説明

回路モジュールおよびそれを備えた電動車両

【課題】確実な防水が可能でかつ配線の交換が容易な回路モジュールおよびそれを備えた電動車両を提供する。
【解決手段】本体ケーシング10Cの内部空間に回路基板が収容され、回路基板に電気的に接続されるバスバーBBが本体ケーシング10Cの外部に引き出される。バスバーBBは、本体ケーシング10Cの外部のターミナルホルダ11の内部領域に保持される。ハーネス21の一端がターミナルホルダ11の内部領域でバスバーBBに接続されるとともにハーネス21の他端が外部空間に引き出される。この状態で、ターミナルカバー12a,12cの接合領域が、ターミナルホルダ11の接合領域に接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路モジュールおよびそれを備えた電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両の一例として、例えばバッテリシステム、電力変換部、モータおよび駆動輪を備える電動二輪車がある。電動二輪車の走行時には、バッテリシステムから供給された電力が、電力変換部により駆動輪を駆動するために必要な電力(駆動電力)に変換される。
【0003】
電力変換部はインバータ回路等の電子回路を含む。そのため、屋外で使用される電動二輪車に電力変換部を設ける場合には、電力変換部の電子回路およびその電子回路と配線との接続部に雨水等の液体が接触することを確実に防止する必要がある。
【0004】
特許文献1には、電子装置の防水構造の一例が示されている。特許文献1の防水構造を有する電子装置においては、下部ケースと上部ケースとが防水用ゴムパッキンを介して接合されることにより、基板を収容する本体が形成される。防水用ゴムパッキンの一部にはハーネスを通すための穴が形成されている。防水用ゴムパッキンの穴にハーネスが通され、ハーネスの一端が本体内の基板に半田付けされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−199871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電動二輪車の電力変換部の防水性およびその電力変換部と配線との接続部の防水性を確保するために特許文献1の電子装置の防水構造を適用することが考えられる。
【0007】
しかしながら、特許文献1の防水構造を電力変換部に適用した場合、配線の交換が困難になる。
【0008】
本発明の目的は、確実な防水が可能でかつ配線の交換が容易な回路モジュールおよびそれを備えた電動車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)第1の発明に係る回路モジュールは、内部空間を有する第1のケーシングと、第1のケーシングの内部空間に収容される電子回路部と、電子回路部に電気的に接続され、第1のケーシングの外側に引き出された端子部と、第1のケーシングの外側に設けられ、端子部を保持する内部領域を有するとともに内部領域を取り囲む第1の接合領域を有する端子保持部と、配線と、端子保持部の第1の接合領域に対応する第2の接合領域を有し、端子保持部の内部領域を覆うように形成される蓋体部とを備え、配線の一端が端子保持部の内部領域で端子部に接続されるとともに配線の他端が外部空間に引き出された状態で、端子保持部の第1の接合領域に蓋体部の第2の接合領域が接合されるものである。
【0010】
第1の発明に係る回路モジュールにおいては、第1のケーシングの内部空間に電子回路部が収容され、電子回路部に電気的に接続される端子部が第1のケーシングの外部に引き出される。端子部は、第1のケーシングの外部に設けられる端子保持部の内部領域に保持される。端子保持部は、内部領域を取り囲む第1の接合領域を有する。蓋体部は、端子保持部の第1の接合領域に対応する第2の接合領域を有する。配線の一端が端子保持部の内部領域で端子部に接続されるとともに配線の他端が外部空間に引き出される。この状態で、蓋体部の第2の接合領域が端子保持部の第1の接合領域に接合される。
【0011】
このようにして、第1のケーシングにより電子回路部の防水性が確保される。また、端子部と配線との接続部が端子保持部および蓋体部により密閉される。これにより、端子部と配線との接続部の防水性が確保される。この場合、配線を端子部から取り外すことにより第1のケーシングを分解することなく配線を端子保持部から容易に取り外すことができる。その結果、回路モジュールの確実な防水が可能でかつ配線の交換が容易になる。
【0012】
(2)回路モジュールは、端子保持部の内部領域を取り囲むように第1の接合領域に配置され、外部空間から内部領域へ貫通する複数の孔を有するシール部材をさらに備え、端子部および配線はそれぞれ複数設けられ、複数の配線はシール部材の複数の孔にそれぞれ挿通可能であり、端子保持部の内部領域に複数の端子部が保持され、シール部材の複数の孔に挿通された配線が端子保持部の内部領域で複数の端子部に接続され、端子保持部の第1の接合領域にシール部材を介して蓋体部の第2の接合領域が接合されてもよい。
【0013】
この場合、シール部材は、端子保持部の内部領域を取り囲むように第1の接合領域に配置されるとともに、外部空間から内部領域へ貫通する複数の孔を有する。また、複数の配線がシール部材の複数の孔にそれぞれ挿通され、端子保持部の内部領域に保持される複数の端子部にそれぞれ接続される。この状態で、蓋体部の第2の接合領域が、シール部材を介して端子保持部の第1の接合領域に接合される。
【0014】
これにより、端子部と配線との接続部を含む内部領域が端子保持部、蓋体部およびシール部材により密閉される。そのため、端子部と配線との接続部の防水性が向上する。
【0015】
また、複数の配線がシール部材と一体化される。そのため、複数の配線の取り扱いが容易になるとともに、複数の配線と複数の端子部との誤接続が防止される。
【0016】
(3)端子部、配線およびシール部材はそれぞれ複数設けられ、端子保持部は、複数の端子部を保持する複数の内部領域を有するとともに複数の内部領域をそれぞれ取り囲む第1の接合領域を複数有し、蓋体部は端子保持部の複数の第1の接合領域に対応する第2の接合領域を複数有し、複数のシール部材の複数の孔にそれぞれ挿通された複数の配線が端子保持部の複数の内部領域で複数の端子部にそれぞれ接続され、端子保持部の複数の第1の接合領域に複数のシール部材を介して蓋体部の複数の第2の接合領域が接合されてもよい。
【0017】
この場合、複数の配線が複数のシール部材の孔にそれぞれ挿通され、端子保持部の複数の内部領域に保持される複数の端子部にそれぞれ接続される。この状態で、蓋体部の複数の第2の接合領域が、複数のシール部材をそれぞれ介して端子保持部の複数の第1の接合領域にそれぞれ接合される。
【0018】
これにより、複数の配線と複数の端子部とが複数のシール部材によりそれぞれ独立に一体化されるとともに、共通の端子保持部および共通の蓋体部を用いて各配線と各端子部との接続部を含む内部領域が密閉される。その結果、各配線と各シール部材とをそれぞれ一体的に取り扱うことができるとともに、複数の配線と複数の端子部との接続部を共通の端子保持部および蓋体部を用いて密閉することができるので、複数の配線の取り付けおよび取り外しを少ない作業工程で確実に行うことができる。
【0019】
(4)端子保持部は、シール部材が嵌合可能に形成され、シール部材は、第1の面および第2の面を有し、第1の面が第1の接合領域に対向する状態で端子保持部に嵌合可能でかつ第2の面が第1の接合領域に対向する状態で端子保持部に嵌合不可能な形状を有してもよい。
【0020】
この場合、シール部材は、第1の面が端子保持部の第1の接合領域に対向する状態で端子保持部に嵌合可能であるが、第2の面が端子保持部の第1の接合領域に対向する状態で端子保持部に嵌合不可能である。
【0021】
そのため、シール部材を正常な向きと逆の向きで端子保持部と蓋体部との間に配置することが防止される。これにより、シール部材の取り付けを容易かつ正確に行うことができる。
【0022】
(5)第1のケーシングは導電性を有し、端子部は第1のケーシングから電気的に絶縁され、配線は芯線およびシールド導体を有し、芯線が端子部に接続され、シールド導体が第1のケーシングに電気的に接続されてもよい。
【0023】
この場合、配線の芯線は第1のケーシングから電気的に絶縁された端子部に接続される。また、配線のシールド導体は導電性を有する第1のケーシングに電気的に接続される。これにより、第1のケーシングが電気回路部のシールドとして機能する。したがって、簡単な構成および簡単な作業で電子回路部のシールドを行うことができる。
【0024】
(6)端子部および配線はそれぞれ複数設けられ、端子保持部は、複数の配線に対応して設けられかつ内部領域と外部空間とを連通する複数の溝部を有し、回路モジュールは、端子保持部の複数の溝部にそれぞれ嵌合可能に形成されかつ外部空間から内部領域へ貫通する孔を有する複数のシール部材をさらに備え、複数の配線は複数のシール部材の孔にそれぞれ挿通可能であり、端子保持部の内部領域に複数の端子部が保持され、複数のシール部材の孔に挿通された複数の配線が端子保持部の内部領域で複数の端子部に接続され、端子保持部の第1の接合領域に複数のシール部材を介して蓋体部の第2の接合領域が接合されてもよい。
【0025】
