説明

四方切換弁用ピストン装置

【課題】四方切換弁のピストン装置の正常な移動を確保し、弁本体の内部と作動室との間に介在するパッキンのシール不良を防止し、ピストンを連結板に固定するためのボルトの回り止めを確実に行う。
【解決手段】筒状の弁本体2と、弁本体の開放端部2aとろう付け10により接合される栓体11と、弁本体の内部を弁体と連動して摺動し、栓体とで作動室13を形成するピストン装置3とを備える四方切換弁1に用いられ、作動室に対向する側に、基底部7aと底面部から栓体側に向かって立設された立ち曲げ部7bとからなるプレート部材7を備え、プレート部材の立ち曲げ部の開放端部7eが、弁本体と栓体との接合部16から離間した位置において栓体と当接し、プレート部材と栓体とで作動室を形成する四方切換弁用ピストン装置。該ピストン装置の弁本体の内部に対向する側に、弁本体内部と、作動室との間をシールするためのパッキン6を設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機器、空調機器等の可逆冷凍サイクルを利用した機器等に用いられる四方切換弁のピストン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍サイクルの冷媒通路に四方切換弁を配置して冷媒通路を切り換え、室内の冷房と暖房とを切り換えることが行なわれている。このような四方切換弁として、特許文献1及び2等において種々のものが提案されている。
【0003】
これら四方切換弁は、例えば、図6に示すように、弁本体32の内部に流体通路を切り換えるための弁体(不図示)を移動させるためのピストン装置33が設けられ、ピストン装置33は、上方の作動室43と下方の高圧室44との間に介在し、弁本体32の内部を摺動する。尚、ピストン装置33と栓体41との間に形成された作動室43は、導管42を介して四方切換パイロット弁(不図示)に連結されている。
【0004】
上記構成において、栓体41は、弁本体32の開放端部32aにろう付け40により接合される。また、ピストン装置33は、2枚の挟持プレート35A、35Bと、パッキン36と、かしめプレート37とからなり、このピストン装置33を弁体に連結するための連結板34に、ボルト38によって締結されるとともに、ピストン装置33を構成する各々の部材は、リベット39によってかしめ結合されている。
【0005】
かしめプレート37は、図7に示すように、十字状の板状部材であり、リベット39によって第1挟持プレート35A、第2挟持プレート35B(図1参照)及びパッキン36と結合されるだけでなく、立上部37a、37bによってボルト38の頭部を両側からかしめてプレート37上に固定し、ボルト38の回り止めとしても機能している。
【特許文献1】特開平11−201297号公報
【特許文献2】特開2004−125238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の四方切換弁31においては、栓体41を弁本体32の開放端部32aにろう付け40しているため、栓体41の下端部外周面と、弁本体32の上端部内周面との接合部46より、ろうやフラックスが弁本体32内に漏れ出し、ピストン装置33の正常な移動を妨げたり、パッキン36と弁本体32との間に隙間を発生させてシール不良の原因になる虞があるという問題があった。
【0007】
また、上記四方切換弁31では、かしめプレート37の立上部37a、37bによってボルト38の頭部を両側からかしめてボルト38を固定しているが、立上部37a、37bは、薄板により形成されているため、十分な固定力を得ることができず、ボルト38が回転すると、立上部37a、37bのかしめプレート37の表面側の狭小部37cより、立上部37a、37bが外側(矢視方向)に向かって拡開し、ボルト38の回り止めとして機能しない虞があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、四方切換弁のピストン装置の正常な移動を確保し、弁本体の内部と作動室との間に介在するパッキンのシール不良を防止するとともに、ピストン装置を連結板に固定するためのボルトの回り止めを確実に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、筒状の弁本体と、該弁本体の開放端部とろう付け接合される栓体と、前記弁本体の内部を弁体と連動して摺動し、前記栓体とで作動室を形成するピストン装置とを備える四方切換弁に用いられる前記ピストン装置であって、前記作動室に対向する側に、基底部と該基底部から前記栓体側に向かって立設された立ち曲げ部とからなるプレート部材を備え、該プレート部材の前記立ち曲げ部の開放端部が、前記弁本体と前記栓体との接合部から離間した位置において前記栓体と当接し、該プレート部材と前記栓体とで前記作動室を形成することを特徴とする。
【0010】
そして、本発明によれば、プレート部材の立ち曲げ部の開放端部が、弁本体と栓体との接合部から離間した位置において該栓体と当接し、該プレート部材と該栓体とで作動室を形成するように構成したため、栓体を弁本体とのろう付けによる接合部より、ろうやフラックスが弁本体内に漏れ出した場合でも、ピストンの正常な移動が妨げられることがない。
【0011】
