップリングによって化合物2bが提供される。パラジウム触媒による2bの還元によってアミン2cが提供される。
【0090】
【化21】

スキーム2は、プロピニルアミン側鎖を担持する式(I)の化合物の合成を示す。したがって、DMSO中の炭酸カリウムの存在下でのニトロベンゼン2a(Halはブロミド、クロリドなどである)の本明細書で定義する
【0091】
【化22】

とのカップリングは化合物4を提供する。N,N−ジメチルプロパ−2−イン−1−アミンを用いた化合物4のパラジウム触媒によるカップリング、続く、鉄または亜鉛触媒によるニトロ部分の還元はアミン5を提供する。アミン5のカルボン酸1dとのカップリングは、式(I)の化合物である化合物6を提供する。
【0092】
【化23】

スキーム3は式(I)の化合物の合成法を示す。ここで、
【0093】
【化24】

は7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタンであり、任意選択で、2位にエキソまたはエンドヒドロキシ基を担持する。ヒドロキシ置換付加体(+)−エンド−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オル、(−)−エンド−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オル、(+)−エキソ−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オルおよび(−)−エキソ−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オルは、Fletcher,S.R.ら、「Total Synthesis and Determination of the Absolute Configuration of Epibatidine」、J. Org. Chem、59巻、1771〜1778頁(1994年)に記載されている手順を用いて調製することができる。7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン自体は、Tyger Scientific Inc.324 Stokes Avenue Ewing、NJ、08638USAから市販されている。
【0094】
したがって、スキーム1および2にまとめた一連の変換のように、化合物2aのビシクロ[2.2.1]アミン7とのカップリングによって化合物8が提供される。化合物8中にヒドロキシ基が存在する場合、後続する変換の前にヒドロキシ基を保護基で保護する必要があり得る。したがって、公知の条件を用いた化合物8のtert−ブチルジメチルシリルクロリドでの処理によって、保護化合物9が提供され、次いでニトロ部分を還元してアミン10が得られる。1dを用いたアミド生成(スキーム3参照)およびヒドロキシ保護基の除去(必要に応じて)によって、式(I)の化合物である化合物11が得られる。
【0095】
使用、処方および投与
薬学的に許容される組成物
本発明の1つの態様では、本明細書で説明する化合物のいずれかおよび任意選択で薬学的に許容される担体、補助剤または媒体を含む薬学的に許容される組成物を提供する。特定の実施形態では、これらの組成物は、任意選択で1つまたは複数の追加の治療薬をさらに含む。
【0096】
本発明の化合物のいくつかは、治療用に遊離形態で存在することができ、適切な場合、薬学的に許容される誘導体またはそのプロドラッグとして存在することができることも理解されよう。本発明によれば、薬学的に許容される誘導体またはプロドラッグには、これらに限定されないが、薬学的に許容される塩、エステル、そうしたエステルの塩、あるいは、それを必要とする患者に投与したとき直接または間接に本明細書で別途説明するような化合物またはその代謝産物もしくは残基を提供できる他の任意の付加物もしくは誘導体が含まれる。
【0097】
本明細書で用いる「薬学的に許容される塩」、という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、炎症、アレルギー反応などを伴うことなくヒトや下等動物の組織と接触して用いるのに適しており、かつ、妥当な便益/リスク比に相応した塩を指す。「薬学的に許容される塩」は、レシピエントに投与したとき直接または間接に、本発明の化合物または阻害的に活性なその代謝産物もしくは残基を提供できる本発明の化合物の任意の非毒性塩またはエステルの塩を意味する。
【0098】
薬学的に許容される塩は当業界で周知である。例えばS. M. Bergeらは、J. Pharmaceutical Sciences、1977年、66巻、1〜19頁において薬学的に許容される塩を詳細に記載している。これを参照により本明細書に組み込む。本発明の化合物の薬学的に許容される塩には、適切な無機および有機の酸および塩基から誘導されるものが含まれる。薬学的に許容される非毒性付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸などの有機酸と形成させるか、あるいは、イオン交換などの当業界で用いられている他の方法によるアミノ基の塩である。
【0099】
他の薬学的に許容される塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エジシル酸塩(エタンジスルホン酸塩)、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが含まれる。適切な塩基から誘導される塩には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびN(C1〜4アルキル)塩が含まれる。本発明は、本明細書で開示する化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化も想定する。そうした四級化によって、水溶性もしくは油溶性または分散性の生成物を得ることができる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの塩が含まれる。他の薬学的に許容される塩には、適切な場合、ハライド、ヒドロキシド、カルボキシレート、サルフェート、ホスフェート、ナイトレート、低級アルキルスルホネートならびにアリールスルホネートなどの対イオンを用いて形成される、非毒性アンモニウム、四級アンモニウムおよびアミンカチオンが含まれる。
【0100】
上記で説明したように、本発明の薬学的に許容される組成物は、本明細書で用いるように、具体的な所望剤形に適した任意のすべての溶媒、賦形剤もしくは他の液媒体、分散もしくは懸濁助剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤もしくは乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤などを含む薬学的に許容される担体、補助剤または媒体を追加的に含む。Remington’s Pharmaceutical Sciences、Sixteenth Edition、E. W. Martin(Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、1980年)は、薬学的に許容される組成物を処方するのに使用される様々な担体、およびそれを調製するための公知の技術を開示している。通常の任意の担体媒体が、望まない生物学的作用をもたらすか、あるいは、薬学的に許容される組成物の他の任意の成分と有害な形で相互作用することなどによって本発明の化合物と適合しない場合を除いて、その使用は本発明の範囲内であるものとする。薬学的に許容される担体として働くことができる材料のいくつかの例には、これらに限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸もしくはソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂、糖類、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン、例えばコーンスターチおよびバレイショデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;粉末トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;添加剤、例えばココアバターおよび坐薬用ワックス;オイル、例えばピーナッツ油、綿実油;サフラワー油;ゴマ油;オリーブ油;コーンオイルおよび大豆油;グリコール;例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェン除去水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコールおよびリン酸緩衝液、ならびに他の非毒性の適合性滑沢剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムが含まれるが、また、処方者の判断に従って、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、保存剤および酸化防止剤も組成物中に含めることができる。
【0101】
化合物および薬学的に許容される組成物の使用
さらに他の態様では、本発明は、CFTR変異に関係する状態、疾患または障害を治療するまたはその重症度を軽減する方法を提供する。特定の実施形態では、本発明は、CFTR活性の欠乏に関係する状態、疾患または障害を治療する方法であって、式(I)の化合物を含む組成物を、それを必要とする対象、好ましくは哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
【0102】
特定の実施形態では、本発明は、CFTRコード遺伝子の変異または環境因子(例えば、喫煙)に起因するCFTR機能の低下に伴う疾患を治療する方法を提供する。これらの疾患には、嚢胞性線維症、慢性気管支炎、反復性気管支炎、急性気管支炎、先天性両側性輸精管欠損(CBAVD)によって引き起こされる男性不妊症、子宮および膣の先天的欠損(CAUV)によって引き起こされる女性不妊症、特発性慢性膵炎(ICP)、特発性反復性膵炎、特発性急性膵炎、慢性鼻副鼻腔炎、原発性硬化性胆管炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、糖尿病、ドライアイ、便秘、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、骨疾患(例えば、骨粗しょう症)ならびにぜんそくが含まれる。
【0103】
特定の実施形態では、本発明は、正常CFTR機能に伴う疾患を治療する方法を提供する。これらの疾患には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性気管支炎、反復性気管支炎、急性気管支炎、鼻副鼻腔炎、便秘、慢性膵炎、反復性膵炎および急性膵炎を含む膵炎、膵機能不全、先天性両側性輸精管欠損(CBAVD)によって引き起こされる男性不妊症、軽度の肺疾患、特発性膵炎、肝疾患、遺伝性肺気腫、胆石、胃食道逆流性疾患(gasgtro−esophageal reflux disease)、胃腸の悪性腫瘍、炎症性大腸炎、便秘、糖尿病、関節炎、骨粗しょう症ならびに骨減少症が含まれる。
【0104】
特定の実施形態では、本発明は、遺伝性ヘモクロマトーシス、凝固−線維素溶解性欠乏症、例えばプロテインC欠乏症、1型遺伝性血管性浮腫、脂質プロセッシング欠乏症、例えば家族性高コレステロール血症、1型乳糜血症、無βリポタンパク血症、リソソーム蓄積症、例えばI細胞病/偽ハーラー、ムコ多糖症、サンドホフ/テイサックス、クリグラーナジャーII型、多腺性内分泌障害/高インスリン血、真性糖尿病、ラロン型小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、原発性甲状腺機能低下症、メラノーマ、グリカン糖鎖異常CDG1型、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノゲン血症、ACT欠乏症、尿崩症(DI)、ニューロフィシン性DI、腎性DI、シャルコーマリートゥース病、ペリツェウスメルツバッハー病、神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上麻痺、ピック病、いくつかのポリグルタミン神経障害、例えばハンチントン病、脊髄小脳失調I型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体および筋強直性ジストロフィー、ならびに、海綿状脳症、例えば遺伝性クロイツフェルトヤコブ病(プリオンタンパク質プロセッシング欠損症に起因する)、ファブリー病、シュトロイスラー−シャインカー症候群、ゴーハム症候群、クロリドチャンネル病、先天性筋強直症(トムセンおよびベッカー型)、バーター症候群III型、デント病、過剰驚愕症、てんかん、過剰驚愕症、リソソーム蓄積症、アンジェルマン症候群、原発性線毛機能不全(PCD)、内臓逆位を伴うPCD(カールタジュナー症候群としても公知)、内臓逆位および毛様体形成不全を伴わないPCDまたはシェーグレン病を含む正常CFTR機能に伴う疾患を治療する方法であって、前記哺乳動物に有効量の本発明の化合物を含む組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0105】
代替の好ましい実施形態によれば、本発明は、前記哺乳動物に有効量の本発明の化合物を含む組成物を投与するステップを含む、前記哺乳動物に組成物を投与するステップを含む嚢胞性線維症を治療する方法を提供する。
【0106】
本発明によれば、「有効量」の化合物または薬学的に許容される組成物は、上記したような疾患、障害または状態の1つもしくは複数を治療するまたはその重症度を軽減するのに有効な量である。
【0107】
本発明の方法による化合物および組成物は、上記したような疾患、障害または状態の1つもしくは複数を治療するまたはその重症度を軽減するのに有効な任意の量および任意の投与経路を用いて投与することができる。
【0108】
特定の実施形態では、本発明の化合物および組成物は、呼吸および非呼吸上皮の頂端膜で残留CFTR活性を示す患者の嚢胞性線維症を治療するまたはその重症度を軽減するのに有用である。上皮の表面での残留CFTR活性の存在は、当業界で公知の方法、例えば標準的な電気生理学的、生化学的または組織化学的技法を用いて容易に検出することができる。そうした方法は、インビボもしくはエクスビボでの電気生理学的技法、汗もしくは唾液Cl濃度の測定、または細胞表面密度をモニターするエクスビボでの生化学的もしくは組織化学的技法を用いてCFTR活性を特定する。そうした方法を用いて、残留CFTR活性は、最も一般的な変異ΔF508に対してホモ接合性またはヘテロ接合性の患者を含む様々な異なる変異に対してヘテロ接合性またはホモロ接合性の患者において容易に検出することができる。
【0109】
他の実施形態では、本発明の化合物および組成物は、薬理学的方法または遺伝子治療を用いて誘発されるかまたは増大した残留CFTR活性を有する患者の嚢胞性線維症を治療するまたはその重症度を軽減するのに有用である。そうした方法は、細胞表面に存在するCFTRの量を増加させ、それによって、患者においてそれまでなかったCFTR活性を誘発させるか、または患者における残留CFTR活性の存在レベルを上昇させる。
【0110】
一実施形態では、本発明の化合物および組成物は、残留CFTR活性、例えばクラスIII変異(制御またはゲート開閉の障害)、クラスIV変異(コンダクタンスの変化)、またはクラスV変異(合成の低下)を示す特定の遺伝子型(Lee R. Choo−Kang、Pamela L.,Zeitlin、Type I,II,III,IV,and V cystic fibrosis Tansmembrane Conductance Regulator Defects and Opportunities of Therapy;Current Opinion in Pulmonary Medicine 6巻:521〜529頁、2000年)の患者の嚢胞性線維症を治療するまたはその重症度を軽減するのに有用である。残留CFTR活性を示す遺伝子型の他の患者には、これらのクラスの1つに対してホモ接合性であるか、またはクラスI変異、クラスII変異もしくはそうしたクラスのない変異を含む任意の他の部類の変異とヘテロ接合性である患者が含まれる。
【0111】
一実施形態では、本発明の化合物および組成物は、特定の臨床表現型、例えば、上皮の頂端膜での残留CFTR活性の量と一般に相関する中程度〜軽度の臨床表現型の患者の嚢胞性線維症を治療するまたはその重症度を軽減するのに有用である。そうした表現型は、膵機能不全を示す患者、または特発性膵炎および先天性両側性輸精管欠損もしくは軽度の肺疾患と診断された患者を含む。
【0112】
必要とされる正確な量は、対象の種、年齢および全身状態、感染症の重症度、具体的な薬剤、その投与方式などによって対象毎に変わることになる。発明の化合物は、好ましくは、投与を容易にし投薬を均一にする投薬単位形態で処方する。本明細書で用いる「投薬単位形態」という表現は、治療を受ける患者に適した物理的に離散した薬剤の単位を指す。しかし、本発明の化合物および組成物の合計日用量は、健全な医学的判断の範囲内で、担当医によって判断されることになることを理解されよう。特定の任意の患者または生命体のための具体的な有効量レベルは、治療を受ける障害およびその障害の重症度;使用する具体的な化合物の活性;使用する具体的な組成物;患者の年齢、体重、全体的な健康、性別および食事;使用する具体的な化合物の投与時間、投与経路および排出速度;治療の期間;使用する具体的な化合物と併用するかまたは同時に使用する薬物を含む様々な因子、ならびに医学的技術分野で周知の同様の因子に依存することになる。本明細書で用いる「患者」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。
【0113】
本発明の薬学的に許容される組成物は、治療を受ける感染症の重症度に応じて、経口、経直腸、非経口、嚢内、経膣、腹腔内、局所(粉剤、軟膏剤または滴下剤(drop)またはパッチ剤)、頬側で、また、経口または経鼻スプレーなどでヒトや他の動物に投与することができる。特定の実施形態では、本発明の化合物は、所望の治療効果を得るために、1日に対象体重当たり約0.01mg/kg〜約50mg/kg、好ましくは約0.5mg/kg〜約25mg/kgの投薬レベルで、日に1回または複数回、経口または非経口で投与することができる。
【0114】
経口投与用の液体剤形には、これらに限定されないが、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。活性化合物に加えて、液体剤形は、当業界で通常用いられる不活性賦形剤、例えば水または他の溶媒、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル(具体的には、綿実油、ラッカセイ油、コーンオイル、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルならびにその混合物などの可溶化剤および乳化剤などを含むことができる。不活性賦形剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤ならびに芳香剤などの補助剤も含むことができる。
【0115】
注射用製剤、例えば滅菌した水性または油性の注射用懸濁剤は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて当分野の公知の技術によって処方することができる。滅菌注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容される賦形剤もしくは溶媒中の滅菌注射用の液剤、懸濁剤または乳剤、例えば1,3−ブタンジオール中の液剤であってもよい。使用できる許容される媒体および溶媒には、水、リンガー溶液、U.S.P.および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌固定油は、溶媒または懸濁化媒体として慣用的に使用される。そのために、合成モノ−またはジグリセリドを含む任意の滅菌固定油を用いることができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射用物質の製剤で使用される。
【0116】
注射用処方物は、例えば、細菌保持フィルターでろ過するか、あるいは、使用前に滅菌水または他の滅菌注射用媒体中に溶解または分散させることができる滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を混ぜ込むことによって滅菌することができる。
【0117】
本発明の化合物の作用を持続させるために、皮下または筋肉内注射による化合物の吸収を遅延させることがしばしば望ましい。これは、水への溶解性の低い結晶性または無定型の物質の懸濁液を使用することによって実現することができる。化合物の吸収速度はその溶解速度に依存する。したがってその速度は結晶サイズや結晶形態に依存する。あるいは、非経口で投与された化合物形態の吸収を遅延させることは、それを油性媒体に溶解または懸濁させることによって実現される。注射用デポー形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に、化合物のマイクロカプセル化マトリックスを形成させることによって作製される。化合物とポリマーの比、および使用する具体的なポリマーの特性に応じて、化合物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(アンヒドリド)が含まれる。デポー注射用処方物は、生体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルジョン中に化合物を取り込むことによっても調製される。