この場合、複数のシール部材は、端子保持部の内部領域と外部空間とを連通する複数の溝部に嵌合される。複数の配線は、複数のシール部材の孔にそれぞれ挿通され、端子保持部の内部領域の複数の端子部に接続される。この状態で、端子保持部の第1の接合領域に蓋体部の第2の接合領域が接合される。
【0026】
これにより、端子保持部の複数の溝部と複数のシール部材との間が密封されるとともに、端子保持部の第1の接合領域と蓋体部の第2の接合領域との間が密封される。そのため、端子部と配線との接続部を含む内部領域が端子保持部、蓋体部およびシール部材により密閉される。その結果、端子部と配線との接続部の防水性が向上する。
【0027】
また、複数のシール部および複数の溝部が、複数の配線に対応して設けられる。これにより、配線を個別に端子部から取り外すことができる。これにより、配線の交換作業を効率よく行うことができる。
【0028】
(7)回路モジュールは、第1のケーシングの外部に設けられる第2のケーシングをさらに備え、端子部、端子保持部および蓋体部は第2のケーシング内に収容されるとともに、複数の配線が第2のケーシング内から外部空間に引き出され、第1のケーシングおよび第2のケーシングは導電性を有してもよい。
【0029】
この場合、電子回路部が導電性を有する第1のケーシングに収容されるとともに、端子部が導電性を有する第2のケーシングに収容される。これにより、電子回路部および端子部がシールドされる。その結果、外部空間から電子回路部および端子部へのノイズの混入を抑制することができる。また、電子回路部および端子部から外部空間へのノイズの放出を抑制することができる。
【0030】
(8)第2の発明に係る電動車両は、第1の発明に係る回路モジュールにより構成される電力変換部と、電力変換部に電力を供給するバッテリシステムと、電力変換部により駆動されるモータと、モータの回転力により回転する駆動輪とを備えるものである。
【0031】
第2の発明に係る電動車両においては、バッテリシステムから電力変換部に電力が供給される。電力変換部で変換された電力がモータに与えられることにより、モータが回転する。また、モータの回転力によって駆動輪が回転することにより、電動車両が移動する。
【0032】
電力変換部は第1の発明に係る回路モジュールにより構成される。これにより、電動車両が雨天または浸水した路面で使用される場合でも、第1のケーシングにより電力変換部の防水性が確保される。また、電力変換部に電気的に接続される端子部と配線との接続部を含む内部領域が端子保持部および蓋体部により密閉される。これにより、端子部と配線との接続部の防水性が確保される。この場合、配線を端子部から取り外すことにより第1のケーシングを分解することなく配線を端子保持部から容易に取り外すことができる。その結果、回路モジュールの確実な防水が可能でかつ配線の交換が容易になる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、回路モジュールの確実な防水が可能となるとともに配線の交換が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電動二輪車の側面図である。
【図2】図1の電動二輪車の制御系を説明するためのブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る回路モジュールにより構成された電力変換部の外観斜視図である。
【図4】図3の電力変換部の平面図である。
【図5】図3および図4の電力変換部の分解斜視図である。
【図6】図3および図4の電力変換部の分解斜視図である。
【図7】図5のターミナルホルダの斜視図および平面図である。
【図8】モータ動力線群が取り付けられたゴムパッキンの斜視図である。
【図9】電力線群が取り付けられたゴムパッキンの斜視図である。
【図10】ターミナルカバーの下面図である。
【図11】ターミナルカバーの下面図である。
【図12】図6のA−A線縦断面図である。
【図13】ターミナルホルダの他の例を示す平面図である。
【図14】ゴムパッキンの他の例を示す平面図である
【図15】ターミナルカバーの他の例を示す平面図である。
【図16】ターミナルホルダのさらに他の例を示す平面図である。
【図17】ゴムパッキンのさらに他の例を示す平面図である。
【図18】配線接続部の他の例を示す分解斜視図である。
【図19】図18の配線接続部におけるターミナルカバーの下面図である。
【図20】本発明の第2の実施の形態に係る回路モジュールにより構成される電力変換部の外観斜視図である。
【図21】図20の電力変換部の分解斜視図である。
【図22】図20の電力変換部の分解斜視図である。
【図23】図21のターミナルホルダの斜視図および平面図である。
【図24】上蓋の下面図である。
【図25】接続ケーシングの上蓋の他の例を示す斜視図である。
【図26】接続ケーシングの上蓋のさらに他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[1]第1の実施の形態
(1)電動二輪車
本発明の第1の実施の形態に係る回路モジュールおよびそれを備えた電動車両について図面を参照しながら説明する。以下では、電動車両の一例として電動二輪車を説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電動二輪車の側面図である。図1に示すように、本実施の形態に係る電動二輪車600は、車体フレーム610、フロントフォーク611、ハンドル部620、本体部630、シート640、スイングアーム650、モータ660、前輪691および後輪692を備える。なお、以下の説明において、前、後、左および右とは、運転者が電動二輪車600のシート640に着座した状態で見た場合の前、後、左および右を意味する。
【0036】
車体フレーム610は、アンダーボーンフレームであり、電動二輪車600の下部で前後方向に延びるように設けられる。
【0037】
車体フレーム610の前端部分には、フロントフォーク611が左右方向に揺動可能に取り付けられる。フロントフォーク611の下端部に前輪691が取り付けられる。フロントフォーク611の上端部にハンドル部620が取り付けられる。ハンドル部620は、アクセル装置621(後述する図2)およびブレーキ装置622(後述する図2)を備える。詳細は後述する。
【0038】
車体フレーム610の中央部から後部にかけて本体部630が設けられる。本体部630の内部には、電力変換部100、主制御部631およびバッテリシステム632が設けられる。電力変換部100は本実施の形態に係る回路モジュールにより構成される。電力変換部100、主制御部631およびバッテリシステム632の詳細は後述する。本体部630の上端部にシート640が設けられる。
【0039】
車体フレーム610の後端部分には、スイングアーム650が後方に延びるように取り付けられる。この状態で、スイングアーム650の後端部分は、車体フレーム610に対して上下方向に揺動可能となっている。スイングアーム650の後端部には、モータ660が設けられる。モータ660の回転軸に後輪692が取り付けられる。これにより、モータ660の動作時には、モータ660により発生される回転力がその回転軸を通して後輪692に伝達される。
【0040】
次に、図1の電動二輪車600の制御系について説明する。図2は、図1の電動二輪車600の制御系を説明するためのブロック図である。
【0041】
図2に示すように、電動二輪車600は、後輪692の回転力を調整する制御系の構成要素として、電力変換部100、主制御部631、バッテリシステム632、アクセル装置621、ブレーキ装置622、回転速度センサ651およびモータ660を備える。
【0042】
ここで、アクセル装置621はアクセルグリップ621aおよびアクセル検出部621bを有し、ブレーキ装置622はブレーキレバー622aおよびブレーキ検出部622bを有する。回転速度センサ651は図1のモータ660に内蔵される。なお、本実施の形態において、モータ660は減速機を内蔵する。
【0043】
バッテリシステム632は、複数のバッテリモジュールおよびバッテリECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)を含む。バッテリシステム632の複数のバッテリモジュールは電力変換部100を介してモータ660に接続される。
【0044】
バッテリシステム632のバッテリECUは主制御部631に接続される。これにより、主制御部631には、バッテリECUから複数のバッテリモジュールの充電量が与えられる。
【0045】
主制御部631には、アクセル装置621、ブレーキ装置622および回転速度センサ651が接続される。主制御部631は、例えばCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)およびメモリ、またはマイクロコンピュータからなる。
【0046】
運転者によりアクセルグリップ621aが操作されると、アクセル検出部621bにより、未操作の状態を基準としてアクセルグリップ621aの操作量が検出される。検出されたアクセルグリップ621aの操作量が主制御部631に与えられる。
【0047】
また、運転者によりブレーキレバー622aが操作されると、ブレーキ検出部622bにより、未操作の状態を基準としてブレーキレバー622aの操作量が検出される。検出されたブレーキレバー622aの操作量が主制御部631に与えられる。
【0048】
回転速度センサ651は、モータ660の回転速度を検出する。検出された回転速度は、主制御部631に与えられる。
【0049】