前記四方切換弁用ピストン装置において、前記弁本体の内部に対向する側に、該弁本体内部と、前記作動室との間をシールするためのパッキンを備えることができる。この構成によれば、前記プレート部材によって、該パッキンと、前記栓弁本体と栓体との接合部とが離間するため、栓体と弁本体とのろう付けによる接合部より、ろうやフラックスが弁本体内に漏れ出した場合でも、パッキンと弁本体との間に隙間を発生させることがなく、シール不良を防止することができる。
【0012】
前記四方切換弁用ピストン装置において、前記プレート部材の前記基底部に、該ピストン装置を前記弁体に連結するための連結板に締結するボルトの固定部を設けたことができる。プレート部材をボルトの固定に利用することで、部品点数を低減することができるとともに、コンパクトなピストン装置を構成することができる。
【0013】
前記四方切換弁用ピストン装置において、前記プレート部材の前記ボルトの固定部を、前記基底部から前記栓体側に向かって円筒状に立設された円筒状部と、該円筒状部の少なくとも一部をかしめ変形させることにより、該円筒状部に収容された前記ボルトの頭部を前記基底部に固定するように構成することができる。
【0014】
また、前記プレート部材の前記ボルトの固定部を、前記基底部から前記栓体側に向かって突出するように立設された複数の突出片を備え、該複数の突出片の少なくとも一つをかしめ変形させることにより、該複数の突出片によって囲繞された前記ボルトの頭部を前記基底部に固定するように構成することができる。
【0015】
さらに、前記プレート部材の前記ボルトの固定部を、前記基底部を切り欠くことにより形成した複数の突出片を備え、該複数の突出片の少なくとも一つをかしめ変形させることにより、該複数の突出片によって囲繞された前記ボルトの頭部を前記基底部に固定するように構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、四方切換弁のピストン装置の正常な移動を確保し、弁本体の内部と作動室との間に介在するパッキンのシール不良を防止するとともに、ピストン装置を連結板に固定するためのボルトの回り止めを確実に行うことのできる四方切換弁用ピストン装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明にかかる四方切換弁用ピストン装置の一実施の形態を示し、この四方切換弁1は、弁本体2の内部に、流体通路を切り換えるための弁体(不図示)を移動させるためのピストン装置3を備え、ピストン装置3は、上方の作動室13と下方の高圧室14との間に介在し、弁本体2の内部を上下方向に摺動する。尚、ピストン装置3と栓体11との間に形成された作動室13は、導管12を介して四方切換パイロット弁(不図示)に連結されている。栓体11と弁本体2とは、弁本体2の開放端部2aにろう付け10により接合される。
【0019】
ピストン装置3は、2枚の挟持プレート5A、5Bと、パッキン6と、補助ばね15と、プレート部材7とからなり、このピストン装置3を弁体に連結するための連結板4に、ボルト8によって締結されるとともに、ピストン装置3を構成する各々の部材は、リベット9によってかしめ結合されている。補助ばね15は、ステンレス薄板等の薄板ばね材で形成され、パッキン6の弁本体内への密着性(シール性)を補うように付勢力を付与し、パッキン6の密着性(シール性)を長期間にわたり安定的に確保する。
【0020】
ピストン装置3の作動室13に対向する側に配置されたプレート部材7は、図2に示すように、基底部7aと、この基底部7aから栓体11側(上方)に向かって立設された立ち曲げ部7bとを備え、図1に示すように、プレート部材7の立ち曲げ部7bの開放端部7eが、弁本体2と栓体11とのろう付けによる接合部16から離間した位置において栓体11と当接し、プレート部材7と栓体11とで作動室13を形成する。
【0021】
また、プレート部材7は、図3(a)、(b)に示すように、ボルト8を基底部7a上に固定するための円筒部7cを備え、図3(c)に示すように、円筒部7cを外側からボルト8に向かってかしめ変形させて形成した当接部7d(6箇所)を、ボルト8の頭部に当接させ、ボルト8を基底部7a上に固定している。
【0022】
上記構成により、栓体11を弁本体2の開放端部2aにろう付け10した際に、接合部16からろうやフラックスが弁本体2内に漏出した場合でも、プレート部材7の立ち曲げ部7bの開放端部7eは、栓体11と弁本体2との接合部16から離間した位置にあるため、ピストン装置3の正常な移動が妨げられることがなく、パッキン6も接合部16から離れた位置にあるため、パッキン6と弁本体2との間がろうやフラックスによって拡開してシール不良の原因になることもない。
【0023】
また、プレート部材7の円筒部7c及び当接部7dによってボルト8を基底部7a上に固定しているため、ボルト8の頭部の回転を阻止することができ、ボルト8を強固に固定することができる。
【0024】
図4は、上記プレート部材7によるボルト8の頭部の固定構造の第1の改変例を示し、この構造では、図4(a)、(b)に示すように、基底部7aから複数の突出片7fを立設し、図4(c)に示すように、突出片7fを外側からボルト8に向かってかしめ変形させてボルト8の頭部に当接させ、ボルト8を基底部7a上に固定している。
【0025】