【0118】
経直腸または経膣投与のための組成物は、本発明の化合物を、周囲温度では固体であるが体温で液体であり、したがって、直腸または膣腔内で溶融して活性化合物を放出する、ココアバター、ポリエチレングリコールまたは坐薬用ワックスなどの適切な非刺激性の添加剤または担体と混合することによって調製することができる。
【0119】
経口投与用の固体剤形には、カプセル剤、錠剤、丸薬、粉剤および顆粒剤が含まれる。そうした固体剤形では、活性化合物を、少なくとも1つの薬学的に許容される不活性な添加剤または担体、例えばクエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウム、および/または、a)フィラーすなわち増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸、b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロースおよびアカシア、c)保湿剤、例えばグリセロール、d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、バレイショまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム、e)溶解遅延剤、例えばパラフィン、f)吸収促進剤、例えば四級アンモニウム化合物、g)湿潤剤、例えばセチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート、h)吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイト粘土、ならびに、i)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびその混合物と混合させる。カプセル剤、錠剤および丸薬の場合、その剤形は緩衝剤を含むこともできる。
【0120】
同様の種類の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量のポリエチレングリコールなどの添加剤を用いて、軟質および硬質のゼラチンカプセル中のフィラーとして用いることもできる。固体剤形の錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸薬および顆粒剤は、腸溶コーティングおよび製薬技術分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。それらは、任意選択で乳白剤を含むことができ、また、任意選択で遅延した形で、腸管内の特定の部分において、活性成分だけか、またはそれを優先して放出する組成物でできていてもよい。使用できる埋込み型組成物の例には、高分子物質およびワックスが含まれる。同種の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量のポリエチレングリコールなどの添加剤を用いて、軟質および硬質のゼラチンカプセル中のフィラーとして用いることもできる。
【0121】
活性化合物は、上記したような1つまたは複数の添加剤でマイクロカプセル化した形態であってもよい。固体剤形の錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸薬および顆粒剤は、腸溶コーティング、放出制御コーティングおよび製薬技術分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。このような固体剤形では、活性化合物を、スクロース、ラクトースまたはデンプンなどの少なくとも1つの不活性賦形剤と混合することができる。そうした剤形は、通常実施されるように、不活性賦形剤以外の他の物質、例えば、ステアリン酸マグネシウムや微結晶性セルロースのような錠剤化用滑沢剤および他の錠剤化用助剤も含むことができる。カプセル剤、錠剤および丸薬の場合、その剤形は緩衝剤を含むこともできる。それらは任意選択で乳白剤を含むことができ、また、任意選択で遅延した形で、腸管内の特定の部分において、活性成分だけを放出するか、またはそれを優先して放出する組成物でできていてもよい。使用できる埋込み型組成物の例には、高分子物質およびワックスが含まれる。
【0122】
本発明の化合物の局所または経皮投与のための剤形は、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、粉剤、液剤、噴霧剤、吸入剤またはパッチ剤を含む。活性成分は、無菌条件下で、薬学的に許容される担体、必要に応じて任意の所要保存剤または緩衝剤と混合する。眼科用処方物、点耳剤および点眼剤も考えられ、これらも本発明の範囲内である。さらに、本発明は、身体に化合物を制御放出するという追加的な利点を有する経皮パッチ剤の使用を考慮する。そうした剤形は、適切な媒体中に化合物を溶解または分散させて調製される。吸収促進剤を用いて、皮膚を通る化合物フラックスを増大させることもできる。その速度は、速度制御膜を提供するか、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中に化合物を分散させることによって制御することができる。
【0123】
CFTRの修飾因子として本発明で使用する化合物の活性は、当業界および本明細書の実施例で概略説明されている方法によってアッセイすることができる。
【0124】
本発明の化合物および薬学的に許容される組成物は、併用治療で使用できる、すなわち、その化合物および薬学的に許容される組成物を1つもしくは複数の他の所望治療薬または医学的手順と同時か、それに先行するかまたはその後に投与できる治療で使用できることも理解されよう。併用レジメンにおいて用いる治療の具体的な組合せ(治療薬または手順)については、所望の治療薬および/または手順の適合性および達成すべき所望の治療効果を考慮に入れることになる。用いる治療法は、同じ障害について所望の効果を達成することができる(例えば、本発明の化合物を、同じ障害を治療するのに使用される別の薬剤と同時に投与することができる)、またはそれらは異なる効果(例えば、何らかの副作用の制御)を達成できることも理解されよう。本明細書で使用するような、特定の疾患または状態を治療または予防するために通常投与される追加の治療薬は、「治療を受ける疾患または状態に適している」ものとして公知である。
【0125】
一実施形態では、追加の薬剤は、粘液溶解薬、気管支拡張薬、抗生物質、抗感染症薬、抗炎症薬、本発明の化合物以外のCFTR修飾因子または栄養剤から選択される。他の実施形態では、追加の薬剤は本発明の化合物以外のCFTR修飾因子である。
【0126】
一実施形態では、追加の薬剤は抗生物質である。本明細書で有用な抗生物質の例には、トブラマイシン吸入用粉末(TIP)を含むトブラマイシン、アジスロマイシン、エアロゾール化された形態のアズトレオナムを含むアズトレオナム、そのリポソーム製剤を含むアミカシン、吸入による投与に適したその製剤を含むシプロフロキサシン、そのエアロゾール化された製剤を含むレボフロキサシ、ならびに2つの抗生物質、例えばホスホマイシンとトブラマイシンの組合せが含まれる。
【0127】
他の実施形態では、追加の薬剤は粘液溶解薬である。本明細書で有用な粘液溶解薬の例には、Pulmozyme(登録商標)が含まれる。
【0128】
他の実施形態では、追加の薬剤は気管支拡張薬である。気管支拡張薬の例には、アルブテロール、硫酸メタプロテレノール、酢酸ピルブテロール、サルメテロールまたは硫酸テトラブリンが含まれる。
【0129】
他の実施形態では、追加の薬剤は、肺気道表面液の回復に効果的なものである。そうした薬剤は、細胞の内外での塩の動きを向上させ、肺気道中の粘液がより潤う、したがってより簡単にのどがすっきりとなるようにする。そうした薬剤の例には、高張食塩水、デヌホソル四ナトリウム([[(3S,5R)−5−(4−アミノ−2−オキソピリミジン−1−イル)−3−ヒドロキシオキソラン−2−イル]メトキシ−ヒドロキシホスホリル][[[(2R,3S,4R,5R)−5−(2,4−ジオキソピリミジン−1−イル)−3、4−ジヒドロキシオキソラン−2−イル]メトキシ−ヒドロキシホスホリル]オキシ−ヒドロキシホスホリル]リン酸水素)またはbronchitol(マンニトールの吸入用製剤)が含まれる。
【0130】
他の実施形態では、追加の薬剤は、抗炎症薬、すなわち肺の炎症を低減できる薬剤である。本明細書で有用なそうした薬剤の例には、イブプロフェン、ドコサヘキサエン酸(docosahexanoic acid)(DHA)、シルデナフィル、吸入用グルタチオン、ピオグリタゾン、ヒドロキシクロロキンまたはシンバスタチン(simavastatin)が含まれる。
【0131】
他の実施形態では、追加の薬剤は、チャンネルを遮断することによって直接的に、またはENaC活性の増大をもたらすプロテアーゼ(例えば、セリンプロテアーゼ(seine protease)、チャンネル−活性化プロテアーゼ)の調節によって間接的に上皮のナトリウムチャンネルブロッカー(ENaC)の活性を低下させる。そうした薬剤の例には、カモスタット(トリプシン様プロテアーゼ阻害剤)、QAU145、552−02、GS−9411、INO−4995、Aerolyticおよびアミロリドが含まれる。上皮のナトリウムチャンネルブロッカー(ENaC)の活性を低下させる追加の薬剤は、例えばPCT出願番号WO2009/074575に見ることができる。その内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【0132】
本明細書で説明する他の疾患の中では、式Iの化合物などのCFTR修飾因子とENaCの活性を低下させる薬剤の組合せを、リドル症候群、嚢胞性線維症を含む炎症またはアレルギー状態、原発性線毛機能不全、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、ぜんそく、呼吸管感染症、肺癌、口腔乾燥症および乾性角結膜炎(keratoconjunctivitis sire)、呼吸管感染症(急性および慢性;ウイルス性および細菌性)ならびに肺癌を治療するために使用する。
【0133】
式Iの化合物などのCFTR修飾因子とENaCの活性を低下させる薬剤の組合せは、上皮を貫通する異常な流体制御に関係し、おそらくその表面上の保護表面液の生理学的異常を伴う呼吸器系疾患以外の疾患、例えば口腔乾燥症(口渇)または乾性角結膜炎(ドライアイ)も含む、上皮のナトリウムチャンネルの遮断によって媒介される疾患を治療するのにも有用である。さらに、腎臓における上皮のナトリウムチャンネルの遮断は、利尿を促進させ、それによって血圧低下作用を誘発させるために使用することができる。
【0134】
ぜんそくには、内因性(非アレルギー性)ぜんそくと外因性(アレルギー)ぜんそくの両方、軽度のぜんそく、中程度のぜんそく、重度のぜんそく、気管支ぜんそく、運動誘発性ぜんそく、職業性ぜんそくおよび細菌感染に続いて誘発されるぜんそくが含まれる。ぜんそくの治療は、ゼーゼーという症状を示し、主要な医学関連の確立された患者区分であり現在しばしば初期または早期ぜんそく患者(便宜上この特別なぜんそく状態は「ぜんそく幼児(wheezy infant)症候群」と称される)として特定される「ぜんそく幼児」として診断されるかまたは診断可能な例えば4才または5才未満の対象の治療も包含することを理解されたい。ぜんそくの治療における予防的効能は、症候発作、例えば急性ぜんそく性発作もしくは気管支収縮剤発作の頻度または重症度の低下、肺機能の改善または気道過反応性の改善によって証明される。それは、例えば抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド)または気管支拡張剤により起こる場合、他の対症療法、すなわち症候発作を抑えるかまたは止めるための治療の必要性を少なくすることによってさらに証明され得る。ぜんそくにおける予防的利益は、「モーニングディッピング(morning dipping)」の傾向がある対象において特に明らかであり得る。「モーニングディッピング」は、相当な割合のぜんそく患者に共通しており、例えば、おおよそ午前4〜6時の間、すなわち、それまで施された任意の症候ぜんそく治療から通常相当間をおいた時間でのぜんそく発作を特徴とする、認識されているぜんそく症候群である。
【0135】
慢性閉塞性肺疾患は、慢性気管支炎またはそれに伴う呼吸困難、肺気腫、ならびに薬物治療、特に他の吸入薬物治療の結果として起こる気道過反応性の増悪を含む。いくつかの実施形態では、式Iの化合物などのCFTR修飾因子とENaCの活性を低下させる薬剤の併用は、急性、アラキン酸性、カタル性、クループ性、慢性もしくはフチノイド性の気管支炎を含むどんなタイプまたは由来の気管支炎の治療にも有用である。
【0136】
他の実施形態では、追加の薬剤は、式Iの化合物以外のCFTR修飾因子、すなわち、CFTR活性を調節するのに有効な薬剤である。そうした薬剤の例には、アタルレン(「PTC124(登録商標)」;3−[5−(2−フルオロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル]安息香酸)、シナプルチド、ランコブチド(lancovutide)、デペレスタット(ヒト組換え好中球エラスターゼ阻害剤)、コビプロストン(7−{(2R、4aR、5R、7aR)−2−[(3S)−1,1−ジフルオロ−3−メチルペンチル]−2−ヒドロキシ−6−オキソオクタヒドロシクロペンタ[b]ピラン−5−イル}ヘプタン酸)または(3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)シクロプロパンカルボキシアミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸が含まれる。他の実施形態では、追加の薬剤は(3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)シクロプロパンカルボキシアミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸である。
【0137】
他の実施形態では、追加の薬剤は栄養剤である。そうした薬剤の例には、Pancrease(登録商標)、Pancreacarb(登録商標)、Ultrase(登録商標)もしくはCreon(登録商標)、Liprotomase(登録商標)(以前はTrizytek(登録商標))、Aquadeks(登録商標)を含むパンクレリパーゼ(パンクレアチン酵素補充療法剤(pancreating enzyme replacement))またはグルタチオン吸入剤が含まれる。一実施形態では、追加の栄養剤はパンクレリパーゼである。
【0138】
本発明の組成物中に存在する追加の治療薬の量は、その治療薬を唯一の活性剤として含む組成物で通常投与される量を超えないことになる。好ましくは、本発明で開示する組成物中の追加の治療薬の量は、その治療薬を唯一の治療用活性剤として含む組成物中に通常存在する量の約50%〜100%の範囲となる。
【0139】
本発明の化合物または薬学的に許容されるその組成物は、人工装具、人工弁、代用血管、ステントおよびカテーテルなどの埋込み型医療デバイスをコーティングするための組成物中に取り込むこともできる。したがって、本発明は、他の態様では、上記に概略説明し、かつ本明細書での部類および下位部類にある本発明の化合物ならびに前記埋込み型デバイスをコーティングするのに適した担体を含む、埋込み型デバイスをコーティングする組成物を含む。さらに他の態様では、本発明は、上記に概略説明し、かつ本明細書での部類および下位部類にある本発明の化合物ならびに前記埋込み型デバイスをコーティングするのに適した担体を含む組成物でコーティングされた埋込み型デバイスを含む。適切なコーティング、およびコーティングされた埋込み型デバイスの一般的な作製法は、米国特許第6,099,562号、同第5,886,026号および同第5,304,121号に記載されている。コーティングはヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニルおよびその混合物などの一般に生体適合性のあるポリマー材料である。そのコーティングを、フルオロシリコーン、多糖、ポリエチレングリコール、リン脂質またはその組合せの適切なトップコートで任意選択でさらに被覆して組成物に制御放出の特性を付与することができる。
【0140】
本発明の他の態様は、生物学的試料または患者のCFTR活性(例えば、インビトロまたはインビボで)を調節する方法であって、式(I)の化合物または前記化合物を含む組成物を患者に投与するか、またはそれを前記生物学的試料と接触させる方法に関する。本明細書で用いる「生物学的試料」という用語は、これらに限定されないが、細胞培養物またはその抽出物;哺乳動物から得られた生検材料またはその抽出物;および血液、唾液、尿、糞便、精液、涙液または他の体液もしくはその抽出物を含む。
【0141】
生物学的試料におけるCFTRの調節は、当業者に公知である様々な目的に有用である。そうした目的の例には、これらに限定されないが、生物学的および病理学的現象におけるCFTRの研究;CFTRの新規な修飾因子の比較評価が含まれる。
【0142】
さらに他の実施形態では、前記チャンネルを式(I)の化合物と接触させるステップを含む、インビトロまたはインビボで陰イオンチャンネルの活性を調節する方法を提供する。好ましい実施形態では、陰イオンチャンネルは塩素イオンチャンネルまたは重炭酸塩イオンチャンネルである。他の好ましい実施形態では、陰イオンチャンネルは塩素イオンチャンネルである。
【0143】
代替の実施形態によれば、本発明は、細胞膜中の機能性CFTRの数を増加させる方法であって、前記細胞を式(I)の化合物と接触させるステップを含む方法を提供する。
【0144】
他の好ましい実施形態によれば、CFTRの活性は、膜貫通電位を測定することによって測られる。生物学的試料の膜貫通電位を測定する手段としては、光学的膜電位アッセイまたは他の電気生理学的方法などの当業界で公知の方法のいずれかを用いることができる。
【0145】
光学的膜電位アッセイは、Gonzalez and Tsienが記載している(Gonzalez,J. E. and R. Y. Tsien(1995年)「Voltage sensing by fluorescence resonance energy transfer in single cells.」Biophys J 69巻(4号):1272〜80頁、およびGonzalez,J. E. and R. Y. Tsien(1997年);「Improved indicators of cell membrane potential that use fluorescence resonance energy transfer」Chem Biol 4巻(4号):269〜77頁を参照されたい)電位感受性FRETセンサーを、電圧/イオンプローブリーダー(VIPR)などの蛍光変化を測定する装置(Gonzalez,J. E.、K. Oadesら(1999年)「Cell−based assays and instrumentation for screening ion−channel targets」Drug Discov Today 4巻(9号):431〜439頁を参照されたい)と共に使用する。
【0146】
これらの電位感受性アッセイは、膜溶解性の電位感受性染料DiSBAC(3)と蛍光リン脂質CC2−DMPE(これは、原形質膜の外葉と結合しており、FRET供与体として働く)の間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の変化を基にしている。膜電位(V)の変化は、負の電荷を帯びたDiSBAC(3)を、原形質膜を通して再分配させ、したがって、CC2−DMPEからのエネルギー移動量は変化する。蛍光発光の変化は、96ウェルまたは384ウェルのマイクロタイタープレートにおいて、細胞に基づくスクリーンとなるように設計された統合液体処理装置(integrated liquid handler)および蛍光検出器である、VIPR(商標)IIを用いてモニターすることができる。
【0147】
他の態様では、本発明は、(i)式(I)の化合物または上記実施形態のいずれかを含む組成物;および、(ii)a.)その組成物を生物学的試料と接触させ、b.)前記CFTRまたはそのフラグメントの活性を測定するための取扱説明書を含む、インビトロまたはインビボでの生物学的試料中のCFTRまたはそのフラグメントの活性を測定するのに使用するためのキットを提供する。一実施形態では、そのキットは、a.)追加の組成物を生物学的試料と接触させ、b.)前記追加の化合物の存在下で前記CFTRまたはそのフラグメントの活性を測定し、c.)追加の化合物の存在下でのCFTRの活性を、式(I)の組成物の存在下でのCFTRの密度と比較するための取扱説明書をさらに含む。好ましい実施形態では、キットを、CFTRの密度を測定するために使用する。
【0148】
本明細書で説明する本発明がより完全に理解されるように、以下の実施例を示す。これらの実施例は、例示のためだけのものであり、本発明を限定するものと解釈されるものではないことを理解すべきである。
【0149】
式(I)の化合物を作製するための方法および中間体
本発明の他の態様は、式(Ic)の化合物:
【0150】
【化25】