上記のように、主制御部631には、バッテリモジュールの充電量、アクセルグリップ621aの操作量、ブレーキレバー622aの操作量、およびモータ660の回転速度等の情報が与えられる。主制御部631は、これらの情報に基づいて、バッテリモジュールの充放電制御および電力変換部100の電力変換制御を行う。
【0050】
例えば、アクセル操作に基づく電動二輪車600の発進時および加速時には、バッテリシステム632から電力変換部100にバッテリモジュールの電力が供給される。
【0051】
さらに、主制御部631は、与えられたアクセルグリップ621aの操作量に基づいて、後輪692に伝達すべき回転力を指令トルクとして算出し、その指令トルクに基づく制御信号を電力変換部100に与える。
【0052】
電力変換部100は、主制御部631からの制御信号に基づいて、バッテリシステム632から供給された電力を、後輪692を駆動するために必要な電力(駆動電力)に変換する。これにより、電力変換部100により変換された駆動電力がモータ660に供給され、その駆動電力に基づくモータ660の回転力が後輪692に伝達される。
【0053】
一方、ブレーキ操作に基づく電動二輪車600の減速時には、モータ660は発電装置として機能する。この場合、電力変換部100は、モータ660により発生された回生電力をバッテリモジュールの充電に適した電力に変換し、バッテリモジュールに与える。それにより、バッテリモジュールが充電される。
【0054】
ここで、本実施の形態に係る電動二輪車600において、電力変換部100は後述する回路基板30(後述する図5)を有する。また、電力変換部100は、回路基板30(後述する図5)と主制御部631とを接続するための信号線群20bを有する。さらに、電力変換部100は回路基板30(後述する図5)とバッテリシステム632とを接続するための電力線群20cを有する。さらに、電力変換部100は回路基板30(後述する図5)とモータ660とを接続するためのモータ動力線群20aを有する。信号線群20b、電力線群20cおよびモータ動力線群20aは、それぞれ複数のハーネスにより構成される。
【0055】
以下、電力変換部100の詳細を説明する。
【0056】
(2)電力変換部の構造
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る回路モジュールにより構成される電力変換部100の外観斜視図である。図4は、図3の電力変換部100の平面図である。
【0057】
図3および図4に示すように、電力変換部100は、変換本体部10および配線接続部20から構成される。
【0058】
変換本体部10においては、箱型の本体ケーシング10C内に後述する回路基板30(図5)が収容される。本体ケーシング10Cは、上部開口を有する下部ケーシング110、および下部ケーシング110の上部開口を閉塞する上蓋120からなる。本体ケーシング10Cは、例えばアルミニウム等の導電性材料により形成される。
【0059】
下部ケーシング110は、4つの側面および底面を有する。下部ケーシング110には、1つの側面から側方へ延びるように配線接続部20が一体的に設けられる。
【0060】
本実施の形態において、配線接続部20は、第1の接続部20x、第2の接続部20yおよび第3の接続部20zを含む。第1の接続部20x、第2の接続部20yおよび第3の接続部20zに、それぞれ図3のモータ動力線群20a、信号線群20bおよび電力線群20cの一端が接続される。第1の接続部20xおよび第3の接続部20zが防水構造を有する。
【0061】
モータ動力線群20aは3本のハーネス21により構成され、信号線群20bは3本のハーネス21により構成され、電力線群20cは2本のハーネス21により構成される。
【0062】
図5および図6は、図3および図4の電力変換部100の分解斜視図である。
【0063】
回路基板30には、図2のモータ660を駆動するためのインバータ回路等の電子回路が実装されている。下部ケーシング110の内部に回路基板30が収容される。
【0064】
図5に示すように、回路基板30の上面には図3のモータ動力線群20aに対応する3つの端子部30a,30b,30cが形成されている。また、回路基板30の上面には図3の電力線群20cに対応する2つの端子部30d,30eが形成されている。端子部30a〜30eには、それぞれ帯状のバスバーBBを接続するためのねじ孔が形成されている。なお、回路基板30には、図3の信号線群20bに対応する3つの端子部(図示せず)も形成されている。
【0065】
配線接続部20は、図5に示す2つの支持部110x,110y、図5に示すターミナルホルダ11、図6に示すゴムパッキン23a,23cおよび図6に示すターミナルカバー12a,12b,12cにより構成される。
【0066】
図5に示すように、下部ケーシング110の1つの側面には、2つの支持部110x,110yが間隔を隔てて一体的に設けられている。2つの支持部110x,110yは、一定幅を有し、水平方向に延びるとともにその先端部が上方に折曲した形状を有する。
【0067】
支持部110xの先端部の上端には、図3のモータ動力線群20aに対応する3つの断面半円形状の凹部a,b,cが形成されている。また、支持部110yの先端部の上端には、図3の電力線群20cに対応する2つの断面半円形状の凹部d,eが形成されている。これらの2つの支持部110x,110y上に樹脂製のターミナルホルダ11が取り付けられる。
【0068】
図7(a)は、図5のターミナルホルダ11の斜視図であり、図7(b)は、図5のターミナルホルダ11の平面図である。
【0069】
図7(a)に示すように、ターミナルホルダ11は、長方形状を有する板状部材からなり、上面11A、下面11B、一方端面11Cおよび他方端面11Dを有する。
【0070】
ターミナルホルダ11の上面11Aには、一方端面11Cから他方端面11Dの近傍まで延びるように複数の凹溝g1,g2,g3,g7,g8が平行に形成されている。また、凹溝g1,g2,g3と凹溝g7,g8との間には、一方端面11Cから他方端面11Dまで延びるように複数の凹溝g4,g5,g6が平行に形成されている。
【0071】
3つの凹溝g1,g2,g3は図3のモータ動力線群20aに対応し、図3の第1の接続部20x内に形成される。また、3つの凹溝g4,g5,g6は図3の信号線群20bに対応し、第2の接続部20y内に形成される。さらに、2つの凹溝g7,g8は図3の電力線群20cに対応し、第3の接続部20z内に形成される。凹溝g1,g2,g3,g7,g8の先端部は断面半円形状に形成される。凹溝g4,g5,g6は,全体にわたって断面半円形状に形成される。
【0072】
また、3つの凹溝g1,g2,g3の先端部を除いて凹溝g1,g2,g3を一体的に取り囲むように、上面11Aに接合領域CR1が形成される。また、2つの凹溝g7,g8の先端部を除いて凹溝g7,g8を一体的に取り囲むように、上面11Aに接合領域CR2が形成される。接合領域CR1の内側を内部領域IR1と呼び、接合領域CR2の内側を内部領域IR2と呼ぶ。
【0073】
本例では、凹溝g1,g2,g3は、内部領域IR1の中心線CL1aに関して対称に配置される。ここで、中心線CL1aは、一方端面11Cに平行な内部領域IR1の二辺の中心を通る直線である。また、凹溝g7,g8は、内部領域IR2の中心線CL2aに関して対称に配置される。ここで、中心線CL2aは、一方端面11Cに平行な内部領域IR2の二辺の中心を通る直線である。
【0074】
図7(b)に示すように、ターミナルホルダ11には、下面11Bから内部領域IR1内まで上下に貫通するように一方端面11Cに平行なスリットS1が形成される。また、ターミナルホルダ11には、下面11Bから内部領域IR2内まで上下に貫通するように一方端面11Cに平行なスリットS2が形成される。
【0075】
スリットS1に図5の支持部110xの先端部が下面11Bから挿入され、スリットS2に図5の支持部110yの先端部が下面11Bから挿入される。この状態で、支持部110xの3つの凹部a,b,cの上面とターミナルホルダ11の3つの凹溝g1,g2,g3の上面とがほぼ面一となる。また、支持部110yの2つの凹部d,eの上面とターミナルホルダ11の2つの凹溝g7,g8の上面とがほぼ面一となる(図6参照)。
【0076】
また、図7(b)に示すように、ターミナルホルダ11には、他方端面11Dから凹溝g1,g2,g3,g7,g8内に至る下面11Bに平行な複数のスリットH1,H2,H3,H4,H5が形成されている。
【0077】
複数のスリットH1,H2,H3,H4,H5には、それぞれ上述の帯状のバスバーBBが挿入される(図5参照)。複数のバスバーBBの一端部は、凹溝g1,g2,g3,g7,g8内で露出する。複数のバスバーBBの各々は、例えば銅により形成され、両端部に接続孔を有する。
【0078】
上述のように、ターミナルホルダ11のスリットS1,S2には、下部ケーシング110の支持部110x,110yの先端部が挿入される。これにより、図5に示すように、ターミナルホルダ11が下部ケーシング110に固定される。複数のバスバーBBの一端部の接続孔はターミナルホルダ11の凹溝g1,g2,g3,g7,g8内に位置決めされ、複数のバスバーBBの他端部の接続孔は回路基板30の複数の端子部30a,30b,30c,30d,30e上に位置決めされる。
【0079】
この状態で、複数のバスバーBBの他端部が接続孔を通して回路基板30の複数の端子部30a,30b,30c,30d,30eのねじ孔にねじ31で接続される。
