説明

回生抵抗保護装置

【課題】本発明の目的は、低コスト化及び小型化を図ることができる回生抵抗保護装置を提供することである。
【解決手段】本発明は、回生抵抗保護装置に係るものであって、回生抵抗器14への通電を制御する第1及び第2のスイッチング素子8,9と、抵抗器11,12から構成され、第1及び第2のスイッチング素子8,9に対して並列接続された分圧回路10と、分圧回路10から、所定のレベルの電圧が所定の時間を超えて継続して出力された場合に異常信号を出力する異常信号出力手段5と、前記異常信号に基づいて、第2のスイッチング素子9にオフ信号を出力するスイッチング素子制御手段7とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ等を駆動するインバータ回路から回生電力を吸収する回生抵抗器の保護装置に関し、さらに詳細には、スイッチング素子によって前記回生抵抗への通電が制御される回路構成において、前記回生抵抗器を保護するための回生抵抗保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動装置等のインバータ回路には電力回生用の回生抵抗器が設けられていることがある。この回生抵抗器が、何らかの理由で常時通電状態になってしまうと、回生抵抗器が高温になり焼損等の故障が生じるおそれがある。そこで、回生抵抗器を備える回路には、通常、回生抵抗器を保護するための回生抵抗保護装置が設けられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、回生抵抗器に2つの半導体スイッチング素子が直列に接続され、前記2つの半導体スイッチング素子が共にオン状態になると前記回生抵抗器が通電状態となるように構成された回生電力吸収回路が開示されている。この回路には、回生抵抗器の異常検出手段として、該回生抵抗器の温度を検知するサーマルプロテクタが設けられている。ここでは、該サーマルプロテクタによって回生抵抗器の温度異常が検知されると、前記2つの半導体スイッチング素子の少なくとも一方をオフ状態に制御して回生抵抗器への通電を遮断し回生抵抗器を保護している。
【0004】
さらに、特許文献1では、回生抵抗器の異常検出手段として、サーマルプロテクタではなく、回生抵抗器に流れる電流を検知する電流検出センサを用いる方法についても開示している。2つの半導体スイッチング素子の一方がオフ制御されているにもかかわらず、前記電流検出センサが電流を検知した場合には、半導体スイッチング素子の異常が想定されるため、前記2つの半導体スイッチング素子の少なくとも一方をオフ状態に制御して回生抵抗器への通電を遮断している。
【特許文献1】特開2006−296096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、回生抵抗器を保護するための異常検出手段として、サーマルプロテクタ又は電流検出センサを設ける場合には、コストがかかるという問題がある。加えて、回生抵抗器を備えた回路にサーマルプロテクタ又は電流検出センサを組み込むと、回路全体が大型化してしまう。
そこで、本発明の目的は、低コスト化及び小型化を図ることができる回生抵抗保護装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、インバータ回路から出力される回生電力を吸収する回生抵抗器を保護するための回生抵抗保護装置に係るものである。本発明は、上記目的を達成するために、前記抵抗器に直列接続されて、前記回生抵抗器への通電を制御する第1及び第2のスイッチング素子と、抵抗器から構成され、前記第1及び第2のスイッチング素子に対して並列接続された分圧回路と、前記分圧回路から、所定のレベルの電圧が所定の時間を超えて継続して出力された場合に異常信号を出力する異常信号出力手段と、前記異常信号に基づいて、前記第2のスイッチング素子にオフ信号を出力するスイッチング素子制御手段とを備え、前記所定のレベルは、前記第1及び第2のスイッチング素子が共にオン状態のときに前記分圧回路から出力される電圧レベルであり、前記スイッチング素子制御手段は、前記異常信号出力手段が前記異常信号を出力するまでは、前記第2のスイッチング素子にオン信号を入力し、前記第1のスイッチング素子にオン信号又はオフ信号を入力することによって前記回生抵抗器への通電を制御するように構成されている。
【0007】
前記第1及び第2のスイッチング素子が半導体スイッチング素子であっても良い。この場合、一例として、前記インバータ回路に電力を供給する直流母線間の電圧を監視して、該電圧が所定の閾値を超えたときに、回生抵抗器への通電を指示するための回生開始信号を出力する回生指示手段と、前記回生開始信号が入力されるとPWM信号を発生するPWM信号発生器とをさらに備え、前記スイッチング素子制御手段は、前記PWM信号に基づいて前記第1のスイッチング素子にパルス信号を出力する機能をさらに備えるように構成されている。