または薬学的に許容されるその塩を調製する方法であって、
(a)式1dの酸を式2cのアミンと反応させて式(Ic)の化合物
【0151】
【化26】

(式中、環Aは、
【0152】
【化27】

から選択され、
は、−CF、−CNまたは−C≡CCHN(CHであり、
は、水素、−CH、−CF、−OHまたは−CHOHであり、
は、水素、−CH、−OCHまたは−CNであり、
ただし、RとRは同時に水素であることはなく、
は、水素、またはトリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)および[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル(SEM)からなる群から選択されるシリル保護基である)
を提供する方法に関する。
【0153】
一実施形態では、式1dの酸と式2cのアミンの反応を、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)およびトリエチルアミンが存在する溶媒中、またはプロピルホスホン酸環状無水物(T3P(登録商標))およびピリジンが存在する溶媒中で実施する。より具体的には、その溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド、酢酸エチルまたは2−メチルテトラヒドロフランを含む。
【0154】
他の実施形態では、Rは水素またはTBDMSである。
【0155】
他の実施形態では、RはTBDMSである。
【0156】
他の実施形態では、上記方法は、例えば、環Aが
【0157】
【化28】

(式中、Rはシリル保護基である)
である場合、環Aが
【0158】
【化29】

である式(Ic)の化合物を生成する脱保護ステップをさら含む。一般に、シリル保護基の除去には、酢酸または希薄鉱酸などの酸で処理する必要があるが、フッ素イオンの供給源(例えば、テトラブチルアンモニウムフルオリド)などの他の試薬を使用することもできる。
【0159】
この方法では、式2cのアミンを式2aの化合物から調製する方法であって、
(a)式2aの化合物を式3のアミンと反応させて式2bの化合物
【0160】
【化30】

(式中、Halは、F、Cl、BrまたはIであり、
式3のアミンは
【0161】
【化31】

である)
を得るステップと、
(b)式2bの化合物を還元して式2cのアミン
【0162】
【化32】

を得るステップと
を含む方法である。
【0163】
式2cのアミンを作製する方法の1つの実施形態では、ステップ(a)の式3のアミンを、アミン塩酸塩などの対応する四級アンモニウム塩からインサイチュで生成させるが、他のアンモニウム塩(例えば、トリフルオロ酢酸塩)を使用することもできる。
【0164】
式2cのアミンを生成させるためのステップ(a)の1つの実施形態では、式3のアミンが
【0165】
【化33】

である場合、Rは水素またはTBDMSである。より具体的には、RはTBDMSである。
【0166】
他の実施形態では、ステップ(a)を、第3アミン塩基の存在下、極性非プロトン性溶媒中で実施する。使用できる第3アミンの例には、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)およびピリジンが含まれる。使用できる溶媒の例には、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたはアセトニトリルが含まれる。
【0167】
一実施形態では、第3アミン塩基はトリエチルアミンである。
【0168】
他の実施形態では、ステップ(a)を、トリエチルアミンの存在下、アセトニトリル中で実施する。
【0169】
他の実施形態では、ステップ(a)の反応温度は約75℃から約85℃の間である。
【0170】
他の実施形態では、ステップ(a)の反応時間は約2から約30時間の間である。
【0171】
式2cのアミンを作製する方法の1つの実施形態では、ステップ(b)を、パラジウム触媒の存在下、極性プロトン性溶媒または極性プロトン性溶媒の混合物中で実施する。パラジウムが触媒である場合、ステップ(b)の溶媒は一般にアルコールなどの極性プロトン性溶媒である。より具体的には、メタノールまたはエタノールを含む。
【0172】
他の実施形態では、ステップ(b)を、FeおよびFeSOまたはZnおよびAcOHの存在下、水などの極性プロトン性溶媒中で実施する。
【0173】
本発明の他の態様は、式(Ic)の化合物:
【0174】
【化34】

または薬学的に許容されるその塩を調製する方法であって、
(a)式2aの化合物を式3のアミンと反応させて式2bの化合物
【0175】
【化35】

を得るステップと、
(b)式2bの化合物を還元により式2cのアミン
【0176】
【化36】

に転換させるステップと、
(c)式2cのアミンを式1dの酸と反応させて式(Ic)の化合物
【0177】
【化37】

(式中、
Halは、F、Cl、BrまたはIであり、
前記式3のアミンは
【0178】
【化38】

であり、
環Aは
【0179】
【化39】

から選択され、
は、−CF、−CNまたは−C≡CCHN(CHであり、
は、水素、−CH、−CF、−OHまたは−CHOHであり、
は、水素、−CH、−OCHまたは−CNであり、
ただし、RとRは同時に水素であることはなく、
は、水素、またはトリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)および[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル(SEM)からなる群から選択されるシリル保護基である。
のステップを含む方法に関する。
【0180】
一実施形態では、ステップ(a)の式3のアミンを、アミン塩酸塩などの対応する四級アンモニウム塩からインサイチュで生成させるが、他のアンモニウム塩(例えば、トリフルオロ酢酸塩)を使用することもできる。
【0181】
式2cのアミンを生成させるためのステップ(a)の1つの実施形態では、式3のアミンが
【0182】
【化40】