図5は、上記プレート部材7によるボルト8の頭部の固定構造の第2の改変例を示し、この構造では、図5(a)、(b)に示すように、基底部7aを切り欠く(切欠部7g)ことにより複数(4つ)の突出片7hを形成し、図5(c)に示すように、突出片7hを外側からボルト8に向かってかしめ変形させてボルト8の頭部に当接させ、ボルト8を基底部7a上に固定している。
【0026】
尚、上記実施の形態においては、図2に示すように、プレート部材7は、基底部7aの外周部に円筒状に形成された立ち曲げ部7bを有する場合について説明したが、この立ち曲げ部7bは、筒状に一体に連なった形状に限定されず、筒状部に数カ所の切り込みを有する複数の立ち曲げ部とすることもできる。
【0027】
また、四方切換弁1の弁本体2の一方の端部に位置するピストン装置3を例示して説明したが、上記構成を有するピストン装置3を弁本体2の両端部に設けることも勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明にかかる四方切換弁用ピストン装置及びその近傍を示す断面図である。
【図2】図1の四方切換弁用ピストン装置を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図3】図2のプレート部材及びボルトを示す図であって、(a)は、プレート部材の円筒部をかしめる前の状態を示す断面図、(b)は同平面図、(c)は、プレート部材の円筒部をかしめた後の状態を示す平面図である。
【図4】本発明にかかる四方切換弁用ピストン装置のプレート部材の改変例を示す図であって、(a)は、プレート部材の突出片をかしめる前の状態を示す断面図、(b)は同平面図、(c)は、プレート部材の突出片をかしめた後の状態を示す平面図である。
【図5】本発明にかかる四方切換弁用ピストン装置のプレート部材の改変例を示す図であって、(a)は、プレート部材の突出片をかしめる前の状態を示す断面図、(b)は同平面図、(c)は、プレート部材の突出片をかしめた後の状態を示す平面図である。
【図6】従来の四方切換弁用ピストン装置及びその近傍を示す断面図である。
【図7】図6の四方切換弁用ピストン装置を示す図であって、(a)は正面図、(b)は上面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 四方切換弁
2 弁本体
2a 開放端部
3 ピストン装置
4 連結板
5A 第1挟持プレート
5B 第2挟持プレート
6 パッキン
7 プレート部材
7a 基底部
7b 立ち曲げ部
7c 円筒部
7d 当接部
7e 開放端部
7f 突出片
7g 切欠部
7h 突出片
8 ボルト
9 リベット
10 ろう付け
11 栓体
12 導管
13 作動室
14 高圧室
15 補助ばね
16 接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の弁本体と、該弁本体の開放端部とろう付け接合される栓体と、前記弁本体の内部を弁体と連動して摺動し、前記栓体とで作動室を形成するピストン装置とを備える四方切換弁に用いられる前記ピストン装置であって、
前記作動室に対向する側に、基底部と該基底部から前記栓体側に向かって立設された立ち曲げ部とからなるプレート部材を備え、該プレート部材の前記立ち曲げ部の開放端部が、前記弁本体と前記栓体との接合部から離間した位置において前記栓体と当接し、該プレート部材と前記栓体とで前記作動室を形成することを特徴とする四方切換弁用ピストン装置。
【請求項2】
前記弁本体の内部に対向する側に、該弁本体内部と、前記作動室との間をシールするためのパッキンを備えることを特徴とする請求項1に記載の四方切換弁用ピストン装置。
【請求項3】
前記プレート部材の前記基底部に、該ピストン装置を前記弁体に連結するための連結板に締結するボルトの固定部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の四方切換弁用ピストン装置。
【請求項4】
前記プレート部材の前記ボルトの固定部は、前記基底部から前記栓体側に向かって円筒状に立設された円筒状部と、該円筒状部の少なくとも一部をかしめ変形させることにより、該円筒状部に収容された前記ボルトの頭部を前記基底部に固定することを特徴とする請求項3に記載の四方切換弁用ピストン装置。
【請求項5】
前記プレート部材の前記ボルトの固定部は、前記基底部から前記栓体側に向かって突出するように立設された複数の突出片を備え、該複数の突出片の少なくとも一つをかしめ変形させることにより、該複数の突出片によって囲繞された前記ボルトの頭部を前記基底部に固定することを特徴とする請求項3に記載の四方切換弁用ピストン装置。
【請求項6】
前記プレート部材の前記ボルトの固定部は、前記基底部を切り欠くことにより形成した複数の突出片を備え、該複数の突出片の少なくとも一つをかしめ変形させることにより、該複数の突出片によって囲繞された前記ボルトの頭部を前記基底部に固定することを特徴とする請求項3に記載の四方切換弁用ピストン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−144880(P2009−144880A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325431(P2007−325431)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】