【0080】
また、信号線群20bを構成する3本のハーネス21がそれぞれターミナルホルダ11の3つの凹溝g4,g5,g6に嵌め込まれ、3本のハーネス21の端部が回路基板30に電気的に接続される。ターミナルカバー12bの下面には、ターミナルホルダ11の3つの凹溝g4,g5,g6に対向する半円形の凹溝が形成されている。ターミナルカバー12bは樹脂により形成される。ターミナルホルダ11の凹溝g4,g5,g6内のハーネス21を覆うようにターミナルホルダ11上にターミナルカバー12bが取り付けられる。
【0081】
この状態で、下部ケーシング110の内部空間が樹脂でモールドされ、下部ケーシング110に上蓋120が取り付けられる。
【0082】
図8は、モータ動力線群20aが取り付けられたゴムパッキン23aの斜視図である。図9は、電力線群20cが取り付けられたゴムパッキン23cの斜視図である。
【0083】
図8に示すように、ゴムパッキン23aは、ターミナルホルダ11の上面11Aの接合領域CR1に対応する矩形状を有する。ゴムパッキン23aは、ターミナルホルダ11の上面11Aの接合領域CR1上に配置された状態で内部領域IR1を取り囲む。
【0084】
ゴムパッキン23aの一辺には、ゴムパッキン23aの外側から内側へ貫通する3つの貫通孔hを有する円筒形の取り付け部Fが間隔をおいて一体的に形成される。貫通孔hの内径は、それぞれモータ動力線群20aのハーネス21の直径とほぼ等しい。ゴムパッキン23aの四隅には、ねじ孔Hが形成されている。
【0085】
本例では、3つの貫通孔hおよび取り付け部Fは、ゴムパッキン23aの中心線CL1bに関して対称となるように配置される。ここで、中心線CL1bは、ゴムパッキン23aの貫通孔hが形成された一辺の中点とそれに対向する他辺の中点とを通る直線である。
【0086】
図9に示すように、ゴムパッキン23cは、ターミナルホルダ11の上面11Aの接合領域CR2に対応する矩形状を有する。ゴムパッキン23cは、ターミナルホルダ11の上面11Aの接合領域CR2上に配置された状態で内部領域IR2を取り囲む。
【0087】
ゴムパッキン23cの一辺には、ゴムパッキン23cの外側から内側へ貫通する2つの貫通孔hを有する円筒形の取り付け部Fが間隔をおいて一体的に形成される。貫通孔hの内径は、それぞれ電力線群20cのハーネス21の直径とほぼ等しい。ゴムパッキン23cの四隅には、ねじ孔Hが形成されている。
【0088】
本例では、2つの貫通孔hおよび取り付け部Fは、ゴムパッキン23cの中心線CL2bに関して対称となるように配置される。ここで、中心線CL2bは、ゴムパッキン23cの貫通孔hが形成された一辺の中点とそれに対向する他辺の中点とを通る直線である。
【0089】
図8のモータ動力線群20aおよび図9の電力線群20cを構成する各ハーネス21は、芯線21a、絶縁被膜21b,21dおよびシールド線21cにより構成される同軸ケーブルである。芯線21aの外周が絶縁被膜21b、シールド線21cおよび絶縁被膜21dで被覆されている。各ハーネス21の先端部で露出する芯線21aに圧着端子22が取り付けられる。
【0090】
図8の3本のハーネス21はゴムパッキン23aの貫通孔hにそれぞれ挿通される。各ハーネス21の先端部に取り付けられた圧着端子22はゴムパッキン23aの内側に位置する。図9の2本のハーネス21はゴムパッキン23cの貫通孔hにそれぞれ挿通される。各ハーネス21の先端部に取り付けられた圧着端子22はゴムパッキン23cの内側に位置する。
【0091】
図6に示すように、ゴムパッキン23aにモータ動力線群20aを構成する3本のハーネス21が挿入された状態で、ゴムパッキン23aがターミナルホルダ11の上面11Aの接合領域CR1に配置されるとともに、3つの取り付け部Fがそれぞれターミナルホルダ11の3つの凹溝g1,g2,g3に嵌め込まれる。
【0092】
この状態で、ゴムパッキン23aの内側に位置する3つの圧着端子22が3つの凹溝g1,g2,g3内で露出するバスバーBBにねじ24aで接続される。
【0093】
同様にして、ゴムパッキン23cに電力線群20cを構成する2本のハーネス21が挿入された状態で、ゴムパッキン23cがターミナルホルダ11の上面11Aの接合領域CR2に配置されるとともに、2つの取り付け部Fがそれぞれターミナルホルダ11の2つの凹溝g7,g8に嵌め込まれる。
【0094】
この状態で、ゴムパッキン23cの内側に位置する2つの圧着端子22が2つの凹溝g7,g8内で露出するバスバーBBにねじ24aで接続される。
【0095】
ターミナルホルダ11の上面11Aの接合領域CR1(図7(a))にゴムパッキン23aを挟んで樹脂製のターミナルカバー12aが取り付けられる。
【0096】
図10は、ターミナルカバー12aの下面図である。図10に示すように、ターミナルカバー12aの下面の周縁部に接合領域CR3が形成される。接合領域CR3は、ターミナルホルダ11の上面11Aの接合領域CR1に対応する矩形状を有する。接合領域CR3はその内側の領域に比べて下方に突出している。接合領域CR3の一辺には、ゴムパッキン23aの取り付け部F(図8参照)に対応する半円形の3つの凹溝g9,g10,g11が形成される。ターミナルカバー12aの四隅には、ねじ孔Hが形成されている。
【0097】
本例では、凹溝g9,g10,g11は接合領域CR3の中心線CL1cに関して対称となるように配置される。ここで、中心線CL1cは、接合領域CR3の凹溝g1,g2,g3が形成された一辺の中点とそれに対向する他辺の中点とを通る直線である。
【0098】
ターミナルカバー12aの接合領域CR3がゴムパッキン23a上に配置されるとともに凹溝g9,g10,g11がそれぞれゴムパッキン23aの3つの取り付け部F上に位置決めされる。この状態で、ターミナルカバー12aが、ねじ13(図6参照)によりゴムパッキン23aを挟んでターミナルホルダ11の上面11Aに取り付けられる。
【0099】
これにより、ターミナルホルダ11、ゴムパッキン23aおよびターミナルカバー12aによりターミナルホルダ11の内部領域IR1上に密閉空間が形成される。
【0100】
同様に、ターミナルホルダ11の上面11Aの接合領域CR2(図7(a))にゴムパッキン23cを挟んで樹脂製のターミナルカバー12cが取り付けられる。
【0101】
図11は、ターミナルカバー12cの下面図である。図11に示すように、ターミナルカバー12cの下面の周縁部に接合領域CR4が形成される。接合領域CR4は、ターミナルホルダ11の上面11Aの接合領域CR2に対応する矩形状を有する。接合領域CR4はその内側の領域に比べて下方に突出している。接合領域CR4の一辺には、ゴムパッキン23cの取り付け部F(図8参照)に対応する半円形の2つの凹溝g15,g16が形成される。ターミナルカバー12cの四隅には、ねじ孔Hが形成されている。
【0102】
本例では、凹溝g15,g16は接合領域CR4の中心線CL2cに関して対称となるように配置される。ここで、中心線CL2cは、接合領域CR4の凹溝g15,g16が形成された一辺の中点とそれに対向する他辺の中点とを通る直線である。
【0103】
ターミナルカバー12cの接合領域CR4がゴムパッキン23c上に配置されるとともに凹溝g15,g16がそれぞれゴムパッキン23cの2つの取り付け部F上に位置決めされる。この状態で、ターミナルカバー12cが、ねじ13(図6参照)によりゴムパッキン23cを挟んでターミナルホルダ11の上面11Aに取り付けられる。
【0104】
これにより、ターミナルホルダ11、ゴムパッキン23cおよびターミナルカバー12cによりターミナルホルダ11の内部領域IR2上に密閉空間が形成される。
【0105】
図12は、図4の電力変換部100のA−A線縦断面図である。図12に示すように、第1の接続部20xにおいては、ターミナルホルダ11の内部領域IR1上の密閉空間内で、モータ動力線群20a(図4)を構成するハーネス21に取り付けられた圧着端子22がバスバーBBに接続される。これにより、モータ動力線群20aの3本のハーネス21が、バスバーBBを介して回路基板30の3つの端子部30a,30b,30c(図5)にそれぞれ電気的に接続される。
【0106】
3本のハーネス21のシールド線21cは、下部ケーシング110の支持部110xの凹部a,b,cにそれぞれ当接した状態で保持される。なお、図12には、凹部bのみが表される。これにより、モータ動力線群20aの3本のハーネス21のシールド線21cが下部ケーシング110と電気的に接続される。
【0107】
上述のように、第3の接続部20zは、第1の接続部20xとほぼ同様の構造を有する。したがって、第3の接続部20zにおいても、ターミナルホルダ11の内部領域IR2上の密閉空間内で、電力線20c(図4)を構成するハーネス21に取り付けられた圧着端子22がバスバーBBに接続される。これにより、電力線群20cの2本のハーネス21が、バスバーBBを介して回路基板30の2つの端子部30d,30e(図5)にそれぞれ電気的に接続される。
【0108】
また、2本のハーネス21のシールド線21cは、下部ケーシング110の支持部110xの凹部d,eにそれぞれ当接した状態で保持される。これにより、電力線群20cの2本のハーネス21のシールド線21cが下部ケーシング110と電気的に接続される。
【0109】
(3)効果
(3−a)回路モジュールについて