である場合、Rは水素またはTBDMSである。より具体的には、RはTBDMSである。
【0183】
他の実施形態では、ステップ(a)を、第3アミン塩基の存在下、極性非プロトン性溶媒中で実施する。使用できる第3アミンの例には、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)およびピリジンが含まれる。
【0184】
一実施形態では、第3アミン塩基がトリエチルアミンである。
【0185】
他の実施形態では、ステップ(a)を、トリエチルアミンの存在下、アセトニトリル中で実施する。
【0186】
他の実施形態では、ステップ(a)の反応温度は約75℃から約85℃の間である。
【0187】
他の実施形態では、ステップ(a)の反応時間は約2から約30時間の間である。
【0188】
式2cのアミンを作製する方法の1つの実施形態では、ステップ(b)を、パラジウム触媒の存在下、極性プロトン性溶媒または極性プロトン性溶媒の混合物中で実施する。パラジウムが触媒である場合、ステップ(b)の溶媒は一般にアルコールなどの極性プロトン性溶媒である。より具体的には、溶媒はメタノールまたはエタノールを含む。
【0189】
他の実施形態では、ステップ(b)を、FeおよびFeSOまたはZnおよびAcOHの存在下、水などの極性プロトン性溶媒中で実施する。
【0190】
ステップ(c)の1つの実施形態では、式1dの酸と式2cのアミンの反応を、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)およびトリエチルアミンが存在する溶媒中、またはプロピルホスホン酸環状無水物(T3P(登録商標))およびピリジンが存在する溶媒中で実施する。より具体的には、溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸エチルまたは2−メチルテトラヒドロフランを含む。
【0191】
他の実施形態では、Rは水素またはTBDMSである。
【0192】
他の実施形態では、RはTBDMSである。
【0193】
他の実施形態では、上記方法は、例えば環Aが
【0194】
【化41】

(式中、Rはシリル保護基である)
である場合、環Aが
【0195】
【化42】

である式(I)の化合物を生成する脱保護ステップをさらに含む。一般に、シリル保護基の除去は、酢酸または希薄鉱酸などの酸で処理する必要があるが、フッ素イオンの供給源(例えば、テトラブチルアンモニウムフルオリド)などの他の試薬を使用することもできる。
【0196】
本発明の他の態様は、
【0197】
【化43】

(式中、環Aは、
【0198】
【化44】

であり、
は、−CF、−CNまたは−C≡CCHN(CHであり、
は、トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)および[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル(SEM)からなる群から選択されるシリル保護基である)
である化合物に関する。
【0199】
本発明の他の態様は、
【0200】
【化45】

(式中、環Aは
【0201】
【化46】

であり、
は、−CF、−CNまたは−C≡CCHN(CHであり、
は、トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)および[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル(SEM)からなる群から選択されるシリル保護基である)
である化合物に関する。
【0202】
本発明の他の態様は、式(IA)の化合物:
【0203】
【化47】

または薬学的に許容されるその塩
(式中、
【0204】
【化48】

は、
【0205】
【化49】

から選択され、
は、−CF、−CNまたは−C≡CCHN(CHであり、
は、水素、−CH、−CF、−OHまたは−CHOHであり、
は、水素、−CH、−OCHまたは−CNであり、
ただし、RとRは同時に水素であることはなく、
は、トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)および[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル(SEM)からなる群から選択されるシリル保護基である)に関する。
【0206】
本発明の他の態様は、本明細書で開示するいずれかの方法で作製された式(I)の化合物;
【0207】
【化50】

または薬学的に許容されるその塩
(式中、環Aは、
【0208】
【化51】

から選択され、
は、−CF、−CNまたは−C≡CCHN(CHであり、
は、水素、−CH、−CF、−OHまたは−CHOHであり、
は、水素、−CH、−OCHまたは−CNであり、
ただし、RとRは同時に水素であることはない)に関する。
【0209】
本発明の他の態様は、本明細書で開示するいずれかの方法で作製された
【0210】
【化52】

【0211】
【化53】

【0212】
【化54】

からなる群から選択される化合物に関する。
【実施例】
【0213】
中間体1:4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸(17)。表題化合物の合成をスキーム4に示す。
【0214】
【化55】

ジエチル2−((2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニルアミノ)メチレン)マロネート(14)の調製。2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)アニリン12(200g、1.023mol)、ジエチル2−(エトキシメチレン)マロネート13(276g、1.3mol)およびトルエン(100mL)を、ディーンスターク凝縮器を備えた三つ口1L丸底フラスコ中、窒素雰囲気下で混合した。溶液を攪拌しながら140℃に加熱し、その温度で4時間保持した。反応混合物を70℃に冷却し、ヘキサン(600mL)を徐々に加えた。得られたスラリーを攪拌し、室温に加温した。固体をろ取し、ヘキサン(2×400mL)中の10%酢酸エチルで洗浄し、次いで真空下で乾燥して白色固体(350g、94%収率)を所望の縮合生成物ジエチル2−((2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニルアミノ)メチレン)マロネート14として得た。H NMR(400MHz,DMSO−d) δ 11.28(d,J=13.0Hz,1H),8.63(d,J=13.0Hz,1H),8.10(s,1H),7.80(d,J=8.3Hz,1H),7.50(dd,J=1.5,8.4Hz,1H),4.24(q,J=7.1Hz,2H),4.17(q,J=7.1Hz,2H),1.27(m,6H)。
【0215】
エチル8−クロロ−4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキシレート(15)の調製。三つ口1LフラスコにDowtherm(登録商標)(200mL、8mL/g)をチャージし、これを200℃で1時間脱ガスした。溶媒を260℃に加熱し、ジエチル2−((2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニルアミノ)メチレン)マロネート14(25g、0.07mol)を10分にわたって一括チャージした。得られた混合物を260℃で6.5時間攪拌し、得られたエタノール副生物を蒸留により除去した。混合物を徐々に80℃に冷却した。ヘキサン(150mL)を30分間かけて徐々に加え、続いて追加の200mLのヘキサンを一括添加した。スラリーを室温になるまで攪拌した。固体をろ過し、ヘキサン(3×150mL)で洗浄し、次いで真空下で乾燥してエチル8−クロロ−4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキシレート15を黄褐色固体(13.9g、65%収率)として得た。H NMR(400MHz,DMSO−d) δ 11.91(s,1H),8.39(s,1H),8.06(d,J=8.3Hz,1H),7.81(d,J=8.4Hz,1H),4.24(q,J=7.1Hz,2H),1.29(t,J=7.1Hz,3H)。
【0216】
エチル4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1H−キノリン−3−カルボキシレート(16)の調製。三つ口5Lフラスコに、エチル8−クロロ−4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキシレート15(100g、0.3mol)、エタノール(1250mL、12.5mL/g)およびトリエチルアミン(220mL、1.6mol)をチャージした。次いで容器に5℃で10gの10%Pd/C(50%ウェット)をチャージした。反応物を水素雰囲気下、5℃で20時間強力に攪拌し、次いで反応混合物を濃縮して約150mLの容積にした。Pd/Cを含むスラリーとしての生成物、エチル4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1H−キノリン−3−カルボキシレート16を直接次のステップに供した。
【0217】
4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸(17)の調製。エチル4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1H−キノリン−3−カルボキシレート16(58g、0.2mol、Pd/Cを含む粗製反応スラリー)を、還流凝縮器を備えた1Lフラスコ中でNaOH(814mLの5M、4.1mol)に懸濁させ、80℃で18時間加熱し、続いて100℃で5時間さらに加熱した。セライト(Celite)充填物で反応物を温かい状態でろ過してPd/Cを除去し、セライトを1N NaOHで濯いだ。ろ液を酸性化して約pH1にして濃厚な白色沈殿物を得た。沈殿物をろ過し、次いで水および冷アセトニトリルで濯いだ。次いで固体を真空下で乾燥して4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸17を白色固体(48g、92%収率)として得た。H NMR(400.0MHz,DMSO−d) δ 15.26(s,1H),13.66(s,1H),8.98(s,1H),8.13(dd,J=1.6,7.8Hz,1H),8.06−7.99(m,2H)。
【0218】
中間体2:4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)アニリン(21)。表題化合物の合成をスキーム5に示す。
【0219】
【化56】

7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(20)の調製。Tyger Scientific Inc.、324 Stokes Avenue、Ewing、NJ、08638 USAから得た7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン塩酸塩7a(4.6g、34.43mmolを含むフラスコに、窒素雰囲気下で、アセトニトリル(50mL)中の4−フルオロ−1−ニトロ−2−(トリフルオロメチル)ベンゼン18(6.0g、28.69mmol)およびトリエチルアミン(8.7g、12.00mL、86.07mmol)の溶液を加えた。反応フラスコを窒素雰囲気下、80℃で16時間加熱した。反応混合物を冷却し、次いで水とジクロロメタンに分配させた。有機層を1M HClで洗浄し、NaSOで脱水し、ろ過し、濃縮して乾燥させた。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中の0〜10%酢酸エチル)で精製して7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン19(7.2g、88%収率)を黄色固体として得た。H NMR(400.0MHz,DMSO−d) δ 8.03(d,J=9.1Hz,1H),7.31(d,J=2.4Hz,1H),7.25(dd,J=2.6,9.1Hz,1H),4.59(s,2H),1.69−1.67(m,4H),1.50(d,J=7.0Hz,4H)。
【0220】
4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)アニリン(20)の調製。7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン19(7.07g、24.70mmol)および10%Pd/C(0.71g、6.64mmol)をチャージしたフラスコを排気し、次いで窒素でフラッシュした。エタノール(22mL)を加え、反応フラスコに水素バルーンを取り付けた。12時間強力に攪拌した後、反応混合物を窒素でパージし、ろ過によりPd/Cを除去した。ろ液を減圧下で濃縮して黒ずんだ色の油状物を得、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中の0〜15%酢酸エチル)で精製して4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)アニリン20を紫色の固体(5.76g、91%収率)として得た。H NMR(400.0MHz,DMSO−d) δ 6.95(dd,J=2.3,8.8Hz,1H),6.79(d,J=2.6Hz,1H),6.72(d,J=8.8Hz,1H),4.89(s,2H),4.09(s,2H),1.61−1.59(m,4H)および1.35(d,J=6.8Hz,4H)。
【0221】
中間体3:2−アミノ−5−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)ベンゾニトリル(23)。表題化合物の合成をスキーム6に示す。
【0222】
【化57】

5−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−ニトロベンゾニトリル(22)の調製。アセトニトリル(1mL)中の5−フルオロ−2−ニトロベンゾニトリル21(160mg、0.96mmol)の溶液に、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン塩酸塩7a(129mg、0.96mmol)およびトリエチルアミン(244mg、335.7μL、2.41mmol)を徐々に加えた。反応物を60℃で4時間攪拌した。反応物を水でクエンチし、1N HClでpH1に酸性化し、ジクロロメタン(3×10mL)で抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、MgSOで脱水し、ろ過し濃縮して5−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−ニトロベンゾニトリル22(205mg、87%収率)を得た。LC/MS m/z 244.3[M+H]、保持時間1.69分間(RP−C18、10〜99%CHCN/0.05%TFA、3分間で)。
【0223】
2−アミノ−5−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)ベンゾニトリル(23)の調製。5−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−ニトロベンゾニトリル22(205mg、0.8427mmol)および10%Pd/C(41mg、0.39mmol)をチャージしたフラスコを窒素でフラッシュし、次いで真空をかけて排出させた。窒素雰囲気下でメタノール(4mL)を加え、フラスコに水素バルーンを取り付けた。15分間攪拌した後、Pd/Cをろ過により除去し、溶媒を真空下で除去して2−アミノ−5−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)ベンゾニトリル23(170mg、95%収率)を得た。H NMR(400.0MHz,DMSO−d) δ 7.02(dd,J=2.8,9.0Hz,1H),6.87(d,J=2.7Hz,1H),6.68(d,J=9.0Hz,1H),5.36(s,2H),4.09(s,2H),1.59(d,J=6.8Hz,4H),1.34(d,J=6.8Hz,4H)。
【0224】
中間体4:4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(3−(ジメチルアミノ)プロパ−1−イニル)アニリン(27)。表題化合物の合成をスキーム7に示す。
【0225】
【化58】