他の例として、前記1及び第2のスイッチング素子は機械式スイッチング素子であっても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る回生抵抗保護装置は、回生抵抗器への通電を制御する第1及び第2の半導体スイッチング素子に対して並列に接続され抵抗器から構成された分圧回路を備え、所定のレベルの電圧が所定の時間を超えて継続して前記分圧回路に印加された場合には、前記第2の半導体スイッチング素子にオフ信号を入力して、前記回生抵抗器への通電を遮断するようにしている。
【0009】
このように、本発明によれば、抵抗器から構成される分圧回路を異常検出手段として使用しているので、回生抵抗保護装置の低コスト化及び小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を添付の図により説明する。図1に本実施形態に係る回生抵抗保護装置を備えたモータ駆動装置の回路図を模式的に示す。
このモータ駆動装置1では、ブラシレスDCモータ16を駆動するインバータ回路15と電源2とが直流母線L1,L2によって結ばれている。直流母線L1,L2間には、回生抵抗器14と第1のスイッチング素子8と第2のスイッチング素子9とを備える直列回路と、回生指示部3とが接続されている。なお、回生抵抗器14には、フライホイールダイオード17が並列に設けられている。
【0011】
本実施形態において、第1のスイッチング素子8と第2のスイッチング素子9はMOSFETであって、それぞれのゲートにはゲート回路6及びゲート回路7が接続されている。ゲート回路6及びゲート回路7はスイッチング素子制御手段を構成している。
回生指示部3は、PWM信号発生器4を介してゲート回路6に接続されている。
【0012】
スイッチング素子8とスイッチング素子9には、分圧回路10が並列に設けられている。分圧回路10は、直列接続した第1の抵抗器11及び第2の抵抗器12によって構成されていて、抵抗器11と抵抗器12の間のノード13からの出力は、異常信号出力部5を介して、ゲート回路7の入力に接続されている。この分圧回路10は、後述するように、スイッチング素子8とスイッチング素子9の電流通電状態、すなわち、回生抵抗器14の電流通電状態を推測検出するために設けられている。
なお、電源2は、図示しない交流電源を図示しない整流器で整流した直流電源を示すものである。
【0013】
以下にモータ駆動装置1の動作について説明する。
電源が投入されると、ゲート回路7から出力されたオン信号によって第2のスイッチング素子9がオン状態に設定される。スイッチング素子9は、オフ信号が入力されるまで常時オン状態に保持されている。電力回生処理が行なわれていない通常運転時においては、第1のスイッチング素子8はオフ状態に設定されていて、回生抵抗器14への通電を遮断している。
【0014】
回生指示部3は、直流母線L1,L2間の電圧を監視して、この電圧値が回生開始を規定する第1の所定の閾値を超えた場合に、回生開始信号をPWM信号発生器4に出力するように構成されている。
【0015】
PWM信号発生器4は、回生開始信号が入力されると、デューティ比を固定(例えば50%)したPWM信号をゲート回路6に出力する。ゲート回路6はPWM信号に基づくパルス信号をスイッチング素子8のゲートに入力し、スイッチング素子8を間欠的にオン状態にする。これにより、電源2から供給された電流が回生抵抗器14に流れて電力が消費される。
【0016】
本実施形態では、このようにスイッチング素子8を間欠的にオン状態にすることによって、回生抵抗器14を間欠的に通電状態としているため、ゲート回路6から連続的なオン信号を出力してスイッチング素子8をオン状態に固定した場合よりも、回生抵抗器14に加わる負担が少なくなる。
【0017】
回生指示部3は、電力回生によって直流母線L1,L2間の電圧値が第2の所定の閾値以下になったことを検知すると、回生停止信号をPWM信号発生器4に出力する。なお、第2の所定の閾値は、前記第1の所定の閾値と同じ値を設定しても良いし異なる値を設定しても良い。PWM信号発生器4は回生停止信号が入力されると、PWM信号の出力を停止する。ゲート回路6はPWM信号の入力が停止すると、すなわちオフレベルの信号が入力されると、スイッチング素子8にオフ信号を出力してスイッチング素子8をオフ状態にする。したがって、回生抵抗器14への通電が遮断されて電力回生処理は停止し、モータ駆動装置1は通常運転状態に戻る。