本体ケーシング10Cの内部空間に回路基板30が収容される。また、本体ケーシング10Cの内部が樹脂でモールドされる。それにより、回路基板30の防水性が確保される。
【0110】
また、回路基板30から延びるバスバーBBとモータ動力線群20aの3本のハーネス21との接続部を含む内部領域IR1が本体ケーシング10Cの外側でターミナルホルダ11、ターミナルカバー12aおよびゴムパッキン23aにより密閉される。これにより、バスバーBBとモータ動力線群20aの3本のハーネス21との接続部を含む内部領域IR1の防水性が確保される。この場合、ターミナルカバー12aをターミナルホルダ11から取り外し、モータ動力線群20aのハーネス21が挿入されたゴムパッキン23aをターミナルホルダ11から取り外すことにより本体ケーシング10Cを分解することなくモータ動力線群20aのハーネス21を容易に取り外すことができる。その結果、モータ動力線群20aとバスバーBBの確実な防水が可能でかつモータ動力線群20aの交換が容易になる。
【0111】
同様に、回路基板30から延びるバスバーBBと電力線群20cの2本のハーネス21との接続部を含む内部領域IR2が本体ケーシング10Cの外側でターミナルホルダ11、ターミナルカバー12cおよびゴムパッキン23cにより密閉される。これにより、バスバーBBと電力線群20cの2本のハーネス21との接続部を含む内部領域IR2の防水性が確保される。この場合、ターミナルカバー12cをターミナルホルダ11から取り外し、電力線群20cのハーネス21が挿入されたゴムパッキン23cをターミナルホルダ11から取り外すことにより本体ケーシング10Cを分解することなく電力線群20cのハーネス21を容易に取り外すことができる。その結果、電力線群20cとバスバーBBの確実な防水が可能でかつ電力線群20cの交換が容易になる。
【0112】
(3−b)本体ケーシングのシールドについて
ハーネス21の芯線21aは、本体ケーシング10Cから電気的に絶縁されたバスバーBBに圧着端子22を介して接続される。また、ハーネス21のシールド線21cは導電性を有する本体ケーシング10Cに電気的に接続される。これにより、本体ケーシング10Cが回路基板30のシールドとして機能する。したがって、簡単な構成および簡単な作業で回路基板30のシールドを行うことができる。
【0113】
(3−c)モータ動力線および電力線について
モータ動力線群20aの3本のハーネス21は、ゴムパッキン23aの3つの貫通孔hにそれぞれ挿通されることによりゴムパッキン23aと一体化される。その結果、モータ動力線群20aの3本のハーネス21の取り扱いが容易であるとともに、モータ動力線群20aの3本のハーネス21と3本のバスバーBBとの誤接続が防止される。
【0114】
また、電力線群20cの2本のハーネス21は、ゴムパッキン23cの2つの貫通孔hにそれぞれ挿通されることによりゴムパッキン23cと一体化される。その結果、電力線群20cの2本のハーネス21の取り扱いが容易であるとともに、電力線群20cの2本のハーネス21と2本のバスバーBBとの誤接続が防止される。
【0115】
(3−d)電動二輪車について
図1の電動二輪車600においては、バッテリシステム632から電力変換部100に電力が供給される。電力変換部100で変換された電力がモータ660に与えられることにより、モータ660が回転する。また、モータ660の回転力によって後輪692が回転することにより、電動二輪車600が移動する。
【0116】
電力変換部100は図3〜図6に示した回路モジュールにより構成される。これにより、電動二輪車600が雨天または浸水した路面で使用される場合でも、樹脂モールドされた本体ケーシング10Cにより電力変換部100の防水性が確保される。また、電力変換部100のバスバーBBとモータ動力線群20aおよび電力線群20cとの接続部がターミナルホルダ11、ターミナルカバー12a,12cおよびゴムパッキン23a,23cにより密閉される。これにより、バスバーBBとモータ動力線群20aおよび電力線群20cとの接続部の防水性が確保される。この場合、モータ動力線群20aおよび電力線群20cのハーネス21をバスバーBBから取り外すことにより本体ケーシング10Cを分解することなくモータ動力線群20aおよび電力線群20cを電力変換部100から容易に取り外すことができる。その結果、モータ動力線群20aおよび電力線群20cと電力変換部100との接続部の確実な防水が可能でかつモータ動力線群20aおよび電力線群20cの交換が容易になる。
【0117】
(4)ターミナルホルダ、ゴムパッキンおよびターミナルカバーの他の例
図13は、ターミナルホルダ11の他の例を示す平面図である。図14は、ゴムパッキン23a,23cの他の例を示す平面図である。図15は、ターミナルカバー12a,12cの他の例を示す平面図である。
【0118】
図13の例では、ターミナルホルダ11の凹溝g1,g2,g3が内部領域IR1の中心線CL1aに関して非対称となるように配置される。
【0119】
同様に、ターミナルホルダ11の凹溝g7,g8が内部領域IR2の中心線CL2aに関して非対称となるように配置される。
【0120】
図14(a)の例では、ゴムパッキン23aの一辺の貫通孔hおよび取り付け部Fがゴムパッキン23aの中心線CL1bに関して非対称となるように配置される。
【0121】
図14(b)の例では、ゴムパッキン23cの一辺の貫通孔hおよび取り付け部Fがゴムパッキン23aの中心線CL2bに関して非対称となるように配置される。
【0122】
図15(a)の例では、凹溝g9,g10,g11が接合領域CR3の中心線CL1cに関して非対称となるように配置される。
【0123】
図15(b)の例では、凹溝g15,g16が接合領域CR4の中心線CL2cに関して非対称となるように配置される。
【0124】
この場合、モータ動力線群20aを構成する3本のハーネス21が挿入されたゴムパッキン23aの一面と他面とが逆の状態でゴムパッキン23aがターミナルホルダ11の接合領域CR1とターミナルカバー12aの接合領域CR3との間に配置されることが防止される。
【0125】
これにより、凹溝g1,g3にそれぞれ嵌め込まれるべき2本のハーネス21が、凹溝g3,g1にそれぞれ誤って嵌め込まれることが防止される。その結果、モータ動力線群20aと回路基板30との間で誤った接続が行われることが防止される。
【0126】
同様に、電力線群20cを構成する2本のハーネス21が挿入されたゴムパッキン23cの一面と他面とが逆の状態でゴムパッキン23cがターミナルホルダ11の接合領域CR2とターミナルカバー12cの接合領域CR4との間に配置されることが防止される。
【0127】
これにより、凹溝g7,g8にそれぞれ嵌め込まれるべき2本のハーネス21が、凹溝g8,g7にそれぞれ誤って嵌め込まれることが防止される。その結果、ゴムパッキン23cと回路基板30との間で誤った接続が行われることが防止される。
【0128】
(5)ターミナルホルダおよびゴムパッキンのさらに他の例
図16は、ターミナルホルダ11のさらに他の例を示す平面図である。図17は、ゴムパッキン23a,23cのさらに他の例を示す平面図である。
【0129】
図16の例では、ターミナルホルダ11の他方端面11Dと凹溝g3の他端部との間に突起部14aが形成される。また、ターミナルホルダ11の他方端面11Dと凹溝g8の他端部との間に突起部14cが形成される。
【0130】
図17(a)の例では、ゴムパッキン23aの貫通孔hが形成された一辺に対向する他辺の一部分に他の部分よりも幅の広い幅広部W1が形成される。幅広部W1は、図16のターミナルホルダ11の突起部14aと中心線CL1bを挟んで反対側に位置する。これにより、ターミナルホルダ11の突起部14aに対応する位置に凹部15aが形成される。
【0131】
図17(b)の例では、ゴムパッキン23cの貫通孔hが形成された一辺に対向する他辺の一部分に他の部分よりも幅の広い幅広部W2が形成される。幅広部W2は、図16のターミナルホルダ11の突起部14cと中心線CL2bを挟んで反対側に位置する。これにより、ターミナルホルダ11の突起部14cに対応する位置に凹部15bが形成される。
【0132】
モータ動力線群20aを構成する3本のハーネス21が挿入されたゴムパッキン23aの一面をターミナルホルダ11の接合領域CR1に配置すると、ターミナルホルダ11の突起部14aがモータ動力線群20aの凹部15aに嵌合する。
【0133】
このようにして、モータ動力線群20aを構成する3本のハーネス21が挿入されたゴムパッキン23aの一面と他面とが逆の状態でゴムパッキン23aがターミナルホルダ11の接合領域CR1とターミナルカバー12aの接合領域CR3との間に配置されることが防止される。
【0134】
これにより、凹溝g1,g3にそれぞれ嵌め込まれるべき2本のハーネス21が、凹溝g3,g1にそれぞれ誤って嵌め込まれることが防止される。その結果、モータ動力線群20aと回路基板30との間で誤った接続が行われることが防止される。
【0135】
同様に、電力線群20cを構成する2本のハーネス21が挿入されたゴムパッキン23cの一面をターミナルホルダ11の接合領域CR2に配置すると、ターミナルホルダ11の突起部14cが電力線群20cの凹部15cに嵌合する。
【0136】
このようにして、電力線群20cを構成する2本のハーネス21が挿入されたゴムパッキン23cの一面と他面とが逆の状態でゴムパッキン23cがターミナルホルダ11の接合領域CR2とターミナルカバー12cの接合領域CR4との間に配置されることが防止される。