7−(3−ブロモ−4−ニトロフェニル)−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(25)の調製。DMSO(8.400mL)中の2−ブロモ−4−フルオロ−1−ニトロ−ベンゼン24(1.1g、4.8mmol)およびKCO(2.0g、14.3mmol)の溶液に、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン7a(765.4mg、5.7mmol)を分割して添加した。反応物を80℃で24時間攪拌した。反応物を水で希釈して沈殿させて生成物を得た。固体をジクロロメタンに再溶解し、1.0N HClで洗浄し、MgSOで脱水し、ろ過し濃縮して7−(3−ブロモ−4−ニトロフェニル)−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン25(1.1g、78%収率)を得た。粗生成物を次のステップで直接使用した。LC/MS m/z 299.1[M+H]、保持時間1.97分間(RP−C18、10〜99%CHCN/0.05%TFA、3分間で)。
【0226】
3−[5−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−ニトロ−フェニル]−N,N−ジメチル−プロパ−2−イン−1−アミン(26)の調製。7−(3−ブロモ−4−ニトロ−フェニル)−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン25(500mg、1.683mmol)、Pd(PPhCl(59mg、0.08mmol)およびヨウ化第一銅(9.616mg、1.708μL、0.05049mmol)に、脱ガスしたDMF(5mL)およびトリエチルアミン(5mL)の中のN,N−ジメチルプロパ−2−イン−1−アミン(420mg、538μL、5.05mmol)の溶液を加えた。反応混合物をN雰囲気下、100℃で10分間マイクロ波処理した。反応物を酢酸エチルで希釈し、50%飽和重炭酸ナトリウム溶液(2×20mL)、水およびブラインで洗浄した。溶液を無水NaSOで脱水し、ろ過して赤色固体を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル中に0〜50%ジクロロメタン)で精製して3−[5−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−ニトロ−フェニル]−N,N−ジメチル−プロパ−2−イン−1−アミン26(400mg、79%収率)を得た。LC/MS m/z 300.5[M+H]、保持時間1.11分間(RP−C18、10〜99%CHCN/0.05%TFA、3分間で)。
【0227】
4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(3−ジメチルアミノプロパ−1−イニル)アニリン(27)の調製。3−[5−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−ニトロ−フェニル]−N,N−ジメチル−プロパ−2−イン−1−アミン26(340mg、1.14mmol)、鉄(634mg、11.36mmol)および硫酸第一鉄七水和物(316mg、1.136mmol)を水(1mL)に懸濁させ、20分間還流させた。反応物をろ過し、固体をメタノールおよびジクロロメタンで洗浄した。ろ液を濃縮し、(ジクロロメタン中に0〜5%メタノール)を用いてシリカゲルクロマトグラフィーで精製して4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(3−ジメチルアミノプロパ−1−イニル)アニリン27(148mg、48%収率)を得た。LC/MS m/z 270.3[M+H]、保持時間0.25分間(RP−C18、10〜99%CHCN/0.05%TFA、3分間で)。
【0228】
中間体5:エキソ−4−(2−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)アニリン(30)。表題化合物の合成をスキーム8に示す。
【0229】
【化59】

エキソ−7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5−オル(28)の調製。エキソ−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オル7b(0.86g、5.74mmol)を窒素雰囲気下で含むフラスコに、アセトニトリル(8mL)中の4−フルオロ−1−ニトロ−2−(トリフルオロメチル)ベンゼン18(1g、4.78mmol)およびトリエチルアミン(1.45g、2.0mL、14.35mmol)の溶液を加えた。反応物を窒素雰囲気下、84℃で22時間加熱した。反応混合物を冷却し、次いで水と酢酸エチルに分配させた。層を分離し、水層を酢酸エチルで2回抽出した。一緒にした有機層をNaSOで脱水し、ろ過し、濃縮して乾燥させた。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中の0〜50%酢酸エチル)で精製してエキソ−7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5−オル28を黄色固体(0.67g、46%収率)として得た。LC/MS m/z 303.3[M+H]、保持時間1.51分間(RP−C18、10〜99%CHCN/0.05%TFA、3分間で)。
【0230】
エキソ−tert−ブチル−ジメチル−[[7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5−イル]オキシ]シラン29の調製。Tert−ブチル−クロロ−ジメチル−シラン(197mg、1.267mmol)をDMF(0.5mL)中の4H−イミダゾール(144mg、2.11mmol)の溶液に加えた。発泡が停止した後、エキソ−7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5−オル28(255mg、0.84mmol)をDMF(0.6mL)の溶液として加え、室温で14時間攪拌した。反応物を水でクエンチし、ジエチルエーテルで2回抽出し、MgSOで脱水し、ろ過し濃縮して無色油状物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中に0〜40%ジクロロメタン)で精製してエキソ−tert−ブチル−ジメチル−[[7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5−イル]オキシ]シラン29(318mg、90%収率)を黄色油状物として得た。H NMR(400.0MHz,DMSO−d) δ 8.01(d,J=9.2Hz,1H),7.29(d,J=2.4Hz,1H),7.19(dd,J=2.6,9.2Hz,1H),4.60(t,J=4.4Hz,1H),4.47(d,J=5.2Hz,1H),4.07(dd,J=2.0,6.8Hz,1H),1.94(dd,J=6.4,12.8Hz,1H),1.71−1.47(m,3H),1.39−1.32(m,2H),0.65(s,9H),0.03(s,6H)。
【0231】
エキソ−4−[5−[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル]−2−(トリフルオロメチル)アニリン(30)の調製。活性炭担持のパラジウム(10重量%、30mg、0.28mmol)を含むフラスコを排気し、Nでパージし、エタノール(3mL)中のエキソ−tert−ブチル−ジメチル−[[7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5−イル]オキシ]シラン29(301mg、0.72mmol)の溶液をチャージした。フラスコを排気し、次いでHバルーンを取り付け、室温で4時間攪拌した。混合物をろ過し、乾燥するまで濃縮してエキソ−4−[5−[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル]−2−(トリフルオロメチル)アニリン30(268mg、96%収率)を灰白色固体として得た。H NMR(400.0MHz,DMSO−d) δ 6.92(dd,J=2.4,8.8Hz,1H),6.77(d,J=2.6Hz,1H),6.70(d,J=8.8Hz,1H),4.84(s,2H),4.11(t,J=4.4Hz,1H),3.91−3.89(m,2H),1.82(dd,J=7.1,12.3Hz,1H),1.54−1.39(m,3H),1.20−1.16(m,2H),0.79(s,9H),0.02(s,6H)。
【0232】
中間体6:エンド−4−(2−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)アニリン(34)。表題化合物の調製をスキーム9に示す。
【0233】
【化60】

7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5−オン(31)の調製。窒素雰囲気下、−78℃でのジクロロメタン(3mL)中のシュウ酸ジクロライド(165mg、113μL、1.27mmol)の溶液に、ジクロロメタン(0.7mL)中のDMSO(199mg、180μL、2.54mmol)の溶液を滴下した。反応混合物を30分間攪拌し、次いでジクロロメタン(2.5mL)中のエキソ−7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5−オル28(320mg、1.06mmol)の溶液を滴下した。反応物を−78℃でさらに1時間攪拌し、次いでトリエチルアミン(536mg、738μL、5.30mmol)を滴下し、反応物を室温に加温した。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、ジクロロメタンと水に分配させ、層を分離させた。水層をジクロロメタンでさらに1回(once more)抽出した。一緒にした有機層をNaSOで脱水し、ろ過し濃縮して黄色油状物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサンに0〜30%酢酸エチル)で精製して7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5−オン31(266mg、84%収率)を黄色固体として得た。H NMR(400.0MHz,DMSO−d) δ 8.06(d,J=9.1Hz,1H),7.47(d,J=2.4Hz,1H),7.39(dd,J=2.6,9.1Hz,1H),4.98(t,J=4.5Hz,1H),4.84(d,J=5.4Hz,1H),2.44(d,J=3.1Hz,1H),2.23(d,J=16Hz,1H),2.00−1.92(m,1H),1.88−1.70(m,2H),1.66−1.60(m,1H)。
【0234】
エンド−7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5−オル(32)の調製。窒素雰囲気下、−55℃でのTHF(11mL)中の7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5−オン31(261mg、0.87mmol)の溶液に、リチウムヒドリド−トリsec−ブチル−ホウ素(1.04mL、1M、1.04mmol)の溶液を滴下した。30分後、反応混合物を氷水浴に移し、攪拌を続行した。反応混合物を0℃でメタノール(1.2mL)でクエンチした。反応混合物をジクロロメタン/水に分配させ、分離し、水層をジクロロメタンでさらに2回抽出した。有機層を一緒にし、NaSOで脱水し、ろ過し、濃縮して乾燥させた。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中に0〜50%酢酸エチル)で精製してエンド−7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5−オル32(222mg、84%収率)を黄色固体として得た。H NMR(400.0MHz,DMSO−d) δ 8.01(d,J=9.1Hz,1H),7.27(d,J=3.0Hz,1H),7.22(dd,J=2.6,9.1Hz,1H),5.17(d,J=4.4Hz,1H),4.49(t,J=4.9Hz,1H),4.44(t,J=4.5Hz,1H),4.16−4.10(m,1H),2.20−2.06(m,2H),1.67−1.44(m,3H),1.09(dd,J=3.5,12.4Hz,1H)。
【0235】
エンド−tert−ブチル−ジメチル−[[7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5−イル]オキシ]シラン(33)の調製。Tert−ブチルクロロジメチルシラン(168mg、1.08mmol)をDMF(425.3μL)中の4H−イミダゾール(122mg、1.80mmol)の溶液に加えた。発泡が停止した後、エンド−7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5−オル32(217mg、0.72mmol)をDMF(1mL)中の溶液として加え、室温で14時間攪拌した。反応物を水でクエンチし、ジエチルエーテルで2回抽出し、MgSOで脱水し、ろ過し、濃縮して無色油状物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中の0〜40%ジクロロメタン)で精製してエンド−tert−ブチル−ジメチル−[[7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5−イル]オキシ]シラン33(251mg、84%収率)を黄色油状物として得た。H NMR(400.0MHz,DMSO−d) δ 8.01(d,J=9.1Hz,1H),7.32(d,J=2.3Hz,1H),7.26(dd,J=2.5,9.1Hz,1H),4.54−4.51(m,2H),4.29−4.26(m,1H),2.20−2.11(m,2H),1.67−1.45(m,3H),1.08(dd,J=3.2,12.4Hz,1H),0.88(s,9H),0.07(d,J=2.6Hz,6H)。
【0236】
エンド−4−[5−[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル]−2−(トリフルオロメチル)アニリン(34)の調製。活性炭担持のパラジウム(10重量%、24mg、0.23mmol)を含むフラスコを排気し、次いで窒素雰囲気下でパージした。これに、エタノール(5mL)中のエンド−tert−ブチル−ジメチル−[[7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5−イル]オキシ]シラン33(240mg、0.58mmol)の溶液を加えた。反応混合物を排気し、次いでHバルーンを取り付け室温で4時間攪拌した。混合物をろ過し、乾燥するまで濃縮してエンド−4−[5−[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル]−2−(トリフルオロメチル)アニリン34(222mg、100%収率)を灰白色固体として得た。H NMR(400.0MHz,DMSO−d) δ 6.95(dd,J=2.4,8.8Hz,1H),6.79(d,J=2.6Hz,1H),6.72(d,J=8.8Hz,1H),4.91(s,2H),4.24−4.19(m,1H),4.06−4.03(m,2H),2.12−1.99(m,2H),1.55−1.53(m,1H),1.42−1.36(m,2H),0.96(dd,J=3.2,12.2Hz,1H),0.87(s,9H),0.05(s,6H)。
【0237】
実施例化合物3:N−(4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)フェニル)−4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド。
表題化合物の調製をスキーム10に示す。
【0238】
【化61】

2−メチルテトラヒドロフラン(91.00mL)中の4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1H−キノリン−3−カルボン酸17(9.1g、35.39mmol)および4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)アニリン20(9.2g、35.74mmol)の溶液に、プロピルホスホン酸環状無水物(T3P、酢酸エチル中に50%溶液、52.68mL、88.48mmol)およびピリジン(5.6g、5.73mL、70.78mmol)を室温で加えた。反応フラスコを窒素雰囲気下、65℃で10時間加熱した。室温に冷却した後、反応物を酢酸エチルで希釈し、飽和NaCO溶液(50mL)でクエンチした。層を分離し、水層を酢酸エチルでさらに2回抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、NaSOで脱水し、ろ過し濃縮して黄褐色固体を得た。粗製固体生成物を酢酸エチル/ジエチルエーテル(2:1)にスラリー化し、真空ろ過により集め、酢酸エチル/ジエチルエーテル(2:1)でさらに2回洗浄して生成物を淡黄色結晶性粉末として得た。その粉末を加温した酢酸エチルに溶解し、セライトに吸収させた。シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン中に0〜50%酢酸エチル)で精製してN−(4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)フェニル)−4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミドを白色結晶性固体(13.5g、76%収率)として得た。LC/MS m/z 496.0[M+H]、保持時間1.48分間(RP−C18、10〜99%CHCN/0.05%TFA、3分間で)。H NMR(400.0MHz,DMSO−d) δ 13.08(s,1H),12.16(s,1H),8.88(s,1H),8.04(dd,J=2.1,7.4Hz,1H),7.95−7.88(m,3H),7.22(dd,2.5,8.9Hz,1H),7.16(d,J=2.5Hz,1H),4.33(s,2H),1.67(d,J=6.9Hz,4H),1.44(d,J=6.9Hz,4H)。
【0239】
実施例化合物3 A型HCl塩N−(4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)フェニル)−4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド塩酸塩(A型HCl)。
【0240】
【化62】