【0018】
分圧回路10はノード13から分圧電圧を出力している。この分圧電圧は、スイッチング素子8がオフ状態の場合には電源電圧2を抵抗器11及び抵抗器12で分圧した値(以下、オフ状態電圧レベルという)となり、スイッチング素子8がオン状態の場合には、共にオン状態であるスイッチング素子8及び9の直列回路に加わる電圧を分圧した値(以下、オン状態電圧レベルという)となる。
【0019】
分圧回路10は前述のように、スイッチング素子8及びスイッチング素子9に対して並列に設けられている。したがって、スイッチング素子8,9にどのような制御信号が入力されたかではなく、実際にスイッチング素子8,9がどのような状態にあるかを検知することができる。すなわち、スイッチング素子8,9からなる直列回路を介して回生抵抗器14が通電状態となっているのか、スイッチング素子8,9のいずれかの素子がオフ状態となっていて回生抵抗器14への通電が遮断されているのかを判定することが可能である。なお、スイッチング素子9は、前述のように、常時オン状態に設定しているため、ここで検知されるスイッチング素子のオフ状態は、スイッチング素子8がオフ状態であることを示している。
【0020】
異常信号出力部5はノード13から出力された電圧レベルを監視して、該電圧レベルが前記オフ状態電圧レベルから前記オン状態電圧レベルへ移行すると、適宜な計測手段を用いてこのオン状態電圧レベルの継続時間を計測する。
【0021】
異常信号出力部5は、この継続時間が所定の時間を超えたかを判定する。ここで、この所定の時間は、ゲート回路6からスイッチング素子8に入力されるパルス信号のオン信号継続時間と実質的に一致するように設定しても良い。このパルス信号のデューティ比は固定されているため、オン信号の継続時間も一定の時間に保持されている。したがって、分圧回路10から出力されたオン状態電圧レベルの継続時間が前記オン信号の継続時間よりも長く継続している場合には、スイッチング素子8がショート破損等の故障を生じたものと推定できる。スイッチング素子8が制御不能となりオン状態が過度に持続されると、回生抵抗器14の通電状態も過度に持続されることになり、該回生抵抗器14に破損、焼損等の故障が生じる可能性が高くなる。
【0022】
そこで、オン状態電圧レベルの継続時間が所定の時間を経過した場合には、スイッチング素子9をオフ状態にして回生抵抗器14への通電を遮断するために、異常信号出力部5がゲート回路7へ異常信号を出力する。異常信号が入力されたゲート回路7は、スイッチング素子9にオフ信号を入力してスイッチング素子9をオフ状態に制御する。
【0023】
なお、通常運転時及び電力回生処理時における回生抵抗器14への通電はスイッチング素子8を介して制御されているため、スイッチング素子9がショート破損しても回生抵抗器14に回生抵抗電流が連続して流れることはない。また、スイッチング素子8,9がオフ状態で破損した場合は、回生抵抗器14への通電が遮断されるため、回生抵抗器14が焼損等の故障を生じることはない。
【0024】
本実施形態では、スイッチング素子8の異常を検知して回生抵抗器14への通電を遮断することにより、回生抵抗器14の破損や焼損等の故障を未然に防止することができる。加えて、本実施形態では、抵抗器から構成された分圧回路10を異常検出のための手段として使用している。この分圧回路10は電源2の電圧が高い場合でも抵抗値が大きく電力の小さい抵抗器を使用して安価かつ小型に構成することができるため、効果的に回生抵抗保護装置の低コスト化及び小型化をもたらすことが可能である。
【0025】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。例えば、既述の実施形態では、ブラシレスDCモータを駆動するモータ駆動装置において本発明を適用しているが、本発明が適用される装置はこれに限定されない。また、既述の実施形態では、オン状態電圧レベルの継続時間と比較される所定の時間をゲート回路6から出力されるオン信号継続時間に設定しているが、これに限定されない。例えば、前記オン信号継続時間よりも長い時間であって、回生抵抗器14が焼損等の故障を起こさないと想定される電流通電可能時間を前記所定の時間として設定しても良い。また、異常信号出力部5から出力される異常信号をゲート回路7だけではなくゲート回路6にも入力し、スイッチング素子8,9に対して共にオフ信号を入力するように構成しても良い。
【0026】