【0137】
これにより、凹溝g7,g8にそれぞれ嵌め込まれるべき2本のハーネス21が、凹溝g8,g7にそれぞれ誤って嵌め込まれることが防止される。その結果、ゴムパッキン23cと回路基板30との間で誤った接続が行われることが防止される。
【0138】
(6)配線接続部の他の例
図18は、配線接続部20の他の例を示す分解斜視図である。図19は、図18の配線接続部20におけるターミナルカバー12dの下面図である。
【0139】
図18の例では、第1の接続部20x、第3の接続部20zおよび第2の接続部20yがこの順で並ぶように配置されている。そのため、防水構造を有する第1の接続部20xおよび第3の接続部20zが互いに隣接する。これにより、接合領域CR1と接合領域CR2とが互いに隣接して配置される。本例では、図10および図11のターミナルカバー12a,12cの代わりに樹脂からなる共通のターミナルカバー12dが用いられる。
【0140】
図19に示すように、ターミナルカバー12dの下面には、ターミナルホルダ11の接合領域CR1,CR2にそれぞれ対応する接合領域CR3,CR4が形成される。接合領域CR3,CR4の共通する一辺は一体化されている。
【0141】
接合領域CR3,CR4はその内側の領域に比べて下方に突出している。接合領域CR3の一辺には、ゴムパッキン23aの取り付け部Fに対応する半円形の3つの凹溝g9,g10,g11が形成される。また、接合領域CR4の一辺には、ゴムパッキン23cの取り付け部Fに対応する半円形の2つの凹溝g15,g16が形成される。ターミナルカバー12aの周辺部には、ねじ孔Hが形成されている。
【0142】
ターミナルカバー12dの接合領域CR3,CR4がゴムパッキン23a,23c上にそれぞれ配置されるとともに凹溝g9,g10,g11,g15,g16がそれぞれゴムパッキン23a,23cの5つの取り付け部F上に位置決めされる。この状態で、ターミナルカバー12dが、ねじ13によりゴムパッキン23a,23cを挟んでターミナルホルダ11dの上面11Aに取り付けられる。
【0143】
このように、本例では、第1の接続部20xおよび第3の接続部20zに共通のターミナルカバー12dが用いられる。これにより、第1の接続部20xおよび第3の接続部20zにそれぞれ個別にターミナルカバーが取り付けられる場合に比べて、複数の配線(本例では、モータ動力線群20aおよび電力線群20c)の取り付けおよび取り外しを少ない作業工程で確実に行うことができる。
【0144】
(7)配線接続部のさらに他の例
上記実施の形態に係る回路モジュールおよびそれを備えた電動車両においては、信号線群20bが交換される頻度は少ないため、信号線群20bは、モータ動力線群20aおよび電力線群20cとは異なり、本体ケーシング10Cの内部で樹脂モールドにより防水されている。しかしながら、これに限定されず、信号線群20bが、モータ動力線群20aおよび電力線群20cと同様に、本体ケーシング10Cの外部でターミナルホルダおよびターミナルカバーにより防水されてもよい。
【0145】
また、上記実施の形態では、ターミナルホルダ11の接合領域CR1,CR2にゴムパッキン23a,23cを介してターミナルカバー12a,12c,12dの接合領域CR3,CR4が接合されているが、これに限定されない。ターミナルホルダ11とターミナルカバー12a,12c,12dとの間の気密性が保たれる場合には、ゴムパッキン23a,23cを介さず、ターミナルホルダ11の接合領域CR1,CR2とターミナルカバー12a,12c,12dの接合領域CR3,CR4とが直接接合されてもよい。
【0146】
[2]第2の実施の形態
第2の実施の形態に係る回路モジュールについて、第2の実施の形態に係る回路モジュールと異なる点を説明する。
【0147】
(1)電力変換部の構造
図20は、本発明の第2の実施の形態に係る回路モジュールにより構成される電力変換部100の外観斜視図である。図20に示すように、電力変換部100は、変換本体部10および配線接続部20から構成される。
【0148】
第1の実施の形態と同様に、変換本体部10の本体ケーシング10Cは、上部開口を有する下部ケーシング110、および下部ケーシング110の上部開口を閉塞する上蓋120からなる。下部ケーシング110は、4つの側面および底面を有する。下部ケーシング110には、1つの側面から側方へ延びるように配線接続部20が一体的に設けられる。
【0149】
配線接続部20は、上部開口を有する下部ケーシング130、および下部ケーシング130の上部開口を閉塞する上蓋140からなる。下部ケーシング130は、3つの側面および底面を有する。また、変換本体部10の下部ケーシング110の1つの側面には、接続ケーシング20Cと並ぶように信号線接続部20Sが一体的に形成される。本体ケーシング10C、上蓋140を除く接続ケーシング20Cおよび信号線接続部20Sは、例えばアルミニウム等の導電性材料により形成される。また、上蓋140は例えばステンレス等の導電性材料により形成される。
【0150】
本実施の形態においては、第1の接続部20x、第3の接続部20zおよび第2の接続部20yがこの順で並ぶように配置されている。第1の接続部20x、第2の接続部20yおよび第3の接続部20zに、それぞれモータ動力線群20a、信号線群20bおよび電力線群20cの一端が接続される。第1の接続部20xおよび第3の接続部20zは防水構造を有する。モータ動力線群20aは3本のハーネス21により構成され、信号線群20bは3本のハーネス21により構成され、電力線群20cは2本のハーネス21により構成される。
【0151】
図21および図22は、図20の電力変換部100の分解斜視図である。図21および図22に示すように、配線接続部20の第1の接続部20xおよび第3の接続部20zは、接続ケーシング20C(下部ケーシング130および上蓋140)、樹脂製のターミナルホルダ11b、複数のブッシング25a,25cおよびターミナルパッキン150により構成される。また、配線接続部20の第2の接続部20yは、信号線接続部11Sおよび下部ケーシング130の信号線接続部20Sにより構成される。信号線接続部11Sは、ターミナルホルダ11bに一体的に形成される。なお、図21では、本体ケーシング10Cの上蓋120の図示は省略する。
【0152】
下部ケーシング110の1つの側面に対向する下部ケーシング130の1つの側面には、モータ動力線群20a(図20参照)の3つのハーネス21に対応する3つの断面半円形状の凹部A,B,Cおよび電力線群20c(図20参照)の2つのハーネス21に対応する2つの凹部D,Eが形成されている。下部ケーシング130にターミナルホルダ11bが嵌め込まれる。
【0153】
図23(a)は、図21のターミナルホルダ11bの斜視図であり、図23(b)は、図21のターミナルホルダ11bの平面図である。図23(a)に示すように、ターミナルホルダ11bは、扁平な直方体形状を有し、上面11E、下面11F、一方端面11Gおよび他方端面11Hを有する。また、ターミナルホルダ11bの他方端面11Hに沿って並ぶように信号線接続部11Sが形成される。
【0154】
ターミナルホルダ11bの上面11Eには、一方端面11Gから他方端面11Hの近傍まで延びるように複数の凹溝g17,g18,g19,g23,g24が平行に形成されている。信号線接続部11Sの下面には、3つの凹溝g20,g21,g22が平行に形成される。
【0155】
3つの凹溝g17〜g19は図20のモータ動力線群20aに対応し、図20の第1の接続部20x内に形成される。また、2つの凹溝g23,g24は図20の電力線群20cに対応し、第3の接続部20z内に形成される。さらに、3つの凹溝g20〜g22は、図20の信号線群20bに対応し、図20の第2の接続部20y内に形成される。凹溝g17〜g19,g23,g24の先端部は断面半円形状に形成される。凹溝g20〜g22は,一端面から他端面にわたって断面半円形状に形成される。
【0156】
また、3つの凹溝g17〜g19,g23,g24の先端部を除いて凹溝g17〜g19,g23,g24を一体的に取り囲むように、上面11Eに接合領域CR5が形成される。接合領域CR5の内側を内部領域IR3と呼ぶ。
【0157】
ターミナルホルダ11bは、下部ケーシング130に嵌め込まれる。この状態で、下部ケーシング130の1つの側面に形成された凹部A〜Eの上面とターミナルホルダ11bの一方端面11Gに形成された凹溝g17〜g19,g23,g24の先端部の上面とがほぼ面一となる(図22参照)。
【0158】
また、図23(b)に示すように、ターミナルホルダ11bには、他方端面11Hから凹溝g17〜g19,g23,g24内に至る複数のスリットH6,H7,H8,H9,H10が下面11Fに平行に延びるように形成されている。
【0159】
複数のスリットH6〜H10には、それぞれ帯状のバスバーBBが挿入される(図21参照)。複数のバスバーBBの一端部は、凹溝g17〜g19,g23,g24内で露出する。複数のバスバーBBの各々は、例えば銅により形成され、両端部に接続孔を有する。
【0160】
複数のバスバーBBの一端部の接続孔はターミナルホルダ11bの凹溝g17〜g19,g23,g24内に位置決めされ、複数のバスバーBBの他端部の接続孔は回路基板30の複数の端子部30a〜30e(図5参照)上に位置決めされる。この状態で、複数のバスバーBBの他端部が接続孔を通して回路基板30の複数の端子部30a〜30eのねじ孔にねじ31で接続される。