7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(19)の調製。4−フルオロ−1−ニトロ−2−(トリフルオロメチル)ベンゼン(18)(901g)を30Lジャケット付き容器に仕込んだ。炭酸ナトリウム(959.1g)および5Lジメチルスルホキシド(DMSO)を加え、混合物を窒素雰囲気下で攪拌した。7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン塩酸塩(7a)(633.4g)を容器に一括して加えた。混合物の温度は徐々に55℃に上昇した。反応をHPLCでモニターした。基剤が1%未満のAUCになったら、反応は完了したと見なした。次いで混合物を10倍容積の2−メチルテトラヒドロフランで希釈し、5.5倍容積の水で、HPLCで判定して水層中のDMSOが無くなるまで3回洗浄して2−メチルテトラヒドロフラン中の7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(19)(約95%収率)を得た。
【0241】
4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)アニリンの塩酸塩(20.HCl)の調製。カーボン担持パラジウム(150g、5重量/重量%)を、窒素雰囲気下でBuchi水素化器(20L容量)にチャージし、続いて7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(19)(1500g)および2−メチルテトラヒドロフラン(10.5L、7倍容積)を加えた。水素ガスを密閉水素化器にチャージして0.5バールの圧にした。約2分間真空を施し、続いて水素ガスを導入して0.5バールの圧にした。この工程を2回繰り返した。次いで水素ガスを、0.5バールの圧で混合物に連続的にチャージした。容器ジャケットで冷却しながら混合物を18〜23℃の温度で攪拌した。水素ガスがそれ以上消費されなくなり、さらなる発熱が無くなったら、容器に真空をかけた。次いで窒素ガスを0.5バールで容器にチャージし、再度真空をかけ、続いて0.5バールで2回目の窒素ガスをチャージした。一定分量をろ過したものをHPLCにかけて、7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(19)が存在しない(例えば、≦0.5%)ことが示されたら、反応混合物を、セライトフィルターを用いたろ過漏斗を通して、窒素雰囲気下で受け入れフラスコに移した。セライトろ過ケーキを2−メチルテトラヒドロフラン(3L、2倍容積)で洗浄した。洗浄液およびろ液を、攪拌、温度調節および窒素雰囲気を備えた容器中にチャージした。1,4−ジオキサン(1倍容積)中の4M HClを、1時間かけて20℃で容器に連続的に加えた。混合物をさらに10時間(または終夜)攪拌し、ろ過し、2−メチルテトラヒドロフラン(2倍容積)で洗浄し、乾燥して1519gの4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)アニリンの塩酸塩(20.HCl)を白色結晶性固体(約97%収率)として得た。
【0242】
7−[4−アミノ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタンの塩酸塩(20.HCl)の代替の調製法。
【0243】
【化63】

Buchi水素化器(20L容量)中に、窒素雰囲気下で、カーボン担持パラジウム(5重量/重量%)(150g)を導入し、続いて7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン19(1500g)および2−メチルテトラヒドロフラン(10.5L、7倍容積)を加えた。水素ガスを容器にチャージして0.5バールの圧にした。短く真空を施し(2分間)、続いて水素ガスを導入して0.5バールの圧にした。この工程をさらに2回繰り返し、次いで水素ガスを、0.5バールの圧で水素化器に連続的にチャージし、攪拌を開始した。容器ジャケットを冷却して反応混合物の温度を18〜23℃に保持した。水素ガスがそれ以上消費されなくなり、さらなる発熱が無くなったら、容器に真空をかけた。次いで窒素ガスを容器にチャージし、真空を再度かけ、続いて窒素ガスを、0.5バールの圧でチャージした。一定分量をろ過したものをHPLCにかけて、7−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタンが検出されなかったら(≦0.5%)、反応は完了していると見なした。次いで反応混合物をセライトでろ過した。残ったスラリーを、セライトフィルターを備えたろ過漏斗を通して、窒素雰囲気下で受け入れフラスコに移した。セライトケーキを2−メチルテトラヒドロフラン(3L、2倍容積)で洗浄した。ろ液および洗浄液を、攪拌機構、温度調節および窒素雰囲気を備えた容器に移した。1,4−ジオキサン(1倍容積)中の4M HClを、1時間かけて20℃で容器に連続的に加えた。得られた混合物をさらに10時間攪拌し、ろ過し、2−メチルテトラヒドロフラン(2倍容積)で洗浄し、乾燥して1519gの7−[4−アミノ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン塩酸塩(20.HCl)を白色結晶性固体として得た。
【0244】
N−(4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)フェニル)−4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド塩酸塩(A型−HCl)。2−メチルテトラヒドロフラン(0.57L、1.0倍容積)を30Lジャケット付き反応容器にチャージし、続いて、4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)アニリンの塩酸塩(20.HCl)(791g、2.67mol)および4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸(17)(573g、2.23mol)を加え、さらに5.2L(9.0倍容積)の2−メチルテトラヒドロフランを加えた。攪拌を開始し、2−メチルテトラヒドロフラン(2.84kg、4.46mol)中のT3Pを15分間かけて反応混合物に加えた。次いで添加漏斗でピリジン(534.0g、546.0mL、6.68mol)を30分間かけて滴下した。混合物を約30分間かけて45℃に加温し、12〜15時間攪拌した。HPLC分析により、4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸が2%未満の量しか存在しないことが示された。次いで混合物を室温に冷却した。2−メチルテトラヒドロフラン(4倍容積、2.29L)を加え、続いて水(6.9倍容積、4L)を加えた。その間、温度は30℃未満に維持した。水層を除去し、有機層をNaHCO飽和水溶液で2回慎重に洗浄した。次いで有機層を10重量/重量%クエン酸(5倍容積)で洗浄し、最後に水(7倍容積)で洗浄した。混合物を仕上げろ過し、別の乾燥容器に移した。それ以前のバッチからのN−(4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)フェニル)−4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド塩酸塩(A型−HCl)(3.281g、5.570mmol)の種晶を加えた。HCl(g)(10当量)を2時間かけてバブリングさせ、混合物を終夜攪拌した。得られた懸濁液をろ過し、2−メチルテトラヒドロフラン(4倍容積)で洗浄し、吸引乾燥し、恒量になるまで60℃でオーブン乾燥して868gのN−(4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)フェニル)−4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド塩酸塩(A型−HCl)を得た。
【0245】
実施例化合物3 B型HCl塩N−(4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)フェニル)−4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド塩酸塩(B型−HCl)。
【0246】
【化64】

2−メチルテトラヒドロフラン(100mL)を、攪拌機を備えた窒素雰囲気下の三つ口フラスコにチャージした。実施例化合物3 A型−HCl(実施例3B、55g、0.103mol)をフラスコに加え、続いて349mLの2−メチルテトラヒドロフランを加え、攪拌を開始した。28mLの水をフラスコに加え、フラスコを内温60℃に加温し、48時間攪拌した。フラスコを室温に冷却し、1時間攪拌した。反応混合物を、ろ過ケーキが乾燥するまで真空ろ過した。固体ろ過ケーキを2−メチルテトラヒドロフラン(4倍容積)で2回洗浄した。固体ろ過ケーキを吸引真空下で約30分間保持し、乾燥用トレーに移した。ろ過ケーキを、真空下、60℃で恒量になるまで乾燥して実施例化合物3 B型−HClを白色結晶性固体(49g)(約90%収率)として得た。
【0247】
実施例化合物6:N−(4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−シアノフェニル)−5−メチル−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミドの調製。表題化合物の調製をスキーム11に示す。
【0248】
【化65】

2−メチルテトラヒドロフラン(1.5mL)中の5−メチル−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸35(162mg、0.80mmol)および2−アミノ−5−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)ベンゾニトリル23(170mg、0.80mmol)の溶液に、プロピルホスホン酸環状無水物(酢酸エチル中の50%溶液、949.5μL、1.605mmol)およびピリジン(126mg、129μL、1.60mmol)を加えた。反応物をキャップし、マイクロ波照射により100℃で65分間加熱した。反応物を室温に冷却し、酢酸エチル(10mL)で希釈し、飽和NaCO溶液(6mL)でクエンチした。有機層をNaSOで脱水し、ろ過し、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン中に0〜35%酢酸エチル)で精製してN−(4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−シアノフェニル)−5−メチル−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキサミド(157mg、49%収率)を得た。LC/MS m/z 399.3[M+H]、保持時間1.47分間(RP−C18、10〜99%CHCN/0.05%TFA、3分間で)。H NMR(400.0MHz,DMSO−d) δ 12.77(s,1H),12.75(s,1H),8.77(s,1H),8.11(d,J=9.1Hz,1H),7.64−7.60(m,1H),7.55(d,J=8.0Hz,1H),7.34(d,J=2.8Hz,1H),7.27(dd,J=2.8,9.1Hz,1H),7.23(d,J=7.2Hz,1H),4.32(s,2H),2.91(s,3H),1.65(d,J=7.2Hz,4H),1.42(d,J=6.8Hz,4H)。
【0249】
実施例化合物13:N−[4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(3−ジメチルアミノプロパ−1−イニル)フェニル]−4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1H−キノリン−3−カルボキサミド。表題化合物の調製をスキーム12に示す。
【0250】
【化66】

2−メチルテトラヒドロフラン(190.9μL)中の4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1H−キノリン−3−カルボン酸17(19mg、0.07mmol)および4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(3−ジメチルアミノプロパ−1−イニル)アニリン27(20mg、0.07mmol)の溶液に、T3P(118mg、0.19mmol)およびピリジン(12mg、12μL、0.15mmol)を加えた。反応物をマイクロ波照射により100℃で30分間熱した。反応物をEtOAcで希釈し、NaHCO飽和水溶液(50mL)でクエンチした。層を分離し、水層をEtOAcで2回抽出した。一緒にした有機部分を水で1回洗浄し、NaSOで脱水し、ろ過し、濃縮した。残留物を逆相HPLC(0〜99%CHCN/0.05%TFA)で精製してN−[4−(7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−(3−ジメチルアミノプロパ−1−イニル)フェニル]−4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1H−キノリン−3−カルボキサミド(8mg、17%収率)を得た。LC/MS m/z 509.7[M+H]、保持時間1.06分間(RP−C18、10〜99%CHCN/0.05%TFA、3分間で)。H NMR(400.0MHz,DMSO−d) δ 13.23(d,J=6.8Hz,1H),12.40(s,1H),10.31(s,1H),8.96(d,J=6.6Hz,1H),8.40(d,J=9.0Hz,1H),8.08−8.06(m,H),8.07(dd,J=1.5Hz,8.1Hz,1H),8.00−7.95(m,2H),7.15−7.09(m,2H),4.49(s,2H),4.29(s,2H),2.94(s,6H),1.67(d,J=7.2Hz,4H),1.44(d,J=7.0Hz,4H)。
【0251】
実施例化合物5:エンド−N−[4−[(5S)−5−[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル]−2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1H−キノリン−3−カルボキサミド。表題化合物の調製をスキーム13に示す。
【0252】
【化67】

エンド−N−[4−[(5S)−5−[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル]−2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1H−キノリン−3−カルボキサミドの調製。2−メチルテトラヒドロフラン(2.2mL)中の4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1H−キノリン−3−カルボン酸17(148mg、0.58mmol)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)(306mg、0.81mmol)の溶液に、エンド−4−[5−[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル]−2−(トリフルオロメチル)アニリン34(222mg、0.58mmol)を加え、続いてトリエチルアミン(146mg、201μL、1.44mmol)を加えた。反応混合物を62℃で16時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、2−メチルテトラヒドロフラン/水に分配させ、分離し、水層を2−メチルテトラヒドロフランで1回抽出し、有機層を一緒にしてNaSOで脱水し、ろ過し、濃縮して乾燥させた。シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン中に0〜30%酢酸エチル)で精製してエンド−N−[4−[(5S)−5−[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル]−2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1H−キノリン−3−カルボキサミド(285mg、79%収率)を得た。H NMR(400.0MHz,DMSO−d) δ 13.07(s,1H),12.16(s,1H),8.88(s,1H),8.04(dd,J=2.2,7.3Hz,1H),7.95−7.89(m,3H),7.22(dd,J=2.4,8.9Hz,1H),7.16(d,J=2.6Hz,1H),4.29(m,3H),2.16−2.07(m,2H),1.62−1.43(m,3H),1.05−1.01(m,1H),0.89(s,9H),0.08(d,J=1.4Hz,6H)。
【0253】
エンド−N−[4−[(5S)−5−ヒドロキシ−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル]−2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1H−キノリン−3−カルボキサミドの調製。エンド−N−[4−[(5S)−5−[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル]−2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1H−キノリン−3−カルボキサミド(281mg、0.45mmol)を1%HCl/エタノール(2mLの1重量/重量%)溶液に溶解し、室温で16時間攪拌すると白色沈殿物が生成した。反応物をジエチルエーテルで希釈し、ろ過した。集めた固体を酢酸エチル/NaHCO飽和水溶液に溶解した。層を分離し、水層を酢酸エチルでさらに1回抽出した。有機層を水で2回洗浄し、NaSOで脱水し、ろ過し、乾燥するまで濃縮してエンド−N−[4−[(5S)−5−ヒドロキシ−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル]−2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4−オキソ−5−(トリフルオロメチル)−1H−キノリン−3−カルボキサミド(190mg、83%)を得た。H NMR(400.0MHz,DMSO−d) δ 13.07(s,1H),12.15(s,1H),8.88(s,1H),8.04(dd,J=2.2,7.4Hz,1H),7.95−7.88(m,3H),7.19(dd,J=2.4,9.0Hz,1H),7.12(d,J=2.6Hz,1H),5.00(d,J=4.2Hz,1H),4.25−4.13(m,1H),4.21−4.19(m,1H),4.16−4.13(m,1H),2.15−2.08(m,2H),1.61−1.55(m,1H),1.47−1.44(m,2H)および1.03(dd,J=3.4,12.3Hz,1H)。
【0254】
表1の化合物の分析データを以下に示す:
【0255】
【表2−1】