既述の実施形態では、スイッチング素子8,9としてMOSFETを用いているが、他のFET、IGBT、トランジスタ等の半導体スイッチング素子を使用しても良い。また、半導体スイッチング素子ではなく、機械式スイッチング素子を用いても良い。図2にスイッチング素子として機械式スイッチング素子22,23を使用した場合の模式的な回路図を示す。他の構成要素については、PWM信号発生器4が不要となることを除いて図1を参照した上記実施形態と同様であるため、省略して示している。ここで、機械式スイッチング素子22,23は機械式リレーであって、ゲート回路20,21からの入力信号によってオン・オフ制御されている。
【0027】
既述の実施形態と同様に、機械式スイッチング素子23は、オン状態に設定されていて、機械式スイッチング素子22によって、回生抵抗器14への通電を制御している。しかしながら、機械式スイッチング素子は、PWM信号には対応できないため、機械式スイッチング素子22を使用した場合には、回生開始信号及び回生停止信号は回生指示部3からゲート回路20に入力されるように構成されている。ゲート回路20は、回生開始信号が入力されると回生停止信号が入力されるまで、オン信号を機械式スイッチング素子22に継続して入力する。この場合、オン状態電圧レベルの継続時間と比較される所定の時間として、通常想定される電力回生継続時間よりも長い時間であって、回生抵抗器14が焼損等の故障を起こさないと想定される電流通電可能時間を設定しても良い。なお、機械式スイッチング素子22は前述のようにPWM信号には対応できないため、電源電圧2が回生抵抗器14の定格に適合している場合に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】一実施形態に係る回生抵抗保護装置を適用したモータ駆動装置を示した回路図である。
【図2】スイッチング素子として機械式リレーを用いた場合の他の実施形態を部分的に示した回路図である。
【符号の説明】
【0029】
1 モータ駆動装置
2 電源
3 回生指示部
4 PWM信号発生器
5 異常信号出力部
6 第1のゲート回路
7 第2のゲート回路
8 第1のスイッチング素子
9 第2のスイッチング素子
10 分圧回路
11 抵抗器
12 抵抗器
14 回生抵抗器
15 インバータ回路
16 ブラシレスDCモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ回路から出力される回生電力を吸収する回生抵抗器を保護するための回生抵抗保護装置であって、
前記抵抗器に直列接続されて、前記回生抵抗器への通電を制御する第1及び第2のスイッチング素子と、
抵抗器から構成され、前記第1及び第2のスイッチング素子に対して並列接続された分圧回路と、
前記分圧回路から、所定のレベルの電圧が所定の時間を超えて継続して出力された場合に異常信号を出力する異常信号出力手段と、
前記異常信号に基づいて、前記第2のスイッチング素子にオフ信号を出力するスイッチング素子制御手段と
を備え、
前記所定のレベルは、前記第1及び第2のスイッチング素子が共にオン状態のときに前記分圧回路から出力される電圧レベルであり、
前記スイッチング素子制御手段は、前記異常信号出力手段が前記異常信号を出力するまでは、前記第2のスイッチング素子にオン信号を入力し、前記第1のスイッチング素子にオン信号又はオフ信号を入力することによって前記回生抵抗器への通電を制御するように構成されている、回生抵抗保護装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のスイッチング素子が半導体スイッチング素子であることを特徴とする、請求項1に記載の回生抵抗保護装置。
【請求項3】
前記インバータ回路に電力を供給する直流母線間の電圧を監視して、該電圧が所定の閾値を超えたときに、回生抵抗器への通電を指示するための回生開始信号を出力する回生指示手段と、
前記回生開始信号が入力されるとPWM信号を発生するPWM信号発生器とをさらに備え、
前記スイッチング素子制御手段は、前記PWM信号に基づいて前記第1のスイッチング素子にパルス信号を出力する機能をさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の回生抵抗保護装置。
【請求項4】
前記1及び第2のスイッチング素子が機械式スイッチング素子であることを特徴とする、請求項1に記載の回生抵抗保護装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−136102(P2009−136102A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310015(P2007−310015)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】