【0161】
信号線接続部20Sの上面には、信号線接続部11Sの3つの凹溝g20〜g22に対向する断面半円形の凹溝g25,g26,g27が形成されている。信号線群20bを構成する3本のハーネス21がそれぞれ信号線接続部20Sの3つの凹溝g25〜g27に嵌め込まれ、3本のハーネス21の端部が回路基板30(図5参照)に電気的に接続される。
【0162】
その後、信号線接続部11Sの3つの凹溝g20〜g22が信号線群20bを構成する3本のハーネス21に嵌め込まれる。この状態で、下部ケーシング110の内部空間が樹脂でモールドされ、下部ケーシング110に上蓋120が取り付けられる。
【0163】
複数のブッシング25aは略直方体形状を有する。ブッシング25aはゴムにより形成される。各ブッシング25aの下面は断面半円形状を有し、ターミナルホルダ11bの一方端面11Gに形成された凹溝g17〜g19の先端部に嵌め込み可能である。各ブッシング25aの上面は平坦な形状を有する。
【0164】
各ブッシング25aには貫通孔が形成され、貫通孔にはモータ動力線群20aのハーネス21が挿通される。貫通孔の内径は、モータ動力線群20aのハーネス21の直径とほぼ等しい。図20のモータ動力線群20aを構成する各ハーネス21は、図8のハーネス21と同様の構成を有する。各ハーネス21は、図22に示すように、ブッシング25aの貫通孔にそれぞれ挿通された後に、先端部で露出する芯線21a(図8参照)に圧着端子22が取り付けられる。
【0165】
モータ動力線群20aのハーネス21がブッシング25aに挿通された状態で、ブッシング25aが凹溝g17〜g19の先端部に嵌め込まれる。これにより、ターミナルホルダ11bの凹溝g17〜g19の先端部とブッシング25aの下面とが防水可能に密着する。また、ブッシング25aの上面とターミナルホルダ11bの上面11E(図23参照)とがほぼ面一となる。この状態で、図22に示すように、ハーネス21に取り付けられた圧着端子22が、3つの凹溝g17〜g19内で露出するバスバーBBにねじ24aで接続される。
【0166】
同様に、複数のブッシング25cは略直方体形状を有する。ブッシング25cはゴムにより形成される。各ブッシング25cの下面は断面半円形状を有し、ターミナルホルダ11bの一方端面11Gに形成された凹溝g23,g24の先端部に嵌め込み可能である。各ブッシング25cの上面は平坦な形状を有する。
【0167】
各ブッシング25cには貫通孔が形成され、貫通孔には電力線群20cのハーネス21が挿通される。貫通孔の内径は、電力線群20cのハーネス21の直径とほぼ等しい。図20の電力線群20cを構成する各ハーネス21は、図9のハーネス21と同様の構成を有する。各ハーネス21は、図22に示すように、ブッシング25cの貫通孔にそれぞれ挿通された後に、先端部で露出する芯線21a(図9参照)に圧着端子22が取り付けられる。
【0168】
電力線群20cのハーネス21がブッシング25cに挿通された状態で、ブッシング25cが凹溝g23,g24の先端部に嵌め込まれる。これにより、ターミナルホルダ11bの凹溝g23,g24の先端部とブッシング25cの下面とが防水可能に密着する。また、ブッシング25cの上面とターミナルホルダ11bの上面11E(図23参照)とがほぼ面一となる。この状態で、図22に示すように、ハーネス21に取り付けられた圧着端子22が、2つの凹溝g23,g24内で露出するバスバーBBにねじ24aで接続される。
【0169】
その後、ターミナルホルダ11bの上面11Eの接合領域CR5(図23(a)参照)にゴム製のターミナルパッキン150が取り付けられる。図24に示すように、上蓋140の下面の周縁部に接合領域CR6が形成される。接合領域CR6は、ターミナルホルダ11bの上面11Eの接合領域CR5に対応する矩形状を有する。上蓋140の周辺部には、ねじ孔Hが形成されている。
【0170】
上蓋140の接合領域CR6が、ターミナルパッキン150を挟んでターミナルホルダ11bの上面11Eの接合領域CR5上に配置される。この状態で、上蓋140が、ねじ13(図22参照)によりターミナルパッキン150、ブッシング25a,25cおよびターミナルホルダ11bを挟んで下部ケーシング130に取り付けられる。ここで、ターミナルホルダ11bの上面11Eおよびブッシング25a,25cの上面とターミナルパッキン150の下面とが防水可能に密着する。これにより、ターミナルホルダ11bおよび上蓋140によりターミナルホルダ11bの内部領域IR3上に密閉空間が形成される。
【0171】
本実施の形態においては、図21に示すように、ターミナルホルダ11bの一方端面11Gに対応する上蓋140の一方の端部141が下方に屈曲される。これにより、上蓋140がねじ13により下部ケーシング130に取り付けられる際に、上蓋140の一方の端部141がたわむことが防止される。
【0172】
なお、上蓋140のたわみを防止するために、上蓋140の厚みを大きくしてもよい。この場合、上蓋140の一方の端部141を屈曲させなくてもよい。
【0173】
第1の接続部20xにおいては、ターミナルホルダ11bの内部領域IR3上の密閉空間内で、モータ動力線群20aを構成するハーネス21に取り付けられた圧着端子22がバスバーBBに接続される。これにより、モータ動力線群20aの3本のハーネス21が、バスバーBBを介して回路基板30の3つの端子部30a,30b,30c(図5参照)にそれぞれ電気的に接続される。
【0174】
第3の接続部20zにおいても、ターミナルホルダ11bの内部領域IR3上の密閉空間内で、電力線20cを構成するハーネス21に取り付けられた圧着端子22がバスバーBBに接続される。これにより、電力線群20cの2本のハーネス21が、バスバーBBを介して回路基板30の2つの端子部30d,30e(図5参照)にそれぞれ電気的に接続される。
【0175】
(2)効果
本実施の形態において、複数のブッシング25aは、ターミナルホルダ11bの内部領域IR3と外部空間とを連通する複数の凹溝g17〜g19に嵌合される。モータ動力線群20aを構成する複数のハーネス21は、複数のブッシング25aの貫通孔にそれぞれ挿通され、ターミナルホルダ11bの内部領域IR3のバスバーBBに接続される。
【0176】
同様に、複数のブッシング25cは、ターミナルホルダ11bの内部領域IR3と外部空間とを連通する複数の凹溝g23,g24に嵌合される。電力線群20cを構成する複数のハーネス21は、複数のブッシング25cの貫通孔にそれぞれ挿通され、ターミナルホルダ11bの内部領域IR3のバスバーBBに接続される。
【0177】
この状態で、ターミナルホルダ11bの接合領域CR5にターミナルパッキン150を挟んで上蓋140の接合領域CR6が接合される。これにより、ターミナルホルダ11bの複数の凹溝g17〜g19,g23,g24と複数のブッシング25a,25cとの間が密封されるとともに、ターミナルホルダ11bの接合領域CR5と上蓋140の接合領域CR6との間が密封される。そのため、バスバーBBとハーネス21との接続部を含む内部領域IR3がターミナルホルダ11b、上蓋140、ターミナルパッキン150およびブッシング25a,25cにより密閉される。その結果、バスバーBBとハーネス21との接続部の防水性が向上する。
【0178】
また、複数のブッシング25aおよび複数の凹溝g17〜g19が、モータ動力線群20aを構成する複数のハーネス21に対応して設けられる。同様に、複数のブッシング25cおよび複数の凹溝g23,g24が、電力線群20cを構成する複数のハーネス21に対応して設けられる。これにより、ハーネス21を個別にバスバーBBから取り外すことができる。その結果、ハーネス21の交換作業を効率よく行うことができる。
【0179】
さらに、回路基板30が導電性を有する本体ケーシング10Cに収容されるとともに、バスバーBBの一端部が導電性を有する接続ケーシング20Cに収容される。これにより、回路基板30およびバスバーBBがシールドされる。その結果、外部空間から回路基板30およびバスバーBBへのノイズの混入を抑制することができる。また、回路基板30およびバスバーBBから外部空間へのノイズの放出を抑制することができる。
【0180】
(3)接続ケーシングの上蓋の他の例
図25は、接続ケーシング20Cの上蓋140の他の例を示す斜視図である。図25の例においては、図23(b)のターミナルホルダ11bの一方端面11Gに対応する上蓋140の一方の端部が屈曲されず、ターミナルホルダ11bの他方端面11Hに対応する上蓋140の他方の端部142が上方に屈曲される。これにより、上蓋140がねじ13により下部ケーシング130に取り付けられる際に、上蓋140の他方の端部142がたわむことが防止される。
【0181】
なお、上蓋140の他方の端部142が下方に屈曲されてもよい。この場合でも、上蓋140がねじ13により下部ケーシング130に取り付けられる際に、上蓋140の他方の端部142がたわむことが防止される。
【0182】
(4)接続ケーシングの上蓋のさらに他の例
図26は、接続ケーシング20Cの上蓋140のさらに他の例を示す斜視図である。図26の例においては、図21と同様に、図23(b)のターミナルホルダ11bの一方端面11Gに対応する上蓋140の一方の端部141が下方に屈曲される。また、ターミナルホルダ11bの他方端面11Hに対応する上蓋140の他方の端部142が下方に屈曲される。これにより、上蓋140がねじ13により下部ケーシング130に取り付けられる際に、上蓋140の一方の端部141がたわむことが防止されるとともに、上蓋140の他方の端部142がたわむことが防止される。