【0256】
【表2−2】

【0257】
【表2−3】

化合物のΔF508−CFTR増強特性を検出し測定するためのアッセイ
化合物のΔF508−CFTR調節特性をアッセイするための膜電位の光学的方法
このアッセイでは、蛍光プレートリーダー(例えば、FLIPR III、Molecular Devices、Inc.)を用いて、NIH3T3細胞における機能性ΔF508−CFTRの増大についての読出しとして膜電位の変化を測定するために、蛍光性の電圧感受性染料を使用する。その応答のための推進力は、細胞を前もってその化合物で処理しておき続いて電圧感受性染料をロードした後に液体を1回添加するステップによる、チャンネル活性化と合わせた塩素イオン勾配の生成である。
【0258】
増強化合物の特定
ΔF508−CFTRの増強物質を特定するために、二重付加(double−addition)HTSアッセイ方式を開発した。このHTSアッセイでは、FLIPR III上での膜電位の変化を測定するために、温度補正されたΔF508CFTR NIH3T3細胞のΔF508CFTRにおけるゲート開閉(コンダクタンス)の増大の測定として、蛍光性の電圧感受性染料を使用する。その応答のための推進力は、細胞を前もって増強化合物(またはDMSO媒体対象)で処理しておき続いて再分配染料をロードした後に、FLIPR IIIなどの蛍光プレートリーダーを用いた液体を1回添加するステップによる、ホルスコリンでのチャンネル活性化と合わせたClイオン勾配の生成である。
【0259】
溶液
浴溶液#1:(mMで)NaCl 160、KCl 4.5、CaCl 2、MgCl 1、HEPES 10、NaOHでpH7.4。
塩素イオンフリーの浴溶液:浴溶液#1の塩酸塩をグルコン酸塩で置き換える。
【0260】
細胞培養
ΔF508−CFTRを安定的に発現するNIH3T3マウス線維芽細胞を、膜電位の光学的測定のために使用する。細胞を、175cm培養フラスコ中、5%CO、90%湿度、37℃で2mMグルタミン、10%ウシ胎仔血清、1X NEAA、β−ME、1X pen/strepおよび25mM HEPESを含むダルベッコ変法イーグル培地中で保持する。すべての光学的アッセイについて、細胞を、384ウェルのマトリゲルコーティングしたプレート中、約20,000/ウェルで播種し、37℃で2時間培養し、次いで増強物質アッセイのために27℃で24時間培養した。補正アッセイのため、細胞を、化合物を用いるかまたは用いないで27℃または37℃で16〜24時間培養する。化合物のΔF508−CFTR調節特性をアッセイするための電気生理学的アッセイ
Usingチャンバーアッセイ
光学的アッセイで特定されたΔF508−CFTR修飾因子をさらに特性評価するために、Usingチャンバー実験を、ΔF508−CFTRを発現する分極した気道上皮細胞で実施した。非CFおよびCF気道上皮を、気管支組織から単離し、従来記載されているようにして培養し(Galietta,L.J.V.、Lantero,S.、Gazzolo,A.、Sacco,O.、Romano,L.、Rossi,G.A.、& Zegarra−Moran,O.(1998年)In Vitro Cell. Dev. Biol. 34巻、478〜481頁)、NIH3T3馴化培地でプレコートしたCostar(登録商標)Snapwell(商標)フィルター上に播種した。4日後、頂端培地を除去し、使用前に、細胞を気液界面で>14日間成長させた。これによって、気道上皮の特徴である線毛状の見かけをもつ十分に分化した円柱状細胞の単分子層が得られた。非CF HBEを、既知の肺疾患を全くもたない非喫煙者から単離した。CF−HBEを、ΔF508−CFTRについてホモ接合性の患者から単離した。
【0261】
Costar(登録商標)Snapwell(商標)細胞培養インサート上で成長させたHBEをUsingチャンバー(Physiologic Instruments、Inc.、San Diego、CA)に取り付け、経上皮抵抗および短絡回路電流を、側底から頂端膜へのCl勾配(ISC)の存在下で、電圧固定システム(Department of Bioengineering、University of Iowa、IA)を用いて測定した。簡単に述べると、電圧固定記録条件(Vhold=0mV)のもと、37℃でHBEを試験した。側底溶液は、(mMで)145 NaCl、0.83 KHPO、3.3 KHPO、1.2 MgCl、1.2 CaCl、10 グルコース、10 HEPES(NaOHでpH7.35に調節)を含み、頂端溶液は、(mMで)145 NaGluconate、1.2 MgCl、1.2 CaCl、10 グルコース、10 HEPES(NaOHでpH7.35に調節)を含んだ。
【0262】
増強化合物の特定
典型的な手順では、側底から頂端膜へのCl濃度勾配を用いた。
この勾配を設定するために、側底膜で通常のリンガー液を用いて、頂端NaClを等モルのグルコン酸ナトリウム(NaOHでpH7.4まで滴定)で置き換えて、上皮を横断して大きなCl濃度勾配を得た。ホルスコリン(10μM)およびすべての試験化合物を細胞培養インサートの頂端側に加えた。推定ΔF508−CFTR増強物質の効力を既知の増強物質、ゲニステインのそれと比較した。
【0263】
パッチクランプ記録
ΔF508−NIH3T3細胞における全Cl電流を、従来記載されているような多孔パッチ記録構成(perforated−patch recording configuration)でモニターした(Rae,J.、Cooper,K.、Gates,P.、& Watsky,M.(1991年)J. Neurosci. Methods 37巻、15〜26頁)。電圧固定記録をAxopatch 200Bパッチクランプ増幅器(Axon Instruments Inc.、Foster City、CA)を用いて22℃で実施した。ピペット溶液は、(mMで)150N−メチル−D−グルタミン(NMDG)−Cl、2 MgCl、2 CaCl、10 EGTA、10 HEPESおよび240μg/mLアンフォテリシン−B(HClでpH7.35に調節)を含んだ。細胞外培地は、(mMで)150 NMDG−Cl、2 MgCl、2 CaCl、10 HEPES(HClでpH7.35に調節)を含んだ。パルス発生、データ取得および分析を、Clampex8(Axon Instruments Inc.)と一緒にDigidata1320A/Dインターフェースを備えたPCを用いて実施した。ΔF508−CFTRを活性化させるために、10μMホルスコリンおよび20μMゲニステインを浴に加え、電流−電圧の関係を30秒毎にモニターした。
【0264】
増強化合物の特定
ΔF508−CFTRを安定的に発現するNIH3T3細胞において巨視的なΔF508−CFTR Cl電流(IΔF508)を増大させるΔF508−CFTR増強物質の能力を、やはり多孔パッチ記録手法を用いて試験した。光学的アッセイにより特定された増強物質は、光学的アッセイで観察されたのと同様の効力および効能でIΔF508における用量依存的な増加を引き起こした。試験したすべての細胞において、増強物質を適用する前またはその間の逆転電位はおおよそ−30mVであった。これは計算されたECl(−28mV)である。
【0265】
細胞培養
ΔF508−CFTRを安定的に発現するNIH3T3マウス線維芽細胞をホールセル記録用に使用する。細胞を、175cm培養フラスコ中、5%CO、90%湿度、37℃で2mMグルタミン、10%ウシ胎仔血清、1X NEAA、β−ME、1X pen/strepおよび25mM HEPESを含むダルベッコ変法イーグル培地中で保持する。ホールセル記録のため、増強物質の活性を試験する前に、2,500〜5,000個の細胞をポリ−L−リシンコーティングしたガラスのカバースリップ上に播種し、27℃で24〜48時間培養し;補正物質(corrector)の活性を測定するために補正化合物を含むか含まないで37℃でインキュベートした。
【0266】
単一チャンネル記録
NIH3T3細胞において発現されたwt−CFTRおよび温度修正ΔF508−CFTRのゲート開閉活性を、Axopatch200Bパッチクランプ増幅器(Axon Instruments Inc.)を使用して、従来記載されているような切取りインサイドアウト型膜パッチ記録法(Dalemans,W.、Barbry,P.、Champigny,G.、Jallat,S.、Dott,K.、Dreyer,D.、Crystal,R.G.、Pavirani,A.、Lecocq,J−P.、Lazdunski,M.(1991年)Nature 354巻、526〜528頁)を用いて観察した。ピペットは、(mMで):150 NMDG、150 アスパラギン酸、5 CaCl、2 MgClおよび 10 HEPES(トリス塩基でpH7.35に調節)を含んだ。その浴は、(mMで):150 NMDG−Cl、2 MgCl、5 EGTA、10 TESおよび 14 トリス塩基(HClでpH7.35に調節)を含んだ。切取りの後、タンパク質ホスファターゼを阻害するために1mM Mg−ATP、75nMのcAMP依存性タンパク質キナーゼの触媒サブユニット(PKA;Promega Corp.Madison、WI)および10mM NaFを加えることによってwt−CFTRとΔF508−CFTRの両方を活性化させた。これは電流の低下を防止した。ピペット電位を80mVに保持した。チャンネル活性を、≦2の活性チャンネルを含む膜パッチから分析した。同時開放の最大数が実験の過程の間の活性チャンネルの数を決定した。単一のチャンネル電流振幅を判定するために、120秒間のΔF508−CFTR活性から記録されたデータを100Hzで「オフライン」フィルターにかけ、次いで、Bio−Patch分析ソフトウェア(Bio−Logic Comp.France)を用いて、多重ガウス関数で当てはめた全点振幅ヒストグラムを構築するために使用した。全微視的電流および開確率(P)を120秒間のチャンネル活性から判定した。Pを、Bio−Patchソフトウェアを用いるか、または関係式P=I/i(N)(I=平均電流、i=単一チャンネル電流振幅であり、N=パッチにおける活性チャンネルの数である)から判定した。
【0267】
細胞培養
ΔF508−CFTRを安定的に発現するNIH3T3マウス線維芽細胞を、切取り膜パッチクランプ記録用に使用する。細胞を、175cm培養フラスコ中、5%CO、90%湿度、37℃で2mMグルタミン、10%ウシ胎仔血清、1X NEAA、β−ME、1X pen/strepおよび25mM HEPESを含むダルベッコ変法イーグル培地中で保持する。単一チャンネル記録のため、2,500〜5,000個の細胞をポリ−L−リシンコーティングしたガラスのカバースリップ上に播種し、27℃で24〜48時間培養して使用した。
【0268】
本発明の化合物はATP結合カセットトランスポーターの修飾因子として有用である。式(I)の化合物の活性および効力の例を以下の表3に示す。化合物の活性を、活性が2.0μ未満と測定された場合「+++」で示し、活性が2μM〜5.0μMと測定された場合「++」で示し、活性が5.0μM超と測定された場合「+」で示し、データが得られなかった場合「−」で示す。効能を、効能が100%超と算出された場合「+++」で示し、効能が100%〜25%と算出された場合「++」で示し、効能が25%未満と算出された場合「+」で示し、データが得られなかった場合「−」で示す。100%の効能は4−メチル−2−(5−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)フェノールで得られた最大応答であることに留意すべきである。
【0269】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化68】

または薬学的に許容されるその塩
(式中、環Aは、
【化69】

から選択され、
は、−CF、−CNまたは−C≡CCHN(CHであり、
は、水素、−CH、−CF、−OHまたは−CHOHであり、
は、水素、−CH、−OCHまたは−CNであり、
ただし、RとRは同時に水素であることはない)。
【請求項2】
環Aが
【化70】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
環Aが
【化71】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
環Aが
【化72】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
環Aが
【化73】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
が−CFである、請求項2から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
が−CNである、請求項2から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
が−C≡CCHN(CHである、請求項2から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
が水素である、請求項6から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
が−CHである、請求項6から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
が−CFである、請求項6から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
が−OHである、請求項6から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
が−CHOHである、請求項6から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
が水素である、請求項10から13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
が−CHである、請求項9から13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
が−OCHである、請求項9から13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
が−CNである、請求項9から13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
【化74】