【0183】
(5)本実施の形態において、モータ動力線群20aおよび電力線群20cを構成する各ハーネス21がブッシング25a,25cの貫通孔にそれぞれ挿通された後に、先端部で露出する各ハーネス21の芯線21aに圧着端子22が取り付けられるが、これに限定されない。各ハーネス21の芯線21aに圧着端子22が取り付けられた後に、モータ動力線群20aおよび電力線群20cを構成する各ハーネス21がブッシング25a,25cの貫通孔にそれぞれ挿通されてもよい。
【0184】
同様に、第1の実施の形態において、モータ動力線群20aおよび電力線群20cを構成する各ハーネス21がゴムパッキン23a,23cの貫通孔hにそれぞれ挿通された後に、先端部で露出する各ハーネス21の芯線21aに圧着端子22が取り付けられてもよいし、各ハーネス21の芯線21aに圧着端子22が取り付けられた後に、モータ動力線群20aおよび電力線群20cを構成する各ハーネス21がゴムパッキン23a,23cの貫通孔hにそれぞれ挿通されてもよい。
【0185】
[3]請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0186】
上記実施の形態においては、本体ケーシング10Cが第1のケーシングの例であり、回路基板30が電子回路部の例であり、バスバーBBが端子部の例であり、内部領域IR1〜IR3が内部領域の例であり、接合領域CR1,CR2,CR5が第1の接合領域の例であり、ターミナルホルダ11,11bが端子保持部の例である。貫通孔hが孔の例であり、ゴムパッキン23a,23cおよびブッシング25a,25cがシール部材の例であり、ハーネス21が配線の例であり、接合領域CR3,CR4,CR6が第2の接合領域を有し、ターミナルカバー12a,12c〜12dまたは上蓋140が蓋体部の例であり、配線接続部20が配線接続部の例である。芯線21aが芯線の例であり、シールド線21cがシールド導体の例であり、凹溝g17〜g19,g23,g24が溝部の例であり、接続ケーシング20Cが第2のケーシングの例である。電力変換部100が電力変換部の例であり、バッテリシステム632がバッテリシステムの例であり、モータ660がモータの例であり、後輪692が駆動輪の例であり、電動二輪車600が電動車両の例である。
【0187】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明は、種々の回路モジュールに有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0189】
10 変換本体部
10C 本体ケーシング
11,11b ターミナルホルダ
11A,11E 上面
11B,11F 下面
11C,11G 一方端面
11D,11H 他方端面
11S,20S 信号線接続部
12a〜12d ターミナルカバー
13,24a,31 ねじ
14a,14c 突起部
15a,15c 凹部
20 配線接続部
20a モータ動力線群
20b 信号線群
20c 電力線群
20C 接続ケーシング
20x〜20z 接続部
21 ハーネス
21a 芯線
21b,21d 絶縁被膜
21c シールド線
22 圧着端子
23a,23c ゴムパッキン
25a,25c ブッシング
30 回路基板
30a〜30e 端子部
100 電力変換部
110,130 下部ケーシング
110x,110y 支持部
120,140 上蓋
141,142 端部
150 ターミナルパッキン
600 電動二輪車
610 車体フレーム
611 フロントフォーク
620 ハンドル部
621 アクセル装置
621a アクセルグリップ
621b アクセル検出部
622 ブレーキ装置
622a ブレーキレバー
622b ブレーキ検出部
630 本体部
631 主制御部
632 バッテリシステム
640 シート
650 スイングアーム
651 回転速度センサ
660 モータ
691 前輪
692 後輪
A〜E,a〜e 凹部
BB バスバー
CL1a〜CL1c,CL2a〜CL2c 中心線
CR1〜CR5 接合領域
F 取り付け部
g1〜g11,g15〜g27 凹溝
H ねじ孔
H1〜H10,S1,S2 スリット
h 貫通孔
IR1〜IR3 内部領域
W1,W2 幅広部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有する第1のケーシングと、
前記第1のケーシングの前記内部空間に収容される電子回路部と、
前記電子回路部に電気的に接続され、前記第1のケーシングの外側に引き出された端子部と、
前記第1のケーシングの外側に設けられ、前記端子部を保持する内部領域を有するとともに前記内部領域を取り囲む第1の接合領域を有する端子保持部と、
配線と、
前記端子保持部の前記第1の接合領域に対応する第2の接合領域を有し、前記端子保持部の前記内部領域を覆うように形成される蓋体部とを備え、
前記配線の一端が前記端子保持部の前記内部領域で前記端子部に接続されるとともに前記配線の他端が外部空間に引き出された状態で、前記端子保持部の前記第1の接合領域に前記蓋体部の前記第2の接合領域が接合されることを特徴とする回路モジュール。
【請求項2】
前記端子保持部の前記内部領域を取り囲むように前記第1の接合領域に配置され、前記外部空間から前記内部領域へ貫通する複数の孔を有するシール部材をさらに備え、
前記端子部および前記配線はそれぞれ複数設けられ、前記複数の配線は前記シール部材の前記複数の孔にそれぞれ挿通可能であり、前記端子保持部の前記内部領域に前記複数の端子部が保持され、前記シール部材の前記複数の孔に挿通された前記配線が前記端子保持部の前記内部領域で前記複数の端子部に接続され、前記端子保持部の前記第1の接合領域に前記シール部材を介して前記蓋体部の前記第2の接合領域が接合されることを特徴とする請求項1記載の回路モジュール。
【請求項3】
前記端子部、前記配線および前記シール部材はそれぞれ複数設けられ、前記端子保持部は、前記複数の端子部を保持する複数の内部領域を有するとともに前記複数の内部領域をそれぞれ取り囲む前記第1の接合領域を複数有し、前記蓋体部は前記端子保持部の前記複数の第1の接合領域に対応する第2の接合領域を複数有し、
前記複数のシール部材の前記複数の孔にそれぞれ挿通された前記複数の配線が前記端子保持部の前記複数の内部領域で前記複数の端子部にそれぞれ接続され、前記端子保持部の前記複数の第1の接合領域に前記複数のシール部材を介して前記蓋体部の前記複数の第2の接合領域が接合されることを特徴とする請求項2記載の回路モジュール。
【請求項4】
前記端子保持部は、前記シール部材が嵌合可能に形成され、
前記シール部材は、第1の面および第2の面を有し、前記第1の面が前記第1の接合領域に対向する状態で前記端子保持部に嵌合可能でかつ前記第2の面が前記第1の接合領域に対向する状態で前記端子保持部に嵌合不可能な形状を有することを特徴とする請求項2または3記載の回路モジュール。
【請求項5】
前記第1のケーシングは導電性を有し、
前記端子部は前記第1のケーシングから電気的に絶縁され、
前記配線は芯線およびシールド導体を有し、前記芯線が前記端子部に接続され、前記シールド導体が前記第1のケーシングに電気的に接続されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の回路モジュール。
【請求項6】
前記端子部および前記配線はそれぞれ複数設けられ、
前記端子保持部は、前記複数の配線に対応して設けられかつ前記内部領域と前記外部空間とを連通する複数の溝部を有し、
当該回路モジュールは、前記端子保持部の前記複数の溝部にそれぞれ嵌合可能に形成されかつ前記外部空間から前記内部領域へ貫通する孔を有する複数のシール部材をさらに備え、
前記複数の配線は前記複数のシール部材の前記孔にそれぞれ挿通可能であり、前記端子保持部の前記内部領域に前記複数の端子部が保持され、前記複数のシール部材の前記孔に挿通された前記複数の配線が前記端子保持部の前記内部領域で前記複数の端子部に接続され、前記端子保持部の前記第1の接合領域に前記複数のシール部材を介して前記蓋体部の前記第2の接合領域が接合されることを特徴とする請求項1記載の回路モジュール。
【請求項7】
前記第1のケーシングの外部に設けられる第2のケーシングをさらに備え、
前記端子部、前記端子保持部および前記蓋体部は前記第2のケーシング内に収容されるとともに、前記複数の配線が前記第2のケーシング内から前記外部空間に引き出され、
前記第1のケーシングおよび前記第2のケーシングは導電性を有することを特徴とする請求項6記載の回路モジュール。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の回路モジュールにより構成される電力変換部と、
前記電力変換部に電力を供給するバッテリシステムと、
前記電力変換部により駆動されるモータと、
前記モータの回転力により回転する駆動輪とを備えることを特徴とする電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−96636(P2011−96636A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187034(P2010−187034)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】