【化75】

から選択される化合物。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の化合物および薬学的に許容される担体または補助剤を含む医薬組成物。
【請求項20】
粘液溶解薬、気管支拡張薬、抗生物質、抗感染症薬、抗炎症薬、式(I)の化合物以外のCFTR修飾因子または栄養剤から選択される追加の薬剤をさらに含む、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記追加の薬剤が式(I)の化合物以外のCFTR修飾因子である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
患者の疾患を治療するまたはその重症度を軽減する方法であって、該疾患が、嚢胞性線維症、ぜんそく、喫煙誘発COPD、慢性気管支炎、鼻副鼻腔炎、便秘、膵炎、膵機能不全、先天性両側性輸精管欠損(CBAVD)によって引き起こされる男性不妊症、軽度の肺疾患、特発性膵炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、肝疾患、遺伝性肺気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、凝固−線維素溶解性欠乏症、例えばプロテインC欠乏症、1型遺伝性血管性浮腫、脂質プロセッシング欠乏症、例えば家族性高コレステロール血症、1型乳糜血症、無βリポタンパク血症、リソソーム蓄積症、例えばI細胞病/偽ハーラー、ムコ多糖症、サンドホフ/テイサックス、クリグラーナジャーII型、多腺性内分泌障害/高インスリン血、真性糖尿病、ラロン型小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、原発性甲状腺機能低下症、メラノーマ、グリカン糖鎖異常CDG1型、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノゲン血症、ACT欠乏症、尿崩症(DI)、ニューロフィシン性DI、腎性DI、シャルコーマリートゥース病、ペリツェウスメルツバッハー病、神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上麻痺、ピック病、いくつかのポリグルタミン神経障害、例えばハンチントン病、脊髄小脳失調I型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体および筋強直性ジストロフィー、ならびに海綿状脳症、例えば遺伝性クロイツフェルトヤコブ病(プリオンタンパク質プロセッシング欠損症に起因する)、ファブリー病、シュトロイスラー−シャインカー症候群、COPD、ドライアイ疾患、膵機能不全、骨粗しょう症、骨減少症、ゴーハム症候群、クロリドチャンネル病、先天性筋強直症(トムセンおよびベッカー型)、バーター症候群III型、デント病、過剰驚愕症、てんかん、過剰驚愕症、リソソーム蓄積症、アンジェルマン症候群、原発性線毛機能不全(PCD)、内臓逆位を伴うPCD(カールタジュナー症候群としても公知)、内臓逆位および毛様体形成不全を伴わないPCDまたはシェーグレン病から選択され、該方法が該患者に有効量の請求項1から18のいずれか一項に記載の化合物を投与するステップを含む方法。
【請求項23】
前記疾患が嚢胞性線維症である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
患者の疾患を治療するまたはその重症度を軽減する方法であって、該疾患が、CFTRをコードする遺伝子の変異または環境因子に起因するCFTR機能低下に関係し、該方法が該患者に有効量の請求項1から18のいずれか一項に記載の化合物を投与するステップを含む方法。
【請求項25】
前記疾患が、嚢胞性線維症、慢性気管支炎、反復性気管支炎、急性気管支炎、先天性両側性輸精管欠損(CBAVD)によって引き起こされる男性不妊症、子宮および膣の先天的欠損(CAUV)によって引き起こされる女性不妊症、特発性慢性膵炎(ICP)、特発性反復性膵炎、特発性急性膵炎、慢性鼻副鼻腔炎、原発性硬化性胆管炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、糖尿病、ドライアイ、便秘、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、骨疾患およびぜんそくである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
患者の疾患を治療するまたはその重症度を軽減する方法であって、該疾患が正常なCFTR機能に関係し、該方法が前記患者に有効量の請求項1から18のいずれか一項に記載の化合物を投与するステップを含む方法。
【請求項27】
前記疾患が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性気管支炎、反復性気管支炎、急性気管支炎、鼻副鼻腔炎、便秘、慢性膵炎、反復性膵炎および急性膵炎、膵機能不全、先天性両側性輸精管欠損(CBAVD)によって引き起こされる男性不妊症、軽度の肺疾患、特発性膵炎、肝疾患、遺伝性肺気腫、胆石、胃食道逆流性疾患、胃腸の悪性腫瘍、炎症性大腸炎、便秘、糖尿病、関節炎、骨粗しょう症ならびに骨減少症である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記疾患が、遺伝性ヘモクロマトーシス、凝固−線維素溶解性欠乏症、例えばプロテインC欠乏症、1型遺伝性血管性浮腫、脂質プロセッシング欠乏症、例えば家族性高コレステロール血症、1型乳糜血症、無βリポタンパク血症、リソソーム蓄積症、例えばI細胞病/偽ハーラー、ムコ多糖症、サンドホフ/テイサックス、クリグラーナジャーII型、多腺性内分泌障害/高インスリン血、真性糖尿病、ラロン型小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、原発性甲状腺機能低下症、メラノーマ、グリカン糖鎖異常CDG1型、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノゲン血症、ACT欠乏症、尿崩症(DI)、ニューロフィシン性DI、腎性DI、シャルコーマリートゥース病、ペリツェウスメルツバッハー病、神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上麻痺、ピック病、いくつかのポリグルタミン神経障害、例えばハンチントン病、脊髄小脳失調I型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体および筋強直性ジストロフィー、ならびに海綿状脳症、例えば遺伝性クロイツフェルトヤコブ病(プリオンタンパク質プロセッシング欠損症に起因する)、ファブリー病、シュトロイスラー−シャインカー症候群、ゴーハム症候群、クロリドチャンネル病、先天性筋強直症(トムセンおよびベッカー型)、バーター症候群III型、デント病、過剰驚愕症、てんかん、過剰驚愕症、リソソーム蓄積症、アンジェルマン症候群、原発性線毛機能不全(PCD)、内臓逆位を伴うPCD(カールタジュナー症候群としても公知)、内臓逆位および毛様体形成不全を伴わないPCDまたはシェーグレン病である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
生物学的試料におけるインビトロまたはインビボでのCFTRまたはそのフラグメントの活性を測定するために使用するキットであって、
(i)請求項1に記載の式(I)の化合物を含む組成物と、
(ii)a)該組成物を該生物学的試料と接触させ、
b)該CFTRまたはそのフラグメントの活性を測定する
ための取扱説明書
を含むキット。
【請求項30】
a)追加の組成物を前記生物学的試料と接触させ、
b)該追加の化合物の存在下で前記CFTRまたはそのフラグメントの活性を測定し、
c)前記追加の化合物の存在下での前記CFTRの活性を式(I)の組成物の存在下でのCFTRの密度と比較する
ための取扱説明書をさらに含む、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
生物学的試料におけるCFTR活性を調節する方法であって、該CFTRを請求項1から18のいずれか一項に記載の化合物と接触させるステップを含む方法。
【請求項32】
式(I)の化合物:
【化76】

または薬学的に許容されるその塩を調製するプロセスであって、
(a)式1dの酸を式2cのアミンと反応させて式(I)の化合物
【化77】

(式中、環Aは、
【化78】

から選択され、
は、−CF、−CNまたは−C≡CCHN(CHであり、
は、水素、−CH、−CF、−OHまたは−CHOHであり、
は、水素、−CH、−OCHまたは−CNであり、
ただし、RとRは同時に水素であることはなく、
は、水素、またはトリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)トリイソプロピルシリル(TIPS)および[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル(SEM)からなる群から選択されるシリル保護基である)
を得るステップを含むプロセス。
【請求項33】
前記式1dの酸と式2cのアミンの反応を、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)およびトリエチルアミンが存在する溶媒中、またはプロピルホスホン酸環状無水物(T3P(登録商標))およびピリジンが存在する溶媒中で実施する、請求項32に記載のプロセス。
【請求項34】
前記溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸エチルまたは2−メチルテトラヒドロフランを含む、請求項33に記載のプロセス。
【請求項35】
が水素またはTBDMSである、請求項32に記載のプロセス。
【請求項36】
がTBDMSである、請求項32に記載のプロセス。
【請求項37】
環Aが
【化79】

(式中、Rはシリル保護基である)
である場合、シリル保護基を除去して、環Aが
【化80】

である式(I)の化合物を生成する脱保護ステップをさらに含む、請求項32に記載のプロセス。
【請求項38】
前記式2cのアミンを式2aの化合物から調製するプロセスであって、
(a)前記式2aの化合物を式3のアミンと反応させて式2bの化合物
【化81】

(式中、
Halは、F、Cl、BrまたはIであり、
前記式3のアミンは
【化82】

である)
を得るステップと、
(b)前記式2bの化合物を還元して前記式2cのアミン
【化83】

にするステップと
を含む、請求項32に記載のプロセス。
【請求項39】
ステップ(a)の前記式3のアミンを、インサイチュでアミン塩酸塩から生成させる、請求項38に記載のプロセス。
【請求項40】
が水素またはTBDMSである、請求項38に記載のプロセス。
【請求項41】
がTBDMSである、請求項38に記載のプロセス。
【請求項42】
ステップ(a)を第3アミン塩基の存在下、極性非プロトン性溶媒中で実施する、請求項38に記載のプロセス。
【請求項43】
ステップ(a)をトリエチルアミンの存在下、アセトニトリル中で実施する、請求項42に記載のプロセス。
【請求項44】
ステップ(a)の反応温度が約75℃から約85℃の間である、請求項38に記載のプロセス。
【請求項45】
反応時間が約2から約30時間の間である、請求項38に記載のプロセス。
【請求項46】
ステップ(b)をパラジウム触媒の存在下、極性プロトン性溶媒中で実施する、請求項38に記載のプロセス。
【請求項47】
ステップ(b)の前記溶媒がメタノールまたはエタノールを含む、請求項46に記載のプロセス。
【請求項48】
ステップ(b)をFeおよびFeSOまたはZnおよびAcOHの存在下、極性プロトン性溶媒中で実施する、請求項38に記載のプロセス。
【請求項49】
前記極性プロトン性溶媒が水である、請求項48に記載のプロセス。
【請求項50】
式(Ic)の化合物
【化84】

または薬学的に許容されるその塩を調製するプロセスであって、
(a)式2aの化合物を式3のアミンと反応させて式2bの化合物
【化85】

を得るステップと、
(b)前記式2bの化合物を還元により前記式2cのアミン
【化86】

に転換させるステップと、
(c)前記式2cのアミンを式1dの酸と反応させて式(Ic)の化合物
【化87】

(式中、
Halは、F、Cl、BrまたはIであり、
前記式3のアミンは
【化88】

であり、
環Aは
【化89】

から選択され、
は、−CF、−CNまたは−C≡CCHN(CHであり、
は、水素、−CH、−CF、−OHまたは−CHOHであり、
は、水素、−CH、−OCHまたは−CNであり、
ただし、RとRは同時に水素であることはなく、
は、水素、またはトリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)および[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル(SEM)からなる群から選択されるシリル保護基である)
を得るステップと
を含むプロセス。
【請求項51】
ステップ(a)の前記式3のアミンを、インサイチュでアミン塩酸塩から生成させる、請求項50に記載のプロセス。
【請求項52】
が水素またはTBDMSである、請求項51に記載のプロセス。
【請求項53】
がTBDMSである、請求項52に記載のプロセス。
【請求項54】
ステップ(a)を第3アミン塩基の存在下、極性非プロトン性溶媒中で実施する、請求項50に記載のプロセス。
【請求項55】
ステップ(a)をトリエチルアミンの存在下、アセトニトリル中で実施する、請求項54に記載のプロセス。
【請求項56】
ステップ(a)の反応温度が約75℃から約85℃の間である、請求項50に記載のプロセス。
【請求項57】
反応時間が約2から約30時間の間である、請求項50に記載のプロセス。
【請求項58】
ステップ(b)をパラジウム触媒の存在下、極性プロトン性溶媒中で実施する、請求項50に記載のプロセス。
【請求項59】
ステップ(b)の前記溶媒がメタノールまたはエタノールを含む、請求項58に記載のプロセス。
【請求項60】
ステップ(b)をFeおよびFeSOまたはZnおよびAcOHの存在下、極性プロトン性溶媒中で実施する、請求項50に記載のプロセス。
【請求項61】
前記極性プロトン性溶媒が水である、請求項50に記載のプロセス。
【請求項62】
ステップ(c)を、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)およびトリエチルアミンが存在する溶媒中、またはプロピルホスホン酸環状無水物(T3P(登録商標))およびピリジンが存在する溶媒中で実施する、請求項50に記載のプロセス。
【請求項63】
ステップ(c)の前記溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸エチルまたは2−メチルテトラヒドロフランを含む、請求項62に記載のプロセス。
【請求項64】
が水素またはTBDMSである、請求項62に記載のプロセス。
【請求項65】
がTBDMSである、請求項64に記載のプロセス。
【請求項66】
環Aが
【化90】

(式中、Rはシリル保護基である)
である場合、脱保護反応により、環Aが
【化91】

である式(I)の化合物を生成するステップをさらに含む、請求項50に記載のプロセス。
【請求項67】
【化92】

(式中、環Aは
【化93】

であり、
は、−CF、−CNまたは−C≡CCHN(CHであり、
は、水素、またはトリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)および[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル(SEM)からなる群から選択されるシリル保護基である)
である化合物。
【請求項68】
【化94】

(式中、環Aは
【化95】

であり、
は、−CF、−CNまたは−C≡CCHN(CHであり、
は、水素、またはトリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)トリイソプロピルシリル(TIPS)および[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル(SEM)からなる群から選択されるシリル保護基である)
である化合物。
【請求項69】
式(IA)の化合物:
【化96】

または薬学的に許容されるその塩
(式中、環Aは、
【化97】

から選択され、
は、−CF、−CNまたは−C≡CCHN(CHであり、
は、水素、−CH、−CF、−OHまたは−CHOHであり、
は、水素、−CH、−OCHまたは−CNであり、
ただし、RとRは同時に水素であることはなく、
は、トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)および[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル(SEM)からなる群から選択されるシリル保護基である)。
【請求項70】
請求項45から61のいずれかに記載のプロセスで作製された式(I)の化合物;
【化98】

または薬学的に許容されるその塩
(式中、環Aは、
【化99】

から選択され、
は、−CF、−CNまたは−C≡CCHN(CHであり、
は、水素、−CH、−CF、−OHまたは−CHOHであり、
は、水素、−CH、−OCHまたは−CNであり、
ただし、RとRは同時に水素であることはない)。
【請求項71】
請求項50から66のいずれかに記載のプロセスで作製された
【化100】

【化101】

からなる群から選択される化合物。

【公表番号】特表2012−506866(P2012−506866A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533377(P2011−533377)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/061882
【国際公開番号】WO2010/048526
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】